説明

プロジェクタ

【課題】冷却ファンの冷却効率を高めて構成部品が故障することを防止する。
【解決手段】電源スイッチがオンされるとGPS衛星からのGPS情報を受信し、筐体の設置位置の経度データおよび緯度データが算出される。緯度データ及び経度データが算出されると、筐体の設置位置での高度が特定される。高度が特定されると、特定された高度に基づいて筐体の設置位置での大気圧が特定される。温度センサが検出した温度と、筐体の設置位置での大気圧とから冷却ファンの1分あたりの回転数が決定され、決定された回転数で冷却ファンが回転する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却ファンによって筐体内部を冷却するプロジェクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶プロジェクタの筐体内には、光源用のランプや液晶パネル、電源回路などの各種回路が設けられている。液晶プロジェクタを使用すると、これらが駆動して筐体内部の温度が上昇する。このため、液晶プロジェクタの筐体内部は冷却ファンを用いて冷却される。
【0003】
しかし、冷却ファンの回転数を一定にすると、筐体内部の温度が低下したときには無駄な風量が生じて、冷却ファンを駆動するための電力に無駄が生じる。一方、筐体内部の温度が上昇したときには風量が足りなくなって、液晶プロジェクタの構成部品の劣化を早めることになる。このため、特許文献1では、液晶パネルの温度を検出するセンサを設け、このセンサの検出した温度に基づいて冷却ファンの回転数を制御することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平07−026886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、液晶プロジェクタが設置された位置の高度が高くなるほど空気が薄くなって冷却ファンによる冷却効率が低下する問題がある。しかし、特許文献1に記載されている発明のように、温度センサの検出温度に基づいて冷却ファンの回転数を制御したのみでは、冷却ファンの設置位置の高度に応じた制御を行うことができないため、冷却ファンによる冷却効率が低くなったときに液晶プロジェクタの構成部品が故障する懸念があった。
【0006】
本発明は上記事情を考慮してなされたもので、その目的は、冷却ファンの冷却効率を高めて構成部品が故障することを防止できるプロジェクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するにあたり、本発明は、冷却ファンによって筐体内部を冷却するプロジェクタにおいて、前記筐体内部の温度を計測する温度計測手段と、GPS情報を受信して前記筐体の設置位置を特定する設置位置特定手段と、前記設置位置特定手段が特定した前記設置位置に基づいて前記設置位置の高度を特定する高度特定手段と、前記高度特定手段が特定した前記高度に基づいて前記設置位置での大気圧を特定する気圧特定手段と、前記温度計測手段が計測した前記温度と、前記気圧特定手段が特定した前記大気圧とに基づいて単位時間当たりの前記冷却ファンの回転数を決定し、決定した回転数で前記冷却ファンを回転させる回転数制御手段とを備えたものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、設置位置の高度に応じて冷却ファンの回転数を制御することが可能になり、冷却ファンの冷却効率を高めて構成部品が故障することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の液晶プロジェクタの機能ブロック図である。
【図2】液晶プロジェクタの設置位置の高度及び筐体内の温度に応じて冷却ファンの回転数制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1に示すように、液晶プロジェクタ11はCPU12を備えている。CPU12には、メモリ13、電源回路14、ファン駆動回路15、液晶パネル16、ランプ17、温度センサ18、GPSモジュール19がシステムバス20を介して接続されている。これらはすべて液晶プロジェクタ11の筐体11a内に収納されている。
【0011】
CPU12は、メモリ13に格納されたプログラムを読み出して液晶プロジェクタ11の動作を制御する。液晶プロジェクタ11ではランプ17からの照明光が液晶パネル16を透過して画像光が生成され、生成された画像光がスクリーンに投影される。
【0012】
電源スイッチ21がオンされると電源回路14が駆動され、各部に電源電圧が供給される。液晶プロジェクタ11の筐体11a内には冷却ファン22が設けられている。CPU12の制御の下、ファン駆動回路15はモータ23を介して冷却ファン22を回転させる。冷却ファン22が回転すると、吸気口から吸気した空気が排気口から排気され、筐体11a内部が冷却される。
【0013】
温度センサ18はランプ17の近傍に設けられている。温度センサ18は筐体11a内部の温度を検出する。
【0014】
GPSモジュール19は、アンテナ19aと位置算出部19bとからなる。アンテナ19aは、地球を周回する複数のGPS衛星からGPS情報を取得する。受信したGPS情報は位置算出部19bに送られる。位置算出部19bは、受信したGPS情報に基づいて、液晶プロジェクタ11の緯度データ及び経度データを算出する。これにより、筐体11aの設置位置が特定される。
【0015】
メモリ13のROM領域には、緯度データ及び経度データと、その地点での高度を対応付けした高度特定テーブル13aが設けられている。CPU12は、高度特定テーブル13aを参照し、位置算出部19bが算出した緯度データ及び経度データに基づいて筐体11aの設置位置の高度を特定する。
【0016】
また、メモリ13のROM領域には、筐体11aの設置位置の高度と、その高度での大気圧を対応付けした気圧特定テーブル13bが設けられている。CPU12は、気圧特定テーブル13bを参照し、筐体11aの設置位置の高度に基づいて筐体11aの設置位置での大気圧を特定する。
【0017】
また、メモリ13のROM領域には、温度センサ18が検出した温度及び筐体11aの設置位置での大気圧と、冷却ファン22の1分当たりの回転数とが対応付けされた回転数決定テーブル13cが設けられている。回転数決定テーブル13cのデータは、筐体11a内の温度を測定しながら冷却ファン22の回転数及び筐体11aに対する気圧を変化させる実験を予め行っておき、この実験から得られたデータから構成されている。
【0018】
CPU12の回転数制御部12aは、温度センサ18が検出した温度と、筐体11aの設置位置での大気圧とを識別して回転数決定テーブル13cを参照することにより、冷却ファン22の1分あたりの回転数を決定し、決定した回転数で冷却ファン22を回転させる。
【0019】
次に冷却ファンを回転させるときの回転制御の処理の流れについて説明する。
【0020】
図2に示すように、電源スイッチ21がオンされるとGPS衛星からのGPS情報を受信し、筐体11aの設置位置の経度データおよび緯度データが算出される。緯度データ及び経度データが算出されると、筐体11aの設置位置での高度が特定される。高度が特定されると、特定された高度に基づいて筐体11aの設置位置での大気圧が特定される。この後、温度センサ18が検出した温度と、筐体11aの設置位置での大気圧とから冷却ファン22の1分あたりの回転数が決定され、決定された回転数で冷却ファン22が回転する。温度センサ18が検出した温度が変化した場合には変化後の温度と筐体11aの設置位置での大気圧とから冷却ファン22の1分あたりの回転数が再度決定され、決定された回転数で冷却ファン22が回転する。電源スイッチ21がオフにされると冷却ファン22が停止する。
【0021】
上記実施形態では、気圧特定テーブル13bを用いて大気圧を特定したが、高度特定テーブル13aから特定された高度に基づいて大気圧を予め記憶した計算式によって算出する処理を行ってもよい。
【0022】
上記実施形態では、メモリ13のROM領域に格納されたデータから高度や大気圧を特定したが、インターネットなどの通信手段を用いて外部から高度や大気圧のデータを取得してもよい。
【0023】
上記各実施形態では、液晶プロジェクタを例に挙げて説明したが、例えばDLP(Digital Light Processing)式のプロジェクタやLCOS(Liquid Crystal On Silicon)式のプロジェクタなど、他のプロジェクタに本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0024】
11 液晶プロジェクタ
11a 筐体
12a 回転数制御部
13a 高度特定テーブル
13b 気圧特定テーブル
18 温度センサ
22 冷却ファン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却ファンによって筐体内部を冷却するプロジェクタにおいて、
前記筐体内部の温度を計測する温度計測手段と、
GPS情報を受信して前記筐体の設置位置を特定する設置位置特定手段と、
前記設置位置特定手段が特定した前記設置位置に基づいて前記設置位置の高度を特定する高度特定手段と、
前記高度特定手段が特定した前記高度に基づいて前記設置位置での大気圧を特定する気圧特定手段と、
前記温度計測手段が計測した前記温度と、前記気圧特定手段が特定した前記大気圧とに基づいて単位時間当たりの前記冷却ファンの回転数を決定し、決定した回転数で前記冷却ファンを回転させる回転数制御手段とを備えたことを特徴とするプロジェクタ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−2874(P2012−2874A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−135273(P2010−135273)
【出願日】平成22年6月14日(2010.6.14)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】