説明

プリント配線板及びその製造方法

【課題】 導体回路の高密度化および演算処理速度の高速化のための微細な導体回路形成可能で、導体回路表面が平滑であるにもかかわらず導体回路の密着性に優れたプリント配線板を提供する。
【解決手段】 内層回路基板(F)の上に層間絶縁樹脂層(A)を形成し、該層間絶縁樹脂層(A)の表面に無電解メッキおよび/または電解メッキにより導体回路(B)を形成するアディティブ法によるプリント配線板であって、該層間絶縁樹脂層が少なくとも1層の感光性樹脂層(a)を含み、導体回路(B)の底面(Bb)が層間絶縁樹脂層(A)の表面(At)より下に位置し、下記数式(1)と数式(2)を満たす構造を有することを特徴とするプリント配線板。
(d)≧3μm (1)
(h)−(d)≧3μm (2)
[(d)は導体回路(B)の底面(Bb)の層間絶縁樹脂層(A)の表面(At)からの深さ、(h)は層間絶縁樹脂層の厚さを表す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板及びプリント配線板の製造方法に関し、更に該製造方法に使用するのに好適なプリント配線板用層間絶縁樹脂及びプリント配線板用層間絶縁樹脂フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器、通信機器等に用いられるプリント配線板には、導体回路の高密度化、演算処理速度の高速化の要求が強まっている。それに伴い多層プリント配線板の製造方法として、回路基板の導体層上に層間絶縁層を交互に積み上げていくビルドアップ方式の製造技術が注目されている。
【0003】
一般的にビルドアップ方式の導体回路形成方法としては、例えば、層間樹脂表面に無電解メッキ単独、または無電解メッキと電解メッキで導体回路を形成するアディティブ法および層間絶縁樹脂表面に予め形成された導体層をエッチングすることにより導体回路を形成するサブトラクティブ法等が知られている。通常、導体回路の高密度化は、サブトラクティブ法では導体層のエッチング精度が悪いため困難であり、アディティブ法が適している。
【0004】
アディティブ法で使用されるプリント配線板の層間絶縁樹脂は、エポキシ樹脂にフィラーを分散させたものが用いられ、導体層との密着性を得るために、過マンガン酸溶液などによる粗化により基板表面にサブミクロンから数ミクロンオーダーの複雑な凸凹を形成し、この投錨効果によってピール強度(絶縁樹脂層から導体層を基板表面に対して垂直に引きはがすのに要する単位幅あたりの力)を向上させ、導体回路の密着性を得ている。
しかし、層間絶縁樹脂表面の凸凹が大きい場合、形成される導体回路の間の幅の制限も大きくなるため導体回路の微細化に限界がある。さらに演算処理速度の高速化に伴う高周波化により表皮効果が大きくなり、導体回路表面の凸凹による伝送損失が発生する。このため粗化は極力避け、可能であれば完全平滑面に導体回路形成する必要がある。
【0005】
平滑な表面で導体層とのピール強度を得る方法としては、例えば、層間絶縁樹脂層表面に導体層との化学的密着力の高い官能基を持たせる方法やナノレベルの凹凸を形成する方法等が提案されている。(特許文献1)
しかし、層間樹脂層表面に導体回路を形成する方法では、導体回路幅が小さくなると密着性が低下し、またわずかな衝撃で導体回路が剥離する危険性が高くなっている。
【0006】
一方、平滑な表面で導体回路の十分な密着力を得る方法としては、導体回路を層間絶縁樹脂層に埋め込む方法が提案されている(特許文献2、特許文献3)。
しかし、上記の埋め込む方法は導体層をエッチングし導体回路を形成するサブトラクティブ法であり、導体回路の微細化は困難である。
従って、導体回路の高密度化、演算処理速度の高速化を実現するために、微細な導体回路で表面が平滑であるにもかかわらず導体回路の密着性に優れたプリント配線板が要求されている。
【特許文献1】特開2008−50541
【特許文献2】特開2005−243899
【特許文献3】特開2007−221068
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、導体回路の高密度化および演算処理速度の高速化されたプリント配線板を提供するために、微細な導体回路形成可能で、導体回路表面が平滑であるにもかかわらず導体回路の密着性に優れたプリント配線板の製造法および製造に適した層間絶縁樹脂フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、内層回路基板(F)の上に層間絶縁樹脂層(A)を形成し、該層間絶縁樹脂層(A)の表面に無電解メッキおよび/または電解メッキにより導体回路(B)を形成するアディティブ法によるプリント配線板であって、該層間絶縁樹脂層が少なくとも1層の感光性樹脂層(a)を含み、導体回路(B)の底面(Bb)が層間絶縁樹脂層(A)の表面(At)より下に位置し、下記数式(1)と数式(2)を満たす構造を有することを特徴とするプリント配線板;並びに
アディティブ法によるプリント配線板の製造法において、該層間絶縁樹脂層(A)が少なくとも1層の感光性樹脂層(a)を含み、該層間絶縁樹脂層(A)に導体回路パターン形状に紫外線照射と現像する工程(I)を行って下記数式(3)と数式(4)を満たす溝(C)を形成した後に、該溝(C)に導体回路(B)を形成する工程(II)を行うことを特徴とするプリント配線板の製造方法である。
d≧3μm (1)
h−d≧3μm (2)
d’≧3μm (3)
h−d’≧3μm (4)
[dは導体回路(B)の底面(Bb)の層間絶縁樹脂層(A)の表面(At)からの深さ;d’は溝(C)の底面(Cb)の層間絶縁樹脂層(A)の表面(At)からの深さを表し、hは層間絶縁樹脂層の厚さを表す。]
【発明の効果】
【0009】
第1発明のプリント配線板、および第2発明の製造法で得られたプリント配線板は、微細な導体回路の形成が可能なアディティブ法で、導体回路(B)の底面(Bb)が層間絶縁樹脂層(A)の表面(At)から下に位置する構造、すなわち導体回路(B)が層間絶縁樹脂層(A)に埋め込まれた構造を持つことにより、微細な導体回路で表面が平滑であるにもかかわらず導体回路の密着性に優れる。
また、その後のプロセスにより導体回路の剥れが発生しないことから、導体回路の高密度化、演算処理速度の高速化に適したプリント配線板が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明のプリント配線板は、内層回路基板(F)上に層間絶縁樹脂層(A)を形成し、この層間絶縁樹脂層(A)の表面に無電解メッキ単独、または無電解メッキと電解メッキにより導体回路(B)を形成する微細な導体回路形成に適したアディティブ法によるもので、この層間絶縁樹脂層(A)が少なくとも1層の感光性樹脂層(a)を含む。
【0011】
さらに、導体回路(B)の底面(Bb)が層間絶縁樹脂層(A)の表面(At)より下に位置する構造を持つことを特徴とし、導体回路(B)の底面(Bb)の層間絶縁樹脂(A)の表面(At)からの深さ(d)と層間絶縁樹脂層(A)の厚さ(h)が、d≧3μmかつh−d≧3μmとなるように設計することで導体回路の密着性を得ることができる。
すなわち、下記数式(1)と数式(2)を満たすことを特徴とする。
d≧3μm (1)
h−d≧3μm (2)
但し、dは導体回路(B)の底面(Bb)の層間絶縁樹脂層(A)の表面(At)からの深さ(μm)、hは層間絶縁樹脂層の厚さ(μm)を表す。
【0012】
図1は本発明によるプリント配線板の断面図の一例であり、図2は従来技術によるプリント配線板の層間絶縁樹脂層(A)、導体回路(B)および内層回路基板(F)の位置関係を示す断面図の一例である。
従来のプリント配線板(図2参照)は、層間絶縁樹脂層の表面(At)に導体回路(B)が形成され、導体回路(B)の底面(Bb)と層間絶縁樹脂層の表面(At)が同じ高さであるのに対し、本発明のプリント配線板(図1参照)は、層間絶縁樹脂層(A)の表面(At)よりも導体回路(B)の底面(Bb)が下に位置することを特徴とする。
【0013】
第2発明の製造方法において、層間絶縁樹脂層(A)に少なくとも1層の感光性樹脂層(a)を含むことにより、この層間絶縁樹脂層(A)に導体回路パターン形状に紫外線照射と現像する工程(I)を行って下記数式(3)と数式(4)を満たす深さの溝(C)を形成することができる。
d’≧3μm (3)
h−d’≧3μm (4)
[d’は溝(C)の底面(Cb)の層間絶縁樹脂層(A)の表面(At)からの深さ(μm)を表し、hは層間絶縁樹脂層の厚さ(μm)を表す。]
【0014】
この溝(C)に導体回路(B)を形成する工程(II)を行うことで、容易に導体回路(B)の底面(Bb)が層間絶縁樹脂層(A)の表面(At)から下に位置し、下記数式(1)と数式(2)を満たすプリント配線板を形成することができる。
d≧3μm (1)
h−d≧3μm (2)
[dは導体回路(B)の底面(Bb)の層間絶縁樹脂層(A)の表面(At)からの深さ(μm)を表し、hは層間絶縁樹脂層の厚さ(μm)を表す。]
【0015】
図3は工程(I)と工程(II)による本発明のプリント配線板の製造法の説明図であり、層間絶縁樹脂層(A)、導体回路(B)、溝(C)および内層回路基板(F)の位置関係を示す断面図の一例である。
本発明のプリント配線板製造法は、工程(I)により層間絶縁樹脂層(A)に深さd’の溝(C)を形成し、工程(II)によりこの溝(C)に導体回路(B)を形成することを特徴とする。
【0016】
また、層間絶縁樹脂層(A)は、感光性樹脂層(a)と熱硬化性樹脂層(b)より形成されてもよい。これら感光性樹脂層(a)及び熱硬化性樹脂層(b)は、それぞれ樹脂組成の異なる1種類以上の層からなる複合層でもよい。
【0017】
例えば、感光性樹脂層(a)が樹脂組成の異なる感光性樹脂層(ax)と感光性樹脂層(ay)からなるもの、熱硬化性樹脂層(b)がそれぞれ樹脂組成の異なる熱硬化性樹脂層(bx)と熱硬化性樹脂層(by)とからなるもの等が挙げられる。
このような複合層の例を図4に示す。
内層回路基板(F)を最下層とした場合、上層に向かって、図4中の(2)熱硬化性樹脂層(b)−感光性樹脂層(a)、(3)熱硬化性樹脂層(b)−感光性樹脂層(ay)−感光性樹脂層(ax)、(4)熱硬化性樹脂層(by)−熱硬化性樹脂層(bx)−感光性樹脂層(ay)−感光性樹脂層(ax)の順に積層されてなる場合などが挙げられる。
層間絶縁樹脂層(A)の構成としては、層間絶縁樹脂層(A)の表面に位置する樹脂層が感光性樹脂層(a)であることが好ましく、さらに好ましくは内層回路基板(F)を最下層とした場合、上層に向かって熱硬化性樹脂層(b)−感光性樹脂層(a)の順になるよう積層されてなるものである。このようにすると、導体回路パターン形状の紫外線照射と現像する工程(I)により、配線を埋め込むための溝(C)の深さを調整することが容易となり、導体回路(B)が埋め込まれた構造を持つプリント配線板の製造に好適である。
【0018】
導体回路の密着性を得るためには、本発明の導体回路(B)の底面(Bb)は、通常、層間絶縁樹脂層(A)の表面(At)から3μm〜(h−3)μmの深さに位置する。好ましくは4〜(h−4)μm、特に好ましくは5〜(h−5)μmの深さに位置する。
すなわち層間絶縁樹脂層(A)の表面(At)と導体回路(B)の底面(Bb)までの深さdは、通常3μm以上であり、好ましくは4μm以上、特に好ましくは5μm以上である。また、この深さdは、通常(h−3)μm以下であり、好ましくは(h−4)μm以下、特に好ましくは(h−5)μm以下である。
深さdが3μm未満であると十分な導体回路の密着性を得ることができず、(h−3)μmよりも大きいとプリント配線板の層間の絶縁性が悪くなるという問題がある。
【0019】
層間絶縁樹脂層(A)の厚さ(h)は、内層回路パターン、表面ビアホールを充填するためには、10〜200μmが好ましく、さらに好ましくは13〜180μm、特に好ましくは15〜150μmである。この範囲であると、プリント配線板を薄くできるとともに、層間の絶縁性に優れる。
【0020】
導体回路(B)を構成する金属としては公知のモノが使用でき、例えば、銅、銀、金、鉄、ニッケル、クロム、亜鉛、アルミニウム及びマグネシウム等が挙げられる。これらは単独または2つ以上を同時に使用することができる。これらのうち、電気伝導性の観点から、銅、銀、金及びアルミニウムがさらに好ましい。
【0021】
導体回路(B)の高さは、電気信号を通すためには、通常3〜50μm、好ましくは4〜40μm、特に好ましくは5〜30μmである。3μm未満であると電気抵抗が大きくなり、50μmよりも大きいとプリント配線板の生産性が低下する問題がある。
【0022】
感光性樹脂層(a)を構成する感光性樹脂は特に限定されないが、感光性アクリル樹脂 (a1)、感光性ポリイミド樹脂(a2)、感光性エポキシ樹脂(a3)、ジアゾナフトキノン誘導体含有樹脂(a4)等が挙げられる。これらは、単独または2つ以上を同時に使用することができる。
これらの感光性樹脂のうち、機械特性と誘電特性等の観点から、感光性アクリル樹脂(a1)及びポリイミド樹脂(a2)が好ましい。
【0023】
感光性アクリル樹脂(a1)としては公知のモノが使用でき、1分子中に2つ以上の(メタ)アクリル基を有する多官能(メタ)アクリル化合物と光重合開始剤の組合せが挙げられる。
例えば、バインダーポリマーと(メタ)アクリルモノマーおよび/又は(メタ)アクリルオリゴマーからなる感光性樹脂(例えば、特開平7−181676号公報を参照)、エポキシ樹脂の一部に(メタ)アクリル基を導入した感光性樹脂(例えば、特開昭61−59447号公報、特開平6−317904号公報、特開平11−43654号公報を参照)等が挙げられる。
なお、本発明において、「(メタ)アクリ・・・」とは、「アクリ・・・」及び「メタクリ・・・」を表す。
【0024】
感光性ポリイミド樹脂(a2)としては公知のモノが使用でき、ジアミンとテトラカルボン酸二無水物を反応させて得られるポリアミック酸およびポリイミドに感光性基を付与した化合物が挙げられる。
例えば、ポリアミック酸に3級アミンと(メタ)アクロイル基を有する化合物を混合して感光性ポリイミドとしたイオン結合型感光性ポリイミド(例えば、特開昭54−145794号公報を参照)、ポリアミック酸のカルボキシル基にエステル結合を介してメタクロイル基を導入したエステル結合型感光性ポリイミド(例えば、特公昭55−030207号公報、特公昭55−041422号公報を参照)、メタクロイル基を有するイソシアネート化合物をポリアミック酸のカルボキシル基部位に導入した感光性ポリイミド(例えば、特開昭59−160140号公報、特開平03−170547号公報、特開平03−186847号公報、特開昭61−118424号公報を参照)、およびポリアミック酸と(メタ)アクリル化合物とを混合した感光性ポリイミド(例えば、特開平11−52569号公報を参照)、ポリアミック酸と光酸発生剤とを混合した感光性ポリイミド(例えば、特開平10−316751号公報を参照)、ポリアミック酸と光塩基発生剤を混合した感光性ポリイミド(例えば、特開平6−295063号公報を参照)、ポリアミック酸とジアゾナフトキノン誘導体とを混合した感光性ポリイミド、ベンゾフェノン骨格を有するポリイミドからなる感光性ポリイミド、ポリアミック酸とメチロール系架橋剤と光酸発生剤からなる感光性ポリイミド、フェノール性の水酸基を含有するポリイミドとジアゾナフトキノン誘導体とを混合した感光性ポリイミド(例えば、「ポリイミドの高機能化と応用技術」、サイエンス&テクノロジー社発行、115〜129頁を参照)等が挙げられる。
【0025】
感光性エポキシ樹脂(a3)としては公知のモノが使用でき、1分子中に2つ以上のエポキシ基を有する多官能エポキシ樹脂と光カチオン重合開始剤の組合せが挙げられる。
例えば、多官能エポキシ樹脂とスルホニウム塩からなる樹脂組成物(例えば、特開平5−255240号公報を参照)、多官能エポキシ樹脂とフェノール樹脂からなる樹脂組成物(例えば、特開昭63−71840号公報を参照)および多官能エポキシ樹脂とフェノール樹脂と不飽和カルボン酸からなる樹脂組成物(例えば、特開平8−179506号公報を参照)等が挙げられる。
【0026】
ジアゾキノン誘導体含有樹脂(a4)としては公知のモノが使用でき、ジアゾキノン誘導体と熱可塑性樹脂の組合せの組合せが挙げられる。
ジアゾキノン誘導体としては、1,2−ベンゾキノンジアジドあるいは1,2−ナフトキノンジアジド構造を有する化合物であり、米国特許明細書第2,772,972号、第2,797,213号、第3,669,658号により公知の物質である。
【0027】
熱可塑性樹脂としては公知のモノが使用でき、ポリイミド樹脂、ポリアミド酸樹脂、フェノール樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン樹脂、スチレン−無水マレイン酸共重合体、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。
【0028】
熱硬化性樹脂層(b)を構成する熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂(b1)、ポリイミド樹脂(b2)、シアネート樹脂(b3)及びその他の反応性基を有する樹脂等が使用できる。
これらの硬化性樹脂のうち、機械特性と誘電特性等の観点から、エポキシ樹脂(b1)及びポリイミド樹脂(b2)がさらに好ましい。
【0029】
エポキシ樹脂(b1)は、エポキシ樹脂と硬化剤とからなる。
エポキシ樹脂と硬化剤としては、エポキシ樹脂及び硬化剤として通常使用される公知のもの(例えば、「実用プラスチック辞典」、株式会社産業調査会、1993年5月1日発行、211〜225頁に記載のもの)が使用できる。
例えば、エポキシ樹脂とアミン化合物からなる樹脂組成物、エポキシ樹脂と酸無水物からなる樹脂組成物、エポキシ樹脂とフェノール樹脂からなる樹脂組成物およびエポキシ樹脂とカルボン酸からなる樹脂組成物(例えば、「入門エポキシ樹脂」、株式会社高分子刊行会発行)、69〜105頁を参照)等が挙げられる。
【0030】
ポリイミド樹脂(b2)は、ジアミンとテトラカルボン酸二無水物とからなるポリイミド樹脂及び前駆体であるポリアミック酸(例えば、特開昭63−175024号公報、特開昭63−314240号公報、特開平1−131241号公報、特開平1−131242号公報、特開平1−131243号公報、特開平1−131244号公報、特開平2−53827号公報を参照)等が挙げられる。
【0031】
シアネート樹脂(b3)としては公知のモノが使用できる(例えば、独国特許2533122号公報、国際特許88/05443号公報、特許公開平8−269325号公報を参照)。
【0032】
熱硬化性樹脂としてのその他の反応性基を有する樹脂は、重合性二重結合を有する公知の化合物等が使用できる(例えば、特開2001−279110号公報を参照)。
【0033】
本発明における感光性樹脂組成物、及び硬化性樹脂組成物には、必要に応じてさらに添加剤を添加することが出来る。この添加剤として、例えば、無機フィラー、レベリング剤等が含まれる。
【0034】
無機フィラーとしては、無機酸化物と無機塩が使用できる。
無機酸化物としては、公知のものが利用でき、具体的には、例えば、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化アルミニウム等が挙げられる。無機塩としては、公知のものが利用でき、具体的には例えば、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等が挙げられる。
これらの中で、電気特性(湿熱信頼性・誘電特性)、耐熱性及び耐薬品性の観点から、無機酸化物が好ましく、より好ましいものとしては、酸化ケイ素及び酸化チタンが挙げられる。特に好ましいものとして酸化ケイ素が挙げられる。
【0035】
レベリング剤としては、シリコーンレベリング剤、ポリエーテルレベリング剤及びアルコールレベリング剤等が使用できる。
【0036】
本発明の紫外線照射する前の層間絶縁樹脂層(A)の形成方法としては、
(i)層間絶縁樹脂層(A)を構成する樹脂組成物を所定の有機溶剤に溶解/分散した樹脂ワニスを内層回路基板(F)に塗布後、加熱及び/又は熱風吹き付けにより溶剤を乾燥させて層間絶縁樹脂層(A)を形成する方法、
(ii)前記樹脂ワニスを支持ベースフィルム(D)に塗布、乾燥させ層間絶縁樹脂層(A)を設けてなるプリント配線板用層間絶縁樹脂フィルム(E)を、内層回路基板(F)に加熱条件下、加圧ラミネートする工程を行うことにより層間絶縁樹脂層(A)を形成する方法などが挙げられる。
【0037】
プリント配線板用層間絶縁樹脂フィルム(E)の層間絶縁樹脂層(A)は、樹脂ワニスの塗布、乾燥の工程を2回以上行うことで複合層を形成することができる。
例えば図5に示すように、支持ベースフィルム(D)を最下層とした場合、上層に向かって、図5中の(2)感光性樹脂層(a)−熱硬化性樹脂層(b)、(3)感光性樹脂層(ax)−感光性樹脂層(ay)−熱硬化性樹脂層(b)、(4)感光性樹脂層(ax)−感光性樹脂層(ay)−熱硬化性樹脂層(bx)−熱硬化性樹脂層(by)の順に積層されてなるプリント配線板用層間絶縁樹脂フィルム(E)等が挙げられる。
これらの(i)と(ii)の方法は単独または2つ以上を複数回行うことができる。好ましいものは、プリント配線板用層間絶縁樹脂フィルム(E)を加熱条件下で加圧ラミネートする方法であり、特に好ましいものは、層間絶縁樹脂層(A)が感光性樹脂層(a)と熱硬化性樹脂層(b)からなるプリント配線板用層間絶縁樹脂フィルム(E)を加熱条件下で加圧ラミネートする方法である。このようにするとプリント配線板の生産性が大幅に向上し好適である。
【0038】
樹脂ワニスの塗布はカーテンコート、ロールコート、スプレーコート、スクリーン印刷等公知の方法を用いて行うことができる。
乾燥条件は、使用する溶剤により異なるが、好ましくは50〜200℃で2〜30分の範囲で実施され、乾燥後の層間絶縁樹脂の複素粘度や残留溶剤量(重量%)等で適宜決定する。
【0039】
内層回路基板(F)としては、ガラスエポキシや金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等が使用することができ、回路表面はあらかじめ粗化処理されてあっても良い。
【0040】
支持ベースフィルム(D)としては、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート等が挙げられる。ベースフィルムの厚みは10〜150μmが好ましい。ベースフィルムの横幅は、装置に入るものであれば、特に指定はないが30〜300cmが好ましい。
なお、ベースフィルムにはマット処理、コロナ処理の他、離型処理を施してあってもよい。
またロールの両端あるいは片側に樹脂のない支持ベース部分を5mm以上もうけてあれば、ラミネート部の樹脂付着防止、支持ベースフィルムの剥離が容易になる等の利点がある。
【0041】
有機溶剤としては、層間絶縁樹脂組成物を溶解及び/又は分散させることができ、樹脂溶液をフィルム製造装置に適用できる物性(粘度等)に調整できるものであれば特に限定なく、例えば、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、トルエン、エタノール、シクロヘキサノン、メタノール、メチルエチルケトン、酢酸エチル、アセトン及びキシレン等の公知の溶媒が使用できる。これらの溶媒のうち、フィルムの乾燥温度等の観点から、沸点が200℃以下のもの(トルエン、エタノール、シクロヘキサノン、メタノール、メチルエチルケトン、酢酸エチル、アセトン及びキシレン)が好ましく、単独又は2種類以上組み合わせで使用することもできる。
【0042】
プリント配線板用層間フィルム(E)を内層回路基板(F)に加熱条件下で加圧ラミネートする際には、支持ベースフィルム(D)側から加圧、加熱しながらラミネートする。生産の安定性の観点からラミネートは減圧条件下で行うことが好ましい。
加圧ラミネートはバッチ式であってもロール式での連続式で行ってもよく、両面同時に行うことが好ましい。
ラミネート温度は通常50〜180℃であって、好ましくは60〜170℃、さらに好ましくは70〜150℃である。50℃未満では内層回路基板(F)に転写しにくく、180℃より高いとプリント配線板の生産性が低下する問題がある。
ラミネートの圧力は通常0.1〜20MPaであって、好ましくは0.2MPa〜15MPaである。0.1MPa未満では内層回路基板(F)に転写しにくく、20MPaより高いと層間絶縁樹脂層の厚さが調整できない。減圧条件は通常10kPa以下で、好ましくは2.5kPa以下である。
【0043】
プリント配線板に層間絶縁樹脂層(A)を形成した後、導体回路パターン形状の紫外線照射と現像する工程(I)を行うことにより導体回路パターン形状の溝(C)を形成する。
ついで必要に応じて層間絶縁樹脂層(A)の物性を向上させるために熱硬化させても良く、さらに導体回路の密着性を上げるために乾式及び/又は湿式法により粗化しても良い。
その後、溝(C)に導体回路(B)を形成する工程(II)を行うことによりプリント配線板を製造することができる。
【0044】
工程(I)の紫外線照射する方法としては、導体回路パターンを有するフォトマスクを介して活性光線により、層間絶縁樹脂層(A)の露光を行う方法が挙げられる。紫外線照射に用いる活性光線としては、本発明の感光性樹脂層(a)を反応させることができれば特に制限はない。必要に応じて、露光後に反応を進行させるための感光性樹脂層(a)の加熱処理を行ってもよい。
活性光線としては、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハロゲンランプ、電子線照射装置、X線照射装置、レーザー(アルゴンレーザー、色素レーザー、窒素レーザー、ヘリウムカドミウムレーザー等)等がある。これらのうち、好ましくは高圧水銀灯及び超高圧水銀灯である。
【0045】
工程(I)の現像する方法としては、現像液を用いて導体回路パターン形状に溶解除去する方法が挙げられる。現像液としては、感光性樹脂層(a)の紫外線照射部と非紫外線照射部で、一方が溶解し、もう一方が溶解しないようにさせることができれば特に制限はない。現像液としてはアルカリ水溶液、酸性水溶液、及び有機溶剤等がある。
現像方法としては、現像液を用いたディップ方式、シャワー方式、及びスプレー方式があるが、スプレー方式の方が好ましい。現像液の温度は、好ましくは25〜40℃で使用される。現像時間は、溶解除去する溝(C)の深さや感光性樹脂層の溶解性に応じて適宜決定される。
【0046】
溝(C)の底面(Cb)の層間絶縁樹脂層(A)の表面(At)からの深さ(d’)としては、通常3μm〜(h−3)μm、好ましくは4μm〜(h−4)μm、特に好ましくは5μm〜(h−5)μmの深さに位置する。この範囲であれば、導体回路(B)の底面(Bb)が層間絶縁樹脂層(A)の表面(At)から3μm〜(h−3)μmの深さに位置するプリント配線板を作成することが容易である。
【0047】
導体回路パターン形状の紫外線照射と現像する工程(I)の後に、必要により行う層間絶縁樹脂層の物性を向上させるための熱硬化の条件は130〜300℃で10〜300分の範囲で選択される。
【0048】
導体回路の密着性を上げるための樹脂組成物表面の乾式での粗化法としては、バフ、サンドブラスト等の機械的研磨やプラズマエッチング等が挙げられる。一方、湿式での粗化法としては過マンガン酸塩、重クロム酸塩、オゾン、過酸化水素/硫酸、硝酸等の酸化剤などの化学薬品処理が挙げられる。
【0049】
工程(II)の溝(C)に導体回路(B)を形成する方法としては、無電解メッキ層形成後に、
(i)無電解メッキ層上にメッキレジスト層を形成した後に、溝(C)と同じ形状になるように導体回路パターン形状に紫外線照射と現像を行うことで溝(C)以外の部分を覆い、ついで電解メッキを行った後に、メッキレジストを剥離し、電解メッキされていない無電解メッキ層をエッチングすることにより導体回路(B)を形成する製造方法(図6参照)、
(ii)層間絶縁樹脂層(A)の表面(At)に位置する溝(C)以外の無電解メッキ層を研磨除去した後に、電解メッキを行うことにより導体回路(B)を形成する製造方法(図7参照)、および
(iii)層間絶縁樹脂層(A)の全面に電解メッキを行った後に、層間絶縁樹脂層(A)の表面(At)までメッキを研磨除去することにより導体回路(B)を形成する製造方法(図8参照)等が挙げられる。
このように導体回路(B)が形成された後、好ましくは130〜300℃で10〜300分の範囲で行われる熱処理(アニール処理)をすることにより、導体回路の密着性をさらに向上させることもできる。
【0050】
本発明のプリント配線板は、内層回路基板(F)へのプリント配線板用層間絶縁樹脂フィルム(E)のラミネートから導体回路(B)の形成に至る工程を複数回繰り返し(ビルドアップし)、ビルドアップ層を多段に積層し多層プリント配線板を製造することができる。
【実施例】
【0051】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下、特に定めない限り、%は重量%、部は重量部を示す。
【0052】
<製造例1>
<感光性樹脂ワニス(aw)の合成>
温度計、撹拌機、滴下ロート、及び還流冷却器を備えた三口フラスコに、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業(株)製、エピクロンN−680、エポキシ当量=217)217部を、カルビトールアセテート196.5部に加熱溶解した。重合禁止剤としてハイドロキノン0.2部、触媒としてトリフェニルホスフィン1.0部を加え、アクリル酸72.0部(1.0当量)を徐々に加えながら、85〜105℃で16時間反応させた。更に、テトラヒドロ無水フタル酸76.0部(0.5当量)を加え、80〜90℃で8時間付加反応を行なった。室温まで冷却した後に、6官能アクリルモノマー(三洋化成工業(株)製、DA−600)36部、光重合開始剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、イルガキュア907)9部を加え溶解攪拌を行った。このようにして不揮発分67質量%の感光性樹脂ワニス(aw)を得た。
【0053】
<製造例2>
<熱硬化性樹脂ワニス(bw)の合成>
温度計、撹拌機、滴下ロート、及び還流冷却器を備えた三口フラスコに、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業(株)製、エピクロンN−680、エポキシ当量=217)217部、フェノキシ型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン株式会社製、エピコート E1256、エポキシ当量7800)50部、およびアミン系硬化剤(日本化薬社製、カヤハードA−A、アミン当量=126)89部を、カルビトールアセテート180部に40℃で攪拌溶解した。室温まで冷却した後に、硬化触媒(サンアプロ(株)製、SA−102)2部を加え攪拌溶解を行った。このようにして不揮発分67質量%の熱硬化性樹脂ワニス(bw)を得た。
【0054】
<実施例1>
製造例1で得られた感光性樹脂ワニス(aw)をガラスエポキシ基板に塗工速度0.3m/分で乾燥後の感光性樹脂層の厚みが40μmとなるようにナイフコーターにて全面塗布した後、90℃で4分間乾燥することにより層間絶縁樹脂層を形成した。
ついで投影型露光装置で導体回路パターンを露光し、30℃の1%炭酸ナトリウム水溶液を15秒間スプレーで吹き付けて現像後、水洗し、順風乾燥機(PH−210、エスペック株式会社製)内で、150℃で60分間乾燥させた。以上のプロセスで層間絶縁樹脂層に溝を形成した。
【0055】
ついで基板全面に無電解銅メッキを行った後に、厚みが20μmのドライフィルムレジスト(旭化成(株)製、SUNFORT SPG−102)をロール温度105℃、圧力0.3MPa、ラミネート速度1.5m/分でラミネートした。
投影型露光装置で前記導体回路パターンと同じ位置に導体回路パターンを露光し、30℃の1%炭酸ナトリウム水溶液を30秒間スプレーで吹き付けて現像後、電解銅メッキにより厚さ20μmの導体層を形成した。
ついで50℃の3%水酸化ナトリウム溶液をスプレーで吹き付けてドライフィルムレジストを剥離した後に、40℃の硫酸−過酸化水素水溶液(硫酸1mol/l、過酸化水素1mol/l)をスプレーし非導体回路部の無電解銅メッキを溶解した。
さらに、導体回路の密着性を安定させるために170℃で60分アニール処理を行い、プリント配線板(Z1)を得た。(d=30μm)
【0056】
<実施例2>
製造例1で得られた感光性樹脂ワニス(aw)を厚さ50μmのPETフィルムに乾燥後の感光性樹脂厚さが20μmになるようにロールコーターにて全面塗布した後、90℃で4分間乾燥することにより感光性樹脂層を形成した。
次いで、乾燥した樹脂の上に製造例2で得られた熱硬化性樹脂ワニス(bw)を乾燥後の樹脂厚さが30μmとなるようにロールコーターにて全面塗布した後、90℃で7分間乾燥することにより熱硬化性樹脂層を形成し、感光性樹脂層と熱硬化性樹脂層の2層からなるプリント配線板用層間絶縁樹脂フィルム(Af)を得た。ついで、得られたプリント配線板用層間絶縁樹脂フィルム(Af)を真空ラミネーターにより温度90℃、圧力0.15MPa、60秒プレスで気圧0.2kPaでガラスエポキシ基板に圧着転写し、PETフィルムを剥離することで層間絶縁樹脂層を形成した。
ついで実施例1と同様に紫外線照射・現像し溝を形成した後に、導体回路を形成しプリント配線板(Z2)を得た。(d=20μm)
【0057】
<実施例3>
熱硬化性樹脂ワニス(bw)を厚さ50μmのPETフィルムに乾燥後の熱硬化性樹脂厚さが45μmになるようにロールコーターにて全面塗布した後、90℃で4分間乾燥することにより熱硬化性樹脂層を形成し、熱硬化性樹脂層からなるプリント配線板用フィルム(bf)を得た。
ついで、得られたプリント配線板用フィルム(bf)を真空ラミネーターにより温度90℃、圧力0.15MPa、60秒プレスで気圧0.2kPaでガラスエポキシ基板に圧着転写し、PETフィルムを剥離することで熱硬化性樹脂層を形成した。ついで、感光性樹脂ワニス(aw)を、熱硬化性樹脂層を形成したガラスエポキシ基板に塗工速度0.3m/分で乾燥後の感光性樹脂層の厚みが5μmとなるようにナイフコーターにて全面塗布した後、90℃で4分間乾燥することにより感光性樹脂層と熱硬化性樹脂層の2層からなる層間絶縁樹脂層を形成した。
ついで実施例1と同様にしてプリント配線板(Z3)を得た。(d=5μm)
【0058】
<比較例1>
感光性樹脂ワニス(aw)の代わりに熱硬化性樹脂ワニス(bw)を使用した以外は実施例1と同様にしてプリント配線板(Z’1)を得た。(d=0μm)
【0059】
<比較例2>
感光性樹脂ワニス(aw)の乾燥後の樹脂厚さが20μmの代わりに2μmを使用し、かつ熱硬化性樹脂ワニス(bw)の乾燥後の樹脂厚さが30μmの代わりに45μmを使用した以外は実施例2と同様にしてプリント配線板(Z’2)を得た。(d=2μm)
【0060】
<比較例3>
プリント配線板用層間絶縁樹脂フィルム(Af)の替わりに実施例3で得られたプリント配線板フィルム(bf)、紫外線照射・現像とその後の熱処理の代わりに、先に150℃で30分硬化させた後に過マンガン酸塩からなるアルカリ性酸化剤(「Concentrate Compact CP」、アトテック株式会社製)で層間絶縁樹脂層の表面を80℃で15分間粗化処理した以外は実施例2と同様にしてプリント配線板(Z’3)を得た。(d=0μm)
【0061】
<性能評価>
プリント配線板の平滑性と密着性として、得られた(Z1)〜(Z3)、および(Z’1)〜(Z’3)の無電解メッキ前の表面粗さ、導体回路の密着力、および導体回路のパターン形成性について以下の方法で評価した。
【0062】
<表面粗さ>
無電解メッキ直前の層間絶縁樹脂層の溝(C)部分の表面を、形状測定顕微鏡(超深度形状測定顕微鏡VK−8550、株式会社キーエンス製)を用いて、倍率1250倍の条件でJIS B0601:2001の付属書2に記載された中心線平均粗さ(Ra)を5箇所測定し、これらの平均値を指標とした。なお、数値は小さいほど表面粗さが小さいことを示している。
【0063】
<導体回路の密着力>
導体回路を形成したプリント配線板中の20μm幅の導体回路を端面からピールテスターで剥離させることにより、銅金属層の引き剥がし強さをJISC6481に記載された剥離強度の測定方法で測定した。
<パターン形成性>
導体回路を形成したプリント配線板中の、10μm幅の配線の剥れを顕微鏡の倍率200倍の条件より観察し、以下の基準により評価した。
○:配線の剥れが全くない
×:一部、配線の剥がれがある
【0064】
実施例及び比較例で得た層間絶縁樹脂層、プリント配線板用及びプリント配線板について、特徴及び評価結果を表1に示す。
【0065】
【表1】

【0066】
実施例1〜3の結果から、本発明の導体回路が層間絶縁樹脂層埋め込まれた構造のプリント配線板を用いると、表面粗さが小さいにもかかわらず、導体回路の密着力が高く、パターン形成性が良いことが分かる。したがって、本発明のプリント配線板を用いると、導体回路表面が平滑かつ導体回路が微細であるにもかかわらず導体回路の密着性に優れることから、導体回路の高密度化、演算処理速度の高速化に適したプリント配線板であることが分かる。
一方、比較例1と2の結果から、導体回路が層間絶縁樹脂層への埋め込みが不十分な場合、導体回路の密着力が不足しパターン形成性に問題があることが分かる。
また、比較例3の結果から、従来法の粗化処理を行った場合、表面粗さが大きく、またパターン形成性に問題があることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明のプリント配線板は、本発明のプリント配線板を用いると、導体回路表面が平滑かつ導体回路が微細であるにもかかわらず導体回路の密着性に優れることから、導体回路の高密度化、演算処理速度の高速化に適したプリント配線板として好適である。
本発明のプリント配線板は、パソコン、カメラ一体型VTR、デジタルビデオカメラ、携帯電話、カーナビ及びデジタルカメラ等の電気製品に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明によるプリント配線板の導体回路形成後の層間絶縁樹脂層(A)、導体回路(B)、内層回路基板(F)、導体回路の底面(Bb)及び層間絶縁樹脂層の表面(At)の位置関係を示す断面図の一例である。
【0069】
【図2】従来技術によるプリント配線板の導体回路形成後の層間絶縁樹脂層(A)、導体回路(B)、内層回路基板(F)、導体回路の底面(Bb)および層間絶縁樹脂層の表面(At)の位置関係を示す断面図の一例である。
【0070】
【図3】本発明により、溝(C)を形成する工程(I)と、溝(C)に導体回路(B)を形成する工程(II)の製造方法、及び層間絶縁樹脂層(A)、導体回路(B)、内層回路基板(F)、溝(C)、導体回路の底面(Bb)、溝の底面(Cb)、層間絶縁樹脂層の表面(At)の位置関係を示す断面図の例である。
【0071】
【図4】本発明による層間絶縁樹脂層(A)の樹脂層の構成について、感光性樹脂層(a)、熱硬化性樹脂層(b)および内層回路基板(F)の組合せと位置関係を示す断面図の例である。
【0072】
【図5】本発明におけるプリント配線板用層間絶縁樹脂フィルム(E)の例であって、層間絶縁樹脂層(A)の感光性樹脂層(a)および熱硬化性樹脂層(b)と、支持ベースフィルム(D)の組合せと位置関係を示す断面図の一例である。
【0073】
【図6】本発明による溝(C)に導体回路(B)を形成する工程(II)の製造方法(i)の一例を示す説明図である。
【0074】
【図7】本発明による溝(C)に導体回路(B)を形成する工程(II)の製造方法(ii)の一例を示す説明図である。
【0075】
【図8】本発明による溝(C)に導体回路(B)を形成する工程(II)の製造方法(iii)を示す説明図の一例である。
【符号の説明】
【0076】
(A):層間絶縁樹脂層
(B):導体回路
(At):層間絶縁樹脂層の表面
(Bb):導体回路の底面
(d):導体回路の底面(Bb)の層間絶縁樹脂層の表面(At)からの深さ
(h):層間絶縁樹脂層(A)の厚さ
(a):感光性樹脂層
(ax):感光性樹脂層1
(ay):感光性樹脂層2
(b):熱硬化性樹脂層
(bx):熱硬化性樹脂層1
(by):熱硬化性樹脂層2
(C):溝
(Cb):溝の底面
(d’):溝の底面(Cb)の層間絶縁樹脂層の表面(At)からの深さ
(D):支持ベースフィルム
(E):プリント配線板用層間絶縁樹脂フィルム
(F):内層回路基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内層回路基板(F)の上に層間絶縁樹脂層(A)を形成し、該層間絶縁樹脂層(A)の表面に無電解メッキおよび/または電解メッキにより導体回路(B)を形成するアディティブ法によるプリント配線板であって、該層間絶縁樹脂層が少なくとも1層の感光性樹脂層(a)を含み、導体回路(B)の底面(Bb)が層間絶縁樹脂層(A)の表面(At)より下に位置し、下記数式(1)と数式(2)を満たす構造を有することを特徴とするプリント配線板。
d≧3μm (1)
h−d≧3μm (2)
[dは導体回路(B)の底面(Bb)の層間絶縁樹脂層(A)の表面(At)からの深さを表し、hは層間絶縁樹脂層の厚さを表す。]
【請求項2】
アディティブ法によるプリント配線板の製造法において、該層間絶縁樹脂層(A)が少なくとも1層の感光性樹脂層(a)を含み、該層間絶縁樹脂層(A)に導体回路パターン形状に紫外線照射と現像する工程(I)を行って下記数式(3)と数式(4)を満たす溝(C)を形成した後に、該溝(C)に導体回路(B)を形成する工程(II)を行うことを特徴とするプリント配線板の製造方法。
d’≧3μm (3)
h−d’≧3μm (4)
[d’は溝(C)の底面(Cb)の層間絶縁樹脂層(A)の表面(At)からの深さを表し、hは層間絶縁樹脂層の厚さを表す。]
【請求項3】
該層間絶縁樹脂層(A)が該感光性樹脂層(a)とさらに熱硬化性樹脂層(b)より形成され、該感光性樹脂層(a)が該層間絶縁樹脂層(A)の表面に位置する請求項2記載のプリント配線の製造方法。
【請求項4】
さらに、該層間絶縁樹脂層(A)に紫外線照射する前に、層間絶縁樹脂層(A)を支持ベースフィルム(D)の上に設けてなるプリント配線板用層間絶縁樹脂フィルム(E)を、内層回路基板(F)に加熱条件下で加圧ラミネートする工程を行うことを特徴とする請求項2または3記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項5】
感光性樹脂層(a)と熱硬化性樹脂層(b)からなる層間絶縁樹脂層(A)、および支持フィルム(D)から構成されることを特徴とするプリント配線板用層間絶縁樹脂フィルム(E)。
【請求項6】
請求項5記載の配線板用層間絶縁樹脂フィルム(E)を用いて内層回路基板(F)に加熱条件下で加圧ラミネートする工程を行うことを特徴とするプリント配線板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−80862(P2010−80862A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−250387(P2008−250387)
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】