説明

プリント基板の検査装置およびその検査方法

【課題】プリント基板の検査の開始に先立って、良品のプリント基板の撮像や基準データの登録を不要とし、1枚目から検査することができるプリント基板の検査装置
【解決手段】この発明は、検査対象であるプリント基板を撮像したプリント基板のカラー画像を取得する画像取得手段と、当該取得したプリント基板のカラー画像を色の差異に応じて複数の領域に分割する領域分割手段と、当該分割された各領域内の色の特異な部分を特定する色検査手段と、その分割された各領域の輪郭を抽出する輪郭抽出手段と、当該抽出された各輪郭に基づいて各領域の形状の異常の有無を検査する形状検査手段と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント基板の表面の良否を検査するプリント基板の検査装置およびその検査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のプリント基板の検査装置としては、検査対象であるプリント基板の表面の画像をCCDカメラなどの撮像手段で撮像し、この撮像により検査画像データを得る。次に、例えば、その検査画像データの各画素値と、予め用意してある基準画像データの各画素値との差を求め、その差が許容範囲内にあるか否かの判定を行う。さらに、その判定結果に基づき、検査対象であるプリント基板の良否を判別するようにしている。
【0003】
このため、プリント基板の検査装置では、プリント基板の検査に際しては、その検査に先立って、基準画像データを予め用意するとともに、その許容範囲を予め決めておく必要がある。そこで、従来は、上記の基準画像データを得るために、良品のプリント基板を撮像して得た画像データを多数用意する必要があるので、基準画像データを得るために長時間かかるという不都合があった。
【0004】
このような不具合を解消するために、プリント基板の検査の開始に先立って用意する基準画像データなどの作成時間を短縮できるようにした、プリント基板の検査装置が知られている(例えば引用文献1参照)。
しかし、この引用文献1の検査装置でも、プリント基板の検査の開始に先立って、良品のプリント基板を撮像して画像データを取得する必要がある上に、基準画像データを予め登録して置く必要がある。
【0005】
一方、近年において、試作用のプリント基板の検査の要望があるが、この場合には検査対象となるプリント基板が数枚から10枚程度のため、従来装置では検査することができないという不都合がある。
このような背景の下では、プリント基板の検査の開始に先立って、良品のプリント基板の撮像や基準データの登録を不要とし、1枚目のプリント基板から検査することができる新たな装置や方法の出現が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−156448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の目的は、プリント基板の検査の開始に先立って、良品のプリント基板の撮像や基準データの登録を不要とし、1枚目から検査することができるプリント基板の検査装置およびその検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決し、本発明の上記の目的を達成するために、各発明は、以下のように構成した。
すなわち、第1の発明は、検査対象であるプリント基板を撮像したプリント基板のカラー画像を取得する画像取得手段と、当該取得したプリント基板のカラー画像を色の差異に応じて複数の領域に分割する領域分割手段と、当該分割された各領域内の色の特異な部分を特定する色検査手段と、前記分割された各領域の輪郭を抽出する輪郭抽出手段と、当該抽出された各輪郭に基づいて各領域の形状の異常の有無を検査する形状検査手段と、を備えている。
【0009】
第2の発明は、第1の発明において、一のプリント基板のカラー画像について前記領域分割手段で分割された各領域の形状を特定するデータを、他のプリント基板のカラー画像について前記領域分割手段で分割された各領域の形状を特定するデータと比較して、各領域の形状の良否を検査する領域比較検査手段を、さらに備えている。
第3の発明は、第2の発明において、前記色検査手段が検査した各領域の検査結果、前記形状検査手段が検査した各領域の検査結果、および前記領域比較検査手段が検査した各領域の検査結果に基づき、前記一のプリント基板のカラー画像について前記領域分割手段で分割された各領域のうちの一部の領域について、前記他のプリント基板のカラー画像について前記領域分割手段で分割された各領域のうちの一部の領域の形状を特定するデータと入れ替えるデータ更新手段を、さらに備えている。
【0010】
第4の発明は、第1〜第3の発明において、前記画像取得手段で取得したカラー画像、前記色検査手段が検査した各領域の検査結果、および前記形状検査手段が検査した各領域の検査結果に基づき、検出必要情報および検出不要情報のうちのいずれか一方を設定する設定手段と、前記検出必要情報が設定されている場合には、前記色検査手段が検査した検査結果および前記形状検査手段が検査した検査結果について、その設定されている検出必要情報に基づいて検出必要部分を不具合な部分として処理する第1処理手段と、前記検出不要情報が設定されている場合には、前記色検査手段が検査した検査結果および前記形状検査手段が検査した検査結果について、その設定されている検出不要情報に基づいて検出不要部分を不具合でない部分として処理する第2処理手段と、をさらに備えている。
【0011】
第5の発明は、第1〜第4の発明において、前記領域分割手段は、前記取得したプリント基板のカラー画像の分割すべき複数の領域についてそれぞれ設定されている、その各領域を代表する代表色を取得する代表色取得手段と、前記プリント基板のカラー画像の各画素の色に基づき、前記代表色取得手段で取得した複数の領域の代表色をそれぞれ参照し、その複数の代表色のうちのいずれか1つに前記各画素の色を変更し、領域の分割を行なう第1の分割手段と、前記第1の分割手段で分割された領域のうち、所定の領域についてはその領域の色の明度の差異に応じて再分割する第2の分割手段と、を備えている。
【0012】
第6の発明は、検査対象であるプリント基板を撮像したプリント基板のカラー画像を取得する第1の工程と、前記第1の工程で取得したプリント基板のカラー画像を色の差異に応じて複数の領域に分割する第2の工程と、前記第2の工程で分割された各領域内の色の特異な部分を特定する第3の工程と、前記第2の工程で分割された各領域の輪郭を抽出する第4の工程と、前記第4の工程で抽出された各輪郭に基づいて各領域の形状の異常の有無を検査する第5の工程と、を備える。
【0013】
第7の発明は、同一の複数のプリント基板を検査するプリント基板の検査方法であって、検査対象であるプリント基板を撮像したプリント基板のカラー画像を取得する第1の工程と、前記第1の工程で取得したプリント基板のカラー画像を色の差異に応じて複数の領域に分割する第2の工程と、前記第2の工程で分割された各領域内の色の特異な部分を特定する第3の工程と、前記第2の工程で分割された各領域の輪郭を抽出する第4の工程と、前記第4の工程で抽出された各輪郭に基づいて各領域の形状の異常の有無を検査する第5の工程と、を備え、一のプリント基板を検査する場合には、前記第1〜第5の工程までの各処理を行うようにし、他のプリント基板を検査する場合には、前記第1〜第5の工程までの各処理の他に第6の工程の処理を含み、前記第6の工程では、前記一のプリント基板のカラー画像について前記第2の工程で分割された各領域の形状を特定するデータを、前記他のプリント基板のカラー画像について前記第2の工程で分割された各領域の形状を特定するデータと比較して、各領域の形状の良否を検査する。
【0014】
第8の発明は、第7の発明において、前記他のプリント基板を検査する場合には、前記第1〜第6の工程までの各処理の他に第7の工程の処理を含み、前記第7の工程では、前記第3の工程で検査した各領域の検査結果、前記第5の工程で検査した各領域の検査結果、および前記第6の工程で検査した各領域の検査結果に基づき、前記一のプリント基板のカラー画像について前記第2の工程で分割された各領域のうちの一部の領域について、前記他のプリント基板のカラー画像について前記第2の工程で分割された各領域のうちの一部の領域の形状を特定するデータと入れ替える。
【0015】
第9の発明は、第8の発明において、前記他のプリント基板を検査する場合には、前記第1〜第7の工程までの各処理の他に、前記6の工程と第7の工程との間に第8の工程の処理を含むようにし、前記第8の工程は、前記第3の工程で取得したカラー画像、前記第5の工程で検査した各領域の検査結果、および前記第6の工程で検査した各領域の検査結果に基づき、検出必要情報および検出不要情報のうちのいずれか一方が設定されているか否かを判定する判定工程と、前記検出必要情報が設定されていると判定された場合には、前記第5の工程で検査した検査結果および前記第6の工程で検査した検査結果について、その設定されている検出必要情報に基づいて検出必要部分を不具合な部分として処理する第1処理工程と、前記検出不要情報が設定されていると判定された場合には、前記第5の工程で検査した検査結果および前記第6の工程で検査した検査結果について、その設定されている検出不要情報に基づいて検出不要部分を不具合でない部分として処理する第2処理工程と、からなる。
【0016】
第10の発明は、第6〜第9の発明において、前記第2の工程は、前記第1の工程で取得したプリント基板のカラー画像の分割すべき複数の領域についてそれぞれ設定されている、その各領域を代表する代表色を取得する代表色取得工程と、前記プリント基板のカラー画像の各画素の色に基づき、前記代表色取得工程で取得した複数の領域の代表色をそれぞれ参照し、その複数の代表色のうちのいずれか1つに前記各画素の色を変更し、領域の分割を行なう第1の分割工程と、前記第1の分割工程で分割された領域のうち、所定の領域についてはその領域の色の明度の差異に応じて再分割する第2の分割工程と、からなる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、プリント基板を検査する場合に、その検査の開始に先立って、良品のプリント基板の撮像や基準データの登録が不要となり、かつ、1枚目から検査することができる。
また、本発明によれば、プリント基板の検査枚数の増加に伴って、その検査精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明装置の実施形態の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の検査に適用されるプリント基板の一例を示す平面図である。
【図3】本発明の実施形態において、1枚目のプリント基板の検査の手順を示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施形態において、2枚目からのプリント基板の検査の手順を示すフローチャートである。
【図5】色別に複数の領域に分割するための具体的な手順の一例を示すフローチャートである。
【図6】輪郭による各領域の形状の検査の具体的な手順の一例を示すフローチャートである。
【図7】その手順などを説明するための説明図である。
【図8】各領域内の特異な部分の色検査の具体的な手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
(検査装置の説明)
本発明のプリント基板の検査装置の実施形態の構成について、図1を参照しながら説明する。
この実施形態は、図1に示すように、撮像装置1と、画像処理装置2と、画像メモリ3と、記憶装置4と、入力装置5と、表示装置6と、を少なくとも備えている。
【0020】
撮像装置1は、図2に示すようなプリント基板の外観をCCDカメラなどの撮像素子で撮像してR信号、G信号およびB信号からなるカラー画像信号を取得し、そのカラー画像信号をA/D変換器(図示せず)でA/D変換してデジタル形態の画像データを生成して出力するものである。そのRGBの各カラー画像データは、例えば8ビット(0〜255)の濃淡値からなる。
【0021】
画像処理装置2は、記憶装置4に格納される後述のような画像処理やプリント基板の検査の手順(プログラム)に基づき、後述のような各種の比較や演算などの処理を行うものである。このために、この画像処理装置2は、CPU(中央処理装置)、ワークメモリなどから構成されている。
画像メモリ3は、撮像装置1が撮像したプリント基板のカラー画像のR、G、Bデータ、およびそのカラー画像のR、G、Bの各データを変換したH、S、Vの各データなどを一時的に記憶する。
【0022】
記憶装置4は、ハードディスク、フレキシブルディスク、または光ディスクからなり、画像処理装置2が行なう画像処理やプリント基板の検査の手順(プログラム)を記憶するとともに、後述のように画像データなどを大量に記憶する。
入力装置5は、画像処理装置2からの要求などに応じて画像処理装置2に対して後述のような指示や設定などを行うものであり、例えばキーボードなどから構成される。
表示装置6は、画像処理装置2がその画像処理中やプリント基板の検査中に所定の表示を行うものであり、CRTディスプレイや液晶ディスプレイなどにより構成される。
【0023】
(プリント基板の説明)
図2は、本発明の実施形態で検査対象となるプリント基板8の一例を模式的に示した平面図である。
このプリント基板8は、絶縁基板80を有し、絶縁基板80上にレジストが塗布された第1のレジスト領域801と、絶縁基板80上に形成された銅配線パターン上にレジストが塗布された第2のレジスト領域802と、絶縁基板80上にレジストが塗布された上に白色などで印刷された印刷領域803と、金メッキが施されたパッド領域804と、絶縁基板80が露出している基板領域805と、スルーホール806と、取り付け孔807と、を含んでいる。
【0024】
(1枚目のプリント基板の検査の説明)
次に、本発明の実施形態において、1枚目のプリント基板8を検査するときの手順について、図3を参照して説明する。
ステップS1では、検査対象であるプリント基板8を撮像装置1で撮像し、その撮像して得たカラー画像を取得し、この取得したカラー画像のデータを画像メモリ3に記憶する。このとき得られるカラー画像のデータは、R画像、G画像、およびB画像の各データであり、これらの各データを画像メモリ3に記憶する。
【0025】
ステップS2では、その取得したプリント基板8のカラー画像を色の差異に応じて複数の領域に分割する。この色別の領域分割は、ステップS1で取得したプリント基板のカラー画像の各画素の色に基づき、設定されている複数の各領域の代表色をそれぞれ参照し、その複数の代表色のうちのいずれか1つの各画素の色に変更することにより行なう。
ここで、色別の領域分割のときには、設定されている複数の各領域の代表色をそれぞれ参照することになるが、その複数の各領域の代表色の設定は以下のように行なう。
【0026】
例えばステップS1で得られたプリント基板8のカラー画像を表示装置6の表示画面に表示し、検査者が、入力装置5を使用してその表示されるカラー画像を見ながら分割したい領域をそれぞれ特定し、この特定した各領域内において任意の点の色を指定すると、その指定した任意の点の色が代表色として設定される。
なお、色別の領域分割の処理の具体例は図5に示し、その説明は後述する。
ステップS3では、その分割された各領域内の色の特異な部分を特定する色検査を行なう。この色検査は、ステップS1で取得されたカラー画像を使用して、ステップS2で分割された各領域内について、色の特異(異常)な部分を抽出し、この抽出された部分が所定の大きさの場合にその抽出された画素を不具合な画素とする。この色検査の処理の具体例は図8に示し、その説明は後述する。
【0027】
ステップS4では、その分割された各領域の輪郭を抽出する。ステップS5では、その抽出された各輪郭に基づいて、各領域の形状の異常の有無を検査する。この各領域の形状の異常の有無は、分割された各領域の輪郭画素をトレースしながらその各輪郭画素の方向を求め、この求めた各輪郭画素の方向に基づいて各領域の突起や異形部分に係る輪郭画素を不具合な画素とする。この処理の具体例は図6に示し、その説明は後述する。
【0028】
ステップS6では、ステップS3およびステップS5で得られた不具合な画素について、表示装置6の表示画面上に出力する。これにより、検査者は、色別に分割された各領域ごとに、領域の輪郭の突起や異形に係る部分の不具合な輪郭画素、および領域内の欠陥部分に係る不具合な検出画素を認識できる。
ステップS7では、分割された各領域に基づいて、比較検査用の各領域の形状を特定するデータを作成し、この作成したデータを画像メモリ3および記憶装置4に記憶(保存)する。
以上述べた手順によれば、その検査の開始に先立って、良品のプリント基板の撮像や基準データの登録が不要となり、かつ、1枚目から検査することができる。
【0029】
(2枚目以後のプリント基板の検査の説明)
次に、本発明の実施形態が同一の複数枚のプリント基板8について検査する場合、すなわち、2枚目以後のプリント基板8を検査するときの手順について、図4を参照して説明する。
この検査手順は、図4に示すように、1枚目の検査手順に新たな手順(ステップS101〜ステップS111)が追加されているので、以下ではこの追加された手順について主に説明する。
2枚目以後のプリント基板8の検査では、ステップS1〜ステップS5において、1枚目と同様の処理を行なうので、その説明は省略する。
【0030】
ステップS101では、ステップS2で分割された各領域の形状を特定するデータと、1枚目のプリント基板8の検査により画像メモリ3または記憶装置4に記憶されている比較検査用の各領域の形状を特定するデータとの比較検査をする。この比較検査では、ステップS2で分割された各領域と画像メモリ3または記憶装置4に記憶されている比較検査用の各領域との位置合わせを行い、これに基づいて各領域の形状の差異を比較する検査を行なう。
【0031】
ステップS102では、ステップS110で検出必要情報の設定があったか否かが判定され、その設定がある場合には次のステップS103に進み、その設定がない場合にはステップSS104に進む。
ステップS103では、ステップS3およびステップS5において不具合な画素として検出されているか否かにかかわらず、後述のステップS110で設定されている検出必要情報に基づいて、後述の検出必要部分の画素を検出(抽出)して不具合な画素とする。この結果、その検出必要部分の画素は、後述のステップS106において不具合の画素として出力されることになる。
【0032】
ステップS104では、ステップS111で検出不要情報の設定があったか否かが判定され、その設定がある場合には次のステップS105に進み、その設定がない場合にはステップSS106に進む。
ステップS105では、ステップS3およびステップS5によって不具合な画素として検出されているか否かにかかわらず、後述のステップS110で設定されている検出不要情報に基づいて、後述の検出不要部分の画素を検出(抽出)して不具合でない画素とする。この結果、その検出不要部分の画素は、次のステップS106において不具合の画素として出力されることはない。
【0033】
ステップS106では、ステップS3およびステップS5において検出された不具合な画素、およびステップS103処理で得られた不具合な画素について、表示装置6の表示画面上に表示する。また、表示装置6の表示画面に、その不具合な検出画素の表示に加えて、ステップS101で得られた各領域の比較検査結果を表示する。
ステップS107では、この表示に基づいて、検査者は、入力装置5を使用することにより、各領域について、画像メモリ3と記憶装置4に記憶されている比較検査用のデータを今回の比較検査用のデータと更新するか否を選択する。
【0034】
ステップS108では、ステップS107において今回の比較検査用のデータと更新することが選択されているか否を判定し、更新が選択されている場合にはステップS109に進み、更新が選択されていない場合にはステップS110に進む。
ステップS109では、今回選択した領域についてのみ、その領域の形状を特定する比較検査用の今回をデータを、画像メモリ3と記憶装置4に記憶されている比較検査用のデータと入れ替えて更新する。
【0035】
ステップS110では、表示装置6の表示画面上に表示される、ステップS1で得られたカラー画像とステップS106で表示した不具合な検出画素とを見ながら、検査者が検出必要情報の設定を入力装置5で行なう。これにより、設定した検出必要情報は画像メモリ3と記憶装置4に記憶される。
すなわち、検査者は、カラー画像上で不良と認識されて不具合な画素として検出されるべきであるが、不具合な画素として検出表示されていない同種の部分を見つけた場合に、その同種の部分について検出が必要な部分とみなして処理できるように、その同種の部分(検出必要部分)を検出(抽出)して不具合であるとして処理するための検出必要情報を設定する。
【0036】
ステップS111では、表示装置6の表示画面上に表示される、ステップS1で得られたカラー画像とステップS106で表示した不具合な検出画素とを見ながら、検査者が検出不要情報の設定を入力装置5で行なう。これにより、設定した検出不要情報が画像メモリ3と記憶装置4に記憶される。
すなわち、検査者は、カラー画像上で不良ではないと認識されて不具合な画素として検出されるべきではないが、不具合な画素として検出表示されてしまう同種の部分を見つけた場合に、その同種の部分について検出が不要な部分とみなして処理できるように、その同種の部分(検出不要部分)を検出(抽出)して不具合でないとして処理するための検出不要情報を設定する。
以上述べた手順によれば、プリント基板8の検査枚数の増加に伴って、その検査精度を向上させることができる。また、検査対象となるプリント基板が数枚から10程度であっても精度の良い検査が可能となる。
【0037】
(色別の領域分割の説明)
次に、図3のステップS2で説明した色別の領域分割の具体的な手順について、図5を参照して説明する。
ステップS21では、検査対象であるプリント基板8のカラー画像を画像メモリ3から入力する。この入力したカラー画像のデータはRGB成分からなる。
ステップS22では、そのRGB成分の画像データをHSV成分の画像データに変換し、この変換したHSV成分の画像データを画像メモリ3に記憶する。
ステップS23では、表示装置6の表示画面上に表示するされるカラー画像から分割したい複数の各領域について、設定されている領域の色を代表する代表色のHSV成分の各値を取得する。
【0038】
すなわち、ステップS23では、検査者が、その表示されるプリント基板8のカラー画像を見ながら入力装置5で分割したい領域をそれぞれ特定し、この特定した各領域内において任意の画素を指定すると、その指定した画素のHSV成分の各値が領域の代表色のHSV成分の各値となる。そして、その設定された分割したい各領域の代表色のHSV成分の各値を取得する。
【0039】
次に、分割したい各領域の代表色のHSV成分の各値の設定について、図2を参照して具体的に説明する。
例えば、プリント基板8の絶縁基板80上にレジストが塗布された第1のレジスト領域801を分割したい場合には、第1のレジスト領域801内の任意の画素の色を使用者が指定すると、その指定した画素のHSV成分の各値が第1のレジスト領域801の代表色のHSV成分の各値となる。
【0040】
ここで、プリント基板8の絶縁基板80上にレジストが塗布された第1のレジスト領域801と、プリント基板8の絶縁基板80上に形成された銅配線パターン上にレジストが塗布された第2のレジスト領域802とは、その色の差異が微妙である。このため、この例では、第1のレジスト領域801と第2のレジスト領域802とは、いったん、レジスト領域として一括して分割するために、例えば第1のレジスト領域801の代表色を設定すると、第2のレジスト領域802についてもその同じ代表色が設定されるようになっている。この一括して分割されるレジスト領域は、後述のように第1のレジスト領域801と第2のレジスト領域802に再び分割されることになる。
【0041】
このような分割したい各領域の代表色の設定方法は、絶縁基板80上に塗布されるレジストの上に白色などで印刷された印刷領域803、金メッキが施されたパッド領域804、絶縁基板80が露出している基板領域805などにおいても同様である。
ステップS24では、プリント基板8のカラー画像の各画素のHSV成分の各値と、ステップS23で取得した複数の各領域の代表色のHSV成分の各値との近似度を調べ、各画素のHSV成分の各値を近似するHSV成分の各値に変更する。この処理が終了すると、例えば、図2の第1のレジスト領域801および第2のレジスト領域802の部分に相当する部分、印刷領域803の部分に相当する部分、パッド領域804の部分に相当する部分などは、それぞれ設定した代表色に変更される。
【0042】
この例では、第1のレジスト領域801および第2のレジスト領域802は、いったんレジスト領域として分割されるので、レジスト領域として一括して分割された領域を第1のレジスト領域801と第2のレジスト領域802に分割する必要がある。
そこで、ステップS25では、一括してレジスト領域として分割された領域内について、各画素のHSV成分のうちのV成分の値の大きさの差異に基づいて、第1のレジスト領域801と第2のレジスト領域802に再分割する。
【0043】
ステップS26では、その再分割された画像のノイズの除去を行なう。
ステップS27では、カラー画像の各画素について、RGB成分のうちのG成分の値の大きさに基づいてカラー画像上の穴の領域を抽出し、この抽出した穴の領域の膨張処理を行なう。
ステップS28では、そのカラー画像上の背景領域を設定画素数分だけ膨張させて、非検査領域として設定する。ステップS28では、分割された領域の画像を表示装置6の表示画面上に表示出力する。
【0044】
(輪郭による各領域の形状の検査)
次に、図3のステップS5で説明した輪郭による各領域の形状の検査の具体的な手順について、図6および図7を参照して説明する。
ステップS31では、分割された領域の画像を入力する。ステップS32では、その入力された分割された領域の輪郭部分の輪郭画素をトレース(追跡)していき、この際に各輪郭画素の方向を調べる。
この輪郭画素の方向は、図7(A)に示すように、注目画素が次の輪郭画素をトレースするときに移動する方向である。この輪郭画素の方向は、図7(A)に示すように8つの方向で定義され、「北方向」、「北東方向」、「東方向」、「南東方向」、「南方向」、「南西方向」、「西方向」、および「北西方向」からなる。
【0045】
具体的には、この輪郭画素の方向は、画像の基準位置である左上から検索を開始し、分割された領域の輪郭画素を見つけると、その輪郭画素上を時計方向回りにトレースしていく。そして、このトレース時に、輪郭画素の方向を決定するために優先順位があり、輪郭画素の方向は、「東方向」、「南方向」、「西方向」、「北方向」、「南東方向」、「南西方向」、「北西方向」、および「北東方向」という順で決定されていく。
【0046】
図7(B)〜図7(E)は、10個の輪郭画素について、各輪郭画素の方向を調べた例を示す。
ステップS33では、その方向を調べた輪郭画素について、例えば10個を一単位として、輪郭画素の方向の総数と、その方向ごとの輪郭画素の総個数とを算出する。
図7(B)の例は、10個の輪郭画素の全てが「東方向」を示している場合である。この場合には、輪郭画素の方向は全て「東方向」で同じであるので、その方向の総数は「1」である。また、その方向のごとの輪郭画素の総個数は、「東方向」の「10」のみである。
【0047】
図7(C)の例は、10個の輪郭画素のうち「北方向」を示す輪郭画素の総個数が「4」であり、残りの輪郭画素が「東方向」を示しその総個数が「6」である。このため、方向の総数は、「北方向」と「東方向」の「2」である。また、方向ごとの輪郭画素の総個数は、「北方向」が「4」、「東方向」が「6」である。
図7(D)の例では、同様に、方向の総数は「東方向」、「南東方向」、および「北東方向」の「3」である。また、方向ごとの輪郭画素の総個数は、「東方向」が「8」、「南東方向」が「1」、および「北東方向」が「1」である。
【0048】
図7(E)の例では、方向の総数は「東方向」、「南方向」、および「北方向」の「3」である。また、方向ごとの輪郭画素の総個数は、「東方向」が「4」、「南方向」が「3」、および「北方向」が「3」である。
ステップS34では、その算出した方向の総数が3以上であり、かつ、算出した方向ごとの輪郭画素の総個数の中で、最も少ない総個数が設定値以上か否かを判定し、設定値以上の場合には、その最も少ない総個数に含まれる輪郭画素の近傍の輪郭画素を不具合な画素として検出する。ステップS35では、その不具合な画素を表示装置6の表示画面上に出力する。
【0049】
ここで、上記の設定値が「1」である場合について、図7(B)〜(E)の場合に不具合な画素が検出されるが否かについて説明する。
図7(B)の例は、方向の総数が「1」であり、方向のごとの輪郭画素の総個数が「10」のみである。また、図7(C)の例は、方向の総数が「2」であり、方向ごとの輪郭画素の総個数が「4」と「6」である。このため、図7(B)(C)の例によれば、不具合な画素が検出されて出力されることはない。
【0050】
一方、図7(D)の例は、方向の総数が「3」であり、方向ごとの輪郭画素の総個数は、「8」、「1」、および「1」である。また、図7(E)の例は、方向の総数は「3」であり、方向ごとの輪郭画素の総個数は「4」、「3」、および「3」である。このため、図7(B)(C)の例によれば、不具合な画素が検出されて出力されることになる。
【0051】
(各領域内の特異な部分の色検査の説明)
次に、図3のステップS3で説明した各領域内の特異な部分の色検査の具体的な手順について、図8を参照して説明する。
ステップS41では、検査対象のカラー画像および領域分割後のカラー画像を入力する。ステップS42では、その検査対象のカラー画像について減色処理をする。この減色処理は、例えば、減色前のカラー画像のRGBの各データが8ビットの場合に、そのRGBの8ビットの各データを3ビットの各データに変換するものである。
【0052】
ステップS43では、分割された領域ごとに、減色処理後の検査対象のカラー画像の色分布を調べる。ステップS44では、その調べた色分布に基づいて、所定の範囲外に属する色の画素を色が特異な画素として抽出する。
ステップS45では、抽出された画素の周囲の8近傍の画素のつながりを検出し、検出されたつながりが設定値以上のときには、その設定値以上の塊を不具合な画素として検出する。ステップS46では、その検出した不具合な画素を表示装置6の表示画面上に表示出力する。
【0053】
(その他の実施形態)
(1)図5のステップS25では、一括してレジスト領域として分割された領域内について、各画素のHSV成分のうちのV成分の値の大きさの差異に基づいて、第1のレジスト領域801と第2のレジスト領域802に再分割する処理を行なうようにした。
しかし、この処理の差異に、各画素のHSV成分のうちのV成分の値では、RGB成分のうちの一つの成分の値の差異に基づいて行なうようにしても良い。
【符号の説明】
【0054】
1 撮像装置
2 画像処理装置
3 画像メモリ
4 記憶装置
5 入力装置
6 表示装置
8 プリント基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象であるプリント基板を撮像したプリント基板のカラー画像を取得する画像取得手段と、
当該取得したプリント基板のカラー画像を色の差異に応じて複数の領域に分割する領域分割手段と、
当該分割された各領域内の色の特異な部分を特定する色検査手段と、
前記分割された各領域の輪郭を抽出する輪郭抽出手段と、
当該抽出された各輪郭に基づいて各領域の形状の異常の有無を検査する形状検査手段と、
を備えることを特徴とするプリント基板の検査装置。
【請求項2】
一のプリント基板のカラー画像について前記領域分割手段で分割された各領域の形状を特定するデータを、他のプリント基板のカラー画像について前記領域分割手段で分割された各領域の形状を特定するデータと比較して、各領域の形状の良否を検査する領域比較検査手段を、
さらに備えることを特徴とする請求項1に記載のプリント基板の検査装置。
【請求項3】
前記色検査手段が検査した各領域の検査結果、前記形状検査手段が検査した各領域の検査結果、および前記領域比較検査手段が検査した各領域の検査結果に基づき、前記一のプリント基板のカラー画像について前記領域分割手段で分割された各領域のうちの一部の領域について、前記他のプリント基板のカラー画像について前記領域分割手段で分割された各領域のうちの一部の領域の形状を特定するデータと入れ替えるデータ更新手段を、
さらに備えることを特徴とする請求項2に記載のプリント基板の検査装置。
【請求項4】
前記画像取得手段で取得したカラー画像、前記色検査手段が検査した各領域の検査結果、および前記形状検査手段が検査した各領域の検査結果に基づき、検出必要情報および検出不要情報のうちのいずれか一方を設定する設定手段と、
前記検出必要情報が設定されている場合には、前記色検査手段が検査した検査結果および前記形状検査手段が検査した検査結果について、その設定されている検出必要情報に基づいて検出必要部分を不具合な部分として処理する第1処理手段と、
前記検出不要情報が設定されている場合には、前記色検査手段が検査した検査結果および前記形状検査手段が検査した検査結果について、その設定されている検出不要情報に基づいて検出不要部分を不具合でない部分として処理する第2処理手段と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至請求項3のうちのいずれか1項に記載のプリント基板の検査装置。
【請求項5】
前記領域分割手段は、
前記取得したプリント基板のカラー画像の分割すべき複数の領域についてそれぞれ設定されている、その各領域を代表する代表色を取得する代表色取得手段と、
前記プリント基板のカラー画像の各画素の色に基づき、前記代表色取得手段で取得した複数の領域の代表色をそれぞれ参照し、その複数の代表色のうちのいずれか1つに前記各画素の色を変更し、領域の分割を行なう第1の分割手段と、
前記第1の分割手段で分割された領域のうち、所定の領域についてはその領域の色の明度の差異に応じて再分割する第2の分割手段と、
を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項4のうちのいずれか1項に記載のプリント基板の検査装置。
【請求項6】
検査対象であるプリント基板を撮像したプリント基板のカラー画像を取得する第1の工程と、
前記第1の工程で取得したプリント基板のカラー画像を色の差異に応じて複数の領域に分割する第2の工程と、
前記第2の工程で分割された各領域内の色の特異な部分を特定する第3の工程と、
前記第2の工程で分割された各領域の輪郭を抽出する第4の工程と、
前記第4の工程で抽出された各輪郭に基づいて各領域の形状の異常の有無を検査する第5の工程と、
を備えることを特徴とするプリント基板の検査方法。
【請求項7】
同一の複数のプリント基板を検査するプリント基板の検査方法であって、
検査対象であるプリント基板を撮像したプリント基板のカラー画像を取得する第1の工程と、
前記第1の工程で取得したプリント基板のカラー画像を色の差異に応じて複数の領域に分割する第2の工程と、
前記第2の工程で分割された各領域内の色の特異な部分を特定する第3の工程と、
前記第2の工程で分割された各領域の輪郭を抽出する第4の工程と、
前記第4の工程で抽出された各輪郭に基づいて各領域の形状の異常の有無を検査する第5の工程と、を備え、
一のプリント基板を検査する場合には、前記第1〜第5の工程までの各処理を行うようにし、
他のプリント基板を検査する場合には、前記第1〜第5の工程までの各処理の他に第6の工程の処理を含み、
前記第6の工程では、
前記一のプリント基板のカラー画像について前記第2の工程で分割された各領域の形状を特定するデータを、前記他のプリント基板のカラー画像について前記第2の工程で分割された各領域の形状を特定するデータと比較して、各領域の形状の良否を検査することを特徴とするプリント基板の検査方法。
【請求項8】
前記他のプリント基板を検査する場合には、前記第1〜第6の工程までの各処理の他に第7の工程の処理を含み、
前記第7の工程では、
前記第3の工程で検査した各領域の検査結果、前記第5の工程で検査した各領域の検査結果、および前記第6の工程で検査した各領域の検査結果に基づき、前記一のプリント基板のカラー画像について前記第2の工程で分割された各領域のうちの一部の領域について、前記他のプリント基板のカラー画像について前記第2の工程で分割された各領域のうちの一部の領域の形状を特定するデータと入れ替えることを特徴とする請求項7に記載のプリント基板の検査方法。
【請求項9】
前記他のプリント基板を検査する場合には、前記第1〜第7の工程までの各処理の他に、前記6の工程と第7の工程との間に第8の工程の処理を含むようにし、
前記第8の工程は、
前記第3の工程で取得したカラー画像、前記第5の工程で検査した各領域の検査結果、および前記第6の工程で検査した各領域の検査結果に基づき、出必要情報および検出不要情報のうちのいずれか一方が設定されているか否かを判定する判定工程と、
前記検出必要情報が設定されていると判定された場合には、前記第5の工程で検査した検査結果および前記第6の工程で検査した検査結果について、その設定されている検出必要情報に基づいて検出必要部分を不具合な部分として処理する第1処理工程と、
前記検出不要情報が設定されていると判定された場合には、前記第5の工程で検査した検査結果および前記第6の工程で検査した検査結果について、その設定されている検出不要情報に基づいて検出不要部分を不具合でない部分として処理する第2処理工程と、
からなることを特徴とする請求項8に記載のプリント基板の検査方法。
【請求項10】
前記第2の工程は、
前記第1の工程で取得したプリント基板のカラー画像の分割すべき複数の領域についてそれぞれ設定されている、その各領域を代表する代表色を取得する代表色取得工程と、
前記プリント基板のカラー画像の各画素の色に基づき、前記代表色取得工程で取得した複数の領域の代表色をそれぞれ参照し、その複数の代表色のうちのいずれか1つに前記各画素の色を変更し、領域の分割を行なう第1の分割工程と、
前記第1の分割工程で分割された領域のうち、所定の領域についてはその領域の色の明度の差異に応じて再分割する第2の分割工程と、
を備えることを特徴とする請求項6乃至請求項9のうちのいずれか1項に記載のプリント基板の検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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