説明

プロテアーゼ検出材料、プロテアーゼ検出材料セット、及びプロテアーゼ測定方法

【課題】本発明の課題はプロテアーゼ活性を迅速且つ高感度に測定できるとともに、薄膜上の組織や細胞の形態観察を容易に行うことができるプロテアーゼ検出材料、プロテアーゼ検出材料セット、及びプロテアーゼの測定方法を提供することである。
【解決手段】支持体上に少なくとも色素前駆体を含有する層、及び該色素前駆体を含有する層の前記支持体より遠い側にプロテアーゼ基質を含有する層を有し、該プロテアーゼ基質を含有する層が現像中心物質を含有するプロテアーゼ検出材料。更に前記プロテアーゼ検出材料を用いたプロテアーゼ検出材料セット、及びプロテアーゼの測定方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロテアーゼ検出材料、プロテアーゼ検出材料セット、及びプロテアーゼの測定方法に関するものである。より具体的には、癌細胞の浸潤活性や転移活性などの癌の悪性度、歯周炎などの歯周病の進行度、リウマチ性関節炎などにおける破壊性病変などの正確な診断を可能にするプロテアーゼ検出材料、プロテアーゼ検出材料セット、及びプロテアーゼ測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
癌細胞の浸潤や転移、歯周炎などの歯周病の進行、リウマチ性関節炎などにおける組織破壊の進行、創傷治癒過程、個体発生過程などにおいて、マトリックスメタロプロテアーゼ、プラスミノーゲンアクティベーターなど種々のプロテアーゼが関与することが知られており、それらのプロテアーゼの検出及び定量方法として、抗体を用いたイミュノアッセイ法、イミュノブロッティング法、電気泳動ザイモグラフィー法などが知られている。また、組織中におけるプロテアーゼの活性を測定する方法として、非特許文献1又は特許文献1に開示されたいわゆるin situ zymography法が知られている。特許文献2には、ゼラチンなどの薄膜の消化痕を赤色、橙色、及び黄色等の色に染色し、プロテアーゼ活性を有する細胞の特定することが開示されている。
【非特許文献1】FASEB Journal,Vol.9,July,pp.974−980(1995)
【特許文献1】WO97/32035号公報
【特許文献2】特開2000−325096号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明者らは、in situ zymography法とその応用について鋭意研究していたが、その研究過程で、プロテアーゼ活性の測定のためにゼラチンなどの薄膜の消化痕を赤色、橙色、及び黄色等の色に染色し、プロテアーゼ活性を有する細胞を特定する方法は、比較的容易に薄膜上にある組織や細胞が観察可能であるが、感度が十分とは言えず、初期症状のプロテアーゼ活性を有する細胞が微量段階での検出ができない問題を認識した。
【0004】
従って、本発明の課題はこれらの問題を解決する手段を提供することにある。より具体的には、プロテアーゼ活性を迅速且つ高感度に測定できるとともに、薄膜上の組織や細胞の形態観察を容易に行うことができるプロテアーゼ検出材料、プロテアーゼ検出材料セット、及びプロテアーゼの測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の上記課題は、以下の手段により解決された。
<1> 支持体上に少なくとも色素前駆体を含有する層、及び該色素前駆体を含有する層の前記支持体より遠い側にプロテアーゼ基質を含有する層を有し、該プロテアーゼ基質を含有する層が現像中心物質を含有するプロテアーゼ検出材料。
<2> 前記現像中心物質が銀コロイド又は金コロイドである<1>に記載のプロテアーゼ検出材料。
<3> 前記プロテアーゼ基質を含有する層の厚みが3μm以下である<1>又は<2>に記載のプロテアーゼ検出材料。
<4> 前記プロテアーゼ基質を含有する層が硬膜剤を含有することを特徴とする<1>〜<3>のいずれかに記載のプロテアーゼ検出材料。
<5> さらに発色現像薬を含有することを特徴とする<1>〜<4>のいずれかに記載のプロテアーゼ検出材料。
<6> 前記発色現像薬が下記一般式(I)で表される化合物であることを特徴とする<5>に記載のプロテアーゼ検出材料:
【0006】
【化1】

【0007】
(式中、R、R、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又は置換基を表し、R及びRはそれぞれ独立に、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、又はスルホニル基を表し、RとR、RとR、RとR、RとR、又は/及びRとRとが互いに結合して5員、6員又は7員の環を形成してもよい。Rは、水素原子、R11−O−CO−、R12−CO−CO−、R13−NH−CO−、R14−SO−、R15−W−C(R16)(R17)(R18)−、R19−SONHCO−、R20−CONHCO−、R21−SONHSO−、R22−CONHSO−又は(M)1/nOSO−を表し、R11、R12、R13、R14、R19、R20、R21及びR22はアルキル基、アリール基、又はヘテロ環基を表し、R15は水素原子又はブロック基を表し、Wは酸素原子、イオウ原子又は>N−R18を表し、R16、R17、及びR18は水素原子又はアルキル基を表し、Mはn価のカチオンを表す。)。
<7> 前記発色現像薬が、下記一般式(II)で表される化合物であることを特徴とする<6>に記載のプロテアーゼ検出材料:
【化2】


(一般式(II)においてR11は置換基を有してもよいアリール基又はヘテロ環基であり、R12は置換基を有してもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基またはヘテロ環基である。Xは−SO−、−CO−、−COCO−、−CO−O−、−CO−N(R13)−、−COCO−O−、−COCO−N(R13)−または−SO−N(R13)−である。ここでR13は水素原子または前記R12として挙げた基より選ばれる基である。)。
<8> 前記発色現像薬が、下記一般式(IV)で表される化合物であることを特徴とする<7>に記載のプロテアーゼ検出材料:
【化3】


(一般式(IV)におけるR11とR12は、それぞれ一般式(II)におけるものと同義である。)。
<9> 前記色素前駆体が下記一般式(C−1)、(C−2)、(C−3)、(M−1)、(M−2)、(M−3)、(Y−1)、(Y−2)および(Y−3)よりなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含有することを特徴とする<1>〜<8>のいずれか1項に記載のプロテアーゼ検出材料:
【0008】
【化4】

【0009】
(式中、Xは水素原子または離脱基を表し、YおよびYは電子求引性の置換基を表し、Rはアルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表す。);
【0010】
【化5】

【0011】
(式中、Xは水素原子または離脱基を表し、Rはアシルアミノ基、ウレイド基またはウレタン基を表し、Rは水素原子、アルキル基またはアシルアミノ基を表し、Rは水素原子、または置換基を表す。RとRが互いに連結して環を形成してもよい。);
【0012】
【化6】

【0013】
(式中、Xは水素原子または離脱基を表し、Rはカルバモイル基またはスルファモイル基を表し、Rは水素原子または置換基を表す。);
【0014】
【化7】

【0015】
(式中、Xは水素原子または離脱基を表し、Rはアルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表し、Rは置換基を表す。);
【0016】
【化8】

【0017】
(式中、Xは水素原子または離脱基を表し、Rはアルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表し、R10は置換基を表す。);
【0018】
【化9】

【0019】
(式中、Xは水素原子または離脱基を表し、R11はアルキル基、アリール基、アシルアミノ基またはアニリノ基を表し、R12はアルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表す。);
【0020】
【化10】

【0021】
(式中、Xは水素原子または離脱基を表し、R13はアルキル基、アリール基、又はインドレニル基を表し、R14はアリール基またはヘテロ環基を表す。);
【0022】
【化11】

【0023】
(式中、Xは水素原子または離脱基を表し、Zは5〜7員の環を形成するのに必要な2価の基を表し、R15はアリール基またはヘテロ環基を表す。);
【0024】
【化12】

【0025】
(式中、Xは水素原子または離脱基を表し、R16、R17およびR18はそれぞれ置換基を表し、nは0〜4の、mは0〜5のいずれかの整数を表す。nまたはmが2以上のとき、複数のR16およびR17はそれぞれ同一の基であってもよいし、異なる基であってもよい。)。
<10> 支持体上に少なくとも色素前駆体を含有する層、及び該色素前駆体を含有する層の前記支持体より遠い側にプロテアーゼ基質を含有する層を有し、該プロテアーゼ基質を含有する層が現像中心物質を含有するプロテアーゼ検出材料を用いたプロテアーゼ測定方法であって、(1)被検査生体試料をプロテアーゼ検出材料の表面に接触させる工程、(2)該(1)工程を経た前記プロテアーゼ検出材料の表面に現像薬を作用させ、プロテアーゼ消化痕を検出する工程を有するプロテアーゼ測定方法。
<11> 支持体上に少なくとも色素前駆体を含有する層、及び該色素前駆体を含有する層の前記支持体より遠い側にプロテアーゼ基質を含有する層を有し、該プロテアーゼ基質を含有する層が現像中心物質を含有するプロテアーゼ検出材料と、支持体上に少なくとも色素前駆体を含有する層、及び該色素前駆体を含有する層の前記支持体より遠い側に検出対象物のプロテアーゼインヒビターを含有する層を有し、該プロテアーゼインヒビターを含有する層が現像中心物質を含有する参照用プロテアーゼ検出材料とを有するプロテアーゼ検出材料セット。
<12> <11>に記載のプロテアーゼ検出材料セットを用いたプロテアーゼ測定方法であって、(1)被検査生体試料の実質的に連続した2以上の切片の内の1切片をプロテアーゼ検出材料の表面に接触させる工程、(2)他方の切片を参照用プロテアーゼ検出材料の表面に接触させる工程;(3)該(1)及び(2)工程を経た前記プロテアーゼ検出材料及び参照用プロテアーゼ検出材料の表面に過酸化物及び発色現像薬を作用させ、プロテアーゼ消化痕を発色パターンにより検出する工程、(4)前記プロテアーゼ検出材料の発色パターンと前記参照用プロテアーゼ検出材料の発色パターンとを対比する工程を有するプロテアーゼ測定方法。
【発明の効果】
【0026】
本発明の方法によれば、迅速且つ高感度で消化痕の観察が可能であり、また、同時に薄膜上の組織又は細胞の迅速且つ高感度での観察が可能になり、プロテアーゼ活性を発現する組織部分や細胞の特定が容易になる。例えば、薄膜の染色と共に細胞核染色を行うことにより、核の形態情報と消化痕とを同一の標本で観察することができるので、形態変化を起こした異常細胞がプロテアーゼ活性を発現するか否かを簡便に判定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明のプロテアーゼ検出材料は、支持体上に少なくとも色素前駆体を含有する層、及び該色素前駆体を含有する層の前記支持体より遠い側にプロテアーゼ基質を含有する層を有し、該プロテアーゼ基質を含有する層に現像中心物質を含有する。
好ましくは、現像中心物質が銀コロイド、金コロイド又はハロゲン化銀である。
被検査生体試料の切片をプロテアーゼ検出材料の表面に接触させ、プロテアーゼ基質を含有する層にプロテアーゼ消化痕を形成させた後、該表面に過酸化物及び発色現像薬を作用させると、現像中心物質が核となって酸化還元反応が進行し、発色現像薬の酸化体と色素前駆体との反応により色素が形成される。現像中心物質を核とした過酸化物による発色現像薬は連鎖反応で進行するため、消化痕は増幅されて、鮮明なコントラスト発色パターンが得られる。従って、従来は検出が困難であった微かな消化痕も迅速且つ高感度で検出することができる。
【0028】
本発明に於いては、プロテアーゼ基質を含有する層の厚みは、3μm以下と薄層であり、1μm以下であることが更に好ましい。さらに好ましくは、プロテアーゼ基質を含有する層が硬膜剤を含有する。
本発明のプロテアーゼ検出材料は、更に発色現像薬を含有する層を有するのが好ましい。
好ましくは、発色現像薬が上記一般式(I)で表される化合物又である。より好ましくは、発色現像薬が、上記一般式(II)又は(III)で表される化合物である。
好ましくは、色素前駆体が上記一般式(C−1)、(C−2)、(C−3)、(M−1)、(M−2)、(M−3)、(Y−1)、(Y−2)および(Y−3)よりなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である。
【0029】
本発明の別の態様は、プロテアーゼ検出材料と参照用プロテアーゼ検出材料とのセットよりなるプロテアーゼ検出材料セットである。
プロテアーゼ検出材料は、支持体上に少なくとも色素前駆体を含有する層、及び該色素前駆体を含有する層の前記支持体より遠い側にプロテアーゼ基質を含有する層を有し、該プロテアーゼ基質を含有する層が現像中心物質を含有する。一方、参照用プロテアーゼ検出材料は、支持体上に少なくとも色素前駆体を含有する層、及び該色素前駆体を含有する層の前記支持体より遠い側に検出対象物のプロテアーゼインヒビターを含有する層を有し、該プロテアーゼインヒビターを含有する層が現像中心物質を含有する。
【0030】
プロテアーゼ検出材料セットを用いたプロテアーゼ測定方法は、(1)被検査生体試料の実質的に連続した2以上の切片の内の1切片をプロテアーゼ検出材料の表面に接触させる工程、(2)他方の切片を参照用プロテアーゼ検出材料の表面に接触させる工程;(3)該(1)及び(2)工程を経た前記プロテアーゼ検出材料及び参照用プロテアーゼ検出材料の表面に過酸化物及び発色現像薬を作用させ、プロテアーゼ消化痕を発色パターンにより検出する工程、(4)前記プロテアーゼ検出材料の発色パターンと前記参照用プロテアーゼ検出材料の発色パターンとを対比する工程を有する。
【0031】
プロテアーゼ・インヒビターとしては、キレート剤、マトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤、又はセリンプロテアーゼ阻害剤であることが好ましい。
プロテアーゼ検出材料とセットで参照用プロテアーゼ検出材料を用いることにより、さらに高精度で検査対象とするプロテアーゼを検出することができる。
【0032】
上記の発明の好ましい態様によれば、生体試料が、ヒトを含む哺乳類動物、好ましくは患者、疾患が疑われる哺乳動物、実験動物などから分離・採取した生体試料である上記方法が提供される。生体試料として、組織片などの固形試料のほか、組織から吸引により採取した細胞又は組織片を含む試料、血液、リンパ液、唾液などの非固形試料などを用いることができる。連続した切片を用いる方法では生体試料として組織切片を用いることができる。
【0033】
消化痕の検出は、発色パターンを顕微鏡を用いた目視により判定する方法、あるいは画像処理装置を用いて定量又は数値化を行う方法が用いることができる。
【0034】
本明細書において用いられる測定方法という用語は、定性及び定量を含めて最も広義に解釈されるべきである。本発明のプロテアーゼの測定方法は、試料中に含まれるプロテアーゼによってプロテアーゼ基質が消化され、薄膜中に消化痕が形成されることによりプロテアーゼを測定する方法(いわゆるin situ zymography法:例えばWO97/32035号明細書に開示されている)において、消化痕が形成された薄膜を特定の発色反応を利用して増幅された発色パターンに変換して観察することを特徴としている。本発明の方法によれば、薄膜上の消化痕を顕微鏡下で色素濃度の低い部分として検出することができ、試料中のプロテアーゼ活性の存在を確実に証明することができるとともに、薄膜上の生体試料の形態観察を容易に行えるという特徴がある。本発明の方法に用いる薄膜としては、WO97/32035に記載されたものを用いることができる。硬膜剤又はプロテアーゼインヒビターなども上記文献に記載のものを用いることができる。
【0035】
本発明の対象となるプロテアーゼとしては、例えば、マトリックス・メタロプロテアーゼ及びセリンプロテアーゼを挙げることができ、これらの酵素については、鶴尾隆編「癌転移の分子機構」、pp.92−107、メジカルビュー社、1993年発行に詳細に説明されている。本発明の方法に特に好適なプロテアーゼとして、例えば、間質型コラーゲナーゼ(MMP−1)、ゼラチナーゼA (MMP−2)、及びゼラチナーゼB (MMP−9)などのマトリックス・メタロプロテアーゼ;及びプラスミノーゲン・アクティベーター(PA)などのセリンプロテアーゼを挙げることができるが、本発明の方法の対象は上記の特定のプロテアーゼに限定されることはない。
【0036】
プロテアーゼ基質は、プロテアーゼの基質として分解される高分子化合物であれば特に限定されない。例えばコラーゲン、ゼラチン、プロテオグリカン、フィブロネクチン、ラミニン、エラスチン、又はカゼインなどを用いることができる。好ましくは、コラーゲン、ゼラチン、フィブロネクチン、又はカゼインを用いることができ、より好ましくはゼラチン又はカゼインを用いることができる。ゼラチンを用いる場合には、ゼラチンの種類は特に限定されず、例えば、牛骨アルカリ処理ゼラチン、豚皮膚アルカリ処理ゼラチン、牛骨酸処理ゼラチン、牛骨フタル化処理ゼラチン、豚皮膚酸処理ゼラチンなどを用いることができる。プロテアーゼ基質は上記の1種を用いても良いが、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0037】
2種以上の異なるプロテアーゼ基質を組み合わせて用いることにより、生体試料中に含まれるプロテアーゼの種類を正確に特定できる場合がある。例えば、生体試料中の実質的に連続した切片のうちの一つをある種のプロテアーゼ基質を含む薄膜に接触させて消化痕を検出し、他の切片を異なるプロテアーゼ基質を含む薄膜に接触させて薄膜上の消化痕を検出し、それぞれの結果を対比することができる。比較のためにそれぞれ異なるプロテアーゼ基質を含む薄膜を2種以上用いてもよい。プロテアーゼ基質を含む層の厚みは、3μm以下、好ましくは1μm以下である。
【0038】
本発明の方法に用いる生体試料としては、ヒトを含む哺乳類動物から分離・採取された生体試料を用いることができる。例えば、罹患した哺乳類動物、疾患の存在が疑われる哺乳動物、又は実験動物などから分離・採取した生体試料を用いることができる。生体試料の形態は特に限定されないが、組織切片などの固形試料や体液などの非固形試料を用いることができる。非固形試料としては、例えば、組織から吸引により採取した細胞又は組織片を含む試料、血液、リンパ液、唾液などの体液を用いることができる。例えば、肺癌、胃癌、食道癌、大腸癌、乳癌、子宮癌、卵巣癌、甲状腺癌、肝臓癌、口腔癌、前立腺癌、腎臓癌、膀胱癌などの癌組織から手術や組織検査などにより分離・採取した癌組織、リンパ節、歯周病組織、リウマチ性関節炎の滑膜や骨組織、動脈粥状硬化組織などの組織から手術や組織検査などにより分離・採取した組織、歯肉溝滲出液、破壊性病変組織に含まれる液(例えばリウマチ性病変の関節液又は歯槽膿漏組織抽出液)、胸水、腹水、脳脊髄液、乳腺異常分泌液、卵巣内貯留液、喀痰などを用いることができる。
【0039】
試料が組織の場合には、例えば、液体窒素で急速凍結した試料から凍結切片作製装置を用いて厚さ1μm〜10μm、好ましくは4μm〜6μmの切片を調製し、この切片を薄膜に貼付することによって試料と薄膜とを接触させることができる。穿刺吸引により採取した細胞又は組織片を含む非固形試料についても、コンパウンドなどの成形材料と混合して液体窒素で急速凍結し、同様に切片を作製して用いることができる。また、組織から穿刺吸引により採取した細胞又は組織片を含む非固形試料をそのまま用いる場合には、吸引した試料を薄膜上に吐出させ、細胞を分散状態で薄膜に接着させればよい。さらに、生体試料が組織片の場合は、採取した組織の水分を軽く拭った後、プロテアーゼ基質を含む薄膜の上に1分間から30分間程度静置することで試料と薄膜とを接触させることができる。
【0040】
また、リウマチ性関節炎の患者から採取した滑膜液の様な非固形試料を用いる場合には、試料を適当な濃度に希釈し、及び/又は必要な前処理を行った後に、約1μL〜50μL、好ましくは1μL〜20μL程度を薄膜上に滴下すればよい。歯周病の歯肉溝滲出液を試料として用いる場合には、歯肉溝内に濾紙を挿入して約5μL〜10μL程度の歯肉溝滲出液を採取し、該濾紙を薄膜に貼付する方法を採用することができる。歯肉溝滲出液の採取後、必要に応じて蒸留水や適宜の緩衝液(例えば、50mMTris−HCl,pH7.5,10mMCaCl,0.2MNaClなど)を用いて濾紙から歯肉溝滲出液を抽出し、抽出液を薄膜上に滴下してもよい。
【0041】
プロテアーゼ基質を含む組織切片を薄膜に貼付するか、あるいは液体試料を滴下するなどの手段によって薄膜とプロテアーゼを含む試料を接触させた後、プロテアーゼ活性の発現に適した温度、例えば37℃の飽和湿度条件下で基質の消化に必要な時間薄膜をインキュベートする。必要な時間は試料や薄膜の種類によって異なるが、37℃で10分〜24時間、好ましくは20分〜6時間インキュベートし、試料中のプロテアーゼによって薄膜中に消化痕を形成させる。
【0042】
その後、過酸化物と発色現像薬を作用させ、現像中心物質を核として、発色反応を起こし、酸化された発色現像薬と色素前駆体との反応により色素が形成される。該色素は消化されず残存する薄膜で形成されるので、消化痕は未発色であるので、発色した背景に中に未着色のパターンとして、消化痕が観察される。
【0043】
さらに、特定の検査対象のプロテアーゼを高精度に観察するには、生体試料中の実質的に連続した2以上の切片のうちの一つをプロテアーゼ・インヒビターを含まない薄膜に貼付し、他の切片の1つをプロテアーゼ・インヒビターを含む薄膜に貼付して、両者の薄膜の消化痕を比較することにより、プロテアーゼの種類を特定することが可能になる。
【0044】
次に、本発明の発色に用いられる現像中心物質、発色現像薬、及び色素前駆体について説明する。
【0045】
1)現像中心物質
本発明に用いられる現像中心物質は、過酸化水素と発色現像薬の酸化還元反応の触媒となるものであり、触媒核とも称される。好ましくは、金属コロイド又はハロゲン化銀粒子が用いられる。
ハロゲン化銀粒子としては、ハロゲン化銀写真感光材料に用いられる塩化銀、臭化銀、沃化銀、塩臭化銀、沃臭化銀、塩沃臭化銀を用いることができる。
金属コロイドとしては、上記酸化還元反応の触媒核として作用し得るものである限り、特に限定されるものではなく、金属コロイド標識としては、例えば、金、銀、白金、パラジウム、鉛、亜鉛、カドミウム、錫、クロム、銅、またはコバルトのコロイド、好ましくは、金、銀、白金、およびパラジウムのコロイド、そして、それらの混合物を挙げることができ、特に好ましくは、金コロイド又は銀コロイドである。
【0046】
金属コロイドの平均粒径は、1nm以上500nm以下が好ましく、より好ましくは5nm以上100nm以下である。
【0047】
2)発色現像薬
本発明に用いられる発色現像薬の好ましい態様の1つは、下記一般式(I)で表される化合物である。
【0048】
【化13】

【0049】
以下に、本発明の式(I)で表される化合物について詳しく説明する。R、R、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。R、R、R及びRで表される置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基(シクロアルキル基、ビシクロアルキル基を含む)、アルケニル基(シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基を含む)、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ、アミノ基(アニリノ基を含む)、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキル及びアリールスルフィニル基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリール及びヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基が挙げられる。更に詳しくは、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルキル基〔直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルキル基を表す。
【0050】
アルキル基(好ましくは炭素数1から30のアルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、t−ブチル、n−オクチル、エイコシル、2−クロロエチル、2−シアノエチル、2−エチルヘキシル)、シクロアルキル基(好ましくは、炭素数3から30の置換又は無置換のシクロアルキル基、例えば、シクロヘキシル、シクロペンチル、4−n−ドデシルシクロヘキシル)、ビシクロアルキル基(好ましくは、炭素数5から30の置換もしくは無置換のビシクロアルキル基、つまり、炭素数5から30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン−2−イル、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イル)、更に環構造が多いトリシクロ構造なども包含する。以下に説明する置換基の中のアルキル基(例えばアルキルチオ基のアルキル基)もこのような概念のアルキル基を表す。]、アルケニル基[直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルケニル基を表す。アルケニル基(好ましくは炭素数2から30の置換又は無置換のアルケニル基、例えば、ビニル、アリル、プレニル、ゲラニル、オレイル)、シクロアルケニル基(好ましくは、炭素数3から30の置換もしくは無置換のシクロアルケニル基、つまり、炭素数3から30のシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル)、ビシクロアルケニル基(置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、好ましくは、炭素数5から30の置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、つまり二重結合を一個持つビシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。
【0051】
例えば、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−1−イル、ビシクロ[2,2,2]オクト−2−エン−4−イル)]、アルキニル基(好ましくは、炭素数2から30の置換又は無置換のアルキニル基、例えば、エチニル、プロパルギル、トリメチルシリルエチニル基、アリール基(好ましくは炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリール基、例えばフェニル、p−トリル、ナフチル、m−クロロフェニル、o−ヘキサデカノイルアミノフェニル)、ヘテロ環基(好ましくは5又は6員の置換もしくは無置換の、芳香族もしくは非芳香族のヘテロ環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であり、更に好ましくは、炭素数3から30の5もしくは6員の芳香族のヘテロ環基である。例えば、2−フリル、2−チエニル、2−ピリミジニル、2−ベンゾチアゾリル)、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、t−ブトキシ、n−オクチルオキシ、2−メトキシエトキシ)、アリールオキシ基(好ましくは、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ、2−メチルフェノキシ、4−t−ブチルフェノキシ、3−ニトロフェノキシ、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ)、シリルオキシ基(好ましくは、炭素数3から20のシリルオキシ基、例えば、トリメチルシリルオキシ、t−ブチルジメチルシリルオキシ)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のヘテロ環オキシ基、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ、2−テトラヒドロピラニルオキシ)、アシルオキシ基(好ましくはホルミルオキシ基、炭素数2から30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルオキシ基、例えば、ホルミルオキシ、アセチルオキシ、ピバロイルオキシ、ステアロイルオキシ、ベンゾイルオキシ、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ)、カルバモイルオキシ基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のカルバモイルオキシ基、例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ、モルホリノカルボニルオキシ、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ、N−n−オクチルカルバモイルオキシ)、アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニルオキシ基、例えばメトキシカルボニルオキシ、エトキシカルボニルオキシ、t−ブトキシカルボニルオキシ、n−オクチルカルボニルオキシ)、
【0052】
アリールオキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルオキシ基、例えば、フェノキシカルボニルオキシ、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ、p−n−ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシ)、アミノ基(好ましくは、アミノ基、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルアミノ基、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアニリノ基、例えば、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、アニリノ、N−メチル−アニリノ、ジフェニルアミノ)、アシルアミノ基(好ましくは、ホルミルアミノ基、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルアミノ基、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルアミノ基、例えば、ホルミルアミノ、アセチルアミノ、ピバロイルアミノ、ラウロイルアミノ、ベンゾイルアミノ、3,4,5−トリ−n−オクチルオキシフェニルカルボニルアミノ)、アミノカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアミノカルボニルアミノ、例えば、カルバモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ、モルホリノカルボニルアミノ)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2から30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニルアミノ基、例えば、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、t−ブトキシカルボニルアミノ、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ、N−メチルーメトキシカルボニルアミノ)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基、例えば、フェノキシカルボニルアミノ、p−クロロフェノキシカルボニルアミノ、m−n−オクチルオキシフェノキシカルボニルアミノ)、スルファモイルアミノ基(好ましくは、炭素数0から30の置換もしくは無置換のスルファモイルアミノ基、例えば、スルファモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ、N−n−オクチルアミノスルホニルアミノ)、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルスルホニルアミノ、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールスルホニルアミノ、例えば、メチルスルホニルアミノ、ブチルスルホニルアミノ、フェニルスルホニルアミノ、2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ、p−メチルフェニルスルホニルアミノ)、メルカプト基、アルキルチオ基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルチオ基、例えばメチルチオ、エチルチオ、n−ヘキサデシルチオ)、
【0053】
アリールチオ基(好ましくは炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールチオ、例えば、フェニルチオ、p−クロロフェニルチオ、m−メトキシフェニルチオ)、ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数2から30の置換又は無置換のヘテロ環チオ基、例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ、1−フェニルテトラゾール−5−イルチオ)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0から30の置換もしくは無置換のスルファモイル基、例えば、N−エチルスルファモイル、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル、N,N−ジメチルスルファモイル、N−アセチルスルファモイル、N−ベンゾイルスルファモイル、N−(N’−フェニルカルバモイル)スルファモイル)、スルホ基、アルキル及びアリールスルフィニル基(好ましくは、炭素数1から30の置換又は無置換のアルキルスルフィニル基、6から30の置換又は無置換のアリールスルフィニル基、例えば、メチルスルフィニル、エチルスルフィニル、フェニルスルフィニル、p−メチルフェニルスルフィニル)、アルキル及びアリールスルホニル基(好ましくは、炭素数1から30の置換又は無置換のアルキルスルホニル基、6から30の置換又は無置換のアリールスルホニル基、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、フェニルスルホニル、p−メチルフェニルスルホニル)、アシル基(好ましくはホルミル基、炭素数2から30の置換又は無置換のアルキルカルボニル基、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールカルボニル基、例えば、アセチル、ピバロイル、2−クロロアセチル、ステアロイル、ベンゾイル、p−n−オクチルオキシフェニルカルボニル)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基、例えば、フェノキシカルボニル、o−クロロフェノキシカルボニル、m−ニトロフェノキシカルボニル、p−t−ブチルフェノキシカルボニル)、アルコキシカルボニル基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニル基、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、n−オクタデシルオキシカルボニル)、カルバモイル基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のカルバモイル、例えば、カルバモイル、N−メチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル、N−(メチルスルホニル)カルバモイル)、アリール及びヘテロ環アゾ基(好ましくは炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールアゾ基、炭素数3から30の置換もしくは無置換のヘテロ環アゾ基、例えば、フェニルアゾ、p−クロロフェニルアゾ、5−エチルチオ−1,3,4−チアジアゾール−2−イルアゾ)、
【0054】
イミド基(好ましくは、N−スクシンイミド、N−フタルイミド)、ホスフィノ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のホスフィノ基、例えば、ジメチルホスフィノ、ジフェニルホスフィノ、メチルフェノキシホスフィノ)、ホスフィニル基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のホスフィニル基、例えば、ホスフィニル、ジオクチルオキシホスフィニル、ジエトキシホスフィニル)、ホスフィニルオキシ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のホスフィニルオキシ基、例えば、ジフェノキシホスフィニルオキシ、ジオクチルオキシホスフィニルオキシ)、ホスフィニルアミノ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のホスフィニルアミノ基、例えば、ジメトキシホスフィニルアミノ、ジメチルアミノホスフィニルアミノ)、シリル基(好ましくは、炭素数3から30の置換もしくは無置換のシリル基、例えば、トリメチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、フェニルジメチルシリル)が挙げられる。
【0055】
〜Rで表される基が更に置換可能な基である場合、R〜Rで表される基は更に置換基を有してもよく、その場合の好ましい置換基はR〜Rで説明した置換基と同じ意味の基を表す。2個以上の置換基で置換されている場合には、それらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0056】
及びRはそれぞれ独立に、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルキルスルホニル基、又はアリールスルホニル基を表し、そのアルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルキルスルホニル基、及びアリールスルホニル基の好ましい範囲については、前記のR〜Rで表される置換基で説明したアルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルキルスルホニル基、及びアリールスルホニル基と同じ意味の基を表す。R及びRで表される基が更に置換可能な基である場合、R及びRで表される基は更に置換基を有してもよく、その場合の好ましい置換基はR〜Rで説明した置換基と同じ意味の基を表す。2個以上の置換基で置換されている場合には、それらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0057】
とR、RとR、RとR、RとR、又は/及びRとRとが互いに結合して5員、6員又は7員の環を形成してもよい。
【0058】
式(I)におけるRは、水素原子、R11−O−CO−、R12−CO−CO−、R13−NH−CO−、R14−SO−、R15−W−C(R16)(R17)(R18)−、R19−SONHCO−、R20−CONHCO−、R21−SONHSO−、R22−CONHSO−、又は(M)1/nOSO−を表し、R11、R12、R13、R14、R19、R20、R21、及びR22はアルキル基、アリール基、又はヘテロ環基を表し、R15は水素原子又はブロック基を表し、Wは酸素原子、イオウ原子又は>N−R18を表し、R16、R17、及びR18は水素原子又はアルキル基を表す。R11、R12、R13、R14、R19、R20、R21、及びR22で表されるアルキル基、アリール基、及びヘテロ環基は前記のR〜Rで表される置換基で説明したアルキル基、アリール基、及びヘテロ環基と同じ意味の基を表し、Mはn価のカチオンを表す。R11、R12、R13、R14、R19、R20、R21、及びR22で表される基が更に置換可能な基である場合、R11、R12、R13、R14、R19、R20、R21、及びR22で表される基は更に置換基を有してもよく、その場合の好ましい置換基はR〜Rで説明した置換基と同じ意味の基を表す。2個以上の置換基で置換されている場合には、それらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。
16、R17、及びR18がアルキル基を表す場合、R〜Rで表される置換基で説明したアルキル基と同じ意味の基を表す。R15がブロック基を表す場合のブロック基としては、後述のBLKで表されるブロック基と同じ意味の基を表す。
【0059】
以下に、式(I)で表される化合物の好ましい範囲について説明する。R〜Rは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アシルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、シアノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、スルホ基、ニトロ基、スルファモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、及びアシルオキシ基が好ましく、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アシルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、シアノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、スルホ基、ニトロ基、スルファモイル基、アルキルスルホニル基、及びアリールスルホニル基が更に好ましい。特に好ましくは、R〜Rの中で、R又はRのいずれか一方が水素原子である。
【0060】
及びRはアルキル基、アリール基、及びヘテロ環基が好ましく、アルキル基が最も好ましい。
【0061】
式(I)で表される化合物のRを水素原子にしたp−フェニレンジアミン誘導体のpH10の水中における酸化電位が5mV以下(vsSCE)であることが発色性と保存性を両立できる点で好ましい。
【0062】
は、水素原子、R11−O−CO−及びR14−SO−、R19−SO−NH−CO−及びR15−W−C(R16)(R17)(R18)が好ましく、水素原子、R11−O−CO−、R19−SO−NH−CO−がより好ましく、水素原子、又はR19−SO−NH−CO−が最も好ましい。R11はアルキル基が好ましく、米国特許第4,409,323号もしくは同4,421,845号に記載のある電子移動反応を利用して開裂反応を起こさせるタイミング基を含む基であることが好ましく、タイミング基の電子移動反応を引き起こす末端がブロックされた下記式(T−1)で表される基であることが好ましい。
式(T−1)BLK−W−(X=Y)j−C(R21)R22−**
式中、BLKはブロック基を表し、**は−O−CO−と結合する位置を表し、Wは酸素原子、イオウ原子又は>N−R23を表し、X及びYは各々メチン又は窒素原子を表し、jは0、1又は2を表し、R21、R22及びR23は各々水素原子又はR〜Rで説明した置換基と同じ意味の基を表す。ここで、X及びYが置換メチンを表すときその置換基、R21、R22及びR23の各々の任意の2つの置換基が連結し環状構造(例えばベンゼン環、ピラゾール環)を形成する場合、もしくは形成しない場合のいずれであっても良い。
【0063】
BLKで表されるブロック基としては公知のものが使用できる。すなわち、特公昭48−9968号、特開昭52−8828号、同57−82834号、米国特許第3,311,476号、及び特公昭47−44805号(米国特許第3,615,617号)等に記載されているアシル基、スルホニル基等のブロック基、特公昭55−17369号(米国特許第3,888,677号)、同55−9696号(米国特許第3,791,830号)、同55−34927号(米国特許第4,009,029号)、特開昭56−77842号(米国特許第4,307,175号)、同59−105640号、同59−105641号、及び同59−105642号等に記載されている逆マイケル反応を利用するブロック基、特公昭54−39727号、米国特許第3,674,478号、同3,932,480号、同3,993,661号、特開昭57−135944号、同57−135945号(米国特許第4,420,554号)、同57−136640号、同61−196239号、同61−196240号(米国特許第4,702,999号)、同61−185743号、同61−124941号(米国特許第4,639,408号)、及び特開平2−280140号等に記載されている分子内電子移動によりキノンメチド又はキノンメチド類似の化合物の生成を利用するブロック基、米国特許第4,358,525号、同4,330,617号、特開昭55−53330号(米国特許第4,310,612号)、同59−121328号、同59−218439号、及び同63−318555号(欧州公開特許第0295729号)等に記載されている分子内求核置換反応を利用するブロック基、特開昭57−76541号(米国特許第4,335,200号)、同57−135949号(米国特許第4,350,752号)、同57−179842号、同59−137945号、同59−140445号、同59−219741号、同59−202459号、同60−41034号(米国特許第4,618,563号)、同62−59945号(米国特許第4,888,268号)、同62−65039号(米国特許第4,772,537号)、同62−80647号、特開平3−236047号、及び同3−238445号等に記載されている、5員又は6員環の環解裂反応を利用するブロック基、特開昭59−201057号(米国特許第4,518,685号)、同61−43739号(米国特許第4,659,651号)、同61−95346号(米国特許第4,690,885号)、同61−95347号(米国特許第4,892,811号)、
【0064】
特開昭64−7035号、同4−42650号(米国特許第5,066,573号)、特開平1−245255号、同2−207249号、同2−235055号(米国特許第5,118,596号)、及び同4−186344号等に記載されている共役不飽和結合への求核剤の付加反応を利用するブロック基、特開昭59−93442号、同61−32839号、同62−163051号及び特公平5−37299号等に記載されているβ−脱離反応を利用するブロック基、特開昭61−188540号に記載されているジアリールメタン類の求核置換反応を利用したブロック基、特開昭62−187850号に記載されているロッセン転位反応を利用したブロック基、特開昭62−80646、同62−144163、及び同62−147457号等に記載されているチアゾリジン−2−チオンのN−アシル体とアミン類との反応を利用したブロック基、特開平2−296240号(米国特許第5,019,492号)、同4−177243号、同4−177244号、同4−177245号、同4−177246号、同4−177247号、同4−177248号、同4−177249号、同4−179948号、同4−184337号、同4−184338号、国際公開特許92/21064号、特開平4−330438号、
【0065】
国際公開特許93/03419号、及び特開平5−45816号等に記載されている、2個の求電子基を有して二求核剤と反応するブロック基、特開平3−236047号及び同3−238445号を挙げることができる。これらのブロック基のうち、特に好ましいものは特開平2−296240号(米国特許第5,019,492号)、同4−177243号、同4−177244号、同4−177245号、同4−177246号、同4−177247号、同4−177248号、同4−177249号、同4−179948号、同4−184337号、同4−184338号、国際公開特許92/21064号、特開平4−330438号、国際公開特許93/03419号、及び特開平5−45816号等に記載されている、2個の求電子基を有して二求核剤と反応するブロック基である。
【0066】
式(T−1)で示される基からBLKを除いたタイミング基部分の具体例として例えば以下のものが挙げられる。下記において、*はBLKと結合する位置を表し、**は−O−CO−と結合する位置をあらわす。
【0067】
【化14】

【0068】
12及びR13はアルキル基及びアリール基が好ましく、R14はアリール基が好ましい。R15はブロック基が好ましく、好ましいブロック基は前記の式(T−1)で表される基中の好ましいBLKと同じである。R16、R17、及びR18は水素原子が好ましい。
【0069】
本発明に用いる式(I)で表される化合物として、米国特許第5,242,783号、同4,426,441号、特開昭62−227141号、特開平5−257225号、同5−249602号、同6−43607号、及び同7−333780号に記載された化合物も好ましい。
【0070】
以下に本発明における一般式(I)で表される化合物の具体例を示すが、本発明はこれらの化合物に限定される訳ではない。
【0071】
【化15】

【0072】
【化16】

【0073】
【化17】

【0074】
本発明に用いられる発色現像薬の別の好ましい態様は、下記一般式(II)で表される化合物である。
【0075】
【化18】

【0076】
一般式(II)においてR11は置換基を有してもよいアリール基又はヘテロ環基であり、R12は置換基を有してもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基またはヘテロ環基である。Xは−SO−、−CO−、−COCO−、−CO−O−、−CO−N(R13)−、−COCO−O−、−COCO−N(R13)−または−SO−N(R13)−である。ここでR13は水素原子または前記R12として挙げた基より選ばれる基である。
【0077】
一般式(II)の好ましい態様の1つは、下記一般式(III)で表される化合物である。
【0078】
【化19】

【0079】
一般式(III)においてR12はアルキル基、ヘテロ環基を表し、X21、X23、及びX25は、それぞれ独立に、水素原子、またはニトロ基、シアノ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシル基、トリフルオロメチル基を表し、X22、X24は、それぞれ独立に、水素原子、またはニトロ基、シアノ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシル基、トリフルオロメチル基、ハロゲン原子、アシルオキシ基、アシルチオ基を表す。ただし、X21、X23、X25のハメットのσ値とX22、X24のハメットのσ値の和は1.5以上である。
【0080】
一般式(II)の好ましい別の態様は、下記一般式(IV)で表される化合物である。
【0081】
【化20】

【0082】
一般式(IV)におけるR11とR12は、それぞれ一般式(I)におけるものと同義である。
【0083】
本発明に用いられる発色現像薬の酸化体はカプラーと反応し、色素を形成することを特徴とする化合物である。
【0084】
以下に発色現像薬の構造について詳しく説明する。R11は置換基を有してもよいアリール基またはヘテロ環基を示す。R11のアリール基としては好ましくは炭素数6ないし14のもので、例えば、フェニルやナフチルが挙げられる。R11のヘテロ環基としては、好ましくは窒素、酸素、硫黄、セレンのうち少なくとも一つを含有する飽和または不飽和の5員環、6員環または7員環のものである。これらにベンゼン環またはヘテロ環が縮合していても良い。R11のヘテロ環の例としては、フラニル、チエニル、オキサゾリル、チアゾリル、イミダゾリル、トリアゾリル、ピロリジニル、ベンズオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ピリジル、ピリダジル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニル、キノリニル、イソキノリニル、フタラジニル、キノキサリニル、キナゾリニル、プリニル、プテリジニル、アゼピニル、ベンゾオキセピニル等が挙げられる。
【0085】
11の有する置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アシルオキシ基、アシルチオ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルキルスルホニルオキシ基、アリールスルホニルオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アミド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、ウレイド基、スルホンアミド基、スルファモイルアミノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アシルカルバモイル基、カルバモイルカルバモイル基、スルホニルカルバモイル基、スルファモイルカルバモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルコキシスルホニル基、アリールオキシスルホニル基、スルファモイル基、アシルスルファモイル基、カルバモイルスルファモイル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基、スルホ基、ホスホノ基、ヒドロキシル基、メルカプト基、イミド基、アゾ基等が挙げられる。R12は置換基を有してもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基またはヘテロ環基を表わす。
【0086】
12のアルキル基としては好ましくは炭素数1ないし16の直鎖、分岐または環状のもので、例えばメチル、エチル、ヘキシル、ドデシル、2−オクチル、t−ブチル、シクロペンチル、シクロオクチル等が挙げられる。R12のアルケニル基としては、好ましくは炭素数2ないし16の鎖状または環状のもので、例えばビニル、1−オクテニル、シクロヘキセニルが挙げられる。
【0087】
12のアルキニル基としては、好ましくは炭素数2ないし16のもので、例えば1−ブチニル、フェニルエチニル等が挙げられる。R12のアリール基及びヘテロ環基としては、R11で述べたものが挙げられる。R12の有する置換基としてはR11の置換基で述べたものが挙げられる。Xとして好ましくは−SO−、−CO−、−COCO−、−CO−N(R13)−であり、さらに好ましくは、−SO−、−CO−N(R13)−である。特にXが−CO−N(R13)−であるとき、この化合物と反応するカプラーとして2当量カプラーを用いることができ、また未処理の感光材料の長期保存によるステインの上昇も本発明において特に効果的に低く抑えることができ、好ましい。
【0088】
またR11としては好ましくは含窒素ヘテロ環基または一般式(V)で表される基であり、一般式(IV)で表される化合物については好ましくは6員環の含窒素ヘテロ環基または一般式(V)で表される基であり、一般式(II)で表される化合物については好ましくは一般式(V)で表される基である。
【0089】
【化21】

【0090】
一般式(V)において、X21、X23、X25は水素原子、またはニトロ基、シアノ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシル基、トリフルオロメチル基を表し、X22、X24は水素原子、またはニトロ基、シアノ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシル基、トリフルオロメチル基、ハロゲン原子、アシルオキシ基、アシルチオ基を表す。ただし、X21、X23、X25のハメットのσp値とX22、X24のハメットのσm値の和は1.5以上である。本発明の還元剤は層中で非拡散性のものが好ましい。
以下に一般式(II)で表される化合物の具体的例を示すが、本願はこれらの化合物に限定される訳ではない。
【0091】
【化22】

【0092】
【化23】

【0093】
【化24】

【0094】
【化25】

【0095】
【化26】

【0096】
【化27】

【0097】
【化28】

【0098】
【化29】

【0099】
【化30】

【0100】
【化31】

【0101】
【化32】

【0102】
【化33】

【0103】
【化34】

【0104】
【化35】

【0105】
【化36】

【0106】
【化37】

【0107】
【化38】

【0108】
【化39】

【0109】
【化40】

【0110】
【化41】

【0111】
【化42】

【0112】
【化43】


【0113】
本発明においては、発色現像薬は、水溶液あるいは有機溶剤に溶解した溶液、乳化分散物、あるいは固体状分散物で用いることができる。
【0114】
微粒子分散物で用いられる場合の数平均粒子サイズは、0.001μm〜5μmであることが好ましく、0.001μm〜0.5μmであることが更に好ましい。
【0115】
本発明における発色現像薬の使用量の好ましい範囲は、使用する色素前駆体1モルに対して同じモルから1000倍モルが好ましく、より好ましくは同じモルから100倍モルが好ましい。
【0116】
3)色素前駆体
本発明に用いることの出来る色素前駆体は、本発明の発色現像薬の酸化体と反応して色素を形成し得る化合物である。好ましくは、発色現像薬の酸化体とカップリングして可視部に吸収を持つ色素を形成できる化合物である。このような化合物はカラー写真系ではよく知られた化合物であり、その代表例としてピロロトリアゾール型カプラー、フェノール型カプラー、ナフトール型カプラー、ピラゾロトリアゾール型カプラー、ピラゾロン型カプラー、アシルアセトアニリド型カプラーなどが挙げられる。
【0117】
本発明において好ましいカプラーは一般式(C−1)、(C−2)、(C−3)、(M−1)、(M−2)、(M−3)、(Y−1)、(Y−2)、または(Y−3)で表される構造を有するカプラーである。
【0118】
【化44】

【0119】
式中、Xは水素原子または離脱基を表し、YおよびYは電子求引性の置換基を表し、Rはアルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表す。
【0120】
【化45】

【0121】
式中、Xは水素原子または離脱基を表し、Rはアシルアミノ基、ウレイド基またはウレタン基を表し、Rは水素原子、アルキル基またはアシルアミノ基を表し、Rは水素原子、または置換基を表す。RとRが互いに連結して環を形成してもよい。
【0122】
【化46】

【0123】
式中、Xは水素原子または離脱基を表し、Rはカルバモイル基またはスルファモイル基を表し、Rは水素原子または置換基を表す。
【0124】
【化47】

【0125】
式中、Xは水素原子または離脱基を表し、Rはアルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表し、Rは置換基を表す。
【0126】
【化48】

【0127】
式中、Xは水素原子または離脱基を表し、Rはアルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表し、R10は置換基を表す。
【0128】
【化49】

【0129】
式中、Xは水素原子または離脱基を表し、R11はアルキル基、アリール基、アシルアミノ基またはアニリノ基を表し、R10はアルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表す。
【0130】
【化50】

【0131】
式中、Xは水素原子または離脱基を表し、R13はアルキル基、アリール基、インドレニル基を表し、R14はアリール基またはヘテロ環基を表す。
【0132】
【化51】

【0133】
式中、Xは水素原子または離脱基を表し、Zは5員ないし7員の環を形成するのに必要な2価の基を表し、R15はアリール基またはヘテロ環基を表す。
【0134】
【化52】

【0135】
式中、Xは水素原子または離脱基を表し、R16、R17およびR18はそれぞれ置換基を表し、nは0ないし4の、mは0ないし5のいずれかの整数を表す。nまたはmが2以上のとき、複数のR16およびR17はそれぞれ同一の基であってもよいし、別々の基であってもよい。
【0136】
一般式(C−1)において、Xは水素原子または離脱基を表し、YおよびYは電子求引性の置換基を表し、Rはアルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。
は水素原子または離脱基で、好ましくは離脱基である。
本発明で言う離脱基とは、還元剤の酸化体とカップリングし、色素を形成する際に母核から離脱可能な基を意味する。離脱基としてはハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、イミド基、メチロール基、ヘテロ環基等が挙げられる。X1としてはカルバモイルオキシ基またはベンゾイルオキシ基がより好ましい。YおよびYは電子求引性基を表す。具体的には、シアノ基、ニトロ基、アシル基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、スルホニル基、スルホキシド基、オキシスルホニル基、スルファモイル基、ヘテロ環基、トリフルオロメチル基、ハロゲン原子が挙げられる。その中でも好ましくはシアノ基、オキシカルボニル基、スルホニル基で、より好ましくはシアノ基、オキシカルボニル基である。YとYのいずれか一方がシアノ基であることがさらに好ましく、Yがシアノ基であることが特に好ましい。Yはオキシカルボニル基であることが好ましく、かさ高い基で置換されたオキシカルボニル基(例えば2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルピペラジニルオキシカルボニル基)が特に好ましい。Rは好ましくはアルキル基またはアリール基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。アルキル基としては2級または3級のアルキル基が好ましく、より好ましくは3級のアルキル基である。アルキル基としては炭素数の和が3〜12の範囲であることが好ましく4〜8の範囲であることがより好ましい。アリール基としてはフェニル基が好ましく、置換基を有していてもよいが、炭素数の和が6〜16の範囲であることが好ましく、6〜12の範囲であることがより好ましい。一般式(C−1)のカプラーは分子量が700以下であることが好ましく、650以下であることがより好ましく、600以下であることがさらに好ましい。
【0137】
一般式(C−2)において、Xは水素原子または離脱基を表し、Rはアシルアミノ基、ウレイド基またはウレタン基を表し、Rは水素原子、アルキル基またはアシルアミノ基を表し、Rは水素原子、または置換基を表す。RとRが互いに連結して環を形成してもよい。
は水素原子もしくはXと同様の離脱基であるが、Xとして好ましいのはハロゲン原子、アリールオキシ基、アルコキシ基、アリールチオ基またはアルキルチオ基で、ハロゲン原子またはアリールオキシ基がより好ましい。Rは好ましくはアシルアミノ基またはウレイド基である。Rとしては炭素数の総和が2〜12の範囲が好ましく、より好ましくは2〜8の範囲である。Rは好ましくは炭素数1〜4のアルキル基または炭素数2〜12のアシルアミノ基であり、より好ましくは炭素数2〜4のアルキル基または炭素数2〜8のアシルアミノ基である。Rは好ましくはハロゲン原子、アルコキシ基、アシルアミノ基、アルキル基であり、より好ましくはハロゲン原子またはアシルアミノ基で、特に塩素原子が好ましい。一般式(C−2)のカプラーは分子量が500以下であることが好ましく、450以下であることがより好ましく、400以下であることがさらに好ましい。
【0138】
一般式(C−3)において、Xは水素原子もしくはXと同様の離脱基であるが、Xとして好ましいのはハロゲン原子、アリールオキシ基、アルコキシ基、アリールチオ基またはアルキルチオ基で、アルコキシ基またはアルキルチオ基がより好ましい。Rはアシル基、オキシカルボニル基、カルバモイル基またはスルファモイル基が好ましく、カルバモイル基またはスルファモイル基がより好ましい。Rとして炭素数の和が1〜12の基が好ましく、より好ましくは炭素数が2〜10である。Rは水素原子もしくは置換基であるが、置換基としては好ましくはアミド基、スルホンアミド基、ウレタン基またはウレイド基であり、アミド基またはウレタン基がより好ましい。置換位置としてはナフトール環の5位または8位が好ましく、5位がより好ましい。Rとして炭素数の和が2〜10の基が好ましく、より好ましくは炭素数が2〜6である。一般式(C−2)のカプラーは分子量が550以下であることが好ましく、500以下であることがより好ましく、450以下であることがさらに好ましい。
【0139】
一般式(M−1)においてXは水素原子もしくはXと同様の離脱基あるが、Xとして好ましいのはハロゲン原子、アリールオキシ基、アルコキシ基、アリールチオ基、アルキルチオ基またはヘテロ環基で、ハロゲン原子、アリールオキシ基、アリールチオ基またはヘテロ環基がより好ましい。ヘテロ環基としてはピラゾール基、イミダゾール基、トリアゾール基、テトラゾール基、ベンゾイミダゾール基、ベンゾトリアゾール基等のアゾール基が好ましく、ピラゾール基がより好ましい。Rはアルキル基、アリール基またはヘテロ環基で、これらの基は置換基を有していてもよい。好ましくは2級もしくは3級のアルキル基またはアリール基である。アルキル基としては炭素数が2〜14の基が好ましく、より好ましくは炭素数3〜10の基である。アリール基としては好ましくは炭素数が6〜18の基で、より好ましくは6〜14の基である。Rは好ましくはアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基またはヘテロ環であり、これらの基は置換基を有していてもよい。アルキル基としては2級または3級のアルキル基が好ましく、より好ましくは3級のアルキル基である。アルキル基としては炭素数の和が3〜12の範囲であることが好ましく4〜8の範囲であることがより好ましい。アリール基としてはフェニル基が好ましく、置換基を有していてもよいが、炭素数の和が6〜16の範囲であることが好ましく、6〜12の範囲であることがより好ましい。アルコキシ基としては炭素数1〜8のアルコキシ基が好ましく、より好ましくは炭素数1〜4のアルコキシ基である。アリールオキシ基としては炭素数6〜14のアリールオキシ基が好ましく炭素数6〜10の基がより好ましい。アルキルチオ基、アリールチオ基もそれぞれアルコキシ基、アリールオキシ基と同様の炭素数の基が好ましい。一般式(M−1)のカプラーは分子量が600以下であることが好ましく、550以下であることがより好ましく、500以下であることがさらに好ましい。
【0140】
一般式(M−2)のカプラーのX、RおよびR10で表される基はそれぞれ一般式(M−1)のカプラーのX、RおよびRで表される基と同様の基で、それぞれの基の好ましい範囲も一般式(M−1)のカプラーと同様である。
【0141】
一般式(M−3)において、Xは水素原子もしくはXと同様の離脱基あるが、Xとして好ましいのはアルキルチオ基、アリールチオ基またはヘテロ環基で、より好ましくはアリールチオ基またはヘテロ環基である。アリールチオ基としてはフェニル基が好ましく、特に2位にアルコキシ基、アミド基が置換したアリールチオ基が好ましい。アリールチオ基の炭素数の和は6〜16の範囲が好ましく、7〜12の範囲がより好ましい。ヘテロ環基としてはピラゾール基、イミダゾール基、トリアゾール基、テトラゾール基、ベンゾイミダゾール基、ベンゾトリアゾール基等のアゾール基が好ましく、ピラゾール基がより好ましい。R11としてはアルキル基、アリール基、アシルアミノ基またはアニリノ基が好ましく、アシルアミノ基またはアニリノ基がより好ましい。最も好ましいのはアニリノ基である。アルキル基としては炭素数1〜8のアルキル基が好ましく、アリール基としては炭素数6〜14のアリール基が好ましい。アシルアミノ基としては炭素数2〜14の基が好ましく2〜10の基がより好ましい。アニリノ基としては炭素数6〜16の基が好ましく6〜12の基がより好ましい。アニリノ基の置換基としてはハロゲン原子、アシルアミノ基が好ましい。一般式(M−3)のカプラーは分子量が700以下であることが好ましく、650以下であることがより好ましく、600以下であることがさらに好ましい。
【0142】
一般式(Y−1)において、Xは水素原子もしくはXと同様の離脱基あるが、Xとして好ましいのはアリールオキシ基、イミド基またはヘテロ環基である。アリールオキシ基としては電子求引性基で置換されたアリールオキシ基が好ましい。イミド基としては環状のイミド基が好ましく、ヒダントイン基、1,3−オキサゾリジン−2,5−ジオン基およびコハクイミド基が特に好ましい。イミド基の炭素数の総和は3〜15の範囲が好ましく、より好ましくは4〜11の範囲で、さらに好ましくは5〜9の範囲である。ヘテロ環基としてはピラゾール基、イミダゾール基、トリアゾール基、ベンゾイミダゾール基、ベンゾトリアゾール基が好ましく、イミダゾール基がより好ましい。アゾール基の炭素数の総和は3〜12の範囲が好ましく、より好ましくは3〜10の範囲で、さらに好ましくは3〜8の範囲である。R13は好ましくは2級もしくは3級のアルキル基、アリール基またはヘテロ環基である。アルキル基はシクロアルキル基、ビシクロアルキル基であってもよく3級アルキル基がより好ましい。1−アルキルシクロプロピル基、ビシクロアルキル基、アダマンチル基は特に好ましい。R14はアリール基もしくはヘテロ環基で、アリール基がより好ましい。そのなかでも2位にハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基またはアリールチオ基が置換したフェニル基が特に好ましい。R14の炭素数の総和は6〜18の範囲が好ましく、より好ましくは7〜16の範囲、さらに好ましくは8〜14の範囲である。一般式(Y−1)のカプラーは分子量が700以下であることが好ましく、650以下であることがより好ましく、600以下であることがさらに好ましい。
【0143】
一般式(Y−2)のカプラーのXおよびR15で表される基はそれぞれ一般式(Y−1)のカプラーのX、R14で表される基と同様の基で、それぞれの基の好ましい範囲も一般式(Y−1)のカプラーと同様である。Zは5ないし7員の環を形成するために必要な2価の基を表し、この環には置換基があってもよいし、別の環が縮環していてもよい。
【0144】
一般式(Y−2)のなかでも好ましいのは一般式(Y−3)で表されるカプラーである。
一般式(Y−3)のカプラーにおいて、Xは一般式(Y−1)のXと同義で、好ましい範囲も同じである。R16は好ましくはハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アシル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニル基、スルホンアミド基、シアノ基、スルホニル基、スルファモイル基、カルバモイル基またはアルキルチオ基で炭素数1〜4の置換基であることがより好ましい。nは好ましくは0〜3の整数で、より好ましくは0〜2、さらに好ましくは0〜1、最も好ましくは0である。R17は好ましくはR16と同様の基で、より好ましくはハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、アルコキシカルボニル基、スルファモイル基、スルホニル基である。特にNH基に対してオルト位にハロゲン原子、アルコキシ基またはアルキルチオ基であるR17が置換されていることがより好ましい。最も好ましいのはアルキルチオ基である。一般式(Y−3)のカプラーは分子量が750以下であることが好ましく、700以下であることがより好ましく、650以下であることがさらに好ましい。
以下に本発明のカプラーの具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0145】
【化53】

【0146】
【化54】

【0147】
【化55】

【0148】
【化56】

【0149】
【化57】

【0150】
【化58】

【0151】
【化59】

【0152】
【化60】

【0153】
【化61】

【0154】
【化62】

【0155】
【化63】

【0156】
【化64】

【0157】
【化65】

【0158】
【化66】

【0159】
【化67】

【0160】
【化68】

【0161】
【化69】

【0162】
【化70】

【0163】
【化71】

【0164】
【化72】

【0165】
【化73】

【0166】
【化74】

【0167】
【化75】

【0168】
【化76】

【0169】
【化77】

【0170】
【化78】

【0171】
【化79】

【0172】
【化80】

【0173】
【化81】

【0174】
【化82】

【0175】
【化83】

【0176】
上記の他に、特開2004−4439に記載の化合物No.CP101〜CP117、CP201〜CP220、およびCP301〜CP331なども本発明に用いることが出来る。
【0177】
本発明の色素前駆体は、オイル乳化物あるいは固体微粒子分散物として、例えばゼラチンやポリマーラテックスをバインダーとした塗布膜として用いることができる。このときの塗布量は、好ましくは1×10−6モル/m〜1×10−2モル/mが好ましく、さらに好ましくは1×10−5モル/m〜1×10−3モル/mで使用することである。
【0178】
本発明におけるプロテアーゼ基質を含有する層は、色素前駆体を含有する層に比べて薄層であり、3μm以下が好ましく、より好ましくは1μm以下である。
【0179】
本発明における色素前駆体を含有する層は、プロテアーゼ基質を含有する層に比べて厚く、1μm以上30μm以下が好ましく、より好ましくは3μm以上20μm以下である。
【0180】
4)発色方法
本発明において、発色現像薬は、色素前駆体を含有する層、又はプロテアーゼ基質を含有する層に含有させてもよく、あるいは支持体の色素前駆体を含有する層、又はプロテアーゼ基質を含有する層と同一面側に発色現像薬を含有する別層を設けても良い。あるいは、消化痕形成後に、発色現像薬を含有する処理液を塗布する方法を採用することもできる。
【0181】
(硬膜剤)
本発明におけるプロテアーゼ基質を含有する層がバインダーとしてゼラチンを含有し、さらにゼラチン硬膜剤を含有するのが好ましい。
硬膜剤として、写真用途でゼラチンの硬膜剤として知られている材料を用いることができる。プロテアーゼ基質含有層のゼラチン塗布量に対して項膜剤を0.2質量%〜3.0質量%添加するのが好ましく、さらに0.5質量%〜1.0質量%添加するがより好ましい。
【0182】
(細胞染色)
本発明は、細胞染色を併用することができる。細胞染色する場合、発色色素とは区別できるように色相の異なる染料を用いるのが好ましい。さらに、薄膜上の生体試料を別の色調の色素で組織染色し、消化痕と染色組織とを対比してもよい。例えば、生体試料に含まれる細胞の細胞核をヘマトキシリン又はメチルグリーンで染色すると、核の形態変化と消化痕とを光学顕微鏡下で別の色調の信号として同時に観察することができる。さらに、この組織染色法とプロテアーゼ・インヒビターを用いる方法とを組み合わせることにより、個々の細胞中に局在するプロテアーゼの存在とその種類の同定とを同時に行うこともできる。
【0183】
本発明の方法で試料に含まれるプロテアーゼ活性を測定することによって、試料を分離した生体の状況、例えば癌の転移やリウマチの進行度などを調べることができるので、本発明の方法は、疾病の診断、臨床検査、動物実験など、種々の目的に利用することができる。消化痕における消化の強さの判定には、光学顕微鏡下で目視で判定する方法、分光器により消化痕の光学濃度を測定する方法、光学顕微鏡で得られる画像をコンピューターに取り込み、画像解析の方法により消化痕における各種の数値化を行う方法などを利用することができる。
【実施例】
【0184】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0185】
実施例1
1.色素前駆体を含有する層(発色層)の作製
カプラー(CP−1)4.5g、色像安定剤(ST−1)1.3g、色像安定剤(ST−2)0.22g及び色像安定剤(ST−3)1.4gを溶媒(SOL−1)6.7g、溶媒(SOL−2)6.7gおよび溶媒(酢酸エチル)19gに溶解し、この液を1.0gのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを含む25質量%の牛骨アルカリ処理ゼラチン水溶液84mLと混合して、高速攪拌乳化機(ディゾルバー)で乳化分散し、さらに水を加えて230gの乳化分散物Aを作製した。
乳化分散物Aに牛骨アルカリ処理ゼラチン水溶液を加えて、以下の組成となるように塗布溶液を調製し、これをトリアセチルセルロース(TAC)支持体上に塗布し乾燥することで、発色層を作製した。
【0186】
(g/m
CP−1 0.27
ST−1 0.079
ST−2 0.0133
ST−3 0.085
SOL−1 0.41
SOL−2 0.41
牛骨アルカリ処理ゼラチン 2.2
【0187】
【化84】

【0188】
【化85】

【0189】
2.プロテアーゼ基質を含有する層(基質層)の作製
プロテアーゼ基質となる豚皮膚酸処理ゼラチン、硬膜剤(H−1)、現像中心となるBBI社製銀粒子EMSC−60を以下の組成となるように塗布溶液を調製し、これを上記発色層が塗設されたシートに塗布乾燥することで、基質層が設けられたプロテアーゼ検出材料を作製した。また、基質層の厚みを0.5・1.0・2.0・3.0・4.0μmとなるようにプロテアーゼ検出材料を作製した。
【0190】
<基質層0.5μm>
(g/m
豚皮膚酸処理ゼラチン 0.672
H−1 0.0162
銀微粒子 0.0012
【0191】
<基質層1.0μm>
(g/m
豚皮膚酸処理ゼラチン 1.343
H−1 0.0324
銀微粒子 0.0012
【0192】
<基質層2.0μm>
(g/m
豚皮膚酸処理ゼラチン 2.686
H−1 0.0648
銀微粒子 0.0012
【0193】
<基質層3.0μm>
(g/m
豚皮膚酸処理ゼラチン 4.029
H−1 0.0972
銀微粒子 0.0012
【0194】
<基質層4.0μm>
(g/m
豚皮膚酸処理ゼラチン 5.372
H−1 0.130
銀微粒子 0.0012
【0195】
上記プロテアーゼ検出材料にプロテアーゼであるパパインを0.5Mリン酸バッファー溶液に溶解した溶液を10μL滴下し、37℃湿度100%環境で30分および5時間インキュベートした。パパインの濃度は、1,0.5,0.25,0.13,0.06 units/mLとした。
一定時間経過した後、純水にて滴下したパパイン溶液を洗浄した。
【0196】
発色液の作製
8N水酸化カリウム0.4mL、炭酸水素カリウム26.4gからなるバッファー水溶液800mLに亜硫酸カリウム4gおよび一般式(I)の還元剤(1−12)3.2gを添加し、溶解後、全液量が1000mLとなるように水で希釈し、発色液を作製した。
【0197】
【化86】

【0198】
この発色液48mLに30質量%の過酸化水素水を1.6ml加えた液に、上記インキュベート済みのプロテアーゼ検出材料を10分間浸し現像した。プロテアーゼにより基質層が分解されている部分は白く抜け、その他の部分はシアン色に発色した。
【0199】
(比較例)
プロテアーゼ基質となる豚皮膚酸処理ゼラチン、硬膜剤(H−1を以下の組成となるように塗布溶液を調製し、これをTAC支持体上に塗布乾燥することで、プロテアーゼ検出材料を作製した。また、層の厚みを4.0・5.0・6.0・7.0・8.0μmとなるようにプロテアーゼ検出材料を作製した。
【0200】
<塗布膜4.0μm>
(g/m
豚皮膚酸処理ゼラチン 5.372
H−1 0.130
【0201】
<塗布膜5.0μm>
(g/m
豚皮膚酸処理ゼラチン 6.715
H−1 0.162
【0202】
<塗布膜6.0μm>
(g/m
豚皮膚酸処理ゼラチン 8.058
H−1 0.194
【0203】
<塗布膜7.0μm>
(g/m
豚皮膚酸処理ゼラチン 9.401
H−1 0.2268
【0204】
<塗布膜8.0μm>
(g/m
豚皮膚酸処理ゼラチン 10.744
H−1 0.2592
【0205】
上記プロテアーゼ検出材料にプロテアーゼであるパパインを0.5Mリン酸バッファー溶液に溶解した溶液を10μL滴下し、37℃湿度100%環境で30分および5時間インキュベートした。パパインの濃度は、1,0.5,0.25,0.13,0.06 units/mLとした。
一定時間経過した後、純水にて滴下したパパイン溶液を洗浄した。
【0206】
染色液として6%のトリクロロ酢酸水溶液に濃度0.8%になるようにポンソー3Rを溶解させた液を用い、上記インキュベートしたプロテアーゼ検出材料を室温で60秒間浸漬して染色した。これを10分間水に漬け、洗浄した。
【0207】
評価
<検出感度評価>
現像および染色済みサンプルの各濃度のパパイン滴下部を目視観察し、下記評価基準で判断した。
○:明瞭に色が抜け区別できる。
×:色抜けが不明瞭もしくはまったく色が抜けていない。
【0208】
<画質評価>
また、光学顕微鏡で観察する際は、一般に透過光学濃度(ビジュアル)が1.0以上なければ、明瞭なコントラストが得られない。発色部の色の濃さとして、下記評価基準で判断した。
良:発色部の透過光学濃度が1.0以上ある。
悪:発色部の透過光学濃度が1.0より低い。
【0209】
【表1】

【0210】
上記評価結果より、本発明により、プロテアーゼによる基質の分解を極めて短時間かつ高感度に検出できることがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に少なくとも色素前駆体を含有する層、及び該色素前駆体を含有する層の前記支持体より遠い側にプロテアーゼ基質を含有する層を有し、該プロテアーゼ基質を含有する層が現像中心物質を含有するプロテアーゼ検出材料。
【請求項2】
前記現像中心物質が銀コロイド又は金コロイド又はハロゲン化銀である請求項1に記載のプロテアーゼ検出材料。
【請求項3】
前記プロテアーゼ基質を含有する層の厚みが3μm以下である請求項1又は請求項2に記載のプロテアーゼ検出材料。
【請求項4】
前記プロテアーゼ基質を含有する層が硬膜剤を含有することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のプロテアーゼ検出材料。
【請求項5】
さらに発色現像薬を含有することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のプロテアーゼ検出材料。
【請求項6】
前記発色現像薬が下記一般式(I)で表される化合物であることを特徴とする請求項5に記載のプロテアーゼ検出材料:
【化1】


(式中、R、R、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又は置換基を表し、R及びRはそれぞれ独立に、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、又はスルホニル基を表し、RとR、RとR、RとR、RとR、又は/及びRとRとが互いに結合して5員、6員又は7員の環を形成してもよい。Rは、水素原子、R11−O−CO−、R12−CO−CO−、R13−NH−CO−、R14−SO−、R15−W−C(R16)(R17)(R18)−、R19−SONHCO−、R20−CONHCO−、R21−SONHSO−、R22−CONHSO−又は(M)1/nOSO−を表し、R11、R12、R13、R14、R19、R20、R21及びR22はアルキル基、アリール基、又はヘテロ環基を表し、R15は水素原子又はブロック基を表し、Wは酸素原子、イオウ原子又は>N−R18を表し、R16、R17、及びR18は水素原子又はアルキル基を表し、Mはn価のカチオンを表す。)。
【請求項7】
前記発色現像薬が、下記一般式(II)で表される化合物であることを特徴とする請求項5に記載のプロテアーゼ検出材料:
【化2】


(一般式(II)においてR11は置換基を有してもよいアリール基又はヘテロ環基であり、R12は置換基を有してもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基またはヘテロ環基である。Xは−SO−、−CO−、−COCO−、−CO−O−、−CO−N(R13)−、−COCO−O−、−COCO−N(R13)−または−SO−N(R13)−である。ここでR13は水素原子または前記R12として挙げた基より選ばれる基である。)。
【請求項8】
前記発色現像薬が、下記一般式(IV)で表される化合物であることを特徴とする請求項7に記載のプロテアーゼ検出材料:
【化3】


(一般式(IV)におけるR11とR12は、それぞれ一般式(II)におけるものと同義である。)。
【請求項9】
前記色素前駆体が下記一般式(C−1)、(C−2)、(C−3)、(M−1)、(M−2)、(M−3)、(Y−1)、(Y−2)および(Y−3)よりなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含有することを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載のプロテアーゼ検出材料:
【化4】


(式中、Xは水素原子または離脱基を表し、YおよびYは電子求引性の置換基を表し、Rはアルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表す。);
【化5】


(式中、Xは水素原子または離脱基を表し、Rはアシルアミノ基、ウレイド基またはウレタン基を表し、Rは水素原子、アルキル基またはアシルアミノ基を表し、Rは水素原子、または置換基を表す。RとRが互いに連結して環を形成してもよい。);
【化6】


(式中、Xは水素原子または離脱基を表し、Rはカルバモイル基またはスルファモイル基を表し、Rは水素原子または置換基を表す。);
【化7】


(式中、Xは水素原子または離脱基を表し、Rはアルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表し、Rは置換基を表す。);
【化8】


(式中、Xは水素原子または離脱基を表し、Rはアルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表し、R10は置換基を表す。);
【化9】


(式中、Xは水素原子または離脱基を表し、R11はアルキル基、アリール基、アシルアミノ基またはアニリノ基を表し、R12はアルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表す。);
【化10】


(式中、Xは水素原子または離脱基を表し、R13はアルキル基、アリール基、又はインドレニル基を表し、R14はアリール基またはヘテロ環基を表す。);
【化11】


(式中、Xは水素原子または離脱基を表し、Zは5〜7員の環を形成するのに必要な2価の基を表し、R15はアリール基またはヘテロ環基を表す。);
【化12】


(式中、Xは水素原子または離脱基を表し、R16、R17およびR18はそれぞれ置換基を表し、nは0〜4の、mは0〜5のいずれかの整数を表す。nまたはmが2以上のとき、複数のR16およびR17はそれぞれ同一の基であってもよいし、異なる基であってもよい。)。
【請求項10】
支持体上に少なくとも色素前駆体を含有する層、及び該色素前駆体を含有する層の前記支持体より遠い側にプロテアーゼ基質を含有する層を有し、該プロテアーゼ基質を含有する層が現像中心物質を含有するプロテアーゼ検出材料を用いたプロテアーゼ測定方法であって、(1)被検査生体試料をプロテアーゼ検出材料の表面に接触させる工程、(2)該(1)工程を経た前記プロテアーゼ検出材料の表面に現像薬を作用させ、プロテアーゼ消化痕を検出する工程を有するプロテアーゼ測定方法。
【請求項11】
支持体上に少なくとも色素前駆体を含有する層、及び該色素前駆体を含有する層の前記支持体より遠い側にプロテアーゼ基質を含有する層を有し、該プロテアーゼ基質を含有する層が現像中心物質を含有するプロテアーゼ検出材料と、支持体上に少なくとも色素前駆体を含有する層、及び該色素前駆体を含有する層の前記支持体より遠い側に検出対象物のプロテアーゼインヒビターを含有する層を有し、該プロテアーゼインヒビターを含有する層が現像中心物質を含有する参照用プロテアーゼ検出材料とを有するプロテアーゼ検出材料セット。
【請求項12】
請求項11に記載のプロテアーゼ検出材料セットを用いたプロテアーゼ測定方法であって、(1)被検査生体試料の実質的に連続した2以上の切片の内の1切片をプロテアーゼ検出材料の表面に接触させる工程、(2)他方の切片を参照用プロテアーゼ検出材料の表面に接触させる工程;(3)該(1)及び(2)工程を経た前記プロテアーゼ検出材料及び参照用プロテアーゼ検出材料の表面に発色現像薬を作用させ、プロテアーゼ消化痕を発色パターンにより検出する工程、(4)前記プロテアーゼ検出材料の発色パターンと前記参照用プロテアーゼ検出材料の発色パターンとを対比する工程を有するプロテアーゼ測定方法。

【公開番号】特開2009−240284(P2009−240284A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−94272(P2008−94272)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】