説明

プリンタ

【課題】記録紙の幅方向に移動する回転刃を有するカッタにおける切断時間の変動を抑制することである。
【解決手段】記録紙の幅方向外側の左右両側に、回転刃11の待機位置を検出する待機位置センサ18a、18bを配置し、これらの待機位置センサ18a、18bの中間に、回転刃11の移動位置を検出する中間位置センサ19を配置して、記録紙を切断する回転刃11がいずれか一方の待機位置センサ18a、18bで検出されてから中間位置センサ19で検出されるまでの中途移動時間Tを測定し、測定された中途移動時間Tの基準値Tからのずれに基づいて、回転刃11の全体の移動時間の変動を抑制するように、中間位置センサ19で検出後の回転刃11の移動速度を制御することにより、記録紙の幅方向に移動する回転刃11を有するカッタ10における切断時間の変動を抑制できるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、協働する切断刃の一方を記録紙の幅方向に移動する回転刃としたカッタを備えたプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
サーマルプリンタ、インクジェットプリンタ、レーザプリンタ等のプリンタには、印刷された記録紙を所定の長さに切断するカッタを備え、このカッタの協働する切断刃の一方を、記録紙の幅方向に移動する回転刃としたものがある(例えば、特許文献1−3参照)。特許文献1−3に記載されたものでは、他方の切断刃を記録紙の幅方向に延びる固定刃とし、回転刃を回転自在に支持したキャリッジを、記録紙の幅方向に移動させて、印刷された記録紙を所定の長さに切断するようにしている。
【0003】
前記移動する回転刃を有するカッタは、回転刃を支持するキャリッジを、プーリに巻き掛けたタイミングベルトに係合させ、プーリの1つをモータで正逆方向に回転駆動することにより、回転刃を記録紙の幅方向に往復移動させるものが多い(例えば、特許文献1参照)。回転刃のキャリッジを、スパイラル溝を設けたスパイラル軸と係合させ、スパイラル軸をモータで正逆方向に回転駆動することにより、回転刃を記録紙の幅方向に往復移動させるものもある(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
この種のカッタでは、回転刃を記録紙の幅方向外側の一端側に待機させ、記録紙を所定の切断位置で停止させた状態で、回転刃を幅方向の他端側へ移動させて記録紙を切断し、他端側へ移動させた回転刃をそのまま記録紙の幅方向外側で待機させて、つぎの切断位置では、回転刃を他端側から一端側へ逆方向に移動させて、記録紙を切断するようにしたものが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−317884号公報
【特許文献2】特開2002−29109号公報
【特許文献2】特開2003−191549号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1−3に記載された記録紙の幅方向に移動する回転刃を有するカッタは、回転刃の移動距離が長いので、記録紙の厚みや紙質等による切断抵抗の違いや、機械的な回転刃の送り抵抗の変化等によって、記録紙の切断時間がギロチン式やロータリ式等の他のタイプのカッタよりも大きく変動する問題がある。このように記録紙の切断時間が変動すると、各切断間に行われる印刷や紙送りにも支障を来たす。
【0007】
そこで、本発明の課題は、記録紙の幅方向に移動する回転刃を有するカッタにおける切断時間の変動を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は、印刷された記録紙を所定の長さに切断するカッタを備え、このカッタの協働する切断刃の少なくとも一方を、前記記録紙の幅方向外側で待機し、記録紙の幅方向に移動する回転刃としたプリンタにおいて、前記記録紙の幅方向外側の左右両側に、前記回転刃の待機位置を検出する待機位置センサを配置し、これらの左右両側の待機位置センサの中間に、前記回転刃の移動位置を検出する少なくとも1つの中間位置センサを配置して、前記記録紙を切断する回転刃がいずれか一方の前記待機位置センサで検出されてから1つの前記中間位置センサで検出されるまでの中途移動時間を測定し、この中途移動時間の予め設定された基準値からのずれに基づいて、前記回転刃が前記一方の待機位置センサで検出されてから他方の待機位置センサで検出されるまでの全体の移動時間の変動を抑制するように、前記中間位置センサで検出後の前記回転刃の移動速度を制御する構成を採用した。
【0009】
すなわち、記録紙の幅方向外側の左右両側に、回転刃の待機位置を検出する待機位置センサを配置し、これらの待機位置センサの中間に、回転刃の移動位置を検出する少なくとも1つの中間位置センサを配置して、記録紙を切断する回転刃がいずれか一方の待機位置センサで検出されてから1つの中間位置センサで検出されるまでの中途移動時間を測定し、この測定された中途移動時間の予め設定された基準値からのずれに基づいて、回転刃が一方の待機位置センサで検出されてから他方の待機位置センサで検出されるまでの全体の移動時間の変動を抑制するように、中間位置センサで検出後の回転刃の移動速度を制御することにより、記録紙の幅方向に移動する回転刃を有するカッタにおける切断時間の変動を抑制できるようにした。
【0010】
前記少なくとも1つの中間位置センサを、前記左右両側の待機位置センサ間の中心位置に対して左右対称に配置することにより、切断時の回転刃の左右の移動方向に関わらず、回転刃の移動速度を制御する距離を一定とすることができる。なお、中間位置センサを1つの場合を含めて奇数個配置する場合は、1つの中間位置センサを中心位置に配置し、残りの中間位置センサをその両側に左右対称に配置することができる。また、中間位置センサを偶数個配置する場合は、これらを中心位置に対して左右対称に配置することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るプリンタは、記録紙の幅方向外側の左右両側に、回転刃の待機位置を検出する待機位置センサを配置し、これらの待機位置センサの中間に、回転刃の移動位置を検出する少なくとも1つの中間位置センサを配置して、記録紙を切断する回転刃がいずれか一方の待機位置センサで検出されてから1つの中間位置センサで検出されるまでの中途移動時間を測定し、この測定された中途移動時間の予め設定された基準値からのずれに基づいて、回転刃が一方の待機位置センサで検出されてから他方の待機位置センサで検出されるまでの全体の移動時間の変動を抑制するように、中間位置センサで検出後の回転刃の移動速度を制御するようにしたので、記録紙の幅方向に移動する回転刃を有するカッタにおける切断時間の変動を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】プリンタの実施形態を示す切欠き縦断面図
【図2】(a)は図1のカッタを示す正面図、(b)は(a)の背面図
【図3】図2の側面図
【図4】図2(a)のIV−IV線に沿った断面図
【図5】図2のカッタの動作を制御する制御フローチャート
【図6】図2(b)の変形例を示す背面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に基づき、本発明の実施形態を説明する。このプリンタはサーマルプリンタであり、図1に示すように、ロール紙の記録紙Sを給紙部に装填するリール1と、記録紙Sの外周を押さえる押さえローラ2と、ロール紙11の先端部を挟持してリール1から繰り出すローディングローラ3aおよびローディングピンチローラ3bと、記録紙Sを印刷部に送り込むフィードローラ4と、フィードローラ4に記録紙Sを押し付けるピンチローラ5と、一対のボビン6aに巻回されたインクリボン6と、記録紙Sに印刷を施すサーマルヘッド7と、サーマルヘッド7と対向するプラテンローラ8と、印刷された記録紙Sを所定の長さに切断するカッタ10とで基本的に構成されており、切断された記録紙Sは、ケーシング9の前面に設けられた排紙口9aから外部に排出される。図示は省略するが、プリンタは各部の作動を制御するコントローラを備えている。このコントローラは、後述するカッタ10の動作の制御も行うようになっている。
【0014】
図2(a)、(b)および図3に示すように、前記カッタ10は、上切断刃が記録紙Sの幅方向に移動する回転刃11とされ、下切断刃が記録紙Sの幅方向に延びる固定刃12とされている。回転刃11は上フレーム13aの前面側で幅方向に案内されるキャリッジ14に回転自在に支持され、キャリッジ14は駆動プーリ15aと複数の従動プーリ15bに巻き掛けられたタイミングベルト16に係止されており、下フレーム13bに取り付けられたDCモータ17で駆動プーリ15aを正逆方向に回転駆動することにより、キャリッジ14に支持された回転刃11が記録紙Sの幅方向に往復移動する。固定刃12は回転刃11と協働するように下フレーム13bの前面側に固定されており、幅方向に延びる上下のフレーム13a、13bは、両端部で連結されている。
【0015】
前記上フレーム13aの背面側には、記録紙Sの幅方向外側の左右両側で、回転刃11の待機位置を検出する待機位置センサ18a、18bが取り付けられ、これらの待機位置センサ18a、18bの中間の中心位置に、回転刃11の移動位置を検出する1つの中間位置センサ19が取り付けられている。回転刃11は、1回の切断で左側(図2(b)の背面図では右側)の待機位置センサ18aで検出される待機位置から右方向へ移動して記録紙Sを切断すると、そのまま右側の待機位置センサ18bで検出される待機位置で待機し、次回の切断では左方向へ移動して記録紙Sを切断する。
【0016】
図4に示すように、前記キャリッジ14には、上フレーム13aの背面側へ突出する位置検知プレート20が設けられ、この位置検知プレート20が光学式の中間位置センサ19の発光部19aと受光部19b間を遮ることにより、キャリッジ14すなわち回転刃11の移動位置が検出される。図示は省略するが、各待機位置センサ18a、18bも中間位置センサ19と同じ光学式のものとされている。なお、これらの各位置センサは、磁気式や接触式等の他のタイプのセンサとしてもよい。
【0017】
前記上下のフレーム13a、13bには、それぞれ記録紙Sを案内する上下の紙ガイド21a、21bが取り付けられており、記録紙Sは背面側から回転刃11と固定刃12の間に案内される。上紙ガイド21aには、前面側で立ち上がる立ち上がり部22が設けられている。キャリッジ14は、上フレーム13aと立ち上がり部22の間に摺動部23a、23bで案内される基部14aと、立ち上がり部22の前面側に張り出す刃支持部14bとからなり、刃支持部14bに回転刃11が回転自在に支持されている。また、基部14aには、タイミングベルト16を係止するベルト係止具24が組み込まれ、このベルト係止具24に位置検知プレート20が設けられている。
【0018】
以下に、前記コントローラによるカッタ10の動作の制御を説明する。コントローラはタイマを備え、待機位置センサ18a、18bと中間位置センサ19の検出出力に基づいて、DCモータ17をPMW(Pulse Width Modulation)制御する。PMW制御は、モータを駆動する一定周期のパルス幅を変えて、デューティ(駆動時間率)を制御するものである。
【0019】
図5は、前記回転刃11を左側の待機位置から右方向へ移動させて記録紙Sを切断する場合の制御フローチャートである。コントローラには、切断時に回転刃11が左側の待機位置から中間位置センサ19で検出されるまでの中途移動時間Tの基準値Tが予め設定されている。まず、コントローラは、カット動作指令に基づいて、DCモータ17をデューティ100%で正転駆動する。つぎに、回転刃11が左側の待機位置センサ18aで検出されてから中間位置センサ19で検出されるまでの中途移動時間Tを測定し、測定された中途移動時間Tを基準値Tとのずれ時間ΔTに基づいて、中間位置センサ19で検出後の回転刃11の移動速度を制御するDCモータ17のデューティを決定する。この実施形態では、中間位置センサ19で検出後の基準デューティを決め、中途移動時間Tが基準値Tよりも大きいときはデューティを基準デューティよりも上げ、基準値Tよりも小さいときはデューティを基準デューティよりも下げるようにしている。こののち、コントローラは決定されたデューティでDCモータ17を正転駆動し、最後に、回転刃11が右側の待機位置センサ18bで検出されると、DCモータ17にブレーキをかけて回転刃11を停止させ、1回の切断が終了する。図示は省略するが、回転刃11を右側の待機位置から左方向へ移動させて切断を行う場合も、DCモータ17が逆転駆動となるだけで、同じ制御フローである。
【実施例】
【0020】
それぞれ同じ紙幅の標準記録紙S、記録紙Sよりも切断抵抗の大きい記録紙S、および記録紙Sよりも切断抵抗の小さい記録紙Sを用意し、図5に示した制御フローチャートのように、回転刃11を左側の待機位置から右方向へ移動させて切断するときのカッタ10の制御を行った。いずれの切断の場合も、回転刃11が中心の中間位置センサ19で検出されるまでの前半行程におけるDCモータ17のデューティは100%とした。このときの記録紙Sの中途移動時間0.10秒を基準値Tとして、各記録紙S、Sの中途移動時間Tを測定し、そのずれ時間ΔTに基づいて、中間位置センサ19で検出後の後半行程におけるDCモータ17のデューティを、後半行程における残り移動時間が標準の記録紙Sと同じになるように制御した。記録紙Sの後半行程における基準デューティは50%とした。
【0021】
表1に制御結果を示す。切断抵抗の大きい記録紙Sでは、中途移動時間Tが0.15秒と記録紙Sよりも長くなり、後半行程におけるデューティが75%に上げられて、基準デューティでの移動速度よりも速められ、後半行程での残り移動時間が標準の記録紙Sと同じ0.20秒となっている。切断抵抗の小さい記録紙Sでは、中途移動時間Tが0.08秒と記録紙Sよりも短くなり、後半行程におけるデューティが40%に下げられて、後半行程での残り移動時間が標準の記録紙Sと同じ0.20秒となっている。
【0022】
【表1】

【0023】
これらの制御結果より、記録紙の切断抵抗が変化したときの、切断時の回転刃11の全体の移動時間の変動を抑制できることが分かる。なお、上述した実施例では、後半行程での残り移動時間を一定とするように制御したが、後半行程におけるデューティがあまり高くならないように制限を加えた上で、全体の移動時間を一定とするように制御してもよい。後半行程におけるデューティをあまり高くすると、回転刃の停止位置の制御が難しくなるからである。
【0024】
図6は、図2(b)に示した中間位置センサ19の配置の変形例を示す。この変形例では、両側の待機位置センサ18a、18b間の中心位置に対して左右対称な位置に、2つの中間位置センサ19が配置されている。各中間位置センサ19は、印刷される記録紙Sの幅の内側に配置されており、中途移動時間Tまでに記録紙Sの一部を切断して、その切断抵抗の違いを検知できるようになっている。回転刃11の左右方向への各移動に対して、どちらの中間位置センサ19を使用してもよいが、デューティを制御する後半側の行程を長くするように、移動スタート側の中間位置センサ19を使用するのが好ましい。なお、機械的な回転刃の送り抵抗の変化に対応する場合は、各中間位置センサ19を記録紙Sの幅の外側に配置してもよい。
【0025】
上述した実施形態では、カッタの上切断刃を回転刃とし、下切断刃を固定刃としたが、逆に、上切断刃を固定刃、下切断刃を回転刃とすることもでき、両方を回転刃とすることもできる。また、回転刃が左右両方向に移動するときに切断を行うようにしたが、切断毎に移動した回転刃を元の位置に戻し、一方向に移動するときのみに切断を行うようにしてもよい。
【0026】
上述した実施形態と変形例では、中間位置センサの配置数を1つおよび2つとしたが、3つ以上の中間位置センサを配置して、これらを記録紙の幅等に応じて使い分けることもできる。
【0027】
上述した実施形態では、サーマルプリンタとしたが、本発明に係るプリンタは、インクジェットプリンタやレーザプリンタ等の他のプリンタにも適用することができる。
【符号の説明】
【0028】
S 記録紙
1 リール
2 押さえローラ
3a ローディングローラ
3b ローディングピンチローラ
4 フィードローラ
5 ピンチローラ
6 インクリボン
6a ボビン
7 サーマルヘッド
8 プラテンローラ
9 ケーシング
9a 排紙口
10 カッタ
11 回転刃
12 固定刃
13a、13b フレーム
14 キャリッジ
14a 基部
14b 刃支持部
15a、15b プーリ
16 タイミングベルト
17 DCモータ
18a、18b 待機位置センサ
19 中間位置センサ
19a 発光部
19b 受光部
20 位置検知プレート
21a、21b 紙ガイド
22 立ち上がり部
23a、23b 摺動部
24 ベルト係止具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷された記録紙を所定の長さに切断するカッタを備え、このカッタの協働する切断刃の少なくとも一方を、前記記録紙の幅方向外側で待機し、記録紙の幅方向に移動する回転刃としたプリンタにおいて、前記記録紙の幅方向外側の左右両側に、前記回転刃の待機位置を検出する待機位置センサを配置し、これらの左右両側の待機位置センサの中間に、前記回転刃の移動位置を検出する少なくとも1つの中間位置センサを配置して、前記記録紙を切断する回転刃がいずれか一方の前記待機位置センサで検出されてから1つの前記中間位置センサで検出されるまでの中途移動時間を測定し、この測定された中途移動時間の予め設定された基準値からのずれに基づいて、前記回転刃が前記一方の待機位置センサで検出されてから他方の待機位置センサで検出されるまでの全体の移動時間の変動を抑制するように、前記中間位置センサで検出後の前記回転刃の移動速度を制御するようにしたことを特徴とするプリンタ。
【請求項2】
前記少なくとも1つの中間位置センサを、前記左右両側の待機位置センサ間の中心位置に対して左右対称に配置した請求項1に記載のプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−107259(P2013−107259A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−253460(P2011−253460)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(000002059)シンフォニアテクノロジー株式会社 (1,111)
【Fターム(参考)】