説明

プレスと溶接の連続加工方法およびその装置

【課題】 長尺な素材鋼板に対するプレス工程と溶接工程を連動させて、しかも動作時間の短縮ができるプレスと溶接の連続加工方法およびその装置を提供する。
【解決手段】 長尺な素材鋼板2を所定の送給間隔Pで連続的に送給し、素材鋼板2にプレス加工をするプレス工程と、プレス加工が施された箇所に部品3を溶接する溶接工程とを、素材鋼板2に対して所定の送給間隔Pに等しい工程間隔で実行するプレスと溶接の連続加工方法およびその装置である。したがって、プレス工程の動作と溶接動作は間断なく実行され、他方、素材鋼板2はプレスや溶接に必要な時間、送給が停止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、所定の送給間隔で移動している長尺な素材鋼板に、プレス加工と部品の溶接を行う方法と装置に関している。
【背景技術】
【0002】
素材鋼板に対する溶接工程と、プレス工程とが一連の工程として実行されるものとして、特開平5−169165公報がある。ここに開示されている技術は、プレス工程に向かう素材鋼板の残量長さが残り少なくなると、後続の新たな素材鋼板を供給して先行する素材鋼板に溶接するものである。
【0003】
また、特公昭60−51953号公報には、間欠的に回動するインデックステーブルに所定の回動間隔で補助電極を設置し、この補助電極に鋼板部品やプロジェクションナットを載置して、可動電極でこれらの部品を加圧し溶接電流を通電することが開示されている。とくに、同公報には、補助電極上に鋼板部品を載置する工程と、この鋼板部品上にプロジェクションナットを載置する工程および鋼板部品とプロジェクションナットを電気抵抗溶接する工程が順次実行されることが開示されている。
【特許文献1】特開平5−169165公報
【特許文献2】特公昭60−51953号公報
【特許文献3】特許第2832528号公報
【特許文献4】特許第3306579号公報
【特許文献5】特許第3326490号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示されている技術には、次のような問題がある。
【0005】
つまり、プレス工程に供される素材鋼板が消費される前に、後続の追加鋼板を溶接するものである。したがって、複数回におよぶプレス工程の中で追加鋼板を補充するときにだけ溶接工程が実行される。したがって、プレス工程と溶接工程とを同期させて生産性を向上するという発想ではなく、帯状の素材鋼板を連続的にプレスしそこに部品を溶接することは開示されていない。そして、この部品溶接をプレス工程との関連で効率的に実行することも一切言及されていない。
【0006】
さらに、上記特許文献2に開示されている技術には、次のような問題がある。
【0007】
つまり、部品であるプロジェクションナットは、補助電極が所定の位置に移動してきてからパーツ供給管で供給される形式になっている。すなわち、所定位置に補助電極が停止してからパーツ供給管でプロジェクションナットが供給される形式になっている。したがって、パーツ供給管によるナット供給時間が装置全体の動作時間に加算されることとなり、装置としての動作時間の短縮にとって好ましいものではない。
【0008】
とくに、プレス工程との関連でプロジェクションナットを素材鋼板に対して効率的に溶接することに関しては、何も開示されていない。
【0009】
さらに、プロジェクションナットを供給する手段が、斜め上方から補助電極に向かうパーツ供給管の形態で構成され、また、ナット供給は供給管内を移動させて補助電極に載置する方式とされている。したがって、パーツ供給管の先端部の位置が少しでも狂っていると、ナットが目的箇所に対して正確に載置されないという問題が発生し、装置としての作動信頼性が乏しいものとなる。
【0010】
一方、上記特許文献3〜5に開示されている技術には、次のような問題がある。
【0011】
すなわち、進退式の供給ロッドの先端部分にプロジェクションナットを保持することは開示されているが、長尺な素材鋼板に対するプレス工程と溶接工程の動作時間を短縮することに関しては何等配慮されていない。
【0012】
本発明は、上記の問題点を解決するために提供されたもので、長尺な素材鋼板に対するプレス工程と溶接工程を連動させて、しかも動作時間の短縮ができるプレスと溶接の連続加工方法およびその装置を提供することを目的とする。
【問題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、以上に述べた問題点を解決するために提供されたもので、請求項1記載の発明は、長尺な素材鋼板を所定の送給間隔で連続的に送給し、前記素材鋼板にプレス加工をするプレス工程と、前記プレス加工が施された箇所に部品を溶接する溶接工程とを、素材鋼板に対して前記所定の送給間隔に等しい工程間隔で実行することを特徴とするプレスと溶接の連続加工方法である。
【0014】
また、請求項5記載の発明は、長尺な素材鋼板を所定の送給間隔で連続的に送給する送給装置と、前記素材鋼板にプレス加工をするプレス装置と、前記プレス加工が施された箇所に部品を溶接する溶接装置とを備え、前記プレス装置と溶接装置とが前記所定の送給間隔またはその整数倍の間隔で配置されていることを特徴とするプレスと溶接の連続加工装置である。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載の方法の発明においては、素材鋼板を所定の送給間隔で連続的に送給、すなわち素材鋼板の送りピッチに合致させて素材鋼板に対するプレス工程と溶接工程とが実行されるので、これら両工程を短時間で実行することができ、生産性の向上に有効である。
【0016】
請求項2記載の発明は、前記プレス工程と溶接工程とが同期した状態で実行される請求項1記載のプレスと溶接の連続加工方法である。
【0017】
前記プレス工程と溶接工程とが同期した状態で実行されるから、素材鋼板の送りピッチに合致させて、これら両工程を短時間で実行することができ、生産性の向上に有効である。とくに、両工程が同期していることにより、整然とした工程進行が実現して、信頼性の高い動作が確保できる。
【0018】
請求項3記載の発明は、前記プレス工程と溶接工程とが同期した状態で間断なく実行される請求項1または請求項2記載のプレスと溶接の連続加工方法である。
【0019】
前記プレス工程と溶接工程とが同期した状態で間断なく実行される。すなわち、両工程が同期しているとともに、両工程の動作は停止することなく連続的に実行される。したがって、素材鋼板にはプレス加工や溶接のために送り動作に停止期間が付与されるが、プレス工程と溶接については停止時間を設定しないで間断のない連続動作が行われ、それによって生産性が向上する。
【0020】
請求項4記載の発明は、前記溶接工程の後に素材鋼板を切断する切断工程が設けられている請求項1〜請求項3のいずれかに記載のプレスと溶接の連続加工方法である。
【0021】
このように、部品の溶接後に、部品が溶接された素材鋼板が切断されるので、溶接済みの鋼板部品が高い生産性のもとに完成する。
【0022】
請求項5記載の装置の発明においては、素材鋼板を所定の送給間隔で連続的に送給、すなわち素材鋼板の送りピッチに合致させて素材鋼板に対するプレス工程と溶接工程とが実行されるので、これら両工程を短時間で実行することができ、生産性の向上に有効である。
【0023】
そして、前記プレス装置と溶接装置とが前記所定の送給間隔またはその整数倍の間隔で配置されているので、プレス加工と溶接とが前記所定の送給間隔、すなわち前記送りピッチに合致した状態で実行でき、整然とした工程進行が実現して、信頼性の高い動作が確保できる。
【0024】
請求項6記載の発明は、前記プレス装置と溶接装置の動作を同期した状態で行う駆動手段が設けられている請求項5記載のプレスと溶接の連続加工装置である。
【0025】
前記プレス装置と溶接装置の動作を同期した状態で行う駆動手段が設けられているので、両装置の動作を同期させてこれら両工程を短時間で実行することができ、生産性の向上に有効である。とくに、両工程が同期していることにより、整然とした工程進行が実現して、信頼性の高い動作が確保できる。
【0026】
また、前記駆動手段は、タイミングチェーンのような簡単な機械的駆動方式で実現することができ、経済的に有利な構成とすることができる。あるいは、プレス装置と溶接装置との各々に、例えば、電動モータのような駆動手段を配置し、両駆動手段を電気的制御により一層精度の高い同期性のもとに動作させることも可能である。したがって、種々な駆動手段を採用して良好な同期動作を確保することができ、生産性の向上が実現する。
【0027】
請求項7記載の発明は、前記溶接装置による溶接の完了後に動作する素材鋼板の切断装置が、溶接装置の後流側に設けられている請求項5または請求項6記載のプレスと溶接の連続加工装置である。
【0028】
前記溶接装置による溶接の完了後に動作する素材鋼板の切断装置が、溶接装置の後流側に設けられているので、部品の溶接後に、部品が溶接された素材鋼板が切断され、溶接済みの鋼板部品が高い生産性のもとに完成する。
【0029】
請求項8記載の発明は、前記送給装置は、前記プレス装置における所要のプレス加工時間と溶接装置における所要の溶接時間を確保するために、前記素材鋼板をプレス装置と溶接装置で一時停止するように間欠的に送給するとともに、プレス装置と溶接装置は間断なく動作するように構成した請求項5〜請求項7のいずれかに記載のプレスと溶接の連続加工装置である。
【0030】
前記素材鋼板をプレス装置と溶接装置で一時停止するように間欠的に送給するとともに、プレス装置と溶接装置は間断なく動作するものであるから、素材鋼板は所定の送りピッチで送られて一時停止がなされ、それに対してプレス装置と溶接装置は同期した状態で間断なく実行される。すなわち、両工程が同期しているとともに、両工程の動作は停止することなく連続的に実行される。したがって、素材鋼板にはプレス加工や溶接のために送り動作に停止期間が付与されるが、プレス工程と溶接については停止時間を設定しないで間断のない連続動作が行われ、それによって生産性が向上する。
【0031】
請求項9記載の発明は、前記プレス装置は、雄型または雌型が進退動作を行うとともに、前記溶接装置は、可動電極が進退動作を行うように構成した請求項5〜請求項8のいずれかに記載のプレスと溶接の連続加工装置である。
【0032】
プレス装置および溶接装置は上記のように、進退動作方式であるから、両装置を連動させしかも同期させることが容易に実施できる。このように進退動作方式とすることにより、たとえば、回転運動を進退運動に変換するような機構を採用することにより、所要の動作を簡単に求めることができる。また、両装置における進退運動は同期させることが行いやすいので、動作精度を高めるのに有効である。たとえば、クランク機構や偏心カムをタイミングチェーンのような簡単な機械的駆動方式で駆動することにより、実現することができる。あるいは、プレス装置と溶接装置との各々に、例えば、電動モータのような駆動手段を配置し、両駆動手段を電気的制御により一層精度の高い同期性のもとに動作させることも可能である。
【0033】
請求項10記載の発明は、前記プレス装置と溶接装置の間に、前記所定の送給間隔で複数の部品を素材鋼板上に供給する供給手段が配置されている請求項5〜請求項9のいずれかに記載のプレスと溶接の連続加工装置である。
【0034】
このような構成により、プレス加工後の素材鋼板が溶接装置の所定位置に到達する前に、複数の部品が素材鋼板の送りピッチに合致した状態で供給される。したがって、複数の部品があらかじめ素材鋼板上に供給されているので、素材鋼板が溶接装置の所定位置に到達する時点では、直ちに溶接装置が動作して溶接できる状態になっている。そのため、溶接装置の溶接時間が最小化され、単位時間当たりの生産量が大幅に向上する。
【0035】
請求項11記載の発明は、前記プレス装置と溶接装置の間に、溶接装置において加圧される移動電極が前記所定の送給間隔で複数個配置され、前記移動電極が溶接装置の所定位置に停止したとき移動電極上に載置された素材鋼板に部品が溶接される請求項5〜請求項10のいずれかに記載のプレスと溶接の連続加工装置である。
【0036】
前記プレス装置と溶接装置の間に、移動電極が所定の送給間隔で複数個配置されているので、これらの移動電極上に素材鋼板やプロジェクションナットのような部品をあらかじめ載置し、素材鋼板の送りピッチに応じて溶接装置に送り込まれる。よって、素材鋼板と部品が載置された移動電極が溶接装置に到達するのと同時に溶接装置が動作し、溶接装置の動作時間が最小化され、生産性の向上に有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
つぎに、本発明のプレスと溶接の連続加工方法およびその装置を実施するための最良の形態を説明する。
【実施例1】
【0038】
この実施例で製作される溶接部品1は図9に示されている。長尺な帯状の素材鋼板2に四角いプロジェクションナット3が所定の間隔で溶接され、それを所定の長さで切断したものである。同図に示すように、完成した溶接部品1は平板状の四角い鋼板にプロジェクションナット3が溶接されたものである。
【0039】
この実施例では、部品がプロジェクションナット3とされているが、このような部品に限られるものではなく、例えば、穴あきディスタンスピースやワッシャのような部品であってもよい。以下の説明において「プロジェクションナット」なる記載を、単に「ナット」と記載することもある。
【0040】
図1は、プレスと溶接の連続加工装置全体を示す側面図である。素材鋼板2は、コイル状に巻かれた素材ロール4の状態で供給され、この素材ロール4は供給支持装置5に支持されている。
【0041】
前記供給支持装置5からの素材鋼板2は、図1の左方に向かって送給される。この送給のために、送給装置6が配置されている。この送給装置6の後流側に順次プレス装置7,溶接装置8および切断装置9が配置されている。そして、プレス装置7と溶接装置8の間に、部品すなわちナット3の供給手段であるナット供給装置10が配置されている。
【0042】
前記送給装置6,プレス装置7,溶接装置8,切断装置9およびナット供給装置10は連動状態になっている。このような連動を得る手段としては、前記送給装置6,プレス装置7,溶接装置8,切断装置9およびナット供給装置10の各々に電動モータのような駆動手段を保有させ、各電動モータを制御装置で連動状態にする方法がある。他方、1つの駆動手段の出力を前記各装置に伝達する方式もある。この実施例では、後者の方式を採用している。
【0043】
例えば、装置のフレームで構成された静止部材11に電動モータ12が固定され、この電動モータ12によって回転するスプロケットホイール13でタイミングチェーンが駆動されて、前記送給装置6,プレス装置7,溶接装置8,切断装置9およびナット供給装置10などが駆動されるようになっている。
【0044】
電動モータ12のスプロケットホイール13と、送給装置6のスプロケットホイール15にタイミングチェーン14が掛け渡されている。また、プレス装置7,溶接装置8,切断装置9およびナット供給装置10などは、中間スプロケットホイール16,17,18,19を経て駆動される。プレス装置7,溶接装置8,切断装置9およびナット供給装置10の各々に駆動スプロケットホイール20,21,22,23が配置され、各中間スプロケットホイール16,17,18,19と各駆動スプロケットホイール20,21,22,23との間に掛け渡されたタイミングチェーン24,25,26,27によって駆動されるようになっている。
【0045】
プレス装置7について説明する。
【0046】
プレス加工は、素材鋼板2に凹部を設ける絞り加工、素材鋼板2を折り曲げる折り曲げ加工、素材鋼板2にナットの下孔をあける孔あけ加工など種々なものがある。この例におけるプレス装置7の加工は、図8や図2(B)に示すように、ナット3のねじ孔29と同心となる下孔30を素材鋼板2にあける工程である。なお、符号31は、ナット3の4隅に設けられた溶着用突起である。
【0047】
図2(A)は、プレス装置7の正面図である。前記スプロケットホイール20はクランク軸32に固定されている。クランク軸32の軸部33は静止部材に固定された軸受34に回転可能な状態で支持されている。また、軸部33からオフセットしているピン部34は、筒部35を回転可能な状態で貫通している。
【0048】
前記筒部34には揺動アーム36が溶接等で固定してあり、その他端は進退部材37に枢着されている。前記進退部材37は断面が円形の柱状の部材であり、進退動作だけを可能とする支持筒38を貫通している。この支持筒38は静止部材11に固定されている。
【0049】
前記の枢着されている箇所は、揺動アーム36の端部に固定した二股部材39内に進退部材37と一体の頭部40が挿入され、枢軸41で二股部材39に頭部40が枢着されている。図2(C)は、プレス装置7の動作を示す動作線図であり、クランク軸32が回転(軸部33の自転)すると、ピン部34が円弧回転(公転)をし、それにともなって揺動アーム36が枢軸41を介して進退部材37を進退させる。
【0050】
前記進退部材37には素材鋼板2に下孔30をあけるポンチ43が取り付けてある。ポンチ43は進退部材37の進退方向に伸びている棒状の部材である。ポンチ43は進退部材37と一体的に配置してもよいが、ここでは弾性的な構造を介して配置されている。すなわち、進退部材37の先端側にシリンダ44が設けられ、ここにポンチ43が固定されたピストン45が挿入され、シリンダ44の内端面とピストン45との間に圧縮コイルスプリング46が介入してあり、その弾力はポンチ43を押し出す方向に作用している。
【0051】
前記ポンチ43と同軸の状態でダイ47が配置されている。このダイ47にはポンチ43が進入するダイ孔48が形成されている。ダイ47は基部材49に取り付けられ、この基部材49は静止部材11にしっかりと固定されている。そして、ダイ47の上に送りピッチPで送給される素材鋼板2が載置されている。
【0052】
スプロケットホイール20の回転により進退部材37が下降すると、ダイ47上の素材鋼板2がポンチ43によって打ち抜かれ、素材鋼板2に下孔30があけられる。この下降動作の際には、ポンチ43の先端が素材鋼板2に当たると圧縮コイルスプリング46が圧縮され、その圧縮反力が所定値に達すると素材鋼板2が打ち抜かれる。したがって、素材鋼板2は、圧縮コイルスプリング46の弾性反力の領域で打ち抜かれる。
【0053】
このような弾性反力による打ち抜きの状態が、図3に示されている。同図に示すように、進退部材37はサインカーブを描きながら進退動作をする。その全ストロークはS1である。一方、ポンチ43の先端が素材鋼板2に突き当たった箇所が仮想線Lで示され、この仮想線Lの下側の範囲S2内で前記圧縮コイルスプリング46の弾性反力によって素材鋼板2が剪断されている。
【0054】
このように圧縮コイルスプリング46を介在することにより、クランク軸32の上死点から下死点に及ぶ全ストロークの範囲内において、弾性的な成形領域を形成し、確実な成形すなわち孔あけ加工を行うことができるという効果がある。換言すると、絞り加工のような場合に、クランク駆動方式であると、成形完了位置と下死点位置とが正確に一致しないことが発生するので、そのような場合に備えて弾性的領域で成形をして、上記不一致を吸収するのである。
【0055】
つぎに、溶接装置8について説明する。
【0056】
図2(B)に示すように、溶接装置8におけるスプロケットホイール21から進退部材37までの構造は、プレス装置7のものと同様であり、同じ機能を果たす部材には同じ符号が図中に記載されている。
【0057】
進退部材37の先端側にエアシリンダ51が設けられ、このエアシリンダ51内を進退するピストン52のピストンロッド53に可動電極54が結合されている。エアシリンダ51へは加圧力を制御するための圧縮空気が供給され、そのための空気通路55が進退部材37内に設けてある。クランク機構で進退部材37が動作するので、溶接加圧力を所定値に制御することができない。そこで、上述のように圧縮空気によって加圧力の制御がなされている。
【0058】
可動電極54に対向する移動電極56上に素材鋼板2とプロジェクションナット3が載置される。前記移動電極56の中心部からガイドピン57が突出しており、このガイドピン57が素材鋼板2の下孔30とナット3のねじ孔29を貫通している。
【0059】
前記可動電極54と同軸の位置に固定電極58が所定の間隔をあけて配置されている。この所定の間隔は、素材鋼板2とナット3が載置された移動電極56が、両電極54と58との間に入ることのできる間隔である。
【0060】
図2(B)に示すように、可動電極54と固定電極58との間に移動電極56が入ってきて停止すると、クランク軸32の動作で可動電極54が進出し、圧縮空気を介してナット3が素材鋼板2に加圧され、その後、溶接電流が通電され溶接が完了する。溶接完了の時点では、クランク軸32の運動で可動電極54がナット3から離れた位置に復帰する。
【0061】
溶接装置8とプレス装置7との間隔は、前記所定の送給間隔Pまたはその整数倍とされている。このような間隔の設定を行うことにより、素材鋼板2が送給されて停止すると、その停止位置がプレス加工位置であり、同時に溶接位置となる。また、所定の送給間隔Pの整数倍とすることにより、ナット供給のための各機構の配置がスペース的に行いやすくなるという効果がある。
【0062】
つぎに、ナット供給装置10について説明する。
【0063】
ナット供給装置10は、可動電極54と固定電極58との間にナット供給ロッドを進出させてナット供給を行う方式でもよい。本実施例では、そのような方式ではなく複数の移動電極56にナット3を供給する方式である。
【0064】
図1に示すように、ナット供給装置10は、プレス装置7と溶接装置8との間に配置されている。複数個の移動電極56が素材鋼板2の送給方向に沿って配列されている。移動電極56の配列間隔は、素材鋼板2に付与される所定の送給間隔P、すなわち素材鋼板2の送りピッチPであり、この間隔は前記送給装置6によって設定される。
【0065】
前記スプロケットホイール23に掛け渡されたタイミングチェーン27によって、図4(A)に示すチェーン60が駆動される。図4(A)に示した左側のスプロケットホイール23は略図的に円形の線で図示してある。一方、右側のスプロケットホイール61は2点鎖線で図示してある。両スプロケットホイール23と61にチェーン60が掛け渡され、移動電極56がチェーン60に結合してある。
【0066】
図4(B)に示すように、チェーン60に断面L型のブラケット62が取り付けられ、このブラケット62に固定した接合部材63に移動電極56が取り付けられている。
【0067】
この移動電極56の内部にはシリンダ64が設けられ、そこにピストン65が摺動可能な状態で挿入してある。前述のガイドピン57がピストンに結合され、移動電極56の中央部から突出するようになっている。そして、シリンダ64内に挿入した圧縮コイルスプリング66の弾力がガイドピン57を後退させる方向に作用している。
【0068】
ピストン65の下側に伸びているプッシュロッド67を押し上げると、圧縮コイルスプリング64が圧縮されて、ガイドピン57が突き出るようになっている。このようにプッシュロッド67を押し出すための駆動手段68が静止部材11に固定されている。
【0069】
前記駆動手段68は、エアシリンダや電磁ソレノイドなどで構成することができる。ここではエアシリンダ69の例であり、移動電極56が所定の位置に移動してくると、エアシリンダ69のピストンロッド70がプッシュロッド67を押し上げるようになっている。移動電極56はチェーン60に所定の送給間隔Pで取り付けられているので、エアシリンダ69はそのピストンロッド70が、図4(C)に示すように、プッシュロッド67と同軸となる箇所に配置されている。
【0070】
このピストンロッド70によって押し上げられたプッシュロッド67をそのままの状態で送給するために、ガイド板71が素材鋼板2と平行に配置されている。すなわち、プッシュロッド67が押し上げられてガイドピン57が突出状態になったまま溶接装置8まで移動する。ガイドピン57が突出するときには、素材鋼板2の下孔30が移動電極56の上面中央部の上側に来ているので、このときにガイドピン57が下孔30を貫通して素材鋼板2から突出する。
【0071】
このように突出しているガイドピン57にナット3が供給される。ナット3が供給されると、ナット3のねじ孔29内にガイドピン57が相対的に進入した状態になり、移動電極56に対するナット3の位置決めが素材鋼板2とともになされる。
【0072】
このような状態で素材鋼板2がナット3とともに溶接装置8に移送されて、移動電極56が可動電極54と固定電極58との間に停止すると、可動電極54が進出してきて移動電極56が両電極54と58の間に挟み付けられる。これによりナット3の溶着用突起31が素材鋼板2に圧接し、それに引き続いて溶接電流が通電されると、図4(D)に示すように、溶着用突起31が素材鋼板2に溶着する。
【0073】
その後、図1に示す切断装置9で素材鋼板2が切断されると、図9に示す溶接部品1が完成し、受け箱72に収容される。この切断装置9と溶接装置8との間隔も、前述のプレス装置7と溶接装置8との間隔と同様に設定されている。すなわち、所定の送給間隔Pまたはその整数倍の間隔である。
【0074】
素材鋼板2から突き出ているガイドピン57にプロジェクションナット3を供給する手法としては種々なものが採用できる。この例は、ナット3のねじ孔29にガイドロッドが貫通してナット3を目的箇所に到達させる方式である。
【0075】
これを図1および図5にしたがって説明する。パーツフィーダ73から部品供給管74を通ってナット3が供給ユニット75に送られる。この供給ユニット75は、ガイドロッド76とそれよりも大径の摺動ロッド77からなる供給ロッド78と、摺動ロッド77を摺動可能な状態で支持しているガイド管79と、ガイド管79に結合され供給ロッド78を進退させるエアシリンダ80と、部品供給管74とガイド管79との交差した箇所に設けられた仮止室81から構成されている。なお、ガイドロッド76と摺動ロッド77は断面が円形である。
【0076】
前記仮止室81に停止板82が取り付けられ、ここに永久磁石83が埋設してある。
【0077】
パーツフィーダ73から送られてきたナット3は、仮止室81に永久磁石83によって一時係止されている。ここへ供給ロッド78が進出してくると、ガイドロッド76がナット3のねじ孔29を貫通し、ナット3は仮止室81から押し出される。これによりナット3はガイドロッド76に沿って斜め下方へ滑動し、図5の2点鎖線図示のようにガイドピン57に合致する。
【0078】
前記のような動作を得るために、伸びた供給ロッド78の先端部が、停止したガイドピン57の間近で停止するようになっている。そして、ナット3がガイドピン57側へ移載される。
【0079】
複数個の移動電極56が所定の送給間隔Pでチェーン60に取り付けられ、このチェーン60が左右のスプロケットホイール23と61に掛け渡されているので、移動電極56はエンドレスの状態で巡回する。したがって、左方へ送給される素材鋼板2の動きに対して、移動電極56が途切れることなく循環的に動作し、移動電極56の同期的送給が素材鋼板2の送りピッチPに対して正確に合致する。
【0080】
さらに、移動電極56のガイドピン57が突出した状態で移送されるので、ガイドピン57は素材鋼板2の下孔30やナット3のねじ孔29を貫通し、ナット3と素材鋼板2と移動電極56との3者の相対位置が正確に設定でき、ナットの溶接位置が高い精度で設定できる。また、このようにガイドピン57の突出状態は、溶接装置8の手前から形成されるので、溶接装置8に進入する前にナット3の載置が完了している。したがって、ナット供給のためにサイクル時間が長くならず、生産性の向上にとって効果的である。
【0081】
移動電極56のガイドピン57を突出させるために、駆動手段68が設けられ、この駆動手段68で押し出されたガイドピン57の突出位置を維持する維持手段、すなわちガイド板71が設けられているので、複数のガイドピン57の突出状態が確実にえられる。
【0082】
つぎに、送給装置6について説明する。
【0083】
送給装置6は、素材鋼板2を所定の送給間隔Pの送給をした後、所定の時間の停止を行い、この停止時間内にプレス加工,ナット供給,電気抵抗溶接,素材鋼板の切断等の工程を実行する。このように素材鋼板2の送給と停止を繰り返して行う装置であれば、どのような方式であってもよい。例えば、素材鋼板2に密着している送りローラを電動モータで回転し、所定の送給間隔Pに相当する回転数の後、電動モータにブレーキをかけて所定時間の停止を行うものであってもよい。
【0084】
この実施例では、図6に示すように、素材鋼板2を駆動ローラ85と加圧ローラ86で挟み付けて送給する形式のものである。駆動ローラ85を所定角度回動させてから停止状態にするために、回動制御機構87が設けてある。
【0085】
この回動制御機構87は、スプロケットホイール15によって回転する駆動アーム88の先端に駆動ピン89が取り付けられ、この駆動アーム88の揺動によって駆動される回動部材90を備えている。この回動部材90は駆動ローラ85と一体になっている。回動部材90には、90度間隔で受動溝91が形成され、ここに前記駆動ピン89が入り込むようになっている。
【0086】
前記受動溝91の間に円弧面で形成された制動面92が配置され、この制動面92に摺動できる形状の回動板93が駆動アーム88と一体化されている。この回動板93は、図6(C)に示すように、円弧形状とされている。同図(B)に示すように、駆動アーム88の反時計方向の回動にともなって駆動ピン89が受動溝91内に進入すると、回動部材90が強制的に時計方向に回され、2点鎖線図示のように駆動ピン89が受動溝91から抜け出すと、今度は、回動板93が制動面92と摺動関係となる。
【0087】
したがって、駆動ピン89が受動溝91内を回っているときに駆動ローラ85が駆動され、その間に素材鋼板2が送給される。そして、回動板93が制動面92に摺動すると、回動部材90は拘束され、そのために駆動ローラ85は回転不能となる。このような動作をえるために、図6(B)および(C)に示すように、回動板93は駆動ピン89の反対側に配置され、回動板93は180度の角度区間にわたって形成されている。
【0088】
このような回動制御機構87であるから、回動アーム88が90度揺動すると、駆動ローラ85は90度回動して、素材鋼板2はそれに相当する長さだけ送給される。つまり、このようにして送りピッチPの距離が設定される。その後は、回動板93が回動部材90の回動を拘束するので、駆動アーム88は270度の区間にわたって駆動部材90に駆動力の伝達を行わないのである。このようにして、駆動アーム88と回動板93とがスプロケットホイール15とともに回り続けている間に、駆動ローラ85は90度回転,270度停止を反復する。この270度の停止区間にプレス加工や溶接および切断等の工程が実行される。
【0089】
なお、符号94は駆動ローラ85の回転軸95を支持する軸受である。また、符号96は加圧ローラ86の回転軸97を支持する軸受であり、軸受96と静止部材11との間に圧縮コイルスプリング98が配置され、それによる加圧力で両ローラ85,86と素材鋼板2との間のスリップを防止している。
【0090】
上述の回転制御機構87による送給と停止の区間を変更することができる。このような変更は、受動溝91の間隔角度と回動板93の形成角度を選定することによって、所定の送給と停止が選択できる。
【0091】
つぎに、切断装置9について説明する。
【0092】
この切断装置9は、可動刃と静止刃との組み合わせで板材を切断する通常のものが採用されている。他の溶接装置8やプレス装置7と同期的に動作させるために、図2(A)に示した構造をそのまま利用することが最適である。ただし、同図のポンチ43を可動刃に換え、ダイ47を静止刃に換えるものである。
【0093】
上述のように電動モータ12によって各スプロケットホイール15,20,21,22,23が連続的に回転し、プレス装置7,溶接装置8,切断装置9およびナット供給装置10等が動作するときには、送給装置6は送給停止区間の状態になっており、他方、上記各装置7,8,9,10等が動作しないときに素材鋼板2の送給が行われる。また、プレス装置7,溶接装置8,切断装置9およびナット供給装置10等が同期して動作させるために、クランク軸32の上死点と下死点との間隔や、各スプロケットホイールの歯数が選択されている。
【0094】
したがって、プレス装置7,溶接装置8,切断装置9は停止することなく進退動作を継続し、他方、送給装置6が素材鋼板2の送給を停止しているときに、プレス,溶接および切断などを行う。このような送給停止とプレス等の加工を適正に同期させるために、送給装置6の送りピッチPとプレス,溶接および切断などのストロークとが複合されている。
【0095】
図7は、移動電極56は採用しないで固定電極58からガイドピン57を突出させる形式のものである。同図における可動電極54やそれを駆動する機構は、図2(B)に示したものと同じである。
【0096】
ガイドピン57は長尺のものとされ、固定電極58の中心部や静止部材11を進退可能な状態で貫通している。ガイドピン57の下端にローラ100が取り付けられ、これが駆動カム101によって進退するようになっている。駆動カム101はその回転軸102が軸受103で支持されている。この回転軸102にスプロケットホイール104が結合され、このスプロケットホイール104にタイミングチェーン105が掛け渡されている。このタイミングチェーン105は、前述のタイミングチェーン14,24,25,26,27等と同様に駆動されている。
【0097】
ガイドピン57を所定時間のあいだ固定電極58から突出させておき、その間にナット3が供給される。このようなナット供給の時間を確保するために、駆動カム101のプロフィルが選定されている。すなわち、ガイドピン57の突出時間を長く設定するために、駆動カム101は図7(B)に示すように、偏心カムとされ、カムリフトの大きな部分に回転角度に対してカムリフトの少ない制御プロフィル部106が形成されている。
【0098】
図7(B)のS1およびS2は、図3のものと同じであり、可動電極54の挙動を示している。ここでのS2は、図2(B)に示すように、圧縮空気によるものである。そして、前記制御プロフィル部106によるガイドピン57の突出区間は、斜線部120で示されている。
【0099】
このようにガイドピン57が突出している間に、図5に示すような供給ユニット75を用いてナット供給がなされる。それ以外の動作は、前述の例と同様である。
【0100】
つぎに、図8は、ナット3の供給形式の変形例である。ほぼ水平方向に進退する供給ロッド108の先端にナット3を保持する保持凹部109が形成されている。この保持凹部109は、供給ロッド108の先端側が開放しており、ナット3を保持するために永久磁石110が埋設してある。符号111はヘッド部材であり、ここに図1や図5に示した部品供給管74が接続されている。ヘッド部材111にエアシリンダ112が結合され、これにより供給ロッド108が進退動作をする。供給ロッド108が最も後退して保持凹部109がヘッド部材111内に入ると、部品供給管74からナット3が保持凹部109に到達し、永久磁石110で保持されるようになっている。
【0101】
供給ロッド108の進退方向とほぼ直交する方向に供給ロッド108全体を昇降させるために、エアシリンダ113が静止部材11に固定されている。エアシリンダ112の進退動作と113の昇降動作が複合することにより、ナット3は図8に符号107で示すように、スクエアーモーションをする。それ以外の構成は、先の例と同じであり同じ機能の部材には同様の符号が記載してある。
【0102】
図8は、実線図示のように供給ロッド108が進出した状態を示す。この状態から供給ロッド108全体が下降すると、ガイドピン57が相対的にねじ孔29内に進入する。その後、供給ロッド108が2点鎖線図示のように後退すると、ナット3は2点鎖線図示のように、素材鋼板2上に残留し、ナット供給が完了する。
【0103】
上述の供給ロッド108による供給ユニット75を、図1のナット供給装置10に取り付けるのである。他方、前述のようなチェーン60を用いた形式ではなく、供給ロッド108に保持されたナット3が可動電極54と固定電極58との間に進出して待機し、ガイドピン57が素材鋼板2とともに送給されてくるのを待機するようにしてもよい。
【0104】
図8に示した移動電極56のガイドピン57は、強制的に進退する形式とされている。そのために、進退駆動手段が設けられている。この進退駆動手段としては、電磁ソレノイドを使用したものや、エアシリンダを使用したものなどが採用できる。図示の例は、エアシリンダ式である。
【0105】
移動電極56内にシリンダ114が設けられ、ここに挿入されたピストン115にガイドピン57が固定されている。ピストン115の上側と下側に空気室116と117が設けられ、両室116,117の各々に圧縮空気の吸排管118,119が接続されている。それ以外の構成は、先に説明した例と同じであり同じ機能を果たす部材には同様の符号が記載してある。
【0106】
最初は、空気室116に圧縮空気が導入されているので、ピストン115は最下位に位置しており、これによってガイドピン57の先端は、移動電極56の上端面から突出することなく後退している。
【0107】
2点鎖線図示の高さ位置で供給ロッド108を進出させて、ナット3を可動電極54と固定電極58との間で待機させる。この待機位置は、すでに供給ロッド108が進出してそこに保持されているナット3のねじ孔29が、移動してきた移動電極56の中心と同心状態になり得る位置で待機している。このような待機状態のところへ素材鋼板2が送給されてくると、素材鋼板2はナット3の下側で停止する。
【0108】
この状態で今度は圧縮空気が下側の空気室117に導入されると、ガイドピン57は強制的に突出して図8に示すように、ナット3のねじ孔29内に進入する。それに引き続いて供給ロッド108が後退すると、ナット3は供給ロッド108の保持凹部109から相対的に抜け出し、ナット供給が完了する。
【0109】
上述のように、ガイドピン57が強制的に進退するので、供給ロッド108には昇降動作のない進退動作だけを行わせて、図8に示したような昇降用のエアシリンダ113の採用を止めて、構造を簡素化でき、また、動作信頼性向上の効果がえられる。それ以外の作用効果は、先の例と同じである。
【0110】
以上に説明した実施例の作用効果を列記すると、つぎのとおりである。
【0111】
プレスと溶接の連続加工方法においては、素材鋼板2を所定の送給間隔Pで連続的に送給、すなわち素材鋼板2の送りピッチPに合致させて素材鋼板2に対する下孔30の孔あけ工程とプロジェクションナット3の溶接工程とが実行されるので、これら両工程を短時間で実行することができ、生産性の向上に有効である。
【0112】
前記孔あけ工程とナット溶接工程とが同期した状態で実行される方法である。
【0113】
前記孔あけ工程とナット溶接工程とが同期した状態で実行されるから、素材鋼板2の送りピッチPに合致させて、これら両工程を短時間で実行することができ、生産性の向上に有効である。とくに、両工程が同期していることにより、整然とした工程進行が実現して、信頼性の高い動作が確保できる。
【0114】
前記孔あけ工程とナット溶接工程とが同期した状態で間断なく実行される方法である。
【0115】
前記孔あけ工程とナット溶接工程とが同期した状態で間断なく実行される。すなわち、両工程が同期しているとともに、両工程の動作は停止することなく連続的に実行される。したがって、素材鋼板2には、孔あけ加工やナット溶接のために送り動作に停止期間が付与されるが、孔あけ工程とナット溶接工程については、プレス装置7や溶接装置8の進退動作に停止時間を設定しないで間断のない連続動作が行われ、それによって生産性が向上する。
【0116】
前記ナット溶接工程の後に、素材鋼板2を切断する切断工程が設けられている方法である。
【0117】
このように、ナット3の溶接後に、ナット3が溶接された素材鋼板2が切断されるので、ナット溶接済みの鋼板部品が高い生産性のもとに完成する。
【0118】
プレスと溶接の連続加工装置においては、素材鋼板2を所定の送給間隔Pで連続的に送給、すなわち素材鋼板2の送りピッチPに合致させて素材鋼板2に対する孔あけ工程とナット溶接工程とが実行されるので、これら両工程を短時間で実行することができ、生産性の向上に有効である。
【0119】
そして、前記プレス装置7と溶接装置8とが前記所定の送給間隔Pまたはその整数倍の間隔で配置されているので、孔あけ加工とナット溶接とが前記所定の送給間隔P、すなわち前記送りピッチPに合致した状態で実行でき、整然とした工程進行が実現して、信頼性の高い動作が確保できる。
【0120】
前記プレス装置7と溶接装置8の動作を同期した状態で行う駆動手段、すなわち各スプロケットホイールおよび各タイミングチェーンが設けられている装置である。
【0121】
前記プレス装置7による孔あけ加工と、溶接装置8によるナット溶接を同期した状態で行う各スプロケットホイールおよび各タイミングチェーンが設けられているので、両装置7,8の動作を同期させてこれら両工程を短時間で実行することができ、生産性の向上に有効である。とくに、両工程が同期していることにより、整然とした工程進行が実現して、信頼性の高い動作が確保できる。
【0122】
また、前記駆動手段は、タイミングチェーンを用いた簡単な機械的駆動方式で実現することができ、経済的に有利な構成とすることができる。あるいは、孔あけ装置と溶接装置との各々に、例えば、電動モータのような駆動手段を配置し、両駆動手段を電気的制御により一層精度の高い同期性のもとに動作させることも可能である。したがって、種々な駆動手段を採用して良好な同期動作を確保することができ、生産性の向上が実現する。
【0123】
前記溶接装置によるナット溶接の完了後に動作する素材鋼板2の切断装置9が、溶接装置8の後流側に設けられている装置である。
【0124】
前記溶接装置8によるナット溶接の完了後に動作する素材鋼板2の切断装置9が、溶接装置8の後流側に設けられているので、ナット3の溶接後に、ナット3が溶接された素材鋼板2が切断され、溶接済みの溶接部品1が高い生産性のもとに完成する。
【0125】
前記送給装置6は、前記プレス装置7における所要のプレス加工時間と溶接装置8における所要の溶接時間を確保するために、前記素材鋼板2をプレス装置7と溶接装置8で一時停止するように間欠的に送給するとともに、プレス装置7と溶接装置8は間断なく動作するように構成した装置である。
【0126】
前記素材鋼板2をプレス装置7と溶接装置8で一時停止するように間欠的に送給するとともに、プレス装置7と溶接装置8は間断なく動作するものであるから、素材鋼板2は所定の送りピッチPで送られて一時停止がなされ、それに対してプレス装置7による孔あけ加工と、溶接装置8によるナット溶接とが同期した状態で間断なく実行される。すなわち、両工程が同期しているとともに、両工程の動作は停止することなく連続的に実行される。したがって、素材鋼板2には孔あけ加工やナット溶接のために送り動作に停止期間が付与されるが、孔あけ工程と溶接工程については停止時間を設定しないで間断のない連続動作が行われ、それによって生産性が向上する。
【0127】
前記プレス装置7は、雄型であるポンチ43または雌型であるダイ47が進退動作を行うとともに、前記溶接装置8は、可動電極54が進退動作を行うように構成した装置である。
【0128】
プレス装置7および溶接装置8は上記のように、進退動作方式であるから、両装置を連動させしかも同期させることが容易に実施できる。このように進退動作方式とすることにより、たとえば、回転運動を進退運動に変換するようなクランク機構を採用することにより、所要の動作を簡単に求めることができる。また、両装置7,8における進退運動は同期させることが行いやすいので、動作精度を高めるのに有効である。たとえば、クランク機構や偏心カムをタイミングチェーンのような簡単な機械的駆動方式で駆動することにより、実現することができる。あるいは、プレス装置7と溶接装置8との各々に、例えば、電動モータのような駆動手段を配置し、両駆動手段を電気的制御により一層精度の高い同期性のもとに動作させることも可能である。
【0129】
前記プレス装置7と溶接装置8の間に、前記所定の送給間隔Pで複数のナット3を素材鋼板2上に供給する供給ユニット75が配置されている装置である。
【0130】
このような構成により、プレス加工後の素材鋼板2が溶接装置8の所定位置に到達する前に、複数のプロジェクションナット3が素材鋼板2の送りピッチPに合致した状態で供給される。したがって、複数のナット3があらかじめ素材鋼板2上に供給されているので、素材鋼板2が溶接装置8の所定位置に到達する時点では、直ちに溶接装置8が動作してナット溶接できる状態になっている。そのため、溶接装置8の溶接時間が最小化され、単位時間当たりの生産量が大幅に向上する。
【0131】
前記プレス装置7と溶接装置8の間に、溶接装置8の箇所において加圧される移動電極56が前記所定の送給間隔Pで複数個配置され、前記移動電極56が溶接装置8の所定位置に停止したとき、移動電極56上に載置された素材鋼板2にナット3が溶接される装置である。
【0132】
前記プレス装置7と溶接装置8の間に、移動電極56が所定の送給間隔Pで複数個配置されているので、これらの移動電極56上に素材鋼板2やプロジェクションナット3をあらかじめ載置し、素材鋼板2の送りピッチPにともなって溶接装置8に送り込まれる。よって、素材鋼板2とナット3が載置された移動電極56が溶接装置8に到達するのと同時に溶接装置8が動作し、溶接装置8の動作時間が最小化され、生産性の向上に有効である。
【産業上の利用可能性】
【0133】
本発明は、上述のようプレスと溶接の連続加工方法およびその装置であるから、自動車の車体や家庭電化製品の溶接組立などの広い産業分野での利用が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0134】
【図1】本発明の実施例を全体的に示す側面図である。
【図2】プレス装置と溶接装置を示す断面図と動作説明図である。
【図3】プレス装置の動作ストロークを示す線図である。
【図4】ナット供給装置の側面図と断面図である。
【図5】供給ユニットの側面図である。
【図6】送給装置の正面図,部分的な側面図,斜視図である。
【図7】他のガイドピン駆動方式を示す断面図である。
【図8】他のナット供給方式を示す正面図である。
【図9】溶接部品の斜視図である。
【符号の説明】
【0135】
1 溶接部品
2 素材鋼板
3 プロジェクションナット
6 送給装置
7 プレス装置
8 溶接装置
9 切断装置
10 ナット供給装置
29 ねじ孔
30 下孔
54 可動電極
56 移動電極
57 ガイドピン
58 固定電極
60 チェーン
68 駆動手段
71 ガイド板
75 供給ユニット
87 回動制御機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺な素材鋼板を所定の送給間隔で連続的に送給し、前記素材鋼板にプレス加工をするプレス工程と、前記プレス加工が施された箇所に部品を溶接する溶接工程とを、素材鋼板に対して前記所定の送給間隔に等しい工程間隔で実行することを特徴とするプレスと溶接の連続加工方法。
【請求項2】
前記プレス工程と溶接工程とが同期した状態で実行される請求項1記載のプレスと溶接の連続加工方法。
【請求項3】
前記プレス工程と溶接工程とが同期した状態で間断なく実行される請求項1または請求項2記載のプレスと溶接の連続加工方法。
【請求項4】
前記溶接工程の後に素材鋼板を切断する切断工程が設けられている請求項1〜請求項3のいずれかに記載のプレスと溶接の連続加工方法。
【請求項5】
長尺な素材鋼板を所定の送給間隔で連続的に送給する送給装置と、前記素材鋼板にプレス加工をするプレス装置と、前記プレス加工が施された箇所に部品を溶接する溶接装置とを備え、前記プレス装置と溶接装置とが前記所定の送給間隔またはその整数倍の間隔で配置されていることを特徴とするプレスと溶接の連続加工装置。
【請求項6】
前記プレス装置と溶接装置の動作を同期した状態で行う駆動手段が設けられている請求項5記載のプレスと溶接の連続加工装置。
【請求項7】
前記溶接装置による溶接の完了後に動作する素材鋼板の切断装置が、溶接装置の後流側に設けられている請求項5または請求項6記載のプレスと溶接の連続加工装置。
【請求項8】
前記送給装置は、前記プレス装置における所要のプレス加工時間と溶接装置における所要の溶接時間を確保するために、前記素材鋼板をプレス装置と溶接装置で一時停止するように間欠的に送給するとともに、プレス装置と溶接装置は間断なく動作するように構成した請求項5〜請求項7のいずれかに記載のプレスと溶接の連続加工装置。
【請求項9】
前記プレス装置は、雄型または雌型が進退動作を行うとともに、前記溶接装置は、可動電極が進退動作を行うように構成した請求項5〜請求項8のいずれかに記載のプレスと溶接の連続加工装置。
【請求項10】
前記プレス装置と溶接装置の間に、前記所定の送給間隔で複数の部品を素材鋼板上に供給する供給手段が配置されている請求項5〜請求項9のいずれかに記載のプレスと溶接の連続加工装置。
【請求項11】
前記プレス装置と溶接装置の間に、溶接装置において加圧される移動電極が前記所定の送給間隔で複数個配置され、前記移動電極が溶接装置の所定位置に停止したとき移動電極上に載置された素材鋼板に部品が溶接される請求項5〜請求項10のいずれかに記載のプレスと溶接の連続加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図7】
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【図4】
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【図5】
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【図8】
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【図6】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−15013(P2007−15013A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−224661(P2005−224661)
【出願日】平成17年7月4日(2005.7.4)
【出願人】(000196886)
【Fターム(参考)】