説明

プロテアーゼ耐性ポリペプチドを選択するための方法

本発明は、ペプチドまたはポリペプチドを、血清において見いだされるプロテアーゼなどのプロテアーゼによる分解に対して耐性であるペプチド及びポリペプチドのライブラリーまたはレパートリー(例えば、表示系)から選択し、単離し、および/または回収するための方法に関する。一般的に、この方法は、ペプチドまたはポリペプチドのライブラリーまたはレパートリーを提供すること、ライブラリーまたはレパートリーをプロテアーゼとともにプロテアーゼの活性に適した条件下でインキュベートすること、ならびにプロテアーゼによる分解に対して耐性であり、所望の生物学的活性を有するペプチドまたはポリペプチドを選択し、単離し、および/または回収することを含む。選択されたペプチドおよびポリペプチドは、例えばヒトにおける疾患を治療するための治療薬としての有用性がある。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
ポリペプチドおよびペプチドは、次第に工業用途および医療用、治療用および診断用作用物質としての使用をはじめとする様々な用途において重要な作用物質になってきた。しかしながら、多くの治療用ペプチド、ポリペプチドおよびタンパク質は、天然に存在するプロテアーゼによるin vivo分解を特に受けやすい。さらに、炎症状態(例えばCOPD)および癌などのある生理学的状態において、組織、器官または動物中(例えば、肺中、腫瘍中又は腫瘍に隣接して)に存在するプロテアーゼの量は増大し得る。プロテアーゼのこの増大は、内因性タンパク質の、ならびに疾患を治療するために投与される治療用ペプチド、ポリペプチドおよびタンパク質の分解および不活性化を加速し得る。したがって、in vivo使用(例えば、ヒトなどの哺乳動物において、疾患を治療し、診断し、または予防するに際しての使用)への可能性を有するいくつかの作用物質は、それらがプロテアーゼにより迅速に分解され、不活性化されるため、限定された効力を有するに過ぎなかった。
【0002】
プロテアーゼ耐性ポリペプチドは、いくつかの利点を提供する。例えば、プロテアーゼ耐性ポリペプチドは、プロテアーゼ感受性作用物質より長くin vivo活性のままであり、したがって、生物学的作用を生じるのに十分な時間の間、依然として機能的である。プロテアーゼ分解に対して耐性であり、望ましい生物学的活性も有するポリペプチドを選択する改善された方法が必要である。
【0003】
グルカゴン様ペプチド(GLP)−1は、強力なグルコース依存性インスリン分泌促進作用およびグルカゴン分泌抑制作用、膵臓β細胞に対する栄養作用、ならびに胃腸管分泌および運動に対する阻害作用を有するインクレチンホルモンであり、これらの作用は組み合わさって、血漿グルコースを低下させ、血糖値変動を減少させる。GLP−1はGLP−1受容体のアゴニストである。さらに、満腹感を高めることができることにより、GLP−1は食物摂取を減らし、これによって体重増加を制限し、体重減少をもたらす場合さえもある。まとめると、これらの作用により、GLP−1に対して、特にその血糖降下作用のグルコース依存性により重度の低血糖症のリスクを最小限に抑えられるはずなので、抗糖尿病薬に非常に望ましいと考えられる独自の特性が付与される。しかしながら、その薬物動態/薬力学プロファイルは、天然のGLP−1が治療上有用でないようものである。したがって、GLP−1は連続投与される場合に最も有効であるので、単回皮下注射は短時間型効果を有する。GLP−1はin vivoで酵素分解を非常に受けやすく、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPP−IV)による切断は、迅速に起こり、非インスリン分泌促進代謝産物を生じるので、おそらくは最も重要である。GLP−1の治療可能性を、その代謝的安定性および薬物動態/薬力学プロファイルに影響を及ぼす因子に対する知識に基づいて利用する方法は、したがって、鋭意研究の焦点になっている。
【0004】
ペプチダーゼを阻害すること、または依然として生物学的活性を維持しつつ、その分解を遅らせるような方法でGLP−1を修飾することを試みる多大な研究がなされてきた。WO 05/027978は、長期型作用を有するGLP−1誘導体を記載している(そして、本発明において使用できるGLP−1誘導体および類似体の例として参照することによって本明細書で援用される)。WO 02/46227には、GLP−1または類似体に融合したポリペプチド(例えば、アルブミン)を含む異種融合タンパク質が開示されている(これらの類似体の開示は、本発明において使用できるGLP−1類似体の例として参照することにより本明細書で援用される)。WO 05/003296、WO 03/060071、WO 03/059934には、ホルモンの半減期を増大させるためにGLP−1がアルブミンと融合しているアミノ融合タンパク質が開示されている。
【0005】
しかしながら、これらの試みにもかかわらず、長期作用型GLP−1はまだ産生されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、プロテアーゼ耐性ペプチドまたはポリペプチドを選択するための方法、および標的リガンドと高い親和性で結合するペプチドまたはポリペプチドを選択するための方法に関する。本発明はさらに、プロテアーゼ耐性ペプチドまたはポリペプチドのレパートリーの製造方法に関する。
【0007】
一態様では、本発明は、プロテアーゼ耐性ペプチドまたはポリペプチドを選択するための方法である。この方法は、ペプチドまたはポリペプチドのレパートリーを提供すること、レパートリーおよびプロテアーゼをプロテアーゼの活性に適した条件下でインキュベートすること、そして、望ましい生物学的活性を有するペプチドまたはポリペプチドを回収し、それによってプロテアーゼ耐性ペプチドまたはポリペプチドが選択される
ことを含む。
【0008】
一実施形態では、ペプチドまたはポリペプチドのレパートリーは表示系(display system)で発現され、このプロテアーゼは、表示系または発現宿主で発現されるプロテアーゼである。例えば、一実施形態では、ペプチドまたはポリペプチドのレパートリーは、細菌細胞において発現され、プロテアーゼは細菌に対して内因性のプロテアーゼである。適切には、レパートリー発現の条件は、細菌プロテアーゼなどの内因性プロテアーゼの発現および活性を最大にする。プロテアーゼ発現および活性は、例えば、細菌におけるレパートリーのタンパク質発現の時間および/温度を増加させることによって最大になる。例えばインキュベーション時間は1時間から一晩(例えば12時間から24時間まで)またはそれ以上(例えば24時間から48時間まで、またはそれ以上)であってよい。一実施形態では、温度は30〜37℃またはそれ以上であってよい。加えて、プロテアーゼ発現は、様々な細菌株の使用および/または培地成分の変更によって増強することができる。細菌培養物の密度も変わり得る。別の実施形態では、表示系を、プロテアーゼ発現を増強するための遺伝子組換えによって変更することができる。
【0009】
一実施形態では、レパートリーは、バクテリオファージ表示系として提供され、この場合、バクテリオファージレパートリーは、大腸菌(E.Coli)TB1細胞、TC1細胞または大腸菌HB2151株由来の細胞などの大腸菌細胞において発現および/または増幅される。したがって、この実施形態では、細菌プロテアーゼは、大腸菌細胞において内因的に発現されたプロテアーゼである。一実施形態では、細菌プロテアーゼは、細菌ペリプラズムにおいて発現されるプロテアーゼであってよい。一実施形態では、プロテアーゼ発現は、ファージ産生、分泌の間であってよいし、または細菌上清中であってもよい。
【0010】
したがって、本発明の一実施形態では、バクテリオファージライブラリーを選択する工程;前記ライブラリーを細菌において細菌プロテアーゼの活性に適した条件下で発現する工程;前記発現されたライブラリーを、標的リガンドとともにインキュベートし、これによってプロテアーゼ耐性標的結合ペプチドが選択される工程を含む方法が提供される。場合によって、標的リガンドとの前記インキュベーションは、さらなるプロテアーゼの存在を含む。
【0011】
別の実施形態では、表示系はピキア(Pichia)などの酵母表示系であり、プロテアーゼは酵母細胞において発現される内因性プロテアーゼである。
【0012】
一実施形態では、本発明の方法は、レパートリーとさらなるプロテアーゼとを前記さらなるプロテアーゼの活性に適した条件下で組み合わせること、そして所望の生物学的活性を有するペプチドまたはポリペプチドを回収し、これにより,プロテアーゼ耐性ペプチドまたはポリペプチドを選択することをさらに含む。一実施形態では、プロテアーゼを溶液中でレパートリーと組み合わせる(すなわち、プロテアーゼは支持体上に固定されていない)。適切には、さらなるプロテアーゼは、血清、喀痰、粘液(例えば、胃粘液、鼻粘液、気管支粘液)、気管支肺胞洗浄、肺ホモジネート、肺抽出物、膵臓抽出物、胃液、唾液又は涙の1つ以上において見いだされる。
【0013】
別の態様では、プロテアーゼ耐性ペプチドまたはポリペプチドを選択するために方法が提供される。この方法は、ペプチドまたはポリペプチドのレパートリーを提供すること、このレパートリーおよび第1のプロテアーゼをプロテアーゼの活性に適した条件下でインキュベートすることを含み、このレパートリーを第2のプロテアーゼとプロテアーゼの活性に適した条件下で組み合わせること、そして所望の生物学的活性を有するペプチドまたはポリペプチドを回収し、これによりプロテアーゼ耐性ペプチドまたはポリペプチドを選択することをさらに含む。この態様の一実施形態では、第1のプロテアーゼはレパートリー表示系に対して内因性のプロテアーゼであり、第2のプロテアーゼは、血清、喀痰、粘液(例えば、胃粘液、鼻粘液、気管支粘液)、気管支肺胞洗浄、肺ホモジネート、肺抽出物、膵臓抽出物、胃液、唾液または涙において見いだされるプロテアーゼから選択される。しかしながら、「第1」および「第2」プロテアーゼ工程は任意の順序で実施できると理解される。加えて、任意のこのような工程を複数回繰り返すことは本発明の方法に包含され得ると理解される。
【0014】
本発明の任意の態様の一実施形態では、前記さらなるプロテアーゼすなわち第2のプロテアーゼ活性の前記条件は、(i)約10μg/ml〜約3mg/mlプロテアーゼ、(ii)約20℃〜約40℃および(iii)少なくとも約30分間である。一実施形態では、これらのストリンジェントな条件により、高親和性および/または改善されたTmを有するペプチドまたはポリペプチドの選択が可能になる。このような場合、ペプチドおよびポリペプチドは単量体形態で高親和性を表示し得る。
【0015】
一実施形態では、任意の態様による本発明の方法において、プロテアーゼの活性に適した前記条件について、約10〜約100μg/mlのプロテアーゼを使用する。プロテアーゼの活性に適した前記条件に関して、約30℃〜約37℃の温度(例えば、約37℃またはほぼ室温)を用いることができる。一実施形態では、レパートリーおよびプロテアーゼ少なくとも約1時間(例えば、約1時間、約2時間、一晩、例えば18〜24時間)組み合わせることができる。本発明の方法において、レパートリーおよびプロテアーゼを、一実施形態では、少なくとも約30分間インキュベートする。一実施形態では、プロテアーゼを約100μg/mlで使用し、合したレパートリーおよびプロテアーゼを約37℃で少なくとも約1時間インキュベートする。
【0016】
本発明の任意の態様の一実施形態では、プロテアーゼ、例えばトリプシンのポリペプチドまたは可変ドメインに対する比(モル/モルに基づいて)は、8,000〜80,000 プロテアーゼ:可変ドメインである。一実施形態では、プロテアーゼ(例えば、トリプシン)のポリペプチドまたは可変ドメインに対する比(重量/重量、例えばマイクログラム/マイクログラム基準)は、16,000〜160,000 プロテアーゼ:可変ドメインである。一実施形態では、プロテアーゼを少なくとも100または1000μg/mlプロテアーゼの濃度で使用する。
【0017】
以下のうちの1つ以上などの任意の所望のプロテアーゼを本発明の任意の態様による方法において使用できる:セリンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、アスパルテートプロテアーゼ、チオールプロテアーゼ、マトリックスメタロプロテアーゼ、カルボキシペプチダーゼ(例えば、カルボキシペプチダーゼA、カルボキシペプチダーゼB)、トリプシン、キモトリプシン、ペプシン、パパイン、エラスターゼ、ロイコザイム、パンクレアチン、トロンビン、プラスミン、カテプシン(例えば、カテプシンG)、プロテイナーゼ(例えば、プロテイナーゼ1、プロテイナーゼ2、プロテイナーゼ3)、サーモリシン、キモシン、エンテロペプチダーゼ、カスパーゼ(例えば、カスパーゼ1、カスパーゼ2、カスパーゼ4、カスパーゼ5、カスパーゼ9、カスパーゼ12、カスパーゼ13)、カルパイン、フィカイン、クロストリパイン、アクチニダイン、ブロメライン、セパラーゼおよびジペプチジルペプチダーゼIV(DPP−IV)。特定の実施形態では、プロテアーゼはトリプシン、エラスターゼまたはロイコザイムである。プロテアーゼは、生物学的抽出物、生物学的ホモジネートまたは生物学的調製物、例えばin vitroの全細胞によっても提供され得る。所望により、この方法は、プロテアーゼ阻害剤をレパートリーとプロテアーゼとの組み合わせにインキュベーションが完了した後に添加することをさらに含む。
【0018】
本発明の方法のいずれかの一実施形態では、プロテアーゼは、レパートリーと組み合わせた場合に溶液中にある。
【0019】
本発明の任意の態様の一実施形態では、所望の生物学的活性は、例えば標的リガンドまたは一般的リガンド(generic ligand)などのリガンドとの結合活性である。
【0020】
いくつかの実施形態では、所望の生物学的活性を有するペプチドまたはポリペプチドを結合活性に基づいて回収する。例えば、ペプチドまたはポリペプチドは、プロテインA、プロテインGまたはプロテインLなどの一般的リガンドを結合することに基づいて回収することができる。結合活性は、標的リガンドに対する特異的結合でもあり得る。標的リガンドの例としては、ApoE、Apo−SAA、BDNF、カルジオトロフィン−1、CEA、CD40、CD40リガンド、CD56、CD38、CD138、EGF、EGF受容体、ENA−78、エオタキシン、エオタキシン−2、エキソダス−2、FAPα、FGF−酸性、FGF−塩基性、線維芽細胞増殖因子−10、FLT3リガンド、フラクタルカイン(CX3C)、GDNF、G−CSF、GM−CSF、GF−β1、ヒト血清アルブミン、インスリン、IFN−γ、IGF−I、IGF−II、IL−1α、IL−1β、IL−1受容体、IL−1受容体1型、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8(72a.a.)、IL−8(77a.a.)、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、IL−13、IL−15、IL−16、IL−17、IL−18(IGIF)、インヒビンα、インヒビンβ、IP−10、ケラチノサイト増殖因子−2(KGF−2)、KGF、レプチン、LIF、リンホタクチン、ミュラー管抑制物質、単球コロニー阻害因子、単球誘引タンパク質、M−CSF、MDC(67a.a.)、MDC(69a.a.)、MCP−1(MCAF)、MCP−2、MCP−3、MCP−4、MDC(67a.a.)、MDC(69a.a.)、MIG、MIP−1α、MIP−1β、MIP−3α、MIP−3β、MIP−4、骨髄前駆細胞阻害因子−1(MPIF−1)、NAP−2、ニュルツリン、神経成長因子、β−NGF、NT−3、NT−4、オンコスタチンM、PDGF−AA、PDGF−AB、PDGF−BB、PF−4、RANTES、SDF1α、SDF1β、SCF、SCGF、幹細胞因子(SCF)、TARC、TGF−α、TGF−β、TGF−β2、TGF−β3、腫瘍壊死因子(TNF)、TNF−α、TNF−β、TNF受容体I、TNF受容体II、TNIL−1、TPO、VEGF、VEGFA、VEGFB、VEGFC、VEGFD、VEGF受容体1、VEGF受容体2、VEGF受容体3、GCP−2、GRO/MGSA、GRO−β、GRO−γ、HCC1、1−309、HER1、HER2、HER3、HER4、血清アルブミン、vWF、アミロイドタンパク質(例えば、アミロイドアルファ)、MMP12、PDK1、IgE、IL−13Rα1、IL−13Ra2、IL−15、IL−15R、IL−16、IL−17R、IL−17、IL−18、IL−18R、IL−23IL−23R、IL−25、CD2、CD4、CD11a、CD23、CD25、CD27、CD28、CD30、CD40、CD40L、CD56、CD138、ALK5、EGFR、FcER1、TGFb、CCL2、CCL18、CEA、CR8、CTGF、CXCL12(SDF−1)、キマーゼ、FGF、フリン(Furin)、エンドセリン−1、エオタキシン類(例えば、エオタキシン、エオタキシン−2、エオタキシン−3)、GM−CSF、ICAM−1、ICOS、IgE、IFNa、I−309、インテグリン、L−セレクチン、MIF、MIP4、MDC、MCP−1、MMP、好中球エラスターゼ、オステオポンチン、OX−40、PARC、PD−1、RANTES、SCF、SDF−1、siglec8、TARC、TGFb、トロンビン、Tim−1、TNF、TRANCE、トリプターゼ、VEGF、VLA−4、VCAM、α4β7、CCR2、CCR3、CCR4、CCR5、CCR7、CCR8、アルファvベータ6、アルファvベータ8、cMET、CD8、vWF、アミロイドタンパク質(例えば、アミロイドアルファ)、MMP12、PDK1、およびIgEが挙げられる。別の実施形態では、標的リガンドはGLP−1受容体、またはその一部である。例えば、本発明の任意の態様による方法において、リガンドは、GLP−1受容体細胞外ドメインであってよい。
【0021】
本発明の任意の態様の特定の実施形態では、ペプチドまたはポリペプチドはパニング(panning)によって回収される。
【0022】
本発明の方法のいずれかの一実施形態では、プロテアーゼの存在下で、レパートリーの1つ以上の成員がリガンドに対する結合に基づいて選択される場合、レパートリーをリガンド(標的リガンド;一般的リガンド)に暴露する。
【0023】
本発明の任意の方法のいくつかの実施形態では、レパートリーは表示系を含む。例えば、表示系は、バクテリオファージ表示(display)、リボソーム表示、乳濁液コンパートメント化および表示、酵母表示、ピューロマイシン表示、細菌表示、プラスミド上の表示、または共有表示であり得る。好ましい表示系は、核酸のコード機能とこの核酸によりコードされるペプチドまたはポリペプチドの機能的特徴とを連結する。特定の実施形態では、表示系は複製可能な遺伝子パッケージを含む。
【0024】
本発明の任意の方法のいくつかの実施形態では、表示系はバクテリオファージ表示を含む。例えば、バクテリオファージは、fd、M13、ラムダ、MS2またはT7であり得る。特定の実施形態では、バクテリオファージ表示系は多価である。いくつかの実施形態では、ペプチドまたはポリペプチドはpIII融合タンパク質として表示される。
【0025】
本発明の任意の方法の一実施形態では、ペプチドまたはポリペプチドのレパートリー(例えば、可変ドメイン)は、バクテリオファージ上で、例えば10〜1013、例えば10〜1012複製単位(感染性ビリオン)のファージライブラリーサイズで提示される。一実施形態では、レパートリーは、第2の、すなわちさらなるプロテアーゼとともにインキュベートされる場合、バクテリオファージ上で表示される。
【0026】
本発明の任意の態様の他の実施形態では、当該方法は、所望の生物学的活性を有するペプチドまたはポリペプチドをコードする核酸を増幅することをさらに含む。特定の実施形態では、核酸は、ファージ増幅、細胞増殖またはポリメラーゼ連鎖反応によって増幅される。
【0027】
本発明の任意の態様の一実施形態では、ペプチドまたはポリペプチドのレパートリーは、大腸菌などの細菌細胞において増幅され、発現されるバクテリオファージ上で表示される。この実施形態では、ペプチドまたはポリペプチドのレパートリーは細菌細胞において発現される場合、細菌プロテアーゼに暴露される。
【0028】
いくつかの実施形態では、レパートリーは、免疫グロブリン単一可変ドメインのレパートリーである。特定の実施形態では、免疫グロブリン単一可変ドメインは重鎖可変ドメインである。さらに特定の実施形態では、重鎖可変ドメインはヒト重鎖可変ドメインである。他の実施形態では、免疫グロブリン単一可変ドメインは軽鎖可変ドメインである。特定の実施形態では、軽鎖可変ドメインはヒト軽鎖可変ドメインである。
【0029】
別の態様では、本発明は、ペプチドまたはポリペプチドのレパートリーから、高い親和性で標的リガンドと結合するペプチドまたはポリペプチドを選択するための方法である。この方法は、ペプチドまたはポリペプチドのレパートリーを提供すること、このレパートリーとプロテアーゼをプロテアーゼの活性に適した条件下で組み合わせること、そして標的リガンドと結合するペプチドまたはポリペプチドを回収することを含む。
【0030】
所望の生物学的活性が結合活性である、本発明の前記方法によると、結合するリガンド(標的リガンド;一般的リガンド)はプロテアーゼと同じではない。
【0031】
別の態様では、本発明は、プロテアーゼ耐性ペプチドまたはポリペプチドのレパートリーの製造方法である。この方法は、ペプチドまたはポリペプチドのレパートリーを提供すること、ペプチドまたはポリペプチドのレパートリーとプロテアーゼとをプロテアーゼの活性に適した条件下で組み合わせること、そして所望の生物学的活性を有する複数のペプチドまたはポリペプチドを回収することを含み、これによりプロテアーゼ耐性ペプチドまたはポリペプチドのレパートリーが製造される。
【0032】
いくつかの実施形態では、所望の生物学的活性を有する複数のペプチドまたはポリペプチドを結合活性に基づいて回収する。例えば、複数のペプチドまたはポリペプチドは、プロテインA、プロテインGまたはプロテインLなどの一般的リガンドを結合することに基づいて回収することができる。
【0033】
別の態様では、本発明は、標的リガンドを結合する免疫グロブリン単一可変ドメイン(dAb)を含むプロテアーゼ耐性ポリペプチドをレパートリーから選択するための方法である。一実施形態では、この方法は、免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチドのレパートリーを含むファージ表示系を提供すること、ファージ表示系と、エラスターゼ、ロイコザイムおよびトリプシンからなる群から選択されるプロテアーゼとをプロテアーゼの活性に適した条件下で組み合わせること、そして標的リガンドを結合する免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチドを表示するファージを回収することを含む。適切には、この態様の一実施形態では、当該方法は、内因性プロテアーゼの発現に適した条件下でのインキュベーションをさらに含む。例えば、内因性プロテアーゼは、表示系によって発現されるプロテアーゼである。
【0034】
いくつかの実施形態では、プロテアーゼを100μg/mlで使用し、合したファージ表示系とプロテアーゼとを約37℃で一晩インキュベートする。
【0035】
いくつかの実施形態では、標的リガンドを結合する免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチドを表示するファージを、前記標的に対する結合によって回収する。他の実施形態では、標的リガンドを結合する免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチドを表示するファージをパニングによって回収する。
【0036】
本発明はまた、本明細書中に記載される方法によって選択可能であるかまたは選択される単離されたプロテアーゼ耐性ペプチドもしくはポリペプチドに関する。特定の実施形態では、本発明は、本明細書中に記載するようなGLP−1ペプチドなどのGLP−1受容体アゴニストに関する。適切なGLP−1ペプチドおよびGLP−1ペプチド誘導体を実施例および図1に記載する。他の適切なペプチドとしては、エキセンディンならびにその相同体および誘導体などのGLP−1相同体または誘導体が挙げられる。さらなる適切な誘導体としては、GLP−1のジペプチジルペプチダーゼIV耐性誘導体が挙げられる。1つの好ましいペプチドは、アミノ酸配列DMS7148(図1における配列6)によって同定される。別の好ましいペプチドは、アミノ酸配列DMS7161(図1における配列11)によって同定される。適切には、これらのGLP−1ペプチドをAlbudAb配列と融合させる。別の実施形態では、本発明は、本明細書中に記載される方法によって選択可能であるかまたは選択される単離されたプロテアーゼ(例えば、トリプシン、エラスターゼ、ロイコザイム)耐性免疫グロブリン単一可変ドメイン(例えば、ヒト抗体重鎖可変ドメイン、ヒト抗体軽鎖可変ドメイン)に関する。
【0037】
有利には、本発明によるペプチドまたはポリペプチドは、発現中にタンパク質分解がなく低コスト宿主における発現に関して改善された特性を表示し得、かくしてこれらは工業的規模の製造にさらに好適となる。
【0038】
本発明はまた、本明細書中に記載される方法によって選択可能であるかまたは選択されるプロテアーゼ耐性ペプチドまたはポリペプチド(例えば、トリプシン、エラスターゼ、またはロイコザイム耐性免疫グロブリン単一可変ドメイン)をコードする単離された核酸または組換え核酸、ならびに当該核酸を含むベクター(例えば、発現ベクター)および宿主細胞に関する。
【0039】
本発明はまた、本明細書中に記載される方法によって選択可能であるかまたは選択されるプロテアーゼ耐性ペプチドまたはポリペプチド(例えば、トリプシン、エラスターゼ−、またはロイコザイム耐性免疫グロブリン単一可変ドメイン)を作製する方法であって、発現に適した条件下でプロテアーゼ耐性ペプチドまたはポリペプチドをコードする組換え核酸を含む宿主細胞を維持することを含み、これによりプロテアーゼ耐性ペプチドまたはポリペプチドが製造される方法に関する。
【0040】
したがって、本発明の任意の態様の文脈で、プロテアーゼは、表示系に対して内因性のプロテアーゼ、例えば細菌プロテアーゼであってもよいし、または血清、喀痰、粘液(例えば、胃粘液、鼻粘液、気管支粘液)、気管支肺胞洗浄、肺ホモジネート、肺抽出物、膵臓抽出物、胃液、唾液または涙の1つ以上において見いだされる。一実施形態では、プロテアーゼは、眼および/または涙中に見出されるものである。本明細書中で議論されるように、選択されたプロテアーゼ耐性ペプチドまたはポリペプチドは、ヒトなどのほ乳類における疾患または症状の治療、予防および診断において有用性を有する。特に、ペプチドおよびポリペプチドは、ヒトなどの患者に投与された場合、プロテアーゼに遭遇する可能性がある薬剤の基礎として有用性を有する。
【0041】
例えば、胃腸管に投与(例えば、経口、舌下、直腸投与)されると、この場合、ペプチドまたはポリペプチドは、上部胃腸管、下部胃腸管、口、胃、小腸および大腸の1つ以上においてプロテアーゼにさらされる。したがって、一実施形態は、患者における疾患または症状を治療および/または予防するために患者の胃腸管に経口、舌下または直腸投与されるプロテアーゼ耐性ペプチドまたはポリペプチドを提供する。
【0042】
例えば、一実施形態では、本発明は、関節炎(例えば、関節リウマチ)、IBD、乾癬またはクローン病などのTNFアルファ介在性症状または疾患の治療および/または予防のために、本発明の方法によって選択されるかまたは選択可能であるTNFアルファアンタゴニストペプチドまたはポリペプチドの経口投与に関する。この実施形態では、アンタゴニストは抗TNFR1免疫グロブリン単一可変ドメイン(dAb)であってよい。別の例では、ペプチドまたはポリペプチドは、肺組織(例えば、肺または気道)に(例えば、吸入によるかまたは鼻内)投与された場合に、プロテアーゼと遭遇する可能性がある。したがって、一実施形態は、患者における疾患または症状を治療および/または予防するために、患者の肺組織に吸入によるかまたは鼻内投与されるプロテアーゼ耐性ペプチドまたはポリペプチドを提供する。このような症状は、ぜんそく(例えば、アレルギー性ぜんそく)、COPD、インフルエンザ若しくは他の肺疾患またはWO 2006038027(参照により本明細書で援用される)に開示される症状であってよい。
【0043】
別の例では、ペプチドまたはポリペプチドは、例えば皮下注射などの注射によるなど、非経口投与された場合に血清中でプロテアーゼに遭遇する可能性がある。したがって、一実施形態は、注射により投与され、患者における疾患または症状を治療および/または予防するためのプロテアーゼ耐性ペプチドまたはポリペプチドを提供する。このような症状は、糖尿病であってよい。一実施形態では、本発明は、糖尿病または糖尿病関連障害の治療および/または予防のために本発明の方法によって選択されるかまたは選択可能である、エキセンディンまたはその誘導体などのGLP−1またはその相同体および誘導体などのグルカゴン様ペプチド1受容体アゴニストの非経口投与を提供する。
【0044】
本発明のペプチドおよびポリペプチドは、改善された融点または比較的高い融点(Tm)を提示し、向上した安定性をもたらし得る。高親和性標的結合もペプチドおよびポリペプチドの特性であり得る。これらの特性は、プロテアーゼ耐性と併せて、ペプチドおよびポリペプチドを、ヒトなどのほ乳類において薬剤として使用しやすくし、この場合、プロテアーゼは例えば胃腸管、肺組織または非経口投与に関して遭遇する可能性がある。
【0045】
別の例では、ペプチドまたはポリペプチド(例えば、可変ドメインまたはアンタゴニスト)は、患者の眼に(例えば、眼内注射によるかまたは点眼液として)投与された場合、プロテアーゼと遭遇する可能性がある。したがって、一実施形態は、患者における疾患または症状(例えば眼の疾患または症状)を治療および/または予防するための、プロテアーゼ耐性ペプチド、ポリペプチド、免疫グロブリン単一可変ドメイン、アゴニストまたはアンタゴニストの患者(例えば、ヒト)に対する眼投与を提供する。投与は、眼へ、点眼液の形態で、または眼中への注射により、例えば硝子体液中に局所投与することであり得る。
【0046】
一実施形態では、本発明は、肺への送達用肺処方物を提供し、この場合、処方物は、5ミクロン未満、例えば4.5、4、3.5または3ミクロン未満の粒子サイズ範囲を有する本発明のアゴニスト、アンタゴニスト、ペプチド、ポリペプチドまたは可変ドメインを含む(例えば、Britton−Robinson緩衝液中、例えばpH6.5〜8.0、例えばpH7〜7.5、例えばpH7またはpH7.5の場合)。
【0047】
一実施形態では、本発明の処方物および組成物は、6.5〜8.0、例えば7〜7.5,例えば7、例えば7.5のpHで提供される。
【0048】
本発明の任意の態様のペプチドまたはポリペプチド(例えば、可変ドメイン)は、少なくとも50℃、または少なくとも55℃、または少なくとも60℃、または少なくとも65℃、または少なくとも70℃のTmを有し得る。本発明のアゴニスト、アンタゴニスト、使用、方法、組成物、装置または処方物は、このようなペプチドまたはポリペプチドを含み得る。
【0049】
本発明の一態様では、本発明のペプチド、ポリペプチド、可変ドメイン、アゴニスト、アンタゴニスト、組成物または処方物は、37〜50℃で14日間、Britton−Robinson緩衝液中でインキュベーション(1mg/mlのポリペプチドまたは可変ドメイン濃度で)した後に実質的に安定である。一実施形態では、ペプチド、ポリペプチド、アゴニスト、アンタゴニストまたは可変ドメインの少なくとも65、70、75、80、85、86、87、88、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99%は37℃でのこのようなインキュベーション後も凝集しないままである。一実施形態では、ペプチド、ポリペプチドまたは可変ドメインの少なくとも65、70、75、80、85、86、87、88、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99%は、37℃でのこのようなインキュベーション後に単量体のままである。一実施形態では、ペプチド、ポリペプチド、アゴニスト、アンタゴニストまたは可変ドメインの少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、86、87、88、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99%は50℃でのこのようなインキュベーション後に凝集しないままである。一実施形態では、ペプチド、ポリペプチドまたは可変ドメインの少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、86、87、88、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99%は、50℃でのこのようなインキュベーション後に単量体のままである。一実施形態では、このようなインキュベーションのいずれか1つの後に、ペプチド、ポリペプチド、可変ドメイン、アゴニスト、アンタゴニストの凝集は見られない。一実施形態では、37℃、Britton−Robinson緩衝液中1mg/mlのポリペプチドまたは可変ドメイン濃度でインキュベーションした後に、ペプチド、ポリペプチドまたは可変ドメインのpIは変わらないままであるかまたは実質的に変わらない。
【0050】
本発明の一態様では、本発明のペプチド、ポリペプチド、可変ドメイン、アゴニスト、アンタゴニスト、組成物または処方物は、4℃で7日間、Britton−Robinson緩衝液中、pH7〜7.5(例えば、pH7またはpH7.5)でインキュベーション(100mg/mlのポリペプチドまたは可変ドメイン濃度で)した後に実質的に安定である。一実施形態では、ペプチド、ポリペプチド、アゴニスト、アンタゴニストまたは可変ドメインの少なくとも95、95.5、96、96.5、97、97.5、98、98.5、99または99.5%は、このようなインキュベーション後に凝集しないままである。一実施形態では、ペプチド、ポリペプチドまたは可変ドメインの少なくとも95、95.5、96、96.5、97、97.5、98、98.5、99または99.5%はこのようなインキュベーション後に単量体のままである。一実施形態では、このようなインキュベーションのいずれか1つの後にペプチド、ポリペプチド、可変ドメイン、アゴニスト、アンタゴニストの凝集は見られない。
【0051】
本発明の一態様では、本発明のペプチド、ポリペプチド、可変ドメイン、アゴニスト、アンタゴニスト、組成物または処方物は、例えば室温、20℃または37℃で1時間、例えばPari LC+カップなどのジェットネブライザー中で噴霧(40mg/mlのポリペプチドまたは可変ドメインの濃度で)後に実質的に安定である。一実施形態では、ペプチド、ポリペプチド、アゴニスト、アンタゴニストまたは可変ドメインの少なくとも65、70、75、80、85、86、87、88、90、91、92、93、94、95、95.5、96、96.5、97、97.5、98、98.5、99または99.5%はこのような噴霧後に凝集しないままである。一実施形態では、ペプチド、ポリペプチドまたは可変ドメインの少なくとも65、70、75、80、85、86、87、88、90、91、92、93、94、95、95.5、96、96.5、97、97.5、98、98.5、99または99.5%はこのような噴霧後に単量体のままである。一実施形態では、このような噴霧のいずれか1つの後にペプチド、ポリペプチド、可変ドメイン、アゴニスト、アンタゴニストの凝集は見られない。
【0052】
ペプチドまたはポリペプチドは単離および/または組換え体であり得る。
【0053】
適切には、本発明の任意の態様の一実施形態では、プロテアーゼ耐性ペプチドまたはポリペプチドは、ペプチドまたはポリペプチドのレパートリーから選択される。
【0054】
本発明はまた、(例えば、治療または診断用)薬物において使用される、本明細書中に記載される方法によって選択可能であるかまたは選択されるプロテアーゼ耐性ペプチドまたはポリペプチド(例えば、トリプシン、エラスターゼ−、またはロイコザイム耐性免疫グロブリン単一可変ドメイン)に関する。本発明はまた、疾患の治療用薬剤を製造するための、本明細書中に記載される方法によって選択可能であるかまたは選択されるプロテアーゼ耐性ペプチドまたはポリペプチド(例えば、トリプシン、エラスターゼ−、またはロイコザイム耐性免疫グロブリン単一可変ドメイン)の使用に関する。本発明はまた、本明細書中に記載される方法によって選択可能であるかまたは選択される有効量のプロテアーゼ耐性ペプチドまたはポリペプチド(例えば、トリプシン、エラスターゼ−、またはロイコザイム耐性免疫グロブリン単一可変ドメイン)を、それを必要とする被験者に投与することを含む、疾患の治療法に関する。
【0055】
本発明の任意の態様の一実施形態では、この方法は、第2のプロテアーゼと、プロテアーゼ耐性ペプチドまたはポリペプチドのレパートリーとを、第2のプロテアーゼの活性に適した条件下で組み合わせること;そして
少なくとも1つの所望の生物学的活性を有するペプチドまたはポリペプチドを回収することをさらに含み、これにより第2のプロテアーゼに対して耐性である少なくとも1つのペプチドまたはポリペプチドが選択される。第1および第2のプロテアーゼは異なる。第2のプロテアーゼは前記定義のとおりであってよい。一実施形態では、第1または第2のプロテアーゼは、レパートリー表示系に対して内因性である。
【0056】
本発明は、プロテアーゼとともに本発明の方法に適した条件下、例えば(i)約10μg/ml〜約3mg/mlプロテアーゼ、(ii)約20℃〜約40℃および(iii)少なくとも約30分間の条件(例えば、100μg/mlプロテアーゼ、37℃、少なくとも1時間の条件下)でインキュベートした場合、1つ以上の前記プロテアーゼに対して耐性であるペプチドまたはポリペプチドを含む、糖尿病の治療および/または予防のために患者に投与するための、単離されたGLP−1受容体アゴニストをさらに提供する。アゴニストは注射による投与のために使用することができる。
【0057】
本発明の方法の一実施形態では、選択されたペプチドまたはポリペプチドを、第2のプロテアーゼまたは第1のプロテアーゼに対する耐性について、選択方法において使用したのとは異なる一連の条件下でさらに評価する。第2のプロテアーゼは、第1のプロテアーゼとは異なるが、それ以外は前記の任意のプロテアーゼであり得る。一実施形態では、2以上のプロテアーゼ耐性ペプチドまたはポリペプチドを本発明の方法で選択し、続いてこれらのペプチドまたはポリペプチドのうちのどちらが選択方法において使用したものとは異なる条件下で第2プロテアーゼまたは第1プロテアーゼに対して耐性を示すかを確認するさらなる工程を行う。第2のプロテアーゼは第1のプロテアーゼと異なるが、それ以外は前記の任意のプロテアーゼであり得る。このようにして、1つ以上のペプチドまたはポリペプチドは、2以上のプロテアーゼに対して耐性になる。一実施形態では、第1または第2のプロテアーゼは、レパートリー表示系において内因的に発現されるプロテアーゼである。
【0058】
本発明の方法の一実施形態では、プロテアーゼ耐性単量体ペプチドまたはポリペプチド(例えば、免疫グロブリン単一可変ドメイン単量体)が選択される。
【0059】
本発明の薬剤、アゴニストおよびアンタゴニストは、前記ペプチドまたはポリペプチドと融合した抗体定常領域(例えば、Fc)を含み得る。
【0060】
一実施形態では、本発明は、改善されたPKを有する薬剤を提供するためにほ乳類に投与するための薬剤の製造におけるプロテアーゼ耐性ペプチドまたはポリペプチドの使用を提供する。改善されたPKは、改善されたAUC(曲線下面積)および/または改善された半減期であってよい。一実施形態では、プロテアーゼ耐性ペプチドまたはポリペプチドは、本発明の方法によって選択されるか、または選択可能である。一実施形態では、ペプチドまたはポリペプチドは免疫グロブリン単一可変ドメインである。薬剤は、前記ペプチドまたはポリペプチドに融合した抗体定常領域、例えば抗体Fcを含んでもよい。
【0061】
本発明は、ほ乳類において改善されたPKを有する薬剤を提供するためにほ乳類(例えば、ヒト)に投与するための、プロテアーゼ耐性ペプチドまたはポリペプチドを含む薬剤を提供する。一実施形態では、プロテアーゼ耐性ペプチドまたはポリペプチドは、本発明の方法によって選択されるか、または選択可能である。一実施形態では、ペプチドまたはポリペプチドは免疫グロブリン単一可変ドメインである。薬剤は、前記ペプチドまたはポリペプチドと融合した抗体定常領域(例えば、Fc)を含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】GLP−1−AlbudAb融合変異体1〜10の配列を示す。
【図2】GLP−1−AlbudAb融合変異体6〜10のゲルを示す。
【図3】GLP−1−AlbudAb融合変異体6〜10(濃縮)のゲルを示す。
【図4】GLP−1−AlbudAb融合変異体11のゲルを示す。
【図5A】GLP−1−AlbudAb融合変異体6〜11のMS結果を示す。図5A)はDMS7148(変異体6)を示す;(分析注釈:質量測定値は1つのジスルフィドを含む予想値と一致する(15245.88));B)はDMS7149(変異体7)を示す(分析注釈:質量測定値は残基24〜142(12860.56)、26〜142(12603.26)および28〜142(12390.97)(すべて1つのジスルフィドを含む)と一致する)。各ピークは、+42Daである関連するピーク(おそらくはアセチル化されている)を有する);C)はDMS7150(変異体8)を示す(分析注釈:質量測定値は、1つのジスルフィドを有する残基26〜142と一致する(12603.26)。);D)はDMS7151(変異体9)を示す(分析注釈:12960を説明できない。12890.5、12603および12391.50はそれぞれ残基24〜142、26〜142および28〜142と厳密に一致し、それぞれは1つのジスルフィドを有する(12862.53、12605.24および12392.94)。しかしながら、質量測定値と計算値との間には2Daの差がある。);E)はDMS7152(変異体10)を示す(分析注釈:12790.5および12320.5はそれぞれ1つのジスルフィドを有する残基24〜142および28〜142と一致する(12790.42および12320.84)。)F)はDMS7161(変異体11)を示す。
【図5B】GLP−1−AlbudAb融合変異体6〜11のMS結果を示す。図5A)はDMS7148(変異体6)を示す;(分析注釈:質量測定値は1つのジスルフィドを含む予想値と一致する(15245.88));B)はDMS7149(変異体7)を示す(分析注釈:質量測定値は残基24〜142(12860.56)、26〜142(12603.26)および28〜142(12390.97)(すべて1つのジスルフィドを含む)と一致する)。各ピークは、+42Daである関連するピーク(おそらくはアセチル化されている)を有する);C)はDMS7150(変異体8)を示す(分析注釈:質量測定値は、1つのジスルフィドを有する残基26〜142と一致する(12603.26)。);D)はDMS7151(変異体9)を示す(分析注釈:12960を説明できない。12890.5、12603および12391.50はそれぞれ残基24〜142、26〜142および28〜142と厳密に一致し、それぞれは1つのジスルフィドを有する(12862.53、12605.24および12392.94)。しかしながら、質量測定値と計算値との間には2Daの差がある。);E)はDMS7152(変異体10)を示す(分析注釈:12790.5および12320.5はそれぞれ1つのジスルフィドを有する残基24〜142および28〜142と一致する(12790.42および12320.84)。)F)はDMS7161(変異体11)を示す。
【図5C】GLP−1−AlbudAb融合変異体6〜11のMS結果を示す。図5A)はDMS7148(変異体6)を示す;(分析注釈:質量測定値は1つのジスルフィドを含む予想値と一致する(15245.88));B)はDMS7149(変異体7)を示す(分析注釈:質量測定値は残基24〜142(12860.56)、26〜142(12603.26)および28〜142(12390.97)(すべて1つのジスルフィドを含む)と一致する)。各ピークは、+42Daである関連するピーク(おそらくはアセチル化されている)を有する);C)はDMS7150(変異体8)を示す(分析注釈:質量測定値は、1つのジスルフィドを有する残基26〜142と一致する(12603.26)。);D)はDMS7151(変異体9)を示す(分析注釈:12960を説明できない。12890.5、12603および12391.50はそれぞれ残基24〜142、26〜142および28〜142と厳密に一致し、それぞれは1つのジスルフィドを有する(12862.53、12605.24および12392.94)。しかしながら、質量測定値と計算値との間には2Daの差がある。);E)はDMS7152(変異体10)を示す(分析注釈:12790.5および12320.5はそれぞれ1つのジスルフィドを有する残基24〜142および28〜142と一致する(12790.42および12320.84)。)F)はDMS7161(変異体11)を示す。
【図5D】GLP−1−AlbudAb融合変異体6〜11のMS結果を示す。図5A)はDMS7148(変異体6)を示す;(分析注釈:質量測定値は1つのジスルフィドを含む予想値と一致する(15245.88));B)はDMS7149(変異体7)を示す(分析注釈:質量測定値は残基24〜142(12860.56)、26〜142(12603.26)および28〜142(12390.97)(すべて1つのジスルフィドを含む)と一致する)。各ピークは、+42Daである関連するピーク(おそらくはアセチル化されている)を有する);C)はDMS7150(変異体8)を示す(分析注釈:質量測定値は、1つのジスルフィドを有する残基26〜142と一致する(12603.26)。);D)はDMS7151(変異体9)を示す(分析注釈:12960を説明できない。12890.5、12603および12391.50はそれぞれ残基24〜142、26〜142および28〜142と厳密に一致し、それぞれは1つのジスルフィドを有する(12862.53、12605.24および12392.94)。しかしながら、質量測定値と計算値との間には2Daの差がある。);E)はDMS7152(変異体10)を示す(分析注釈:12790.5および12320.5はそれぞれ1つのジスルフィドを有する残基24〜142および28〜142と一致する(12790.42および12320.84)。)F)はDMS7161(変異体11)を示す。
【図5E】GLP−1−AlbudAb融合変異体6〜11のMS結果を示す。図5A)はDMS7148(変異体6)を示す;(分析注釈:質量測定値は1つのジスルフィドを含む予想値と一致する(15245.88));B)はDMS7149(変異体7)を示す(分析注釈:質量測定値は残基24〜142(12860.56)、26〜142(12603.26)および28〜142(12390.97)(すべて1つのジスルフィドを含む)と一致する)。各ピークは、+42Daである関連するピーク(おそらくはアセチル化されている)を有する);C)はDMS7150(変異体8)を示す(分析注釈:質量測定値は、1つのジスルフィドを有する残基26〜142と一致する(12603.26)。);D)はDMS7151(変異体9)を示す(分析注釈:12960を説明できない。12890.5、12603および12391.50はそれぞれ残基24〜142、26〜142および28〜142と厳密に一致し、それぞれは1つのジスルフィドを有する(12862.53、12605.24および12392.94)。しかしながら、質量測定値と計算値との間には2Daの差がある。);E)はDMS7152(変異体10)を示す(分析注釈:12790.5および12320.5はそれぞれ1つのジスルフィドを有する残基24〜142および28〜142と一致する(12790.42および12320.84)。)F)はDMS7161(変異体11)を示す。
【図5F】GLP−1−AlbudAb融合変異体6〜11のMS結果を示す。図5A)はDMS7148(変異体6)を示す;(分析注釈:質量測定値は1つのジスルフィドを含む予想値と一致する(15245.88));B)はDMS7149(変異体7)を示す(分析注釈:質量測定値は残基24〜142(12860.56)、26〜142(12603.26)および28〜142(12390.97)(すべて1つのジスルフィドを含む)と一致する)。各ピークは、+42Daである関連するピーク(おそらくはアセチル化されている)を有する);C)はDMS7150(変異体8)を示す(分析注釈:質量測定値は、1つのジスルフィドを有する残基26〜142と一致する(12603.26)。);D)はDMS7151(変異体9)を示す(分析注釈:12960を説明できない。12890.5、12603および12391.50はそれぞれ残基24〜142、26〜142および28〜142と厳密に一致し、それぞれは1つのジスルフィドを有する(12862.53、12605.24および12392.94)。しかしながら、質量測定値と計算値との間には2Daの差がある。);E)はDMS7152(変異体10)を示す(分析注釈:12790.5および12320.5はそれぞれ1つのジスルフィドを有する残基24〜142および28〜142と一致する(12790.42および12320.84)。)F)はDMS7161(変異体11)を示す。
【図6】GLP−1−AlbudAb融合変異体6のアッセイの結果を示す。
【図7】GLP−1−AlbudAb融合変異体11のアッセイの結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0063】
この明細書中で、明瞭且つ簡潔な明細書を書き表すよう、実施形態を参照しながら本発明を記載してきた。実施形態は、本発明を逸脱しない限り、種々に組合され、または切り離され得るよう意図されるし、そのように理解されるべきである。
【0064】
本明細書中で用いる場合、「ペプチド」は、ペプチド結合を介して一緒に繋がれる約2〜約50アミノ酸を指す。
【0065】
本明細書中で用いる場合、「ポリペプチド」は、ペプチド結合により一緒に繋がれる少なくとも約50アミノ酸を指す。ポリペプチドは一般的に、三次構造を含み、機能的ドメインに折りたたまれる。
【0066】
明細書中で用いる場合、「プロテアーゼ分解に対して耐性」であるペプチドまたはポリペプチド(例えば、ドメイン抗体(dAb))は、プロテアーゼの活性に適した条件下でプロテアーゼとともにインキュベートされる場合、プロテアーゼにより実質的に分解されない。プロテアーゼの活性に適した温度で、例えば37または50℃で、約1時間、プロテアーゼとともにインキュベート後に、約25%以下、約20%以下、約15%以下、約14%以下、約13%以下、約12%以下、約11%以下、約10%以下、約9%以下、約8%以下、約7%以下、約6%以下、約5%以下、約4%以下、約3%以下、約2%以下、約1%以下のタンパク質のタンパク質が分解されるか、または実質的に全くタンパク質が分解されない場合、ポリペプチド(例えばdAb)は実質的に分解されない。タンパク質分解は、本明細書中に記載されるような任意の適切な方法を用いて、例えばSDS−PAGEにより、または機能性検定(例えばリガンド結合)により査定され得る。
【0067】
明細書中で用いる場合、「表示系」は、ポリペプチドまたはペプチドのコレクションを、物理的、化学的または機能的特徴などの所望の特性に基づいた選択に利用可能である系を指す。表示系は、ポリペプチドまたはペプチドの適切なレパートリーであり得る(例えば、溶液中、適切な支持体上で固定)。表示系は、細胞発現系(例えば、形質転換、感染、トランスフェクトまたは形質導入細胞における核酸のライブラリーの発現および細胞表面上のコードされたポリペプチドの表示)または無細胞発現系(例えば、乳濁液コンパートメント化および表示)を用いる生化学的系でもあり得る。好ましい表示系は、核酸のコード機能と、この核酸によってコードされるポリペプチドまたはペプチドの物理的、化学的および/または機能的特徴とを連結する。このような表示系を用いる場合、所望の物理的、化学的および/または機能的特徴を有するポリペプチドまたはペプチドを選択することができ、選択されたポリペプチドまたはペプチドをコードする核酸を容易に単離または回収することができる。核酸のコード機能と、ポリペプチドまたはペプチドの物理的、化学的および/または機能的特徴とを連結する多数の表示系、例えば、バクテリオファージ表示(ファージ表示)、リボソーム表示、乳濁液コンパートメント化および表示、酵母表示、ピューロマイシン表示、細菌表示、プラスミド上の表示、共有表示などが当該技術分野で公知である(例えば、EP0436597(Dyax)、米国特許第6,172,197号(McCafferty et al.)、米国特許第6,489,103号(Griffiths et al.)を参照)。
【0068】
本明細書中で用いる場合、「レパートリー」は、アミノ酸配列の多様性を特徴とするポリペプチドまたはペプチドのコレクションを指す。レパートリーの個々の成員は、共通の構造的特徴(例えば、共通のコア構造)および/または共通の機能的特徴(例えば、共通のリガンド(例えば、一般的リガンドもしくは標的リガンド)を結合する能力)などの共通の特性を有し得る。
【0069】
本明細書中で用いる場合、「機能的」とは、特異的結合活性などの生物学的活性を有するポリペプチドまたはペプチドを記載する。例えば、「機能的ポリペプチド」という用語には、抗原結合部位によって標的抗原を結合する抗体またはその抗原結合断片、およびその基質と結合する酵素が含まれる。
【0070】
本明細書中で用いる場合、「一般的リガンド」は、所定のレパートリーの機能的成員の実質的な部分(例えば、実質的に全て)を結合するリガンドを指す。一般的リガンド(例えば、共通の一般的リガンド)は、成員が共通の標的リガンドに対して結合特異性を有していなくても、所定のレパートリーの多くの成員を結合することができる。一般に、ポリペプチド上の機能的一般的リガンド結合部位の存在(一般的リガンドを結合する能力によって示される)は、ポリペプチドが正しく折りたたまれ、機能的であることを示す。一般的リガンドの適切な例としては、レパートリーの機能的成員の実質的な部分上で発現されるエピトープを結合する抗体などが挙げられる。
【0071】
「超抗原」は、これらのタンパク質の標的リガンド結合部位と異なる部位で免疫グロブリンスーパーファミリーの成員と相互作用する一般的リガンドを指す専門用語である。ブドウ球菌エンテロトキシン(Staphylococcal enterotoxin)は、T細胞受容体と相互作用する超抗原の例である。抗体を結合する超抗原には、IgG定常領域を結合するプロテインG(Bjorck and Kronvall, J. Immunol., 133:969(1984));IgG定常領域およびVドメインを結合するプロテインA(Forsgren and Sjoquist, J. Immunol., 97:822(1966));およびVドメインを結合するプロテインL(Bjorck, J. Immunol., 140:1194(1988))が含まれる。
【0072】
本明細書中で用いる場合、「標的リガンド」は、ポリペプチドまたはペプチドにより特異的にまたは選択的に結合されるリガンドを指す。例えば、ポリペプチドが抗体またはその抗原結合断片である場合、標的リガンドは任意の所望の抗原またはエピトープであり得、標的リガンドは任意の所望の基質であり得る。標的抗原との結合は、機能性であるポリペプチドまたはペプチドに左右される。
【0073】
本明細書中で用いる場合、「抗体フォーマット」は、その構造上に抗原に対する結合特異性を付与するために抗体可変ドメインが組み入れられ得る任意の適切なポリペプチド構造を指す。種々の適切な抗体フォーマット、例えばキメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、一本鎖抗体、二重特異性抗体、抗体重鎖、抗体軽鎖、抗体重鎖および/または抗体軽鎖のホモ二量体およびヘテロ二量体、前記のいずれかの抗原結合断片(例えば、Fv断片(例えば一本鎖Fv(scFv)、ジスルフィド結合Fv)、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)断片)、単一抗体可変ドメイン(例えば、dAb、V、VHH、V)、ならびに前記のいずれかの修飾バージョン(例えば、ポリエチレングリコールまたは他の適切なポリマーの共有的結合により修飾されたもの)が、当該技術分野で知られている。
【0074】
「免疫グロブリン単一可変ドメイン」という語句は、他のV領域またはドメインとは関係なく、一抗原またはエピトープを特異的に結合する抗体可変ドメイン(V、VHH、V)を指す。免疫グロブリン単一可変ドメインは、他の可変領域または可変ドメインを有するフォーマット(例えば、ホモ−またはヘテロ−多量体)中に存在し得るが、この場合、他の領域またはドメインは、単一免疫グロブリン可変ドメインによる抗原結合のために必要でない(すなわち、この場合、免疫グロブリン単一可変ドメインは、付加的可変ドメインとは関係なく、抗原を結合する)。「ドメイン抗体」または「dAb」は、当該用語を本明細書中で用いる場合、「免疫グロブリン単一可変ドメイン」と同じである。免疫グロブリン単一可変ドメインは、好ましくはヒト抗体可変ドメインであるが、しかし、齧歯類(例えば、WO 00/29004(この記載内容は参照により本明細書中で援用される)に開示)、テンジクザメおよびラクダ類VHHdAbのような他の種からの単一抗体可変ドメインも含む。ラクダ類VHHは、軽鎖を天然に欠く重鎖抗体を産生する、ラクダ、ラマ、アルパカ、ヒトコブラクダおよびグアナコを含めた種に由来する免疫グロブリン単一可変ドメインポリペプチドである。
【0075】
「ドメイン」は、タンパク質の残部とは無関係な三次構造を有する折り畳まれたタンパク質構造である。一般的に、ドメインはタンパク質の別個の機能的特徴の元をなし、多くの場合、残りのタンパク質および/またはドメインの機能の損失を伴わずに、他のタンパク質に付加され、除去され、または運ばれ得る。「単一抗体可変ドメイン」は、抗体可変ドメインに特徴的な配列を含む折り畳まれたポリペプチドドメインである。したがって、それは、完全抗体可変ドメインおよび修飾可変ドメイン(例えば、1つ以上のループが、抗体可変ドメインに特徴的でない配列により取り替えられる)、あるいは切頭化されているかまたはN−またはC−末端伸張を含む抗体可変ドメイン、ならびに全長ドメインの少なくとも結合活性および特異性を保持する可変ドメインの折り畳まれた断片を包含する。
【0076】
「ライブラリー」という用語は、異種ポリペプチドまたは核酸の混合物を指す。ライブラリーは、それぞれが単一のポリペプチドまたは核酸配列を有する成員から構成される。この点で、「ライブラリー」は「レパートリー」と同義である。ライブラリー成員間の配列の差異は、ライブラリーにおいて存在する多様性の原因である。ライブラリーは、ポリペプチドもしくは核酸の単純な混合物の形態をとってもよいし、あるいは核酸のライブラリーで形質転換された、生物体もしくは細胞、例えば細菌、ウイルス、動物または植物細胞などの形態をとってもよい。好ましくは、個々の生物体または細胞は1つだけまたは限定された数のライブラリー成員を含む。有利には、当該核酸によってコードされるポリペプチドの発現を可能にするために、核酸を発現ベクター中に組み入れる。したがって好ましい態様では、ライブラリーは宿主生物体の集団の形態をとってもよく、各生物体は、その対応するポリペプチド成員を産生するために発現することができる核酸形態のライブラリーの1つの成員を含む1コピー以上の発現ベクターを含む。したがって宿主生物体の集団は、様々なポリペプチドの大きなレパートリーをコードする可能性がある。
【0077】
「ユニバーサルフレームワーク」は、Kabat(“Sequences of Proteins of Immunological Interest”, US Department of Health and Human Services, 1991)によって定義される配列において保存された抗体の領域に対応するか、またはChothiaおよびLesk、(1987)J. Mol. Biol. 196:910−917によって定義されるヒト生殖細胞系免疫グロブリンレパートリーまたは構造に対応する単一抗体フレームワーク配列である。本発明は、超可変領域単独における変化にもかかわらず、実質的に任意の結合特異性の誘導を許容することが判明している、1つのフレームワーク、またはこのようなフレームワークのセットの使用を提供する。
【0078】
本明細書中で定義されるようなアミノ酸およびヌクレオチド配列アラインメント、ならびに相同性、類似性または同一性は、好ましくはデフォルトパラメーターを用いて、アルゴリズムBLAST2配列を用いて、調製され、確定される(Tatusova, T.A. et al., FEMS Microbiol Lett, 174: 187−188 (1999))。
【0079】
本発明は、所望の生物学的活性を有するプロテアーゼ耐性ペプチドおよびポリペプチドの選択法に関する。プロテアーゼ分解に対して高度に安定で且つ耐性であり、そして所望の生物学的活性を有するポリペプチドを選択するための効率的プロセスを生じるための方法に、少なくとも2つの選択的圧力が用いられる。本明細書中で用いる場合、プロテアーゼ耐性ペプチドおよびポリペプチドは、一般的に、生物学的活性を保持する。これに対比して、プロテアーゼ感受性ペプチドおよびポリペプチドは、本明細書中に記載される方法において、プロテアーゼにより切断されるかまたは消化され、したがって、それらの生物学的活性を失う。したがって、プロテアーゼ耐性ペプチドまたはポリペプチドは、一般的に、それらの生物学的活性、例えば結合活性に基づいて選択される。
【0080】
本明細書中に記載されるような方法はいくつかの利点を提供する。例えば、本明細書中で開示され、例示されるように、あるプロテアーゼ(例えばトリプシン)によるタンパク質分解性分解に対する耐性に関して選択されるペプチドまたはポリペプチドは、他のプロテアーゼ(例えばエラスターゼ、ロイコザイム)による分解に対しても耐性である。加えて、プロテアーゼ耐性は、ペプチドまたはポリペプチドの高い融点(Tm)と相関し得る。融点が高いほど、より安定なペプチドおよびポリペプチドであることを示す。プロテアーゼ分解に対する耐性は、標的リガンドに対する高親和性結合とも相関する。したがって、本明細書中に記載されるような方法は、所望の生物学的活性を有し、そしてそれらがプロテアーゼ耐性および安定性であるためin vivoでの治療的および/または診断的使用に十分適しているポリペプチドを選択し、単離し、および/または回収するための効率的な方法を提供する。
【0081】
選択法
一態様では、本発明は、ペプチドまたはポリペプチドを、プロテアーゼ(例えば、1つ以上のプロテアーゼ)による分解に対して耐性である、ペプチド及びポリペプチドのライブラリーまたはレパートリー(例えば、表示系)から選択し、単離し、および/または回収するための方法である。好ましくは、この方法は、ポリペプチドを、プロテアーゼ(例えば、1つ以上のプロテアーゼ)による分解に対して耐性であるペプチド及びポリペプチドのライブラリーまたはレパートリー(例えば、表示系)から選択し、単離し、および/または回収するための方法である。一般的に、この方法は、ペプチドまたはポリペプチドのライブラリーまたはレパートリーを提供すること、プロテアーゼ(例えば細菌プロテアーゼまたは外から添加されたプロテアーゼ、例えばトリプシン、エラスターゼ、ロイコザイム、パンクレアチン、喀痰)の存在下、プロテアーゼの活性に適した条件下でこのライブラリーまたはレパートリーをインキュベートすること、そしてプロテアーゼによる分解に対して耐性であり、所望の生物学的活性を有するペプチドまたはポリペプチドを選択し、単離し、および/または回収することを含む。プロテアーゼにより分解されるペプチドまたはポリペプチドは、一般的に、プロテアーゼの活性のために生物学的活性が減少するかまたはそれらの生物学的活性を失う。したがって、プロテアーゼ分解に対して耐性であるペプチドまたはポリペプチドを、それらの生物学的活性、例えば、結合活性(例えば、一般的リガンドの結合、特異的リガンドの結合、基質の結合)、触媒活性または他の生物学的活性などに基づいた方法を用いて、選択し、単離し、および/または回収することができる。
【0082】
本明細書中で記載され、例示されるように、プロテアーゼ耐性dAbは、一般的にそれらの標的リガンドを高い親和性で結合する。したがって、別の態様では、本発明は、リガンド、好ましくは標的リガンドを高い親和性で結合するペプチドまたはポリペプチドを選択し、単離し、および/または回収するための方法である。好ましくは、この方法は、リガンド、好ましくは標的リガンドを高い親和性で結合するポリペプチドを選択し、単離し、および/または回収するための方法である。一般的に、この方法は、ペプチドまたはポリペプチドのライブラリーまたはレパートリーを提供すること、ライブラリーまたはレパートリーをプロテアーゼ(例えば、トリプシン、エラスターゼ、ロイコザイム、パンクレアチン、喀痰)とプロテアーゼの活性に適した条件下で組み合わせること、そしてリガンド(例えば、標的リガンド)を結合するペプチドまたはポリペプチドを選択し、単離し、および/または回収することを含む。本明細書中に記載されるように、この方法は、ペプチドまたはポリペプチドのライブラリーまたはレパートリーを、細菌プロテアーゼ(この場合、表示系は細菌における発現を含む)などの表示系に対して内因性であるプロテアーゼの活性に適した条件下でインキュベートすることも含み得る。ライブラリーまたはレパートリーはプロテアーゼ感受性ペプチドまたはポリペプチドが消化される条件下でプロテアーゼにさらされているので、プロテアーゼの活性は低い結合親和性を有するあまり安定でないポリペプチドを除去し得、これによって高親和性結合ペプチドまたはポリペプチドの集団が産生される。例えば、ポリペプチドの選択されたペプチドは、その標的リガンドを1μM以上、好ましくは約500nM〜約0.5pMの親和性(KD;表面プラズモン共鳴により確定した場合、KD=Koff(kd)/Kon(ka))で結合することができる。例えば、ポリペプチドの高親和性ペプチドは、標的リガンドを約500nM、約100nM、約10nM、約1nM、約500pM、約100pM、約10pM、約1pMまたは約0.5pMの親和性で結合することができる。プロテアーゼに対して耐性であるペプチドおよびポリペプチドは、低いエントロピーおよび/または高い安定化エネルギーを有すると考えられる。したがって、プロテアーゼ耐性と高親和性結合との間の相関は、本発明の方法によって選択されたペプチドおよびポリペプチドの表面の緊密性および安定性に関連し得る。
【0083】
ペプチドまたはポリペプチドのライブラリーまたはレパートリーをプロテアーゼ(例えば、1つ以上のプロテアーゼ)とプロテアーゼのタンパク質分解活性に適した条件下で組み合わせる。プロテアーゼ、および生物学的調製物またはタンパク質分解活性を含む混合物のタンパク質分解活性に適した条件は当該技術分野で周知であるかまたは当業者が容易に確定することができる。所望により、適切な条件は、例えば、プロテアーゼ活性を様々なpH条件、プロテアーゼ濃度、温度で査定することにより、および/またはライブラリーまたはレパートリーとプロテアーゼとを反応させる時間の量を変えることにより、特定または最適化することができる。例えば、いくつかの実施形態では、トリプシンなどのプロテアーゼのペプチドまたはポリペプチド(例えば、可変ドメイン)に対する比(モル/モルに基づいて)は、800〜80,000(例えば、8,000〜80,000)プロテアーゼ:ペプチドまたはポリペプチドであり、例えば10マイクログラム/mlのプロテアーゼを使用する場合、比は800〜80,000 プロテアーゼ:ペプチドまたはポリペプチド;または100マイクログラム/mlのプロテアーゼを使用する場合、比は8,000〜80,000 プロテアーゼ:ペプチドまたはポリペプチドである。一実施形態では、プロテアーゼ(例えば、トリプシン)のペプチドまたはポリペプチド(例えば、可変ドメイン)に対する比(重量/重量、例えばマイクログラム/マイクログラム基準)は、1,600〜160,000(例えば、16,000〜160,000)プロテアーゼ:ペプチドまたはポリペプチドであり、例えば10マイクログラム/mlのプロテアーゼを使用する場合、比は1,600〜160,000 プロテアーゼ:ペプチドまたはポリペプチド;または100μg/mlのプロテアーゼを使用する場合、比は16,000〜160,000 プロテアーゼ:ペプチドまたはポリペプチドである。一実施形態では、プロテアーゼを少なくとも100または1000μg/mlの濃度で使用し、トリプシンなどのプロテアーゼのペプチドまたはポリペプチド(例えば、可変ドメイン)に対するプロテアーゼ:ペプチド比(モル/モルに基づいて)は8,000〜80,000プロテアーゼ:ペプチドまたはポリペプチドである。一実施形態では、プロテアーゼを少なくとも10μg/mlの濃度で使用し、トリプシンなどのプロテアーゼのペプチドまたはポリペプチド(例えば、可変ドメイン)に対するプロテアーゼ:ペプチド比(モル/モルに基づいて)は、800〜80,000 プロテアーゼ:ペプチドまたはポリペプチドである。一実施形態では、プロテアーゼ(例えば、トリプシン)のペプチドまたはポリペプチド(例えば、可変ドメイン)に対する比(重量/重量、例えばマイクログラム/マイクログラム基準)は、1600〜160,000 プロテアーゼ:ペプチドまたはポリペプチドであり、Cが10μg/mlである場合;またはCもしくはC’が100μg/mlである場合、比は、16,000〜160,000 プロテアーゼ:ペプチドまたはポリペプチドである。一実施形態では、濃度(cまたはc’)は少なくとも100または1000μg/ml プロテアーゼである。個々のまたは単離されたペプチドまたはポリペプチド(例えば、免疫グロブリン可変ドメイン)、例えばレパートリーまたはライブラリーからすでに単離されたものを試験するために、プロテアーゼをペプチドまたはポリペプチドの適切な緩衝液(例えば、PBS)中溶液に添加して、少なくとも約0.01%(w/w)のプロテアーゼ/ペプチドまたはポリペプチド、約0.01%〜約5%(w/w)のプロテアーゼ/ペプチドまたはポリペプチド、約0.05%〜約5%(w/w)のプロテアーゼ/ペプチドまたはポリペプチド、約0.1%〜約5%(w/w)のプロテアーゼ/ペプチドまたはポリペプチド、約0.5%〜約5%(w/w)のプロテアーゼ/ペプチドまたはポリペプチド、約1%〜約5%(w/w)のプロテアーゼ/ペプチドまたはポリペプチド、少なくとも約0.01%(w/w)のプロテアーゼ/ペプチドまたはポリペプチド、少なくとも約0.02%(w/w)のプロテアーゼ/ペプチドまたはポリペプチド、少なくとも約0.03%(w/w)のプロテアーゼ/ペプチドまたはポリペプチド、少なくとも約0.04%(w/w)のプロテアーゼ/ペプチドまたはポリペプチド、少なくとも約0.05%(w/w)のプロテアーゼ/ペプチドまたはポリペプチド、少なくとも約0.06%(w/w)のプロテアーゼ/ペプチドまたはポリペプチド、少なくとも約0.07%(w/w)のプロテアーゼ/ペプチドまたはポリペプチド、少なくとも約0.08%(w/w)のプロテアーゼ/ペプチドまたはポリペプチド、少なくとも約0.09%(w/w)のプロテアーゼ/ペプチドまたはポリペプチド、少なくとも約0.1%(w/w)のプロテアーゼ/ペプチドまたはポリペプチド、少なくとも約0.2%(w/w)のプロテアーゼ/ペプチドまたはポリペプチド、少なくとも約0.3%(w/w)のプロテアーゼ/ペプチドまたはポリペプチド、少なくとも約0.4%(w/w)のプロテアーゼ/ペプチドまたはポリペプチド、少なくとも約0.5%(w/w)のプロテアーゼ/ペプチドまたはポリペプチド、少なくとも約0.6%(w/w)のプロテアーゼ/ペプチドまたはポリペプチド、少なくとも約0.7%(w/w)のプロテアーゼ/ペプチドまたはポリペプチド、少なくとも約0.8%(w/w)のプロテアーゼ/ペプチドまたはポリペプチド、少なくとも約0.9%(w/w)のプロテアーゼ/ペプチドまたはポリペプチド、少なくとも約1%(w/w)のプロテアーゼ/ペプチドまたはポリペプチド、少なくとも約2%(w/w)のプロテアーゼ/ペプチドまたはポリペプチド、少なくとも約3%(w/w)のプロテアーゼ/ペプチドまたはポリペプチド、少なくとも約4%(w/w)のプロテアーゼ/ペプチドまたはポリペプチド、または約5%(w/w)のプロテアーゼ/ペプチドまたはポリペプチドの溶液などのペプチドまたはポリペプチド/プロテアーゼ溶液を生成させることができる。混合物をプロテアーゼの活性に適した温度(例えば、室温、約37℃)でインキュベートすることができ、時間間隔(例えば、1時間、2時間、3時間など)をあけて試料を採取することができる。SDS−PAGE分析またはリガンド結合などの任意の適切な方法を用いてタンパク質分解について試料を分析することができ、結果を用いて分解の時間経過を確証することができる。
【0084】
任意の所望のプロテアーゼを本明細書中に記載される方法において使用することができる。例えば、1つのプロテアーゼ、異なるプロテアーゼの任意の所望の組み合わせ、またはタンパク質分解活性を含む任意の生物学的調製物、生物学的抽出物、もしくは生物学的ホモジネートを用いることができる。使用されるプロテアーゼの正体がわかっている必要はない。単独または任意の所望の組み合わせで使用できるプロテアーゼの好適な例としては、セリンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、アスパルテートプロテアーゼ、チオールプロテアーゼ、マトリックスメタロプロテアーゼ、カルボキシペプチダーゼ(例えば、カルボキシペプチダーゼA、カルボキシペプチダーゼB)、トリプシン、キモトリプシン、ペプシン、パパイン、エラスターゼ、ロイコザイム、パンクレアチン、トロンビン、プラスミン、カテプシン(例えば、カテプシンG)、プロテイナーゼ(例えば、プロテイナーゼ1、プロテイナーゼ2、プロテイナーゼ3)、サーモリシン、キモシン、エンテロペプチダーゼ、カスパーゼ(例えば、カスパーゼ1、カスパーゼ2、カスパーゼ4、カスパーゼ5、カスパーゼ9、カスパーゼ12、カスパーゼ13)、カルパイン、フィカイン、クロストリパイン、アクチニダイン、ブロメライン、セパラーゼ、ジペプチジルアミノペプチダーゼIVなどが挙げられる。タンパク質分解活性を含む適切な生物学的抽出物、ホモジネートおよび調製物としては、血清、喀痰、粘液(例えば、胃粘液、鼻粘液、気管支粘液)、気管支肺胞洗浄、肺ホモジネート、肺抽出物、膵臓抽出物、胃液、唾液、涙などが挙げられる。一実施形態では、プロテアーゼは、眼および/または涙中に見出されるものである。プロテアーゼはタンパク質分解性分解が起こるために適した量で使用される。例えば、本明細書中に記載されるように、プロテアーゼは約0.01%〜約5%(w/w、プロテアーゼ/ペプチドまたはポリペプチド)で使用できる。例えば、プロテアーゼを、ペプチドまたはポリペプチドのレパートリーを含む表示系(例えば、ファージ表示系)と組み合わせる場合、プロテアーゼを、約10μg/ml〜約3mg/ml、約10μg/ml、約20μg/ml、約30μg/ml、約40μg/ml、約50μg/ml、約60μg/ml、約70μg/ml、約80μg/ml、約90μg/ml、約100μg/ml、約200μg/ml、約300μg/ml、約400μg/ml、約500μg/ml、約600μg/ml、約700μg/ml、約800μg/ml、約900μg/ml、約1000μg/ml、約1.5mg/ml、約2mg/ml、約2.5mg/mlまたは約3mg/mlの濃度で使用することができる。適切な濃度は、約10μg/ml〜1mg/ml、10μg/ml〜100、90、80、70、60、50もしくは40μg/ml、または10、20、30、40もしくは50μg/ml〜100、90、80、70、60μg/mlである。
【0085】
プロテアーゼをペプチドまたはポリペプチドのコレクション(ライブラリーまたはレパートリー)とともに、プロテアーゼの活性に適した温度でインキュベートする。例えば、プロテアーゼおよびペプチドまたはポリペプチドのコレクションを、約20℃〜約40℃(例えば、室温、約20℃、約21℃、約22℃、約23℃、約24℃、約25℃、約26℃、約27℃、約28℃、約29℃、約30℃、約31℃、約32℃、約33℃、約34℃、約35℃、約36℃、約37℃、約38℃、約39℃、約40℃)の温度でインキュベートすることができる。プロテアーゼおよびペプチドまたはポリペプチドのコレクションを一緒に、タンパク質分解性分解が起こるために十分な時間インキュベートする。例えば、ペプチドまたはポリペプチドのコレクションを約30分〜約24または約48時間プロテアーゼと一緒にインキュベートすることができる。数例では、ペプチドまたはポリペプチドのコレクションをプロテアーゼと一緒に、一晩、または少なくとも約30分間、約1時間、約1.5時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約11時間、約12時間、約13時間、約14時間、約15時間、約16時間、約17時間、約18時間、約19時間、約20時間、約21時間、約22時間、約23時間、約24時間、約48時間、またはそれ以上インキュベートする。
【0086】
少なくとも早期選択段階において(例えば、表示系を使用する場合)、プロテアーゼによって、プロテアーゼと一緒のインキュベーションを含まない選択と比較して、選択される所望の生物学的活性を有するクローンの数が少なくとも10倍減少することが一般的に望ましい。特定例では、当該方法において用いられるプロテアーゼの量および条件は、回収されるクローンの数が、少なくとも約1log(10倍)、少なくとも約2log(100倍)、少なくとも約3log(1000倍)または少なくとも約4log(10,000倍)減少するために十分である。回収されたクローンにおいて所望の減少をもたらす適切なプロテアーゼの量およびインキュベーション条件は、通常の方法および/または本明細書中で記載されるガイダンスを用いて容易に確定することができる。
【0087】
プロテアーゼおよびペプチドまたはポリペプチドのコレクションを、任意の適切な方法を用いて組み合わせ、インキュベートすることができる(例えば、in vitro、in vivoまたはex vivo)。例えば、プロテアーゼおよびペプチドまたはポリペプチドのコレクションを、適切な容器中で組み合わせ、そしてプロテアーゼの活性に適した温度で定常状態を保持し、揺らし、振とうし、回転させるなどで組み合わせることができる。所望により、プロテアーゼおよびペプチドまたはポリペプチドのコレクションをvivoまたはex vivo系において、ポリペプチドのコレクション(例えば、ファージ表示ライブラリーまたはレパートリー)を適切な動物(例えば、マウス)中に導入し、そしてプロテアーゼ活性に十分な時間が経過した後、ペプチドまたはポリペプチドのコレクションを回収することによって、組み合わせることができる。別の例では、器官または組織をポリペプチドのコレクション(例えば、ファージ表示ライブラリーまたはレパートリー)で灌流し、そしてプロテアーゼ活性に十分な時間が経過した後、ポリペプチドのコレクションを回収する。
【0088】
インキュベーション後、プロテアーゼ耐性ペプチドまたはポリペプチドを、結合活性などの所望の生物学的活性に基づいて選択することができる。所望により、プロテアーゼ阻害剤を選択前に添加することができる。選択方法を実質的に妨害しない、任意の適切なプロテアーゼ阻害剤(または2つ以上のプロテアーゼ阻害剤の組み合わせ)を使用することができる。適切なプロテアーゼ阻害剤の例としては、α1−抗トリプシン、α2−マクログロブリン、アマスタチン、アンチパイン、抗トロンビンIII、アプロチニン、4−(2−アミノエチル)ベンゼンスルホニルフルオリドヒドロクロリド(AEBSF)、(4−アミジノフェニル)メタンスルホニルフルオリド(APMSF)、ベスタチン、ベンズアミジン、キモスタチン、3,4−ジクロロイソクマリン、ジイソプロピルフルオロホスフェート(DIFP)、E−64、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エラスタチナール、ロイペプチン、N−エチルマレイミド、フェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)、ペプスタチン、1,10−フェナントロリン、ホスフォラミドン、セリンプロテアーゼ阻害剤、N−トシル−L−リシン−クロロメチルケトン(TLCK)、Na−トシル−Phe−クロロメチルケトン(TPCK)などが挙げられる。加えて、数種のプロテアーゼの阻害剤を含む多くの調製物が市販されている(例えば、キモトリプシン、サーモリシン、パパイン、プロナーゼ、膵臓抽出物およびトリプシンを阻害する、Roche Complete Protease Inhibitor Cocktail Tablets(商標)(Roche Diagnostics Corporation;米国インディアナ州インディアナポリス))。
【0089】
プロテアーゼ耐性ペプチドまたはポリペプチドは、所望の生物学的活性を有するペプチドおよびポリペプチドを所望の生物学的活性を有さないペプチドおよびポリペプチドと識別し、選択することを可能にする、所望の生物学的活性選択方法を用いて選択することができる。一般的に、プロテアーゼによって消化され、切断されたペプチドまたはポリペプチドはそれらの生物学的活性を失い、一方、プロテアーゼ耐性ペプチドまたはポリペプチドは機能的なままである。したがって、生物学的活性に適したアッセイを使用して、プロテアーゼ耐性ペプチドまたはポリペプチドを選択することができる。例えば、一般的な結合機能(例えば、一般的リガンドの結合、特異的リガンドの結合、または基質の結合)を、適切な結合アッセイ(例えば、ELISA、パニング)を用いて査定することができる。例えば、プロテインA、プロテインLまたは抗体などの標的リガンドまたは一般的リガンドと結合するポリペプチドを、パニングによるかまたは適切な親和性マトリックスを使用することにより、選択し、単離し、および/または回収することができる。パニングは、リガンド(例えば、一般的リガンド、標的リガンド)の溶液を適切な容器(例えば、試験管、ペトリ皿)に添加し、リガンドを容器の壁上に沈着させるかまたは被覆させることによって実施できる。過剰のリガンドを洗い流し、ポリペプチド(例えば、ファージ表示ライブラリー)を容器に添加することができ、ポリペプチドが固定リガンドに結合するために適した条件下で容器を維持する。非結合ポリペプチドを洗い流し、例えば削り落とすか、またはpHを下げることによるなどの任意の適切な方法を用いて結合ポリペプチドを回収することができる。
【0090】
ファージ表示系を使用する場合、結合をファージELISAにおいて試験することができる。ファージELISAは、任意の適切な手順に従って実施することができる。一例では、選択の各ラウンドで産生されたファージの集団を、ELISAによって、選択された標的リガンドまたは一般的リガンドに対する結合についてスクリーニングして、プロテアーゼ耐性ペプチドまたはポリペプチドを表示するファージを同定することができる。所望により、可溶性ペプチドおよびポリペプチドを、標的リガンドまたは一般的リガンドに対する結合について、例えばC−またはN−末端タグに対する試薬を用いたELISAによって試験することができる(例えばWinter et al.(1994)Ann. Rev. Immunology 12, 433−55およびここに記載される引例を参照)。選択されたファージの多様性は、PCR産物のゲル電気泳動(Marks et al. 1991,前掲;Nissim et al. 1994、前掲)、プロービング(Tomlinson et al., 1992)J. Mol. Biol. 227, 776)またはベクターDNAの配列決定によっても査定することができる。
【0091】
プロテアーゼ耐性ペプチドおよびポリペプチドは、例えば、触媒活性アッセイ(例えば、タンパク質分解活性アッセイ、ホスホトランスフェラーゼアッセイ、ホスホヒドロラーゼアッセイ、ポリメラーゼ活性アッセイ)を用いて測定することができる触媒活性に基づいて選択することもできる。
【0092】
プロテアーゼ耐性ペプチドまたはポリペプチド(例えば、単一抗体可変ドメイン)は、サイトカイン、成長因子、サイトカイン受容体、成長因子受容体、酵素(例えば、プロテアーゼ)、酵素の補因子、DNA結合タンパク質、脂質および炭水化物をはじめとするヒトもしくは動物タンパク質などの一般的リガンドまたは任意の所望の標的リガンドに関して結合特異性を有し得る。サイトカイン、成長因子、サイトカイン受容体、成長因子受容体および本明細書中に記載されるような他のタンパク質をはじめとする適切な標的抗原。このリストは網羅的なものではないと理解されるであろう。
【0093】
いくつかの実施形態では、プロテアーゼ耐性ペプチドまたはポリペプチドは、TNFR1、IL−1、IL−1R、IL−4、IL−4R、IL−5、IL−6、IL−6R、IL−8、IL−8R、IL−9、IL−9R、IL−10、IL−12IL−12R、IL−13、IL−13Rα1、IL−13Ra2、IL−15、IL−15R、IL−16、IL−17R、IL−17、IL−18、IL−18R、IL−23IL−23R、IL−25、CD2、CD4、CD11a、CD23、CD25、CD27、CD28、CD30、CD40、CD40L、CD56、CD138、ALK5、EGFR、FcER1、TGFb、CCL2、CCL18、CEA、CR8、CTGF、CXCL12(SDF−1)、キマーゼ、FGF、フリン、エンドセリン−1、エオタキシン類(例えば、エオタキシン、エオタキシン−2、エオタキシン−3)、GM−CSF、ICAM−1、ICOS、IgE、IFNa、I−309、インテグリン、L−セレクチン、MIF、MIP4、MDC、MCP−1、MMP、好中球エラスターゼ、オステオポンチン、OX−40、PARC、PD−1、RANTES、SCF、SDF−1、siglec8、TARC、TGFb、トロンビン、Tim−1、TNF、TRANCE、トリプターゼ、VEGF、VLA−4、VCAM、α4β7、CCR2、CCR3、CCR4、CCR5、CCR7、CCR8、アルファvベータ6、アルファvベータ8、cMET、CD8、vWF、アミロイドタンパク質(例えば、アミロイドアルファ)、MMP12、PDK1、およびIgEからなる群から選択される標的などの、肺組織における標的を結合する。
【0094】
表示系(例えば、核酸のコード機能と当該核酸によってコードされるペプチドまたはポリペプチドの機能的特徴とを連結する表示系)を本明細書中に記載されるような方法において使用する場合、選択ペプチドまたはポリペプチドをコードする核酸のコピー数を増幅または増大させることがしばしば有利である。これにより、本明細書中に記載されるような方法または他の適切な方法を用いて、選択のさらなるラウンドのために、またはさらなるレパートリー(例えば、親和性成熟レパートリー)の調製のために十分な量の核酸および/またはペプチドまたはポリペプチドを得る効率的な方法が提供される。したがって、いくつかの実施形態では、本発明の方法は、表示系(例えば、核酸のコード機能とこの核酸によりコードされるペプチドまたはポリペプチドの機能的特徴、例えばファージ表示とを連結するもの)を使用することを含み、選択ペプチドまたはポリペプチドをコードする核酸のコピー数を増幅または増大させることをさらに含む。核酸は、ファージ増幅、細胞増殖またはポリメラーゼ連鎖反応によるなど、任意の適切な方法を用いて増幅することができる。
【0095】
本明細書中に記載されるような方法を、所望により、他の適切な選択方法を含み得る、プロテアーゼ耐性ペプチドまたはポリペプチドを単離するためのプログラムの一部として使用することができる。これらの状況では、本明細書中に記載される方法は、プログラムの任意の所望の時点で、例えば他の選択方法が用いられる前または後に用いられ得る。本明細書中に記載されるような方法は、本明細書中で例示されるように、2ラウンド以上の選択を提供するために使用することもできる。
【0096】
別の態様では、本発明は、プロテアーゼ耐性ペプチドまたはポリペプチドのレパートリーの製造方法である。この方法は、ペプチドまたはポリペプチドのレパートリーを提供すること;プロテアーゼの活性に適した条件下でペプチドまたはポリペプチドのレパートリーとプロテアーゼを組合せること;そして所望の生物学的活性を有する複数のペプチドまたはポリペプチドを回収し、それによりプロテアーゼ耐性ペプチドまたはポリペプチドのレパートリーが製造されることを包含する。好ましくは、所望の生物学的活性を有する複数のペプチドまたはポリペプチドは、一般的リガンドまたは標的リガンドに対する結合などの結合活性に基づいて回収される。本方法で用いるのに適しているプロテアーゼ、表示系、プロテアーゼ活性のための条件、ならびにペプチドまたはポリペプチドの選択方法は、本発明の他の方法と関連して本明細書中に記載される。
【0097】
いくつかの実施形態では、ペプチドまたはポリペプチドのレパートリーを含む表示系(例えば、核酸のコード機能と核酸によりコードされるペプチドまたはポリペプチドの機能的特徴を連結する表示系)が用いられ、そして当該方法はさらに、複数の選択ペプチドまたはポリペプチドをコードする核酸のコピー数を増幅するかまたは増大することを包含する。核酸は、任意の適切な方法を用いて、例えばファージ増幅、細胞増殖またはポリメラーゼ連鎖反応により増幅され得る。一実施形態では、表示系はバクテリオファージ表示であり、増幅は大腸菌における発現による。この実施形態では、大腸菌におけるプロテアーゼ発現は、プロテアーゼ耐性ペプチドまたはポリペプチドの選択のためのプロテアーゼを提供することができる。
【0098】
特定の実施形態では、本発明は、dAbを含むプロテアーゼ耐性ポリペプチドのレパートリーの製造方法である。この方法は、dAbを含むポリペプチドのレパートリーを提供すること;プロテアーゼの活性に適した条件下でペプチドまたはポリペプチドのレパートリーとプロテアーゼ(例えば、トリプシン、エラスターゼ、ロイコザイム)を組合せること;そして一般的リガンド(例えば、プロテインA、プロテインG、プロテインL)または標的リガンドに対する結合特異性を有するdAbを含む複数のポリペプチドを回収することを包含する。この方法を用いて、ナイーブレパートリー、あるいは所望の結合特異性に偏向されるレパートリー、例えば所望の標的リガンドに対する結合特異性を有する親dAbを基礎にした親和性成熟レパートリーを製造し得る。
【0099】
ポリペプチド表示系
好ましくは、本発明の方法において使用するために提供されるペプチドまたはポリペプチドのレパートリーまたはライブラリーは適切な表示系を含む。表示系は、好ましくは、プロテアーゼ(例えば、1つのプロテアーゼまたはプロテアーゼとタンパク質分解活性を含む任意の生物学的抽出物、ホモジネートもしくは調製物(例えば、血清、喀痰、粘液(例えば、胃粘液、鼻粘液、気管支粘液)、気管支肺胞洗浄、肺ホモジネート、肺抽出物、膵臓抽出物、胃液、唾液、涙などとの組み合わせ)による分解に対抗する。表示系およびこの表示系と表示されたポリペプチドとの間の連結は、好ましくは少なくともレパートリーの最も安定なペプチドまたはポリペプチドと同等にプロテアーゼに対して耐性である。これにより、選択され表示されたポリペプチドをコードする核酸を容易に単離および/または増幅することが可能になる。
【0100】
一例では、プロテアーゼ耐性ペプチドまたはポリペプチドを、溶液中、またはプラスチックもしくはガラス(例えば、マイクロタイタープレート、マイクロアレイなどのポリペプチドアレイ)などの適切な表面に共有的にまたは非共有的に結合したペプチドまたはポリペプチドのレパートリーから選択し、単離し、および/または回収することができる。例えば、それぞれ異なるライブラリー成員(例えば、独自のペプチド配列)をアレイ中の独立したあらかじめ決められた位置に配置するような表面上のペプチドのアレイを使用できる。このようなアレイにおける各ライブラリー成員の同一性は、アレイにおけるその空間的な位置によって確定することができる。例えば標的リガンドと、反応性ライブラリー成員との間の結合相互作用が起こるアレイにおける位置を確定することができ、これによって空間的位置に基づいて反応性成員の配列が特定される。(例えば、米国特許第5,143,854号、WO 90/15070およびWO 92/10092を参照)。
【0101】
好ましくは、この方法は、核酸のコード機能と、当該核酸によりコードされるポリペプチドの物理的、化学的および/または機能的特徴とを連結する表示系を用いる。このような表示系は、バクテリオファージまたは細胞(細菌)などの複数の複製可能な遺伝子パッケージを含み得る。好ましくは、表示系は、バクテリオファージ表示ライブラリーなどのライブラリーを含む。バクテリオファージ表示が特に好ましい表示系である。
【0102】
多数の適切なバクテリオファージ表示系(例えば、一価表示および多価表示系)が記載されている(例えば、Griffiths et al、米国特許第6,555,313 B1号(参照することにより本明細書で援用される);Johnson et al、米国特許第5,733,743号(参照することにより本明細書で援用される);McCafferty et al、米国特許第5,969,108号(参照することにより本明細書で援用される);Mulligan-Kehoe、米国特許第5,702,892号(参照することにより本明細書で援用される);Winter, G. et al., Annu. Rev. Immunol. 12:433-455(1994);Soumillion, P. et al., Appl. Biochem. Biotechnol. 47(2-3):175-189(1994); Castagnoli, L. et al., Comb. Chem. High Throughput Screen, 4(2):121-133(2001)を参照。)バクテリオファージ表示系で表示されたペプチドまたはポリペプチドを、例えば線状ファージ(例えば、fd、M13、F1)、溶菌ファージ(例えば、T4、T7、ラムダ)、またはRNAファージ(例えば、MS2)などの任意の適切なバクテリオファージ上で表示することができる。
【0103】
一般的に、ペプチドまたはファージポリペプチドのレパートリーを表示するファージのライブラリーが、適切なファージコートタンパク質との融合タンパク質(例えば、fd pIIIタンパク質)として、産生または提供される。融合タンパク質は、ファージコートタンパク質の先端で、または所望により内部の位置で、ペプチドまたはポリペプチドを表示する。例えば、表示されたペプチドまたはポリペプチドを、pIIIのドメイン1に対してアミノ末端である位置で表示することができる。(pIIIのドメイン1はN1とも称する。)表示されたポリペプチドを、pIII(例えば、pIIIのドメイン1のN−末端)に直接融合することができるか、またはリンカーを用いてpIIIに融合させることができる。所望により、融合物はタグ(例えば、mycエピトープ、Hisタグ)をさらに含み得る。ファージコートタンパク質との融合タンパク質として表示されたペプチドまたはポリペプチドのレパートリーを含むライブラリーを、ファージベクターのライブラリーまたは表示されたペプチドまたはポリペプチドをコードするファージミドベクターを適切な宿主細菌中に導入し、結果として得られた細菌を培養して、ファージを産生することによるなど、任意の適切な方法を用いて産生することができる(例えば、適切なヘルパーファージを使用するか、または所望によりプラスミドを補足する)。適切には、本発明の一実施形態では、細菌におけるプロテアーゼ発現に適した条件を選択する。ファージのライブラリーを、沈降および遠心分離などの任意の適切な方法を用いて培養物から回収することができる。
【0104】
表示系は、任意の所望の量の多様性を含むペプチドまたはポリペプチドのレパートリーを含み得る。例えば、このレパートリーは、生物体、生物体群、所望の組織もしくは所望の細胞型によって発現される天然に存在するポリペプチドに対応するアミノ酸配列を有するペプチドまたはポリペプチドを含み得るか、またはランダム若しくはランダム化アミノ酸配列を有するペプチドまたはポリペプチドを含み得る。所望により、ポリペプチドは共通のコアまたは足場を共有し得る。例えば、レパートリーまたはライブラリー中の全てのポリペプチドは、プロテインA、プロテインL、プロテインG、フィブロネクチンドメイン、アンチカリン、CTLA4、所望の酵素(例えば、ポリメラーゼ、セルラーゼ)、または免疫グロブリンスーパーファミリー由来のポリペプチド、例えば抗体または抗体断片(例えば、抗体可変ドメイン)から選択される足場を基礎とすることができる。このようなレパートリーまたはライブラリーにおけるポリペプチドは、ランダムまたはランダム化アミノ酸配列の所定の領域および共通のアミノ酸配列の領域を含み得る。ある実施形態では、レパートリー中の全てのまたは実質的に全てのポリペプチドは、所望の酵素(例えば、ポリメラーゼ)または抗体の所望の抗原結合断片(例えば、ヒトVまたはヒトV)などの所望のタイプのものである。好ましい実施形態では、ポリペプチド表示系は、各ポリペプチドが抗体可変ドメインを含む、ポリペプチドのレパートリーを含む。例えば、レパートリー中の各ポリペプチドは、V、VまたはFv(例えば、一本鎖Fv)を含み得る。本明細書中に記載されるように、レパートリーは、GLP−1またはその誘導体、例えばジペプチジルペプチダーゼIV耐性誘導体などの親分子を基礎とするポリペプチドのライブラリーであり得る。
【0105】
アミノ酸配列多様性を、任意の適切な方法を用いて、ペプチドまたはポリペプチドまたは足場の任意の所望の領域中に導入することができる。例えば、アミノ酸配列多様性は、任意の適切な突然変異誘発法(例えば、低忠実性PCR(low fidelity PCR)、オリゴヌクレオチド媒介性または部位特異的突然変異誘発、NNKコドンを使用した多様化)または任意の他の適切な方法を用いて、多様化ポリペプチドをコードする核酸のライブラリーを調製することにより、抗体可変ドメインまたは疎水性ドメインの相補性決定領域などの標的領域中に導入することができる。所望により、多様化されるポリペプチドの領域をランダム化することができる。
【0106】
レパートリーを構成するポリペプチドのサイズは、概して自由に選択でき、均一なポリペプチドサイズは必要ではない。好ましくは、レパートリー中ポリペプチドは、少なくとも三次構造を有する(少なくとも1つのドメインを形成する)。
【0107】
選択/単離/回収
プロテアーゼ耐性ペプチドまたはポリペプチド(例えば、プロテアーゼ耐性ポリペプチドの集団)は、任意の適切な方法を用いて、レパートリーまたはライブラリー(例えば、表示系において)から選択され、単離され、および/または回収され得る。好ましくは、プロテアーゼ耐性ポリペプチドは、選択可能な特徴(例えば、物理的特徴、化学的特徴、機能的特徴)に基づいて、選択されるかまたは単離される。適切な選択可能な機能的特徴としては、レパートリー中のペプチドまたはポリペプチドの生物学的活性、例えば一般的リガンド(例えば、超抗原)との結合、標的リガンド(例えば、抗原、エピトープ、基質)との結合、抗体との結合(例えば、ペプチドまたはポリペプチド上に発現されるエピトープを介して)、および触媒活性が挙げられる(例えば、Tomlinson et al.、WO99/20749;WO01/57065;WO99/58655参照)。
【0108】
いくつかの実施形態では、プロテアーゼ耐性ペプチドまたはポリペプチドは、実質的に全てのプロテアーゼ耐性ペプチドまたはポリペプチドが共通の選択可能な特徴を共有するペプチドまたはポリペプチドのライブラリーまたはレパートリーから、選択され、および/または単離される。例えば、プロテアーゼ耐性ペプチドまたはポリペプチドは、実質的に全てのプロテアーゼ耐性ペプチドまたはポリペプチドが、共通の一般的リガンドを結合し、共通の標的リガンドを結合し、共通の標的抗体を結合し(またはそれにより結合され)、あるいは共通の触媒活性を保有するライブラリーまたはレパートリーから選択され得る。この型の選択は、例えば、免疫グロブリン単一可変ドメインの親和性成熟を実施する場合、所望の生物学的活性を有する親ペプチドまたはポリペプチドに基づいているプロテアーゼ耐性ペプチドまたはポリペプチドのレパートリーを調製するために特に有用である。
【0109】
共通の一般的リガンドとの結合に基づいた選択は、元のライブラリーまたはレパートリーの構成成分であったプロテアーゼ耐性ペプチドまたはポリペプチドのうちの全てまたは実質的に全てを含有するペプチドまたはポリペプチドのコレクションまたは集団を生じ得る。例えば、標的リガンドまたは一般的リガンド、例えばプロテインA、プロテインLまたは抗体を結合するペプチドまたはポリペプチドは、適切な親和性マトリックスをパニングするかまたは用いることにより、選択され、単離され、および/または回収され得る。パニングは、適切な容器(例えば、試験管、ペトリ皿)にリガンド(例えば、一般的リガンド、標的リガンド)の溶液を付加し、そして容器の壁上にリガンドが沈着しまたは被覆するようにさせることにより成し遂げられ得る。過剰量のリガンドは洗い落とされ、ペプチドまたはポリペプチド(例えば、プロテアーゼとともにインキュベートされたレパートリー)が容器に付加されて、固定化リガンドを結合するためにペプチドまたはポリペプチドに適した条件下で容器が保持される。任意の適切な方法、例えば削り落とすか、またはpHを下げることにより、非結合ペプチドまたはポリペプチドは洗い落とされて、結合ペプチドまたはポリペプチドが回収され得る。
【0110】
適切なリガンド親和性マトリックスは、一般的に、リガンドが共有的にまたは非共有的に結合される固体支持体またはビーズ(例えば、アガロース)を含有する。親和性マトリックスは、マトリックス上のリガンドとのペプチドまたはポリペプチドの結合に適した条件下で、バッチ法、カラム法または任意の他の適切な方法を用いて、ペプチドまたはポリペプチド(例えば、プロテアーゼとともにインキュベートされたレパートリー)と組合され得る。親和性マトリックスを結合しないペプチドまたはポリペプチドは洗い落とされて、結合ペプチドまたはポリペプチドが、任意の適切な方法を用いて、例えば、低pH緩衝液を用いた、低刺激性変性剤(例えば、尿素)を用いた、あるいはリガンドとの結合に関して競合するペプチドを用いた溶離により、溶離され、回収され得る。一例では、ビオチニル化標的リガンドが、レパートリー中のペプチドまたはポリペプチドに適した条件下でレパートリーと組合されて、標的リガンドを結合する。結合ペプチドまたはポリペプチドは、固定化アビジンまたはストレプトアビジン(例えば、ビーズ上)を用いて回収される。
【0111】
いくつかの実施形態では、一般的または標的リガンド、抗体またはその抗原結合断片である。ライブラリーまたはレパートリーのペプチドまたはポリペプチド中に実質的に保存されるペプチドまたはポリペプチドの構造的特徴を結合する抗体または抗原結合断片は、一般的リガンドとして特に有用である。プロテアーゼ耐性ペプチドまたはポリペプチドを単離し、選択し、および/または回収するためのリガンドとして用いるのに適した抗体および抗原結合断片は、モノクローナルまたはポリクローナルであり得るし、任意の適切な方法を用いて調製され得る。
【0112】
ライブラリー/レパートリー
他の態様では、本発明は、プロテアーゼ耐性ペプチドおよびポリペプチドのレパートリー、プロテアーゼ耐性ペプチドおよびポリペプチドをコードするライブラリー、ならびにこのようなライブラリーおよびレパートリーの製造方法に関する。
【0113】
プロテアーゼ耐性ペプチドおよびポリペプチドをコードする、および/または含むライブラリーは、任意の適切な方法を用いて調製することができるか、または得ることができる。本発明のライブラリーは、目的のペプチドまたはポリペプチド(例えば、ライブラリーから選択されたペプチドもしくはポリペプチド)に基づいてプロテアーゼ耐性ペプチドまたはポリペプチドをコードするように設計することができるか、または本明細書中に記載される方法を用いて別のライブラリーから選択することができる。例えば、プロテアーゼ耐性ポリペプチドで富化されたライブラリーは、適切なポリペプチド表示系を用いて調製することができる。
【0114】
一例では、免疫グロブリン単一可変ドメイン(例えば、V、Vk、Vλ)を含む表示されたポリペプチドのレパートリーを含むファージ表示ライブラリーを、本明細書中に記載されるように、プロテアーゼの活性に適した条件下でプロテアーゼと組み合わせる。プロテアーゼ耐性ポリペプチドを、結合活性(例えば、結合一般的リガンド、結合標的リガンド)などの所望の生物学的活性に基づいて回収し、これによりプロテアーゼ耐性ポリペプチドで富化されたファージ表示ライブラリーを生じる。
【0115】
別の例では、免疫グロブリン単一可変ドメイン(例えば、V、Vκ、Vλ)を含む表示されたポリペプチドのレパートリーを含むファージ表示ライブラリーを、まず、所望の標的抗原に対する結合特異性を有するレパートリーの成員を同定するためにスクリーニングする。所望の結合特異性を有するポリペプチドのコレクションを回収し、このコレクションを、本明細書中に記載されるように、タンパク質分解活性に適した条件下でプロテアーゼと組み合わせる。所望の標的結合特異性を有するプロテアーゼ耐性ポリペプチドのコレクションを回収し、プロテアーゼ耐性および高親和性ポリペプチドで富化されたライブラリーを生じる。本明細書中に記載されるように、この選択方法におけるプロテアーゼ耐性は、高親和性結合と相関する。
【0116】
所望の型のポリペプチドのレパートリーをコードするライブラリーは、任意の適切な方法を用いて容易に産生することができる。例えば、所望の型のポリペプチド(例えば、ポリメラーゼ、免疫グロブリン可変ドメイン)をコードする核酸配列を得ることができ、それぞれが1つ以上の突然変異を含む核酸のコレクションを、例えばエラープローンポリメラーゼ連鎖反応(PCR)系を用いて核酸を増幅することによるか、化学的突然変異誘発(Deng et al., J. Biol. Chem., 269:9533(1994))によるか、または細菌突然変異誘発(Low et al., J. Mol. Biol., 260:359(1996))を用いることにより、調製することができる。
【0117】
他の実施形態では、核酸の特定領域を多様化のために標的とすることができる。選択された位置を突然変異させるための方法も当該技術分野で周知であり、例えば、ミスマッチオリゴヌクレオチドまたは縮重オリゴヌクレオチドの使用(PCRの使用の有無は問わない)が挙げられる。例えば、合成抗体ライブラリーは、抗原結合ループに対する突然変異を標的とすることにより作製されてきた。ランダムまたは半ランダム抗体H3およびL3領域を生殖細胞系免疫グロブリンV遺伝子断片に付加して、非突然変異化フレームワーク領域を有する大きなライブラリーが産生されてきた(Hoogenboom and Winter(1992)前掲;Nissim et al.(1994)前掲;Griffiths et al.(1994)前掲;DeKruif et al.(1995)前掲)。このような多様化は、抗原結合ループの一部または全部を含むまでに拡張されている(Crameri et al.(1996)Nature Med., 2:100;Riechmann et al.(1995)Bio/Technology, 13:475;Morphosys, WO 97/08320、前掲)。他の実施形態では、核酸の特定領域は、例えば、第1PCRの産物を「メガプライマー」として用いる二段階PCR法によって、多様化に関して標的とされ得る。(例えば、Landt, O. et al., Gene 96:125−128(1990)。)標的とされた多様化は、例えば、SOE PCRによっても成し遂げることができる(例えば、Horton, R.M. et al., Gene 77:61−68(1989)を参照。)
【0118】
選択された位置での配列多様性は、多数の可能なアミノ酸(例えば、20個全てまたはそのサブセット)をその位置に組み入れることができるようにポリペプチドの配列を特定するコーディング配列を改変することによって達成できる。IUPAC命名法を用いて、最も多目的なコドンはNNKであり、これは全てのアミノ酸ならびにタグ終止コドンをコードする。NNKコドンは、好ましくは、必要とされる多様性を導入するために使用される。同じ目的を達成する他のコドン、例えばさらなる終止コドンであるTGAおよびTAAの産生をもたらすNNNコドンも使用される。このような標的化法により、標的部位における全配列スペースを調査することが可能になる。
【0119】
好ましいライブラリーは、免疫グロブリンスーパーファミリーの成員(例えば、抗体またはその一部)であるプロテアーゼ耐性ポリペプチドを含む。例えば、ライブラリーは、既知の主鎖形状を有するプロテアーゼ耐性抗体ポリペプチドを含み得る。(例えば、Tomlinson et al.、WO 99/20749を参照。)ライブラリーは、適切なプラスミドまたはベクターにおいて調製することができる。本明細書中で用いる場合、ベクターは、その発現および/または複製のため細胞中に異種DNAを導入するために用いられる別個の要素を指す。プラスミド(例えば、細菌プラスミド)、ウイルスまたはバクテリオファージベクター、人工染色体およびエピソームベクターをはじめとする任意の適切なベクターを用いることができる。このようなベクターは、簡単なクローニングおよび突然変異誘発に使用してもよいし、または発現ベクターを用いてライブラリーを発現させることもできる。ベクターおよびプラスミドは、通常、1つ以上のクローニング部位(例えば、ポリリンカー)、複製起点および少なくとも1つの選択可能なマーカー遺伝子を含む。発現ベクターは、例えばエンハンサー要素、プロモーター、転写終結シグナル、シグナル配列などのポリペプチドの転写および翻訳を行う要素をさらに含み得る。これらの要素は、ポリペプチドをコードするクローンされた挿入物に機能的に連結されるような方法で配置して、このような発現ベクターが発現に適した条件下(例えば、適切な宿主細胞中)で保持される場合にポリペプチドが発現され、産生されるようにすることができる。
【0120】
クローニングおよび発現ベクターは、一般的に、ベクターが1つ以上の選択された宿主細胞を複製することを可能にする核酸配列を含む。クローニングベクターにおいて典型的には、この配列は、ベクターが宿主染色体DNAとは関係なく複製することを可能にするものであり、複製起点または自己複製配列を含む。このような配列は、種々の細菌、酵母およびウイルスに関して周知である。プラスミドpBR322からの複製起点はほとんどのグラム陰性菌に適し、2ミクロンプラスミド起源は酵母に適し、様々なウイルス起源(例えばSV40、アデノウイルス)はほ乳類細胞におけるクローニングベクターに有用である。一般的に、複製起点は、COS細胞などの高レベルのDNAを複製できるほ乳類細胞においてこれらが使用されない限り、ほ乳類発現ベクターに必要でない。
【0121】
クローニングまたは発現ベクターは、選択可能なマーカーとも称する選択遺伝子を含み得る。このようなマーカー遺伝子は、選択培養培地中で増殖させた形質転換宿主細胞の生存または増殖に必要なタンパク質をコードする。選択遺伝子を含むベクターで形質転換されていない宿主細胞は、したがって、この培地中では生存しないであろう。典型的な選択遺伝子は、抗生物質および他の毒素、例えばアンピシリン、ネオマイシン、メトトレキサートまたはテトラサイクリンに対する耐性を付与するか、または栄養要求性欠損(auxotrophic deficiencies)を補完するか、または増殖培地において利用可能でない重要な栄養素を供給するタンパク質をコードする。
【0122】
適切な発現ベクターは、多数の構成成分、例えば、複製起点、選択可能なマーカー遺伝子、1つ以上の発現制御要素、例えば転写制御要素(例えば、プロモーター、エンハンサー、ターミネーター)および/または1つ以上の翻訳シグナル、シグナル配列またはリーダー配列などを含み得る。発現制御要素およびシグナルまたはリーダー配列は、もし存在するならば、ベクターまたは他の供給源によって提供され得る。例えば、抗体鎖をコードするクローンされた核酸の転写および/または翻訳制御配列を使用して、発現を行うことができる。
【0123】
プロモーターは、所望の宿主細胞における発現のために提供され得る。プロモーターは構成的または誘発的であり得る。例えば、プロモーターは、抗体、抗体鎖またはその一部をコードする核酸と機能的に連結させて、核酸の転写を行わせることができる。原核生物(例えば、大腸菌のβ−ラクタマーゼおよびラクトースプロモーター系、アルカリホスファターゼ、トリプトファン(trp)プロモーター系、lac、tac、T3、T7プロモーター)および真核生物(例えば、シミアン・ウイルス40早期または後期プロモーター、ラウス肉腫ウイルス長末端反復プロモーター、サイトメガロウイルスプロモーター、アデノウイルス後期プロモーター、EG−1aプロモーター)宿主に関して種々の適切なプロモーターが利用可能である。
【0124】
加えて、発現ベクターは、典型的にはベクターを保有する宿主細胞の選択のための選択可能なマーカーを含み、複製可能な発現ベクターの場合は、複製起点を含む。抗生物質または薬剤耐性を付与する産物をコードする遺伝子は、一般的な選択可能なマーカーであり、原核生物(例えば、β−ラクタマーゼ遺伝子(アンピシリン耐性)、テトラサイクリン耐性についてのTet遺伝子)および真核生物細胞(例えば、ネオマイシン(G418またはジェネティシン)、gpt(ミコフェノール酸)、アンピシリン、またはハイグロマイシン耐性遺伝子)において使用することができる。ジヒドロ葉酸還元酵素マーカー遺伝子は、種々の宿主においてメトトレキサートでの選択を可能にする。宿主の栄養要求性マーカーの遺伝子産物をコードする遺伝子(例えば、LEU2、URA3、HIS3)は、多くの場合、酵母において選択可能なマーカーとして用いられる。ウイルス(例えば、バクロウイルス)またはファージベクター、ならびに宿主細胞のゲノム中に組み入れることができるベクター、例えばレトロウイルスベクターの使用も想定される。
【0125】
原核生物(例えば、大腸菌などの細菌細胞)またはほ乳類細胞に適した発現ベクターとしては、例えば、pETベクター(例えば、pET−12a、pET−36、pET−37、pET−39、pET−40、Novagenなど)、ファージベクター(例えば、pCANTAB 5 E、Pharmacia)、pRIT2T(プロテインA融合物ベクター、Pharmacia)、pCDM8、pCDNA1.1/amp、pcDNA3.1、pRc/RSV、pEF−1(Invitrogen(カリフォルニア州カールズバッド))、pCMV−SCRIPT、pFB、pSG5、pXT1(Stratagene(カリフォルニア州ラ・ホーヤ))、pCDEF3(Goldman, L.A., et al., Biotechniques, 21:1013-1015(1996))、pSVSPORT(GibcoBRL, Rockville, MD)、pEF−Bos(Mizushima, S., et al., Nucleic Acids Res., 18:5322(1990))などが挙げられる。原核生物細胞(大腸菌)、昆虫細胞s(ショウジョウバエSchnieder S2細胞、Sf9)、酵母(P. methanolica、P. pastoris、S. cerevisiae)およびほ乳類細胞(例えば、COS細胞)などの様々な発現宿主における使用に適した発現ベクターが利用可能である。
【0126】
好ましいベクターは、ポリペプチドライブラリー成員に対応するヌクレオチド配列の発現を可能にする発現ベクターである。したがって、一般的および/または標的リガンドを用いた選択は、ポリペプチドライブラリー成員を発現する1つのクローンの別個の増殖および発現により実施することができる。前述のように、好ましい選択表示系はバクテリオファージ表示である。したがって、ファージまたはファージミドベクターを使用してもよい。好ましいベクターは、複製の大腸菌起源(二本鎖複製に関して)および複製のファージ起源(一本鎖DNAの産生に関して)を有するファージミドベクターである。このようなベクターの操作および発現は当該技術分野で周知である(Hoogenboom and Winter(1992)前掲;Nissim et al.(1994)前掲)。手短に説明すると、ベクターは、ファージミドおよび、適切なリーダー配列、複数のクローニング部位、1つ以上のペプチドタグ、1つ以上のタグ終止コドンおよびファージタンパク質pIIIを含み得る発現カセットの上流のlacプロモーターに選択性を付与するためのβ−ラクタマーゼ遺伝子を含み得る。したがって、大腸菌の様々なサプレッサーおよび非サプレッサー株を用い、グルコース、イソプロピルチオ−β−D−ガラクトシド(IPTG)またはヘルパーファージ、例えばVCS M13を添加して、ベクターは発現のないプラスミドとして複製することができるか、大量のポリペプチドライブラリー成員のみを産生することができるか、またはファージを産生することができ、このファージの一部はそれらの表面上に少なくとも1コピーのポリペプチド−pIII融合物を含む。
【0127】
本発明のライブラリーおよびレパートリーは、抗体フォーマットを含むことができる。例えば、ライブラリーおよびレパートリー中に含まれるポリペプチドは、全抗体またはその断片、例えばFab、F(ab’)、FvまたはscFv断片、別個のVまたはVドメインであり得、これらはいずれも修飾されているかまたは修飾されていないかのいずれかである。scFv断片、ならびに他の抗体ポリペプチドは、任意の適切な方法を用いて容易に産生することができる。多数の適切な抗体操作法は、当該技術分野で周知である。例えば、scFvは、2つの可変ドメインをコードする核酸を、適切なリンカーペプチド、例えば(Gly−Gly−Gly−Gly−Ser)または他の適切なリンカーペプチドをコードする適切なオリゴヌクレオチドと連結することによって形成することができる。リンカーは、第1V領域のC−末端と第2V領域のN−末端とを架橋する。Fv、FabおよびF(ab’)断片などの他の抗体フォーマットの構築のための類似した技術を使用することができる。FabおよびF(ab’)断片をフォーマット化するために、VおよびVポリペプチドを定常領域セグメントを組み合わせることができ、これらは再配列された遺伝子、生殖細胞系C遺伝子から単離することができるか、または抗体配列データから合成することができる。本発明のライブラリーまたはレパートリーは、VまたはVライブラリーまたはレパートリーである得る。
【0128】
プロテアーゼ耐性可変ドメインを含むポリペプチドは、好ましくは標的リガンド結合部位および/または一般的リガンド結合部位を含む。ある実施形態では、一般的リガンド結合部位は、プロテインA、プロテインLまたはプロテインGなどの超抗原の結合部位である。可変ドメインは、任意の所望の可変ドメイン、例えばヒトVH(例えば、V1a,V1b,V2,V3,V4,V5,V6)、ヒトVλ(例えば、VλI、VλII、VλIII、VλIV、VλV、VλVIもしくはVκ1)またはヒトVκ(例えば、Vκ2、Vκ3、Vκ4、Vκ5、Vκ6、Vκ7、Vκ8、Vκ9もしくはVκ10)を基礎とするものであり得る。
【0129】
核酸、宿主細胞およびプロテアーゼ耐性ポリペプチドの産生方法
本発明は、例えば、本明細書中に記載される方法によって選択可能であるかまたは選択される、プロテアーゼ耐性ペプチドまたはポリペプチドをコードする単離および/または組換え核酸に関する。
【0130】
本明細書中で「単離された」として言及される核酸は、その元の環境(例えば、細胞中またはライブラリーなどの核酸の混合物中)における他の物質(例えば、ゲノムDNA、cDNAおよび/またはRNAなどの他の核酸)から分離された核酸である。単離された核酸は、ベクター(例えば、プラスミド)の一部として単離することができる。
【0131】
本明細書中で「組換え」として言及される核酸は、例えば、制限酵素、相同的組換え、ウイルスなどを用いてベクターまたは染色体中へのクローニングなどの遺伝子組換えに依存した方法をはじめとする組換えDNA法により産生された核酸、およびポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いて調製された核酸である。
【0132】
本発明はまた、プロテアーゼ耐性ペプチドまたはポリペプチド、例えば本明細書中に記載される方法によって選択可能であるかまたは選択されるペプチドまたはポリペプチド、をコードする核酸を含む(1つ以上の)組換え核酸または発現構築物を含む組換え宿主細胞に関する。本発明はまた、プロテアーゼ耐性ペプチドまたはポリペプチドの調製法であって、本発明の組換え宿主細胞をプロテアーゼ耐性ペプチドまたはポリペプチドの発現に適した条件下で維持することを含む方法も包含する。この方法は、所望により、プロテアーゼ耐性ペプチドまたはポリペプチドを単離するかまたは回収する工程をさらに含み得る。
【0133】
例えば、プロテアーゼ耐性ペプチドまたはポリペプチドをコードする核酸分子(すなわち、1つ以上の核酸分子)、またはこのような核酸分子を含む発現構築物(すなわち、1つ以上の構築物)を、適切な宿主細胞中に導入して、選択された宿主細胞に適切な任意の方法(例えば、形質転換、トランスフェクション、エレクトロポレーション、感染)を用いて組換え宿主細胞を作製し、核酸分子を1つ以上の発現制御要素(例えば、宿主細胞ゲノム中に組み入れられた、ベクター中、細胞におけるプロセスによって作製された構築物中)と機能的に連結させる。結果として得られた組換え宿主細胞を発現に適した条件下(例えば、インデューサーの存在下、適切な動物中、適切な塩、成長因子、抗生物質、栄養補給剤などを添加した適切な培地中)で保持することができ、これによりコードされたペプチドまたはポリペプチドが産生される。所望により、コードされたペプチドまたはポリペプチドを、(例えば、動物、宿主細胞、培地、乳から)単離するかまたは回収することができる。このプロセスは、トランスジェニック動物の宿主細胞における発現を包含する(例えば、WO 92/03918、GenPharm Internationalを参照)。
【0134】
本明細書中に記載される方法により選択されるプロテアーゼ耐性ペプチドまたはポリペプチドは、適切なin vitro発現系において、化学的合成、または任意の他の適切な方法によっても産生され得る。
【0135】
ポリペプチド、dAb、アゴニスト、およびアンタゴニスト
本明細書中で記載され、例示されるように、本発明のプロテアーゼ耐性ポリペプチド、ペプチドまたはdAbは、一般的に、それらの標的リガンドを高い親和性で結合する。したがって、別の態様では、標的抗原を高い親和性で結合する本発明のポリペプチドまたはdAbを選択し、単離し、および/または回収するための方法が提供される。一般的に、この方法は、ペプチドまたはポリペプチドのライブラリーまたはレパートリー(例えばdAb)を提供すること、ライブラリーまたはレパートリーをプロテアーゼ(例えば、トリプシン、エラスターゼ、ロイコザイム、パンクレアチン、喀痰)とプロテアーゼの活性に適した条件下で組み合わせること、ならびにリガンド(例えば、標的リガンド)を結合するペプチドまたはポリペプチドを選択し、単離し、および/または回収することを含む。ライブラリーまたはレパートリーは、プロテアーゼ感受性ペプチドまたはポリペプチドが消化される条件下でプロテアーゼにさらされているので、プロテアーゼの活性は、低い結合親和性を有するあまり安定でないポリペプチドを除去し得、これにより高親和性結合ペプチドまたはポリペプチドのコレクションが産生される。例えば、本発明のポリペプチドまたはdAbは、標的抗原を1μM以上、または約500nM〜約0.5pMの親和性(KD;表面プラズモン共鳴により確定した場合、KD=Koff(kd)/Kon(ka))で結合することができる。例えば、本発明のポリペプチドまたはdAbは、標的抗原(例えば、TNFR1)を約500nM、約100nM、約10nM、約1nM、約500pM、約100pM、約10pM、約1pMまたは約0.5pMの親和性で結合することができる。任意の特定の理論に縛られることなく考えると、プロテアーゼに対して耐性であるペプチドおよびポリペプチドは、より低いエントロピーおよび/またはより高い安定化エネルギーを有すると考えられる。したがって、プロテアーゼ耐性と高親和性結合との間の相関は、本明細書中に記載される方法により選択されるペプチドおよびポリペプチドおよびdAbの表面の緊密性および安定性と関連づけられ得る。
【0136】
ポリペプチド、dAb、アゴニストまたはアンタゴニストは、大腸菌で、またはピキア種(例えば、メタノール資化酵母)で発現され得る。一実施形態では、リガンドまたはdAb単量体は、大腸菌で、またはピキア種(例えば、メタノール資化酵母)で発現される場合、少なくとも約0.5mg/Lの量で分泌される。本明細書中に記載されるリガンドおよびdAb単量体は、大腸菌で、またはピキア種(例えば、メタノール資化酵母)で発現される場合に分泌可能であり得るが、しかし、それらは、大腸菌またはピキア種を用いない任意の適切な方法、例えば合成化学的方法または生物学的産生方法を用いて産生され得る。
【0137】
いくつかの実施形態では、ポリペプチド、dAb、アゴニストまたはアンタゴニストは、ラクダ類免疫グロブリン可変ドメイン、あるいは、例えば位置108、37、44、45および/または47で、ラクダ類生殖系列抗体遺伝子セグメントによりコードされる免疫グロブリン可変ドメインに独特である1つ以上のフレームワークアミノ酸を含まない。
【0138】
本発明のアゴニストまたはアンタゴニストは、一価または多価であり得る。いくつかの実施形態では、アゴニストまたはアンタゴニストは一価であり、本発明のポリペプチドまたはdAbにより提供される結合部位である、標的抗原と相互作用する1つの結合部位を含有する。一価アゴニストまたはアンタゴニストは1つの標的抗原を結合し、受容体の活性化およびシグナル変換を起こし得る細胞の表面上の標的抗原(例えば、受容体抗原)の架橋またはクラスター化を誘導し得ない。
【0139】
他の実施形態では、本発明のアゴニストまたはアンタゴニストは多価である。多価アゴニストまたはアンタゴニストは、標的抗原に関する特定結合部位の2つ以上のコピーを含有するか、または標的抗原を結合する2つ以上の異なる結合部位を含有し得る(結合部位の少なくとも1つは本発明のポリペプチドまたはdAbにより提供される)。例えば、本明細書中に記載されるように、アゴニストまたはアンタゴニストは、標的抗原を結合する本発明の特定のポリペプチドまたはdAbの2つ以上のコピー、あるいは標的抗原を結合する本発明の2つ以上の異なるポリペプチドまたはdAbを含む二量体、三量体または多量体であり得る。一実施形態では、多価アンタゴニストは細胞表面受容体抗原を結合し、標準的細胞アッセイにおいて抗原を実質的に刺激(抗原のアゴニストとして作用)しない。
【0140】
ある実施形態では、多価アゴニストまたはアンタゴニストは、標的抗原の所望のエピトープまたはドメインに対する2つ以上の結合部位を含む。
【0141】
他の実施形態では、ポリペプチドは、GLP−1由来のペプチドなどのインスリン分泌促進剤であってよい。インスリン分泌促進剤の有効性、DPP−IVなどのプロテーゼに対する耐性、投与後の半減期およびin vivo効果を確定するために適した方法は、例えばWO 2006/059106に記載されている。
【0142】
他の実施形態では、多価アゴニストまたはアンタゴニストは、標的抗原の異なるエピトープと結合する本発明のポリペプチドまたはdAbによって提供される2つ以上の結合部位を含む。
【0143】
ある実施形態では、本発明のポリペプチド、dAb、アゴニストまたはアンタゴニストは、有効量が投与される場合、慢性炎症性疾患のモデルにおいて有効である。一般的に、有効量は、約1mg/kg〜約10mg/kg(例えば、約1mg/kg、約2mg/kg、約3mg/kg、約4mg/kg、約5mg/kg、約6mg/kg、約7mg/kg、約8mg/kg、約9mg/kgまたは約10mg/kg)である。慢性炎症性疾患のモデル(WO2006038027に記載されているものを参照)は、ヒトにおいて治療上有効であると予想されることが当業者により認められている。
【0144】
一般的に、本発明のリガンド(例えば、アゴニスト、アンタゴニスト)は、薬理学的に適切な担体と一緒に、精製形態で利用される。典型的には、これらの担体としては、水性またはアルコール性/水性の溶液、乳濁液または懸濁液、生理食塩水および/または緩衝媒質を含む何れかが挙げられ得る。非経口ビヒクルとしては、塩化ナトリウム溶液、リンガーのデキストロース、デキストロースならびに塩化ナトリウムおよび乳酸加リンガー液が挙げられる。適切な生理学的に許容可能なアジュバントは、懸濁液中にポリペプチド複合体を保持する必要がある場合、濃化剤、例えばカルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ゼラチンおよびアルギン酸塩から選択され得る。
【0145】
静脈内ビヒクルには、流体および栄養素補給剤および電解質補給剤、例えばリンガーのデキストロースに基づくものが含まれる。防腐剤およびその他の添加剤、例えば抗菌剤、酸化予防剤、キレート化剤および不活性ガスも存在し得る(Mack (1982)Remington’s Pharmaceutical Sciences, 16th Edition)。種々の適切な処方物、例えば徐放性処方物が用いられ得る。
【0146】
本発明のリガンド(例えばアンタゴニスト)は、別々に投与される組成物として、または他の作用物質とともに用いられ得る。これらの例としては、シクロスポリン、メトトレキサート、アドリアマイシンまたはシスプラチナム、および抗毒素などの様々な免疫療法薬が挙げられる。製剤組成物は、本発明のリガンドとともに種々の細胞毒性薬または他の作用物質の、例えば(それらが投与前にプールされていてもいなくても)異なる標的抗原またはエピトープを用いて選択されるリガンドの組合せの「カクテル」を包含し得る。
【0147】
本発明の製剤組成物の投与経路は、当業者に一般的に知られているもののいずれかであってよい。免疫療法を包含するが、これに限定されない療法に関して、本発明のその選択されたリガンドは、標準的技術にしたがって任意の患者に投与することができる。
【0148】
投与は、非経口、静脈内、筋肉内、腹腔内、経皮、肺経路を介して、または適切には、カテーテルを用いた直接注入によるなど、任意の適切な様式によって行うことができる。投与量および頻度は、患者の年齢、性別および症状、他の薬剤の同時投与、禁忌、ならびに臨床医が考慮すべきその他のパラメーターに左右される。投与は、局所(例えば、肺投与による肺への局所送達、例えば鼻内投与)または適応があれば全身性であり得る。
【0149】
本発明のリガンドは、貯蔵のために凍結乾燥され、そして使用前に適切な担体中で再構成され得る。この技法は、慣用的免疫グロブリンを用いて有効であることが示されており、当該技術分野で既知の凍結乾燥および再構成技法が用いられ得る。凍結乾燥および再構成が種々の程度の抗体活性損失(例えば、慣用的免疫グロブリンに関しては、IgM抗体はIgG抗体より大きい活性損失を有する傾向がある)を引き起こし得る、そして使用レベルが上向きに調整されて補償しなければならないこともある、と当業者は理解するであろう。
【0150】
本発明のリガンド(例えば、アゴニスト、アンタゴニスト)またはそのカクテルを含有する組成物は、予防的および/または治療的処置のために投与され得る。ある治療的適用では、選択細胞の集団の、少なくとも部分的な抑制、抑圧、調整、死滅、あるいはいくつかの他の測定可能なパラメーターを成し遂げるための適切な量は、「治療的有効用量」と定義され得る。この投与量を達成するために必要とされる量は、患者自身の免疫系の疾患および全身状態の重症度に左右されるが、一般的に、体重1キログラムあたり0.005〜5.0mgのリガンド、例えばdAb、アゴニストまたはアンタゴニストの範囲であり、0.05〜2.0mg/kg/用量の用量がより一般的に用いられる。予防的適用では、本発明のリガンドまたはそれらのカクテルを含有する組成物は、疾患の開始を予防、阻害または遅らせるために(例えば、緩和もしくは休止を維持するために、または急性期を予防するために)同様の投与量または若干少ない投与量で投与することもできる。疾患を治療し、抑圧し、または予防するための適切な用量投与間隔を、熟練臨床医は確定し得る。本明細書中に記載される組成物を用いて実施される治療または療法は、治療前に存在するこのような症候に比して、あるいはこのような組成物で治療されない個体(ヒトまたはモデル動物)または他の適切な対照におけるこのような症候に比して、1つ以上の症候が(例えば、臨床的査定尺度で少なくとも10%または少なくとも1ポイント)低減される場合、「有効」とみなされる。症候は、標的にされる疾患または障害によって明白に変わるが、しかし通常の熟練臨床医または技術者により測定され得る。このような症候は、例えば、疾患または障害の1つ以上の生化学的指標のレベル(例えば、疾患、罹患細胞数等と相関する酵素または代謝産物のレベル)をモニタリングすることにより、身体的症状発現(例えば、炎症、腫瘍サイズ等)をモニタリングすることにより、または容認された臨床的査定尺度、例えば、(多発性硬化症に関する)総合障害度スケール(Expanded Disability Status Scale)により、アーヴィン炎症性腸疾患質問票(32ポイント査定により、腸機能、全身性症候、社会的機能および情動状態に関して生活の質を評価する−スコアは32〜224の範囲であり、スコアが高いほど生活の質が良好であることを示す)、関節リウマチのQOLスケール、または当該技術分野で公知の他の容認された臨床的査定尺度により測定され得る。所定の臨床的尺度で少なくとも10%または1ポイント以上の疾患または障害症候における持続的(例えば、1日以上、またはそれ以上)軽減は、治療が「有効」であることを示す。同様に、本明細書中に記載されるような組成物を用いて実施される予防は、当該組成物で治療されない類似の個体(ヒトまたは動物モデル)におけるこのような症候に比して、1つ以上の症候の開始または重症度が遅延され、低減され、または無効にされる場合、「有効」である。
【0151】
本発明のリガンド(例えば、アゴニスト、アンタゴニスト)またはそのカクテルを含む組成物を、ほ乳類における最適の標的細胞集団の改変、不活性化、死滅または除去を助ける予防的および治療的設定で利用することができる。加えて、本明細書中に記載されるポリペプチドの選択されたレパートリーを、体外でまたはin vitroで使用して、細胞の異種コレクションから標的細胞集団を選択的に死滅させるか、激減させるか、またはその他の方法で有効に除去することができる。ほ乳類から得られる血液を体外でリガンドと組み合わせることができ、それにより、標準的技法にしたがって哺乳動物に戻すために、望ましくない細胞を殺すかまたはその他の方法で血液から除去する。
【0152】
本発明のリガンド(例えば、アゴニストまたはアンタゴニスト)を含む組成物を、ほ乳類における最適の標的細胞集団の改変、不活性化、死滅または除去のための予防的および治療的設定で利用することができる。
【0153】
リガンド(例えば、抗標的抗原アンタゴニスト、アゴニスト、dAb単量体)を、1つ以上のさらなる治療薬または活性剤とともに投与することができるか、または処方することができる。リガンド(例えば、dAb)をさらなる治療薬とともに投与する場合、このリガンドは、さらなる薬剤の投与前、同時または投与後に投与することができる。一般的に、リガンドおよびさらなる薬剤は、治療的効果の重複を提供するような方法で投与される。
【0154】
本発明の好ましい実施形態では、本発明のGLP−1薬剤またはGLP−1類似体もしくは誘導体を含む製剤組成物を、このような治療を必要とする患者に対して非経口投与することができる。非経口投与は、注射器、場合によってペン型注射器を用いて、皮下、筋肉内または静脈内注射により実施することができる。あるいは、非経口投与は、注入ポンプを用いて実施することができる。さらなるオプションは、鼻または肺スプレーの形態でGLP−1薬剤またはGLP−1類似体もしくは誘導体を投与するための粉末または液体であり得る組成物である。さらなるオプションとして、本発明のGLP−1薬剤またはGLP−1類似体もしくは誘導体は、経皮(例えば、貼付剤、場合によってイオン導入貼付剤から)、または経粘膜(例えば口腔)投与することもできる。他の実施形態では、組成物は、例えば丸薬、カプセル、ドリンク(例えば、肥満治療用の減量ドリンクとして販売されているもの)として経口投与される。
【0155】
GLP−1化合物の非経口投与用組成物は、例えば、WO 03/002136(参照することにより本明細書で援用される)に記載されるように調製することができる。
【0156】
別の実施形態では、本発明は、高血糖症、1型糖尿病、2型糖尿病またはβ−細胞欠乏の治療用薬剤を調製するための本発明の化合物の使用に関する。これらの適応の具体的な実施形態では、薬剤は、インスリン分泌促進剤、およびインクレチン、グルカゴン様1ペプチド、GLP−1ペプチド、GLP−1類似体、GLP−1誘導体、PYY、PYYペプチド、PYY類似体、PYY誘導体、エキセンディン−3、エキセンディン−3ペプチド、エキセンディン−3類似体、エキセンディン−3誘導体、エキセンディン−4、エキセンディン−4ペプチド、エキセンディン−4類似体、エキセンディン−4誘導体またはこれらの2つ以上の組み合わせ(例えば、GLP−1ペプチドおよびPYYペプチド)から選択される。
【0157】
本発明の化合物を用いた治療は、薬剤接合体または融合物の一部であっても、一部でなくてもよい、第2またはそれ以上の薬理学的に活性な物質と組み合わせることもできる。例えば、抗糖尿病薬、抗肥満薬、食欲調節剤、抗高血圧剤、糖尿病が原因であるかまたは糖尿病に関連する合併症の治療および/または予防のための薬剤ならびに肥満が原因であるかまたは肥満に関連する合併症および障害の治療および/または予防のための薬剤から選択される活性物質。本発明の文脈では、「抗糖尿病薬」という表現は、インスリン耐性ならびにインスリン耐性が病態生理学的機序である疾患の治療および/または予防用化合物を包含する。
【0158】
フォーマット
半減期増大は、免疫グロブリン、特に抗体、最も特定的には小サイズの抗体断片のin vivo適用に有用である。このような断片(Fv、ジスルフィド結合Fv、Fab、scFv、dAb)は、身体からの急速なクリアランスを蒙り得る;したがって、それらは迅速に身体のほとんどの部分に到達し得るし、産生が素早く且つ取扱いが容易である一方で、それらのin vivo適用は、in vivoでのそれらのほんの短い持続性により限定されてきた。本発明の一実施形態は、リガンドのin vivoでの半減期増大と、その結果としてのリガンドの機能的活性のより長い身体中持続時間を提供することにより、この問題を解決する。
【0159】
薬物動態分析およびリガンド半減期の確定のための方法は、当業者にはよく知られている。詳細は、Kenneth, A et al: Chemical Stability of Pharmaceuticals: A Handbook for Pharmacistsに、ならびにPeters et al, Pharmacokinetic analysis: A Practical Approach (1996)に見出され得る。“Pharmacokinetics”, M Gibaldi & D Perron, published by Marcel Dekker, 2nd Rev. ex edition (1982)(tアルファおよびtベータ半減期ならびに曲線下面積(AUC)のような薬物動態パラメーターを記載する)も参照され得る。
【0160】
半減期(t1/2アルファおよびt1/2ベータ)およびAUCは、時間に対するリガンドの血清濃度の曲線から確定され得る。例えば、この曲線をモデル化するために、WinNonlin分析パッケージ(Pharsight Corp., Mountain View, CA94040, USAから入手可能)が用いられ得る。第一相(アルファ相)では、リガンドは主に患者における分布を受けつつあり、多少の排除を伴う。第二相(ベータ相)は、リガンドが分布されて、リガンドが患者から排泄されるので、血清濃度が減少している末期相である。tアルファ半減期は第一相の半減期であり、tベータ半減期は第二相の半減期である。したがって、一実施形態では、本発明は、15分またはそれ以上の範囲のtα半減期を有する本発明によるリガンドまたはリガンドを含む組成物を提供する。一実施形態では、その範囲の下限は、30分、45分、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、10時間、11時間または12時間である。さらに、または代替的には、本発明によるリガンドまたは組成物は、12時間を含めて12時間までの範囲のtα半減期を有する。一実施形態では、この範囲の上限は、11、10、9、8、7、6または5時間である。適切な範囲の一例は、1〜6時間、2〜5時間または3〜4時間である。
【0161】
一実施形態では、本発明は、2.5時間またはそれ以上の範囲のtβ半減期を有する本発明によるリガンド(ポリペプチド、dAb、アゴニストまたはアンタゴニスト)またはリガンドを含む組成物を提供する。一実施形態では、この範囲の下限は、45分、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、10時間、11時間または12時間である。さらに、または代替的には、本発明によるリガンドまたは組成物は、21日を含めて21日までの範囲のtβ半減期を有する。一実施形態では、この範囲の上限は、12時間、24時間、2日、3日、5日、10日、15日または20日である。一実施形態では、本発明によるリガンドまたは組成物は、12〜60時間の範囲のtβ半減期を有する。さらなる一実施形態では、それは、12〜48時間の範囲である。さらなる一実施形態では、それは12〜26時間の範囲である。
【0162】
上記判定基準のほかに、またはそれに代替的には、本発明は、1mg・分/mlまたはそれ以上の範囲のAUC値(曲線下面積)を有する本発明によるリガンドまたはリガンドを含む組成物を提供する。一実施形態では、この範囲の下限は、5、10、15、20、30、100、200または300mg・分/mlである。さらに、または代替的には、本発明によるリガンドまたは組成物は、600mg・分/mlまでの範囲のAUCを有する。一実施形態では、この範囲の上限は、500、400、300、200、150、100、75または50mg・分/mlである。一実施形態では、本発明によるリガンドは、以下からなる群から選択される範囲のAUCを有する:15〜150mg・分/ml、15〜100mg・分/ml、15〜75mg・分/mlおよび15〜50mg・分/ml。
【0163】
本発明のポリペプチドおよびdAbならびにこれらを含むアゴニストまたはアンタゴニストは、PEG基、血清アルブミン、トランスフェリン、トランスフェリン受容体またはその少なくともトランスフェリン結合部分、抗体Fc領域の付着により、あるいは抗体ドメインとの接合により、より大きな水力学的サイズを有するようフォーマット化され得る。例えば、抗体のより大きな抗原結合断片として、または抗体としてフォーマット化された(例えば、Fab、Fab’、F(ab)、F(ab’)、IgG、scFvとしてフォーマット化された)ポリペプチドdAb、アゴニストおよびアンタゴニスト。
【0164】
本発明のリガンド(例えば、dAb単量体および多量体)の水力学的サイズは、当該技術分野で周知の方法を用いて確定され得る。例えば、ゲル濾過クロマトグラフィーを用いて、リガンドの水力学的サイズを確定し得る。リガンドの水力学的サイズを確定するための適切なゲル濾過マトリックス、例えば架橋アガロースマトリックスがよく知られており、容易に入手可能である。
【0165】
リガンドフォーマットのサイズ(例えば、dAb単量体に付着されるPEG部分のサイズ)は所望の用途によって変わり得る。例えば、リガンドが循環から出て末梢組織中へ入る場合、リガンドの水力学的サイズを低く維持して、血流からの浸出を促進することが望ましい。あるいは、リガンド長時間、全身循環中に残存することが望ましい場合、リガンドのサイズは、例えばIg様タンパク質としてフォーマットすることにより増大され得る。
【0166】
in vivoで半減期を増大する抗原またはエピトープを標的化することによる半減期延長
リガンドの水力学的サイズおよびその血清半減期は、本明細書中に記載されるように、in vivoで半減期を増大する抗原またはエピトープを結合する結合ドメイン(例えば、抗体または抗体断片)と本発明の標的抗原結合ポリペプチド、dAb、アゴニストまたはアンタゴニストを接合するかまたは会合させることによっても増大され得る。例えば、標的抗原結合剤(例えば、ポリペプチド)は、抗血清アルブミンまたは抗新生児Fc受容体抗体または抗体断片、例えば抗SAまたは抗新生児Fc受容体dAb、Fab、Fab’またはscFvに、あるいは抗SAアフィボディまたは抗新生児Fc受容体アフィボディまたは抗SAアビマー、あるいは抗SA結合ドメイン(CTLA−4、リポカリン、SpA、アフィボディ、アビマー、GroE1およびフィブロネクチン(好ましくはこれらに限定されない)からなる群から選択される足場を含む)に接合されるかまたは連結され得る(これらの結合ドメインの開示に関しては、PCT/GB2008/000453(2008年2月8日出願)参照。このドメインおよびそれらの配列は、参照により本明細書中に組み入れられ、本文の開示の一部を構成する)。接合することは、血清アルブミンを結合する結合ドメインと(共有的にまたは非共有的に)結合される本発明のポリペプチド、dAb、アゴニストまたはアンタゴニストを含む組成物を指す
【0167】
in vivoでの血清半減期を拡大する適切なポリペプチドとしては、例えば、トランスフェリン受容体特異的リガンド−神経薬学的因子融合タンパク質(米国特許第5,977,307号(この教示は参照により本明細書中で援用される)参照)、脳毛細管内皮細胞受容体、トランスフェリン、トランスフェリン受容体(例えば、可溶性トランスフェリン受容体)、インスリン、インスリン様増殖因子1(IGF1)受容体、インスリン様増殖因子2(IGF2)受容体、インスリン受容体、血液凝固因子X、α1−抗トリプシンおよびHNF 1αが挙げられる。血清半減期を拡大する適切なポリペプチドとしては、アルファ−1糖タンパク質(オロソムコイド;AAG)、アルファ−1抗キモトリプシン(ACT)、アルファ−1マイクログロブリン(プロテインHC;AIM)、抗トロンビンIII(AT III)、アポリポプロテインA−1(アポA−1)、アポリポプロテインB(アポB)、セルロプラスミン(Cp)、補体成分C3(C3)、補体成分C4(C4)、C1エステラーゼ阻害剤(C1 INH)、C−反応性タンパク質(CRP)、フェリチン(FER)、ヘモペキシン(HPX)、リポタンパク質(a)(Lp(a))、マンノース結合タンパク質(MBP)、ミオグロビン(Myo)、プレアルブミン(トランスチレチン;PAL)、レチノール結合タンパク質(RBP)およびリウマチ因子(RF)も挙げられる。
【0168】
細胞外マトリックスからの適切なタンパク質としては、例えば、コラーゲン、ラミニン、インテグリンおよびフィブロネクチンが挙げられる。コラーゲンは、細胞外マトリックスの主要タンパク質である。約15の型のコラーゲン分子が一般に知られており、身体の異なる部分に見出され、例えば、I型コラーゲン(身体コラーゲンの90%を占める)は骨、皮膚、腱、靭帯、角膜、内部器官に見出され、あるいはII型コラーゲンは軟骨、椎骨円板、脊索および眼の硝子体液中に見出される。
【0169】
血液からの適切なタンパク質としては、例えば、血漿タンパク質(例えば、フィブリン、α−2マクログロビン、血清アルブミン、フィブリノーゲン(例えば、フィブリノーゲンA、フィブリノーゲンB)、血清アミロイドプロテインA、ハプトグロビン、プロフィリン、ユビキチン、ウテログロブリンおよびβ−2−マイクログロブリン)、酵素および酵素阻害剤(例えば、プラスミノーゲン、ライソザイム、シスタチンC、アルファ−1−アンチトリプシンおよび膵臓トリプシン阻害剤)、免疫系のタンパク質、例えば免疫グロブリンタンパク質(例えば、IgA、IgD、IgE、IgG、IgM、免疫グロブリン軽鎖(カッパ/ラムダ))、輸送タンパク質(例えば、レチノール結合タンパク質、α−1マイクログロブリン)、デフェンシン(例えば、ベータ−デフェンシン1、好中球デフェンシン1、好中球デフェンシン2および好中球デフェンシン3)等が挙げられる。
【0170】
血液脳関門または神経組織で見出される適切なタンパク質としては、例えば、メラノコルチン受容体、ミエリン、アスコルビン酸輸送体等が挙げられる
【0171】
in vivoでの血清半減期を拡大する適切なポリペプチドとしては、腎臓に限局されるタンパク質(例えば、ポリシスチン、IV型コラーゲン、有機陰イオン輸送体K1、ヘイマン抗原)、肝臓に限局されるタンパク質(例えば、アルコールデヒドロゲナーゼ、G250)、肺に限局されるタンパク質(例えば分泌成分。IgAを結合する)、心臓に限局されるタンパク質(例えばHSP27。拡張心筋症と関連する)、皮膚に限局されるタンパク質(例えばケラチン)、骨特異的タンパク質、例えば形態形成タンパク質(BMP)(これは、骨形成活性を実証するタンパク質の形質転換増殖因子βスーパーファミリーのサブセットである(例えば、BMP−2、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−7、BMP−8))、腫瘍特異的タンパク質(例えば、栄養芽細胞抗原、ヘルセプチン受容体、エストロゲン受容体、カテプシン(例えば、カテプシンB。これは肝臓および脾臓中に見出され得る))も挙げられる。
【0172】
適切な疾患特異的タンパク質としては、例えば、活性化T細胞上でのみ発現される抗原、例えば、LAG−3(リンパ球活性化遺伝子)、オステオプロテゲリンリガンド(OPGL;Nature 402, 304-309 (1999)参照)、OX40(TNF受容体ファミリーの一成員。活性化T細胞上で発現され、ヒトT細胞白血病ウイルスI型(HTLV−I)産生細胞中で特異的に上方調節される;Immunol. 165(1): 263-70 (2000)参照)が挙げられる。適切な疾患特異的タンパク質としては、例えば、メタロプロテアーゼ(関節炎/癌と関連)、例えばCG6512ショウジョウバエ、ヒト・パラプレジン、ヒトFtsH、ヒトAFG3L2、ネズミftsH;ならびに血管形成増殖因子、例えば、酸性繊維芽細胞増殖因子(FGF−1)、塩基性繊維芽細胞増殖因子(FGF−2)、血管内皮細胞増殖因子/血管浸透性因子(VEGF/VPF)、形質転換増殖因子−α(TGFα)、腫瘍壊死因子−アルファ(TNF−α)、アンギオゲニン、インターロイキン−3(IL−3)、インターロイキン−8(IL−8)、血小板由来内皮細胞増殖因子(PD−ECGF)、胎盤増殖因子(P1GF)、ミドカイン血小板由来増殖因子−BB(PDGF)およびフラクタルカインも挙げられる。
【0173】
in vivoでの血清半減期を拡大する適切なポリペプチドとしては、ストレスタンパク質、例えば熱ショックタンパク質(HSP)も挙げられる。HSPは、細胞内に普通に見出される。それらが細胞外に見出される場合、それは、細胞が死んでおり、その内容物を外に出した、ということの指標である。このプログラムされない細胞死(壊死)は、外傷、疾患または損傷の結果として、細胞外HSPが免疫系からの応答を誘発した場合に起こる。細胞外HSPとの結合は、疾患部位への本発明の組成物の局在化を生じ得る。
【0174】
Fc輸送に関与する適切なタンパク質としては、例えば、ブラムベル受容体(FcRBとしても知られている)が挙げられる。このFc受容体は2つの機能を有し、この両方が送達のために潜在的に有用である。この機能は、(1)胎盤を横断する母親から子供へのIgGの輸送、(2)IgGを分解から防護し、それによりその血清半減期を延長することである。受容体はエンドソームからIgGを再循環させる、と考えられる(Holliger et al, Nat Biotechnol 15(7): 632-6 (1997)参照)。
【0175】
血清アルブミンを結合するdAb(AlbudAbs(商標))
本発明は、一実施形態において、標的抗原と結合するポリペプチド、アゴニストまたはアンタゴニスト(例えば、抗標的抗原dAb(第一dAb)を含む二重特異的リガンド)、ならびに血清アルブミン(SA)を結合する第二dAbを提供し、上記の第二dAbは、表面プラズモン共鳴により確定した場合に、1nM〜1、2、3、4、5、10、20、30、40、50、60、70、100、200、300、400または500μM(すなわち、×10−9〜5×10−4)、または100nM〜10μM、または1〜5μM、または3〜70nMまたは10nM〜1、2、3、4または5μM、例えば30〜70nM(表面プラズモン共鳴により確定した場合)のKで、SAを結合する。一実施形態では、第一dAb(またはdAb単量体)は、表面プラズモン共鳴により確定した場合、約1、50、70、100、150、200、300nM、あるいは1、2または3μMのKで、SA(例えばHSA)を結合する。一実施形態では、標的抗原に対する、第一抗SA dAbおよび第二dAbを含む二重特異性リガンドに関して、その標的に対する第二dAbの親和性(例えば、BiaCoreを用いて、表面プラズモン共鳴により測定した場合のKおよび/またはKoff)は、SAに対する第一dAbの親和性の1〜100000倍(例えば、100〜100000、または1000〜100000、または10000〜100000倍)である。一実施形態では、血清アルブミンはヒト血清アルブミン(HSA)である。例えば、第一dAbは約10μMの親和性でその標的を結合するが、一方、第二dAbは100pMの親和性でその標的を結合する。一実施形態では、血清アルブミンはヒト血清アルブミン(HSA)である。一実施形態では、第一dAbは、約50、例えば70、100、150または200nMのKでSA(例えばHSA)を結合する。二重特異性リガンドの詳細は、WO03002609、WO04003019およびWO04058821に見出される。
【0176】
本発明のリガンドは、一実施形態では、表面プラズモン共鳴により確定した場合に、1nM〜1、2、3、4、5、10、20、30、40、50、60、70、100、200、300、400または500μM(すなわち、×10−9〜5×10−4)、または100nM〜10μM、または1〜5μM、または3〜70nMまたは10nM〜1、2、3、4または5μM、例えば30〜70nM(表面プラズモン共鳴により確定した場合)のKで、血清アルブミン(SA)を結合するdAbを含み得る。一実施形態では、第一dAb(またはdAb単量体)は、表面プラズモン共鳴により確定した場合、約1、50、70、100、150、200、300nM、あるいは1、2または3μMのKで、SA(例えばHSA)を結合する。一実施形態では、第一および第二dAbは、リンカー、例えば1〜4アミノ酸、または1〜3アミノ酸、あるいは3より多くのアミノ酸、あるいは4より多い、5、6、7、8、9、10、15または20アミノ酸を有するリンカーにより連結される。一実施形態では、より長いリンカー(3アミノ酸より長い)を用いて、効力(アゴニストまたはアンタゴニスト中のdAbの一方または両方のK)を増強する。一実施形態では、リンカーは螺旋状リンカーである。
【0177】
リガンド、アゴニストおよびアンタゴニストの特定の実施形態では、dAbはヒト血清アルブミンを結合し、アルブミンとの結合に関して、以下の群から選択されるdAbと競合する:
MSA−16、MSA−26(これらの配列の開示に関してはWO04003019参照(配列およびそれらの核酸相手は参照により本明細書中に組み入れられ、本文の開示の一部を構成する))、
DOM7m−16(配列番号473)、DOM7m−12(配列番号474)、DOM7m−26(配列番号475)、DOM7r−1(配列番号476)、DOM7r−3(配列番号477)、DOM7r−4(配列番号478)、DOM7r−5(配列番号479)、DOM7r−7(配列番号480)、DOM7r−8(配列番号481)、DOM7h−2(配列番号482)、DOM7h−3(配列番号483)、DOM7h−4(配列番号484)、DOM7h−6(配列番号485)、DOM7h−1(配列番号486)、DOM7h−7(配列番号487)、DOM7h−22(配列番号489)、DOM7h−23(配列番号490)、DOM7h−24(配列番号491)、DOM7h−25(配列番号492)、DOM7h−26(配列番号493)、DOM7h−21(配列番号494)、DOM7h−27(配列番号495)、DOM7h−8(配列番号496)、DOM7r−13(配列番号497)、DOM7r−14(配列番号498)、DOM7r−15(配列番号499)、DOM7r−16(配列番号500)、DOM7r−17(配列番号501)、DOM7r−18(配列番号502)、DOM7r−19(配列番号503)、DOM7r−20(配列番号504)、DOM7r−21(配列番号505)、DOM7r−22(配列番号506)、DOM7r−23(配列番号507)、DOM7r−24(配列番号508)、DOM7r−25(配列番号509)、DOM7r−26(配列番号510)、DOM7r−27(配列番号511)、DOM7r−28(配列番号512)、DOM7r−29(配列番号513)、DOM7r−30(配列番号514)、DOM7r−31(配列番号515)、DOM7r−32(配列番号516)、DOM7r−33(配列番号517)(これらの配列の開示に関しては、WO2007080392参照。これらの配列およびそれらの核酸相手は参照により本明細書中に組み入れられ、本文の開示の一部を構成する。この段落における配列番号は、WO2007080392に出ていたものである)、
dAb8(dAb10)、dAb 10、dAb36、dAb7r20(DOM7r20)、dAb7r21(DOM7r21)、dAb7r22(DOM7r22)、dAb7r23(DOM7r23)、dAb7r24(DOM7r24)、dAb7r25(DOM7r25)、dAb7r26(DOM7r26)、dAb7r27(DOM7r27)、dAb7r28(DOM7r28)、dAb7r29(DOM7r29)、dAb7r29(DOM7r29)、dAb7r31(DOM7r31)、dAb7r32(DOM7r32)、dAb7r33(DOM7r33)、dAb7r33(DOM7r33)、dAb7h22(DOM7h22)、dAb7h23(DOM7h23)、dAb7h24(DOM7h24)、dAb7h25(DOM7h25)、dAb7h26(DOM7h26)、dAb7h27(DOM7h27)、dAb7h30(DOM7h30)、dAb7h31(DOM7h31)、dAb2(dAbs 4、7、41)、dAb4、dAb7、dAb11、dAb12(dAb7m12)、dAb13(dAb 15)、dAb15、dAb16(dAb21、dAb7m16)、dAb17、dAb18、dAb19、dAb21、dAb22、dAb23、dAb24、dAb25(dAb26、dAb7m26)、dAb27、dAb30(dAb35)、dAb31、dAb33、dAb34、dAb35、dAb38(dAb54)、dAb41、dAb46(dAbs 47、52および56)、dAb47、dAb52、dAb53、dAb54、dAb55、dAb56、dAb7m12、dAb7m16、dAb7m26、dAb7r1(DOM 7r1)、dAb7r3(DOM7r3)、dAb7r4(DOM7r4)、dAb7r5(DOM7r5)、dAb7r7(DOM7r7)、dAb7r8(DOM7r8)、dAb7r13(DOM7r13)、dAb7r14(DOM7r14)、dAb7r15(DOM7r15)、dAb7r16(DOM7r16)、dAb7r17(DOM7r17)、dAb7r18(DOM7r18)、dAb7r19(DOM7r19)、dAb7h1(DOM7h1)、dAb7h2(DOM7h2)、dAb7h6(DOM7h6)、dAb7h7(DOM7h7)、dAb7h8(DOM7h8)、dAb7h9(DOM7h9)、dAb7h10(DOM7h10)、dAb7h11(DOM7h11)、dAb7h12(DOM7h12)、dAb7h13(DOM7h13)、dAb7h14(DOM7h14)、dAb7p1(DOM7p1)およびdAb7p2(DOM7p2)(これらの配列の開示に関してWO 2008096158を参照。これらの配列およびそれらの核酸相手は参照により本明細書中に組み入れられ、本文の開示の一部を構成する)。代替的名称は、dAbの後の括弧内に示されており、例えばdAb8はdAb10である代替的名称を有し、すなわちdAb8(dAb10)である。
【0178】
ある実施形態では、dAbはヒト血清アルブミンを結合し、以下の群から選択されるdAbのアミノ酸配列と、少なくとも約80%、または少なくとも約85%、または少なくとも約90%、または少なくとも約95%、または少なくとも約96%、または少なくとも約97%、または少なくとも約98%、または少なくとも約99%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む:
MSA−16、MSA−26、
DOM7m−16(配列番号473)、DOM7m−12(配列番号474)、DOM7m−26(配列番号475)、DOM7r−1(配列番号476)、DOM7r−3(配列番号477)、DOM7r−4(配列番号478)、DOM7r−5(配列番号479)、DOM7r−7(配列番号480)、DOM7r−8(配列番号481)、DOM7h−2(配列番号482)、DOM7h−3(配列番号483)、DOM7h−4(配列番号484)、DOM7h−6(配列番号485)、DOM7h−1(配列番号486)、DOM7h−7(配列番号487)、DOM7h−22(配列番号489)、DOM7h−23(配列番号490)、DOM7h−24(配列番号491)、DOM7h−25(配列番号492)、DOM7h−26(配列番号493)、DOM7h−21(配列番号494)、DOM7h−27(配列番号495)、DOM7h−8(配列番号496)、DOM7r−13(配列番号497)、DOM7r−14(配列番号498)、DOM7r−15(配列番号499)、DOM7r−16(配列番号500)、DOM7r−17(配列番号501)、DOM7r−18(配列番号502)、DOM7r−19(配列番号503)、DOM7r−20(配列番号504)、DOM7r−21(配列番号505)、DOM7r−22(配列番号506)、DOM7r−23(配列番号507)、DOM7r−24(配列番号508)、DOM7r−25(配列番号509)、DOM7r−26(配列番号510)、DOM7r−27(配列番号511)、DOM7r−28(配列番号512)、DOM7r−29(配列番号513)、DOM7r−30(配列番号514)、DOM7r−31(配列番号515)、DOM7r−32(配列番号516)、DOM7r−33(配列番号517)(この段落における配列番号は、WO2007080392に出ていたものである)、
dAb8、dAb 10、dAb36、dAb7r20、dAb7r21、dAb7r22、dAb7r23、dAb7r24、dAb7r25、dAb7r26、dAb7r27、dAb7r28、dAb7r29、dAb7r30、dAb7r31、dAb7r32、dAb7r33、dAb7h21、dAb7h22、dAb7h23、dAb7h24、dAb7h25、dAb7h26、dAb7h27、dAb7h30、dAb7h31、dAb2、dAb4、dAb7、dAb11、dAb12、dAb13、dAb15、dAb16、dAb17、dAb18、dAb19、dAb21、dAb22、dAb23、dAb24、dAb25、dAb26、dAb27、dAb30、dAb31、dAb33、dAb34、dAb35、dAb38、dAb41、dAb46、dAb47、dAb52、dAb53、dAb54、dAb55、dAb56、dAb7m12、dAb7m16、dAb7m26、dAb7r1、dAb7r3、dAb7r4、dAb7r5、dAb7r7、dAb7r8、dAb7r13、dAb7r14、dAb7r15、dAb7r16、dAb7r17、dAb7r18、dAb7r19、dAb7h1、dAb7h2、dAb7h6、dAb7h7、dAb7h8、dAb7h9、dAb7h10、dAb7h11、dAb7h12、dAb7h13、dAb7h14、dAb7p1およびdAb7p2。
【0179】
例えば、ヒト血清アルブミンを結合するdAbは、DOM7h−2(配列番号482)、DOM7h−3(配列番号483)、DOM7h−4(配列番号484)、DOM7h−6(配列番号485)、DOM7h−1(配列番号486)、DOM7h−7(配列番号487)、DOM7h−8(配列番号496)、DOM7r−13(配列番号497)、DOM7r−14(配列番号498)、DOM7h−22(配列番号489)、DOM7h−23(配列番号490)、DOM7h−24(配列番号491)、DOM7h−25(配列番号492)、DOM7h−26(配列番号493)、DOM7h−21(配列番号494)、DOM7h−27(配列番号495)(この段落における配列番号は、WO2007080392に出ていたものである)、
dAb8、dAb10、dAb36、dAb7h21、dAb7h22、dAb7h23、dAb7h24、dAb7h25、dAb7h26、dAb7h27、dAb7h30、dAb7h31、dAb2、dAb4、dAb7、dAb11、dAb12、dAb13、dAb15、dAb16、dAb17、dAb18、dAb19、dAb21、dAb22、dAb23、dAb24、dAb25、dAb26、dAb27、dAb30、dAb31、dAb33、dAb34、dAb35、dAb38、dAb41、dAb46、dAb47、dAb52、dAb53、dAb54、dAb55、dAb56、dAb7h1、dAb7h2、dAb7h6、dAb7h7、dAb7h8、dAb7h9、dAb7h10、dAb7h11、dAb7h12、dAb7h13およびdAb7h14
と、少なくとも約90%、または少なくとも約95%、または少なくとも約96%、または少なくとも約97%、または少なくとも約98%、または少なくとも約99%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含み得る。
【0180】
ある実施形態では、dAbはヒト血清アルブミンを結合し、以下の群から選択されるdAbのアミノ酸配列と、少なくとも約80%、または少なくとも約85%、または少なくとも約90%、または少なくとも約95%、または少なくとも約96%、または少なくとも約97%、または少なくとも約98%、または少なくとも約99%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む:
DOM7h−2(配列番号482)、DOM7h−6(配列番号485)、DOM7h−1(配列番号486)、DOM7h−7(配列番号487)、DOM7h−8(配列番号496)、DOM7h−22(配列番号489)、DOM7h−23(配列番号490)、DOM7h−24(配列番号491)、DOM7h−25(配列番号492)、DOM7h−26(配列番号493)、DOM7h−21(配列番号494)、DOM7h−27(配列番号495)(この段落における配列番号は、WO2007080392に出ていたものである)、
dAb7h21、dAb7h22、dAb7h23、dAb7h24、dAb7h25、dAb7h26、dAb7h27、dAb7h30、dAb7h31、dAb2、dAb4、dAb7、dAb38、dAb41、dAb7h1、dAb7h2、dAb7h6、dAb7h7、dAb7h8、dAb7h9、dAb7h10、dAb7h11、dAb7h12、dAb7h13およびdAb7h14。
【0181】
さらに特定の実施形態では、dAbは、ヒト血清アルブミンを結合し、以下からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するVκdAbである:
DOM7h−2(配列番号482)、DOM7h−6(配列番号485)、DOM7h−1(配列番号486)、DOM7h−7(配列番号487)、DOM7h−8(配列番号496)(この段落における配列番号は、WO2007080392に出ていたものである)、
dAb2、dAb4、dAb7、dAb38、dAb41、dAb54、dAb7h1、dAb7h2、dAb7h6、dAb7h7、dAb7h8、dAb7h9、dAb7h10、dAb7h11、dAb7h12、dAb7h13およびdAb7h14。
【0182】
さらに特定の実施形態では、dAbは、ヒト血清アルブミンを結合し、dAb7h30およびdAb7h31から選択されるアミノ酸配列を有するVHdAbである。
【0183】
さらに特定の実施形態では、dAbはdAb7h11またはdAb7h14である。
【0184】
他の実施形態では、dAb、リガンド、アゴニストまたはアンタゴニストは、ヒト血清アルブミンを結合し、前記のアミノ酸配列のいずれかのCDRのうちの1、2または3つ、例えばdAb7h11またはdAb7h14のCDRのうちの1、2または3つを含む。
【0185】
血清アルブミンを結合する適切なラクダ類VHHとしては、WO 2004/041862(Ablynx N.V.)に、ならびにWO2007080392(このVHH配列およびそれらの核酸相手は、参照により本明細書中に組み入れられ、そして本文の開示の一部を構成する)に開示されたもの、例えば、配列A(配列番号518)、配列B(配列番号519)、配列C(配列番号520)、配列D(配列番号521)、配列E(配列番号522)、配列F(配列番号523)、配列G(配列番号524)、配列H(配列番号525)、配列I(配列番号526)、配列J(配列番号527)、配列K(配列番号528)、配列L(配列番号529)、配列M(配列番号530)、配列N(配列番号531)、配列O(配列番号532)、配列P(配列番号533)、配列Q(配列番号534)が挙げられ、これらの配列番号は、WO2007080392またはWO 2004/041862(Ablynx N.V.)に列挙されたものと対応する。ある実施形態では、ラクダ類VHHは、ヒト血清アルブミンを結合し、WO2007080392に開示されたALB1と、または配列番号518〜534(これらの配列番号は、WO2007080392またはWO 2004/041862に列挙されたものと対応する)のいずれか1つと、少なくとも約80%、または少なくとも約85%、または少なくとも約90%、または少なくとも約95%、または少なくとも約96%、または少なくとも約97%、または少なくとも約98%、または少なくとも約99%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0186】
いくつかの実施形態では、リガンド,アゴニストまたはアンタゴニストは、血清アルブミン(例えばヒト血清アルブミン)との結合に関して本明細書中に開示される任意の抗血清アルブミンdAbと競合する抗血清アルブミンdAbを含む。
【0187】
別の実施形態では、アゴニスト、アンタゴニストまたはリガンドは、標的抗原(例えば、ヒトTNFR1)に対して特異的な結合部分を含み、2008年2月8日に出願された同時係属出願PCT/GB2008/000453(結合部分、(例えば種々のライブラリーからの)それらの産生および選択法およびそれらの配列の開示は、参照することにより本明細書中に本文の開示の一部として組み入れられる)に記載されるように、この結合部分は非免疫グロブリン配列を含む。
【0188】
半減期延長部分(例えばアルブミン)との接合
一実施形態では、一実施形態では、(1つ以上の)半減期延長部分(例えば、アルブミン、トランスフェリンならびにその断片および類似体)は、本発明の標的抗原−結合ポリペプチド、dAb、アゴニストまたはアンタゴニストと接合されるかまたは会合される。標的抗原−結合フォーマットに用いるための適切なアルブミン、アルブミン断片またはアルブミン変異体の例は、WO 2005077042(この開示内容は参照により本明細書中に組み入れられて、本文の開示の一部を構成する)に記載されている。特に、以下のアルブミン、アルブミン断片またはアルブミン変異体が、本発明に用いられ得る:
・配列番号1(WO 2005077042に開示。この配列は、参照により本開示中に明白に組み入れられる);
・配列番号1(WO 2005077042に開示。この配列は、参照により本開示中に明白に組み入れられる);
・WO 2005077042における配列番号1のアミノ酸1〜387を含むかまたはそれからなるアルブミン断片または変異体;
・(a)WO 2005077042における配列番号1のアミノ酸54〜61;(b)WO 2005077042における配列番号1のアミノ酸76〜89;(c)WO 2005077042における配列番号1のアミノ酸92〜l00;(d)WO 2005077042における配列番号1のアミノ酸170〜176;(e)WO 2005077042における配列番号1のアミノ酸247〜252;(f)WO 2005077042における配列番号1のアミノ酸266〜277;(g)WO 2005077042における配列番号1のアミノ酸280〜288;(h)WO 2005077042における配列番号1のアミノ酸362〜368;(i)WO 2005077042における配列番号1のアミノ酸439〜447;(j)WO 2005077042における配列番号1のアミノ酸462〜475;(k)WO 2005077042における配列番号1のアミノ酸478〜486;および(l)WO 2005077042における配列番号1のアミノ酸560〜566からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むアルブミンあるいはその断片または変異体。
【0189】
標的抗原結合フォーマットに用いるための適切なアルブミン、断片および類似体は、WO 03076567(この開示内容は参照により本明細書中に組み入れられて、本文の開示の一部を構成する)に記載されている。特に、以下のアルブミン、断片または変異体が本発明に用いられ得る:
・WO 03076567に、例えば図3に記載されているようなヒト血清アルブミン(この配列情報は、参照により本開示中に明白に組み入れられる);
・66,500の式分子量を有する585アミノ酸の単一非グリコシル化ポリペプチド鎖からなるヒト血清アルブミン(HA)(Meloun, et al., FEBS Letters 58: 136 (1975);Behrens, et al., Fed. Proc. 34: 591 (1975);Lawn, et al., Nucleic Acids Research 9: 6102-6114 (1981);Minghetti, et al., J. Biol. Chem. 261: 6747 (1986)参照);
・Weitkamp, et al., Ann. Hum. Genet. 37: 219 (1973)に記載されたようなアルブミンの多型性変異体または類似体または断片;
・EP 322094に記載されたようなアルブミン断片または変異体、例えばHA(1〜373)、HA(1〜388)、HA(1〜389)、HA(1〜369)およびHA(1〜419)ならびに1〜369および1〜419間の断片;
・EP 399666に記載されたようなアルブミン断片または変異体、例えばHA(1〜177)およびHA(1〜200)ならびにHA(1〜X)間の断片(ここで、Xは178から199までの任意の数である)。
【0190】
(1つ以上の)半減期延長部分(例えば、アルブミン、トランスフェリンならびにその断片および類似体)が本発明の標的抗原−結合ポリペプチド、dAb、アゴニストおよびアンタゴニストをフォーマットするために用いられる場合、それは、任意の適切な方法を用いて、例えば標的抗原−結合部分(例えば、抗TNFR1dAb)との直接融合により、例えば融合タンパク質をコードする単一ヌクレオチド構築物を用いることにより(ここで、上記融合タンパク質は、標的抗原結合部分に対してN−またはC−末端に位置する半減期延長部分を有する単一ポリペプチド鎖としてコードされる)、接合され得る。代替的には、接合は、部分間にペプチドリンカー、例えばWO 03076567またはWO 2004003019に記載されたようナペプチドリンカー(これらのリンカー開示は、参照により本発明の開示中に組み入れられて、本発明に用いるための例を提供する)を用いることにより、達成され得る。一実施形態では、接合は、本明細書中に記載されるような螺旋状リンカーなどの螺旋状リンカーを介するものであり得る。また、この目的に有用な他のリンカーは、グリシン−セリンリッチなリンカーなどを包含すると理解される。一実施形態では、リンカーはプロテアーゼ耐性リンカーであってよい。典型的には、in vivoで血清半減期を拡大するポリペプチドは、in vivoで天然に生じる、そして生物体(例えばヒト)から望ましくない物質を除去する内因性機序による分解または除去を阻止する。例えば、in vivoで血清半減期を拡大するポリペプチドは、細胞外マトリックスからのタンパク質、血中に見出されるタンパク質、血液脳関門に、または神経組織中に見出されるタンパク質、腎臓、肝臓、肺、心臓、皮膚または骨に限局されるタンパク質、ストレスタンパク質、疾患特異的タンパク質、あるいはFc輸送に関与するタンパク質から選択され得る。
【0191】
本開示全体にわたって記載される本明細書の実施形態では、本発明のアゴニスト、アンタゴニストまたはリガンドにおいて抗標的抗原「dAb」を使用するかわりに、熟練者が標的抗原(例えば、適切なタンパク質足場または骨格、例えばアフィボディ、SpA足場、LDL受容体クラスAドメインまたはEGFドメイン上にグラフトされたCDR)を結合する本発明のdAbのCDRの1つ以上または3つ全てを含むポリペプチドまたはドメインを使用できることが想定される。全体としての開示は、dAbのかわりにこのようなドメインを使用してアゴニストまたはアンタゴニストの開示を提供すると解釈されるべきである。この点に関しては、WO2008096158(その開示は参照により組み込まれる)を参照。
【0192】
一実施形態では、したがって、本発明のアゴニストまたはアンタゴニストは、適切なフォーマットにおいてこのようなdAbの標的抗原または相補性決定領域に対して結合特異性を有する免疫グロブリン単一可変ドメインまたはドメイン抗体(dAb)を含む。アゴニストまたはアンタゴニストは、このようなdAbからなるか、または本質的にこのようなdAbからなるポリペプチドであり得る。アゴニストまたはアンタゴニストは、適切なフォーマット、例えば抗体フォーマット(例えば、IgG様フォーマット、scFv、Fab、Fab’、F(ab’))、または別の標的タンパク質、抗原もしくはエピトープ(例えば、血清アルブミン)を結合する第二dAを含む二重特異的リガンドにおいてdAb(またはdAbのCDR)を含むポリペプチドであり得る。
【0193】
本発明のポリペプチド、dAb、アゴニストおよびアンタゴニストは、IgG様フォーマット、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、一本鎖抗体、二重特異性抗体、抗体重鎖、抗体軽鎖、抗体重鎖および/または軽鎖のホモ二量体およびヘテロ二量体、前記のいずれかの抗原結合断片(例えば、Fv断片(例えば、一本鎖Fv(scFv)、ジスルフィド結合Fv)、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)断片)、単一可変ドメイン(例えば、V、V)、dAb、および前記のいずれかの修飾バージョン(例えば、ポリアルキレングリコール(例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール)または他の適切なポリマーの共有的結合により修飾される)などの当該技術分野で公知の種々の適切な抗体フォーマットとしてフォーマット化され得る。
【0194】
いくつかの実施形態では、本発明は、IgG様フォーマットであるリガンド(例えば、抗TNFR1アンタゴニスト)を提供する。このようなフォーマットは、IgG分子の慣用的な4つの鎖構造(2つの重鎖と2つの軽鎖)を有し、この構造では、1つ以上の可変領域(VおよびまたはV)が本発明のdAbで置換されている一実施形態では、可変領域(2つのV領域および2つのV領域)のそれぞれは、dAbまたは単一可変ドメインで置換され、その少なくとも1つは、本発明による抗標的抗原dAbである。IgG様フォーマット中に含まれるdAbまたは単一可変ドメインは、同じ特異性または異なる特異性を有し得る。いくつかの実施形態では、IgG様フォーマットは四価であり、1つ(抗標的抗原のみ)、2つ(例えば、抗標的抗原と抗SA)、3つまたは4つの特異性を有し得る。例えば、IgG様フォーマットは、一特異的であり得、同じ特異性を有する4つのdAbを含む;二特異的であり、同じ特異性を有する3つのdAbおよび異なる特異性を有する別のdAbを含む;二特異的であり、同じ特異性を有する2つのdAbおよび共通であるが異なる特異性を有する2つのdAbを含む;三特異的であり、同じ特異性を有する第1および第2dAb、異なる特異性を有する第3dAbならびに第1、第2、および第3のdAbと異なる特異性を有する第4のdAbを含む;または四特異的であり、それぞれ異なる特異性を有する第4のdAbを含む。IgG様フォーマットの抗原結合断片(例えば、Fab、F(ab’)、Fab’、Fv、scF)を調製することができる。一実施形態では、IgG様フォーマットまたはその抗原結合断片は標的抗原を架橋しない。例えば、フォーマットは、標的抗原に対して一価であり得る。相補性活性化および/または抗体依存性細胞毒性(ADCC)機能が望ましい場合、リガンドはIgG1様フォーマットであり得る。所望によりIgG様フォーマットは、変異定常領域(変異体IgG重鎖定常領域)を含み得、Fc受容体に対する結合および/または補体を固定する能力を最小限に抑えることができる。(例えばWinter et al., GB 2,209,757 B;Morrison et al., WO 89/07142;Morgan et al., WO 94/29351, December 22, 1994を参照)。
【0195】
本発明のリガンド(ポリペプチド、dAb、アゴニストおよびアンタゴニスト)は、第二免疫グロブリン単一可変ドメインに直接融合される第一免疫グロブリン単一可変ドメインを含有する融合タンパク質としてフォーマットされ得る。所望により、このようなフォーマットは、半減期延長部分をさらに含み得る。例えば、リガンドは、血清アルブミンを結合する免疫グロブリン単一可変ドメインに直接融合される第二免疫グロブリン単一可変ドメインに直接融合される第一免疫グロブリン単一可変ドメインを含み得る。
【0196】
一般的に、標的に対する結合特異性を有する結合部位を有するポリペプチドドメインの配向は、リガンドがリンカーを含んでいてもいなくても、設計選択の問題である。しかしながら、いくつかの配向は、リンカーがあってもなくても、他の配向より良好な結合特性を提供する。全ての配向(例えば、dAb1−リンカー−dAb2;dAb2−リンカー−dAb1)が本発明に包含され、所望の結合特性を提供する配向を含有するリガンドは、スクリーニングにより容易に同定され得る。
【0197】
本発明によるdAbは、dAb単量体、二量体および三量体を含めて、C2およびC3ドメインの一方または両方を、任意にヒンジ領域を含む抗体Fc領域と連結され得る。例えば、単一ヌクレオチド配列としてFc領域に連結されるリガンドをコードするベクターを用いて、このようなポリペプチドを調製し得る。本発明はさらに、前記dAb単量体の二量体、三量体およびポリマーを提供する。
【実施例】
【0198】
実施例1
研究の目的
この研究の目的は、DPP IV耐性GLP−1(本明細書では、*GLP−1と称する)を含むGLP−1変異体由来のライブラリーに関してファージ選択を実施し、あわせてファージの種々のプロテアーゼ(発現宿主中に天然に存在するものを包含する)での処理を実施することにより、GLP−1 AlbudAb(商標)融合物のプロテアーゼ耐性変異体を得ることであった。本明細書中に記載されるように、AlbudAb(商標)は、血清アルブミンを特異的に結合する免疫グロブリン単一可変ドメインである。
【0199】
GLP−1受容体
グルカゴン様ペプチド−1受容体(GLP−1R)は、7つの膜貫通Gタンパク質共役受容体のファミリーB1に属する。受容体とその天然のアゴニストリガンドGLP−1との間の結合相互作用は、受容体(ECD GLP−1R)の細胞外N−末端ドメインに対するリガンド結合と、それに続く膜貫通部分のコアとの相互作用によって開始される(Al-Sabah et al, 2003;FEBS Lett;553(3): 342-6)。単離されたN−末端ドメインに対するGLP−1結合は、膜貫通コアが除去される場合は保持されるが、親和性は減少することが示されている(Lopez de Maturana et al, 2003;J. Biol. Chem;278(12): 10195-200)。膜貫通ドメインを有する受容体の可溶化洗剤を含まない水溶液中への溶解度は低いため、溶液におけるファージ選択に全受容体を使用することは望ましくないので、単離された細胞外ドメインをファージ捕捉のために使用して、実験を簡略化し、ファージ表示分子のECD GLP−1Rに対する親和性を増強した。
【0200】
ECD GLP−1RのHis標識されたFc単量体のヌクレオチドおよびアミノ酸配列は以下のとおりである:
ヌクレオチド配列(配列番号1):
ATGGCCGGCG CCCCCGGCCC GCTGCGCCTT GCGCTGCTGC TGCTCGGGAT GGTGGGCAGG GCCGGCCCCC GCCCCCAGGG TGCCACTGTG TCCCTCTGGG AGACGGTGCA GAAATGGCGA GAATACCGAC GCCAGTGCCA GCGCTCCCTG ACTGAGGATC CACCTCCTGC CACAGACTTG TTCTGCAACC GGACCTTCGA TGAATACGCC TGCTGGCCAG ATGGGGAGCC AGGCTCGTTC GTGAATGTCA GCTGCCCCTG GTACCTGCCC TGGGCCAGCA GTGTGCCGCA GGGCCACGTG TACCGGTTCT GCACAGCTGA AGGCCTCTGG CTGCAGAAGG ACAACTCCAG
CCTGCCCTGG AGGGACTTGT CGGAGTGCGA GGAGTCCAAG CGAGGGGAGA GAAGCTCCCC GGAGGAGCAG CTCCTGTTCC TCAAGCTTGA GCCCAAATCG GCCGACAAAA CTCACACATC ACCACCGTCA CCAGCACCTG AACTCCTGGG GGGACCGTCA GTCTTCCTCT TCCCCCCAAA ACCCAAGGAC ACCCTCATGA TCTCCCGGAC CCCTGAGGTC ACATGCGTGG TGGTGGACGT GAGCCACGAA GACCCTGAGG TCAAGTTCAA CTGGTACGTG GACGGCGTGG AGGTGCATAA TGCCAAGACA AAGCCGCGGG AGGAGCAGTA CAACAGCACG TACCGGGTGG
TCAGCGTCCT CACCGTCCTG CACCAGGACT GGCTGAATGG CAAGGAGTAC AAGTGCAAGG TCTCCAACAA AGCCCTCCCA GCCCCCATCG AGAAAACCAT CTCCAAAGCC AAAGGGCAGC CCCGAGAACC ACAGGTGTAC ACCCTGCCCC CATCCCGGGA TGAGCTGACC AAGAACCAGG TCAGCCTGAC CTGCCTGGTC AAAGGCTTCT ATCCCAGCGA CATCGCCGTG GAGTGGGAGA GCAATGGGCA GCCGGAGAAC AACTACAAGA CCACGCCTCC CGTGCTGGAC TCCGACGGCT CCTTCTTCCT CTACAGCAAG CTCACCGTGG ACAAGAGCAG GTGGCAGCAG
GGGAACGTCT TCTCATGCTC CGTGATGCAT GAGGCTCTGC ACAACCACTA CACGCAGAAG AGCCTCTCCC TGTCTCCGGG TAAACATCAC CATCATCATC ACTGA
アミノ酸配列(配列番号2):
MAGAPGPLRL ALLLLGMVGR AGPRPQGATV SLWETVQKWR EYRRQCQRSL TEDPPPATDL FCNRTFDEYA CWPDGEPGSF VNVSCPWYLP WASSVPQGHV YRFCTAEGLW LQKDNSSLPW RDLSECEESK RGERSSPEEQ LLFLKLEPKS ADKTHTSPPS PAPELLGGPS VFLFPPKPKD TLMISRTPEV TCVVVDVSHE DPEVKFNWYV DGVEVHNAKT KPREEQYNST YRVVSVLTVL HQDWLNGKEY KCKVSNKALP APIEKTISKA KGQPREPQVY TLPPSRDELT KNQVSLTCLV KGFYPSDIAV EWESNGQPEN NYKTTPPVLD SDGSFFLYSK LTVDKSRWQQ
GNVFSCSVMH EALHNHYTQK SLSLSPGKHH HHHH
【0201】
GLP−1R ECDも、プロテインAアガロース上でのタンパク質の初期生成を可能にする、IgG Fcタグを用いて発現させた。ファージ選択の間、可溶性受容体をその後、プロテインA被覆ビーズを用いて捕捉することができた。
【0202】
ファージ選択の試験
GLP−1受容体の細胞外ドメインをファージ表示ライブラリー選択に使用できることを検証するために試験を実施した。
【0203】
ファージベクター
線状ファージ(fd)表示ベクターであるpDOM34(pDOM4の誘導体)を使用し、これはmycタグを有するfdベクターに基づくものであり、ここでは、タンパク質配列を制限部位間でクローニングして、タンパク質−遺伝子III融合物を提供することができる。(WO 2007/085815に記載されるようなpDOM4は、遺伝子IIIシグナルペプチド配列が表面タンパク質に固定された酵母糖脂質(GAS)シグナルペプチドと置換されたFdファージベクターの誘導体である(WO 2005/093074)。これは、リーダー配列と遺伝子IIIとの間にc−mycタグも含み、これにより遺伝子IIIはフレーム中に戻される)。
【0204】
pDOM34をもたらすpDOM4の修飾は以下のものを包含する:
1)pDOM4の7476nt位置でのNcoI部位のノックアウト
2)cpIIIのN’末端に融合したMycタグの削除
3)シグナルペプチド直後のクローニングを促進するためのNcoI制限部位の導入。
【0205】
ライブラリーレパートリーをコードする遺伝子をNcoI/NotI断片としてクローニングした。
【0206】
ベクターを大腸菌MachI細胞中で増殖させ、Plasmid Mega Prep kit(Qiagen)を使用して単離し、スーパーコイル状のフラクションを、標準的技法を用いた塩化セシウム勾配超遠心法によって単離した(Sambrook and Maniatis 1989)。ベクターをNcoIおよびNotI酵素で、続いてPstIで切断して、セルフライゲーション率を減少させた。フェノール/クロロホルム抽出後、DNAをエタノール沈殿させ、Chromaspin TE−1000カラム(Clontech)上で、NcoIとNotI部位との間の必要とされない「スタッファー(stuffer)」DNA断片から精製した。精製後、ベクターDNAを使用して、多様化DAT−X DNA断片に対するライゲーションを試験した。
【0207】
DAT−Xライブラリー構築
18のレパートリーをDPP IV耐性GLP−1を含むDAT−X親分子に基づいて構築し、これをさらに*GLP−1と呼ぶ。
【0208】
*GLP−1(7−37):
アミノ酸配列
HGEGTFTSDVSSYLEGQAAKEFIAWLVKGRG(配列番号3)
ヌクレオチド配列:
CATGGTGAAGGGACCTTTACCAGTGATGTAAGTTCTTATTTGGAAGGCCAAGCTGCCAAGGAATTCATTGCTTGGCTGGTGAAAGGCCGAGGA(配列番号4)
【0209】
DAT−X親分子は、血清アルブミンを結合するDOM7h−14(ドメイン抗体(dAb)との融合物(albudab;AlbudAb(商標)))をさらに含む。
DOM7h−14:
アミノ酸配列:
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQWIGSQLSWYQQKPGKAPKLLIMWRSSLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCAQGAALPRTFGQGTKVEIKR(配列番号5)
ヌクレオチド配列:
GACATCCAGATGACCCAGTCTCCATCCTCCCTGTCTGCATCTGTAGGAGACCGTGTCACCATCACTTGCCGGGCAAGTCAGTGGATTGGGTCTCAGTTATCTTGGTACCAGCAGAAACCAGGGAAAGCCCCTAAGCTCCTGATCATGTGGCGTTCCTCGTTGCAAAGTGGGGTCCCATCACGTTTCAGTGGCAGTGGATCTGGGACAGATTTCACTCTCACCATCAGCAGTCTGCAACCTGAAGATTTTGCTACGTACTACTGTGCTCAGGGTGCGGCGTTGCCTAGGACGTTCGGCCAAGGGACCAAGGTGGAAATCAAACGG(配列番号6)
【0210】
DAT−X親分子中の*GLP−1およびDOM7h−14は、螺旋状リンカーにより結合される:
螺旋状リンカー
アミノ酸配列:
KEAAAKEAAAKEAAAKELAAKEAAAKEAAAKEAAAKELAA(配列番号7)
ヌクレオチド配列:
AAAGAAGCGGCGGCGAAAGAAGCGGCGGCGAAAGAAGCGGCGGCGAAAGAATTGGCCGCAAAAGAAGCGGCGGCGAAAGAAGCGGCGGCGAAAGAAGCGGCGGCGAAAGAATTGGCCGCA(配列番号8)
【0211】
*GLP−1の全配列(受容体結合に重要であることが知られている部位を除く(例えば、Sarrauste de Menthiere et al. Eur J Med Chem. 2004 Jun;39(6):473-80;Neidigh et al. Biochemistry. 2001 Nov 6;40(44):13188-200;Hjorth et al. J Biol Chem. 1994 Dec 2;269(48):30121-4およびGallwitz et al. Regul Pept. 1996 May 7;63(1):17-22)に記載のとおり)を網羅するために、17のレパートリーを、50マイクロリットルの反応体積においてPhusion高忠実度ポリメラーゼ(NEB)を用いたアセンブリーPCRプロトコルを用いて構築した。1つのライブラリーあたり4つのランダム化ヌクレオチドを、一次PCRにおいてプライマーにより導入し、次いでビオチニル化プライマーを用いてアセンブリーを実施した。Mutazyme IIキット(Stratagene)、ビオチニル化プライマーおよび50μlの反応について5〜50pgのテンプレートを用いたエラープローンPCRによって、*GLP−1内にランダム突然変異が導入された。*GLP−1ヌクレオチド配列が短いために、エラープローンPCRを2回実施して、突然変異率を増大させた。
【0212】
NcoIおよびNotIで消化した後、挿入物をストレプトアビジン被覆ビーズを用いて未消化生成物から精製した。試験ライゲーションを実施し、この場合、消化された生成物をpDOM34中に対応する部位でライゲートした。
【0213】
試験ライゲーションクローンのシーケンシングによって、全ライブラリーにおいて予想される多様化が確認され、したがって、ライブラリーのフルスケールのライゲーションおよび形質転換を続いて行った。合計体積500マイクロリットルで、1マイクログラムの消化されたベクターおよび挿入物をT4 DNAリガーゼ(NEB)と1:2の比で用いて、ライゲーションを実施した。各ライブラリーを2ショット(10マイクロリットル/100マイクロリットルのエレクトロコンピテント大腸菌TB1細胞および回収後に、100mlの培地)で1時間、37℃にて撹拌しながら形質転換し、ライブラリーを、2XTY Tet寒天を含む大きな(22cm)正方形のプレート上に蒔いた。プレートを一晩増殖させ、次いでストック調製のために、15%のグリセロールを含む5mlの2xTY中に削り落とした。ライブラリーサイズは、10〜10形質転換体の範囲であった。
【0214】
ファージライブラリー調製のために、100マイクロリットルのグリセロールストックを、抗生物質を含む200ミリリットルの2xTY培地中に接種して、接種直後の培養物の最終密度がOD600=0.1を越えないようにすることにより、ライブラリー培養を開始した。ライブラリーを一晩、約18時間、37℃で撹拌しながら培養した。培養物を遠心分離によってペレット化し、ファージライブラリーを、PEGを用いた二重沈降によって調製し、PBS中に再懸濁させた。
【0215】
選択されていないライブラリーからのいくつかのクローンをシーケンシングのためにランダムに選択して、ライブラリー構築の成功を確認し、初回のパニングをファージライブラリー調製後に実施した。
【0216】
パニング、グリセロールストック調製およびファージ増幅の方法は、特に記載しない限り下記の通りである。
【0217】
GLP−1受容体の細胞外ドメインをパニングに使用した。100マイクロリットルのファージライブラリーを、100nMのGLP−1Rを含む2%Marvell PBSとともにインキュベートした。インキュベーションは、室温で1時間実施し、次いでファージをあらかじめブロックした(2% Marvell PBS、1時間、室温)プロテインAダイナビーズ(Dynal)と組み合わせた。1時間、回転するホイール上で室温にてインキュベーションした後、ビーズを、KingFisHER精製系(Thermo Electron Corporation)中で8回、0.1%のTween PBS(KingFisHERロボットは、洗浄液から洗浄液へとビーズを移すために磁気プローブを用いることにより、洗浄プロセスを自動化する)を用いて洗浄し、特異的ファージを500マイクロリットルの0.1Mグリシン(pH2.0)中で溶離することにより回収した。100マイクロリットルの1M Tris−Cl(pH8.0)で中和した後、対数期の大腸菌TG1細胞の感染のためにファージを45分間37℃で使用した。感染細胞を寒天Tetプレート上に蒔き、これを一晩37℃で増殖させた。ライブラリーの力価,インプットアウトプットおよびライブラリーサイズを下記表に提示する。
【0218】
【表1】

【0219】
初回の選択により、全てのライブラリーについて妥当なアウトプットが得られた。
【0220】
15%グリセロールを含む2mlの2XTY培地を含む寒天プレートからコロニーを削り落とすことにより、グリセロールストックを調製し、低温バイアル中に等分した。
【0221】
以下の選択をプールされたファージに関して実施した。18ライブラリー全てからの第一選択から得られたアウトプットを含む大腸菌グリセロールの複合培養によって増幅されたファージを得た。それぞれのパニングされたライブラリーグリセロールストック50マイクロリットルを、抗生物質を含む1リットルの2xTY培地中に接種することによって、培養を開始した。培養物を2つの2lのシェーカーフラスコ中に、それぞれ0.5リットルに分割し、一晩、37℃にて250rpmで撹拌しながら培養した。PEGを用いて1回沈降させることにより18〜20時間の培養後にファージを調製し、PBS中に再懸濁させた。
【0222】
プロテアーゼを用いたDAT−Xファージ表示ライブラリー選択
第一選択アウトプットから得られた増幅されたファージを、一定濃度のGLP−1R(100nM)を用いたさらなる選択に使用した。さらに、トリプシンを用いた選択前に、初回選択アウトプットから得られたファージのバッチを、AlbudAb配列中にR108W突然変異を有するようにサブクローニングした。この突然変異により、VカッパAlbudAbクローンは、ファージ上に表示された場合にトリプシン処理に対する耐性が高くる。これは、ドメイン抗体をpIIIタンパク質に連結させるdAbのカルボキシ末端のアルギニン残基がトリプシン感受性であるからである。この部位での突然変異は、トリプシン切断部位を除去し、プロテアーゼ選択の標的ペプチドの所望の領域に対する標的化を改善する。したがって、ファージの2つのバッチ(AlbudAb中にR108W突然変異を有するかまたは有さないもの)を第二選択ラウンドで直ちに使用した。
【0223】
ファージを種々の濃度のプロテアーゼトリプシンまたはキモトリプシンで処理するか、または未処理のまま放置した後、受容体とともに1時間室温でインキュベーションした。第二の選択力価(φ/ml)を下記表に提示する。
【0224】
【表2】

【0225】
各選択から得られたファージアウトプット(0μg/ml〜10μg/ml)を、50マイクロリットルのグリセロールストックを50ミリリットルの2xTY(Tetを含む)中に接種し、20時間37℃で撹拌しながら一晩培養することによって増幅した。精製されたファージを、同じインキュベーション条件を用いて第三選択ラウンドに使用した。
【0226】
第三選択力価(φ/ml)を下記表に提示する。
【0227】
【表3】

【表4】

【0228】
クローンの多様性は、クローンの代表的なセットのコロニーシーケンシングによって検証されるように、第三ラウンド後ですでに減少しているので、選択アウトプットから得られる若干のクローンを以下で詳細に記載するように可溶性タンパク質として発現させた。
【0229】
DAT−Xファージ表示ライブラリー選択アウトプット
いくつかの*GLP−1変異体を、後述のような別のリンカーを用いてAlbudAbbutとの融合物としてクローニングするために選択し、発現し、精製し、GLP−1受容体アッセイにおいて分析した。それらのアミノ酸配列を配列1〜10に記載する(図1を参照)。1つの*GLP−1配列変異体(7)がキモトリプシンおよびトリプシン処理の両方での選択から得られるアウトプット中に大量に存在し、融合物はDMS7149と呼ばれ、キモトリプシンを使用する場合にはアウトプット中に2つ存在し(DMS7150(8)および51(9))、1つは、天然のプロテアーゼがファージ発現および分泌中に細胞において作用し、トリプシンまたはキモトリプシンでの前処理を使用しない場合にアウトプット中で観察され(DMS7148(6))、1つをクローニングして、トリプシン切断部位のノックアウトを作製した(DMS7152(10))。
【0230】
アミノ酸配列1〜4を(図1を参照)有するタンパク質を分析し、これはGLP−1および対照DAT−X変異体と比して低い有効性を示した。Edmanシーケンシングによって、タンパク質は誤ってプロセッシングされたことが示唆された。
【0231】
アミノ酸配列:PSS(配列番号9)およびヌクレオチド配列:CCAAGCTCG(配列番号10)を有する別のリンカーによりDOM7h−14に連結された*GLP−1を含むDAT−Yクローン中に突然変異を導入することにより、クローニングを実施した。
【0232】
選択された突然変異を一次PCRにおいてプライマーにより*GLP−1配列に導入し、アセンブリーPCRにおいて、NcoIおよびBamHI消化部位を融合配列のそれぞれ5’および3’末端上に導入した。
【0233】
アセンブリーPCRをNcoIおよびBamHI制限エンドヌクレアーゼで消化した。
【0234】
発現ベクターpDOM35をクローニング用に調製した。ベクターpDOM35は、以下の修飾を有するpET12aの誘導体である:
・OmpTシグナルペプチドの最後の3つの残基がSFAからAWAに変わり、これにより、大腸菌のシグナルペプチダーゼによる正しい部位でのプロセッシングが改善される。
・NcoI部位をシグナルペプチド直後のクローニングを促進するために導入した
・「スタッファー」はNcoIとBamHI部位との間に存在する。
【0235】
pDOM35をNcoIおよびBamHIで消化し、カットアセンブリーPCRを、Quick Ligation Kit(NEB)を使用してベクター中にライゲートした。2マイクロリットルのライゲーションをMachI細胞の形質転換に使用し、回収後に、細胞を、カルベニシリンを含む寒天プレート上に蒔き、一晩増殖させた。コロニーを配列決定し、正しい配列を含むものをプラスミド増殖およびその単離に使用した(Plasmid Mini Prep kit, Qiagen)。BL21(DE3)細胞をプラスミドDNAで形質転換し、結果として得られるコロニーを発現培養の接種のために使用した。
【0236】
Overnight Express(商標)自己誘導溶液(1ミリリットルの溶液1(カタログ番号71298)、2.5ミリリットルの溶液2(カタログ番号71299)、50マイクロリットルの溶液3(カタログ番号71304)、Novagen)および100マイクログラム/ミリリットルのカルベニシリンを添加した2xTY培地の50ミリリットルの培養物を接種することにより発現を実施した。培養を一晩37℃で実施し、次いで培養上清を3700xgで45分間遠心分離することにより清澄化した。発現されたタンパク質をプロテインLストリームライン(GE Healthcare、カタログ番号28−4058−03、プロテインL結合)を用いて清澄化された上清から精製し、プロテインLから0.1Mグリシン(pH2.0)を用いて溶離し、次いで0.2体積の1M Tris(pH8.0)を用いて中和した。
【0237】
DMS7148由来の*GLP−1変異体タンパク質も高い親和性のAlbudAb、DOM7h−14−10との融合DMS7161(配列11)としてクローニングし、前述のように、別のPSSリンカーによりpDOM35中に結合させた。
DOM7h−14−10
アミノ酸配列(配列番号22):
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQWIGSQLSWYQQKPGKAPKLLIMWRSSLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCAQGLRHPKTFGQGTKVEIKR
ヌクレオチド配列(配列番号23):
GACATCCAGATGACCCAGTCTCCATCCTCCCTGTCTGCATCTGTAGGAGACCGTGTCACCATCACTTGCCGGGCAAGTCAGTGGATTGGGTCTCAGTTATCTTGGTACCAGCAGAAACCAGGGAAAGCCCCTAAGCTCCTGATCATGTGGCGTTCCTCGTTGCAAAGTGGGGTCCCATCACGTTTCAGTGGCAGTGGATCTGGGACAGATTTCACTCTCACCATCAGCAGTCTGCAACCTGAAGATTTTGCTACGTACTACTGTGCTCAGGGTTTGAGGCATCCTAAGACGTTCGGCCAAGGGACCAAGGTGGAAATCAAACGG
【0238】
DMS7161の配列を含むプラスミドDNA pDOM35をBL21(DE3)中に形質転換した後、グルコースを含む最小培地中にコロニーを削り落とし、グリセロールを最終濃度約15%で添加することによって、グリセロールストックを増殖させたコロニーから調製した。DMS7161の発現は、酵母抽出物中に最終濃度10g/リットル(DMS7161 B)になるように添加された50ミリリットルの最小培地(DMS7161 A)中にグリセロールを接種することによって開始して、OD600=0.024の開始培養密度を得た。培養物を30℃で約1.4のOD600まで増殖させ、次いで0.1mMのイソプロピル−ベータ−d−チオガラクトシドを添加することによって誘発させた。培養をさらに24時間23℃で継続し、その後、培養上清を3700xgで45分間遠心分離することにより清澄化した。発現されたタンパク質を次に清澄化された上清からプロテインLを用いて精製し、プロテインL(GE Healthcare、カタログ番号.28−4058−03、プロテインL結合)から0.1Mのグリシン(pH2.0)を用いて溶離し、次いで0.2体積の1MのTris(pH8.0)を用いて中和した。
【0239】
DMS7148−52の品質管理
タンパク質DMS7148−52を発現させ、非還元SDS−PAGEで可視化し、DMS7148およびDMS7161クローンを予想されるサイズで移動する物質の大部分を用いて大腸菌中で十分に発現させた(図2、3および4)。質量分析法(図5A))およびEdmanシーケンシング分析により、配列の統合性を確認した。他のタンパク質の全てを25−トリプトファンのアミノおよびカルボキシル部位で分解し(それぞれ生成物24−142および26−142)、この場合、DMS7148はW25−D突然変異を含み、アスパラギン酸は大腸菌細胞において作用する天然のプロテアーゼの切断部位を形成しなかった(図5A)〜F))。分解生成物28〜142は残りのクローンにおいて観察された。
【0240】
タンパク質DMS7148を以下のプロトコルにしたがってGLP−1受容体結合アッセイにおいて活性について分析した:
【0241】
バックグラウンド:GLP−1Rは、CHO細胞上で発現される7TMG−タンパク質結合受容体である。GLP−1またはこのような類似体による受容体の活性化は、受容体と結合したアデニレートシクラーゼによるATPのcAMPへの変換につながる。CHO細胞は6CRE/lucレポーター遺伝子で安定にトランスフェクトされる。受容体のGLP−1活性化後にcAMPの産生に際して、プロモーター遺伝子(6コピーのcAMP応答要素−6CREを含む)はルシフェラーゼレポーター遺伝子の発現を引き起こす。これは次にルシフェリンとの反応を触媒して、光を生じ、この光は照度計で測定できる。
【0242】
プロトコル:CHO 6CRE GLP1R細胞(ルシフェラーゼレポーター遺伝子を支配する6cAMP応答要素およびヒトGLP−1受容体で安定にトランスフェクトされたCHO K1細胞)を懸濁液培地中2×10細胞/mLで播種した。懸濁液培養を48時間維持した。細胞を次いで15mMのHEPES、2mMのLグルタミン(2.5×10細胞/ml)中に希釈し、10ul/ウェルの分析される化合物を含む384ウェルプレート中に分配する。アッセイ対照を添加した後、プレートをインキュベーターに3時間、37℃および5%COで戻した。インキュベーション後、steady glo luciferase基質(Promega)を粘着性プレートシールで密封されたキットおよびプレート(Weber Marking Systems Inc.、カタログ番号607780)に記載されているようにウェルに添加した。プレートをリーダー(Packard TopCount)に設置し、5分間プレインキュベートし、蛍光を読み取り、結果をプロットした。化合物を適合される濃度応答曲線の範囲で分析し、これからpC50を計算した。
【0243】
タンパク質DMS7148は活性であるが、GLP−1ペプチドよりも活性が低いことが判明した(図6および下記にまとめる)。
【表5】

【0244】
DMS7161を、次のプロトコルにしたがってGLP−1アッセイにおいて活性について分析した:
方法:
CHO 6CRE GLP1R細胞を、37℃の水浴中にバイアルを半分浸漬することにより急速に解凍し、バイアルの内容物を、50mlファルコンチューブに移し、10mlのRPMI(無フェノール赤)アッセイ培地(Sigma、カタログ番号R7509)+2mML−グルタミン(Gibco、カタログ番号25030)+15mM HEPES(Sigma、カタログ番号H0887)をバイアルごとに添加した。計数し、1200rpmで5分遠心分離した後、細胞を適切な体積のRPMIアッセイ培地中に再懸濁させ、1×10細胞/mlとし、50μlを白色96ウェル平底組織培養プレート(Costarの96ウェル組織培養プレート、白色滅菌、カタログ番号3917)の各ウェル中に分配した。細胞を37C/5%COで一晩インキュベートした。翌日、細胞をインキュベーターから取り出し、50μlのあらかじめ調製した対照/試料をウェルに添加し、プレートをインキュベーターに3時間、37℃、5%COで戻した。
【0245】
GLP−1(7−36)対照の調製(Sigma、カタログ番号G814)
V底96ウェルプレート中、2μlの1mg/ml GLP−1(7−36)を18μlのRPMIアッセイ培地に添加して、30μM溶液を得る。2μlの30μM溶液を298μlのRPMIアッセイ培地に添加して、200nM溶液を得る(100nMのアッセイにおける最終濃度について)。対照を1:10にプレートに連続希釈(15μlの対照+135μlのRPMIアッセイ培地)して、8点の曲線を作製する。
【0246】
エキセンディン−4対照の調製(Sigma、カタログ番号E7144)
【0247】
V底96ウェルプレート中、2μlの1mg/ml)エキセンディン−4を198μlのRPMIアッセイ培地に添加して、2.39μM溶液を得る。2μlの2.39μM溶液を237μlのRPMIアッセイ培地に添加して、20nM溶液(10nMのアッセイ中最終濃度について)を得る。対照を1:10でプレートに連続希釈(15μlの対照+135μlのRPMIアッセイ培地)して、8点曲線を作製する。
【0248】
未知試料の調製
未知試料の調製のために対照の調製のための同じガイドラインを使用する。最高濃度を必要とされる最終アッセイ濃度の2倍にし、1:10でプレートに希釈する。
【0249】
ルシフェラーゼの調製(Promega、カタログ番号E2620)
必要な数のBright−Gloルシフェラーゼアリコートを冷凍庫から取り出し、室温にて暗所で解凍する。1つのアッセイプレートには1つの5mlバイアルで十分である。
【0250】
インキュベーション時間後、50μlのBright−Gloルシフェラーゼ試薬を全ウェルに添加し、プレートを室温で3分間インキュベートして、細胞溶解を起こさせた。発光(1秒あたりの計測数)を、M5eマイクロプレートリーダーを用いて読み取り、0.1秒間、各ウェルを読み取った。細胞のみを含むバックグラウンドウェルのCPSを他の全てのウェルから差し引いた。対照ウェル(GLP−1(7−36)またはエキセンディン−4)は、最高濃度で最大刺激を示すはずである。未知試料の濃度効果曲線を適合させ、これからGraphPad PrismまたはExcelFitソフトウェアを用いてEC50を計算する。
【0251】
DMS7161は、図7に示し、以下でまとめるように、有効であり、1.6〜3.4nMのEC50である。
【0252】
【表6】

【0253】
DMS7161はDMS7148として活性であることが判明した。
【0254】
まとめ
プロテアーゼに対して自然に非常に感受性であり、大腸菌における発現中に分解する多様化ペプチド融合物のファージ選択によって、本発明者等は天然の細菌プロテアーゼに対して耐性である*GLP−1変異体−融合物を同定することができ、これは大腸菌において発現可能である。このクローンにおいてノックアウトされたプロテアーゼ部位は、トリプシンおよびキモトリプシンによって認識されるものに類似しているが、この配列はさらなるトリプシンまたはキモトリプシン処理での選択から得られるアウトプット中に存在しなかった。
【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペプチドまたはポリペプチドのレパートリーからプロテアーゼ耐性ペプチドまたはポリペプチドを選択するための方法であって、
ペプチドまたはポリペプチドのレパートリーを提供すること、
レパートリーおよびプロテアーゼをプロテアーゼの活性に適した条件下でインキュベートすること、ならびに
所望の生物学的活性を有するペプチドまたはポリペプチドを回収し、これによりプロテアーゼ耐性ペプチドまたはポリペプチドが選択されること
を含む、方法。
【請求項2】
レパートリーが表示系において発現され、プロテアーゼが表示系に対して内因性である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
表示系が細菌であり、プロテアーゼが細菌において発現されたプロテアーゼである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
パートリーと、さらなるプロテアーゼとを、前記さらなるプロテアーゼの活性に適した条件下で組み合わせることをさらに含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記条件が、(i)約10μg/ml〜約3mg/mlの前記さらなるプロテアーゼ、(ii)約20℃〜約40℃、および(iii)少なくとも約30分間である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記条件に関して、(i)が約10〜約100μg/mlの前記さらなるプロテアーゼである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記条件に関して、(ii)が約30〜約37℃である、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
前記条件に関して、(iii)が少なくとも約1時間である、請求項5〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記さらなるプロテアーゼが、血清、喀痰、粘液(例えば、胃粘液、鼻粘液、気管支粘液)、気管支肺胞洗浄、肺ホモジネート、肺抽出物、膵臓抽出物、胃液、唾液または涙において見られるプロテアーゼから選択されるものである、請求項4〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記プロテアーゼまたはさらなるプロテアーゼが、セリンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、アスパルテートプロテアーゼ、チオールプロテアーゼ、マトリックスメタロプロテアーゼ、カルボキシペプチダーゼ(例えば、カルボキシペプチダーゼA、カルボキシペプチダーゼB)、トリプシン、キモトリプシン、ペプシン、パパイン、エラスターゼ、ロイコザイム、パンクレアチン、トロンビン、プラスミン、カテプシン(例えば、カテプシンG)、プロテイナーゼ(例えば、プロテイナーゼ1、プロテイナーゼ2、プロテイナーゼ3)、サーモリシン、キモシン、エンテロペプチダーゼ、カスパーゼ(例えば、カスパーゼ1、カスパーゼ2、カスパーゼ4、カスパーゼ5、カスパーゼ9、カスパーゼ12、カスパーゼ13)、カルパイン、フィカイン、クロストリパイン、アクチニダイン、ブロメライン、セパラーゼ、およびジペプチジルペプチダーゼIV(DPP−IV)からなる群の一または二以上を含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記プロテアーゼまたはさらなるプロテアーゼがトリプシンまたはキモトリプシンである、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
プロテアーゼが、生物学的抽出物、生物学的ホモジネート、または生物学的調製物によって提供される、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記生物学的抽出物、生物学的ホモジネート、または生物学的調製物が、血清、喀痰、粘液(例えば、胃粘液、鼻粘液、気管支粘液)、気管支肺胞洗浄、肺ホモジネート、肺抽出物、膵臓抽出物、胃液、唾液、および涙からなる群から選択されるものである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記所望の生物学的活性が結合活性である、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記結合活性が一般的リガンドを結合する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記一般的リガンドが、プロテインA、プロテインG、またはプロテインLである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記結合活性が標的リガンドに対する特異的結合である、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記標的リガンドがGLP−1受容体である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
所望の生物学的活性を有するペプチドまたはポリペプチドをパニングによって回収する、請求項1〜18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記レパートリーが表示系を含む、請求項1〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記表示系が、バクテリオファージ表示、リボソーム表示、乳濁液コンパートメント化および表示、酵母表示、ピューロマイシン表示、細菌表示、プラスミド上の表示、ならびに共有表示からなる群から選択されるものである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記表示系が、核酸のコード機能と、核酸によりコードされるペプチドまたはポリペプチドの機能的特徴とを連結する、請求項20または21に記載の方法。
【請求項23】
前記表示系が複製可能な遺伝子パッケージを含む、請求項20、21、または22に記載の方法。
【請求項24】
前記表示系がバクテリオファージ表示を含む、請求項20〜23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
バクテリオファージ表示系が多価である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記バクテリオファージが、fd、M13、ラムダ、MS2、およびT7からなる群から選択されるものである、請求項20に記載の方法。
【請求項27】
ペプチドまたはポリペプチドがpIII融合タンパク質として表示される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
ペプチドまたはポリペプチドがpIIIのドメイン1に対してアミノ末端である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
所望の生物学的活性を有するペプチドまたはポリペプチドをコードする核酸を増幅することをさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項30】
前記核酸がファージ増幅、細胞増殖、またはポリメラーゼ連鎖反応によって増幅されるものである、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記レパートリーが免疫グロブリン単一可変ドメインのレパートリーである、請求項1〜30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記免疫グロブリン単一可変ドメインが重鎖可変ドメインである、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記重鎖可変ドメインがヒトまたはヒト化重鎖可変ドメインである、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記免疫グロブリン単一可変ドメインが軽鎖可変ドメインである、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記軽鎖可変ドメインがヒトまたはヒト化軽鎖可変ドメインである、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
標的リガンドを高親和性で結合するペプチドまたはポリペプチドを、ペプチドまたはポリペプチドの前記レパートリーから選択するための、請求項1〜35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
プロテアーゼを約100μg/mlで使用し、組み合わせたレパートリーおよびプロテアーゼを約37℃で少なくとも約1時間インキュベートする、請求項1〜36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
それぞれの前記ポリペプチドが標的を結合するペプチドであり、
レパートリーがペプチドのレパートリーを表示するファージ表示系によって提供され、
インキュベートする工程において、ファージが、細菌プロテアーゼ(第1プロテアーゼ)発現に適した条件下で細菌において発現され、
組み合わせる工程において、ファージ表示系が、第2のプロテアーゼの活性に適した条件下でトリプシンおよびキモトリプシンから選択される第2のプロテアーゼと組み合わされ、および
回収する工程において、前記標的リガンドを結合するペプチドを含むポリペプチドを表示するファージを回収する、請求項1〜37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
請求項1〜38のいずれか一項に記載の方法を実施することを含む、プロテアーゼ耐性ペプチドまたはポリペプチドのレパートリーの製造方法であって、前記回収する工程において、所望の生物学的活性を有する複数のペプチドまたはポリペプチドを回収し、それによりプロテアーゼ耐性ペプチドまたはポリペプチドのレパートリーが製造される、方法。
【請求項40】
プロテアーゼ耐性ペプチドまたはポリペプチドのレパートリーがナイーブレパートリーである、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
第3プロテアーゼと、プロテアーゼ耐性ペプチドまたはポリペプチドのレパートリーと、第3プロテアーゼの活性に適した条件下で組み合わせること、および
少なくとも一つの所望の生物学的活性を有するペプチドまたはポリペプチドを回収し、それにより第3プロテアーゼに対して耐性である少なくとも一つのペプチドまたはポリペプチドが選択されることをさらに含む、請求項39または40に記載の方法。
【請求項42】
第3のプロテアーゼが請求項1〜41のいずれか一項に定義されたとおりである、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記レパートリーにおける、プロテアーゼのペプチドまたはポリペプチドに対する比(モル/モルに基づいて)が8,000〜80,000(プロテアーゼ:ペプチドまたはポリペプチド)である、請求項1〜42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記レパートリーにおいてプロテアーゼのペプチドまたはポリペプチドに対する比(重量/重量に基づく)が1,600〜160,000(プロテアーゼ:ペプチドまたはポリペプチド)である、請求項1〜43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
請求項1〜44のいずれか一項に記載の方法によって選択可能であるかまたは選択される、単離されたプロテアーゼ耐性ペプチドまたはポリペプチド。
【請求項46】
請求項1〜45のいずれか一項に記載の方法によって選択可能であるかまたは選択される、単離されたプロテアーゼ耐性免疫グロブリン単一可変ドメイン。
【請求項47】
糖尿病を治療および/または予防するために患者に投与するための、(i)約10μg/ml〜約3mg/mlのプロテアーゼ、(ii)約20℃〜約40℃、および(iii)少なくとも約30分間の条件下(例えば、100μg/mlのプロテアーゼ、37℃で少なくとも1時間の条件下)で、プロテアーゼとともにインキュベートする場合に、トリプシンおよびキモトリプシンから選択される一以上のプロテアーゼに対して耐性である、単離されたGLP−1受容体アゴニスト。
【請求項48】
患者に対して注射により投与するための、請求項47に記載のアゴニスト。
【請求項49】
請求項45もしくは46に記載のプロテアーゼ耐性ペプチド、ポリペプチド、もしくは可変ドメインまたは請求項47もしくは48に記載のアゴニストをコードする単離された核酸。
【請求項50】
請求項45もしくは46に記載のプロテアーゼ耐性ペプチド、ポリペプチド、もしくは可変ドメインまたは請求項47もしくは48に記載のアゴニストをコードする、組換え核酸。
【請求項51】
請求項49または50に記載の核酸を含む、ベクター。
【請求項52】
請求項51に記載の核酸を含む宿主細胞。
【請求項53】
請求項1〜44のいずれか一項に記載の方法によって選択可能であるかまたは選択されるプロテアーゼ耐性ペプチドまたはポリペプチドあるいは請求項47〜48のいずれか一項に記載のアゴニストの製造方法であって、プロテアーゼ耐性ペプチドまたはポリペプチド、アゴニストまたはアンタゴニストをコードする組換え核酸を含む宿主細胞を、発現に適した条件下で維持することを含み、これによってプロテアーゼ耐性ペプチドまたはポリペプチド、アゴニストまたはアンタゴニストが製造される、方法。
【請求項54】
薬物に使用するための、請求項1〜44のいずれか一項に記載の方法によって選択可能であるかまたは選択される、プロテアーゼ耐性ペプチドまたはポリペプチド。
【請求項55】
疾患を治療および/または予防するための薬剤を製造するための、請求項1〜44のいずれか一項に記載の方法によって選択可能であるかまたは選択される、プロテアーゼ耐性ペプチドまたはポリペプチド。
【請求項56】
疾患の治療方法であって、有効量の、請求項1〜44のいずれか一項に記載の方法によって選択可能であるかまたは選択されるプロテアーゼ耐性ペプチド、ポリペプチド、または可変ドメインを、それを必要とする被験者に対して投与することを含む、方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図5A】
image rotate

【図5B】
image rotate

【図5C】
image rotate

【図5D】
image rotate

【図5E】
image rotate

【図5F】
image rotate

【図6】
image rotate

image rotate

【図4】
image rotate

【図7】
image rotate


【公表番号】特表2012−510803(P2012−510803A)
【公表日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−539034(P2011−539034)
【出願日】平成21年12月4日(2009.12.4)
【国際出願番号】PCT/EP2009/066395
【国際公開番号】WO2010/063818
【国際公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(397009934)グラクソ グループ リミテッド (832)
【氏名又は名称原語表記】GLAXO GROUP LIMITED
【住所又は居所原語表記】Glaxo Wellcome House,Berkeley Avenue Greenford,Middlesex UB6 0NN,Great Britain
【Fターム(参考)】