説明

プレキャストコンクリート製品の養生治具、及び養生方法

【課題】プレキャストコンクリート製品の気中養生時に、その周縁端部を断熱層で覆って保温することにより当該部位にひび割れが発生するのを防止するにあたって、その周縁端部への脱着を1人で容易に行い得、かつ繰り返し再使用することができて廃棄の手間が掛からない、プレキャストコンクリート製品の養生治具及び養生方法を提供する。
【解決手段】プレキャストコンクリート製品Aの気中養生時に、該プレキャストコンクリート製品の周縁端部Aaに沿って装着して、該周縁端部を断熱保温する着脱自在な養生治具2を設ける。該養生治具は、該周縁端部の周側を被覆する被覆体6と、該被覆体と該周縁端部との間に介在される断熱層8とを有し、該被覆体は該周縁端部に沿って所定長に分割形成されている。該被覆体は合成樹脂等の弾性素材で断面コ字状に形成され、その内側面に断熱層を形成して該プレキャスト製品の表面Aa1,Aa2に圧接する断熱材が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプレキャストコンクリート製品の養生治具に係わり、特に気中養生時にプレキャストコンクリート製品の周縁端部に装着して当該部位を断熱することにより、その周縁端部にひび割れ等の損傷が発生するのを防止し得るようにしたプレキャストコンクリート製品の養生治具、並びに当該養生治具を使用した養生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート版やシールドトンネルに用いるコンクリート製セグメント等のプレキャストコンクリート製品を製作するにあたって、そのコンクリートにセメント量の多いものを用いて打設形成すると、その脱型後の気中養生時の発熱量が大きくなるため、プレキャストコンクリート製品の温度は外気温よりもかなり高めになる。また、蒸気養生を行った場合には、プレキャストコンクリート製品と外気との温度差はさらに大きくなってしまう。 そして、このように脱型後のプレキャストコンクリート製品と外気との温度差が大きいと、その気中養生時において、プレキャストコンクリート製品の放熱性が良い周縁端部の温度がその中心部の温度よりも早期に下がり、特に端部や隅角部にひび割れが発生しやすくなる。そこで、このひび割れの発生を防止すべく、プレキャストコンクリート製品を気中養生するに際しては、当該製品を断熱シートで包んで断熱保温しながら気中養生をしていた。
【0003】
しかしながら、プレキャストコンクリート製品の全体を断熱シートで包んで保温してしまうと、逆に製品全体の温度がなかなか下がらなくなってしまい、次工程に移行するまでに相当な時間を要して生産効率が低下してしまうことになる。このため従来にあっては、例えば下記特許文献1等にて示されているように、プレキャストコンクリート製品の気中養生時には、その隅角部を断熱材で覆って当該部位を局部的に保温して養生する一次養生工程と、断熱シートを取り除いて養生する二次養生工程とを行うようにした養生方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−290087
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、プレキャストコンクリート製品の気中養生時に用いる断熱材としては、一般的に断熱シートが多用されているが、当該断熱シートをプレキャストコンクリート製品の隅角部等の周縁端部に巻き付けて粘着テープ等で装着固定するという作業は、甚だ面倒で手間が掛かるものであって、一人の作業員にて行うには非常に困難性を伴うことから複数の人員を要していた。
また、当該断熱シートは剥がした後に畳んでも嵩高となって、その片付けに手間が掛かるという問題があった。
【0006】
本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は、プレキャストコンクリート製品の気中養生時に、その周縁端部を断熱層で覆って保温することにより当該部位にひび割れが発生するのを防止するにあたって、その周縁端部への脱着を1人で容易に行い得、かつ繰り返し再使用することができて廃棄の手間が掛からない、プレキャストコンクリート製品の養生治具、及び当該養生治具を用いた養生方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するために請求項1に示す発明は、プレキャストコンクリート製品の気中養生時に、該プレキャストコンクリート製品の周縁端部に沿って装着して該周縁端部を断熱保温する、着脱自在な養生治具であって、該周縁端部の表面を被覆する被覆体と、該被覆体と該周縁端部との間に介在される断熱層とを有し、該被覆体は該周縁端部に沿って所定長に分割形成されている、ことを特徴とする。
【0008】
請求項2に示す発明は、請求項1に記載のプレキャストコンクリート製品の養生治具であって、前記被覆体は合成樹脂等の弾性素材で断面コ字状に形成され、その内側面には前記断熱層を形成して該プレキャストコンクリート製品の表面に圧接する断熱材が設けられている、ことを特徴とする。
【0009】
請求項3に示す発明は、請求項1に記載のプレキャストコンクリート製品の養生治具であって、前記被覆体は合成樹脂等の弾性素材で断面コ字状に形成され、該コ字状断面の開口端両縁に沿って、該プレキャストコンクリート製品の表面に圧接して、該プレキャスト製品の周縁端部表面と該被覆体の内側面との間に前記断熱層としての空気層を形成するための空間区画部材が設けられている、ことを特徴とする。
【0010】
請求項4に示す発明は、請求項3に記載のプレキャストコンクリート製品の養生治具であって、前記空間区画部材が前記被覆体と同じ弾性素材で一体形成されている、ことを特徴とする。
【0011】
請求項5に示す発明は、請求項3または4に記載のプレキャストコンクリート製品の養生治具であって、前記プレキャストコンクリート製品への装着時に、該製品の端面に対向する前記被覆体の内面に、該端面に当接して該被覆体との離間寸法を所定値に保持する離隔部材が設けられている、ことを特徴とする。
【0012】
請求項6に示す発明は、請求項1〜5のいずれかに記載のプレキャストコンクリート製品の養生治具を用いたプレキャストコンクリート製品の養生方法であって、該プレキャストコンクリート製品の脱型時に、該製品の周縁端部に沿って前記分割形成された養生治具を相互に連続させて装着する取り付け工程と、該養生治具の取り付け後に、所定時間に亘って該プレキャストコンクリート製品を気中養生する一次養生工程と、該気中養生の終了後に、該養生治具を取り外す工程と、該養生治具の取り外し後に、該プレキャストコンクリート製品を養生する二次養生工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、プレキャストコンクリート製品の気中での一次養生時に、その周縁端部を断熱層で覆って保温することにより当該部位にひび割れが発生するのを防止するにあたって、その周縁端部への脱着を1人で容易に行い得、かつ繰り返し再使用することができて廃棄の手間が掛からないプレキャストコンクリート製品の養生治具、及び当該養生治具を用いたプレキャストコンクリート製品の養生方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】平板状のプレキャストコンクリート製品の周縁端部に、本発明に係る養生治具を適用して装着した状態を示す図で、(a)はその平面図、(b)はその正面図、(c)は同図a中のc−c線矢視断面図である。
【図2】本発明に係る養生治具の第1実施形態を示す斜視図であり、(a)はプレキャストコンクリート製品の直線部に装着される養生治具片を示し、(b)は隅角部に装着される養生治具片を示す。
【図3】本発明に係る養生治具の第2実施形態を示す斜視図であり、(a)はプレキャストコンクリート製品の直線部に装着される養生治具片を示し、(b)は隅角部に装着される養生治具片を示す。
【図4】本発明に係る養生治具の第3実施形態を示す斜視図であり、(a)はプレキャストコンクリート製品の直線部に装着される養生治具片を示し、(b)は隅角部に装着される養生治具片を示す。
【図5】本発明に係る養生治具の第4実施形態を示す側面図であり、(a)はプレキャストコンクリート製品の直線部に装着される養生治具片を示し、(b)は隅角部に装着される養生治具片を示す。
【図6】シールドトンネル用のセグメントとして、湾曲した板状に形成されたプレキャストコンクリート製品の周縁端部に、本発明に係る養生治具を適用して装着した状態を示す図で、(a)はその平面図、(b)はその正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明に係るプレキャストコンクリート製品の養生治具、及び当該養生治具を用いた養生方法について、添付図面を参照して詳述する。
【0016】
先ず、図1(a),(b),(c)に示すように、基本的に本発明の養生治具2は、プレキャストコンクリート製品Aの気中養生時に、そのプレキャストコンクリート製品Aの周縁端部Aaに沿って着脱自在に装着されて当該周縁端部Aaを断熱保温することにより、その周縁端部Aaにひび割れが発生するのを防止するようになっている。
【0017】
ここで、同図におけるプレキャストコンクリート製品Aには、床版等に用いる矩形の平板状を呈したものを例示してある。このプレキャストコンクリート製品Aは、図示していないが、型枠内にコンクリートが打設されて形成される。そして、当該製品Aが型枠から取り出された脱型時において、その周縁端部Aaにその全周長に沿って養生治具2が着脱自在に取り付けられ、当該養生治具2によって、プレキャストコンクリート製品Aの周縁端部Aaにおける上下両面Aa1,Aa2と端面Aa3との3面からなる周側部分が局部的にその全周長に亘って断熱保温される。そして、その周縁端部Aaにおける3面からなる周側部分が局部的に断熱保温された状態にて、プレキャストコンクリート製品Aが所定時間に亘って気中にて一次養生される。また、この一次養生の終了後には、当該養生治具2が取り外され、その取り外し後に、プレキャストコンクリート製品Aが二次養生されるようになっている。なお、当該二次養生には、気中養生または水中養生等を採用し得る。
【0018】
ここで、上記養生治具2は、プレキャストコンクリート製品Aの周縁端部Aaの表面を被覆する被覆体6と、この被覆体6とプレキャストコンクリート製品Aの周縁端部との間に介在される断熱層8とを有し、被覆体6と断熱層8とからなる養生治具2は製品Aの周縁端部Aaに沿って所定長に分割形成されている。即ち、養生治具2は分割形成された多数の養生治具片4からなっており、平面視で矩形状をなす4辺の直線部分を被覆する直線部用養生治具片4aと隅角部分を被覆する隅角部用養生治具片4bとを有している。そして、これらの各直線部用養生治具片4aと隅角部用養生治具片4bとは、相互に端部同士がほぼ密着状態に付き合わされて、連続した環状の状態となってプレキャストコンクリート製品Aの周縁端部Aaに装着されるようになっている。なお、各養生治具片4a,4bは、作業員が一人で持ち運びできる程度の所定長に分割形成される。
【0019】
以降、当該プレキャストコンクリート製品Aに対して装着する養生治具2の種々の実施形態について、その養生治具片4をより具体的に例示して順次に説明する。
【0020】
===第1実施形態===
図2は本発明の第1実施形態に係るプレキャストコンクリート製品の養生治具102(=養生治具2)を示しており、図1(c)に示す断面図もこの第1実施形態のものになっている。即ち、この第1実施形態の養生治具102にあっては、図2(a)に示す直線部用養生治具片104aの被覆体106a、並びに同図(b)に示す隅角部用養生治具片104bの被覆体106bは、ともに合成樹脂等の弾性素材で断面コ字状に形成され、その断面コ字状の内側面にはその全面に亘って、前記断熱層8を形成してプレキャストコンクリート製品の表面に圧接する断熱材108が設けられて構成されている。
【0021】
つまり、上記被覆体106a,106bの上下の板部110は、その間隔がプレキャストコンクリート製品Aの厚みよりも十分に大きく形成されており、その内側の対向面に設けられる断熱材108同士の対向面間の間隔がプレキャストコンクリート製品Aの厚みよりも少し小さく設定されている。このため、被覆体106a,106bがプレキャストコンクリート製品Aの周縁端部Aaに装着された際には、断熱材108が圧縮された状態となってプレキャストコンクリート製品Aの表面Aa1,Aa2に圧接する。ここで、上記断熱材108としては、気泡緩衝シート、或いは発泡ポリウレタンや発泡スチロール等の発泡樹脂係素材、またはグラスウール等の断熱素材、さらにはエアーバッグなどの種々のものが適用可能である。
【0022】
また、図2(b)に示してあるように、隅角部用養生治具片104bには、その被覆体106bの長手方向の一方端側に、そのコ字状の断面を閉塞する覆板112が設けられており、この覆板112の内面側にも断熱層を形成する断熱材108が設けられている。ここで、上記覆板112はコ字状断面を形成している上下の板部110に対して切断線が入れられる等して相互に遊離形成されていて、上下の板部110がそれぞれに弾性変形してその突出端側の開口が拡開するのを阻害しないようになっている。また、同様にそれらの板部110,112の内側に設けられる断熱材108も相互に遊離形成されている。
【0023】
そして、上記の様に構成される直線部用養生治具片104aと隅角部用養生治具片104bとは、プレキャストコンクリート製品が型枠から取り出された脱型時に、図1(a)に示すように、当該プレキャストコンクリート製品Aの周縁端部Aaに沿って相互に端部同士が付き合わされて、ほぼ密着された状態で連続的に取り付けられていき、その全周に亘って環状に装着形成される。なお、この取り付けに際しては、弾性素材で形成された被覆体106a,106bの上下の板部110の突出端側の開口部を拡開して弾性変形させながら、プレキャストコンクリート製品Aの周縁端部Aaを内部に差し込むようにして嵌合装着する。(養生治具の取り付け工程)
そして、当該養生治具102の取り付け終了後に、プレキャストコンクリート製品Aを所定時間に亘って気中にて一次養生し(一次養生工程)、この一次養生の終了後に、直線部用養生治具片104aと隅角部用養生治具片104bとの全てを逐次に取り外し(養生治具の取り外し工程)、爾後、プレキャストコンクリート製品Aを水中に所定時間浸漬して、または所定時間気中に放置して二次養生する(二次養生工程)。なお、本実施形態においては、1次養生後に、水中に所定時間浸漬して、または、所定時間気中に放置して2次養生を行う場合について説明したが、当該二次養生はこれらに限定されるものではなく、その他の養生方法として封緘養生やラップ養生などを用いてもよい。
【0024】
従って、上述の様にしてなる本実施形態によれば、作業員が一人で持ち運び可能な大きさに分割形成した直線部用養生治具片104aと隅角部用養生治具片104bとを用いて、これらを一つずつ逐次にプレキャストコンクリート製品Aの周縁端部Aaに連続させて装着して環状の養生治具102(=2)に組み立てていくので、当該養生治具102の組み立て取り付け作業および解体取り外し作業を一人の作業員で容易に行うことができるようになる。
【0025】
また、取り外して個々の直線部用養生治具片104aと隅角部用養生治具片104bとに解体した養生治具102は、繰り返し再利用して他のプレキャストコンクリート製品Aの気中での一次養生時に転用できるので、廃材が発生することがなく、その廃棄処理の手間が無くなる。
【0026】
さらに、養生治具102を多数の養生治具片104a,104bに分割形成してあるので、気中養生中にプレキャストコンクリート製品Aをクレーンやフォークリフト等で他所に移動させる必要がある場合にも、そのクレーンやフォークリフト等で支持する部分に該当した位置の養生治具片104aを一時的に取り外すだけで、その移動を簡易に素速く行うことができるようになる。
【0027】
===第2実施形態===
図3は本発明の第2実施形態に係るプレキャストコンクリート製品の養生治具202(=養生治具2)を示す。この第2実施形態の養生治具202にあっても、その基本的な構成は上述の第1実施形態と同様であるので、以下にはその相違する点について詳述する。
【0028】
即ち、この第2実施形態のプレキャストコンクリート製品の養生治具202にあっては、図3(a)に示す直線部用養生治具片204aの被覆体206a、並びに同図(b)に示す隅角部用養生治具片204bの被覆体206bは、ともに合成樹脂等の弾性素材で断面コ字状に形成されて、その断面コ字状の内側面には、少なくとも当該コ字状をなして拡開する開口端の両縁、つまり少なくとも上下の板部210の突出端縁に沿って、空間区画部材214が設けられている。そして、この空間区画部材214はプレキャストコンクリート製品の表面に圧接してプレキャストコンクリート製品の周縁端部表面と当該被覆体206a,206bの内側面との間に前記断熱層8としての空気層216を確保する空間を区画形成するようになっている。なお、図3に示した実施形態例では、上記空間区画部材214は被覆体206a,206bの内側面の外周縁部に沿って、その全長に亘って環状をなしてほぼ連続的に設けられている。なお、図中の212は覆板である。
【0029】
また、プレキャストコンクリート製品Aへの装着時に、そのプレキャストコンクリート製品の端面Aa3に対向する被覆体206の内面、つまり上下の板部210同士を繋いでいる側板部211に設けられている上記空間区画部材214は、当該分割養生片204a,204bを取り付ける際に、プレキャストコンクリート製品Aの端面Aa3に当接して被覆体206a,206bとの離間寸法を所定値に保持して、当該部位に断熱空気層216を確保するための離隔部材218として少なくとも機能すれば良い。即ち、当該部位に設ける空間区画部材214は、取り付け時の位置合わせを容易に行い得るようにすれば良く、空間区画部材214として当該部位には必ずしも設ける必要はない。つまり、離隔部材218としてのみ機能させて設ける場合には、側板部211から内方に所定長突出するロッド状等のものであっても良く、その形成位置も側板部211の中央部寄りに複数本設けるようにしても良い。
【0030】
また、上記空間区画部材214は、プレキャストコンクリート製品Aの表面に圧接して空気の流通を抑制することで、所定の断熱性を確保できる空気層216(=断熱層8)の空間を区画形成し得るものであれば良く、よってその素材は特に問われることはないが、プレキャストコンクリート製品Aの表面への圧接時の密着性や安定性を考慮すると、例えばネオプレンゴム等の樹脂系の弾性素材を使用するのが好ましい。
【0031】
なお、上記以外の構成は前述の第1実施形態と同様であり、また、プレキャストコンクリート製品への脱着時の取り付け/取り外し手順や、その養生方法も第1実施形態と同様であって、その作用効果も同等のものとなる。
【0032】
===第3実施形態===
図4は本発明の第3実施形態に係るプレキャストコンクリート製品の養生治具302(=養生治具2)を示し、この第3実施形態のプレキャストコンクリート製品の養生治具302にあっては、図4(a)に示す直線部用養生治具片304aの被覆体306a、並びに同図(b)に示す隅角部用養生治具片304bの被覆体306bは、ともに合成樹脂等の弾性素材で断面コ字状に形成されて、その断面コ字状の内側面には、少なくとも当該コ字状をなして拡開する開口端の両縁に沿って空間区画部材314が設けられ、この空間区画部材314が被覆体306a,306bと同じ弾性素材で一体形成されている。また、空間区画部材314は被覆体306a,306bの内側面に、その外周縁の全長に沿って連続的に環状に設けられている。ここで、上下の板部310の長手方向両側端縁と、当該上下の板部310同士を繋いでいる側板部311の長手方向両側端縁とにそれぞれ形成される上記空間区画部材314がコ字状に連なって一体的形成されていると、上下の板部310の拡開が阻害されることになるので、そのコ字状の各角部には切り込み線を入れる等してそれらを相互に遊離させておく。なお、図中の312は覆板である。
【0033】
即ち、この第3実施形態は、前述の第2実施形態における空間区画部材214を被覆体206a,206bと同じ弾性素材で一体形成した構成に相当するが、当該第3実施形態について換言すれば、被覆体306a,306bは合成樹脂等の弾性素材で断面C字状に形成されて、このC字状断面の開口部が該プレキャストコンクリート製品Aの表面に圧接して、プレキャストコンクリート製品Aの表面と被覆体306a,306bの内側面とによって区画される空間の空気層316が断熱層8として機能するようになっている。
【0034】
また、前記第2実施形態と同様に、上記空間区画部材314は、当該分割養生片304a,304bを取り付ける際に、プレキャストコンクリート製品Aの端面Aa3に当接して被覆体306a,306bとの離間寸法を所定値に保持して、当該部位に空気層316(=断熱層8)を確保するための離隔部材318として少なくとも機能して、取り付け時の位置合わせ容易に行い得るようにすれば良く、当該部位には空間区画部材は必ずしも設ける必要はない。なお、離隔部材318としてのみ機能させて設ける場合には、側板部311から内方に突出するロッド状等のものであっても良く、その形成位置も側板部311の中央部寄りに複数本設けるようにしても良い。
【0035】
なお、上記以外の構成は前述の第1実施形態と同様であり、また、プレキャストコンクリート製品への脱着時の取り付け/取り外し手順や、その養生方法も第1実施形態と同様であって、その作用効果も同等のものとなる。
【0036】
==第4実施形態===
図5(a),(b)は本発明の第4実施形態に係るプレキャストコンクリート製品の養生治具402(=養生治具2)を示しており、(a)は直線部用養生治具片404aを示し、(b)は隅角部用養生治具片404bを示している。ここで、この第4実施形態のプレキャストコンクリート製品の養生治具402にあっては、前述した第1実施形態の構成をその前提構成としており、当該第1実施形態とは下記の点で相違している。
【0037】
即ち、被覆体406a,406bはそれぞれに、上下の板部410同士を繋いでいる側板部411はプレキャストコンクリート製品Aへの装着時に、そのプレキャストコンクリート製品Aの端面Aa3に対向するが、この側板部411において養生治具片404a,404bは、それぞれ上下に2分割されている。そして、この上下に2分割された養生治具片404a,404bの上側被覆体406a−1,406b−1と下側被覆体406a−2,406b−2とは、その側板部411の外面側に設けられたヒンジ420で相互に開閉自在に連結されている。
【0038】
さらに、上記側板部411の外側には、上側被覆体406a−1,406b−1と下側被覆体406a−2,406b−2とを閉方向に付勢する付勢手段422が設けられている。当該図示例では上記ヒンジ420がバネ板で形成されていて、当該ヒンジ420が付勢手段422を兼ねている構成となっている。なお、図中の412は覆板である。
【0039】
即ち、このように上側被覆体406a−1,406b−1と下側被覆体406a−2,406b−2とがヒンジ420を介して開閉するような構成にすると、被覆体406a,406bの上下の板部410を大きく拡開させられるようになるので、プレキャストコンクリート製品への嵌合装着がより容易に行えるようになる。また、このような開閉機構を設けるようにした場合には、被覆体406a,406bが弾性変形しなくても養生治具片404a,404bを装着し得るので、当該被覆体406a,406bの素材には必ずしも合成樹脂等の弾性素材を用いなくても良い。
【0040】
なお、この第4実施例における上側被覆体406a−1,406b−1と下側被覆体406a−2,406b−2とをヒンジ420を介して開閉するようにした構成は、前述の第2実施形態および第3実施形態にも適用し得るものである。
【0041】
===第5実施形態===
図6(a),(b)は本発明の第5実施形態に係るプレキャストコンクリート製品の養生治具502(=養生治具2)を示している。この第5実施形態のプレキャストコンクリート製品の養生治具502が前述の第1実施形態〜第4実施形態と相違するところは、装着対象となるプレキャストコンクリート製品A’が、シールドトンネルに用いられるセグメントであるという点のみである。
【0042】
即ち、セグメントとしてのプレキャストコンクリート製品A’は円弧状に湾曲した板状をなしているので、その湾曲した周縁端部A’cに装着される湾曲部用養生治具片504cは、その曲率に合わせて湾曲形成される点だけが相違し、その他の点では上述した第1実施形態〜第4実施形態で述べた各養生治具の直線部用養生治具片104a,204a,304a,404a及び隅角部用養生治具片104b,204b,304b,404bと同一の構成となし得る。なお、図示した湾曲部用養生治具片504cのうち、両側端部に配設されるものが、隅角部用として構成されている。
【0043】
また、プレキャストコンクリート製品A’における円筒面の母線に沿った周縁端部A’aはほぼ直線的になっているので、当該部位には前述した第1実施形態〜第4実施形態における各直線部用養生治具片104a,204a,304a,404aと同一に構成したものを使用し得る。
【0044】
そして、当該第5実施形態のプレキャストコンクリート製品の養生治具にあっても、前述した第1実施形態〜第4実施形態と同等の作用効果が得られる。
【符号の説明】
【0045】
A、A’ プレキャストコンクリート製品
Aa、A’a、A’c 周縁端部
2 養生治具
4 養生治具片
4a 直線部用養生治具片
6 被覆体
8 断熱層
102、202、302、402、502 養生治具
104a、204a、304a、404a 直線部用養生治具片
104b、204b、304b、404b 隅角部用養生治具片
106a、206a、306a、406a 被覆体(直線部用養生治具片)
106b、206b、306b、406b 被覆体(隅角部用養生治具片)
108、408 断熱材(断熱層)
214、314 空間区画部材
216、316 空気層(断熱層)
218、318 離隔部材
504c 湾曲部用養生治具片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレキャストコンクリート製品の気中養生時に、該プレキャストコンクリート製品の周縁端部に沿って装着して該周縁端部を断熱保温する、着脱自在な養生治具であって、
該周縁端部の表面を被覆する被覆体と、該被覆体と該周縁端部との間に介在される断熱層とを有し、該被覆体は該周縁端部に沿って所定長に分割形成されている、
ことを特徴とするプレキャストコンクリート製品の養生治具。
【請求項2】
請求項1に記載のプレキャストコンクリート製品の養生治具であって、
前記被覆体は合成樹脂等の弾性素材で断面コ字状に形成され、その内側面には前記断熱層を形成して該プレキャストコンクリート製品の表面に圧接する断熱材が設けられている、
ことを特徴とするプレキャストコンクリート製品の養生治具。
【請求項3】
請求項1に記載のプレキャストコンクリート製品の養生治具であって、
前記被覆体は合成樹脂等の弾性素材で断面コ字状に形成され、該コ字状断面の開口端両縁に沿って、該プレキャスト製品の表面に圧接して、該プレキャストコンクリート製品の周縁端部表面と該被覆体の内側面との間に前記断熱層としての空気層を区画形成するための空間区画部材が設けられている、
ことを特徴とするプレキャストコンクリート製品の養生治具。
【請求項4】
請求項3に記載のプレキャストコンクリート製品の養生治具であって、
前記空間区画部材が前記被覆体と同じ弾性素材で一体形成されている、
ことを特徴とするプレキャストコンクリート製品の養生治具。
【請求項5】
請求項3または4に記載のプレキャストコンクリート製品の養生治具であって、
前記プレキャストコンクリート製品への装着時に、該製品の端面に対向する前記被覆体の内面に、該端面に当接して該被覆体との離間寸法を所定値に保持する離隔部材が設けられている、
ことを特徴とするプレキャストコンクリート製品の養生治具。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のプレキャストコンクリート製品の養生治具を用いたプレキャストコンクリート製品の養生方法であって、
該プレキャストコンクリート製品の脱型時に、該製品の周縁端部に沿って前記分割形成された養生治具を連続させて装着する取り付け工程と、
該養生治具の取り亘付け後に、所定時間に亘って該プレキャストコンクリート製品を気中養生する一次養生工程と、
該気中養生の終了後に、該養生治具を取り外す工程と、
該養生治具の取り外し後に、該プレキャストコンクリート製品を養生する二次養生工程と、
を有することを特徴とするプレキャストコンクリート製品の養生方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−57533(P2011−57533A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−212229(P2009−212229)
【出願日】平成21年9月14日(2009.9.14)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【出願人】(000198307)石川島建材工業株式会社 (139)
【Fターム(参考)】