説明

プロキシミティ露光装置、及びプロキシミティ露光装置の基板移動方法

【課題】基板を支持するチャックを移動する移動ステージの移動に伴うケーブルからの発塵を抑制して、マスク及び基板に塵が付着するのを防止する。
【解決手段】チャック10を搭載する移動ステージと、移動ステージに接続された複数のケーブル51と、複数のケーブル51を押さえるケーブル押さえ部材32cが設けられた複数の連結されたケーブル収容具32を有し、各ケーブル収容具32のケーブル押さえ部材32cに超高分子量ポリエチレンから成る潤滑層(超高分子量ポリエチレンチューブ32d)が設けられたケーブルガイド30とを備える。ケーブルガイド30に収容されたケーブル51により移動ステージへ電力を供給して、移動ステージによりチャック10を移動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ディスプレイ装置等の表示用パネル基板の製造において、プロキシミティ方式を用いて基板の露光を行うプロキシミティ露光装置、及びプロキシミティ露光装置の基板移動方法に係り、特に、基板を支持するチャックを移動ステージによりXY方向へ移動及びθ方向へ回転して、露光時の基板の位置決めを行うプロキシミティ露光装置、及びプロキシミティ露光装置の基板移動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
表示用パネルとして用いられる液晶ディスプレイ装置のTFT(Thin Film Transistor)基板やカラーフィルタ基板、プラズマディスプレイパネル用基板、有機EL(Electroluminescence)表示パネル用基板等の製造は、露光装置を用いて、フォトリソグラフィー技術により基板上にパターンを形成して行われる。露光装置としては、レンズ又は鏡を用いてマスクのパターンを基板上に投影するプロジェクション方式と、マスクと基板との間に微小な間隙(プロキシミティギャップ)を設けてマスクのパターンを基板へ転写するプロキシミティ方式とがある。プロキシミティ方式は、プロジェクション方式に比べてパターン解像性能は劣るが、照射光学系の構成が簡単で、かつ処理能力が高く量産用に適している。
【0003】
プロキシミティ露光装置において、パターンの焼付けを精度良く行うためには、露光時の基板の位置決めを精度良く行わなければならない。基板の位置決めを行う移動ステージは、X方向へ移動するXステージと、Y方向へ移動するYステージと、θ方向へ回転するθステージとを備え、基板を支持するチャックを搭載して、XY方向へ移動及びθ方向へ回転する。移動ステージのXステージ、Yステージ、及びθステージには、ボールねじ及びモータや、リニアモータ等の駆動機構が設けられており、各駆動機構に電力を供給するケーブルは、例えば特許文献1に記載の様に、「ケーブルベア」(株式会社椿本チエインの登録商標)等のケーブルガイドによって案内される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−2567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されたケーブルガイドは、ケーブルを収容する複数の連結されたケーブル収容具を有し、各ケーブル収容具には、収容されたケーブルを各ケーブル収容具からはみ出ない様に押さえるケーブル押さえ部材が設けられている。移動ステージに電力を供給するケーブルを、この様なケーブルガイドにより案内する従来のプロキシミティ露光装置では、移動ステージの移動に伴い、各ケーブル収容具内でのケーブルの位置がずれて、ケーブルが各ケーブル収容具のケーブル押さえ部材とこすれ合うと、ケーブルの被覆が摩擦で削れて塵を発生し、発生した塵がマスク及び基板に付着するという問題があった。
【0006】
本発明の課題は、基板を支持するチャックを移動する移動ステージの移動に伴うケーブルからの発塵を抑制して、マスク及び基板に塵が付着するのを防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のプロキシミティ露光装置は、基板を支持するチャックと、マスクを保持するマスクホルダとを備え、マスクと基板との間に微小なギャップを設けて、マスクのパターンを基板へ転写するプロキシミティ露光装置において、チャックを搭載する移動ステージと、移動ステージに接続された複数のケーブルと、複数のケーブルを押さえるケーブル押さえ部材が設けられた複数の連結されたケーブル収容具を有し、各ケーブル収容具のケーブル押さえ部材に超高分子量ポリエチレンから成る潤滑層が設けられたケーブルガイドとを備え、ケーブルガイドに収容されたケーブルにより移動ステージへ電力を供給して、移動ステージによりチャックを移動するものである。
【0008】
また、本発明のプロキシミティ露光装置の基板移動方法は、基板を支持するチャックと、マスクを保持するマスクホルダとを備え、マスクと基板との間に微小なギャップを設けて、マスクのパターンを基板へ転写するプロキシミティ露光装置の基板移動方法であって、チャックを移動ステージに搭載し、移動ステージに接続された複数のケーブルを、複数のケーブルを押さえるケーブル押さえ部材を設け、ケーブル押さえ部材に超高分子量ポリエチレンから成る潤滑層を設けた複数の連結したケーブル収容具を有するケーブルガイドに収容して案内し、ケーブルガイドに収容したケーブルにより移動ステージへ電力を供給して、移動ステージによりチャックを移動するものである。
【0009】
超高分子量ポリエチレン(Ultra High Molecular Weight Polyethylene)は、ポリエチレン分子の製造時間を長くすることにより、通常は2〜30万である分子量を100〜700万まで高めたポリエチレンである。超高分子量ポリエチレンの最大の特徴は、耐衝撃性と耐摩耗性に優れた点であるが、従来のケーブルガイドにおいても、耐衝撃性及び耐摩耗性を考慮してケーブル収容具の材料が選定されており、後述する様に加工性の低い超高分子量ポリエチレンを採用する必要性はなかった。しかしながら、本発明では、超高分子量ポリエチレンが自己潤滑性及び摺動特性に優れている点に特に着目し、ケーブルガイド自体の耐久性強化という目的ではなく、収容するケーブルの摩耗を低減する目的で、ケーブルガイドの各ケーブル収容具のケーブル押さえ部材に、超高分子量ポリエチレンから成る潤滑層を設けた。移動ステージの移動に伴い、各ケーブル収容具内でのケーブルの位置がずれても、ケーブルが各ケーブル収容具のケーブル押さえ部材に設けた潤滑層上を滑って、ケーブルの摩耗が低減される。従って、移動ステージの移動に伴うケーブルからの発塵が抑制され、マスク及び基板に塵が付着するのが防止される。
【0010】
さらに、本発明のプロキシミティ露光装置は、ケーブルガイドの各ケーブル収容具のケーブル押さえ部材の断面が長方形又は楕円形であり、各ケーブル収容具のケーブル押さえ部材の潤滑層が、加熱されて押しつぶされた超高分子量ポリエチレンから成る中空のチューブを、各ケーブル収容具のケーブル押さえ部材に被せて設けられたものである。また、本発明のプロキシミティ露光装置の基板移動方法は、ケーブルガイドの各ケーブル収容具の断面が長方形又は楕円形のケーブル押さえ部材に、加熱して押しつぶした超高分子量ポリエチレンから成る中空のチューブを被せて、各ケーブル収容具のケーブル押さえ部材に潤滑層を設けるものである。
【0011】
通常、ケーブルガイドの各ケーブル収容具のケーブル押さえ部材の断面は、各ケーブル収容具内の収容面積を大きくするため、横長の長方形又は楕円形と成っている。超高分子量ポリエチレンは、耐衝撃性と耐摩耗性に優れているが、溶融時の流動性が極めて低く射出成形に適さないため、ケーブルガイドのケーブル収容具自体を超高分子量ポリエチレンで構成することは困難である。一方、超高分子量ポリエチレンは、熱可塑性樹脂に分類される合成樹脂であり、中空成形したチューブを加熱すると、簡単に押しつぶして変形させることができる。従って、ケーブルガイドの各ケーブル収容具の断面が長方形又は楕円形のケーブル押さえ部材に、加熱して押しつぶした超高分子量ポリエチレンから成る中空のチューブを被せて、各ケーブル収容具のケーブル押さえ部材に潤滑層を設けると、簡単な加工で、各ケーブル収容具のケーブル押さえ部材に超高分子量ポリエチレンから成る潤滑層を設けることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、移動ステージに接続された複数のケーブルを、複数のケーブルを押さえるケーブル押さえ部材を設け、ケーブル押さえ部材に超高分子量ポリエチレンから成る潤滑層を設けた複数の連結したケーブル収容具を有するケーブルガイドに収容して案内し、ケーブルガイドに収容したケーブルにより移動ステージへ電力を供給して、移動ステージによりチャックを移動することにより、移動ステージの移動に伴うケーブルからの発塵を抑制して、マスク及び基板に塵が付着するのを防止することができる。
【0013】
さらに、本発明によれば、ケーブルガイドの各ケーブル収容具の断面が長方形又は楕円形のケーブル押さえ部材に、加熱して押しつぶした超高分子量ポリエチレンから成る中空のチューブを被せて、各ケーブル収容具のケーブル押さえ部材に潤滑層を設けることにより、簡単な加工で、各ケーブル収容具のケーブル押さえ部材に超高分子量ポリエチレンから成る潤滑層を設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施の形態によるプロキシミティ露光装置の概略構成を示す図である。
【図2】本発明の一実施の形態によるプロキシミティ露光装置の側面図である。
【図3】チャックを露光位置へ移動した状態を示す上面図である。
【図4】チャックを露光位置へ移動した状態を示す側面図である。
【図5】本発明の一実施の形態によるケーブルガイドのケーブル収容具の斜視図である。
【図6】本発明を用いないケーブルガイドのケーブル収容具の斜視図である。
【図7】本発明の一実施の形態によるケーブルガイドのケーブル収容具の分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明の一実施の形態によるプロキシミティ露光装置の概略構成を示す図である。また、図2は、本発明の一実施の形態によるプロキシミティ露光装置の側面図である。プロキシミティ露光装置は、ベース3、Xガイド4、移動ステージ、チャック10、マスクホルダ20、ケーブルガイド30、接続具31、給電装置50、給電ケーブル51、ステージ駆動回路60、信号ケーブル61、及び主制御装置70を含んで構成されている。なお、図2では、ステージ駆動回路60、及び主制御装置70が省略されている。プロキシミティ露光装置は、これらの他に、基板1をチャック10へ搬入し、また基板1をチャック10から搬出する基板搬送ロボット、露光光を照射する照射光学系、装置内の温度管理を行う温度制御ユニット等を備えている。
【0016】
なお、以下に説明する実施の形態におけるXY方向は例示であって、X方向とY方向とを入れ替えてもよい。
【0017】
図1及び図2において、チャック10は、基板1のロード及びアンロードを行うロード/アンロード位置にある。ロード/アンロード位置において、図示しない基板搬送ロボットにより、基板1がチャック10へ搬入され、また基板1がチャック10から搬出される。チャック10への基板1のロード及びチャック10からの基板1のアンロードは、チャック10に設けた複数の突き上げピンを用いて行われる。突き上げピンは、チャック10の内部に収納されており、チャック10の内部から上昇して、基板1をチャック10にロードする際、基板搬送ロボットから基板1を受け取り、基板1をチャック10からアンロードする際、基板搬送ロボットへ基板1を受け渡す。チャック10は、基板1の裏面を真空吸着して支持する。
【0018】
図3はチャックを露光位置へ移動した状態を示す上面図、図4はチャックを露光位置へ移動した状態を示す側面図である。基板1の露光を行う露光位置の上空には、マスク2を保持するマスクホルダ20が設置されている。マスクホルダ20には、露光光が通過する開口が設けられており、開口の下方には、マスク2が装着されている。マスクホルダ20の下面の開口の周囲には、吸着溝が設けられており、マスクホルダ20は、吸着溝により、マスク2の周辺部を真空吸着して保持している。マスクホルダ20に保持されたマスク2の上空には、図示しない照射光学系が配置されている。基板1の表面には、感光樹脂材料(フォトレジスト)が塗布されており、露光時、照射光学系からの露光光がマスク2を透過して基板1へ照射されることにより、マスク2のパターンが基板1の表面に転写され、基板1上にパターンが形成される。
【0019】
図2及び図4において、チャック10は、移動ステージに搭載されており、移動ステージは、Xステージ5、Yガイド6、Yステージ7、θステージ8、及びチャック支持台9を含んで構成されている。Xステージ5は、ベース3に設けられたX方向へ伸びるXガイド4に搭載され、Xガイド4に沿ってX方向へ移動する。Yステージ7は、Xステージ5に設けられたY方向へ伸びるYガイド6に搭載され、Yガイド6に沿ってY方向へ移動する。θステージ8は、Yステージ7に搭載され、θ方向へ回転する。チャック支持台9は、θステージ8に搭載され、チャック10を複数箇所で支持する。Xステージ5、Yステージ7、及びθステージ8には、ボールねじ及びモータや、リニアモータ等の図示しない駆動機構が設けられており、各駆動機構には、給電装置50から電力が供給され、図1のステージ駆動回路60から駆動制御信号が供給される。
【0020】
Xステージ5のX方向への移動及びYステージ7のY方向への移動により、チャック10は、ロード/アンロード位置と露光位置との間を移動される。ロード/アンロード位置において、Xステージ5のX方向への移動、Yステージ7のY方向への移動、及びθステージ8のθ方向への回転により、チャック10に搭載された基板1のプリアライメントが行われる。露光位置において、Xステージ5のX方向への移動及びYステージ7のY方向への移動により、チャック10に搭載された基板1のXY方向へのステップ移動が行われる。また、図示しないZ−チルト機構により、マスクホルダ20をZ方向(図4の図面上下方向)へ移動及びチルトすることによって、マスク2と基板1とのギャップ合わせが行われる。そして、Xステージ5のX方向への移動、Yステージ7のY方向への移動、及びθステージ8のθ方向への回転により、マスク2と基板1との位置合わせが行われる。図1において、主制御装置70は、ステージ駆動回路60を制御して、Xステージ5のX方向への移動、Yステージ7のY方向への移動、及びθステージ8のθ方向へ回転を行う。
【0021】
なお、本実施の形態では、マスクホルダ20をZ方向へ移動及びチルトすることにより、マスク2と基板1とのギャップ合わせを行っているが、チャック支持台9にZ−チルト機構を設けて、チャック10をZ方向へ移動及びチルトすることにより、マスク2と基板1とのギャップ合わせを行ってもよい。
【0022】
図1〜図4において、ベース3の手前には、ケーブルカイド30が設けられている。図1及び図3において、ケーブルカイド30内には、給電装置50からの複数の給電ケーブル51と、ステージ駆動回路60からの信号ケーブル61とが収容されている。各給電ケーブル51及び信号ケーブル61は、ケーブルカイド30に収容されて案内され、接続具31を介して移動ステージのXステージ5に接続されている。各給電ケーブル51は、移動ステージのXステージ5、Yステージ7、及びθステージ8の各駆動機構へ、給電装置50からの電力を供給する。また、信号ケーブル61は、移動ステージのXステージ5、Yステージ7、及びθステージ8の各駆動機構へ、ステージ駆動回路60からの駆動制御信号を供給する。
【0023】
なお、本実施の形態では、給電ケーブル51と信号ケーブル61とがケーブルカイド30に収容されているが、可撓性を有する他の配線や配管を、ケーブルカイド30に収容してもよい。例えば、移動ステージが油圧又は空気圧で動作するアクチュエータを備える場合には、作動油又は圧縮空気を供給するホース等をケーブルカイド30に収容してもよい。
【0024】
ケーブルカイド30は、ケーブルを収容する複数のケーブル収容具を連結して構成されている。図5は、本発明の一実施の形態によるケーブルガイドのケーブル収容具の斜視図である。また、図6は、本発明を用いないケーブルガイドのケーブル収容具の斜視図である。ケーブル収容具32,32’は、連結部材32a、接続部材32b、及びケーブル押さえ部材32cを含んで構成されている。一対の連結部材32aが、接続部材32bにより互いに接続されている。各連結部材32aは、他のケーブル収容具32,32’の各連結部材32aと、所定の角度内で回転可能に連結されて、ケーブルカイド30の側壁を構成する。ケーブル押さえ部材32cは、一対の連結部材32aにまたがって各連結部材32aの上部に取り付けられ、各連結部材32aの間に収容されたケーブルを、各ケーブル収容具32,32’からはみ出ない様に押さえる役割を果している。
【0025】
図5において、本発明の一実施の形態によるケーブルガイド30のケーブル収容具32のケーブル押さえ部材32cには、潤滑層として、超高分子量ポリエチレンチューブ32dが取り付けられている。超高分子量ポリエチレンの最大の特徴は、耐衝撃性と耐摩耗性に優れた点であるが、従来のケーブルガイドにおいても、耐衝撃性及び耐摩耗性を考慮してケーブル収容具の材料が選定されており、後述する様に加工性の低い超高分子量ポリエチレンを採用する必要性はなかった。しかしながら、本発明では、超高分子量ポリエチレンが自己潤滑性及び摺動特性に優れている点に特に着目し、ケーブルガイド30自体の耐久性強化という目的ではなく、収容するケーブルの摩耗を低減する目的で、ケーブルガイド30の各ケーブル収容具32のケーブル押さえ部材32cに、超高分子量ポリエチレンから成る潤滑層を設けた。移動ステージの移動に伴い、各ケーブル収容具32内でのケーブルの位置がずれても、ケーブルが各ケーブル収容具32のケーブル押さえ部材32cに設けた潤滑層上を滑って、ケーブルの摩耗が低減される。従って、移動ステージの移動に伴うケーブルからの発塵が抑制され、マスク2及び基板1に塵が付着するのが防止される。
【0026】
図7は、本発明の一実施の形態によるケーブルガイドのケーブル収容具の分解図である。図7は、ケーブル収容具32のケーブル押さえ部材32cを取り外した状態を示している。本実施の形態では、図7に示す様に、ケーブルガイド30の各ケーブル収容具32の断面が長方形又は楕円形のケーブル押さえ部材32cに、加熱して押しつぶした超高分子量ポリエチレンチューブ32dを被せて、各ケーブル収容具32のケーブル押さえ部材32cに超高分子量ポリエチレンから成る潤滑層を設けている。
【0027】
通常、ケーブルガイド30の各ケーブル収容具32のケーブル押さえ部材32cの断面は、各ケーブル収容具32内の収容面積を大きくするため、横長の長方形又は楕円形と成っている。超高分子量ポリエチレンは、耐衝撃性と耐摩耗性に優れているが、溶融時の流動性が極めて低く射出成形に適さないため、ケーブルガイド30のケーブル収容具32自体を超高分子量ポリエチレンで構成することは困難である。一方、超高分子量ポリエチレンは、熱可塑性樹脂に分類される合成樹脂であり、中空成形した超高分子量ポリエチレンチューブ32dを加熱すると、簡単に押しつぶして変形させることができる。従って、ケーブルガイド30の各ケーブル収容具32の断面が長方形又は楕円形のケーブル押さえ部材32cに、加熱して押しつぶした超高分子量ポリエチレンチューブ32dを被せて、各ケーブル収容具32のケーブル押さえ部材32cに潤滑層を設けると、簡単な加工で、各ケーブル収容具32のケーブル押さえ部材32cに超高分子量ポリエチレンから成る潤滑層を設けることができる。
【0028】
なお、図5において、ケーブル収容具32の接続部材32bも、ケーブルを押さえるケーブル押さえ部材としての機能を有しており、接続部材32bが着脱可能に構成されている場合は、接続部材32bにも本発明を適用することができる。また、ケーブル押さえ部材には、図5に示す各連結部材32aの上部にまたがって設けられるものの他に、ケーブル収容具32内でケーブル同士のからみを防止する仕切り板として、ケーブル収容具32内の任意の高さに設けられるものがあり、その様な仕切り板としてのケーブル押さえ部材にも、本発明を適用することができる。
【0029】
以上説明した実施の形態によれば、移動ステージに接続された複数の給電ケーブル51を、複数の給電ケーブル51を押さえるケーブル押さえ部材32cを設け、ケーブル押さえ部材32cに超高分子量ポリエチレンチューブ32dから成る潤滑層を設けた複数の連結したケーブル収容具32を有するケーブルガイド30に収容して案内し、ケーブルガイド30に収容した給電ケーブル51により移動ステージへ電力を供給して、移動ステージによりチャック10を移動することにより、移動ステージの移動に伴う給電ケーブル51からの発塵を抑制して、マスク2及び基板1に塵が付着するのを防止することができる。
【0030】
さらに、ケーブルガイド30の各ケーブル収容具32の断面が長方形又は楕円形のケーブル押さえ部材32cに、加熱して押しつぶした超高分子量ポリエチレンチューブ32dを被せて、各ケーブル収容具32のケーブル押さえ部材32cに潤滑層を設けることにより、簡単な加工で、各ケーブル収容具32のケーブル押さえ部材32cに超高分子量ポリエチレンから成る潤滑層を設けることができる。
【符号の説明】
【0031】
1 基板
2 マスク
3 ベース
4 Xガイド
5 Xステージ
6 Yガイド
7 Yステージ
8 θステージ
9 チャック支持台
10 チャック
20 マスクホルダ
30 ケーブルガイド
31 接続具
32,32’ ケーブル収容具
32a 連結部材
32b 接続部材
32c ケーブル押さえ部材
32d 超高分子量ポリエチレンチューブ
50 給電装置
51 給電ケーブル
60 ステージ駆動回路
61 信号ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を支持するチャックと、マスクを保持するマスクホルダとを備え、マスクと基板との間に微小なギャップを設けて、マスクのパターンを基板へ転写するプロキシミティ露光装置において、
前記チャックを搭載する移動ステージと、
前記移動ステージに接続された複数のケーブルと、
前記複数のケーブルを押さえるケーブル押さえ部材が設けられた複数の連結されたケーブル収容具を有し、各ケーブル収容具のケーブル押さえ部材に超高分子量ポリエチレンから成る潤滑層が設けられたケーブルガイドとを備え、
前記ケーブルガイドに収容された前記ケーブルにより前記移動ステージへ電力を供給して、前記移動ステージにより前記チャックを移動することを特徴とするプロキシミティ露光装置。
【請求項2】
前記ケーブルガイドの各ケーブル収容具のケーブル押さえ部材は、断面が長方形又は楕円形であり、
各ケーブル収容具のケーブル押さえ部材の潤滑層は、加熱されて押しつぶされた超高分子量ポリエチレンから成る中空のチューブを、各ケーブル収容具のケーブル押さえ部材に被せて設けられたことを特徴とする請求項1に記載のプロキシミティ露光装置。
【請求項3】
基板を支持するチャックと、マスクを保持するマスクホルダとを備え、マスクと基板との間に微小なギャップを設けて、マスクのパターンを基板へ転写するプロキシミティ露光装置の基板移動方法であって、
チャックを移動ステージに搭載し、
移動ステージに接続された複数のケーブルを、複数のケーブルを押さえるケーブル押さえ部材を設け、ケーブル押さえ部材に超高分子量ポリエチレンから成る潤滑層を設けた複数の連結したケーブル収容具を有するケーブルガイドに収容して案内し、
ケーブルガイドに収容したケーブルにより移動ステージへ電力を供給して、移動ステージによりチャックを移動することを特徴とするプロキシミティ露光装置の基板移動方法。
【請求項4】
ケーブルガイドの各ケーブル収容具の断面が長方形又は楕円形のケーブル押さえ部材に、加熱して押しつぶした超高分子量ポリエチレンから成る中空のチューブを被せて、各ケーブル収容具のケーブル押さえ部材に潤滑層を設けることを特徴とする請求項3に記載のプロキシミティ露光装置の基板移動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−73176(P2013−73176A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213988(P2011−213988)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】