説明

プロジェクター

【課題】第1画像および第2画像の投影を行っていることを表示するプロジェクターを提供する。
【解決手段】プロジェクターは、光源から射出された光束を画像情報に応じて変調し、第1画像および第2画像を時分割で投影する。プロジェクターは、第1画像と第2画像との切り替えに同期する不可視光による同期信号を出力する送信装置5と、同期信号の照射により可視光を出力する波長変換部7と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロジェクターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光源から射出された光束を画像情報に応じて変調し、変調した光をスクリーン等の投写面に投写するプロジェクターが知られている。また、近年、右目用画像および左目用画像をスクリーンに投影し、専用の眼鏡を用いることで観察者に立体画像として認識させる技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載されている多眼立体表示装置は、プロジェクターと赤外線発光機とを備えている。プロジェクターは、入力される映像信号に従って所定の映像をスクリーンに投影する。赤外線発光機は、プロジェクターに接続されてスクリーンの上方に配置され、発光によって映像信号に同期する赤外線信号を出力する。そして、専用の眼鏡(液晶シャッターメガネ)を装着した観察者は、左右のシャッターが赤外線信号に基づいて開閉することによって立体画像として認識する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−126501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術は、投写された画像が立体画像として認識しにくい場合等に、観察者に立体画像を投影していることの疑念を抱かせてしまう恐れがある。また、プロジェクターが立体画像として認識可能な投影していることを観察者に知らせるために、専用の表示部(発光ダイオード等)を設けると電力を要したり、配線処理等により構造が煩雑化したりするという課題がある。また、メッセージ画像等のOSD(オンスクリーンディスプレイ)により、プロジェクターが立体画像として認識可能な投影していることを表示させると、画像が欠如する部分が生じるため、観察者に不快感を与えるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]本適用例に係るプロジェクターは、光源から射出された光束を画像情報に応じて変調し、第1画像および第2画像を時分割で投影可能なプロジェクターであって、前記第1画像と前記第2画像との切り替えに同期する不可視光による同期信号を出力する送信装置と、前記同期信号が照射されることにより可視光を出力する波長変換部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本適用例によれば、プロジェクターは、不可視光による同期信号を出力する送信装置、およびこの同期信号の照射により可視光を出力する波長変換部を備えている。これによって、同期信号を利用して、プロジェクターが第1画像および第2画像の投影を行っていることを表示することが可能となる。
例えば、第1画像としての右目用画像、および第2画像としての左目用画像を時分割で投影できるプロジェクターにおいて、同期信号によって、シャッター方式の眼鏡を開閉させると共に、出力された可視光によって、プロジェクターの構成部材を光らせたり、プロジェクターが設置されている周囲の部材(例えば、天井等)を光らせたりすることが可能となる。これによって、観察者は、投影された画像を立体画像として認識できると共に、可視光の表示によって、プロジェクターが立体画像を認識可能な投写を行っていることを知ることができる。
よって、投影された画像が立体画像として認識しにくい場合等であっても、立体画像を投影していないのではないかという観察者の不安感を取り除くプロジェクターの提供が可能となる。
また、同期信号が波長変換部に照射されることによって可視光が出力されるという電力を不要とする構成なので、プロジェクターは、消費電力の増加を抑制して第1画像および第2画像の投影を行っていることを表示することが可能となる。
【0009】
[適用例2]上記適用例に記載のプロジェクターにおいて、前記不可視光は、赤外線であり、前記波長変換部は、入射する光を第2高調波に変換する波長変換素子を備えていることが好ましい。
【0010】
本適用例によれば、送信装置から出力される同期信号は、赤外線による信号であり、波長変換部は、入射する光を第2高調波に変換する波長変換素子を備えている。これによって、簡素な構成で赤外線による同期信号を、この同期信号の半分の波長を有する可視光に変換することが可能となる。
【0011】
[適用例3]上記適用例に係るプロジェクターにおいて、前記波長変換部は、前記波長変換素子の光路後段側または光路前段側に配置される蛍光体を備えていることが好ましい。
【0012】
本適用例によれば、波長変換部は、波長変換素子に加えて蛍光体を備えている。これによって、入射する光を半分の波長に変換する波長変換素子のみでは、所望の波長領域の可視光に変換しきれなかった光をより視認性の高い可視光として出力することが可能となる。
【0013】
[適用例4]上記適用例に係るプロジェクターにおいて、前記波長変換部から出力された可視光によって照明される表示部を備え、前記表示部は、当該プロジェクターが設置される側とは反対側に設けられていることが好ましい。
【0014】
本適用例によれば、波長変換部から出力された可視光によって表示部を光らせることが可能となる。また、表示部は、プロジェクターが設置される側とは反対側に設けられている。例えば、表示部は、プロジェクターが机上等に設置される場合、机上とは反対側のプロジェクターの上側に配置され、プロジェクターが天井等に設置される場合、天井とは反対側のプロジェクターの下側に配置される。これによって、同期信号が出力された際に、表示部を光らせ、観察者が画像の投写面に対して様々な位置に居ても、観察者に表示部が光っていることを容易に認識させることが可能となる。
よって、表示部の容易な観察が可能となり、立体画像等を観察することが可能な状態か否かを確実に観察者に認識させることが可能となる。
【0015】
[適用例5]上記適用例に係るプロジェクターにおいて、前記同期信号を前記波長変換部に導く導光部を備えていることが好ましい。
【0016】
本適用例によれば、同期信号を波長変換部に導く導光部を備えているので、波長変換部により多くの同期信号を導くことができる。これによって、同期信号をより多く可視光に変換し、観察者の視認性を高めることが可能となる。
【0017】
[適用例6]上記適用例に係るプロジェクターにおいて、前記導光部は、投写面で反射された前記同期信号を前記波長変換部に導くように形成されていることが好ましい。
【0018】
本適用例によれば、導光部は、投写面で反射された同期信号を波長変換部に導くので、波長変換部は、この投写面で反射された同期信号を可視光に変換することが可能となる。これによって、送信装置から出力される同期信号の直接光、および投写面からの反射光の双方を利用して可視光に変換し、プロジェクターが第1画像および第2画像の投影を行っていることを表示させることが可能となる。
また、送信装置から離間する位置に導光部を配置し、直接光が導光部や波長変換部に入射する量が少ない構造であっても、反射光を変換した可視光で表示させることが可能となる。よって、シャッター方式の眼鏡を開閉させるための同期信号の光量を確保しつつ、第1画像および第2画像の投影を行っていることを表示させるための光量を確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1実施形態のプロジェクターを模式的に示す外観図。
【図2】第1実施形態のプロジェクター内部の概略構成を示す模式図。
【図3】第1実施形態における送信装置、導光部、波長変換部および表示部を模式的に示す断面図。
【図4】第2実施形態における送信装置、導光部、および波長変換部を説明する模式図。
【図5】第3実施形態における表示部、および表示部の光路前段側に配置される部材を模式的に示す斜視図。
【図6】第3実施形態におけるプロジェクターおよび投写面の模式図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態に係るプロジェクターについて、図面を参照して説明する。
本実施形態のプロジェクターは、光源から射出された光束を画像情報に応じて変調してスクリーン等の投写面に拡大投写する。また、本実施形態のプロジェクターは、第1画像としての右目用画像、および第2画像としての左目用画像を時分割でスクリーンに投影できるように構成されている。
【0021】
また、本実施形態のプロジェクターは、この右目用画像と左目用画像との切り替えに同期する同期信号(赤外線)を投写面に向けて出力するように構成されている。そして、投写面に投写された画像を観察する観察者は、シャッター方式の画像観察用眼鏡を装着することによって、画像観察用眼鏡が投写面から反射された同期信号によって制御され、投写された画像を立体画像として認識することができる。また、本実施形態のプロジェクターは、同期信号を出力していることを表示できるように構成されている。
【0022】
〔プロジェクターの主な構成〕
図1は、本実施形態のプロジェクター1を模式的に示す外観図であり、机上等に載置された状態を示す図である。図2は、プロジェクター1内部の概略構成を示す模式図である。
プロジェクター1は、図1、図2に示すように、外装を構成する外装筐体2、制御部(図示省略)、光源装置31を有する光学ユニット3、光源装置31や制御部に電力を供給する電源装置4、送信装置5、導光部6、波長変換部7(図3参照)、および表示部8等を備えている。
【0023】
なお、具体的な図示は省略したが、外装筐体2内には、プロジェクター1の内部を冷却するための冷却ファンや空気を導くダクト等が配置されている。また、以下では、説明の便宜上、光源装置31から光束が射出される方向を+X方向(右側)、プロジェクター1から投写される光の方向を+Y方向(前側)、図1における上方向を+Z方向(上側)として記載する。
【0024】
外装筐体2は、合成樹脂製であり、図1に示すように、アッパーケース21、ロアーケース22、およびフロントケース23等を備えており、これらは、ネジ等により固定されている。
アッパーケース21は、図1に示すように、外装筐体2の上部を構成する。アッパーケース21には、上面の後方にプロジェクター1の各種指示を行うための操作パネル20が配置され、操作パネル20の前方には、後述する投写レンズ36に備えられたズームリング361およびフォーカスリング362が露出する開口部が設けられている。また、アッパーケース21の上面には、ズームリング361およびフォーカスリング362の右側に表示部8が設けられている。表示部8は、同期信号が出力された際に光る(表示する)ように構成されている。表示部8については、後で詳細に説明する。
【0025】
ロアーケース22は、外装筐体2の下部を構成する。ロアーケース22の下方には、プロジェクター1が机上等に設置される際に設置面に当接し、プロジェクター1を支持する脚部(図示省略)が設けられている。また、図示は省略するが、ロアーケース22の下面には、治具が固定されるネジ穴が設けられており、プロジェクター1は、この治具を介して、天井等に設置される。
【0026】
フロントケース23は、外装筐体2の前部を構成する。フロントケース23の中央部には、図1に示すように、前方から見て円形の開口部(投写用開口部231)が形成されており、この投写用開口部231から投写される光が通過する。
フロントケース23には、投写用開口部231の+X側に、外部の空気が取り込まれる吸気口232が設けられており、吸気口232の内側には、図示しない吸気用のダクトが配置されている。また、フロントケース23には、投写用開口部231の−X側に、外装筐体2内の温まった空気が外部に排出される排気口233が設けられており、排気口233の内側には、図示しない排気用のダクトが配置されている。
【0027】
また、フロントケース23には、投写用開口部231と吸気口232との間に、平面視矩形の開口部が形成されており、この開口部は、光学フィルター24によって閉塞されている。そして、光学フィルター24の後方には、同期信号を出力する送信装置5(図2参照)が配置されている。
【0028】
光学フィルター24は、送信装置5から出力された同期信号(赤外線)を透過し、可視光等の透過を抑制する合成樹脂で形成されている。光学フィルター24は、プロジェクター1外部から送信装置5等を見えにくくし、デザイン性の向上が図れるように形成されている。なお、光学フィルター24は、送信装置5から出力された同期信号を透過する材料であれば合成樹脂に限らず他の材料を用いてもよい。
また、図示は省略するが、外装筐体2には、光源装置31(図2参照)が着脱される開口部が設けられており、この開口部は、ランプ蓋によって閉塞されている。
【0029】
制御部は、CPU(Central Processing Unit)やROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を備え、コンピューターとして機能するものであり、プロジェクター1の動作の制御を行う。
【0030】
光学ユニット3は、制御部による制御の下、光源311から射出された光束を光学的に処理して投写する。
光学ユニット3は、図2に示すように、光源装置31、インテグレーター照明光学系32、色分離光学系33、リレー光学系34、電気光学装置35、投写レンズ36、およびこれらの部材31〜36を光路上の所定位置に配置する光学部品用筐体37を備える。
光学ユニット3は、図2に示すように平面視略L字状に形成され、一方の端部に光源装置31が着脱可能に配置され、他方の端部に投写レンズ36が配置される。
【0031】
光源装置31は、超高圧水銀ランプやメタルハライドランプ等からなる放電型の光源311、リフレクター312および光透過部材としての平行化レンズ313等を備えている。光源装置31は、光源311から射出された光束をリフレクター312にて反射した後、平行化レンズ313よって射出方向を揃え、インテグレーター照明光学系32に向けて射出する。
【0032】
インテグレーター照明光学系32は、第1レンズアレイ321、第2レンズアレイ322、偏光変換素子323、および重畳レンズ324を備える。
第1レンズアレイ321は、光源装置31から射出された光束を複数の部分光束に分割する光学素子であり、光源装置31から射出された光束の光軸Cに対して略直交する面内にマトリックス状に配列される複数の小レンズを備えている。
【0033】
第2レンズアレイ322は、第1レンズアレイ321と略同様の構成を有しており、重畳レンズ324とともに、第1レンズアレイ321から射出された部分光束を後述する液晶ライトバルブ351の表面に重畳させる。
偏光変換素子323は、第2レンズアレイ322から射出されたランダム偏光光を液晶ライトバルブ351で利用可能な略1種類の偏光光に揃える機能を有する。
【0034】
色分離光学系33は、2枚のダイクロイックミラー331,332、および反射ミラー333を備え、インテグレーター照明光学系32から射出された光束を赤色光(以下「R光」という)、緑色光(以下「G光」という)、青色光(以下「B光」という)の3色の色光に分離する機能を有する。
【0035】
リレー光学系34は、入射側レンズ341、リレーレンズ343、および反射ミラー342,344を備え、色分離光学系33で分離されたR光をR光用の液晶ライトバルブ351Rまで導く機能を有する。なお、光学ユニット3は、リレー光学系34がR光を導く構成としているが、これに限らず、例えば、B光を導く構成としてもよい。
【0036】
電気光学装置35は、光変調装置としての液晶ライトバルブ351および色合成光学装置としてクロスダイクロイックプリズム352を備え、色分離光学系33で分離された各色光を、右目用および左目用の画像情報に応じて変調し、変調した各色光を合成する。
【0037】
液晶ライトバルブ351は、3色の色光毎に備えられており(R光用の液晶ライトバルブを351R、G光用の液晶ライトバルブを351G、B光用の液晶ライトバルブを351Bとする)、それぞれ透過型の液晶パネル、およびその両面に配置された入射側偏光板、射出側偏光板を有している。
【0038】
液晶ライトバルブ351は、図示しない微小画素がマトリックス状に形成された矩形状の画素領域を有し、各画素が画像情報に応じた光透過率に設定され、画素領域内に表示画像を形成する。そして、色分離光学系33で分離された各色光は、液晶ライトバルブ351にて変調された後、クロスダイクロイックプリズム352に射出される。
【0039】
クロスダイクロイックプリズム352は、4つの直角プリズムを貼り合わせた平面視略正方形状をなし、直角プリズム同士を貼り合わせた界面には、2つの誘電体多層膜が形成されている。クロスダイクロイックプリズム352は、誘電体多層膜が液晶ライトバルブ351R,351Bにて変調された色光を反射し、液晶ライトバルブ351Gにて変調された色光を透過して、各色光を合成する。
【0040】
投写レンズ36は、複数のレンズ(図示省略)、ズームリング361、フォーカスリング362(図1参照)を有して構成され、クロスダイクロイックプリズム352にて合成された光をスクリーン上に拡大投写する。
【0041】
電源装置4は、詳細な説明は省略するが、電源ブロックおよび光源装置31を駆動する光源駆動ブロック(いずれも図示省略)を備え、制御部および光源311等の電子部品に電力を供給する。
【0042】
図3は、送信装置5、導光部6、波長変換部7および表示部8を模式的に示す断面図であり、前方から見た図である。
送信装置5は、制御部の指示に基づいて、右目用画像と左目用画像との切り替えに同期する同期信号を出力する。送信装置5は、図2、図3に示すように、複数の発光素子51および発光素子51が実装される回路基板52を備え、図示しないケーブルを介して制御部に接続されている。
【0043】
発光素子51は、不可視光、例えば800nm程度の波長領域の赤外線による同期信号を出力するLED(Light Emitting Diode)が採用されている。回路基板52は、図3に示すように、平面視矩形状に形成されている。なお、発光素子51として800nm程度以外の波長領域の赤外線を出力する素子を用いてもよい。
【0044】
発光素子51は、図3に示すように縦横に整列され、図2に示すように、回路基板52の前側(+Y側)の面に実装されている。また、発光素子51は、出力強度が上下方向および左右方向より前方(+Y方向)に強い指向性を有するLEDが採用されている。そして、プロジェクター1が投写面に画像を投影する姿勢において、発光素子51から出力された同期信号は、主に投写面に向かい、一部が導光部6に向かう。
【0045】
導光部6は、同期信号(赤外線)を透過する材料で形成され、送信装置5から出力された同期信号の一部を波長変換部7に導く機能を有している。
導光部6は、図3に示すように、送信装置5の上側を覆う上部61、および送信装置5の右側(+X側)、左側(−X側)をそれぞれ覆う側壁部62,63を有している。
【0046】
上部61は、板状に形成され、下方から入射する同期信号の一部が上方に透過するように形成されている。側壁部62,63は、送信装置5を覆う側の反対側が上側になる程、送信装置5から離間するように傾斜する傾斜面をそれぞれ有している。そして、この傾斜面には、反射部材62R,63Rがそれぞれ設けられ、側壁部62,63に入射する同期信号が上方に反射するように形成されている。そして、導光部6に入射する同期信号は、上部61から上方に出力される。
【0047】
波長変換部7は、導光部6によって導かれた同期信号(赤外線)が照射されることによって可視光を出力する。波長変換部7は、図3に示すように、導光部6の上方に配置された波長変換素子71、および波長変換素子71の光路後段側で、表示部8の内面に形成された蛍光体72を備えている。
【0048】
波長変換素子71は、入射する光を第2高調波に変換する機能、つまり、入射する同期信号を同期信号の半分の波長を有する光に変換する機能を有している。本実施形態では、波長変換素子71として、KDP(KH2PO4)等の2次非線形光学材料が用いられている。波長変換素子71は、板状に形成され、図3に示すように、上部61の上面に配置される。波長変換素子71は、導光部6によって導かれた800nm程度の同期信号(赤外線L0)を400nm程度の波長を有する光L1に変換する。
【0049】
蛍光体72は、紫外線の照射によって発光する、例えば、硫化亜鉛(ZnS:Cu)等の材料で形成されている。蛍光体72は、図3に示すように、波長変換素子71の上方に配置された表示部8の内面に塗布されている。蛍光体72は、波長変換素子71から出力された光L1が照射され、540nm程度の波長を有する可視光(緑色光L2)を発する。なお、蛍光体72として、緑色以外の色(例えば、青色系や赤色系)で発光する材料を用いてもよい。
このように、波長変換部7は、送信装置5から出力される赤外線L0のうち、送信装置5の上方および左右に向かい、導光部6に導かれた赤外線L0を可視光(緑色光L2)に変換する。
【0050】
表示部8は、光拡散材が含有された合成樹脂で外面が凸曲面を有するように形成されている。そして、表示部8は、図3に示すように、この凸曲面がアッパーケース21の上面から飛び出し、プロジェクター1外部から観察可能に配設され、波長変換部7から出力された緑色光L2によって照明される。このように、表示部8は、プロジェクターが設置される側とは反対側に設けられ、波長変換部7から出力された緑色光L2によって緑色に光る。
【0051】
プロジェクター1は、右目用画像および左目用画像を投影する際、送信装置5から同期信号(赤外線L0)が出力される。
発光素子51から出力された同期信号(赤外線L0)は、主に光学フィルター24(図1参照)を透過した後、投写面に向かい、一部が導光部6に向かう。投写面に到達した赤外線L0は、投写面にて拡散反射され一部が投影された画像の観察者に到達する。
【0052】
そして、シャッター方式の画像観察用眼鏡10(図6参照)を装着した画像の観察者は、画像観察用眼鏡10が同期信号によって制御され、投写面に投写された左目用画像を左目のみで観察し、右目用画像を右目のみで観察し、立体画像として認識することができる。
一方、導光部6に到達した同期信号(赤外線L0)は、前述したように、導光部6、および波長変換部7を介して表示部8を光らせる。なお、言うまでもなく、プロジェクター1が右目用画像および左目用画像を投影しない際には、同期信号が出力されないので、表示部8は表示されない(光らない)。
【0053】
また、立体画像が投影される際には、映画等を暗い環境下で鑑賞するシーンが多いと考えられ、表示部8から発せられる光量が少なくても、このシーンにおいて、観察者が認識可能となる。
このように、本実施形態のプロジェクター1は、同期信号を利用して波長変換部7が可視光に変換し、表示部8を表示させる。
【0054】
以上説明したように、本実施形態のプロジェクター1によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)プロジェクター1は、同期信号(赤外線L0)を利用して、表示部8を光らせるので、立体画像を観察することが可能な状態か否かを観察者に認識させることが可能となる。
よって、投影された画像が立体画像として認識しにくい場合等であっても、立体画像を投影していないのではないかという観察者の不安感を取り除くプロジェクター1の提供が可能となる。
また、表示部8を光らせるための電力や配線処理等が不要なので、消費電力の増加を抑制し、簡素な構成で表示部8を表示させるプロジェクター1が可能となる。また、OSDによって表示する構成に比べ、投写面に投写される画像が欠如することがないため、観察者に不快感を与えたりすることなく表示することが可能となる。
【0055】
(2)同期信号は、赤外線であり、波長変換部7は、入射する光を第2高調波に変換する波長変換素子71を備えている。これによって、簡素な構成で同期信号(赤外線L0)を可視光に近い領域の光L1に変換することが可能となる。
【0056】
(3)波長変換部7は、波長変換素子71の光路後段側に配置される蛍光体72を備えているので、波長変換素子71で変換された光L1をより視認性の高い可視光(緑色光L2)として出力し、表示部8を光らせることが可能となる。
【0057】
(4)表示部8は、アッパーケース21の上面、つまりプロジェクター1が設置される側とは反対側に設けられている。これによって、プロジェクター1が机上等に設置された場合、およびプロジェクター1が天井等に設置された場合において、観察者は、画像の投写面に対して様々な位置に居ても表示部8を容易に観察することが可能となる。よって、立体画像を観察することが可能な状態か否かを確実に観察者に認識させることが可能となる。
【0058】
(5)同期信号を波長変換部7に導く導光部6を備えているので、波長変換部7により多くの同期信号を導くことができる。これによって、表示部8をより明るく照明し、観察者の視認性向上が図れる。
【0059】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係るプロジェクター1について、図面を参照して説明する。以下の説明では、第1実施形態のプロジェクター1と同様の構造および同様の部材には、同一符号を付し、その詳細な説明は省略または簡略化する。
【0060】
本実施形態のプロジェクター1は、第1実施形態の送信装置5、導光部6、波長変換部7と異なる送信装置15、導光部16、波長変換部17を備えている。
【0061】
図4は、本実施形態の送信装置15、導光部16、および波長変換部17を説明する模式図であり、前方から見た断面図である。
送信装置15は、図4に示すように、X方向に沿って複数配置された発光素子51、および複数の発光素子51が実装された回路基板152を備えている。
【0062】
導光部16は、同期信号(赤外線L0)を透過する材料で形成され、図4に示すように、発光素子51の上方を覆うように配置されている。導光部16は、送信装置15に対向する下面が平坦に形成され、上面が凹曲面を有するように形成されている。導光部16の上面が凹曲面に形成されていることにより、平坦側から入射する同期信号(赤外線L0)は、導光部16の中央部寄りに集光されて上方に出力される。
【0063】
波長変換部17は、蛍光体171および波長変換素子172を備えている。
蛍光体171は、Nd:YV04(ネオジウムドープイットリウム四酸化バナジウム)等を有して板状に形成され、波長変換素子172の光路前段側で、導光部16の上方に配置される。蛍光体171は、導光部16から出力された同期信号(赤外線L0)で励起され、1000nm程度の波長を有する光L21を発する。
【0064】
波長変換素子172は、第1実施形態の波長変換素子71と同様に形成され、蛍光体171から出力された光L21を500nm程度の波長を有する緑色光L22に変換する。
そして、波長変換素子172から出力された緑色光L22は、第1実施形態と同様に形成された表示部8に照射され、表示部8は、緑色に光る。
【0065】
以上説明したように、本実施形態のプロジェクター1によれば、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0066】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態に係るプロジェクター1について、図面を参照して説明する。以下の説明では、第1実施形態のプロジェクター1と同様の構造および同様の部材には、同一符号を付し、その詳細な説明は省略または簡略化する。
【0067】
本実施形態のプロジェクター1は、投写面で反射された同期信号を利用して、表示部8を光らせるように構成されている。
図5は、本実施形態の表示部8、および表示部8の光路前段側に配置される部材を模式的に示す斜視図である。
【0068】
本実施形態のプロジェクター1は、図5に示すように、第1実施形態の導光部6と異なる導光部26、および導光部26の光路前段側に配置された光学フィルター27を備えている。また、第1実施形態の波長変換部7は、蛍光体72が表示部8に塗布されて構成されているが、本実施形態の波長変換部7は、蛍光体72が波長変換素子71の光路後段側に塗布されて構成されている。
【0069】
光学フィルター27は、図示は省略するが、フロントケース23(図1参照)の前面に取り付けられている。光学フィルター27は、送信装置5から出力され、投写面で反射された同期信号(赤外線L31)を透過し、可視光等の透過を抑制する合成樹脂で形成されている。なお、光学フィルター27は、投写面で反射された同期信号(赤外線L31)を透過する材料であれば合成樹脂に限らず他の材料を用いてもよい。
【0070】
導光部26は、投写面で反射され、光学フィルター27を透過した赤外線L31を波長変換部7に導く機能を有している。導光部26は、図5に示すように、前面側(光学フィルター27を透過した赤外線が入射する側)が凹む凹曲面26Aを有して形成され、投写面で反射された赤外線L31をより多く取り込んで反射できるように形成されている。また、凹曲面26Aは、上側が下側より後方(−Y方向)に位置するように傾斜しており、入射する赤外線L31を上方に位置する波長変換部7に反射するように形成されている。
【0071】
波長変換部7は、導光部26にて反射された赤外線L31を可視光(緑色光L32)に変換する。
表示部8は、波長変換部7から出力された緑色光L32が照射されることにより、緑色に光る。
【0072】
ここで、送信装置5から出力された同期信号(赤外線L0)の光路について説明する。
図6は、本実施形態のプロジェクター1および投写面SCの模式図であり、送信装置5から出力された同期信号(赤外線L0)の光路を説明するための図である。
【0073】
プロジェクター1は、図6に示すように、右目用画像および左目用画像を投影する際、投写レンズ36(図4参照)から投写光Lpが射出されると共に、送信装置5から同期信号(赤外線L0)が出力される。
送信装置5から出力された同期信号(赤外線L0)は、光学フィルター24(図1参照)を透過した後、図6に示すように、投写光Lpと略同一の方向に射出され、投写面SCに到達する。投写面SCに到達した赤外線L0は、投写面SCにて拡散反射され(赤外線L31)、一部が投影された画像の観察者に到達し、一部がプロジェクター1に到達する。
【0074】
そして、シャッター方式の画像観察用眼鏡10を装着した画像の観察者は、投写面に投写された画像を立体画像として認識することができる。
一方、投写面SCにて反射し、プロジェクター1に到達した同期信号(赤外線L31)は、前述したように、光学フィルター27、導光部26、および波長変換部7を介して表示部8を光らせる。
【0075】
このように、本実施形態のプロジェクター1は、投写面SCにて反射する同期信号を利用して表示部8を表示させる。
【0076】
以上説明したように、本実施形態のプロジェクター1によれば、第1実施形態、第2実施形態の効果に加え、以下の効果を得ることができる。
(1)導光部26は、投写面SCで反射された同期信号を波長変換部7に導くように形成されている。これによって、送信装置5から離間する位置に導光部26を配置し、直接光が導光部26や波長変換部7に入射する量が少ない構造であっても、投写面SCで反射した同期信号で表示部8を表示させることが可能となる。よって、シャッター方式の眼鏡を開閉させるための同期信号の光量を確保しつつ、表示部8を表示させるための光量を確保することが可能となる。
【0077】
(2)送信装置5や導光部26を配置する自由度が向上するので、大型化の抑制やデザイン性の向上を図って表示部8を表示するプロジェクター1の提供が可能となる。
【0078】
(変形例)
なお、前記実施形態は、以下のように変更してもよい。
波長変換部として蛍光体72,171を備えない構成としてもよい。例えば、1000nm程度の波長領域の赤外線を出力する発光素子51を用いることで、波長変換素子71,172によって500nm程度の波長領域の可視光に変換することが可能となる。
また、導光部6,16を備えない構成としてもよい。
【0079】
前記実施形態の複数の発光素子51のうち、波長変換部7、17に主に同期信号が照射されるように配置される波長変換部7、17専用の発光素子51を設けてもよい。また、この波長変換部7、17専用に出力する発光素子51を他の発光素子51と離れた位置に配置するように構成してもよい。
【0080】
前記実施形態の発光素子51は、出力強度が前方(+Y方向)に強い指向性を有するLEDが採用されているが、他の方向の指向性が強いLEDを混在させて構成してもよい。例えば、第1実施形態における上部61近傍に配置される発光素子51として上下方向の指向性が強いLEDを配置し、他の発光素子51として前方に強い指向性を有するLEDを配置してもよい。
【0081】
同期信号として800nm以外の波長領域を有する赤外線や、赤外線以外の不可視光(例えば、紫外線等)を用いてもよい。また、蛍光体として、赤外線を可視光に変換する材料を用いてもよい。
【0082】
送信装置5,15から出力される同期信号の直接光、および投写面からの反射光の双方を利用して表示部8を表示するように構成してもよい。例えば、第1実施形態と第3実施形態とを組合せるように構成してもよい。
【0083】
前記実施形態の表示部8は、外装筐体2の上面に配置されるように構成されているが、上面以外、例えば、外装筐体2の前面や背面に配置するように構成してもよい。
【0084】
第1実施形態の蛍光体72を波長変換素子71に塗布するように構成してもよい。
【0085】
投写レンズ36を移動させるレンズシフト機構や、脚部の長さを調整できるフット調整機構を備えたプロジェクターにおいて、第3実施形態の導光部26がこのレンズシフト機構やフット調整機構に連動するように構成してもよい。
【0086】
波長変換部7,17から出力された可視光が天井等を照射するように構成してもよい。
【0087】
前記実施形態のプロジェクター1は、第1画像としての右目用画像、および第2画像としての左目用画像を時分割でスクリーンに投影できるように構成されているが、右目用画像、左目用画像に限らず、表示される内容等が異なる第1画像および第2画像を時分割で投影できるように構成してもよい。
【0088】
前記実施形態のプロジェクター1は、光変調装置として透過型の液晶ライトバルブ351を用いているが、反射型液晶ライトバルブを利用したものであってもよい。
【0089】
光源311は放電型のランプに限らず、その他の方式のランプや発光ダイオード等の固体光源で構成してもよい。
【符号の説明】
【0090】
1…プロジェクター、5,15…送信装置、6,16,26…導光部、7,17…波長変換部、8…表示部、10…画像観察用眼鏡、27…光学フィルター、31…光源装置、51…発光素子、52,152…回路基板、71,172…波長変換素子、72,171…蛍光体、311…光源、351…液晶ライトバルブ、352…クロスダイクロイックプリズム、L0…赤外線、L2,L22,L32…緑色光。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源から射出された光束を画像情報に応じて変調し、第1画像および第2画像を時分割で投影可能なプロジェクターであって、
前記第1画像と前記第2画像との切り替えに同期する不可視光による同期信号を出力する送信装置と、
前記同期信号が照射されることにより可視光を出力する波長変換部と、
を備えることを特徴とするプロジェクター。
【請求項2】
請求項1に記載のプロジェクターであって、
前記不可視光は、赤外線であり、
前記波長変換部は、入射する光を第2高調波に変換する波長変換素子を備えていることを特徴とするプロジェクター。
【請求項3】
請求項2に記載のプロジェクターであって、
前記波長変換部は、前記波長変換素子の光路後段側または光路前段側に配置される蛍光体を備えていることを特徴とするプロジェクター。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のプロジェクターであって、
前記波長変換部から出力された可視光によって照明される表示部を備え、
前記表示部は、当該プロジェクターが設置される側とは反対側に設けられていることを特徴とするプロジェクター。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載のプロジェクターであって、
前記同期信号を前記波長変換部に導く導光部を備えていることを特徴とするプロジェクター。
【請求項6】
請求項5に記載のプロジェクターであって、
前記導光部は、投写面で反射された前記同期信号を前記波長変換部に導くように形成されていることを特徴とするプロジェクター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−114125(P2013−114125A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−261496(P2011−261496)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】