説明

プリント配線基板の異物除去用治具及び除去方法

【課題】 プリント配線基板に付着する異物を効率良く除去する。
【解決手段】 気体導入用開口部と吸引装置接続用開口部を備えていると共に、前記気体導入用開口部及び吸引装置接続用開口部と連通してプリント配線基板の回路基板との間に気体流路を形成するスペーサー部を備えているプリント配線基板の異物除去用治具;吸引装置を用いて異物を吸引除去するプリント配線基板の異物除去方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線基板に付着する異物の除去に用いる治具及びプリント配線基板に付着する異物の除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図8は従来のプリント配線基板の概略斜視説明図、また図9は図8のA−A線切断端面拡大説明図であり、図中、71は銅などの金属から成るベース基板、72は回路基板、73は回路基板72をベース基板71に接着する例えばプリプレグ(PP)のような絶縁接着材、74a〜74dは部品実装用凹部で、各種の電子部品や素子を実装する為にプリント配線基板に形成されたものである。
【0003】
図8の凹部74a〜74dは一般には、図9に示されるように凸部を有するベース基板71と回路基板72で形成される。また、ベース基板はその上面が平滑であったり凹部を有するものでも良く、その場合には回路基板72と絶縁接着材73とベース基板71で当該凹部(図8の74a〜74d)が形成される。
【0004】
また、図10は図8のようなプリント配線基板を8ピース配設した状態を示す概略平面説明図であり、図中、91は従来の治具(図示せず)に装着された基板シート、92a〜92hは基板シート91にそれぞれ配設された8ピースのプリント配線基板である。また、これらのプリント配線基板92a〜92h中に、小さな白い四角で表示された部分は部品実装用凹部93を表し、小さな黒い四角で表示された部分はその凹部93に付着したプリプレグ粉末などの異物94を表している。
【0005】
すなわち、従来は、図8に示したプリント配線基板に相当する各プリント配線基板92a〜92hにおいて、いくつかの部品実装用凹部93中に、異物(例えばプリプレグ粉末等)94が付着することが多かった。このような異物94が付着した状態で、次工程の加熱処理などが行なわれると、その異物94が上記部品実装用凹部93に固着し、除去するのが困難になるという問題があった。
【0006】
また、エアガンなどを用いて異物94を空気流で吹き飛ばそうとしても、大部分の異物94を吹き飛ばすことができない上、吹き飛んだ異物94が他のピースの部品実装用凹部93に再び付着したりするという問題もあった。
【0007】
一方、外観に優れた連続銅張積層板の製造方法に関する技術としては、下記の特許文献1が既に報告されている。この技術は、一枚或いは複数枚の長尺プリプレグの片面或いは両面に長尺銅箔を重ねるか、又は長尺の内層用プリント配線基板の両面に一枚或いは複数枚の長尺プリプレグ及び長尺銅箔を重ねて連続プレスに導入し、加熱、加圧する連続法銅張積層板又は銅張多層板の製造方法であって、銅箔として、予め厚さ10μm以上の長尺銅箔の表面にプラスチックフィルム或いは金属箔を連続的に重ねた被覆銅箔として連続プレスに導入するようにしたものである。
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載されている技術を使用しても上述の各ピース92a〜92hにおける部品実装用凹部93に異物94が付着する問題などを解決することができず、結果的に異物付着による不良率なども改善することができなかった。
【特許文献1】特開平5−245970号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上述のような従来技術の問題などに鑑みてなされたものであり、その課題は、部品実装用凹部を有するプリント配線基板に付着している異物であっても効果的に除去することができる治具及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、気体導入用開口部と吸引装置接続用開口部を備えていると共に、前記気体導入用開口部及び吸引装置接続用開口部と連通してプリント配線基板の回路基板との間に気体流路を形成するスペーサー部を備えているプリント配線基板の異物除去用治具により上記課題を解決したものである。
【0011】
また、本発明は、吸引装置を用いて異物を吸引除去する方法により上記課題を解決したものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、気体導入用開口部と吸引装置接続用開口部を有する治具を用い、該気体導入用開口部から外部の空気を取り込みながら吸引装置接続用開口部から空気と共に異物を集中的に吸引するため、プリント配線基板の部品実装用凹部に付着している異物であっても効果的に除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の異物除去用治具としては、平板状体に気体導入用開口部及び吸引装置接続用開口部を設けた第1部材と、平板状体に前記第1部材と回路基板との間に気体流路を形成する抜き部を設けたスペーサー用の第2部材とから構成されたものが使用性に優れ、望ましい。また更に、平板状体にプリント配線基板を所定の位置に配設する抜き部を設けた第3部材を併用すれば、プリント配線基板の部品実装用凹部と気体導入用開口部の位置合せを容易に行なうことができ、より望ましい。
【0014】
第1部材に設けられる気体導入用開口部と吸引装置接続用開口部の位置や数は特に限定されないが、気体導入用開口部をプリント配線基板の部品実装用凹部と対応する位置に複数設けると共に、吸引装置接続用開口部をプリント配線基板の部品実装用凹部と対応しない位置に複数設けるのが、当該部品実装用凹部に付着した異物を効率良く除去する上で望ましい。
【0015】
この場合、吸引装置接続用開口部の各開口面積を、気体導入用開口部の各開口面積より大きくするのが、プリント配線基板の部品実装用凹部に付着した異物をより効率良く除去する上で望ましい。
【0016】
また、この場合、気体導入用開口部の各開口面積の合計値を、吸引装置接続用開口部の各開口面積の合計値より小さくするのが、当該異物の吸引除去性能を更に向上せしめる上で望ましい。
【0017】
本発明の異物除去方法を実施するに当っては、上記の如き異物除去用治具を用いて行なうのが好ましく、また除去対象としては、ベース基板と、回路基板と、該回路基板を前記ベース基板に接着する絶縁接着材とから成り、かつ部品実装用凹部を有するプリント配線基板が効果的である。尚、ここにベース基板の素材としては、例えば銅やアルミニウムなどが挙げられ、また、絶縁接着材としては、例えばプリプレグ(PP)などが挙げられる。
【実施例】
【0018】
以下実施例を示す図面と共に本発明を更に説明する。
【0019】
実施例1
本発明の第1の実施例を図1を用いて説明する。
図中、Pはプリント配線基板で、ベース基板(銅製)11と、回路基板12と、回路基板12をベース基板11に接着する絶縁接着材(プリプレグ)13とから構成され、当該プリント配線基板Pには部品実装用凹部14が形成されている。
【0020】
また、Qは異物除去用治具で、平板状体に気体導入用開口部17aと吸引装置接続用開口部17bを設けた第1部材15と、当該第1部材15と回路基板12との間に気体流路18を形成する抜き部を設けたスペーサー用の第2部材16とから構成されている。
当該気体導入用開口部17aは、プリント配線基板Pの部品実装用凹部14と対応する位置、すなわち部品実装用凹部14の真上に位置せしめて設けられていると共に、当該吸引装置接続用開口部17bは、部品実装用凹部14と対応しない位置、すなわち部品実装用凹部14の真上ではない部位に位置せしめて設けられている。
【0021】
尚、19は例えばバキューム装置のような吸引装置である。
【0022】
このような状態において、吸引装置19を駆動すると、図1の矢印で示すように、周辺の空気が気体導入用開口部17aから吸引されて吸引装置接続用開口部17b方向に流動するので、部品実装用凹部14の表面などに付着している異物は当該空気の流動に伴ない除去・搬送され、吸引装置接続用開口部17bから吸引装置19内に吸引される。
従って、従来のエアガンによる異物吹き付け方法などに比して吸引装置接続用開口部17bから空気と共に異物を集中的に吸引できるため、部品実装用凹部14内の異物が他の部分(例えば回路基板12の表面)に付着したりするのを回避することができる。
【0023】
なお、本実施例では、ベース基板11に銅を用いたが、本発明はこれに限定されることなく種々の変形が可能であり、例えば両面に配線回路が形成された両面プリント配線基板を用いても良い。また、プリント配線基板を4層以上の多層プリント配線基板としても良い。
【0024】
実施例2
本発明の第2の実施例を図2〜図5を用いて説明する。
図中、Pはプリント配線基板で、ベース基板31と、絶縁接着材33を介してその上位に積層された回路基板32とから構成されている。
【0025】
また、Qは異物除去用治具で、第1部材34と、第2部材37と、第3部材39によって構成されている。
第1部材34は最上位に配設される部材で、プリント配線基板Pの部品実装用凹部40と同一形状かつ同一数の気体導入用開口部35a〜35hが、当該部品実装用凹部40と対応する位置に設けられていると共に、当該部品実装用凹部40と対応しない位置に、当該気体導入用開口部35a〜35hに比して開口面積が大きい吸引装置接続用開口部36a〜36dが設けられている。
【0026】
第2部材37は回路基板32の上位に配設されるスペーサー用の部材で、回路基板32と第1部材34との間に、気体流路41を形成する抜き部37aが設けられている。
第3部材39はベース基板31の下位に配設される部材で、最下位に配設される中間板38と第2部材の間に、ベース基板31、絶縁接着材33及び回路基板32から成るプリント配線基板Pを所定の位置に配設するための抜き部39aが設けられている。
【0027】
尚、19は例えばバキューム装置のような吸引装置である。
【0028】
上述した異物除去治具Qを、次のように用いてプリント配線基板Pを吸引処理した。
まず、中間板38の上に第3部材39を配設し、中間板38に装着されている位置決め用ピン38aを利用して、第3部材39の抜き部39a内にそれぞれベース基板31を配設した。次いで、各ベース基板31の上に絶縁接着材33と回路基板32を順次積層し、最後に、第2部材37と第1部材34を配設した。
【0029】
斯くして得られた構造体の第1部材34の吸引装置接続用開口部36aに吸引装置19を装着して駆動せしめたところ、図4における、各矢印で示したように周辺の空気が気体導入用開口部35a〜35hから吸引され、部品実装用凹部40の表面などに付着している異物が気体流路41を流動する当該空気により除去・搬送されて吸引装置接続用開口部36aから吸引装置19内に吸引された。
【0030】
この吸引処理後のプリント配線基板は図5に示したような状態であった。因に、図中、51は基板シート、52a〜52hは基板シート51に配設された8ピースのプリント配線基板であり、また、これらのプリント配線基板52a〜52h中に、小さな白い四角で表示された部分は部品実装用凹部40を表している。
【0031】
図5と図10を比較すれば明らかなように、図9で示した前記従来例では基板シート91の各プリント配線基板92a〜92hの部品実装用凹部93に異物が付着することが多かったが、本発明による図5で示した各プリント配線基板52a〜52h中の凹部40には付着異物は全く存在していない。
しかも、本発明によれば、上記部品実装用凹部40などに付着している複数の異物を一度に除去できた上、除去した異物を周囲に飛散させることなく回収することもできた。
【0032】
実施例3
本発明の第3の実施例を図6を用いて説明する。
図中、61は第1部材(図3の第1部材34に相当)、63a〜63hはプリント配線基板、64a〜64hは部品実装用凹部の位置に対応して設けられた気体導入用開口部、65は部品実装用凹部の位置に対応しない第1部材61の略中央部に1つ設けられた吸引装置接続用開口部である。
【0033】
当該気体導入用開口部64a〜64hの各開口面積はいずれも1cm2、また吸引装置接続用開口部65の開口面積は10cm2となっている。すなわち、吸引装置接続用開口部65の開口面積(10cm2)は気体導入用開口部64a〜64hの各開口面積の合計値(8cm2)よりも大きな値となっている。
これは、吸引装置接続用開口部65の開口面積が気体導入用開口部64a〜64hの各開口面積の合計値よりも小さい場合には上記異物を除去する能力が低下することを考慮したものである。従って、吸引装置接続用開口部65の開口面積が気体導入用開口部64a〜64hの各開口面積の合計値よりも大きければ良く、具体的な数字は設計に委ねられる。
【0034】
実施例4
本発明の第4の実施例を図7を用いて説明する。
図中、図6と同一記号は同一意味を持たせて使用しここでの重複説明は省略する。本実施例においては、部品実装用凹部の位置に対応しない第1部材61の略中央部に2つの吸引装置接続用開口部が65a、65bが設けられている。
また、66a〜66qは部品実装用凹部と対応する位置に、各プリント配線板63a〜63h毎にそれぞれ2つずつ設けられた気体導入用開口部である。
【0035】
当該気体導入用開口部66a〜66qの各開口面積はいずれも1cm2であり、2つの吸引装置接続用開口部65a、65bの各開口面積はそれぞれ10cm2となっている。すなわち、第1の吸引装置接続用開口部65aの開口面積(10cm2)は気体導入用開口部66a〜66hの各開口面積の合計値(8cm2)よりも大きな値となっており、第2の吸引装置接続用開口部65bの開口面積(10cm2)も気体導入用開口部64i〜64qの各開口面積の合計値(8cm2)よりも大きな値となっている。
【0036】
これは、第1の吸引装置接続用開口部65aの開口面積が気体導入用開口部64a〜64hの各開口面積の合計値よりも小さかったり、第2の吸引装置接続用開口部65bの開口面積が気体導入用開口部64i〜64qの各開口面積の合計値よりも小さい場合には上記異物を除去する能力が低下することを考慮したものである。
従って、第1の吸引装置接続用開口部65aの開口面積が気体導入用開口部64a〜64hの各開口面積の合計値よりも大きく、かつ第2の吸引装置接続用開口部65bの開口面積が気体導入用開口部64i〜64qの各開口面積の合計値よりも大きければ良く、各開口面積の具体的な数字は設計の自由に委ねられる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の第1の実施例を示す概略切断端面説明図。
【図2】本発明の第2の実施例を示す概略斜視説明図。
【図3】本発明の第2の実施例を示す分解斜視説明図。
【図4】図2のA−A線切断端面拡大説明図。
【図5】本発明方法により処理したプリント配線基板を8ピース配設した状態を示す概略平面説明図。
【図6】本発明の第3の実施例を示す概略平面説明図。
【図7】本発明の第4の実施例を示す概略平面説明図。
【図8】従来のプリント配線基板の概略斜視説明図。
【図9】図7のA−A線切断端面拡大説明図。
【図10】従来のプリント配線基板を8ピース配設した状態を示す概略平面説明図。
【符号の説明】
【0038】
P:プリント配線基板
Q:異物除去用治具
11:ベース基板
12:回路基板
13:絶縁接着材
14:部品実装用凹部
15:第1部材
16:第2部材
17a:気体導入用開口部
17b:吸引装置接続用開口部
18:気体流路
19:吸引装置
31:ベース基板
32:回路基板
33:絶縁接着材
34:第1部材
35a〜35h:気体導入用開口部
36a〜36d:吸引装置接続用開口部
37:第2部材
37a:抜き部
38:中間板
39:第3部材
39a:抜き部
40:部品実装用凹部
41:気体流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体導入用開口部と吸引装置接続用開口部を備えていると共に、前記気体導入用開口部及び吸引装置接続用開口部と連通してプリント配線基板の回路基板との間に気体流路を形成するスペーサー部を備えていることを特徴とするプリント配線基板の異物除去用治具。
【請求項2】
治具が、平板状体に気体導入用開口部及び吸引装置接続用開口部を設けた第1部材と、平板状体に前記第1部材と回路基板との間に気体流路を形成する抜き部を設けたスペーサー用の第2部材から成ることを特徴とする請求項1記載のプリント配線基板の異物除去用治具。
【請求項3】
治具が、平板状体に気体導入用開口部及び吸引装置接続用開口部を設けた第1部材と、平板状体に前記第1部材と回路基板との間に気体流路を形成する抜き部を設けたスペーサー用の第2部材と、平板状体にプリント配線基板を所定の位置に配設する抜き部を設けた第3部材から成ることを特徴とする請求項1記載のプリント配線基板の異物除去用治具。
【請求項4】
気体導入用開口部がプリント配線基板の部品実装用凹部と対応する位置に複数設けられていると共に、吸引装置接続用開口部がプリント配線基板の部品実装用凹部と対応しない位置に複数設けられていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項記載のプリント配線基板の異物除去用治具。
【請求項5】
吸引装置接続用開口部の各開口面積が、気体導入用開口部の各開口面積より大きいことを特徴とする請求項4記載のプリント配線基板の異物除去用治具。
【請求項6】
気体導入用開口部の各開口面積の合計値が、吸引装置接続用開口部の各開口面の合計値より小さいことを特徴とする請求項4又は5記載のプリント配線基板の異物除去用治具。
【請求項7】
吸引装置を用いて異物を吸引除去することを特徴とするプリント配線基板の異物除去方法。
【請求項8】
請求項1〜6の何れか1項に記載の治具を用いることを特徴とする請求項7記載のプリント配線基板の異物除去方法。
【請求項9】
プリント配線基板が、ベース基板と、回路基板と、該回路基板を前記ベース基板に接着する絶縁接着材とから成り、かつ部品実装用凹部を有することを特徴とする請求項7又は8記載のプリント配線基板の異物除去方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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