説明

プロテアーゼ阻害剤前駆体合成

【化1】


本発明は、構造(I)を有する化合物ならびにその製造方法及びそのような方法において用いられる中間体を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、プロテアーゼ阻害剤、特に広範囲HIVプロテアーゼ阻害剤の製造において有用な化合物及びそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
HIV感染は大きな医学的問題であり続けている。現在利用可能なHIV薬はヌクレオシド逆転写酵素(RT)阻害剤、非−ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤ならびにペプチドミメティックプロテアーゼ阻害剤を含む。これらの薬剤のそれぞれは、単独で用いられると、ウイルス複製を一時的に抑制することができるのみである。不十分な薬剤の力価、服用違反、制限される組織浸透及びある細胞型内における薬剤−特異的制限は、感受性ウイルスの不完全な抑制を説明し得る。
【0003】
さらに、HIVは非常に不均質な(heterogeneous)ウイルスである。この不均質性の臨床的有意さ(clinical significance)は、免疫学的圧力(immunological pressure)を逃れ、薬剤選択的圧力(drug selective pressure)に生き残り、且つ多様な細胞型及び生育条件に適応するウイルスの能力により証明される。従って、多様性がヒト免疫不全ウイルス感染の薬理学的又は免疫学的抑制のための大きな障害である。
【0004】
レトロウイルス生活環中の決定的な経路の1つは、アスパラギン酸プロテアーゼによるポリタンパク質前駆体のプロセシングである。例えばHIVウイルスの場合、gag−polタンパク質がHIVプロテアーゼによりプロセシングされる。アスパラギン酸プロテアーゼによる前駆体ポリタンパク質の正しいプロセシングが感染性ビリオンの組み立て(assembly)に必要であり、かくしてアスパラギン酸プロテアーゼを抗ウイルス治療のための魅力的な標的としている。特にHIV処置のために、HIVプロテアーゼは魅力的な標的である。
【0005】
HIVプロテアーゼ阻害剤(PIs)は通常他の抗−HIV化合物、例えばヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(NRTIs)、非−ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(NNRTIs)、ヌクレオチド逆転写酵素阻害剤(NtRTIs)又は他のプロテアーゼ阻害剤と組み合わされてAIDS患者に投与される。これらの抗レトロウイルス薬が非常に有用であることにかかわらず、それらは共通の制限を有し、すなわち標的とされるHIVウイルス中の酵素は、既知の薬剤が突然変異HIVウイルスに対してあまり有効でなくなるか又は無効にさえなるようなやり方で突然変異することができる。あるいは言い換えると、HIVウイルスは利用できる薬剤に対して常に向上する耐性を生む。
【0006】
HIV処置において医学的要求を満たすことができる化合物の探索において、一般式(A)のスルホンアミド誘導体が製造され、フォールドレジスタンス(fold resistance)における変動、すなわちHIV野生型及びHIV突然変異株へのウイルス阻害活性における相違がほとんどなく、広いウイルス学的範囲を有することが見出された(特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献9、特許文献10、特許文献11、特許文献12、特許文献13、特許文献14、特許文献15、特許文献16、特許文献17、特許文献18、特許文献19、非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3、非特許文献4、非特許文献5、非特許文献6)。
【0007】
【化1】

【0008】
当該技術分野において得られる結果にかかわらず、向上したHIVプロテアーゼ阻害剤に対する継続的な要求がある。そのような向上したHIVプロテアーゼ阻害剤は、医薬品化学についての知識が化学的変形の製造を可能にする場合のみに製造され得る。一般式(A)の化合物は当該技術分野において、中間体としてヘキサヒドロ−フロ[2,3−b]フラン−3−オールを用いるカップリング反応を介して製造される。新規且つ向上したHIVプロテアーゼ阻害剤のための骨格としてのヘキサヒドロ−フロ[2,3−b]フラン薬理団(pharmacophore)のさらなる探査は、今まではヘキサヒドロ−フロ[2,3−b]フラン−3−オールの置換された変形をいかにして製造するかについての知識の欠如の故に妨げられてきた。
【特許文献1】国際公開第2004/003817号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2003/106461号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2003/097616号パンフレット
【特許文献4】国際公開第2003/090691号パンフレット
【特許文献5】国際公開第2003/090690号パンフレット
【特許文献6】国際公開第2003/078438号パンフレット
【特許文献7】国際公開第2003/076413号パンフレット
【特許文献8】国際公開第2003/070976号パンフレット
【特許文献9】国際公開第2003/064406号パンフレット
【特許文献10】国際公開第2003/057173号パンフレット
【特許文献11】国際公開第2003/053435号パンフレット
【特許文献12】国際公開第2003/049746号パンフレット
【特許文献13】欧州特許第1265073号明細書
【特許文献14】国際公開第2002/092595号パンフレット
【特許文献15】国際公開第2002/083657号パンフレット
【特許文献16】国際公開第2002/081478号パンフレット
【特許文献17】国際公開第2001/025240号パンフレット
【特許文献18】国際公開第99/67417号パンフレット
【特許文献19】国際公開第99/67254号パンフレット
【非特許文献1】Ohtaka et al.著,Protein Science,11(8),2002年,1908−1916
【非特許文献2】Gatanaga et al.著,Journal of Biological Chemistry,277(8),2002年,952−5961
【非特許文献3】Ghosh et al.著,Antiviral Research,54(1),2002年,29−36
【非特許文献4】Yoshimura et al.著,Journal of Virology,76(3),2002年,1349−1358
【非特許文献5】Ghosh et al.著,Farmaco,56(1−2),2001年,29−32
【非特許文献6】Ghosh et al.著,Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,8(6),1998年,687−690
【発明の開示】
【0009】
発明の概略
本発明の第1の側面に従い、構造(I)を有する化合物を、その立体異性体及び塩を含んで提供する。
【0010】
【化2】

【0011】
本発明の第2の側面に従い、式(II)
【0012】
【化3】

【0013】
[式中、
X及びYは独立してSi及びCから選ばれ;そして
、R、R及びRは独立して−H及び1価炭化水素基より成る群から選ばれる]を有する化合物を、その立体異性体及び塩を含んで提供する。
【0014】
本発明の第3の側面に従い、式(III)
【0015】
【化4】

【0016】
[式中、
X及びYは独立してSi及びCから選ばれ;そして
、R、R及びRは独立して−H及び1価炭化水素基より成る群から選ばれる]を有する化合物を、その立体異性体及び塩を含んで提供する。
【0017】
本発明の第4の側面に従い、式(IV)
【0018】
【化5】

【0019】
[式中、
X及びYは独立してSi及びCから選ばれ;そして
、R、R及びRは独立して−H及び1価炭化水素基より成る群から選ばれる]を有する化合物を、その立体異性体及び塩を含んで提供する。
【0020】
本発明の第5の側面に従い、式(II)を有する化合物をアルコール脱保護条件に供し、かくして生成する脱保護された中間体を分子内環化反応に供することを含んでなる、構造(I)を有する化合物の製造方法を提供する。
【0021】
本発明の第6の側面に従い、式(III)を有する化合物を酸化することを含んでなる、式(II)を有する化合物の製造方法を提供する。
【0022】
本発明の第7の側面に従い、式(IV)を有する化合物をヒドロホウ素化し(hydroborating)、かくして生成するヒドロホウ素化された中間体を続いて酸化することを含んでなる、式(III)を有する化合物の製造方法を提供する。
【0023】
本発明の第8の側面に従い、式(V)
【0024】
【化6】

【0025】
[式中、
X及びYは独立してSi及びCから選ばれ;そして
、R、R及びRは独立して−H及び1価炭化水素基より成る群から選ばれる]を有する化合物又はその立体異性体又は塩をWittig型試薬と反応させることを含んでなる、式(IV)を有する化合物の製造方法を提供する。
【0026】
上記の式(II)、(III)、(IV)及び(V)の化合物において、R及びRは一緒になって、−R−R−により示される2価の炭化水素基を形成することもできる。同様に、R及びRは一緒になって、−R−R−により示される2価の炭化水素基を形成することもできる。
【0027】
発明の詳細な記述
「立体異性体」という用語は、同じ分子式(同じ原子の数及び種類)を有し、同じ結合性を有するが、空間における原子の配置において異なる1群の化合物のメンバーを指す。立体異性体はエナンチオマー及びジアステレオマーを含む。
【0028】
本明細書で用いられる場合、「1価炭化水素基」という用語は、炭素主鎖中に1個もしくはそれより多い水素原子を、場合により1個もしくはそれより多いヘテロ原子と一緒に含んでなる炭素主鎖を含有する1価環式、複素環式、直鎖状、分枝鎖状、飽和もしくは不飽和基を指す。「1価炭化水素基」という用語は、下記で定義される「アルキル」、「アルケニル」、「アルキニル」、「シクロアルキル」、「シクロアルケニル」、「シクロアルキニル」、「アルコキシアルキル」、「アルコキシアリール」、「(シクロアルキル)アルキル」、「(シクロアルケニル)アルキル」、「(シクロアルキニル)アルキル」、「ヘテロシクリルアルキル」、「アルキルヘテロシクリル」、「ヘテロシクリル」、「アルキルアリール」、「アリールアルキル」及び「アリール」という用語を包含することが意図されている。
【0029】
本明細書で用いられる場合、基として又は基の一部としての「アルキル」という用語は、示される数の炭素原子を有し、場合によりハロゲンで置換されていることができる直鎖状もしくは分枝鎖状飽和1価炭化水素基を指す。例えば基として又は基の一部としてのC1−3アルキルは、1〜3個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝鎖状飽和炭化水素基、例えばメチル、ジフルオロメチル、エチル、1−クロロエチル、プロピル、1−メチルエチルなどを定義し;基として又は基の一部としてのC1−4アルキルは、1〜4個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝鎖状飽和炭化水素基、例えばC1−3アルキルに関して定義された基ならびにブチル、2−ブロモブチルなどを定義し;基として又は基の一部としてのC2−4アルキルは、2〜4個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝鎖状飽和炭化水素基、例えばエチル、プロピル、2−クロロプロピル、1−メチルエチル、ブチルなどを定義し;基として又は基の一部としてのC1−6アルキルは、1〜6個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝鎖状飽和炭化水素基、例えばC1−4アルキルに関して定義された基ならびにペンチル、ヘキシル、2−メチルブチル、2−クロロ−1−メチルブチルなどを定義し;基として又は基の一部としてのC1−9アルキルは、1〜9個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝鎖状飽和炭化水素基、例えばC1−6アルキルに関して定義された基ならびにヘプチル、3−フルオロ−ヘプチル、オクチル、ノニル、2−メチルヘキシル、2−メチルヘプチル、デシルなどを定義し;基として又は基の一部としてのC1−10アルキルは、1〜10個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝鎖状飽和炭化水素基、例えばC1−9アルキルに関して定義された基ならびにデシル、2−メチルノニル、4−ブロモ−デシルなどを定義し;基として又は基の一部としてのC1−20アルキルは、1〜20個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝鎖状飽和炭化水素基、例えばC1−10アルキルに関する基ならびにウンデシル、ドデシル、2−エチル−3−クロロドデシルなどを定義する。
【0030】
本明細書で用いられる場合、基として又は基の一部としての「アルケニル」という用語は、示される数の炭素原子及び炭素−炭素二重結合の特色のある特徴を有する直鎖状もしくは分枝鎖状不飽和もしくは部分的不飽和1価炭化水素基を指す。例えば基として又は基の一部としてのC2−3アルケニルという用語は、少なくとも1個の二重結合を含有する2もしくは3個の炭素原子を有する炭化水素基、例えばエテニル、プロペニルなどを定義し;基として又は基の一部としての「C2−5アルケニル」という用語は、少なくとも1個の二重結合を含有する2〜5個の炭素原子を有する炭化水素基、例えばC2−3アルケニルに関して定義された基、ブテニル、ペンテニルなどを定義し;基として又は基の一部としての「C2−6アルケニル」という用語は、少なくとも1個の二重結合を含有する2〜6個の炭素原子を有する直鎖状及び分枝鎖状炭化水素基、例えばC2−5アルケニルに関して定義された基、ヘキセニルなどを定義し;C2−20アルケニルは、2〜20個の炭素原子を有し、且つ少なくとも1個の二重炭素−炭素結合を有する直鎖状もしくは分枝鎖状炭化水素基である。
【0031】
本明細書で用いられる場合、基として又は基の一部としての「アルキニル」という用語は、示される数の炭素原子及び炭素−炭素三重結合の特色のある特徴を有する直鎖状もしくは分枝鎖状不飽和もしくは部分的不飽和1価炭化水素基を指す。例えば基として又は基の一部としてのC2−3アルキニルという用語は、少なくとも1個の三重結合を含有する2もしくは3個の炭素原子を有する炭化水素基、例えばエチニル、プロピニルなどを定義し;基として又は基の一部としての「C2−5アルキニル」という用語は、少なくとも1個の三重結合を含有する2〜5個の炭素原子を有する直鎖状及び分枝鎖状炭化水素基、例えばC2−3アルキニルに関して定義された基、ブチニル、ペンチニルなどを定義し;基として又は基の一部としての「C2−6アルキニル」という用語は、少なくとも1個の三重結合を含有する2〜6個の炭素原子を有する直鎖状及び分枝鎖状炭化水素基、例えばC2−5アルキニルに関して定義された基、ヘキシニルなどを定義し;C2−20アルキニルは、2〜20個の炭素原子を有し、且つ少なくとも1個の三重炭素−炭素結合を有する直鎖状もしくは分枝鎖状炭化水素基である。
【0032】
本明細書で用いられる場合、基として又は基の一部としての「シクロアルキル」という用語は、示される数の炭素原子を有する環式飽和1価炭化水素基を指す。例えば基として又は基の一部としてのC3−6シクロアルキルという用語はシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルの総称であり;基として又は基の一部としてのC3−7シクロアルキルという用語はシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルの総称であり;C3−30シクロアルキルは、3〜30個の炭素原子を有する環式飽和1価炭化水素基である。
【0033】
本明細書で用いられる場合、基として又は基の一部としての「シクロアルケニル」及び「シクロアルキニル」という用語は、環式不飽和もしくは部分的不飽和1価炭化水素基を指す。シクロアルケニルは少なくとも1個の炭素−炭素二重結合を特徴とし、シクロアルキニルは少なくとも1個の炭素−炭素三重結合を特徴とする。例えばC3−30シクロアルケニルは、3〜30個の炭素原子を有し、且つ少なくとも1個の炭素−炭素二重結合を有する環式不飽和1価炭化水素基である。やはり例として、C8−30シクロアルキニルは、8〜30個の炭素原子を有し、且つ少なくとも1個の炭素−炭素三重結合を有する環式不飽和もしくは部分的不飽和1価炭化水素基である。
【0034】
本明細書で用いられる場合、基として又は基の一部としての「アリール」という用語は、場合により例えばアルキル基、アルキルオキシ基又はアルカンジイル基のような1個もしくはそれより多い置換基で置換されていることができる環式芳香族1価炭化水素基、例えばフェニル及びナフチルを指す。2価アルキル基として定義されるアルカンジイル基で置換されたアリールの典型的な例は、例えばインダンである。アリール基が1個より多い環を含む場合、環は縮合しているか、二環式であるか、又はフェニルで置換されていることができ、例えばビフェニルもアリールの定義中に含まれるものとする。上記の定義から、アリール基全体が必ずしも芳香族である必要はなく、例えばインダンのようにそれは少なくとも1個の芳香族部分を含有することが明らかでなければならない。やはり例として、C6−30アリールは6〜30個の炭素原子を有する環式芳香族炭化水素基である。
【0035】
本明細書で用いられる場合、基として又は基の一部としての「ヘテロシクリル」という用語は、環式炭化水素の主鎖中に少なくとも1個のヘテロ原子を有し、場合により例えばアルキル基又はアルキルオキシ基のような1個もしくはそれより多い置換基で置換されていることができる環式飽和、部分的不飽和もしくは芳香族1価炭化水素基を指す。複素環の例にはジヒドロイソオキサゾリル、フラニル、ピリジル、フタルイミド、チエニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、オキサゾリル、ピロリジニル、ピロリニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、ピラゾリジニル、テトラヒドロフラニル、ピラニル、ピロニル、ピラジニル、ピリダジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリニル、チオナフチル、ベンゾフラニル、イソベンゾフリル、インドリル、オキシインドリル、イソインドリル、インダゾリル、インドリニル、7−アザインドリル、イソインダゾリル、ベンゾピラニル、クマリニル、イソクマリニル、キノリル、イソキノリル、ナフチリジニル、シンノリニル、キナゾリニル、ピリドピリジル、ベンズオキサジニル、キノキサジニル、クロメニル、クロマニル、イソクロマニル、カルボリニルなどが含まれるが、これらに限られない。やはり例として、C5−30ヘテロシクリルは、環式炭化水素の主鎖中に少なくとも1個のヘテロ原子を有し、且つ環式炭化水素中に5〜30個の炭素原子を有する環式芳香族もしくは非−芳香族1価炭化水素基である。
【0036】
定義中で示された通り、上記で定義された用語をもっと大きな基の一部として用いることができる。
【0037】
例えば本明細書で用いられる場合、「(シクロアルキル)アルキル」という用語は、シクロアルキル置換基を有するアルキル基を指す。結合はアルキル基を介する。そのような
基は示される数の炭素原子を有する。例えばC4−30(シクロアルキル)アルキルはシクロアルキル置換基を有するアルキル基を指し、ここで(シクロアルキル)アルキル基中の炭素原子の合計数は4〜30の範囲である。他の例にはC5−11シクロアルキルC1−6アルキルが含まれ、C5−11シクロアルキル置換基を有するC1−6アルキル基を指す。
【0038】
本明細書で用いられる場合、「(シクロアルケニル)アルキル」という用語は、シクロアルケニル置換基を有するアルキル基を指す。結合はアルキル基を介する。そのような基は示される数の炭素原子を有する。例えばC4−30(シクロアルケニル)アルキルはシクロアルケニル置換基を有するアルキル基を指し、ここで(シクロアルケニル)アルキル基中の炭素原子の合計数は4〜30の範囲である。他の例にはC5−11シクロアルケニルC1−6アルキルが含まれ、C5−11シクロアルケニル置換基を有するC1−6アルキル基を指す。
【0039】
本明細書で用いられる場合、「(シクロアルキニル)アルキル」という用語は、シクロアルキニル置換基を有するアルキル基を指す。結合はアルキル基を介する。そのような基は示される数の炭素原子を有する。例えばC9−30(シクロアルキニル)アルキルはシクロアルキニル置換基を有するアルキル基を指し、ここで(シクロアルキニル)アルキル基中の炭素原子の合計数は9〜30の範囲である。他の例にはC8−11シクロアルキニルC1−6アルキルが含まれ、C8−11シクロアルキニル置換基を有するC1−6アルキル基を指す。
【0040】
本明細書で用いられる場合、「アルコキシアルキル」という用語は、アルコキシ(アルキルオキシとも命名される)置換基を有するアルキル基を指す。結合はアルキル基を介する。アルキル基及び/又はアルコキシ基は示される数の炭素原子を有する。例えばC2−20アルコキシアルキルはアルコキシ置換基を有するアルキル基を指し、ここでアルコキシアルキル基中の炭素原子の合計数は2〜20の範囲である。他の例にはC1−6アルコキシC1−6アルキルが含まれ、C1−6アルコキシ置換基を有するC1−6アルキル基を指す。
【0041】
本明細書で用いられる場合、「アルコキシアリール」という用語は、アルコキシ置換基を有するアリール基を指す。結合はアリール基を介する。アリール基及び/又はアルコキシ基は示される数の炭素原子を有する。例えばC7−20アルコキシアリールはアルコキシ置換基を有するアリール基を指し、ここでアルコキシアリール基中の炭素原子の合計数は7〜20の範囲である。他の例にはC1−6アルコキシC5−10アリールが含まれ、C1−6アルコキシ置換基を有するC5−10アリール基を指す。
【0042】
本明細書で用いられる場合、「アルキルアリール」という用語は、アリール置換基を有するアルキル基を指す。結合はアリール基を介する。そのような基は示される数の炭素原子を有する。例えばC7−30アルキルアリールはアルキル置換基を有するアリール基を指し、ここでアルキルアリール基中の炭素原子の合計数は7〜30の範囲である。他の例にはC1−6アルキルC5−11アリールが含まれ、C1−6アルキル置換基を有するC5−11アリール基を指す。
【0043】
本明細書で用いられる場合、「アリールアルキル」という用語は、アルキル置換基を有するアリール基を指す。結合はアルキル基を介する。そのような基は示される数の炭素原子を有する。例えばC7−30アリールアルキルはアリール置換基を有するアルキル基を指し、ここでアリールアルキル基中の炭素原子の合計数は7〜30の範囲である。他の例にはC5−11アリールC1−6アルキルが含まれ、C5−11アリール置換基を有するC1−6アルキル基を指す。
【0044】
本明細書で用いられる場合、「アルキルヘテロシクリル」という用語は、ヘテロシクリル置換基を有するアルキル基を指す。結合はヘテロシクリル基を介する。そのような基は示される数の炭素原子を有する。例えばC2−30アルキルヘテロシクリルはアルキル置換基を有するヘテロシクリル基を指し、ここでアルキルヘテロシクリル基中の炭素原子の合計数は2〜30の範囲である。他の例にはC1−6アルキルC1−11ヘテロシクリルが含まれ、C1−6アルキル置換基を有するC1−11ヘテロシクリル基を指す。
【0045】
本明細書で用いられる場合、「ヘテロシクリルアルキル」という用語は、アルキル置換基を有するヘテロシクリル基を指す。結合はアルキル基を介する。そのような基は示される数の炭素原子を有する。例えばC2−30ヘテロシクリルアルキルはヘテロシクリル置換基を有するアルキル基を指し、ここでヘテロシクリルアルキル基中の炭素原子の合計数は2〜30の範囲である。他の例にはC1−11ヘテロシクリルC1−6アルキルが含まれ、C1−11ヘテロシクリル置換基を有するC1−6アルキル基を指す。
【0046】
本明細書で用いられる場合、「2価炭化水素基」という用語は、炭素主鎖中に1個もしくはそれより多い水素原子を場合により1個もしくはそれより多いへテロ原子と一緒含んでなる炭素主鎖を含有する2価環式、複素環式、直鎖状、分枝鎖状、飽和又は不飽和基を指す。「2価炭化水素基」という用語は、「アルカンジイル」、「アルケンジイル」、「アルキンジイル」、「シクロアルカンジイル」、「シクロアルケンジイル」及び「シクロアルキンジイル」という用語を包含することが意図されている。
【0047】
「アルカンジイル」という用語は「アルキル」と全く同じに定義されるが、1価ではなくて2価である。「アルケンジイル」という用語は「アルケニル」と全く同じに定義されるが、1価ではなくて2価である。「アルキンジイル」という用語は「アルキニル」と全く同じに定義されるが、1価ではなくて2価である。「シクロアルカンジイル」という用語は「シクロアルキル」と全く同じに定義されるが、1価ではなくて2価である。「シクロアルケンジイル」という用語は「アルケニル」と全く同じに定義されるが、1価ではなくて2価である。「シクロアルキンジイル」という用語は「アルキニル」と全く同じに定義されるが、1価ではなくて2価である。
【0048】
本明細書で用いられる場合、「置換された」という用語は、有機化合物のすべての許され得る置換基を含むことが意図されている。広い側面において、許され得る置換基には有機化合物の非環式及び環式、分枝鎖状及び非分枝鎖状、炭素環式及び複素環式、芳香族及び非芳香族置換基が含まれる。許され得る置換基は、適した有機化合物に関して1個もしくはそれより多くであることができ、同一もしくは異なることができる。本発明の目的のために、窒素のようなヘテロ原子は水素置換基及び/又はヘテロ原子の原子価を満たす本明細書に記載される有機化合物のいずれかの許され得る置換基を有することができる。本発明は、有機化合物の許され得る置換基によりいかようにも制限されることを意図してはいない。
【0049】
本明細書で用いられる場合、「ヘテロ原子」という用語はN、O及びSを含む。
【0050】
本発明に従う化合物及びそれらの中間体は、それらの塩基の形態又は塩の形態で存在することができる。製薬学的に許容され得ても、許容され得なくても、すべての塩が本発明の範囲内に含まれる。
【0051】
本発明に従う化合物及びそれらの中間体が形成することができる塩の形態は、適した酸、例えば無機酸、例えばハロゲン化水素酸、例えば塩酸又は臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸など;あるいは有機酸、例えば酢酸、プロパン酸、ヒドロキシ酢酸、乳酸、ピルビン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、シクラミン酸、サリチル酸、p−アミノサリチル酸、パモ酸などの酸を用いて;あるいは塩基塩の形態、例えばアンモニウム塩、第4級アンモニウム塩、アルカリ及びアルカリ土類金属塩、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム塩など、有機塩基との塩、例えばベンザチン、N−メチル,−D−グルカミン、ヒドラバミン塩ならびに例えばアルギニン、リシンなどのようなアミノ酸との塩の形成のための有機及び無機塩基を用いて簡単に製造され得る。
【0052】
適した塩基を用いる処理により、該酸付加塩の形態を遊離の塩基の形態に転換することができる。逆に、適した酸を用いる処理により、該塩基付加塩の形態を遊離の酸の形態に転換することができる。
【0053】
X及びYは好ましくは同じである。X及びYは好ましくはCである。
【0054】
、R、R及びRは、好ましくは独立して−H、C1−20アルキル、C2−20アルケニル、C2−20アルコキシアルキル、C7−20アルコキシアリール、C2−20アルキニル、C3−30シクロアルキル、C4−30(シクロアルキル)アルキル、C4−30(シクロアルケニル)アルキル、C9−30(シクロアルキニル)アルキル、C3−30シクロアルケニル、C4−30シクロアルキニル、C7−30アリールアルキル、C7−30アルキルアリール、C6−30アリール、C6−30ヘテロシクリルアルキル、C6−30アルキルヘテロシクリル及びC5−30ヘテロシクリルより成る群から選ばれる。
【0055】
、R、R及びRは、好ましくは独立して−H、C1−16アルキル、C2−16アルケニル、C2−16アルコキシアルキル、C7−16アルコキシアリール、C2−16アルキニル、C3−20シクロアルキル、C4−20(シクロアルキル)アルキル、C4−20(シクロアルケニル)アルキル、C9−20(シクロアルキニル)アルキル、C3−20シクロアルケニル、C4−20シクロアルキニル、C7−20アリールアルキル、C7−20アルキルアリール、C6−20アリール、C6−20ヘテロシクリルアルキル、C6−20アルキルヘテロシクリル及びC5−20ヘテロシクリルより成る群から選ばれる。
【0056】
、R、R及びRは、好ましくは独立して−H、第1級もしくは第2級C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C1−6アルコキシC1−6アルキル、C1−6アルコキシC5−10アリール、C5−7シクロアルキル、C5−11シクロアルキルC1−6アルキル、C4−11シクロアルケニルC1−6アルキル、C8−12シクロアルキニルC1−6アルキル、C5−7シクロアルケニル、C5−7シクロアルキニル、C6−11アリールC1−6アルキル、C1−6アルキルC6−11アリール、C6−11アリール、C5−12ヘテロシクリルC1−6アルキル、C1−6アルキルC5−12ヘテロシクリル及びC5−12ヘテロシクリルより成る群から選ばれる。
【0057】
好ましくは、R、R、R及びRは−H以外である。
【0058】
好ましくは、R、R、R及びRは独立して、異性体を含む−H、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、シクロヘキシル、オクチル、ノニル、ドデシル、エイコシル、ノルボルニル、アダマンチル、ビニル、プロペニル、シクロヘキセニル、フェニルエチル、フェニルプロピル、メトキシフェニル、エトキシフェニル、フェニル、トリル、ジメチルフェニル、トリメチルフェニル、エチルフェニル、プロピルフェニル、ビフェニル、ナフチル、メチルナフチル、アントリル、フェナントリル、ベンジルフェニル、ピレニル、テトラヒドロピラニル、アセナフチル、フェナレニル、アセアントリレニル、テトラヒドロナフチル、インダニル、メトキシプロピル、エトキシエチル、メトキシメチル、アミル、トリチル、メトキシトリチル、ジメトキシトリチル、トリメトキシトリチル、アリル、トリメチルシリル、(t−ブチル)−ジメチルシリル及びベンジルより成る群から選ばれる。
【0059】
好ましくは、R、R、R及びRはメチル、エチル、n−プロピル、s−プロピル、n−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、ベンジル、フェニル及びメトキシフェニルより成る群から選ばれる。
【0060】
好ましくは、R及びRは同じである。好ましくは、R及びRは同じである。
【0061】
好ましくは、R、R、R及びRは同じであり、メチル、エチル、n−プロピル、s−プロピル及びt−ブチルより成る群から選ばれる。
【0062】
好ましくは、R、R、R及びRはすべてエチルである。
【0063】
好ましくは、R及びRは一緒になって−R−R−を形成し、R及びRは一緒になって−R−R−を形成する。
【0064】
好ましくは、R及びRは一緒になって−R−R−を形成し、R及びRは一緒になって−R−R−を形成し、−R−R−及び−R−R−はそれぞれ独立してC1−20アルカンジイル、C2−20アルケンジイル、C4−20アルキンジイル、C3−20シクロアルカンジイル、C4−20シクロアルケンジイル及びC8−20シクロアルキンジイルである。
【0065】
好ましくは、R及びRは一緒になって−R−R−を形成し、R及びRは一緒になって−R−R−を形成し、−R−R−及び−R−R−は同じであり、且つC1−20アルカンジイル、C2−20アルケンジイル、C4−20アルキンジイル、C3−20シクロアルカンジイル、C4−20シクロアルケンジイル及びC8−20シクロアルキンジイルより成る群から選ばれる。
【0066】
好ましくは、X及びYは同じであり、且つR、R、R及びRは同じである。
【0067】
好ましくは、X及びYはCであり、且つR、R、R及びRは同じである。
【0068】
好ましくは、X及びYはCであり、そしてR、R、R及びRは同じであり、且つC1−20アルキル、C2−20アルケニル、C2−20アルコキシアルキル、C7−20アルコキシアリール、C2−20アルキニル、C3−30シクロアルキル、C4−30(シクロアルキル)アルキル、C3−30シクロアルケニル、C4−30シクロアルキニル、C7−30アリールアルキル、C7−30アルキルアリール、C6−30アリール、C6−30ヘテロシクリルアルキル、C6−30アルキルヘテロシクリル及びC5−30ヘテロシクリルより成る群から選ばれる。
【0069】
好ましくは、X及びYはCであり、そしてR、R、R及びRは同じであり、且つC1−16アルキル、C2−16アルケニル、C2−16アルコキシアルキル、C7−16アルコキシアリール、C2−16アルキニル、C3−20シクロアルキル、C4−20(シクロアルキル)アルキル、C3−20シクロアルケニル、C4−20シクロアルキニル、C7−20アリールアルキル、C7−20アルキルアリール、C6−20アリール、C6−20ヘテロシクリルアルキル、C6−20アルキルヘテロシクリル及びC5−2
ヘテロシクリルより成る群から選ばれる。
【0070】
好ましくは、X及びYはCであり、そしてR、R、R及びRは同じであり、且つ第1級もしくは第2級C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C1−6アルコキシC1−6アルキル、C1−6アルコキシC5−10アリール、C5−7シクロアルキル、C5−11シクロアルキルC1−6アルキル、C5−7シクロアルケニル、C5−7シクロアルキニル、C6−11アリールC1−6アルキル、C1−6アルキルC6−11アリール、C6−11アリール、C5−12ヘテロシクリルC1−6アルキル、C1−6アルキルC5−12ヘテロシクリル及びC5−12ヘテロシクリルより成る群から選ばれる。
【0071】
好ましくは、X及びYはCであり、そしてR、R、R及びRは同じであり、且つ異性体を含むメチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、シクロヘキシル、オクチル、ノニル、ドデシル、エイコシル、ノルボルニル、アダマンチル、ビニル、プロペニル、シクロヘキセニル、フェニルエチル、フェニルプロピル、メトキシフェニル、エトキシフェニル、フェニル、トリル、ジメチルフェニル、トリメチルフェニル、エチルフェニル、プロピルフェニル、ビフェニル、ナフチル、メチルナフチル、アントリル、フェナントリル、ベンジルフェニル、ピレニル、テトラヒドロピラニル、アセナフチル、フェナレニル、アセアントリレニル、テトラヒドロナフチル、インダニル、メトキシプロピル、エトキシエチル、メトキシメチル、アミル、トリチル、メトキシトリチル、ジメトキシトリチル、トリメトキシトリチル、アリル、トリメチルシリル、(t−ブチル)ジメチルシリル及びベンジルより成る群から選ばれる。
【0072】
好ましくは、X及びYはCであり、そしてR、R、R及びRは同じであり、且つメチル、エチル、n−プロピル、s−プロピル、n−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、ベンジル、フェニル及びメトキシフェニルより成る群から選ばれる。
【0073】
好ましくは、X及びYはCであり、そしてR、R、R及びRは同じであり、且つメチル、エチル、n−プロピル、s−プロピル及びt−ブチルより成る群から選ばれる。
【0074】
好ましくは、R、R、R及びRはエチルである。
【0075】
好ましくは、X及びYはCであり、そしてR及びRは一緒になって−R−R−を形成し、R及びRは一緒になって−R−R−を形成し、そして−R−R−及び−R−R−は同じであり、且つC1−20アルカンジイル、C2−20アルケンジイル、C4−20アルキンジイル、C3−20シクロアルカンジイル、C4−20シクロアルケンジイル及びC8−20シクロアルキンジイルより成る群から選ばれる。
【0076】
X及びYがSiである場合、R、R、R及びRは、好ましくはC1−20アルキル、より好ましくはC1−6アルキル、さらにもっと好ましくはt−ブチルである。
【0077】
式I(I)の化合物の立体化学を示す目的で、本文を通じて二環式環系の以下の番号付けを用いる。
【0078】
【化7】

【0079】
化合物(I)は、すべての好適に熱力学的に安定なその立体異性体を包含することが意図されている。シス立体配置を有する立体異性体は、2個のテトラヒドロフラン環により形成される環系の同じ側上に炭素5上の水素原子及び炭素1上の水素原子を有する立体異性体である。トランス立体配置を有する立体異性体は、2個のテトラヒドロフラン環により形成される環系の反対側上に炭素5上の水素原子及び炭素1上の水素原子を有する立体異性体である。シス立体配置を有する立体異性体が好ましい。熱力学的反応条件下における式(I)の化合物の製造及びそのX−線分析に基づき、トランス立体配置を有する立体異性体は、シス立体異性体より熱力学的に安定性が低いことが観察された。特に、立体異性体(Ia)、(Ib)、(Ic)及び(Id)が好ましい。
【0080】
【化8】

【0081】
式(Ia)及び(Ib)の化合物は、エナンチオマー関係を有する。式(Ic)及び(Id)の化合物は、ジアステレオマー関係を有する。式(Ic)及び(Ia)の化合物は、ジアステレオマー関係を有する。式(Ic)及び(Ib)の化合物はジアステレオマー関係を有する。式(Ia)及び(Id)の化合物は、ジアステレオマー関係を有する。式(Ib)及び(Id)の化合物は、ジアステレオマー関係を有する。
【0082】
式(II)を有する化合物は、そのすべての立体異性体を包含することが意図されている。X、Y、R、R、R及びRの性質に依存して、アルデヒド部分を有する中心炭素原子のステレオジェン性は異なり得る。特に、式(Ia)、(Ib)、(Ic)及び(Id)の化合物の製造において用いられる立体異性体が好ましく、すなわち式(Ia)の化合物は化合物(IIa)から製造され、化合物(Ib)の製造には化合物(IIb)が必要であり、化合物(IIc)と化合物(IId)の混合物は化合物(Ic)と(Id)の混合物を生じ、ここで化合物(IIc)は化合物(Ic)及び化合物(Id)の生成を生ずることができ、化合物(IId)は化合物(Ic)及び化合物(Id)の生成を生ずることができる。
【0083】
【化9】

【0084】
式(III)を有する化合物は、そのすべての立体異性体を包含することが意図されている。X、Y、R、R、R及びRの性質に依存して、ヒドロキシアルキル部分を有する中心炭素原子のステレオジェン性は異なり得る。特に、式(Ia)、(Ib)、(Ic)及び(Id)の化合物の製造において用いられる立体異性体が好ましく、すなわち式(Ia)の化合物は化合物(IIIa)から最終的に製造され、化合物(Ib)を最終的に製造するには化合物(IIIb)が必要であり、化合物(IIIc)と化合物(IIId)の混合物は最終的に化合物(Ic)と(Id)の混合物を生じ、ここで化合物(IIIc)は最終的に化合物(Ic)の生成を生じ、化合物(IIId)は最終的に(Id)の生成を生ずる。
【0085】
【化10】

【0086】
式(IV)を有する化合物は、そのすべての立体異性体を包含することが意図されてい
る。特に、式(Ia)、(Ib)、(Ic)及び(Id)の化合物の製造において用いられる立体異性体が好ましく、すなわち式(Ia)の化合物は化合物(IVa)から最終的に製造され、化合物(Ib)を最終的に製造するには化合物(IVb)が必要であり、化合物(IVc)と化合物(IVd)の混合物は最終的に化合物(Ic)と(Id)の混合物を生ずるであろう。
【0087】
【化11】

【0088】
式(II)を有する興味深い化合物は、XR及びYRが同じである式(II)の化合物である。X及びYがCであり、R、R、R及びRが同じである式(II)の化合物も、式(II)を有する興味深い化合物である。式(II)を有する他の興味深い化合物は、X及びYがCであり、R、R、R及びRがC1−20アルキルである式(II)の化合物である。式(II)を有するさらに別の興味深い化合物は、X及びYがCであり、R、R、R及びRがエチルである式(II)の化合物である。
【0089】
式(III)を有する興味深い化合物は、XR及びYRが同じである式(III)の化合物である。X及びYがCであり、R、R、R及びRが同じである式(III)の化合物も、式(III)を有する興味深い化合物である。式(III)を有する他の興味深い化合物は、X及びYがCであり、R、R、R及びRがC1−20アルキルである式(III)の化合物である。式(III)を有するさらに別の興味深い化合物は、X及びYがCであり、R、R、R及びRがエチルである式(III)の化合物である。
【0090】
式(IV)を有する興味深い化合物は、XR及びYRが同じである式(IV)の化合物である。X及びYがCであり、R、R、R及びRが同じである式(IV)の化合物も、式(IV)を有する興味深い化合物である。式(IV)を有する他の興味深い化合物は、X及びYがCであり、R、R、R及びRがC1−20アルキルである式(IV)の化合物である。式(IV)を有するさらに別の興味深い化合物は、X及びYがCであり、R、R、R及びRがエチルである式(IV)の化合物である。
【0091】
一般に、反応スキームAに従って式(I)の化合物を製造することができる。
【0092】
【化12】

【0093】
式(II)を有する化合物から式(I)を有する化合物への脱保護及び続く分子内環化反応において用いられる適した脱保護剤は、水素化分解試薬、フルオリド試薬、酸及び塩基、好ましくは無機及び有機酸、最も好ましくはスルホン酸又はカルボン酸から選ばれる。
【0094】
適した酸は塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、トリフルオロ酢酸、グルコン酸、クエン酸、マレイン酸、フマル酸、ピルビン酸、フェニル酢酸、安息香酸、4−アミノ安息香酸、アントラニル酸、4−ヒドロキシ安息香酸、サリチル酸、4−アミノサリチル酸、パモ酸、ニコチン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、スルファニル酸、シクロヘキシルスルファミン酸、カンファースルホン酸、クロロスルホン酸、ピリジニウムパラトルエンスルホン酸及びアスコルビン酸より成る群から選ばれる。
【0095】
式(II)を有する化合物の脱保護及び続く分子内環化反応は、好ましくは水溶液中で行なわれる。好ましくは、水溶液は1種もしくはそれより多い有機溶媒を含む。好ましい有機溶媒はジクロロメタンである。他の適した有機溶媒はアルコール類、好ましくはC−C10アルコールより成る群から選ばれることができる。好ましいアルコールはメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール及びそれらの異性体より成る群から選ばれる。1種もしくはそれより多い溶媒の混合物を用いることもできる。
【0096】
脱保護及び続く分子内環化反応は、好ましくは0℃〜100℃、好ましくは10℃〜50℃の温度において、好ましくは約25℃において行なわれる。
【0097】
脱保護及び続く分子内環化反応は、通常反応条件に依存して10分間〜4日間内で行なわれる。上記に示した好ましい条件下で、脱保護及び続く分子内環化反応は約15分後に実質的に完了する。
【0098】
式(III)を有する化合物から式(II)を有する化合物への酸化において用いられる酸化剤には、第1級アルコールをアルデヒドに転換することができるいずれの酸化剤も含まれる。
【0099】
式(III)を有する化合物から式(II)を有する化合物への酸化において用いられる好ましい酸化方法は、ジメチルスルホキシド−媒介酸化を含む。塩化オキサリル、ジシクロヘキシルカルボジイミド、三酸化硫黄、無水酢酸及びN−クロロスクシンイミドを含む多様な求電子試薬との反応により、ジメチルスルホキシド(DMSO)を活性化することができる。ジメチルスルホキシド−媒介酸化の複数の総説が報告されている(Lee著,Comprehensive Organic Synthesis,Trost,B.M.;Fleming,I.,Eds.,Pergamon Press:New York,Vol.7,1991年,p.291−303.Tidwell,T.T.著,Synthesis 1990年,857−870.Tidwell,T.T.著,Organic Reactions 39,1990年,297−557.
【0100】
式(III)を有する化合物から式(II)を有する化合物への酸化は、好ましくはSwern、Pfitzner−Moffatt又はParikh−Doering条件、最も好ましくはParikh−Doering条件を用いて行なわれる。
【0101】
Parikh−Doering反応は、三酸化硫黄−ピリジン錯体を用いるジメチルスルホキシドの活性化を含み、Parikh,J.P.;Doering,W.E.著,J.Am.Chem.Soc.,89,1967年,5505−5507に記載されている。
【0102】
Swern酸化は、トリエチルアミン及び塩化オキサリル又は無水トリフルオロ酢酸を用いるジメチルスルホキシドの活性化を含む。Swern酸化はA.J.Mancuso,D.Swern著,Synthesis 1981年,165−185により報告されている。
【0103】
Pfitzner−Moffatt酸化は、ジシクロヘキシル、ジイソプロピルのようなジアルキルカルボイミドによるジメチルスルホキシドの活性化を含み;K.E.Pfitzner,J.G.Moffatt著,J.Am.Chem.Soc.85,1963年,3027により記載されている。
【0104】
ジメチルスルホキシド−媒介酸化は、製造されるアルデヒドが対応するカルボン酸にさらに酸化されるのが妨げられるので、反応を容易に制御し、高収率でアルコールを対応するアルデヒドに酸化することを可能にする。
【0105】
式(III)を有する化合物から式(II)を有する化合物への酸化は、好ましくは有機溶媒、好ましくは反応に不活性な溶媒中で行なわれる。適した溶媒は炭化水素、塩素化炭化水素、ケトン、極性非プロトン性溶媒、芳香族炭化水素及びそれらの混合物より成る群から選ばれる。
【0106】
好ましい反応に不活性な溶媒はペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、アセトン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、キシレン、エーテル、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン及びそれらの混合物より成る群から選ばれる。
【0107】
式(III)を有する化合物から式(II)を有する化合物への酸化は、好ましくは−50℃〜50℃の範囲内、好ましくは25℃より低い温度、最も好ましくは−10℃〜5℃の範囲内の温度で行なわれる。
【0108】
式(III)を有する化合物から式(II)を有する化合物への酸化は、好ましくは反応条件に依存して10分〜2日間内に行なわれる。上記で示した好ましい条件下で、酸化反応は約4時間後に実質的に完了する。上記の最も好ましい条件下で、酸化反応は約1.5時間後に実質的に完了する。
【0109】
式(IV)を有する化合物のヒドロホウ素化及び続く酸化は、アルケンを(III)の第1級アルコールに転換することができるいずれの条件下で行なうこともできる。
【0110】
好ましい条件は、式(IV)を有する化合物と適したホウ素−含有試薬との反応及び続く酸化剤を用いる反応を含む。
【0111】
式(IV)を有する化合物のヒドロホウ素化のための適したホウ素−含有試薬はBH、C−Cモノ−もしくはジアルキルボラン、C−C18ビシクロアルキルボラン、C−C18アリールボラン及びそれらの混合物より成る群から選ばれる。好ましいヒドロホウ素化試薬はBH、ジメチルボラン、ジエチルボラン、ジプロピルボラン、9−ボラビシクロ[3.3.1]ノナン[9−BBN]、カテコールボラン、ピニルボラン、ボロラン及びそれらの混合物より成る群から選ばれる。
【0112】
好ましいホウ素−含有試薬はジエチルボランを含み、それはBH及びトリエチルボランを合わせることによりその場で製造され得る。
【0113】
式(IV)を有する化合物とホウ素−含有試薬との反応は、好ましくは溶媒の存在下で行なわれる。適した溶媒は芳香族炭化水素及びエーテルより成る群から選ばれる。好ましい溶媒はベンゼン、トルエン、キシレン、エーテル、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン及びそれらの混合物より成る群から選ばれる。テトラヒドロフランが特に好ましい。
【0114】
式(IV)を有する化合物とホウ素−含有試薬との反応は、好ましくは0℃〜50℃の範囲内、好ましくは約25℃の温度で行なわれる。
【0115】
式(IV)を有する化合物とホウ素−含有試薬との反応は、好ましくは反応条件に依存して5分〜1日間内に行なわれる。上記に示した好ましい条件下で、反応は約1時間後に実質的に完了する。
【0116】
式(IV)を有する化合物とホウ素−含有試薬との反応に続き、反応生成物は通常酸化剤の存在下でアルコールに転換される。適した酸化剤には過酸化物、特に過酸化水素が含まれる。酸化は好ましくは塩基性水溶液中で行なわれる。適した塩基性材料にはアルカリ金属炭酸塩及びアルカリ金属水酸化物が含まれる。水酸化ナトリウムは特に好ましい塩基である。
【0117】
ヒドロホウ素化反応の酸化部分は、好ましくは−20℃〜30℃の範囲内、好ましくは約0℃の温度で行なわれる。
【0118】
ヒドロホウ素化反応の酸化部分は、好ましくは反応条件に依存して5分〜1日間内に行
なわれる。上記に示した好ましい条件下で、酸化反応は約2時間後に実質的に完了する。
【0119】
式(IV)を有する化合物の製造のために式(V)を有する化合物について行なわれるWittig型反応は、古典的なWittig反応又は修正Wittig反応、例えばHorner−Emmons反応もしくはWittig−Horner反応により行なうことができる。
【0120】
古典的なWittig反応のための好ましい試薬はホスホニウムイリドを含み、それはホスホニウム塩を塩基と合わせることにより製造され得る。ホスホニウム塩は、例えばトリアリールホスフィンとハロメタンから得られ得る。トリ−C−C20アリールホスフィン、特にトリフェニルホスフィンが好ましい。ハロメタンは、好ましくはブロモメタン又はクロロメタンである。塩基は、好ましくは有機−アルカリ金属試薬、例えばナトリウムもしくはリチウムヘキサメチルジシラザンである。
【0121】
式(V)を有する化合物を式(IV)を有する化合物に転換するためのWittig反応は、好ましくは有機溶媒、好ましくは反応に不活性な溶媒中で行なわれる。適した溶媒は炭化水素、塩素化炭化水素、エーテル、極性非プロトン性溶媒、芳香族炭化水素及びそれらの混合物より成る群から選ばれる。好ましい溶媒はテトラヒドロフランである。
【0122】
式(V)を有する化合物から式(IV)を有する化合物へのWittig型反応は、好ましくは−50℃〜20℃の範囲内、好ましくは25℃より低い温度、最も好ましくは−10℃〜5℃の範囲内の温度で行なわれる。
【0123】
ホスホニウムイリドの代わりの他のWittig−型試薬にはホスホン酸誘導体、Tebbe試薬又はPetasis試薬が含まれ、当該技術分野において既知の反応条件に従って用いられ得る。
【0124】
式(IV)の化合物は、Maleczka et al.著,Org Lett,4(17),2002年,2841−2844に記載されている方法と同じかもしくは類似の方法を用いて製造することができる。
【0125】
式(V)の化合物は、Linclau et al(J.Org.Chem.68,2003年,1821−1826)に記載されている方法と同じかもしくは類似の方法を用いて製造することができる。
【0126】
上記の方法のすべてを別々に、又は1系列の反応として行なうことができる。
【0127】
本明細書で言及する化合物の純粋な立体異性体は、該化合物の同じ基本的分子構造の他のエナンチオマーもしくはジアステレオマー形態を実質的に含まない異性体として定義される。特に「立体異性体的に純粋な」という用語は、少なくとも80%の立体異性体過剰率(すなわち最小で90%の一方の異性体及び最大で10%の他方の可能な異性体)から最高で100%の立体異性体過剰率(すなわち100%の一方の異性体及び他方の異性体なし)を有する化合物、さらに特定的には90%から100%の立体異性体過剰率を有する、さらにもっと特定的には94%から100%の立体異性体過剰率を有する、そして最も特定的には97%から100%の立体異性体過剰率を有する化合物に関する。「エナンチオマー的に純粋な」及び「ジアステレオマー的に純粋な」という用語は、類似して理解されるべきであるが、その場合には問題の混合物のそれぞれエナンチオマー過剰率及びジアステレオマー過剰率に関する。
【0128】
反応方法がエナンチオマーの混合物を生ずる場合、光学的に活性な酸又は塩基とのそれ
らのジアステレオマー塩の選択的結晶化によりエナンチオマーを互いから分離することができる。それらの例は酒石酸、ジベンゾイル酒石酸、ジトルオイル酒石酸及びカンファースルホン酸である。あるいはまた、キラル固定相を用いるクロマトグラフィー法によりエナンチオマーを分離することができる。通常の方法により、純粋なジアステレオマーをジアステレオマー混合物から得ることができる。有利に用いることができる適した物理的分離方法は、例えば選択的結晶化及びクロマトグラフィー、例えばカラムクロマトグラフィーである。
【0129】
式(I)の化合物の純粋な立体化学的異性体を適した出発材料の対応する純粋な立体化学的異性体から誘導することもでき、但し反応は立体特異的に起こる。
【0130】
例えば純粋なL−アラビトールから出発して式(Ia)の化合物を製造することができ、それはスキームBに描かれている。純粋なD−アラビトールから出発して式(Ib)の化合物を製造することができる。出発材料としてのキシリトール又はリビトール(又はアドニトール)の使用は、式(Ic)及び(Id)のジアステレオマーの混合物を生じ、その混合物は当該技術分野において既知の分離法を用いて分離され得る。
【0131】
【化13】

【0132】
【化14】

【0133】
式(I)の化合物を用い、当該技術分野において既知の合成法に従って新規なHIVプロテアーゼ阻害剤薬剤候補を合成することができる。かくして本発明は、HIVプロテアーゼ阻害剤の製造における式(I)の化合物の使用にも関し、且つ本発明は、HIV野生型及び/又は現在利用可能な薬剤に対して耐性のHIV突然変異株に対する抗ウイルス活性を示すHIVプロテアーゼ阻害剤の化学的製造において式(I)の化合物を用いることにより得られるHIVプロテアーゼ阻害剤にも関する。
【0134】
以下の実施例は、本発明の特定の化合物の製造を例示する。
【実施例】
【0135】
好ましくは、化合物(I)の合成は多−段階合成を含み、それへの1つの合成経路を下記に一般的に記載する。最初の2段階はLinclau et al(J.Org.Chem.68,2003年,1821−1826)により詳細に記載されている。従って、下記に記載される最初の2段階は単に参照のためである。合成は、アラビトール、キシリトール又はリビトール、好ましくはアラビトールの位置選択的保護で好適に開始される。アラビトールは擬−C2−対称を有し(中心炭素はステレオジェン性でない)、この対称は1において保存される。アラビトールはキラルであるが、キシリトール及びリビトールはメソ−形である。第2段階に、保護されたアラビトールの酸化はC2−対称(2S,4S)−1,2:4,5−ビス(3,3−ペンチリデンジオキシ)−3−ペンタノンを生ずる。この段階のために、好ましくは低温が用いられ、それはこれが(2S,4R)−1,2:4,5−ビス(3,3−ペンチリデンジオキシ)−3−ペンタノンへのエピマー化を最少にするからである。
【0136】
下記で用いられる用語は以下の通りである:
DCM : ジクロロメタン
THF : テトラヒドロフラン
Ph : フェニル
Py : ピリジン
DMSO : ジメチルスルホキシド
min : 分
h : 時
d : 日
Me : メチル
Et : エチル
CSA : クロロスルホン酸
PPTS : ピリジニウムパラトルエンスルホン酸
NaHMDS: ナトリウムヘキサメチルジシラザン
【0137】
シス−(4R,6R)−2,8−ジオキサ−4,6−ジヒドロキシビシクロ[3.3.0]オクタンの合成
段階1:(2S,4S)−1,2:4,5−ジ−O−(3,3−ペンチリデン)アラビトールの合成
【0138】
【化15】

【0139】
THF(200mL)中のL−アラビトール(20.00g,131.5ミリモル)及び3,3−ジメトキシペンタン(76.46g,578.4ミリモル)の還流懸濁液を15分間攪拌した。CSA(9.16g,39.4ミリモル)を加え、反応混合物を還流において正確に5分間攪拌した。還流において、NaOH(水溶液,2M,40mL)の添加により反応をクエンチングした。ジエチルエーテル(50mL)及び水(20mL)を加え、層を分離した。水相をジエチルエーテルで抽出した(3×50mL)。合わせた有機層を無水NaSO上で乾燥し、濾過し、溶媒を真空中で除去して淡黄色の油を与えた。粗生成物をCHCl(200mL)中に溶解し、トリエチルアミン(20mL)を加えた。混合物を還流下で加熱し、無水コハク酸(3.40g,34.0ミリモル)を加えた。反応混合物を還流下で1.5時間加熱し、次いで還流温度においてNaHCO(水溶液,飽和,200mL)を用いてクエンチングした。冷却後、層を分離し、水層をCHCl(2×100mL)で抽出した。合わせた有機相をブライン(100ml)で洗浄し、無水NaSO上で乾燥し、濾過し、蒸発させて淡黄色の油を与えた。カラムクロマトグラフィー(ヘキサン/アセトン 80:20)による精製は、(2S,4S)−1,2:4,5−ジ−O−(3,3−ペンチリデン)アラビトールを淡黄色の油として与えた(28.18g,74%)。[α]−5.8(c 2.50,CHCl,25℃)。H及び13C NMRスペクトルは、Linclau B.et al.著,J.Org.Chem.68,2003年,1821中で報告されたデータに対応した。
【0140】
段階2:(2S,4S)−1,2:4,5−ビス(3,3−ペンチリデンジオキシ)−3−ペンタノンの合成
【0141】
【化16】

【0142】
500mLの2つ口丸底フラスコ(A)中で、CHCl(100mL)及びDMSO(50mL)中の1,2:4,5−ジ−O−イソペンチリデンアセタール(10.00g,34.7ミリモル)の溶液を0℃で攪拌した。250mLの2つ口丸底フラスコ(B)中で、CHCl(50mL)及びDMSO(50mL)中のSO.ピリジン錯体(16.56g,104.0ミリモル)及びトリエチルアミン(17.9mL,128.3ミリモル)の溶液を0℃で10分間攪拌した。次いでカニューレを介してフラスコ(B)の内容物をフラスコ(A)に10分間かけて移した。次いで反応混合物を0℃で5時間攪拌した。反応混合物を飽和NHCl水溶液:水:ジエチルエーテル:ペンタン(1:1:1:1,600mL)の混合物中に注いだ。層を分離し、水層をジエチルエーテル:ペンタン混合物(1:1,2x150mL)で抽出した。合わせた有機相を無水NaSO上で乾燥し、濾過し、蒸発させて粗生成物を淡黄色の油として与えた。カラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル 90:10)による精製は、(2S,4S)−1,2:4,5−ビス(3,3−ペンチリデンジオキシ)−3−ペンタノンを無色の油として与えた(9.20g,93%)。[α]−68.9(c 0.31,CHCl,25℃)。H及び13C NMRスペクトルは、Linclau B.et al.著,J.Org.Chem.68,2003年,1821中で報告されたデータに対応した。
【0143】
段階3:(2R,4R)−ジ−O−(3,3−ペンチリデン)−3−デオキシ−3−メチレンアラビトールの合成
【0144】
【化17】

【0145】
THF(100mL)中のメチルトリフェニルホスホニウムブロミド(21.20g,59.36ミリモル)の攪拌懸濁液に、NaHMDS(56.4mL,56.4ミリモル,THF中の1.0M)を0℃で加えた。得られる黄色の懸濁液を10分間攪拌した。次いでTHF(20mL)中に溶解されたC2−対称ケトン(8.50g,29.7ミリモル)の溶液を滴下し、混合物を0℃で4時間攪拌した。反応混合物を水(150mL)中に注ぎ、CHCl(3x100mL)で抽出した。合わせた有機相を次いで無水NaSO上で乾燥し、濾過し、蒸発させた。カラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル 90:10)による精製は、(2R,4R)−ジ−O−(3,3−ペンチリデン)−3−デオキシ−3−メチレンアラビトールを無色の油として与えた(8.30mg,98%)(Maleczka et al著,Organic Letters,4(17),2002年,2841−2844)。R 0.16(ヘキサン/酢酸エチル 95:5)。[α]−86.9(c 1.33,CHCl,25℃)。H NMR(400MHz,CDCl3)5.30(2H,d,J=1.0Hz),4.52(2H,m),4.19(2H,dd,J=8.0,6.0Hz),3.56(2H,t,J=8.0Hz),1.74−1.60(8H,m),0.92(6H,t,J=7.5Hz),及び0.90(6H,t,J=7.5Hz)。
【0146】
段階4:(2R,4R)−ジ−O−(3,3−ペンチリデン)−3−デオキシ−3−ヒドロキシメチルアラビトールの合成
【0147】
【化18】

【0148】
トリエチルボラン(10.2mL,THF中の1.0M)及びボラン(1.7mL,THF中の1.0M)の溶液を室温で1時間攪拌した。THF(7mL)中のC2−対称アルケン(968mg,3.40ミリモル)の溶液を加え、反応混合物を2日間攪拌した。次いで反応混合物をNaOH(水溶液,3M):H(水溶液,27重量%):CHCl(1:1:1,90mL)の攪拌された混合物中に、0℃において注意深くピペットで滴下し、2時間攪拌した。層を分離し、水層をCHClで抽出した(3x30mL)。合わせた有機相を無水NaSO上で乾燥し、濾過し、蒸発させて粗生成物を無色の油として与えた。カラムクロマトグラフィー(ヘキサン/アセトン 85:15)による精製は、(2R,4R)−ジ−O−(3,3−ペンチリデン)−3−デオキシ−3−ヒドロキシメチルアラビトールを無色の油として与えた(950mg,92%)。R 0.28(ヘキサン/アセトン 80:20)。[α]−9.7(c 1.06,CHCl,23℃)。H NMR(300MHz,CDCl)δ 4.24−4.11(2H,m),4.12(1H,dd,J=8.1,5.9Hz),3.96(1H,td,J=8.8,5.9Hz),3.74−3.66(3H,m),3.61(1H,dd,J=8.8,8.1Hz),2.63(1H,br s),1.84(1H,m),1.67−1.54(8H,m),0.897(3H,t,J=7.35Hz),0.890(3H,t,J=7.35Hz),0.87(3H,t,J=7.35Hz),及び0.86(3H,t,J=7.35Hz)。
【0149】
段階5:(2R,4R)−ジ−O−(3,3−ペンチリデン)−3−デオキシ−3−ホルミルアラビトールの合成
【0150】
【化19】

【0151】
250mLの2つ口丸底フラスコ(A)中で、CHCl(30mL)及びDMSO(15mL)中の段階4の“擬”−C2−対称第1級アルコール(1.90g,6.28ミリモル)の溶液を0℃において攪拌した。100mLの2つ口丸底フラスコ(B)中で
、CHCl(30mL)及びDMSO(15mL)中のSO.ピリジン錯体(3.00g,18.9ミリモル)及びトリエチルアミン(3.2mL,23.2ミリモル)の溶液を0℃で10分間攪拌した。次いでカニューレを介してフラスコ(B)の内容物をフラスコ(A)に10分間かけて移した。次いで反応混合物を0℃で1.5時間攪拌した。反応混合物を飽和NHCl水溶液:水:ジエチルエーテル:ペンタン(1:1:1:1,100mL)の混合物中に注いだ。層を分離し、水層をジエチルエーテル:ペンタン混合物(1:1,2x100mL)で抽出した。合わせた有機相を無水NaSO上で乾燥し、濾過し、蒸発させて粗生成物を無色の油として与えた。カラムクロマトグラフィー(ヘキサン/アセトン 95:5)による精製は、(2R,4R)−ジ−O−(3,3−ペンチリデン)−3−デオキシ−3−ホルミルアラビトールを無色の油として与えた(1.806g,96%)。R 0.52(ヘキサン/アセトン 80:20)。[α]+39.5(c 0.40,CHCl,23℃)。1H NMR(300MHz,CDCl3)δ 9.83(1H,d,J=1.5Hz),4.37(1H,td,J=7.7,5.9Hz),4.28−4.18(3H,m),3.82(1H,m),3.54(1H,m),2.60(1H,m),1.69−1.50(8H,m),0.90−0.82(12H,m)。
【0152】
段階6:シス−(4R,6R)−2,8−ジオキサ−4,6−ジヒドロキシビシクロ[3.3.0]オクタンの合成
【0153】
【化20】

【0154】
70mLのジクロロメタン中の“擬”−C2−対称アルデヒド(6.9g,22.97ミリモル)の攪拌溶液に、7.7mLのトリフルオロ酢酸及び水の混合物(9:1;v/v)を室温で加えた。15分後、溶媒を真空中で除去し、粗材料をトルエンと共蒸発させた。カラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン/メタノール 9:1)による精製は、(シス−(4R,6R)−2,8−ジオキサ−4,6−ジヒドロキシビシクロ[3.3.0]オクタンを白色の固体として与えた(2.844g,85%)。R 0.24(CHCl/MeOH 90:10)。[α]+45.8(c 0.61,MeOH,24℃)。1H NMR(400MHz,DMSO−d6)δ 5.62(1H,d,J=5.5Hz),5.22(1H,d,J=4.5Hz),4.85(1H,d,J=4.5Hz),4.43(1H,t,J=4.0Hz),4.29(1H,m),3.79(1H,d,J=9.5Hz),3.78(1H,dd,J=9.0,2.5Hz),3.68(1H,d,J=9.5Hz),3.28(1H,m),及び2.57(1H,dd,J=9.0,5.0Hz)。
【0155】
続く段階7〜10(スキーム1中で段階g〜jとして描かれる)は、シス−(4R,6R)−2,8−ジオキサ−4,6−ジヒドロキシビシクロ[3.3.0]オクタン(6)から出発するシス−(4R,6R)−4−ベンジルオキシ−2,8−ジオキサ−6−ヒドロキシビシクロ[3.3.0]オクタン(10)の合成を記載する。
【0156】
【化21】

【0157】
a.i.CSA(30モル%),DMF(4.4当量),THF,還流,5分;ii.無水コハク酸,CHCl,EtN,還流,1.5時間,68%;b.SO.py(3当量),DMSO,EtN,CHCl,0℃,5時間,96%;c.PhPCHBr(2当量),NaHMDS(1.9当量),THF,0℃,4時間,95%;d.EtB(3当量),BH(0.5当量),THF,室温,2日,81%;e.SO.py(3当量),DMSO,EtN,CHCl,0℃,1.5時間,93%;f.TFA,CHCl,HO,85%;g.TBDPSCl(4当量),DMAP(0.8当量),イミダゾール(8当量),DMF,室温,79%;h.NHCl(4当量),CHOH,室温,40%;i.BnBr(3当量),NaH(3当量),TBAI(0.2当量),THF,0℃,65%;j.TBAF(1.5当量),THF,室温,73%。
【0158】
略語
BnBr ベンジルブロミド
CSA カンファースルホン酸
d 二重項
dd 二重項の二重項
dt 三重項の二重項
DMAP 4−ジメチルアミノピリジン
DMF ジメチルホルムアミド
DMP ジメトキシペンタン
DMSO ジメチルスルホキシド
EtOAC 酢酸エチル
m 多重項
NaHMDS ナトリウムヘキサメチルジシラザン
r.t. 室温
s 一重項
t 三重項
TBAF テトラブチルアンモニウムフルオリド
TBAI テトラブチルアンモニウムヨーダイド
TBDPSCl tert−ブチルジフェニルシリルクロリド
TFA トリフルオロ酢酸
THF テトラヒドロフラン
【0159】
段階7:シス−(4R,6R)−2,8−ジオキサ−4,6−ビス(tert−ブチルジフェニルシラノキシ)−ビシクロ[3.3.0]オクタンの合成
【0160】
【化22】

【0161】
DMF(10mL)中のジオール6(100mg,0.68ミリモル)、イミダゾール(372mg,5.48ミリモル)及びDMAP(66mg,0.54ミリモル)の溶液にtert−ブチルジフェニルシリルクロリド(0.72mL,2.74ミリモル)を加え、室温で1日間攪拌した。40℃における高真空回転蒸発器上で溶媒を除去し、残留物をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/アセトン 95:5)により精製した。調製的HPLC(ヘキサン/アセトン 95:5)によるさらなる精製は、シス−(4R,6R)−2,8−ジオキサ−4,6−ビス(tert−ブチルジフェニルシラノキシ)−ビシクロ[3.3.0]オクタンを無色の油として与えた(337mg,79%)。R 0.24(ヘキサン/アセトン 95:5)。[α]−10.5(c 4.24,CHCl,24℃)。H NMR(400MHz,CDCl)δ 7.73−7.70(4H,m),7.57−7.52(4H,m),7.49−7.33(12H,m),5.89(1H,d,J=5.0Hz),4.96(1H,d,J=2.5Hz),4.36(1H,dt,J=9.5,6.8Hz),4.01(1H,dd,J=9.5,1.0Hz),3.93(1H,dd,J=9.5,3.0Hz),3.40(1H,dd,J=9.5,6.5Hz),3.34(1H,dd,J=9.5,7.0Hz),2.94(1H,dd,J=9.0,5.0Hz),1.12(9H,s),0.91(9H,s)ppm。
【0162】
段階8:シス−(4R,6R)−2,8−ジオキサ−4−ヒドロキシ−6−(tert−ブチルジフェニルシラノキシ)−ビシクロ[3.3.0]オクタンの合成
方法A:
【0163】
【化23】

【0164】
メタノール(1.5mL)中の化合物7(47mg,0.075ミリモル)の攪拌溶液に、室温でNHF(22mg,0.6ミリモル)を加えた。4日後、真空中で溶媒を除去し、カラムクロマトグラフィー(ヘキサン/EtOAc 85:15)による精製はシ
ス−(4R,6R)−2,8−ジオキサ−4−ヒドロキシ−6−(tert−ブチルジフェニルシラノキシ)−ビシクロ[3.3.0]オクタン(8)を無色の油として与えた(13mg,45%)。R 0.76(ヘキサン/アセトン 5:5)。[α]+18(c 0.25,CHCl,27℃)。H NMR(400MHz,CDCl)δ 7.71−7.62(4H,m),7.49−7.39(6H,m),5.71(1H,d,J=5.0Hz),4.83(1H,d,J=3.5Hz),4.48(1H,dt,J=7.0,9.0Hz),4.12(1H,dd,J=4.0,10.0Hz),3.97(1H,d,J=10.0Hz),3.69(1H,dd,J=7.0,9.0Hz),3.48(1H,t,J=8.5Hz),2.61(1H,dd,J=5.0,9.0Hz),1.92(1H,s),1.11(9H,s)ppm。
【0165】
方法B:
【0166】
【化24】

【0167】
DMF(200mL)中のジオール6(8.633g,0.059モル)、イミダゾール(32.174g,0.472モル)、DMAP(5.773g,0.047モル)の溶液に、tert−ブチルジフェニルシリルクロリド(66.18mL,0.236モル)を加え、室温で1日間攪拌した。反応が完了したら、200mLのEtO及び500mLの水を加えた。層を分離し、有機層を300mLの水及び300mLのブラインで洗浄し、次いで無水NaSO上で乾燥し、濾過し、溶媒を真空中で除去し、粗生成物を無色の油として与えた。粗生成物を400mLのメタノール中に溶解し、NHF(8.752g,0.236モル)を加えた。反応物を還流温度において2.5時間攪拌し、次いで真空中で溶媒を除去した。カラムクロマトグラフィー(ヘキサン/アセトン 90:10,85:15次いで100%アセトン)による粗生成物の精製は、保護化合物7(純粋に単離はされない)、シス−(4R,6R)−2,8−ジオキサ−4−ヒドロキシ−6−(tert−ブチルジフェニルシラノキシ)−ビシクロ[3.3.0]オクタン(8)を無色の油として(10.03g,44%)及び脱保護化合物6(1.59g,18%)を連続して与えた。
【0168】
段階9:シス−(4R,6R)−4−ベンジルオキシ−2,8−ジオキサ−6−(tert−ブチルジフェニルシラノキシ)−ビシクロ[3.3.0]オクタンの合成
【0169】
【化25】

【0170】
3mLのTHF中のNaH(268mg,7ミリモル,油中の60%)の攪拌懸濁液に、9mLのTHF中のアルコール8(900mg,2.34ミリモル)の溶液を0℃で加えた。10分後、ベンジルブロミド(0.84mL,7ミリモル)及びTBAI(177mg,0.47ミリモル)を加え、反応物を0℃で攪拌した。4時間後に完了したら、2mlの水を滴下して過剰のNaHをクエンチングし、溶媒を真空中で除去した。カラムクロマトグラフィー(ヘキサン/AcOEt 95:5)による粗生成物の精製は、シス−(4R,6R)−4−ベンジルオキシ−2,8−ジオキサ−6−(tert−ブチルジフェニルシラノキシ)−ビシクロ[3.3.0]オクタン(9)を無色の油として与えた(725mg,65%)。R 0.62(ヘキサン/AcOEt 7:3)。[α]−10.6(c 0.7,CHCl,25℃)。
H NMR(400MHz,CDCl)δ 7.58−7.50(4H,m),7.39−7.18(11H,m),5.64(1H,d,J=5.3Hz),4.56(1H,d,J=3.4Hz),4.40(1H,d,J=12.0Hz),4.37(1H,m),4.32(1H,d,J=11.7Hz),4.11(1H,J=10.0Hz),3.98(1H,dd,J=9.8,10.2Hz),3.55(1H,dd,J=8.7,6.8Hz),3.36(1H,t,J=8.7Hz),2.76(1H,dd,J=5.3,9.0Hz),0.98(9H,s)ppm。
【0171】
段階10:シス−(4R,6R)−4−ベンジルオキシ−2,8−ジオキサ−6−ヒドロキシ−ビシクロ[3.3.0]オクタンの合成
【0172】
【化26】

【0173】
20mLのTHF中の化合物9(532mg,1.12ミリモル)の攪拌溶液に、TBAF(1.68mL,1.68ミリモル,THF中の1M)を室温で加えた。10分後、真空中で溶媒を除去し、カラムクロマトグラフィー(ヘキサン/AcOEt 80:20)による粗生成物の精製は、シス−(4R,6R)−4−ベンジルオキシ−2,8−ジオキサ−6−ヒドロキシ−ビシクロ[3.3.0]オクタン(10)を白色の固体として与えた(194mg,73%)。R 0.58(ヘキサン/アセトン 5:5)。[α]+74(c 0.15,CHCl,27℃)。H NMR(400MHz,CDCl)δ 7.34−7.28(5H,m),5.83(1H,d,J=5.0Hz),4.55(3H,m),4.48(1H,d,J=3.8Hz),4.13(1H,d,J=10.0Hz),4.00(2H,m),3.62(1H,dd,J=7.0,9.0Hz),2.93(1H,dd,J=5.0,8.0Hz),1.79(1H,bs)ppm。
【0174】
さらに上記の化合物(10)の製造のために、一般式:
【0175】
【化27】

【0176】
[式中、
R=OBn(=化合物10),OPh,OCHCN又はそれぞれ
【0177】
【化28】

【0178】
である]
を有する追加の化合物を製造した。
【0179】
段階11:{3−[(4−アミノ−ベンゼンスルホニル)−イソブチル−アミノ]−1−ベンジル−2−ヒドロキシ−プロピル}−カルバミン酸 4−ベンジルオキシ−ヘキサヒドロ−フロ[2,3−b]フラン−3−イルエステル(13)の合成
【0180】
【化29】

【0181】
CHCl(5mL)中のトリエチルアミン(43mg,423μモル)及び炭酸ビス−(2,5−ジオキソ−ピロリジン−1−イル)エステル(11)(58mg,226μモル)の攪拌溶液に、(10)(50mg,212μモル)を加えた。混合物を室温で4時間攪拌した。次いで4−アミノ−N−(3−アミノ−2−ヒドロキシ−4−フェニル−ブチル)−N−イソブチル−ベンゼンスルホンアミド(12)(83mg,212μモル)を一度に加えた。混合物を室温で終夜攪拌した。次いで溶離剤としてCH2Cl2−→CH2Cl2/MeOH(NH) 97−3を用いるカラムクロマトグラフィーにより混合物を分離した。蒸発の後、(13)(53mg,81μモル,38%)が白色の固体として得られた。
LC−MS(M+H):654 H NMR(400MHz,CDCl)δ 7.54(2H,d,J=8.68Hz),7.39−7.14(10H,m),6.67(2H,d,J=8.61Hz),5.8(1H,d,J=5.18Hz),5.12(1H,ddd,J=11.87Hz,J=6.06Hz,J=5.81Hz),4.95(1H,d,J=8.54Hz),4.37(1H,d,J=11.8Hz),4.26(1H,d,J=11.8Hz),4.15(2H,br s),4.08(1H,d,J=10.1Hz),3.98(1H,dd,J=10.0,J=6.1Hz),3.91−3.80(3H,m),3.75−3.50(3H,m),3.12(1H,dd,J=15.07,J=8.43),3.05−2.9(4H,m),2.84−2.74(2H,m),1.81(1H,七重項(septaplet),J=6.62),0.87(3H,d,J=6.58),0.45(3H,d,J=6.58Hz)。
【0182】
かくして得られる化合物を、生物学的アッセイにおいて抗ウイルス活性に関して試験した。
【0183】
例として、化合物(13):{3−[(4−アミノ−ベンゼンスルホニル)−イソブチル−アミノ]−1−ベンジル−2−ヒドロキシ−プロピル}−カルバミン酸 4−ベンジルオキシ−ヘキサヒドロ−フロ[2,3−b]フラン−3−イルエステルに関する試験結果を後記に示し、HIV−感染の処置に関して臨床研究下にある新規なプロテアーゼ阻害剤である以下の化学構造を有する化合物、いわゆるTMC 114又はダルナビル(darunavir)を参照化合物として用いた。
【0184】
ダルナビルは、以下の化学名を有する:(3R,3aS,6aR)−ヘキサヒドロフロ[2,3−b]フラン−3−イル N−[(1S,2R)−1−ベンジル−2−ヒドロキシ−3−(N 1−イソブチルスルファニルアミノ)プロピル]カルバメート
【0185】
【化30】

【0186】
MT4−LTR−EGFP細胞を用いる細胞アッセイにおいて、化合物を抗−ウイルス活性に関して試験した。アッセイは、野生型実験室HIV株(WT IIIB−2−001)ならびにそれぞれ表1及び2中で突然変異株1、2、3及び4として示されるいくつかのHIV突然変異株に対し、化合物が有力な抗−HIV活性を示すことを示した。
【0187】
以下の方法に従って細胞アッセイを行った。
【0188】
HIV−又は偽−感染MT4−LTR−EGFP細胞を、種々の濃度の上記で挙げた化合物の存在下で3日間インキュベーションした。感染すると、ウイルスtatタンパク質はGFPリポーターを活性化する。インキュベーション期間の最後にGFPシグナルを測定した。ウイルス標準試料(阻害剤の不在下における)において、最大蛍光シグナルを得た。化合物の阻害活性をウイルス−感染細胞上で監視し、EC50値を計算した。これらの値は、細胞の50%をウイルス感染から保護するのに必要な化合物の量を示す。表1中に示されるデータは、EC50−値の負の対数であるpEC50値を含有する。
【0189】
【表1】

【0190】
化合物を試験したウイルス突然変異株1〜4は、表2中に示される突然変異を含有する。
【0191】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

を有する化合物又はその立体異性体又はその塩の形態。
【請求項2】
化合物が以下の立体異性体
【化2】

の1つである請求項1に従う化合物。
【請求項3】
式(II)
【化3】

[式中、
X及びYは独立してSi及びCから選ばれ;そして
、R、R及びRは独立して−H及び1価炭化水素基より成る群から選ばれ;
及びRは一緒になって、−R−R−により示される2価の炭化水素基を形成することができ;
及びRは一緒になって、−R−R−により示される2価の炭化水素基を形成することができる]
を有する化合物をアルコール脱保護条件に供し、かくして生成する脱保護された中間体を分子内環化反応に供して式(I)の化合物を得る
ことを含んでなる請求項1又は2に記載の化合物の製造方法。
【請求項4】
式(III)
【化4】

[式中、
X及びYは独立してSi及びCから選ばれ;そして
、R、R及びRは独立して−H及び1価炭化水素基より成る群から選ばれ;
及びRは一緒になって、−R−R−により示される2価の炭化水素基を形成することができ;
及びRは一緒になって、−R−R−により示される2価の炭化水素基を形成することができる]
を有する化合物を酸化して式(II)の化合物を得ることをさらに含んでなる請求項3に記載の方法。
【請求項5】
式(IV)
【化5】

[式中、
X及びYは独立してSi及びCから選ばれ;そして
、R、R及びRは独立して−H及び1価炭化水素基より成る群から選ばれ;
及びRは一緒になって、−R−R−により示される2価の炭化水素基を形成することができ;
及びRは一緒になって、−R−R−により示される2価の炭化水素基を形成することができる]
を有する化合物をヒドロホウ素化し、かくして生成するヒドロホウ素化された中間体を続いて酸化して式(III)の化合物を得ることをさらに含んでなる請求項4に記載の方法。
【請求項6】
式(II)
【化6】

[式中、
X及びYは独立してSi及びCから選ばれ;そして
、R、R及びRは独立して−H及び1価炭化水素基より成る群から選ばれ;
及びRは一緒になって、−R−R−により示される2価の炭化水素基を形成することができ;
及びRは一緒になって、−R−R−により示される2価の炭化水素基を形成することができる]
を有する化合物又はその立体異性体又はその塩の形態。
【請求項7】
化合物が以下の立体異性体
【化7】

の1つである請求項6に従う化合物。
【請求項8】
式(III)
【化8】

[式中、
X及びYは独立してSi及びCから選ばれ;そして
、R、R及びRは独立して−H及び1価炭化水素基より成る群から選ばれ;
及びRは一緒になって、−R−R−により示される2価の炭化水素基を形成することができ;
及びRは一緒になって、−R−R−により示される2価の炭化水素基を形成することができる]
を有する化合物を酸化して式(II)の化合物を得ることを含んでなる請求項6又は7に記載の化合物の製造方法。
【請求項9】
式(III)
【化9】

[式中、
X及びYは独立してSi及びCから選ばれ;そして
、R、R及びRは独立して−H及び1価炭化水素基より成る群から選ばれ;
及びRは一緒になって、−R−R−により示される2価の炭化水素基を形成することができ;
及びRは一緒になって、−R−R−により示される2価の炭化水素基を形成することができる]
を有する化合物又はその立体異性体又はその塩の形態。
【請求項10】
化合物が以下の立体異性体
【化10】

の1つである請求項9に従う化合物。
【請求項11】
式(IV)
【化11】

[式中、
X及びYは独立してSi及びCから選ばれ;そして
、R、R及びRは独立して−H及び1価炭化水素基より成る群から選ばれ;
及びRは一緒になって、−R−R−により示される2価の炭化水素基を形成することができ;
及びRは一緒になって、−R−R−により示される2価の炭化水素基を形成することができる]
を有する化合物をヒドロホウ素化し、かくして生成するヒドロホウ素化された中間体を続いて酸化して式(III)の化合物を得ることを含んでなる請求項9又は10に記載の化合物の製造方法。
【請求項12】
X及びYが同じである請求項6、7、9又は10のいずれか1つに従う化合物あるいは請求項3、4、5、8又は11のいずれか1つに従う方法。
【請求項13】
X及びYがCである請求項12に従う化合物又は方法。
【請求項14】
、R、R及びRが独立して−H、C1−20アルキル、C2−20アルケニル、C2−20アルコキシアルキル、C7−20アルコキシアリール、C2−20アルキニル、C3−30シクロアルキル、C4−30(シクロアルキル)アルキル、C4−30(シクロアルケニル)アルキル、C9−30(シクロアルキニル)アルキル、C3−30シクロアルケニル、C4−30シクロアルキニル、C7−30アリールアルキル、C7−
30アルキルアリール、C6−30アリール、C6−30ヘテロシクリルアルキル、C6−30アルキル−ヘテロシクリル及びC5−30ヘテロシクリルより成る群から選ばれる請求項6、7、9又は10のいずれか1つに従う化合物あるいは請求項3、4、5、8又は11のいずれか1つに従う方法。
【請求項15】
、R、R及びRが独立して−H、第1級もしくは第2級C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C1−6アルコキシC1−6アルキル、C1−6アルコキシC5−10アリール、C5−7シクロアルキル、C5−11シクロアルキルC1−6アルキル、C4−11シクロアルケニルC1−6アルキル、C8−12シクロアルキニルC1−6アルキル、C5−7シクロアルケニル、C5−7シクロアルキニル、C6−11アリールC1−6アルキル、C1−6アルキルC6−11アリール、C6−11アリール、C5−12ヘテロシクリルC1−6アルキル、C1−6アルキルC5−12ヘテロシクリル及びC5−12ヘテロシクリルより成る群から選ばれる請求項6、7、9又は10のいずれか1つに従う化合物あるいは請求項3、4、5、8又は11のいずれか1つに従う方法。
【請求項16】
、R、R及びRが同じである請求項6、7、9又は10のいずれか1つに従う化合物あるいは請求項3、4、5、8又は11のいずれか1つに従う方法。
【請求項17】
X及びYがCであり、R、R、R及びRが同じであり且つメチル、エチル、n−プロピル、s−プロピル、n−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、ベンジル、フェニル及びメトキシフェニルより成る群から選ばれる請求項6、7、9又は10のいずれか1つに従う化合物あるいは請求項3、4、5、8又は11のいずれか1つに従う方法。
【請求項18】
脱保護剤が水素化分解試薬、フルオリド試薬、酸及び塩基、好ましくは無機及び有機酸、最も好ましくはスルホン酸又はカルボン酸より成る群から選ばれる請求項3に従う方法。
【請求項19】
場合により1種もしくはそれより多い有機溶媒を含んでなることができる水溶液中で脱保護を行なう請求項3に従う方法。
【請求項20】
Swern、Pfitzner−Moffatt又はParikh−Doering条件を用いて酸化を行なう請求項4又は8に従う方法。
【請求項21】
HIVプロテアーゼ阻害剤の製造における請求項1又は2に従う化合物の使用。

【公表番号】特表2008−531522(P2008−531522A)
【公表日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−556615(P2007−556615)
【出願日】平成18年2月24日(2006.2.24)
【国際出願番号】PCT/EP2006/060246
【国際公開番号】WO2006/089942
【国際公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(504347371)テイボテク・フアーマシユーチカルズ・リミテツド (94)
【Fターム(参考)】