説明

プログラム及び運転整理ダイヤ作成装置

【課題】運行乱れの発生直後等の運休手配が間に合わない列車に対する適切な処置を行い、ダイヤの平常回復を早めた適切な運転整理の実現。
【解決手段】パタン手配開始可能時刻において列車支障区間に入り込んでいるために運休手配が間に合わない遅延承知列車TDについて、ヤマ切り対象駅以降を運休とするとともに、列車ダイヤで定められる折り返し相手列車TD’のヤマ切り対象駅以前を運休とする。そして、ヤマ切り対象駅において、遅延承知列車を折り返し相手列車に折り返すように設定するといったヤマ切り処理を行う。また、ヤマ切り処理が行えない遅延承知列車については、タスキ切り処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンピュータに、列車ダイヤに対する運転整理を行って運転整理ダイヤを作成させるためのプログラム等に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道では、事故や故障、災害等によって列車の運行に乱れが生じた場合、乱れたダイヤを正常な運行に復帰させるため、列車ダイヤを修正・変更する運転整理が行われる。この運転整理は、ダイヤが乱れて乗客に不便を強いる状況において実施されるものであるため、迅速且つ効率の良い運転整理が望まれる。近年では、迅速且つ効率の良い運転整理を実現するため、コンピュータを用いた様々な手法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−50819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、列車の運行乱れの発生直後等には、運休させたくとも運休手配が間に合わず運休不可能となる列車が発生することがある。しかしながら、従来の運転整理の提案手法では、このような運休の手配が間に合わなかった列車に対する手当はなされておらず、そのまま運行させることになるため、作成された運転整理ダイヤが実現され得ないダイヤとなってしまうおそれがある。更に、この列車に折り返し列車が定められている場合、その折り返し列車についても大幅な遅延が発生する。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、運行乱れの発生直後等の運休手配が間に合わない列車に対する適切な処置を行い、ダイヤの平常回復を早めた適切な運転整理を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための第1の形態は、
コンピュータに、所与の支障区間、所与の支障時間帯及び所与の手配開始時刻をもとに、列車ダイヤに対する運転整理を行って、運転整理ダイヤを作成させるためのプログラムであって、
前記列車ダイヤを構成する列車のうち、前記手配開始時刻において前記支障区間内を走行する列車を検索して、遅延承知列車として設定する遅延承知列車設定手段、
前記支障区間及び前記支障時間帯に基づいて、遅延承知した場合の前記遅延承知列車の列車スジである遅延承知列車予測スジを予測する列車スジ予測手段、
前記遅延承知列車予測スジと、前記列車ダイヤで定められた前記遅延承知列車の終着駅における折り返し相手列車の列車スジとの、前記列車ダイヤ上での交差位置を算出する交差位置算出手段、
前記遅延承知列車に対するヤマ切り処理を行うヤマ切り処理手段、
として前記コンピュータを機能させるとともに、
前記ヤマ切り処理手段が、
前記支障区間の終了駅と前記交差位置との間の駅であって、ヤマ切り可能駅として予め定められた駅をヤマ切り対象駅として選択するヤマ切り対象駅選択手段と、
前記遅延承知列車の前記ヤマ切り対象駅以降と、前記折り返し相手列車の前記ヤマ切り対象駅以前とを運休とするヤマ切り用運休設定手段と、
前記ヤマ切り対象駅において前記遅延列車を前記折り返し相手列車に折り返すように設定するヤマ切り用折り返し設定手段と、
を有するように前記コンピュータを機能させるためのプログラムである。
【0007】
また、他の形態として、
所与の支障区間、所与の支障時間帯及び所与の手配開始時刻をもとに、列車ダイヤに対する運転整理を行って運転整理ダイヤを作成する運転整理ダイヤ作成装置であって、
前記列車ダイヤを構成する列車のうち、前記手配開始時刻において前記支障区間内を走行する列車を検索して、遅延承知列車として設定する遅延承知列車設定手段と、
前記支障区間及び前記支障時間帯に基づいて、遅延承知した場合の前記遅延承知列車の列車スジである遅延承知列車予測スジを予測する列車スジ予測手段と、
前記遅延承知列車予測スジと、前記列車ダイヤで定められた前記遅延承知列車の終着駅における折り返し相手列車の列車スジとの、前記列車ダイヤ上での交差位置を算出する交差位置算出手段と、
前記遅延承知列車に対するヤマ切り処理を行うヤマ切り処理手段と、
を備え、
前記ヤマ切り処理手段は、
前記支障区間の終了駅と前記交差位置との間の駅であって、ヤマ切り可能駅として予め定められた駅をヤマ切り対象駅として選択するヤマ切り対象駅選択手段と、
前記遅延承知列車の前記ヤマ切り対象駅以降と、前記折り返し相手列車の前記ヤマ切り対象駅以前とを運休とするヤマ切り用運休設定手段と、
前記ヤマ切り対象駅において前記遅延列車を前記折り返し相手列車に折り返すように設定するヤマ切り用折り返し設定手段と、
を有する、
運転整理ダイヤ作成装置を構成しても良い。
【0008】
この第1の形態等によれば、遅延承知列車が設定され、この遅延承知列車を遅延承知した場合の予測される列車スジである遅延承知列車予測スジと、列車ダイヤ上で定められた遅延承知列車の終着駅における折り返し相手列車の列車スジとの、列車ダイヤ上での交差位置が算出される。次いで、支障区間の終了駅と交差位置との間の駅であって、ヤマ切り可能駅として定められた駅が、ヤマ切り対象駅として選択される。そして、遅延承知列車のヤマ切り対象駅以降を運休とするとともに、折り返し相手列車のヤマ切り対象駅以前を運休とし、ヤマ切り対象駅において、遅延承知列車を折り返し相手列車に折り返すように設定するといった、遅延承知列車に対するヤマ切り処理が行われる。
【0009】
ここで、遅延承知列車は、手配開始時刻において支障区間内を走行する列車、つまり、大幅な遅延が見込まれる列車であるが、この遅延承知列車に対してヤマ切り処理を行うことで、遅延承知列車の遅延を回復し、列車ダイヤの回復を早める運転整理が実現される。
【0010】
第2の形態として、第1の形態のプログラムであって、
前記ヤマ切り対象駅選択手段が、前記支障区間の終了駅と前記交差位置との間に複数のヤマ切り可能駅がある場合に、前記遅延承知列車の終着駅に最寄りの駅を前記ヤマ切り対象駅として選択する、
ように前記コンピュータを機能させるためのプログラムを構成しても良い。
【0011】
この第2の形態によれば、支障区間の終了駅と交差位置との間に複数のヤマ切り可能駅がある場合に、遅延承知列車の終着駅に最寄りの駅(すなわち、交差位置に最寄りの駅)がヤマ切り対象駅として選択される。これにより、ヤマ切り処理によって運休とされる遅延承知列車及び折り返し相手列車の区間を可能な限り短くすることができる。
【0012】
第3の形態として、第1又は第2の形態のプログラムであって、
前記支障区間の終了駅と前記交差位置との間前記ヤマ切り可能駅が無い場合に、前記遅延承知列車に対するタスキ切り処理を行うタスキ切り処理手段、
として前記コンピュータを更に機能させるとともに、
前記タスキ切り処理手段が、
前記遅延承知列車の始発駅と終着駅との間の駅であって、タスキ切り可能駅として予め定められた駅をタスキ切り対象駅として選択するタスキ切り対象駅選択手段と、
前記遅延承知列車と同方向且つ同区間を運行する列車であって、前記タスキ切り対象駅において運休手配が可能な列車をタスキ切り相手列車として選択するタスキ切り相手列車選択手段と、
前記タスキ切り相手列車の前記タスキ切り対象駅以降を運休とするタスキ切り相手列車運休設定手段と、
前記折り返し相手列車の前記タスキ切り対象駅以前を運休とする折り返し相手列車運休設定手段と、
前記タスキ切り対象駅において、前記タスキ切り相手列車を前記折り返し相手列車に折り返すように設定する第1のタスキ切り用折り返し手段と、
前記遅延承知列車の終着駅において、前記遅延承知列車を、前記列車ダイヤで定められた前記タスキ切り相手列車の終着駅における折り返し相手列車に折り返すように設定する第2のタスキ切り用折り返し設定手段と、
を有するように前記コンピュータを機能させるためのプログラムを構成しても良い。
【0013】
この第3の形態によれば、支障区間の終了駅と交差位置との間にヤマ切り可能駅がない場合に、遅延承知列車に対するタスキ切り処理が行われる。タスキ切り処理では、遅延承知列車の始発駅と終着駅との間の駅であって、タスキ切り可能駅として予め定められた駅がタスキ切り対象駅として選択される。また、遅延承知列車と同方向且つ同区間を運行する列車であって、タスキ切り対象駅において運休手配が可能な列車がタスキ切り相手列車として選択される。次いで、このタスキ切り相手列車のタスキ切り対象駅以降が運休とされるとともに、折り返し相手列車のタスキ切り対象駅以前が運休とされる。そして、タスキ切り対象駅において、タスキ切り相手列車が、折り返し相手列車に折り返すように設定され、また、遅延承知列車の終着駅において、遅延承知列車がタスキ切り相手列車の折り返し相手列車に折り返すように設定される。このように、遅延承知列車に対するタスキ切り処理を行うことで、遅延承知列車の遅延を回復し、列車ダイヤの回復を早める運転整理が実現される。
【0014】
第4の形態として、第3の形態のプログラムであって、
前記タスキ切り対象駅選択手段が、前記遅延承知列車の始発駅と終着駅との間に複数のタスキ切り可能駅がある場合に、前記遅延対象列車の終着駅に最寄りの駅を前記タスキ切り対象駅として選択する、
ように前記コンピュータを機能させるためのプログラムを構成しても良い。
【0015】
この第4の形態によれば、遅延承知列車の始発駅と終着駅との間に複数のタスキ切り可能駅がある場合に、遅延承知列車の終着駅に最寄りの駅が、タスキ切り対象駅として選択される。これにより、タスキ切り処理によって運休とされるタスキ切り相手列車の区間を可能な限り短くすることができる。
【0016】
第5の形態として、第3又は第4の形態のプログラムであって、
前記タスキ切り処理手段が、前記遅延承知列車の終着駅が予め定められた滞留禁止駅である場合に、前記遅延承知列車のうちの、当該滞留禁止駅に対応づけて予め定められた代替取込駅以降と、前記タスキ切り相手列車の折り返し相手列車のうちの、前記代替取込駅以前を運休とする手段を更に有し、
前記タスキ切り用折り返し設定手段が、前記遅延承知列車の終着駅が予め定められた滞留禁止駅である場合に、前記代替取込駅において前記遅延承知列車を、前記タスキ切り相手列車の折り返し相手列車に折り返すように設定する、
ように前記コンピュータを機能させるためのプログラムを構成しても良い。
【0017】
この第5の形態によれば、遅延承知列車の終着駅が滞留禁止駅である場合に、遅延承知列車の、該滞留禁止駅に予め対応付けて定められた代替取込駅以降が運休とされるとともに、タスキ切り相手列車の折り返し相手列車の代替取込駅以前が運休とされる。そして、代替取込駅において、遅延承知列車が、タスキ切り相手列車の折り返し相手列車に折り返すように設定される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】運転整理の対象となる列車ダイヤの一例。
【図2】支障条件及び運休候補列車の設定例。
【図3】臨時折り返しパタンの設定例。
【図4】遅延承知列車の設定例。
【図5】運休候補列車の臨時折り返しの設定例。
【図6】運休候補列車の臨時折り返しの設定例。
【図7】作成された運転整理ダイヤの一例。
【図8】ヤマ切り処理の説明図。
【図9】ヤマ切り処理の説明図。
【図10】ヤマ切り処理が不可能な場合の一例。
【図11】タスキ切り処理の説明図。
【図12】タスキ切り処理の説明図。
【図13】運転整理ダイヤ作成装置の機能構成図。
【図14】支障条件データのデータ構成例。
【図15】運休対象区間設定テーブルのデータ構成例。
【図16】運休対象区間データのデータ構成例。
【図17】ヤマ切り可能駅データのデータ構成例。
【図18】タスキ切り可能駅データのデータ構成例。
【図19】滞留禁止駅データのデータ構成例。
【図20】運転整理ダイヤ作成処理のフローチャート。
【図21】図20のフローチャートの続き。
【図22】運転整理ダイヤ作成処理中に実行されるタスキ切り処理のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。但し、本発明の適用可能な実施形態がこれに限定されるものではない。
【0020】
[原理]
先ず、本実施形態における運転整理の原理を説明する。
【0021】
図1は、運転整理の対象となる列車ダイヤの一例を示す図である。図1に示す列車ダイヤは、横時刻を時刻t、縦軸を駅として、A駅〜Z駅間を走行する列車を列車スジで表している。なお、列車の進行方向は、A駅からZ駅に向かう方向を「下り」とし、Z駅からA駅に向かう方向を「上り」とする。
【0022】
事故や車両故障等によるダイヤ乱れ時には、乱れたダイヤを正常なダイヤ(列車ダイヤ)に復帰させることを目的とし、列車ダイヤを修正・変更する運転整理を行うための運転整理ダイヤ(運転整理案)が作成される。本実施形態において、運転整理ダイヤの作成は、次のように行われる。
【0023】
(1)臨時折り返しの設定
先ず、図2に示すように、発生した列車運行の支障に関する条件(支障条件)として、列車支障区間、列車支障時間帯及びパタン手配開始可能時刻が与えられる。列車支障区間は、支障によって列車が走行できなくなった駅間である。例えば、図2では、「S駅〜T駅間」が、列車支障区間である。列車支障時間帯は、支障によって列車が走行できないと想定される時間帯であり、具体的には、支障の発生時刻t1から復旧見込み時刻t3までの時間帯である。
【0024】
ここで、列車支障区間及び列車支障時間帯によって定まる、列車が走行することができないダイヤ上のエリアを「列車支障ゾーン」という。また、パタン手配開始可能時刻は、列車支障が発生した後、運休や折り返し等のダイヤパタンの変更手配が可能となる時刻であり、支障発生時刻t1以降の時刻t2となる。
【0025】
支障条件が与えられると、与えられた支障条件に応じて、列車を運休させる区間である「運休対象区間」が定められる。運休対象区間は、折り返し可能駅を端駅とする駅間であって、列車支障区間を含む区間として定められる。
【0026】
折り返し可能駅は、列車の折り返しが可能な駅であり、ここでは、車庫や留置線が設けられている駅や、ダイヤパタンの始終着駅も含む。この折り返し可能駅は、予め、駅の構造等によって定められている。例えば、図2では、列車支障区間である「S駅〜T駅間」を含む「K駅〜Z駅間」が運休対象区間であり、この端駅であるK駅及びZ駅は、ともに、折り返し可能駅である。
【0027】
次いで、設定された運休対象区間の端駅それぞれについて、臨時折り返しを計画する臨時折り返し駅であるか否かが判定される。具体的には、端駅がダイヤパタンの始終着駅でない場合、該駅は臨時折り返し駅とされ、ダイヤパタンの始終着駅である場合、該駅は臨時折り返し駅とされない。例えば、図2では、運休対象区間である「K駅〜Z駅」の一方の端駅であるK駅は臨時折り返し駅であり、他方の端駅であるZ駅は、ダイヤパタンの始終着駅であるため臨時折り返し駅ではない。
【0028】
そして、臨時折り返し駅に定められた臨時折り返しパタンに従った列車の臨時折り返しが計画されることで、列車ダイヤの修正・変更が行われる。臨時折り返しパタンとは、該当する駅において臨時に折り返しを計画するときの折り返しパタンであり、折り返し駅に到着した列車と、該駅において折り返しでつながれる相手列車との組み合わせである。本実施形態では、臨時折り返しパタンは、図3に示すように定められている。すなわち、運休対象区間の外方から臨時折り返し対象駅に到着した列車と、該列車が到着した後、該駅から最初に発車する逆方向の列車を、臨時折り返しの相手列車とする組み合わせである。
【0029】
臨時折り返しの設定は、次のように行われる。先ず、運休候補列車が設定される。具体的には、列車ダイヤを構成する列車のうち、上り/下り方向それぞれについて、列車支障ゾーンにかかる列車が、運行に支障が生じる支障列車として抽出される。そして、この抽出された支障列車が、運休対象区間における運休候補となる運休候補列車として設定される。
【0030】
このとき、上り/下り方向それぞれの支障列車の本数m1,m2が異なる場合、上り/下り方向それぞれの運休候補列車の本数(運休本数)mが同じとなるよう、多い方の本数に合わせる。すなわち、少ない方向について、最後の運休候補列車の直後の列車から順に、足りない本数だけ運休候補列車として追加設定される。例えば、図2では、上り方向については、列車支障ゾーンにかかる列車6,8,10の3本が支障列車であり、これらが運休候補列車とされる。また、下り方向については、列車支障ゾーンにかかる列車3,5,7の3本が支障列車であり、これらが運休候補列車とされる。そして、運休本数mは「3」である。
【0031】
次いで、図4に示すように、「遅延承知列車」が設定される。遅延承知列車とは、運休候補列車のうち、運休の手配が間に合わない等の理由で、大幅に遅延することを承知で走らせる(運休不可能な)列車である。具体的には、パタン手配開始可能時刻t2において、既に運休対象区間に入り込んでいる運休候補列車が、遅延承知列車とされる。
【0032】
そして、上り/下り方向それぞれについて、運休候補列車から遅延承知列車に変更した本数だけ、新たに運休候補列車が追加される。図4では、下り方向については、列車3,5の2本が遅延承知列車とされ、列車7の直後の列車9,11の2本が、新たに運休候補列車として追加設定される。また、上り方向については、列車6の1本が遅延承知列車とされ、列車10の直後の列車12の1本が、新たに運休候補列車として追加設定される。
【0033】
続いて、図5に示すように、設定した運休候補列車それぞれについて、順に、定められた臨時折り返しパタンに従って、臨時折り返し駅での臨時折り返しが設定される。臨時折り返しの設定は、臨時折り返しパタンで定められる折り返しの相手列車が、(a)運休候補列車、(b)遅延承知列車、(c)どちらでもない、の何れであるかに応じて異なる。
【0034】
すなわち、臨時折り返し駅に到着した運休候補列車(以下、「対象列車」という)の臨時折り返しの相手列車が、(a)運休候補列車のときには、対象列車を臨時折り返し駅で折り返してこの相手列車につなぐ。図5では、運休候補列車である列車11の臨時折り返しパタンの相手列車は列車8であり、この列車8は運休候補列車である。従って、列車11は、B駅において、折り返して列車8につなぐ折り返しパタンに変更される。
【0035】
また、臨時折り返しの相手列車が、(b)遅延承知列車のときには、この相手列車を、臨時折り返し駅で「切断」する。切断とは、ダイヤ上で1本の列車を異なる2本の列車に分割することであり、車両の分割併合とは異なる。そして、対象列車を、臨時折り返し駅において、切断された相手列車の臨時折り返し駅以降の列車に、折り返しでつなぐ。また、切断された相手列車の、臨時折り返し駅以前の列車部分は、臨時折り返し駅において、同方向のm本後の列車に継走でつなぐ。例えば、図5では、列車9の臨時折り返しの相手列車は列車6であり、この列車6は遅延承知列車である。従って、この列車6を、臨時折り返し駅であるK駅で、K駅以前の列車部分である列車6aと、K駅以降の列車部分である列車6bとに切断する。そして、列車9を、K駅において、折り返しで列車6bにつなぐ。また、列車6aについては、同方向の3本後の列車12に、K駅において、継走でつなぐ。
【0036】
また、臨時折り返しの相手列車が、(c)遅延承知列車及び運休候補列車のどちらでもないときには、臨時折り返し対象駅での折り返しが不可能であるため、対象列車を運休候補列車から遅延承知列車に変更する。そして、対象列車と同方向の最後の運休候補列車の直後の列車を、新たに運休候補列車として追加設定する。例えば、図6では、列車7の臨時折り返しの相手列車は列車4であるが、この列車4は、運休候補列車でも遅延承知列車でもない通常の列車である。従って、列車7は、運休候補列車から遅延承知列車に変更されるとともに、列車13が、新たに運休候補列車として追加設定される。これに伴い、K駅において、列車13から列車10への折り返しパタンが適用される。
【0037】
図7は、図2に示した列車ダイヤに対して、与えられた支障条件をもとに、臨時折り返しの設定を行うことで作成された運転整理ダイヤを示す図である。図7に示す運転整理ダイヤでは、運休候補列車は、運休対象区間において運休させているとともに、臨時折り返し駅であるK駅において、下り列車が臨時折り返しされている。また、遅延承知列車は、そのまま運行させているが、列車支障ゾーンを回避するように走行するため、大幅な遅延の発生が予測される。
【0038】
(2)遅延承知列車に対する遅延回復
続いて、上述の臨時折り返しの設定の際に設定された遅延承知列車について、遅延回復が行われる。具体的には、遅延承知列車に対するヤマ切り/タスキ切り処理を行って、列車スジを変更する。「ヤマ切り」とは、同じ運用の上下列車を運休にすることである。また、「タスキ切り」とは、別運用の上下列車を運休にすることであり、「バッテン切り」とも呼ばれる。
【0039】
図8は、遅延承知列車に対するヤマ切り処理を説明する図である。図8では、A駅〜Z駅間を走行する遅延承知列車TDを示している。この遅延承知列車TDは、終着駅(Z駅)に到着した後、折り返して、Z駅〜A駅間を走行する列車TD’として運用される。また、この遅延承知列車TDの、列車支障ゾーンの影響によって予測される列車スジ(以下、「遅延予測スジ」という)を実線で示し、運転整理前の列車ダイヤにおける列車スジを破線で示している。
【0040】
先ず、遅延承知列車TDの遅延予測スジと、折り返し相手列車TD’の列車スジとが、列車ダイヤ上で交差する位置Pi、及び、時刻tiが算出される。次いで、列車支障区間の終了駅と交差位置Piとの間のヤマ切り対象駅が選択される。ヤマ切り対象駅は、予めヤマ切り可能駅として定められた駅が選択される。ヤマ切り可能駅とは、列車に対するヤマ切り処理が可能な駅、具体的には、列車の折り返しが可能な駅であり、駅の構造等によって予め定められている。
【0041】
このとき、列車支障区間の終了駅と交差位置Piとの間に複数のヤマ切り可能駅が存在する場合には、これらの複数のヤマ切り可能駅のうち、交差位置Piに最も近い駅が、ヤマ切り対象駅として選択される。例えば、図8では、列車支障区間の終了駅であるF駅と交差位置Piとの間には、ヤマ切り可能駅であるn個の駅(Q1駅〜Qn駅)が存在するが、遅延承知列車TDの終着駅であるZ駅に最も近いQn駅が、ヤマ切り対象駅として選択される。
【0042】
次いで、遅延承知列車TDについて、ヤマ切り対象駅から終着駅までの区間が運休(部分運休)とされる。例えば、図8では、遅延対象列車TDの「Qn駅〜Z駅」の区間が運休となる。
【0043】
また、折り返し相手列車TD’について、始発駅からヤマ切り対象駅までの区間が運休とされる。例えば、図8では、折り返し相手列車TD’の「Z駅〜Qn駅」の区間が運休となる。ここで、ヤマ切り対象駅は、列車支障区間の終了駅と交差位置Piとの間のヤマ切り可能駅のうち、終着駅に最も近い駅が選択されている。このため、ヤマ切り処理による遅延承知列車TD及び折り返し相手列車TD’の運休区間を、最小限とすることができる。
【0044】
そして、図9に示すように、ヤマ切り対象駅において、遅延承知列車TDを折り返して折り返し相手列車TD’につなぐ。例えば、図9では、Qn駅において、遅延承知列車TDを折り返し相手列車TD’に折り返しでつなぐ。
【0045】
ここで、列車支障区間の終了駅と、遅延承知列車TDと折り返し相手列車TD’の交差位置Piとの間にヤマ切り可能駅が無い場合には、遅延承知列車TDに対するヤマ切り処理は不可能である。
【0046】
図10は、ヤマ切り処理が不可能な場合を説明する図である。図10では、A駅〜Z駅間を走行する遅延承知列車TDを示している。この遅延承知列車TDは、終着駅であるZ駅に到着した後、折り返して、Z駅〜A駅間を走行する列車TD’として運用される。また、この遅延承知列車TDの、列車支障ゾーンの影響によって予測される列車スジを「実線」で示し、運転整理前の列車ダイヤにおける列車スジを「破線」で示している。図10では、遅延承知列車TDの始発駅と、遅延承知列車TDと折り返し相手列車TD’の交差位置Piとの間に、ヤマ切り可能駅が存在しない。この場合には、代わりにタスキ切り処理が行われる。
【0047】
図11は、タスキ切り処理を説明する図である。図11に示すように、遅延承知列車TDの始発駅と終着駅との間のタスキ切り対象駅が選択される。タスキ切り対象駅は、予めタスキ切り可能駅として定められた駅が選択される。タスキ切り対象駅とは、列車に対するタスキ切りが可能な駅、すなわち、列車の折り返しが可能な駅であり、予め、駅の構造等によって定められている。なお、タスキ切り可能駅は、ヤマ切り可能駅と同じとは限らない。
【0048】
このとき、遅延承知列車TDの始発駅と終着駅との間に複数のタスキ切り可能駅が存在する場合には、これらの複数のタスキ切り可能駅のうちから、遅延承知列車TDの終着駅に最も近い駅が、タスキ切り対象駅として選択される。例えば、図11では、A駅とZ駅の間に、タスキ切り可能駅であるn個の駅(R1駅〜Rn駅)が存在するが、遅延承知列車TDの終着駅であるZ駅に最も近いRn駅が、タスキ切り対象駅として選択される。
【0049】
また、図11に示すように、折り返し相手列車TD’の、タスキ切りの相手列車TDXが特定される。具体的には、折り返し相手列車TD’と同系統であり、且つ、遅延承知列車ではない列車であって、タスキ切り可能駅において運休手配が可能な最も早い列車が、タスキ切り相手列車TDXとして選択される。更に、運転整理前の列車ダイヤで定められる、このタスキ切り相手列車TDXの、終着駅における折り返し相手列車TDX’が特定される。
【0050】
次いで、折り返し相手列車TD’の始発駅からタスキ切り対象駅までの区間が運休とされる。例えば、図11では、折り返し相手列車TD’の「Z駅〜Rn駅」の区間が運休となる。なお、タスキ切り対象駅と折り返し相手列車TD’の始発駅とが同一の場合は、折り返し相手列車TD’は全区間で運休となる。
【0051】
そして、タスキ切り相手列車TDXについて、タスキ切り対象駅以降の区間(タスキ切り対象駅から終着駅までの区間)を運休とする。ここで、タスキ切り対象駅は、遅延承知列車TDの始発駅と終着駅と間のタスキ切り可能駅のうち、遅延承知列車TDの終着駅に最も近い駅が選択されている。このため、タスキ切り処理によるタスキ切り相手列車の運休区間を、最小限とすることができる。
【0052】
そして、タスキ切り対象駅において、タスキ切り相手列車TDXを折り返し相手列車TD’に折り返しでつなぐ。例えば、図11では、Rn駅において、タスキ切り相手列車TDXを折り返し相手列車TD’に折り返しでつなぐ
【0053】
続いて、遅延承知列車TDの終着駅が滞留禁止駅であるか否かが判定される。ここで、滞留禁止駅とは、列車の滞留(一定の場所に留めておくこと)が禁止される駅であり、予め、駅の構造等によって定められている。
【0054】
図11に示すように、遅延承知列車TDの終着駅が滞留禁止駅でないならば、遅延承知列車TDを、そのまま、始発駅から終着駅まで全区間で運行させる。そして、遅延承知列車TDの終着駅において、遅延承知列車TDを折り返してタスキ切り相手列車TDX’につなぐ。
【0055】
例えば、図11では、遅延承知列車TDの終着駅であるZ駅は滞留禁止駅ではない。この場合、遅延承知列車TDの終着駅であるZ駅において、タスキ切り相手列車TDXの折り返し相手列車TDX’に折り返してつなぐ。
【0056】
一方、図12に示すように、遅延承知列車TDの終着駅が滞留禁止駅であるならば、この滞留禁止駅に予め対応付けて定められている代替取込駅を特定する。ここで、代替取込駅とは、滞留禁止駅でない駅、すなわち、列車の終着駅とし、列車を滞留させることが可能な駅であり、予め、駅の構造等によって定められている。
【0057】
次いで、遅延承知列車TDについて、代替取込駅以降の区間(代替取込駅から終着駅までの区間)を運休とする。また、タスキ切り相手列車TDXの折り返し相手列車TDX’について、代替取込駅以前の区間(始発駅から代替取込駅までの区間)を運休とする。そして、代替取込駅において、遅延承知列車TDを、折り返してタスキ切り相手列車TDXの折り返し相手列車TDX’につなぐ。
【0058】
例えば、図12では、終着駅であるZ駅は滞留禁止駅であり、このZ駅には、W駅が代替取込駅として対応付けられている。この場合、遅延承知列車TDについて、W駅以降の区間(W駅〜Z駅間)を運休とする。また、タスキ切り対象列車TDXの折り返し相手列車TDX’について、W駅以前の区間(Z駅〜W駅)までを運休とする。そして、W駅において、遅延承知列車TDを、折り返してタスキ切り相手列車TDXを特定の折り返し相手列車TDX’につなぐ。
【0059】
[構成]
図13は、運転整理ダイヤ作成装置1の機能構成図である。図13によれば、運転整理ダイヤ作成装置1は、機能的には、処理部10と、入力部20と、表示部30と、通信部40と、記憶部50とを備えて構成される。
【0060】
処理部10は、例えばCPU等のプロセッサで実現され、入力部20から入力されたデータや、記憶部50に記憶されたプログラムやデータ等に基づいて、運転整理ダイヤ作成装置1を構成する各部への指示やデータ転送を行い、運転整理ダイヤ作成装置1の全体制御を行う。また、処理部10は、運転整理ダイヤ作成プログラム510に従った運転整理ダイヤ作成処理を行って、列車ダイヤに対する運転整理ダイヤ(運転整理案)を作成する。ここで、運転整理の対象となる列車ダイヤに関するデータは、列車ダイヤデータ520として記憶され、作成された運転整理ダイヤに関するデータは、運転整理ダイヤデータ530として記憶される。
【0061】
運転整理ダイヤ作成処理では、先ず、例えば利用者による入力部20からの入力指示等に従って、運転整理の対象となる列車ダイヤに対する支障条件を設定する。ここで設定される支障条件は、列車支障区間、列車支障時間帯、及び、パタン手配開始可能時刻である。設定された支障条件は、支障条件データ560として記憶される。
【0062】
図14は、支障条件データ560のデータ構成の一例を示す図である。図14に示すように、支障条件データ560は、列車支障区間561と、列車支障時間帯562と、パタン手配開始可能時刻563とを格納している。
【0063】
次いで、処理部10は、列車支障区間に応じた運休対象区間を設定する。ここで、列車支障区間と運休対象区間との対応関係は、運休対象区間設定テーブル540として予め記憶されている。
【0064】
図15は、運休対象区間設定テーブル540のデータ構成の一例を示す図である。図15に示すように、運休対象区間設定テーブル540は、対象路線において取り得る列車支障区間541それぞれに、運休対象区間542を対応付けて格納している。
【0065】
続いて、処理部10は、設定した運休対象区間の端駅それぞれが臨時折り返し駅であるか否かを判断する。すなわち、ダイヤパタンの始終着駅である端駅は臨時折り返し駅ではなく、始終着駅でない端駅は臨時折り返し駅であると判断する。設定された列車運休区間については、運休対象区間データ570として記憶される。
【0066】
図16は、運休対象区間データ570のデータ構成の一例を示す図である。図16に示すように、運休対象区間データ570は、運休対象区間の二つの端駅571それぞれに、臨時折り返し駅であるか否かのフラグ572を対応付けて格納している。
【0067】
続いて、処理部10は、運休本数mを決定する。すなわち、上り/下り方向それぞれについて、列車支障ゾーンにかかる列車(支障列車)を抽出し、上り/下り方向それぞれの支障列車の本数m1,m2のうち、多い方を運休本数mとする。次いで、運休候補列車及び遅延承知列車を決定する。すなわち、上り/下り方向それぞれについて、最後の遅延承知列車の直後の列車から、順に、m本の列車を運休候補列車とする。
【0068】
その後、運休候補列車それぞれについて、定められた臨時折り返しパタンに従って、臨時折り返し駅における折り返しを設定する。ここで、臨時折り返しパタンは、臨時折り返しパターンデータ550として予め記憶されている。臨時折り返しパターンデータ550は、運転整理の対象の列車ダイヤを構成する折り返し可能駅であって、ダイヤパタンの始終着駅を除く駅それぞれにおける、上り/下り方向それぞれの臨時折り返しパタンを定めたデータである。
【0069】
すなわち、処理部10は、対象の運休候補列車(対象列車)の臨時折り返しの相手列車が運休候補列車ならば、臨時折り返し駅において、対象列車を、この相手列車に折り返しでつなぐ。
【0070】
また、対象列車の臨時折り返しの相手列車が遅延承知列車ならば、その相手列車を、臨時折り返し駅で切断する。そして、臨時折り返し駅において、対象列車を、切断した相手列車の臨時折り返し駅以降の列車部分に折り返しでつなぐ。それとともに、切断した相手列車の臨時折り返し駅以前の列車部分を、臨時折り返し駅において、相手列車と同方向のm本後の列車に継走でつなぐ。
【0071】
また、対象列車の臨時折り返しの相手列車が、運休候補列車でも遅延承知列車でもないならば、対象列車を、運休候補列車から遅延承知列車に変更するとともに、対象列車と同方向の列車であって最後の運休候補列車の直後の列車を、新たな運休候補列車として追加設定する。
【0072】
このように、全ての運休候補列車それぞれについて、臨時折り返しパタンで定められた臨時折り返しの相手列車への臨時折り返しを設定することで、運転整理ダイヤを仮作成する。
【0073】
続いて、処理部10は、設定した遅延承知列車それぞれについて、ヤマ切り処理或いはタスキ切り処理を行って、仮作成された運転整理ダイヤ(仮運転整理ダイヤ)を修正する。
【0074】
具体的には、遅延承知列車TDに対するヤマ切り処理を行う。すなわち、先ず、列車支障ゾーンの影響によって遅延が予想される、遅延承知列車TDの列車スジ(遅延予測スジ)を予測する。次いで、列車ダイヤ上における、遅延承知列車TDの遅延予測スジと、列車ダイヤで定められる遅延承知列車TDの折り返し相手列車TD’とが交差する位置Pi及び時刻tiを算出する。続いて、ヤマ切り可能駅データ580を参照して、列車支障区間の終了駅から交差位置Piまでの間の駅のうちから、ヤマ切り対象駅を選択する。
【0075】
図17は、ヤマ切り可能駅データ580のデータ構成の一例を示す図である。図17によれば、ヤマ切り可能駅データ580は、列車の系統581及び進行方向582の組み合わせ毎に生成され、当該系統における停車駅のうち、ヤマ切り可能駅583それぞれについて、該駅がヤマ切り対象駅として適用される期間の開始時刻584及び終了時刻585と、同時ヤマ切り可能本数586を対応付けて格納している。同時ヤマ切り可能本数586は、ヤマ切り処理によって同時に折り返し設定が可能な最大本数である。
【0076】
すなわち、処理部10は、列車支障区間の終了駅から交差位置Piまでの間の駅のうちから、ヤマ切り可能駅データ580においてヤマ切り可能駅として定められている駅であって、交差時刻tiが、該駅に定められる適用期間に含まれる駅を抽出する。そして、抽出した駅が1つならば、この駅をヤマ切り対象駅とし、複数ならば、抽出した駅のうち延承知列車TDの終着駅に最も近い駅をヤマ切り対象駅として選択する。
【0077】
続いて、処理部10は、遅延承知列車TDについて、ヤマ切り対象駅以降の区間(ヤマ切り対象駅から終着駅までの区間)を運休とする。また、折り返し相手列車TD’について、ヤマ切り対象駅以前の区間(始発駅からヤマ切り対象駅までの区間)を運休とする。そして、ヤマ切り対象駅において、遅延承知列車TDを折り返し相手列車TD’に折り返しでつなぐ。
【0078】
また、処理部10は、列車支障ゾーンの終了駅と交差位置Piとの間にヤマ切り可能駅が無い場合には、遅延承知列車TDに対するヤマ切り処理を行えないので、代わりにタスキ切り処理を行う。
【0079】
具体的には、先ず、タスキ切り可能駅データ590を参照して、遅延承知列車TDの始発駅から終着駅までの区間の駅のうちから、タスキ切り対象駅を選択する。
【0080】
図18は、タスキ切り可能駅データ590のデータ構成の一例を示す図である。図18によれば、タスキ切り可能駅データ590は、列車の系統591及び進行方向592毎に生成され、当該系統における停車駅のうち、タスキ切り可能駅593それぞれについて、該駅がタスキ切り可能駅として適用される期間の開始時刻594及び終了時刻595が対応付けて格納されている。
【0081】
すなわち、処理部10は、遅延承知列車TDの始発駅から終着駅までの停車駅のうち、タスキ切り可能駅データ590で定められるタスキ切り可能駅であって、該駅への遅延承知列車の到着時刻が、該駅に定められる適用期間内である駅を抽出する。そして、これらの抽出した駅のうち、終着駅に最も近い駅を、タスキ切り対象駅として選択する。
【0082】
次いで、タスキ切りの相手列車TDXを特定する。すなわち、遅延承知列車TDの折り返し相手列車TD’と同系統の遅延承知列車でない列車であって、タスキ切り対象駅において運休手配が可能な最も早い列車を、タスキ切り相手列車TDXとして特定する。ここで、「系統」とは、走行区間及び列車種別(例えば、特急や快速、普通等)の組み合わせである。そして、列車ダイヤで定められる、このタスキ切り相手列車TDXの折り返し相手列車TDX’を特定する。
【0083】
続いて、このタスキ切り相手列車TDXについて、タスキ切り対象駅以降の区間(タスキ切り対象駅から終着駅までの区間)を運休とする。また、遅延承知列車TDの折り返し相手列車TD’について、タスキ切り対象駅以前の区間(始発駅からタスキ切り対象駅までの区間)を運休とする。そして、タスキ切り対象駅において、タスキ切り相手列車TDXを、折り返し相手列車TD’に、折り返しでつなぐ。
【0084】
その後、処理部10は、滞留禁止駅データ600を参照して、遅延承知列車TDの終着駅が滞留禁止駅であるか否かを判定する。
【0085】
図19は、滞留禁止駅データ600のデータ構成の一例を示す図である。図19によれば、滞留禁止駅データ600は、列車の系統601及び進行方向602の組み合わせ毎に生成され、当該系統における停車駅のうち、滞留禁止駅603それぞれについて、該駅が滞留禁止駅として適用される期間の開始時刻604及び終了時刻605と、代替取込駅606とが対応付けて格納されている。
【0086】
遅延承知列車TDの終着駅が滞留禁止駅でないならば、遅延承知列車TDの終着駅において、この遅延承知列車TDを、タスキ切り相手列車TDXの折り返し相手列車TDX’に、折り返しでつなぐ。
【0087】
一方、遅延承知列車TDの終着駅が滞留禁止駅ならば、滞留禁止駅データ600を参照して、該駅に定められた代替取込駅を特定する。次いで、遅延承知列車TDについて、代替取込駅以降の区間(代替取込駅から終着駅までの区間)を運休とする。また、タスキ切り相手列車TDXの折り返し相手列車TDX’について、代替取込駅以前の区間(始発駅から代替取込駅までの区間)を運休とする。そして、代替取込駅において、遅延承知列車TDを、タスキ切り相手列車TDXの折り返し相手列車TDX’に、折り返しでつなぐ。
【0088】
図13に戻り、入力部20は、例えばキーボードやマウス、タッチパネル、各種スイッチ等で実現される入力装置であり、操作入力に応じた入力信号を処理部10に出力する。
【0089】
表示部30は、例えばLCD等で実現される表示装置であり、処理部10から入力される表示信号に基づく各種画面を表示する。
【0090】
通信部40は、例えば無線通信モジュールやルータ、モデル、TA、有線用の通信ケーブルのジャックや制御回路等で実現される通信装置であり、外部機器との間でデータ通信を行う。
【0091】
記憶部50は、処理部10が運転整理ダイヤ作成装置1を統合的に制御するための諸機能を実現するためのシステムプログラムや、本実施形態の運転整理ダイヤ作成処理を実行するためのプログラムやデータ等を記憶しているとともに、処理部10の作業領域として用いられ、処理部10が各種プログラムに従って実行した演算結果や、入力部20からの入力信号が一時的に格納される。本実施形態では、記憶部50には、プログラムとして、運転整理ダイヤ作成プログラム510が記憶されるとともに、データとして、列車ダイヤデータ520と、運転整理ダイヤデータ530と、運休対象区間設定テーブル540と、臨時折り返しパターンデータ550と、支障条件データ560と、運休対象区間データ570と、ヤマ切り可能駅データ580と、タスキ切り可能駅データ590と、滞留禁止駅データ600とが記憶される。
【0092】
[処理の流れ]
図20〜図22は、運転整理ダイヤ作成処理の流れを説明するフローチャートである。図20によれば、処理部10は、先ず、例えば入力部20からの入力指示に従って、運転整理の対象となる列車ダイヤに対する支障条件を設定する(ステップA1)。次いで、設定した支障条件をもとに、運休対象区間を設定する。すなわち、運休対象区間設定テーブル540を参照し、列車支障区間に対応する運休対象区間を設定する。またこのとき、設定した運休対象区間の両端駅それぞれについて、臨時折り返し駅とするか否かを判断する。
【0093】
続いて、運休本数mを決定する。すなわち、上り/下り方向それぞれについて、列車支障ゾーンにかかる支障列車の本数m1,m3を算出し、多い方を運休本数mとする(ステップA3)。
【0094】
次いで、遅延承知列車を設定する。すなわち、上り/下り方向それぞれについて、列車支障ゾーンにかかる支障列車のうち、パタン手配開始可能時刻t2において、既に運休対象区間に入り込んでいる列車を、運休手配が不可能な遅延承知列車として設定する(ステップA5)。
【0095】
続いて、運休候補列車を設定する。すなわち、上り/下り方向それぞれについて、設定した遅延承知列車の最後の列車の直後の列車から順に、m本の列車を、運休候補列車として設定する(ステップA7)。
【0096】
その後、上り/下り方向それぞれを対象とした臨時折り返し設定処理を行う(ループA)。この臨時折り返し処理では、先ず、対象方向から運休対象区間に入り込む側の端駅が、臨時折り返し駅であるか否かを判断し、端駅が臨時折り返し駅でないならば(ステップA9:NO)、対象方向の臨時折り返しを計画できないので、臨時折り返し設定処理を終了する。
【0097】
一方、該端駅が臨時折り返し駅ならば(ステップA9:YES)、対象方向の運休候補列車のうち、最初の運休候補列車を、臨時折り返し設定の対象列車pとする(ステップA11)。次いで、臨時折り返しパタンで定められた、対象列車pの相手列車qの種類を判断する。
【0098】
そして、この相手列車qが運休候補列車ならば(ステップA13:「運休候補」)、定められた臨時折り返しパタンに従って、対象列車pを、該臨時折り返し駅において、相手列車qに折り返しでつなぐ(ステップA15)。
【0099】
また、相手列車qが遅延承知列車ならば(ステップA13:「遅延承知」)、臨時折り返しの相手列車qを、臨時折り返し駅にて、臨時折り返し駅以前の列車部分q1と、臨時折り返し駅以降の列車部分q2とに切断する(ステップA17)。そして、対象列車pを、臨時折り返し駅において、切断した相手列車の臨時折り返し駅以降の列車部分q2に、折り返しでつなぐ(ステップA19)。一方、臨時折り返し駅以前の列車部分q1については、相手列車qと同方向のm本後の列車に、臨時折り返し駅において、継走でつなぐ(ステップA21)。
【0100】
また、相手列車qが、運休候補列車でも遅延承知列車でもないならば(ステップA13:「その他」)、対象列車pを、遅延承知列車に変更する(ステップA23)。そして、対象列車pと同方向の列車であって、最後の運休候補列車の直後の1本の列車を、新たな運休候補列車として追加設定する(ステップA25)。
【0101】
続いて、対象列車pが対象方向の最後の運休候補列車でないならば(ステップA27:NO)、現在の対象列車pの次の運休候補列車を、新たな対象列車pとした後(ステップA29)、ステップA13に戻り、同様の処理を行う。一方、現在の対象列車pが、対象方向の最後の運休候補列車ならば(ステップA27:YES)、対象方向についての臨時折り返し設定処理を終了する。ループAの処理はこのように行われる。
【0102】
続いて、図21に示すように、処理部10は、上り/下り方向それぞれを対象とした遅延承知列車の遅延回復処理を行う(ループB)。この遅延回復処理では、対象方向の遅延承知列車のうち、最初の遅延承知列車を、遅延回復の対象列車TDとする(ステップB1)。次いで、列車支障ゾーンの影響によって遅延が予想される、遅延対象列車TDの列車スジ(遅延予測スジ)を予測する(ステップB3)。また、運転整理前の列車ダイヤにおいて定められる、対象列車TDの終着駅における折り返し相手列車TD’を判定する(ステップB5)。
【0103】
続いて、列車ダイヤ上において、対象列車TDの遅延予測スジと折り返し相手列車TD’とが交差する位置Pi及び時刻tiを算出する(ステップB7)。そして、ヤマ切り可能駅データ580を参照して、列車支障ゾーンの終了駅から交差位置Piの間にヤマ切り可能駅が有るか否かを判定する(ステップB9)。
【0104】
ヤマ切り可能駅が有り(ステップB11:YES)、且つ、そのヤマ切り可能駅が複数ならば(ステップB13:YES)、これらのヤマ切り可能駅のうち、対象列車TDの終着駅に最も近い駅を、ヤマ切り対象駅として選択する(ステップB15)。一方、ヤマ切り対象駅が1つならば(ステップB13:NO)、このヤマ切り可能駅をヤマ切り対象駅として選択する。
【0105】
続いて、対象列車TDについて、ヤマ切り対象駅以降の区間(ヤマ切り対象駅から終着駅までの区間)を運休とする(ステップB17)。また、折り返し相手列車TD’について、ヤマ切り対象駅以前の区間(始発駅からヤマ切り対象駅までの区間)を運休とする(ステップB19)。そして、ヤマ切り対象駅において、対象列車TDを、折り返し相手列車TD’に折り返しでつなぐ(ステップB21)。
【0106】
一方、列車支障区間の終点と交差位置Piとの間にヤマ切り可能駅が無いならば(ステップB11:NO)、処理部10は、続いて、対象列車TDについてのタスキ切り処理を行う(ステップB23)。
【0107】
図22は、タスキ切り処理の流れを説明するフローチャートである。図22によれば、先ず、タスキ切り可能駅データ590を参照して、遅延承知列車TDの終着駅に最も近いタスキ切り可能駅を、タスキ切り対象駅とする(ステップC1)。すなわち、対象列車の運行区間(始発駅から終着駅までの区間)の停車駅であって、タスキ切り可能駅として定められている駅のうち、終着駅に最も近い駅をタスキ切り対象駅として選択する。
【0108】
次いで、対象列車TDの折り返し相手列車TD’と同系統の列車であって、タスキ切り対象駅において運休手配可能な最早の列車を特定し、タスキ切り相手列車TDXとする(ステップC3)。そして、列車ダイヤにおける、このタスキ切り相手列車TDXの折り返し相手列車TDX’を特定する(ステップC5)。
【0109】
続いて、折り返し相手列車TD’について、タスキ切り対象駅以前の区間(始発駅からタスキ切り対象駅までの区間)を運休とする(ステップC7)。また、タスキ切り相手列車TDXについて、タスキ切り対象駅以降の区間(タスキ切り対象駅から終着駅までの区間)を運休とする(ステップC9)。そして、タスキ切り対象駅において、タスキ切り相手列車TDXを、折り返し相手列車TD’に、折り返しでつなぐ(ステップC11)。
【0110】
続いて、処理部10は、滞留禁止駅データ600を参照して、対象列車TDの終着駅が滞留禁止駅であるか否かを判断する。対象列車TDの終着駅が滞留禁止駅ならば(ステップC13:YES)、滞留禁止駅データ600を参照して、該駅に対応付けられている取込代替駅を特定する(ステップC15)。そして、対象列車TDについて、代替取込駅以降の区間(代替取込駅から終着駅までの区間)を運休とする(ステップC17)。また、タスキ切り相手列車TDXの折り返し相手列車TDX’について、代替取込駅以前の区間(始発駅から代替取込駅までの区間)を運休とする(ステップC19)。そして、代替取込駅において、対象列車TDを、タスキ切り相手列車TDXの折り返し相手列車TDX’に、折り返しでつなぐ(ステップC21)。
【0111】
一方、対象列車の終着駅が滞留禁止駅でないならば(ステップC13:NO)、終着駅において、対象列車TDを、タスキ切り折り返し相手列車TDXの折り返し相手列車TDX’に、折り返しでつなぐ(ステップC23)。タスキ切り処理は、このように行われる。
【0112】
図21に戻り、続いて、処理部10は、対象列車TDが、対象方向の最後の遅延承知列車でないならば(ステップB25:NO)、現在の対象列車TDの次の遅延承知列車を、新たな対象列車TDとした後(ステップB27)、ステップB3に戻り、同様の処理を行う。一方、対象列車TDが、対象方向の最後の遅延承知列車ならば(ステップB25:YES)、対象方向についての遅延回復処理を終了する。以上の処理を行うと、処理部10は、運転整理ダイヤ作成処理を終了する。
【0113】
[作用・効果]
このように、本実施形態によれば、列車ダイヤを構成する列車のうちから、与えられた支障条件をもとに、上り/下り方向それぞれm本の運休候補列車と、パタン手配開始可能時刻t2において既に列車支障区間に入り込んでいるために運休手配が間に合わない遅延承知列車とが設定される。そして、運休候補列車について、運休対象区間の端駅である臨時折り返し駅での臨時折り返しが設定される。このとき、運休候補列車に対して予め定められた臨時折り返しの相手列車が遅延承知列車の場合、この相手列車が臨時折り返し駅にて2本の列車に切断され、運休候補列車は、切断された相手列車の臨時折り返し駅以降の列車部分に、折り返しが設定される。また、切断された相手列車の臨時折り返し駅以前の列車部分は、同方向のm本後の列車に、臨時折り返し駅にて継走される。
【0114】
続いて、遅延承知列車それぞれについて、ヤマ切り対象駅以降を運休とするとともに、折り返し相手列車のヤマ切り対象駅以前を運休とし、ヤマ切り対象駅において、遅延承知列車を折り返し相手列車に折り返すように設定するといったヤマ切り処理が行われる。また、ヤマ切り処理が行えない遅延承知列車については、該遅延承知列車の折り返し相手列車が運休とされるとともに、タスキ切り相手列車のタスキ切り対象駅以降が運休され、遅延承知列車の終着駅において、該遅延承知列車がタスキ切り相手列車の折り返し相手列車に折り返すように設定するといった、タスキ切り処理が行われる。
【0115】
このように、運休候補列車を臨時折り返し駅にて2本の列車に切断し、臨時折り返し駅以降の列車部分に、運休候補列車を折り返しで充当することで、運休候補列車をそのまま運行させる場合に比較して遅延が解消され、正常な列車ダイヤへの復帰を早める運転整理が実現される。更に、遅延承知列車に対するヤマ切り処理/タスキ切り処理を行うことで、遅延承知列車の遅延を回復し、列車ダイヤの回復を更に早める運転整理が実現される。
【0116】
[変形例]
なお、本発明の適用可能な実施形態は、上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能なのは勿論である。
【0117】
(a)臨時折り返しパタン
例えば、上述の実施形態では、臨時折り返しパタンは、臨時折り返しパターンデータ550にて予め定められていることとしたが、運転整理ダイヤ作成処理中に作成することにしても良い。具体的には、設定した運休対象区間の端駅のうち、判定した臨時折り返し駅それぞれにおける臨時折り返しパタンを作成する。すなわち、運休対象区間の外方から臨時折り返し駅に到着する列車それぞれについての臨時折り返しパタンを作成するが、このとき、支障条件として与えられる支障時間帯をもとに、少なくとも運休候補列車となり得る列車の全てを含む列車を抽出し、抽出した列車それぞれについての臨時折り返しパタンを作成する。
【0118】
(b)運休対象区間の設定
また、上述の実施形態では、列車支障区間と運休対象区間との対応関係は、運休対象区間設定テーブル540にて予め定められていることとしたが、運転整理ダイヤ作成処理中に任意に設定することにしても良い。具体的には、予め、対象路線の駅のうち、臨時折り返しが可能な駅(折り返し可能駅)を定めておく。そして、列車支障区間の外方の折り返し可能駅のうちから、運休対象区間の端駅となる二つの駅を選択することで、運休対象区間を設定する。端駅の選択は、例えば、利用者による入力部20からの入力指示に従っても良いし、或いは、列車支障区間の外方で最も近い駅を自動的に選択する。
【0119】
(c)列車系統
また、上述の運転整理ダイヤの作成を、例えば特急列車と普通列車といった系統(種別)毎に行っても良い。具体的には、運転整理の対象となる列車ダイヤを系統毎に分ける。そして、これら系統毎の列車ダイヤそれぞれに対して上述の運転整理ダイヤ作成処理を行い、作成した系統毎の運転整理ダイヤを重ねて、最終的な運転整理ダイヤを作成する。
【符号の説明】
【0120】
1 運転整理ダイヤ作成装置
10 処理部、20 入力部、30 表示部、40 通信部
50 記憶部
510 運転整理ダイヤ作成プログラム
520 列車ダイヤデータ、530 運転整理ダイヤデータ
540 運休対象区間設定テーブル、550 臨時折り返しパターンデータ
560 支障条件データ、570 運休対象区間データ
580 ヤマ切り可能駅データ、590 タスキ切り可能駅データ
600 滞留禁止駅データ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータに、所与の支障区間、所与の支障時間帯及び所与の手配開始時刻をもとに、列車ダイヤに対する運転整理を行って、運転整理ダイヤを作成させるためのプログラムであって、
前記列車ダイヤを構成する列車のうち、前記手配開始時刻において前記支障区間内を走行する列車を検索して、遅延承知列車として設定する遅延承知列車設定手段、
前記支障区間及び前記支障時間帯に基づいて、遅延承知した場合の前記遅延承知列車の列車スジである遅延承知列車予測スジを予測する列車スジ予測手段、
前記遅延承知列車予測スジと、前記列車ダイヤで定められた前記遅延承知列車の終着駅における折り返し相手列車の列車スジとの、前記列車ダイヤ上での交差位置を算出する交差位置算出手段、
前記遅延承知列車に対するヤマ切り処理を行うヤマ切り処理手段、
として前記コンピュータを機能させるとともに、
前記ヤマ切り処理手段が、
前記支障区間の終了駅と前記交差位置との間の駅であって、ヤマ切り可能駅として予め定められた駅をヤマ切り対象駅として選択するヤマ切り対象駅選択手段と、
前記遅延承知列車の前記ヤマ切り対象駅以降と、前記折り返し相手列車の前記ヤマ切り対象駅以前とを運休とするヤマ切り用運休設定手段と、
前記ヤマ切り対象駅において前記遅延列車を前記折り返し相手列車に折り返すように設定するヤマ切り用折り返し設定手段と、
を有するように前記コンピュータを機能させるためのプログラム。
【請求項2】
前記ヤマ切り対象駅選択手段が、前記支障区間の終了駅と前記交差位置との間に複数のヤマ切り可能駅がある場合に、前記遅延承知列車の終着駅に最寄りの駅を前記ヤマ切り対象駅として選択する、
ように前記コンピュータを機能させるための請求項1に記載のプログラム。
【請求項3】
前記支障区間の終了駅と前記交差位置との間前記ヤマ切り可能駅が無い場合に、前記遅延承知列車に対するタスキ切り処理を行うタスキ切り処理手段、
として前記コンピュータを更に機能させるとともに、
前記タスキ切り処理手段が、
前記遅延承知列車の始発駅と終着駅との間の駅であって、タスキ切り可能駅として予め定められた駅をタスキ切り対象駅として選択するタスキ切り対象駅選択手段と、
前記遅延承知列車と同方向且つ同区間を運行する列車であって、前記タスキ切り対象駅において運休手配が可能な列車をタスキ切り相手列車として選択するタスキ切り相手列車選択手段と、
前記タスキ切り相手列車の前記タスキ切り対象駅以降を運休とするタスキ切り相手列車運休設定手段と、
前記折り返し相手列車の前記タスキ切り対象駅以前を運休とする折り返し相手列車運休設定手段と、
前記タスキ切り対象駅において、前記タスキ切り相手列車を前記折り返し相手列車に折り返すように設定する第1のタスキ切り用折り返し手段と、
前記遅延承知列車の終着駅において、前記遅延承知列車を、前記列車ダイヤで定められた前記タスキ切り相手列車の終着駅における折り返し相手列車に折り返すように設定する第2のタスキ切り用折り返し設定手段と、
を有するように前記コンピュータを機能させるための請求項1又は2に記載のプログラム。
【請求項4】
前記タスキ切り対象駅選択手段が、前記遅延承知列車の始発駅と終着駅との間に複数のタスキ切り可能駅がある場合に、前記遅延対象列車の終着駅に最寄りの駅を前記タスキ切り対象駅として選択する、
ように前記コンピュータを機能させるための請求項3に記載のプログラム。
【請求項5】
前記タスキ切り処理手段が、前記遅延承知列車の終着駅が予め定められた滞留禁止駅である場合に、前記遅延承知列車のうちの、当該滞留禁止駅に対応づけて予め定められた代替取込駅以降と、前記タスキ切り相手列車の折り返し相手列車のうちの、前記代替取込駅以前を運休とする手段を更に有し、
前記第2のタスキ切り用折り返し設定手段が、前記遅延承知列車の終着駅が予め定められた滞留禁止駅である場合に、前記代替取込駅において、前記遅延承知列車を、前記タスキ切り相手列車の折り返し相手列車に折り返すように設定する、
ように前記コンピュータを機能させるための請求項3又は4に記載のプログラム。
【請求項6】
所与の支障区間、所与の支障時間帯及び所与の手配開始時刻をもとに、列車ダイヤに対する運転整理を行って運転整理ダイヤを作成する運転整理ダイヤ作成装置であって、
前記列車ダイヤを構成する列車のうち、前記手配開始時刻において前記支障区間内を走行する列車を検索して、遅延承知列車として設定する遅延承知列車設定手段と、
前記支障区間及び前記支障時間帯に基づいて、遅延承知した場合の前記遅延承知列車の列車スジである遅延承知列車予測スジを予測する列車スジ予測手段と、
前記遅延承知列車予測スジと、前記列車ダイヤで定められた前記遅延承知列車の終着駅における折り返し相手列車の列車スジとの、前記列車ダイヤ上での交差位置を算出する交差位置算出手段と、
前記遅延承知列車に対するヤマ切り処理を行うヤマ切り処理手段と、
を備え、
前記ヤマ切り処理手段は、
前記支障区間の終了駅と前記交差位置との間の駅であって、ヤマ切り可能駅として予め定められた駅をヤマ切り対象駅として選択するヤマ切り対象駅選択手段と、
前記遅延承知列車の前記ヤマ切り対象駅以降と、前記折り返し相手列車の前記ヤマ切り対象駅以前とを運休とするヤマ切り用運休設定手段と、
前記ヤマ切り対象駅において前記遅延列車を前記折り返し相手列車に折り返すように設定するヤマ切り用折り返し設定手段と、
を有する、
運転整理ダイヤ作成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2012−176639(P2012−176639A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−39326(P2011−39326)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(000173784)公益財団法人鉄道総合技術研究所 (1,666)
【Fターム(参考)】