プレパラート収納ケース
【課題】地震などにより不意に横向きの応力が加わったとしても、収容部が外枠部の外に飛び出して落下するのを防ぐことができ、また収容部内のプレパラートを取り出す場合には容易に収容部を引き出すことができる、安全性が高く且つ使いやすいプレパラート収納ケースを提供する。
【解決手段】一の側方が開口された直方体状の外枠部2の中に、上方が開口された直方体状の収容部3が挿入された、引き出し式のプレパラート収納ケース1であって、収容部3の底板下面にはストッパー片A:3aが突設され、該ストッパー片A:3aは引き出し方向手前側の面が収容部底面に対して略垂直面3bであるとともに、引き出し方向奥側の面が収容部底面に対して角度が浅い斜面3cであり、外枠部2の底板上面には前記ストッパー片3aの引き出し方向手前側の略垂直面3bと衝合可能な略垂直面2bを有するストッパー片B:2aが突設されていることを特徴とする。
【解決手段】一の側方が開口された直方体状の外枠部2の中に、上方が開口された直方体状の収容部3が挿入された、引き出し式のプレパラート収納ケース1であって、収容部3の底板下面にはストッパー片A:3aが突設され、該ストッパー片A:3aは引き出し方向手前側の面が収容部底面に対して略垂直面3bであるとともに、引き出し方向奥側の面が収容部底面に対して角度が浅い斜面3cであり、外枠部2の底板上面には前記ストッパー片3aの引き出し方向手前側の略垂直面3bと衝合可能な略垂直面2bを有するストッパー片B:2aが突設されていることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、病理組織等の生物標本の薄片が貼り付けられた顕微鏡観察用のプレパラートを収納できるプレパラート収納ケースに係り、特に、地震などにより不意に横向きの応力が加わったとしても、収容部が飛び出して落下するのを防ぐことができ、また収容部内のプレパラートを取り出す場合には容易に収容部を引き出すことができる、安全性が高く且つ使いやすいプレパラート収納ケースに関する。
【背景技術】
【0002】
生物組織、例えば病理組織の検査は、患者の患部より切除した組織を通常、カセットと称される多数の透孔を有する容器内に入れ、ホルマリン液等により薬液処理した後、包埋トレイと称される容器内に薬液処理した組織を入れた後、包埋トレイの上にカセットを載せ、カセットの上方から溶融パラフィンを包埋トレイ内に流下させ、カセット底部の外側に、組織を包埋したパラフィンブロックが付着した所謂包埋ブロックとされる。この包埋ブロックは、ミクロトームと称される装置の上に組織を包埋するパラフィンブロックを上にして固定された後、薄切りし、切り出した組織片をスライドガラスに載せ、染色を施してカバーガラスを被せ、得られたプレパラートは顕微鏡で観察される。
【0003】
上記のようにして作成したプレパラートは、再検査の際などに利用できるように、プレパラートケースに収納して保管される。そして、病理組織を再度、観察したい場合、プレパラートケースから所定のプレパラートを取り出して顕微鏡で観察される。
【0004】
包埋ブロックやスライドガラス(プレパラート)などの試料を整理するための整理ケースとして、多数の包埋ブロックを平面視して縦横に区画して収容する包埋ブロック収納部と、スライドガラスを収容するスライドガラス収納部と、を備え、包埋ブロック収納部による包埋ブロックの配列に、スライドガラス収納部によるスライドガラスの配列を対応させてある整理ケースが提案されている(特許文献1)。
【0005】
しかしながら、上記特許文献1のような整理ケースでは、目的とする包埋ブロックやスライドガラスを取り出しやすいものの、包埋ブロックやスライドガラスを寝かせた状態で収納するため、包埋ブロック一個当り、又は、スライドガラス一枚当りの必要スペースはかなり大きくなってしまう。しかも、使用済み包埋ブロックや使用済みスライドガラスは大量に発生するが、これらの再検査の頻度はそれほど高くないので、使用頻度が低い試料に大きな保存スペースが必要になるという不都合が生じる。
【0006】
一方、引き出しの底部付近に長手方向にコイル状のスプリングを張設し、このスプリングにスライドガラスを挟み込む標本マルチラックが販売されている(非特許文献1)。
このようなラックはスライドガラスを垂直に立てて収納するので、小さなスペースに大量のプレパラートを収納することができる。しかしながら、スライドガラスとスライドガラスとの間にスプリングが介在するためスライドガラスの収納量が減じられ、また、スプリングを1〜2個飛ばしてスライドガラスを収納することがあり、この場合はスライドガラス収納量は更に少なくなる。更に、引き出しの前面には引き出す際に指を引っ掛けるためのフックが下向きに突設されているため、このフックに被服を引っ掛けたりする虞れがあり、また、突設したフックのため、ラックを隙間なく並べてコンパクトに保管することができないという問題がある。
【0007】
更に、上記特許文献1、非特許文献1のいずれのケースも、地震等により横向きの応力が加わった場合には、収納したスライドガラスや包埋ブロックは重量が大きいためこれらを収納した引き出しが勢いよくケース外に飛び出し、落下して貴重な試料を台なしにするばかりでなく、飛び出した引き出しが観察者に当ると大怪我する虞れもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−255896号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】はぎてんネット、標本マルチラック、[ 平成21年3月12日検索] 、インターネット<URL :http://www.hagitec.co.jp/hagiten/as/as2/as465.ht>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明はかかる実情に鑑み、従来技術の上記問題点を解消し、小さなスペースに大量のプレパラートを収納できるとともに、地震などの場合でも引き出しが不意に飛び出して落下せず、安全性に優れたプレパラート収納ケースを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1は、一の側方が開口された直方体状の外枠部の中に、上方が開口された直方体状の収容部が挿入された引き出し式のプレパラート収納ケースであって、
前記収容部の底板下面にはストッパー片Aが突設され、該ストッパー片Aは引き出し方向手前側の面が収容部底面に対して略垂直面であるとともに、引き出し方向奥側の面が収容部底面に対して角度が浅い斜面であり、
前記外枠部の底板上面には、前記ストッパー片Aの引き出し方向手前側の略垂直面と衝合可能な略垂直面を有するストッパー片Bが突設されていることを特徴とするプレパラート収納ケースを内容とする。
【0012】
本発明の請求項2は、収容部の引き出し方向手前側の側板に手指を挿入して取っ手として使用する取っ手孔が穿設され、
取っ手孔に挿入する手指の推定挿入長さL2が、ストッパー片Aの手前側の垂直面と外枠部のストッパー片Bの垂直面とが衝合するまでの引出し長さL1よりも長いことを特徴とする請求項1に記載のプレパラート収納ケースを内容とする。
【0013】
本発明の請求項3は、取っ手孔に可撓性部材からなる防塵カバーが覆設されていることを特徴とする請求項2に記載のプレパラート収納ケースを内容とする。
【0014】
本発明の請求項4は、防塵カバーが可撓性部材からなり、中心部から外方向に放射状に3〜8個の切り込みが設けられていることを特徴とする請求項3に記載のプレパラート収納ケースを内容とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によるプレパラート収納ケースは、収容部の底板下面に、引き出し方向手前側の面が収容部底面に対して略垂直面とされたストッパー片Aが突設されるとともに、外枠部の底板上面には前記ストッパー片Aの引き出し方向手前側の略垂直面と衝合可能な略垂直面を有するストッパー片Bが突設されているため、地震のときなどに、収容部に横向きの力が不意に加わったときでも、収納部のストッパー片Aと外枠部のストッパー片Bの各略垂直面が衝合して収容部が外枠部の外に飛び出して落下するのを防止することができる。
また、収容部内のプレパラートを取り出す場合にはストッパー片Aと外枠部のストッパー片Bの各略垂直面が衝合するまで収容部を引っ張り、その後に収容部を少し持ち上げてストッパー片Aがストッパー片Bを乗り越えさせて引っ張ることにより収容部を容易に引き出すことができる。
収容部を外枠部内に収容するときは、単に外枠部の側方の開口に収容部を押し込むことにより、ストッパー片Aの引き出し方向奥側の斜面により収容部が自動的にストッパー片Bの上に押し上げ乗り越えられるので、簡単に収容できる。
【0016】
収容部の引き出し方向手前側の側板に取っ手孔を穿設するとともに、取っ手孔に挿入する手指の推定挿入長さL2を、ストッパー片Aの手前側の垂直面と外枠部のストッパー片Bの垂直面とが衝合するまでの引出し長さL1よりも長くすれば、衝合後にストッパー片Aをストッパー片Bを乗り越えさせるために収容部を持ち上げ際に、挿入された手指の先が外枠部の開口上縁に当たり、収容部内のプレパラートには当たらないので、プレパラートが外枠部の開口上縁に衝突して損傷するのを防止することができる。
【0017】
取っ手孔に防塵カバーを覆設すれば収容部の内部に塵や埃が入り込まないので、プレパラートの汚染を防止できる。また、防塵カバーが可撓性部材からなり、中心部から外方向に放射状に3〜8個の切り込みを設けることにより、該カバーの略中心部に手指を挿入するとカバーが内側方向に押し開かれ、一方、手指を引き抜くと押し開かれたカバーは元の状態に戻る。従って、カバーの開閉操作が不要で作業性が良好である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は本発明のプレパラート収納ケースの実施例を示す斜視図である。
【図2】図2(a)は図1の外枠部のA−A断面図であり、図2(b)は図1の収容部のA−A断面図である。
【図3】図3(a)は図2(a)のB−B断面図であり、図3(b)は図2(b)のC−C断面図である。
【図4】図4(a)は図2(a)の外枠部の底板上面を示す平面図であり、図4(b)は図2(b)の収容部の底板下面を示す底面図である。
【図5】図5(a)(b)は図4(a)(b)とは別の外枠部及び収容部の組み合わせを示す、外枠部の底板上面の平面図及び収容部の底板下面の底面図である。
【図6】図6は取っ手孔に覆設する防塵カバーの一例を示す正面図である。
【図7】図7は防塵カバーの他の例を示す正面図である。
【図8】図8は引き出し方向手前の側板の内面側に防塵カバーを設けた例を示す正面図である。
【図9】図9(a)は図8の部分B−B断面図、図9(b)は(a)における取っ手孔に手指を挿入して防塵カバーを開けた状態を示す説明断面図である。
【図10】図10(a)(b)(c)(d)は本発明のプレパラート収納ケースの使用方法を示す説明図である。
【図11】図11(a)(b)は本発明のプレパラート収納ケースの使用方法において、収容部を持ち上げた場合を示す説明図である。
【図12】図12(a)(b)は本発明のプレパラート収納ケースの使用方法において、収容部を持ち上げた場合を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明のプレパラート収納ケースは、図1乃至図4に示した如く、一の側方が開口された直方体状の外枠部2の中に、上方が開口された直方体状の収容部3が挿入された、引き出し式のプレパラート収納ケース1であって、収容部3の底板下面にはストッパー片A:3aが突設され、該ストッパー片A:3aは引き出し方向手前側の面が収容部底面に対して略垂直面3bであるとともに、引き出し方向奥側の面が収容部底面に対して角度が浅い斜面3cであり、外枠部2の底板上面には上記ストッパー片A:3aの略垂直面3bと衝合可能な略垂直面2bを有するストッパー片B:2aが突設されていることを特徴とする。
【0020】
本発明で使用する外枠部2は、プレパラートを収納した収容部3を収容可能な、直方体状の箱型部材である。この外枠部2は一の側方が開口されており、図1に示すように、その開口から収容部3を引き出し状に出し入れできるようになっている。
また収容部3はプレパラートを収納可能な、直方体状の箱型部材である。この収容部は上方が開口されており、その開口からプレパラートをコンパクトに収納できるようになっている。
なお、プレパラートは一般にかなり小さく、また数が多いので、これらを整理して収納しやすいように、通常は、一個の外枠部2内に数個の細長い収容部3が収容されるとともに、それぞれの収容部3に個別の引き出し方向規制手段が設けられて、正しい方向に収容部3を引き出すことができるようにされている。
図1乃至図4に示した実施例においては、引き出し方向規制手段として、外枠部2の底板上面に設けられた2本のレール2cと、収容部3の底板下面の両縁に設けられたガイドリブ3hが用いられ、これにより収容部3の横滑りを防ぎ、収容部3を確実に前後方向に出し入れできるようにされている。
【0021】
本発明においては、収容部3の下面に設けられたストッパー片A:3a及び外枠部2に設けられたストッパー片B:2aを用いて、地震等により収容部3に横向きの応力が加わった場合でも、収容部3が抜け落ちないようにされている。
上記ストッパー片:3aは、例えば図2に示す通り、収容部3の引き出し方向手前側の面が収容部3の底面に対して略垂直面3bとされるとともに、引き出し方向奥側の面が収容部3の底面に対して角度が浅い斜面3cとされている。
【0022】
上記ストッパー片A:3aおよびストッパー片B:2aの略垂直面2bの位置は、収容部3が外枠部2の奥まで収容されている際に、ストッパー片A:3aの略垂直面3bとストッパー片B:2aの略垂直面2bとが対向しており、この状態から収容部3に引き出し方向手前側への応力が加わったときに、少しだけ移動して略垂直面3bと略垂直面2bとが衝合するように配置されている限り特に限定されないが、外枠部2及び収容部3の引き出し方向手前側に配置するのが収容部3の飛び出しを防止する効果が大きい点で好ましい。
図1乃至図4に示した実施例の場合は、ストッパー片A:3aを収容部3の両縁部で引き出し方向手前側に設けるとともに、ストッパー片B:2aをレール2cを一部断続的に設けて、引き出し方向手前側の短いレールの奥側面を略垂直面2bとして使用した例を示す。
また、図5に示すように、収容部3のストッパー片A:3aをレール2cと重ならない位置に設けるとともに、収容部3を引き出す際のストッパー片A:3aの移動経路を遮るように、外枠部2のストッパー片B:2aを設けてもよい。
なお、ストッパー片A:3aの略垂直面3bとストッパー片B:2aの略垂直面2bとが衝合する際の引き出し長さL1は特に限定されないが、短すぎると収容部3を引き出しにくく、余り長すぎるとプレパラート収納ケース1全体の重心が外れてケース1ごと落下する可能性があるので、プレパラート収納ケース1の大きさにもよるが、通常、5mm〜50mm程度とするのが好ましい(図11参照)。
【0023】
収容部3の引き出し方向手前側の側板3e(以後、前板3eと称することがある)には、収容部3を引き出しやすくするための取っ手を設けるのが好ましい。取っ手の形状は特に限定されないが、前板3aから突設する形状の取っ手の場合は衣服等が取っ手に引っ掛かる可能性があるので、手指を挿入して収容部3の内側に引っ掛けて引っ張ることができるように、取っ手孔3fを穿設する方法が好ましい。
なお、取っ手孔3fに挿入する手指の推定挿入長さL2を、前述のストッパー片A:3aの略垂直面3bとストッパー片B:2aの略垂直面2とが衝合する際の引き出し長さL1よりも長くすると、後述の理由により、収容部3を引き出す際にプレパラートを損傷させず、安全にプレパラートを出し入れすることができるようになる。
例えば、一般に取っ手孔3fを設けた場合、通常、指の第1関節の部分を取っ手孔3fに挿入し収容部3の内側に引っ掛けるようにして収容部3を引き出すが、成人の場合、指の第1関節から指先の長さは15〜30mm程度なので、取っ手孔3fに挿入する手指の推定挿入長さL2は15〜30mmであり、これに合わせて上記した引き出し長さL1を5〜10mm程度にするのが好ましい。
【0024】
取っ手孔3fを設けた場合、その取っ手孔3fから塵や埃が侵入するのを防ぐため、防塵カバー3gを取っ手孔3fに覆設するのが好ましい。
防塵カバーの形状、構造は、取っ手孔3fを覆って、この取っ手孔3fを塞ぐものであれば特に限定されないが、例えば図6に示したように、中心部から外方向に放射状に3〜8に分割されるように切り込みが入れられた可撓性部材製のシートを貼着してなる防塵カバー3gを取っ手孔3fに覆設し、手指を入れると防塵カバー3gが内側に押し開かれ、手指を引き抜くと押し開かれた防塵カバーが元の状態に戻り取っ手孔3fを閉鎖するようにすると、防塵カバーの開閉が自動的にできるので好都合である。また、図7に示したように、取っ手孔3bの上方で枢着された防塵カバー3gを用い、収容部3を引き出す際にこの防塵カバー3gを上方に回動させて取っ手孔3fに手指を挿入するようにしてもよい。
【0025】
図6、図7では前板3eの外面側に防塵カバー3gを設けた例を記載したが、図8、図9に示すように前板3eの内面側に防塵カバー3gを設けてもよい。この例において、防塵カバー3gは外枠部2の開口上縁2d付近から垂下されているとともに、その上端付近で外枠部2に枢着されている。また、この防塵カバー3gはバネ等の弾性機構(図示せず)により外側に付勢されており、収容部3が外枠部2内に収納されている状態で、防塵カバー3gが前板3eの内面側に押圧された状態になり(図9(a)参照)、塵や埃等の侵入が防がれる。
このようなプレパラート収納ケース1において、取っ手孔3fから手指Fで防塵カバー3gを押し込めば、防塵カバー3gは弾性機構の押圧力に逆らって後側に押し上げられ、手指Fを挿入できる(図9(b)参照)。
【0026】
本発明のプレパラート収納ケース1の使用方法を図10乃至図12に基づいて説明する。
本発明のプレパラート収納ケース1において、通常、図10(a)に示したように、収容部3は外枠部2の奥まで挿入収容されている。地震などにより不意に収容部3に横向きの応力が加わった場合、図10(b)に示したように、収容部3は引き出し長さL1の分だけ飛び出るが、そこで収容部3のストッパー片A:3aの略垂直面3bと外枠部2のストッパー片B:2aの略垂直面2bとが衝合するので、それ以上は飛び出すことが阻止される。
収容部に収納されたプレパラートを取り出す場合、図10(c)に示したように、収容部3の手前側を図10(b)の状態から上に持ち上げてストッパー片A:3aの斜面3cがストッパー片B:2aを乗り越えるようにすれば、図10(d)に示したように、収容部3を最後まで引き出すことができる。
【0027】
この場合、図11(a)に示したように引き出し長さL1が長い場合、収容部3を引き出すために収容部3の手前側を持ち上げる際、図11(b)に示したように持ち上げすぎて、収容部3に収容されたプレパラートが外枠部2の開口上縁2dと衝突し、破損する可能性がある。
これを避けるためには、図12(a)に示すように、取っ手孔3fに挿入する手指Fの推定挿入長さL2を引き出し長さL1よりも長くすればよい。この場合、収容部3の前側を持ち上げたときに、図12(b)に示したように、手指Fの先が外枠部2の開口上縁2dに触れるのでそれ以上は持ち上がることがなく、プレパラートと開口上縁2dの衝突を防ぎプレパラートの破損を防止することができる。
【0028】
また、収容部3を外枠部2の中に挿入収容する場合は、収容部3のストッパー片A:3aの斜面3cを外枠部2のストッパー片B:2a上を摺動させ押し込むだけで外枠部2内に収容される。
【産業上の利用可能性】
【0029】
叙上のとおり、本発明のプレパラート収納ケースによれば、地震などにより不意に横向きの応力が加わったとしても、収容部3のストッパー片Aと外枠部2のストッパー片Bとが衝合することにより収容部が外枠部の外に飛び出して落下するのを防ぐことができる。また、収容部に収納したプレパラートを取り出す場合には、収容部を持ち上げながら引っ張ることによりストッパー片Aとストッパー片Bとの衝合が開放され容易に収容部を引き出すことができ、また、同様に、収容部を少し持ち上げストッパー片Aをストッパー片Bを乗り越えさせることにより容易に収容できるので、安全性が高く且つ使いやすいプレパラート収納ケースとして頗る有用である。
【符号の説明】
【0030】
1 プレパラート収納ケース
2 外枠部
2a ストッパー片B
2b 略垂直面
2c レール
2d 開口上縁
3 収容部
3a ストッパー片A
3b 引き出し方向手前側の面(略垂直面)
3c 引き出し方向奥川の面(斜面)
3d ガイドリブ
3e 引き出し方向手前側の側板(前板)
3f 取っ手孔
3g 防塵カバー
3h ガイドリブ
L1 引き出し長さ
L2 手指の推定挿入長さ
F 手指
【技術分野】
【0001】
本発明は、病理組織等の生物標本の薄片が貼り付けられた顕微鏡観察用のプレパラートを収納できるプレパラート収納ケースに係り、特に、地震などにより不意に横向きの応力が加わったとしても、収容部が飛び出して落下するのを防ぐことができ、また収容部内のプレパラートを取り出す場合には容易に収容部を引き出すことができる、安全性が高く且つ使いやすいプレパラート収納ケースに関する。
【背景技術】
【0002】
生物組織、例えば病理組織の検査は、患者の患部より切除した組織を通常、カセットと称される多数の透孔を有する容器内に入れ、ホルマリン液等により薬液処理した後、包埋トレイと称される容器内に薬液処理した組織を入れた後、包埋トレイの上にカセットを載せ、カセットの上方から溶融パラフィンを包埋トレイ内に流下させ、カセット底部の外側に、組織を包埋したパラフィンブロックが付着した所謂包埋ブロックとされる。この包埋ブロックは、ミクロトームと称される装置の上に組織を包埋するパラフィンブロックを上にして固定された後、薄切りし、切り出した組織片をスライドガラスに載せ、染色を施してカバーガラスを被せ、得られたプレパラートは顕微鏡で観察される。
【0003】
上記のようにして作成したプレパラートは、再検査の際などに利用できるように、プレパラートケースに収納して保管される。そして、病理組織を再度、観察したい場合、プレパラートケースから所定のプレパラートを取り出して顕微鏡で観察される。
【0004】
包埋ブロックやスライドガラス(プレパラート)などの試料を整理するための整理ケースとして、多数の包埋ブロックを平面視して縦横に区画して収容する包埋ブロック収納部と、スライドガラスを収容するスライドガラス収納部と、を備え、包埋ブロック収納部による包埋ブロックの配列に、スライドガラス収納部によるスライドガラスの配列を対応させてある整理ケースが提案されている(特許文献1)。
【0005】
しかしながら、上記特許文献1のような整理ケースでは、目的とする包埋ブロックやスライドガラスを取り出しやすいものの、包埋ブロックやスライドガラスを寝かせた状態で収納するため、包埋ブロック一個当り、又は、スライドガラス一枚当りの必要スペースはかなり大きくなってしまう。しかも、使用済み包埋ブロックや使用済みスライドガラスは大量に発生するが、これらの再検査の頻度はそれほど高くないので、使用頻度が低い試料に大きな保存スペースが必要になるという不都合が生じる。
【0006】
一方、引き出しの底部付近に長手方向にコイル状のスプリングを張設し、このスプリングにスライドガラスを挟み込む標本マルチラックが販売されている(非特許文献1)。
このようなラックはスライドガラスを垂直に立てて収納するので、小さなスペースに大量のプレパラートを収納することができる。しかしながら、スライドガラスとスライドガラスとの間にスプリングが介在するためスライドガラスの収納量が減じられ、また、スプリングを1〜2個飛ばしてスライドガラスを収納することがあり、この場合はスライドガラス収納量は更に少なくなる。更に、引き出しの前面には引き出す際に指を引っ掛けるためのフックが下向きに突設されているため、このフックに被服を引っ掛けたりする虞れがあり、また、突設したフックのため、ラックを隙間なく並べてコンパクトに保管することができないという問題がある。
【0007】
更に、上記特許文献1、非特許文献1のいずれのケースも、地震等により横向きの応力が加わった場合には、収納したスライドガラスや包埋ブロックは重量が大きいためこれらを収納した引き出しが勢いよくケース外に飛び出し、落下して貴重な試料を台なしにするばかりでなく、飛び出した引き出しが観察者に当ると大怪我する虞れもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−255896号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】はぎてんネット、標本マルチラック、[ 平成21年3月12日検索] 、インターネット<URL :http://www.hagitec.co.jp/hagiten/as/as2/as465.ht>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明はかかる実情に鑑み、従来技術の上記問題点を解消し、小さなスペースに大量のプレパラートを収納できるとともに、地震などの場合でも引き出しが不意に飛び出して落下せず、安全性に優れたプレパラート収納ケースを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1は、一の側方が開口された直方体状の外枠部の中に、上方が開口された直方体状の収容部が挿入された引き出し式のプレパラート収納ケースであって、
前記収容部の底板下面にはストッパー片Aが突設され、該ストッパー片Aは引き出し方向手前側の面が収容部底面に対して略垂直面であるとともに、引き出し方向奥側の面が収容部底面に対して角度が浅い斜面であり、
前記外枠部の底板上面には、前記ストッパー片Aの引き出し方向手前側の略垂直面と衝合可能な略垂直面を有するストッパー片Bが突設されていることを特徴とするプレパラート収納ケースを内容とする。
【0012】
本発明の請求項2は、収容部の引き出し方向手前側の側板に手指を挿入して取っ手として使用する取っ手孔が穿設され、
取っ手孔に挿入する手指の推定挿入長さL2が、ストッパー片Aの手前側の垂直面と外枠部のストッパー片Bの垂直面とが衝合するまでの引出し長さL1よりも長いことを特徴とする請求項1に記載のプレパラート収納ケースを内容とする。
【0013】
本発明の請求項3は、取っ手孔に可撓性部材からなる防塵カバーが覆設されていることを特徴とする請求項2に記載のプレパラート収納ケースを内容とする。
【0014】
本発明の請求項4は、防塵カバーが可撓性部材からなり、中心部から外方向に放射状に3〜8個の切り込みが設けられていることを特徴とする請求項3に記載のプレパラート収納ケースを内容とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によるプレパラート収納ケースは、収容部の底板下面に、引き出し方向手前側の面が収容部底面に対して略垂直面とされたストッパー片Aが突設されるとともに、外枠部の底板上面には前記ストッパー片Aの引き出し方向手前側の略垂直面と衝合可能な略垂直面を有するストッパー片Bが突設されているため、地震のときなどに、収容部に横向きの力が不意に加わったときでも、収納部のストッパー片Aと外枠部のストッパー片Bの各略垂直面が衝合して収容部が外枠部の外に飛び出して落下するのを防止することができる。
また、収容部内のプレパラートを取り出す場合にはストッパー片Aと外枠部のストッパー片Bの各略垂直面が衝合するまで収容部を引っ張り、その後に収容部を少し持ち上げてストッパー片Aがストッパー片Bを乗り越えさせて引っ張ることにより収容部を容易に引き出すことができる。
収容部を外枠部内に収容するときは、単に外枠部の側方の開口に収容部を押し込むことにより、ストッパー片Aの引き出し方向奥側の斜面により収容部が自動的にストッパー片Bの上に押し上げ乗り越えられるので、簡単に収容できる。
【0016】
収容部の引き出し方向手前側の側板に取っ手孔を穿設するとともに、取っ手孔に挿入する手指の推定挿入長さL2を、ストッパー片Aの手前側の垂直面と外枠部のストッパー片Bの垂直面とが衝合するまでの引出し長さL1よりも長くすれば、衝合後にストッパー片Aをストッパー片Bを乗り越えさせるために収容部を持ち上げ際に、挿入された手指の先が外枠部の開口上縁に当たり、収容部内のプレパラートには当たらないので、プレパラートが外枠部の開口上縁に衝突して損傷するのを防止することができる。
【0017】
取っ手孔に防塵カバーを覆設すれば収容部の内部に塵や埃が入り込まないので、プレパラートの汚染を防止できる。また、防塵カバーが可撓性部材からなり、中心部から外方向に放射状に3〜8個の切り込みを設けることにより、該カバーの略中心部に手指を挿入するとカバーが内側方向に押し開かれ、一方、手指を引き抜くと押し開かれたカバーは元の状態に戻る。従って、カバーの開閉操作が不要で作業性が良好である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は本発明のプレパラート収納ケースの実施例を示す斜視図である。
【図2】図2(a)は図1の外枠部のA−A断面図であり、図2(b)は図1の収容部のA−A断面図である。
【図3】図3(a)は図2(a)のB−B断面図であり、図3(b)は図2(b)のC−C断面図である。
【図4】図4(a)は図2(a)の外枠部の底板上面を示す平面図であり、図4(b)は図2(b)の収容部の底板下面を示す底面図である。
【図5】図5(a)(b)は図4(a)(b)とは別の外枠部及び収容部の組み合わせを示す、外枠部の底板上面の平面図及び収容部の底板下面の底面図である。
【図6】図6は取っ手孔に覆設する防塵カバーの一例を示す正面図である。
【図7】図7は防塵カバーの他の例を示す正面図である。
【図8】図8は引き出し方向手前の側板の内面側に防塵カバーを設けた例を示す正面図である。
【図9】図9(a)は図8の部分B−B断面図、図9(b)は(a)における取っ手孔に手指を挿入して防塵カバーを開けた状態を示す説明断面図である。
【図10】図10(a)(b)(c)(d)は本発明のプレパラート収納ケースの使用方法を示す説明図である。
【図11】図11(a)(b)は本発明のプレパラート収納ケースの使用方法において、収容部を持ち上げた場合を示す説明図である。
【図12】図12(a)(b)は本発明のプレパラート収納ケースの使用方法において、収容部を持ち上げた場合を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明のプレパラート収納ケースは、図1乃至図4に示した如く、一の側方が開口された直方体状の外枠部2の中に、上方が開口された直方体状の収容部3が挿入された、引き出し式のプレパラート収納ケース1であって、収容部3の底板下面にはストッパー片A:3aが突設され、該ストッパー片A:3aは引き出し方向手前側の面が収容部底面に対して略垂直面3bであるとともに、引き出し方向奥側の面が収容部底面に対して角度が浅い斜面3cであり、外枠部2の底板上面には上記ストッパー片A:3aの略垂直面3bと衝合可能な略垂直面2bを有するストッパー片B:2aが突設されていることを特徴とする。
【0020】
本発明で使用する外枠部2は、プレパラートを収納した収容部3を収容可能な、直方体状の箱型部材である。この外枠部2は一の側方が開口されており、図1に示すように、その開口から収容部3を引き出し状に出し入れできるようになっている。
また収容部3はプレパラートを収納可能な、直方体状の箱型部材である。この収容部は上方が開口されており、その開口からプレパラートをコンパクトに収納できるようになっている。
なお、プレパラートは一般にかなり小さく、また数が多いので、これらを整理して収納しやすいように、通常は、一個の外枠部2内に数個の細長い収容部3が収容されるとともに、それぞれの収容部3に個別の引き出し方向規制手段が設けられて、正しい方向に収容部3を引き出すことができるようにされている。
図1乃至図4に示した実施例においては、引き出し方向規制手段として、外枠部2の底板上面に設けられた2本のレール2cと、収容部3の底板下面の両縁に設けられたガイドリブ3hが用いられ、これにより収容部3の横滑りを防ぎ、収容部3を確実に前後方向に出し入れできるようにされている。
【0021】
本発明においては、収容部3の下面に設けられたストッパー片A:3a及び外枠部2に設けられたストッパー片B:2aを用いて、地震等により収容部3に横向きの応力が加わった場合でも、収容部3が抜け落ちないようにされている。
上記ストッパー片:3aは、例えば図2に示す通り、収容部3の引き出し方向手前側の面が収容部3の底面に対して略垂直面3bとされるとともに、引き出し方向奥側の面が収容部3の底面に対して角度が浅い斜面3cとされている。
【0022】
上記ストッパー片A:3aおよびストッパー片B:2aの略垂直面2bの位置は、収容部3が外枠部2の奥まで収容されている際に、ストッパー片A:3aの略垂直面3bとストッパー片B:2aの略垂直面2bとが対向しており、この状態から収容部3に引き出し方向手前側への応力が加わったときに、少しだけ移動して略垂直面3bと略垂直面2bとが衝合するように配置されている限り特に限定されないが、外枠部2及び収容部3の引き出し方向手前側に配置するのが収容部3の飛び出しを防止する効果が大きい点で好ましい。
図1乃至図4に示した実施例の場合は、ストッパー片A:3aを収容部3の両縁部で引き出し方向手前側に設けるとともに、ストッパー片B:2aをレール2cを一部断続的に設けて、引き出し方向手前側の短いレールの奥側面を略垂直面2bとして使用した例を示す。
また、図5に示すように、収容部3のストッパー片A:3aをレール2cと重ならない位置に設けるとともに、収容部3を引き出す際のストッパー片A:3aの移動経路を遮るように、外枠部2のストッパー片B:2aを設けてもよい。
なお、ストッパー片A:3aの略垂直面3bとストッパー片B:2aの略垂直面2bとが衝合する際の引き出し長さL1は特に限定されないが、短すぎると収容部3を引き出しにくく、余り長すぎるとプレパラート収納ケース1全体の重心が外れてケース1ごと落下する可能性があるので、プレパラート収納ケース1の大きさにもよるが、通常、5mm〜50mm程度とするのが好ましい(図11参照)。
【0023】
収容部3の引き出し方向手前側の側板3e(以後、前板3eと称することがある)には、収容部3を引き出しやすくするための取っ手を設けるのが好ましい。取っ手の形状は特に限定されないが、前板3aから突設する形状の取っ手の場合は衣服等が取っ手に引っ掛かる可能性があるので、手指を挿入して収容部3の内側に引っ掛けて引っ張ることができるように、取っ手孔3fを穿設する方法が好ましい。
なお、取っ手孔3fに挿入する手指の推定挿入長さL2を、前述のストッパー片A:3aの略垂直面3bとストッパー片B:2aの略垂直面2とが衝合する際の引き出し長さL1よりも長くすると、後述の理由により、収容部3を引き出す際にプレパラートを損傷させず、安全にプレパラートを出し入れすることができるようになる。
例えば、一般に取っ手孔3fを設けた場合、通常、指の第1関節の部分を取っ手孔3fに挿入し収容部3の内側に引っ掛けるようにして収容部3を引き出すが、成人の場合、指の第1関節から指先の長さは15〜30mm程度なので、取っ手孔3fに挿入する手指の推定挿入長さL2は15〜30mmであり、これに合わせて上記した引き出し長さL1を5〜10mm程度にするのが好ましい。
【0024】
取っ手孔3fを設けた場合、その取っ手孔3fから塵や埃が侵入するのを防ぐため、防塵カバー3gを取っ手孔3fに覆設するのが好ましい。
防塵カバーの形状、構造は、取っ手孔3fを覆って、この取っ手孔3fを塞ぐものであれば特に限定されないが、例えば図6に示したように、中心部から外方向に放射状に3〜8に分割されるように切り込みが入れられた可撓性部材製のシートを貼着してなる防塵カバー3gを取っ手孔3fに覆設し、手指を入れると防塵カバー3gが内側に押し開かれ、手指を引き抜くと押し開かれた防塵カバーが元の状態に戻り取っ手孔3fを閉鎖するようにすると、防塵カバーの開閉が自動的にできるので好都合である。また、図7に示したように、取っ手孔3bの上方で枢着された防塵カバー3gを用い、収容部3を引き出す際にこの防塵カバー3gを上方に回動させて取っ手孔3fに手指を挿入するようにしてもよい。
【0025】
図6、図7では前板3eの外面側に防塵カバー3gを設けた例を記載したが、図8、図9に示すように前板3eの内面側に防塵カバー3gを設けてもよい。この例において、防塵カバー3gは外枠部2の開口上縁2d付近から垂下されているとともに、その上端付近で外枠部2に枢着されている。また、この防塵カバー3gはバネ等の弾性機構(図示せず)により外側に付勢されており、収容部3が外枠部2内に収納されている状態で、防塵カバー3gが前板3eの内面側に押圧された状態になり(図9(a)参照)、塵や埃等の侵入が防がれる。
このようなプレパラート収納ケース1において、取っ手孔3fから手指Fで防塵カバー3gを押し込めば、防塵カバー3gは弾性機構の押圧力に逆らって後側に押し上げられ、手指Fを挿入できる(図9(b)参照)。
【0026】
本発明のプレパラート収納ケース1の使用方法を図10乃至図12に基づいて説明する。
本発明のプレパラート収納ケース1において、通常、図10(a)に示したように、収容部3は外枠部2の奥まで挿入収容されている。地震などにより不意に収容部3に横向きの応力が加わった場合、図10(b)に示したように、収容部3は引き出し長さL1の分だけ飛び出るが、そこで収容部3のストッパー片A:3aの略垂直面3bと外枠部2のストッパー片B:2aの略垂直面2bとが衝合するので、それ以上は飛び出すことが阻止される。
収容部に収納されたプレパラートを取り出す場合、図10(c)に示したように、収容部3の手前側を図10(b)の状態から上に持ち上げてストッパー片A:3aの斜面3cがストッパー片B:2aを乗り越えるようにすれば、図10(d)に示したように、収容部3を最後まで引き出すことができる。
【0027】
この場合、図11(a)に示したように引き出し長さL1が長い場合、収容部3を引き出すために収容部3の手前側を持ち上げる際、図11(b)に示したように持ち上げすぎて、収容部3に収容されたプレパラートが外枠部2の開口上縁2dと衝突し、破損する可能性がある。
これを避けるためには、図12(a)に示すように、取っ手孔3fに挿入する手指Fの推定挿入長さL2を引き出し長さL1よりも長くすればよい。この場合、収容部3の前側を持ち上げたときに、図12(b)に示したように、手指Fの先が外枠部2の開口上縁2dに触れるのでそれ以上は持ち上がることがなく、プレパラートと開口上縁2dの衝突を防ぎプレパラートの破損を防止することができる。
【0028】
また、収容部3を外枠部2の中に挿入収容する場合は、収容部3のストッパー片A:3aの斜面3cを外枠部2のストッパー片B:2a上を摺動させ押し込むだけで外枠部2内に収容される。
【産業上の利用可能性】
【0029】
叙上のとおり、本発明のプレパラート収納ケースによれば、地震などにより不意に横向きの応力が加わったとしても、収容部3のストッパー片Aと外枠部2のストッパー片Bとが衝合することにより収容部が外枠部の外に飛び出して落下するのを防ぐことができる。また、収容部に収納したプレパラートを取り出す場合には、収容部を持ち上げながら引っ張ることによりストッパー片Aとストッパー片Bとの衝合が開放され容易に収容部を引き出すことができ、また、同様に、収容部を少し持ち上げストッパー片Aをストッパー片Bを乗り越えさせることにより容易に収容できるので、安全性が高く且つ使いやすいプレパラート収納ケースとして頗る有用である。
【符号の説明】
【0030】
1 プレパラート収納ケース
2 外枠部
2a ストッパー片B
2b 略垂直面
2c レール
2d 開口上縁
3 収容部
3a ストッパー片A
3b 引き出し方向手前側の面(略垂直面)
3c 引き出し方向奥川の面(斜面)
3d ガイドリブ
3e 引き出し方向手前側の側板(前板)
3f 取っ手孔
3g 防塵カバー
3h ガイドリブ
L1 引き出し長さ
L2 手指の推定挿入長さ
F 手指
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一の側方が開口された直方体状の外枠部の中に、上方が開口された直方体状の収容部が挿入された引き出し式のプレパラート収納ケースであって、
前記収容部の底板下面にはストッパー片Aが突設され、該ストッパー片Aは引き出し方向手前側の面が収容部底面に対して略垂直面であるとともに、引き出し方向奥側の面が収容部底面に対して角度が浅い斜面であり、
前記外枠部の底板上面には、前記ストッパー片Aの引き出し方向手前側の略垂直面と衝合可能な略垂直面を有するストッパー片Bが突設されていることを特徴とするプレパラート収納ケース。
【請求項2】
収容部の引き出し方向手前側の側板に手指を挿入して取っ手として使用する取っ手孔が穿設され、
取っ手孔に挿入する手指の推定挿入長さL2が、ストッパー片Aの手前側の垂直面と外枠部のストッパー片Bの垂直面とが衝合するまでの引出し長さL1よりも長いことを特徴とする請求項1に記載のプレパラート収納ケース。
【請求項3】
取っ手孔に可撓性部材からなる防塵カバーが覆設されていることを特徴とする請求項2に記載のプレパラート収納ケース。
【請求項4】
防塵カバーが可撓性部材からなり、中心部から外方向に放射状に3〜8個の切り込みが設けられていることを特徴とする請求項3に記載のプレパラート収納ケース。
【請求項1】
一の側方が開口された直方体状の外枠部の中に、上方が開口された直方体状の収容部が挿入された引き出し式のプレパラート収納ケースであって、
前記収容部の底板下面にはストッパー片Aが突設され、該ストッパー片Aは引き出し方向手前側の面が収容部底面に対して略垂直面であるとともに、引き出し方向奥側の面が収容部底面に対して角度が浅い斜面であり、
前記外枠部の底板上面には、前記ストッパー片Aの引き出し方向手前側の略垂直面と衝合可能な略垂直面を有するストッパー片Bが突設されていることを特徴とするプレパラート収納ケース。
【請求項2】
収容部の引き出し方向手前側の側板に手指を挿入して取っ手として使用する取っ手孔が穿設され、
取っ手孔に挿入する手指の推定挿入長さL2が、ストッパー片Aの手前側の垂直面と外枠部のストッパー片Bの垂直面とが衝合するまでの引出し長さL1よりも長いことを特徴とする請求項1に記載のプレパラート収納ケース。
【請求項3】
取っ手孔に可撓性部材からなる防塵カバーが覆設されていることを特徴とする請求項2に記載のプレパラート収納ケース。
【請求項4】
防塵カバーが可撓性部材からなり、中心部から外方向に放射状に3〜8個の切り込みが設けられていることを特徴とする請求項3に記載のプレパラート収納ケース。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−249765(P2010−249765A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−101646(P2009−101646)
【出願日】平成21年4月20日(2009.4.20)
【出願人】(591242450)村角工業株式会社 (38)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月20日(2009.4.20)
【出願人】(591242450)村角工業株式会社 (38)
【Fターム(参考)】
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