説明

プレバイオティック組成物

本発明は、下痢や便秘のような炎症性腸疾患及び関連疾患をコントロールするためのオリゴ糖を含む栄養組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可溶性繊維、特にフルクトオリゴ糖(FOS)及びガラクトオリゴ糖(GOS)を含むプレバイオティック組成物及び炎症性腸疾患(IBD)、下痢や便秘のような胃腸管疾患の治療または予防におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
プレバイオティックは健康に対して有益な効果を持つ非消化性食品成分である。食品成分をプレバイオティックとして分類するためには、i)上部胃腸管で加水分解も吸収もされないこと、ii)1つまたは限定数の結腸に共生的な潜在的に有益な細菌(例えば、乳酸桿菌及びビフィドバクテリウム)により選択的に発酵されて、前記細菌が増殖及び/または代謝的に活性化されるように刺激されること、iii)腐敗性微生物を減少させながら例えば糖分解性菌の数を増加させることにより結腸微生物叢をより健康な組成に変えることができることという基準を満たさなければならない。ビフィドバクテリウムは炭水化物を主に酢酸及び乳酸に代謝する偏性嫌気性菌であり、前記酸は更に系統的に代謝される。ビフィドバクテリウムは腸ホメオスタシス、腐敗性及び病原性細菌の抑制、数種のビタミンの産生、腸機能の活性化、消化及び吸収の補助及び免疫応答の刺激において重要な役割を果たすと考えられている。ビフィドバクテリウムは酸素及び熱に対して感受性であるので、その食品への適用は制限されてきた。従って、有効性を示し、正常な食物プロセッシングにかけられ、常在性有益細菌を選択的に標的とするプレバイオティックへの興味が増してきた。
【0003】
プレバイオティックに対する1つの望ましい属性は、結腸の遠位領域に向かって持続する能力である。腸のこの領域は結腸癌及び潰瘍性大腸炎を含めた幾つかの慢性病的状態の発生部位である。腸のこの領域の微生物叢は前記疾患の発現または維持において重要な役割を果たし得ると考えられている。食物炭化水素は近位結腸における主要な発酵性物質であり、これは細菌発酵中に分解されるのでタンパク質はより遠位領域における主要な発酵性物質として運ばれる。細菌性タンパク質代謝の産物にはアミン、アンモニアやフェノール化合物のような毒性で、潜在的に発ガン性の化合物が含まれる。
【0004】
便秘は、食事中の繊維が不足して通過時間が長くなり、大便量が減った結果として入院患者でよく起こる問題である。病気、薬物、不動性状態及び少ない流体摂取もこの問題の一因である。研究から、患者に病院食を介して及び/または経口サプリメントまたは非経口栄養物を使用することにより高繊維食を与えると大便の量及び排便回数が増すことが判明している。
【0005】
炎症性腸疾患(IBD)は小腸及び大腸に炎症または潰瘍を起こす疾患である。非常にしばしば、IBDは潰瘍性大腸炎またはクローン病のいずれかに分類される。IBDは結腸癌の原因となり得る。IBDの病因は明らかでなく、現在の薬物療法では治癒できない。多くの要因、特に遺伝、環境、免疫及び微生物の要因が関係している。
【0006】
潰瘍性大腸炎は、通常結腸及び直腸の下部で生ずる炎症性反応であり、結腸全体を冒すこともある。症状には出血、出血性下痢、直腸の出血性痛み、発熱、体重減少が含まれ、結腸穿孔、結膜炎、膿瘍、口腔潰瘍、皮膚病巣のような合併症も誘発される恐れがある。幾つかの研究から、潰瘍性大腸炎では硫酸還元菌(例えば、デスルフォビブリオ(Desulfovibrio)属)が関与している。硫酸塩を硫化物に還元させる前記細菌は健康ヒトの50%に存在しているが、潰瘍性大腸炎を患っているヒトでは遍在している(97〜100%)。前記細菌はIBD患者でスルフィド形成を増加させ、ブチレート酸化を低下させたり、上皮細胞バリアを傷つけたり、細菌、食物抗原及び炎症のトランスロケーションを誘導するようなダメージを誘発する。潰瘍性大腸炎には他の細菌、例えば大腸菌、ヘリコバクター菌も関与し得るが、その役割は不確定のようである。潰瘍性大腸炎は現在の薬物療法では治癒できず、抗炎症剤の使用により対処されている。軽度乃至中程度の疾患の患者を治療するために使用され得る薬物、例えばスルファサラジンは悪心、嘔吐、下痢または頭痛のような副作用を引き起こすことがある。より重症の患者にはコルチコステロイドを使用する場合があるが、特に感染の危険が増すことがある。重症例では、病的結腸を除去するために手術が必要である。
【0007】
クローン病は、腸壁のより深部に炎症を生じさせ、胃腸管の任意の部分(最も一般的な部位は小腸である)で起こり得る点で潰瘍性大腸炎と異なる。クローン病は慢性状態であり、一生のうちのいろいろな時に起こり得る。
【0008】
過敏性腸管症候群(IBS)は持続及び再発する腹痛と不定期な腸習慣(例えば、下痢及び/または便秘)の組合せを特徴とする。IBSは現在の薬物療法では治癒できない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
最近、消費者の一部で栄養価を有するのみならず健康に正の影響をも有し得る食品の需要が増えつつある。特に、遠位腸に達し、そこでビフィドバクテリウムの数を増加させることができる長い発酵時間を有するプレバイオティックを含有する機能性食品の開発に興味が持たれている。
【0010】
インビボのヒト研究で、フルクトオリゴ糖(FOS)を食事に添加すると大便ビフィドバクテリウムが増加し、FOSが有効なプレバイオティックであることが判明している。しかしながら、高レベルのFOSはヒト有志者において過度のガス発生を起こすことがあり、プレバイオティック食品の製造には最低有効量のFOSを使用しなければならない。新しいプレバイオティック組成物の開発が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
驚くことに、本発明者らは、FOSのプレバイオティック特がガラクトオリゴ糖(GOS)の存在により有意に改善されること及びFOSとGOSの効果は相加的以上、すなわちビフィドバクテリウムや乳酸桿菌のような有益細菌の増殖の促進の点で相乗効果が観察されたことを知見した。
【0012】
この相乗作用の結果、FOSの同等またはより高いバイオティック効果を低量で得ることができる。これは、十分なプレバイオティック効果がインビボで達成され得るが、単一のプレバイオティックを副作用を誘発する恐れがある量摂取させる必要を避けることができるという作用効果を有する。加えて、得られる最大プレバイオティック効果は個々のプレバイオティックから得られるものよりも優れている。
【0013】
従って、1態様で、本発明は、FOS及びGOSを含む組成物(以下、本発明の組成物と呼ぶ)を提供する。
【0014】
別の態様で、本発明は、薬剤または臨床製品として使用するための本発明の組成物を提供する。
【0015】
別の態様で、本発明は、胃腸(G1)通過疾患、例えばIBD、下痢または便秘を治療または予防するための薬剤(例えば、臨床製品)または栄養組成物の製造における本発明の組成物の使用を提供する。
【0016】
別の態様で、本発明は、慢性腸疾患(例えば、IBD)を予防または治療するため及び/または前記疾患(例えば、潰瘍性大腸炎、クローン病及び/または結腸癌)に関連する症状または状態の小康状態時間を延長させるかまたは緩解させるための薬剤または栄養組成物の製造における本発明の組成物の使用を提供する。
【0017】
別の態様で、本発明は、腸細菌集団をより健康な組成に変えるため、例えば有益な腸細菌(例えば、ビフィドバクテリウム及び/または乳酸桿菌)の増殖及び/または代謝を刺激するため及び/または非有益腸細菌(例えば、バクテロイデス、大腸菌型、クロストリジウム、硫酸還元菌)の増殖及び/または代謝を抑制するための薬剤(例えば、臨床製品)または栄養組成物の製造における本発明の組成物の使用を提供する。
【0018】
本発明は、更に病原性腸細菌による感染を予防または治療するための薬剤(例えば、臨床製品)または栄養組成物の使用を提供する。
【0019】
別の実施態様で、本発明は、IBSまたはその症候群を予防または治療するための薬剤または栄養組成物の製造における本発明の組成物の使用を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
食物繊維、特にフルクタン及び/または非消化性オリゴ糖を摂取すると、胃腸管における乳酸産生細菌の密度が増加し、腸内細菌のような望ましくない微生物の数が減少する。後者の微生物には数種の病原菌が含まれる。従って、フルクタン及び/またはオリゴフルクトースのような食物繊維の摂取は胃腸管における有益細菌の増殖を選択的に刺激するために使用され得る。有益細菌/病原性細菌の比が高くなると宿主に対して有益な健康効果が生ずる。
【0021】
本明細書中、用語「可溶性繊維」は結腸において発酵を受けて短鎖脂肪酸(SCFA)を生じ得る繊維を指す。
【0022】
本明細書中、用語「オリゴ糖」は少なくとも2個、最高20個のグリコシド結合した単糖単位、すなわち2〜20の重合度(DP)、好ましくは2〜15単糖単位、より好ましくは2〜10単糖単位、更に好ましくは2〜7単糖単位または2〜6単糖単位から構成される糖を指す。
【0023】
フルクトオリゴ糖(オリゴフルクトースとも言う)(FOS)はフルクタンのイヌリンサブクラスの一員である非消化性オリゴ糖である。FOSは実際タマネギ、ニンニク、シャロット、小麦、ライ麦、バナナ、アスパラガス、トマト、アーティチョーク、ダリア及びチコリーの根を含めた多種類の植物中に存在する。FOSは酵素的、化学的技術を用いてまたは天然材料からの抽出により生成され得る。短鎖FOSはスクローン1分子に1〜3個のフルクトース分子が結合した構成を有し得る。重合度(DP)は6以下であり、トランスフルクトシル化酵素を用いてスクロースから合成され得る。スクロースをトランスフルクトシル化酵素で処理すると、1−ケストース、ナイストース及びフルクトシル−ナイストースのような2、3または4フルクトース単位を含むFOSの混合物が生ずる。インビボのヒト研究から、FOSの食事添加により大便ビフィドバクテリウムが増え、非常に有効なプレバイオティックであることが判明した。
【0024】
本明細書中、用語「FOS」はFOS及び短鎖FOSを包含する。本発明によれば、FOSは2〜20糖単位、好ましくは2〜15糖単位、より好ましくは2〜7糖単位、更に好ましくは2〜6糖単位から構成され得る。本発明の1実施態様では、FOSはFOSの全重量に基づいて約95重量%の二糖〜七糖を含み得る。
【0025】
フルクトオリゴ糖は市販されており、例えばフランス国に所在のBeghin−Meiji industriesの約92重量%のFOSを含有するActilight 950P(登録商標);ベルギー国ティーネンに所在のOraftiの各種グレードのオリゴフルクトース(Raftilose)、例えば約95重量%のFOSを含有し、2〜約7の重合度(典型的には、3.5〜4.5のDP)の鎖、及びグルコース,フルクトース及びスクロースを合わせて約5重量%含有するRAFTILOSE & commat P95が挙げられる。
【0026】
ガラクトオリゴ糖(GOS)は二糖、三糖、四糖、五糖及び六糖を含み、主に糖成分としてガラクトースから構成され得、ラクトースにβ−ガラクトシダーゼを作用させることにより形成される。本発明によれば、GOSは2〜15糖単位、好ましくは2〜10糖単位、より好ましくは2〜7糖単位、更に好ましくは2〜6糖単位を含み得る。本発明の1実施態様では、GOSは、GOSの全重量に基づいて約0〜約45重量%の二糖、好ましくは約10〜約40重量%の二糖、より好ましくは約20〜約35重量%の二糖、更に好ましくは約33重量%の二糖を含有し得る。本発明によれば、GOSは、GOSの全重量に基づいて約0〜約50重量%の三糖、好ましくは約10〜約45重量%の三糖、より好ましくは約20〜約40重量%の三糖、更に好ましくは約39重量%の三糖を含有し得る。本発明によれば、GOSは、GOSの全重量に基づいて約0〜約50重量%の四糖、好ましくは約5〜約45重量%の四糖、より好ましくは約10〜約40重量%の四糖、更に好ましくは約18重量%の四糖を含有し得る。本発明によれば、GOSは、GOSの全重量に基づいて約0〜約30重量%の五糖、好ましくは約1〜約25重量%の五糖、より好ましくは約2〜約10重量%の五糖、更に好ましくは約7重量%の五糖を含有し得る。
【0027】
本明細書中、用語「GOS」は上記したGOS及びtGOSとも呼ばれるトランス−ガクトオリゴ糖を包含する。
【0028】
GOSは市販されており、例えばオランダ国に所在のBorculo Domo Ingredientsの約58重量%のガラクトオリゴ糖、23重量%のラクトース及び19重量%のグルコースを含有するElixor(登録商標);オランダ国に所在のBorculo Domo Ingredientsの約28重量%のガラクトオリゴ糖、46.5重量%の単糖及び二糖、17.5重量%のタンパク質、3.1重量%のミネラル、1重量%の脂肪及び4重量%の水分を含有し、50%のホエータンパク質濃厚物(WPC 35)との同時噴霧乾燥混合物として入手可能なVivinal(登録商標)GOS 10(粉末);Borculo Domo Ingredientsの41重量%の単糖及び二糖、59重量%のGOSからなる乾燥重量が75重量%のVivinal GOS(シロップ)が挙げられる。
【0029】
本発明の組成物中に含まれるFOS+GOSの量は、投与の目的、各患者の年齢,性別及び体重、粉末または即消費(ready-for-consumption)組成物(例えば、レディ・トゥ・ドリンク組成物またはインスタントドリンク)のような本発明の組成物の形態、及び症状の重篤度を含めた各種の関連要素にてらして決定され得る。
【0030】
本発明の組成物は少なくとも0.3〜約20g、好ましくは約0.5〜約12g、より好ましくは約0.5〜約5gのFOSを含み得る。
【0031】
本発明によれば、本発明の組成物中のGOSの量は約0.3〜約20g、好ましくは約0.5〜約12g、より好ましくは約0.5〜約5gであり得る。
【0032】
FOSは、適当には例えば粉末のような固体形態の本発明の組成物中に組成物の全重量に基づいて約0.1〜約40重量%、好ましくは約0.2〜約30重量%、例えば約0.5〜約20重量%、好ましくは約1〜約15重量%、更に好ましくは約2〜約12重量%の量存在させる。
【0033】
例えば粉末のような固体形態の本発明の組成物中のGOSの量は、組成物の全重量(例えば、粉末組成物の全重量)に基づいて約0.1〜約40重量%、好ましくは約0.2〜約30重量%、好ましくは約0.5〜約20重量%、より好ましくは約1〜約15重量%、更に好ましくは約2〜約12重量%であり得る。
【0034】
本発明によれば、例えば粉末のような固体形態の本発明の組成物中のFOS+GOSブレンドの量は、組成物の全重量(例えば、粉末組成物の全重量)に基づいて約0.1〜約60重量%、好ましくは約0.2〜約40重量%、好ましくは約0.5〜約30重量%、好ましくは約1〜約25重量%、好ましくは約2〜約20重量%、更に好ましくは約2〜約15重量%であり得る。
【0035】
本発明の別の実施態様において、本発明の即消費組成物中に含まれるFOSの適当量は、即消費組成物の全重量に基づいて最高約20重量%または最高約15重量%、例えば約0.05〜約20重量%(例えば約0.1〜約10重量%、例えば約0.2〜約5重量%)、または約0.5〜約3重量%である。
【0036】
本発明の即消費組成物中のGOSは、即消費組成物の全重量に基づいて最高約20重量%または最高約15重量%、例えば約0.05〜約20重量%(例えば約0.1〜約10重量%、例えば約0.2〜約5重量%、例えば約0.5〜約3重量%)であり得る。
【0037】
本発明によれば、本発明の即消費組成物中のFOS+GOSブレンドの量は、組成物の全重量(例えば、即消費組成物の全重量)に基づいて最高約40重量%、最高約30重量%、例えば約0.05〜約40重量%、約0.1〜約30重量%、約0.2〜約20重量%、約0.5〜約15重量%、約1〜約10重量%、約2〜約5重量%(例えば約25重量%、例えば約20重量%、例えば約10重量%、例えば約5重量%)の範囲である。
【0038】
例えば1回分あたりのFOSの用量(例えば、1日用量)は、例えば約0.01〜約0.5g/kg体重、好ましくは約0.03〜約0.3g/kg体重、より好ましくは約0.05〜約0.2g/kg体重、更に好ましくは約0.06〜約0.15g/kg体重であり得る。本発明によれば、例えば1回分あたりのGOSの用量(例えば、1日用量)は、例えば約0.01〜約0.5g/kg体重、好ましくは約0.03〜約0.3g/kg体重、より好ましくは約0.05〜約0.2g/kg体重、更に好ましくは約0.06〜約0.15g/kg体重であり得る。例えば1回分あたりのFOS+GOSブレンドの適当用量(例えば、1日用量)は、例えば約0.01〜約1g/kg体重、好ましくは約0.03〜約0.6g/kg体重、より好ましくは約0.05〜約0.4g/kg体重、更に好ましくは約0.10〜約0.3g/kg体重であり得る。
【0039】
FOS+GOSブレンドの適当用量(例えば、1日用量)は、約1〜約20g、好ましくは約1〜約15g、より好ましくは約2〜約10g、例えば約20g、好ましくは約15g、より好ましくは約10g、更に好ましくは約5gであり得る。
【0040】
1態様で、本発明は、FOS/GOSの重量比が約0.01〜約50、好ましくは約0.5〜約20、好ましくは約0.1〜約10、より好ましくは約0.2〜約5、更により好ましくは約0.3〜約3、最も好ましくは約0.5〜約2、更に最も好ましくは約0.6〜約1.5の本発明の組成物を提供する。FOS/GOSの重量比は約1であり得る。
【0041】
勿論、本発明の組成物の活性成分の相対比は当該組成物の特定タイプ、例えば液体か固体形態であるかまたは栄養剤形態で提供されるかに応じてかなり変更される。本明細書に記載した比率及び相対重量範囲はいずれも好ましいまたはそれぞれの本発明の教示を示しているにすぎず、本発明を広く限定するものではない。
【0042】
本発明によれば、本発明の組成物は更に不溶性及び/または可溶性繊維、例えば非スターチ多糖類[例えば、セルロース、ヘミセルロース、難消化性スターチ、ガム、グアーガム、水解グアーガム(例えば、Novartis Nutrition CorporationからBenefibre(登録商標)として市販されている部分水解グアーガム)、ペクチン、アラビアガム及びその混合物]を含み得る。
【0043】
本発明の組成物は、ポリ不飽和脂肪酸、特にシス−ポリ不飽和脂肪酸、例えばn−3脂肪酸及び/またはn−6脂肪酸[例えば、α−リノレン酸(18:3)、ステアリドン酸、エイコトペンタエン酸(EPA)(20:5)、ドコサペンタエン酸(22:5)、ドコサヘキサエン酸(DHA)(22:6)、リノール酸(18:2)、γ−リノレン酸(18:3)、アラキドン酸(20:4)]を含み得、これらの脂肪酸は遊離形態及び/または油脂形態であってもよい。好ましくは、エイコサペンタエン酸とドコサヘキサエン酸の混合物を使用し得る。
【0044】
本発明の組成物は窒素源(例えば、タンパク質及び/またはアミノ酸)及び/または脂肪源(例えば、脂質)及び/または炭水化物源をも含み得る。本発明の組成物はビタミン及び/またはミネラルをも含み得る。
【0045】
本発明の別の実施態様において、本発明の組成物は更にオリゴ糖、例えばラクトース、キシロオリゴ糖(XOS)、大豆オリゴ糖(SOS)、イソマルトオリゴ糖(IMO)、アラビノガラクタン(ABG)、ゲンチオオリゴ糖、フルクタン、部分水解グアーガム(PHGG)及びその混合物、好ましくはXOSを含み得る。
【0046】
本発明の更なる実施態様において、本発明の組成物は本質的にまたは専ら本明細書に記載したFOS及びGOSから構成される。
【0047】
本発明の1実施態様において、本明細書に記載したFOS及びGOSからなるオリゴ糖ブレンド、例えば2〜7単糖単位を有するFOS及び2〜7単糖単位を有するGOSからなるブレンドを含む栄養または医薬組成物が提供される。
【0048】
本発明の組成物の更なる成分には、健康に対して効果があることが公知の生理活性化合物または抽出物、特に胃腸管に対して有利な影響を与える化合物、例えばグルタミン/グルタメートまたはその前駆体を含み得る。
【0049】
本発明は、マンナン、ガラクツロン酸オリゴマーを含めた胃腸管の上皮壁への細菌付着を抑制する1つ以上の追加物質(好ましくは、天然起源のもの)を含み得る。本発明の組成物は、潰瘍性大腸炎を治療するのに有用な薬物、例えばメサラミン、スルファサラジン、5−ASA剤、コルチコステロイド(例えば、副腎ステロイド)、プレドニゾン、ヒドロコルチゾンまたはブデソニド;疼痛、下痢、感染またはIBSに対して使用される薬物、例えばセロトニン−4−受容体アゴニスト(例えば、Zelnorm/Zelmac(商標))をも含み得る。例えば、本発明の組成物は上記した薬剤と一緒に別々に、逐次または同時に投与するための配合医薬製剤またはキットの形態で提供され得る。前記薬剤を一般的な医薬剤形で本発明の組成物と一緒に処方することが便利である。
【0050】
本発明の1実施態様では、本発明の組成物はツツジ科の植物種または小麦葉に由来する材料を含まない。
【0051】
本発明の別の実施態様では、本発明の組成物はラフィノースを含みない。
【0052】
本発明の1態様では、本発明の組成物は医薬または栄養組成物、通常栄養剤、食事サプリメント、医療用または機能性食品及び飲料中に容易に配合され得る。
【0053】
本発明の別の態様では、本発明の組成物は薬剤として使用され得る。従って、本発明の組成物は医薬品の形態でまたは食事サプリメントとして、好ましくは少なくとも1つの医薬的または栄養的に許容され得る担体と一緒に投与され得る。
【0054】
食事手段(例えば、サプリメント)または医薬組成物の形態の本発明の組成物は専ら本発明の組成物から構成され、場合により医薬的または栄養的に許容され得る担体を含めてもよい。
【0055】
本発明の更なる態様では、本発明の組成物を含む薬剤(例えば、臨床製品)、栄養または医薬組成物(例えば、食事サプリメント)が提供される。本発明の薬剤(例えば、臨床製品)、栄養または医薬組成物は場合により医薬的に許容され得る担体を含み得る。更に、本発明によれば、GI疾患を治療または予防するために、例えば腸微生物叢を維持及び/または回復させるために、有益な腸細菌の成長または増殖を刺激するために及び/または非有益または病原性の細菌の成長または増殖を抑制するために、IBDを治療または予防するため、潰瘍性大腸炎、クローン病及び/または結腸癌のような前記疾患に関連する症状または状態の小康状態期間を延長させるかまたは緩解させるために、IBD患者、特に大腸炎患者の小康状態期間を延長または抑制させるために同時に、別々にまたは逐次使用するための配合医薬製剤が提供される。本発明の別の実施態様では、本発明の組成物(例えば、配合医薬製剤)はIBSまたはその症候群を予防または治療するために使用され得る。
【0056】
本明細書中、用語「有益な(beneficial)腸細菌」は有益であるかまたは潜在的に有益な腸細菌、例えば乳酸桿菌及びビフィドバクテリウムを指す。用語「非有益腸細菌」は有益でないかまたは病原性の腸細菌、例えばバクテロイデス、クロストリジウム、大腸菌型、硫酸還元菌を指す。
【0057】
本発明によれば、用語「栄養組成物」は栄養処方物または栄養製品、例えば栄養剤、栄養または食事サプリメント、機能性食品、飲料、代用食または食品添加物を指す。
【0058】
栄養組成物は栄養的に完全であってもよい。すなわち、必要な1日量のビタミン、ミネラル、炭水化物、脂肪酸、タンパク質等を本質的にすべて供給する唯一の栄養源として使用され得るようにビタミン、ミネラル、微量元素、窒素源、炭水化物源及び脂肪酸源を含み得る。従って、本発明の組成物は栄養的にバランスのとれた組成物、例えば経口または経管栄養補給に適した完全配合食または完全食の形態で提供され得る。
【0059】
或いは、本発明の組成物は食事の一部、すなわち健康ドリンク形態のような栄養または食事サプリメントとして提供され得る。
【0060】
本発明の組成物を低カロリー組成物(例えば、代用食)の形態で提供することが望ましいことがある。この場合、栄養組成物(例えば、代用食)が低脂肪、すなわち組成物の全カロリー含量に基づいて約10en%未満の脂肪または実質的に無脂肪、すなわち脂肪由来のカロリーが約2.5en%未満、例えば約2en%の脂肪であることが好ましい。適当には、低カロリー栄養組成物(例えば、代用食)の1回分は約1000kcal未満のカロリー値、好ましくは約200〜約500kcalのカロリー値を有する。
【0061】
適当な低カロリー栄養組成物には、ソフトドリンク(例えば、ジュース)、スムージーまたは大豆ベースドリンクが含まれ得、任意の種類の食物(例えば、棒状乳製品、スープ、朝食用シリアルのようなシリアル、ミューズリー、キャンディー、タブ、クッキー、ビスケット、煎餅のようなクラッカー、ミルクシェーク,ヨーグルトドリンク,ヨーグルト及びフルーツドリンクのような乳製品)中に分散させてもよい。
【0062】
或いは、本発明の組成物を例えば約400kcal以上、好ましくは約600kcal以上、より好ましくは約800kcal以上のカロリー値を有する高カロリー組成物、例えば高カロリー食事サプリメントまたは代用食として提供してもよい。
【0063】
本発明によれば、本発明の組成物(例えば、高カロリー組成物)はタンパク質を多く含み得、例えば組成物の全カロリー含量に基づいて約1en%(すなわち、1g/100kcal)以上のタンパク質、好ましくは約2en%以上のタンパク質、より好ましくは約4en%以上のタンパク質を含み得、例えば約1〜約15en%のタンパク質、好ましくは約2〜約10en%のタンパク質、より好ましくは約3〜約5en%のタンパク質を含み得る。
【0064】
本発明の組成物(例えば、高カロリー組成物)は例えば組成物の全カロリーに基づいて約4en%以上、好ましくは5en%以上、より好ましくは6en%以上、更に好ましくは7en%以上、最も好ましくは8en%以上の脂肪を含み得る。
【0065】
本発明の1実施態様では、例えば100mlあたり約1〜約3gのFOS、約1〜約3gのGOS、約2〜20gのタンパク質、約1〜約30gの炭水化物、約0.5〜約20gの脂肪、ミネラル及びビタミンを含む組成物、より好ましくは約1.25gのFOS、約1.25gのGOS、約9gのタンパク質、約22gの炭水化物、約9gの脂肪、ミネラル及びビタミンを含む組成物が提供される。前記組成物は完全配合食であり得る。前記組成物(例えば、完全配合食)は即消費組成物であり得る。
【0066】
本発明の組成物は、場合により慣用の食品添加物、例えば乳化剤、安定剤、甘味料、フレーバー、着色剤、保存剤、キレート剤、浸透剤、緩衝剤またはpH調節剤、酸味料、増粘剤、テクスチャライザー剤等を含む。
【0067】
本発明の適当な製品フォーマットには、溶液、即消費組成物(例えば、レディ・トゥ・ドリンク組成物、インスタントドリンク)、ソフトドリンク,ジュース,スポーツドリンク,ミルクドリンク,ミルクシェーク,ヨーグルトドリンクまたはスープのような食用に適した液体が含まれる。本発明の更なる実施態様では、本発明の組成物は即消費組成物(例えば、レディ・トゥ・ドリンク組成物またはインスタントドリンク)を調製すべく水または他の液体(例えば、ミルクまたはフルーツジュース)で希釈される濃厚物、粉末または顆粒(例えば、発泡顆粒)の形態で製造、販売され得る。
【0068】
本発明の更なる態様で、本発明の組成物の食品添加物としての使用を提供する。
【0069】
本発明の医薬組成物(例えば、臨床製品)及び栄養組成物(例えば、食事サプリメント)は、一般的な剤形のソフトゲル、サッシェ、粉末、シロップ、懸濁液、エマルション及び溶液の形態で提供され得る。ソフトカプセルの場合、活性成分を脂肪油、パラフィン油または液体ポリエチレングリコールのような適当な液体中に溶解または懸濁させることが好ましい。場合により、安定剤を添加してもよい。
【0070】
経口医薬サプリメントまたは食事サプリメントは、医薬業界で公知の一般的なコンパウンディング方法、すなわち活性物質を食用の医薬的に許容され得る固体または液体担体及び/または賦形剤、例えば充填剤(例:セルロース、ラクトース、スクロース、マンニトール、ソルビトール及びリン酸カルシウム)及び結合剤(例:スターチ、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース及び/またはポリビニルピロリドン(PVP))と混合することにより製造され得る。任意の添加剤には、滑沢剤及び流動調節剤(例:ケイ酸、二酸化ケイ素、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム及び/またはステアリン酸カルシウム)、ポリエチレングリコール(PEG)希釈剤、崩壊剤(例:スターチ、カルボキシメチルスターチ、架橋PVP、寒天、アルギン酸及びアルギネート)、着色剤、フレーバー及び溶融剤が含まれる。例えば同定の目的または活性成分の用量の違いを示すために錠剤または糖衣錠コーティングに染料または顔料を添加してもよい。
【0071】
本発明の組成物はヒトへの投与に適した形態、特に胃腸管の任意の部分に投与するのに適した形態をとり得る。本発明の組成物の経腸投与(好ましくは、経口投与)及び管またはカテーテルを介する投与のいずれもが本発明に含まれる。
【0072】
投与しようとする本発明の組成物の量及び投与方式は、投与の目的、各患者の年齢,性別及び体重及び患者の症状の重篤度を含めた各種の関連要因にてらして決定される。
【0073】
本発明の組成物は、医療専門家の監督下で投与され得るか、または自己投与され得る。
【0074】
本発明の組成物、例えば本発明の組成物を配合した食品及び飲料のような医薬または栄養組成物は誰にでも自己消費され得、下痢及び/または便秘、或いはIBD(特に、潰瘍性大腸炎、クローン病、結腸癌)に関連する疾患、状態及び症状、またはIBSまたはその症候群を患っている哺乳動物、例えば成人のようなヒトに対して特に推奨される。本発明の組成物(例えば、栄養サプリメント)は、下痢、便秘または上記した他の慢性腸疾患のリスクのある哺乳動物、例えば成人のようなヒト、例えば栄養不良者、長期間ケアを受けている入院患者及び/または小康状態の潰瘍性大腸炎患者に対して特に推奨される。本発明の組成物は栄養不良者及び/または高齢者に対して特に適している。
【0075】
本発明の1実施態様では、本発明は、治療を要するヒトを含めた哺乳動物におけるGI疾患、例えばIBD(特に、上記した潰瘍性大腸炎、クローン病、結腸癌)に関連する疾患、状態及び症状、上記したIBSまたはその症候群のような慢性腸疾患を治療及び/または予防するための方法に関し、その方法は前記哺乳動物に対して有効量の本発明の組成物を投与することを含む。本明細書中、用語「有効量」は下痢、便秘、或いはIBD(特に、潰瘍性大腸炎、クローン病気、結腸癌)に関連する疾患、状態及び症状、上記したIBSに関連する状態及び症状を治療及び/または予防するような所望治療効果を達成するのに有効な量を指す。
【0076】
本発明の別の実施態様では、本発明の組成物は、慢性腸疾患、例えばIBD(特に、潰瘍性大腸炎、クローン病、結腸癌)に関連する疾患、状態及び症状を予防または治療するため、ヒトを含めた哺乳動物の上記したIBSまたはその症候群を予防または治療するため、または下痢や便秘のような胃腸(GI)通過疾患を治療または予防するための薬剤または栄養組成物の製造において使用され得る。
【0077】
別の態様で、本発明は、腸内細菌叢(例えば、腸微生物叢)を維持及び/または回復させるため、腸細菌集団をより健康な組成に変えるため、特に有益な腸細菌(例えば、ビフィドバクテリウム及び/または乳酸桿菌)の増殖及び/または代謝を刺激するため及び/または非有益または病原性の腸細菌(例えば、バクテロイデス、クロストリジウム、大腸菌型、硫酸還元菌)の増殖及び/または代謝を抑制するための方法を提供する。
【0078】
本発明の別の態様で、病原性腸細菌による感染を予防または治療する方法が提供される。
【0079】
更なる態様で、本発明は、、慢性腸疾患、例えばIBD(特に、潰瘍性大腸炎、クローン病、結腸癌)に関連する疾患、状態及び症状を予防及び/または治療するため、またはIBD患者、特に潰瘍性大腸炎患者の小康状態期間を延長させるための方法を提供する。
【0080】
更なる態様で、本発明は、胃腸(GI)通過疾患、例えば下痢または便秘を治療または予防するための方法を提供する。
【0081】
本発明は更に、ヒトを含めた哺乳動物における上記したIBSまたはその症候群を予防または治療するための方法を提供する。
【0082】
本発明の組成物の適用形態に応じて、すなわち完全食のような完全配合食として、または食事の一部、食品添加物、ドリンク、サッシェ、錠剤またはカプセル剤として適用するかに応じて、本発明の組成物は1日1回〜1日5〜6回摂取され得る。本発明の組成物を標準食に対するサプリメントとして用いる患者に対しては、1日用量を1日に1〜2回に分けて適用し得る。本発明の組成物を完全1日栄養食として摂取する患者に対しては、最高6回に分けて適用することが推奨され得る。本発明の組成物は1日の時間に制限を加えることなく、例えば主食と一緒に適用され得る。
【0083】
本発明の組成物は、医療専門家の監督下で投与され得るか、または自己投与され得る。
【0084】
最適には、本発明の組成物(例えば、食事サプリメント)は、患者をケア及び治療している間、例えば1週あたり正常な腸運動(例えば、3〜10回)及び正常な排便(例えば、固体)が記録されるまで、及び/または下痢や便秘が少なくなるか止まるまで、及び/または患者が異常な不快感、痛み、膨満、鼓張を経験しなくなるまで、及び/または排便の中に血液や過度の粘液が排泄されなくなるまで定期的に少なくとも1週間に1回または1日1回消費される。
【0085】
別の実施態様では、本発明は、本発明の組成物の成分を均密に混合することを含む本発明の組成物の製造方法に関する。前記方法は当業者に公知である。
【0086】
本発明の組成物の有用性は、例えば標準動物モデルで哺乳動物(例えば、成体動物)に対してFOS及びGOSを約0.01〜約1g/kg体重/日、好ましくは約0.05〜約0.5g/kg体重/日を用いるかまたはFOS及びGOSを1回分あたり約1〜30gまたは最高30g用いて上記した適応症に対する一般的な臨床試験で確認することができる。腸内細菌叢を維持及び/または回復するため、例えばIBD及び関連疾患または症状を予防及び治療するための本発明の組成物の効果は当業者に公知の方法、例えば結腸含量の分析、例えばS字結腸領域からのバイオプシー分析によりモニターし得る。健康人及び例えば潰瘍性大腸炎の患者の微生物集団を比較し、結腸細菌集団の差は例えば蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)及び/または変性ゲル勾配電気泳動(DGGE)、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)及び16S rDNA配列分析により検出することができる。FISHは蛍光染料で標識した16S rDNAオリゴヌクレオチドプローブを用いる培養独立分子技術である(表1参照)。FISH方法により、環境サンプル中の全細菌細胞をその場で可視化、局在化させることができる。この方法は当業者には容易に理解されると認識される。
【0087】
【表1】

【0088】
1つのヒト臨床トライアルを以下のように実施する:
本発明の組成物を比較する無作為二重盲検試験を12ヶ月の治療期間での腸機能、大便微生物叢または結腸プレバイオティック発酵に対する効果を評価すべく、潰瘍性大腸炎患者を対象として標準の栄養サプリメントに対して例えば約0.01〜約1g/kg体重/日、好ましくは約0.05〜約0.5g/kg体重/日、より好ましくは約0.1または0.15〜約0.2g/kg体重/日のFOS及び約0.01〜約1g/kg体重/日、好ましくは約0.05〜約0.5g/kg体重/日、より好ましくは約0.1または0.15〜約0.2g/kg体重/日のGOSを用いて実施する。患者30人を被験者とし得る。排便頻度、排便中の出血の有無、過剰の粘液の発生、排便のコンシステンシー、鼓張、膨満及び腹痛のパラメーターを毎週評価する。大便微生物叢はFISHにより調べられ、有益細菌種(例えば、乳酸桿菌及びビフィドバクテリウム)の数を病的状態に関連する細菌(例えば、クロストリジウム、バクテロイデス、硫酸還元菌)の数と比較する。大便サンプル中の短鎖脂肪酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸及び吉草酸)も調べる。PCR及びDGGEを用いて全大便DNA抽出物の研究を実施する。
【0089】
本発明を下記実施例により更に説明する。
【実施例1】
【0090】
幾つかのオリゴ糖及びその混合物のプレバイオティック能力のインビトロ研究
ポジティブコントロールとして用いたフルクトオリゴ糖(FOS)は、フランス国に所在のBeghin−Meiji industriesの92% オリゴ糖を含有するActilight 950P(登録商標)である。
【0091】
ガラクトオリゴ糖(GOS)は、オランダ国に所在のFCDFの58% オリゴ糖、23% ラクトース、19% グルコースを含有するElixor(登録商標)である。
【0092】
キシロオリゴ糖(XOS)は、日本国に所在のサントリー社の91% オリゴ糖を含有するXylo−oligo 95P(登録商標)である。
【0093】
大豆オリゴ糖(SOS)は、日本国に所在のSoya Oligo Japan Inc.の23% オリゴ糖、21% スクロース、31% 他の糖を含有する大豆オリゴ糖シロップである。
【0094】
アラビノガラクタン(ABG)は、米国に所在のLarex Inc.の95% 可溶性繊維を含有するClearTrac AG−99(登録商標)である。
【0095】
アラビアガムとも呼ばれるアカシアガム(AG)は、フランス国に所在のColloides Naturels Internationalの85% 可溶性繊維を含有するFibregum(登録商標)である。
【0096】
麦芽(WG)は、スイス国に所在のMultiforsaの32% オリゴ糖、30% タンパク質、12% 繊維、7% 脂肪を含有するBiogerm PB1(登録商標)である。
【0097】
イソマルトオリゴ糖(IMO)は、日本国に所在の昭和産業社の89% オリゴ糖を含有するIsomalto 900(登録商標)である。
【0098】
1.方法
FOS、GOS、XOS、SOS、ABG、AG、WG及びIMOのプレバイオティック能力をインビトロ大便バッチ培養物を用いて調べた。また、オリゴ糖の混合物、すなわち1:1のFOS+GOS、AG+FOS、FOS+XOS、XOS+GOS及びAG+GOSも同様にインビトロで調べた。試験炭水化物のプレオバイオティック特性と比較するためのポジティブコントロールとしてFOSを用いた。単一炭水化物源として試験化合物を用いる大便バッチ培養を公知の代謝疾患も胃腸疾患(例えば、糖尿病、潰瘍性大腸炎、クローン病、消化性潰瘍、IBS、胃腸炎及びガン)もない6人の健康な成人からの大便接種物を用いて実施した。サンプルをその場で採取し、嫌気性室において保持し、採取から5分以内に用いた。0.1M 嫌気性リン酸緩衝液(pH 7.4)中の1:10希釈物を作成し、サンプルをストマッカーにおいて2分間ホモジナイズした。
【0099】
(a) バッチ培養物
無菌ケモスタット培地(135ml)を撹拌容器中嫌気性条件(O非含有Nを連続的に流しながら)下37℃で維持した。培養pHは6.7に維持した。次いで、1%重量/容量の炭水化物源を添加した。各容器に、嫌気性リン酸緩衝食塩液中で調製した新鮮ヒト大便懸濁液(10%w/v,15ml)を接種した。バッチ培養物を24時間維持した。
【0100】
(b) 細菌一覧
バッチ培養物のサンプルを0、5、10及び24時間の培養時に採取した。細菌学のために蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)を用いた。全細菌、バクテロイデス種、ビフィドバクテリウム種、クロストリジウム・ペルフリンゲンス/ヒストリチクム亜群及び乳酸桿菌を16S rRNAを標的とする群特異的蛍光標識DNAプローブを用いて選んだ(表1参照)。
【0101】
2.結果
ここで集め、検討した結果は各種の可能性あるプレバイオティックの6ランについて合わせた結果である。
【0102】
FOS+GOSは10及び24時間の発酵後ビフィドバクテリウムにより選択的且つ高度に発酵された。増加は、いずれの時点でもFOSまたはGOSの単独での発酵中よりも高かった。バクテロイデス数は僅かに減少した。配合物は最初の10時間の発酵中に乳酸桿菌におけるすべての試験物質の最大増加の1つを示した。増加は24時間後維持されなかったが、数は当初レベルよりも高いままであった。クロストリジウムは10時間目に少しの増加を示したが、24時間後の数は当初レベルよりも低かった。24時間後にバクテロイデス数の非常に僅かな減少が観察された。FOS+GOSはビフィドバクテリウム及び乳酸桿菌により迅速に利用され、その数はFOSまたはGOS単独に比して非常に多くなった。このように10時間発酵後に乳酸桿菌が非常に増えることは非常に重要である。なぜならば、プレバイオティックは通常乳酸桿菌に殆ど変化を生じさせないビフィドバクテリウムにより発酵されるからである。配合物は有益細菌の数を相乗的に増加させるようである。
【0103】
3.検討
結果から、オリゴ糖は本トライアルで試験した可溶性繊維よりも有益細菌、主にビフィドバクテリウム及び乳酸桿菌により非常に選択的に発酵されることが分かる。
【0104】
FOS+GOSの配合物は相乗的に作用し、驚くことにこれらのオリゴ糖を単独で使用した場合よりもビフィドバクテリウム及び乳酸桿菌を非常に増加させる。余り有益でない細菌に関して、配合物は両オリゴ糖を別々に試験したときに比較して数の減少に影響を及ぼさず、むしろ数を僅かに増加させるようである。FOS及びGOSは増殖を選択的に強化させる特性のために特に良好なプレバイオティックである。FOS+GOS配合物は明らかに試験した成分及び配合物が全発酵期間にわたり良好なプレバイオティックであることを示した。
【実施例2】
【0105】
栄養組成物(100gあたり)
FOS 1g
GOS 1g
水解グアーガム(1) 0.2g
グルタミン 1g
エイコサペンタエン酸(EPA) 0.43g
ドコサヘキサエン酸(DHA) 0.28g
(1)Novartis Nutrition CorporationのBenefiber(登録商標)。
【実施例3】
【0106】
栄養組成物(100gあたり)
本組成物は粉末形態である。1日用量(42g)を消費する前に約200mlの冷水に溶解させなければならない。
【0107】
Vivinal(登録商標)GOS 10(2) 42.38g
Actlight 950P FOS(3) 12.62g
脱脂粉乳 21.49g
全粉乳 9.52g
カカオアロマ 6.55g
MCTオイル 1.07g
チョコレートフレーバー 0.71g
キャラメルフレーバー 0.19g
甘味剤サッカリン−Na 0.07g
バニラ(精製) 0.03g
(2)オランダ国に所在のBorculo Domo Ingredients製で、約28重量%のGOSを含有する;
(3)フランス国のBeghin−Meiji industries製で、約92重量%のFOSを含有する。
【実施例4】
【0108】
レディ・トゥ・ドリンクの食事サプリメント(100ml;100kcalあたり)
FOS(4) 1.25g
GOS(5) 1.25g
タンパク質 9g
炭水化物 21.4g
(スクロース 5g)
(ラントース 0.7g)
脂肪 8.7g
(飽和脂肪酸 0.81g)
(モノ不飽和脂肪酸 4.84g)
(ポリ不飽和脂肪酸 2.54g)
ビタミンA 80μg
ビタミンD 1μg
ビタミンE 1mg
ビタミンC 6mg
ビタミンK 7μg
ビタミンB1 0.14mg
ビタミンB2 0.16mg
ビタミンB16 0.2mg
ビタミンB12 0.14μg
ビオチン 7.5μg
葉酸 20μg
ナイアシン 1.8mg
パントテン酸 0.6mg
ナトリウム 60mg
カリウム 160mg
カルシウム 190mg
マグネシウム 30mg
リン 90mg
クロリド 70mg
鉄 1.5mg
亜鉛 1.5mg
銅 200μg
モリブデン 8μg
マンガン 0.3mg
クロム 10μg
セレン 6μg
フロリド 150μg
ヨウ素 15μg
(4)オランダ国のBorculo Domo IngredientsのVivinal GOS;
(5)ベルギー国のOrafitのRaftilose P95。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フルクトオリゴ糖(FOS)及びガラクトオリゴ糖(GOS)を含む栄養または医薬組成物。
【請求項2】
FOSが約2から約7の重合度を有する鎖からなるオリゴフルクトースを最高95重量%含み、GOSが約2から約7の重合度を有する鎖からなるオリゴガラクトースを最高95重量%含む請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
FOS:GOSの重量比が約0.01から約50である請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
FOS:GOSの重量比が約0.5から約2である請求項1から3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
FOSとGOSのブレンドの量が組成物の全重量に基づいて約0.05から約40重量%である請求項1から4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
高カロリー組成物である請求項1から5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
組成物の全カロリー含量に基づいて約1en%以上のタンパク質を含む請求項1から6のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
完全配合食である請求項1から7のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
100mlあたり約1から約3gのFOS、約1から約3gのGOS、約2から約20gのタンパク質、約1から約30gの炭水化物、約0.5から約20gの脂肪、ミネラル及びビタミンを含む請求項1から8のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
100mlあたり約1.25gのFOS、約1.25gのGOS、約9gのタンパク質、約22gの炭水化物及び約9gの脂肪を含む請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
即消費組成物である請求項1から10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
薬剤として使用するための請求項1から7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
下痢や便秘のような胃腸疾患を治療または予防するための薬剤または栄養組成物の製造における請求項1から11のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項14】
腸内細菌叢を維持及び/または回復させるための薬剤または栄養組成物の製造における請求項1から11のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項15】
炎症性腸疾患、特に潰瘍性大腸炎、クローン病を治療または予防するため及び/または結腸癌を予防するための薬剤または栄養組成物の製造における請求項1から11のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項16】
ビフィドバクテリウム及び/または乳酸桿菌の増殖を刺激するため及び/またはバクテロイデス、クロストリジウム、大腸菌型、硫酸還元菌の少なくとも1つの増殖を抑制するための薬剤または栄養組成物の製造における請求項1から11のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項17】
病原性腸細菌による感染の予防または治療のための薬剤または栄養組成物の製造における請求項1から11のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フルクトオリゴ糖(FOS)及びガラクトオリゴ糖(GOS)を含む栄養または医薬組成物。
【請求項2】
FOSが約2から約7の重合度を有する鎖からなるオリゴフルクトースを最高95重量%含み、GOSが約2から約7の重合度を有する鎖からなるオリゴガラクトースを最高95重量%含む請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
FOS:GOSの重量比が約0.01から約50である請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
FOS:GOSの重量比が約0.5から約2である請求項1から3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
FOSとGOSのブレンドの量が組成物の全重量に基づいて約0.05から約40重量%である請求項1から4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
高カロリー組成物である請求の範囲第1項から第5項のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
組成物の全カロリー含量に基づいて約1en%以上のタンパク質を含む請求項1から6のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
完全配合食である請求項1から7のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
100mlあたり約1から約3gのFOS、約1から約3gのGOS、約2から約20gのタンパク質、約1から約30gの炭水化物、約0.5から約20gの脂肪、ミネラル及びビタミンを含む請求項1から8のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
100mlあたり約1.25gのFOS、約1.25gのGOS、約9gのタンパク質、約22gの炭水化物及び約9gの脂肪を含む請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
即消費組成物である請求項1から10のいずれか1項に記載の組成物。

【公表番号】特表2006−509797(P2006−509797A)
【公表日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−558076(P2004−558076)
【出願日】平成15年12月11日(2003.12.11)
【国際出願番号】PCT/EP2003/014087
【国際公開番号】WO2004/052121
【国際公開日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【出願人】(597011463)ノバルティス アクチエンゲゼルシャフト (942)
【Fターム(参考)】