説明

プレストレス部材の耐火設計方法

【課題】部材の断面仕様に拘わらず、実験等を行うことなく、解析のみで合理的なプレストレス部材の高温時耐力評価を行うことができる、プレストレス部材の耐火設計方法を提供する。
【解決手段】 プレストレス部材断面の熱伝導解析によるプレストレス線材の火災発生後の温度履歴とプレストレス線材の温度に対する降伏強度とに基づいて得られた各々のプレストレス線材の降伏強度をσyi(t)、各断面積をati、プレストレス部材の圧縮縁から各プレストレス線材までの距離をdi、曲げ耐力係数をκとしたときに、Mu(t)=Σκ×ati×σyi(t)×diによって、プレストレス部材の高温時曲げ耐力Mu(t)を推定し、次いで力学的境界条件に基づいて得られた曲げモーメントの大きさと上記高温時曲げ耐力とを対比することにより保有耐火時間を推定して、保有耐火時間が長くなるようにプレストレス部材の断面形状等を設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレストレストコンクリート等のプレストレスが導入された部材の耐火設計方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、耐火性能が要求される建築物に、プレストレストコンクリート等のプレストレス部材を適用する場合には、下記非特許文献1に示す設計規準に基づいて耐火設計がなされている。
この設計規準は、建物の階数を区分して、各階における柱、梁等の構成部材に対する耐火時間および最高温度を定めるとともに、当該耐火時間およびPC鋼材が許容温度を超えないような所要のコンクリートかぶり厚をPC鋼棒とPC鋼線とについて規定した、いわゆる例示規定である。
【0003】
ところで、例示規定に基づくプレストレス部材の耐火設計方法にあっては、プレストレス部材の用いられる箇所に対して例示された耐火時間とPC鋼材のかぶり厚とによって、その耐火性能が評価されるために、例えば当該箇所の可燃物量が極めて少ない場合等においては、耐火上、必要以上のコンクリートかぶり厚を確保することになり、オーバースペックになってしまうという欠点があった。
【0004】
他方、2000年6月から建築基準法に性能規定化が導入されたことにより、建築構造物の耐火部門においても、いわゆる性能設計を行うことが可能になった。
従来、このような上記耐火部門における性能設計を行う場合には、平成12年建設省告示第1433号による耐火性能検証法や、高度な検証法があり、後者においては別途日本建築センター等の公的機関の評価が必要になる。
【0005】
ところが、前者の告示による性能検証法にあっては、上記告示に見られるように、一般的な鉄筋コンクリート造の部材に対しては、上記耐火性能検証法に関する種々の算出方法が具体的に規定されているものの、プレストレス部材の耐力評価の算出方法については規定されていない。このため、プレストレス部材については、その耐火設計に上記検証法を用いることができない。
【0006】
したがって、上記性能設計によってプレストレス部材の耐火設計を行うに際しては、後者の高度な検証法を用いることが考えられる。
しかしながら、プレストレス部材においては、当該プレストレス部材を構成する材料の温度分布、高温性状、高温時の応力状態などの性状や、高温時におけるPC鋼材のリラクゼーション、付着強度などの性状に未解明要素が多い。
【0007】
このため、別途実験を実施したり、あるいは安全率を過大に評価する計算法を用いたりせざるを得ず、上述した合理的な設計を行うことが難しいという問題点があった。
【非特許文献1】プレストレストコンクリート設計施工規準・同解説 1987 改訂 日本建築学会
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明者等は、この種のプレストレス部材の耐火性能を高い精度で評価し得る検証法を開発すべく、鋭意各種の解析およびその検証実験を試行したところ、後述するように、一般的な鉄筋コンクリート造の梁の曲げ耐力評価に用いられるモーメント式と、高温時におけるプレストレス線材の降伏強度とを組み合わせることにより、実験結果と極めて合致する高い精度でプレストレス部材の高温時曲げ耐力を評価することができるとの知見を得るに至った。
【0009】
本発明は、かかる知見に基づいてなされたもので、部材の断面仕様に拘わらず、実験等を行うことなく、解析のみで合理的なプレストレス部材の高温時耐力評価を行うことができる、プレストレス部材の耐火設計方法を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、プレストレス部材の任意断面について熱伝導解析を行うことにより、上記プレストレス部材に圧縮力を付与するi本のプレストレス線材の火災発生後の温度履歴を評価するステップと、上記プレストレス線材の温度に対する降伏強度を評価するステップと、これらのステップに基づいて、火災発生後の時間tにおける各々の上記プレストレス線材の降伏強度をσyi(t)、各断面積をati、上記プレストレス部材の断面における圧縮縁から各上記プレストレス線材までの距離をdi、係数をκとしたときに、
Mu(t)=Σκ×ati×σyi(t)×di
によって、上記プレストレス部材の上記時間tにおける高温時曲げ耐力Mu(t)を、上記i本のプレストレス線材の高温時曲げ耐力の総和(Σ)として推定するステップと、上記プレストレス部材の端部の接合状態による力学的境界条件に基づいて、一の方向に作用する曲げモーメントと上記一の方向とは逆方向に作用する曲げモーメントの絶対値との和と、それぞれの位置における上記高温時曲げ耐力の和とを対比することにより保有耐火時間を推定するステップと、このステップによって得られた上記保有耐火時間が、上記プレストレス部材が配置される区画の火災継続時間よりも長くなるように、上記プレストレス部材の断面形状および/または上記プレストレス線材の諸元および/またはその配置を設定するステップとを有してなることを特徴とするものである。
【0011】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、上記プレストレス部材に、上記プレストレス線材とともに鉄筋が合計i本埋設されている場合に、各々の上記プレストレス線材および鉄筋の各断面積をati、上記プレストレス部材の断面における圧縮縁から各上記プレストレス線材および鉄筋までの距離をdiとし、
上記Mu(t)=Σκ×ati×σyi(t)×di
によって、上記プレストレス部材の上記時間tにおける高温時曲げ耐力Mu(t)を、上記i本のプレストレス線材および鉄筋の高温時曲げ耐力の総和(Σ)として推定することを特徴とするものである。
【0012】
さらに、請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、上記ステップを、引張力を受ける上記プレストレス線材、または引張力を受ける上記プレストレス線材および鉄筋についてのみ実施することを特徴とするものである。
なお、請求項1〜3のいずれかに記載の発明において、プレストレス線材とは、一般的な緊張材の他、プレテンションが付加された主筋等の鉄筋をも含むものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1〜3のいずれかに記載の発明においては、予めプレストレス部材に使用される各種のプレストレス線材について、実験等により温度に対する降伏強度を求めておくとともに、プレストレス部材の任意断面について行った熱伝導解析により、内部のプレストレス線材の火災発生後の温度履歴を求める。これにより、火災発生後の時間tにおける上記プレストレス線材の降伏強度σy(t)を得ることができる。
【0014】
この結果、上記降伏強度σy(t)等を用いて、上記プレストレス部材の時間tにおける高温時曲げ耐力Mu(t)を算出することができるために、別途力学的境界条件に基づいて求めたプレストレス部材に作用する最大曲げモーメントと上記高温時曲げ耐力とを対比することにより、プレストレス部材が崩壊する保有耐火時間を推定することができる。
【0015】
よって、上記プレストレス部材の断面形状、プレストレス線材の材質、種類、径等の諸元、その配置等を適宜設定して、上記保有耐火時間が火災継続時間よりも長くなるようにすることにより、部材の断面仕様に拘わらず、また実験等を行うことなく、上記解析のみで合理的なプレストレス部材の耐火設計を行うことができる。
ちなみに、本発明によれば、特に火災時におけるプレストレス線材とプレストレス部材との付着力の変化の影響を受けないポストテンションによるプレストレス部材の耐火設計に用いた場合に、高い評価精度を得ることができる。
【0016】
また、一般的にプレストレス部材の崩壊は、引張力が作用するプレストレス線材における破断が主因となるために、請求項3に記載の発明のように、上記ステップを、引張力を受ける上記プレストレス線材、または引張力を受ける上記プレストレス線材および鉄筋についてのみ実施すれば、より一層容易な解析によって合理的な耐火設計を行うことが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面に基づいて、本発明に係るプレストレス部材の耐火設計方法をプレストレストコンクリート造のスラブ(以下、単にスラブと略す。)に適用した場合の実施形態について説明する。
先ず、予め上記スラブにプレストレスを導入する用いるPC鋼棒、PC鋼線、PC鋼撚り線等のPC鋼材(プレストレス線材)および鉄筋について、実験等により加熱温度に対する降伏強度の低下曲線を得ておく。他方、図1のステップ1に示すように、上記スラブの形状、埋設されたPC鋼材や鉄筋の種類、本数、配置等の諸元を設定する。
【0018】
そして次に、ステップ2において、上記スラブの任意の断面について、熱伝導解析を行うことにより、内部の上記PC鋼材における火災発生後の温度履歴を算出する。この際の上記スラブが設けられる区画の発熱量等の熱的な条件は、例えば上記非特許文献2において規定する計算式を、また熱伝導解析は、例えば「建築物の総合防火設計法 第4巻耐火設計法」(財団法人 日本建築センター発行)等に記載の周知の方法を用いることができる。
【0019】
これにより、火災発生後の時間tにおけるPC鋼材および鉄筋の降伏強度σy(t)が得られる。
そこで、ステップ3において、上記スラブ内において引張力を受ける合計i本のPC鋼材および鉄筋の上記降伏強度をσyi(t)、これらPC鋼材および鉄筋の各々の断面積をatiおよび上記スラブ断面における圧縮縁からの距離をdi、曲げ耐力係数をκとしたときに、下記(1)式によって、上記時間tにおけるスラブの高温時曲げ耐力Mu(t)を、上記i本のPC鋼材および鉄筋の高温時曲げ耐力の総和(Σ)として推定する。
【0020】
Mu(t)=Σκ×ati×σyi(t)×di (1)式
なお、上記曲げ耐力係数κは、一般的な鉄筋コンクリート梁の曲げ耐力試験に用いられている係数と同様に7/8(0.9)〜1を用いることができる。
【0021】
次いで、ステップ4において、上記スラブの端部が、ピン接合であるか、あるいは剛接合であるか等の力学的境界条件に基づいて、上記スラブに作用する曲げモーメントの大きさや当該曲げモーメントが作用する箇所およびその崩壊条件を評価する。この解析を行うには、例えば「耐火性能検証法の解説および計算例とその解説」(国土交通省住宅局建築指導課、国土交通省建築研究所、日本建築主事会議、財団法人日本建築センター、編集)等を用いることができる。
【0022】
そして、上記曲げモーメントの大きさと上記(1)式で得られた高温時曲げ耐力Mu(t)とを対比することにより保有耐火時間を推定する。ちなみに、上記スラブの両端部が端部拘束のない単純支持である場合には、中央部の上記高温時曲げ耐力Mu(t)が当該スラブの荷重効果により生じる曲げモーメントと一致する時が終局状態となる。また、上記スラブの両端部が、隣接部材に剛接合される場合には、端部の曲げモーメントが増加し、その分、中央部の曲げモーメントが減少することになる。
【0023】
この際に、仮に端部に作用する曲げモーメントの方向を正方向(一の方向)とすると、中央部に作用する曲げモーメントは、負方向(上記一の方向とは逆方向)になる。そこで、上記正方向に作用する曲げモーメントと上記負方向に作用する曲げモーメントの絶対値との和と、それぞれの位置における上記高温時曲げ耐力の和とを対比することにより保有耐火時間を推定する。
【0024】
以上により、上記スラブが終局状態となるまでの時間、すなわち当該スラブの保有耐火時間を得ることができる。
そこで次に、ステップ5において、上記保有耐火時間と、上記スラブが配置される区画の火災継続時間とを比較する。なお、上記火災継続時間も、例えば上記告示第1433号において規定する計算式によって算出することができる。
【0025】
そして、上記保有耐火時間が、上記火災継続時間よりも短い場合には、火災時に上記スラブが崩壊することを意味するために、再びステップ1に戻り、上記スラブの断面形状、上記PC鋼材や鉄筋の材質、種類、径等の諸元、あるいはこれらPC鋼材や鉄筋の配置やかぶり厚等を再設定して、上記ステップ2〜5を実施する。
このようにして、最終的に上記保有耐火時間が、上記スラブが配置される区画の火災継続時間よりも長いと評価された段階で、火災時に上記スラブが崩壊しないことが確認されたことになるために、上記スラブの耐火設計が完了する。
【0026】
(実施例)
本発明に係るプレストレス部材の耐火設計方法の妥当性を検証するために、以下の実験および解析を行い、両者を対比した。
先ず、プレストレス部材である上記スラブとして、図2〜図4に示す3種類の試験体No.1〜No.3を準備した。これら試験体No.1〜No.3の形状、寸法並びに内部に導入したPC鋼撚り線の本数、径、長さおよび配置は、各々の図に示す通りである。
【0027】
次いで、図5に示す加熱炉内に順次上記試験体No.1〜No.3を設置し、図2〜図4に示す載荷位置に荷重を作用させて、火災時における保有耐火時間を測定した。なお、上記加熱試験における試験体No.1〜No.3は、両端を拘束しない単純支持であるために、中央部に作用する曲げモーメントMが最大となる。そして、本実験においては、図10に示すように、試験体No.1については、上記曲げモーメントMが26.2、18.5、13.1(kN・m)となるように3種類の荷重を作用させた場合(No.1−1、No.1−2、No.1−3)について実験を行った。また、試験体No.2および試験体No.3については、上記曲げモーメントMが、それぞれ21.9、24.3(kN・m)となるように荷重をさせた場合について実験を行った。
【0028】
また、上記加熱炉内における加熱は、ISO/834に規定する加熱温度曲線によった。
以上の実験の結果、試験体No.1−1、No.1−2、No.1−3、No.2、No.3の保有耐火時間は、それぞれ45分、53分、60分、43分、55.5分であった。
【0029】
一方、上記実施の形態において示した本発明に係る耐火設計方法を用いて、解析により上記試験体No.1〜No.3の保有耐火時間(予想耐火時間)を評価した。
先ず、上記試験体No.1〜No.3は、力学的境界条件が、いずれも両端部において拘束のない単純支持であるために、中央部において最大曲げモーメントが作用する。そこで、上記試験体No.1〜No.3の中央の断面について、熱伝導解析を行うことにより、内部の上記PC鋼撚り線における火災発生後の温度履歴を求めた。図6(a)〜(c)は、各々上記解析によって得られた上記試験体No.1〜No.3におけるPC鋼撚り線の温度履歴を示すものである。
【0030】
次いで、上記試験体No.1〜No.3に用いたPC鋼撚り線の加熱温度に対する引張強度および降伏強度の履歴曲線を実験により求めた。図7は、これによって得られた上記PC鋼撚り線の引張強度および降伏強度の履歴曲線を示すものである。
【0031】
そして、これらPC鋼より線の温度履歴および加熱温度に対する降伏強度の履歴曲線に基づいて、火災発生後の時間tにおけるPC鋼より線の降伏強度σy(t)が得られる。
そこで次に、上記試験体スラブNo.1〜No.3内において、引張力を受けるPC鋼撚り線の上記降伏強度をσy(t)、PC鋼撚り線の各々の断面積をatおよび上記試験体No.1〜No.3の上記断面における圧縮縁からの距離をd、曲げ耐力係数をκ=0.9としたときに、上記(1)式により上記時間tにおける試験体No.1〜No.3の高温時曲げ耐力Mu(t)を推定する。
【0032】
図8(a)〜(c)は、上記(1)式によって得られた各々上記試験体No.1〜No.3における常温時に対する高温時の曲げ耐力の時間tに対する推移を示す曲線である。また、図9(a)〜(c)は、上記力学的境界条件により算出した、最も変位量が大きくなる中央位置でのたわみ量を示すものである。
【0033】
そして、これら試験体No.1〜No.3の中央位置において、高温時の曲げ耐力が作用モーメントMと同一になった時刻が、保有耐火時間になる。
このようにして得られた解析による試験体No.1−1、No.1−2、No.1−3、No.2、No.3の保有耐火時間は、図10に示すように、それぞれ46分、55分、59分、47分、54分であり、上述した実験によって得られた保有耐火時間と極めて近似するものであることが判る。
【0034】
このように、上記プレストレス部材の耐火設計方法によれば、上記(1)式により、プレストレス部材の時間tにおける降伏強度σyi(t)等を用いてその高温時曲げ耐力Mu(t)を算出することができるために、別途力学的境界条件に基づいて求めたプレストレス部材に作用する最大曲げモーメントと上記高温時曲げ耐力とを対比することにより、極めて高い精度で当該プレストレス部材が崩壊する保有耐火時間を推定することができる。
【0035】
この結果、上記プレストレス部材の断面形状、プレストレス線材の材質、種類、径等の諸元、その配置等を適宜設定して、上記保有耐火時間が火災継続時間よりも長くなるようにすることにより、部材の断面仕様に拘わらず、また実験等を行うことなく、上記解析のみで合理的なプレストレス部材の耐火設計を行うことができる。
【0036】
なお、上記実施の形態および実施例においては、本発明をプレストレストコンクリート造のスラブの耐火設計に適用した場合についてのみ説明したが、これに限るものではなく、他の梁等の横架部材等の様々なプレストレスが導入された部材に対しても同様に適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の耐火設計方法の一実施形態を示すフロー図である。
【図2】本発明の実施例に用いた試験体No.1を示すもので、(a)は横断面図、(b)は長手方向中央部における縦断面図、(c)短手方向中央部における縦断面図、(d)は温度測定位置の拡大図である。
【図3】本発明の実施例に用いた試験体No.2を示すもので、(a)は横断面図、(b)は長手方向中央部における縦断面図、(c)短手方向中央部における縦断面図である。
【図4】本発明の実施例に用いた試験体No.3を示すもので、(a)は横断面図、(b)は長手方向中央部における縦断面図、(c)短手方向中央部における縦断面図である。
【図5】上記実施例における加熱炉内での試験体の設置状態を示す縦断面図である。
【図6】(a)〜(c)は各々解析によって得られた試験体No.1〜No.3におけるPC鋼撚り線の温度履歴を示すグラフである。
【図7】PC鋼撚り線の引張強度および降伏強度の履歴曲線を示すグラフである。
【図8】(a)〜(c)は各々試験体No.1〜No.3の常温時に対する高温時の曲げ耐力の時間tに対する変化を示すグラフである。
【図9】(a)〜(c)は各々試験体No.1〜No.3の中央位置でのたわみ量の変化を示すグラフである。
【図10】上記試験体No.1〜No.3について行った実験結果と解析結果とを対比して示す図表である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレストレス部材の任意断面について熱伝導解析を行うことにより、上記プレストレス部材に圧縮力を付与するi本のプレストレス線材の火災発生後の温度履歴を評価するステップと、上記プレストレス線材の温度に対する降伏強度を評価するステップと、これらのステップに基づいて、火災発生後の時間tにおける各々の上記プレストレス線材の降伏強度をσyi(t)、各断面積をati、上記プレストレス部材の断面における圧縮縁から各上記プレストレス線材までの距離をdi、係数をκとしたときに、
Mu(t)=Σκ×ati×σyi(t)×di
によって、上記プレストレス部材の上記時間tにおける高温時曲げ耐力Mu(t)を、上記i本のプレストレス線材の高温時曲げ耐力の総和(Σ)として推定するステップと、
上記プレストレス部材の端部の接合状態による力学的境界条件に基づいて、一の方向に作用する曲げモーメントと上記一の方向とは逆方向に作用する曲げモーメントの絶対値との和と、それぞれの位置における上記高温時曲げ耐力の和とを対比することにより保有耐火時間を推定するステップと、このステップによって得られた上記保有耐火時間が、上記プレストレス部材が配置される区画の火災継続時間よりも長くなるように、上記プレストレス部材の断面形状および/または上記プレストレス線材の諸元および/またはその配置を設定するステップとを有してなることを特徴とするプレストレス部材の耐火設計方法。
【請求項2】
上記プレストレス部材に、上記プレストレス線材とともに鉄筋が合計i本埋設されている場合に、各々の上記プレストレス線材および鉄筋の各断面積をati、上記プレストレス部材の断面における圧縮縁から各上記プレストレス線材および鉄筋までの距離をdiとし、
上記Mu(t)=Σκ×ati×σyi(t)×di
によって、上記プレストレス部材の上記時間tにおける高温時曲げ耐力Mu(t)を、上記i本のプレストレス線材および鉄筋の高温時曲げ耐力の総和(Σ)として推定することを特徴とする請求項1に記載のプレストレス部材の耐火設計方法。
【請求項3】
上記ステップを、引張力を受ける上記プレストレス線材、または引張力を受ける上記プレストレス線材および鉄筋についてのみ実施することを特徴とする請求項1または2に記載のプレストレス部材の耐火設計方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図5】
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