説明

プレス成形法

【課題】被加工材を加熱してプレス加工するプレス成形法に関し、金型への位置決め精度の悪化や金型の保持不良が発生しないプレス成形法を提供することを課題とする。
【解決手段】それぞれプレス方向に独立して移動可能で、少なくとも一方は複数ある第1電極5a−5dと第2電極7a−7dとを前記被加工材1の単一の折り曲げ線3を挟んで配置し、第1電極5a−5d、第2電極7a−7dが被加工材1に対して接触し、第1電極5a−5d、第2電極7a−7d間に通電して、折り曲げ線3を加熱し、折り曲げ線3に沿ってプレス加工する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工材を加熱してプレス加工するプレス成形法に関する。
【背景技術】
【0002】
被加工材を加熱してプレス加工するプレス成形法において、被加工材を加熱する方法として、被加工材に、平面状又は帯状ないし線状の第1電極、第2電極を接触させ、第1電極、第2電極間に電流を流し、被加工材に発生するジュール熱で被加工材を加熱する方法がある。更に、第1電極、第2電極を被加工材に向かって押す部材は、被加工材との均一な接触を得るために、弾性体を介して、第1電極、第2電極の背部を押している。(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−142853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、第1電極、第2電極は、平面状又は帯状ないし線状なので、弾性体を介して第1電極、第2電極の背部を押しても、第1電極、第2電極の被加工材と当接する面の平面性や、被加工材の第1電極、第2電極と当接する面の平面性が悪いと、第1電極、第2電極と被加工材との均一な接触が得られず、被加工材を均一に加熱できない問題点がある。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、その課題は、被加工材を均一に加熱できるプレス成形法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、被加工材を加熱してプレス加工するプレス成形法において、被加工材の単一の折り曲げ線を挟んで、第1電極と第2電極とを配置し、前記第1電極、第2電極の少なくとも一方は複数あり、各電極はそれぞれプレス方向に独立して移動可能であり、前記第1電極、前記第2電極が前記被加工材に対して接触し、前記第1電極、前記第2電極間に通電して、前記折り曲げ線を加熱し、前記折り曲げ線に沿ってプレス加工することを特徴とするプレス成形法である。
【0007】
請求項2に係る発明は、前記第1電極、前記第2電極を構成する電極は、被加工材方向に付勢されていることを特徴とする請求項1記載のプレス成形方法である。
請求項3に係る発明は、前記第1電極、前記第2電極は、プレス加工する型に前記被加工材に向けて進退可能に設けられ、プレス加工の際は、前記第1電極、前記第2電極は前記型内に退避することを特徴とする請求項1または2記載のプレス成形方法である。
【0008】
請求項4に係る発明は、前記第1電極は、プレス方向に対して前記被加工材の一方の面に接触し、前記第2電極は、プレス方向に対して前記被加工材の他方の面に接触することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のプレス成形方法である。
【発明の効果】
【0009】
請求項1−4に係る発明によれば、被加工材を単一の折り曲げ線を挟んで、第1電極と第2電極とを配置し、前記第1電極、第2電極はそれぞれプレス方向に独立して移動可能であることにより、第1電極、第2電極と被加工材との均一な接触が得られ、更に、前記第1電極、第2電極の少なくとも一方は複数あることにより、被加工材を均一に加熱できる。
【0010】
また、第1電極と第2電極とを前記被加工材の単一の折り曲げ線を挟んで配置したことにより、被加工材の加熱面積が狭くなる。よって、被加工材に生じる撓みが小さく、金型への位置決め精度の悪化や金型の保持不良が生じにくい。プレス成形後、ダイクエンチを施しても、組織が変化し、硬度が上昇するのは、加熱された折り曲げ線及びその周辺のみであるので、後加工で穴開けや切削を行う場合に、工具寿命の低下が少なく、加工負荷が小さくなる。加熱に必要なエネルギーが少なくなり、プレス成形金型が熱損傷しにくくなる。金型も冷めやすくなり、生産性が向上する。被加工材の表面全域に、酸化スケールが発生しにくい。
【0011】
請求項2に係る発明によれば、前記第1電極、前記第2電極を構成する電極は、被加工材方向に付勢されていることにより、確実に第1電極、第2電極が被加工材に接触し、第1電極、第2電極と被加工材との均一な接触が得られる。
【0012】
請求項3に係る発明によれば、前記第1電極、前記第2電極は、プレス加工する型に前記被加工材に向けて進退可能に設けられ、プレス加工の際は、前記第1電極、前記第2電極は前記型内に退避することにより、折り曲げ線の加熱とプレス加工とを一つの装置で連続してできるので、加工効率がよい。
【0013】
請求項4に係る発明によれば、前記第1電極は、プレス方向に対して前記被加工材の一方の面に接触し、前記第2電極は、プレス方向に対して前記被加工材の他方の面に接触することにより、被加工材の一方の面から他方の面にかけて、均一に加熱できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1実施形態を説明する構成図である。
【図2】第2の実施形態のプレス成形法を実施するための装置の正面から見た断面図であり、図3の切断線A−Aでの断面図である。
【図3】図2の切断線B−Bでの断面図である。
【図4】図3の切断線C−Cでの断面図である。
【図5】図2に示す装置の作動を説明する図である。
【図6】他の実施形態を説明する図である。
【図7】他の実施形態を説明する図である。
【図8】他の実施形態を説明する図である。
【図9】他の実施形態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
『第1実施形態』
図1は第1実施形態を説明する構成図である。図において、被加工材1には、単一の折り曲げ線3を挟んで、それぞれプレス方向(図において、矢印I方向)に独立して移動可能に設けられた第1電極5a−5d、第2電極7a−7dが配置されている。なお、本明細書で、「折り曲げ線」とは、パンチとダイとを用いて被加工材をプレス加工した際に、被加工材の変形部(せん断、曲げ、絞り等により変形する部分)によって形成される線をいう。また、「プレス方向」とは、プレス加工する際に、パンチまたはダイが移動する方向をいう。
【0016】
第1電極5a−5d、第2電極7a−7dが被加工材1に対して接触し、第1電極5a−5d、第2電極7a−7dに通電すると、ジュール熱により、折り曲げ線3の近傍が部分的に加熱される。そして、折り曲げ線3に沿ってプレス加工される。
【0017】
このようなプレス成形方法によれば、以下のような効果が得られる。
(1) 被加工材1を単一の折り曲げ線3を挟んで、第1電極5a−5dと、第2電極7a−7dとを配置し、第1電極5a−5dと、第2電極7a−7dとはそれぞれプレス方向に独立して移動可能であることにより、第1電極5a−5d、第2電極7a−7dと被加工材1との均一な接触が得られ、更に、第1電極、第2電極は複数あることにより、被加工材1を均一に加熱できる。
【0018】
(2) 第1電極5a−5d、と第2電極7a−7dとを被加工材1の単一の折り曲げ線3を挟んで配置し、折り曲げ線3を加熱することにより、被加工材1の加熱面積が狭くなる。このため、被加工材1に生じる撓みが小さく、金型への位置決め精度の悪化や金型の保持不良が生じない。プレス成形後、ダイクエンチを施しても、組織が変化し、硬度が上昇するのは、加熱された折り曲げ線3及びその周辺のみであるので、後加工で穴開けや切削を行う場合に、工具寿命の低下が少なく、加工負荷が小さくなる。加熱に必要なエネルギーが少なくなり、プレス成形金型が熱損傷しにくくなる。金型も冷めやすくなり、生産性が向上する。被加工材1の表面全域に、酸化スケールが発生しない。
【0019】
(2) 第1電極5a−5d、第2電極7a−7dは、それぞれプレス方向に独立して移動可能であるので、第1電極5a−5d、第2電極7a−7dの全てが被加工材1にあたり、折り曲げ線3を均一に加熱できる。
【0020】
(3) 第1電極5a−5d、第2電極7a−7dは複数あることにより、折り曲げ線3を均一に加熱できる。
尚、本発明は上記実施形態に限定するものではない。上記実施形態では、第1電極、第2電極は複数あったが、少なくともどちらか一方の電極が複数あれば、折り曲げ線3を均一に加熱できる。
『第2実施形態』
次に、図2−図5を用いて、本発明の第2実施形態を説明する。図2は第2実施形態のプレス成形法を実施するための装置を正面から見た断面図であり図3の切断線A−Aでの断面図、図3は図2の切断線B−Bでの断面図、図4は図3の切断線C−Cでの断面図、図5は図2に示す装置の作動を説明する図である。
【0021】
先ず、図2、図3を用いて、本実施形態のプレス成形法を実施するためのプレス装置の全体構成を説明する。尚、図2−図5に示すプレス装置は、平板を「く」字形にプレス加工するプレス装置である。これらの図において、プレス装置11は、平板(被加工材)21の下面(一方の面)を押すダイ(金型)13と、平板21の上面(他方の面)を押すパンチ(金型)15とに大別される。
【0022】
パンチ15の下面15aには、断面形状が三角形で、図2において紙面と垂直方向に伸びる三角柱状の突部17が形成されている。突部17には、頂部(稜線)17aを介して一方の側には斜面17bが、他方の側には斜面17cが形成されている。
【0023】
一方、ダイ13の上面13aには、パンチ15の突部17が挿入可能な断面形状が略V字形の溝部19が形成されている。溝部19には、底部19aを介して一方の側には斜面19bが、他方の側には斜面19cが形成されている。
【0024】
そして、本実施の形態の場合、突部17の頂部17aと、溝部19の底部19aとが、導電性を有する平板21に対して、プレス方向に沿った単一の折り曲げ線BLを形成する。
【0025】
次に、図2−図4を用いて、パンチ15、ダイ13を詳細に説明する。
(パンチ15)
パンチ15の上面15bには、凹部22が形成されている。パンチ15の突部17の斜面17bには、プレス方向(図2において矢印II方向)に沿った穴23が、図2において紙面と垂直方向に沿って5カ所形成されている。また、斜面17cにも、プレス方向に沿った穴25が、図2において紙面と垂直方向に沿って5カ所形成されている。穴23は、プレス方向に延出し、突部17の斜面17bから凹部22の底部22aにかけて貫通した穴となっている。穴25も、突部17の斜面17cから凹部22の底部22aにかけて貫通した穴となっている。
【0026】
5カ所の穴23には、それぞれ長尺状で平板21の上面21aに点接触可能な電極27が設けられている。電極27の長さは、穴23の深さより短く設定されている。また、5カ所の穴25には、それぞれ絶縁材でなる長尺状で平板21の上面21aに当接可能な絶縁棒29が設けられている。絶縁棒29の長さは、穴25の深さより短く設定されている。
【0027】
凹部22内には、導電性を有する電極支持板31が配置される。この電極支持板31は図示しない機構により、凹部22の底部22aと凹部22の開口22bとの間で移動されるようになっている。そして、一端側が各電極27の凹部22側の端面に接続され、他端側が電極支持板31に接続された導電性を有するスプリング33により、各電極27は、それぞれ独立して電極支持板31に支持されている。また、一端側が各絶縁棒29の凹部22側の端面に接続され、他端側が電極支持板31に接続されたスプリング35により、絶縁棒29も、電極支持板31に支持されている。本実施形態では、電極27と、絶縁棒29とは同じ長さとした。そして、図2に示すように、パンチ15が上昇し、パンチ15の下面とダイ13の上面との間に空間があり、電極支持板31が凹部22の底面22aに当接している状態では、電極27、絶縁棒29は突部17の斜面17b、17cから突出し、それらの先端部は、突部17の頂部17aより下方に位置するように、スプリング33、スプリング35は設定されている。また、電極支持板31が、凹部22の開口22b付近まで移動すると、電極27、絶縁棒29は穴23、穴25内に待避するようになっている。
(ダイ13)
ダイ13の下面13bには、凹部37が形成されている。溝部19の斜面19bには、プレス方向に沿った穴39が、図2において紙面と垂直方向に沿って5カ所形成されている。また、斜面19cにも、プレス方向に沿った穴41が、図2において紙面と垂直方向に沿って5カ所形成されている。穴39は、プレス方向に延出し、溝部19の斜面19bから凹部37の底部37aにかけて貫通した穴となっている。穴41も、溝部19の斜面19cから凹部37の底部37aにかけて貫通した穴となっている。尚、本実施形態の各穴39は、パンチ15側の各穴23と対向し、各穴41は、パンチ15側の各穴25と対向するように形成されている。
【0028】
5カ所の穴39には、それぞれ長尺状で平板21の下面21bに当接可能な絶縁棒43が設けられている。絶縁棒43の長さは、ダイ13の上面13aから凹部37の底部37aまでの長さより短く設定されている。また、5カ所の穴41には、それぞれ長尺状で平板21の下面21bに点接触可能な電極45が設けられている。電極45の長さは、ダイ13の上面13aから凹部37の底部37aまでの長さより短く設定されている。
【0029】
凹部37内には、導電性を有する電極支持板47が配置される。この電極支持板47は図示しない機構により、凹部37の底部37aと凹部37の開口37bとの間で移動されるようになっている。そして、一端側が各絶縁棒43の凹部22側の端面に接続され、他端側が電極支持板47に接続されたスプリング49により、絶縁棒43は、電極支持板47に支持されている。また、一端側が各電極45の凹部37側の端面に接続され、他端側が電極支持板47に接続された導電性を有するスプリング51により、各電極45も、それぞれ独立して電極支持板47に支持されている。本実施形態では、絶縁棒43と、電極45とは同じ長さとした。そして、図2に示すように、パンチ15が上昇し、パンチ15の下面とダイ13の上面との間に空間があり、電極支持板47が凹部37の底面37aに当接している状態では、絶縁棒43、電極45は溝部19の斜面19b、19cから突出し、それらの先端部は、ダイ13の上面13aより上方に位置するように、スプリング49、スプリング51は設定されている。また、電極支持板47が、凹部37の開口47b付近まで移動すると、絶縁棒43、電極45は穴39、穴41内に待避するようになっている。
【0030】
よって、本実施の形態例においても、被加工材である平板21の単一の折り曲げ線BLを挟んで、電極27(第1電極)と電極45(第2電極)とが配置されていることとなる。
【0031】
そして、交流電源61により、電極支持板31と電極支持板47とには、電圧が印加されるようになっている。
次に、図2、図5を用いて、上記構成の装置の作動を説明する。
【0032】
図2に示すように、パンチ15が上昇し、パンチ15の下面とダイ13の上面との間に空間がある状態で、被加工材である平板21が、ダイ13の上面の溝部19を覆うように配置される。このとき、ダイ13側の絶縁棒43と電極45とを支持するスプリング49,51は弾性変形し、プレス方向の弾性反発力(付勢力)により、絶縁棒43と電極45とは、それぞれ独立して平板21の下面21bに均一に押接する。パンチ15を下降させることにより、パンチ15側の電極27と絶縁棒29が平板21に当接し、パンチ15側の電極27と絶縁棒29とを支持するスプリング33,35は弾性変形し、プレス方向の弾性反発力(付勢力)により、絶縁棒29と電極27とは、それぞれ独立して平板21の上面21aに均一に押接する。
【0033】
ここで、交流電源を用いて、電極支持板31と電極支持板47とに、電圧を印加すると、平板21の上面21aに押接する電極27と、折り曲げ線BLを挟んで平板21の下面21bに押接する電極45との間に電気が流れる。これにより、平板21の折り曲げ線BL及び折り曲げ線BLの周辺がジュール熱により加熱され、軟化する。
【0034】
設定した加熱温度になったら、図5に示すように、電極支持板31、電極支持板47を駆動し、電極27、絶縁棒29を穴23、穴25内に、絶縁棒43、電極45を穴39、穴41内に待避させる。そして、パンチ15をプレス方向(矢印∨方向)に下降させ、平板21を「く」字形にプレス加工するプレス成形を行う。
【0035】
このような構成によれば、以下のような効果が得られる。
(1) 平板21(被加工材)を単一の折り曲げ線BLを挟んで、電極27(第1電極)と電極45(第2電極)とを配置し、電極27と電極45とはそれぞれプレス方向に独立して移動可能であることにより、電極27、電極45と平板21との均一な接触が得られ、更に、電極27、電極45は複数あることにより、平板21を均一に加熱できる。
【0036】
(2) 平板21の折り曲げ線BL及びその周辺のみが軟化するため、平板21全体に撓みが発生せず、金型(ダイ13,パンチ15)への位置決め精度の悪化や金型の保持不良が発生しない。
【0037】
(3) 平板21全体に熱歪が生じないので、プレス成形後の寸法精度が良好となる。
(4) プレス成形後、ダイクエンチを施した場合、組織が変化するのは、折り曲げ線BLとその周辺のみである。よって。平板21全体の硬度が上昇せず、後加工で穴開けや切削を行う場合に、工具寿命が低下が少なく、加工負荷も小さい。
【0038】
(5) 平板21の折り曲げ線BL及びその周辺のみを加熱するので、加熱に必要なエネルギーが少なくなる。
(6) 平板21の折り曲げ線BL及びその周辺のみを加熱するので、プレス成形金型が熱損傷しにくい。また、金型も短時間で冷め、生産性が上がる。
【0039】
(7) 平板21の折り曲げ線BL及びその周辺のみを加熱するので、平板21の表面全域に、酸化スケールが発生しない。
(8) 折り曲げ線BLを挟んで電極27と電極45とが配置されていることにより、折り曲げ線BLの一方の側から他方の側にかけて均一に加熱できる。
【0040】
(9) 各電極27は各スプリング33を介して、各電極45は各スプリング51を介して、支持されていることにより、確実に全ての電極27、45が平板21に接触し、折り曲げ線BLの全域にわたって均一に加熱することができる。
【0041】
(10) 電極27、電極45は、プレス加工するパンチ15とダイ13とに設けられていることにより、折り曲げ線BLの加熱とプレス加工とを一つの装置で連続してできるので、加工効率がよい。
【0042】
(11) 電極27は、プレス方向に対して平板21の上面21a(一方の面)に接触し、電極45は、プレス方向に対して平板21の下面21b(他方の面)に接触することにより、平板21の一方の面から他方の面にかけて均一に加熱できる。
【0043】
尚、本発明は、上記実施形態に限定するものではない。上記実施形態例では、平板21の折り曲げ線BL及びその周辺を加熱したが、折り曲げ線BLだけ加熱できれば、上記(1)−(11)の効果は得られる。
【0044】
また、電極、絶縁棒は、スプリングを介して電極支持板に接続したが、スプリングに限定するものではなく、電極、絶縁棒をゴム等の弾性体を介して電極支持板に接続しても良い。更に、図6に示すように、電極71、絶縁棒73を弾性を有する材質で製造することにより、電極、絶縁棒を均一に板材に押接させることができ、スプリングは不要となる。更に、上記実施形態では、各電極、各絶縁棒にそれぞれ独立した付勢手段を設けたが、1つの付勢手段で複数の電極、絶縁棒を付勢するようにしても良い。例えば、図4において、電極支持板31と各電極27との間に一枚の板状のゴムを配置し、複数ある電極27の全てを付勢する構成がある。
【0045】
更に、図2において、ダイ13側の電極45の代わりに絶縁棒を設け、パンチ15側の絶縁棒29の代わりに電極を設け、この絶縁棒29の代わりに設けた電極と、電極27との間に通電しても、平板21の折り曲げ線BL及びその周辺のみを加熱することができる。
【0046】
更にまた、図2において、パンチ15側の電極27の代わりに絶縁棒を設け、ダイ13側の絶縁棒43の代わりに電極を設け、この絶縁棒43の代わりに設けた電極と、電極45との間に通電しても、平板21の折り曲げ線BL及びその周辺のみを加熱することができる。
【0047】
また、上記実施形態は、折り曲げ線BLを挟んで、同数の電極を配置した例で説明を行ったが、同数に限定するものではなく、例えば、1対複数であってもよい。
また、平板21を「く」字形にプレス加工するプレス成形に限定するものではない。図7,図8を用いて説明する。図7はリクライニング装置の分解斜視図、図8は図7のラチェットを斜視図である。図7において、100は、シートクッション側のロアアームに設けられるベースアームである。130は、ベースアーム100に対して回転可能に設けられたシートバックのアッパアーム側に設けられるラチェットである。図8に示すように、ラチェット130には、アッパアームの回転平面と平行な面上で、アッパアームの回転中心軸を中心とした円周上に形成された内歯131が形成されている。ベースアーム100とラチェット130との間には、ラチェット130の内歯131と噛合可能な外歯141,外歯151を有するポール140,150が設けられている。ベースアーム100には、アッパアームの回転平面と平行な面上で、ポール140をアッパアームの回転中心軸を中心とした円の半径方向に案内して、ポール140,ポール150の外歯141,外歯151を内歯131に噛合/離反させるガイド突起105,106,107,108が形成されている。ベースアーム100とラチェット130との間には、アッパアームの回転中心軸に沿って設けられたヒンジピン120によって回転駆動されるカム170が設けられる。このカム170は、ラチェット130の内歯131と噛合する方向にポール140,150の背部を押すものである。また、カム170と一体となって回転し、ラチェット130の内歯131から離反する方向にポール140,150を駆動するレリーズプレート180がカム170と並設されている。
【0048】
ここで、ヒンジピン120を一方の方向に回転すると、ポール140,ポール150の外歯141,外歯151が内歯131に噛合し、ロック状態となる。ヒンジピン120を他方の方向に回転すると、ポール140,ポール150の外歯141,外歯151が内歯131から離反し、ロック解除状態となる。
【0049】
そして、内歯131が形成されたラチェット130をプレス成形して製造する場合や、ガイド突起105,106,107,108が形成されたベースアーム100をプレス成形して製造する場合も、本発明を適用できる。
【0050】
ラチェット130の場合、図8において、折り曲げ線BL(尚、図8は、プレス成形後の形状を示しており、折り曲げ線BLは、ハッチングを施した部分となっている。)を挟んで、第1電極と第2電極とを配置し、第1電極、第2電極の少なくとも一方は複数あり、それぞれプレス方向に独立して移動可能であり、折り曲げ線BLを挟んだ電極間に通電して、折り曲げ線BL及びその周辺のみを加熱し、プレス加工(ハーフ抜き加工)を行うことにより、上記(1)−(11)の効果が得られる。
【0051】
また、ベースアーム100の場合も、ラチェット130と同様にしてプレス加工を行うことにより、上記(1)−(11)の効果が得られる。
更に、図9に示すように、シートトラック装置のロアレール201をプレス加工により製造する場合にも、折り曲げ線BLを挟んで、第1電極と第2電極とを配置し、第1電極、第2電極の少なくとも一方は複数あり、それぞれプレス方向に独立して移動可能であり、折り曲げ線BLを挟んだ電極間に通電して、折り曲げ線BL及びその周辺のみを加熱し、プレス加工を行うことにより、上記(1)−(11)の効果が得られる。
【符号の説明】
【0052】
1 被加工材
3 折り曲げ線
5a−5d,7a−7d 電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工材を加熱してプレス加工するプレス成形法において、
被加工材の単一の折り曲げ線を挟んで、第1電極と第2電極とを配置し、
前記第1電極、第2電極の少なくとも一方は複数あり、
各電極はそれぞれプレス方向に独立して移動可能であり、
前記第1電極、前記第2電極が前記被加工材に対して接触し、
前記第1電極、前記第2電極間に通電して、前記折り曲げ線を加熱し、
前記折り曲げ線に沿ってプレス加工することを特徴とするプレス成形法。
【請求項2】
前記第1電極、前記第2電極を構成する電極は、被加工材方向に付勢されていることを特徴とする請求項1記載のプレス成形方法。
【請求項3】
前記第1電極、前記第2電極は、プレス加工する型に前記被加工材に向けて進退可能に設けられ、
プレス加工の際は、前記第1電極、前記第2電極は前記型内に退避することを特徴とする請求項1または2記載のプレス成形方法。
【請求項4】
前記第1電極は、プレス方向に対して前記被加工材の一方の面に接触し、
前記第2電極は、プレス方向に対して前記被加工材の他方の面に接触することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のプレス成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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