説明

プレキャストコンクリート板

【課題】 コンクリート板全体にわたって連続的にプレストレストが付与されたプレキャストコンクリート板を提供することである。
【解決手段】 プレキャストコンクリート板1は、コンクリート板の長さ方向の中途部に段差部2が形成され、該段差部2を境にして形成された高さの異なる一方のコンクリート板3と他方のコンクリート板4とに長さ方向に沿って引張材5が適宜間隔をもって埋設され、これらの引張材5が段差部2において連結板6で連結され、該連結板6で連結されて一本になった引張材7で所定のプレストレスが付与されてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は段差部を備えたプレキャストコンクリート板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、段差部19を備えたプレキャストコンクリート板20が多く使用されている。このプレキャストコンクリート板20は、図6に示すように、小梁を省いた状態で荷重を支持できるように引張材21でプレストレストが付与されている。この引張材21は高さの異なるコンクリート板22、23ごとに配線され、このコンクリート板22、23ごとにプレストレストが付与されている。また、その他のプレキャストコンクリート板として、例えば特開2004−176299号公報の発明がある。
【特許文献1】特開2004−176299号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記のプレキャストコンクリート板は、段差部に最も大きな曲げモーメントが作用し、この曲げモーメントに引張材の付着応力だけで抵抗しているため、この付着応力が減退すると曲げ抵抗が急激に弱くなって大きな破壊を招くおそれがあった。
【0004】
本発明は上記のような問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、コンクリート板全体にわたって連続的にプレストレストが付与されたプレキャストコンクリート板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するための本発明のプレキャストコンクリート板は、コンクリート板の長さ方向の中途部に段差部が形成され、該段差部を境にして形成された高さの異なる一方のコンクリート板と他方のコンクリート板とに長さ方向に沿って引張材が適宜間隔をもって埋設され、これらの引張材が段差部において連結板で連結され、該連結板で連結されて一本になった引張材で所定のプレストレスが付与されたことを特徴とする。また連結板は斜板とこの両端部の垂直板とからなり、これらの垂直板に引張材の一端部が定着グリップまたは定着ナットで定着されたことを含む。また連結板は対向した二枚の垂直板と、これらの垂直板を繋ぐ接続板とからなり、これら二枚の垂直板にわたって引張材の一端部が定着されたことを含むものである。
【発明の効果】
【0006】
連続した一本の引張材により、段差部を備えたプレキャストコンクリート板全体にプレストレストを付与することができるので、段差部が補強されてそこにかかる荷重を支持することができる。また鉄筋ではなくプレストレスによって段差部が補強されたプレキャストコンクリート板を製造することができる。また引張材の端部を連結板に簡単に接合することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本願発明のプレキャストコンクリート板(以下PC板という)の実施の形態について説明する。なお、各実施の形態において同じ構成は同じ符号を付して説明し、異なった構成は異なった符号を付して説明する。
【0008】
図1〜図3は、第1の実施の形態のPC板1を示すものである。このPC板1はコンクリート板の長さ方向の中央部に形成された段差部2を境にして、高さの異なる一方のコンクリート板3と他方のコンクリート板4とから構成されている。
【0009】
これら高さの異なるコンクリート板3、4には長さ方向にそって適宜間隔ごとにPC鋼線またはPC鋼より線などの引張材5が埋設され、これらが段差部2において連結板6で連結されて一本の引張材7になっている。この一本に連結された引張材7は所定の緊張力で緊張されて、両端部が定着具8で定着されることにより、PC板1に所定のプレストレスが付与されている。
【0010】
この連結板6は、図2に示すように、斜板9とこの両端部の垂直板10とからなり、斜板9が段差部2を斜めに横切り、かつ垂直板10がコンクリート板3、4に対して垂直の状態で埋設され、これらの垂直板10に引張材5の一端部が定着グリップ11で定着されている。
【0011】
よって、高さの異なるコンクリート板3、4に埋設された引張材5は段差部2で折り曲げられた一本の引張材7になり、これで両コンクリート板3、4にわたって連続したプレストレスト、すなわちPC板1全体に連続したプレストレストが付与されている。
【0012】
また図4は、第2の実施の形態のPC板12を示すものである。このPC板12は引張材5の一端部を定着ナット13で連結板6における垂直板10に接合したものであり、これ以外は第1の実施の形態のPC板1と同じ構成である。このように引張材5の一端部を定着ナット13で垂直板10に接合すると、この定着ナット13によって引張材5の長さ調整をすることができるようになる。
【0013】
また図5は、第3の実施の形態のPC板14を示すものである。このPC板14は正面N字形の連結板15を使用したものであり、これ以外は上記の第1の実施の形態のPC板1と同じ構成である。この連結板15は対向した二枚の垂直板16と、これらの垂直板16を繋ぐ斜めの接続板17とからなり、これら二枚の垂直板16にわたって引張材5の一端部が雄ねじ18で定着され、これらが接続板17で一本になっている。
【0014】
この連結板15も上記のように引張材5の長さ調整ができるとともに、正面N字形なので安定した設置ができる。なお引張材5の一端部は雄ねじ18での定着に限らず、上記のように定着グリップ11または定着ナット13で止めることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1の実施の形態のPC板の平面図である。
【図2】(1)は図1のA−A線断面図、(2)は同B−B線断面図である。
【図3】(1)は段差部の断面図、(2)は連結板の斜視図である。
【図4】第2の実施の形態のPC板の断面図である。
【図5】第3の実施の形態のPC板であり、(1)は断面図、(2)は連結板の斜視図である。
【図6】従来の段差部を備えたPC板の断面図である。
【符号の説明】
【0016】
1、12、14、20 PC板
2、19 段差部
3、4、22、23 コンクリート板
5、7、21 引張材
6、15 連結板
8 定着具
9 斜板
10、16 垂直板
11 定着グリップ
13 定着ナット
17 接続板
18 雄ねじ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート板の長さ方向の中途部に段差部が形成され、該段差部を境にして形成された高さの異なる一方のコンクリート板と他方のコンクリート板とに長さ方向に沿って引張材が適宜間隔をもって埋設され、これらの引張材が段差部において連結板で連結され、該連結板で連結されて一本になった引張材で所定のプレストレスが付与されたことを特徴とするプレキャストコンクリート板。
【請求項2】
連結板は斜板とこの両端部の垂直板とからなり、これらの垂直板に引張材の一端部が定着グリップまたは定着ナットで定着されたことを特徴とする請求項1に記載のプレキャストコンクリート板。
【請求項3】
連結板は対向した二枚の垂直板と、これらの垂直板を繋ぐ接続板とからなり、これら二枚の垂直板にわたって引張材の一端部が定着されたことを特徴とする請求項1に記載のプレキャストコンクリート板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−233697(P2006−233697A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−53271(P2005−53271)
【出願日】平成17年2月28日(2005.2.28)
【出願人】(000228350)日本カイザー株式会社 (14)
【Fターム(参考)】