説明

プロジェクター、および、プロジェクターの制御方法

【課題】投射面に対するプロジェクターの動きを判定可能であり、小型化および部品点数の削減が可能なプロジェクター、および、プロジェクターの制御方法を提供する。
【解決手段】スクリーンSCに画像を投射するプロジェクター100は、スクリーンSCに投射された画像を含む範囲を撮影する撮像部180と、撮像部180により撮影された撮影画像内におけるぶれを検出する画像ぶれ検出部123と、画像ぶれ検出部123の検出結果に基づいて、スクリーンSCに対するプロジェクターの動きを判定する移動判定部124とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロジェクター、および、プロジェクターの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、投射面に画像を投射するプロジェクターは、投射面に結像した投射画像の歪みやフォーカスの調整を自動的に行う機構を備えている。このような調整は、プロジェクターが動いていると適切な調整を行うことができない。このため、従来、角速度センサー等の移動判定センサーを搭載し、このセンサーを用いて、プロジェクターが投射面に対して静止しているか否かを検出するものがあった(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−109585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
昨今、電子機器には小型化および部品点数の削減が求められており、プロジェクターについても例外ではない。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、投射面に対するプロジェクターの動きを判定可能であり、小型化および部品点数の削減が可能なプロジェクター、および、プロジェクターの制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、投射面に画像を投射するプロジェクターであって、前記投射面に投射された画像を含む範囲を撮影する撮像手段と、前記撮像手段により撮影された撮影画像内におけるぶれを検出するぶれ検出手段と、前記ぶれ検出手段の検出結果に基づいて、前記投射面に対する前記プロジェクターの動きを判定する移動判定手段とを備えることを特徴とする。
本発明によれば、動きを検出するセンサー類を持たない構成においても、投射面に対するプロジェクターの動きを判定できるので、動きを検出するセンサー類を備えたプロジェクターと比較すると、機能を維持しながら部品点数の削減を図るとともに、小型化が可能となる。
【0006】
また、本発明は、上記プロジェクターにおいて、光源と、入力画像に基づいて前記光源が発した光を変調する変調手段と、前記変調手段により変調された光を前記投射面に投射する投射手段と、前記撮像手段により撮影された撮影画像に基づいて、前記投射面に投射された投射画像の台形歪みを検出し、前記変調手段の入力画像を処理することによって前記投射画像の台形歪みを補正する台形歪み補正手段とを備えることを特徴とする。
本発明によれば、台形歪み補正を行うために投射面を撮影する撮像手段を利用して、プロジェクターの動きを判定できるので、部品点数を削減できる。
【0007】
また、本発明は、上記プロジェクターにおいて、前記撮像手段のシャッター速度を制御する撮影制御手段を備え、前記撮影制御手段は、前記ぶれ検出手段によりぶれを検出するための前記撮影画像を撮影する場合と、前記台形歪み補正手段によって台形歪みを検出するための前記撮影画像を撮影する場合とで、前記撮像手段のシャッター速度を異なる速度に設定することを特徴とする。
本発明によれば、共通の撮像手段を利用して、台形歪み補正に適した撮影画像とぶれの検出に適した撮影画像とを得ることができるので、台形歪み補正とぶれ検出との異なる処理を、いずれも高精度で実行できる。
【0008】
また、本発明は、上記プロジェクターにおいて、前記撮影制御手段は、前記ぶれ検出手段によりぶれを検出するための前記撮影画像を撮影する場合のシャッター速度が、前記台形歪み補正手段によって台形歪みを検出するための前記撮影画像を撮影する場合のシャッター速度よりも長くなるように設定することを特徴とする。
本発明によれば、ぶれを検出するための撮影を行う場合と、台形歪みを検出するための撮影を行う場合とで、それぞれ最適なシャッター速度を設定し、共通の撮像手段を利用して目的に合った撮影を行い、台形歪み補正とぶれ検出との異なる処理を、いずれも高精度で実行できる。
【0009】
また、本発明は、上記プロジェクターにおいて、前記移動判定手段によって前記投射面に対する前記プロジェクターの動きが小さいと判定された場合に、前記台形歪み補正手段により補正を実行させ、前記台形歪み補正手段による補正が終了した後に、前記ぶれ検出手段によるぶれ検出と、前記移動判定手段による判定を開始させる動作制御手段を備えることを特徴とする。
本発明によれば、プロジェクターの動きが小さくなってから台形歪み補正を行うことで、好ましい条件下で台形歪みを補正するとともに、プロジェクターが移動している間の、効果の見込めない台形歪み補正動作を避け、効率的な制御を実現できる。また、台形歪み補正の実行後にプロジェクターの動き判定を再開するので、再度プロジェクターが動いた場合に、台形歪み補正が必要であるか否かを容易に判断でき、必要に応じて台形歪み補正を実行して投射画像の視認性を保つことができる。
【0010】
また、本発明は、上記プロジェクターにおいて、前記ぶれ検出手段は、前記撮像手段により撮影された撮影画像から複数の領域を抽出して、領域毎にぶれを検出し、前記移動判定手段は、前記ぶれ検出手段が検出した各領域のぶれを比較することにより、前記投射面に対する前記プロジェクターの動きを判定することを特徴とする。
本発明によれば、プロジェクターの動きに起因しないぶれによる誤判定を防止し、効率よく高精度な移動判定を行うことができる。
【0011】
また、上記目的を達成するために、本発明は、投射面に画像を投射するプロジェクターの制御方法であって、前記投射面に投射された画像を含む範囲を撮影した撮影画像内におけるぶれを検出し、ぶれの検出結果に基づいて、前記投射面に対する前記プロジェクターの動きを判定することを特徴とする。
本発明によれば、プロジェクターの動きを検出するセンサー類を持たない構成においても、投射面に対してプロジェクターが移動しているか否か等を判定できるので、部品点数の削減を図るとともに、小型化が可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、投射面に対するプロジェクターの動きを判定でき、部品点数の削減を図るとともに、小型化が可能なプロジェクターを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態に係るプロジェクターの使用状態の一例を示す外観図である。
【図2】プロジェクターの機能的構成を示すブロック図である。
【図3】撮影画像の処理の様子を示す説明図であり、(A)は撮影画像の例を示し、(B)は撮影画像を複数の領域に分けて処理する様子を示す。
【図4】プロジェクターの動作を示すフローチャートである。
【図5】プロジェクターが実行する移動判定処理を示すフローチャートである。
【図6】プロジェクターが実行する台形歪み補正を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明を適用した実施形態に係るプロジェクター100の使用状態の一例を示す外観図である。
図1に示す例では、プロジェクター100はスクリーンSC(投射面)の前方正面に設置され、スクリーンSCに向けて投射光を投射し、スクリーンSCには投射画像210が結像する。図1に例示するスクリーンSCは、合成樹脂製のフィルムまたは織物で構成される基布の表面に、高い光再帰特性を有する表面加工が施された矩形の投射領域を設けたものである。この投射領域の外側は投射光を反射しにくい黒色のマスクとなっている。プロジェクター100は、スクリーンSCの投射領域内に投射画像210を結像させるよう設置され、後述するズーム倍率等が調整されている。プロジェクター100は、ケーブル200を介して図示しない画像供給装置にケーブル200を介して接続され、この画像供給装置から入力される入力画像を投射する。
【0015】
図2は、実施形態に係るプロジェクター100の全体構成を示すブロック図である。
プロジェクター100は、上記画像供給装置が接続されるインターフェイスとして、USBインターフェイス、有線または無線LANインターフェイス、アナログ映像信号が入力されるVGA端子、デジタル映像信号が入力されるDVI(Digital Visual Interface)、NTSC、PAL、SECAM等のコンポジット映像信号が入力されるS映像端子、コンポジット映像信号が入力されるRCA端子、コンポーネント映像信号が入力されるD端子、HDMI(登録商標)規格に準拠したHDMIコネクター等(図示略)およびこれらの端子やコネクターを介して信号を入出力するインターフェイス回路(図示略)を備え、ケーブル200は、上記のインターフェイスに適したケーブルである。プロジェクター100と画像供給装置は、有線通信によって接続されていても良く、無線通信によって接続されていても良い。上記の画像供給装置としては、ビデオ再生装置、DVD再生装置、テレビチューナー装置、CATVのセットトップボックス、ビデオゲーム装置等の画像出力装置、PC(Personal Computer)等が挙げられる。プロジェクター100は映像(動画像)をスクリーンSCに投射することも、静止画像をスクリーンSCに投射し続けることも可能である。また、プロジェクター100が記憶装置を内蔵し、この記憶装置に記憶している映像ソース(図示略)の映像を投射する構成としてもよい。
【0016】
プロジェクター100は、大きく分けて光学的な画像の形成を行う光学系と映像信号を電気的に処理する画像処理系とからなる。投射部として機能する光学系は、照明光学系140(光源)、光変調装置130(変調手段)、及び投射光学系150(投射手段)から構成されている。照明光学系140は、キセノンランプ、超高圧水銀ランプ、LED(Light Emitting Diode)等からなる光源を備えている。また、照明光学系140は、光源が発した光を光変調装置130に導くリフレクター及び補助リフレクターを備えていてもよく、投射光の光学特性を高めるためのレンズ群(図示略)、偏光板、或いは光源が発した光の光量を光変調装置130に至る経路上で低減させる調光素子等を備えたものであってもよい。
【0017】
光変調装置130は、例えば透過型液晶パネルを備えて構成され、この液晶パネルに後述する画像処理系からの信号を受けて画像を形成する。この場合、光変調装置130は、カラーの投影を行うため、RGBの三原色に対応した3枚の液晶パネルを備え、照明光学系140からの光はRGBの3色の色光に分離され、各色光は対応する各液晶パネルに入射する。各液晶パネルを通過して変調された色光はクロスダイクロイックプリズム等の合成光学系によって合成され、投射光学系150に射出される。
なお、光変調装置130は、3枚の透過型液晶パネルを用いた構成に限らず、例えば3枚の反射型の液晶パネルを用いることも可能であるし、1枚の液晶パネルとカラーホイールを組み合わせた方式、3枚のデジタルミラーデバイス(DMD)を用いた方式、1枚のデジタルミラーデバイスとカラーホイールを組み合わせた方式等により構成してもよい。光変調装置130として1枚のみの液晶パネルまたはDMDを用いる場合には、クロスダイクロイックプリズム等の合成光学系に相当する部材は不要である。また、液晶パネル及びDMD以外にも、光源が発した光を変調可能な構成であれば問題なく採用できる。
【0018】
投射光学系150は、投射する画像の拡大・縮小および焦点の調整を行うズームレンズ152、ズームの度合いを調整するズーム調整用モーター156、フォーカスの調整を行うフォーカス調整用モーター157を含む。投射光学系150は、光変調装置130で変調された光を入射し、ズームレンズ152を用いて、スクリーンSC上に投射画像を結像する。ズームレンズ152は、ズーム調整用モーター156とフォーカス調整用モーター157とによって、レンズの位置などが調整され、スクリーンSC上の投射画像の拡大・縮小を行うズーム調整や、スクリーンSC上に投射画像を適正に結像させるフォーカス調整を行う。
【0019】
画像処理系は、プロジェクター100全体を統合的に制御するCPU120と映像用プロセッサー134とを中心に構成され、A/D変換部110、光変調装置駆動部132、レンズ駆動部155、RAM160、歪み調整用画像記憶部171を含むROM170、CCDカメラ181を備えた撮像部180、撮影画像メモリー182、リモコン制御部190、リモコン191、操作部195等を備える。これらの画像処理系を構成する各要素は、バス102を介して互いに接続されている。
【0020】
A/D変換部110は、上述した外部の画像供給装置からケーブル200を介して入力されたアナログ入力信号をA/D変換するデバイスであり、変換後のデジタル信号を映像用プロセッサー134に出力する。映像用プロセッサー134は、A/D変換部110から入力されたデジタル信号に対して、輝度、コントラスト、色の濃さ、色合い、投射画像の形状等の画像の表示状態を調整する処理を行った上で、光変調装置駆動部132に対して、処理後の映像信号を出力する。光変調装置駆動部132は、映像用プロセッサー134から入力される映像信号に基づいて、光変調装置130の液晶パネルを駆動し、液晶パネルに画像を描画する。この液晶パネルに照明光学系140が発した光が照射されることにより、この照射光が変調され、投射光学系150を経てスクリーンSCに投射される。これにより、A/D変換部110に入力された映像信号に対応した映像が、スクリーンSC上に投射画像210(図1)として形成される。
【0021】
映像用プロセッサー134が行う画像処理としては、上記の明度、コントラスト、色合いなどの補正の他、台形歪み補正が含まれる。図2では、台形歪み補正を行う回路を、特に台形歪み補正部136として示した。台形歪み補正部136(台形歪み補正手段)は、CPU120により算出された投射距離及び投影投射角の値に基づいて、デジタル信号に対して台形歪み補正を行う。また、映像用プロセッサー134は、上記の台形歪み補正における特定の歪み検出用画像の表示を制御する。映像用プロセッサー134は、台形歪み補正用のDSP(デジタルシグナルプロセッサー)として販売されている汎用のプロセッサーを用いて構成することも、専用のASICとして構成することも可能である。
【0022】
CPU120は、映像用プロセッサー134と共に、プロジェクター100における画像処理を行う。CPU120は、投射制御部121と、撮影制御部122と、画像ぶれ検出部123と、移動判定部124と、三次元測量部125と、投射角算出部126とを備える。これらの各部は、CPU120がROM170に予め記憶した特定のプログラムを実行することにより実現される。
投射制御部121(動作制御手段)は、プロジェクター100の電源がオンにされ、画像の投射を開始する際に、画像を投射する動作の実行、撮影制御部122、画像ぶれ検出部123及び移動判定部124による後述する移動判定処理の実行、及び、撮影制御部122、三次元測量部125、投射角算出部126及び台形歪み補正部136による台形歪み補正処理の実行を制御する。
【0023】
撮影制御部122(撮影制御手段)は、撮像部180による撮影動作を制御する。プロジェクター100は、撮像部180による撮影画像を、後述する移動判定処理及び台形歪み補正処理の両方に使用する。移動判定処理は、撮影画像におけるぶれを検出することによりプロジェクター100の本体の動きを判定する処理であるから、撮影時のシャッター開時間が長い方が、プロジェクター100の動きに起因する撮影画像のぶれが現れやすいので、より鋭敏にぶれを検出できる。これに対し、台形歪み補正においては、スクリーンSCに結像した投射画像210の形状を検出できればよいので、シャープな撮影画像が好ましく、シャッター開時間を短くした方が良い。ただし、後述する背景画像領域226が適切に撮影できるように、シャッター開時間は、十分な露光量を得られる時間とすることが望ましい。このように、移動判定処理と台形歪み補正処理とでは、好ましいシャッター開時間が異なるので、撮影制御部122は、投射制御部121の制御により、撮影画像を使用する処理の内容に適合したシャッター開時間を設定し、撮像部180に撮影を実行させる。
【0024】
画像ぶれ検出部123(ぶれ検出手段)は、撮影制御部122の制御により撮影された撮影画像内のぶれを検出する。移動判定部124(移動判定手段)は、画像ぶれ検出部123が検出したぶれの大きさ、及び、ぶれの大きさの経時的変化に基づいて、プロジェクター100が静止しているか、プロジェクター100が動いているかを判定する。ここで、移動判定部124が判定する静止及び移動とは、スクリーンSCに対するプロジェクター100の相対的な静止及び移動を指す。また、プロジェクター100の静止とは、ほぼ静止していると見なすことができる場合を含む。さらに、プロジェクター100の静止及び移動は、少なくとも投射光学系150を含む投射部を搭載した筐体または本体が、スクリーンSCに対して相対的に静止あるいは移動していることを指しており、プロジェクター100の本体や筐体の形状、構成について限定するものではない。
三次元測量部125及び投射角算出部126は、プロジェクター100から投射した投射光の光軸に対するスクリーンSCの傾きである投射角(以下、投影投射角と言う)、及び、スクリーンSCとの距離(以下、投射距離と言う)を算出する。
【0025】
CPU120は、上記の各処理部の働きにより投影投射角および投射距離を算出すると、投影投射角に対応した信号を映像用プロセッサー134に出力し、投射距離に対応した信号をレンズ駆動部155に出力する。映像用プロセッサー134は、投影投射角に対応した信号がCPU120から入力されると、この信号に基づいて台形歪み補正を行う。プロジェクター100の光学系の光軸とスクリーンSCとのなす角度である投影投射角が特定されると、映像の歪み方を求めることができる。映像用プロセッサー134は、投影投射角に対応したパラメーターの設定がなされると、投射画像の歪みを補正するように、A/D変換部110から入力した画像を補正し、補正後の映像信号を、光変調装置駆動部132に出力する。この台形歪み補正部136の機能により、光変調装置130に表示される画像は台形歪みを補正するように変形される。
【0026】
レンズ駆動部155は、CPU120から投射距離に相当する信号が入力されると、この信号に基づいてフォーカス調整用モーター157を駆動してフォーカス調整を行う。
【0027】
RAM160は、CPU120が実行するプログラムやデータを一時的に格納するワークエリアを形成する。なお、映像用プロセッサー134は、自身が行う画像の表示状態の調整処理など、各処理の実行の際に必要となるワークエリアを、内蔵RAMとして備えている。
また、ROM170は、上述した各処理部を実現するためにCPU120が実行するプログラムや、当該プログラムに係るデータ等を記憶する。また、ROM170は、後述する台形歪み補正処理でスクリーンSCに投射する調整用画像のデータを、調整用画像記憶部171に記憶している。
【0028】
操作部195は、プロジェクター100の本体に設けられ、ユーザーが操作を行うためのスイッチ等の各種操作子及びインジケーターランプを備えている。操作部195は、CPU120の制御に従って、プロジェクター100の動作状態や設定状態に応じてインジケーターランプを適宜点灯或いは点滅させ、操作子に対する操作に対応して操作信号を出力する。また、リモコン制御部190は、プロジェクター100の外部のリモコン191から送信される無線信号を受信する。リモコン191は、ユーザーによって操作される操作子(図示略)を備え、操作子に対する操作に応じた操作信号を赤外線信号または所定周波数の電波を用いた無線信号として送信する。リモコン制御部190は、赤外線信号を受信する受光部(図示略)や無線信号を受信する受信回路(図示略)を備え、リモコン191から送信された信号を受信し、解析して、ユーザーによる操作の内容を示す信号を生成してCPU120に出力する。
【0029】
撮像部180(撮像手段)は、周知のイメージセンサーであるCCDを用いたCCDカメラ181を備えている。撮像部180は、プロジェクター100の前面、即ち、投射光学系150がスクリーンSCに向けて映像を投射する方向をCCDカメラ181により撮像可能な位置に設けられている。撮像部180は、推奨された投影距離においてスクリーンSCに投影された投射画像の全体が少なくとも撮像範囲内に入るように、CCDカメラ181のカメラ方向及び画角が設定されている。
撮像部180は、撮影制御部122の制御に従って撮影を実行する。撮像部180は、撮影制御部122から入力される制御データに従って、シャッター速度を設定し、この設定したシャッター速度で、撮影制御部122から指示されたタイミングでCCDカメラ181により撮影を実行する。
【0030】
CCDカメラ181は、CCDの他、CCD上に映像を形成する単焦点レンズ、CCDに入射する光量を調整するオートアイリスなどの機構、更にはCCDから映像信号を読み出す制御回路などを備える。オートアイリスの機構は、CCDカメラ181からの映像の明度の累積値に相当する信号を制御回路から受け取り、明度の累積値が所定の範囲に入るように、単焦点レンズに設けられたアイリス(絞り)を自動的に調整している。
オートアイリスによる明るさの調整がなされた画像は、撮像部180から撮影画像メモリー182に出力され、撮影画像メモリー182の所定の領域に繰り返し書き込まれる。撮影画像メモリー182は、1画面分の画像の書き込みが完了すると、所定の領域のフラグを順次反転するので、撮影制御部122は、このフラグを参照することにより、撮像部180を用いた撮像が完了したか否かを知ることができる。撮影制御部122は、このフラグを参照しつつ、撮影画像メモリー182にアクセスして、必要な撮影画像を取得する。
【0031】
図3は、画像ぶれ検出部123が撮影画像を処理する様子を示す説明図であり、(A)は撮影画像の例を示し、(B)は撮影画像を複数の領域に分けて処理する様子を示す。
撮像部180は、プロジェクター100が投射する投射画像より大きな範囲を撮影できるよう調整されているので、撮影画像220は、図3(A)に示すように、プロジェクター100が投射した投射画像が写っている投射画像領域224と、その周囲を含む。ここで、スクリーンSCが写っている領域をスクリーン画像領域222、スクリーン画像領域222の外側が写っている領域を背景画像領域226とする。
【0032】
画像ぶれ検出部123は、撮影制御部122が取得した撮影画像220におけるぶれ量を算出し、ぶれ量を示す値を出力する。具体的な例としては、画像ぶれ検出部123が撮影画像220のデータをフーリエ変換等により周波数領域に変換し、撮影画像220に含まれる高周波成分の割合や量をぶれ量の指標として出力することが挙げられる。また、撮影画像220の各画素の輝度データの最大値と最小値を求め、この最大値と最小値の差をぶれ量の指標として用いることもできる。一般に、ぶれのないシャープな画像ではコントラストが高く、輪郭が明瞭であるため、輝度データの最大値と最小値との差が大きい。従って、撮影画像220中の輝度データの最大値と最小値との差が大きいほど、ぶれ量が小さいことになるので、画像ぶれ検出部123は、輝度データの最大値と最小値との差をぶれ量の指標として出力し、あるいは、輝度データの最大値と最小値との差をぶれ量の大小に対応する値に換算して出力すればよい。
【0033】
移動判定部124は、画像ぶれ検出部123が出力したぶれ量の指標となる値を取得し、このぶれ量の値の経時的な変化に基づいて、プロジェクター100が静止しているか、プロジェクター100が移動しているかを判定する。ぶれ量の経時的な変化を判定するために、移動判定部124は、撮像部180によって連続して撮影された複数の画像について、画像ぶれ検出部123によりぶれ量を検出させ、複数の撮影画像のぶれ量を比較する。ここで、撮影制御部122は、撮像部180によって連続して複数回の撮影を実行させる。撮影の時間間隔あるいは周期は、撮影制御部122が、移動判定処理用の値として撮像部180に設定する。
【0034】
移動判定部124は、例えば、撮影画像におけるぶれ量が、予め設定された判定基準値より小さい場合には、プロジェクター100が静止していると判定する。より厳しく判定を行う場合、連続する複数の撮影画像のぶれ量がいずれも判定基準値より小さい場合に、プロジェクター100が静止していると判定してもよい。これに対し、ぶれ量が判定基準値以上の場合には、プロジェクター100が移動している、すなわち静止していないと判定する。また、プロジェクター100が静止していないと判定した後に、連続する複数の撮影画像のぶれ量が時間の経過とともに小さくなり、判定基準値より小さくなった場合には、プロジェクター100が静止したと判定する。
【0035】
上述したように、画像ぶれ検出部123が、ぶれ量の指標として輝度データの最大値と最小値との差そのものを出力する場合、移動判定部124は、例えば以下のように判定する。撮影画像におけるぶれ量(輝度データの最大値と最小値との差)が、予め設定された輝度差基準値より小さい場合には、プロジェクター100が静止していないと判定する。また、それ以前に撮影された撮影画像におけるぶれ量が輝度差基準値以上であり、最新の撮影画像におけるぶれ量が輝度差基準値より小さい場合には、静止していたプロジェクター100が移動を開始したと判定できる。これに対し、連続する複数の撮影画像におけるぶれ量を比較し、画像間のぶれ量の差が、予め設定された画像比較基準値より小さい場合には、プロジェクター100が静止したものと判定する。つまり、ぶれ量の絶対的な大きさが小さい場合だけでなく、ぶれ量の経時的な変化が小さい場合も、プロジェクター100が静止したと判定できる。
ここで、上記の判定基準値、輝度差基準値、画像比較基準値は、予めリモコン191や操作部195の操作により設定され、あるいはプロジェクター100の出荷時に設定され、RAM160またはROM170に記憶されている。
【0036】
ところで、プロジェクター100が映像を投射している場合、図3(A)の撮影画像220において、投射画像領域224における画像が変化するから、複数の撮影画像におけるぶれ量を比較することが難しい場合がある。このため、画像ぶれ検出部123は、撮影画像220のうち、投射画像領域224を除く部分においてぶれ量を算出するようにすると、好ましい。この場合、移動判定部124は、画像ぶれ検出部123が出力する値を判定するだけで、そのぶれ量が投射画像領域224を含むか否かは移動判定部124の動作に影響を与えない。
【0037】
さらに、プロジェクター100の設置環境によっては、プロジェクター100の移動に起因しないぶれが発生することがある。例えば、スクリーンSCとプロジェクター100の間を人や物が通過し、背景画像領域226に写り込んだ場合や、スクリーンSCの背景に位置する人や物が移動し、この人や物が背景画像領域226に写り込んだ場合である。
画像ぶれ検出部123は、撮影画像220を複数の領域に分割して領域毎にぶれ量を求め、移動判定部124は、領域毎に、ぶれ量に基づく判定を行う。
【0038】
例えば図3(B)に示すように、画像ぶれ検出部123は、撮影画像220を領域A〜Dの4つの領域に分割し、領域A、領域B、領域C及び領域Dの各々におけるぶれ量を個別に算出する。移動判定部124は、連続する複数の撮影画像220のぶれ量を判定する際に、各撮影画像220の領域Aのぶれ量に基づいてプロジェクター100が静止しているか否かを判定し、領域Bのぶれ量に基づいてプロジェクター100が静止しているか否かを判定し、同様に領域C、領域Dについても個別にプロジェクター100が静止しているか否かを判定する。
【0039】
そして、一部の領域においてのみプロジェクター100が静止していないと判定され、他の領域ではプロジェクター100が静止していると判定された場合には、最終的な判定として、プロジェクター100が静止していると判定する。例えば領域Aのぶれ量のみに基づいて判定を行った結果、プロジェクター100が静止していないと判定され、領域B〜Dに対する判定ではプロジェクター100が静止していると判定された場合には、プロジェクター100が静止していると判定する。言い換えれば、全ての領域A〜Dについて、それぞれ、プロジェクター100が静止していないと判定した場合のみ、プロジェクター100が移動しているとの判定結果を出力する。
上記の例のように、人や物がCCDカメラ181の撮影範囲内で移動したとしても、1回の撮影のシャッター開時間内に領域A〜Dの全ての領域にわたって移動することは考えにくい。つまり、プロジェクター100が静止している場合は、1つの撮影画像220において、領域A〜Dの一部でのみぶれ量が大きくなることはあっても、全領域でぶれ量が大きくなることはないものと考えて良いから、撮影画像220を分割してぶれ量の検出と移動判定を行うことで、プロジェクター100の移動に起因しない撮影画像220の変化の影響を排除し、正確にプロジェクター100の静止を判定できる。
また、プロジェクター100が映像を投射している場合には、撮影画像220を複数の領域A〜Dに分割した上で、画像ぶれ検出部123が、各領域のうち投射画像領域224を除く領域のぶれ量を算出することが好ましい。
【0040】
続いて、プロジェクター100の動作について説明する。
図4〜図6は、プロジェクター100の動作を示すフローチャートであり、図4は全体的な動作を示し、図5は図4のステップS13に示す移動判定処理を示し、図6は図4のステップS14に示す台形歪み補正処理を詳細に示す。
プロジェクター100の投射制御部121は、電源がオンにされると外部から入力される映像信号に基づいて投射画像の投射を開始し(ステップS11)、リモコン191または操作部195の操作子の操作によってセットアップの実行が指示されると(ステップS12)、撮影制御部122、画像ぶれ検出部123及び移動判定部124を制御して、移動判定処理を実行する(ステップS13)。この移動判定処理は、プロジェクター100がスクリーンSCに対して相対的に静止しているか、移動しているかを判定する処理である。この移動判定処理でプロジェクター100が静止していると判定された場合に、プロジェクター100は次のステップS14に移行する。
【0041】
ここで、図5を参照して移動判定処理の詳細について説明する。なお、以下においては、画像ぶれ検出部123が撮影画像における輝度データの最大値と最小値の差を、ぶれ量の値としてそのまま出力し、このぶれ量の値に基づいて移動判定部124が判定を行う例について説明する。
投射制御部121が移動判定処理の開始を指示すると、撮影制御部122は、撮像部180に対し、ぶれ検出用の撮影条件を設定する(ステップS21)。ここで設定される撮影条件は、少なくともシャッター速度を含み、後述する台形歪み補正処理時の撮影条件に比べ、シャッター開時間が長くなるように設定される。また、撮影条件として、ズーム倍率を含んでもよく、例えば、スクリーンSCの外側まで撮影画像に写るように設定される。
【0042】
次いで、撮影制御部122は、設定した撮影条件に従って撮像部180により撮影を実行させ(ステップS22)、撮影画像メモリー182から撮影画像のデータを取得する(ステップS23)。
その後、画像ぶれ検出部123が、撮影画像のぶれ量を検出するぶれ検出処理を開始する(ステップS24)。画像ぶれ検出部123は、撮影画像を、予め設定された分割方法に従って分割する(ステップS25)。
【0043】
画像ぶれ検出部123は、分割した複数の領域のうち、まだ処理されていない領域から一つの領域を処理対象として選択し(ステップS26)、選択した領域における輝度データの最大値と最小値を求めるとともにその差を算出し(ステップS27)、算出した最大値と最小値の差の値(計算値)をRAM160に記憶する(ステップS28)。
次いで、移動判定部124が、前回撮影された撮影画像について画像ぶれ検出部123が求めた計算値がRAM160に記憶されているか否かを判別し(ステップS29)、前回の計算値が記憶されていない場合は(ステップS29;No)、画像ぶれ検出部123が分割した撮影画像の領域のうち未処理の領域の有無を判別する(ステップS30)。未処理の領域があれば(ステップS30;Yes)、ステップS26に戻って、次に処理する領域を選択する。また、未処理の領域がない場合には(ステップS30;No)、後述するステップS36に移行する。
【0044】
一方、画像ぶれ検出部123が算出した前回の計算値がRAM160に記憶されている場合(ステップS29;Yes)、移動判定部124は、前回撮影された撮影画像に関する計算値とステップS27で算出された計算値とを比較し(ステップS31)、プロジェクター100が静止状態から移動を開始した場合の条件に該当するか否かを判別する(ステップS32)。移動を開始した場合の条件とは、例えば、ステップS27で今回算出した計算値が輝度差基準値より小さいこと、あるいは、上記計算値が経時的に小さくなっており、前回の計算値が輝度差基準値以上であって今回の計算値が輝度差基準値より小さいことが挙げられる。
【0045】
プロジェクター100が静止状態から移動を開始した場合の条件に該当する場合(ステップS32;Yes)、移動判定部124は、処理対象となっている領域に対応づけて移動開始フラグを設定し(ステップS33)、ステップS30に移行する。移動開始フラグは撮影画像を分割した領域毎にRAM160に記憶される。移動判定部124は、ステップS30で未処理の領域の有無を判別し、未処理の領域がある場合はステップS26に戻って次の領域を選択し、未処理の領域がない場合にはステップS36に移行する。
【0046】
また、プロジェクター100が静止状態から移動を開始した場合の条件に該当しない場合(ステップS32;No)、移動判定部124は、プロジェクター100が静止した場合の条件に該当するか否かを判別する(ステップS34)。静止した場合の条件とは、例えば、ステップS27で今回算出した計算値と、前回算出した計算値とが、ともに輝度差基準値より大きいこと、あるいは、前回と今回の計算値の差が予め設定された画像比較基準値より小さいことが挙げられる。
プロジェクター100が静止した場合の条件に該当する場合(ステップS34;Yes)、移動判定部124は、処理対象となっている領域に対応づけて静止フラグを設定し(ステップS35)、ステップS30に移行する。静止フラグは撮影画像を分割した領域毎にRAM160に記憶される。また、プロジェクター100が静止した場合の条件に該当しない場合(ステップS34;No)、移動判定部124は、ステップS30に移行する。
ステップS30で、移動判定部124は未処理の領域の有無を判別し、未処理の領域がある場合はステップS26に戻って次の領域を選択し、未処理の領域がない場合にはステップS36に移行する。
【0047】
ステップS36では、ぶれ量に基づくプロジェクター100の静止の判定が可能か否かを判別する。ステップS29で前回の計算値がなかった場合には、判定ができないと判別し(ステップS36;No)、ステップS22に戻って次の撮影画像データを処理する。また、判定が可能な場合には(ステップS36;Yes)、移動判定部124は、RAM160に記憶された各領域の移動開始フラグ及び静止フラグを取得し、最終的に、プロジェクター100が静止しているか否かを判定する(ステップS37)。プロジェクター100が静止していると判定した場合は(ステップS37;Yes)、プロジェクター100は図4に戻ってステップS14の台形歪み補正処理を開始する。また。プロジェクター100が静止していないと判定した場合は(ステップS37;No)、ステップS22に戻って次の撮影画像を実行する。
【0048】
このように、プロジェクター100がスクリーンSCに対して相対的に静止していると判定した場合に、投射制御部121は、台形歪み補正処理(図4のステップS14)を実行する。台形歪み補正処理では、スクリーンSCに現在投射されている投射画像の形状を検出する必要があるが、プロジェクター100が静止していなければ投射画像の形状を正確に検出することが難しくなる可能性ある。このため、投射制御部121は、移動判定処理によりプロジェクター100が静止したと判定してから、台形歪み補正処理を実行する。この台形歪み補正処理により、スクリーンSCに投射される投射画像は、プロジェクター100の投影投射角による変形が補正され、ほぼ本来の形状となる。
【0049】
ここで、図6を参照して台形歪み補正処理について詳細に説明する。
投射制御部121が台形歪み補正処理の開始を指示すると、撮影制御部122は、撮像部180に対し、台形歪み補正処理用の撮影条件を設定する(ステップS41)。ここで設定される撮影条件は、少なくともシャッター速度を含み、移動判定処理時の撮影条件に比べ、シャッター開時間が短くなるように設定される。また、撮影条件として、ズーム倍率を含んでもよく、例えば、スクリーンSC上に投射画像が結像する範囲を含み、移動判定処理時よりも小さい範囲が撮影画像に写るように設定される。
【0050】
次いで、投射制御部121は、映像用プロセッサー134を制御して、調整用画像記憶部171に記憶された調整用画像を読み出し、この調整用画像を映像用プロセッサー134にコマンドとともに出力して、光変調装置130の液晶パネルに表示させ、スクリーンSCに投射させる(ステップS42)。ここで、投射制御部121は、すでにA/D変換部110から映像用プロセッサー134に入力されている入力画像の投射を開始している場合には、この入力画像の表示を停止させてから調整用画像の投射を行う。
その後、スクリーンSCに調整用画像が投射された状態で、撮影制御部122は、設定した撮影条件に従って撮像部180により撮影を実行させ、撮影画像メモリー182から撮影画像のデータを取得する(ステップS43)。
【0051】
投射制御部121は、三次元測量部125及び投射角算出部126を制御して、調整用画像の投射中に撮影された撮影画像に基づいて、台形歪みを補正するためのパラメーターを算出させる(ステップS44)。
このステップS44で、三次元測量部125は、プロジェクター100のズームレンズ152の主点を原点とする三次元座標系(以下「レンズ座標系」とも呼ぶ)における、スクリーンSCを含む平面の三次元状態を検出する三次元測量処理を行う。すなわち、プロジェクター100における投射光学系150の光軸に対するスクリーンSCの三次元的な傾きを検出する。この処理では、撮影画像メモリー182から取得した撮影画像を離散化し、撮影画像に含まれる16個の四角形の中心を測定点として求める。そして、三次元測量部125は、測定点から平面の定義が可能な3点を選択し、選択した3つの測定点のレンズ座標系における三次元座標を検出し、検出した3つの測定点の三次元座標に基づいて、スクリーンSCを含む平面に近似する近似平面を算出する。続いて、投射角算出部126が、三次元測量処理で検出したスクリーン平面の近似平面とプロジェクター100から投射した投射光の光軸との角度である投影投射角を算出する。さらに、投射角算出部126は、算出した投影投射角を基に、光変調装置130の液晶パネルの表示可能領域における補正後の画像の形状を求め、液晶パネルの表示可能領域における補正前の画像の形状を、補正後の画像の形状に変換する変換係数(パラメーター)を算出する。
【0052】
続いて、投射制御部121は、求めたパラメーターを台形歪み補正部136に設定し、台形歪み補正部136により台形歪み補正を実行させる(ステップS45)。台形歪み補正部136は、設定されたパラメーターを用いて、入力されるデジタル信号を変換し、変換した結果を光変調装置駆動部132へと出力する。すなわち、台形歪み補正部136は、A/D変換部110から入力されるデジタル信号に対して、各画素の座標に対してベクトル演算を繰り返し、光変調装置130の液晶パネルに表示する画像を、台形歪みを補正するように変形させる。この台形歪み補正中は、通常は矩形である液晶パネルの表示可能範囲に、スクリーンSCの投射画像の変形を補正するように上記パラメーターで規定される略台形に変形された映像が表示される。投射制御部121は、台形歪み補正処理を終了して、図4のステップS15に移行する。
【0053】
台形歪み補正処理の終了後、ステップS15で、投射制御部121は、再び画像ぶれ検出部123及び移動判定部124による移動判定処理を開始する。この移動判定処理は、入力画像を投射する間、継続して実行される。
投射制御部121は、映像用プロセッサー134による入力画像の投射を開始させ(ステップS16)、ステップS15で開始した移動判定処理の判定結果を常時監視する(ステップS17)。この移動判定処理でプロジェクター100が静止していないと判定された場合(ステップS17;No)、投射制御部121はステップS13に戻って、移動判定処理と台形歪み補正処理を実行する。
また、プロジェクター100が静止している間は、リモコン191または操作部195の操作により投射終了が指示されたか否かを判別し(ステップS18)、投射を終了しない場合は(ステップS18;No)、ステップS17で投射を継続する。リモコン191または操作部195の操作により投射終了が指示された場合には(ステップS18;Yes)、投射制御部121は投射を終了して待機状態または停止状態に移行する。
【0054】
以上のように、本発明を適用した実施形態に係るプロジェクター100は、スクリーンSCに画像を投射し、スクリーンSCに投射された投射画像を含む範囲を撮影する撮像部180と、撮像部180により撮影された撮影画像内におけるぶれを検出する画像ぶれ検出部123と、画像ぶれ検出部123の検出結果に基づいて、スクリーンSCに対するプロジェクター100の動きを判定する移動判定部124とを備え、プロジェクター100の動きを検出するセンサー類を持たない構成でありながら、スクリーンSCに対してプロジェクター100が移動しているか否か等を判定できる。これにより、スクリーンSCに対するプロジェクター100の移動を検出する機能を維持しながら部品点数の削減を図るとともに、小型化が可能となる。
【0055】
また、プロジェクター100は、照明光学系140と、入力画像に基づいて照明光学系140が発した光を変調する光変調装置130と、光変調装置130により変調された光をスクリーンSCに投射する投射光学系150と、撮像部180により撮影された撮影画像に基づいて、スクリーンSCに投射された投射画像の台形歪みを検出し、光変調装置130の入力画像を処理することによって投射画像の台形歪みを補正する台形歪み補正部136とを備え、台形歪み補正を行うためにスクリーンSCを撮影する撮像部180を利用して、プロジェクター100の動きを判定できるので、部品点数を削減できる。
【0056】
また、プロジェクター100は、撮像部180のシャッター速度を制御する撮影制御部122を備え、撮影制御部122が、画像ぶれ検出部123によりぶれを検出するための撮影画像を撮影する場合と、台形歪み補正部136によって台形歪みを検出するための撮影画像を撮影する場合とで、撮像部180のシャッター速度を異なる速度に設定するので、共通の撮像部180を利用して、台形歪み補正に適した撮影画像とぶれの検出に適した撮影画像とを得ることができ、台形歪み補正とぶれ検出との異なる処理を、いずれも高精度で実行できる。
【0057】
また、プロジェクター100は、投射制御部121の制御により、移動判定部124によってスクリーンSCに対するプロジェクター100の動きが小さいと判定した場合に、台形歪み補正部136により補正を実行させ、台形歪み補正部136による補正が終了した後に、画像ぶれ検出部123によるぶれ検出と、移動判定部124による判定を開始させる。これにより、プロジェクター100の動きが小さくなってから台形歪み補正を行うことで、好ましい条件下で台形歪みを補正するとともに、プロジェクター100が移動している間の、効果の見込めない台形歪み補正動作を避け、効率的な制御を実現できる。また、台形歪み補正の実行後にプロジェクター100の動きを判定するので、再度の台形歪み補正が必要であるか否かを容易に判断でき、必要に応じて台形歪み補正を実行して投射画像の視認性を保つことができる。
【0058】
また、画像ぶれ検出部123は、撮像部180により撮影された撮影画像から複数の領域を抽出して、領域毎にぶれを検出し、移動判定部124は、画像ぶれ検出部123が検出した各領域のぶれを比較することにより、スクリーンSCに対するプロジェクター100の動きを判定するので、プロジェクター100の動きに起因しないぶれによる誤判定を防止し、効率よく高精度な移動判定を行うことができる。
【0059】
なお、上述した実施形態は本発明を適用した具体的態様の例に過ぎず、本発明を限定するものではなく、上記実施形態とは異なる態様として本発明を適用することも可能である。例えば、上記実施形態ではスクリーンSCの正面に設置されたプロジェクター100が、前方に画像を投射する構成を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、スクリーンSCが透過型のスクリーンとして構成され、プロジェクター100がスクリーンSCの背面側から画像を投射する構成に本発明を適用することも勿論可能である。また、上記実施形態では、画像ぶれ検出部123が、撮影画像を周波数領域に変換して高周波成分の割合や量によりぶれ量を算出する例、及び、撮影画像の輝度データの最大値と最小値との差に基づいてぶれ量を算出する例を挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、スクリーンSCとプロジェクター100、詳細にはスクリーンSCとCCDカメラ181との相対位置の変化に起因する撮影画像のぶれを定量化できる手法であれば、どのような処理で実現してもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、撮像部180はCCDイメージセンサーを備えたCCDカメラ181を有する構成として説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、撮像部180のイメージセンサーとしてCMOSセンサーを用いても良い。
さらに、上記実施形態においてROM170が記憶していた制御プログラムや設定値等のデータを、可搬型の記録媒体に記憶した構成とすることも可能であるし、プロジェクター100に通信ネットワークを介して接続された他の装置から、プロジェクター100がダウンロード可能に記憶した構成としてもよい。
また、図2に示したプロジェクター100の各機能部は機能的構成を示すものであって、具体的な実装形態は特に制限されない。つまり、必ずしも各機能部に個別に対応するハードウェアが実装される必要はなく、一つのプロセッサーがプログラムを実行することで複数の機能部の機能を実現する構成とすることも勿論可能である。また、上記実施形態においてソフトウェアで実現されている機能の一部をハードウェアで実現してもよく、あるいは、ハードウェアで実現されている機能の一部をソフトウェアで実現してもよい。その他、プロジェクター100の具体的な細部構成について、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で任意に変更可能である。
【符号の説明】
【0061】
100…プロジェクター、120…CPU、121…投射制御部(動作制御手段)、122…撮影制御部(撮影制御手段)、123…画像ぶれ検出部(ぶれ検出手段)、124…移動判定部(移動判定手段)、125…三次元測量部、126…投射角算出部、130…光変調装置(変調手段)、132…光変調装置駆動部、136…台形歪み補正部(台形歪み補正手段)、140…照明光学系(光源)、150…投射光学系(投射手段)、170…ROM、171…調整用画像記憶部、180…撮像部(撮像手段)、220…撮影画像、SC…スクリーン(投射面)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
投射面に画像を投射するプロジェクターであって、
前記投射面に投射された画像を含む範囲を撮影する撮像手段と、
前記撮像手段により撮影された撮影画像内におけるぶれを検出するぶれ検出手段と、
前記ぶれ検出手段の検出結果に基づいて、前記投射面に対する前記プロジェクターの動きを判定する移動判定手段と、
を備えることを特徴とするプロジェクター。
【請求項2】
光源と、
入力画像に基づいて前記光源が発した光を変調する変調手段と、
前記変調手段により変調された光を前記投射面に投射する投射手段と、
前記撮像手段により撮影された撮影画像に基づいて、前記投射面に投射された投射画像の台形歪みを検出し、前記変調手段の入力画像を処理することによって前記投射画像の台形歪みを補正する台形歪み補正手段と、を備えることを特徴とする請求項1記載のプロジェクター。
【請求項3】
前記撮像手段のシャッター速度を制御する撮影制御手段を備え、
前記撮影制御手段は、前記ぶれ検出手段によりぶれを検出するための前記撮影画像を撮影する場合と、前記台形歪み補正手段によって台形歪みを検出するための前記撮影画像を撮影する場合とで、前記撮像手段のシャッター速度を異なる速度に設定することを特徴とする請求項2記載のプロジェクター。
【請求項4】
前記撮影制御手段は、前記ぶれ検出手段によりぶれを検出するための前記撮影画像を撮影する場合のシャッター速度が、前記台形歪み補正手段によって台形歪みを検出するための前記撮影画像を撮影する場合のシャッター速度よりも長くなるように設定することを特徴とする請求項3記載のプロジェクター。
【請求項5】
前記移動判定手段によって前記投射面に対する前記プロジェクターの動きが小さいと判定された場合に、前記台形歪み補正手段により補正を実行させ、
前記台形歪み補正手段による補正が終了した後に、前記ぶれ検出手段によるぶれ検出と、前記移動判定手段による判定を開始させる動作制御手段を備えることを特徴とする請求項2から4のいずれかに記載のプロジェクター。
【請求項6】
前記ぶれ検出手段は、前記撮像手段により撮影された撮影画像から複数の領域を抽出して、領域毎にぶれを検出し、
前記移動判定手段は、前記ぶれ検出手段が検出した各領域のぶれを比較することにより、前記投射面に対する前記プロジェクターの動きを判定することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のプロジェクター。
【請求項7】
投射面に画像を投射するプロジェクターの制御方法であって、
前記投射面に投射された画像を含む範囲を撮影した撮影画像内におけるぶれを検出し、
ぶれの検出結果に基づいて、前記投射面に対する前記プロジェクターの動きを判定すること、
を特徴とするプロジェクターの制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−62705(P2013−62705A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200257(P2011−200257)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】