説明

プリント配線板およびその製造方法

【課題】極めて微細な配線パターン等を含む導体パターンを精確に(高精度かつ確実に)形成することができるプリント配線板およびその製造方法を提供する。
【解決手段】下地金属パターン2を形成する工程と、前記下地金属パターン2が形成された片面上にネガ型のフォトレジスト6をコーティングする工程と、前記下地金属パターン2を用いて、前記絶縁性基板1を透過する光7を照射して前記フォトレジスト6を露光することによってめっきレジストパターン8を形成する工程と、前記めっきレジストパターン8を用いて、当該めっきレジストパターン8が設けられていない部分のみに前記下地金属パターン2をシード層とするめっきを施すことにより、前記下地金属パターン2の上にのみ選択的にめっき金属パターン3を形成する工程とを備えて、前記下地金属パターン2と前記めっき金属パターン3とを積層してなる導体パターン4を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板およびその製造方法に係り、例えば液晶ポリマ樹脂フィルム基板の片面に配線パターン等の導体パターンを有するフレキシブルプリント配線板やTABテープなどに特に好適なプリント配線板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の配線回路部品の主要部であるプリント配線板は、一般に、例えばガラスエポキシ基板のような硬い絶縁性基板の表面に配線パターン等の導体パターンが形成されたリジッドプリント配線板タイプと、例えばポリイミド樹脂フィルムのような可撓性に富んだ絶縁性フィルム基材の表面に導体パターンが形成されたフレキシブルプリント配線板タイプとに、大別することができる。
近年では、より広い分野で、フレキシブルプリント配線板や、そりよりもさらに薄くて小型の特殊なプリント配線板の一種類であるテープキャリア等が用いられるようになってきている。
【0003】
このようなプリント配線板の製作には、絶縁性基板の表面に、銅(Cu)のような導体金属箔を張り合わせた、もしくは導体金属膜を無電解めっき等により成膜形成してなる、いわゆる銅張基板のような金属張基板が用いられる。銅張基板の場合には、その銅(Cu)からなる導体金属層に、エッチング法等によってパターン加工を施して、配線パターンや接続パッドなどの所望の各種導体パターンを形成することで、そのプリント配線板の主要部が形成される。
【0004】
従来の一般的なプリント配線板の製造方法では、まず、金属張基板の表面に、感光性樹脂からなるフォトレジストを塗布、またはシート状のフォトレジストを張り合わせた後、露光装置およびフォトマスク等を用いて露光〜現像を行い、除去すべき部分の導体金属層の表面を露出させ、導体パターンとして残すべき部分を、そのフォトレジストパターンで覆った状態にする。そして、エッチング法により、金属導体層におけるフォトレジストで覆われておらずに露出している部分を除去して、残った部分を導体パターンとする。その後、不要となったフォトレジストパターンを、溶剤等を用いて剥離(溶解除去等)する。このようなサブトラクティブ法が、従来のプリント配線板の製造方法では多く用いられてきた。
【0005】
近年では、フレキシブル配線板やTABテープ等の分野でも、電子機器の小型化・配線密度の高度化が進むにつれて、導体パターンのさらなるファイン化が進み、線幅に対する導体金属層の相対的な厚さ(つまりアスペクト比)が、ますます大きくなる傾向にある。
このため、上記のようなサブトラクティブ法によるパターン加工プロセスでは、サイドエッチング等のエッチングファクタが阻害要因となって、配線パターンの線幅および配線間スペースがそれぞれ15μm程度、それらのレンジで配線ピッチが30μm程度というエッチングでの加工限界に近付きつつある技術的要請に対応することが、ますます困難になってきた。
【0006】
このようなファイン化対応の導体パターンを精確に形成するための技術として、レーザによってパターニングを行うという方策(特許文献1)や、薄層パターンを形成した後、厚膜化を図るという方策等が提案されている(特許文献2)。
他方、ファイン化対応の極めて微細な導体パターンを(従って多くの場合、高アスペクト比の導体パターンを)、精確に形成する有力な方法の一つとして、フルアディティブ法やセミアディティブ法などの、アディティブ方式の導体パターン形成方法がある(特許文
献3、4)。
フルアディティブ法は、めっきの被着性の低いレジストをめっきレジストとして用いるなどして、絶縁性基板の表面に、電気めっき法や無電解めっき法によって選択的に導体金属膜を被着させることで、所望の導体パターンを形成する、というものである。
また、セミアディティブ法は、絶縁性基板の表面に、銅(Cu)などの導体金属からなる1μm以下の下地金属膜を、例えばスパッタリングプロセス等によって形成しておき、その下地金属膜の表面にフォトレジストをコーティングして露光〜現像を行うことでレジストパターンを形成し、そのレジストパターンで覆われておらずに露出している部分の導体金属膜をめっきのシード層として用いると共に、パターン不要の部分を覆っているレジストパターンをめっきの障害物(めっきレジスト)として用いて、そのレジストパターンに則した所望の配線パターンやランドパターン等のような各種の導体パターンを、電気めっき法や無電解めっき法によって、絶縁性基板の表面上に形成する、というものである(特許文献5)。
【0007】
従来、アディティブ法は一般に、その製造プロセスがサブトラクティブ法と比較して煩雑で、製造工程の簡易化や製造コストの低廉化が困難な傾向にあるという問題、および得られる導体金属膜からなる導体パターンの絶縁性基板に対する密着性が低いという問題があった。しかし、近年では、密着性については、主にセミアディティブ法において改善されるようになってきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3493703号公報
【特許文献2】特開平4−263490号公報
【特許文献3】特開昭48−25866号公報
【特許文献4】特開昭52−19263号公報
【特許文献5】特開2003−37137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、セミアディティブ法では、電気めっきや無電解めっきを施して配線パターン等の導体パターンを形成した後、導体パターン間のレジストを一旦剥離してから、その導体パターン間に残っている不要なシード層を、いわゆるスライトエッチングによって除去することで配線分離を行う必要がある。このため、工程数が多くなって、その製造プロセスが煩雑なものとなり、またそれに伴って製造コストが全体的に高価なものとなってしまう傾向にある。
また、導体パターン間の不要なシード層をエッチングによって除去する際に、導体パターンの表面も、最低限でもシード層の厚さ分だけは除去されてしまう(削られて細ってしまう)ので、少なくともその分、出来上がりの導体パターンの形状や寸法に誤差が生じることとなる。しかも、近年では、配線パターンのさらなるファイン化(パターン幅やパターン間スペースのさらなる微細化)が進んでいることから、上記のような誤差の発生が導体パターンの形状再現性や寸法精度を損なう虞は、ますます高いものとなっていく傾向にある。
あるいは、上記のような誤差の発生を予め予測して、導体パターンの設計寸法やプロセス条件等に上記のような誤差を見込んだ補正を施しておけばよい、とも考えられるが、実際には、出来上がりの導体パターンにおける全体的な誤差は多数のファクタが絡まり合って発生するものであり、かつ上記のように配線パターンのさらなるファイン化が進んでいることとも相まって、予め誤差を見込んで正確な補正を施すことは、極めて困難である。
【0010】
このように、従来のプリント配線板およびその製造方法では、特にセミアディティブ方
式の場合、配線のさらなるファイン化・高アスペクト比化については対応可能であり、また絶縁性基板の表面に対する導体パターンの密着性については改善されるようになってきたが、その製造プロセスにおいては、特に不要なシード層をエッチング除去する工程が存在するために、その製造工程が煩雑で高コストなものとなる傾向にあるという問題があり、これについては未解決のままであった。
また、配線間の不要なシード層をエッチングによって除去する際に導体パターンの表面も削れて細ってしまうことに起因して、出来上がったプリント配線板における導体パターンの形状再現性や寸法精度が低下するという問題があった。
【0011】
本発明は、このような問題に鑑みて成されたもので、その目的は、ファイン化対応のような極めて微細な配線パターン等を含む導体パターンを、所定の厚さを確保して精確に(高精度かつ確実に)形成することができ、かつ製造工程の簡易化およびそれに関連した製造コストの低廉化を達成することができるプリント配線板およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のプリント配線板は、絶縁性基板の片面に形成された導体パターンを有するプリント配線板であって、前記導体パターンが、少なくとも、前記絶縁性基板の片面に形成された下地金属膜をパターン加工してなる下地金属パターンと、前記下地金属パターンの形成後に当該下地金属パターンの上にのみ選択的にめっきによって形成されためっき金属パターンとを、積層形成してなるものであることを特徴としている。
本発明のプリント配線板の製造方法は、絶縁性基板の片面に導体パターンを形成する工程を含んだプリント配線板の製造方法であって、前記絶縁性基板の片面に形成された下地金属膜をパターン加工して下地金属パターンを形成する工程と、前記下地金属パターンが形成された片面上にネガ型のフォトレジストをコーティングする工程と、前記下地金属パターンをセルフアラインマスクパターンとして用いて、前記片面とは反対側の面から前記絶縁性基板を透過する光を照射して前記フォトレジストを露光することにより、前記下地金属パターンに即しためっきレジストパターンを形成する工程と、前記めっきレジストパターンを用いて、当該めっきレジストパターンが設けられていない部分のみに前記下地金属パターンの表面をシード層とするめっきを施すことにより、前記下地金属パターンの上にのみ選択的にめっき金属パターンを形成する工程とを備えて、前記下地金属パターンと前記めっき金属パターンとを積層してなる導体パターンを形成することを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、下地金属パターンをセルフアラインマスクパターンとして用いて、その下地金属パターンが形成されている片面とは反対側の面から絶縁性基板を透過する光によって、その下地金属パターンが形成されている片面上にコーティングされたフォトレジストを露光し、そのレジストパターンが形成されておらず下地金属パターンの表面が露出している部分のみに、選択的にめっき金属パターンを形成するようにしたので、従来のシード層を用いてめっき金属パターンを形成する場合のような不要なシード層をエッチング除去する工程を完全に省略することができ、その結果、プリント配線板における、ファイン化対応のような極めて微細な配線パターン等を含む導体パターンを確実に高精度に形成することが可能となると共に、製造工程の簡易化およびそれに関連した製造コストの低廉化を達成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態に係るプリント配線板の主要部の構成を示す断面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るプリント配線板の主要部の構成を示す平面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るプリント配線板の製造方法における主要な工程の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本実施の形態に係るプリント配線板およびその製造方法について、図面を参照して説明する。
このプリント配線板は、図1に示したように、絶縁性基板1の片面上に、下地金属膜をパターン加工してなる下地金属パターン2と、その下地金属パターン2のパターン形成後にその下地金属パターン2の表面上にのみ選択的にめっきによって形成されためっき金属パターン3とを、積層形成してなる導体パターン4を備えている。そしてその導体パターン4が形成された片面ほぼ全面を覆うように、ソルダレジスト5が形成されている。
【0016】
絶縁性基板1は、例えば可撓性を有する液晶ポリマ(LCP;Liquid Crystal Polymer)樹脂フィルムのような電気的絶縁性を有し、かつ後述するような下地金属膜をパターン加工するためのフォトレジスト6を露光する際にそのフォトレジスト6の感光領域の波長の光を透過させて所望のパターンの潜像をそのフォトレジスト6に形成可能な光透過性を有するものである。
この絶縁性基板1の材質としては、特にフォトレジスト6の感光波長領域の光に対する透過性が高いものであることが重要であり、その観点からすると、例えば上記のような液晶ポリマ樹脂フィルムなどが、好適に用いることの可能な材料の典型的な一例である。
但し、液晶ポリマ樹脂フィルムのみには限定されないことは勿論である。上記のようなフォトレジスト6の感光波長領域の光に対する透過性が良好なものであれば、他の材料からなるものでも用いることが可能である。
【0017】
また、テープキャリア用の絶縁性フィルム基材として一般によく用いられているポリイミド樹脂フィルムの場合、微細パターンの形成の際に用いられることの多いフォトレジスト感光用のg線(波長436nm程度)に対する光透過性が十分ではない傾向にある。このため、ポリイミド樹脂フィルムを絶縁性基板1として用いた場合、フォトレジスト6の露光時間が極めて長くなる虞や、微細なパターンを精確に形成することが困難なものとなる虞が高い。この点からすると、絶縁性基板1の材質としては、ポリイミド樹脂フィルムよりも液晶ポリマ樹脂フィルムの方が、より望ましい傾向にある。
あるいは、例えばどうしてもポリイミド樹脂フィルムを用いなければならないといった場合には、例えばそのポリイミド樹脂フィルムに対して実用上十分な透過性を有する波長の光を用いた露光によって正確な潜像を得ることが可能なフォトレジストと、その感光波長領域の光とを、組み合わせて用いるようにすることなどが望ましい。具体的には、ポリイミド樹脂フィルムであるカプトンやユピレックス(どちらも登録商標)は、紫外線に対する透過率が極めて低い。よって、このようなポリイミド樹脂フィルムを絶縁性基板1として用いる場合には、例えば、ゾンネLDM(関西ペイント製、商品名)をネガレジストとして用いると共にアルゴン(Ar)イオンレーザ(波長488nm)を露光用の光源として併せ用いる、もしくはゾンネLDY(関西ペイント製、商品名)をネガレジストとして用いると共にYAG−SHGレーザ(波長532nm)を露光用の光源として併せ用いるようにすればよい。
【0018】
下地金属パターン2は、その上にめっき金属パターン3を電気めっきプロセスまたは無電解めっきプロセスによって形成する際のシード層となるものであるが、従来の技術に係る下地金属パターンとは異なり、めっき金属パターン3が形成される以前に、既にこの下地金属パターン2はパターン加工されて、所定のパターン形状を成している。従って、この下地金属パターン2は、従来技術に係るプリント配線板の場合のような、めっき金属パターン3の形成後のいわゆる配線分離と呼ばれる、残すべき導体パターン4の部分以外の
不要な部分をエッチングにより除去するという工程を、全く必要としないものである。
【0019】
この下地金属パターン2の材質としては、酸化に対して耐性があり、材料としての取り扱いが比較的容易である等の理由から、例えば銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)パラジウム(Pd)のような貴金属や、銅(Cu)、錫(Sn)、ニッケル(Ni)などが好適である。また、これらの金属材料からなる金属膜の表面は、フォトレジストの感光波長領域の光に対する遮光性あるいは反射性が高い傾向にあるので、後述するようなフォトレジスト6の露光の際のセルフアラインマスクパターンとして適格な材質であると言える。但し、下地金属パターン2として用いることが可能な材料としては、これらのみには限定されないことは勿論である。この他にも、めっき金属パターン3のシード層となることができ、かつ要求されるパターン加工の寸法精度や形状再現性等の条件を満たすことができるものであれば、この下地金属パターン2の形成材料として用いることが可能である。
【0020】
めっき金属パターン3は、下地金属パターン2をセルフアラインマスクパターンとして用いて、絶縁性基板1の裏面からその絶縁性基板1を透過する光7を照射することによってフォトレジスト6を露光して、めっきレジストパターン8を形成し、そのめっきレジストパターン8が設けられていない部分のみに、下地金属パターン2をシード層とするめっきを施すことにより、下地金属パターン2の表面上にのみ選択的に、めっき形成してなるものである。
このめっき金属パターン3は、銅(Cu)、または銅基合金からなるものとすることが望ましい。また、その形成プロセスで用いるめっき法の種類としては、電気めっき法でもよく、無電解めっき法でもよい。その工程におけるスループットの観点からは、より短時間で所定の厚さのめっき金属パターン3を形成することが可能であるという観点からは、電気めっき法の方が、より望ましい。
【0021】
めっき金属パターン3は、このようにめっき法によって下地金属パターン2の上にのみ選択的に精確に形成され、かつ従来技術の場合のような配線分離のためのエッチングが不要であることから、そのエッチングに起因した表面の削減(表面が削り取られてパターンが細ることや薄くなること)が全くないので、下地金属パターン2の厚さの5倍以上の厚さに、精確なパターンとして形成されることが可能なものとなっている。
また、めっき金属パターン3の厚さを下地金属パターン2の厚さの5倍以上にする、ということは、逆の観点からは、下地金属パターン2の厚さをめっき金属パターン3の厚さの1/5以下に薄いものとする、ということである。従ってこのような観点からすると、下地金属パターン2が下地金属膜(図示省略)をエッチング法によりパターン加工してなるものである場合には、その下地金属膜はめっき金属パターン3の厚さの1/5以下のような極めて薄いものであるから、所定の寸法精度や形状再現性を確保した上での形成可能な下地金属パターン2の最小線幅を極めて微小なものとすることが可能となり、延いてはその下地金属パターン2の上にセルフアラインで形成されるめっき金属パターン3の形成可能な最小線幅も極めて微小なものとすることが可能となり、その結果、導体パターン4の全体としての形成可能な最小線幅を極めて微小なものとすると共にその精度も高いものとすることが可能となる。
【0022】
上記のような下地金属パターン2とその上に形成されためっき金属パターン3とによって、本発明に係るプリント配線板における導体パターン4の主要部が構成されている。
あるいは、図示は省略するが、さらにこの導体パターン4の表面に、例えば耐錆性の向上、機械的強度の補強、外部との接続性の向上等のために、錫(Sn)や金(Au)のめっき皮膜のコーティングを施すようにすることなども可能である。
【0023】
次に、本発明の実施の形態に係るプリント配線板の製造方法について説明する。
まず、図3(a)に示すように、例えば液晶ポリマ樹脂フィルムのような、電気的絶縁
性が良好でかつフォトレジスト6の感光波長領域の光に対する透過性の良好な材質からなる絶縁性基板1を用意する。
【0024】
そして、図3(b)に示すように、絶縁性基板1の片面上に形成された下地金属膜を例えばエッチング法等によってパターン加工して、下地金属パターン2を形成する。あるいは、この下地金属パターン2は、金属ペーストをインクとして用いた印刷法などによって形成するようにしてもよい。
【0025】
続いて、図3(c)に示すように、その下地金属パターン2が形成された片面上に、ネガ型のフォトレジスト6をコーティングする。そして、下地金属パターン2が形成されている片面とは反対側の面(つまり裏面側)から絶縁性基板1を透過する光7を照射することで、下地金属パターン2をセルフアラインマスクパターンとして用いてフォトレジスト6の露光を行う。そしてその後、現像することにより、図3(d)に示すように、下地金属パターン2に即した(但しパターン部/非パターン部が反転した)パターン形状のめっきレジストパターン8が得られる。すなわち、このようにして得られためっきレジストパターン8は、下地金属パターン2のみを露出させ、その他の部分は覆うようなパターンになっている。
【0026】
続いて、図3(e)に示すように、めっきレジストパターン8を用いて、そのめっきレジストパターン8が設けられていない部分、つまりめっきレジストパターン8で覆われていない(露出している)下地金属パターン2の部分のみに、その下地金属パターン2の表面をシード層として用いた電気めっきまたは無電解めっきにより、下地金属パターン2の表面上にのみ選択的に、めっき金属パターン3を形成する。
【0027】
その後、使用済みのめっきレジストパターン8を剥離(あるいは溶解除去)して、図3(f)に示したような、下地金属パターン2とめっき金属パターン3とを積層してなる導体パターン4が得られる。
【0028】
このように、本発明の実施の形態に係るプリント配線板およびその製造方法によれば、下地金属パターン2をセルフアラインマスクパターンとして用いて、その下地金属パターン2が形成されている片面とは反対側の面(つまり裏面側)から、絶縁性基板1を透過する光7を照射することにより、その下地金属パターン2が形成されている片面上にコーティングされたフォトレジスト6を露光し、さらにそれを現像して、めっきレジストパターン8を得て、そのめっきレジストパターン8が形成されておらずに下地金属パターン2の表面が露出している部分のみに、選択的にめっき金属パターン3を形成するようにしたので、従来技術の場合のような不要なシード層をエッチング除去する工程を完全に省略することが可能となる。その結果、プリント配線板における、ファイン化対応のような極めて微細な配線パターン等を含む導体パターン4を、所定の厚さ以上の厚さに、かつ高精度に形成することが可能となる。また、それと共に、製造工程の簡易化およびそれに関連した製造コストの低廉化を達成することが可能となる。
【0029】
しかも、下地金属パターン2の厚さの5倍以上の厚さのめっき金属パターン3を、めっき法によって形成することも可能となるので、そのめっき金属パターン3と下地金属パターン2とを積層してなる導体パターン4は、微細な配線パターンであっても、そのアスペクト比を1以上のような高アスペクト比に対応した厚いものとすることが可能となる。その結果、導体パターン4の導電性を極めて良好なものとすることが可能となる。
【0030】
また、導体パターン4の線幅の微細加工精度の限界やパターン再現性の良否は、めっき金属パターン3のシード層となる下地金属パターン2のパターン精度によって大きく左右されることとなるが、本発明の実施の形態に係るプリント配線板およびその製造方法では
、下地金属パターン2の厚さをめっき金属パターン3の厚さの1/5以下の極めて薄いものとすることによって、特にその下地金属パターン2がエッチングプロセスのようなサブトラクティブ法を用いたパターン加工によって形成されるものである場合に、所定の寸法精度や形状再現性を確保した上で形成可能な下地金属パターン2の最小線幅を極めて微小なものとすることが可能となり、延いてはその下地金属パターン2の上にセルフアライン的に形成されるめっき金属パターン3の、そしてそれらを積層してなる導体パターン4全体の、最小線幅を極めて微小なものとすることが可能となる。
【0031】
なお、上記の実施の形態では、絶縁性基板1として液晶ポリマ樹脂フィルムのような絶縁性フィルム基材を用いた、例えば半導体装置用テープキャリアに本発明を適用した場合を具体的な態様として念頭に置いた説明としたが、本発明の適用は、このようなテープキャリアタイプのプリント配線板のみには限定されないことは勿論である。この他にも、絶縁性基板1として可撓性を有するフレキシブル基板を用いたフレキシブルプリント配線板や、例えばガラス基板やガラスエポキシ基板のような硬い材質からなるリジッド基板を用いたリジッドプリント配線板などにも、本発明は適用可能である。
【実施例】
【0032】
上記の実施の形態で説明した製造方法によって本発明の実施例に係るプリント配線板を試作的に作製した。
【0033】
絶縁性基板1としては、その裏面からのフォトレジスト6の露光に適した材質であることが必要である。そして、一般に多用されているフォトレジストは、紫外線を用いて露光が行われるように設定されている場合が多い。そこで、これらを前提条件として考慮して、本実施例では、ミリ波帯の信号伝送路用のテープキャリア型のプリント配線板用の絶縁性フィルム基材として適したTanδの小さな液晶ポリマのシート材を、絶縁性基板1として用いた。なお、この絶縁性基板1の材質としては、液晶ポリマのみには限定されないことは勿論であり、その他にも、例えばPET(Poly Ethylene Terephthalate)、PE
N(Poly Ethylene Naphthalate)、PE(Poly Ethylene)のような、最終的な使用環境での耐久性が良好なものなどを用いることが可能である。
【0034】
フォトレジスト6の光波長感度特性を考慮すると、μmレベルのパターンの精確な加工のための光源として、g線(436nm)が使用されることが多い。このため、g線に対する良好な光透過性の観点に基づいて絶縁性基板1を選定することが望ましい。あるいは、g線以外にも、i線(365nm)や、KrFエキシマレーザ(248nm)、ARFエキシマレーザ(193nm)、Fエキシマレーザ(157nm)などの、短波長の紫外線を利用する場合もあるが、これらの場合についても同様に、良好な光透過性が得られるか否かという観点から絶縁性基板1を選定することが望ましい。
但し、フレキシブル配線板の絶縁性フィルム基材としてよく用いられるポリイミド樹脂は一般に、耐熱性や機械的強度に関しては十分良好であるが、フォトレジスト露光用の紫外線が透過し難い(場合によってはほとんど透過しない)材質である。このため、フォトレジスト6の露光時間が極めて長くなってしまう虞や正確な潜像を得ることが困難になってしまう虞が高い。よって、絶縁性基板1としてポリイミド樹脂フィルムを使用する場合には、そのポリイミド樹脂フィルムに対する透過性が良好な露光用光源と、その露光用光源に対応して精確な潜像を得ることが可能なフォトレジストとを、組み合わせて用いるようにすることが望ましい。
本実施例では、厚さ50μmのLCPフィルム(クラレ製、商品名ベクスター)を用いた。
【0035】
絶縁性基板1の片面上に、銀(Ag)のナノ粒子(アルバック製、低温焼成タイプ1−Ag1TeH)を、アプリケータを用いて厚さ100nm塗布し、レーザ直描法により、
図2に示したような櫛型のパターンを焼成、不要部分をテトラデカンなどの有機溶剤で洗浄して、下地金属パターン2を形成した。
【0036】
ここで、本実施例では取り扱いが比較的容易な銀(Ag)のナノ粒子を用いたが、下地金属パターン2の金属種としては、銀(Ag)の他にも、例えば金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)などの貴金属や、銅(Cu)、あるいは錫(Sn)やニッケル(Ni)などのような酸化しにくい金属を用いることが可能である。なお、酸化し易いチタン(Ti)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)等は、使用が極めて困難なものとなる傾向にある。
また、本実施例では、比較的容易に狭い配線パターンピッチの下地金属パターン2を形成することが可能なパターン形成方法であることから、レーザ描画法を用いたが、レーザ描画法は一般に、描画時間やインクの利用効率などの点では高コストになりやすい傾向がある。このため、レーザ描画法は、試作レベルでは版のコストが不問であるから良い方法であると言えるものの、コマーシャルラインでの量産の際には、より低コストかつ高スループットでの生産が可能なスクリーン印刷法やグラビア印刷法のような印刷技術を用いて下地金属パターン2を形成することが望ましい。
【0037】
続いて、下地金属パターン2を含む絶縁性基板1の片面上ほぼ全面に、フォトレジスト6として、液体ネガレジスト材ZPN1150(日本ゼオン製)を塗布した。
本実施例では、試作品の製造ということで、コストやスループット等は敢えて考慮することなく液体レジストを使用したが、実際上、いわゆるコマーシャルラインでの量産時には、長尺材をリール・ツー・リールで加工することとなるので、ドライフィルム状のフォトレジスト(例えば旭化成エレクトロニクス株式会社製、サンフォート(商標))などを、下地金属パターン2が形成されている絶縁性基板1の片面上に張り合わせるようにすることが望ましい。
【0038】
続いて、紫外線露光装置を用いて、波長436nmのg線を絶縁性基板1の裏面から照射することにより、下地金属パターン2をセルフアラインのマスクパターンとして用いたフォトレジスト6の露光を行った。そしてその後、現像して、めっきレジストパターン8を得た。
より詳細には、このときの露光工程では、紫外線照射量は320mJとし、PEB(露光後ベーク)は90℃で1分間とした。そしてそのPEBの後、現像液(東京応化製NMD−3)で1分間の現像を行い、水洗した。そして、下地金属パターン2をセルフアラインのマスクパターンとして用いたフォトレジスト6の露光を行って、ライン・アンド・スペースの最も狭い部分の寸法が5μmであるめっきレジストパターン8を得た。
なお、本実施例では、次工程で電解銅めっき法によってめっき金属パターン3を形成するために、図2に示したように、平行に複数本配列形成された導体パターン4(実質的な配線パターン)が共通して一つの通電パターン9に接続された、全体的に櫛型のようなパターンを形成した。
【0039】
続いて、通電パターン9に給電用プローブを接触させて所定のめっき用電流を供給しながら電気めっきを行うことにより、下地金属パターン2の表面上にのみ選択的に銅めっきを施して、厚さ5μmの厚いめっき金属パターン3を形成した。
【0040】
その後、使用済みとなっためっきレジストパターン8をアセトンで溶解除去し、ソルダレジスト5を形成して、本発明の実施例に係るプリント配線板の主要部を完成した。
【0041】
このようにして作製された、本発明の実施例に係るプリント配線板は、めっき金属パターン3を5μmと厚く形成したことにより、導体パターン4を極めて微細なピッチで形成したにも関わらず、その導電性を良好なものとすることができた。
【0042】
なお、本実施例では、めっき金属パターン3を形成した後に不要となった通電パターン9は、絶縁性基板1の周縁部の一部分として、一般的なテープキャリアの場合と同様に最終的には簡易に切除することが可能であったので、斯様な通電パターン9を用いた電気めっき法によりめっき金属パターン3を形成することができた。しかし、要求される導体パターン4の全体的なパターン形状やプリント配線板の種類によっては、通電パターン9を設けることができない場合もある。その場合には、無電解めっき法によってめっき金属パターン3を形成することを余儀なくされることとなる。そのような場合には、下地金属パターン2の形成材料中に(本実施例に即して言えば、銀(Ag)のナノ粒子からなるインク中に)、例えばパラジウム(Pd)の微粒子を1%以上添加しておくようにすることが望ましい。このようにすることにより、無電解めっきによるめっき金属パターン3の選択的な形成精度を向上させることが可能となる。あるいは、場合によっては1%以下の添加でも実用上十分な選択性の向上が達成される場合もあり得る。
但し、一般に無電解めっきでは電気めっきの場合よりも異常析出の発生する虞が高いことや、スループットの点でも電気めっきに劣る傾向にあることなどから、めっき金属パターン3を形成するための具体的なめっきプロセスとしては、無電解めっき法を用いるよりも、電気めっき法を用いる方が、より望ましい。
【符号の説明】
【0043】
1 絶縁性基板
2 下地金属パターン
3 めっき金属パターン
4 導体パターン
5 ソルダレジスト
6 フォトレジスト
7 フォトレジスト露光用の光
8 めっきレジストパターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性基板の片面に形成された導体パターンを有するプリント配線板であって、
前記導体パターンが、少なくとも、前記絶縁性基板の片面に形成された下地金属膜をパターン加工してなる下地金属パターンと、前記下地金属パターンの形成後に当該下地金属パターンの上にのみ選択的にめっきによって形成されためっき金属パターンとを、積層形成してなるものである
ことを特徴とするプリント配線板。
【請求項2】
請求項1記載のプリント配線板において、
前記めっき金属パターンの厚さが、前記下地金属パターンの厚さの5倍以上である
ことを特徴とするプリント配線板。
【請求項3】
請求項1または2記載のプリント配線板において、
前記絶縁性基板が、可撓性を有する液晶ポリマ樹脂フィルムからなるものである
ことを特徴とするプリント配線板。
【請求項4】
絶縁性基板の片面に導体パターンを形成する工程を含んだプリント配線板の製造方法であって、
前記絶縁性基板の片面に形成された下地金属膜をパターン加工して下地金属パターンを形成する工程と、
前記下地金属パターンが形成された片面上にネガ型のフォトレジストをコーティングする工程と、
前記下地金属パターンをセルフアラインマスクパターンとして用いて、前記片面とは反対側の面から前記絶縁性基板を透過する光を照射して前記フォトレジストを露光することにより、前記下地金属パターンに即しためっきレジストパターンを形成する工程と、
前記めっきレジストパターンを用いて、当該めっきレジストパターンが設けられていない部分のみに前記下地金属パターンの表面をシード層とするめっきを施すことにより、前記下地金属パターンの上にのみ選択的にめっき金属パターンを形成する工程と
を備えて、前記下地金属パターンと前記めっき金属パターンとを積層してなる導体パターンを形成する
ことを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【請求項5】
請求項4記載のプリント配線板の製造方法において、
前記めっき金属パターンを、前記下地金属パターンの厚さの5倍以上の厚さに形成することを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【請求項6】
請求項4または5記載のプリント配線板の製造方法において、
前記絶縁性基板が、可撓性を有する液晶ポリマ樹脂フィルムからなるものである
ことを特徴とするプリント配線板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−267652(P2010−267652A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−115442(P2009−115442)
【出願日】平成21年5月12日(2009.5.12)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】