説明

プロスタグランジンEP4アゴニストによる処置方法およびデリバリー方法

プロスタグランジンEP4アゴニストのプロドラッグを含む化合物を開示し、該プロドラッグは炭水化物のエステル、エーテルもしくはアミド、またはアミノ酸のエステル、エーテルもしくはアミドである。プロスタグランジンEP4アゴニストを処置有効量で哺乳動物の大腸に投与することを含んで成る方法による、大腸粘膜バリアの保全をも開示する。それらに関連する投与形態、医薬および組成物をも開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処置活性化合物並びにそのデリバリーおよび使用に関する。本発明は特に、プロスタグランジンEP4アゴニストのデリバリーおよび使用に関する。
【背景技術】
【0002】
プロスタグランジンは、下記式で示されるプロスタン酸の誘導体であるといえる:
【化1】

【0003】
プロスタン酸骨格の脂環上の構造および置換基によって、様々な種類のプロスタグランジンが知られている。更なる分類は、側鎖中の不飽和結合数に基づいてなされ、プロスタグランジンの種類の後に数字で示され[例えば、プロスタグランジンE1(PGE1)、プロスタグランジンE2(PGE2)]、また、脂環上の置換基の配置に基づいてもなされ、αまたはβで示される[例えば、プロスタグランジンF(PGF)]。
【0004】
ある種の10,10−ジメチルプロスタグランジンが知られている。それらは次のような文献に記載されている:
Donde, 米国特許出願公開第20040157901号;
Pernetら, 米国特許第4,117,014号;
Pernet, Andre G. ら, Prostaglandin analogs modified at the 10 and 11 positions, Tetrahedron Letters, (41), 1979, pp. 3933-3936;
Plantema, Otto G. ら, Synthesis of (.+-.)-10.10-dimethylprostaglandin E1 methyl ester and its 15-epimer, Journal of the Chemical Society, Perkin Transactions 1: Organic and Bio-organic Chemistry (1972-1999), (3), 1978, pp. 304-308;
Plantema, O. G. ら, Synthesis of 10,10-dimethylprostaglandin E1, Tetrahedron Letters, (51), 1975, 4039;
Hamon, A.ら, Synthesis of (+-)- and 15-EPI(+-)-10,10-Dimethylprostaglandin E1, Tetrahedron Letters, Elsevier Science Publishers, Amsterdam, NL, no. 3, January 1976, pp. 211-214; および
Patent Abstracts of Japan, Vol. 0082, no. 18 (C-503), June 10, 1988 & JP 63 002972 A (Nippon Iyakuhin Kogyo KK), 7 January 1988。
これら文献の開示を引用により本発明の一部とする。
【0005】
米国特許出願公開第2004/0142969 A1号(引用により本発明の一部とする)には、下記式で示される化合物が開示されている:
【化2】

【0006】
該出願は次のように基を定義している:
mは1〜4であり; nは0〜4であり; Aはアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、アリールシクロアルキル、シクロアルキルアルキル、またはアリールオキシアルキルであり;Eは-CHOH-または-C(O)-であり; Xは-(CH2)2-またはCH=CH-であり; YはCH2-、アリーレン、ヘテロアリーレン、-CH=CH-、-O-、-S(O)p-(ここでpは0〜2である)、または-NRa -(ここでRaは水素またはアルキルである)であり; ZはCH2OH、-CHO、テトラゾル-5-イル、またはCOORb(ここでRbは水素またはアルキルである)であり; R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9およびR10は独立して、水素またはアルキルである。
【0007】
米国特許第6,747,037号(引用により本発明の一部とする)には、下記のようなプロスタグランジンEP4アゴニストが開示されている:

【0008】
米国特許第6,610,719号(引用により本発明の一部とする)には、下記構造を有するEP4選択的アゴニストが開示されている:
【化3】

【0009】
該特許は次のように基を定義している:
QはCOOR3、CONHR4またはテトラゾル-5-イルであり;
Aは単結合またはシス二重結合であり;
Bは単結合またはトランス二重結合であり;
Uは
【化4】

であり;
R2はα−チエニル、フェニル、フェノキシ、モノ置換フェニルまたはモノ置換フェノキシであり、該置換基は、クロロ、フルオロ、フェニル、メトキシ、トリフルオロメチルおよび (C1-C3) アルキルから成る群から選択し;
R3は水素、(C1-C5) アルキル、フェニルまたは p−ビフェニルであり;
R4はCOR5またはSO2R5であり;
R5はフェニルまたは (C1-C5) アルキルである。
【0010】
10−ヒドロキシプロスタグランジン類似体、すなわちヒドロキシドを11位ではなく10位の炭素上に有する天然プロスタグランジンE化合物が、下記のものを包含する複数の特許文献により知られている:米国特許第4,171,375号; 米国特許第3,931,297号; FR 2408567; DE 2752523、JP 53065854、DE 2701455、SE 7700257、DK 7700272、NL 7700272、JP 52087144、BE 850348、FR 2338244、FR 2162213、GB 1405301、およびES 409167(いずれも引用により本発明の一部とする)。
【0011】
米国特許出願第821,705号(2004年4月9日出願)(引用により本発明の一部とする)には、下記構造を有する化合物が開示されている:
【化5】

【0012】
次のように基が定義されている:
JはC=OまたはCHOHであり;
Aは-(CH2)6-またはシス-CH2CH=CH-(CH2)3- であり、ここで、1個または2個の炭素がSまたはOで置き換えられていてもよく;
BはCO2HもしくはCO2R、CONR2、CONHCH2CH2OH、CON(CH2CH2OH)2、CH2OR、P(O)(OR)2、CONRSO2R、SONR2、または
【化6】

であり、
RはH、C1-6アルキルであり;
Dは-(CH2)n-、-X(CH2)n、または-(CH2)nX-であり、ここで、nは0〜3であり、XはSまたはOであり;
Eは0〜4個の置換基を有する芳香族または複素環部分であり、該置換基はそれぞれ1〜6個の非水素原子を有する。
【0013】
関連する他の化合物が、米国特許第6,670,485号; 米国特許第6,410,591号; 米国特許第6,538,018号; WO 2004/065365; WO 03/074483; WO 03/009872; WO 2004/019938; WO 03/103664; WO 2004/037786; WO 2004/037813; WO 03/103604; WO 03/077910; WO 02/42268; WO 03/008377 WO 03/053923; WO 2004/078103; およびWO 2003/035064(いずれも引用により本発明の一部とする)に開示されている。
【0014】
プロスタグランジンEP4選択的アゴニストには、いくつかの医療用途があると考えられる。例えば米国特許第6,552,067B2号(引用により本発明の一部とする)には、「低骨量を伴う状態、特に骨粗鬆症、脆弱、骨粗鬆症骨折、骨欠損、小児特発性骨量減少、歯槽骨量減少、下顎骨量減少、骨折、骨切り術、歯周炎に伴う骨量減少、または補綴成長を哺乳動物において処置する方法」という処置のために、プロスタグランジンEP4選択的アゴニストを使用することが記載されている。
【0015】
米国特許第6586468B1号(引用により本発明の一部とする)には、プロスタグランジン
EP4選択的アゴニストが、「免疫疾患(自己免疫疾患(筋萎縮性側索硬化症 (ALS) 、多発性硬化症、シェーグレン症候群、関節炎、リウマチ様関節炎、全身性紅斑性狼瘡など)、移植後移植片拒絶など)、喘息、骨形成異常、神経細胞死、肺疾患、肝疾患、急性肝炎、腎炎、腎不全、高血圧症、心筋虚血、全身性炎症症候群、熱傷による痛み、肺血症、血球貪食症候群、マクロファージ活性化症候群、スティル病、川崎病、火傷、全身性肉芽腫、潰瘍性大腸炎、クローン病、透析時の高サイトカイン血症、多臓器不全、ショックなどの予防および/または治療に有用であり、また、睡眠障害および血小板凝集に関係するのでそれらに有効であると考えられる」ことが記載されている。
【0016】
炎症性腸疾患 (IBD) は、大腸および小腸の炎症を特徴とする疾患群で、下痢、痛み、および体重減少のような症状が現れる。非ステロイド性抗炎症剤がIBD発症の危険性と関連付けられており、Kabashimaおよび共同研究者が最近開示したところによると、「EP4は、粘膜保全を保ち、先天免疫を抑制し、CD4+T細胞の増殖および活性化をダウンレギュレートするよう作用する。このような知見は、NSAIDによるIBDのメカニズムを解明しただけでなく、IBDの予防および治療におけるEP4選択的アゴニストの有用性を示唆するものでもある。」 (Kabashima ら, The Journal of Clinical Investigation, 2002年4月、第9巻、883-893)
【発明の開示】
【0017】
発明の簡単な説明
本発明は、プロスタグランジンEP4アゴニストのプロドラッグを含む化合物を開示し、該プロドラッグは炭水化物のエステル、エーテルもしくはアミド、またはアミノ酸のエステル、エーテルもしくはアミドである。
【0018】
本発明はまた、プロスタグランジンEP4アゴニストを処置有効量で哺乳動物の大腸に投与することを含んで成る方法による、大腸粘膜バリアの保全をも開示する。
それらに関連する投与形態、医薬および組成物をも開示する。
【0019】
発明の詳細な説明
プロスタグランジンEP4アゴニストは、当業者によく知られた数多くのEP4活性測定アッセイのいずれか一つまたはそれ以上によりプロスタグランジンEP4受容体を作動すると当業者が合理的に考える化合物として広く定義される。限定するわけではないが、そのようなアッセイの一つを後述の実施例において説明する。
【0020】
一態様において、本発明のプロスタグランジンEP4アゴニストは、他のプロスタグランジン受容体サブタイプと比較してプロスタグランジンEP4受容体に選択的である。他の一態様においては、本発明のプロスタグランジンEP4アゴニストは、他のプロスタグランジン受容体サブタイプよりもEP4受容体において少なくとも10倍活性である。他の一態様においては、本発明のプロスタグランジンEP4アゴニストは、他のプロスタグランジン受容体サブタイプよりもEP4受容体において少なくとも100倍活性である。他の一態様においては、本発明のプロスタグランジンEP4アゴニストは、他のプロスタグランジン受容体サブタイプよりもEP4受容体において少なくとも1000倍活性である。限定するわけではないが、他の受容体サブタイプの通常のアッセイも、後述の実施例において説明する。
【0021】
本発明の範囲を制限するわけではないが、下記構造を有する化合物または薬学的に許容しうるその塩もしくはプロドラッグが、プロスタグランジンEP4アゴニストの例である:
【化7】

【化8】

【0022】
【化9】

【化10】

【化11】

【0023】
【化12】

【化13】

【化14】

【0024】
【化15】

【化16】

および
【化17】

【0025】
[式中、破線は結合の存在または不存在を表し;
Aは-(CH2)6-、シス-CH2CH=CH-(CH2)3-、または-CH2C=C-(CH2)3-であり、ここで、1個または2個の炭素原子がSまたはOで置き換えられていてもよく; あるいはAは-(CH2)m-Ar-(CH2)o-であり、ここで、Arはインターアリーレンまたはヘテロインターアリーレンであり、mとoの合計が1〜4であり、ここで、1個のCH2がSまたはOで置き換えられていてもよく;
XはSまたはOであり;
JはC=O、CHOH、またはCH2CHOHであり;
EはC1-12アルキル、R2、または-Y-R2であり、ここで、YはCH2、SまたはOであり、R2はアリールまたはヘテロアリールである。]
【0026】
上記構造において、破線は結合の存在または不存在を表す。したがって、例えば式:
【化18】

で示される構造は、次の三構造を表す:
【0027】
【化19】

【化20】

【化21】

【0028】
本明細書中に示す化学構造中のAの定義に関し、最も広い意味において、Aは-(CH2)6-、シス-CH2CH=CH-(CH2)3-、または-CH2C=C-(CH2)3-であり、ここで、1個または2個の炭素原子がSまたはOで置き換えられていてもよく; あるいはAは-(CH2)n-Ar-(CH2)o-であり、ここで、Arはインターアリーレンまたはヘテロインターアリーレンであり、mとoの合計が1〜3であり、ここで、1個のCH2がSまたはOで置き換えられていてもよい。
【0029】
限定するわけではないが、Aは-(CH2)6-、シス-CH2CH=CH-(CH2)3-、または-CH2C=C-(CH2)3-でありうる。
【0030】
あるいは、Aは、上記三構造の一つにおいて、いずれかの炭素がSおよび/またはOで置き換えられた基でありうる。例えば、本発明の範囲を制限するわけではないが、AはSで置き換えられた基、例えば下記の基などでありうる:
【化22】

【0031】
【化23】

【化24】

【0032】
あるいは、本発明の範囲を制限するわけではないが、AはOで置き換えられた基、例えば下記の基などでありうる:
【化25】

【0033】
あるいは、本発明の範囲を制限するわけではないが、Aは鎖中でOとSの両方で置き換えられた基、例えば下記の基などでありうる:
【化26】

【0034】
あるいは、本発明の範囲を制限するわけではないが、ある種の態様においては、Aは-(CH2)n-Ar-(CH2)oであり、ここで、Arはインターアリーレンまたはヘテロインターアリーレンであり、mとoの合計が1〜4であり、CH2がSまたはOで置き換えられていてもよい。換言すれば、本発明の範囲を制限するわけではないが、一態様において、Aは1〜4個のCH2部分、およびArを有し、例えば-CH2-Ar-、-(CH2)2-Ar-、-CH2-ArCH2-、-CH2Ar(CH2)2-、-(CH2)2-Ar(CH2)2-などであるか;またはAは、O、0〜3個のCH2部分、およびArを有し、例えば-O-Ar-、Ar-CH2-O-、-O-Ar-(CH2)2-、-O-CH2-Ar-、-O-CH2-Ar-(CH2)2 などであるか;またはAは、S、0〜3個のCH2部分、およびArを有し、例えば-S-Ar-、Ar-CH2-S-、-S-Ar-(CH2)2-、-S-CH2-Ar-、-S-CH2-Ar-(CH2)2などである。
【0035】
インターアリーレンまたはヘテロインターアリーレンとは、分子中の二つの異なる部分を連結するアリール環もしくはアリール環系またはヘテロアリール環もしくはヘテロアリール環系をさす。すなわち、該環の二つの異なる位置に二つの分子部分が結合する。インターアリーレンまたはヘテロインターアリーレンは置換されているか、または不置換でありうる。不置換インターアリーレンは、置換基を結合する可能性のある四つの位置を有する。一態様においては、Arは置換または不置換のインターフェニレン、インターチエニレン、インターフリレンまたはインターピリジニレンである。他の一態様においては、Arはインターフェニレン (Ph) である。他の一態様においては、Aが-(CH2)2-Ph-である。本発明の範囲を制限するものではないが、置換基は4個またはそれ以下の重い原子、換言すれば水素でない原子を有しうる。置換基にはそれに必要な数の水素原子も含まれうる。すなわち、置換基は、4個までの炭素原子を有するヒドロカルビル、例えばC4までのアルキル、アルケニル、アルキニルなど;C3までのヒドロカルビルオキシ;CF3;ハロ、例えばF、ClまたはBr;ヒドロキシル;NH2およびC3までのアルキルアミン官能基;他のNまたはS含有置換基などでありうる。
【0036】
一態様において、Aは-(CH2)m-Ar-(CH2)o-であり、ここで、Arがインターフェニレンであり、mとoの合計が1〜3であり、1個のCH2がSまたはOで置き換えられていてもよい。
【0037】
他の一態様においては、Aは-CH2-Ar-OCH2-である。他の一態様においては、Aは-CH2-Ar-OCH2-であり、Arがインターフェニレンである。他の一態様においては、Arがその1位および3位で結合しており、その例はAが下記構造を有する場合である:
【化27】

【0038】
他の一態様において、Aは-(CH2)6-、シス-CH2CH=CH-(CH2)3-、または-CH2C=C-(CH2)3-であり、ここで、1個または2個の炭素原子がSまたはOで置き換えられていてもよく; あるいはAは-(CH2)2-Ph-であり、ここで、1個のCH2がSまたはOで置き換えられていてもよい。
他の一態様において、Aは-(CH2)6-、シス-CH2CH=CH-(CH2)3-、または-CH2C=C-(CH2)3-であり、ここで、1個または2個の炭素原子がSまたはOで置き換えられていてもよく; あるいはAは-(CH2)2-Ph-である。
【0039】
JはC=O、CHOHまたはCH2CHOHである。すなわち、本発明の範囲を制限するわけではないが、下記のような化合物がプロスタグランジンEP4アゴニストとして有用である。
【化28】

【0040】
【化29】

【0041】
【化30】

【0042】
【化31】

【0043】
C1-12アルキルは炭素原子数1〜12のアルキルで、次のものを包含する:
直鎖アルキル、例えばメチル、エチル、n-プロピル、n-ブチルなど;
分枝状アルキル、例えばイソプロピル、イソブチル、t−ブチル、イソペンチルなど;
環状アルキル、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロヘキシルなど;これは、置換シクロアルキル、例えばメチルシクロヘキシル、エチルシクロプロピル、ジメチルシクロヘプチルなどを包含し、CH2-シクロヘキシルのような、分子の残部への結合位置が環状基にはない成分を包含する;並びに上記の異なる種類のアルキル基の組み合わせ。
【0044】
すなわち、Eはそのような基のいずれかでありうる。特に直鎖C1-6アルキル(とりわけブチル)が考えられる。他の特に有用な基は、シクロヘキシル、シクロペンチル、並びに置換シクロヘキシルおよびシクロブチルで、炭素原子数が9未満のものである。
【0045】
Eはまた、R2またはY-R2であり得、ここで、YはCH2、SまたはOであり、R2はアリールまたはヘテロアリールである。すなわち、Eはアリール、ヘテロアリール、-CH2-アリール、-S-アリール、-O-アリール、-CH2-ヘテロアリール、-S-ヘテロアリール、または-O-ヘテロアリールでありうる。
【0046】
アリールは芳香環または芳香環系、および1個もしくはそれ以上の置換基が水素の代わりに置換したその置換誘導体として定義する。本発明の範囲を制限するわけではないが、アリールの例はフェニル、ナフチル、ビフェニル、テルフェニルなどである。
【0047】
ヘテロアリールは、芳香環または芳香環系に少なくとも1個の非炭素原子を有するアリールとして定義する。本発明の範囲を制限するわけではないが、多くの場合、1個またはそれ以上の酸素、イオウおよび/または窒素原子が存在する。本発明の範囲を制限するものではないが、ヘテロアリールの例はフリル、チエニル、ピリジニル、ベンゾフリル、ベンゾチエニル、インドリルなどである。
【0048】
アリールまたはヘテロアリールの置換基は、それぞれ12個までの非水素原子および必要数の水素を有しうる。すなわち、本発明の範囲を制限するわけではないが、置換基は下記のものでありうる:
【0049】
ヒドロカルビル、例えばアルキル、アルケニル、アルキニルなど、およびそれらの組み合わせ;
ヒドロカルビルオキシ、すなわちO-ヒドロカルビル、例えばOCH3、OCH2CH3、O-シクロヘキシルなど、炭素原子数11までのもの;
ヒドロキシヒドロカルビル、すなわちヒドロカルビル-OH、例えばCH2OH、C(CH3)2OHなど、炭素原子数11までのもの;
窒素置換基、例えばNO2、CNなどで、これは、アミノ、例えばNH2、NH(CH2CH3OH)、NHCH3など、炭素原子数11までのものを包含する;
カルボニル置換基、例えばCO2H、エステル、アミドなど;
ハロゲン、例えばクロロ、フルオロ、ブロモなど;
フルオロカルボニル、例えばCF3、CF2CF3など;
リン置換基、例えばPO32-など;
イオウ置換基、例えばS-ヒドロカルビル、SH、SO3H、SO2-ヒドロカルビル、SO3-ヒドロカルビルなど。
【0050】
ある種の態様において、置換基中の非水素原子の数は6またはそれ以下である。他の態様においては、置換基中の非水素原子の数は3またはそれ以下である。他の態様において、置換基中の非水素原子の数は1である。
【0051】
ある種の態様において、置換基は、水素、炭素、酸素、ハロ、窒素およびイオウのみを有する。他の態様においては、置換基は、水素、炭素、酸素およびハロのみを有する。
【0052】
ある種の態様において、Aは-(CH2)6-、シス-CH2CH=CH-(CH2)3-または-CH2C=C-(CH2)3-であり、ここで、1個または2個の炭素原子がSまたはOで置き換えられていてもよく;EはC1-6アルキル、R2または-Y-R2であり、ここで、YはCH2、SまたはOであり、R2はアリールまたはヘテロアリールである。
【0053】
一態様において、R1はH、クロロまたはフルオロである。他の一態様においてはR1がHである。他の一態様においては、R1がクロロである。
【0054】
他の態様においては、R2はフェニル、ナフチル、ビフェニル、チエニルまたはベンゾチエニルで、F、Cl、Br、メチル、メトキシおよびCF3から成る群から選択する置換基を0〜2個有する。
【0055】
他の態様においては、R2はCH2-ナフチル、CH2-ビフェニル、CH2-(2-チエニル)、CH2-(3-チエニル)、ナフチル、ビフェニル、2-チエニル、3-チエニル、CH2-(2-(3-クロロベンゾチエニル))、CH2-(3-ベンゾチエニル)、2-(3-クロロベンゾチエニル)、または3-ベンゾチエニルである。
【0056】
他の態様においては、R2はCH2-(2-チエニル)、CH2-(3-チエニル)、2-チエニル、3-チエニル、CH2-(2-(3-クロロベンゾチエニル))、CH2-(3-ベンゾチエニル)、2-(3-クロロベンゾチエニル)、または3-ベンゾチエニルである。
【0057】
本発明の範囲を制限するものではないが、xが0または1であり、R1がH、クロロ、フルオロ、ブロモ、メチル、メトキシまたはCF3である下記構造を有する化合物も、プロスタグランジンEP4アゴニストの例である。
【化32】

【0058】
本発明の範囲を制限するものではないが、下記構造を有する化合物もプロスタグランジンEP4アゴニストの例である:
【化33】

【0059】
本発明の範囲を制限するものではないが、下記構造を有する化合物もプロスタグランジンEP4アゴニストの例である:
【化34】

【0060】
本発明の範囲を制限するものではないが、下記構造を有する化合物もプロスタグランジンEP4アゴニストの例である:
【化35】

【0061】
本発明の範囲を制限するものではないが、xが0または1であり、R1がH、クロロ、フルオロ、ブロモ、メチル、メトキシまたはCF3である下記構造を有する化合物も、プロスタグランジンEP4アゴニストの例である:
【化36】

【0062】
本発明の範囲を制限するものではないが、下記構造を有する化合物もプロスタグランジンEP4アゴニストの例である:
【化37】

【0063】
さらに、下記米国特許出願または特許(いずれも引用により本発明の一部とする)も、プロスタグランジンEP4アゴニストである化合物を開示している:米国特許第6,552,067号; 米国特許第6,747,054号; 米国特許出願公開第20030120079号; および米国特許出願公開第20030207925号; 米国特許出願公開第20040157901号; 米国特許第4,117,014号; 米国特許出願公開第2004/0142969号; 米国特許第6,747,037号; 米国特許第6,610,719号; 米国特許第4,171,375号; 米国特許第3,931,297号; 米国特許出願第821,705号(2004年4月9日出願); 米国特許第6,670,485号; 米国特許第6,410,591号; および米国特許第6,538,018号。
上記プロスタグランジンEP4アゴニストのすべてに関連する方法およびプロドラッグが、特に本発明に含まれる。
【0064】
下記式で示されるプロスタグランジンEP4アゴニストのプロドラッグも、本発明に含まれる。
【化38】

[式中、R4はH、ハロまたはC1-6アルキルである。]
【0065】
ハロは第7族原子、例えばフルオロ、クロロ、ブロモ、ヨードなどである。
C1-6アルキルは、炭素数1〜6の直鎖、分枝状または環状アルキルで、メチル、エチル、プロピル異性体、ブチル異性体、ペンチル異性体、ヘキシル異性体、シクロプロピル、シクロブチル、シクロヘキシルなどを包含するが、それらに限定されない。
【0066】
下記構造を有するプロスタグランジンEP4アゴニストのプロドラッグも、本発明に含まれる。
【化39】

【0067】
【化40】

【0068】
【化41】

【0069】
【化42】

【0070】
用語「炭水化物」は、単糖、二糖、オリゴ糖、多糖、デンプンなどを、線状、分枝状またはマクロ環状にかかわらず包含すると広く定義すべきである。用語「炭水化物」は、前記化合物群の一つであって、炭素原子6個当たり1個までのアミン官能基を有するものを意味する。
【0071】
本発明におけるエステル、エーテルまたはアミドプロドラッグは、炭水化物もしくはアミノ酸への直接結合を有しうるか、または下記のもの(それらに限定されない)を包含するスペーサー基を有しうる:
ポリオール、例えばエチレングリコール、グリセリンなど、またはそれらのオリゴマーもしくはポリマー;
ジカルボン酸、例えばコハク酸、マレイン酸、マロン酸、アゼライン酸など;
ヒドロキシカルボン酸、例えば乳酸、ヒドロキシ酢酸、クエン酸など;
ポリアミン、例えばエチレンジアミンなど;および
上記の任意の組み合わせをなすエステル、アミドまたはエーテル。
【0072】
ある種の態様においては、プロドラッグはグルコシドエステルまたはエーテルである。すなわち、下記のような化合物または薬学的に許容しうるその塩が有用である。
【化43】

【0073】
【化44】

【0074】
【化45】

【0075】
【化46】

【0076】
また、エステルまたはエーテル結合は糖の異なる位置に存在してもよい。すなわち、他のヒドロキシル基の1個における酸素が、エステルまたはエーテル結合の酸素であってよい。
【0077】
他の態様においては、プロドラッグはグルクロニドエステルまたはエーテルである。すなわち、下記のような化合物、または薬学的に許容しうるその塩が有用である。
【化47】

【0078】
【化48】

【0079】
【化49】

【0080】
【化50】

【0081】
【化51】

【0082】
また、エステルまたはエーテル結合は糖の異なる位置に存在してもよい。すなわち、他のヒドロキシル基の1個における酸素が、エステルまたはエーテル結合の酸素であってよい。
【0083】
他のプロドラッグは、シクロデキストリンエステルである。シクロデキストリンは、グルコピラノース単位を6個、7個または8個有する環状オリゴ糖で、それぞれα-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、またはγ-シクロデキストリンと称される(構造は下記の通り)。
【0084】
【化52】

【0085】
すなわち、下記のような化合物、または薬学的に許容しうるその塩が有用である。
【化53】

【0086】
本書に記載する構造において、CDはシクロデキストリンまたはスペーサー-シクロデキストリン(α-、β-およびγ-シクロデキストリンを包含する)を包含し、これは2-、3-または6-ヒドロキシル基において結合しうる。2-、3-または6-ヒドロキシル基はグルコースモノマー上の位置について言うもので、アノマー炭素が1、末端炭素(鎖形態で)が6である。この命名法を下記の例で説明する。
【0087】
下記化合物においては、CDが3-ヒドロキシル基で結合したα-シクロデキストリンである。
【化54】

【0088】
下記化合物においては、CDが2-ヒドロキシル基で結合したエチレングルコール-β-シクロデキストリンである。
【化55】

【0089】
下記化合物においては、CDが6-ヒドロキシル基で結合したγ-シクロデキストリンである。
【化56】

【0090】
下記CDエステルおよび薬学的に許容しうるそれらの塩もまた有用なプロドラッグ化合物である。
【化57】

【0091】
【化58】

【0092】
デキストランエステルもまた有用なプロドラッグ化合物である。デキストランは、主としてα-D(1→6)結合したグルコースのポリマー、すなわちD-グルコース単位がアノマー(1位)炭素のα-ヒドロキシル基と6位炭素のヒドロキシル基との間の結合によって結合したポリマーである。
【0093】
下記デキストランエステルおよび薬学的に許容しうるそれらの塩が、プロドラッグとして特に有用である。Dxはデキストランまたはスペーサー-デキストランであり、CO2のOはデキストランのヒドロキシル基に由来するか、またはデキストランのヒドロキシル基に結合したスペーサーに由来し、これはシクロデキストリンエステルに関して示した構造と同様である。
【0094】
【化59】

【0095】
【化60】

【0096】
下記構造を有するようなアミノ酸プロドラッグも本発明に含まれる。ここで、Rは天然アミノ酸の側鎖構造を表し、Rおよびアミド窒素がプロリンのようにつながっていてよい。アニオン性、カチオン性または双性イオン性である該構造の化合物の薬学的に許容しうる塩も有用である。
【0097】
【化61】

【0098】
【化62】

【0099】
ある種の態様においては、RはH、メチル、イソプロピル、s-ブチル、ベンジル、インドル-3-イルメチル、ヒドロキシメチル、CHOHCH3、CH2CONH2、p-ヒドロキシベンジル、CH2SH、(CH2)4NH2、(CH2)3NHC(NH2)2、メチルイミダゾル-5-イル、CH2CO2H、または(CH2)2CO2Hから成る群から選択する。
【0100】
下記例に示すように、EP4アゴニストのエステルプロドラッグもアミノ酸をベースとするものであってよい。アニオン性、カチオン性または双性イオン性の、該構造の化合物の薬学的に許容しうる塩も有用である。
【化63】

【0101】
セリン、スレオニンおよびチロシンなどのようなアミノ酸は側鎖にヒドロキシル官能基を有するので、次に例示するように、アミノ酸をベースとするEP4アゴニストのエーテルプロドラッグも存在しうる。 アニオン性、カチオン性または双性イオン性の、該構造の化合物の薬学的に許容しうる塩も有用である。
【化64】

【0102】
更に、本発明において説明するスペーサーをアミノ酸に適用して、利用可能なアミノ酸プロドラッグの種類を増すこともできる。
【0103】
本発明における定義に従う炭水化物は限られた数のアミン感応基を有しうるので、次に示すような炭水化物アミドも可能である。
【化65】

【0104】
同様の構造は、本発明において示す任意の炭水化物エステルについてもまた可能であり得、多様な炭水化物アミドが本発明の方法に使用可能となる。更に、そのようなプロドラッグはアミンスペーサーを含みうるので、可能な炭水化物アミドの数は更に多くなる。
【0105】
下記化合物のプロドラッグ、また、本発明が開示する任意の方法、組成物または処置における該化合物、その塩またはそのプロドラッグの使用が、本発明において特に意図される。
【化66】

【0106】
楔形または破線で示さない限り、キラル中心を持つ炭素は、S異性体、R異性体または任意の異性体混合物(50:50のR/S混合物を包含する)を包含すると解釈しうる。特に、前記各構造の純粋な異性体、および任意の可能な異性体混合物(50:50のR/S混合物を包含する)が意図される。そのような化合物の製造方法が、米国特許第6,747,037号および米国特許第6,875,787号に記載されている。
【0107】
本発明が開示するプロドラッグ化合物を合成する方法が数多く存在する。本発明の範囲を制限するものではないが、プロスタグランジンEP4アゴニストをグルコシドエーテルとするのに、炭酸銀の存在下にCCl4中で、市販(Sigma Chemical Co.)の2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−β−D−グルコピラノシド(2)とカップリングさせた後、エステル保護基を加水分解することができ、これには、FriendおよびChangの方法(J. Med. Chem. 1984, 27, 261-266; J. Med. Chem. 1985, 28, 51-57)の改変法を用いることができる。
【0108】
【化67】

【0109】
この方法においては、化合物1を乾燥CCl4または他の適当な溶媒に溶解し、新たに調製したAg2CO3(約4.5当量)を加える。次いで、反応混合物を光から保護しながら化合物2(約2.7当量)を滴下し、溶媒を連続的に蒸留する。反応中、蒸留溶媒を新たな溶媒で置き替える。反応が完了したら、溶液を標準的な方法で処理し、RP−18上のフラッシュクロマトグラフィーまたは他の適当な精製方法で精製して、化合物3を得る。次いで当分野で許容しうる手段(例えばMeOH中のNaOH)により化合物3のエステル基をケン化し、標準的な方法で処理および精製する。
【0110】
この方法は、ヒドロキシル基を1個有するプロスタグランジンEP4アゴニストに適用しうる。ヒドロキシル基数が1を越えるプロスタグランジンEP4アゴニストのプロドラッグを製造するには、複数のヒドロキシル基を異なる基で保護して、1個がプロドラッグ合成のために除去されうるようにすることができる。通例、環、α鎖およびω鎖を個別に合成し、合成過程の完結に向けてカップリングするので、各部分の個々の基の保護は当業者の能力の範囲内にある。
【0111】
グルクロニドエーテルの製造にも、同様の手順を用いうる。Haeberlinら(Pharmaceutical Research 1993, 10, 1553-1562)は、本発明のために改変しうる手順を開示している。
【化68】

【0112】
プロスタグランジンEP4アゴニストをシクロデキストリンまたは他の炭水化物に結合させるのに、下記方法を用いうる。コハク酸とシクロデキストリンとのカップリングを行うために、Tanakaら(Journal of Antibiotics 1994, 47, 1025-1029)が記載しているように、シクロデキストリンをDMFに懸濁させ、その混合物をピリジンに溶解させ、無水コハク酸1.2当量を加え、室温で18撹拌する。混合物をクロロホルムに注いでコハク酸エステル生成物を沈殿させ、それを濾過し、クロロホルムおよびメタノールで洗い、ODSカラムで精製する。Tanakaが示したところによると、反応は無水コハク酸に対しては4.6/1の比で6−OHにおいて優先的に起こる。6−OHにおける優先的反応の程度は、無水フタル酸(13.6/1)、無水ナフタレンジカルボン酸(14.0/1)および無水シクロヘキサンジカルボン酸(14.7/1)の場合により高い。
【0113】
プロスタグランジンEP4アゴニストのヒドロキシル基を、p−トルエンスルホニルクロリドとの反応によって活性化し、そのトシレート(7)をシクロデキストリン誘導体(6)と反応させて、プロドラッグ生成物を得る。
【0114】
【化69】

【化70】

【0115】
また、下記のように、プロスタグランジンEP4アゴニストのカルボン酸にシクロデキストリンを直接結合させることもできる。この方法は、抗炎症カルボン酸(例えば4−ビフェニル酢酸)のシクロデキストリンプロドラッグの製造を記載したUekamaおよび共同研究者の方法(J. Med. Chem. 1997, 40, 2755-2761およびPharm. Pharmacol. 1996, 48, 27-31)の改変法である。この文献記載の方法を容易にプロスタグランジンEP4アゴニストに応用することができる。この方法においては、シクロデキストリンをp−トルエンスルホニルクロリドと反応させてトシレート(8)とし、これをイオン交換クロマトグラフィー、次いで水からの再結晶に付して精製する。プロスタグランジンのヒドロキシル基を、THPClとの反応によりTHPで保護する。別法として、THP保護プロスタグランジンEP4アゴニストエステル(これはしばしば、プロスタグランジンEP4アゴニスト合成における終段階の中間体である)をケン化して、THP保護プロスタグランジンEP4アゴニスト遊離酸を得る。次いで、この酸をシクロデキストリントシレートと反応させて、所望のプロドラッグを得、当分野で知られた方法で処理および精製する。
【0116】
【化71】

【0117】
下記方法は、プロスタグランジンEP4アゴニスト類似体をデキストランまたは他の炭水化物に結合させるのに用いうるものである。デキサメタゾンとデキストランとをスクシネート連結基を介してカップリングする方法(McLeodら,Int. J. Pharm. 1993, 92, 105-114)を、本発明の化合物に容易に応用できる。本発明の範囲を制限するものではないが、この方法は通例、遊離カルボン酸基を持たず(例えばエステル)、未保護ヒドロキシル基を1個有するプロスタグランジンEP4アゴニストに適用する。プロドラッグを形成するためのデキストランへの結合は、この遊離ヒドロキシル基において起こる。この方法においては、プロスタグランジンEP4アゴニストのヒドロキシル基を無水コハク酸に付加してヘミスクシネートエステルを形成することによって、ヘミスクシネートを生成する。次いで、このプロスタグランジンEP4アゴニストヘミスクシネートを、窒素雰囲気中で30分間、2当量の1,1−カルボニルジイミダゾールと反応させる。デキストランおよび塩基(例えばトリエチルアミン)を加え、反応混合物を室温で約21時間撹拌する。次いで、他のヒドロキシル基に保護基があれば、希酸中での撹拌によって、または使用した保護基に適切な他の方法によって、除去しうる。カルボン酸を脱保護する必要はないが、これはこのエステルがインビボで容易に加水分解されうるからである。
【0118】
前記方法において使用した炭水化物は、当業者が容易に変更を加えるか、または交換しうる。例えば、シクロデキストリンに関して記載したのと同様の方法で、プロスタグランジンEP4アゴニストのカルボン酸のグルコシドおよびグルクロニドエステルを、該炭水化物のトシレートを用いて製造しうる。
【0119】
アミノ酸プロドラッグを、多くの方法で容易に得ることができる。例えば、限定するわけではないが、サリチル酸とアラニン、グリシン、メチオニンまたはチロシンのメチルエステルとのカップリングに用いる複数の方法(Nakamuraら,J. Pharm. Pharmacol. 1992, 44, 295-299、およびNakamuraら,Int. J. Pham. 1992, 87, 59-66)の一つを、プロスタグランジンEP4アゴニストの反応に応用することができる。この方法においては、プロスタグランジンEP4アゴニストカルボン酸に等モル量のジシクロヘキシルカルボジイミドを0℃またはそれ以下で加え、約30分間撹拌する。次いで、アミノ酸のメチルエステルを等モル量で加え、室温で一晩撹拌してアミドを形成する。次いで、ヒドロキシル基の脱保護を、保護基に応じて希水性酸または他の方法を用いて行いうる。
【0120】
理論により制限するわけではないが、当業者は一般に、大腸内層を、刺激物、例えば食物、酸化物質、細菌代謝物および腸内菌叢から保護するのに、大腸粘膜バリアが重要であると考えている。理論により制限するわけではないが、上皮層に損傷および/または断裂があると、様々な大腸炎症、例えば免疫原性炎症性腸疾患およびその後の続発性炎症が生じると考えられる。理論により制限するわけではないが、プロスタグランジンEP4受容体は、セカンドメッセンジャーcAMPまたはホスホイノシチド3−キナーゼ活性化を用いて、二つの細胞シグナル経路をメディエートすると考えられる。後者の経路が上皮細胞において特に優勢であると考えられる。理論により制限するわけではないが、シグナル経路活性化は、細胞増殖、細胞成長、細胞代謝、およびアポトーシス抑制を促進すると考えられる。すなわち、理論により制限するわけではないが、大腸にもたらされたEP4アゴニストはプロスタグランジンEP4受容体を認識し、上記シグナル経路の一つまたはそれ以上を活性化するものと考えられる。そしてそれにより上皮細胞の成長、増殖、アポトーシス抑制が促進されるはずであり、粘液分泌が亢進されて、腸の抗原および刺激物質の侵入が軽減される。すなわち、理論により制限するわけではないが、プロスタグランジンEP4アゴニストによるこのような大腸粘膜バリアの改善および保全は、大腸炎、アメーバ性大腸炎、コラーゲン蓄積大腸炎、深在性嚢胞性大腸炎、表在性嚢胞性大腸炎、肉芽腫性大腸炎、出血性大腸炎、粘液性大腸炎、クローン病および潰瘍性大腸炎の予防および治療となるはずである。
【0121】
経口投与形態で薬物を大腸にデリバーする数多くの方法が当分野で知られており、ChourasiaおよびJain, J. Pharm. Pharmaceut. Sci. 6(1):33-66, 2003に記載されている。そのような方法としては、1)プロドラッグ(アゾまたは炭水化物系プロドラッグを包含する)の投与;2)大腸へのデリバリーのために設計されたポリマーによる薬物のコーティング、または該ポリマーによる薬物の封入もしくは含浸;3)薬物の徐放デリバリー、4)生体付着システムの使用などが挙げられる。腸内微生物叢がアゾ結合を還元的切断して、2個の窒素原子をアミン官能基とすることができる。また、下部消化管の細菌が、グリコシド、グルクロニド、シクロデキストリン、デキストランおよび他の炭水化物を消化しうる酵素を有し、そのような炭水化物で形成されたエステルプロドラッグは、活性な親薬物を大腸に選択的にデリバーすることが示されている。このプロドラッグアプローチは、ヒトへの5−アミノサリチル酸のデリバリーのために利用されている。デキサメタゾン、プレドニゾロン、ヒドロコルチゾンおよびフルドロコルチゾンのプロドラッグの、ラットおよびモルモットを用いたインビボおよびインビトロ研究により、ヒト大腸へのステロイドのデリバリーにグリコシドコンジュゲートが有用でありうることが示唆されている。他のインビボ研究が、ステロイドまたは非ステロイド抗炎症剤のグルクロニド、シクロデキストリンおよびデキストランプロドラッグが、下部消化管への該剤のデリバリーのために有用であることを示唆している。
【0122】
同様に、炭水化物ポリマー、例えばアミラーゼ、アラビノガラクタン、キトサン、コンドロイチン硫酸、デキストラン、グアーガム、ペクチン、キシリンなどを、薬物化合物のコーティングに使用することができるか、またはそのようなポリマーで薬物を含浸もしくは封入することができる。サリチル酸とグルタミン酸とのアミドが、ウサギおよびイヌの大腸へのサリチル酸デリバリーに有用であることが示されている。経口投与後、ポリマーは上部消化管内では安定を維持するが、下部消化管の微生物叢によって消化されて、処置のための薬物を放出する。大腸では上部消化管よりもpHが高いので、pH感受性のポリマーを使用することもできる。そのようなポリマーは市販されている。例えばRohm Pharmaceaticals(ドイツ、ダルムシュタット)からは、ポリマー中の遊離カルボキシレート基の数に応じて異なるpH範囲で異なる溶解性を示すpH依存性メタクリレート系ポリマーおよびコポリマーが、Eudragit(登録商標)の商品名で市販されている。潰瘍性大腸炎およびクローン病の処置のためにサルサラジン(salsalazine)をデリバーするために、いくつかのEudragit(登録商標)投与形態が現在使用されている。徐放システム、生体付着システム、および他のデリバリーシステムも研究されている。
【0123】
プロスタグランジンEP4アゴニストを同一組成物または別個の投与形態として併用投与することも意図される。本発明の範囲を制限するわけではないが、EP4アゴニストおよびそのプロドラッグとの併用療法に使用しうる薬物は下記のものを包含するが、それらに限定されない:
1.抗炎症剤、例えばアミノサリチレートおよびそのプロドラッグ、スルファサラジンなど;
2.ステロイド、例えばコルチコステロイドなど;
3.免疫調節剤、例えばアザチオプリン、6−メルカプトプリン、シクロスポリンなど;並びに
4.pro-inflammatoryサイトカインに抗するヒト化モノクローナル抗体、例えばインフリキシマブ、エタネルセプト、onercept、アダリムマブ、CDP51、CDP870、ナタリズマブ、MLN-02、ISIS2302、cM-T412、BF-5、バシリズマブ、ダクリズマブ、バシリキシマブ、抗CD40Lなど。
【0124】
化合物のプロスタグランジンEP4活性および選択性を測定するのに有用なアッセイを以下説明する。
ヒト組換えEP、EP、EP、EP、FP、TP、IPおよびDP受容体:安定トランスフェクタント
ヒトEP、EP、EP、EP、FP、TP、IPおよびDP受容体をコードするプラスミドを、それぞれをコードする配列を真核細胞発現ベクターpCEP(Invitrogen)にクローニングすることによって調製する。pCEPベクターは、EBウイルス(EBV)複製起点を有し、それによりEBV核抗原(EBNA−1)を発現する霊長類細胞系においてエピソーム複製することができる。pCEPベクターはハイグロマイシン耐性遺伝子をも有し、これは真核細胞選抜に用いられる。安定トランスフェクションに使用する細胞は、EBNA−1タンパク質をトランスフェクトし、EBNA−1タンパク質を発現するヒト胚性腎細胞(HEK−293)である。このHEK−293−EBNA細胞(Invitrogen)を、ジェネティシン(G418)含有培地中で増殖させてEBNA−1タンパク質の発現を維持する。HEK−293細胞は、10%ウシ胎仔血清(FBS)、250μg/ml G418(Life Technologies)および200μg/mlゲンタマイシンまたはペニシリン/ストレプトマイシンを含有するDMEM中で増殖させる。安定トランスフェクタントの選抜は、200μg/mlハイグロマイシンを用いて行い、この最適濃度は、予め行うハイグロマイシン死滅曲線の実験により決定する。
【0125】
トランスフェクションを行うために、10cmプレート上で細胞を50〜60%コンフルエントに増殖させる。各ヒトプロスタノイド受容体用のcDNAインサートを組み込んだプラスミドpCEP(20μg)を、250mM CaCl 500μlに加える。HEPES緩衝塩類液×2(2×HBS、280mM NaCl、20mM HEPES酸、1.5mM NaHPO、pH7.05〜7.12)を次いで室温でボルテックスを続けながら滴下して、総量500μlとする。30分後、その混合物にDMEM 9mlを加える。次いで、そのDNA/DMEM/リン酸カルシウム混合物を細胞に加える。細胞は予め10mlのPBSで濯いでおく。次いで、細胞を、加湿95%空気/5%CO中で37℃で5時間インキュベートする。次いで、リン酸カルシウム溶液を除去し、細胞を、DMEM中10%グリセロールで2分間処理する。次いで、グリセロール溶液を、10%FBS含有DMEMで取り替える。細胞を一晩インキュベートし、培地を、250μg/mlのG418およびペニシリン/ストレプトマイシンを含有するDMEM/10%FBSで取り替える。翌日に、ハイグロマイシンBを終濃度200μg/mlで加える。
【0126】
トランスフェクションから10日後、ハイグロマイシンB耐性クローンを個別に選抜し、24ウェルプレートの各ウェルに移す。コンフルエンスになったら、各クローンを6ウェルプレートの1つのウェルに移し、次いで10cm皿に広げる。細胞を使用するまで、連続したハイグロマイシン選抜下に維持する。
【0127】
ラジオリガンド結合
細胞から調製した細胞膜フラクションに対し、ラジオリガンド結合試験を次のように行う。TME緩衝液で洗った細胞をフラスコ底から掻き取り、Brinkman PT10/35ポリトロンを用いて30秒間ホモジナイズする。遠心管内で、要すればTME緩衝液を加えて、体積を40mlとする。TMEは、50mM TRIS塩基、10mM MgCl、1mM EDTAから成り、1N−HClの添加によりpHを7.4とする。細胞ホモジネートを、Beckman Ti−60またはTi−70ローターを用いて4℃で20〜25分間、19000rpmで遠心する。次いで、ペレットをTME緩衝液に再懸濁させて、タンパク質の終濃度を1mg/mlとする(Bio−Radアッセイにより測定)。100μlまたは200μlの体積でラジオリガンド結合アッセイを行う。
【0128】
H]PGE(比放射能165Ci/ミリモル)の結合を、二重に、そして少なくとも3つの異なる実験として測定する。インキュベーションを25℃で60分間行い、氷冷50mM TRIS−HCl(4ml)を加えて停止し、次いでWhatman GF/Bフィルターで手早く濾過し、セルハーベスター(Brandel)内で更に3回、4mlでの洗浄を行う。終濃度2.5または5nMの[H]PGEを用いて競合試験を行い、10−5M非標識PGEを用いて非特異的結合を測定する。
いずれのラジオリガンド結合試験についても、合意の基準は>50%特異的結合、および500〜1000の排除可能カウントまたはそれ以上である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭水化物のエステル、エーテルもしくはアミド、またはアミノ酸のエステル、エーテルもしくはアミドである、プロスタグランジンEP4アゴニストのプロドラッグから成る化合物。
【請求項2】
グルコシドエステル、エーテルもしくはアミド;グルクロニドエステル、エーテルもしくはアミド;シクロデキストリンエステル、エーテルもしくはアミド;またはデキストランエステル、エーテルもしくはアミドから成る請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
プロスタグランジンEP4アゴニストが、下記式で示される化合物から成る群から選択する化合物または薬学的に許容しうるその塩もしくはプロドラッグである請求項2に記載の化合物:
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

および
【化11】

[式中、破線は結合の存在または不存在を表し;
Aは-(CH2)6-、シス-CH2CH=CH-(CH2)3-、または-CH2C=C-(CH2)3-であり、ここで、1個または2個の炭素原子がSまたはOで置き換えられていてもよく; あるいはAは-(CH2)m-Ar-(CH2)o-であり、ここで、Arはインターアリーレンまたはヘテロインターアリーレンであり、mとoの合計は1〜4であり、ここで、1個のCH2がSまたはOで置き換えられていてもよく;
XはSまたはOであり;
JはC=O、CHOH、またはCH2CHOHであり;
EはC1-12アルキル、R2、または-Y-R2であり、ここで、YはCH2、SまたはOであり、R2はアリールまたはヘテロアリールである。]。
【請求項4】
Aが-(CH2)6-、シス-CH2CH=CH-(CH2)3-、または-CH2C=C-(CH2)3-であり、ここで、1個または2個の炭素原子がSまたはOで置き換えられていてもよく; EがC1-6アルキル、R2、または-Y-R2であり、ここで、YがCH2、SまたはOであり、R2がアリールまたはヘテロアリールである請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
R2がフェニル、ナフチル、ビフェニル、チエニルまたはベンゾチエニルで、F、Cl、Br、メチル、メトキシおよびCF3から成る群から選択する置換基を0〜2個有する請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
R2がCH2-ナフチル、CH2-ビフェニル、CH2-(2-チエニル)、CH2-(3-チエニル)、ナフチル、ビフェニル、2-チエニル、3-チエニル、CH2-(2-(3-クロロベンゾチエニル))、CH2-(3-ベンゾチエニル)、2-(3-クロロベンゾチエニル)、または3-ベンゾチエニルである請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
プロスタグランジンEP4アゴニストが、式:
【化12】

[式中、xは0または1であり、R1はH、クロロ、フルオロ、ブロモ、メチル、メトキシまたはCF3である。]
で示される化合物から成る請求項5に記載の化合物。
【請求項8】
プロスタグランジンEP4アゴニストが、式:
【化13】

【化14】

で示される化合物から成る請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
プロスタグランジンEP4アゴニストを処置有効量で哺乳動物の大腸に投与することを含んで成る、大腸粘膜バリアの保全に有効な方法。
【請求項10】
大腸炎、アメーバ性大腸炎、コラーゲン蓄積大腸炎、深在性嚢胞性大腸炎、表在性嚢胞性大腸炎、肉芽腫性大腸炎、出血性大腸炎、粘液性大腸炎、クローン病および潰瘍性大腸炎から成る群から選択する一つまたはそれ以上の疾患または状態を治療または予防するのに有効である請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記疾患または状態がクローン病である請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記疾患または状態が潰瘍性大腸炎である請求項10に記載の方法。
【請求項13】
プロスタグランジンEP4アゴニストを処置有効量で哺乳動物の大腸に投与することを含んで成る、大腸炎、アメーバ性大腸炎、コラーゲン蓄積大腸炎、深在性嚢胞性大腸炎、表在性嚢胞性大腸炎、肉芽腫性大腸炎、出血性大腸炎、粘液性大腸炎、クローン病および潰瘍性大腸炎から成る群から選択する一つまたはそれ以上の疾患または状態を治療または予防するのに有効な方法。
【請求項14】
前記疾患または状態がクローン病である請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記疾患または状態が潰瘍性大腸炎である請求項13に記載の方法。
【請求項16】
プロドラッグがアミノ酸のアミド、エステルまたはエーテルである請求項1に記載の化合物。
【請求項17】
式:
【化15】

で示される化合物または薬学的に許容しうるその塩のプロドラッグである請求項1に記載の化合物。
【請求項18】
式:
【化16】

で示される化合物または薬学的に許容しうるその塩のプロドラッグである請求項1に記載の化合物。
【請求項19】
プロスタグランジンEP4アゴニストが、式:
【化17】

で示される化合物、薬学的に許容しうるその塩、およびそのプロドラッグの少なくとも一つである請求項13に記載の方法。
【請求項20】
プロスタグランジンEP4アゴニストが、式:
【化18】

で示される化合物、薬学的に許容しうるその塩、およびそのプロドラッグの少なくとも一つである請求項13に記載の方法。

【公表番号】特表2008−518013(P2008−518013A)
【公表日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−539030(P2007−539030)
【出願日】平成17年10月24日(2005.10.24)
【国際出願番号】PCT/US2005/038303
【国際公開番号】WO2006/047476
【国際公開日】平成18年5月4日(2006.5.4)
【出願人】(591018268)アラーガン、インコーポレイテッド (293)
【氏名又は名称原語表記】ALLERGAN,INCORPORATED
【Fターム(参考)】