説明

プリント配線板の貼付装置および貼付方法

【課題】プリント回路基材の表面へカバーフィルムを貼り合わせるに際して、プリント回路基材の寸法変化に偏りがある場合でも、位置精度をより正確にして、ずれが生じないようにする。
【解決手段】裁断されたカバーフィルム11を載置して長尺のFPC30の下面に配置される下側熱板25Aと、下側熱板25Aに対向して長尺のFPC30の上方に設置される上側熱板26Aとからなり、FPC30のワーク31とカバーフィルム11とを位置合わせして前記下側熱板25Aと上側熱板26Aとにより仮止めする仮接着機構40と、カバーフィルム11を仮止めする前に、FPC30に予め設けられたターゲット32を撮像してワーク31の寸法変化を検知する第1の画像読み取りステージ42とを備え、第1の画像読み取りステージ42で検知したワーク寸法変化データに基づき、少なくとも下側熱板25Aの温度を部分的に変えてカバーフィルム11を強制的に寸法変化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプリント配線板の貼付装置および貼付方法に関するものであり、特に、フレキシブルプリント配線板(以下FPCという)や多層FPCの内層における表面保護用カバーフィルムの貼り合わせに関するものである。
【背景技術】
【0002】
此種プリント配線板は、長尺の基板材料に回路形成を行い、その後、シートに裁断したカバーフィルムを長尺の基板材料に貼り合わせて製造されている。例えば、図8は従来のプリント配線板の貼付装置を示す説明図であり、(a)は平面図、(b)は(a)の矢印C方向からの側面図である。ロール状に巻回された長尺のカバーフィルム10は、搬送クランプ21と固定クランプ22により所定長さに引き出され、裁断機構23によってシート状に裁断される。裁断されたカバーフィルム11は載置ベッド(後述の下側熱板)25に載置して吸着固定される。シート状のカバーフィルム11は、載置ベッド25に吸着固定されたまま、二点鎖線で示すように、ロールから巻き出されたFPC30の下部位置へ移動される。なお、符号24は、シート状のカバーフィルム11から剥離されたリリースフィルムの回収箱である。
【0003】
シート状のカバーフィルム11を吸着固定した載置ベッド25には、ヒータなどの発熱体が内蔵されており、下側熱板25として作用する。一方、この下側熱板25に対向して前記FPC30の上方に上側熱板26を配置して仮接着機構40が形成されており、下側熱板25に設けた位置合わせ機構(図示せず)により、FPC30のワーク31に対してカバーフィルム11を位置合わせした後に、下側熱板25と上側熱板26を合接してカバーフィルム11を仮止めする。カバーフィルム11を仮止めした後は、熱プレス41にて、カバーフィルム11を接着する。
【0004】
一般に、カバーフィルムを貼り合わせる際に、位置合わせマークを画像読み取りし、ステージ上に吸着固定した基板材料にカバーフィルムを位置決めして仮接着することは知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
ここで、長尺のFPCは回路形成などでロールからの巻き出しや巻き取りを繰り返すため、寸法変化が生じることがある。なかでも、エッチング工程ではテンションを掛けて銅箔を張るため、その後テンションを解除したときに収縮する傾向が大きい。一般的には、経験値に基づいてカバーフィルムの裁断寸法を補正しているが、FPCが予想以上に収縮したり、あるいは逆に予想したほど収縮しなかったりすることがある。とくに、ロールの巻き始めや、巻き終わり、あるいはロール間で使用する装置によってFPCが寸法変化し、ワークにカバーフィルムを貼り合わせる際に位置ずれが生じてしまう。
【0006】
図9は、長尺のFPC30に形成されている長方形のワーク31と同一形状のカバーフィルム11を貼り合わせる説明図である。図9(a)に示すように、ロールのL側とR側の寸法変化が予想通りの場合は、ワーク31の形状に対して、ずれを生じさせずにカバーフィルム11を貼り合わせることができる。これに対して、図9(b)に示すように、ロールのL側とR側の寸法変化に偏りがある場合は、ワーク31が台形状になってしまい、長方形のカバーフィルム11を貼り合わせると、相互にずれが生じることになる。
【0007】
近年の高密度化および微細化の要求に対して、カバーフィルムを貼り合わせる際の位置ずれの許容値が厳しくなりつつあり、より精度よく貼り合わせる技術が求められている。
【特許文献1】特開2004−319688号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1記載の発明は、画像処理にてカバーフィルムを位置決めするが、FPCが縦方向または横方向に片伸び(片縮み)したときは対応できず、カバーフィルムが位置ずれをおこす。
【0009】
そこで、本発明は、プリント回路基材の表面へカバーフィルムを貼り合わせるに際して、プリント回路基材の寸法変化に偏りがある場合でも、位置精度をより正確にして、ずれが生じないようにすること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1記載の発明は、絶縁ベース材に形成された回路からなるプリント回路基材を絶縁保護すべく、ロールから巻き出される長尺のプリント回路基材に、所定寸法に裁断したカバーフィルムを連続して貼り合わせる装置であって、前記裁断されたカバーフィルムを載置して前記長尺のプリント回路基材の下面に配置される下側熱板と、前記下側熱板に対向して前記長尺のプリント回路基材の上方に設置する上側熱板とからなり、前記プリント回路基材のワークとカバーフィルムとを位置合わせして前記下側熱板と上側熱板とにより仮止めする仮接着機構と、巻き取り方向へ移動した前記プリント回路基材と、該プリント回路基材に仮止めされたカバーフィルムとを圧着する熱プレスとから構成されたプリント配線板の貼付装置において、前記カバーフィルムを仮止めする前に、プリント回路基材に予め設けられたターゲットを撮像してワークの寸法変化を検知する第1の画像読み取りステージと、前記第1の画像読み取りステージで検知したワーク寸法データに基づき、前記下側熱板と上側熱板の温度を制御して、カバーフィルムとプリント回路基材の寸法補正を行う制御機構とを備えたことを特徴とするプリント配線板の貼付装置を提供する。
【0011】
この構成によれば、カバーフィルムを仮止めする前に、第1の画像読み取りステージにて、プリント回路基材に設けられたターゲットを撮像してワークの寸法変化を検知する。カバーフィルムを仮止めする際には、検知したワークの寸法変化に基づき、制御機構が下側熱板と上側熱板の温度をそれぞれ独立して制御し、プリント回路基材とカバーフィルムの双方の熱膨張を利用して寸法補正を行い、プリント回路基材のワークとカバーフィルムとの位置合わせを行う。
【0012】
請求項2記載の発明は、上記上下の熱板のうち、少なくとも下側熱板は複数のブロックに分割されてブロック毎に温度制御が可能に形成され、上記制御機構は、上記第1の画像読み取りステージで検知されたワークの寸法変化に基づき、前記熱板の温度を部分的に変えてカバーフィルムを強制的に寸法変化させるように形成したことを特徴とする請求項1記載のプリント配線板の貼付装置を提供する。
【0013】
この構成によれば、第1の画像読み取りステージで検知されたワークの寸法変化に基づいて、制御機構は、少なくとも下側熱板のブロック毎に温度制御して熱板の温度を部分的に変え、熱膨張の差によってカバーフィルムを強制的に寸法変化させる。
【0014】
請求項3記載の発明は、上記プリント回路基材には予めワークの4隅にこのターゲットに対応して上記カバーフィルムに円形の打ち抜きによるターゲットを形成しておき、前記プリント回路基材のターゲットの中心とカバーフィルムのターゲットの中心を画像処理にて求め、上記制御機構は、双方の中心が一致するように上記熱板の温度制御を行うように形成したことを特徴とする請求項1または2記載のプリント配線板の貼付装置を提供する。
【0015】
この構成によれば、プリント回路基材のワークの4隅に設けられた円形パターンのターゲットと、このターゲットに対応してカバーフィルムに設けられた円形の打ち抜きによるターゲットのそれぞれの中心を画像処理で求め、双方の中心がずれている場合は、制御機構が熱板の温度を制御して、双方の中心が一致するように寸法補正を行う。
【0016】
請求項4記載の発明は、上記カバーフィルムを仮止めした後に、上記プリント回路基材のターゲットとカバーフィルムのターゲットを撮像して相互の位置ずれの有無を確認する第2の画像読み取りステージを備えたことを特徴とする請求項1,2または3記載のプリント配線板の貼付装置を提供する。
【0017】
この構成によれば、カバーフィルムを仮止めした後に、第2の画像読み取りステージにて、プリント回路基材のターゲットとカバーフィルムのターゲットを撮像し、双方のターゲットの中心が一致しているかどうかにより位置ずれの有無を確認する。
【0018】
請求項5記載の発明は、絶縁ベース材に形成された回路からなるプリント回路基材を絶縁保護すべく、ロールから巻き出される長尺のプリント回路基材に、所定寸法に裁断したカバーフィルムを連続して貼り合わせる方法において、前記プリント回路基材に予め設けられたターゲットを撮像して画像処理にてワークの寸法変化を検知し、裁断されたカバーフィルムを載置した下側熱板と、該下側熱板に対向して前記長尺のプリント回路基材の上方に設置する上側熱板とによって、プリント回路基材とカバーフィルムとを挟持して仮止めする際に、前記ワークの寸法変化に応じて、前記熱板の温度を部分的に変えてカバーフィルムを強制的に寸法変化させ、プリント回路基材に対してカバーフィルムの位置ずれをなくすようにしたことを特徴とするプリント配線板の貼付方法を提供する。
【0019】
この構成によれば、カバーフィルムを仮止めする前に、プリント回路基材に設けられたターゲットを撮像してワークの寸法変化を検知し、検知したワークの寸法変化に基づいて、熱板の温度を部分的に変えてカバーフィルムを強制的に寸法変化させることにより、プリント回路基材のワークに対するカバーフィルムの位置合わせを行う。
【発明の効果】
【0020】
請求項1記載の発明は、カバーフィルムを仮止めする前に、第1の画像読み取りステージにて、プリント回路基材に設けられたターゲットを撮像してワークの寸法変化を検知し、検知したワークの寸法変化に基づき、制御機構が下側熱板と上側熱板の温度をそれぞれ独立して制御するので、プリント回路基材とカバーフィルムの双方の熱膨張を利用して寸法補正を行うことができ、仮止めに際して、プリント回路基材のワークとカバーフィルムとの位置合わせを正確に行うことができる。
【0021】
請求項2記載の発明は、少なくとも下側熱板は複数のブロックに分割されてブロック毎に温度制御が可能に形成されているので、請求項1記載の発明の効果に加えて、プリント回路基材の寸法変化に偏りがある場合でも、熱板の温度を部分的に変えてカバーフィルムを強制的に寸法変化させることにより、プリント回路基材のワークとカバーフィルムとの位置合わせをより一層正確に行うことができるとともに、寸法変化に偏りがあるプリント回路基材のワークであっても製品として使用することが可能となり、製品の歩留まりを向上させることができる。
【0022】
請求項3記載の発明は、プリント回路基材のワークの4隅に設けられた円形パターンのターゲットと、このターゲットに対応してカバーフィルムに設けられた円形の打ち抜きによるターゲットのそれぞれの中心を画像処理で求め、双方の中心が一致するように寸法補正を行うので、請求項1または2記載の発明の効果に加えて、プリント回路基材のワーク
とカバーフィルムとの位置合わせを正確かつ容易に行うことができる。
【0023】
請求項4記載の発明は、カバーフィルムを仮止めした後に、第2の画像読み取りステージにて、プリント回路基材のワークとカバーフィルムの相互のターゲットの位置ずれの有無を確認するので、請求項1,2または3記載の発明の効果に加えて、万一、プリント回路基材とカバーフィルム相互の位置ずれが許容範囲を超えていた場合は、警報を発してラインを停止させたり、あるいは上下の熱板の温度制御プログラムにフィードバックさせたりすることができ、仮止めの不具合を抑止することができる。
【0024】
請求項5記載の発明は、カバーフィルムを仮止めする前に、プリント回路基材に設けられたターゲットを撮像してワークの寸法変化を検知し、検知したワークの寸法変化に基づいて、熱板の温度を部分的に変えてカバーフィルムを強制的に寸法変化させるので、仮止めに際して、プリント回路基材のワークとカバーフィルムとの位置合わせを正確かつ容易に行うことができる。また、寸法変化に偏りがあるプリント回路基材のワークであっても製品として使用することが可能となり、製品の歩留まりを向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明に係るプリント配線板の貼付装置および貼付方法について、好適な実施例をあげて説明する。プリント回路基材の表面へカバーフィルムを貼り合わせるに際して、プリント回路基材の寸法変化に偏りがある場合でも、位置精度をより正確にして、ずれが生じないようにするという目的を達成するために、
本発明は、絶縁ベース材に形成された回路からなるプリント回路基材を絶縁保護すべく、ロールから巻き出される長尺のプリント回路基材に、所定寸法に裁断したカバーフィルムを連続して貼り合わせる装置であって、前記裁断されたカバーフィルムを載置して前記長尺のプリント回路基材の下面に配置される下側熱板と、前記下側熱板に対向して前記長尺のプリント回路基材の上方に設置する上側熱板とからなり、前記プリント回路基材のワークとカバーフィルムとを位置合わせして前記下側熱板と上側熱板とにより仮止めする仮接着機構と、巻き取り方向へ移動した前記プリント回路基材と、該プリント回路基材に仮止めされたカバーフィルムとを圧着する熱プレスとから構成されたプリント配線板の貼付装置において、
前記カバーフィルムを仮止めする前に、プリント回路基材に予め設けられたターゲットを撮像してワークの寸法変化を検知する第1の画像読み取りステージと、前記第1の画像読み取りステージで検知したワーク寸法データに基づき、前記下側熱板と上側熱板の温度を制御して、カバーフィルムとプリント回路基材の寸法補正を行う制御機構とを備えたことにより実現した。
【実施例1】
【0026】
図1は本発明に係るプリント配線板の貼付装置を示す説明図であり、(a)は平面図、(b)は(a)の矢印A方向からの側面図である。ロール状に巻回された長尺のカバーフィルム10は、搬送クランプ21と固定クランプ22により所定長さに引き出され、裁断機構23によってシート状に裁断される。シート状に裁断されたカバーフィルム11は載置ベッド(後述の下側熱板)25Aに載置して吸着固定される。シート状のカバーフィルム11は、載置ベッド25Aに吸着固定されたまま、二点鎖線で示すように、ロールから巻き出されたFPC30の下部位置へ移動される。なお、符号24は、シート状のカバーフィルム11から剥離されたリリースフィルムの回収箱である。
【0027】
後述するように、載置ベッド25Aにはヒータなどの発熱体が内蔵されており、下側熱板25Aとして作用する。また、下側熱板25Aに対向して前記FPC30の上方にはヒータを内蔵した上側熱板26Aが配置されており、下側熱板25Aと上側熱板26Aとから形成された仮接着機構40により、FPC30のワーク31にカバーフィルム11を仮
止めする。
【0028】
ここで、ロールから巻き出されたFPC30の搬送経路には、仮接着機構40の前工程位置に第1の画像読み取りステージ42が設けられている。第1の画像読み取りステージ42では、FPC30に予め設けられたターゲットを撮像し、ワーク31の標準寸法からの寸法変化を検知する。第1の画像読み取りステージ42で検知したワーク31の寸法データは制御機構50へ送られ、このデータに基づいて、後述するように、制御機構50が下側熱板25Aと上側熱板26Aの温度を制御して、カバーフィルム11とFPC30の寸法補正を行う。
【0029】
また、仮接着機構40の後工程位置に第2の画像読み取りステージ43が設けられている。第2の画像読み取りステージ43では、FPC30のターゲットと仮止めされたカバーフィルム11のターゲットを撮像し、相互の位置ずれの有無を確認する。第2の画像読み取りステージ43で検知した位置ずれデータは制御機構50へ送られ、このデータに基づいて、後述するように、上下の熱板26A,25Aの温度制御プログラムにフィードバックさせたり、あるいはラインを停止させたりする。第2の画像読み取りステージ43で、仮止めしたカバーフィルム11の位置ずれが許容範囲内と確認された場合は、熱プレス41にてカバーフィルム11をFPC30のワーク31に本接着する。
【0030】
本発明では、FPC30の回路形成時に、図2に示すように、予めワーク31の4隅に銅箔で円形パターンのターゲット32が設けられており、このターゲット32に対応してカバーフィルム11の4隅に円形の打ち抜きによるターゲット12が形成されている。ワーク31のターゲット32の直径よりも、カバーフィルム11のターゲット12の直径がやや大径に形成されている。FPC30のワーク31とカバーフィルム11の貼り合わせに際して、位置ずれがなくて正しい状態の場合は、図2(a)に示すように、カバーフィルム11のターゲット12の中心とワーク31のターゲット32の中心が一致して、双方のターゲット12,32が同心円となる。
【0031】
これに対して、FPC30のワーク31とカバーフィルム11相互に位置ずれが生じた場合は、図2(b)に示すように、カバーフィルム11のターゲット12の中心とワーク31のターゲット32の中心がずれることになる。予めターゲット12,32の直径を適宜寸法に設定しておき、位置ずれが許容範囲を超えた場合に、双方のターゲット12,32が重なり合うように形成すれば、位置ずれの発生を明確に認識することができる。
【0032】
上下の熱板26A,25Aのうち、少なくとも下側熱板25Aは、複数のブロックに分割されている。図3(a)に示すように、例えば縦が第1列〜第5列で、横がaブロック〜fブロックに分割され、それぞれブロック毎に熱板の温度を独立して制御できるように形成されている。後述するように、制御機構50により下側熱板25Aのブロック毎に異なる温度制御を行うことで、下側熱板25Aの温度を部分的に変えて、カバーフィルム11を強制的に寸法変化させることができる。
【0033】
図9(b)に示したように、ロールのL側とR側の寸法変化に偏りがあって、ワーク31が台形状になってしまった場合は、図3(b)に示すように、下側熱板25AのL側のブロック1a〜1fの温度を高くし、R側のブロック5a〜5fは斜め方向に温度の変位量を小さくしていく。したがって、図4に示すように、カバーフィルム11のL側の熱膨張がR側よりも大きくなり、台形状に寸法変化したワーク31にカバーフィルム11を位置合わせすることができる。
【0034】
このように、上下の熱板26A,25Aを複数のブロックに分割して温度制御することにより、ワーク31の寸法変化に対してカバーフィルム11を強制的に寸法変化させて位
置合わせさせることが可能となる。なお、上下の熱板26A,25Aの双方をブロック化する場合は、上側熱板26Aよりも下側熱板25Aの分割数を多くするのが望ましい。これは、カバーフィルム11の方がFPC30に比べて熱膨張係数が大きいため、直接カバーフィルム11に接する下側熱板25Aのブロック分割数を多くする。
【0035】
次に、本発明に係るプリント配線板の貼付方法について説明する。図1にて前述したように、シート状に裁断されたカバーフィルム11は、下側熱板(載置ベッド)25Aに吸着固定されてFPC30の下部位置へ移動される。ロールから巻き出されたFPC30は、第1の画像読み取りステージ42にてワーク31の寸法変化が検知され、該ワーク31の寸法データは制御機構50へ送られる。
【0036】
図5は1つのワーク31に30個の製品33をレイアウトした一例であり、ワーク31の寸法変化が予想通りで、L側とR側の寸法変化が同じである場合を示す。ワーク31の4隅に設けたターゲット32の縦方向の寸法は、左右どちらも寸法Dとなっている。第1の画像読み取りステージ42にて検知されたワーク31の寸法データが制御機構50に送られ、該制御機構50で上下の熱板26A,25Aの温度制御を行う。ワーク31の左右の寸法変化が同じである場合は、上下の熱板26A,25Aも温度分布が左右同一になるように制御し、ワーク31の寸法データに合わせてカバーフィルム11を左右同一に寸法調整させる。
【0037】
したがって、仮止め機構40では、ワーク31の4隅に設けられた円形パターンのターゲット32と、カバーフィルム11に設けられた円形の打ち抜きによるターゲット12とが正確に一致し、FPC30のワーク31にカバーフィルム11を仮止めすることができる。
【0038】
続いて、第2の画像読み取りステージ43にて、ワーク31のターゲット32とカバーフィルム11のターゲット12を撮像し、双方のターゲットの中心が一致しているかどうかにより位置ずれの有無を確認する。双方のターゲットに位置ずれがあった場合は、位置ずれデータを制御機構50へフィードバックし、後から仮止めする際に上下の熱板26A,25Aの温度制御を修正し、カバーフィルム11の寸法変化を調整して正確に位置合わせできるようにする。万一、双方のターゲットの位置ずれが許容範囲を超えていた場合は、警報を発してラインを停止させたり、不良品として取り除いたりする。
【0039】
第2の画像読み取りステージ43にて、双方のターゲットの中心が一致していれば、位置ずれなしの確認データを制御機構50へフィードバックするとともに、FPC30を次工程へ送り、熱プレス41にてカバーフィルム11をFPC30のワーク31に本接着する。
【0040】
ここで、上下の熱板26A,25Aの温度制御について述べれば、FPC30とカバーフィルム11とでは熱膨張係数が異なるため、下側熱板25Aと上側熱板26Aとの温度差を極端に変えると回路基材であるFPC30に反りが発生してしまう。そこで、FPC30の反りを基準内に収めるために、FPC30側の上側熱板26Aは70〜90℃、カバーフィルム11側の下側熱板25Aは40〜70℃の範囲内で、熱板の各ブロックの温度制御を行う。
【0041】
この温度範囲内であれば、FPC30の長さが100mmあたりの反り量は2mm以下に抑えることができる。また、ワーク31のサイズ長さが300mmに対して+0.07mmまでの寸法変化に追随させることができる。
【0042】
なお、上述した温度範囲の設定は、90℃を超えるとカバーフィルム11の接着剤が仮
止めの段階で固化してしまい、その後に熱プレス41を行ったときに接着力が低下してしまうという問題があるためと、上側熱板26Aの温度が下側熱板25Aに伝わらないようにするには最大温度差が50℃までとする必要があるなどの理由からである。
【0043】
図6はワーク31の寸法変化が予想に反し、L側とR側の寸法変化が異なった場合を示す。ワーク31の4隅に設けたターゲット32の縦方向の寸法は、右側が寸法D、左側がそれよりやや大きくて寸法D+αとなっている。したがって、図5で説明した左右同一の温度分布制御では、たとえR側について、ワーク31のターゲット32とカバーフィルム11のターゲット12を一致させたとしても、L側については、ワーク31のターゲット32とカバーフィルム11のターゲット12が大きくずれることになる。
【0044】
この場合、下側熱板25Aの温度を部分的に変えて、カバーフィルム11を強制的に寸法変化させることにより、個々の製品33にカバーフィルム11を合致させることができる。例えば図3(b)に示したように、下側熱板25AのL側のブロック1a〜1fの温度を高くし、R側のブロック5a〜5fは斜め方向に温度の変位量を小さくしていけば、カバーフィルム11のL側の熱膨張がR側よりも大きくなる。
【0045】
したがって、図7に示すように、R側について、ワーク31のターゲット32とカバーフィルム11のターゲット12を一致させるとともに、L側についても、ワーク31のターゲット32とカバーフィルム11のターゲット12を一致させることができ、それぞれの製品33とカバーフィルム11の寸法を位置合わせすることができる。
【0046】
このように、寸法変化に偏りがあるワーク31であっても、上下の熱板26A,25Aの温度を部分的に変えてカバーフィルム11を強制的に寸法変化させることにより、製品として使用することが可能となり、製品の歩留まりを向上させることができる。
【0047】
なお、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明に係るプリント配線板の貼付装置を示す説明図。
【図2】FPCのワークおよびカバーフィルムに設けられたターゲットの説明図。
【図3】下側熱板の説明図。
【図4】カバーフィルムの熱膨張の差を示す説明図。
【図5】ワークに製品をレイアウトした一例を示す説明図。
【図6】ワークのL側とR側の寸法変化が異なった場合を示す説明図。
【図7】ワークに対応してカバーフィルムを寸法変化させた結果を示す説明図。
【図8】従来のプリント配線板の貼付装置を示す説明図。
【図9】従来のワークとカバーフィルムを貼り合わせる工程の説明図。
【符号の説明】
【0049】
10 (長尺の)カバーフィルム
11 (シート状の)カバーフィルム
12 (カバーフィルムの)ターゲット
25A 下側熱板(載置ベッド)
26A 上側熱板
30 フレキシブルプリント配線板(FPC)
31 ワーク
32 (ワークの)ターゲット
33 製品
40 仮止め機構
41 熱プレス
42 第1の画像読み取りステージ
43 第2の画像読み取りステージ
50 制御機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁ベース材に形成された回路からなるプリント回路基材を絶縁保護すべく、ロールから巻き出される長尺のプリント回路基材に、所定寸法に裁断したカバーフィルムを連続して貼り合わせる装置であって、
前記裁断されたカバーフィルムを載置して前記長尺のプリント回路基材の下面に配置される下側熱板と、前記下側熱板に対向して前記長尺のプリント回路基材の上方に設置する上側熱板とからなり、前記プリント回路基材のワークとカバーフィルムとを位置合わせして前記下側熱板と上側熱板とにより仮止めする仮接着機構と、
巻き取り方向へ移動した前記プリント回路基材と、該プリント回路基材に仮止めされたカバーフィルムとを圧着する熱プレスとから構成されたプリント配線板の貼付装置において、
前記カバーフィルムを仮止めする前に、プリント回路基材に予め設けられたターゲットを撮像してワークの寸法変化を検知する第1の画像読み取りステージと、
前記第1の画像読み取りステージで検知したワーク寸法データに基づき、前記下側熱板と上側熱板の温度を制御して、カバーフィルムとプリント回路基材の寸法補正を行う制御機構とを備えたことを特徴とするプリント配線板の貼付装置。
【請求項2】
上記上下の熱板のうち、少なくとも下側熱板は複数のブロックに分割されてブロック毎に温度制御が可能に形成され、上記制御機構は、上記第1の画像読み取りステージで検知されたワークの寸法変化に基づき、前記熱板の温度を部分的に変えてカバーフィルムを強制的に寸法変化させるように形成したことを特徴とする請求項1記載のプリント配線板の貼付装置。
【請求項3】
上記プリント回路基材には予めワークの4隅に銅箔で円形パターンのターゲットが設けられ、このターゲットに対応して上記カバーフィルムに円形の打ち抜きによるターゲットを形成しておき、前記プリント回路基材のターゲットの中心とカバーフィルムのターゲットの中心を画像処理にて求め、上記制御機構は、双方の中心が一致するように上記熱板の温度制御を行うように形成したことを特徴とする請求項1または2記載のプリント配線板の貼付装置。
【請求項4】
上記カバーフィルムを仮止めした後に、上記プリント回路基材のターゲットとカバーフィルムのターゲットを撮像して相互の位置ずれの有無を確認する第2の画像読み取りステージを備えたことを特徴とする請求項1,2または3記載のプリント配線板の貼付装置。
【請求項5】
絶縁ベース材に形成された回路からなるプリント回路基材を絶縁保護すべく、ロールから巻き出される長尺のプリント回路基材に、所定寸法に裁断したカバーフィルムを連続して貼り合わせる方法において、
前記プリント回路基材に予め設けられたターゲットを撮像して画像処理にてワークの寸法変化を検知し、裁断されたカバーフィルムを載置した下側熱板と、該下側熱板に対向して前記長尺のプリント回路基材の上方に設置する上側熱板とによって、プリント回路基材とカバーフィルムとを挟持して仮止めする際に、前記ワークの寸法変化に応じて、前記熱板の温度を部分的に変えてカバーフィルムを強制的に寸法変化させ、プリント回路基材に対してカバーフィルムの位置ずれをなくすようにしたことを特徴とするプリント配線板の貼付方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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