説明

プリント装置およびその制御方法

【課題】 スプライス部へのプリントを避け、且つスプライス部に続く画像プリントを良好に行なうことができる手法の提供。
【解決手段】 連続シートにプリントに適さない不適領域が存在したら、前記不適領域を含むプリント禁止領域に対して画像のプリントを行わせず、次いで、前記プリント禁止領域の後ろに画像のプリントを再開する前に、プリントヘッドの保守のために連続シートに対してプリントヘッドからインクを吐出させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は連続シートを用いてプリントを行うプリント装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ラボプリント等の大量のプリントにはロール状の連続シートが用いられる。ロール状の連続シートを製造する際には、製造上の歩留まり改善の観点から、必要長さに満たない複数の連続シートの端部同士をスプライシングテープ等の固定材(以下テープという)で結合し、必要長さを有するロールとすることがある。このロール状の連続シートは、テープで結合されたスプライス部(繋ぎ部)を1箇所以上且つランダムな位置に有する。
【0003】
特許文献1に開示される装置では、光学センサを用いてテープを検出することでスプライス部の位置を検知し、スプライス部を含む領域を記録不可領域としてプリントを行わないよう制御する。さらに、検知したスプライス部よりも前にある領域に、大きなサイズ(第2プリントサイズ)の1枚の画像が入りきらない場合には、より小さなサイズ(第1プリントサイズ)の画像を先に余白にプリントするように、プリントする画像の順番を入れ替える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−239715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
インクジェット方式のプリントヘッドは、使用頻度の低いノズルがインク吐出不良になることがある。このような不吐ノズルの発生を防ぐために、定期的なヘッドメンテナンスが必要である。連続シートに複数の画像を順次プリントする場合にも、所定の枚数の画像をプリントするごとに、全てのノズルからインクを吐出させて保守パターンをシートに形成して、定期的なヘッドメンテナンスを実行することが望ましい。
【0006】
しかし、特許文献1に記載の装置では、ヘッドメンテナンスについてはなんら考慮されておらず、単にスプライス部を記録不可領域として設定するだけである。プリントヘッドにとっては、記録不可領域はすべてのノズルがインクの吐出を行なわない休止期間なので、その間のインク乾燥等で不吐ノズルが生じる可能性がある。不吐ノズルが生じると記録不可領域の後に続くプリントの画像不良を引き起こす。
【0007】
本発明は上述の課題の認識にもとづいてなされたものである。本発明の目的は、スプライス部などの画像プリントに適さない不適領域を持った連続シートに複数の画像を順次プリントする際に、不適領域へのプリントを避け、且つ不適領域の後ろの画像プリントを良好に行なうことができる手法の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、連続シートに対してプリントヘッドからインクを吐出して複数の画像を順次プリントするプリント装置であって、前記連続シートに存在するプリントに適さない不適領域を特定する手段と、前記不適領域が特定されたら、前記不適領域を含むプリント禁止領域に対して画像のプリントを行わせず、次いで、前記プリント禁止領域の後ろに画像のプリントを再開する前に、前記プリントヘッドの保守のために前記連続シートに対して前記プリントヘッドからインクを吐出させるように制御する手段とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、スプライス部等の不適領域へのプリントを避け且つプリントヘッドの保守を行ってから画像のプリントを再開するので、不適領域の後ろの画像プリントを良好に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】プリント装置の内部構成を示す概略図
【図2】制御部のブロック図
【図3】プリント動作の全体シーケンスを示すフローチャート
【図4】プリント命令テーブルに従ったプリント順序の並び順を示す図
【図5】プリント命令テーブルの並び順を修正する手順を説明するための図
【図6】プリント命令テーブルの修正の処理手順を示すフローチャート
【図7】図4の変形例の図
【図8】図5の変形例の図
【図9】変形例における処理手順を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、インクジェット方式を用いたプリント装置の実施形態を説明する。本例のプリント装置は、長尺で連続したシート(搬送方向において繰り返しのプリント単位(1ページあるいは単位画像という)の長さよりも長い連続シート)を使用し、片面プリントおよび両面プリントの両方に対応した高速ラインプリンタである。例えば、プリントラボ等における大量の枚数のプリントの分野に適している。なお、本明細書では、1つのプリント単位(1ページ)の領域内に複数の小さな画像や文字や空白が混在していたとしても、当該領域内に含まれるものをまとめて1つの単位画像という。つまり、単位画像とは、連続したシートに複数のページを順次プリントする場合の1つのプリント単位(1ページ)を意味する。なお、単位画像といわずに単に画像という場合もある。プリントする画像サイズに応じて単位画像の長さは異なる。例えばL版サイズの写真ではシート搬送方向の長さは135mm、A4サイズではシート搬送方向の長さは297mmとなる。本発明はプリンタ、プリンタ複合機、複写機、ファクシミリ装置、各種デバイスの製造装置など、インクを用いて乾燥が必要なプリント装置に広く適用可能である。
【0012】
図1はプリント装置の内部構成を示す断面の概略図である。本実施形態のプリント装置は、ロール状に巻かれたシートを用いて、シートの第1面と第1面の背面側の第2面に両面プリントすることが可能となっている。プリント装置内部には、大きくは、シート供給部1、デカール部2、斜行矯正部3、プリント部4、検査部5、カッタ部6、情報記録部7、乾燥部8、反転部9、排出搬送部10、ソータ部11、排出部12、制御部13の各ユニットを備える。排出部12はソータ部11を含んで排出処理を行なうユニットを指す。シートは、図中の実線で示したシート搬送経路に沿ってローラ対やベルトからなる搬送機構で搬送され、各ユニットで処理がなされる。なお、シート搬送経路の任意の位置において、シート供給部1に近い側を「上流」、その逆側を「下流」という。
【0013】
シート供給部1は、ロール状に巻かれた連続シートを保持して供給するためのユニットである。シート供給部1は、2つのロールR1、R2を収納することが可能であり、択一的にシートを引き出して供給する構成となっている。なお、収納可能なロールは2つであることに限定はされず、1つ、あるいは3つ以上を収納するものであってもよい。また、連続したシートであれば、ロール状に巻かれたものに限らない。例えば、単位長さごとのミシン目が付与された連続したシートがミシン目ごとに折り返されて積層され、シート供給部1に収納されるものでもよい。
【0014】
ここで使用する連続シートは、テープや糊で結合されたスプライス部(繋ぎ部)を1箇所以上且つランダムな位置に有するものとする。スプライス部は画像プリントに適さない不適領域である。シート供給部1の出口近傍には、スプライスセンサ17が設けられており、シート供給部1から供給される連続シートのスプライス部の検出を行う。スプライスセンサ17(検知部)の詳細については後述する。
【0015】
デカール部2は、シート供給部1から供給されたシートのカール(反り)を軽減させるユニットである。デカール部2では、1つの駆動ローラに対して2つのピンチローラを用いて、カールの逆向きの反りを与えるようにシートを湾曲させて通過させることでデカール力を作用させてカールを軽減させる。
【0016】
斜行矯正部3は、デカール部2を通過したシートの斜行(本来の進行方向に対する傾き)を矯正するユニットである。基準となる側のシート端部をガイド部材に押し付けることにより、シートの斜行が矯正される。斜行矯正部3では、搬送されるシートにループが形成される。
【0017】
プリント部4は、搬送されるシートに対して上方からプリントヘッド14によりシート上にプリント処理を行なって画像を形成するシート処理部である。つまり、プリント部4はシートに所定の処理を行なう処理部である。プリント部4は、シートを搬送する複数の搬送ローラも備えている。プリントヘッド14は、使用が想定されるシートの最大幅をカバーする範囲でインクジェット方式のノズル列が形成されたライン型プリントヘッドを有する。プリントヘッド14は、複数のプリントヘッドが搬送方向に沿って平行に並べられている。本例ではC(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、LC(ライトシアン)、LM(ライトマゼンタ)、G(グレー)、K(ブラック)の7色に対応した7つのプリントヘッドを有する。なお、色数およびプリントヘッドの数は7つには限定はされない。インクジェット方式は、発熱素子を用いた方式、ピエゾ素子を用いた方式、静電素子を用いた方式、MEMS素子を用いた方式等を採用することができる。各色のインクは、インクタンクからそれぞれインクチューブを介してプリントヘッド14に供給される。
【0018】
検査部5は、プリント部4でシートにプリントされた検査パターンや画像をスキャナによって光学的に読み取って、プリントヘッドのノズルの状態、シート搬送状態、画像位置等を検査して画像が正しくプリントされたかを判定するためのユニットである。スキャナはCCDイメージセンサやCMOSイメージセンサを有する。
【0019】
カッタ部6は、プリント後のシートを所定長さに切断する機械的なカッタ18を備えたユニットである。カッタ部6はさらに、シート上に記録されているカットマークを光学的に検出するカットマークセンサとシートを次工程に送り出すための複数の搬送ローラも備えている。カッタ部6の近傍にはゴミ箱19が設けられている。ゴミ箱19は、カッタ部6で切り落とされゴミとして排出される小さなシート片を収容するものである。カッタ部6には、切断したシートをゴミ箱19に排出するか、本来の搬送経路に移行させるかの振り分け機構が設けられている。
【0020】
情報記録部7は、切断されたシートの非プリント領域にプリントのシリアル番号や日付などのプリント情報(固有の情報)を記録するユニットである。記録はインクジェット方式、熱転写方式などで文字やコードをプリントすることで行なわれる。
【0021】
乾燥部8は、プリント部4でプリントされたシートを加熱して、付与されたインクを短時間に乾燥させるためのユニットである。乾燥部8の内部では通過するシートに対して少なくとも下面側から熱風を付与してインク付与面を乾燥させる。なお、乾燥方式は熱風を付与する方式に限らず、電磁波(紫外線や赤外線など)をシート表面に照射する方式であってもよい。
【0022】
以上のシート供給部1から乾燥部8までのシート搬送経路を第1経路と称する。第1経路はプリント部4から乾燥部8までの間にUターンする形状を有し、カッタ部6はUターンの形状の途中に位置している。
【0023】
反転部9は両面プリントを行う際に表面プリントが終了した連続シートを一時的に巻き取って表裏反転させるためのユニットである。反転部9は、乾燥部8を通過したシートを再びプリント部4に供給するための、乾燥部8からデカール部2を経てプリント部4に到る経路(ループパス)(第2経路と称する)の途中に設けられている。反転部9はシートを巻き取るための回転する巻取回転体(ドラム)を備えている。表面のプリントが済んで切断されていない連続シートは巻取回転体に一時的に巻き取られる。巻き取りが終わったら、巻取回転体が逆回転して巻き取り済みシートは巻き取りのときとは逆順に送り出されてデカール部2に供給され、プリント部4に送られる。このシートは表裏反転しているのでプリント部4で裏面にプリントを行うことができる。シート供給部1を第1のシート供給部とすると、反転部9は第2のシート供給部とみなすことができる。両面プリントのより具体的な動作については後述する。
【0024】
排出搬送部10は、カッタ部6で切断され乾燥部8で乾燥させられたシートを搬送して、ソータ部11までシートを受け渡すためのユニットである。排出搬送部10は、反転部9が設けられた第2経路とは異なる経路(第3経路と称する)に設けられている。第1経路を搬送されてきたシートを第2経路と第3経路のいずれか一方に選択的に導くために、経路の分岐位置(「排出分岐位置」と呼ぶ。)には可動フラッパを有する経路切替機構が設けられている。
【0025】
ソータ部11を含む排出部12は、シート供給部1の側部で且つ第3経路の末端に設けられている。ソータ部11は必要に応じてプリント済みシートをグループ毎に仕分けるためのユニットである。仕分けられたシートは排出部12が有する複数のトレイに排出される。このように、第3経路はシート供給部1の下方を通過して、シート供給部1を挟んでプリント部4や乾燥部8とは逆側にシートを排出するレイアウトとなっている。
【0026】
以上のように、シート供給部1から乾燥部8までが第1経路に順に設けられている。乾燥部8の先は第2経路と第3経路に分岐され、第2経路は途中に反転部9が設けられ反転部9の先は第1経路に合流する。第3経路の末端には排出部12が設けられている。
【0027】
制御部13は、プリント装置全体の各部の制御を司るユニットである。制御部13は、CPU、記憶装置、各種制御部を備えたコントローラ、外部インターフェース、およびユーザが入出力を行なう操作部15を有する。プリント装置の動作は、コントローラまたはコントローラに外部インターフェースを介して接続されるホストコンピュータ等のホスト装置16からの指令に基づいて制御される。
【0028】
図2は制御部13の概念を示すブロック図である。制御部13に含まれるコントローラ(破線で囲んだ範囲)は、CPU201、ROM202、RAM203、HDD204、画像処理部207、エンジン制御部208、個別ユニット制御部209から構成される。CPU201(中央演算処理部)はプリント装置の各ユニットの動作を統合的に制御する。ROM202はCPU201が実行するためのプログラムやプリント装置の各種動作に必要な固定データを格納する。RAM203はCPU201のワークエリアとして用いられたり、種々の受信データの一時格納領域として用いられたり、各種設定データを記憶させたりする。HDD204(ハードディスク)はCPU201が実行するためのプログラム、プリントデータ、プリント装置の各種動作に必要な設定情報を記憶読出することが可能である。操作部15はユーザとの入出力インターフェースであり、ハードキーやタッチパネルの入力部、および情報を提示するディスプレイや音声発生器などの出力部を含む。
【0029】
高速なデータ処理が要求されるユニットについては専用の処理部が設けられている。画像処理部207は、プリント装置で扱うプリントデータの画像処理を行う。入力された画像データの色空間(たとえばYCbCr)を、標準的なRGB色空間(たとえばsRGB)に変換する。また、画像データに対し解像度変換、画像解析、画像補正等、様々な画像処理が必要に応じて施される。これらの画像処理によって得られたプリントデータは、RAM203またはHDD204に格納される。エンジン制御部208は、CPU201等から受信した制御コマンドに基づいてプリントデータに応じてプリント部4のプリントヘッド14の駆動制御を行なう。エンジン制御部208は更にプリント装置内の各部の搬送機構の制御も行なう。個別ユニット制御部209は、シート供給部1、デカール部2、斜行矯正部3、検査部5、カッタ部6、情報記録部7、乾燥部8、反転部9、排出搬送部10、ソータ部11、排出部12の各ユニットを個別に制御するためのサブコントローラである。CPU201による指令に基づいて個別ユニット制御部209によりそれぞれのユニットの動作が制御される。外部インターフェース205は、コントローラをホスト装置16に接続するためのインターフェース(I/F)であり、ローカルI/FまたはネットワークI/Fである。以上の構成要素はシステムバス210によって接続されている。
【0030】
ホスト装置16は、プリント装置にプリントを行わせるための画像データの供給源となる装置である。ホスト装置16は、汎用または専用のコンピュータであってもよいし、画像リーダ部を有する画像キャプチャ、デジタルカメラ、フォトストレージ等の専用の画像機器であってもよい。ホスト装置16がコンピュータの場合は、コンピュータに含まれる記憶装置にOS、画像データを生成するアプリケーションソフトウェア、プリント装置用のプリンタドライバがインストールされる。なお、以上の処理の全てをソフトウェアで実現することは必須ではなく、一部または全部をハードウェアによって実現するようにしてもよい。
【0031】
次に、プリント時の基本動作について説明する。プリントは、片面プリントモードと両面プリントモードとでは動作が異なるので、それぞれについて説明する。
【0032】
片面プリントモードでは、シート供給部1から供給され、デカール部2、斜行矯正部3でそれぞれ処理されたシートは、プリント部4において表面(第1面)のプリントがなされる。長尺の連続シートに対して、搬送方向における所定の単位長さの画像(単位画像)を順次プリントして複数の画像を並べて形成していく。プリントされたシートは検査部5を経て、カッタ部6において単位画像ごとに切断される。切断されたカットシートは、必要に応じて情報記録部7でシートの裏面にプリント情報が記録される。そして、カットシートは1枚ずつ乾燥部8に搬送され乾燥が行なわれる。その後、排出搬送部10を経由して、ソータ部11の排出部12に順次排出され積載されていく。一方、最後の単位画像の切断でプリント部4の側に残されたシートはシート供給部1に送り戻されて、シートがロールR1またはR2に巻き取られる。このように、片面プリントにおいては、シートは第1経路と第3経路を通過して処理され、第2経路は通過しない。
【0033】
一方、両面プリントモードでは、表面(第1面)プリントシーケンスに次いで裏面(第2面)プリントシーケンスを実行する。最初の表面プリントシーケンスでは、シート供給部1から検査部5までの各ユニットでの動作は上述の片面プリントの動作と同じである。カッタ部6では切断動作は行わずに、連続シートのまま乾燥部8に搬送される。乾燥部8での表面のインク乾燥の後、排出搬送部10の側の経路(第3経路)ではなく、反転部9の側の経路(第2経路)にシートが導かれる。第2経路においてシートは、順方向(図面では反時計回り方向)に回転する反転部9の巻取回転体に巻き取られていく。プリント部4において、予定された表面のプリントが全て終了すると、カッタ部6にて連続シートのプリント領域の後端が切断される。切断位置を基準に、搬送方向下流側(プリントされた側)の連続シートは乾燥部8を経て反転部9でシート後端(切断位置)まで全て巻き取られる。一方、反転部9での巻取りと同時に、切断位置よりも搬送方向上流側(プリント部4の側)に残された連続シートは、シート先端(切断位置)がデカール部2に残らないように、シート供給部1に送り戻されて、シートがロールR1またはR2に巻き取られる。この送り戻し(バックフィード)によって、以下の裏面プリントシーケンスで再び供給されるシートとの衝突が避けられる。
【0034】
上述の表面プリントシーケンスの後に、裏面プリントシーケンスに切り替わる。反転部9の巻取回転体が巻き取り時とは逆方向(図面では時計回り方向)に回転する。巻き取られたシートの端部(巻き取り時のシート後端は、送り出し時にはシート先端になる)は、図の破線の経路に沿ってデカール部2に送り込まれる。デカール部2では巻取回転体で付与されたカールの矯正がなされる。つまり、デカール部2は第1経路においてシート供給部1とプリント部4の間、ならびに第2経路において反転部9とプリント部4の間に設けられて、いずれの経路においてもデカールの働きをする共通のユニットとなっている。シートの表裏が反転したシートは、斜行矯正部3を経て、プリント部4に送られて、シートの裏面にプリントが行なわれる。プリントされたシートは検査部5を経て、カッタ部6において予め設定されている所定の単位長さ毎に切断される。カットシートは両面にプリントされているので、情報記録部7での記録はなされない。カットシートは1枚ずつ乾燥部8に搬送され、排出搬送部10を経由して、ソータ部11の排出部12に順次排出され積載されていく。このように、両面プリントにおいてはシートは第1経路、第2経路、第1経路、第3経路の順に通過して処理される。
【0035】
図3は制御部により制御されるプリント動作の全体シーケンスを示すフローチャートである。プリントの指令に基づいて、ステップS101では、初期のプリント命令テーブルをメモリ上に作成する。プリント命令テーブルは、単位画像および保守パターンを所定の順序で順次プリントするためのものである。プリント命令テーブルの詳細については後述する。
【0036】
ステップS102では作成したプリント命令テーブルに従って、連続シートに単位画像および保守パターンを所定の順序で順次プリントする。ステップS103では、プリント命令テーブルのプリントがすべて終了したか(Yes)否か(No)を判断する。判断がYesの場合はシーケンスを終了する。判断がNoの場合はステップS104に移行する。ステップS104では、プリント中にスプライスセンサ17で連続シートのスプライス部が検知されたか(Yes)否か(No)を判断する。判断がYesの場合はステップS105に移行し、判断がNoの場合はステップS103に戻って処理を繰り返す。ステップS105では、スプライス部の検知位置(検知タイミング)に従って、プリント命令テーブルを修正する。修正にはプリント禁止領域(空白)とその前後の保守パターンからなるパターン群の差し込みテーブルを用いる。そしてステップS103に戻って処理を繰り返す。プリント命令テーブルの修正手順の詳細については後述する。
【0037】
スプライス部は本来のシートよりも厚みを持っているので近接したギャップだとプリントヘッドと接触する可能性がある。そこで、プリント動作中に、スプライス部がプリントヘッドと対向する位置を通過する際には、プリントヘッド14がシート面から遠ざかる方向に一時退避してギャップを広げ、スプライス部がプリントヘッドのノズルと接触すること回避している。スプライス部が通過の後には元のプリントに適したギャップに戻る。
【0038】
ステップS104において、供給される連続シートSのスプライス部が検知位置(スプライスセンサ17の直下)を通過すると、スプライスセンサ17の信号レベルが変化して、スプライス部が通過したことが検知される。スプライスセンサ17は反射型フォトセンサであり、シートとスプライス部(テープ)の表面反射率の差異、あるいはスプライス部のテープの段差エッジを、反射光の受光光量の変化から捉える。なお、スプライスセンサ17を透過型フォトセンサとしてもよく、シートとスプライス部との透過率の差異を捉えてスプライス部を検出することができる。また、スプライスセンサ17を光学式センサではなく接触型センサとしてもよい。接触型センサは、スプライス部の厚みの変化をシートSに接触する接触子の移動量変化で探知してスプライス部を検出することができる。
【0039】
図4は、プリント命令テーブルに従った、連続シートに単位画像および保守パターンを所定の順序で順次プリントする並び順を図示化したものである。図4(a)は、ステップS101で作成された初期のプリント命令テーブルの並び順である。図4(b)は、ステップS105で修正されたプリント命令テーブルの並び順である。図4(b)には途中にスプライス部20が出現している。図中、パターンの種類には、単位画像の他に、空白、保守パターン(不吐監視パターン、予備吐パターンなど)、カットマーク(余白領域)を有する。図4の例では、シート先端から順に、余白a、保守パターンb、余白a、不吐監視パターンc、予備吐パターンd、カットマークe、予備吐パターンd、単位画像x1、カットマークf、単位画像x2、・・・単位画像x13、という並びになっている。基本的には所定の頻度で保守パターンを形成する。所定の頻度は、単位画像の搬送方向のサイズ(プリントライン数)によって変わりうる。この例では図4(a)に示すように、初期のプリント命令テーブルに従い、単位画像4つ、もしくは単位画像3つ+不吐監視パターン1つの組をプリントするごとに、予備吐動作を行なって予備吐パターンを繰返し形成する。図4(b)の記号Aは、修正によって差し込まれた所定のパターン列であり、その中央付近にはスプライス部20が位置している。
【0040】
図5は、初期のプリント命令テーブルを修正する手順を説明するための図である。データは、各項目についてテーブル番号、パターンの種類、プリントライン数(搬送方向における長さに対応)の数値がテーブル形式でメモリに記憶されている。スプライス部20の検知位置(検知タイミング)に応じた箇所に差し込みテーブルAを差し込む(追加の命令群を挿入する)処理を図示化したものである。この例では、初期のプリント命令テーブルのテーブル番号19とテーブル番号20の間に、テーブル番号20´〜24´からなる差し込みテーブルを挿入している。テーブル番号20´は不吐監視パターン、テーブル番号21´は予備吐パターン、テーブル番号22´は空白、テーブル番号23´は不吐監視パターン、テーブル番号24´は予備吐パターンである。テーブル番号20´および21´は、スプライス部20を含むプリント禁止領域(テーブル番号22´の空白)よりも下流側における保守パターンである。テーブル番号23´〜26´は、スプライス部20を含むプリント禁止領域(テーブル番号22´の空白)よりも上流側における保守パターン(カットマークを含む)である。つまり、プリント禁止領域の前後でプリントヘッドの保守を行なうようになっている。
【0041】
図6は、ステップS105におけるプリント命令テーブルの修正の処理手順を示すフローチャートである。ステップS201では、スプライス部20の検知に基づいて、プリント命令テーブル上のどの箇所に差し込みテーブルを差し込むか決定する。スプライスセンサ17がスプライス部20を検知した位置(タイミング)と、プリント命令テーブル上のプリントライン数から計算して、データを差し込む箇所を決定する。ステップS202では、差し込み前の最終パターンが不吐監視パターンであるか(Yes)否か(No)を、プリント命令テーブルを参照して確認する。判断がYesの場合はステップS204に移行し、判断がNoの場合はステップS203に移行する。ステップS203では、差し込みテーブルの最初に不吐監視パターン(図5のテーブル番号20´)を設定する。ステップS204では、差し込み前のプリントパターンから、プリントヘッドの予備吐動作が必要(Yes)か否か(No)を判断する。予備吐動作はプリントヘッド保守のためにある所定の時間周期(搬送距離)ごとに必要であり、後述するプリント禁止領域で予備吐動作のタイミングになる場合は、前倒しで予備吐を行う必要があると判断する。判断がYesの場合はステップS205に移行し、判断がNoの場合はステップS206に移行する。ステップS205では、差し込みテーブルに予備吐パターン(図5のテーブル番号21´)を設定する。
【0042】
ステップS206では、スプライス部20を中心に含む所定領域に空白パターン(図5のテーブル番号22´)を設定する。この空白パターンはプリントが禁止されるプリント禁止領域を意味する。ステップS207では、空白後の最初のパターンは不吐監視パターンであるか(Yes)か否か(No)を、プリント命令テーブルを参照して確認する。判断がYesの場合はステップS208に移行し、Noの場合はステップS209に移行する。ステップS208では、差し込みテーブルの空白の次に不吐監視パターン(図5のテーブル番号23´)を設定する。ステップS209では、空白の後に予備吐動作が必要か(Yes)か否か(No)を判断する。判断がYesならステップS210に移行し、判断がNoならシーケンスを終了する。ステップS210では、差し込みテーブルの最後に予備吐パターンとカットマーク(図5のテーブル番号24´〜26´)を設定する。
【0043】
制御部は、差し込みテーブルが作成されたら、テーブル番号19の次は差し込みテーブル(テーブル番号20´〜26´)を実行し、その後、テーブル番号20に戻ってプリントを継続するよう制御する。以上のように、スプライスセンサ17でスプライス部が検知されたら、スプライス部を含むプリント禁止領域を空白として設定するとともに、プリント禁止領域に続けて保守パターンがプリントされるように、プリント命令テーブルを修正して所定の順序を変更する。そして、プリント禁止領域を避けてプリントを継続する。プリントヘッドの下をプリント禁止領域が通過する期間中にインク乾燥等で不吐ノズルが生じたとしても、その直後にプリントヘッドの保守を行なうことで、後続の画像が不良となることを抑止することができる。また、本来はプリント禁止領域で保守パターンが必要な場合は、プリント禁止領域よりも手前で保守を前倒しして実施するので、プリントヘッドの状態を良好に維持することができる。
【0044】
また、差し込みテーブルを差し込んで割り込み処理を行なっても、単位画像の並び順は変更されない。写真アルバムのように連続してプリントする画像の順番(ページの並び)に意味を持つ場合があり、そのようなケースで、プリントする画像の順番を変えてしまうと、ユーザがプリント結果物を見て並べ替えなくてはならず甚だ煩雑である。本実施形態によれば、そのような事態を避けることができる。
次に、上述の実施形態の変形例を説明する。上述の例では、スプライス部を検知したら差し込みテーブルを挿入して、その後の並び順は変えずにプリントを継続するものである。これに対して本例は、スプライス部を検知したら同様の差し込みテーブルを挿入するとともに、その後も保守パターンの挿入箇所がより適切となるようにプリント順序を変更する。
【0045】
図7は、図4と同様、プリント命令テーブルに従った連続シートに単位画像および保守パターンを所定の順序で順次プリントする並び順を図示化したものである。図8は、図5と同様、初期のプリント命令テーブルを修正する手順を説明するための図である。図中の符号は図5と同様である。この例では、初期のプリント命令テーブルに対して、テーブル番号19のよりも後ろのデータの順序を変更して、テーブル番号20以降は新たなデータに置き換える。この動作をリスケジュールと呼ぶ。
【0046】
図4の例では、修正後の差し込みデータAよりも後のデータの並びは、修正前のデータの並びと全く同じであり、単位画像の並びに対して保守パターンが挿入される位置は修正の前後で変わっていない。そのため、図4(b)のように、差し込みテーブルで保守を行なった直後に、再び保守(単位画像7の直後の監視パターンと予備吐パターン)を行なうような場合がある。これに対して図7の例では、図7(b)のようにリスケジュールを行なって、差し込みデータAの後は単位画像4つをプリントした後に予備吐を行なうようにしている。したがって、図4(b)のように過剰に保守がなされる場合が生じない。スプライス部20に続くプリントにおいて、過剰な保守が行なわれる可能性が低減するので、連続シートの無駄を減らすとともにトータルのプリントスループットをより向上させることができる。
【0047】
図9は、ステップS105におけるプリント命令テーブルの修正の変形例の処理手順を示すフローチャートである。ステップS301では、スプライス部20の検知に基づいて、プリント命令テーブル上のどの箇所に差し込みテーブルを差し込むか決定する。スプライスセンサ17がスプライス部20を検知した位置(タイミング)と、プリント命令テーブル上のプリントライン数から計算して、データを差し込む箇所を決定する。ステップS302では、差し込み前の最終パターンが不吐監視パターンである(Yes)か否か(No)を、プリント命令テーブルを参照して確認する。判断がYesの場合はステップS304に移行し、判断がNoの場合はステップS303に移行する。ステップS303では、差し込みテーブルの最初に不吐監視パターン(図8のテーブル番号20)を設定する。ステップS304では、差し込み前のプリントパターンから、予備吐動作が必要(Yes)か否か(No)を判断する。判断がYesの場合はステップS305に移行し、判断がNoの場合はステップS306に移行する。ステップS305では、差し込みテーブルに予備吐パターン(図5のテーブル番号21)を設定する。ステップS306では、スプライス部20を中心に含む所定領域に空白パターン(図8のテーブル番号22)を設定する。この空白パターンはプリントが禁止されるプリント禁止領域を意味する。ステップS307では、差し込みテーブルの空白の次に保守パターンとカットマーク(図8のテーブル番号23〜26)を設定する。
【0048】
ここから先の処理手順が図6の例とは異なる。ステップS308で、スプライス部20よりも後にプリントされる単位画像の枚数を元にリスケジュールを行なう。単位画像の並びに対して保守パターンの挿入箇所を最適化する。プリント禁止領域に続けて保守パターンがプリントされるので、更にその後の保守はしばらく不要である。差し込みテーブルの最後(プリント禁止領域の後ろの保守パターン:テーブル番号26)を基点として、所定の頻度で保守パターンを形成する。所定の頻度は、単位画像の搬送方向のサイズ(プリントライン数)によって変わりうる。本例では、単位画像4つ、もしくは単位画像3つ+不吐監視パターン1つの組をプリントするごとに、予備吐動作を行なうように、保守パターンの挿入位置を再設定する。
【0049】
以上の各実施形例によれば、スプライス部へのプリントを避け、且つスプライス部に続く領域に保守パターンを形成してプリントヘッドの保守を行なうので、画像不良を生じることなく、スプライス部に続く画像プリントを良好に行なうことができる。また、リスケジュールでは保守のタイミングが変わるだけで単位画像の並び順は変更されない。したがって、連続してプリントする画像の順番(ページの並び)に意味を持つ場合にも、ユーザに並び替えの負担を与えることもない。
【0050】
以上は、連続シートのスプライス部には画像プリントに適さない不適領域であることをから、プリント禁止領域として設定する例を示した。これ以外にも、連続シート上で画像プリントに適さない不適領域があり得る。不適領域の例として、シート製造時に連続シート上に部分的に付与された画像プリントには許容できないような、傷、折れ目、破れ、大きなゴミ、汚れ(水性、油性)が挙げられる。本明細書ではこれらを総称して「連続シート上の汚れ」という。不適領域のさらに別の例として、連続シートに予め意図的にマーキングされている記号やマークなどのマーキング部分が挙げられる。これらの不適領域の上に画像をプリントするとプリント品質が著しく劣化して不良品となる。したがって、これら画像に適さない領域を検知部によって検知して、上述と同様にプリント禁止領域を設定し、プリント禁止領域に続けて保守パターンがプリントされるようにプリント順序を変更するように制御してもよい。不適領域は光学的に識別可能であるので、上述したスプライスセンサを検知部として用いることができる。
【符号の説明】
【0051】
1 シート供給部
4 プリント部
13 制御部
14 プリントヘッド
17 スプライスセンサ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続シートに対してプリントヘッドからインクを吐出して複数の画像を順次プリントするプリント装置であって、
前記連続シートに存在するプリントに適さない不適領域を特定する手段と、
前記不適領域が特定されたら、前記不適領域を含むプリント禁止領域に対して画像のプリントを行わせず、次いで、前記プリント禁止領域の後ろに画像のプリントを再開する前に、前記プリントヘッドの保守のために前記連続シートに対して前記プリントヘッドからインクを吐出させるように制御する手段と、
を有することを特徴とするプリント装置。
【請求項2】
前記制御する手段は、前記不適領域が特定されたら、前記プリント禁止領域の前後の少なくとも一方において前記プリントヘッドの保守のために前記連続シートに対して前記プリントヘッドからインクを吐出させるよう制御することを特徴とする、請求項1記載のプリント装置。
【請求項3】
前記プリントヘッドでプリントされた連続シートの表裏を反転させる手段をさらに有し、
前記制御する手段は、前記プリントヘッドで連続シートの第1面に複数の画像を順次プリントさせ、前記第1面にプリントされた連続シートの表裏を反転させ、再び前記プリントヘッドで前記第1面の背面側の第2面に複数の画像を順次プリントさせ、画像ごとに連続シートを切断して排出させる、ように制御することを特徴とする、請求項1または2に記載のプリント装置。
【請求項4】
前記不適領域は連続シートのスプライス部であり、前記スプライス部が 前記不適領域が前記プリントヘッドと対向する位置を通過する際には、前記プリントヘッドを前記連続シートから遠ざかる方向に一時退避させることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載のプリント装置。
【請求項5】
前記不適領域は、連続シートのスプライス部、連続シート上の汚れ部分、連続シートに予めマーキングされているマーキング部分、の少なくともいずれかであることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載のプリント装置。
【請求項6】
連続シートに対してプリントヘッドからインクを吐出して複数の画像を順次プリントするプリント装置の制御方法であって、
前記連続シートにプリントに適さない不適領域が存在したら、前記不適領域を含むプリント禁止領域に対して画像のプリントを行わせず、
前記プリント禁止領域の後ろに画像のプリントを再開する前に、前記プリントヘッドの保守のために前記連続シートに対して前記プリントヘッドからインクを吐出させる、
ように制御することを特徴とするプリント装置の制御方法。
【請求項7】
前記不適領域が存在したら、前記プリント禁止領域の前後の少なくとも一方において前記プリントヘッドの保守のために前記連続シートに対して前記プリントヘッドからインクを吐出させるよう制御することを特徴とする、請求項6記載の制御方法。
【請求項8】
前記プリントヘッドで連続シートの第1面に複数の画像を順次プリントさせ、前記第1面にプリントされた連続シートの表裏を反転させ、再び前記プリントヘッドで前記第1面の背面側の第2面に複数の画像を順次プリントさせ、画像ごとに連続シートを切断して排出させる、ように制御することを特徴とする、請求項6または7に記載の制御方法。
【請求項9】
前記不適領域は連続シートのスプライス部であり、前記スプライス部が前記プリントヘッドと対向する位置を通過する際には、前記プリントヘッドを前記連続シートから遠ざかる方向に一時退避させるように制御することを特徴とする、請求項6から8のいずれか1項に記載の制御方法。
【請求項10】
前記不適領域は、連続シートのスプライス部、連続シート上の汚れ部分、連続シートに予めマーキングされているマーキング部分、の少なくともいずれかであることを特徴とする、請求項6から9のいずれか1項に記載の制御方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−153150(P2012−153150A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−109906(P2012−109906)
【出願日】平成24年5月11日(2012.5.11)
【分割の表示】特願2010−111535(P2010−111535)の分割
【原出願日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】