プレニルトランスフェラーゼ
【課題】膜結合性のプレニルトランスフェラーゼのDNAを単離する方法、その単離方法によって得られるDNA、および膜結合性のプレニルトランスフェラーゼの提供。
【解決手段】膜結合性プレニルトランスフェラーゼにおける、NDxxDxxxD、NQxxDxxxD、NQxxExxxD、DDxxDxxxD、DQxxDxxxD、DQxxExxxD、NExxDxxxD、NExxExxxD及びDExxExxxDからなる群より選択される少なくとも1つの保存モチーフを有し、かつ、ナリンゲニン等のフラボノイド、ゲニステイン等のイソフラボノイドあるいはイソリキリチゲニン等のカルコンを基質としてにプレニル基を導入する酵素活性を示す膜結合性プレニルトランスフェラーゼ。
【解決手段】膜結合性プレニルトランスフェラーゼにおける、NDxxDxxxD、NQxxDxxxD、NQxxExxxD、DDxxDxxxD、DQxxDxxxD、DQxxExxxD、NExxDxxxD、NExxExxxD及びDExxExxxDからなる群より選択される少なくとも1つの保存モチーフを有し、かつ、ナリンゲニン等のフラボノイド、ゲニステイン等のイソフラボノイドあるいはイソリキリチゲニン等のカルコンを基質としてにプレニル基を導入する酵素活性を示す膜結合性プレニルトランスフェラーゼ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜結合性プレニルトランスフェラーゼ、その製造方法、当該トランスフェラーゼをコードするDNA、および当該DNAの単離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
植物の生産する二次代謝産物の数は五万種を超えるとされ、天然有機化合物の大きなリソースとなっている。構造上の特徴から便宜上いくつかのグループに分類されるが、実際には異なったグループ間の特徴を併せ持つ化合物も非常に多い。プレニル化された芳香族化合物はその好例で、プレニル基は植物二次代謝産物の構造や生理活性の多様性に大きく貢献している。生合成的には複合経路と呼ばれる経路で生合成されるこれらの化合物は、耐虫性や耐病性などを担うことで植物の生命維持に必要な役割を担う一方で、薬用植物において生理活性本体としてその薬理作用に寄与しているものもある(非特許文献1)。例えば、プレニルフラボノイドには、抗腫瘍活性や抗菌作用といった様々な生理活性をもつものが多数報告されており(非特許文献2)、医薬及び食品産業でも非常に重要な化合物群となっている。これらはまた植物にとっては食害、感染防御において重要な役割を果たしている。
【0003】
とりわけ、プレニルフラボノイドなどプレニル芳香族化合物の生理活性に対するプレニル基の重要性は多くの研究者により指摘されており、実際プレニル基を持たない母核化合物には生理活性が見られないことも少なくない。従って、これら芳香族化合物のプレニル化を触媒する酵素は、産業的にも非常に重要と認識されている。しかし、芳香族を基質とするプレニルトランスフェラーゼは膜結合性のものが多く、生化学的研究の困難さから、これまで分子生物学的な解析が遅れており、フラボノイドを基質とする植物プレニルトランスフェラーゼに至っては、その遺伝子のクローニングは未だ一例も報告されていなかった。
【非特許文献1】S. Mesia-Vela et al., Phytomedicine, 8 (2001), p.481-488
【非特許文献2】H.Y. Sohn et al., Phytomedicine, 11 (2004), p.666-672
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって本発明は、芳香族を基質とする、膜結合性のプレニルトランスフェラーゼのDNAを単離する方法、その単離方法によって得られるDNA、および膜結合性のプレニルトランスフェラーゼの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ね、従来、大腸菌を用いた発現系では膜蛋白質を発現させるのは困難であったところ、酵母でライブラリーを作成し、複数のスクリーニング方法を組み合わせることにより植物由来の膜結合性プレニルトランスフェラーゼのcDNAの単離に成功し、さらに改良を重ねて本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち本発明は、以下のものを提供する。
項1.
膜結合性プレニルトランスフェラーゼであって、
NDxxDxxxD、NQxxDxxxD、NQxxExxxD、DDxxDxxxD、DQxxDxxxD、DQxxExxxD、NExxDxxxD、NExxExxxD及びDExxExxxDからなる群より選択される少なくとも1つの保存モチーフを有し、かつ
化学式(I):
【0007】
【化1】
【0008】
(式中、R1およびR2は、同一または異なって、水素基、水酸基、フェニル基、フェノール基若しくはアリール基を示し、
R3およびR4は、同一または異なって、水素基、水酸基若しくはメトキシル基を示す)、
化学式(II):
【0009】
【化2】
【0010】
(式中、R5およびR6は、同一または異なって、水素基、水酸基、フェニル基、フェノール基若しくはアリール基を示し、
R7およびR8は、同一または異なって、水素基、水酸基若しくはメトキシル基を示す)、
化学式(III):
【0011】
【化3】
【0012】
(式中、R9はフェニル基、フェノール基若しくはアリール基を示し、
R10、R11およびR12は、同一または異なって、水素基、水酸基若しくはメトキシル基を示す)、あるいは
化学式(IV):
【0013】
【化4】
【0014】
(式中、R13はフェニル基、フェノール基若しくはアリール基を示し、
R14、R15およびR16は、同一または異なって、水素基、水酸基若しくはメトキシル基を示す)
で表される化合物にプレニル基を導入する酵素活性を示す膜結合性プレニルトランスフェラーゼ。
項2.
プレニルドナーとしてジメチルアリルジホスフェート(DMAPP)、ゲラニル二リン酸(GPP)、ファルネシル二リン酸(FPP)、ゲラニルゲラニル二リン酸(GGPP)、フィチル二リン酸(PDP)からなる群より選択される少なくとも1種を基質とする、項1に記載の膜結合性プレニルトランスフェラーゼ。
項3.
以下の(i)又は(ii)のポリペプチド:
(i) 配列番号1、3、5、7、9、11又は13のいずれかのアミノ酸配列を有するポリペプチド、
(ii) (i)のポリペプチドにおいて、1又は2以上のアミノ酸残基が欠失、付加又は置換されたアミノ酸配列を有し、かつ、プレニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチド。
項4.
植物由来である、項1〜3のいずれかに記載の膜結合性プレニルトランスフェラーゼ。
項5.
植物が、マメ科、クワ科、オトギリソウ科、ミカン科、セリ科、キク科またはアサ科あるいはホップから選択される、項4に記載の膜結合性プレニルトランスフェラーゼ。
項6.
以下の(iii)〜(v)のいずれかに示すDNAからなる遺伝子:
(iii) 配列番号2、4、6、8、10、12又は14のいずれかの塩基配列からなるDNA、
(iv) (iii)の塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ膜結合性プレニルトランスフェラーゼをコードするDNA、
(v) (iii)の塩基配列からなるDNAと少なくとも70%以上の相同性を有する塩基配列からなるDNA。
項7.
項6に記載の遺伝子を含むベクター。
項8.
項7に記載のベクターを導入した形質転換体。
項9.
項8に記載の形質転換体を培養し、その形質転換体および/またはその培養物から膜結合性プレニルトランスフェラーゼを採取する工程を含んでなる膜結合性プレニルトランスフェラーゼの調製方法。
項10.
項6に記載の遺伝子によってコードされる膜結合性プレニルトランスフェラーゼ。
項11.
項8に記載の形質転換体を培養し、その形質転換体および/またはその培養物から芳香族プレニル化化合物を採取する工程を含んでなる芳香族プレニル化化合物の製造方法。
項12.
形質転換体が酵母、植物又は植物細胞である、項9又は11に記載の方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、
以下の化学式(I):
【0016】
【化5】
【0017】
(式中、R1およびR2は、同一または異なって、水素基、水酸基、フェニル基、フェノール基若しくはアリール基を示し、
R3およびR4は、同一または異なって、水素基、水酸基若しくはメトキシル基を示す)、
化学式(II):
【0018】
【化6】
【0019】
(式中、R5およびR6は、同一または異なって、水素基、水酸基、フェニル基、フェノール基若しくはアリール基を示し、
R7およびR8は、同一または異なって、水素基、水酸基若しくはメトキシル基を示す)、
化学式(III):
【0020】
【化7】
【0021】
(式中、R9はフェニル基、フェノール基若しくはアリール基を示し、
R10、R11およびR12は、同一または異なって、水素基、水酸基若しくはメトキシル基を示す)、あるいは
化学式(IV):
【0022】
【化8】
【0023】
(式中、R13はフェニル基、フェノール基若しくはアリール基を示し、
R14、R15およびR16は、同一または異なって、水素基、水酸基若しくはメトキシル基を示す)
で表される化合物にプレニル基を導入する酵素活性を示す、プレニルトランスフェラーゼおよび当該酵素をコードする遺伝子が提供される。
【0024】
また、本発明の酵素により、様々な有用な生理活性を示すプレニル芳香族化合物を大量かつ安価に生産できる。さらに、本発明の遺伝子の配列を用いて、プレニル化二次代謝物を多く含有する植物などから、芳香族化合物をプレニル化する酵素の遺伝子を単離することが可能となる。
【0025】
また、農業分野における分子育種のツールとしても、本発明の膜結合プレニルトランスフェラーゼ遺伝子を利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
(膜結合性プレニルトランスフェラーゼ)
本発明の膜結合性プレニルトランスフェラーゼは、膜結合性プレニルトランスフェラーゼにおける保存モチーフを少なくとも1つ有し、かつ
以下の化学式(I):
【0027】
【化9】
【0028】
(式中、R1およびR2は、同一または異なって、水素基、水酸基、フェニル基、フェノール基若しくはアリール基を示し、
R3およびR4は、同一または異なって、水素基、水酸基若しくはメトキシル基を示す)、
化学式(II):
【0029】
【化10】
【0030】
(式中、R5およびR6は、同一または異なって、水素基、水酸基、フェニル基、フェノール基若しくはアリール基を示し、
R7およびR8は、同一または異なって、水素基、水酸基若しくはメトキシル基を示す)、
化学式(III):
【0031】
【化11】
【0032】
(式中、R9はフェニル基、フェノール基若しくはアリール基を示し、
R10、R11およびR12は、同一または異なって、水素基、水酸基若しくはメトキシル基を示す)、あるいは
化学式(IV):
【0033】
【化12】
【0034】
(式中、R13はフェニル基、フェノール基若しくはアリール基を示し、
R14、R15およびR16は、同一または異なって、水素基、水酸基若しくはメトキシル基を示す)
で表される化合物にプレニル基を導入する酵素活性を示す膜結合性プレニルトランスフェラーゼである。
【0035】
本発明の膜結合性プレニルトランスフェラーゼが有する保存モチーフとしては、例えば、NDxxDxxxD、NQxxDxxxD、NQxxExxxD、DDxxDxxxD、DQxxDxxxD、DQxxExxxD、NExxDxxxD、NExxExxxD及びDExxExxxDからなる群より選択される少なくとも1つの保存モチーフが挙げられる。これらの保存モチーフにおいて、xで表された箇所はいかなるアミノ酸であってもよい。以下も同様である。
【0036】
なかでも、N(Q/E)LxDx(D/E)xDの保存モチーフを有するものが好ましい。これらの保存モチーフにおいて、(A/B)と表された箇所は、A又はBのアミノ酸であることを表す。以下も同様である。
【0037】
さらに、上記の保存モチーフのいずれか1つの直後に連続して、K(V/I)NKのアミノ酸配列を有する膜結合性プレニルトランスフェラーゼが、より好ましい。
【0038】
本発明の膜結合性プレニルトランスフェラーゼは、さらにVIAxxKDのアミノ酸配列モチーフを有するものが好ましい。また、VIAxxKDxxxxxGDのアミノ酸配列モチーフを有するものがより好ましく、特にVIAxxKDIPDxxGDのものが好適である。
【0039】
本発明の膜結合性プレニルトランスフェラーゼは、またさらにYxxxxxxxG*AT、LxFxIG(W/L)LQ、(S/A)Gxx(S/T)FR, TxPxxxxFCxxIおよびAEYxxxPLFからなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸配列モチーフを有していてもよい。xで表された箇所は上記と同様である。また、これらのモチーフは、相互に、後述の図3のマルチアラインメントで示す程度の間隔をおいた位置に存するのが好ましいが、これらに限定はされない。
【0040】
本発明の膜結合性プレニルトランスフェラーゼが活性を示す基質としては、フラボノイド、イソフラボノイド、プテロカルパン、クマリン、カルコンおよび/またはフロログルシノールなどが挙げられる。
【0041】
好ましいフラボノイドとしては、ナリンゲニン、ヘスペレチン、リキリチゲニン(liquiritigenin)、ガランギン、クリシン、サクラネチン、イソサクラネチン、タキシフォリン、アピゲニン、ケンフェロール、ケルセチンなどが挙げられる。
【0042】
好ましいイソフラボノイドとしては、ゲニステイン(genistein)、ダイゼイン(daidzein)、ビオカニンA (biochanin A)、フォルモノネチン (formononetin)などが挙げられる。
【0043】
好ましいカルコンとしては、イソリキリチゲニン(isoliquiritigenin)、 2’,4’,4−トリヒドロキシ−6’−メトキシカルコン、ナリンゲニンカルコン、メチルナリンゲニンカルコンなどが挙げられる。
【0044】
好ましいプテロカルパンとして、グリシノール(glycinol: 別名(6aS, 11aS)-3,9,6a-trihydroxypterocarpan)マーキアイン(maackiain)などが挙げられる。
【0045】
本発明の膜結合性プレニルトランスフェラーゼは、プレニルドナーとしてジメチルアリルジホスフェート(DMAPP)、ゲラニル二リン酸(GPP)、ファルネシル二リン酸(FPP)、ゲラニルゲラニル二リン酸(GGPP)、フィチル二リン酸(PDP)などを基質とする。
【0046】
例えば、本発明の膜結合性プレニルトランスフェラーゼの例としては、以下の(a)〜(j)のポリペプチドが挙げられる:
(a)配列番号1のアミノ酸配列を有するポリペプチド、
(b)配列番号1において、1又は2以上のアミノ酸残基が欠失、付加又は置換されたアミノ酸配列を有し、かつ、プレニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチド、
(c)配列番号3のアミノ酸配列を有するポリペプチド、
(d)配列番号3において、1又は2以上のアミノ酸残基が欠失、付加又は置換されたアミノ酸配列を有し、かつ、プレニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチド、
(e)配列番号5のアミノ酸配列を有するポリペプチド、
(f)配列番号5において、1又は2以上のアミノ酸残基が欠失、付加又は置換されたアミノ酸配列を有し、かつ、プレニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチド、
(g)配列番号7のアミノ酸配列を有するポリペプチド、
(h)配列番号7において、1又は2以上のアミノ酸残基が欠失、付加又は置換されたアミノ酸配列を有し、かつ、プレニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチド、
(i)配列番号9のアミノ酸配列を有するポリペプチド、
(j)配列番号9において、1又は2以上のアミノ酸残基が欠失、付加又は置換されたアミノ酸配列を有し、かつ、プレニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチド。
(k)配列番号11のアミノ酸配列を有するポリペプチド、
(l)配列番号11において、1又は2以上のアミノ酸残基が欠失、付加又は置換されたアミノ酸配列を有し、かつ、プレニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチド。
(m)配列番号13のアミノ酸配列を有するポリペプチド、
(n)配列番号13において、1又は2以上のアミノ酸残基が欠失、付加又は置換されたアミノ酸配列を有し、かつ、プレニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチド。
【0047】
(b)のポリペプチドは、(a)のポリペプチドにおいて、1又は複数個、例えば1〜50個、好ましくは1〜30個のアミノ酸が置換、付加、欠失又は挿入されたポリペプチドであってもよい。また、(b)のポリペプチドは、(a)のポリペプチドと70%以上の相同性、好ましくは80%以上の相同性を有するポリペプチドであってもよい。
【0048】
(d)のポリペプチドは、(c)のポリペプチドにおいて、1又は複数個、例えば1〜50個、好ましくは1〜30個のアミノ酸が置換、付加、欠失又は挿入されたポリペプチドであってもよい。また、(d)のポリペプチドは、(c)のポリペプチドと70%以上の相同性、好ましくは80%以上の相同性を有するポリペプチドであってもよい。
【0049】
(f)のポリペプチドは、(e)のポリペプチドにおいて、1又は複数個、例えば1〜50個、好ましくは1〜30個のアミノ酸が置換、付加、欠失又は挿入されたポリペプチドであってもよい。また、(f)のポリペプチドは、(e)のポリペプチドと70%以上の相同性、好ましくは80%以上の相同性を有するポリペプチドであってもよい。
【0050】
(h)のポリペプチドは、(g)のポリペプチドにおいて、1又は複数個、例えば1〜50個、好ましくは1〜30個のアミノ酸が置換、付加、欠失又は挿入されたポリペプチドであってもよい。また、(h)のポリペプチドは、(g)のポリペプチドと70%以上の相同性、好ましくは80%以上の相同性を有するポリペプチドであってもよい。
【0051】
(j)のポリペプチドは、(i)のポリペプチドにおいて、1又は複数個、例えば1〜50個、好ましくは1〜30個のアミノ酸が置換、付加、欠失又は挿入されたポリペプチドであってもよい。また、(j)のポリペプチドは、(i)のポリペプチドと70%以上の相同性、好ましくは80%以上の相同性を有するポリペプチドであってもよい。
【0052】
(l)のポリペプチドは、(k)のポリペプチドにおいて、1又は複数個、例えば1〜50個、好ましくは1〜30個のアミノ酸が置換、付加、欠失又は挿入されたポリペプチドであってもよい。また、(l)のポリペプチドは、(k)のポリペプチドと70%以上の相同性、好ましくは80%以上の相同性を有するポリペプチドであってもよい。
【0053】
(n)のポリペプチドは、(m)のポリペプチドにおいて、1又は複数個、例えば1〜50個、好ましくは1〜30個のアミノ酸が置換、付加、欠失又は挿入されたポリペプチドであってもよい。また、(n)のポリペプチドは、(m)のポリペプチドと70%以上の相同性、好ましくは80%以上の相同性を有するポリペプチドであってもよい。
【0054】
限定はされないが、具体的には、以下のように置換することが可能である:例えばアミノ酸の置換の場合は、タンパク質の構造保持の観点から、極性、電荷、可溶性、親水性/疎水性の点で、置換前のアミノ酸と類似した性質を有するアミノ酸に置換することができる。例えば、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリンは非極性アミノ酸に分類され;セリン、トレオニン、システイン、メチオニン、アスパラギン、グルタミンは極性アミノ酸に分類され;フェニルアラニン、チロシン、トリプトファンは芳香族アミノ酸に分類され;アスパラギン酸、グルタミン酸は酸性アミノ酸に分類される。従って、同じ群のアミノ酸から選択して置換することができる。
【0055】
好ましい置換の具体例としては、例えば、配列表の配列番号1で表すアミノ酸配列において、126番目のメチオニンのアラニンへの置換、158番目のバリンのメチオニンへの置換などが挙げられる。
【0056】
なお、本発明でアミノ酸配列の相同性は、NCBIのBLASTプログラムのデフォルト設定によって解析した場合の数値である。また、好ましくは(Database:nr、Matrix:BLOSUM62、GapCosts:Existence=11,Extension=1、)を用い得る。
【0057】
また、本発明の膜結合性プレニルトランスフェラーゼは、植物由来であることが好ましく、特に、マメ科、クワ科、オトギリソウ科、ミカン科、セリ科、キク科またはアサ科、ホップ由来であることが好ましい。
(膜結合性プレニルトランスフェラーゼ遺伝子)
本発明には、以下の(o)〜(z)及び(α)(β)のいずれかのDNAからなる膜結合性プレニルトランスフェラーゼ遺伝子が含まれる:
(o)配列番号2の塩基配列からなるDNA、
(p)配列番号2に示す塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ膜結合性プレニルトランスフェラーゼをコードするDNA、
(q)配列番号4の塩基配列からなるDNA、
(r)配列番号4に示す塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ膜結合性プレニルトランスフェラーゼをコードするDNA、
(s)配列番号6の塩基配列からなるDNA、
(t)配列番号6に示す塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ膜結合性プレニルトランスフェラーゼをコードするDNA、
(u)配列番号8の塩基配列からなるDNA、
(v)配列番号8に示す塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ膜結合性プレニルトランスフェラーゼをコードするDNA、
(w)配列番号10の塩基配列からなるDNA、および
(x)配列番号10に示す塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ膜結合性プレニルトランスフェラーゼをコードするDNA。
(y)配列番号12の塩基配列からなるDNA、および
(z)配列番号12に示す塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ膜結合性プレニルトランスフェラーゼをコードするDNA。
(α)配列番号14の塩基配列からなるDNA、および
(β)配列番号14に示す塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ膜結合性プレニルトランスフェラーゼをコードするDNA。
【0058】
ここで、本明細書において「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド」とは、コロニー・ハイブリダイゼーション法、プラークハイブリダイゼーション法、あるいはサザンブロットハイブリダイゼーション法等を用いることにより得られるポリヌクレオチドを意味し、例えば、検出対象となるポリヌクレオチドを固定化した支持体に、プローブを作用させ、0.7〜1.0MのNaCl存在下において42℃にて2時間プレハイブリダイゼーションを行った後、0.7〜1.0MのNaCl存在下において42℃にて12〜16時間ハイブリダイゼーションを行い、その後0.1〜2倍程度のSSC溶液(
1倍濃度のSSC溶液の組成は、150mM塩化ナトリウム、15mMクエン酸ナトリウム)を用いて42℃でフィルターを洗浄することにより同定できるDNA等を挙げることができる。ハイブリダイゼーションは、Molecular Cloning: A laboratory Mannual, 2nd Ed.,(Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY.,1989)等に記載されている方法に準じて行うことができる。
【0059】
本発明には、(o)〜(z)及び(α)(β)のいずれかのDNAと、例えば70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは93%以上、特に好ましくは95%以上、最も好ましくは98%以上の相同性を有する塩基配列からなるDNAが含まれる。
【0060】
なお、本発明で塩基配列の相同性は、NCBIのBLASTプログラムのデフォルト設定によって解析した場合の数値である。また、好ましくは(Database:nr、Match,Mismatch:1,-2、GapCosts:Linear)を用い得る。
(ベクター)
本発明のベクターは、上記(o)〜(z)及び(α)(β)のいずれか1または2以上のDNA、あるいは上記の(o)〜(z)及び(α)(β)のいずれかのDNAと相同性を有する塩基配列からなるDNAが挿入された組み換えベクターである。ベクターとしては公知の酵母用、植物細胞用等のものを広く使用できる。公知のベクターとしては、酵母用ベクターとしてはpDR196、pYES-DEST 52、Yip5、Yrp17、Yep24など、植物細胞用としては、pGWB vector(pGWB2、pGWB5、pGWB80など;島根大学、中川強先生よりご分与)、pBiEl2-GUS、pIG121-Hm、pBI121、pBiHyg-HSE、pB119、pBI101、pGV3850、pABH-Hm1などが挙げられる。本発明において使用されるベクターは、必要に応じて、選択マーカー(例えば、薬物耐性遺伝子、抗生物質耐性遺伝子、レポーター遺伝子)を含有する。
(形質転換体)
本発明の形質転換体は、本発明の組み換えベクターを保持する形質転換体である。宿主は、ベクターに適したものを使用すればよい。例えば、酵母、植物、植物細胞、昆虫細胞(Sf9など)などが好ましい。特に好ましい形質転換体としては、酵母、植物又は植物細胞などが挙げられる。形質転換方法は当業者に周知である。
(膜結合性プレニルトランスフェラーゼの調製方法)
上記形質転換体および/またはその培養物の培養液から膜結合性プレニルトランスフェラーゼを回収することで、活性を保持した組換え膜結合性プレニルトランスフェラーゼを得ることができる。
【0061】
具体的には、例えば、Yazaki et al (JBC, 2002, Vol. 277, p. 6240-6246)に記載の方法を用いて行うことが出来る。
【0062】
また、本発明の膜結合プレニルトランスフェラーゼは、例えば、酵母発現系を用いた大量生産により、または大豆などの食用植物で発現させることにより、得ることができる。
【0063】
より具体的には、本発明の膜結合プレニルトランスフェラーゼは、酵母において高い活性を持ったタンパク質として発現できるため、形質転換酵母の培養液にナリンゲニン等のフラボノイド、ゲニステイン等のイソフラボノイドあるいはイソリキリチゲニン等のカルコンを基質として投与する事で、効率よくプレニル化フラボノイドの大量生産が可能である。ナリンゲニン、ゲニステイン、イソリキリチゲニン等は適度な水溶性と疎水性を持つため、生体膜を通過する事ができ、酵母細胞内のプレニルトランスフェラーゼと接触できる。酵母はサイトゾルにプレニルドナーとなるDMAPPを生合成する経路(メバロン酸経路)を有しているため、プレニル基質はインビボで供給される。生産されたプレニル化フラボノイド、プレニル化イソフラボノイド、プレニル化カルコン等は、酵母細胞あるいは培地から回収する事で、効率のよい生産が見込まれる。
【0064】
あるいは、本発明の膜結合プレニルトランスフェラーゼを大豆等の植物、あるいは植物細胞で発現させる事で、プレニル化フラボノイド、プレニル化イソフラボノイド、プレニル化カルコン等を植物で生産する事も可能である。植物細胞の場合、DMAPPを生合成する経路は2つあり、一つはサイトゾルのメバロン酸経路、もう一方はプラスチド内に局在する非メバロン酸経路である。前者のDMAPPを利用してプレニル化フラボノイド、プレニル化イソフラボノイド、プレニル化カルコン等を生産させるためには、プラスチド局在化シグナルを除いた改変遺伝子を発現させる。また、後者のDMAPPを利用したプレニル化フラボノイド、プレニル化イソフラボノイド、プレニル化カルコン等の生産を行うためには、内在性のプラスチド局在化シグナルを使うかRuBisCo小サブユニットなど他遺伝子のプラスチド局在化シグナルを連結して発現させ、プレニルトランスフェラーゼをプラスチドに局在させる。フラボノイド、イソフラボノイド、カルコン等の基質は、内在性のものがプレニル化されるため、植物を育成させてその組織からプレニル化されたものを回収する。あるいは、フラボノイド、イソフラボノイド、カルコン等を吸収させてプレニル化させ、それを植物組織から回収する事も効率の良い生産に有効である。植物のどの組織でプレニル化フラボノイドを生産させるのが良いかは、組織特異的なプロモータを利用する事で制御可能である。
【0065】
プレニル化フラボノイド、プレニル化イソフラボノイド、プレニル化カルコン等を生産する植物は、上記のように化合物生産の目的にも利用可能であるが、これらの化合物の多くがファイトアレキシンとして生産されており、高い抗菌活性を有する事から、病原菌、病害虫に対して高い抵抗性を示す事が考えられる。従って、農業分野における分子育種のツールとしても、本発明の膜結合プレニルトランスフェラーゼ遺伝子は利用可能である。
【0066】
すなわち、本発明の膜結合プレニルトランスフェラーゼを、穀物、野菜、イモ、果実等の作物植物内で発現させることで、病原菌、病害虫に対して高い抵抗性を持たせることができる。
(遺伝子の単離方法)
また、配列表の配列番号2、4、6、8、10、12または14のいずれかに記載の塩基配列あるいはその一部を含んでなる塩基配列との相同性を利用すれば、膜結合性プレニルトランスフェラーゼ遺伝子を単離することができる。
【0067】
具体的な方法としては、例えば、膜結合性プレニルトランスフェラーゼ遺伝子が含まれると予想される遺伝子ライブラリーを、前記塩基配列をプローブとしてスクリーニングする方法、あるいは、前記塩基配列情報に基づいたプライマーを調製し、膜結合性プレニルトランスフェラーゼ遺伝子が含まれると予想されるサンプルを鋳型としたPCRを実施する方法などが挙げられる。
【0068】
あるいは、塩基配列データベースを適当な相同性検索プログラム(例えばBLAST)でサーチすることにより、前記塩基配列と高い相同性を示すDNA配列を有する遺伝子を探索する方法等も挙げられる。
【実施例】
【0069】
以下、本発明を、実施例を示してより詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0070】
1.発現ライブラリーの構築
S.flavescens培養細胞を、フラボノイドのプレニル化酵素を誘導させるために、0.1Mのジャスモン酸メチルDMSO溶液20μlを添加し、36時間培養した(終濃度0.1 mM)。培養細胞よりOligotex-MAG mRNA Purification Kit(タカラバイオ社)を使用してpoly(A)+RNAを単離した。cDNAプラスミドライブラリーを、cDNA Synthesis Kit (STRATAGENE)を使用し、膜結合性タンパク質の酵母発現用ベクターpDR196を用いて、構築した。cDNAの第1鎖を、7μgのポリ(A)+RNA、XhoI制限部位を含むoligo(dT)18アンカープライマーを使用して合成した。cDNAの第2鎖を合成した後、EcoRI制限サイトを含む平滑末端アダプターを二本鎖DNAへ結合させ、次いで当該フラグメントを、構成的プロモーターPMA1を有するプラスミド、pDR196中に組み込んだ。
【0071】
2.SfN8DT cDNAのクローニングおよび機能解析
上記構築したcDNAライブラリーをEscherichia coli DH10Bに導入し、約10,000個のクローンをランダムに選出し、PMA1プロモーター領域にアニールするプライマーを用いて5’末端から配列決定した。そのうち、既知の膜結合性プレニルトランスフェラーゼにおける保存モチーフ6種(NDxxDxxxD, NQxxDxxxD, NQxxExxxD, DDxxDxxxD, DQxxDxxxD, DQxxExxxD)のいずれかを有する200クローンを選出した。当該cDNAクローンを、SOSUIプログラム(http://bp.nuap.nagoya-u.ac.jp/sosui/)を用いて分析し、少なくとも配列決定した領域において膜貫通領域を有する20クローンを検出した。200クローンを3つの細胞内局在予測プログラム:ChloroP, PSORT, およびWoLF_PSORT(ChloroP;http://www.cbs.dtu.dk/services/ChloroP/, PSORT; http://psort.ims.u-tokyo.ac.jp/form.html, WoLF_PSORT; http://wolfpsort.seq.cbrc.jp/)を用いて分析し、30クローンがプラスチド移行シグナルを有していることがわかった。
【0072】
これらのクローンを、酢酸リチウム法を用いて酵母株W303-1A-Δcoq2に導入した。SD-Ura液体培地(180ml)中で対数増殖期に達するまで培養することによって、酵母形質転換体中で組換えタンパク質発現させ、そこからYazakiら(JBC, 2002, 277, 6240-6246)に記載の方法を用いてミクロソーム画分を調製した。それぞれの形質転換体の膜フラクションを500μlの0.1 mM Tris-HCl 緩衝液(pH 8.5)中に再懸濁し、次いで、ナリンゲニンとDMAPPを基質として酵素活性によるスクリーニングを行った。
【0073】
酵素生成物はHPLC分析を用いてスクリーニングした。HPLC分析は以下の条件で行った:
Shimadzu LC-10A system (島津製作所、日本、京都): column YMC-Pack Pro C18 RS (YMC,日本、京都) 4.6 x 250 mm; 溶媒システム, メタノール:H2O:酢酸(70: 30: 0.3); 流速,1 ml min-1; 検出, SPD6A フォトダイオード・アレイ検出器で230-320 nm。
【0074】
その結果、200個の酵母形質転換体中、1つの酵母形質転換体の生成物が、8−ジメチルアリルナリンゲニンと同じ保持時間を有することがわかった(図1)。さらに、その生成物はフォトダイオード・アレイ検出において、標品と同等のUVスペクトルを示した(図1)。
【0075】
このことから、当該1つ酵母形質転換体の形質転換に用いたクローンにはプレニルトランスフェラーゼがコードされていることがわかった。
【0076】
こうして、sophoraflavanone G (SFG)生合成における最初のフラボノイド・プレニルトランスフェラーゼであるナリンゲニン 8-ジメチルアリルトランスフェラーゼ(以下SfN8DTと称す)のcDNA(全長1,495 bp, ORF 410 a.a.)が得られた。
【0077】
SfN8DTの塩基配列を配列表の配列番号2に示す。また、SfN8DTのアミノ酸配列を配列番号1に示す。また、SfN8DTが行うプレニル化反応の機構の一例を図2に示す。
【0078】
なお、SfN8DTはSfN8DT-1とも称する。
【0079】
3.SfN8DT以外のHPT様クローンのクローニング
クララcDNAライブラリーのシーケンス情報から、SfN8DT同様にホモゲンチジン酸プレニルトランスフェラーゼ(HPT)と高い相同性を有する6クローン(それぞれSf1c12f、Sf1C12c、SfL17a、SfL17b、SfG6DT、SfN8DT-2と称する。なお、Sf1C12fはSfN8DT-3とも称し、Sf1C12cはSfChal1DTとも称する。)を見出し、RACE法によりcDNAを単離した。
【0080】
具体的には、RACEの鋳型としてはInvitrogen社のGeneRacerキットを用いて作製したcDNA混合物を用い、PCRにより各cDNAの5’-末端あるいは3’-末端を特異的に増幅した。ここで用いたRNA試料は、ライブラリーを作成したものと同じ、ジャスモン酸メチル処理したクララ培養細胞由来の全RNAである。このPCRにおいて、5’-RACEのフォワードプライマーは、上記キットのアダプター配列を、リバースプライマーは、各遺伝子の内部配列とした。3’-RACEの場合には、フォワードプライマーを各遺伝子の内部配列とし、リバースプライマーにはoligo-dT (20 mer) を用いた。増幅されたDNA断片はシーケンシングにより、各遺伝子のcDNA末端である事を確認した。全長cDNAを取得するためには、改めて5’-末端とoligo-dT (20 mer)をプライマーに、GeneRacerの混合物を用いてPCRを行った。
【0081】
これらのうち、SfL17b、Sf1C12f、Sf1C12c、SfL17a、SfL17bおよびSfN8DTとホモゲンチジン酸プレニルトランスフェラーゼとの間のシグナルペプチドを除いたアミノ酸配列の相同性を比較した(図3)。その結果、Sf1C12f、Sf1C12c、SfL17a、およびSfL17bはSfN8DTと高い相同性を有していた。Sf1C12f(全長1684bp, ORF 410a.a.)、Sf1C12c(全長1527bp, ORF 391a.a.)、SfL17a(全長1325bp, ORF 407a.a.)、およびSfL17b(全長1373bp, ORF 379a.a.)の塩基配列をそれぞれ配列表の配列番号4、6、8および10に示す。なお、これらのアミノ酸配列をそれぞれ配列表の3、5、7および9に示す。
【0082】
また、SfN8DT-1(SfN8DT)、SfN8DT-2、SfG6DT、SfChal1DT(Sf1C12c)それぞれの部分配列とホモゲンチジン酸プレニルトランスフェラーゼの部分配列を用いて作製したマルチプルアライメントを図4に示す。その結果、SfN8DT-1(SfN8DT)、SfN8DT-2、SfG6DT、SfChal1DT(Sf1C12c)は高い相同性を有していた。SfG6DT(ORF 407a.a.)及びSfN8DT-2(ORF 407a.a.)の塩基配列をそれぞれ配列表の配列番号12、14に示す。また、これらのアミノ酸配列をそれぞれ配列表の配列番号11、13に示す。
【0083】
4.SfN8DTと高い相同性を有する各クローンの機能解析
上記「2.SfN8DT cDNAのクローニングおよび機能解析」で実施したのと同様にして、SfN8DT-2、SfN8DT-3(Sf1C12f)、SfG6DTの機能解析を行った。
【0084】
すなわち、SfN8DTの機能解析時と同様に、これらの cDNAクローンをそれぞれ酵母に導入し、培養して組み換えタンパク質を発現させ、そこからミクロソーム画分を調製した。そして、当該画分(膜フラクション)を500μlの0.1 mM Tris-HCl 緩衝液(pH 8.5)中に再懸濁し、次いで、ナリンゲニン(naringenin)もしくはゲニステイン(genistein)とDMAPPを基質としたときの酵素活性を測定した。
【0085】
酵素活性の測定は、SfN8DTの機能解析時と同じHPLC分析条件で、酵素生成物を測定することで行った。
【0086】
酵素活性の測定の結果、SfN8DT-2及びSfN8DT-3(Sf1C12f)を発現させ、ナリンゲニンを基質に用いて調製した画分は、8−ジメチルアリルナリンゲニンと同じ保持時間を有する物質を含むことがわかった。さらに、その生成物はフォトダイオード・アレイ検出において、8−ジメチルアリルナリンゲニン標品と同等のUVスペクトルを示した。
【0087】
このことから、SfN8DT-2及びSfN8DT-3(Sf1C12f)もフラボノイド・プレニルトランスフェラーゼであるナリンゲニン 8-ジメチルアリルトランスフェラーゼであることがわかった。
【0088】
またさらに、酵素活性の測定の結果、SfG6DTを発現させ、ゲニステイン及びDMAPPを基質に用いて調製した画分は、6−ジメチルアリルゲニステインと同じ保持時間を有する物質を含んでいた(図5)。また別途、化学合成した標品と直接比較することで酵素反応産物は6-ジメチルアリルゲニステインであると同定した。
【0089】
このことから、SfG6DTはプレニルトランスフェラーゼであり、少なくともゲニステイン 6−ジメチルアリルトランスフェラーゼとして働くことがわかった。
【0090】
なお、SfG6DTが行うプレニル化反応の機構の一例(ゲニステイン 6−ジメチルアリルトランスフェラーゼとして働く例)を図6に示す。
【0091】
5.酵母発現系を用いた組換えSfG6DTの基質特異性の解析
上述の組換えSfG6DTの基質特異性解析を薄層クロマトグラフィーを用いたRadioactive assayによって行った。
すなわち、まず上述したSfG6DTの機能解析方法と同様にして、SfG6DTを発現した酵母のミクロソーム画分を調製した。
【0092】
次に、当該画分(膜フラクション)を500μlの0.1 mM Tris-HCl 緩衝液(pH 8.5)中に再懸濁し、次いで、14Cでラベルしたゲニステインと、DMAPP、GPP、FPP、GGPPからなる群から選ばれる1種とを基質として反応させた。
【0093】
また、これとは別に、当該画分(膜フラクション)を500μlの0.1 mM Tris-HCl 緩衝液(pH 8.5)中に再懸濁し、次いで、ゲニステイン、ダイゼイン、ビオカニンA(Biochanin A)からなる群から選ばれる1種と、14CでラベルしたDMAPPとを基質として反応させた。
【0094】
そして、反応後、各サンプルを薄膜クロマトグラフィープレート(Silica Gel 60 F254;Merck)を用いて分離し(展開溶媒はToluene: EtOAc: AcOH = 70: 30: 0.3)、BAS1800(Fuji Film)によって検出を行った。
【0095】
その結果、組換えSfG6DT は、ゲニステイン以外にも同じイソフラバノン骨格を有するビオカニンA(Biochanin A)も基質とすることがわかった。さらに、プレニルドナーとしては、DMAPP、GPP、FPPを基質とできることがわかった(図7)。
【0096】
6.組換えSfN8DT及びSfG6DTの酵素化学的解析
上述の酵母発現系を用いて、組換えSfN8DT及びSfG6DTのKm、至適温度、至適pH、二価カチオン要求性を調べた。
【0097】
具体的には、前述と同様の方法にて組み換え酵母ミクロソーム画分を調製し、HPLCにより生成物の量を検出した。
【0098】
Km値の結果を表1に、至適温度、SfN8DTの至適pH、二価カチオン要求性の結果を図8〜10に、SfG6DTの結果を図11〜13に示す。なお、組換えSfN8DTの至適温度は、70〜80℃であり(図8)、組み換えSfG6DTの至適温度は25〜35℃であった(図11)。
【0099】
【表1】
【0100】
7.SfN8DT及びSfG6DTのmRNAの発現解析
ノーザンブロット及びRT−PCRによりクララ植物体及びクララ培養細胞におけるSfN8DT及びSfG6DTの発現解析を行った。(プローブ: 全長ORF)組織別発現解析には、武田薬草園でサンプリングしたクララ植物体(草丈:約170cm、根直径:〜3cm)を用いた。ノーザンブロット解析の結果、SfN8DT、SfG6DTとも根のみで発現が見られた(図14)が、さらにRT−PCR解析を行ったところ、SfN8DTは根の皮部分特異的に発現し、一方SfG6DTは根の皮より内側で特異的に発現していることがわかった(図15)。
【0101】
また、培養細胞においてもMJ(ジャスモン酸メチル)、SA(サリチル酸)及びYE(yeast extract)への発現応答を調べた。植え継ぎ3日後に、MJ、SA、YEをそれぞれ終濃度100 μM、100 μM、5 mg / ml になるよう添加し、24時間後に回収した。その結果、SfN8DTはMJ、SA、YEによりその発現が著しく上昇し、SfG6DTはSAによりその発現が著しく上昇した(図16)。
【0102】
8.SfN8DTを用いた植物体でのプレニルフラボノイドの生産
Sf8DTを植物体内で発現させ、植物体内でプレニルフラボノイドを生産できるかを以下のようにして検討した。
<SfN8DT遺伝子の導入及び発現>
SfN8DT遺伝子全長を、上記のようにクローニングしたクローンをテンプレートとし、SfN8DTfull_Fwプライマー(配列番号15)及びSfN8DTfull_Rvプライマー(配列番号16)を用いてPCRによって増幅した。増幅したものをpENTR1Aベクターにサブクローンし、GATEWAYエントリーベクターとした。さらにこれをpGWB2ベクターに組み込み、GATEWAYデスティネーションベクターとした。当該pGWB2-SfN8DTfullベクターを、Agrobacterium tumefaciens GV3101を用いてフローラルディップ法によりシロイヌナズナ(Columbia野生株)へ導入した。T1世代をカナマイシン50μg/mL含有培地で育ててセレクションを行い、さらにT2世代ではSfN8DTfull_Fwプライマー(配列番号15)及びSfN8DTfull_Rvプライマー(配列番号16)を用いてRT-PCRを行って、SfN8DT遺伝子が導入され、発現していることを確認した。
<SfN8DT遺伝子発現株でのプレニルフラボノイドの生産>
上記のSfN8DT遺伝子が発現しているシロイヌナズナ(T2世代)を、ナリンゲニン(naringenin)100μMを加えた寒天培地で2週間栽培した後フリーズドライし、これを約100mg(およそ300〜500植物体のフリーズドライ)収集した。このフリーズドライされたシロイヌナズナを試料として80%アセトン抽出を行い、抽出物を解析して8DN(8-dimethylallyl naringenin)、8DK(des-O-methylanhydroicaritin)、DA(dimethylallylated apigenin)、DQ(dimethylallylated quercetin)が生産されているかを調べた。なお、対照として、シロイヌナズナ野生株を用いて同様の実験を行った。
酵素生成物はHPLC分析を用いてスクリーニングした。HPLC分析は以下の条件で行った:
Shimadzu LC-10A system (島津製作所、日本、京都): column YMC-Pack Pro C18 RS (YMC,日本、京都) 4.6 x 250 mm; 溶媒システム, メタノール:H2O:酢酸(70: 30: 0.3); 流速,1 ml min-1; 検出, SPD6A フォトダイオード・アレイ検出器で230-320 nm。
【0103】
結果を表2に示す。
【0104】
【表2】
【0105】
表2に示されるように、野生株においては8DN、8DK、DA、DQのいずれも生産されないのに対し、SfN8DT遺伝子発現株では8DN、8DK、DA、DQの全てが生産されることがわかった。
【0106】
以上のことから、植物体中でSfN8DT遺伝子を発現させることにより、プレニルフラボノイドを生産できることが確認できた。
【0107】
9.SfChal1DTの機能解析
SfN8DTの機能解析時と同様に、SfChal1DTの cDNAクローンを酵母に導入し、培養して組み換えタンパク質を発現させ、そこからミクロソーム画分を調製した。そして、当該画分(膜フラクション)を500μlの0.1 mM Tris-HCl 緩衝液(pH 8.5)中に再懸濁し、次いで、カルコンであるイソリキリチゲニン(isoliquiritgenin)とDMAPPを基質としたときの酵素活性を測定した。
【0108】
酵素活性の測定には、LC/MSを用い、以下の条件で行った:
Shimadzu model 2010A system LC/MS(島津製作所)(LC-10AD Solvent Delivery systemを使用)
column :4 x 250 mm LiChrospere 100RP-18 (Merck, Tokyo, Japan)
solvent system:エタノール: H2O: ギ酸 (90: 10: 0.3)
flow rate:0.2 ml min-1
サンプルは陽イオンモードで測定し、質量分析の測定範囲は m/z 50 to 600と設定した。
【0109】
その結果、プレニル化イソリキリチゲニンの分子量325でトレースしたクロマトグラムにおいて、図17に示されるように、イソリキリチゲニンのジメチルアリル体が酵素反応により生成していることが確認された。このことから、SfChal1DTはカルコンをプレニル化できるプレニルトランスフェラーゼであることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】SfN8DTで形質転換した酵母のミクロソーム画分に、ナリンゲニンとDMAPPを加えたときの生成物をHPLCで解析した結果を示す。aは8-DN、3’DN、6DNの各標品をHPLCで解析したクロマトグラムを、bは空ベクターを導入した酵母の生成物をHPLCで解析したクロマトグラムを、cはSfN8DTで形質転換した酵母の生成物のHPLCで解析したクロマトグラムを、dはSfN8DTで形質転換した酵母の生成物のフォトダイオード・アレイ検出結果を示す。
【図2】SfN8DTが行うプレニル化反応の機構の一例を示す。
【図3】SfL17b、SfN8DT、SfL17a、Sf1C12cおよびSf1C12fとその他のホモゲンチジン酸プレニルトランスフェラーゼとの間のシグナルペプチドを除いたアミノ酸配列の相同性の比較を示す。GmVTE2-1, AtVTE2-1, TaVTE2-1, ZmVTE2-1, ApVTE2-1およびCpVTE2-1:Eva Collakova et al, Plant Phys., 2001, 127, 1113-1124およびBeth Savidge etal., Plant Phys., 2002, 129, 321-332参照。HvHGGT, TaHGGTおよびOsHGGT: Edgar B Cahoon et al., Nature Biotech, 2003, 21, 1082-1087参照。GmVTE2-2およびAtVTE2-2:Venkatech et al., Planta, 2006, 223, 1134-1144参照。
【図4】SfN8DT-1(SfN8DT)、SfN8DT-2、SfG6DT、SfChal1DT(Sf1C12c)それぞれの部分配列とホモゲンチジン酸プレニルトランスフェラーゼの部分配列を用いて作製したマルチプルアライメントを示す。
【図5】SfG6DTで形質転換した酵母のミクロソーム画分に、ゲニステインとDMAPPを加えたときの生成物をHPLCで解析した結果を示す。
【図6】SfG6DTが行うプレニル化反応の機構の一例を示す。
【図7】SfG6DTの基質特異性をRadioactive assayによって検討した結果を示す。赤矢印及び青矢印が、検出された6−ジメチルアリルゲニステインを示す。
【図8】組換えSfN8DTの至適温度を示すグラフである。
【図9】組換えSfN8DTの至適pHを示すグラフである。
【図10】組換えSfN8DTの二価カチオン要求性を示すグラフである。
【図11】組換えSfG6DTの至適温度を示すグラフである。
【図12】組換えSfG6DTの至適pHを示すグラフである。
【図13】組換えSfG6DTの二価カチオン要求性を示すグラフである。
【図14】クララ各器官におけるSfN8DT及びSfG6DTの発現を検討したノザンブロット解析結果のイメージを示す。
【図15】クララの根におけるSfN8DT及びSfG6DTの発現部位を検討したRT−PCR解析結果のイメージを示す。なお、IFSはイソフラボン合成酵素を、CHSはカルコン合成酵素を、CHIはカルコンイソメラーゼを、それぞれ示す。
【図16】MJ、SA、YEのSfN8DT及びSfG6DTの発現に対する影響を検討したノザンブロット解析結果のイメージを示す。
【図17】SfChal1DTで形質転換した酵母のミクロソーム画分に、イソリキリチゲニンとDMAPPを加えたときの生成物をLC/MSで解析した結果を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜結合性プレニルトランスフェラーゼ、その製造方法、当該トランスフェラーゼをコードするDNA、および当該DNAの単離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
植物の生産する二次代謝産物の数は五万種を超えるとされ、天然有機化合物の大きなリソースとなっている。構造上の特徴から便宜上いくつかのグループに分類されるが、実際には異なったグループ間の特徴を併せ持つ化合物も非常に多い。プレニル化された芳香族化合物はその好例で、プレニル基は植物二次代謝産物の構造や生理活性の多様性に大きく貢献している。生合成的には複合経路と呼ばれる経路で生合成されるこれらの化合物は、耐虫性や耐病性などを担うことで植物の生命維持に必要な役割を担う一方で、薬用植物において生理活性本体としてその薬理作用に寄与しているものもある(非特許文献1)。例えば、プレニルフラボノイドには、抗腫瘍活性や抗菌作用といった様々な生理活性をもつものが多数報告されており(非特許文献2)、医薬及び食品産業でも非常に重要な化合物群となっている。これらはまた植物にとっては食害、感染防御において重要な役割を果たしている。
【0003】
とりわけ、プレニルフラボノイドなどプレニル芳香族化合物の生理活性に対するプレニル基の重要性は多くの研究者により指摘されており、実際プレニル基を持たない母核化合物には生理活性が見られないことも少なくない。従って、これら芳香族化合物のプレニル化を触媒する酵素は、産業的にも非常に重要と認識されている。しかし、芳香族を基質とするプレニルトランスフェラーゼは膜結合性のものが多く、生化学的研究の困難さから、これまで分子生物学的な解析が遅れており、フラボノイドを基質とする植物プレニルトランスフェラーゼに至っては、その遺伝子のクローニングは未だ一例も報告されていなかった。
【非特許文献1】S. Mesia-Vela et al., Phytomedicine, 8 (2001), p.481-488
【非特許文献2】H.Y. Sohn et al., Phytomedicine, 11 (2004), p.666-672
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって本発明は、芳香族を基質とする、膜結合性のプレニルトランスフェラーゼのDNAを単離する方法、その単離方法によって得られるDNA、および膜結合性のプレニルトランスフェラーゼの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ね、従来、大腸菌を用いた発現系では膜蛋白質を発現させるのは困難であったところ、酵母でライブラリーを作成し、複数のスクリーニング方法を組み合わせることにより植物由来の膜結合性プレニルトランスフェラーゼのcDNAの単離に成功し、さらに改良を重ねて本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち本発明は、以下のものを提供する。
項1.
膜結合性プレニルトランスフェラーゼであって、
NDxxDxxxD、NQxxDxxxD、NQxxExxxD、DDxxDxxxD、DQxxDxxxD、DQxxExxxD、NExxDxxxD、NExxExxxD及びDExxExxxDからなる群より選択される少なくとも1つの保存モチーフを有し、かつ
化学式(I):
【0007】
【化1】
【0008】
(式中、R1およびR2は、同一または異なって、水素基、水酸基、フェニル基、フェノール基若しくはアリール基を示し、
R3およびR4は、同一または異なって、水素基、水酸基若しくはメトキシル基を示す)、
化学式(II):
【0009】
【化2】
【0010】
(式中、R5およびR6は、同一または異なって、水素基、水酸基、フェニル基、フェノール基若しくはアリール基を示し、
R7およびR8は、同一または異なって、水素基、水酸基若しくはメトキシル基を示す)、
化学式(III):
【0011】
【化3】
【0012】
(式中、R9はフェニル基、フェノール基若しくはアリール基を示し、
R10、R11およびR12は、同一または異なって、水素基、水酸基若しくはメトキシル基を示す)、あるいは
化学式(IV):
【0013】
【化4】
【0014】
(式中、R13はフェニル基、フェノール基若しくはアリール基を示し、
R14、R15およびR16は、同一または異なって、水素基、水酸基若しくはメトキシル基を示す)
で表される化合物にプレニル基を導入する酵素活性を示す膜結合性プレニルトランスフェラーゼ。
項2.
プレニルドナーとしてジメチルアリルジホスフェート(DMAPP)、ゲラニル二リン酸(GPP)、ファルネシル二リン酸(FPP)、ゲラニルゲラニル二リン酸(GGPP)、フィチル二リン酸(PDP)からなる群より選択される少なくとも1種を基質とする、項1に記載の膜結合性プレニルトランスフェラーゼ。
項3.
以下の(i)又は(ii)のポリペプチド:
(i) 配列番号1、3、5、7、9、11又は13のいずれかのアミノ酸配列を有するポリペプチド、
(ii) (i)のポリペプチドにおいて、1又は2以上のアミノ酸残基が欠失、付加又は置換されたアミノ酸配列を有し、かつ、プレニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチド。
項4.
植物由来である、項1〜3のいずれかに記載の膜結合性プレニルトランスフェラーゼ。
項5.
植物が、マメ科、クワ科、オトギリソウ科、ミカン科、セリ科、キク科またはアサ科あるいはホップから選択される、項4に記載の膜結合性プレニルトランスフェラーゼ。
項6.
以下の(iii)〜(v)のいずれかに示すDNAからなる遺伝子:
(iii) 配列番号2、4、6、8、10、12又は14のいずれかの塩基配列からなるDNA、
(iv) (iii)の塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ膜結合性プレニルトランスフェラーゼをコードするDNA、
(v) (iii)の塩基配列からなるDNAと少なくとも70%以上の相同性を有する塩基配列からなるDNA。
項7.
項6に記載の遺伝子を含むベクター。
項8.
項7に記載のベクターを導入した形質転換体。
項9.
項8に記載の形質転換体を培養し、その形質転換体および/またはその培養物から膜結合性プレニルトランスフェラーゼを採取する工程を含んでなる膜結合性プレニルトランスフェラーゼの調製方法。
項10.
項6に記載の遺伝子によってコードされる膜結合性プレニルトランスフェラーゼ。
項11.
項8に記載の形質転換体を培養し、その形質転換体および/またはその培養物から芳香族プレニル化化合物を採取する工程を含んでなる芳香族プレニル化化合物の製造方法。
項12.
形質転換体が酵母、植物又は植物細胞である、項9又は11に記載の方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、
以下の化学式(I):
【0016】
【化5】
【0017】
(式中、R1およびR2は、同一または異なって、水素基、水酸基、フェニル基、フェノール基若しくはアリール基を示し、
R3およびR4は、同一または異なって、水素基、水酸基若しくはメトキシル基を示す)、
化学式(II):
【0018】
【化6】
【0019】
(式中、R5およびR6は、同一または異なって、水素基、水酸基、フェニル基、フェノール基若しくはアリール基を示し、
R7およびR8は、同一または異なって、水素基、水酸基若しくはメトキシル基を示す)、
化学式(III):
【0020】
【化7】
【0021】
(式中、R9はフェニル基、フェノール基若しくはアリール基を示し、
R10、R11およびR12は、同一または異なって、水素基、水酸基若しくはメトキシル基を示す)、あるいは
化学式(IV):
【0022】
【化8】
【0023】
(式中、R13はフェニル基、フェノール基若しくはアリール基を示し、
R14、R15およびR16は、同一または異なって、水素基、水酸基若しくはメトキシル基を示す)
で表される化合物にプレニル基を導入する酵素活性を示す、プレニルトランスフェラーゼおよび当該酵素をコードする遺伝子が提供される。
【0024】
また、本発明の酵素により、様々な有用な生理活性を示すプレニル芳香族化合物を大量かつ安価に生産できる。さらに、本発明の遺伝子の配列を用いて、プレニル化二次代謝物を多く含有する植物などから、芳香族化合物をプレニル化する酵素の遺伝子を単離することが可能となる。
【0025】
また、農業分野における分子育種のツールとしても、本発明の膜結合プレニルトランスフェラーゼ遺伝子を利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
(膜結合性プレニルトランスフェラーゼ)
本発明の膜結合性プレニルトランスフェラーゼは、膜結合性プレニルトランスフェラーゼにおける保存モチーフを少なくとも1つ有し、かつ
以下の化学式(I):
【0027】
【化9】
【0028】
(式中、R1およびR2は、同一または異なって、水素基、水酸基、フェニル基、フェノール基若しくはアリール基を示し、
R3およびR4は、同一または異なって、水素基、水酸基若しくはメトキシル基を示す)、
化学式(II):
【0029】
【化10】
【0030】
(式中、R5およびR6は、同一または異なって、水素基、水酸基、フェニル基、フェノール基若しくはアリール基を示し、
R7およびR8は、同一または異なって、水素基、水酸基若しくはメトキシル基を示す)、
化学式(III):
【0031】
【化11】
【0032】
(式中、R9はフェニル基、フェノール基若しくはアリール基を示し、
R10、R11およびR12は、同一または異なって、水素基、水酸基若しくはメトキシル基を示す)、あるいは
化学式(IV):
【0033】
【化12】
【0034】
(式中、R13はフェニル基、フェノール基若しくはアリール基を示し、
R14、R15およびR16は、同一または異なって、水素基、水酸基若しくはメトキシル基を示す)
で表される化合物にプレニル基を導入する酵素活性を示す膜結合性プレニルトランスフェラーゼである。
【0035】
本発明の膜結合性プレニルトランスフェラーゼが有する保存モチーフとしては、例えば、NDxxDxxxD、NQxxDxxxD、NQxxExxxD、DDxxDxxxD、DQxxDxxxD、DQxxExxxD、NExxDxxxD、NExxExxxD及びDExxExxxDからなる群より選択される少なくとも1つの保存モチーフが挙げられる。これらの保存モチーフにおいて、xで表された箇所はいかなるアミノ酸であってもよい。以下も同様である。
【0036】
なかでも、N(Q/E)LxDx(D/E)xDの保存モチーフを有するものが好ましい。これらの保存モチーフにおいて、(A/B)と表された箇所は、A又はBのアミノ酸であることを表す。以下も同様である。
【0037】
さらに、上記の保存モチーフのいずれか1つの直後に連続して、K(V/I)NKのアミノ酸配列を有する膜結合性プレニルトランスフェラーゼが、より好ましい。
【0038】
本発明の膜結合性プレニルトランスフェラーゼは、さらにVIAxxKDのアミノ酸配列モチーフを有するものが好ましい。また、VIAxxKDxxxxxGDのアミノ酸配列モチーフを有するものがより好ましく、特にVIAxxKDIPDxxGDのものが好適である。
【0039】
本発明の膜結合性プレニルトランスフェラーゼは、またさらにYxxxxxxxG*AT、LxFxIG(W/L)LQ、(S/A)Gxx(S/T)FR, TxPxxxxFCxxIおよびAEYxxxPLFからなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸配列モチーフを有していてもよい。xで表された箇所は上記と同様である。また、これらのモチーフは、相互に、後述の図3のマルチアラインメントで示す程度の間隔をおいた位置に存するのが好ましいが、これらに限定はされない。
【0040】
本発明の膜結合性プレニルトランスフェラーゼが活性を示す基質としては、フラボノイド、イソフラボノイド、プテロカルパン、クマリン、カルコンおよび/またはフロログルシノールなどが挙げられる。
【0041】
好ましいフラボノイドとしては、ナリンゲニン、ヘスペレチン、リキリチゲニン(liquiritigenin)、ガランギン、クリシン、サクラネチン、イソサクラネチン、タキシフォリン、アピゲニン、ケンフェロール、ケルセチンなどが挙げられる。
【0042】
好ましいイソフラボノイドとしては、ゲニステイン(genistein)、ダイゼイン(daidzein)、ビオカニンA (biochanin A)、フォルモノネチン (formononetin)などが挙げられる。
【0043】
好ましいカルコンとしては、イソリキリチゲニン(isoliquiritigenin)、 2’,4’,4−トリヒドロキシ−6’−メトキシカルコン、ナリンゲニンカルコン、メチルナリンゲニンカルコンなどが挙げられる。
【0044】
好ましいプテロカルパンとして、グリシノール(glycinol: 別名(6aS, 11aS)-3,9,6a-trihydroxypterocarpan)マーキアイン(maackiain)などが挙げられる。
【0045】
本発明の膜結合性プレニルトランスフェラーゼは、プレニルドナーとしてジメチルアリルジホスフェート(DMAPP)、ゲラニル二リン酸(GPP)、ファルネシル二リン酸(FPP)、ゲラニルゲラニル二リン酸(GGPP)、フィチル二リン酸(PDP)などを基質とする。
【0046】
例えば、本発明の膜結合性プレニルトランスフェラーゼの例としては、以下の(a)〜(j)のポリペプチドが挙げられる:
(a)配列番号1のアミノ酸配列を有するポリペプチド、
(b)配列番号1において、1又は2以上のアミノ酸残基が欠失、付加又は置換されたアミノ酸配列を有し、かつ、プレニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチド、
(c)配列番号3のアミノ酸配列を有するポリペプチド、
(d)配列番号3において、1又は2以上のアミノ酸残基が欠失、付加又は置換されたアミノ酸配列を有し、かつ、プレニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチド、
(e)配列番号5のアミノ酸配列を有するポリペプチド、
(f)配列番号5において、1又は2以上のアミノ酸残基が欠失、付加又は置換されたアミノ酸配列を有し、かつ、プレニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチド、
(g)配列番号7のアミノ酸配列を有するポリペプチド、
(h)配列番号7において、1又は2以上のアミノ酸残基が欠失、付加又は置換されたアミノ酸配列を有し、かつ、プレニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチド、
(i)配列番号9のアミノ酸配列を有するポリペプチド、
(j)配列番号9において、1又は2以上のアミノ酸残基が欠失、付加又は置換されたアミノ酸配列を有し、かつ、プレニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチド。
(k)配列番号11のアミノ酸配列を有するポリペプチド、
(l)配列番号11において、1又は2以上のアミノ酸残基が欠失、付加又は置換されたアミノ酸配列を有し、かつ、プレニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチド。
(m)配列番号13のアミノ酸配列を有するポリペプチド、
(n)配列番号13において、1又は2以上のアミノ酸残基が欠失、付加又は置換されたアミノ酸配列を有し、かつ、プレニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチド。
【0047】
(b)のポリペプチドは、(a)のポリペプチドにおいて、1又は複数個、例えば1〜50個、好ましくは1〜30個のアミノ酸が置換、付加、欠失又は挿入されたポリペプチドであってもよい。また、(b)のポリペプチドは、(a)のポリペプチドと70%以上の相同性、好ましくは80%以上の相同性を有するポリペプチドであってもよい。
【0048】
(d)のポリペプチドは、(c)のポリペプチドにおいて、1又は複数個、例えば1〜50個、好ましくは1〜30個のアミノ酸が置換、付加、欠失又は挿入されたポリペプチドであってもよい。また、(d)のポリペプチドは、(c)のポリペプチドと70%以上の相同性、好ましくは80%以上の相同性を有するポリペプチドであってもよい。
【0049】
(f)のポリペプチドは、(e)のポリペプチドにおいて、1又は複数個、例えば1〜50個、好ましくは1〜30個のアミノ酸が置換、付加、欠失又は挿入されたポリペプチドであってもよい。また、(f)のポリペプチドは、(e)のポリペプチドと70%以上の相同性、好ましくは80%以上の相同性を有するポリペプチドであってもよい。
【0050】
(h)のポリペプチドは、(g)のポリペプチドにおいて、1又は複数個、例えば1〜50個、好ましくは1〜30個のアミノ酸が置換、付加、欠失又は挿入されたポリペプチドであってもよい。また、(h)のポリペプチドは、(g)のポリペプチドと70%以上の相同性、好ましくは80%以上の相同性を有するポリペプチドであってもよい。
【0051】
(j)のポリペプチドは、(i)のポリペプチドにおいて、1又は複数個、例えば1〜50個、好ましくは1〜30個のアミノ酸が置換、付加、欠失又は挿入されたポリペプチドであってもよい。また、(j)のポリペプチドは、(i)のポリペプチドと70%以上の相同性、好ましくは80%以上の相同性を有するポリペプチドであってもよい。
【0052】
(l)のポリペプチドは、(k)のポリペプチドにおいて、1又は複数個、例えば1〜50個、好ましくは1〜30個のアミノ酸が置換、付加、欠失又は挿入されたポリペプチドであってもよい。また、(l)のポリペプチドは、(k)のポリペプチドと70%以上の相同性、好ましくは80%以上の相同性を有するポリペプチドであってもよい。
【0053】
(n)のポリペプチドは、(m)のポリペプチドにおいて、1又は複数個、例えば1〜50個、好ましくは1〜30個のアミノ酸が置換、付加、欠失又は挿入されたポリペプチドであってもよい。また、(n)のポリペプチドは、(m)のポリペプチドと70%以上の相同性、好ましくは80%以上の相同性を有するポリペプチドであってもよい。
【0054】
限定はされないが、具体的には、以下のように置換することが可能である:例えばアミノ酸の置換の場合は、タンパク質の構造保持の観点から、極性、電荷、可溶性、親水性/疎水性の点で、置換前のアミノ酸と類似した性質を有するアミノ酸に置換することができる。例えば、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリンは非極性アミノ酸に分類され;セリン、トレオニン、システイン、メチオニン、アスパラギン、グルタミンは極性アミノ酸に分類され;フェニルアラニン、チロシン、トリプトファンは芳香族アミノ酸に分類され;アスパラギン酸、グルタミン酸は酸性アミノ酸に分類される。従って、同じ群のアミノ酸から選択して置換することができる。
【0055】
好ましい置換の具体例としては、例えば、配列表の配列番号1で表すアミノ酸配列において、126番目のメチオニンのアラニンへの置換、158番目のバリンのメチオニンへの置換などが挙げられる。
【0056】
なお、本発明でアミノ酸配列の相同性は、NCBIのBLASTプログラムのデフォルト設定によって解析した場合の数値である。また、好ましくは(Database:nr、Matrix:BLOSUM62、GapCosts:Existence=11,Extension=1、)を用い得る。
【0057】
また、本発明の膜結合性プレニルトランスフェラーゼは、植物由来であることが好ましく、特に、マメ科、クワ科、オトギリソウ科、ミカン科、セリ科、キク科またはアサ科、ホップ由来であることが好ましい。
(膜結合性プレニルトランスフェラーゼ遺伝子)
本発明には、以下の(o)〜(z)及び(α)(β)のいずれかのDNAからなる膜結合性プレニルトランスフェラーゼ遺伝子が含まれる:
(o)配列番号2の塩基配列からなるDNA、
(p)配列番号2に示す塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ膜結合性プレニルトランスフェラーゼをコードするDNA、
(q)配列番号4の塩基配列からなるDNA、
(r)配列番号4に示す塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ膜結合性プレニルトランスフェラーゼをコードするDNA、
(s)配列番号6の塩基配列からなるDNA、
(t)配列番号6に示す塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ膜結合性プレニルトランスフェラーゼをコードするDNA、
(u)配列番号8の塩基配列からなるDNA、
(v)配列番号8に示す塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ膜結合性プレニルトランスフェラーゼをコードするDNA、
(w)配列番号10の塩基配列からなるDNA、および
(x)配列番号10に示す塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ膜結合性プレニルトランスフェラーゼをコードするDNA。
(y)配列番号12の塩基配列からなるDNA、および
(z)配列番号12に示す塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ膜結合性プレニルトランスフェラーゼをコードするDNA。
(α)配列番号14の塩基配列からなるDNA、および
(β)配列番号14に示す塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ膜結合性プレニルトランスフェラーゼをコードするDNA。
【0058】
ここで、本明細書において「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド」とは、コロニー・ハイブリダイゼーション法、プラークハイブリダイゼーション法、あるいはサザンブロットハイブリダイゼーション法等を用いることにより得られるポリヌクレオチドを意味し、例えば、検出対象となるポリヌクレオチドを固定化した支持体に、プローブを作用させ、0.7〜1.0MのNaCl存在下において42℃にて2時間プレハイブリダイゼーションを行った後、0.7〜1.0MのNaCl存在下において42℃にて12〜16時間ハイブリダイゼーションを行い、その後0.1〜2倍程度のSSC溶液(
1倍濃度のSSC溶液の組成は、150mM塩化ナトリウム、15mMクエン酸ナトリウム)を用いて42℃でフィルターを洗浄することにより同定できるDNA等を挙げることができる。ハイブリダイゼーションは、Molecular Cloning: A laboratory Mannual, 2nd Ed.,(Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY.,1989)等に記載されている方法に準じて行うことができる。
【0059】
本発明には、(o)〜(z)及び(α)(β)のいずれかのDNAと、例えば70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは93%以上、特に好ましくは95%以上、最も好ましくは98%以上の相同性を有する塩基配列からなるDNAが含まれる。
【0060】
なお、本発明で塩基配列の相同性は、NCBIのBLASTプログラムのデフォルト設定によって解析した場合の数値である。また、好ましくは(Database:nr、Match,Mismatch:1,-2、GapCosts:Linear)を用い得る。
(ベクター)
本発明のベクターは、上記(o)〜(z)及び(α)(β)のいずれか1または2以上のDNA、あるいは上記の(o)〜(z)及び(α)(β)のいずれかのDNAと相同性を有する塩基配列からなるDNAが挿入された組み換えベクターである。ベクターとしては公知の酵母用、植物細胞用等のものを広く使用できる。公知のベクターとしては、酵母用ベクターとしてはpDR196、pYES-DEST 52、Yip5、Yrp17、Yep24など、植物細胞用としては、pGWB vector(pGWB2、pGWB5、pGWB80など;島根大学、中川強先生よりご分与)、pBiEl2-GUS、pIG121-Hm、pBI121、pBiHyg-HSE、pB119、pBI101、pGV3850、pABH-Hm1などが挙げられる。本発明において使用されるベクターは、必要に応じて、選択マーカー(例えば、薬物耐性遺伝子、抗生物質耐性遺伝子、レポーター遺伝子)を含有する。
(形質転換体)
本発明の形質転換体は、本発明の組み換えベクターを保持する形質転換体である。宿主は、ベクターに適したものを使用すればよい。例えば、酵母、植物、植物細胞、昆虫細胞(Sf9など)などが好ましい。特に好ましい形質転換体としては、酵母、植物又は植物細胞などが挙げられる。形質転換方法は当業者に周知である。
(膜結合性プレニルトランスフェラーゼの調製方法)
上記形質転換体および/またはその培養物の培養液から膜結合性プレニルトランスフェラーゼを回収することで、活性を保持した組換え膜結合性プレニルトランスフェラーゼを得ることができる。
【0061】
具体的には、例えば、Yazaki et al (JBC, 2002, Vol. 277, p. 6240-6246)に記載の方法を用いて行うことが出来る。
【0062】
また、本発明の膜結合プレニルトランスフェラーゼは、例えば、酵母発現系を用いた大量生産により、または大豆などの食用植物で発現させることにより、得ることができる。
【0063】
より具体的には、本発明の膜結合プレニルトランスフェラーゼは、酵母において高い活性を持ったタンパク質として発現できるため、形質転換酵母の培養液にナリンゲニン等のフラボノイド、ゲニステイン等のイソフラボノイドあるいはイソリキリチゲニン等のカルコンを基質として投与する事で、効率よくプレニル化フラボノイドの大量生産が可能である。ナリンゲニン、ゲニステイン、イソリキリチゲニン等は適度な水溶性と疎水性を持つため、生体膜を通過する事ができ、酵母細胞内のプレニルトランスフェラーゼと接触できる。酵母はサイトゾルにプレニルドナーとなるDMAPPを生合成する経路(メバロン酸経路)を有しているため、プレニル基質はインビボで供給される。生産されたプレニル化フラボノイド、プレニル化イソフラボノイド、プレニル化カルコン等は、酵母細胞あるいは培地から回収する事で、効率のよい生産が見込まれる。
【0064】
あるいは、本発明の膜結合プレニルトランスフェラーゼを大豆等の植物、あるいは植物細胞で発現させる事で、プレニル化フラボノイド、プレニル化イソフラボノイド、プレニル化カルコン等を植物で生産する事も可能である。植物細胞の場合、DMAPPを生合成する経路は2つあり、一つはサイトゾルのメバロン酸経路、もう一方はプラスチド内に局在する非メバロン酸経路である。前者のDMAPPを利用してプレニル化フラボノイド、プレニル化イソフラボノイド、プレニル化カルコン等を生産させるためには、プラスチド局在化シグナルを除いた改変遺伝子を発現させる。また、後者のDMAPPを利用したプレニル化フラボノイド、プレニル化イソフラボノイド、プレニル化カルコン等の生産を行うためには、内在性のプラスチド局在化シグナルを使うかRuBisCo小サブユニットなど他遺伝子のプラスチド局在化シグナルを連結して発現させ、プレニルトランスフェラーゼをプラスチドに局在させる。フラボノイド、イソフラボノイド、カルコン等の基質は、内在性のものがプレニル化されるため、植物を育成させてその組織からプレニル化されたものを回収する。あるいは、フラボノイド、イソフラボノイド、カルコン等を吸収させてプレニル化させ、それを植物組織から回収する事も効率の良い生産に有効である。植物のどの組織でプレニル化フラボノイドを生産させるのが良いかは、組織特異的なプロモータを利用する事で制御可能である。
【0065】
プレニル化フラボノイド、プレニル化イソフラボノイド、プレニル化カルコン等を生産する植物は、上記のように化合物生産の目的にも利用可能であるが、これらの化合物の多くがファイトアレキシンとして生産されており、高い抗菌活性を有する事から、病原菌、病害虫に対して高い抵抗性を示す事が考えられる。従って、農業分野における分子育種のツールとしても、本発明の膜結合プレニルトランスフェラーゼ遺伝子は利用可能である。
【0066】
すなわち、本発明の膜結合プレニルトランスフェラーゼを、穀物、野菜、イモ、果実等の作物植物内で発現させることで、病原菌、病害虫に対して高い抵抗性を持たせることができる。
(遺伝子の単離方法)
また、配列表の配列番号2、4、6、8、10、12または14のいずれかに記載の塩基配列あるいはその一部を含んでなる塩基配列との相同性を利用すれば、膜結合性プレニルトランスフェラーゼ遺伝子を単離することができる。
【0067】
具体的な方法としては、例えば、膜結合性プレニルトランスフェラーゼ遺伝子が含まれると予想される遺伝子ライブラリーを、前記塩基配列をプローブとしてスクリーニングする方法、あるいは、前記塩基配列情報に基づいたプライマーを調製し、膜結合性プレニルトランスフェラーゼ遺伝子が含まれると予想されるサンプルを鋳型としたPCRを実施する方法などが挙げられる。
【0068】
あるいは、塩基配列データベースを適当な相同性検索プログラム(例えばBLAST)でサーチすることにより、前記塩基配列と高い相同性を示すDNA配列を有する遺伝子を探索する方法等も挙げられる。
【実施例】
【0069】
以下、本発明を、実施例を示してより詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0070】
1.発現ライブラリーの構築
S.flavescens培養細胞を、フラボノイドのプレニル化酵素を誘導させるために、0.1Mのジャスモン酸メチルDMSO溶液20μlを添加し、36時間培養した(終濃度0.1 mM)。培養細胞よりOligotex-MAG mRNA Purification Kit(タカラバイオ社)を使用してpoly(A)+RNAを単離した。cDNAプラスミドライブラリーを、cDNA Synthesis Kit (STRATAGENE)を使用し、膜結合性タンパク質の酵母発現用ベクターpDR196を用いて、構築した。cDNAの第1鎖を、7μgのポリ(A)+RNA、XhoI制限部位を含むoligo(dT)18アンカープライマーを使用して合成した。cDNAの第2鎖を合成した後、EcoRI制限サイトを含む平滑末端アダプターを二本鎖DNAへ結合させ、次いで当該フラグメントを、構成的プロモーターPMA1を有するプラスミド、pDR196中に組み込んだ。
【0071】
2.SfN8DT cDNAのクローニングおよび機能解析
上記構築したcDNAライブラリーをEscherichia coli DH10Bに導入し、約10,000個のクローンをランダムに選出し、PMA1プロモーター領域にアニールするプライマーを用いて5’末端から配列決定した。そのうち、既知の膜結合性プレニルトランスフェラーゼにおける保存モチーフ6種(NDxxDxxxD, NQxxDxxxD, NQxxExxxD, DDxxDxxxD, DQxxDxxxD, DQxxExxxD)のいずれかを有する200クローンを選出した。当該cDNAクローンを、SOSUIプログラム(http://bp.nuap.nagoya-u.ac.jp/sosui/)を用いて分析し、少なくとも配列決定した領域において膜貫通領域を有する20クローンを検出した。200クローンを3つの細胞内局在予測プログラム:ChloroP, PSORT, およびWoLF_PSORT(ChloroP;http://www.cbs.dtu.dk/services/ChloroP/, PSORT; http://psort.ims.u-tokyo.ac.jp/form.html, WoLF_PSORT; http://wolfpsort.seq.cbrc.jp/)を用いて分析し、30クローンがプラスチド移行シグナルを有していることがわかった。
【0072】
これらのクローンを、酢酸リチウム法を用いて酵母株W303-1A-Δcoq2に導入した。SD-Ura液体培地(180ml)中で対数増殖期に達するまで培養することによって、酵母形質転換体中で組換えタンパク質発現させ、そこからYazakiら(JBC, 2002, 277, 6240-6246)に記載の方法を用いてミクロソーム画分を調製した。それぞれの形質転換体の膜フラクションを500μlの0.1 mM Tris-HCl 緩衝液(pH 8.5)中に再懸濁し、次いで、ナリンゲニンとDMAPPを基質として酵素活性によるスクリーニングを行った。
【0073】
酵素生成物はHPLC分析を用いてスクリーニングした。HPLC分析は以下の条件で行った:
Shimadzu LC-10A system (島津製作所、日本、京都): column YMC-Pack Pro C18 RS (YMC,日本、京都) 4.6 x 250 mm; 溶媒システム, メタノール:H2O:酢酸(70: 30: 0.3); 流速,1 ml min-1; 検出, SPD6A フォトダイオード・アレイ検出器で230-320 nm。
【0074】
その結果、200個の酵母形質転換体中、1つの酵母形質転換体の生成物が、8−ジメチルアリルナリンゲニンと同じ保持時間を有することがわかった(図1)。さらに、その生成物はフォトダイオード・アレイ検出において、標品と同等のUVスペクトルを示した(図1)。
【0075】
このことから、当該1つ酵母形質転換体の形質転換に用いたクローンにはプレニルトランスフェラーゼがコードされていることがわかった。
【0076】
こうして、sophoraflavanone G (SFG)生合成における最初のフラボノイド・プレニルトランスフェラーゼであるナリンゲニン 8-ジメチルアリルトランスフェラーゼ(以下SfN8DTと称す)のcDNA(全長1,495 bp, ORF 410 a.a.)が得られた。
【0077】
SfN8DTの塩基配列を配列表の配列番号2に示す。また、SfN8DTのアミノ酸配列を配列番号1に示す。また、SfN8DTが行うプレニル化反応の機構の一例を図2に示す。
【0078】
なお、SfN8DTはSfN8DT-1とも称する。
【0079】
3.SfN8DT以外のHPT様クローンのクローニング
クララcDNAライブラリーのシーケンス情報から、SfN8DT同様にホモゲンチジン酸プレニルトランスフェラーゼ(HPT)と高い相同性を有する6クローン(それぞれSf1c12f、Sf1C12c、SfL17a、SfL17b、SfG6DT、SfN8DT-2と称する。なお、Sf1C12fはSfN8DT-3とも称し、Sf1C12cはSfChal1DTとも称する。)を見出し、RACE法によりcDNAを単離した。
【0080】
具体的には、RACEの鋳型としてはInvitrogen社のGeneRacerキットを用いて作製したcDNA混合物を用い、PCRにより各cDNAの5’-末端あるいは3’-末端を特異的に増幅した。ここで用いたRNA試料は、ライブラリーを作成したものと同じ、ジャスモン酸メチル処理したクララ培養細胞由来の全RNAである。このPCRにおいて、5’-RACEのフォワードプライマーは、上記キットのアダプター配列を、リバースプライマーは、各遺伝子の内部配列とした。3’-RACEの場合には、フォワードプライマーを各遺伝子の内部配列とし、リバースプライマーにはoligo-dT (20 mer) を用いた。増幅されたDNA断片はシーケンシングにより、各遺伝子のcDNA末端である事を確認した。全長cDNAを取得するためには、改めて5’-末端とoligo-dT (20 mer)をプライマーに、GeneRacerの混合物を用いてPCRを行った。
【0081】
これらのうち、SfL17b、Sf1C12f、Sf1C12c、SfL17a、SfL17bおよびSfN8DTとホモゲンチジン酸プレニルトランスフェラーゼとの間のシグナルペプチドを除いたアミノ酸配列の相同性を比較した(図3)。その結果、Sf1C12f、Sf1C12c、SfL17a、およびSfL17bはSfN8DTと高い相同性を有していた。Sf1C12f(全長1684bp, ORF 410a.a.)、Sf1C12c(全長1527bp, ORF 391a.a.)、SfL17a(全長1325bp, ORF 407a.a.)、およびSfL17b(全長1373bp, ORF 379a.a.)の塩基配列をそれぞれ配列表の配列番号4、6、8および10に示す。なお、これらのアミノ酸配列をそれぞれ配列表の3、5、7および9に示す。
【0082】
また、SfN8DT-1(SfN8DT)、SfN8DT-2、SfG6DT、SfChal1DT(Sf1C12c)それぞれの部分配列とホモゲンチジン酸プレニルトランスフェラーゼの部分配列を用いて作製したマルチプルアライメントを図4に示す。その結果、SfN8DT-1(SfN8DT)、SfN8DT-2、SfG6DT、SfChal1DT(Sf1C12c)は高い相同性を有していた。SfG6DT(ORF 407a.a.)及びSfN8DT-2(ORF 407a.a.)の塩基配列をそれぞれ配列表の配列番号12、14に示す。また、これらのアミノ酸配列をそれぞれ配列表の配列番号11、13に示す。
【0083】
4.SfN8DTと高い相同性を有する各クローンの機能解析
上記「2.SfN8DT cDNAのクローニングおよび機能解析」で実施したのと同様にして、SfN8DT-2、SfN8DT-3(Sf1C12f)、SfG6DTの機能解析を行った。
【0084】
すなわち、SfN8DTの機能解析時と同様に、これらの cDNAクローンをそれぞれ酵母に導入し、培養して組み換えタンパク質を発現させ、そこからミクロソーム画分を調製した。そして、当該画分(膜フラクション)を500μlの0.1 mM Tris-HCl 緩衝液(pH 8.5)中に再懸濁し、次いで、ナリンゲニン(naringenin)もしくはゲニステイン(genistein)とDMAPPを基質としたときの酵素活性を測定した。
【0085】
酵素活性の測定は、SfN8DTの機能解析時と同じHPLC分析条件で、酵素生成物を測定することで行った。
【0086】
酵素活性の測定の結果、SfN8DT-2及びSfN8DT-3(Sf1C12f)を発現させ、ナリンゲニンを基質に用いて調製した画分は、8−ジメチルアリルナリンゲニンと同じ保持時間を有する物質を含むことがわかった。さらに、その生成物はフォトダイオード・アレイ検出において、8−ジメチルアリルナリンゲニン標品と同等のUVスペクトルを示した。
【0087】
このことから、SfN8DT-2及びSfN8DT-3(Sf1C12f)もフラボノイド・プレニルトランスフェラーゼであるナリンゲニン 8-ジメチルアリルトランスフェラーゼであることがわかった。
【0088】
またさらに、酵素活性の測定の結果、SfG6DTを発現させ、ゲニステイン及びDMAPPを基質に用いて調製した画分は、6−ジメチルアリルゲニステインと同じ保持時間を有する物質を含んでいた(図5)。また別途、化学合成した標品と直接比較することで酵素反応産物は6-ジメチルアリルゲニステインであると同定した。
【0089】
このことから、SfG6DTはプレニルトランスフェラーゼであり、少なくともゲニステイン 6−ジメチルアリルトランスフェラーゼとして働くことがわかった。
【0090】
なお、SfG6DTが行うプレニル化反応の機構の一例(ゲニステイン 6−ジメチルアリルトランスフェラーゼとして働く例)を図6に示す。
【0091】
5.酵母発現系を用いた組換えSfG6DTの基質特異性の解析
上述の組換えSfG6DTの基質特異性解析を薄層クロマトグラフィーを用いたRadioactive assayによって行った。
すなわち、まず上述したSfG6DTの機能解析方法と同様にして、SfG6DTを発現した酵母のミクロソーム画分を調製した。
【0092】
次に、当該画分(膜フラクション)を500μlの0.1 mM Tris-HCl 緩衝液(pH 8.5)中に再懸濁し、次いで、14Cでラベルしたゲニステインと、DMAPP、GPP、FPP、GGPPからなる群から選ばれる1種とを基質として反応させた。
【0093】
また、これとは別に、当該画分(膜フラクション)を500μlの0.1 mM Tris-HCl 緩衝液(pH 8.5)中に再懸濁し、次いで、ゲニステイン、ダイゼイン、ビオカニンA(Biochanin A)からなる群から選ばれる1種と、14CでラベルしたDMAPPとを基質として反応させた。
【0094】
そして、反応後、各サンプルを薄膜クロマトグラフィープレート(Silica Gel 60 F254;Merck)を用いて分離し(展開溶媒はToluene: EtOAc: AcOH = 70: 30: 0.3)、BAS1800(Fuji Film)によって検出を行った。
【0095】
その結果、組換えSfG6DT は、ゲニステイン以外にも同じイソフラバノン骨格を有するビオカニンA(Biochanin A)も基質とすることがわかった。さらに、プレニルドナーとしては、DMAPP、GPP、FPPを基質とできることがわかった(図7)。
【0096】
6.組換えSfN8DT及びSfG6DTの酵素化学的解析
上述の酵母発現系を用いて、組換えSfN8DT及びSfG6DTのKm、至適温度、至適pH、二価カチオン要求性を調べた。
【0097】
具体的には、前述と同様の方法にて組み換え酵母ミクロソーム画分を調製し、HPLCにより生成物の量を検出した。
【0098】
Km値の結果を表1に、至適温度、SfN8DTの至適pH、二価カチオン要求性の結果を図8〜10に、SfG6DTの結果を図11〜13に示す。なお、組換えSfN8DTの至適温度は、70〜80℃であり(図8)、組み換えSfG6DTの至適温度は25〜35℃であった(図11)。
【0099】
【表1】
【0100】
7.SfN8DT及びSfG6DTのmRNAの発現解析
ノーザンブロット及びRT−PCRによりクララ植物体及びクララ培養細胞におけるSfN8DT及びSfG6DTの発現解析を行った。(プローブ: 全長ORF)組織別発現解析には、武田薬草園でサンプリングしたクララ植物体(草丈:約170cm、根直径:〜3cm)を用いた。ノーザンブロット解析の結果、SfN8DT、SfG6DTとも根のみで発現が見られた(図14)が、さらにRT−PCR解析を行ったところ、SfN8DTは根の皮部分特異的に発現し、一方SfG6DTは根の皮より内側で特異的に発現していることがわかった(図15)。
【0101】
また、培養細胞においてもMJ(ジャスモン酸メチル)、SA(サリチル酸)及びYE(yeast extract)への発現応答を調べた。植え継ぎ3日後に、MJ、SA、YEをそれぞれ終濃度100 μM、100 μM、5 mg / ml になるよう添加し、24時間後に回収した。その結果、SfN8DTはMJ、SA、YEによりその発現が著しく上昇し、SfG6DTはSAによりその発現が著しく上昇した(図16)。
【0102】
8.SfN8DTを用いた植物体でのプレニルフラボノイドの生産
Sf8DTを植物体内で発現させ、植物体内でプレニルフラボノイドを生産できるかを以下のようにして検討した。
<SfN8DT遺伝子の導入及び発現>
SfN8DT遺伝子全長を、上記のようにクローニングしたクローンをテンプレートとし、SfN8DTfull_Fwプライマー(配列番号15)及びSfN8DTfull_Rvプライマー(配列番号16)を用いてPCRによって増幅した。増幅したものをpENTR1Aベクターにサブクローンし、GATEWAYエントリーベクターとした。さらにこれをpGWB2ベクターに組み込み、GATEWAYデスティネーションベクターとした。当該pGWB2-SfN8DTfullベクターを、Agrobacterium tumefaciens GV3101を用いてフローラルディップ法によりシロイヌナズナ(Columbia野生株)へ導入した。T1世代をカナマイシン50μg/mL含有培地で育ててセレクションを行い、さらにT2世代ではSfN8DTfull_Fwプライマー(配列番号15)及びSfN8DTfull_Rvプライマー(配列番号16)を用いてRT-PCRを行って、SfN8DT遺伝子が導入され、発現していることを確認した。
<SfN8DT遺伝子発現株でのプレニルフラボノイドの生産>
上記のSfN8DT遺伝子が発現しているシロイヌナズナ(T2世代)を、ナリンゲニン(naringenin)100μMを加えた寒天培地で2週間栽培した後フリーズドライし、これを約100mg(およそ300〜500植物体のフリーズドライ)収集した。このフリーズドライされたシロイヌナズナを試料として80%アセトン抽出を行い、抽出物を解析して8DN(8-dimethylallyl naringenin)、8DK(des-O-methylanhydroicaritin)、DA(dimethylallylated apigenin)、DQ(dimethylallylated quercetin)が生産されているかを調べた。なお、対照として、シロイヌナズナ野生株を用いて同様の実験を行った。
酵素生成物はHPLC分析を用いてスクリーニングした。HPLC分析は以下の条件で行った:
Shimadzu LC-10A system (島津製作所、日本、京都): column YMC-Pack Pro C18 RS (YMC,日本、京都) 4.6 x 250 mm; 溶媒システム, メタノール:H2O:酢酸(70: 30: 0.3); 流速,1 ml min-1; 検出, SPD6A フォトダイオード・アレイ検出器で230-320 nm。
【0103】
結果を表2に示す。
【0104】
【表2】
【0105】
表2に示されるように、野生株においては8DN、8DK、DA、DQのいずれも生産されないのに対し、SfN8DT遺伝子発現株では8DN、8DK、DA、DQの全てが生産されることがわかった。
【0106】
以上のことから、植物体中でSfN8DT遺伝子を発現させることにより、プレニルフラボノイドを生産できることが確認できた。
【0107】
9.SfChal1DTの機能解析
SfN8DTの機能解析時と同様に、SfChal1DTの cDNAクローンを酵母に導入し、培養して組み換えタンパク質を発現させ、そこからミクロソーム画分を調製した。そして、当該画分(膜フラクション)を500μlの0.1 mM Tris-HCl 緩衝液(pH 8.5)中に再懸濁し、次いで、カルコンであるイソリキリチゲニン(isoliquiritgenin)とDMAPPを基質としたときの酵素活性を測定した。
【0108】
酵素活性の測定には、LC/MSを用い、以下の条件で行った:
Shimadzu model 2010A system LC/MS(島津製作所)(LC-10AD Solvent Delivery systemを使用)
column :4 x 250 mm LiChrospere 100RP-18 (Merck, Tokyo, Japan)
solvent system:エタノール: H2O: ギ酸 (90: 10: 0.3)
flow rate:0.2 ml min-1
サンプルは陽イオンモードで測定し、質量分析の測定範囲は m/z 50 to 600と設定した。
【0109】
その結果、プレニル化イソリキリチゲニンの分子量325でトレースしたクロマトグラムにおいて、図17に示されるように、イソリキリチゲニンのジメチルアリル体が酵素反応により生成していることが確認された。このことから、SfChal1DTはカルコンをプレニル化できるプレニルトランスフェラーゼであることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】SfN8DTで形質転換した酵母のミクロソーム画分に、ナリンゲニンとDMAPPを加えたときの生成物をHPLCで解析した結果を示す。aは8-DN、3’DN、6DNの各標品をHPLCで解析したクロマトグラムを、bは空ベクターを導入した酵母の生成物をHPLCで解析したクロマトグラムを、cはSfN8DTで形質転換した酵母の生成物のHPLCで解析したクロマトグラムを、dはSfN8DTで形質転換した酵母の生成物のフォトダイオード・アレイ検出結果を示す。
【図2】SfN8DTが行うプレニル化反応の機構の一例を示す。
【図3】SfL17b、SfN8DT、SfL17a、Sf1C12cおよびSf1C12fとその他のホモゲンチジン酸プレニルトランスフェラーゼとの間のシグナルペプチドを除いたアミノ酸配列の相同性の比較を示す。GmVTE2-1, AtVTE2-1, TaVTE2-1, ZmVTE2-1, ApVTE2-1およびCpVTE2-1:Eva Collakova et al, Plant Phys., 2001, 127, 1113-1124およびBeth Savidge etal., Plant Phys., 2002, 129, 321-332参照。HvHGGT, TaHGGTおよびOsHGGT: Edgar B Cahoon et al., Nature Biotech, 2003, 21, 1082-1087参照。GmVTE2-2およびAtVTE2-2:Venkatech et al., Planta, 2006, 223, 1134-1144参照。
【図4】SfN8DT-1(SfN8DT)、SfN8DT-2、SfG6DT、SfChal1DT(Sf1C12c)それぞれの部分配列とホモゲンチジン酸プレニルトランスフェラーゼの部分配列を用いて作製したマルチプルアライメントを示す。
【図5】SfG6DTで形質転換した酵母のミクロソーム画分に、ゲニステインとDMAPPを加えたときの生成物をHPLCで解析した結果を示す。
【図6】SfG6DTが行うプレニル化反応の機構の一例を示す。
【図7】SfG6DTの基質特異性をRadioactive assayによって検討した結果を示す。赤矢印及び青矢印が、検出された6−ジメチルアリルゲニステインを示す。
【図8】組換えSfN8DTの至適温度を示すグラフである。
【図9】組換えSfN8DTの至適pHを示すグラフである。
【図10】組換えSfN8DTの二価カチオン要求性を示すグラフである。
【図11】組換えSfG6DTの至適温度を示すグラフである。
【図12】組換えSfG6DTの至適pHを示すグラフである。
【図13】組換えSfG6DTの二価カチオン要求性を示すグラフである。
【図14】クララ各器官におけるSfN8DT及びSfG6DTの発現を検討したノザンブロット解析結果のイメージを示す。
【図15】クララの根におけるSfN8DT及びSfG6DTの発現部位を検討したRT−PCR解析結果のイメージを示す。なお、IFSはイソフラボン合成酵素を、CHSはカルコン合成酵素を、CHIはカルコンイソメラーゼを、それぞれ示す。
【図16】MJ、SA、YEのSfN8DT及びSfG6DTの発現に対する影響を検討したノザンブロット解析結果のイメージを示す。
【図17】SfChal1DTで形質転換した酵母のミクロソーム画分に、イソリキリチゲニンとDMAPPを加えたときの生成物をLC/MSで解析した結果を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜結合性プレニルトランスフェラーゼであって、
NDxxDxxxD、NQxxDxxxD、NQxxExxxD、DDxxDxxxD、DQxxDxxxD、DQxxExxxD、NExxDxxxD、NExxExxxD及びDExxExxxDからなる群より選択される少なくとも1つの保存モチーフを有し、かつ
化学式(I):
【化1】
(式中、R1およびR2は、同一または異なって、水素基、水酸基、フェニル基、フェノール基若しくはアリール基を示し、
R3およびR4は、同一または異なって、水素基、水酸基若しくはメトキシル基を示す)、
化学式(II):
【化2】
(式中、R5およびR6は、同一または異なって、水素基、水酸基、フェニル基、フェノール基若しくはアリール基を示し、
R7およびR8は、同一または異なって、水素基、水酸基若しくはメトキシル基を示す)、
化学式(III):
【化3】
(式中、R9はフェニル基、フェノール基若しくはアリール基を示し、
R10、R11およびR12は、同一または異なって、水素基、水酸基若しくはメトキシル基を示す)、あるいは
化学式(IV):
【化4】
(式中、R13はフェニル基、フェノール基若しくはアリール基を示し、
R14、R15およびR16は、同一または異なって、水素基、水酸基若しくはメトキシル基を示す)
で表される化合物にプレニル基を導入する酵素活性を示す膜結合性プレニルトランスフェラーゼ。
【請求項2】
プレニルドナーとしてジメチルアリルジホスフェート(DMAPP)、ゲラニル二リン酸(GPP)、ファルネシル二リン酸(FPP)、ゲラニルゲラニル二リン酸(GGPP)、フィチル二リン酸(PDP)からなる群より選択される少なくとも1種を基質とする、請求項1に記載の膜結合性プレニルトランスフェラーゼ。
【請求項3】
以下の(i)又は(ii)のポリペプチド:
(i) 配列番号1、3、5、7、9、11又は13のいずれかのアミノ酸配列を有するポリペプチド、
(ii) (i)のポリペプチドにおいて、1又は2以上のアミノ酸残基が欠失、付加又は置換されたアミノ酸配列を有し、かつ、プレニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチド。
【請求項4】
植物由来である、請求項1〜3のいずれかに記載の膜結合性プレニルトランスフェラーゼ。
【請求項5】
植物が、マメ科、クワ科、オトギリソウ科、ミカン科、セリ科、キク科またはアサ科あるいはホップから選択される、請求項4に記載の膜結合性プレニルトランスフェラーゼ。
【請求項6】
以下の(iii)〜(v)のいずれかに示すDNAからなる遺伝子:
(iii) 配列番号2、4、6、8、10、12又は14のいずれかの塩基配列からなるDNA、
(iv) (iii)の塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ膜結合性プレニルトランスフェラーゼをコードするDNA、
(v) (iii)の塩基配列からなるDNAと少なくとも70%以上の相同性を有する塩基配列からなるDNA。
【請求項7】
請求項6に記載の遺伝子を含むベクター。
【請求項8】
請求項7に記載のベクターを導入した形質転換体。
【請求項9】
請求項8に記載の形質転換体を培養し、その形質転換体および/またはその培養物から膜結合性プレニルトランスフェラーゼを採取する工程を含んでなる膜結合性プレニルトランスフェラーゼの調製方法。
【請求項10】
請求項6に記載の遺伝子によってコードされる膜結合性プレニルトランスフェラーゼ。
【請求項11】
請求項8に記載の形質転換体を培養し、その形質転換体および/またはその培養物から芳香族プレニル化化合物を採取する工程を含んでなる芳香族プレニル化化合物の製造方法。
【請求項12】
形質転換体が酵母、植物又は植物細胞である、請求項9又は11に記載の方法。
【請求項1】
膜結合性プレニルトランスフェラーゼであって、
NDxxDxxxD、NQxxDxxxD、NQxxExxxD、DDxxDxxxD、DQxxDxxxD、DQxxExxxD、NExxDxxxD、NExxExxxD及びDExxExxxDからなる群より選択される少なくとも1つの保存モチーフを有し、かつ
化学式(I):
【化1】
(式中、R1およびR2は、同一または異なって、水素基、水酸基、フェニル基、フェノール基若しくはアリール基を示し、
R3およびR4は、同一または異なって、水素基、水酸基若しくはメトキシル基を示す)、
化学式(II):
【化2】
(式中、R5およびR6は、同一または異なって、水素基、水酸基、フェニル基、フェノール基若しくはアリール基を示し、
R7およびR8は、同一または異なって、水素基、水酸基若しくはメトキシル基を示す)、
化学式(III):
【化3】
(式中、R9はフェニル基、フェノール基若しくはアリール基を示し、
R10、R11およびR12は、同一または異なって、水素基、水酸基若しくはメトキシル基を示す)、あるいは
化学式(IV):
【化4】
(式中、R13はフェニル基、フェノール基若しくはアリール基を示し、
R14、R15およびR16は、同一または異なって、水素基、水酸基若しくはメトキシル基を示す)
で表される化合物にプレニル基を導入する酵素活性を示す膜結合性プレニルトランスフェラーゼ。
【請求項2】
プレニルドナーとしてジメチルアリルジホスフェート(DMAPP)、ゲラニル二リン酸(GPP)、ファルネシル二リン酸(FPP)、ゲラニルゲラニル二リン酸(GGPP)、フィチル二リン酸(PDP)からなる群より選択される少なくとも1種を基質とする、請求項1に記載の膜結合性プレニルトランスフェラーゼ。
【請求項3】
以下の(i)又は(ii)のポリペプチド:
(i) 配列番号1、3、5、7、9、11又は13のいずれかのアミノ酸配列を有するポリペプチド、
(ii) (i)のポリペプチドにおいて、1又は2以上のアミノ酸残基が欠失、付加又は置換されたアミノ酸配列を有し、かつ、プレニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチド。
【請求項4】
植物由来である、請求項1〜3のいずれかに記載の膜結合性プレニルトランスフェラーゼ。
【請求項5】
植物が、マメ科、クワ科、オトギリソウ科、ミカン科、セリ科、キク科またはアサ科あるいはホップから選択される、請求項4に記載の膜結合性プレニルトランスフェラーゼ。
【請求項6】
以下の(iii)〜(v)のいずれかに示すDNAからなる遺伝子:
(iii) 配列番号2、4、6、8、10、12又は14のいずれかの塩基配列からなるDNA、
(iv) (iii)の塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ膜結合性プレニルトランスフェラーゼをコードするDNA、
(v) (iii)の塩基配列からなるDNAと少なくとも70%以上の相同性を有する塩基配列からなるDNA。
【請求項7】
請求項6に記載の遺伝子を含むベクター。
【請求項8】
請求項7に記載のベクターを導入した形質転換体。
【請求項9】
請求項8に記載の形質転換体を培養し、その形質転換体および/またはその培養物から膜結合性プレニルトランスフェラーゼを採取する工程を含んでなる膜結合性プレニルトランスフェラーゼの調製方法。
【請求項10】
請求項6に記載の遺伝子によってコードされる膜結合性プレニルトランスフェラーゼ。
【請求項11】
請求項8に記載の形質転換体を培養し、その形質転換体および/またはその培養物から芳香族プレニル化化合物を採取する工程を含んでなる芳香族プレニル化化合物の製造方法。
【請求項12】
形質転換体が酵母、植物又は植物細胞である、請求項9又は11に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2010−22323(P2010−22323A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−190159(P2008−190159)
【出願日】平成20年7月23日(2008.7.23)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り ▲1▼発行者名 American Society of Plant Biologists 刊行物名 Plant Physiology 発行年月日 平成20年1月24日 ▲2▼掲載年月日 平成20年1月31日 掲載アドレス (1)http://database.rish.kyoto−u.ac.jp/cgi−bin/plantdb/data.rhtml?group=&name=YAK03A01_080116N8DT2.r (2)http://database.rish.kyoto−u.ac.jp/cgi−bin/plantdb/data.rhtml?group=1238&name=YAK03A01NGRL0037_L18.r (3)http://database.rish.kyoto−u.ac.jp/cgi−bin/plantdb/data.rhtml?group=&name=YAK03A01_080116L17B.r (4)http://database.rish.kyoto−u.ac.jp/cgi−bin/plantdb/data.rhtml?group=&name=YAK03A01_080116L17A.r ▲3▼掲載年月日 平成20年3月8日 掲載アドレス (1)http://getentry.ddbj.nig.ac.jp/search/get_entry?accnumber=AB325579 (2)http://getentry.ddbj.nig.ac.jp/search/get_entry?accnumber=AB370330 (3)http://getentry.ddbj.nig.ac.jp/search/get_entry?accnumber=AB371287 (4)http://getentry.ddbj.nig.ac.jp/search/get_entry?accnumber=AB370329 ▲4▼掲載年月日 平成20年3月14日 掲載アドレス (1)http://www.kyoto−u.ac.jp/notice/05_news/documents/080314_1.htm ▲5▼掲載年月日 平成20年3月14日 掲載アドレス (1)http://www.rish.kyoto−u.ac.jp/W/LPGE/research/yazaki_re/N8
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19度経済産業省「植物機能を活用した高度モノ作り基盤技術開発/植物利用高付加価値物質製造基盤技術開発」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(504132272)国立大学法人京都大学 (1,269)
【出願人】(591045471)アピ株式会社 (59)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月23日(2008.7.23)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り ▲1▼発行者名 American Society of Plant Biologists 刊行物名 Plant Physiology 発行年月日 平成20年1月24日 ▲2▼掲載年月日 平成20年1月31日 掲載アドレス (1)http://database.rish.kyoto−u.ac.jp/cgi−bin/plantdb/data.rhtml?group=&name=YAK03A01_080116N8DT2.r (2)http://database.rish.kyoto−u.ac.jp/cgi−bin/plantdb/data.rhtml?group=1238&name=YAK03A01NGRL0037_L18.r (3)http://database.rish.kyoto−u.ac.jp/cgi−bin/plantdb/data.rhtml?group=&name=YAK03A01_080116L17B.r (4)http://database.rish.kyoto−u.ac.jp/cgi−bin/plantdb/data.rhtml?group=&name=YAK03A01_080116L17A.r ▲3▼掲載年月日 平成20年3月8日 掲載アドレス (1)http://getentry.ddbj.nig.ac.jp/search/get_entry?accnumber=AB325579 (2)http://getentry.ddbj.nig.ac.jp/search/get_entry?accnumber=AB370330 (3)http://getentry.ddbj.nig.ac.jp/search/get_entry?accnumber=AB371287 (4)http://getentry.ddbj.nig.ac.jp/search/get_entry?accnumber=AB370329 ▲4▼掲載年月日 平成20年3月14日 掲載アドレス (1)http://www.kyoto−u.ac.jp/notice/05_news/documents/080314_1.htm ▲5▼掲載年月日 平成20年3月14日 掲載アドレス (1)http://www.rish.kyoto−u.ac.jp/W/LPGE/research/yazaki_re/N8
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19度経済産業省「植物機能を活用した高度モノ作り基盤技術開発/植物利用高付加価値物質製造基盤技術開発」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(504132272)国立大学法人京都大学 (1,269)
【出願人】(591045471)アピ株式会社 (59)
【Fターム(参考)】
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