説明

プリンタ

【課題】用紙幅方向の分割数や分割ピッチを、例えば作業者などがプリンタ内部にアクセスして構成品の設定変更を要することなく、変更することが可能なプリンタを提供する
【解決手段】用紙搬送路Rに沿って用紙Sを用紙搬送方向に切断して用紙幅方向に分割可能な縦切断部として、用紙幅方向の分割数、分割ピッチ、又は前記分割数及び分割ピッチがそれぞれ異なる複数の縦切断要素61と、これら複数の縦切断要素61のうち用紙搬送路R上に位置付ける縦切断要素61を切替可能な切替機構62とを備えてものを適用し、各縦切断要素61を、それぞれ用紙幅方向の分割数に応じた数のサブ回転刃63を一体回転可能に設けたサブシャフト64と、サブ回転刃63との間で用紙Sを用紙S厚み方向に挟み得るメイン回転刃65を一体回転可能に設けたメインシャフト66とを備えたものとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタ、特に用紙を用紙搬送方向に切断して用紙幅方向に分割可能なプリンタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ロール状に巻回した用紙を給紙部から印刷部に供給し、印刷部により用紙に対してプリント処理を施し、プリント処理済みの用紙を用紙幅方向に切断(横切断)できるとともに、用紙の搬送方向にも切断(縦切断)可能に構成されたプリンタが知られている。例えば、特許文献1には、用紙を縦切断する構成として、用紙を厚み方向に挟み得る位置に第一の回転刃及び第二の回転刃をそれぞれ搬送方向に回転可能に配置し、これら回転刃同士を相互に接触可能な位置に設定することによって用紙を搬送方向に2分割に切断可能な技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−111999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の特許文献1には、縦切断を実現する構成として、第一の回転刃及び第二の回転刃の組を1組備えたプリンタが主たるの実施形態(以下、「主実施例」とする)として開示されおり、また、第一の回転刃及び第二の回転刃の組を2組備えて、用紙を用紙幅方向に3分割に切断し得る構成(以下、「第1変更可能例」とする)、及び各回転刃の位置を回転軸上で位置調整可能に設定して、用紙幅方向の切断位置を調整し得る構成(以下、「第2変更可能例」とする)が開示されている。
【0005】
しかしながら、同特許文献には、例えば主実施例の構成から第1変更可能例に変更する場合、或いは主実施例の構成から第2変更可能例に変更する場合の詳細な手順や構成は一切開示されていない。つまり、各例(主実施例、第1変更可能例、第2変更可能例)を採用した何れの場合においても、プリンタ内に一旦セットした第一の回転刃及び第二の回転刃によって用紙幅方向に分割可能な数や分割ピッチは常に一定であり、例えば用紙幅方向の分割数や分割ピッチを変更する場合には、製品出荷前の時点において作業者や作業ロボットなどがプリンタ内にアクセスして回転刃の組み合わせを変更したり、回転軸上における回転刃の位置を変更する作業が要するものと推察できる。したがって、プリントサイズに関するユーザの多様なニーズには柔軟に対応することが困難である。
【0006】
本発明は、このような問題に着目してなされたものであって、主たる目的は、用紙幅方向の分割数や分割ピッチを、例えばプリンタ内部に作業者や作業ロボットがアクセスして構成品の配置調整を行うというような煩雑な作業を要することなく、プリンタ内で機械的に変更することが可能なプリンタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明は、用紙を収容し得る給紙部と、給紙部から用紙搬送路に沿って供給された用紙にプリント処理を行う印刷部と、排出口を有する排出部とを備えたプリンタに関するものである。ここで、本発明のプリンタは、熱転写プリンタ、インクジェットプリンタ、レーザプリンタなどの各種プリンタを包含し、印刷部によるプリント処理方式を特に限定するものではない。
【0008】
そして、本発明に係るプリンタは、用紙搬送路に沿って用紙を用紙の搬送方向(以下、「用紙搬送方向」とする)に切断して用紙幅方向に分割可能な縦切断部をさらに備え、縦切断部として、用紙幅方向の分割数、分割ピッチ、又は分割数及び分割ピッチがそれぞれ異なる複数の縦切断要素と、これら複数の縦切断要素のうち用紙搬送路上に位置付ける縦切断要素を切替可能な切替機構とを備えたものを適用していることを特徴としている。
【0009】
ここで、本発明において、例えば用紙を用紙幅方向に2分割する場合には「用紙幅方向の分割数」は当然のことながら2であり、用紙を用紙幅方向に3以上の整数に分割する場合には「用紙幅方向の分割数」は3以上の整数であることは言及するまでもないが、本発明では、用紙を用紙幅方向に分割しない場合、言い換えれば1分割であれば分割数は1であると捉えるものとする。また、本発明における複数の縦切断要素の組み合わせパターンとしては、用紙幅方向の分割数のみがそれぞれ異なる第1パターン、分割ピッチのみがそれぞれ異なる第2パターン、用紙幅方向の分割数と分割ピッチの両方が異なる第3パターンを挙げることができる。したがって、用紙幅方向の分割数が異なる縦切断要素の組み合わせのみならず、用紙幅方向の分割数は同一でも分割ピッチが異なる縦切断要素の組み合わせや、3つ以上の縦切断要素を備えている場合において1つの縦切断要素を除く2つの縦切断要素による用紙幅方向の分割数は同一であってもそれら2つの縦切断要素による分割ピッチが異なるという縦切断要素の組み合わせも本発明に含まれる。
【0010】
また、「用紙搬送路に沿って用紙を用紙の搬送方向に切断」する縦切断部は、「用紙搬送路に沿って搬送される用紙(搬送中の用紙)を用紙の搬送方向に切断する」もの、又は「停止している用紙に対して用紙搬送路に沿って移動することによって用紙を用紙の搬送方向に切断する」もの、何れのタイプであってもよい。すなわち、本発明の縦切断部は、縦切断処理時に用紙搬送路に沿って移動しない構成又は移動する構成の何れであってもよい。
【0011】
このような構成を有する本発明のプリンタであれば、複数の縦切断要素と切替機構とを備えた縦切断部を適用しているため、複数の縦切断要素のうち切替機構により用紙搬送路上に位置付ける1つの縦切断要素を切り替えることによって、複数パターンから選択した任意の分割数や分割ピッチで用紙を用紙幅方向に切断することができる。したがって、本発明によれば、用紙幅方向の分割数や分割ピッチを変更するに際して、例えば作業者などがプリンタ内部にアクセスして内部構成品の配置や構成を変更するという煩雑な作業を要することなく、実用性に優れたプリンタを実現することができる。
【0012】
また、各縦切断要素の好ましい構成としては、それぞれ用紙幅方向の分割数に応じた数のサブ回転刃を一体回転可能に設けたサブシャフトと、サブ回転刃との間で用紙を用紙厚み方向に挟み得るメイン回転刃を縦切断処理時にサブ回転刃の一部と軸方向に重なり得る位置に設けたメインシャフトとを用いた構成を挙げることができる。ここで、「用紙幅方向の分割数に応じた数」とは、具体的には分割数から1を引いた数を意味し、分割数が例えば2であれば、サブシャフトに設けるサブ回転刃の数は1であり、分割しない場合、つまり分割数が1であれば、サブシャフトに設けるサブ回転刃の数は0である。
【0013】
縦切断部が、複数のサブシャフトと、サブシャフトと同数のメインシャフトとを備え、用紙幅方向の分割数や分割ピッチのパターンに応じて、相互に1対1の関係で対応付けられるサブシャフト及びメインシャフトの組み合わせから適宜のサブシャフト及びメインシャフトの組み合わせを選択して、その選択したサブシャフト及びメインシャフトを切替機構によって用紙搬送路上に位置付けるように構成することも可能であるが、省スペース化及び部品点数の削減を実現するには、縦切断部を、複数のサブシャフトと、これら何れのサブシャフトのサブ回転刃にも対応する位置にそれぞれメイン回転刃を設けた単一のメインシャフトとを用いて構成し、各縦切断要素のメインシャフトを共用している態様が好ましい。
【0014】
さらに、本発明では、用紙を用紙搬送路に沿って排出口側に搬送する排出ローラと、排出ローラとの間で用紙を用紙厚み方向に挟んだ状態で排出ローラに従動する排出用ピンチローラとを有する排出部を備えたプリンタにおいて、サブシャフトに排出用ピンチローラを設けるとともに、メインシャフトに排出ローラを設けることができる。このような構成であれば、サブシャフトやメインシャフトとは別に、排出用ピンチローラや排出ローラを設けるための専用の軸を確保する必要がなく、限れたスペース内に用紙を用紙幅方向に分割する機構と用紙を排出口に向かって搬送する機構とを効率良く組み込むことが可能である。
【0015】
さらに、本発明では、複数のサブシャフトのうち用紙搬送路上に位置付けたサブシャフトをメインシャフト側に押圧して、このサブシャフトに設けた排出用ピンチローラをメインシャフトに設けた排出ローラに圧接させる押圧部と、複数のサブシャフトのうち用紙搬送路上に位置付けられていないサブシャフトをメインシャフトから離間する方向に移動させて、この移動させたサブシャフト(言い換えれば用紙搬送路上に位置付けらているサブシャフト以外のサブシャフト)に設けた排出用ピンチローラと排出ローラとの圧接状態を解除する圧接状態解除部とを備えたプリンタを構成することもできる。このような構成であれば、用紙搬送路上に位置付けたサブシャフトの排出用ピンチローラが押圧部によってメインシャフトの排出ローラに圧接した状態で排出ローラに従動して回転することにより、この排出用ピンチローラと排出ローラとの間を通過する用紙を排出口に向かって適切且つスムーズに搬送することができるとともに、用紙搬送路上に位置付けていないサブシャフトの排出用ピンチローラを圧接状態解除部によって排出ローラから離間させることにより、排出用ピンチローラとの圧接状態によって排出ローラに作用する負荷を必要最小限に抑えることができ、メインシャフトのスムーズな回転動作に寄与し、排出ローラの不要な変形を防止・抑制することができる。
【0016】
また、給紙部がロール状に巻回した用紙を収容し得るタイプのプリンタではあれば、用紙を用紙幅方向に切断可能な横切断部を縦切断部よりも印刷部側に配置しておくことにより、縦切断部により任意の用紙幅寸法に分割した用紙をさらに横切断部により任意の用紙長さ(用紙搬送方向に沿った寸法)に切断した状態で排出口から排出することができる。
【0017】
横切断部を備えたプリンタである場合、横切断部によって用紙搬送方向の分割数、に分割する数又は分割する間隔を変更可能に構成している
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、用紙幅方向の分割数や分割ピッチを、例えば作業者や作業ロボットがプリンタ内部にアクセスして構成品の設定変更を要することなく、変更することが可能であり、プリントサイズに関するユーザの多様なニーズには柔軟に対応することが可能なプリンタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係るプリンタの全体構成模式図。
【図2】同実施形態に係るプリンタに適用した縦切断部の模式図。
【図3】同縦切断部を排出口側から見た図。
【図4】図3のA方向矢視図。
【図5】図3のB−B線断面図
【図6】図3のC−C線断面図
【図7】図3の一部を省略して示す模式図。
【図8】同実施形態における第1サブシャフトを有する縦切断要素の模式図。
【図9】同実施形態における第2サブシャフトを有する縦切断要素の模式図。
【図10】同実施形態における第3サブシャフトを有する縦切断要素の模式図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0021】
本実施形態に係るプリンタPは、図1に示すように、用紙Sに対してインクリボン23のインクを熱転写によって昇華プリント処理を行う昇華型プリンタである。この昇華型プリンタPは、図1に示すように、給紙部1と、給紙部1から供給された用紙Sの表面に対して昇華プリント処理を施す印刷部2と、排出口31を有する排出部3と、用紙Sを給紙部1と排出部3との間に形成される用紙搬送路R(搬送パス)に沿って搬送する用紙搬送機構4とを備えたものである。なお、この昇華型プリンタPは、少なくとも給紙部1、印刷部2、及び用紙搬送機構4を共通の筐体内に設け、排出部3を構成する排出口31や排出トレイ32を筐体外へ露出可能に構成している。
【0022】
給紙部1は、印刷面を内側に向けてロール状に巻回した用紙Sを収容し得るものである。
【0023】
このような給紙部1と排出部3との間で用紙Sを搬送する用紙搬送機構4は、図1に示すように、例えば給紙部1側から排出部3側に向かって順に配置された給紙側送りローラ31と第1ピンチローラ32との組、フィードローラ33と第2ピンチローラ34との組、排出側送りローラ35を用いて構成したものである。なお、ローラ自体の数、或いはローラとピンチローラとの組数や配置箇所は仕様等に応じて適宜設定することができる。
【0024】
印刷部2は、図1に示すように、サーマルヘッド21と、このサーマルヘッド21と対向する位置に配置され且つサーマルヘッド21との間で用紙Sを挟み用紙搬送機構4の機能の一部を担うプラテンローラ22と、インクリボン23と、インクリボン23をサーマルヘッド21とプラテンローラ22との間に搬送するインクリボン搬送機構24とを備えた周知のものである。
【0025】
排出部3は、図1に示すように、排出口31と、排出口31から排出された用紙Sを受け取って収納する排出トレイ32とを備え、印刷部2により所望のプリント処理が施された用紙Sを所定サイズに切断したカット紙として排出口31から筐体外に排出し、排出トレイ32上に積み重ねた状態で載置し得るものである。また、排出部3は、排出口31よりも印刷部2側に、用紙Sを排出口31に向かって搬送する排出ローラ33と排出用ピンチローラ34との組を配置している(図2等参照)。本実施形態では、これら排出ローラ33及び排出用ピンチローラ34を後述する縦切断部6を構成する軸(メインシャフト66、サブシャフト64)に取り付けている。
【0026】
そして、本実施形態に係るプリンタPは、用紙搬送路R上において印刷部2よりも排出口31側に配置され且つ用紙Sを用紙幅方向に切断可能な横切断部5と、用紙搬送路R上において横切断部5よりも排出口31側に配置され且つ用紙Sを用紙Sの搬送方向(用紙搬送方向)に切断して幅方向に分割可能な縦切断部6とを備えている。本実施形態では、給紙部1、印刷部2、排出部3、用紙搬送機構4、横切断部5、及び縦切断部6の作動を図示しない制御部によって制御している。
【0027】
横切断部5は、図1に示すように、用紙Sの印刷面(オモテ面)側に配置した第1カッタ51と、用紙Sの背面(ウラ面)側に固定配置した第2カッタ52とを備え、制御部の制御に従って第1カッタ51を第2カッタ52に摺動させて用紙幅方向に走査させることで、用紙Sを用紙幅方向に切断するものである。本実施形態では、プリント処理を施した用紙Sを用紙搬送方向に沿って各プリント画面の境界ごとにできるように、制御部の制御に従って、横切断部5による用紙Sの分割数や分割ピッチを変更可能に構成している。
【0028】
縦切断部6は、図2乃至図6に示すように、(図2は図1で示す縦切断部6の拡大模式図であり、図3は縦切断部を排出口31側から見た図であり、図4、図5、図6はそれぞれ図3のA方向矢視図、図3のB−B線断面図、図3のC−C線断面図である。)用紙Sを幅方向に分割する数又は分割ピッチが相互に異なる複数の縦切断要素61と、これら複数の縦切断要素61のうち用紙搬送路R上に配置する縦切断要素61を切替可能な切替機構62とを備え、切替機構62によって用紙搬送路R上に位置付けた縦切断要素61により用紙Sを用紙搬送方向に切断可能なものである。
【0029】
各縦切断要素61は、それぞれ用紙幅方向の分割数に応じた数のサブ回転刃63を一体回転可能に設けたサブシャフト64(第1サブシャフト64A、第2サブシャフト64BB、又は第3サブシャフト64C)と、サブ回転刃63との間で用紙Sを用紙S厚み方向に挟み得るメイン回転刃65を縦切断処理時にサブ回転刃63の一部と軸方向Xに重なり得る位置に設けたメインシャフト66とを備えたものである。ここで、「用紙幅方向の分割数に応じた数のサブ回転刃63」とは、「用紙幅方向の分割数(分割しない場合は「1分割=分割数1」と捉える)から1を引いた数のサブ回転刃63」を意味する。
【0030】
本実施形態の縦切断部6は、図2及び図7(図7は図3を一部省略して示す模式図である)等に示すように1つのサブ回転刃63を有して用紙Sを用紙幅方向に2分割可能な第1サブシャフト64Aと、軸方向Xに沿って所定の間隔で配置した2つのサブ回転刃63を有して用紙Sを用紙幅方向に3分割可能な第2サブシャフト64Bと、サブ回転刃63を備えず、用紙Sを分割しない(言い換えれば1分割可能な)第3サブシャフト64Cとを備えている。各サブ回転刃63は、外周縁に刃を形成した概略円盤状をなすものである。第1サブシャフト64Aにおける1つのサブ回転刃63の取付位置は、例えば用紙Sを用紙幅方向に均等に2分割し得る位置である。第2サブシャフト64Bにおける2つのサブ回転刃63の取付位置は、例えば用紙Sを用紙幅方向に均等に3分割し得る位置である。なお、用紙Sを用紙幅方向に不均等に分割し得る位置にサブ回転刃63を設けることも可能である。各サブ回転刃63はそれぞれ各サブシャフト64(第1サブシャフト64A、第2サブシャフト64B)に一体回転可能に取り付けられている。また、各サブシャフト64(第1サブシャフト64A、第2サブシャフト64B、第3サブシャフト64C)には、サブ回転刃63と干渉しない位置(サブ回転刃63と軸方向Xに所定の空隙64Sを確保した位置)に排出用ピンチローラ34を一体回転可能に設けている。サブ回転刃63と同軸上に設けた排出用ピンチローラ34は、例えばゴム製であり、本実施形態では、排出用ピンチローラ34の直径を各サブ回転刃63の直径よりも僅かに小さく設定している。ここで、図8にメインシャフト66と第1サブシャフト64Aとの関係を模式的に示し、図9にメインシャフト66と第2サブシャフト64Bとの関係を模式的に示し、図10にメインシャフト66と第3サブシャフト64Cとの関係を模式的に示す。
【0031】
本実施形態の縦切断部6は、これら複数のサブシャフト64(第1サブシャフト64A、第2サブシャフト64B、第3サブシャフト64C)を備える一方で、メインシャフト66は1つだけ備えたものである。すなわち、縦切断要素61毎にサブシャフト64を異ならせているものの、全ての縦切断要素61におけるメインシャフト66は共通であり、このメインシャフト66には、各サブシャフト64(第1サブシャフト64A、第2サブシャフト64B、第3サブシャフト64C)に設けたサブ回転刃63にそれぞれ対応する位置にメイン回転刃65を設けている(図3、図7乃至図10参照)。具体的には、メインシャフト66には、第1サブシャフト64Aのサブ回転刃63(1つ)に対応する位置にメイン回転刃65を設けるとともに、第2サブシャフト64Bのサブ回転刃63(2つ)に対応する位置にもメイン回転刃65を設けている。すなわち、メインシャフト66には、その軸方向Xに所定の間隔(等ピッチか不等ピッチかはサブ回転刃63の位置に依存する)で計3つのメイン回転刃65を一体回転可能に設けている。各メイン回転刃65は、外周部に刃を形成した概略円盤状をなすものである。また、図7乃至図9に示すように、各メイン回転刃65の外周縁に形成した刃が、メインシャフト66のうちそれぞれ対応するサブ回転刃63の刃と軸方向Xにほぼ隙間無く重なり得る位置に取り付けている。また、メインシャフト66には、メイン回転刃65と干渉しない位置(メイン回転刃65との間に軸方向Xに所定の空隙66Sを確保した位置)に、用紙Sを排出口31に向かって搬送する排出ローラ33を一体回転可能に設けている。メイン回転刃65と同軸上に設けた排出ローラ33は、例えばゴム製であり、本実施形態では、排出ローラ33の直径を各メイン回転刃65の直径よりも僅かに小さく設定している。ここで、用紙搬送路R上において用紙Sを排出口31に向かって搬送する排出ローラ33と、排出ローラ33に用紙Sを介して圧接した状態において排出ローラ33の回転駆動に従動して回転する排出用ピンチローラ34は、排出部3の機能の一部を担うとともに、用紙搬送機構4の機能の一部も担っている。
【0032】
そして、本実施形態に係るプリンタPでは、これら複数のサブシャフト64及びメインシャフト66の両端部をそれぞれ共通のフレーム67に取り付けてユニット化している。具体的には、3つのサブシャフト64(第1サブシャフト64A、第2サブシャフト64B、第3サブシャフト64C)を、単一のメインシャフト66の外周側において周方向に等間隔(120度)となり得る位置に配置している(図2等参照)。ここで、本実施形態では、各サブシャフト64の軸方向Xとメインシャフト66の軸方向Xとを全て平行に設定している。そして、メインシャフト66を中心にフレーム67を回転させることによって、用紙搬送路R上に配置されるサブシャフト64を変更可能に構成している。本実施形態では、用紙搬送路R上で搬送される用紙Sの下側にメインシャフト66を用紙搬送路Rに沿って移動不能(定点配置)とし、このメインシャフト66との間に用紙Sを厚み方向に挟む位置、つまり用紙搬送路R上で搬送される用紙Sの上側に配置されるサブシャフト64を選択可能に構成している。
【0033】
このように縦切断要素61毎にサブシャフト64を異ならせる一方で、全ての縦切断要素61におけるメインシャフト66を共用可能に設定した本実施形態において、上述した切替機構62は、複数のサブシャフト64のうち用紙搬送路R上に配置するサブシャフト64を切替可能なものであると捉えることができる。
【0034】
切替機構62は、図5等に示すように、各サブシャフト64(第1サブシャフト64A、第2サブシャフト64B、第3サブシャフト64C)の端部を支持するフレーム67と、フレーム67を回転させる動力を出力するフレーム回転用駆動源68と、フレーム回転用駆動源68とフレーム67の入力部671との間に介在させた複数のギアからなる動力伝達機構69とを備え、制御部からの指令に従って、フレーム回転用駆動源68の動力によりフレーム67を所定角度回転させて、用紙搬送路R上に位置付けるサブシャフト64を切り替えるものである。本実施形態ではフレーム回転用駆動源68として例えばDCモータを適用している。また、切替機構62は、図4に示すように、フレーム67の回転位置(回転角度)を検出する例えば光学センサなどを用いて構成した位置検知センサ部60を備え、位置検知センサ部60による検知信号に基づいて得られるフレーム67の回転位置情報によってフレーム67の回転動作(さらに回転させるか或いは停止させるか)を制御可能に設定している。
【0035】
また、本実施形態に係るプリンタPは、複数の縦切断要素61のうち用紙搬送路R上に位置付けられる縦切断要素61のサブシャフト64をメインシャフト66側に押圧して、当該サブシャフト64に設けた排出用ピンチローラ34をメインシャフト66に設けた排出ローラ33に圧接させる押圧部7(図5参照)と、複数のサブシャフト64(第1サブシャフト64A、第2サブシャフト64B、第3サブシャフト64C)のうち用紙搬送路R上に位置付けられていないサブシャフト64(例えば第2サブシャフト64B、第3サブシャフト64C)をメインシャフト66から離間する方向に移動させてこれらのサブシャフト64(第2サブシャフト64B、第3サブシャフト64C)に設けた排出用ピンチローラ34と排出ローラ33との圧接状態を解除する圧接状態解除部8(図2参照)とを備えている。
【0036】
本実施形態では、図2に示すように、フレーム67のうち各サブシャフト64(第1サブシャフト64A、第2サブシャフト64B、第3サブシャフト64C)の端部を取り付けて支持する部分にメインシャフト66の径方向に延びる長孔671をそれぞれ形成し、この長孔671に各サブシャフト64(第1サブシャフト64A、第2サブシャフト64B、第3サブシャフト64C)の端部を挿通させ、長孔671内において各サブシャフト64(第1サブシャフト64A、第2サブシャフト64B、第3サブシャフト64C)がメインシャフト66の径方向に移動し得るように構成している。なお、長孔671を挿通した各サブシャフト64(第1サブシャフト64A、第2サブシャフト64B、第3サブシャフト64C)の端部にはそれぞれベアリング641を取り付けて、各サブシャフト64(第1サブシャフト64A、第2サブシャフト64B、第3サブシャフト64C)が長孔671から抜け外れることを防止している(図5参照)。
【0037】
また、本実施形態に係るプリンタPは、メインシャフト66を中心に回転するフレーム67に支持された各サブシャフト64の回転軌跡上に、用紙搬送路R上に配置されるサブシャフト64の位置を長孔671に沿ってメインシャフト66側へ移動させた位置に矯正する位置矯正部9を配置している。位置矯正部9は、図5に示すように、例えば板状のベース部91と、ベース部91の一部から垂下し、回転軌跡に沿って回転移動しながら用紙搬送路R上に位置付けられる直前のサブシャフト64の一部が当たり得る当接部92と、フレーム67の回転に伴って当接部92を乗り越えてから用紙搬送路R上に位置付けられるまでのサブシャフト64をメインシャフト66側に押し込み続けるガイド部93と、ガイド部93にガイドされながらフレーム67の回転に伴って用紙搬送路R上に到達したサブシャフト64をメインシャフト66側に押し付けた状態で保持し得る保持部94とを備えている。本実施形態では、位置矯正部9全体がバネ95によってメインシャフト66側に常に付勢されており、この位置矯正部9に設定した当接部92に当たる対象、ガイド部93に案内される対象、及び保持部94が直接接触して嵌合する対象を、フレーム67の長孔671に挿通させたサブシャフト64の端部に取り付けたベアリング641に設定している。そして、用紙搬送路R上に位置付けたサブシャフト64(例えば第1サブシャフト64A)は、位置矯正部9によってメインシャフト66側に押圧され、このサブシャフト64(第1サブシャフト64A)に設けた排出用ピンチローラ34がメインシャフト66に設けた排出ローラ33に圧接した状態となる。つまり、本実施形態では位置矯正部9を用いて上述の押圧部7を構成している。また、サブシャフト64(第1サブシャフト64A)に設けた排出用ピンチローラ34とメインシャフト66に設けた排出ローラ33とが相互に圧接している状態では、用紙搬送路R上に位置付けたサブシャフト64(第1サブシャフト64A)に設けられているサブ回転刃63と、メインシャフト66に設けられているメイン回転刃65のうち第1サブシャフト64Aのサブ回転刃63に対応するメイン回転刃65とがサブシャフト64及びメインシャフト66の軸方向Xに相互に一部(具体的には各回転刃63,64の外周縁に形成した刃同士が)重なり合う位置となる。この状態で、メインシャフト66が回転すると、排出ローラ33及びメイン回転刃65が一体回転し、排出ローラ33に圧接している排出用ピンチローラ34が従動して回転するとともに、排出用ピンチローラ34と共にサブシャフト64に設けたサブ回転刃63も回転する。その結果、本実施形態の縦切断部6は、排出ローラ33と排出用ピンチローラ34との間を通過する用紙Sを滑らせることなく適度な搬送速度で搬送しながら、軸方向Xに一部が重なり合うメイン回転刃65とサブ回転刃63とによって用紙Sを用紙搬送方向に切断し、用紙幅方向に任意の数(第1サブシャフト64Aとメインシャフト66との組み合わせであれば2つ)に分割することができる。
【0038】
また、フレーム67に取り付けたサブシャフト64の回転軌跡上に用紙Sが存在しない状態でフレーム67を回転させると、それまで用紙搬送路R上に位置付けられていたサブシャフト64(第1サブシャフト64A)が用紙搬送路Rから外れた位置に移動し、異なるサブシャフト64(例えば第3サブシャフト64C)が用紙搬送路R上に位置付けられる。そして、このサブシャフト64(第3サブシャフト64C)は押圧部7によってメインシャフト66側に押圧され、第3サブシャフト64Cに設けた排出用ピンチローラ34とメインシャフト66に設けた排出ローラ33とが相互に圧接する。
【0039】
一方、用紙搬送路R上から外れた位置に移動したサブシャフト64は、押圧部7による拘束状態(押圧力を受け続けている状態)から開放され、自重により長孔671内においてメインシャフト66から離間する方向に移動する。その結果、用紙搬送路R上から外れたサブシャフト64に設けた排出用ピンチローラ34は、メインシャフト66に設けた排出ローラ33に対して圧接不能な状態となる。なお、長孔671に沿ってサブシャフト64をメインシャフト66から離間する方向へ付勢するバネを適宜箇所に設け、サブシャフト64がバネの付勢力でメインシャフト66から離間する方向へ移動可能に構成しても同様の効果を得られる。このように、本実施形態では、フレーム67に形成した長孔671に端部を挿通したサブシャフト64が自重によって長孔671内でメインシャフト66から離間する方向に移動し得るように構成することにより、上述した圧接状態解除部8を実現している。
【0040】
なお、本実施形態では、メインシャフト66の駆動源として、例えばステッピングモータMを適用し、この駆動源(ステッピングモータMの出力軸)とメインシャフト66との間に介在させた複数のギアによって、ステッピングモータMの出力をメインシャフト66に伝達可能に構成している(図3参照)。
【0041】
次に、本実施形態に係るプリンタPの動作及び作用、特に縦切断部6による縦切断処理及び横切断部5による横切断処理について図1及び図2等を参照しながら説明する。
【0042】
本実施形態に係るプリンタPは、まず、ユーザの操作などによって入力された印刷データに基づいて、制御部によって1画面あたりの印刷サイズを特定し、給紙部1でロール状に巻回されている用紙Sを給紙側送りローラ31と第1ピンチローラ32との間、フィードローラ33と第2ピンチローラ34との間を順次通過させて印刷部2まで搬送する。そして、印刷部2によって用紙Sの印刷面(オモテ面)における印刷設定領域(プリント画面)に熱転写プリント処理を行う。ここで、各プリント画面は、少なくとも用紙Sの用紙搬送方向に区切られるものであり、用紙搬送方向及び用紙幅方向にも区切られる場合もある。そして各プリント画面が用紙搬送方向及び用紙幅方向に区切られるものである場合、縦切断部6によって用紙を用紙幅方向に分割可能に構成している。
【0043】
本実施形態における印刷部2は、サーマルヘッド21の熱によりイエロー・マゼンタ・シアンの各色インク及びオーバープリント用のインク又は特色インクを昇華させることで用紙Sの印刷面における各プリント画面にカラー画像を印刷する(形成する)。この際、制御部に入力された印刷データに従って、サーマルヘッド21の温度を調整することにより印刷濃度のレベルを変化させた階調印刷を行うことができ、用紙Sの印刷面における各プリント画面に高品質なカラー画像を印刷することが可能である。
【0044】
次いで、本実施形態に係るプリンタPは、印刷部2による熱転写プリント処理を終えた用紙Sを排出部3側へ順次搬送して、縦切断部6によって縦切断処理を行う。ここで、用紙幅方向に分割する数や分割ピッチは、ユーザの操作(分割数を直接指定する操作や、プリントサイズを設定する操作など)に基づいて制御部によって特定される(以下、特定した分割パターンを「特定分割パターン」とする)。そして、本実施形態に係るプリンタPは、制御部によって、それぞれ分割数や分割ピッチが異なる複数の縦切断要素61から特定分割パターンに応じたサブ回転刃63を有するサブシャフト64を特定し(以下、特定したサブシャフト64を「特定サブシャフト64」とする)、特定サブシャフト64を用紙搬送路R上に位置付けるべく、切替機構62によって用紙搬送路R上のサブシャフト64を切り替える。この際、制御部が、位置検知センサ60による検知信号に基づいてその時点(切替機構62によって用紙搬送路R上のサブシャフト64を切り替える直前)におけるフレーム67の回転位置を特定し、特定サブシャフト64が既に用紙搬送路R上に位置付けられていると判定した場合には、本実施形態のプリンタPは、切替機構62によるサブシャフト64の切替処理を行わずに、その状態で縦切断処理を開始する。一方、特定サブシャフト64が用紙搬送路R上に位置付けられていないと制御部が判定した場合には、本実施形態のプリンタPは、切替機構62によるサブシャフト64の切替処理を行う。具体的には、フレーム回転用駆動源68の動力に基づいてフレーム67を所定角度回転させて特定サブシャフト64を用紙搬送路R上に位置付ける。
【0045】
本実施形態のプリンタPでは、特定サブシャフト64を用紙搬送路R上に位置付けた際に、押圧部7によって特定サブシャフト64をメインシャフト66側に押圧し、特定サブシャフト64に設けた排出用ピンチローラ34をメインシャフト66に設けた排出ローラ33に圧接させることができる。例えばゴム製である排出ローラ33及び排出用ピンチローラ34は、相互に圧接する部分が若干弾性変形し得る。なお、用紙搬送路R上に位置付けた特定サブシャフト64以外のサブシャフト64(特定サブシャフト64が第1サブシャフト64Aである場合には、第2サブシャフト64B及び第3サブシャフト64Cが該当)には、押圧部7による負荷が作用せず、圧接状態解除部8によって特定サブシャフト64以外の各サブシャフト64(第2サブシャフト64B、第3サブシャフト64C)に設けた排出用ピンチローラ34とメインシャフト66の排出ローラ33との圧接状態は解除されている(図2参照)。したがって、排出ローラ33のうち特定サブシャフト64以外の各サブシャフト64(第2サブシャフト64B、第3サブシャフト64C)の排出用ピンチローラ34と対面し得る部分は、これら排出用ピンチローラ34から受ける負荷に起因して弾性変形することはない。これにより、排出ローラ33のうち弾性変形し得る部分を必要最小限に限定することができ、排出ローラ33の外周面に排出用ピンチローラ34との接触に起因して凹凸が大きく表れた場合に生じ易い用紙Sの搬送不良を防止・抑制することができる。なお、この切替機構62によるサブシャフト64の切替処理は、用紙Sが縦切断部6に到達する時点よりも前の時点(例えば制御部によって特定分割パターンを特定した時点等)で行う。
【0046】
本実施形態のプリンタPは、特定分割パターンに対応した特定サブシャフト64を用紙搬送路R上に位置付けた状態で、用紙搬送路Rに沿って印刷部2から排出口31側に搬送される用紙Sに対して、縦切断部6により縦切断処理を行う。具体的には、メインシャフト66を回転駆動させて、このメインシャフト66と共に一体回転する排出ローラ33と、排出ローラ33に従動して回転する排出用ピンチローラ34との間に所定の負荷を与えながら(滑らせることなく)用紙Sを通過させて排出口31側に搬送すると同時に、メインシャフト66と共に一体回転するメイン回転刃65と、排出用ピンチローラ34と共に特定サブシャフト64を中心に回転するサブ回転刃63とによって用紙Sを用紙搬送方向に切断して用紙幅方向に分割する。例えば、特定サブシャフト64がサブ回転刃63を1つ備えた第1サブシャフト64Aであれば、このサブ回転刃63と、メイン回転刃65のうち特定サブシャフト64のサブ回転刃63と軸方向Xに重なり得るメイン回転刃65とによって用紙Sを用紙幅方向に2分割することができる。ここで、本実施形態では、各サブシャフト64(第1サブシャフト64A、第2サブシャフト64B、第3サブシャフト64C)における排出用ピンチローラ34の配置箇所を、用紙搬送路R上に位置付けた際にメインシャフト66の各メイン回転刃65と接触しない位置に設定しているため、排出用ピンチローラ34とメイン回転刃65とが相互に接触し得る部分に用紙Sを通過させた場合に生じ得る不具合、つまり用紙Sにメイン回転刃65による切断痕やメイン回転刃65の痕跡(通過痕)が付くという不具合を防止できる。
【0047】
縦切断部6による縦切断処理に引き続いて、本実施形態のプリンタPは、横切断部5によって横切断処理を行う。具体的には、縦切断処理を終えた用紙Sに対して、制御部の制御に従い、用紙Sの厚さ方向に対向配置した第1カッタ51と第2カッタ52を用紙幅方向に走査させることで、用紙Sを用紙幅方向に切断する。本実施形態のプリンタPは、制御部の制御に従って、横切断部5よる用紙Sの分割数や分割ピッチを変更することにより、用紙搬送方向に沿ったプリント画面の大きさを適宜調整することができる。
【0048】
最後に、本実施形態のプリンタPは、所定のサイズに切断した用紙Sを排出口31から排出して、排出トレイ32上に積み重ねた状態で収容する。
【0049】
このようなプリンタPは、ユーザによる操作に応じて印刷データが入力される毎に、各印刷データに応じてその都度上述の工程を経ることによって、印刷データに応じたプリント処理を施し、印刷データに基づくプリント画面サイズに切断した用紙Sを排出することができる。したがって、例えば、用紙Sを用紙幅方向3分割にする場合には、図9に示すように、特定サブシャフト64として、サブ回転刃63を2つ設けた第2サブシャフト64Bを選択し、この第2サブシャフト64Bを切替機構62によって用紙搬送路R上に位置付けて、これら2つのサブ回転刃63と、メインシャフト66のメイン回転刃65のうち第2サブシャフト64Bの各サブ回転刃63にそれぞれ対応するメイン回転刃65とによって用紙Sを用紙幅方向に3分割することができる。第2サブシャフト64Bを用いて用紙Sを縦切断する場合、第2サブシャフト64Bに設けた排出用ピンチローラ34が押圧部7の作用によってメインシャフト66の排出ローラ33に圧接する一方で、第1サブシャフト64Aの排出用ピンチローラ34及び第3サブシャフト64Cの排出用ピンチローラ34は、圧接状態解除部8の作用によってメインシャフト66の排出ローラ33に圧接していない。また、第2サブシャフト64Bにおける排出用ピンチローラ34の配置箇所を、第2サブシャフト64Bを特定サブシャフト64として用紙搬送路R上に位置付けた際にメインシャフト66に設けた全てのメイン回転刃65と接触し得ない位置に設定しているため、第2サブシャフト64Bを特定サブシャフト64として用紙搬送路R上に位置付けた場合に、メインシャフト66のメイン回転刃65のうち第2サブシャフト64Bのサブ回転刃63に対応するメイン回転刃65は勿論のこと、第1サブシャフト64Aのサブ回転刃63に対応するメイン回転刃65にも、第2サブシャフト64Bの排出用ピンチローラ34が干渉することはなく、用紙Sに刃痕は付き難い。
【0050】
また、本実施形態のプリンタPは、ユーザに入力された印刷データに基づき、特定分割パターンが用紙Sを用紙幅方向に分割することを要しない(分割数1)パターンであると制御部が判定した場合には、図10に示すように、特定サブシャフト64として、サブ回転刃63を設けていない第3サブシャフト64Cを選択し、この第3サブシャフト64Cを切替機構62によって用紙搬送路R上に位置付ける。この場合、第3サブシャフト64Cに設けた排出用ピンチローラ34が押圧部7の作用によってメインシャフト66の排出ローラ33に圧接する一方で、第1サブシャフト64Aの排出用ピンチローラ34及び第2サブシャフト64Bの排出用ピンチローラ34は、圧接状態解除部8の作用によってメインシャフト66の排出ローラ33に圧接していない。そして、第3サブシャフト64Cの排出用ピンチローラ34とメインシャフト66の排出ローラ33との間を通過する用紙Sを用紙搬送方向に切断することはなく、さらに排出口31側へ送り出すことができる。また、第3サブシャフト64Cにおける排出用ピンチローラ34の配置箇所を、第3サブシャフト64Cを特定サブシャフト64として用紙搬送路R上に位置付けた際にメインシャフト66に設けた全てのメイン回転刃65と接触し得ない位置に設定しているため、第3サブシャフト64Cを特定サブシャフト64として用紙搬送路R上に位置付けた場合に、メインシャフト66の各メイン回転刃65に第3サブシャフト64Cの排出用ピンチローラ34が干渉することはなく、用紙Sに刃痕が付く不具合を防止・抑制することができる。
【0051】
このように、本実施形態に係るプリンタPは、用紙搬送路Rに沿って用紙Sを用紙搬送方向に切断して用紙幅方向に分割可能な縦切断部6を備え、縦切断部6を、用紙幅方向の分割数がそれぞれ異なる複数の縦切断要素61と、これら複数の縦切断要素61のうち用紙搬送路R上に位置付ける縦切断要素61を切替可能な切替機構62とを用いて構成しているため、多様なサイズ要望にも柔軟に対応することができ、用紙幅方向の分割数を変更するに際して、例えば作業者などがプリンタP内部にアクセスして内部構成品の配置や構成を変更する煩雑な作業を行うことなく、切替機構62により用紙搬送路R上に位置付ける縦切断要素61を複数の縦切断要素61から選択して切り替えることによって、任意の分割数で用紙Sを用紙幅方向に切断することができる。
【0052】
特に、本実施形態に係る各縦切断要素61を、用紙幅方向の分割数に応じた数のサブ回転刃63を一体回転可能に設けたサブシャフト64と、サブ回転刃63との間で用紙Sを用紙S厚み方向に挟み得るメイン回転刃65を縦切断処理時にサブ回転刃63の一部と軸方向Xに重なり得る位置に設けたメインシャフト66とを用いて構成し、さらに、縦切断部6を、複数のサブシャフト64(第1サブシャフト64A、第2サブシャフト64B、第3サブシャフト64C)と、これら何れのサブシャフト64(第1サブシャフト64A、第2サブシャフト64B、第3サブシャフト64C)のサブ回転刃63にも対応する位置にそれぞれメイン回転刃65を設けた単一のメインシャフト66とを用いて構成しているため、各縦切断要素61のメインシャフト66を共用することができ、省スペース化及び部品点数の削減を図ることができる。
【0053】
さらに、本実施形態のプリンタPは、サブシャフト64(第1サブシャフト64A、第2サブシャフト64B、第3サブシャフト64C)に排出用ピンチローラ34を設けるとともに、メインシャフト66に排出ローラ33を設けているため、サブシャフト64(第1サブシャフト64A、第2サブシャフト64B、第3サブシャフト64C)やメインシャフト66とは別に、排出用ピンチローラ34や排出ローラ33を設けるための専用のシャフトを確保する必要がなく、限れたスペース内に用紙Sを用紙幅方向に分割する機構と用紙Sを排出口31に向かって搬送する機構とを効率良く組み込むことができる。
【0054】
また、本実施形態に係るプリンタPは、複数のサブシャフト64(第1サブシャフト64A、第2サブシャフト64B、第3サブシャフト64C)のうち切替機構62によって用紙搬送路R上に位置付けたサブシャフト64(特定サブシャフト64)をメインシャフト66側に押圧して、このサブシャフト64(特定サブシャフト64)に設けた排出用ピンチローラ34をメインシャフト66に設けた排出ローラ33に圧接させる押圧部7と、複数のサブシャフト64(第1サブシャフト64A、第2サブシャフト64B、第3サブシャフト64C)のうち用紙搬送路R上に位置付けられていないサブシャフト64をメインシャフト66から離間する方向に移動させて、この移動させたサブシャフト64(言い換えれば用紙搬送路R上に位置付けられているサブシャフト64以外のサブシャフト64)に設けた排出用ピンチローラ34と排出ローラ33との圧接状態を解除する圧接状態解除部8とを備えているため、用紙搬送路R上に位置付けたサブシャフト64の排出用ピンチローラ34が押圧部7によってメインシャフト66の排出ローラ33に圧接した状態で排出ローラ33に従動して回転することにより、この排出用ピンチローラ34と排出ローラ33との間を通過する用紙Sを排出口31に向かって適切且つスムーズに搬送することができるとともに、用紙搬送路R上に位置付けていないサブシャフト64の排出用ピンチローラ34を圧接状態解除部8によって排出ローラ33との圧接状態を解除させることにより、排出用ピンチローラ34が圧接することによって排出ローラ33に作用する負荷を必要最小限に抑えることができ、メインシャフト66のスムーズな回転動作に寄与し、排出ローラ33の不要な変形を防止・抑制して用紙Sを適切に搬送することができる。
【0055】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、サブシャフトに設けるサブ回転刃の数を3以上に設定することも可能であり、この場合メインシャフトに設けるメイン回転数の数も適宜変更することができる。また、縦切断要素の数も適宜増減することが可能である。
【0056】
上述した実施形態では、複数の縦切断要素による用紙幅方向の分割数のみが相互に異なるように、各サブシャフトに設けるサブ回転刃の数のみを異ならせた態様を例示したが、複数の縦切断要素による用紙幅方向の分割ピッチのみが相互に異なるように、各サブシャフトに設けるサブ回転刃の取付位置のみを相互に異ならせた態様を採用したり、或いは、複数の縦切断要素による用紙幅方向の分割数及び分割ピッチが何れも相互に異なるように、各サブシャフトに設けるサブ回転刃の数及びサブ回転刃の取付位置を異ならせた態様を採用することもできる。このような各態様を適宜選択することにより、本発明のプリンタは、複数の縦切断要素の組み合わせパターンとして、用紙幅方向の分割数のみがそれぞれ異なる第1パターン、分割ピッチのみがそれぞれ異なる第2パターン、用紙幅方向の分割数も分割ピッチも異なる第3パターンを適宜選択することが可能であり、実用性及び応用性に優れている。
【0057】
また、用紙Sが予め所定サイズに切断されたカット紙である場合には、用紙を用紙幅方向に切断可能な横切断部を備えていないプリンタであってもよい。なお、用紙がカット紙である場合でも横切断部を備えたプリンタを構成して、プリント処理、縦切断処理、及び横切断処理を行えるようにしても構わない。なお、横切断部を備えたプリンタにおいてカット紙を処理する場合に、横切断処理が不要であれば、横切断部を作動させずに(例えば上述の横切断部であれば第1カッタ及び第2カッタを用紙幅方向に走査させることなく)、排出ローラ及び排出用ピンチローラにより用紙を用紙搬送路に沿って排出口側に搬送すればよい。
【0058】
また、縦切断部として、用紙搬送路に沿って走査可能なカッタを備え、搬送経路上で停止している用紙に対してカッタを用紙搬送路に沿って走査させることによって用紙を用紙搬送方向に切断可能なものを適用することができる。
【0059】
さらには、縦切断部が、複数のサブシャフトと、サブシャフトと同数のメインシャフトとを備え、用紙幅方向の分割数や分割ピッチのパターンに応じて、相互に1対1の関係で対応付けられるサブシャフト及びメインシャフトの組み合わせから適宜のサブシャフト及びメインシャフトの組み合わせを選択して、その選択したサブシャフト及びメインシャフトを切替機構によって用紙搬送路上に位置付けるように構成することも可能である。
【0060】
また、サブシャフトやメインシャフトに、排出用ピンチローラや排出ローラを設けずに、サブシャフトやメインシャフトとは別に、排出用ピンチローラを設けたシャフトや、排出ローラを設けたシャフトを備えたプリンタであっても構わない。
【0061】
また、押圧部や圧接状態解除部の具体的な構成も上述した実施形態で示すものに限られず、適宜の機構や部材を用いて実現してもよい。
【0062】
また、本発明に係るプリンタは、インクを昇華させるタイプの熱転写型プリンタの他、インクを溶融させるタイプのサーマルプリンタや、或いはサーマルプリンタ以外の種々のプリンタ、例えばインクジェットプリンタやレーザプリンタ、或いは同じ印刷対象物に対して繰り返し書き換え可能なリライタブルプリンタ等であってもよい。また、両面印刷可能なプリンタに対しても本発明の技術的特徴である縦切断部を適用することができる。
【0063】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0064】
1…給紙部
2…印刷部
3…排出部
31…排出口
33…排出ローラ
34…排出用ピンチローラ
5…横切断部
6…縦切断部
61…縦切断要素
62…切替機構
63…サブ回転刃
64(64A、64B、64C)…サブシャフト(第1サブシャフト、第2サブシャフト、第3サブシャフト)
65…メイン回転刃
66…メインシャフト
7…押圧部
8…圧接状態解除部
P…プリンタ
R…用紙搬送路
S…用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙を収容し得る給紙部と、前記給紙部から用紙搬送路に沿って供給された前記用紙にプリント処理を行う印刷部と、排出口を有する排出部とを備えたプリンタであって、
前記用紙搬送路に沿って前記用紙を当該用紙の搬送方向に切断して用紙幅方向に分割可能な縦切断部を備え、
前記縦切断部が、用紙幅方向の分割数、分割ピッチ、又は前記分割数及び分割ピッチがそれぞれ異なる複数の縦切断要素と、これら複数の縦切断要素のうち前記用紙搬送路上に位置付ける縦切断要素を切替可能な切替機構とを備えていることを特徴とするプリンタ。
【請求項2】
前記各縦切断要素が、それぞれ用紙幅方向の分割数に応じた数のサブ回転刃を一体回転可能に設けたサブシャフトと、前記サブ回転刃との間で前記用紙を用紙厚み方向に挟み得るメイン回転刃を縦切断処理時に前記サブ回転刃の一部と軸方向に重なり得る位置に設けたメインシャフトとを備えたものである請求項1に記載のプリンタ。
【請求項3】
前記縦切断部が、複数の前記サブシャフトと、これら何れのサブシャフトの前記サブ回転刃にも対応する位置にそれぞれ前記メイン回転刃を設けた単一の前記メインシャフトとを備え、前記各縦切断要素の前記メインシャフトを共用している請求項2に記載のプリンタ。
【請求項4】
前記排出部が、前記用紙を前記用紙搬送路に沿って前記排出口側に搬送する排出ローラと、前記排出ローラとの間で前記用紙を用紙厚み方向に挟んだ状態で前記排出ローラに従動する排出用ピンチローラとを備え、
前記サブシャフトに前記排出用ピンチローラを設けるとともに、前記メインシャフトに前記排出ローラを設け、
さらに、
複数の前記サブシャフトのうち前記用紙搬送路上に位置付けたサブシャフトを前記メインシャフト側に押圧して、当該サブシャフトに設けた前記排出用ピンチローラを前記メインシャフトに設けた前記排出ローラに圧接させる押圧部と、
複数の前記サブシャフトのうち前記用紙搬送路上に位置付けられていないサブシャフトを前記メインシャフトから離間する方向に移動させて、この移動させたサブシャフトに設けた前記排出用ピンチローラと前記排出ローラとの圧接状態を解除する圧接状態解除部とを備えている請求項2又は3に記載のプリンタ。
【請求項5】
前記給紙部がロール状に巻回した前記用紙を収容し得るものであり、
前記縦切断部よりも前記印刷部側に配置され且つ前記用紙を用紙幅方向に切断可能な横切断部をさらに備えている請求項1乃至4の何れかに記載のプリンタ。
【請求項6】
前記横切断部よって前記用紙を用紙搬送方向に分割する数又は分割する間隔を変更可能に構成している請求項5に記載のプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−14120(P2013−14120A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−150369(P2011−150369)
【出願日】平成23年7月6日(2011.7.6)
【出願人】(000002059)シンフォニアテクノロジー株式会社 (1,111)
【Fターム(参考)】