説明

プロジェクター

【課題】プロジェクターを長期間にわたって使用するうちに投写画像の色バランスが損なわれるという問題が改善された、高画質のプロジェクターを提供する。
【解決手段】赤色用、緑色用及び青色用液晶変調装置と、赤色用、緑色用及び青色用駆動信号を生成する駆動信号生成回路とを備えるプロジェクターであって、駆動信号生成回路は、初期状態における各液晶変調装置のV−T特性に基づいて形成された第1色変換テーブルと、所定の第1累積稼働時間を経過した時点において予想される各液晶変調装置のV−T特性に基づいて形成された第2色変換テーブルとを有する色変換テーブルライブラリーと、色変換テーブルライブラリーが有する複数の色変換テーブルのうちからいずれかの色変換テーブルを選択する色変換テーブル選択装置と、色変換テーブル選択装置によって選択された色変換テーブルを参照して、色変換を行う色変換回路とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロジェクターに関する。
【背景技術】
【0002】
光源から射出される光を2枚のダイクロイックミラーを有する色分離光学系を用いて赤色光、緑色光及び青色光に色分離し、それぞれの色光を液晶変調装置を用いて変調した後、変調された各色光を色合成してスクリーン等の投写対象に投写するプロジェクターが広く用いられている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
従来のプロジェクターによれば、赤色光、緑色光及び青色光を液晶変調装置を用いて変調した後色合成して投写することとしているため、色再現性や階調表現に優れ、さらには高精細のカラー画像を投写することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−287804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のプロジェクターにおいては、プロジェクターを長期間にわたって使用するうちに各液晶変調装置の特性が劣化し、その結果、投写画像の色バランスが損なわれるという問題がある。近年、プロジェクターの性能が高まるにつれて、この問題が重要視されるようになっている。
【0006】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものである。すなわち、プロジェクターを長期間にわたって使用するうちに投写画像の色バランスが損なわれるという問題が改善された、高画質のプロジェクターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のプロジェクターは、照明装置と、前記照明装置からの光を赤色光、緑色光及び青色光に色分離する色分離光学系と、前記色分離光学系によって色分離された各色光を画像信号に応じて変調する赤色用液晶変調装置、緑色用液晶変調装置及び青色用液晶変調装置と、前記3つの液晶変調装置で変調された各色光を色合成する色合成光学系と、前記色合成光学系により色合成された光を投写対象に向けて投写する投写光学系と、前記赤色用液晶変調装置を駆動するための赤色用駆動信号、前記緑色用液晶変調装置を駆動するための緑色用駆動信号及び前記青色用液晶変調装置を駆動するための青色用駆動信号を画像信号から生成する駆動信号生成回路とを備えるプロジェクターであって、前記駆動信号生成回路は、初期状態における前記赤色用液晶変調装置のV−T特性、前記緑色用液晶変調装置のV−T特性及び前記青色用液晶変調装置のV−T特性に基づいて形成された第1色変換テーブルと、所定の第1累積稼働時間を経過した時点において予想される前記赤色用液晶変調装置のV−T特性、前記緑色用液晶変調装置のV−T特性及び前記青色用液晶変調装置のV−T特性に基づいて形成された第2色変換テーブルとを有する色変換テーブルライブラリーと、前記色変換テーブルライブラリーが有する複数の色変換テーブルのうちからいずれかの色変換テーブルを選択する色変換テーブル選択装置と、前記色変換テーブル選択装置によって選択された色変換テーブルを参照して、色変換を行う色変換回路とを有することを特徴とする。ここで、V−T特性とは、液晶変調装置の透過率と印加電圧との関係を示す。
【0008】
このため、本発明のプロジェクターによれば、赤色用、緑色用及び青色用の液晶変調装置の、初期状態におけるV−T特性に基づく色変換テーブルと、所定の第1累積稼働時間を経過した時点において予想されるV−T特性に基づく色変換テーブルとから選択した色変換テーブルを参照して色変換を行うことが可能となるため、プロジェクターを長期間にわたって使用するうちに各液晶変調装置の特性が劣化したとしても、それに応じた色変換テーブルを参照して色変換を行うことが可能となり、その結果、プロジェクターを長期間にわたって使用するうちに投写画像の色バランスが損なわれるという問題を改善することが可能となる。
【0009】
本発明のプロジェクターにおいては、前記色変換テーブルライブラリーは、前記第1累積稼働時間よりも長い第2累積稼働時間を経過した時点において予想される前記赤色用液晶変調装置V−T特性、前記緑色用液晶変調装置のV−T特性及び前記青色用液晶変調装置のV−T特性に基づいて形成された第3色変換テーブルをさらに有することが好ましい。
【0010】
このように構成することにより、プロジェクターをさらに長期間にわたって使用するうちに各液晶変調装置の特性がさらに劣化したとしても、それに応じた色変換テーブル(第3色変換テーブル)を参照して色変換を行うことが可能となるため、プロジェクターを長期間にわたって使用するうちに投写画像の色バランスが損なわれるという問題を改善することが可能となる。
【0011】
本発明のプロジェクターにおいては、前記プロジェクターの累積稼働時間を計測するタイマーをさらに備え、前記色変換テーブル選択装置は、前記累積稼働時間に基づいて所定の色変換テーブルを選択することを特徴とすることが好ましい。
【0012】
このように構成することにより、累積稼働時間に対応する色変換テーブルを自動的に選択して用いることができる。
【0013】
本発明のプロジェクターにおいては、前記色変換テーブルを切り替えるための操作ボタンをさらに備え、前記色変換テーブル選択装置は、前記操作ボタンに対する操作内容に基づいて所定の色変換テーブルを選択することが好ましい。
【0014】
このように構成することにより、プロジェクター使用者は、操作ボタンを操作して所望の色変換テーブルを選択することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施形態に係るプロジェクター1000の概略構成を示すブロック図。
【図2】実施形態に係るプロジェクター1000の累積稼働時間が0時間の場合の、色変換に関する動作を説明するために示す図。
【図3】実施形態に係るプロジェクター1000の累積稼働時間が1000時間を超えた場合の、色変換に関する動作を説明するために示す図。
【図4】実施形態に係るプロジェクター1000の累積稼働時間が1000時間を超えた場合の、色変換に関する動作を説明するために示す図。
【図5】変形例に係るプロジェクター1002の概略構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係るプロジェクターについて、図に示す実施の形態に基づいて説明する。
[実施形態]
図1は、実施形態に係るプロジェクター1000の概略構成を示すブロック図である。
【0017】
実施形態に係るプロジェクター1000は、図1に示すように、照明装置100と、照明装置100からの光を赤色光、緑色光及び青色光に色分離する色分離光学系200と、色分離光学系200によって色分離された各色光を画像信号に応じて変調する赤色用液晶変調装置320R、緑色用液晶変調装置320G及び青色用液晶変調装置320Bと、3つの液晶変調装置320R,320G,320Bで変調された各色光を色合成する色合成光学系380と、色合成光学系380により色合成された光を投写対象に向けて投写する投写光学系390と、赤色用液晶変調装置320Rを駆動するための赤色用駆動信号、緑色用液晶変調装置320Gを駆動するための緑色用駆動信号及び青色用液晶変調装置320Bを駆動するための青色用駆動信号を画像信号から生成する駆動信号生成回路400とを備える。
【0018】
駆動信号生成回路400は、初期状態における赤色用液晶変調装置320RのV−T特性、緑色用液晶変調装置320GのV−T特性及び青色用液晶変調装置320BのV−T特性に基づいて形成された第1色変換テーブル450と、所定の第1累積稼働時間を経過した時点において予想される赤色用液晶変調装置320RのV−T特性、緑色用液晶変調装置320GのV−T特性及び青色用液晶変調装置320BのV−T特性に基づいて形成された第2色変換テーブル460と、所定の第1累積稼働時間よりも長い第2累積稼働時間を経過した時点において予想される赤色用液晶変調装置320RのV−T特性、緑色用液晶変調装置320GのV−T特性及び青色用液晶変調装置320BのV−T特性に基づいて形成された第3色変換テーブル470とを有する色変換テーブルライブラリー440と、色変換テーブルライブラリー440が有する複数の色変換テーブル450,460,470のうちからいずれかの色変換テーブルを選択する色変換テーブル選択装置430と、色変換テーブル選択装置430によって選択された色変換テーブルを参照して、色変換を行う色変換回路420とを有する。
【0019】
以下、各構成要素について説明し、その後に、色変換に関する動作について説明する。
【0020】
<照明装置>
照明装置100は、光源装置110と、第1レンズアレイ120と、第2レンズアレイ130と、偏光変換素子140と、重畳レンズ150とを有する。
【0021】
<色分離光学系>
色分離光学系200は、ダイクロイックミラー210,220を有し、照明装置100から射出される光を赤色光、緑色光及び青色光の3つの色光に分離して、それぞれの色光を照明対象となる液晶変調装置320R,320G,320Bに導く。
【0022】
ダイクロイックミラー210,220は、基板上に所定の波長領域の光束を反射し、他の波長領域の光束を透過する波長選択膜が形成された光学素子である。光路前段に配置されるダイクロイックミラー210は、赤色光成分を反射し、その他の色光成分を透過するミラーである。光路後段に配置されるダイクロイックミラー220は、緑色光成分を反射し、青色光成分を透過するミラーである。
【0023】
ダイクロイックミラー210で反射された赤色光成分は、反射ミラー232により曲折され、集光レンズ250Rを介して赤色用液晶変調装置320Rに入射する。
【0024】
集光レンズ250Rは、重畳レンズ150からの各部分光束を略平行な光に変換するために設けられる。他の液晶変調装置320G,320Bの光路前段に配設される集光レンズ250G,250Bも、集光レンズ250Rと同様に構成されている。
【0025】
ダイクロイックミラー210を透過した緑色光成分及び青色光成分のうち緑色光成分は、ダイクロイックミラー220によって反射され、集光レンズ250Gを透過して緑色用液晶変調装置320Gに入射する。一方、青色光成分は、ダイクロイックミラー220を透過し、リレーレンズ242、反射ミラー234、リレーレンズ244、反射ミラー236及び集光レンズ250Bを透過して青色用液晶変調装置320Bに入射する。リレーレンズ242、244及び反射ミラー234,236は、ダイクロイックミラー220を透過した青色光成分を青色用液晶変調装置320Bまで導く機能を有する。
【0026】
<液晶変調装置>
液晶変調装置は、赤色用液晶変調装置320R、緑色用液晶変調装置320G及び青色用液晶変調装置320Bから構成される。各液晶変調装置は、図1に示すように、それぞれ液晶変調パネル322R,322G,322Bと、液晶変調パネル駆動回路324R,324G,324Bと、後述する入射側偏光板及び射出側偏光板(図示せず。)とを有する。
【0027】
液晶変調パネル322R,322G,322Bは、入射した光を画像信号に応じて変調するものであり、照明装置100の照明対象となる。なお、図示を省略したが、各集光レンズ250R,250G,250Bと各液晶変調パネル322R,322G,322Bとの間には、それぞれ入射側偏光板が配置され、各液晶変調パネル322R,322G,322Bと色合成光学系380を構成するクロスダイクロイックプリズムとの間には、それぞれ射出側偏光板が配置される。これら入射側偏光板、液晶変調パネル322R,322G,322B及び射出側偏光板によって、入射する各色光の光変調が行われる。
【0028】
液晶変調パネルは、一対の透明なガラス基板に電気光学物質である液晶を密閉封入したものであり、例えば、ポリシリコンTFTをスイッチング素子として、与えられた画像信号に応じて、入射側偏光板から射出された略1種類の直線偏光の偏光方向を変調する。
【0029】
<色合成光学系>
色合成光学系380は、クロスダイクロイックプリズムを有する。クロスダイクロイックプリズムは、射出側偏光板から射出された色光毎に変調された光を合成してカラー画像を形成する光学素子である。このクロスダイクロイックプリズムは、4つの直角プリズムを貼り合わせた平面視略正方形状をなし、直角プリズム同士を貼り合わせた略X字状の界面には、誘電体多層膜が形成されている。略X字状の一方の界面に形成された誘電体多層膜は、赤色光を反射するものであり、他方の界面に形成された誘電体多層膜は、青色光を反射するものである。これらの誘電体多層膜によって赤色光及び青色光は曲折され、緑色光の進行方向と揃えられることにより、3つの色光が合成される。
【0030】
<投写光学系>
色合成光学系380から射出された光は、投写光学系390によって拡大投写され、スクリーンSR上で大画面画像を形成する。
【0031】
<駆動信号生成回路>
駆動信号生成回路400は、色変換以外の画像処理を行う画像処理回路410と、色変換を行う色変換回路420と、第1色変換テーブル450、第2色変換テーブル460及び第3色変換テーブル470を有する色変換テーブルライブラリー440と、第1色変換テーブル450、第2色変換テーブル460及び第3色変換テーブル470のうちから1つの色変換テーブルを選択する色変換テーブル選択装置430と、プロジェクターの累積稼働時間を計測するタイマー480とを有する。
【0032】
画像処理回路410は、画像信号を受けて、信号レベル変換、必要なAD変換、台形歪み補正に関する画像変換、拡大・縮小等の画像サイズ調整処理、解像度調整、画質調整処理等、色変換以外の画像処理を行う。
【0033】
色変換回路420は、画像処理回路410からの画像信号を受けて、色変換を行う。色変換回路420は、液晶変調装置320R,320G,320Bに対して、赤色用駆動信号、緑色用駆動信号及び青色用駆動信号を出力する。色変換回路420が行う色変換に関する動作の詳細については、後述する。
【0034】
プロジェクター1000は、操作部490及びシステムコントロール回路500をさらに有する。操作部490は、プロジェクター1000の筐体に設けられ、複数のボタンを有する。使用者がボタンを操作すると、対応する操作信号がシステムコントロール回路500に出力される。システムコントロール回路500は、操作部490からの操作信号等を受けてプロジェクター1000の各構成要素を制御する。
【0035】
<色変換に関する動作>
1.プロジェクター1000の累積稼働時間が0時間である場合
図2は、実施形態に係るプロジェクター1000の累積稼働時間が0時間である場合の、色変換に関する動作を説明するために示す図である。但し、色変換テーブル選択装置430は、第1色変換テーブル450を選択しているものとする。
【0036】
図2中、グラフAは、工場出荷時点などの初期状態における赤色用液晶変調装置320RのV−T特性を示し、グラフBは、初期状態における緑色用液晶変調装置320GのV−T特性を示し、グラフCは、初期状態における青色用液晶変調装置320BのV−T特性を示す。なお、グラフA〜Cにおいて、斜線部が付されていない領域は、各液晶変調装置320R,320G,320Bに実際に印加することとなる電圧の範囲(使用電圧範囲)を示している。
【0037】
上記3つの液晶変調装置320R,320G,320Bは、それぞれ変調する光の波長が異なるため、グラフA〜Cに示すように、V−T特性も異なる。とりわけ、青色用液晶変調装置320Bは、透過率が最大となる印加電圧が他の液晶変調装置の場合より高いため、他の液晶変調装置より高い使用電圧範囲で用いる(グラフC参照。)。
【0038】
色変換テーブルライブラリー440が有する3つの色変換テーブルのうち、第1色変換テーブル450は、初期状態における赤色用液晶変調装置のV−T特性、初期状態における緑色用液晶変調装置のV−T特性及び初期状態における青色用液晶変調装置のV−T特性に基づいて形成される。具体的には、第1色変換テーブル450は、初期状態における赤色用液晶変調装置のV−T特性、初期状態における緑色用液晶変調装置のV−T特性及び初期状態における青色用液晶変調装置のV−T特性に基づき、色変換後の赤色光の画素値−透過率特性(グラフD参照。)、緑色光の画素値−透過率特性(グラフE参照。)及び青色光の画素値−透過率特性(グラフF参照。)の3つ画素値−透過率特性がほぼ同一になるように形成される。なお、第1色変換テーブル450は、赤色用駆動信号を形成するために参照する第1色変換小テーブル452R、緑色用駆動信号を形成するために参照する第1色変換小テーブル452G及び青色用駆動信号を形成するために参照する第1色変換小テーブル452Bを有する。
【0039】
色変換テーブル選択回路430は、プロジェクター1000の累積稼働時間が短い場合(例えば0時間)は、第1色変換テーブル450を選択し、色変換回路420は、各液晶変調装置320R,320G,320Bの初期状態におけるV−T特性に基づいて形成された第1色変換テーブル450を参照して色変換処理を行う。その結果、グラフDに示す赤色光の画素値−透過率特性、グラフEに示す緑色光の画素値−透過率特性及びグラフFに示す青色光の画素値−透過率特性が得られる。
【0040】
2.プロジェクター1000の累積稼働時間が1000時間を超えた場合
(1)色変換テーブル選択装置430が第1色変換テーブル450を選択する場合
図3は、実施形態に係るプロジェクター1000の累積稼働時間が1000時間を超えた場合の色変換に関する動作を説明するために示す図である。色変換テーブル選択装置430は、第1色変換テーブル450を選択しているものとする。
【0041】
図3中、グラフGは、プロジェクターにおける累積稼働時間が1000時間を超えた場合の赤色用液晶変調装置320RのV−T特性であり、グラフHは、プロジェクターにおける累積稼働時間が1000時間を超えた場合の緑色用液晶変調装置320GのV−T特性であり、グラフIは、プロジェクターにおける累積稼働時間が1000時間を超えた場合の青色用液晶変調装置320BのV−T特性である。
【0042】
上記3つの液晶変調装置320R,320G,320Bは、長期間の稼働により、グラフG〜Iに示すように、V−T特性が劣化する。とりわけ、青色用液晶変調装置320Bは、短波長光にさらされることを主原因として、他の液晶変調装置の場合よりV−T特性の劣化が大きい(グラフI参照。)。
【0043】
このとき、色変換回路420は、各液晶変調装置320R,320G,320Bの初期状態におけるV−T特性に基づいて形成された第1色変換テーブル450を参照して色変換を行うこととしているため、赤色光の画素値−透過率特性(グラフJ参照。)、緑色光の画素値−透過率特性(グラフK参照。)及び青色光の画素値−透過率特性(グラフL参照。)は、初期状態のときから劣化する。とりわけ、青色光の画素値−透過率特性は初期状態のときから大きく劣化し、これにより、投写画像は黄色みを帯び、色バランスが悪くなる。
【0044】
(2)色変換テーブル選択装置430が第2色変換テーブル460を選択する場合
図4は、実施形態に係るプロジェクター1000の累積稼働時間が1000時間を超えた場合の、色変換に関する動作を説明するために示す図である。但し、色変換テーブル選択装置430は、第1色変換テーブル460を選択しているものとする。
【0045】
図4中、グラフMは、プロジェクターにおける累積稼働時間が1000時間を超えた場合の赤色用液晶変調装置320RのV−T特性であり、グラフNは、プロジェクターにおける累積稼働時間が1000時間を超えた場合の緑色用液晶変調装置320GのV−T特性であり、グラフPは、プロジェクターにおける累積稼働時間が1000時間を超えた場合の青色用液晶変調装置320BのV−T特性である。これらのグラフM,N,Pは、図3に示すグラフG,H,Iと同一である。
【0046】
図4に示す第2色変換テーブル460は、第1累積稼働時間(例えば1000時間)を経過した時点において予想される赤色用液晶変調装置320RのV−T特性、緑色用液晶変調装置320GのV−T特性及び青色用液晶変調装置320RのV−T特性に基づいて、プロジェクターの製造工程等において予め形成されたものである。なお、第2色変換テーブル460は、赤色用駆動信号を形成するために参照する第2色変換小テーブル462R、緑色用駆動信号を形成するために参照する第2色変換小テーブル462G及び青色用駆動信号を形成するために参照する第2色変換小テーブル462Bを有する。
【0047】
色変換テーブル選択回路430は、プロジェクター1000の累積稼働時間が第1累積稼働時間(例えば1000時間)を超えると、第2色変換テーブル460を選択し、色変換回路420は、第1累積稼働時間を経過した時点において予想される各液晶変調装置320R,320G,320BのV−T特性に基づいて形成された第2色変換テーブル460を参照して色変換処理を行う。その結果、グラフQに示す赤色光の画素値−透過率特性、グラフPに示す緑色光の画素値−透過率特性及びグラフRに示す青色光の画素値−透過率特性が得られるようになり、色バランスや階調特性を改善することができる。
【0048】
3.プロジェクター1000の累積稼働時間が3000時間を超えた場合
プロジェクター1000の累積稼働時間が例えば3000時間を超える場合には、各液晶変調装置のV−T特性はさらに劣化する。詳細な説明は省略するが、その場合も同様に第2累積稼働時間(例えば3000時間)を経過した時点において予想される各液晶変調装置のV−T特性に基づいて作成された第3色変換テーブル470(図1参照。)を参照して色変換を行うことにより、色バランスや階調表現を改善することができる。
【0049】
以上のように構成された実施形態に係るプロジェクター1000によれば、赤色用、緑色用及び青色用の液晶変調装置の、初期状態におけるV−T特性に基づく色変換テーブル450と、所定の第1累積稼働時間を経過した時点において予想されるV−T特性に基づく色変換テーブル460と、所定の第2累積稼働時間を経過した時点において予想されるV−T特性に基づく色変換テーブル470とから選択した色変換テーブルを参照して色変換を行うことが可能となるため、プロジェクターを長期間にわたって使用するうちに各液晶変調装置の特性が劣化したとしても、それに応じた色変換テーブルを参照して色変換を行うことが可能となり、その結果、プロジェクターを長期間にわたって使用するうちに投写画像の色バランスが損なわれるという問題を改善することが可能となる。
【0050】
また、実施形態に係るプロジェクター1000によれば、プロジェクターの累積稼働時間を計測するタイマー480をさらに備え、色変換テーブル選択装置430は、累積稼働時間に基づいて所定の色変換テーブルを選択するため、累積稼働時間に対応する色変換テーブルを自動的に選択して用いることができる。
【0051】
以上、本発明のプロジェクターを上記の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0052】
(1)上記実施形態においては、第1累積稼働時間を1000時間とし、第2累積稼働時間を3000時間として本発明を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、第1累積稼働時間を500時間とし、第2累積稼働時間を1500時間とすることもできる。
【0053】
(2)上記実施形態においては、色変換テーブルに記録される画素値(階調レベル)の数を1024としたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、色変換テーブルに記録される画素値(階調レベル)の数をもっと多くしてもよいし(例えば2048)、もっと少なくしてもよい(例えば64)。画素値(階調レベル)の数をもっと少なくする場合には、前後の画素値(階調レベル)に関する値を参照しながら補間計算を行ってもよい。
【0054】
(3)上記実施形態においては、累積稼働時間を計測するタイマーにより計測された累積稼働時間に基づいて所定の色変換テーブルを選択するようにしたが、本発明はこれに限定されるものではない。図5は、変形例に係るプロジェクター1002の概略構成を示すブロック図である。変形例に係るプロジェクター1002は、図5に示すように、色変換テーブルを切り替えるための操作ボタン492をさらに備え、色変換テーブル選択装置430は、操作ボタン492に対する操作内容に基づいて所定の色変換テーブルを選択する。このように、操作ボタン492に対する操作内容に基づいて所定の色変換テーブルを選択するようにしてもよい。
【0055】
(4)上記実施形態においては、色変換回路420、色変換テーブル選択装置430及び色変換テーブル450,460,470は、図1に示すように、別体として示されているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、色変換回路420、色変換テーブル選択回路430及び色変換テーブル450,460,470を同一の大規模集積回路に集積するなど、さまざまな配置が可能である。
【0056】
(5)上記実施形態においては、画像処理回路410は、色変換回路420の前段に配置するとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、画像処理回路の一部の機能を実施する回路を色変換回路の後段に配置することも可能である。
【0057】
(6)本発明においては、色変換回路、色変換テーブル選択装置、色変換テーブル及びタイマーの全部又は一部の機能はCPU上で動作するソフトウエアプログラムで処理する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0058】
100…照明装置、110…光源装置、120…第1レンズアレイ、130…第2レンズアレイ、140…偏光変換素子、150…重畳レンズ、200…色分離光学系、210,220…ダイクロイックミラー、232,234,236…反射ミラー、242,244…リレーレンズ、250R,250G,250B…集光レンズ、320R…赤色用液晶変調装置、320G…緑色用液晶変調装置、320B…青色用液晶変調装置、322R,322G,322B…液晶変調パネル、324R,324G,324B…液晶変調パネル駆動回路、380…色合成光学系、390…投写光学系、400…駆動信号生成回路、410…画像処理回路、420…色変換回路、430…色変換テーブル選択装置、440…色変換テーブルライブラリー、450…第1色変換テーブル、452R,452G,452B…第1色変換小テーブル、460…第2色変換テーブル、462R,462G,462B…第2色変換小テーブル、470…第3色変換テーブル、480…タイマー、490…操作部、492…操作ボタン、500…システムコントロール回路、1000,1002…プロジェクター、SR…スクリーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
照明装置と、
前記照明装置からの光を赤色光、緑色光及び青色光に色分離する色分離光学系と、
前記色分離光学系によって色分離された各色光を画像信号に応じて変調する赤色用液晶変調装置、緑色用液晶変調装置及び青色用液晶変調装置と、
前記3つの液晶変調装置で変調された各色光を色合成する色合成光学系と、
前記色合成光学系により色合成された光を投写対象に向けて投写する投写光学系と、
前記赤色用液晶変調装置を駆動するための赤色用駆動信号、前記緑色用液晶変調装置を駆動するための緑色用駆動信号及び前記青色用液晶変調装置を駆動するための青色用駆動信号を画像信号から生成する駆動信号生成回路とを備えるプロジェクターであって、
前記駆動信号生成回路は、
初期状態における前記赤色用液晶変調装置のV−T特性、前記緑色用液晶変調装置のV−T特性及び前記青色用液晶変調装置のV−T特性に基づいて形成された第1色変換テーブルと、所定の第1累積稼働時間を経過した時点において予想される前記赤色用液晶変調装置のV−T特性、前記緑色用液晶変調装置のV−T特性及び前記青色用液晶変調装置のV−T特性に基づいて形成された第2色変換テーブルとを有する色変換テーブルライブラリーと、
前記色変換テーブルライブラリーが有する複数の色変換テーブルのうちからいずれかの色変換テーブルを選択する色変換テーブル選択装置と、
前記色変換テーブル選択装置によって選択された色変換テーブルを参照して、色変換を行う色変換回路とを有することを特徴とするプロジェクター。
【請求項2】
請求項1に記載のプロジェクターにおいて、
前記色変換テーブルライブラリーは、前記第1累積稼働時間よりも長い第2累積稼働時間を経過した時点において予想される前記赤色用液晶変調装置V−T特性、前記緑色用液晶変調装置のV−T特性及び前記青色用液晶変調装置のV−T特性に基づいて形成された第3色変換テーブルをさらに有することを特徴とするプロジェクター。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のプロジェクターにおいて、
前記プロジェクターの累積稼働時間を計測するタイマーをさらに備え、
前記色変換テーブル選択装置は、前記累積稼働時間に基づいて所定の色変換テーブルを選択することを特徴とするプロジェクター。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のプロジェクターにおいて、
前記色変換テーブルを切り替えるための操作ボタンをさらに備え、
前記色変換テーブル選択装置は、前記操作ボタンに対する操作内容に基づいて所定の色変換テーブルを選択することを特徴とするプロジェクター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−245586(P2010−245586A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−88703(P2009−88703)
【出願日】平成21年4月1日(2009.4.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】