プレフィルドシリンジ
【課題】穿止時における血液のフラッシュバックの確認作業を容易に行うことができるプレフィルドシリンジを提供する。
【解決手段】外筒2と、外筒2内を移動可能であり、内部に薬液が収納された薬液容器3と、外筒2の先端側に設けられた両頭針13と、外筒2と薬液容器3との間を封止するシール部材8とを備えて、薬液容器3の先端側の外筒2内に、外側から視認可能な血液収容部17を有する。皮下注射持などの穿刺時に、誤って両頭針13を血管に刺した場合には、血管からフラッシュバックした血液は、外筒2内の血液収容部17に排出され、保持される。このため、投与者は、血液収容部17内に流入する血液を視認することで、血管への誤刺を確認することができる。
【解決手段】外筒2と、外筒2内を移動可能であり、内部に薬液が収納された薬液容器3と、外筒2の先端側に設けられた両頭針13と、外筒2と薬液容器3との間を封止するシール部材8とを備えて、薬液容器3の先端側の外筒2内に、外側から視認可能な血液収容部17を有する。皮下注射持などの穿刺時に、誤って両頭針13を血管に刺した場合には、血管からフラッシュバックした血液は、外筒2内の血液収容部17に排出され、保持される。このため、投与者は、血液収容部17内に流入する血液を視認することで、血管への誤刺を確認することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンジ内に予め薬液を収納したプレフィルドシリンジに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、シリンジ内に予め薬液が充填されたプレフィルドシリンジが多く利用されるようになってきた(特許文献1)。このようなプレフィルドシリンジでは、薬液投与時にバイアル瓶からシリンジ内に薬剤を吸引する必要がなく、投与に要する時間を短縮できる他、薬剤の無駄を減らすことができる。
【0003】
ところで、皮下注射時には、注射針を皮膚に穿刺した際、誤って針先が血管内に入ってしまうことがある。よって、皮下注射を行う場合には、皮膚に注射針を穿刺した後、シリンジの押し子(プランジャ)を少し引いて、シリンジのチップ内に血液の逆流、いわゆるフラッシュバックがないことを確認する作業が行われる。そして、血液の逆流がないことを確認した後に皮下への薬液の投与が行われる。
【0004】
しかしながら、例えば自己注射時に誤って針先が血管内に入ってしまう場合がある。このため、誤って針先が血管内に入ってしまったことを容易に確認できる機構が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−321826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の点に鑑み、本発明は、穿止時における血液のフラッシュバックの確認作業を容易に行うことができるプレフィルドシリンジを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決し、本発明の目的を達成するため、本発明のプレフィルドシリンジは、外筒と、薬液容器と、シール部材と、押圧部と、両頭針と、針支持部と、血液収容部とを備える。
外筒は、基端と先端を有して構成されている。
薬液容器は、基端と先端とを有し、外筒の内径よりも小さい外径を有する容器とされ、先端に先端開口部を有して構成されている。そして、先端開口部が封止体で封止されることで、容器内部に薬液が密封され、かつ、外筒の内部を軸方向に移動可能とされている。
シール部材は、外筒の内周面と薬液容器の外周面との間を封止するものである。
押圧部は、薬液容器を移動操作するものである。
両頭針は、一端に生体を穿刺可能な針先を有し、他端に封止体に刺通可能な針先を有して構成されている。
針支持部は、両頭針を支持するものであり、外筒の先端側に設けられている。
血液収容部は、外筒の内部に設けられ、両頭針と連通している空間からなり、両頭針を通って外筒側に流入する血液を収容することができ、外筒の外側から視認可能とされている。
【0008】
本発明のプレフィルドシリンジでは、外筒内部に血液収容部を有し、両頭針を通って外筒側に流入する血液を保持することができる。これにより、両頭針の針先が、誤って血管に刺通した場合には、血液が自動的に両頭針内を逆流し、血液収容部に保持される。そして、この血液収容部内の血液の存在を投与者が外筒の外側から視認することで、血液のフラッシュバックの確認をすることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明のプレフィルドシリンジによれば、穿刺時の血液のフラッシュバックの確認作業において、押圧部を引く作業を必要ないため、投与者の操作上の負担が軽減される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るプレフィルドシリンジの概略断面構成図であり、保護部材を装着した状態を示す図である。
【図2】図1に示すプレフィルドシリンジから保護部材を取り外して使用し、薬液投与を完了した状態を示す概略断面構成図である。
【図3】本発明の第1の実施形態のプレフィルドシリンジの使用時における概略断面構成図である。
【図4】本発明の第1の実施形態のプレフィルドシリンジの使用時における概略断面構成図である。
【図5】本発明の第1の実施形態のプレフィルドシリンジの使用時における概略断面構成図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係るプレフィルドシリンジの未使用の状態を示す概略断面構成図である。
【図7】A,B 本発明の第2の実施形態に係るプレフィルドシリンジの使用時における要部の概略断面構成図である。
【図8】本発明の第2の実施形態に係るプレフィルドシリンジの使用時における概略断面構成図である。
【図9】本発明の第3の実施形態に係るプレフィルドシリンジの未使用の状態を示す概略断面構成図である。
【図10】本発明の第3の実施形態に係るプレフィルドシリンジの要部の概略斜視図である。
【図11】A,B 本発明の第3の実施形態に係るプレフィルドシリンジの使用時における要部の概略断面構成図である。
【図12】本発明の第3の実施形態に係るプレフィルドシリンジの使用時における概略断面構成図である。
【図13】本発明の第3の実施形態に係るプレフィルドシリンジの使用時における概略断面構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施形態に係るプレフィルドシリンジの一例を、図1〜図13を参照しながら説明する。本発明の実施形態は以下の順で説明する。なお、本発明は以下の例に限定されるものではない。
1.第1の実施形態:プレフィルドシリンジ
1−1 構成
1−2 使用方法
2.第2の実施形態:プレフィルドシリンジ
2−1 構成
2−2 使用方法
3.第3の実施形態:プレフィルドシリンジ
3−1 構成
3−2 使用方法
【0012】
〈1.第1の実施形態:プレフィルドシリンジ〉
[1−1 構成]
図1は、本発明の第1の実施形態に係るプレフィルドシリンジ1の未使用状態(初期状態)における概略断面構成図であり、保護部材16を装着した状態を示す図である。図2は、図1に示すプレフィルドシリンジ1から保護部材16を取り外して使用し、薬液投与を完了した状態を示す概略断面構成図である。
【0013】
図1に示すように、本実施形態例のプレフィルドシリンジ1は、外筒2と、薬液容器3と、薬液容器3を移動操作する押圧部5と、針孔を有する中空の両頭針13と、両頭針13を支持する針支持部12とを有して構成されている。また、外筒2と薬液容器3との間を封止するシール部材8と、未使用の状態において無菌状態を保持するための保護部材(キャップ)16を有して構成されている。
【0014】
外筒2は、基端と先端を有する筒状とされ、本実施形態例では円筒状の部材で構成されている。なお、以下の説明では、外筒2の一端側を「基端」、他端側を「先端」として説明を行い、その他の構成についても、外筒2の基端に相当する一端側を基端、外筒2の先端側に相当する他端側を先端として説明する。
【0015】
外筒2の基端側の外周面には、外周面に対して垂直方向に突出して設けられたフランジ26が形成されている。フランジ26は、外筒2と一体に形成されており、その外周が円状又は楕円状を成すように形成されている。押圧部5を外筒2に対し相対的に移動操作する際などには、このフランジ26に指を掛けて操作を行うことができる。
【0016】
外筒2の構成材料としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、ポリカーボネート、アクリル樹脂、アクリルニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリアミド(例えば、ナイロン6、ナイロン6・6、ナイロン6・10、ナイロン12)のような各種樹脂が挙げられる。その中でも、成形が容易であるという点で、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン、ポリエステル、ポリ−(4−メチルペンテン−1)のような樹脂を用いることが好ましい。なお、外筒は、内部の視認性を確保するために、実質的に透明な材料で構成する。
【0017】
薬液容器3は、基端と先端を有する円筒状とされ、内部には、薬液容器3を先端側と基端側に分離する底部4を有しており、先端側には先端開口部18を有している。すなわち、本実施形態例の薬液容器3は、内部に底部4を有する有底円筒形状の部材で構成されている。薬液容器3の外径は外筒2の内径よりも小さく構成されており、未使用の状態においては外筒2の基端側に保持されている。そして、使用時においては、薬液容器3が外筒2内部を外筒2の中心軸に沿って移動可能に構成されている。
【0018】
また、薬液容器3の、底部4よりも先端側の先端開口部18には、先端開口部18を封止すると共に、薬液容器3の内周面に沿って底部4側に摺動可能に取り付けられた封止体(以下、ガスケット)7が構成されている。また、ガスケット7は、後述する両頭針13の基端側の針先14が刺通できるように構成されている。
【0019】
そして、薬液容器3内部の底部4とガスケット7に囲まれる空間6には、予め薬液が液密(気密)に収納されている。薬液容器3内部の薬液が収納される空間6は、ガスケット7により気密的に封止された密閉空間とされているため、未使用状態において無菌状態が保持される。
【0020】
薬液容器3の構成材料としては、例えば、上述した外筒2の構成材料と同様のものを用いることができる。なお、薬液容器3の構成材料は、内部の視認性を確保できるために、実質的に透明であることが好ましい。また、薬液容器3の外周面には、図示しない目盛りが形成されている。これにより、薬液容器3内部に収納されている薬液の量を把握することができる。
【0021】
ガスケット7の構成材料としては、薬液容器3との液密性を良好にするために弾性材料を用いることが好ましく、例えば、天然ゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、イソブチレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、シリコーンゴムのような各種ゴム材料や、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、オレフィン系、スチレン系等の各種熱可塑性エラストマー、あるいはそれらの混合物等の弾性材料を用いることができる。
【0022】
なお、ガスケット7は、少なくともその外周部が前述のように弾性材料で構成されていればよく、例えば、樹脂材料で構成された芯部(図示せず)を有し、この芯部の外周を覆うように上述した弾性材料が配置された構成のものでもよい。
【0023】
薬液容器3の空間6に収納される薬液としては、本実施形態例では、例えばインフルエンザ等の各種の感染症を予防する各種のワクチンが挙げられるが、ワクチンに限定されるものではない。なお、ワクチン以外では、例えば、ブドウ糖等の糖質注射液、塩化ナトリウムや乳酸カリウム等の電解質補正用注射液、ビタミン剤、抗生物質注射液、造影剤、ステロイド剤、蛋白質分解酵素阻害剤、脂肪乳剤、抗癌剤、麻酔薬、覚せい剤、麻薬、ヘパリンカルシウム、抗体医薬等が挙げられる。
【0024】
また、空間に収納される薬液の量(空間6の体積)は、例えば、0.02〜2.0mL程度が好ましく、0.05〜0.8mL程度がより好ましい。すなわち、プレフィルドシリンジ1は、特に、このような少量の薬液を投与する場合に好適なものである。
【0025】
シール部材8は、外筒2と薬液容器3との間を封止すると共に、薬液容器3を外筒2の基端側に保持するために設けられるものであり、薬液容器3の先端の外周面に全周にわたって固定されている。シール部材8の構成材料としては、ガスケット7の構成材料と同様のものを用いることができ、本実施形態例では、オーリング状の弾性部材で構成されている。また、シール部材8は、二色成形で設けることもできる。
【0026】
外筒2の内周面にシール部材8の外筒2側の端部が密着することにより外筒2の内周面と薬液容器3の外周面との間の間隙が完全に封止される。そして、未使用の状態において、薬液容器3は、シール部材8によって外筒2の基端側に固定保持されている。
【0027】
このように、シール部材8が、外筒2と薬液容器3との間に設けられることにより、薬液容器3の先端が外筒2の基端側に安定して保持され、また、外筒2の内周面と、薬液容器3で囲まれる領域が気密的に封止されている。
【0028】
押圧部5は、円盤状に形成され、薬液容器3の基端面に設けられている。押圧部5の構成材料としては、例えば、上述した外筒2の構成材料と同じものを用いることができる。この押圧部5は、薬液容器3と一体に形成してもよく、別々に形成した後、融着又は接着により両者を貼り合わせる構成としてもよい。
本実施形態例では、押圧部5を押すことにより、薬液容器3を外筒2内において摺動移動させることができる。
【0029】
両頭針13は、先端側に生体を穿刺可能な鋭利な針先15を有し、基端側に薬液容器3のガスケット7に刺通可能な鋭利な針先14を有している。そして、両頭針13の基端側の針先14がガスケット7を刺通することにより、その両頭針13の基端側が薬液容器3の薬液が収納された空間6内部に連通するように構成されている。
【0030】
両頭針13としては、ISOの医療用針管の基準(ISO9626:1991/Amd.1:2001(E))で22〜33Gのサイズ(外径:0.2〜0.7mm)のものを使用することができる。
【0031】
両頭針13の先端側および基端側の針先14、15にはそれぞれ刃面を有する刃先が形成されている。
また、皮膚の表面から生体に穿刺される両頭針13の深さ(穿刺深さ)は、両頭針13の、後述する針支持部12の先端面から突出している部位の長さ(以下、「突出長」と言う)Lにより決定される。
【0032】
両頭針13の構成材料としては、例えば、ステンレス鋼、アルミニウムまたはアルミニウム合金、チタンまたはチタン合金、Ni−Ti合金等の超弾性合金等の各種金属材料、ポリフェニレンサルファイド等の各種硬質樹脂材料等が挙げられる。
【0033】
針支持部12は、外筒2の先端面を被覆する大きさの円盤状に形成された基部10と、基部10の基端面側に設けられた円柱状の固定部11で構成されており、外筒2の先端に固定されている。固定部11の外径は、薬液容器3の内径よりも小さく構成されており、外筒2の軸方向に沿って形成されている。薬液容器3を先端側に移動操作することにより、固定部11がガスケット7に当接した場合には、ガスケット7の外筒2に対する位置は固定部11によって固定され移動しない。これにより、薬液容器3をさらに先端側に移動させた場合には、ガスケット7は相対的に薬液容器3内を底部4に向かって摺動移動する。
【0034】
針支持部12の構成材料としては、外筒2と同様の材料を用いることができる。また、外筒2と針支持部12は、別部材で構成して貼り合わせてもよいが、一体に形成してもよい。
【0035】
針支持部12は、両頭針13を先端側の針先15が基部10の先端面よりも先端側に位置し、基端側の針先14が固定部11の基端面よりも基端側に位置し、薬液容器3のガスケット7に連通し得るように固定する。すなわち、本実施形態例では、両頭針13は、針支持部12の基部10中心を刺通すると共に、円柱状の固定部11中心を刺通して固定されており、未使用の状態においては、両頭針13の基端側の針先14は、薬液容器3のガスケット7に刺通しない位置とされている。
【0036】
そして、本実施形態例のプレフィルドシリンジ1では、上述した外筒2、薬液容器3、シール部材8、針支持部12で囲まれる外筒2の内側の空間が、血液収容部17とされる。本実施形態例では、外筒2が透明材料で形成されるため、外筒2内部に構成される血液収容部17は、外筒2の外側から視認可能とされている。そして、血液収容部17が構成されることで、穿刺時に、両頭針13の基端側の針先14から血液が逆流(フラッシュバック)した場合には、基端側の針先14から流出した血液が、外筒2の内側の空間で構成される血液収容部17に保持される。
【0037】
血液収容部17は、薬液容器3が外筒2内を先端側に移動した場合には、その容量が縮小されていく。血液収容部17内にフラッシュバックした血液が流入した状態のときは、薬液容器3が外筒2内を先端側に移動すると共に、血液収容部17内の血液も薬液容器3によって外筒2の先端側にかき寄せられる。したがって、薬液容器3が外筒2の先端側に最後まで移動し薬液投与が完了した後においても、外筒2の先端側にその血液を収容できるだけの容量が確保できるように構成されることが好ましい。そのため、図2に示すように、ガスケット7が薬液容器3の底部4に当接するまで薬液容器3が外筒2の先端側に移動したときにも、薬液容器3の先端と基部10の基端面との間に血液を収容できる収容部19ができるように薬液容器3及び固定部11等の寸法設計を行う。
【0038】
また、針支持部12の基部10、及び外筒2の所定の領域には、血液収容部17から外側に貫通する通気孔9が形成されている。通気孔9により、外筒2と針支持部12とシール部材8とで囲まれる血液収容部17が、針支持部12の基端側の空間や、外筒2の外周面側の空間(すなわち、外側)と連通する。
【0039】
通気孔9が形成されることで、外筒2の内側の空間で構成される血液収容部17の圧力が、外側の圧力と同等に保持されるため、血液が血液収容部17内にフラッシュバックした場合にも、血液収容部17内の圧力上昇を緩和することができる。これにより、両頭針13の先端側の針先15が血管に穿刺された場合に、血液が血液収容部17内にフラッシュバックし易くなるため、フラッシュバックの確認が容易になる。
【0040】
通気孔9は、図1では、針支持部12の基部10と外筒2に一個所ずつ構成する例としたが、1つ以上であれば、血液収容部17の圧力上昇緩和の効果を得ることができる。通気孔9を形成する位置は、フラッシュバックした血液が通気孔9を通って外側に流れ出ない位置とするのがより好ましい。また、皮下注射時は、刃面を上にして生体に穿刺することが多い為、基部10に通気孔9を形成するのが望ましい。
【0041】
腹部や太股に垂直穿刺する場合は薬液容器3の方向が決まらないため、通気孔9の位置で、血液が外側に漏れることを防止することは困難である。この場合には、通気孔9に通気フィルター(図示せず)を設けることが望ましい。または、通気孔9の孔径をフラッシュバックした血液が表面張力により外側に漏れない程度の大きさに設定してもよい。例えばポリプロピレン等の疎水性の材料を用いた通気孔の孔径を0.1mm以上0.2mm以下にすれば、フラッシュバックした血液が外側に漏れることがなく、また、血液収容部17の圧力上昇緩和の効果を得ることができる。
【0042】
さらに、外筒2に形成される通気孔9は、図2に示すように、ガスケット7が薬液容器3の底部4に当接するまで薬液容器3が外筒2の先端側に移動したときに、薬液容器3の外周部に固定されたシール部材8よりも基端側の位置になるように形成されることが好ましい。これにより、薬液投与が完了した後、収容部19に収容された血液が、外筒2に形成された通気孔9から外側に漏れることを防止することができる。
【0043】
そして、本実施形態例のプレフィルドシリンジ1では、未使用の状態において、外筒2の先端側に保護部材16が離脱可能に取り付けられている。
保護部材16は、先端側に底部を有する有底の筒状、本実施形態例では、有底の円筒状に形成されており、先端側に縮径した構成とされている。そして、保護部材16を外筒2の先端部側に装着することで、両頭針13の生体に穿刺される側の針先15を囲む空間を封止すると共に外筒2に設けられた通気孔9を封止する。
【0044】
これにより、未使用時において、保護部材16が外周部に装着されている状態では、外筒2の内部の空間で構成される血液収容部17が気密的に封止され、血液収容部17及び保護部材16内部が密閉される。これにより、血液収容部17及び保護部材16内部の無菌状態が維持されるので、両頭針13の基端及び先端の針先14、15の無菌も維持される。
【0045】
プレフィルドシリンジ1を使用する際は、保護部材16は外筒2から取り外され、両頭針13の生体に穿刺される側の針先15の封止が解除される。また、このとき、通気孔9により、血液収容部17も外部に解放される。
【0046】
保護部材16の構成材料としては、例えば、上述した外筒2の構成材料や、ガスケット7の構成材料と同様のものを用いることができる。
【0047】
なお、このプレフィルドシリンジ1では、必要な各部が滅菌された後、外筒の先端側に保護部材16が装着され、前述したように、外筒2の内部、及び保護部材16の内部の無菌状態が維持され、さらに両頭針13の無菌状態が維持される。
【0048】
[1−2 使用方法]
次に、本実施形態例のプレフィルドシリンジ1の使用方法の一例について説明する。図3〜図5に、本実施形態例のプレフィルドシリンジ1の使用時における概略断面構成図を、生体の図示と共に示す。以下では、両頭針13を生体に対して垂直に刺入する垂直穿刺の場合を例に説明する。
【0049】
プレフィルドシリンジ1を使用する際は、まず、用意したプレフィルドシリンジ1の針支持部12先端側から保護部材16を取り外す。これにより、薬液を投与する準備が完了する。このように、このプレフィルドシリンジ1では、容易かつ迅速に、薬液の投与の準備を行うことができる。
【0050】
次に、両頭針13の先端側の針先15を腕などの薬液を投与する皮下21に垂直に刺入する。そして、図3に示すように、誤って、穿刺対象となる皮下21の下層の血管22に針先が穿刺された場合、血管中の血液20が両頭針13内を逆流し、基端の針先14から血液収容部17内に排出される。両頭針13を逆流して流れ込んだ血液20の存在を血液収容部17内に投与者が視認することで、血管22への誤刺を確認することができる。
【0051】
このとき、通気孔9が設けられることにより、血液収容部17内は外筒2の外部の圧力、すなわち、大気に解放されているので、低い静脈圧で流れる血液でも両頭針13内を通って血液収容部17に流入され易く、フラッシュバックの確認が可能となる。また、通気孔9が設けられることにより、血液収容部17内に血液20が流入したときも、血液収容部17内の圧力上昇を緩和することができ、フラッシュバックする血液20の流れの速度を低下させることがない。このため、フラッシュバックの確認を迅速に行うことができる。
【0052】
このように、皮下注射時に血管22への誤刺が確認された場合には、図4に示すように、外筒2を引くことで、血管22から両頭針13の針先15を抜き、その針先15を皮下21の正しい位置に留める。血管22から両頭針13の針先15が抜けた時点で、両頭針13を逆流して血液収容部17内に流れ込む血液20の量が無くなるので、皮下21の正しい位置に針先15が刺入していることを確認することができる。
【0053】
そして、皮下21の正しい位置に針先15が穿刺されたことを確認した後は、外筒2を固定して針先15の穿刺深さを維持しながら、押圧部5を先端側に押圧する。この場合、薬液容器3は、シール部材8を介し、外筒2の内面に沿って円滑に摺動する。そして、外筒2内を中心軸に沿って先端側に移動した薬液容器3のガスケット7に両頭針13の基端側の針先14が刺通し、薬液容器3の内部に連通する。これにより、両頭針13への通液が完了する。
【0054】
通液完了後、さらに押圧部5を先端方向に押圧すると、ガスケット7の外筒2に対する位置は固定部11により固定されるので、ガスケット7は相対的に薬液容器3内部で底部4側に摺動する。そして、薬液容器3が先端側に移動すると共に、ガスケット7が薬液容器3内を底部4側に摺動するため、空間6に収納された薬液が両頭針13内を通り先端側の針先15から排出され、目的の部位への薬液投与がなされる。そして、図5に示すように、ガスケット7が薬液容器3の底部4に到達することで、薬液の投与が完了する。
【0055】
このとき、薬液容器3が先端側に移動することにより、外筒2の内側に構成された血液収容部17の容量が縮小されていく。そして、図5に示すように、薬液投与が完了した状態では、血液20は、薬液容器3の先端面とシール部材8と針支持部12の基部10の基端面との間の収容部19に保持される。このとき、シール部材8は、外筒2に形成された通気孔9よりも先端側にくるため、血液収容部17に流入し、収容部19に収容された血液が、外筒2に形成された通気孔9を介して外部に流出することがない。
【0056】
本実施形態例のプレフィルドシリンジ1によれば、穿刺時に、誤って血管に針先を穿刺してしまった場合、血液が自動的に両頭針13内を逆流して血液収容部17内に流れ込み、血液収容部17内に流れ込んだ血液を視認することができる。そして、フラッシュバックした血液を保持する血液収容部17を有することにより、フラッシュバックした血液を確認することができ、フラッシュバックの確認作業を容易に行うことができる。このため、従来のように、穿刺した後に、押圧部を少し引くことによってフラッシュバックの確認を行う必要がなく、投与者の負担を軽減することが可能となる。
【0057】
本実施形態例のプレフィルドシリンジ1では、図5に示すように、薬液投与が完了し、薬液容器3が外筒2の先端側に移動した場合にも、薬液容器3の先端面と針支持部12の基部10の基端面との間に血液が収容できる収容部19が確保できるように設計する例とした。薬液投与後の血液の収容部19の確保はこの構成に限られるものではなく、例えば、基部10の基端面に溝部を形成することで、薬液投与が完了した時点でも、外筒2の先端側に血液を収容できる収容部を確保する構成としてもよい。
【0058】
また、上述の使用方法では、両頭針13の針先15が誤って血管に穿刺された場合について述べたが、皮下21の正しい位置に両頭針13の針先15が穿刺された場合には、血液収容部17内に血液20はフラッシュバックしない。このため、血液収容部17内に血液20の不存在を確認することで、投与者は針先15が皮下21に穿刺されたことを確認することができ、その後、上述の方法と同様にして薬液の投与を行うことができる。
【0059】
このように、本実施形態例のプレフィルドシリンジ1では、両頭針13の針先15を生体に穿刺後、血液収容部17内の血液の存在又は不存在を外筒2の外側から視認することのみで、穿刺位置を把握することができる。
【0060】
〈2.第2の実施形態:プレフィルドシリンジ〉
次に、本発明の第2の実施形態に係るプレフィルドシリンジについて説明する。本実施形態例は、第1の実施形態とは、血液収容部の構成が異なる例である。
【0061】
[2−1 構成]
図6は、本実施形態例のプレフィルドシリンジ28の未使用の状態を示す概略断面構成図である。図9において、図1に対応する部分には同一符号を付し、重複説明を省略する。
【0062】
本実施形態例のプレフィルドシリンジ28では、針支持部24は、外筒2の先端面を被覆する大きさの円盤状に形成された基部10と、基部10の基端面側に設けられた円柱状のチャンバー23で構成されており、外筒2の先端に固定されている。チャンバー23は、薬液容器3の内径よりも小さい外径を有し、外筒2の軸方向に沿って形成されており、内部に血液収容部25となる空間を有している。さらに、チャンバー23には、血液収容部25と、外筒内空間とを連通する通気孔23aが設けられている。このチャンバー23は、薬液容器3を先端側に移動操作したときに、チャンバー23の基端面がガスケット7に当接し、ガスケット7の外筒に対する位置を固定する固定部としても用いられる。
【0063】
両頭針35は、その中腹に、チャンバー23内の血液収容部25と針孔とを連通する連通孔35aを有している。連通孔35aは、血液が流出する大きさに形成されている。
【0064】
針支持部24を構成する基部10及びチャンバー23の構成材料は、外筒2と同様の材料を用いることができ、特に、チャンバー23は、チャンバー23内の血液収容部25の状態を外側から視認できるように透明な材料で形成する。また、外筒2と針支持部24は、別部材で構成して貼り合わせてもよいが、一体に形成してもよい。
【0065】
そして、本実施形態例では、外筒2及びチャンバー23が透明な材料で形成されるため、チャンバー23内部に構成される血液収容部25が、外筒2の外側から視認可能とされている。
【0066】
[2−2 使用方法]
次に、本実施形態例のプレフィルドシリンジ28の使用方法の一例について説明する。図7A,Bに、本実施形態例のプレフィルドシリンジ28の使用時における要部の概略断面構成図を、生体の図示と共に示し、図8に、プレフィルドシリンジ28の使用時における概略断面構成図を示す。以下では、両頭針35を生体に対して垂直に刺入する垂直穿刺の場合を例に説明する。
【0067】
プレフィルドシリンジ28を使用する際は、まず、用意したプレフィルドシリンジ28の針支持部24先端側から保護部材16を取り外す。これにより、薬液を投与する準備が完了する。このように、このプレフィルドシリンジ28では、容易かつ迅速に、薬液の投与の準備を行うことができる。
【0068】
次に、図7Aに示すように、両頭針35の先端側の針先15を腕などの薬液を投与する皮下21に垂直に刺入する。そして、図7Bに示すように、誤って、穿刺対象となる皮膚の下層の血管22に針先が穿刺された場合、血管中の血液20が両頭針35内を逆流し、両頭針35の連通孔35aから血液収容部25に排出される。両頭針35を逆流して血液収容部25に血液20が流れ込むことを投与者が視認することで、血管22への誤刺を確認することができる。
【0069】
ここで、通気孔23a及び通気孔9が設けられていることにより、血液収容部25内部は、外筒2内空間を介して外筒2の外側と連通しているため、血液収容部25の圧力は外筒2の外部と同等とされる。このため、低い静脈圧でも、血液は両頭針35内を通り、連通孔から血液収容部25に流入され、低い静脈圧における血液のフラッシュバックの確認が可能となる。また、通気孔23a及び通気孔9が設けられることにより、血液収容部25内に血液20が流入したときも、血液収容部25内の圧力上昇を緩和することができ、フラッシュバックする血液20の流れの速度が低下することを防ぐことができる。このため、フラッシュバックの確認を迅速に行うことができる。
【0070】
また、本実施形態例では、チャンバー23内の小さい空間で血液収容部25を構成することにより、血液20がフラッシュバックした場合に、すぐに血液収容部25内が血液で満たされる。このため、微量の血液がフラッシュバックした場合にも外側からの視認が容易となる。また、血液収容部25の容量を超えて血液20がフラッシュバックした場合には、血液20は、両頭針35を通って外筒2と針支持部24と薬液容器3との間の空間に排出される。
【0071】
このように、本実施形態例のプレフィルドシリンジ28では、チャンバー23内の小さい空間で血液収容部25を構成することにより、フラッシュバックした血液の視認性を高めることができる。
【0072】
その後は、第1の実施形態と同様にして、薬液の投与を行う。
本実施形態例のプレフィルドシリンジ28においても、チャンバー23内の血液収容部25の容量を超えてフラッシュバックした血液20は、外筒2と針支持部24と薬液容器3との間の空間に排出される。このため、本実施形態例のプレフィルドシリンジ28においても、図8に示すように、薬液投与が完了した時点で、薬液容器3の先端面と針支持部24の基部10の基端面との間に血液が収容される収容部19ができるように設計されることが好ましい。
【0073】
本実施形態例のプレフィルドシリンジ28では、小さいチャンバー23内に血液収容部25を構成することにより、微量の血液のフラッシュバックの確認が容易になり、投与者の取り扱い時の負担をより軽減することができる。
【0074】
その他、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0075】
〈3.第3の実施形態:プレフィルドシリンジ〉
次に、本発明の第3の実施形態に係るプレフィルドシリンジについて説明する。本実施形態例は、第1の実施形態とは、血液収容部の構成が異なる例である。
【0076】
[3−1 構成]
図9は、本実施形態例のプレフィルドシリンジ30の未使用の状態を示す概略断面構成図である。また、図10は、本実施形態例のプレフィルドシリンジ30の要部の概略斜視図である。図9及び図10において、図1に対応する部分には同一符号を付し、重複説明を省略する。
【0077】
本実施形態例のプレフィルドシリンジ30では、針支持部33は外筒2の先端面を被覆する大きさの円盤状に形成された基部10と、基部10の基端面側に柱状に設けられた複数(図10では3つ)の支持部32で構成されており、外筒2の先端に固定されている。支持部32は、基部10の基端面上の薬液容器3の内径よりも小さい径内に立設されており、外筒2の軸方向に沿って形成されている。また、支持部32は、薬液容器3を先端側に移動操作したときに、支持部32の基端面がガスケット7に当接することによりガスケット7の外筒2に対する位置を固定するように構成されている。
【0078】
針支持部33を構成する材料は、外筒と同様の材料を用いることができる。また、外筒2と針支持部33は、別部材で構成して貼り合わせてもよいが、一体に形成してもよい。
【0079】
そして、この複数の支持部32の基端側には、血液収容部31を構成するチャンバー34が支持されている。
【0080】
チャンバー34は、図10に示すように、基端と先端とを有し、先端側に底部を有する有底円筒形状の部材で構成されており、支持部32の基端側に挟持されている。未使用の状態では、ガスケット7は、チャンバー34の基端側に接しない位置となるように構成されている。また、使用時には、チャンバー34は、チャンバー34の基端面にガスケット7が当接して先端側に押圧されることにより、複数の支持部32で囲まれた支持部32間を先端方向に移動可能に構成されている。そして、本実施形態例では、チャンバー34の内周面と底部に囲まれるチャンバー34内の空間で血液収容部31が構成されている。
【0081】
また、未使用の状態では、図9に示すように、両頭針13の基端側の針先14が、チャンバー34の底部を刺通して血液収容部31内に位置するように構成されている。
【0082】
チャンバー34を構成する材料は、外筒2と同様の材料を用いることができる。また、チャンバー34は、チャンバー34内の血液収容部31の状態を外側から視認できるように透明な材料で形成する。
【0083】
そして、本実施形態例では、外筒2及びチャンバー34が透明材料で形成されるため、チャンバー34内部に構成される血液収容部31が、外筒2の外側から視認可能とされている。
【0084】
[3−2 使用方法]
次に、本実施形態例のプレフィルドシリンジ30の使用方法の一例について説明する。図11A,Bに、本実施形態例のプレフィルドシリンジ30の使用時における要部の概略断面構成図を、生体の図示と共に示す。また、図12及び図13には、本実施形態例のプレフィルドシリンジ30の使用時における概略断面構成図を、生体の図示と共に示す。以下では、両頭針13を生体に対して垂直に刺入する垂直穿刺の場合を例に説明する。
【0085】
プレフィルドシリンジ30を使用する際は、まず、用意したプレフィルドシリンジ30の針支持部33先端側から保護部材16を取り外す。これにより、薬液を投与する準備が完了する。このように、このプレフィルドシリンジ30では、容易かつ迅速に、薬液の投与の準備を行うことができる。
【0086】
次に、図11Aに示すように、両頭針13の先端側の針先15を腕などの薬液を投与する皮下21に垂直に刺入する。そして、図11Bに示すように、誤って、穿刺対象となる皮膚の下層の血管22に針先が穿刺された場合、血管中の血液20が両頭針13内を逆流し、両頭針13の基端側の針先14から血液収容部31に排出される。両頭針13を逆流して血液収容部31に流れ込んだ血液20を投与者が視認することで、血管22への誤刺を確認することができる。
【0087】
ここで、通気孔9が設けられており、チャンバー34の基端側は開口されているので、血液収容部31は外筒2内空間を介して外筒2の外側と連通している。これにより、血液収容部31の圧力も外筒2の外部と同等とされる。このため、低い静脈圧でも、血液が血液収容部31に流入され、フラッシュバックの確認が可能となる。また、通気孔9が設けられることにより、血液収容部31内に血液20が流入したときも、血液収容部31内の圧力上昇を緩和することができ、フラッシュバックする血液20の流れの速度が低下することを防ぐことができる。このため、フラッシュバックの確認を迅速に行うことができる。
【0088】
また、本実施形態例では、チャンバー34内の小さい空間で血液収容部31を構成することにより、血液20がフラッシュバックした場合に、すぐに血液収容部31内が血液20で満たされる。このため、微量の血液がフラッシュバックした場合にも外側からの視認が容易となる。
【0089】
また、血液収容部31の容量を超えて血液がフラッシュバックした場合には、第2の実施形態と同様、血液は、チャンバー34の開口された基端側から外筒2と針支持部33と、薬液容器3との間の空間に排出される。
【0090】
このように、本実施形態例のプレフィルドシリンジ30では、チャンバー34内の小さい空間で血液収容部31を構成することにより、フラッシュバックした血液の視認性を高めることができる
【0091】
そして、皮下注射時に、血管への誤刺が確認された場合には、図12に示すように、外筒2を引くことで、血管22から両頭針13の針先15を抜き、その針先15を皮下の正しい位置に留める。血管22から両頭針13の針先15が抜けた時点で、両頭針13を逆流して血液収容部31内に流れ込む血液の量が減るので、皮下の正しい位置に針先15が刺入していることを確認することができる。
【0092】
そして、皮下の正しい位置に針先15が穿刺されたことを確認した後は、外筒2を固定して針先15の穿刺深さを維持しながら、押圧部5を先端側に押圧することで、薬液容器3を外筒2の先端側に移動させる。そうすると、ガスケット7がチャンバー34の基端面に当接した状態で押圧されるため、チャンバー34が支持部32間に沿って先端側に移動する。そして、チャンバー34が先端側に移動し、両頭針13の基端側の針先14がチャンバー34の基端面よりも基端側に達した時点で、その針先14がガスケット7に刺通し、薬液容器3の内部に連通する。これにより、両頭針13への通液が完了する。
【0093】
その後、第1及び第2の実施形態と同様にして薬液の投与を行う。
本実施形態例のプレフィルドシリンジ30においても、チャンバー34内の血液収容部31の容量を超えてフラッシュバックした血液20は、外筒2と針支持部33と薬液容器3との間の空間に排出される。このため、本実施形態例のプレフィルドシリンジ30においても、図13に示すように、ガスケット7が薬液容器3の底部4に当接して薬液投与が完了した時点で、薬液容器3の先端面と、針支持部33の基部10の基端面との間に血液が収容される収容部19ができるように設計されることが好ましい。
【0094】
本実施形態例のプレフィルドシリンジ30では、小さいチャンバー34内に血液収容部31を構成することにより、微量の血液のフラッシュバックの確認が容易になり、投与者の取り扱い時の負担をより軽減することができる。
【0095】
その他、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0096】
また、本実施形態例のプレフィルドシリンジ30では、チャンバー34を外筒2と同様の材料で構成する例としたが、透明フィルム等の、柔軟性のある材料で構成してもよい。透明フィルムの材料としては、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ゴム、熱可塑性エラストマー等を用いることができる。透明フィルムを用いる場合には、透明フィルムによって袋状に形成したチャンバーを、初期状態において両頭針の基端側の針先に被せた状態とし、血液がフラッシュバックした場合に、袋状のチャンバー内に血液が溜まる構成とする。そして、透明フィルムからなるチャンバーを構成した場合には、薬液容器を先端側に移動操作することにより、両頭針の基端側の針先は、透明フィルムからなるチャンバーを突き破り、ガスケットに刺通する。このため、柔軟性のある透明フィルムでチャンバーを構成した場合には、チャンバーを先端側に移動させる必要がなく、構成が容易となる。
【0097】
なお、第1〜第3の実施形態では、生体に対して垂直に針を穿刺する垂直穿刺の場合を例にして使用方法を説明したが、生体に対して斜めに針を穿刺する斜め穿刺の場合も同様の方法で血液のフラッシュバックの確認が可能である。また、針のゲージの選択も適宜可能である。
【0098】
また、第1〜第3の実施形態における使用方法の説明では、血液のフラッシュバックを確認した後、続けて薬液を投与する例としたが、血液がフラッシュバックした場合には、そのプレフィルドシリンジを廃棄することも考えられる。第1〜第3の実施形態では、血液のフラッシュバックの確認作業と、薬液投与時の作業を説明するために、便宜的に、続けて説明を行った。
【符号の説明】
【0099】
1・・・プレフィルドシリンジ、 2・・・外筒、 3・・・薬液容器、 4・・・底部、 5・・・押圧部、 6・・・空間、 7・・・ガスケット、 8・・・シール部材、 9・・・通気孔、 10・・・基部、 11・・・固定部、 12・・・針支持部、 13・・・両頭針、 14・・・針先、 15・・・針先、 16・・・保護部材、 17・・・血液収容部、18・・・先端開口部、 19・・・収容部
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンジ内に予め薬液を収納したプレフィルドシリンジに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、シリンジ内に予め薬液が充填されたプレフィルドシリンジが多く利用されるようになってきた(特許文献1)。このようなプレフィルドシリンジでは、薬液投与時にバイアル瓶からシリンジ内に薬剤を吸引する必要がなく、投与に要する時間を短縮できる他、薬剤の無駄を減らすことができる。
【0003】
ところで、皮下注射時には、注射針を皮膚に穿刺した際、誤って針先が血管内に入ってしまうことがある。よって、皮下注射を行う場合には、皮膚に注射針を穿刺した後、シリンジの押し子(プランジャ)を少し引いて、シリンジのチップ内に血液の逆流、いわゆるフラッシュバックがないことを確認する作業が行われる。そして、血液の逆流がないことを確認した後に皮下への薬液の投与が行われる。
【0004】
しかしながら、例えば自己注射時に誤って針先が血管内に入ってしまう場合がある。このため、誤って針先が血管内に入ってしまったことを容易に確認できる機構が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−321826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の点に鑑み、本発明は、穿止時における血液のフラッシュバックの確認作業を容易に行うことができるプレフィルドシリンジを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決し、本発明の目的を達成するため、本発明のプレフィルドシリンジは、外筒と、薬液容器と、シール部材と、押圧部と、両頭針と、針支持部と、血液収容部とを備える。
外筒は、基端と先端を有して構成されている。
薬液容器は、基端と先端とを有し、外筒の内径よりも小さい外径を有する容器とされ、先端に先端開口部を有して構成されている。そして、先端開口部が封止体で封止されることで、容器内部に薬液が密封され、かつ、外筒の内部を軸方向に移動可能とされている。
シール部材は、外筒の内周面と薬液容器の外周面との間を封止するものである。
押圧部は、薬液容器を移動操作するものである。
両頭針は、一端に生体を穿刺可能な針先を有し、他端に封止体に刺通可能な針先を有して構成されている。
針支持部は、両頭針を支持するものであり、外筒の先端側に設けられている。
血液収容部は、外筒の内部に設けられ、両頭針と連通している空間からなり、両頭針を通って外筒側に流入する血液を収容することができ、外筒の外側から視認可能とされている。
【0008】
本発明のプレフィルドシリンジでは、外筒内部に血液収容部を有し、両頭針を通って外筒側に流入する血液を保持することができる。これにより、両頭針の針先が、誤って血管に刺通した場合には、血液が自動的に両頭針内を逆流し、血液収容部に保持される。そして、この血液収容部内の血液の存在を投与者が外筒の外側から視認することで、血液のフラッシュバックの確認をすることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明のプレフィルドシリンジによれば、穿刺時の血液のフラッシュバックの確認作業において、押圧部を引く作業を必要ないため、投与者の操作上の負担が軽減される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るプレフィルドシリンジの概略断面構成図であり、保護部材を装着した状態を示す図である。
【図2】図1に示すプレフィルドシリンジから保護部材を取り外して使用し、薬液投与を完了した状態を示す概略断面構成図である。
【図3】本発明の第1の実施形態のプレフィルドシリンジの使用時における概略断面構成図である。
【図4】本発明の第1の実施形態のプレフィルドシリンジの使用時における概略断面構成図である。
【図5】本発明の第1の実施形態のプレフィルドシリンジの使用時における概略断面構成図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係るプレフィルドシリンジの未使用の状態を示す概略断面構成図である。
【図7】A,B 本発明の第2の実施形態に係るプレフィルドシリンジの使用時における要部の概略断面構成図である。
【図8】本発明の第2の実施形態に係るプレフィルドシリンジの使用時における概略断面構成図である。
【図9】本発明の第3の実施形態に係るプレフィルドシリンジの未使用の状態を示す概略断面構成図である。
【図10】本発明の第3の実施形態に係るプレフィルドシリンジの要部の概略斜視図である。
【図11】A,B 本発明の第3の実施形態に係るプレフィルドシリンジの使用時における要部の概略断面構成図である。
【図12】本発明の第3の実施形態に係るプレフィルドシリンジの使用時における概略断面構成図である。
【図13】本発明の第3の実施形態に係るプレフィルドシリンジの使用時における概略断面構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施形態に係るプレフィルドシリンジの一例を、図1〜図13を参照しながら説明する。本発明の実施形態は以下の順で説明する。なお、本発明は以下の例に限定されるものではない。
1.第1の実施形態:プレフィルドシリンジ
1−1 構成
1−2 使用方法
2.第2の実施形態:プレフィルドシリンジ
2−1 構成
2−2 使用方法
3.第3の実施形態:プレフィルドシリンジ
3−1 構成
3−2 使用方法
【0012】
〈1.第1の実施形態:プレフィルドシリンジ〉
[1−1 構成]
図1は、本発明の第1の実施形態に係るプレフィルドシリンジ1の未使用状態(初期状態)における概略断面構成図であり、保護部材16を装着した状態を示す図である。図2は、図1に示すプレフィルドシリンジ1から保護部材16を取り外して使用し、薬液投与を完了した状態を示す概略断面構成図である。
【0013】
図1に示すように、本実施形態例のプレフィルドシリンジ1は、外筒2と、薬液容器3と、薬液容器3を移動操作する押圧部5と、針孔を有する中空の両頭針13と、両頭針13を支持する針支持部12とを有して構成されている。また、外筒2と薬液容器3との間を封止するシール部材8と、未使用の状態において無菌状態を保持するための保護部材(キャップ)16を有して構成されている。
【0014】
外筒2は、基端と先端を有する筒状とされ、本実施形態例では円筒状の部材で構成されている。なお、以下の説明では、外筒2の一端側を「基端」、他端側を「先端」として説明を行い、その他の構成についても、外筒2の基端に相当する一端側を基端、外筒2の先端側に相当する他端側を先端として説明する。
【0015】
外筒2の基端側の外周面には、外周面に対して垂直方向に突出して設けられたフランジ26が形成されている。フランジ26は、外筒2と一体に形成されており、その外周が円状又は楕円状を成すように形成されている。押圧部5を外筒2に対し相対的に移動操作する際などには、このフランジ26に指を掛けて操作を行うことができる。
【0016】
外筒2の構成材料としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、ポリカーボネート、アクリル樹脂、アクリルニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリアミド(例えば、ナイロン6、ナイロン6・6、ナイロン6・10、ナイロン12)のような各種樹脂が挙げられる。その中でも、成形が容易であるという点で、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン、ポリエステル、ポリ−(4−メチルペンテン−1)のような樹脂を用いることが好ましい。なお、外筒は、内部の視認性を確保するために、実質的に透明な材料で構成する。
【0017】
薬液容器3は、基端と先端を有する円筒状とされ、内部には、薬液容器3を先端側と基端側に分離する底部4を有しており、先端側には先端開口部18を有している。すなわち、本実施形態例の薬液容器3は、内部に底部4を有する有底円筒形状の部材で構成されている。薬液容器3の外径は外筒2の内径よりも小さく構成されており、未使用の状態においては外筒2の基端側に保持されている。そして、使用時においては、薬液容器3が外筒2内部を外筒2の中心軸に沿って移動可能に構成されている。
【0018】
また、薬液容器3の、底部4よりも先端側の先端開口部18には、先端開口部18を封止すると共に、薬液容器3の内周面に沿って底部4側に摺動可能に取り付けられた封止体(以下、ガスケット)7が構成されている。また、ガスケット7は、後述する両頭針13の基端側の針先14が刺通できるように構成されている。
【0019】
そして、薬液容器3内部の底部4とガスケット7に囲まれる空間6には、予め薬液が液密(気密)に収納されている。薬液容器3内部の薬液が収納される空間6は、ガスケット7により気密的に封止された密閉空間とされているため、未使用状態において無菌状態が保持される。
【0020】
薬液容器3の構成材料としては、例えば、上述した外筒2の構成材料と同様のものを用いることができる。なお、薬液容器3の構成材料は、内部の視認性を確保できるために、実質的に透明であることが好ましい。また、薬液容器3の外周面には、図示しない目盛りが形成されている。これにより、薬液容器3内部に収納されている薬液の量を把握することができる。
【0021】
ガスケット7の構成材料としては、薬液容器3との液密性を良好にするために弾性材料を用いることが好ましく、例えば、天然ゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、イソブチレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、シリコーンゴムのような各種ゴム材料や、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、オレフィン系、スチレン系等の各種熱可塑性エラストマー、あるいはそれらの混合物等の弾性材料を用いることができる。
【0022】
なお、ガスケット7は、少なくともその外周部が前述のように弾性材料で構成されていればよく、例えば、樹脂材料で構成された芯部(図示せず)を有し、この芯部の外周を覆うように上述した弾性材料が配置された構成のものでもよい。
【0023】
薬液容器3の空間6に収納される薬液としては、本実施形態例では、例えばインフルエンザ等の各種の感染症を予防する各種のワクチンが挙げられるが、ワクチンに限定されるものではない。なお、ワクチン以外では、例えば、ブドウ糖等の糖質注射液、塩化ナトリウムや乳酸カリウム等の電解質補正用注射液、ビタミン剤、抗生物質注射液、造影剤、ステロイド剤、蛋白質分解酵素阻害剤、脂肪乳剤、抗癌剤、麻酔薬、覚せい剤、麻薬、ヘパリンカルシウム、抗体医薬等が挙げられる。
【0024】
また、空間に収納される薬液の量(空間6の体積)は、例えば、0.02〜2.0mL程度が好ましく、0.05〜0.8mL程度がより好ましい。すなわち、プレフィルドシリンジ1は、特に、このような少量の薬液を投与する場合に好適なものである。
【0025】
シール部材8は、外筒2と薬液容器3との間を封止すると共に、薬液容器3を外筒2の基端側に保持するために設けられるものであり、薬液容器3の先端の外周面に全周にわたって固定されている。シール部材8の構成材料としては、ガスケット7の構成材料と同様のものを用いることができ、本実施形態例では、オーリング状の弾性部材で構成されている。また、シール部材8は、二色成形で設けることもできる。
【0026】
外筒2の内周面にシール部材8の外筒2側の端部が密着することにより外筒2の内周面と薬液容器3の外周面との間の間隙が完全に封止される。そして、未使用の状態において、薬液容器3は、シール部材8によって外筒2の基端側に固定保持されている。
【0027】
このように、シール部材8が、外筒2と薬液容器3との間に設けられることにより、薬液容器3の先端が外筒2の基端側に安定して保持され、また、外筒2の内周面と、薬液容器3で囲まれる領域が気密的に封止されている。
【0028】
押圧部5は、円盤状に形成され、薬液容器3の基端面に設けられている。押圧部5の構成材料としては、例えば、上述した外筒2の構成材料と同じものを用いることができる。この押圧部5は、薬液容器3と一体に形成してもよく、別々に形成した後、融着又は接着により両者を貼り合わせる構成としてもよい。
本実施形態例では、押圧部5を押すことにより、薬液容器3を外筒2内において摺動移動させることができる。
【0029】
両頭針13は、先端側に生体を穿刺可能な鋭利な針先15を有し、基端側に薬液容器3のガスケット7に刺通可能な鋭利な針先14を有している。そして、両頭針13の基端側の針先14がガスケット7を刺通することにより、その両頭針13の基端側が薬液容器3の薬液が収納された空間6内部に連通するように構成されている。
【0030】
両頭針13としては、ISOの医療用針管の基準(ISO9626:1991/Amd.1:2001(E))で22〜33Gのサイズ(外径:0.2〜0.7mm)のものを使用することができる。
【0031】
両頭針13の先端側および基端側の針先14、15にはそれぞれ刃面を有する刃先が形成されている。
また、皮膚の表面から生体に穿刺される両頭針13の深さ(穿刺深さ)は、両頭針13の、後述する針支持部12の先端面から突出している部位の長さ(以下、「突出長」と言う)Lにより決定される。
【0032】
両頭針13の構成材料としては、例えば、ステンレス鋼、アルミニウムまたはアルミニウム合金、チタンまたはチタン合金、Ni−Ti合金等の超弾性合金等の各種金属材料、ポリフェニレンサルファイド等の各種硬質樹脂材料等が挙げられる。
【0033】
針支持部12は、外筒2の先端面を被覆する大きさの円盤状に形成された基部10と、基部10の基端面側に設けられた円柱状の固定部11で構成されており、外筒2の先端に固定されている。固定部11の外径は、薬液容器3の内径よりも小さく構成されており、外筒2の軸方向に沿って形成されている。薬液容器3を先端側に移動操作することにより、固定部11がガスケット7に当接した場合には、ガスケット7の外筒2に対する位置は固定部11によって固定され移動しない。これにより、薬液容器3をさらに先端側に移動させた場合には、ガスケット7は相対的に薬液容器3内を底部4に向かって摺動移動する。
【0034】
針支持部12の構成材料としては、外筒2と同様の材料を用いることができる。また、外筒2と針支持部12は、別部材で構成して貼り合わせてもよいが、一体に形成してもよい。
【0035】
針支持部12は、両頭針13を先端側の針先15が基部10の先端面よりも先端側に位置し、基端側の針先14が固定部11の基端面よりも基端側に位置し、薬液容器3のガスケット7に連通し得るように固定する。すなわち、本実施形態例では、両頭針13は、針支持部12の基部10中心を刺通すると共に、円柱状の固定部11中心を刺通して固定されており、未使用の状態においては、両頭針13の基端側の針先14は、薬液容器3のガスケット7に刺通しない位置とされている。
【0036】
そして、本実施形態例のプレフィルドシリンジ1では、上述した外筒2、薬液容器3、シール部材8、針支持部12で囲まれる外筒2の内側の空間が、血液収容部17とされる。本実施形態例では、外筒2が透明材料で形成されるため、外筒2内部に構成される血液収容部17は、外筒2の外側から視認可能とされている。そして、血液収容部17が構成されることで、穿刺時に、両頭針13の基端側の針先14から血液が逆流(フラッシュバック)した場合には、基端側の針先14から流出した血液が、外筒2の内側の空間で構成される血液収容部17に保持される。
【0037】
血液収容部17は、薬液容器3が外筒2内を先端側に移動した場合には、その容量が縮小されていく。血液収容部17内にフラッシュバックした血液が流入した状態のときは、薬液容器3が外筒2内を先端側に移動すると共に、血液収容部17内の血液も薬液容器3によって外筒2の先端側にかき寄せられる。したがって、薬液容器3が外筒2の先端側に最後まで移動し薬液投与が完了した後においても、外筒2の先端側にその血液を収容できるだけの容量が確保できるように構成されることが好ましい。そのため、図2に示すように、ガスケット7が薬液容器3の底部4に当接するまで薬液容器3が外筒2の先端側に移動したときにも、薬液容器3の先端と基部10の基端面との間に血液を収容できる収容部19ができるように薬液容器3及び固定部11等の寸法設計を行う。
【0038】
また、針支持部12の基部10、及び外筒2の所定の領域には、血液収容部17から外側に貫通する通気孔9が形成されている。通気孔9により、外筒2と針支持部12とシール部材8とで囲まれる血液収容部17が、針支持部12の基端側の空間や、外筒2の外周面側の空間(すなわち、外側)と連通する。
【0039】
通気孔9が形成されることで、外筒2の内側の空間で構成される血液収容部17の圧力が、外側の圧力と同等に保持されるため、血液が血液収容部17内にフラッシュバックした場合にも、血液収容部17内の圧力上昇を緩和することができる。これにより、両頭針13の先端側の針先15が血管に穿刺された場合に、血液が血液収容部17内にフラッシュバックし易くなるため、フラッシュバックの確認が容易になる。
【0040】
通気孔9は、図1では、針支持部12の基部10と外筒2に一個所ずつ構成する例としたが、1つ以上であれば、血液収容部17の圧力上昇緩和の効果を得ることができる。通気孔9を形成する位置は、フラッシュバックした血液が通気孔9を通って外側に流れ出ない位置とするのがより好ましい。また、皮下注射時は、刃面を上にして生体に穿刺することが多い為、基部10に通気孔9を形成するのが望ましい。
【0041】
腹部や太股に垂直穿刺する場合は薬液容器3の方向が決まらないため、通気孔9の位置で、血液が外側に漏れることを防止することは困難である。この場合には、通気孔9に通気フィルター(図示せず)を設けることが望ましい。または、通気孔9の孔径をフラッシュバックした血液が表面張力により外側に漏れない程度の大きさに設定してもよい。例えばポリプロピレン等の疎水性の材料を用いた通気孔の孔径を0.1mm以上0.2mm以下にすれば、フラッシュバックした血液が外側に漏れることがなく、また、血液収容部17の圧力上昇緩和の効果を得ることができる。
【0042】
さらに、外筒2に形成される通気孔9は、図2に示すように、ガスケット7が薬液容器3の底部4に当接するまで薬液容器3が外筒2の先端側に移動したときに、薬液容器3の外周部に固定されたシール部材8よりも基端側の位置になるように形成されることが好ましい。これにより、薬液投与が完了した後、収容部19に収容された血液が、外筒2に形成された通気孔9から外側に漏れることを防止することができる。
【0043】
そして、本実施形態例のプレフィルドシリンジ1では、未使用の状態において、外筒2の先端側に保護部材16が離脱可能に取り付けられている。
保護部材16は、先端側に底部を有する有底の筒状、本実施形態例では、有底の円筒状に形成されており、先端側に縮径した構成とされている。そして、保護部材16を外筒2の先端部側に装着することで、両頭針13の生体に穿刺される側の針先15を囲む空間を封止すると共に外筒2に設けられた通気孔9を封止する。
【0044】
これにより、未使用時において、保護部材16が外周部に装着されている状態では、外筒2の内部の空間で構成される血液収容部17が気密的に封止され、血液収容部17及び保護部材16内部が密閉される。これにより、血液収容部17及び保護部材16内部の無菌状態が維持されるので、両頭針13の基端及び先端の針先14、15の無菌も維持される。
【0045】
プレフィルドシリンジ1を使用する際は、保護部材16は外筒2から取り外され、両頭針13の生体に穿刺される側の針先15の封止が解除される。また、このとき、通気孔9により、血液収容部17も外部に解放される。
【0046】
保護部材16の構成材料としては、例えば、上述した外筒2の構成材料や、ガスケット7の構成材料と同様のものを用いることができる。
【0047】
なお、このプレフィルドシリンジ1では、必要な各部が滅菌された後、外筒の先端側に保護部材16が装着され、前述したように、外筒2の内部、及び保護部材16の内部の無菌状態が維持され、さらに両頭針13の無菌状態が維持される。
【0048】
[1−2 使用方法]
次に、本実施形態例のプレフィルドシリンジ1の使用方法の一例について説明する。図3〜図5に、本実施形態例のプレフィルドシリンジ1の使用時における概略断面構成図を、生体の図示と共に示す。以下では、両頭針13を生体に対して垂直に刺入する垂直穿刺の場合を例に説明する。
【0049】
プレフィルドシリンジ1を使用する際は、まず、用意したプレフィルドシリンジ1の針支持部12先端側から保護部材16を取り外す。これにより、薬液を投与する準備が完了する。このように、このプレフィルドシリンジ1では、容易かつ迅速に、薬液の投与の準備を行うことができる。
【0050】
次に、両頭針13の先端側の針先15を腕などの薬液を投与する皮下21に垂直に刺入する。そして、図3に示すように、誤って、穿刺対象となる皮下21の下層の血管22に針先が穿刺された場合、血管中の血液20が両頭針13内を逆流し、基端の針先14から血液収容部17内に排出される。両頭針13を逆流して流れ込んだ血液20の存在を血液収容部17内に投与者が視認することで、血管22への誤刺を確認することができる。
【0051】
このとき、通気孔9が設けられることにより、血液収容部17内は外筒2の外部の圧力、すなわち、大気に解放されているので、低い静脈圧で流れる血液でも両頭針13内を通って血液収容部17に流入され易く、フラッシュバックの確認が可能となる。また、通気孔9が設けられることにより、血液収容部17内に血液20が流入したときも、血液収容部17内の圧力上昇を緩和することができ、フラッシュバックする血液20の流れの速度を低下させることがない。このため、フラッシュバックの確認を迅速に行うことができる。
【0052】
このように、皮下注射時に血管22への誤刺が確認された場合には、図4に示すように、外筒2を引くことで、血管22から両頭針13の針先15を抜き、その針先15を皮下21の正しい位置に留める。血管22から両頭針13の針先15が抜けた時点で、両頭針13を逆流して血液収容部17内に流れ込む血液20の量が無くなるので、皮下21の正しい位置に針先15が刺入していることを確認することができる。
【0053】
そして、皮下21の正しい位置に針先15が穿刺されたことを確認した後は、外筒2を固定して針先15の穿刺深さを維持しながら、押圧部5を先端側に押圧する。この場合、薬液容器3は、シール部材8を介し、外筒2の内面に沿って円滑に摺動する。そして、外筒2内を中心軸に沿って先端側に移動した薬液容器3のガスケット7に両頭針13の基端側の針先14が刺通し、薬液容器3の内部に連通する。これにより、両頭針13への通液が完了する。
【0054】
通液完了後、さらに押圧部5を先端方向に押圧すると、ガスケット7の外筒2に対する位置は固定部11により固定されるので、ガスケット7は相対的に薬液容器3内部で底部4側に摺動する。そして、薬液容器3が先端側に移動すると共に、ガスケット7が薬液容器3内を底部4側に摺動するため、空間6に収納された薬液が両頭針13内を通り先端側の針先15から排出され、目的の部位への薬液投与がなされる。そして、図5に示すように、ガスケット7が薬液容器3の底部4に到達することで、薬液の投与が完了する。
【0055】
このとき、薬液容器3が先端側に移動することにより、外筒2の内側に構成された血液収容部17の容量が縮小されていく。そして、図5に示すように、薬液投与が完了した状態では、血液20は、薬液容器3の先端面とシール部材8と針支持部12の基部10の基端面との間の収容部19に保持される。このとき、シール部材8は、外筒2に形成された通気孔9よりも先端側にくるため、血液収容部17に流入し、収容部19に収容された血液が、外筒2に形成された通気孔9を介して外部に流出することがない。
【0056】
本実施形態例のプレフィルドシリンジ1によれば、穿刺時に、誤って血管に針先を穿刺してしまった場合、血液が自動的に両頭針13内を逆流して血液収容部17内に流れ込み、血液収容部17内に流れ込んだ血液を視認することができる。そして、フラッシュバックした血液を保持する血液収容部17を有することにより、フラッシュバックした血液を確認することができ、フラッシュバックの確認作業を容易に行うことができる。このため、従来のように、穿刺した後に、押圧部を少し引くことによってフラッシュバックの確認を行う必要がなく、投与者の負担を軽減することが可能となる。
【0057】
本実施形態例のプレフィルドシリンジ1では、図5に示すように、薬液投与が完了し、薬液容器3が外筒2の先端側に移動した場合にも、薬液容器3の先端面と針支持部12の基部10の基端面との間に血液が収容できる収容部19が確保できるように設計する例とした。薬液投与後の血液の収容部19の確保はこの構成に限られるものではなく、例えば、基部10の基端面に溝部を形成することで、薬液投与が完了した時点でも、外筒2の先端側に血液を収容できる収容部を確保する構成としてもよい。
【0058】
また、上述の使用方法では、両頭針13の針先15が誤って血管に穿刺された場合について述べたが、皮下21の正しい位置に両頭針13の針先15が穿刺された場合には、血液収容部17内に血液20はフラッシュバックしない。このため、血液収容部17内に血液20の不存在を確認することで、投与者は針先15が皮下21に穿刺されたことを確認することができ、その後、上述の方法と同様にして薬液の投与を行うことができる。
【0059】
このように、本実施形態例のプレフィルドシリンジ1では、両頭針13の針先15を生体に穿刺後、血液収容部17内の血液の存在又は不存在を外筒2の外側から視認することのみで、穿刺位置を把握することができる。
【0060】
〈2.第2の実施形態:プレフィルドシリンジ〉
次に、本発明の第2の実施形態に係るプレフィルドシリンジについて説明する。本実施形態例は、第1の実施形態とは、血液収容部の構成が異なる例である。
【0061】
[2−1 構成]
図6は、本実施形態例のプレフィルドシリンジ28の未使用の状態を示す概略断面構成図である。図9において、図1に対応する部分には同一符号を付し、重複説明を省略する。
【0062】
本実施形態例のプレフィルドシリンジ28では、針支持部24は、外筒2の先端面を被覆する大きさの円盤状に形成された基部10と、基部10の基端面側に設けられた円柱状のチャンバー23で構成されており、外筒2の先端に固定されている。チャンバー23は、薬液容器3の内径よりも小さい外径を有し、外筒2の軸方向に沿って形成されており、内部に血液収容部25となる空間を有している。さらに、チャンバー23には、血液収容部25と、外筒内空間とを連通する通気孔23aが設けられている。このチャンバー23は、薬液容器3を先端側に移動操作したときに、チャンバー23の基端面がガスケット7に当接し、ガスケット7の外筒に対する位置を固定する固定部としても用いられる。
【0063】
両頭針35は、その中腹に、チャンバー23内の血液収容部25と針孔とを連通する連通孔35aを有している。連通孔35aは、血液が流出する大きさに形成されている。
【0064】
針支持部24を構成する基部10及びチャンバー23の構成材料は、外筒2と同様の材料を用いることができ、特に、チャンバー23は、チャンバー23内の血液収容部25の状態を外側から視認できるように透明な材料で形成する。また、外筒2と針支持部24は、別部材で構成して貼り合わせてもよいが、一体に形成してもよい。
【0065】
そして、本実施形態例では、外筒2及びチャンバー23が透明な材料で形成されるため、チャンバー23内部に構成される血液収容部25が、外筒2の外側から視認可能とされている。
【0066】
[2−2 使用方法]
次に、本実施形態例のプレフィルドシリンジ28の使用方法の一例について説明する。図7A,Bに、本実施形態例のプレフィルドシリンジ28の使用時における要部の概略断面構成図を、生体の図示と共に示し、図8に、プレフィルドシリンジ28の使用時における概略断面構成図を示す。以下では、両頭針35を生体に対して垂直に刺入する垂直穿刺の場合を例に説明する。
【0067】
プレフィルドシリンジ28を使用する際は、まず、用意したプレフィルドシリンジ28の針支持部24先端側から保護部材16を取り外す。これにより、薬液を投与する準備が完了する。このように、このプレフィルドシリンジ28では、容易かつ迅速に、薬液の投与の準備を行うことができる。
【0068】
次に、図7Aに示すように、両頭針35の先端側の針先15を腕などの薬液を投与する皮下21に垂直に刺入する。そして、図7Bに示すように、誤って、穿刺対象となる皮膚の下層の血管22に針先が穿刺された場合、血管中の血液20が両頭針35内を逆流し、両頭針35の連通孔35aから血液収容部25に排出される。両頭針35を逆流して血液収容部25に血液20が流れ込むことを投与者が視認することで、血管22への誤刺を確認することができる。
【0069】
ここで、通気孔23a及び通気孔9が設けられていることにより、血液収容部25内部は、外筒2内空間を介して外筒2の外側と連通しているため、血液収容部25の圧力は外筒2の外部と同等とされる。このため、低い静脈圧でも、血液は両頭針35内を通り、連通孔から血液収容部25に流入され、低い静脈圧における血液のフラッシュバックの確認が可能となる。また、通気孔23a及び通気孔9が設けられることにより、血液収容部25内に血液20が流入したときも、血液収容部25内の圧力上昇を緩和することができ、フラッシュバックする血液20の流れの速度が低下することを防ぐことができる。このため、フラッシュバックの確認を迅速に行うことができる。
【0070】
また、本実施形態例では、チャンバー23内の小さい空間で血液収容部25を構成することにより、血液20がフラッシュバックした場合に、すぐに血液収容部25内が血液で満たされる。このため、微量の血液がフラッシュバックした場合にも外側からの視認が容易となる。また、血液収容部25の容量を超えて血液20がフラッシュバックした場合には、血液20は、両頭針35を通って外筒2と針支持部24と薬液容器3との間の空間に排出される。
【0071】
このように、本実施形態例のプレフィルドシリンジ28では、チャンバー23内の小さい空間で血液収容部25を構成することにより、フラッシュバックした血液の視認性を高めることができる。
【0072】
その後は、第1の実施形態と同様にして、薬液の投与を行う。
本実施形態例のプレフィルドシリンジ28においても、チャンバー23内の血液収容部25の容量を超えてフラッシュバックした血液20は、外筒2と針支持部24と薬液容器3との間の空間に排出される。このため、本実施形態例のプレフィルドシリンジ28においても、図8に示すように、薬液投与が完了した時点で、薬液容器3の先端面と針支持部24の基部10の基端面との間に血液が収容される収容部19ができるように設計されることが好ましい。
【0073】
本実施形態例のプレフィルドシリンジ28では、小さいチャンバー23内に血液収容部25を構成することにより、微量の血液のフラッシュバックの確認が容易になり、投与者の取り扱い時の負担をより軽減することができる。
【0074】
その他、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0075】
〈3.第3の実施形態:プレフィルドシリンジ〉
次に、本発明の第3の実施形態に係るプレフィルドシリンジについて説明する。本実施形態例は、第1の実施形態とは、血液収容部の構成が異なる例である。
【0076】
[3−1 構成]
図9は、本実施形態例のプレフィルドシリンジ30の未使用の状態を示す概略断面構成図である。また、図10は、本実施形態例のプレフィルドシリンジ30の要部の概略斜視図である。図9及び図10において、図1に対応する部分には同一符号を付し、重複説明を省略する。
【0077】
本実施形態例のプレフィルドシリンジ30では、針支持部33は外筒2の先端面を被覆する大きさの円盤状に形成された基部10と、基部10の基端面側に柱状に設けられた複数(図10では3つ)の支持部32で構成されており、外筒2の先端に固定されている。支持部32は、基部10の基端面上の薬液容器3の内径よりも小さい径内に立設されており、外筒2の軸方向に沿って形成されている。また、支持部32は、薬液容器3を先端側に移動操作したときに、支持部32の基端面がガスケット7に当接することによりガスケット7の外筒2に対する位置を固定するように構成されている。
【0078】
針支持部33を構成する材料は、外筒と同様の材料を用いることができる。また、外筒2と針支持部33は、別部材で構成して貼り合わせてもよいが、一体に形成してもよい。
【0079】
そして、この複数の支持部32の基端側には、血液収容部31を構成するチャンバー34が支持されている。
【0080】
チャンバー34は、図10に示すように、基端と先端とを有し、先端側に底部を有する有底円筒形状の部材で構成されており、支持部32の基端側に挟持されている。未使用の状態では、ガスケット7は、チャンバー34の基端側に接しない位置となるように構成されている。また、使用時には、チャンバー34は、チャンバー34の基端面にガスケット7が当接して先端側に押圧されることにより、複数の支持部32で囲まれた支持部32間を先端方向に移動可能に構成されている。そして、本実施形態例では、チャンバー34の内周面と底部に囲まれるチャンバー34内の空間で血液収容部31が構成されている。
【0081】
また、未使用の状態では、図9に示すように、両頭針13の基端側の針先14が、チャンバー34の底部を刺通して血液収容部31内に位置するように構成されている。
【0082】
チャンバー34を構成する材料は、外筒2と同様の材料を用いることができる。また、チャンバー34は、チャンバー34内の血液収容部31の状態を外側から視認できるように透明な材料で形成する。
【0083】
そして、本実施形態例では、外筒2及びチャンバー34が透明材料で形成されるため、チャンバー34内部に構成される血液収容部31が、外筒2の外側から視認可能とされている。
【0084】
[3−2 使用方法]
次に、本実施形態例のプレフィルドシリンジ30の使用方法の一例について説明する。図11A,Bに、本実施形態例のプレフィルドシリンジ30の使用時における要部の概略断面構成図を、生体の図示と共に示す。また、図12及び図13には、本実施形態例のプレフィルドシリンジ30の使用時における概略断面構成図を、生体の図示と共に示す。以下では、両頭針13を生体に対して垂直に刺入する垂直穿刺の場合を例に説明する。
【0085】
プレフィルドシリンジ30を使用する際は、まず、用意したプレフィルドシリンジ30の針支持部33先端側から保護部材16を取り外す。これにより、薬液を投与する準備が完了する。このように、このプレフィルドシリンジ30では、容易かつ迅速に、薬液の投与の準備を行うことができる。
【0086】
次に、図11Aに示すように、両頭針13の先端側の針先15を腕などの薬液を投与する皮下21に垂直に刺入する。そして、図11Bに示すように、誤って、穿刺対象となる皮膚の下層の血管22に針先が穿刺された場合、血管中の血液20が両頭針13内を逆流し、両頭針13の基端側の針先14から血液収容部31に排出される。両頭針13を逆流して血液収容部31に流れ込んだ血液20を投与者が視認することで、血管22への誤刺を確認することができる。
【0087】
ここで、通気孔9が設けられており、チャンバー34の基端側は開口されているので、血液収容部31は外筒2内空間を介して外筒2の外側と連通している。これにより、血液収容部31の圧力も外筒2の外部と同等とされる。このため、低い静脈圧でも、血液が血液収容部31に流入され、フラッシュバックの確認が可能となる。また、通気孔9が設けられることにより、血液収容部31内に血液20が流入したときも、血液収容部31内の圧力上昇を緩和することができ、フラッシュバックする血液20の流れの速度が低下することを防ぐことができる。このため、フラッシュバックの確認を迅速に行うことができる。
【0088】
また、本実施形態例では、チャンバー34内の小さい空間で血液収容部31を構成することにより、血液20がフラッシュバックした場合に、すぐに血液収容部31内が血液20で満たされる。このため、微量の血液がフラッシュバックした場合にも外側からの視認が容易となる。
【0089】
また、血液収容部31の容量を超えて血液がフラッシュバックした場合には、第2の実施形態と同様、血液は、チャンバー34の開口された基端側から外筒2と針支持部33と、薬液容器3との間の空間に排出される。
【0090】
このように、本実施形態例のプレフィルドシリンジ30では、チャンバー34内の小さい空間で血液収容部31を構成することにより、フラッシュバックした血液の視認性を高めることができる
【0091】
そして、皮下注射時に、血管への誤刺が確認された場合には、図12に示すように、外筒2を引くことで、血管22から両頭針13の針先15を抜き、その針先15を皮下の正しい位置に留める。血管22から両頭針13の針先15が抜けた時点で、両頭針13を逆流して血液収容部31内に流れ込む血液の量が減るので、皮下の正しい位置に針先15が刺入していることを確認することができる。
【0092】
そして、皮下の正しい位置に針先15が穿刺されたことを確認した後は、外筒2を固定して針先15の穿刺深さを維持しながら、押圧部5を先端側に押圧することで、薬液容器3を外筒2の先端側に移動させる。そうすると、ガスケット7がチャンバー34の基端面に当接した状態で押圧されるため、チャンバー34が支持部32間に沿って先端側に移動する。そして、チャンバー34が先端側に移動し、両頭針13の基端側の針先14がチャンバー34の基端面よりも基端側に達した時点で、その針先14がガスケット7に刺通し、薬液容器3の内部に連通する。これにより、両頭針13への通液が完了する。
【0093】
その後、第1及び第2の実施形態と同様にして薬液の投与を行う。
本実施形態例のプレフィルドシリンジ30においても、チャンバー34内の血液収容部31の容量を超えてフラッシュバックした血液20は、外筒2と針支持部33と薬液容器3との間の空間に排出される。このため、本実施形態例のプレフィルドシリンジ30においても、図13に示すように、ガスケット7が薬液容器3の底部4に当接して薬液投与が完了した時点で、薬液容器3の先端面と、針支持部33の基部10の基端面との間に血液が収容される収容部19ができるように設計されることが好ましい。
【0094】
本実施形態例のプレフィルドシリンジ30では、小さいチャンバー34内に血液収容部31を構成することにより、微量の血液のフラッシュバックの確認が容易になり、投与者の取り扱い時の負担をより軽減することができる。
【0095】
その他、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0096】
また、本実施形態例のプレフィルドシリンジ30では、チャンバー34を外筒2と同様の材料で構成する例としたが、透明フィルム等の、柔軟性のある材料で構成してもよい。透明フィルムの材料としては、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ゴム、熱可塑性エラストマー等を用いることができる。透明フィルムを用いる場合には、透明フィルムによって袋状に形成したチャンバーを、初期状態において両頭針の基端側の針先に被せた状態とし、血液がフラッシュバックした場合に、袋状のチャンバー内に血液が溜まる構成とする。そして、透明フィルムからなるチャンバーを構成した場合には、薬液容器を先端側に移動操作することにより、両頭針の基端側の針先は、透明フィルムからなるチャンバーを突き破り、ガスケットに刺通する。このため、柔軟性のある透明フィルムでチャンバーを構成した場合には、チャンバーを先端側に移動させる必要がなく、構成が容易となる。
【0097】
なお、第1〜第3の実施形態では、生体に対して垂直に針を穿刺する垂直穿刺の場合を例にして使用方法を説明したが、生体に対して斜めに針を穿刺する斜め穿刺の場合も同様の方法で血液のフラッシュバックの確認が可能である。また、針のゲージの選択も適宜可能である。
【0098】
また、第1〜第3の実施形態における使用方法の説明では、血液のフラッシュバックを確認した後、続けて薬液を投与する例としたが、血液がフラッシュバックした場合には、そのプレフィルドシリンジを廃棄することも考えられる。第1〜第3の実施形態では、血液のフラッシュバックの確認作業と、薬液投与時の作業を説明するために、便宜的に、続けて説明を行った。
【符号の説明】
【0099】
1・・・プレフィルドシリンジ、 2・・・外筒、 3・・・薬液容器、 4・・・底部、 5・・・押圧部、 6・・・空間、 7・・・ガスケット、 8・・・シール部材、 9・・・通気孔、 10・・・基部、 11・・・固定部、 12・・・針支持部、 13・・・両頭針、 14・・・針先、 15・・・針先、 16・・・保護部材、 17・・・血液収容部、18・・・先端開口部、 19・・・収容部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基端と先端を有する外筒と、
先端と基端とを有し、前記外筒の内径よりも小さい外径を有する容器であって、先端に先端開口部を有し、前記先端開口部が封止体で封止されることで容器内部に薬液が密封され、かつ、前記外筒の内部を軸方向に移動可能な薬液容器と
前記外筒の内周面と前記薬液容器の外周面との間を封止するシール部材と、
前記薬液容器を移動操作する押圧部と、
一端に生体を穿刺可能な針先を有し、他端に前記封止体に刺通可能な針先を有する中空の両頭針と、
前記外筒の先端側に設けられ、前記両頭針を支持する針支持部と、
前記外筒の内部に設けられ、前記両頭針と連通している空間からなり、前記両頭針を通って前記外筒側に流入する血液を収容することができ、前記外筒の外側から視認可能とされた血液収容部と、
を備えるプレフィルドシリンジ。
【請求項2】
前記外筒、及び/又は前記針支持部には、前記血液収容部の圧力を前記外筒の外側の圧力と同等に保持するための通気孔が少なくとも1つ設けられている
請求項1に記載のプレフィルドシリンジ。
【請求項3】
前記通気孔には、通気フィルタが設けられている
請求項1〜2のいずれか一項に記載のプレフィルドシリンジ。
【請求項4】
前記針支持部は、内部に前記血液収容部となる空間を有するチャンバーを有して構成され、
前記両頭針は、前記チャンバー内の血液収容部と前記両頭針の内部とを連通する連通孔を有する
請求項1〜3のいずれか一項に記載のプレフィルドシリンジ。
【請求項5】
内部に前記血液収容部となる空間を有し、初期状態において、前記両頭針の他端の針先が刺通されたチャンバーを有する
請求項1〜4のいずれか一項に記載のプレフィルドシリンジ。
【請求項6】
前記両頭針の他端の針先が前記封止体に穿刺された状態において、前記両頭針に対する前記封止体の位置を固定するための固定部を有し、
使用時において、前記薬液容器を前記外筒の先端側に移動操作すると共に、前記固定部で固定された前記封止体が薬液容器内部を基端側に移動することにより薬液が排出される
請求項1〜5のいずれか一項に記載のプレフィルドシリンジ。
【請求項7】
前記シール部材は、前記薬液容器の外周面に固定して設けられ、
前記外筒に形成された通気孔は、前記薬液容器が前記外筒の先端側に最後まで移動した時点において、前記シール部材よりも基端側となる位置に形成されている
請求項1〜6記載のプレフィルドシリンジ。
【請求項8】
前記薬液容器が前記外筒の先端側に最後まで移動した時点において、前記薬液容器の先端面と、前記針支持部の基端面と、前記シール部材との間に、流入した血液を最終的に収容できる収容部を有する
請求項1〜7記載のプレフィルドシリンジ。
【請求項1】
基端と先端を有する外筒と、
先端と基端とを有し、前記外筒の内径よりも小さい外径を有する容器であって、先端に先端開口部を有し、前記先端開口部が封止体で封止されることで容器内部に薬液が密封され、かつ、前記外筒の内部を軸方向に移動可能な薬液容器と
前記外筒の内周面と前記薬液容器の外周面との間を封止するシール部材と、
前記薬液容器を移動操作する押圧部と、
一端に生体を穿刺可能な針先を有し、他端に前記封止体に刺通可能な針先を有する中空の両頭針と、
前記外筒の先端側に設けられ、前記両頭針を支持する針支持部と、
前記外筒の内部に設けられ、前記両頭針と連通している空間からなり、前記両頭針を通って前記外筒側に流入する血液を収容することができ、前記外筒の外側から視認可能とされた血液収容部と、
を備えるプレフィルドシリンジ。
【請求項2】
前記外筒、及び/又は前記針支持部には、前記血液収容部の圧力を前記外筒の外側の圧力と同等に保持するための通気孔が少なくとも1つ設けられている
請求項1に記載のプレフィルドシリンジ。
【請求項3】
前記通気孔には、通気フィルタが設けられている
請求項1〜2のいずれか一項に記載のプレフィルドシリンジ。
【請求項4】
前記針支持部は、内部に前記血液収容部となる空間を有するチャンバーを有して構成され、
前記両頭針は、前記チャンバー内の血液収容部と前記両頭針の内部とを連通する連通孔を有する
請求項1〜3のいずれか一項に記載のプレフィルドシリンジ。
【請求項5】
内部に前記血液収容部となる空間を有し、初期状態において、前記両頭針の他端の針先が刺通されたチャンバーを有する
請求項1〜4のいずれか一項に記載のプレフィルドシリンジ。
【請求項6】
前記両頭針の他端の針先が前記封止体に穿刺された状態において、前記両頭針に対する前記封止体の位置を固定するための固定部を有し、
使用時において、前記薬液容器を前記外筒の先端側に移動操作すると共に、前記固定部で固定された前記封止体が薬液容器内部を基端側に移動することにより薬液が排出される
請求項1〜5のいずれか一項に記載のプレフィルドシリンジ。
【請求項7】
前記シール部材は、前記薬液容器の外周面に固定して設けられ、
前記外筒に形成された通気孔は、前記薬液容器が前記外筒の先端側に最後まで移動した時点において、前記シール部材よりも基端側となる位置に形成されている
請求項1〜6記載のプレフィルドシリンジ。
【請求項8】
前記薬液容器が前記外筒の先端側に最後まで移動した時点において、前記薬液容器の先端面と、前記針支持部の基端面と、前記シール部材との間に、流入した血液を最終的に収容できる収容部を有する
請求項1〜7記載のプレフィルドシリンジ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−212182(P2011−212182A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−82580(P2010−82580)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】
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