説明

プレス機械の昇降装置

【課題】 プレス負荷を受け止める時に、各部の遊びを予めなくして上下方向の剛性を高めることができるプレス機械の昇降装置を提供する。
【解決手段】 昇降機構23によって昇降可能とされ、プレス機械のプレス動作時に加圧力を受ける昇降台26を設ける。前記昇降機構23により昇降台26が上昇位置にあるときに、昇降機構23の昇降方向の遊びを、前記昇降台26を上昇または下降方向に寄せて除去する遊び除去手段42を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、パンチプレス等のプレス機械おける昇降台の昇降装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の工具を交換使用可能としたパンチプレスとして、工具支持体をタレットとするタレット式のものが一般的である。しかし、タレットパンチプレスでは、タレット上に保持できるツール種類,サイズが限られ、多彩な加工を行うことができない。そのため、工具支持体として次のようなカートリッジを用いるカートリッジ式のパンチプレスが提案されている(例えば特許文献1)。これは、複数のツールを搭載した矩形のカートリッジを複数準備し、これらカートリッジを直線経路のレール上でパンチ位置に出し入れすることにより、カートリッジ交換を行うものである。
【0003】
しかし、上記カートリッジ式のパンチプレスは、カートリッジ内に並べられたツールの割り出しを、ラムを有するパンチ駆動部の平面移動により行うものであるため、移動する部分の重量が重くてツールの高速割り出しが難しい。カートリッジの直線移動で一方向のツール割り出しを行うものであるが、これもカートリッジ全体の直線移動が必要なために高速割り出しが難しい。
【0004】
そこで、工具支持体として円形のカートリッジを用い、旋回動作する工具支持体交換装置によりプレスフレームに渡すものを試みた。このパンチプレスでは、工具支持体交換装置とプレスフレームとの間で工具支持体を受け渡すために、プレスフレームの一部を昇降部材とし、この昇降部材に工具支持体を支持する。
【特許文献1】特開2000−351028号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記円形カートリッジ式の工具支持体を用いたパンチプレスでは、ダイ側の昇降部材が、工具支持体を載せて上昇した位置でパンチ加工時の支持を行うため、この上昇位置で打ち抜き荷重を受けることになる。そのため、パンチ加工時の打ち抜き荷重に耐えられる支持を行う必要があり、昇降部材を昇降させる機構が大がかりなものとなる。例えば、大型の油圧シリンダを内蔵したものが必要とされる。このために、近年のように電気サーボ化されて本体に油圧ユニットを持っていないパンチプレスでは、その昇降機構のためだけに油圧ユニットを設置する必要がある。また油を機内に供給することにより、油温上昇の影響を受け、ヘッド部の熱変位によるパンチ・ダイ工具間の芯ずれも大きくなる。
【0006】
このような課題を解消する対策として、図8に概略を示すものを先に提案した(特願2003−363956号)。この例は、昇降台51を昇降させる昇降機構52をリンク機構57などで構成し、小型化したものである。昇降機構52は、昇降台51を、下方に退避した工具支持体交換位置と、上昇位置、つまりパンチと共に板材に加工を施しプレス負荷を受け止めるプレス負荷受止位置との間で昇降させるものでなる。リンク機構57は、左右方向に移動自在なスライド部材53と、このスライド部材53と前記昇降台51とを連結する上リンク54、およびフレーム本体56と前記スライド部材53とを連結する下リンク55とでなる。スライド部材53にはカムフォロア58を設け、このカムフォロア58は、工具支持体59の昇降方向と平行に移動可能に設けた昇降カム部材60のカム溝61内を移動自在とする。昇降駆動機構62で前記昇降カム部材60を昇降させることにより、スライド部材53を左右に移動させ、その左右移動をリンク機構57で昇降台51の昇降動作に変換する。
【0007】
しかし、このように昇降機構52を構成した場合、プレス負荷を受け止める前記プレス負荷受止位置まで上昇した状態で、リンク機構57における各リンク54,55のピン隙間や、各リンク54,55の長さの誤差等により微小な遊び(ガタ)が生じる。このためパンチ加工時に前記遊びが吸収されるまでの打ち抜き初期の工程で、上下方向の剛性が非常に低くなって、加工品質に悪影響を及ぼすという問題がある。具体的には、上記遊びはプレス荷重が加わったときには無くなるが、昇降台51が、プレス荷重で上記遊びが無くなるまで加工する間に横滑りを生じ、これにより昇降台51に支持されたダイ(図示せず)の位置の精度が低下し、加工精度,加工品質の低下を招く。
【0008】
そこで、前記プレス負荷受止位置まで上昇した状態で、図9のように、エアシリンダ63で進退移動可能に設けたボルスタ64等を、フレーム本体56の下部と昇降台51との間に挿入することを考えた。
しかし、このような構成では、ボルスタ64を挿入・退避させる時間がサイクルタイムに余分に掛かり、稼働率を悪くするという新たな問題が生じる。
【0009】
なお、上記の課題は、円形カートリッジ式の工具支持体を用いたパンチプレスの場合につき説明したが、プレス機械において、プレス負荷を受け止める昇降台一般に、上記と同様な課題がある。
【0010】
この発明の目的は、プレス負荷を受け止める時に各部の遊びを予め無くして上下方向の剛性を高めることができるプレス機械の昇降装置を提供することである。
この発明の他の目的は、遊びを解消するための余分な時間を不要とすることである。
この発明のさらに他の目的は、昇降機構における遊びが特に問題となり易いダイ側の昇降台につき、プレス負荷を受け止める時の上下方向の剛性を高めることができるものとすることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明のプレス機械の昇降装置は、パンチを設置する上側の昇降台またはダイを設置する下側の昇降台のうちのいずれかの昇降台を昇降させる昇降機構と、この昇降機構により前記昇降台が下降位置または上昇位置にあるときに、昇降機構の昇降方向の遊びを、前記昇降台を上昇または下降方向に寄せて除去する遊び除去手段とを備えたものである。
この構成によると、昇降機構により昇降台が下降位置または上昇位置にあるときに、昇降機構の昇降方向の遊びを、昇降台を上昇または下降方向に寄せて除去する遊び除去手段を設けたため、昇降機構の各部で生じる遊びを無くした状態でプレス加工を行うことができる。そのためプレス動作時における昇降機構の上下方向の剛性が向上し、加工精度,加工品質を向上させることができる。
【0012】
前記遊び除去手段は、昇降台の下方または上方に位置してプレスフレームに固定設置されて、前記昇降台を上方または下方に付勢する付勢手段であり、前記昇降機構により前記昇降台が上昇位置または下降位置にあるときに作用せず、前記昇降台が下降位置または上昇位置に移動することにより、この昇降台を付勢するものであっても良い。
この構成の場合、プレス動作のために昇降台を上昇位置または下降位置へ移動させるたけで、昇降機構の遊びを除去することができる。そのため、サイクルタイムが余分に掛かることがなく、稼働率の低下を招くこともない。
【0013】
この発明において、前記下側の昇降台は、プレス動作時に加圧力を受けるものであっても良い。プレス機械において、ダイは固定設置する場合が多いが、種々の都合でダイを昇降可能とする場合がある。このような場合に、昇降機構の上記遊びが問題となる。そのため、ダイを設置する下側の昇降台の場合に、プレス負荷を受け止める時の上下方向の剛性が高められることの効果がより効果的となる。
なお、上側の昇降台は、加圧力を受けず、また下降位置にて上側に寄せられて前記付勢手段により付勢される。
【発明の効果】
【0014】
この発明のプレス機械の昇降装置は、パンチを設置する上側の昇降台またはダイを設置する下側の昇降台のうちのいずれかの昇降台を昇降させる昇降機構と、この昇降機構により前記昇降台が下降位置または上昇位置にあるときに、昇降機構の昇降方向の遊びを、前記昇降台を上昇または下降方向に寄せて除去する遊び除去手段とを備えるため、プレス負荷を受け止める時に各部の遊びを予め無くして上下方向の剛性を高めることができる。
前記遊び除去手段が、前記遊び除去手段は、昇降台の下方または上方に位置してプレスフレームに固定設置されて、前記昇降台を上方または下方に付勢する付勢手段であり、前記昇降機構により前記昇降台が上昇位置または下降位置にあるときに作用せず、前記昇降台が下降位置または上昇位置に移動することにより、この昇降台を付勢するものである場合は、遊びを解消するための余分な時間が不要となる。
前記下側の昇降台が、プレス動作時に加圧力を受けるものである場合は、昇降機構における遊びが特に問題となり易いダイ側の昇降台につき、プレス負荷を受け止める時の上下方向の剛性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
この発明の第1の実施形態を図1ないし図5と共に説明する。図1は、この実施形態の昇降装置を備えたプレス機械の破断側面図を示す。このプレス機械は、上下の工具であるパンチ1およびダイ2をそれぞれ搭載可能な工具支持体3,4を、プレス位置Pでプレスフレーム5の上下の工具支持体設置部6,7にそれぞれ支持させてパンチ加工を行うパンチプレスである。このパンチプレスは、ラム10、および板材送り手段11を有し、複数の工具支持体3,4を搭載した工具支持体交換装置8,9が設けられている。プレス位置Pはラム10を配置した平面位置のことである。
【0016】
上下の工具支持体3,4は、それぞれパンチ1を搭載可能なパンチ工具支持体3と、ダイ2を搭載可能なダイ工具支持体4となる。パンチ工具支持体3に対して、各パンチ1は、ばね部材(図示せず)により上昇復帰可能に支持されている。
パンチ1を搭載した工具支持体3を設置する上側の工具支持体設置部6と、ダイ2を搭載した工具支持体4を設置する下側の工具支持体設置部7は、互いに同心で上下に並んで設けられている。
【0017】
ラム10は、工具支持体設置部6,7に設置された工具支持体3,4の上方に位置し、パンチ工具支持体3に支持されたパンチ1をパンチ駆動する。ラム10は、ラム昇降ガイド14によってプレス位置Pで昇降自在に支持されており、ラム昇降駆動装置15により昇降駆動される。ラム昇降駆動装置15は、例えばサーボモータ15aとその回転を往復直線運動に変換する運動変換機構15bとからなる。ラム昇降駆動装置15は油圧シリンダ等であっても良い。板材送り手段11は、テーブル12上で被加工物である板材Wを前後左右に移動させる手段であり、板材Wの縁部をワークホルダ13で把持してワークホルダ13の移動により上記板材Wの前後左右の移動を行うものとされている。
【0018】
工具支持体交換装置8,9は、工具支持体設置部6,7に対して工具支持体3,4を交換する装置であり、互いに同心で上下に位置するパンチ用の工具支持体交換装置8とダイ用の工具支持体交換装置9とがある。
工具支持体交換装置8,9は、平面形状の外形が円形とされた交換装置本体16,17を有し、図2のように、この交換装置本体16,17の外周部における円周方向複数箇所に設けられた切欠状部分からなる工具支持体保持部18に、各工具支持体3,4が保持される。工具支持体保持部18は、内部に嵌合した工具支持体3,4を、左右両側から爪部材24で係脱自在に支持することで、着脱自在に保持する。
図1に示すように、交換装置本体16,17は、支持台19,20を介して水平旋回自在に支持され、割出機構21により任意の工具支持体3,4がプレス位置Pに来るように旋回させられる。割出機構21は、上下に交換装置本体16,17を、それぞれサーボモータ等の駆動源21a,21aにより伝達機構21b,21bを介して旋回駆動させるものである。
【0019】
上下の工具支持体設置部6,7は、パンチ加工時は工具支持体3,4を上下動不能に固定するものであり、中央にラム10の昇降する空間、およびスラグが通過する空間をそれぞれ有し、工具支持体3,4の外周部を保持するものとされている。これら工具支持体設置部6,7は、具体的には円筒状の昇降台25,26と、これら昇降台25,26の内周に回転のみ自在に支持された円筒状の回転部材27,28とを有し、回転部材27,28で工具支持体3,4を保持する。
【0020】
図3に示すように、下側、つまりダイ側の昇降台26は昇降機構23により昇降駆動される。昇降台26は、図4に平面図で示すように、昇降台26の側部に複数本設けられたガイドレール29を、プレスフレーム5のフレーム本体5aに設けられた直動転がり軸受30に係合させることにより、フレーム本体5aに対して昇降自在とされている。
昇降機構23は、昇降カム部材31と、スライド部材32と、リンク機構33と、昇降駆動機構34とで構成される。昇降カム部材31は、ダイ工具支持体4の昇降方向と平行に移動可能に、フレーム本体5aに設置され、上下方向に延びる上下カム溝部35aと、上下方向に対して左右傾斜する傾斜カム溝部35bとを連ねたカム溝35を有する。スライド部材32は、前記カム溝35内を移動自在なカムフォロア36が設けられ、左右方向にスライド自在な部材である。
【0021】
リンク機構33は、上端が連結点Q1で昇降台26に回転自在に連結され下端がスライド部材62に連結点Q2で回動自在に連結された左右一対の上リンク37,37と、下端がフレーム本体5aに連結点Q3で回動自在に連結され上端がスライド部材32に連結点Q4で回動自在に連結された左右一対の下リンク38,38とで構成される。このリンク機構33は、図5のように、工具支持体4がプレス負荷受止位置となる高さ位置にあるときに、上下のリンク37,38が同一直線上で縦並びとなるようにされている。昇降駆動機構34は昇降カム部材31を昇降させる機構であり、フレーム本体5aに設置されたサーボモータ39と、このサーボモータ39により減速機を介して回転駆動されるピニオン40と、前記昇降カム部材31に上下方向に向けて設けられピニオン40が噛合するラック41とで構成される。
【0022】
フレーム本体5aには、昇降台26が上昇位置(プレス負荷受止位置)にあるときに、昇降機構23の昇降方向の遊びを下降方向に寄せて除去する遊び除去手段42が設けられている。この遊び除去手段42は、昇降台26の上方に配置されて、昇降台26を下降方向に付勢する付勢手段であり、昇降機構23により昇降台26がプレス負荷受止位置よりも下方の下降位置(工具支持体交換位置)に下降させられているときには作用せず、昇降台26がプレス負荷受止位置に移動することにより、この昇降台26を付勢するものである。
ここでは、遊び除去手段42を、昇降台26に対するロッド状の押え部材42bと、この押え部材42bを下向きに付勢するばね部材42aと、ブラケット22とで構成している。ブラケット22は、フレーム本体5aに固定されて昇降台26の上方に張り出す断面逆L字状のものとし、このブラケット22の水平片部分に前記押え部材42bを昇降自在に設置し、押え部材42bの下端の拡がり部分とブラケット22との間に、ばね部材42aを介在させている。
【0023】
回転部材28の上端には、工具支持体4の下端に形成されたカップリング部4aに噛み合うカップリング部28aが設けられ、両カップリング部4a,28aが噛み合うことにより、回転部材28に工具支持体4が結合される。
なお、図示は省略するが、上側、つまりパンチ側の昇降台25(図1)も、別の昇降機構で昇降移動させられる。回転部材27の下端には、工具支持体3の上端に形成されたカップリング部に噛み合うカップリング部が設けられ、両カップリング部が噛み合うことにより、回転部材27に工具支持体3が結合される。
【0024】
上記構成の動作を説明する。図2に示すように、工具支持体交換装置8,9の交換装置本体16,17の円周方向複数箇所に設けられた各工具支持体保持部18には、種々のパンチ1またはダイ2を支持した工具支持体3,4が保持され、爪部材24で抜け止めされている。希望の工具支持体3,4を使用するには、交換装置本体16,17を旋回させてその工具支持体保持部18をプレス位置Pに位置させる。
このとき、パンチ側の工具支持体設置部6の昇降台25は、回転部材27と共に上方に、またダイ側の工具支持体設置部7の昇降台26は回転部材28と共に下方に退避していて、工具支持体3,4がプレス位置Pに旋回移動することの妨げとなることが防止される。希望の工具支持体3,4を保持した工具支持体保持部18(図2)がプレス位置Pに来ると、上側の昇降台25の下降、および下側の昇降台26の上昇が行われる。
【0025】
ダイ側の昇降台26の上昇動作について、さらに詳しく説明する。図3に示すように、工具支持体4を交換するときは、昇降台26が下降した位置(工具支持体交換位置)にある。このとき、昇降カム部材31は下端位置にある。希望の工具支持体4がプレス位置に割り出されると、昇降駆動機構34の昇降カム部材31を上昇駆動する。これによりスライド部材32のカムフォロア36がカム溝35の傾斜カム溝部35bにガイドされて、スライド部材32が図3の左側にスライドすることで、リンク機構33の上リンク37および下リンク38が同図の傾斜姿勢から図5に示すように直立姿勢となり、昇降台26の全体が上昇する。昇降台25,26の昇降に伴い、これら昇降台25,26に支持された回転部材27が下降し回転部材28が上昇する。
【0026】
これにより、下側の回転部材28の上端のカップリング部28aがダイ工具支持体4のカップリング部4aと噛み合い、上側の回転部材27(図1)の下端のカップリング部もパンチ工具支持体3のカップリング部と噛み合う。その結果、工具支持体3,4は、円周方向に精度良く位置決めされる。
また、このとき、下側の昇降台26は、上昇過程で遊び除去手段42の押え部材42bに当たり、ばね部材42aの付勢力に抗して上昇を行うことにより下降方向に付勢される。そのため、昇降機構23の各部分の昇降方向の遊びが除去される。例えば、上リンク37や下リンク38の各連結点Q1〜Q4におけるピンとピン孔間の遊びや、カムフォロア36の周辺等における遊びが除去される。
【0027】
このように工具支持体3,4の割り出しが完了した後、工具支持体3,4における希望の工具1,2を割り出し、パンチ加工を行う。パンチ加工時において、昇降機構23の昇降方向の遊びが上記したように遊び除去手段42で除去されるため、昇降機構23の上下方向の剛性が向上し、加工精度,加工品質を向上させることができる。また、昇降機構23の上昇過程で昇降台26が遊び除去手段42に押し当てられることで遊びが除去されるため、遊び除去のために、例えば前述のボルスタを挿入する場合のような余分な動作が不要で、サイクルタイムの増加を招くことがなく、稼働率の低下の問題が生じない。
【0028】
なお、上記実施形態では、遊び除去手段42をばね部材で構成した例を示したが、これに限らず、例えば図6(A)に示すように、遊び除去手段42Aを、フレーム本体5aに設置された断面L字状のブラケット状のものとしても良い。このブラケット状の遊び除去手段42Aは、ばね状の材質のものでなくても良く、一般の鋼材からなるものであっても良い。この構成の場合、昇降台26が上昇位置(プレス負荷受止位置)に上昇して板ばね42Aを押すときに、鋼材等からなる遊び除去手段42Aの材質の持つ弾性により、昇降台26を下降方向に付勢する。この付勢により昇降機構23の各部の遊びが除去される。なお、同図は遊び除去手段42Aの撓みを強調して示している。
また図6(B)に示すように、昇降台26の上端に設置したゴム等の弾性部材43と、この弾性部材43に上方から対向するようにフレーム本体5aに設けた断面L字状の受け部材44とで遊び除去手段42Bを構成しても良い。この構成の場合、昇降台26が上昇位置(プレス負荷受止位置)に上昇したときに、弾性部材43が受け部材44に押し当てられて圧縮変形することで、その弾性部材43の復元力により昇降台26を下降方向に付勢する。この付勢により昇降機構23の各部の遊びが除去される。
【0029】
図7はこの発明の他の実施形態を示す。この実施形態は第1の実施形態において、下側の昇降機構23のリンク機構33をカム機構45に置き換えたものである。カム機構45は、左右移動可能に設けられるスライド部材32に形成されたカム46と、昇降台26の下部に設けられ前記カム46に転接するカムフォロア47とでなる。スライド部材32に設けるカムフォロア36、昇降カム部材31、昇降駆動機構34等の構成は第1の実施形態の場合と同じである。このほか、上記昇降機構23を、ボールねじやラック・ピニオンで構成しても良い。
【0030】
なお、上記各実施形態では、下側の昇降台26を昇降させる昇降機構23に対して遊び除去手段42,42Aを設けたが、上側の昇降台25(図1)を昇降させる昇降機構に対して遊び除去手段を設けても良い。また、この発明は、パンチプレスに限らず、成形加工や曲げ加工を行うプレス機械など、プレス機械一般に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】この発明の一実施形態にかかる昇降装置を備えたプレス機械の破断側面図である。
【図2】同プレス機械における工具支持体交換装置本体の工具支持体支持状態の平面図である。
【図3】ダイ側の昇降装置の工具支持体が工具支持体交換位置にある状態の破断正面図である。
【図4】ダイ側の昇降装置の要部平面図である。
【図5】ダイ側の昇降装置の工具支持体がプレス負荷受止位置にある状態の破断正面図である。
【図6】(A)はダイ側の昇降装置における遊び除去手段の他の例を示す部分破断正面図、(B)は同遊び除去手段のさらに他の例を示す部分破断正面図である。
【図7】この発明の他の実施形態にかかる昇降装置を備えたプレス機械の破断側面図である。
【図8】提案例の破断正面図である。
【図9】他の提案例の破断正面図である。
【符号の説明】
【0032】
2…ダイ
5…プレスフレーム
5a…フレーム本体
22…ブラケット
23…昇降機構
26…昇降台
32…スライド部材
33…リンク機構
37…上リンク
38…下リンク
42,42A,42B…遊び除去手段
42a…ばね部材
42b…押え部材
45…カム機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パンチを設置する上側の昇降台またはダイを設置する下側の昇降台のうちのいずれかの昇降台を昇降させる昇降機構と、この昇降機構により前記昇降台が下降位置または上昇位置にあるときに、昇降機構の昇降方向の遊びを、前記昇降台を上昇または下降方向に寄せて除去する遊び除去手段とを備えたプレス機械の昇降装置。
【請求項2】
前記遊び除去手段は、昇降台の下方または上方に位置してプレスフレームに固定設置されて、前記昇降台を上方または下方に付勢する付勢手段であり、前記昇降機構により前記昇降台が上昇位置または下降位置にあるときに作用せず、前記昇降台が下降位置または上昇位置に移動することにより、この昇降台を付勢するものである請求項1記載のプレス機械の昇降装置。
【請求項3】
前記下側の昇降台は、プレス動作時に加圧力を受けるものである請求項1または請求項2記載のプレス機械の昇降装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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