プロテインA、またはプロテインAのA〜Eドメインの少なくとも1つからなるタンパク質を基板の表面に結合させる方法
【課題】本発明の目的は、ダイマー化を引き起こさず、かつSpAタンパク質を基板の表面に高密度に固定する方法を提供することである。
【解決手段】以下の方法が上記課題を解決する。すなわち、タンパク質を基板の表面に結合させる方法であって、以下の工程A〜Bを具備する方法:金またはカルボキシル基を具備する表面を有する基板を準備する工程A、および前記タンパク質を前記表面上に供給する工程B、ここで、前記タンパク質は、プロテインA、または前記プロテインAのA〜Eドメインの少なくとも1つのドメインからなり、かつ前記タンパク質は、配列番号1(SFNRNEC)によって表されるアミノ酸配列により修飾されたC末端を具備する。
【解決手段】以下の方法が上記課題を解決する。すなわち、タンパク質を基板の表面に結合させる方法であって、以下の工程A〜Bを具備する方法:金またはカルボキシル基を具備する表面を有する基板を準備する工程A、および前記タンパク質を前記表面上に供給する工程B、ここで、前記タンパク質は、プロテインA、または前記プロテインAのA〜Eドメインの少なくとも1つのドメインからなり、かつ前記タンパク質は、配列番号1(SFNRNEC)によって表されるアミノ酸配列により修飾されたC末端を具備する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロテインA、またはプロテインAのA〜Eドメインの少なくとも1つのドメインからなるタンパク質を基板の表面に結合させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プロテインAは、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)の細胞壁成分の5%を構成するタンパク質であり、「SpA」と略記される。プロテインAは、A〜Eドメインの5つのドメインから構成され、システインを含有しない。
【0003】
プロテインAまたはプロテインAのA〜Eドメインの少なくとも1つからなるタンパク質(以下、「SpAタンパク質」)は抗体に結合する性質を有する。当該性質を利用して、基板に抗体を結合させるためにSpAタンパク質が用いられる。
【0004】
従来技術によれば、SpAタンパク質に含有されるリジンの残基が、アミンカップリング法を使用することにより基板上のカルボキシル基に結合する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−170617号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】J. Biochem. 84, 1475−1483 (1997)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記公知の方法を使用して固定されたSpAタンパク質は基板の表面上で低い密度を有する。なぜなら、SpAタンパク質は複数のリジン基を有するため、基板の表面上では配向性を有さないためである。
【0008】
ところで、公知の方法によれば、R−SH(Rは炭化水素基を示す。)が金基板の表面に吸着され、化学式Au−S−Rにより表される配向膜を形成する。当該方法によりSpAタンパク質を金基板に結合するために、SpAタンパク質の末端にシステインを結合させることが考えられる。
【0009】
しかし、SpAタンパク質のC末端がシステイン(NH2−CH(COOH)−CH2−SH)で修飾された場合、SpAタンパク質を含有する溶液中で、SpAタンパク質のダイマー化が引き起こされる。以下の化学式(I)に示されるように、SpAタンパク質に含有されるシステイン中のメルカプト基(−SH)が重合して、ジススルフィド結合が形成される。
【0010】
【化1】
(式中、SpAはSaAタンパク質を示す。)
【0011】
当該ダイマー化は、SpAタンパク質が基板へ固定されることを阻害する。
【0012】
本発明者らは、システインを含有する配列番号1(SFNRNEC)によって修飾されたC末端を有するSpAタンパク質が、上記ダイマー化を引き起こさず、かつ基板の表面上で高い配向性を有して固定される知見を得た。
【0013】
本発明の目的は、ダイマー化を引き起こさず、かつSpAタンパク質を基板の表面に高密度に固定する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
以下の方法は、上記課題を解決する。
〔1〕:タンパク質を基板の表面に結合させる方法であって、以下の工程A〜Bを備する方法:
金またはカルボキシル基を具備する表面を有する基板を準備する工程A、および
前記タンパク質を前記表面上に供給する工程B
ここで、前記タンパク質は、プロテインA、または前記プロテインAのA〜Eドメインの少なくとも1つのドメインからなり、かつ
前記タンパク質は、配列番号1(SFNRNEC)によって表されるアミノ酸配列により修飾されたC末端を具備する。
〔2〕:前記表面は金を具備する、前記〔1〕に記載の方法。
〔3〕:前記表面はカルボキシル基を具備し、
以下の化学式(III)により前記表面に前記タンパク質が結合している、前記〔1〕に記載の方法。
【化3】
(式中、nは自然数を示す。)
〔4〕:前記工程Aと前記工程Bとの間に、下記工程(C)〜(D)をこの順でさらに具備する、前記項目1に記載の方法。
1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩またはその等価物およびN−ヒドロキシサクシンイミドを含有する溶液を前記表面上に供給する工程(C)、および
下記式(IV)で表わされる化合物を前記表面上に供給する工程(D)、
【化4】
(式中、mは自然数を示し、Xはハロゲン原子を示す。)
〔5〕:式(IV)中のmが2以上20以下の自然数である、前記〔4〕に記載の方法。
〔6〕:式(IV)中のmが2である、前記〔5〕に記載の方法。
〔7〕:前記タンパク質がプロテインAのA〜Eドメインの少なくとも1つのドメインからなる、前記〔1〕に記載の方法。
〔8〕:前記タンパク質がプロテインAのDドメインからなる、前記〔7〕に記載の方法。
〔9〕:前記タンパク質がプロテインAからなる、前記〔7〕に記載の方法。
〔10〕:タンパク質が固定された表面を有する基板であって、
前記基板は、金またはアミド結合を具備し、
前記タンパク質は、プロテインA、または前記プロテインAのA〜Eドメインの少なくとも1つのドメインからなり、かつ
前記タンパク質は、配列番号1(SFNRNEC)によって表されるアミノ酸配列により修飾されたC末端を具備する、基板。
〔11〕:前記タンパク質は、以下の化学式(II)または化学式(III)により基板に固定されている、前記〔10〕に記載の基板。
【化2】
【化3】
(式中、nは自然数を示す。)
〔12〕:前記タンパク質は、前記化学式(II)により基板に固定されている、前記〔11〕に記載の基板。
〔13〕:前記タンパク質は、前記化学式(III)により基板に固定されている、前記〔11〕に記載の基板。
〔14〕:前記タンパク質がプロテインAのA〜Eドメインの少なくとも1つのドメインからなる、前記〔10〕に記載の基板。
〔15〕:前記タンパク質がプロテインAのDドメインからなる、前記〔14〕に記載の基板。
〔16〕:前記タンパク質がプロテインAからなる、前記〔14〕に記載の基板。
〔17〕:タンパク質を含有する水溶液であって、
前記タンパク質は、プロテインA、または前記プロテインAのA〜Eドメインの少なくとも1つのドメインからなり、
前記タンパク質は、配列番号1(SFNRNEC)によって表されるアミノ酸配列により修飾されたC末端を具備する、水溶液。
〔18〕:タンパク質であって、
前記タンパク質は、プロテインA、または前記プロテインAのA〜Eドメインの少なくとも1つのドメインからなり、
前記タンパク質は、配列番号1(SFNRNEC)によって表されるアミノ酸配列により修飾されたC末端を具備する、タンパク質。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、ダイマー化を引き起こさず、かつSpAタンパク質を基板の表面に高密度に固定する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、チオールカップリング法を示す。
【図2】図2は、クローニングベクター201の模式図を示す。
【図3】図3は、ベクター301の模式図を示す。
【図4】図4(A)は、Dドメインをコードする遺伝子のC末端に、配列番号1をコードする遺伝子を修飾する方法を示す。図4(B)は、Dドメインおよび配列番号1をコードする遺伝子をベクター301にライゲーションさせる方法を示す。
【図5】図5は、Ndel・XhoI・SF修飾Dドメイン遺伝子が増幅されたことを示す電気泳動写真である。
【図6】図6は、コロニーPCRの温度・時間のプロファイルを示す。
【図7】図7は、Ndel・XhoI・SF修飾Dドメイン遺伝子が形質導入されたクローニングベクター201が増幅されていることを示す電気泳動写真である。
【図8】図8は、SF修飾Dドメインが増幅されていることを示す電気泳動写真である。
【図9】図9は、6×Hisによって修飾されたN末端を有するSF修飾Dドメインの模式図を示す。
【図10】図10は、6×Hisによって修飾されたN末端を有するC修飾Dドメインの模式図を示す。
【図11】図11(a)は、還元状態および非還元状態のC修飾Dドメインの分子量がSDS−PAGEにより測定された際の電気泳動写真である。図11(b)は、還元状態および非還元状態のSF修飾Dドメインの分子量がSDS−PAGEにより測定された際の電気泳動写真である。
【図12】図12は、センサーチップCM5に固定されたC修飾Dドメインの様子を模式的に示す。
【図13】図13は、センサーチップCM5に固定されたSF修飾Dドメインの様子を模式的に示す。
【図14】図14は、C修飾DドメインおよびSF修飾Dドメインの固定量の測定結果を示すグラフを示す。
【図15】図15は、C修飾DドメインおよびSF修飾Dドメインの固定量の測定結果を示すグラフを示す。
【図16】図16は、全てのA〜Eドメインを有するプロテインAを示す模式図を示す。
【図17】図17は、C修飾SpAおよびSF修飾SpAの固定量の測定結果を示すグラフを示す。
【図18】図18は、C修飾SpAおよびSF修飾SpAの固定量の測定結果を示すグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(用語の定義)
本明細書において用いられる用語は以下の通り定義される。
用語「プロテインA」は、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)の細胞壁成分の5%を構成するタンパク質であり、「SpA」とも記述される。プロテインAは、A〜Eの5つのドメインから構成され、システインを含有しない。
用語「SpAタンパク質」は、プロテインAまたはプロテインAのA〜Eドメインの少なくとも1つからなるタンパク質を意味する。すなわち、用語「SpAタンパク質」は、プロテインA、プロテインAのAドメイン、プロテインAのBドメイン、プロテインAのCドメイン、プロテインAのDドメイン、プロテインAのEドメイン、および当該A〜Eドメインの2以上の組み合わせを意味する。
用語「SF修飾SpAタンパク質」は、配列番号1(SFNRNEC)によって修飾されたC末端を有するSpAタンパク質を意味する。
用語「SF修飾Dドメイン」は、配列番号1(SFNRNEC)によって修飾されたC末端を有するDドメインからなるタンパク質を意味する。
用語「SF修飾Dドメイン遺伝子」は、プロテインAのDドメインをコードする遺伝子のC末端に、配列番号1(SFNRNEC)をコードする遺伝子が修飾された遺伝子を意味する。
用語「Ndel・XhoI・SF修飾Dドメイン遺伝子」は、制限酵素サイトNdel及びXhoIがそれぞれN末端およびC末端に修飾されたSF修飾Dドメイン遺伝子を意味する。
用語「C修飾ドメイン」は、システインによって修飾されたC末端を有するDドメインからなるタンパク質を意味する。
用語「SF修飾SpA」は、配列番号1(SFNRNEC)によって修飾されたC末端を有するプロテインAからなるタンパク質を意味する。
用語「C修飾SpA」は、システインによって修飾されたC末端を有するプロテインAからなるタンパク質を意味する。
【0018】
(工程(A))
工程(A)では、金(Au)またはカルボキシル基を具備する表面を有する基板が準備される。
金を具備する表面を有する基板は、表面に金を具備する基板だけでなく、SpAタンパク質が固定される部分にのみ金を具備する基板も含む。具体的には、当該基板は、金からなる薄膜または金からなる微細な粒子をその表面に具備する。
【0019】
カルボキシル基を具備する基板は、金の場合と同様、カルボキシル基を具備する薄膜が表面に形成された基板だけでなく、SpAタンパク質が固定される部分にのみカルボキシル基を具備する基板も含む。具体的には、当該基板は、カルボキシル基を具備する薄膜をその表面に有する。
【0020】
(工程(B))
工程(B)では、SF修飾SpAタンパク質が、基板の表面に供給される。
基板が金を表面に具備する場合、以下の化学式(II)に示すように、SF修飾SpAタンパク質は基板の表面に固定される。
【0021】
【化2】
【0022】
基板がカルボキシル基を具備する場合、以下の化学式(III)に示すように、チオールカップリングによりSF修飾SpAタンパク質は基板の表面に固定される。
【0023】
【化3】
(式中、nは自然数を示す。)
【0024】
図1は、チオールカップリング方法を示す。カルボキシル基を具備する表面に、EDC/NHSの混合液が供給される。EDCは、N−エチルN’−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩またはその等価物である。その等価物としては、フッ化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、臭化水素酸塩等のハロゲン酸塩が例示される。NHSは、N−ヒドロキシサクシンイミドの略名である。
次に、PDEAが供給される。PDEAは、2−(2−pyridinyldithio) ethaneamine hydrochlorideの略名である。最後に、メルカプト基(−SH)を有するリガンドが供給される。
本発明においては、リガンドとしてSF修飾SpAタンパク質が供給される。
【0025】
PDEAに代えて、下記式(IV)であらわされる化合物を使用することもできる。
【0026】
【化4】
(式中、mは自然数を示し、Xはハロゲン原子を示す。)
【0027】
好ましくは、自然数mは2〜20の範囲から選択される。
【0028】
固定されたSF修飾SpAタンパク質は高い配向性を有するため、SF修飾SpAタンパク質は基板の表面上で高い密度を有する。
【0029】
(実施例1)
(遺伝子配列(ベクター)の作製)
(SF修飾Dドメイン遺伝子の形成を確認するためのベクターおよびSF修飾Dドメイン遺伝子を発現するためのベクターの調製)
図2および図3は、それぞれ、SF修飾Dドメイン遺伝子の形成を確認するためのクローニングベクター201および大腸菌を用いてSF修飾Dドメイン遺伝子を発現するためのベクター301を示す。
【0030】
いずれのベクター201、301も環状である。クローニングベクター201およびベクター301は、いずれも、SF修飾Dドメイン遺伝子が導入され得るマルチクローニングサイト(以下、「MCS」)を有する。
【0031】
MCSは制限酵素サイトを有する。制限酵素を用いて、SF修飾Dドメイン遺伝子がMCSに導入され得る。クローニングベクター201およびベクター301の例は、それぞれ、pBluescript II SK(+) (stratagene)およびpET15b(Novagen Inc.)である。pBuescript IIは、MCSに導入されたSF修飾Dドメイン遺伝子の確認および増殖のために用いられる。pET15bは、SF修飾Dドメインを産生するために用いられる。
【0032】
具体的な手順は以下の通りである。
【0033】
(アミノ酸配列SFNRNECを有するSpAのDドメイン遺伝子の設計および作製)
SF修飾Dドメインとして、黄色ブドウ球菌(Staphyloccocus aureus)由来のProtein AのDドメインが用いられた。
【0034】
Dドメインをコードする遺伝子のC末端に、配列番号1(SFNRNEC)をコードする遺伝子配列が図4(A)に示すように付加された。
Dドメインをコードする遺伝子配列は、以下の通りである。
【0035】
gctgatgcgcaacaaaataacttcaacaaagatcaacaaagcgccttctatgaaatcttgaacatgcctaacttaaacgaagcgcaacgtaacggcttcattcaaagtcttaaagacgacccaagccaaagcactaacgttttaggtgaagctaaaaaattaaacgaatctcaagcaccgaaa(以下、配列番号2)
【0036】
配列番号1(SFNRNEC)をコードする遺伝子配列は、
agcttcaaccgtaacgaatgc(以下、配列番号3)であった。
【0037】
図4(A)に示されるように、制限酵素サイトNdelをコードする遺伝子がN末端に修飾されたプライマーP1(配列番号4)および配列番号2−停止コドン−制限酵素サイトXhoIをコードするプライマーP2(配列番号5)を用いてPCRが行なわれ、制限酵素サイトNdelおよびXhoIがそれぞれN末端およびC末端に修飾されたNdel・XhoI・SF修飾Dドメイン遺伝子を得た。以下の表1はPCRにおける温度および時間のプロファイルを示す。
【0038】
【表1】
【0039】
PCRの後、増幅されたクローニングベクター201を含有する溶液が2.0%アガロースゲルによる電気泳動に供された。
【0040】
図5は電気泳動の結果の写真である。図5に示されるように、約400bpを指し示すAにバンドが見出された。これは、Ndel・XhoI・SF修飾Dドメイン遺伝子が増幅されたことを示す。
【0041】
(E.coliへの形質転換および遺伝子配列の確認)
図5に示されるバンドを、WizardSV kit(Promega製)を用いて切り出した。
【0042】
当該バンドに含有されるNdel・XhoI・SF修飾Dドメイン遺伝子の末端が、T4 Polynucleotide Kinase(TOYOBO(株)社製)を用いて、37℃にて2時間かけてリン酸化された。
【0043】
リン酸化されたNdel・XhoI・SF修飾Dドメイン遺伝子は、クローニングベクター201が有する制限酵素サイトEcoRV(MCS)にライゲーションされ、Ndel・XhoI・SF修飾Dドメイン遺伝子をpBluescriptII SK(+)のMCSに導入した。当該クローニングベクター201は、EcoRVで消化後に脱リン酸化されたpBluescriptII SK(+)であった。
当該ライゲーションは、Ligation High(TOYOBO CO., LTD.)を用いて、16℃にて30分かけて行われた。
【0044】
得られたクローニングベクター201を、大腸菌DH10B株を用いたエレクトロポレーション法(品名:Micro Pulser、BioRad社製、プログラム:Eco1)によって形質転換した。当該エレクトロポレーション法では、およそ0.2μgのクローニングベクター201および大腸菌DH10B株42μLが混合され、1mmGapのキュベットが用いられた。
【0045】
LBプレート培地(100ug/mLアンピシリン)上にて大腸菌コロニーが育成された。ブルーホワイトセレクションが実施された。コロニーPCRにより確認することによって、pBluescriptII SK(+)が形質導入されたコロニーのみが抽出された。
【0046】
図6および図7は、それぞれ、コロニーPCRの温度および時間のプロファイルおよび電気泳動の結果を示す。図7に示されるように、約400bpを示す「A」にバンドが見出された。これは、Ndel・XhoI・SF修飾Dドメイン遺伝子が形質導入されたクローニングベクター201が増幅されていることを意味する。
【0047】
形質導入されたコロニーがピペットの先端部分を用いて回収された。当該形質導入されたコロニーは、およそ5〜10mLのLB培地(100ug/mLアンピシリン)中に添加された。その後、揺動(37℃、230rpm)しながら、一晩かけて大腸菌が増殖された。増殖した大腸菌を遠心分離により回収した。回収された大腸菌はminiprep(QIAGEN(株)社製)によって精製され、Ndel・XhoI・SF修飾Dドメイン遺伝子を具備するプラスミドベクター201を得た。さらに、得られたプラスミドベクター201のシークエンスが読まれ、導入した遺伝子配列を確認した。
【0048】
(タンパク質の産生)
(タンパク質発現用E.coliへの形質転換)
得られたプラスミドベクター201から、SF修飾Dドメイン遺伝子を切り出し、そしてベクター301のMCSに導入した。
【0049】
具体的には、制限酵素であるNdeI(Takara Bio Inc.製)およびXhoI(Takara Bio Inc.製)を用い、得られたプラスミドベクター201はH buffer(Takara Bio Inc.)中にて37度2時間インキュベーションされて、SF修飾Dドメイン遺伝子を切り出した。10μgのプラスミドベクター201に対して2μLの制限酵素を用いた。
【0050】
次に、SF修飾Dドメイン遺伝子が大腸菌BL21(DE3)pLysS株からなるベクター301に形質導入され、大腸菌コロニーを得た。クローニングベクター201の形質導入と実質的に同一の形質導入が行われた。
【0051】
具体的にはまず、およそ0.2μgのSF修飾Dドメイン遺伝子および42μLのベクター301が混合された。次いで2mmGapのキュベットを用いて、エレクトロポレーション法(品名:Micro Pulser、BioRad社製、プログラム:Eco1)を使用して形質導入が行われた。このようにして、SF修飾Dドメイン遺伝子を具備するベクター301が得られた。
【0052】
次に、得られたベクター301をLBプレート培地(100ug/mLアンピシリン、25ug/mLクロランフェニコール)に添加し、当該LBプレート培地上にて大腸菌コロニーを育成した。
【0053】
得られた大腸菌コロニーが50mlの2YT培地(アンピシリン100ug/ml、クロランフェニコール25ug/ml)に添加された。その後、37oCで揺動しながら、一晩かけて大腸菌BL21(DE3)pLysS株が増幅された。
【0054】
増幅した大腸菌BL21(DE3)pLysS株(5ml)が500mlの2YT培地(アンピシリン100ug/ml)に添加された。その後、大腸菌BL21(DE3)pLysS株は37oCで1.5時間かけて振動しながら培養された。最後に、最終濃度が1mMになるようにIPTG(Isopropylβ-D-1−thiogalactopyranoside)を加え、さらに6時間かけて大腸菌BL21(DE3)pLysS株が十分に増幅された。
【0055】
(SF修飾Dドメインの精製および確認)
遠心分離法により、増幅したBL21(DE3)pLysS株が回収された。回収したBL21(DE3)pLysS株が、最終濃度5mMイミダゾールを含むPBS(pH7.4)(40ml)にもう一度懸濁された。次いでソニケーションにより菌体が超音波破砕に供された。
【0056】
遠心分離法により不溶分画を除き、さらに0.22μmのフィルターに残液が通された。0.5mlのベッドボリュームのNiビーズ(GE healthcare)を充填したカラムに残液が2回通された後、ソニケーションバッファーで5回洗浄された。最終濃度300mMイミダゾールを含有するPBS(pH7.4)を用いて、各1mlの4分画が溶出された。O.D.280の吸光度からタンパク質溶出分画が同定された。
【0057】
O.D.280の吸光度、タンパク質の分子量、及びTrp/Tyrの個数から算出したモル分子吸光係数から、10mgのSF修飾Dドメインが得られたことが確認された。当該SF修飾DドメインのN末端は、ヒスチジン六量体(以下、「6×His」と称する。)を具備していた。
【0058】
さらにタンパク質の精製度合いを検証するために、16%アクリルアミドゲルを用いたSDS−PAGEを行った。図8の参照番号803が示すように、タンパク質は高純度に精製された。
【0059】
図8において、参照番号801は、それぞれが異なる分子量を有する複数のマーカーが形成するバンドを指し示す。参照番号803は、SF修飾Dドメインのバンドを指し示す。参照番号802は、SF修飾に代えて、図10に示されるように、1分子のシステインがC末端に修飾されたこと以外は上記と同様のプロセスに従って得られたDドメイン(以下、「C修飾Dドメイン」のバンドを指し示す。
【0060】
図8から理解されるように、バンド802とバンド803との間には差がある。バンド803は、SF修飾Dドメインが得られたことを意味する。
【0061】
このようにして、図9に示すような、6xHisによって修飾されたN末端およびアミノ酸配列SFNRNECによって修飾されたC末端を具備するSF修飾Dドメイン901が得られた。以下、説明を簡略化するため、必要とされない限り、用語「6×His」は割愛される。従って、用語「SF修飾Dドメイン」は、図9に示されるSF修飾Dドメイン901を意味する。同様に用語「C修飾Dドメイン」は、図10に示されるC修飾ドメイン902を意味する。
【0062】
(配列番号1によるジスルフィド結合形成の抑制効果の確認)
図11(a)は、還元状態および非還元状態のC修飾Dドメインの分子量がSDS−PAGEを使用して測定された電気泳動写真を示す。
図11(b)は、還元状態および非還元状態のSF修飾Dドメインの分子量がSDS−PAGEを使用して測定された電気泳動写真を示す。
【0063】
還元状態とは、ジスルフィド結合の還元が促進され、メルカプト基となる状態である。すなわち、還元状態では、二量化が抑制される。
非還元状態とは、メルカプト基の酸化が抑制されていない状態である。すなわち、非還元状態では、二量化が促進される。
【0064】
還元状態および非還元状態は以下のプロセスにより得られた。
【0065】
5μgのSF修飾DドメインがPBSバッファー(pH:7.4)に添加され、非還元状態の溶液を得た。
【0066】
次に、還元状態を得た方法が以下に記述される。まず、最終濃度が5mMになるようにジチオスレイトール(以下、「DTT」)が当該溶液に添加された。その後、溶液は4℃で一晩かけてゆっくり攪拌された。さらに、PD−10(GE healthcare社製)を用いて、PBSバッファを1mMでEDTAを含むPBSに置換し、還元状態を得た。EDTAは、ethylenediaminetetraacetic acidの略名であり、メタロプロテアーゼの活性を阻害する。C修飾Dドメインにも、上記と同様のプロセスが用いられる。
【0067】
図11(a)において、参照番号112は、還元状態におけるC修飾Dドメインのバンドを指し示す。参照番号113は非還元状態におけるC修飾Dドメインのバンドを指し示す。参照番号1101は異なる分子量を有する複数のマーカーによって形成されたバンドを指し示す。
図11(a)から理解されるように、非還元状態では、2つのシステインの間にジスルフィド結合が形成され、2つのC修飾Dドメインが結合する。これは、いうまでもなく、ダイマー化が引き起こされたことを意味する。
【0068】
図11(b)において、参照番号114は還元状態におけるSF修飾Dドメインのバンドを指し示す。参照番号115は非還元状態におけるSF修飾Dドメインのバンドを指し示す。
【0069】
図11(b)の中の非還元状態列には、バンド115(i)及びバンド115(ii)が確認される。バンド115(i)は、SF修飾Dドメインを指し示す。このSF修飾Dドメインにおいて、システインが有する硫黄原子は互いにジスルフィド結合を形成していない。バンド115(ii)は二量化したSF−修飾Dドメインを指し示す。バンド115(i)はバンド115(ii)よりも非常に強い。
【0070】
図11(b)から理解されるように、非還元状態であっても、ジスルフィド結合によって結合した2つのDドメインのダイマーの量よりも、ジスルフィド結合を形成していない単量体のDドメインの量の方が多い。これは、配列番号1によって表されるアミノ酸配列がジスルフィド結合によるダイマー化を抑制することを意味する。
【0071】
(Dドメインを基板の表面に固定する方法)
Dドメインを基板の表面に固定する方法では、センサーチップCM5(GE Healthcare社製)が用いられた。センサーチップ5は、高密度のカルボキシル基が付加されたデキストランを固定された表面を有する金基板であった。当該センサーチップ5に固定されたDドメインの量が、BiaCORE2000(GE Healthcare社製)を用いて測定された。
【0072】
(比較例1:アミンカップリング法)
まず、0.05M N−ヒドロキシサクシンイミド(以下、「NHS」)および0.2M N−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(以下、「EDS」)を含有する混合液を調製した。当該混合液はセンサーチップCM5(GE Healthcare)の表面に2分間かけて5μL/minの流速で添加された。このようにして、カルボキシル基をNHSエステルに置換した。
【0073】
さらに、pH4.5の条件下でC修飾Dドメインが添加された。NHSエステルはDドメインに含有されるリジン残基が有する−NH2基(ε‐アミノ基)に置換され、Dドメインがアミド結合により固定された。本手順は、BiaCORE2000(GE Healthcare社製)により固定量がモニタリングされながら、目的の固定量が得られるまで行なわれた。
【0074】
最後に、エタノールアミンが流速5μL/分で、4分間添加された。このようにして、未反応のカルボキシル基が不活性化された。
【0075】
図12はセンサーチップCM5に固定されたC修飾Dドメインの様子を模式的に示す。
【0076】
図14の点線は、基板上に固定されたC修飾Dドメインに880RU(およそ880nm/mm2)の抗体マウスIgG1(200nm)が結合した後に、BiaCORE2000(GE Healthcare)によって測定されたC修飾Dドメインの固定量の測定結果を示す。
【0077】
図15の点線は、基板上に固定されたC修飾Dドメインに880RU(およそ880nm/mm2)の抗体マウスIgG2a(200nm)を結合させた後に、BiaCORE2000(GE Healthcare)によって測定されたC修飾Dドメインの固定量の測定結果を示す。
【0078】
(実施例1:チオールカップリング法)
比較例1と同様に、0.05M NHSおよび0.2M EDCを含有する混合液がセンサーチップCM5の表面に添加された。このようにして、カルボキシル基がNHSエステルに置換された。
【0079】
次に、図1に示されるように、pH8.5 80mM PDEA(2−(2−pyridinyldithio) ethaneamine hydrochloride)が流速5μL/分で、4分間添加された。このようにして、NHSエステルをジスルフィドに置換した。
【0080】
さらに、pH4.5の条件下においてSF修飾Dドメインが添加された。このようにして、以下の化学式(III)によって表されるように、基板の表面にSF修飾Dドメインが固定された。
【0081】
【化3】
【0082】
本手順は、比較例1と同様、BiaCORE2000(GE Healthcare)を使用して固定される量をモニタリングしながら、目的の固定量が得られるまで行なわれた。
【0083】
最後に、pH4.3 50mMシスタミン/1M NaClを、流速5μL/分で4分間添加した。これにより、未反応のカルボキシル基を不活性化した。
【0084】
図13はセンサーチップCM5上に固定されたSF修飾Dドメインの様子を模式的に示す。
【0085】
図14の実線は、基板上に固定されたSF修飾Dドメインに960RU(およそ960nm/mm2)の抗体マウスIgG1(200nm)を結合させた後に、BiaCORE2000(GE Healthcare)を使用して測定されたSF修飾Dドメインの固定量の測定結果を示す。
【0086】
図15の実線は、基板上に固定されたSF修飾Dドメインに960RU(およそ960nm/mm2)の抗体マウスIgG2a(200nm)を結合させた後に、BiaCORE2000(GE Healthcare)を使用して測定されたSF修飾Dドメインの固定量の測定結果を示す。
【0087】
図14および図15のいずれもが、アミンカップリング法によって固定されたDドメインの量(点線)よりも、チオールカップリング法を使用して固定されたDドメインの量(実線)の方が多いことを示している。これは、図12および図13に示されるように、アミンカップリング法を使用するとDドメインは均一に配向しない一方で、SF修飾Dドメインはチオールカップリング法を使用することにより均一に配向するためと考えられる。
【0088】
(実施例2)
実施例2では、図16に示されるように、全てのA〜Eドメインを有するプロテインAのC末端に配列番号1のアミノ酸配列が修飾された。当該プロテインAのN末端は、6×Hisによって修飾された。
【0089】
Dドメインをコードする遺伝子(配列番号2)に代えて、全てのA〜Eドメインを有するプロテインAをコードする以下の遺伝子(配列番号6)が用いられたこと以外は、実施例1および比較例1と同様の実験を行った。
【0090】
ATGCTGACTTTACAAATACATACAGGGGGTATTAATTTGAAAAAGAAAAACATTTATTCAATTCGTAAACTAGGTGTAGGTATTGCATCTGTAACTTTAGGTACATTACTTATATCTGGTGGCGTAACACCTGCTGCAAATGCTGCGCAACACGATGAAGCTCAACAAAATGCTTTTTATCAAGTCTTAAATATGCCTAACTTAAATGCTGATCAACGCAATGGTTTTATCCAAAGCCTTAAAGATGATCCAAGCCAAAGTGCTAACGTTTTAGGTGAAGCTCAAAAACTTAATGACTCTCAAGCTCCAAAAGCTGATGCGCAACAAAATAACTTCAACAAAGATCAACAAAGCGCCTTCTATGAAATCTTGAACATGCCTAACTTAAACGAAGCGCAACGTAACGGCTTCATTCAAAGTCTTAAAGACGACCCAAGCCAAAGCACTAACGTTTTAGGTGAAGCTAAAAAATTAAACGAATCTCAAGCACCGAAAGCTGATAACAATTTCAACAAAGAACAACAAAATGCTTTCTATGAAATCTTGAATATGCCTAACTTAAACGAAGAACAACGCAATGGTTTCATCCAAAGCTTAAAAGATGACCCAAGCCAAAGTGCTAACCTATTGTCAGAAGCTAAAAAGTTAAATGAATCTCAAGCACCGAAAGCGGATAACAAATTCAACAAAGAACAACAAAATGCTTTCTATGAAATCTTACATTTACCTAACTTAAACGAAGAACAACGCAATGGTTTCATCCAAAGCCTAAAAGATGACCCAAGCCAAAGCGCTAACCTTTTAGCAGAAGCTAAAAAGCTAAATGATGCTCAAGCACCAAAAGCTGACAACAAATTCAACAAAGAACAACAAAATGCTTTCTATGAAATTTTACATTTACCTAACTTAACTGAAGAACAACGTAACGGCTTCATCCAAAGCCTTAAAGACGATCCTTCAGTGAGCAAAGAAATTTTAGCAGAAGCTAAAAAGCTAAACGATGCTCAAGCACCAAAAGAGGAAGACAATAACAAGCCTGGCAAAGAAGACAATAACAAGCCTGGCAAAGAAGACAACAACAAGCCTGGTAAAGAAGACAACAACAAGCCTGGTAAAGAAGACAACAACAAGCCTGGCAAAGAAGACAATAACAAGCCTGGTAAAGAAGACAACAAAAAACCTGGTAAAGAAGATGGCAACAAGCCTGGTAAAGAAGACAACAAAAAACCTGGTAAAGAAGACGGCAACAAGCCTGGCAAAGAAGATGGCAACAAACCTGGTAAAGAAGATGGTAACGGAGTACATGTCGTTAAACCTGGTGATACAGTAAATGACATTGCAAAAGCAAACGGCACTACTGCTGACAAAATTGCTGCAGATAACAAATTAGCTGATAAAAACATGATCAAACCTGGTCAAGAACTTGTTGTTGATAAGAAGCAACCAGCAAACCATGCAGATGCTAACAAAGCTCAAGCATTACCAGAAACTGGTGAAGAAAATCCATTCATCGGTACAACTGTATTTGGTGGATTATCATTAGCCTTAGGTGCAGCGTTATTAGCTGGACGTCGTCGCGAACTATAA
【0091】
図17の点線は、基板上に固定されたC修飾SpAに880RU(およそ880nm/mm2)の抗体マウスIgG1(200nm)を結合させた後に、BiaCORE2000(GE Healthcare)を使用して測定されたC修飾SpAの固定量の測定結果を示す。
【0092】
図18の点線は、基板上に固定されたC修飾SpAに880RU(およそ880nm/mm2)の抗体マウスIgG2a(200nm)を結合させた後に、BiaCORE2000(GE Healthcare)によって測定されたC修飾SpAの固定量の測定結果を示す。
【0093】
図17の実線は、基板上に固定されたSF修飾SpAに960RU(およそ960nm/mm2)の抗体マウスIgG1(200nm)を結合させた後に、BiaCORE2000(GE Healthcare)を使用して測定されたSF修飾SpAの固定量の測定結果を示す。
【0094】
図18の実線は、基板上に固定されたSF修飾SpAに960RU(およそ960nm/mm2)の抗体マウスIgG2a(200nm)を結合させた後に、BiaCORE2000(GE Healthcare)によって測定されたSF修飾SpAの固定量の測定結果を示す。
【0095】
図17および図18のいずれもが、アミンカップリング法によって固定されたSpAの量(点線)よりも、チオールカップリング法を使用して固定されたSpAの量(実線)の方が多いことを示している。これは、実施例1と同様、アミンカップリング法を使用するとDドメインSpAは均一に配向しない一方で、SF修飾SpAはチオールカップリング法を使用することにより均一に配向するためと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明は当該タンパク質を表面に有するセンサを製造するために用いられ得る。
【符号の説明】
【0097】
201:SF修飾Dドメイン遺伝子の形成を確認するためのクローニングベクター
301:大腸菌を用いてSF修飾Dドメイン遺伝子を発現するためのベクター
801:異なる分子量を有する複数のマーカーが形成するバンド
802:C修飾Dドメインのバンド
803:SF修飾Dドメインのバンド
112:還元状態におけるC修飾Dドメインのバンド
113:非還元状態におけるC修飾Dドメインのバンド
1101:異なる分子量を有する複数のマーカーが形成するバンド
114:還元状態におけるSF修飾Dドメインのバンド
115:非還元状態におけるSF修飾Dドメインのバンド
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロテインA、またはプロテインAのA〜Eドメインの少なくとも1つのドメインからなるタンパク質を基板の表面に結合させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プロテインAは、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)の細胞壁成分の5%を構成するタンパク質であり、「SpA」と略記される。プロテインAは、A〜Eドメインの5つのドメインから構成され、システインを含有しない。
【0003】
プロテインAまたはプロテインAのA〜Eドメインの少なくとも1つからなるタンパク質(以下、「SpAタンパク質」)は抗体に結合する性質を有する。当該性質を利用して、基板に抗体を結合させるためにSpAタンパク質が用いられる。
【0004】
従来技術によれば、SpAタンパク質に含有されるリジンの残基が、アミンカップリング法を使用することにより基板上のカルボキシル基に結合する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−170617号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】J. Biochem. 84, 1475−1483 (1997)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記公知の方法を使用して固定されたSpAタンパク質は基板の表面上で低い密度を有する。なぜなら、SpAタンパク質は複数のリジン基を有するため、基板の表面上では配向性を有さないためである。
【0008】
ところで、公知の方法によれば、R−SH(Rは炭化水素基を示す。)が金基板の表面に吸着され、化学式Au−S−Rにより表される配向膜を形成する。当該方法によりSpAタンパク質を金基板に結合するために、SpAタンパク質の末端にシステインを結合させることが考えられる。
【0009】
しかし、SpAタンパク質のC末端がシステイン(NH2−CH(COOH)−CH2−SH)で修飾された場合、SpAタンパク質を含有する溶液中で、SpAタンパク質のダイマー化が引き起こされる。以下の化学式(I)に示されるように、SpAタンパク質に含有されるシステイン中のメルカプト基(−SH)が重合して、ジススルフィド結合が形成される。
【0010】
【化1】
(式中、SpAはSaAタンパク質を示す。)
【0011】
当該ダイマー化は、SpAタンパク質が基板へ固定されることを阻害する。
【0012】
本発明者らは、システインを含有する配列番号1(SFNRNEC)によって修飾されたC末端を有するSpAタンパク質が、上記ダイマー化を引き起こさず、かつ基板の表面上で高い配向性を有して固定される知見を得た。
【0013】
本発明の目的は、ダイマー化を引き起こさず、かつSpAタンパク質を基板の表面に高密度に固定する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
以下の方法は、上記課題を解決する。
〔1〕:タンパク質を基板の表面に結合させる方法であって、以下の工程A〜Bを備する方法:
金またはカルボキシル基を具備する表面を有する基板を準備する工程A、および
前記タンパク質を前記表面上に供給する工程B
ここで、前記タンパク質は、プロテインA、または前記プロテインAのA〜Eドメインの少なくとも1つのドメインからなり、かつ
前記タンパク質は、配列番号1(SFNRNEC)によって表されるアミノ酸配列により修飾されたC末端を具備する。
〔2〕:前記表面は金を具備する、前記〔1〕に記載の方法。
〔3〕:前記表面はカルボキシル基を具備し、
以下の化学式(III)により前記表面に前記タンパク質が結合している、前記〔1〕に記載の方法。
【化3】
(式中、nは自然数を示す。)
〔4〕:前記工程Aと前記工程Bとの間に、下記工程(C)〜(D)をこの順でさらに具備する、前記項目1に記載の方法。
1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩またはその等価物およびN−ヒドロキシサクシンイミドを含有する溶液を前記表面上に供給する工程(C)、および
下記式(IV)で表わされる化合物を前記表面上に供給する工程(D)、
【化4】
(式中、mは自然数を示し、Xはハロゲン原子を示す。)
〔5〕:式(IV)中のmが2以上20以下の自然数である、前記〔4〕に記載の方法。
〔6〕:式(IV)中のmが2である、前記〔5〕に記載の方法。
〔7〕:前記タンパク質がプロテインAのA〜Eドメインの少なくとも1つのドメインからなる、前記〔1〕に記載の方法。
〔8〕:前記タンパク質がプロテインAのDドメインからなる、前記〔7〕に記載の方法。
〔9〕:前記タンパク質がプロテインAからなる、前記〔7〕に記載の方法。
〔10〕:タンパク質が固定された表面を有する基板であって、
前記基板は、金またはアミド結合を具備し、
前記タンパク質は、プロテインA、または前記プロテインAのA〜Eドメインの少なくとも1つのドメインからなり、かつ
前記タンパク質は、配列番号1(SFNRNEC)によって表されるアミノ酸配列により修飾されたC末端を具備する、基板。
〔11〕:前記タンパク質は、以下の化学式(II)または化学式(III)により基板に固定されている、前記〔10〕に記載の基板。
【化2】
【化3】
(式中、nは自然数を示す。)
〔12〕:前記タンパク質は、前記化学式(II)により基板に固定されている、前記〔11〕に記載の基板。
〔13〕:前記タンパク質は、前記化学式(III)により基板に固定されている、前記〔11〕に記載の基板。
〔14〕:前記タンパク質がプロテインAのA〜Eドメインの少なくとも1つのドメインからなる、前記〔10〕に記載の基板。
〔15〕:前記タンパク質がプロテインAのDドメインからなる、前記〔14〕に記載の基板。
〔16〕:前記タンパク質がプロテインAからなる、前記〔14〕に記載の基板。
〔17〕:タンパク質を含有する水溶液であって、
前記タンパク質は、プロテインA、または前記プロテインAのA〜Eドメインの少なくとも1つのドメインからなり、
前記タンパク質は、配列番号1(SFNRNEC)によって表されるアミノ酸配列により修飾されたC末端を具備する、水溶液。
〔18〕:タンパク質であって、
前記タンパク質は、プロテインA、または前記プロテインAのA〜Eドメインの少なくとも1つのドメインからなり、
前記タンパク質は、配列番号1(SFNRNEC)によって表されるアミノ酸配列により修飾されたC末端を具備する、タンパク質。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、ダイマー化を引き起こさず、かつSpAタンパク質を基板の表面に高密度に固定する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、チオールカップリング法を示す。
【図2】図2は、クローニングベクター201の模式図を示す。
【図3】図3は、ベクター301の模式図を示す。
【図4】図4(A)は、Dドメインをコードする遺伝子のC末端に、配列番号1をコードする遺伝子を修飾する方法を示す。図4(B)は、Dドメインおよび配列番号1をコードする遺伝子をベクター301にライゲーションさせる方法を示す。
【図5】図5は、Ndel・XhoI・SF修飾Dドメイン遺伝子が増幅されたことを示す電気泳動写真である。
【図6】図6は、コロニーPCRの温度・時間のプロファイルを示す。
【図7】図7は、Ndel・XhoI・SF修飾Dドメイン遺伝子が形質導入されたクローニングベクター201が増幅されていることを示す電気泳動写真である。
【図8】図8は、SF修飾Dドメインが増幅されていることを示す電気泳動写真である。
【図9】図9は、6×Hisによって修飾されたN末端を有するSF修飾Dドメインの模式図を示す。
【図10】図10は、6×Hisによって修飾されたN末端を有するC修飾Dドメインの模式図を示す。
【図11】図11(a)は、還元状態および非還元状態のC修飾Dドメインの分子量がSDS−PAGEにより測定された際の電気泳動写真である。図11(b)は、還元状態および非還元状態のSF修飾Dドメインの分子量がSDS−PAGEにより測定された際の電気泳動写真である。
【図12】図12は、センサーチップCM5に固定されたC修飾Dドメインの様子を模式的に示す。
【図13】図13は、センサーチップCM5に固定されたSF修飾Dドメインの様子を模式的に示す。
【図14】図14は、C修飾DドメインおよびSF修飾Dドメインの固定量の測定結果を示すグラフを示す。
【図15】図15は、C修飾DドメインおよびSF修飾Dドメインの固定量の測定結果を示すグラフを示す。
【図16】図16は、全てのA〜Eドメインを有するプロテインAを示す模式図を示す。
【図17】図17は、C修飾SpAおよびSF修飾SpAの固定量の測定結果を示すグラフを示す。
【図18】図18は、C修飾SpAおよびSF修飾SpAの固定量の測定結果を示すグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(用語の定義)
本明細書において用いられる用語は以下の通り定義される。
用語「プロテインA」は、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)の細胞壁成分の5%を構成するタンパク質であり、「SpA」とも記述される。プロテインAは、A〜Eの5つのドメインから構成され、システインを含有しない。
用語「SpAタンパク質」は、プロテインAまたはプロテインAのA〜Eドメインの少なくとも1つからなるタンパク質を意味する。すなわち、用語「SpAタンパク質」は、プロテインA、プロテインAのAドメイン、プロテインAのBドメイン、プロテインAのCドメイン、プロテインAのDドメイン、プロテインAのEドメイン、および当該A〜Eドメインの2以上の組み合わせを意味する。
用語「SF修飾SpAタンパク質」は、配列番号1(SFNRNEC)によって修飾されたC末端を有するSpAタンパク質を意味する。
用語「SF修飾Dドメイン」は、配列番号1(SFNRNEC)によって修飾されたC末端を有するDドメインからなるタンパク質を意味する。
用語「SF修飾Dドメイン遺伝子」は、プロテインAのDドメインをコードする遺伝子のC末端に、配列番号1(SFNRNEC)をコードする遺伝子が修飾された遺伝子を意味する。
用語「Ndel・XhoI・SF修飾Dドメイン遺伝子」は、制限酵素サイトNdel及びXhoIがそれぞれN末端およびC末端に修飾されたSF修飾Dドメイン遺伝子を意味する。
用語「C修飾ドメイン」は、システインによって修飾されたC末端を有するDドメインからなるタンパク質を意味する。
用語「SF修飾SpA」は、配列番号1(SFNRNEC)によって修飾されたC末端を有するプロテインAからなるタンパク質を意味する。
用語「C修飾SpA」は、システインによって修飾されたC末端を有するプロテインAからなるタンパク質を意味する。
【0018】
(工程(A))
工程(A)では、金(Au)またはカルボキシル基を具備する表面を有する基板が準備される。
金を具備する表面を有する基板は、表面に金を具備する基板だけでなく、SpAタンパク質が固定される部分にのみ金を具備する基板も含む。具体的には、当該基板は、金からなる薄膜または金からなる微細な粒子をその表面に具備する。
【0019】
カルボキシル基を具備する基板は、金の場合と同様、カルボキシル基を具備する薄膜が表面に形成された基板だけでなく、SpAタンパク質が固定される部分にのみカルボキシル基を具備する基板も含む。具体的には、当該基板は、カルボキシル基を具備する薄膜をその表面に有する。
【0020】
(工程(B))
工程(B)では、SF修飾SpAタンパク質が、基板の表面に供給される。
基板が金を表面に具備する場合、以下の化学式(II)に示すように、SF修飾SpAタンパク質は基板の表面に固定される。
【0021】
【化2】
【0022】
基板がカルボキシル基を具備する場合、以下の化学式(III)に示すように、チオールカップリングによりSF修飾SpAタンパク質は基板の表面に固定される。
【0023】
【化3】
(式中、nは自然数を示す。)
【0024】
図1は、チオールカップリング方法を示す。カルボキシル基を具備する表面に、EDC/NHSの混合液が供給される。EDCは、N−エチルN’−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩またはその等価物である。その等価物としては、フッ化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、臭化水素酸塩等のハロゲン酸塩が例示される。NHSは、N−ヒドロキシサクシンイミドの略名である。
次に、PDEAが供給される。PDEAは、2−(2−pyridinyldithio) ethaneamine hydrochlorideの略名である。最後に、メルカプト基(−SH)を有するリガンドが供給される。
本発明においては、リガンドとしてSF修飾SpAタンパク質が供給される。
【0025】
PDEAに代えて、下記式(IV)であらわされる化合物を使用することもできる。
【0026】
【化4】
(式中、mは自然数を示し、Xはハロゲン原子を示す。)
【0027】
好ましくは、自然数mは2〜20の範囲から選択される。
【0028】
固定されたSF修飾SpAタンパク質は高い配向性を有するため、SF修飾SpAタンパク質は基板の表面上で高い密度を有する。
【0029】
(実施例1)
(遺伝子配列(ベクター)の作製)
(SF修飾Dドメイン遺伝子の形成を確認するためのベクターおよびSF修飾Dドメイン遺伝子を発現するためのベクターの調製)
図2および図3は、それぞれ、SF修飾Dドメイン遺伝子の形成を確認するためのクローニングベクター201および大腸菌を用いてSF修飾Dドメイン遺伝子を発現するためのベクター301を示す。
【0030】
いずれのベクター201、301も環状である。クローニングベクター201およびベクター301は、いずれも、SF修飾Dドメイン遺伝子が導入され得るマルチクローニングサイト(以下、「MCS」)を有する。
【0031】
MCSは制限酵素サイトを有する。制限酵素を用いて、SF修飾Dドメイン遺伝子がMCSに導入され得る。クローニングベクター201およびベクター301の例は、それぞれ、pBluescript II SK(+) (stratagene)およびpET15b(Novagen Inc.)である。pBuescript IIは、MCSに導入されたSF修飾Dドメイン遺伝子の確認および増殖のために用いられる。pET15bは、SF修飾Dドメインを産生するために用いられる。
【0032】
具体的な手順は以下の通りである。
【0033】
(アミノ酸配列SFNRNECを有するSpAのDドメイン遺伝子の設計および作製)
SF修飾Dドメインとして、黄色ブドウ球菌(Staphyloccocus aureus)由来のProtein AのDドメインが用いられた。
【0034】
Dドメインをコードする遺伝子のC末端に、配列番号1(SFNRNEC)をコードする遺伝子配列が図4(A)に示すように付加された。
Dドメインをコードする遺伝子配列は、以下の通りである。
【0035】
gctgatgcgcaacaaaataacttcaacaaagatcaacaaagcgccttctatgaaatcttgaacatgcctaacttaaacgaagcgcaacgtaacggcttcattcaaagtcttaaagacgacccaagccaaagcactaacgttttaggtgaagctaaaaaattaaacgaatctcaagcaccgaaa(以下、配列番号2)
【0036】
配列番号1(SFNRNEC)をコードする遺伝子配列は、
agcttcaaccgtaacgaatgc(以下、配列番号3)であった。
【0037】
図4(A)に示されるように、制限酵素サイトNdelをコードする遺伝子がN末端に修飾されたプライマーP1(配列番号4)および配列番号2−停止コドン−制限酵素サイトXhoIをコードするプライマーP2(配列番号5)を用いてPCRが行なわれ、制限酵素サイトNdelおよびXhoIがそれぞれN末端およびC末端に修飾されたNdel・XhoI・SF修飾Dドメイン遺伝子を得た。以下の表1はPCRにおける温度および時間のプロファイルを示す。
【0038】
【表1】
【0039】
PCRの後、増幅されたクローニングベクター201を含有する溶液が2.0%アガロースゲルによる電気泳動に供された。
【0040】
図5は電気泳動の結果の写真である。図5に示されるように、約400bpを指し示すAにバンドが見出された。これは、Ndel・XhoI・SF修飾Dドメイン遺伝子が増幅されたことを示す。
【0041】
(E.coliへの形質転換および遺伝子配列の確認)
図5に示されるバンドを、WizardSV kit(Promega製)を用いて切り出した。
【0042】
当該バンドに含有されるNdel・XhoI・SF修飾Dドメイン遺伝子の末端が、T4 Polynucleotide Kinase(TOYOBO(株)社製)を用いて、37℃にて2時間かけてリン酸化された。
【0043】
リン酸化されたNdel・XhoI・SF修飾Dドメイン遺伝子は、クローニングベクター201が有する制限酵素サイトEcoRV(MCS)にライゲーションされ、Ndel・XhoI・SF修飾Dドメイン遺伝子をpBluescriptII SK(+)のMCSに導入した。当該クローニングベクター201は、EcoRVで消化後に脱リン酸化されたpBluescriptII SK(+)であった。
当該ライゲーションは、Ligation High(TOYOBO CO., LTD.)を用いて、16℃にて30分かけて行われた。
【0044】
得られたクローニングベクター201を、大腸菌DH10B株を用いたエレクトロポレーション法(品名:Micro Pulser、BioRad社製、プログラム:Eco1)によって形質転換した。当該エレクトロポレーション法では、およそ0.2μgのクローニングベクター201および大腸菌DH10B株42μLが混合され、1mmGapのキュベットが用いられた。
【0045】
LBプレート培地(100ug/mLアンピシリン)上にて大腸菌コロニーが育成された。ブルーホワイトセレクションが実施された。コロニーPCRにより確認することによって、pBluescriptII SK(+)が形質導入されたコロニーのみが抽出された。
【0046】
図6および図7は、それぞれ、コロニーPCRの温度および時間のプロファイルおよび電気泳動の結果を示す。図7に示されるように、約400bpを示す「A」にバンドが見出された。これは、Ndel・XhoI・SF修飾Dドメイン遺伝子が形質導入されたクローニングベクター201が増幅されていることを意味する。
【0047】
形質導入されたコロニーがピペットの先端部分を用いて回収された。当該形質導入されたコロニーは、およそ5〜10mLのLB培地(100ug/mLアンピシリン)中に添加された。その後、揺動(37℃、230rpm)しながら、一晩かけて大腸菌が増殖された。増殖した大腸菌を遠心分離により回収した。回収された大腸菌はminiprep(QIAGEN(株)社製)によって精製され、Ndel・XhoI・SF修飾Dドメイン遺伝子を具備するプラスミドベクター201を得た。さらに、得られたプラスミドベクター201のシークエンスが読まれ、導入した遺伝子配列を確認した。
【0048】
(タンパク質の産生)
(タンパク質発現用E.coliへの形質転換)
得られたプラスミドベクター201から、SF修飾Dドメイン遺伝子を切り出し、そしてベクター301のMCSに導入した。
【0049】
具体的には、制限酵素であるNdeI(Takara Bio Inc.製)およびXhoI(Takara Bio Inc.製)を用い、得られたプラスミドベクター201はH buffer(Takara Bio Inc.)中にて37度2時間インキュベーションされて、SF修飾Dドメイン遺伝子を切り出した。10μgのプラスミドベクター201に対して2μLの制限酵素を用いた。
【0050】
次に、SF修飾Dドメイン遺伝子が大腸菌BL21(DE3)pLysS株からなるベクター301に形質導入され、大腸菌コロニーを得た。クローニングベクター201の形質導入と実質的に同一の形質導入が行われた。
【0051】
具体的にはまず、およそ0.2μgのSF修飾Dドメイン遺伝子および42μLのベクター301が混合された。次いで2mmGapのキュベットを用いて、エレクトロポレーション法(品名:Micro Pulser、BioRad社製、プログラム:Eco1)を使用して形質導入が行われた。このようにして、SF修飾Dドメイン遺伝子を具備するベクター301が得られた。
【0052】
次に、得られたベクター301をLBプレート培地(100ug/mLアンピシリン、25ug/mLクロランフェニコール)に添加し、当該LBプレート培地上にて大腸菌コロニーを育成した。
【0053】
得られた大腸菌コロニーが50mlの2YT培地(アンピシリン100ug/ml、クロランフェニコール25ug/ml)に添加された。その後、37oCで揺動しながら、一晩かけて大腸菌BL21(DE3)pLysS株が増幅された。
【0054】
増幅した大腸菌BL21(DE3)pLysS株(5ml)が500mlの2YT培地(アンピシリン100ug/ml)に添加された。その後、大腸菌BL21(DE3)pLysS株は37oCで1.5時間かけて振動しながら培養された。最後に、最終濃度が1mMになるようにIPTG(Isopropylβ-D-1−thiogalactopyranoside)を加え、さらに6時間かけて大腸菌BL21(DE3)pLysS株が十分に増幅された。
【0055】
(SF修飾Dドメインの精製および確認)
遠心分離法により、増幅したBL21(DE3)pLysS株が回収された。回収したBL21(DE3)pLysS株が、最終濃度5mMイミダゾールを含むPBS(pH7.4)(40ml)にもう一度懸濁された。次いでソニケーションにより菌体が超音波破砕に供された。
【0056】
遠心分離法により不溶分画を除き、さらに0.22μmのフィルターに残液が通された。0.5mlのベッドボリュームのNiビーズ(GE healthcare)を充填したカラムに残液が2回通された後、ソニケーションバッファーで5回洗浄された。最終濃度300mMイミダゾールを含有するPBS(pH7.4)を用いて、各1mlの4分画が溶出された。O.D.280の吸光度からタンパク質溶出分画が同定された。
【0057】
O.D.280の吸光度、タンパク質の分子量、及びTrp/Tyrの個数から算出したモル分子吸光係数から、10mgのSF修飾Dドメインが得られたことが確認された。当該SF修飾DドメインのN末端は、ヒスチジン六量体(以下、「6×His」と称する。)を具備していた。
【0058】
さらにタンパク質の精製度合いを検証するために、16%アクリルアミドゲルを用いたSDS−PAGEを行った。図8の参照番号803が示すように、タンパク質は高純度に精製された。
【0059】
図8において、参照番号801は、それぞれが異なる分子量を有する複数のマーカーが形成するバンドを指し示す。参照番号803は、SF修飾Dドメインのバンドを指し示す。参照番号802は、SF修飾に代えて、図10に示されるように、1分子のシステインがC末端に修飾されたこと以外は上記と同様のプロセスに従って得られたDドメイン(以下、「C修飾Dドメイン」のバンドを指し示す。
【0060】
図8から理解されるように、バンド802とバンド803との間には差がある。バンド803は、SF修飾Dドメインが得られたことを意味する。
【0061】
このようにして、図9に示すような、6xHisによって修飾されたN末端およびアミノ酸配列SFNRNECによって修飾されたC末端を具備するSF修飾Dドメイン901が得られた。以下、説明を簡略化するため、必要とされない限り、用語「6×His」は割愛される。従って、用語「SF修飾Dドメイン」は、図9に示されるSF修飾Dドメイン901を意味する。同様に用語「C修飾Dドメイン」は、図10に示されるC修飾ドメイン902を意味する。
【0062】
(配列番号1によるジスルフィド結合形成の抑制効果の確認)
図11(a)は、還元状態および非還元状態のC修飾Dドメインの分子量がSDS−PAGEを使用して測定された電気泳動写真を示す。
図11(b)は、還元状態および非還元状態のSF修飾Dドメインの分子量がSDS−PAGEを使用して測定された電気泳動写真を示す。
【0063】
還元状態とは、ジスルフィド結合の還元が促進され、メルカプト基となる状態である。すなわち、還元状態では、二量化が抑制される。
非還元状態とは、メルカプト基の酸化が抑制されていない状態である。すなわち、非還元状態では、二量化が促進される。
【0064】
還元状態および非還元状態は以下のプロセスにより得られた。
【0065】
5μgのSF修飾DドメインがPBSバッファー(pH:7.4)に添加され、非還元状態の溶液を得た。
【0066】
次に、還元状態を得た方法が以下に記述される。まず、最終濃度が5mMになるようにジチオスレイトール(以下、「DTT」)が当該溶液に添加された。その後、溶液は4℃で一晩かけてゆっくり攪拌された。さらに、PD−10(GE healthcare社製)を用いて、PBSバッファを1mMでEDTAを含むPBSに置換し、還元状態を得た。EDTAは、ethylenediaminetetraacetic acidの略名であり、メタロプロテアーゼの活性を阻害する。C修飾Dドメインにも、上記と同様のプロセスが用いられる。
【0067】
図11(a)において、参照番号112は、還元状態におけるC修飾Dドメインのバンドを指し示す。参照番号113は非還元状態におけるC修飾Dドメインのバンドを指し示す。参照番号1101は異なる分子量を有する複数のマーカーによって形成されたバンドを指し示す。
図11(a)から理解されるように、非還元状態では、2つのシステインの間にジスルフィド結合が形成され、2つのC修飾Dドメインが結合する。これは、いうまでもなく、ダイマー化が引き起こされたことを意味する。
【0068】
図11(b)において、参照番号114は還元状態におけるSF修飾Dドメインのバンドを指し示す。参照番号115は非還元状態におけるSF修飾Dドメインのバンドを指し示す。
【0069】
図11(b)の中の非還元状態列には、バンド115(i)及びバンド115(ii)が確認される。バンド115(i)は、SF修飾Dドメインを指し示す。このSF修飾Dドメインにおいて、システインが有する硫黄原子は互いにジスルフィド結合を形成していない。バンド115(ii)は二量化したSF−修飾Dドメインを指し示す。バンド115(i)はバンド115(ii)よりも非常に強い。
【0070】
図11(b)から理解されるように、非還元状態であっても、ジスルフィド結合によって結合した2つのDドメインのダイマーの量よりも、ジスルフィド結合を形成していない単量体のDドメインの量の方が多い。これは、配列番号1によって表されるアミノ酸配列がジスルフィド結合によるダイマー化を抑制することを意味する。
【0071】
(Dドメインを基板の表面に固定する方法)
Dドメインを基板の表面に固定する方法では、センサーチップCM5(GE Healthcare社製)が用いられた。センサーチップ5は、高密度のカルボキシル基が付加されたデキストランを固定された表面を有する金基板であった。当該センサーチップ5に固定されたDドメインの量が、BiaCORE2000(GE Healthcare社製)を用いて測定された。
【0072】
(比較例1:アミンカップリング法)
まず、0.05M N−ヒドロキシサクシンイミド(以下、「NHS」)および0.2M N−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(以下、「EDS」)を含有する混合液を調製した。当該混合液はセンサーチップCM5(GE Healthcare)の表面に2分間かけて5μL/minの流速で添加された。このようにして、カルボキシル基をNHSエステルに置換した。
【0073】
さらに、pH4.5の条件下でC修飾Dドメインが添加された。NHSエステルはDドメインに含有されるリジン残基が有する−NH2基(ε‐アミノ基)に置換され、Dドメインがアミド結合により固定された。本手順は、BiaCORE2000(GE Healthcare社製)により固定量がモニタリングされながら、目的の固定量が得られるまで行なわれた。
【0074】
最後に、エタノールアミンが流速5μL/分で、4分間添加された。このようにして、未反応のカルボキシル基が不活性化された。
【0075】
図12はセンサーチップCM5に固定されたC修飾Dドメインの様子を模式的に示す。
【0076】
図14の点線は、基板上に固定されたC修飾Dドメインに880RU(およそ880nm/mm2)の抗体マウスIgG1(200nm)が結合した後に、BiaCORE2000(GE Healthcare)によって測定されたC修飾Dドメインの固定量の測定結果を示す。
【0077】
図15の点線は、基板上に固定されたC修飾Dドメインに880RU(およそ880nm/mm2)の抗体マウスIgG2a(200nm)を結合させた後に、BiaCORE2000(GE Healthcare)によって測定されたC修飾Dドメインの固定量の測定結果を示す。
【0078】
(実施例1:チオールカップリング法)
比較例1と同様に、0.05M NHSおよび0.2M EDCを含有する混合液がセンサーチップCM5の表面に添加された。このようにして、カルボキシル基がNHSエステルに置換された。
【0079】
次に、図1に示されるように、pH8.5 80mM PDEA(2−(2−pyridinyldithio) ethaneamine hydrochloride)が流速5μL/分で、4分間添加された。このようにして、NHSエステルをジスルフィドに置換した。
【0080】
さらに、pH4.5の条件下においてSF修飾Dドメインが添加された。このようにして、以下の化学式(III)によって表されるように、基板の表面にSF修飾Dドメインが固定された。
【0081】
【化3】
【0082】
本手順は、比較例1と同様、BiaCORE2000(GE Healthcare)を使用して固定される量をモニタリングしながら、目的の固定量が得られるまで行なわれた。
【0083】
最後に、pH4.3 50mMシスタミン/1M NaClを、流速5μL/分で4分間添加した。これにより、未反応のカルボキシル基を不活性化した。
【0084】
図13はセンサーチップCM5上に固定されたSF修飾Dドメインの様子を模式的に示す。
【0085】
図14の実線は、基板上に固定されたSF修飾Dドメインに960RU(およそ960nm/mm2)の抗体マウスIgG1(200nm)を結合させた後に、BiaCORE2000(GE Healthcare)を使用して測定されたSF修飾Dドメインの固定量の測定結果を示す。
【0086】
図15の実線は、基板上に固定されたSF修飾Dドメインに960RU(およそ960nm/mm2)の抗体マウスIgG2a(200nm)を結合させた後に、BiaCORE2000(GE Healthcare)を使用して測定されたSF修飾Dドメインの固定量の測定結果を示す。
【0087】
図14および図15のいずれもが、アミンカップリング法によって固定されたDドメインの量(点線)よりも、チオールカップリング法を使用して固定されたDドメインの量(実線)の方が多いことを示している。これは、図12および図13に示されるように、アミンカップリング法を使用するとDドメインは均一に配向しない一方で、SF修飾Dドメインはチオールカップリング法を使用することにより均一に配向するためと考えられる。
【0088】
(実施例2)
実施例2では、図16に示されるように、全てのA〜Eドメインを有するプロテインAのC末端に配列番号1のアミノ酸配列が修飾された。当該プロテインAのN末端は、6×Hisによって修飾された。
【0089】
Dドメインをコードする遺伝子(配列番号2)に代えて、全てのA〜Eドメインを有するプロテインAをコードする以下の遺伝子(配列番号6)が用いられたこと以外は、実施例1および比較例1と同様の実験を行った。
【0090】
ATGCTGACTTTACAAATACATACAGGGGGTATTAATTTGAAAAAGAAAAACATTTATTCAATTCGTAAACTAGGTGTAGGTATTGCATCTGTAACTTTAGGTACATTACTTATATCTGGTGGCGTAACACCTGCTGCAAATGCTGCGCAACACGATGAAGCTCAACAAAATGCTTTTTATCAAGTCTTAAATATGCCTAACTTAAATGCTGATCAACGCAATGGTTTTATCCAAAGCCTTAAAGATGATCCAAGCCAAAGTGCTAACGTTTTAGGTGAAGCTCAAAAACTTAATGACTCTCAAGCTCCAAAAGCTGATGCGCAACAAAATAACTTCAACAAAGATCAACAAAGCGCCTTCTATGAAATCTTGAACATGCCTAACTTAAACGAAGCGCAACGTAACGGCTTCATTCAAAGTCTTAAAGACGACCCAAGCCAAAGCACTAACGTTTTAGGTGAAGCTAAAAAATTAAACGAATCTCAAGCACCGAAAGCTGATAACAATTTCAACAAAGAACAACAAAATGCTTTCTATGAAATCTTGAATATGCCTAACTTAAACGAAGAACAACGCAATGGTTTCATCCAAAGCTTAAAAGATGACCCAAGCCAAAGTGCTAACCTATTGTCAGAAGCTAAAAAGTTAAATGAATCTCAAGCACCGAAAGCGGATAACAAATTCAACAAAGAACAACAAAATGCTTTCTATGAAATCTTACATTTACCTAACTTAAACGAAGAACAACGCAATGGTTTCATCCAAAGCCTAAAAGATGACCCAAGCCAAAGCGCTAACCTTTTAGCAGAAGCTAAAAAGCTAAATGATGCTCAAGCACCAAAAGCTGACAACAAATTCAACAAAGAACAACAAAATGCTTTCTATGAAATTTTACATTTACCTAACTTAACTGAAGAACAACGTAACGGCTTCATCCAAAGCCTTAAAGACGATCCTTCAGTGAGCAAAGAAATTTTAGCAGAAGCTAAAAAGCTAAACGATGCTCAAGCACCAAAAGAGGAAGACAATAACAAGCCTGGCAAAGAAGACAATAACAAGCCTGGCAAAGAAGACAACAACAAGCCTGGTAAAGAAGACAACAACAAGCCTGGTAAAGAAGACAACAACAAGCCTGGCAAAGAAGACAATAACAAGCCTGGTAAAGAAGACAACAAAAAACCTGGTAAAGAAGATGGCAACAAGCCTGGTAAAGAAGACAACAAAAAACCTGGTAAAGAAGACGGCAACAAGCCTGGCAAAGAAGATGGCAACAAACCTGGTAAAGAAGATGGTAACGGAGTACATGTCGTTAAACCTGGTGATACAGTAAATGACATTGCAAAAGCAAACGGCACTACTGCTGACAAAATTGCTGCAGATAACAAATTAGCTGATAAAAACATGATCAAACCTGGTCAAGAACTTGTTGTTGATAAGAAGCAACCAGCAAACCATGCAGATGCTAACAAAGCTCAAGCATTACCAGAAACTGGTGAAGAAAATCCATTCATCGGTACAACTGTATTTGGTGGATTATCATTAGCCTTAGGTGCAGCGTTATTAGCTGGACGTCGTCGCGAACTATAA
【0091】
図17の点線は、基板上に固定されたC修飾SpAに880RU(およそ880nm/mm2)の抗体マウスIgG1(200nm)を結合させた後に、BiaCORE2000(GE Healthcare)を使用して測定されたC修飾SpAの固定量の測定結果を示す。
【0092】
図18の点線は、基板上に固定されたC修飾SpAに880RU(およそ880nm/mm2)の抗体マウスIgG2a(200nm)を結合させた後に、BiaCORE2000(GE Healthcare)によって測定されたC修飾SpAの固定量の測定結果を示す。
【0093】
図17の実線は、基板上に固定されたSF修飾SpAに960RU(およそ960nm/mm2)の抗体マウスIgG1(200nm)を結合させた後に、BiaCORE2000(GE Healthcare)を使用して測定されたSF修飾SpAの固定量の測定結果を示す。
【0094】
図18の実線は、基板上に固定されたSF修飾SpAに960RU(およそ960nm/mm2)の抗体マウスIgG2a(200nm)を結合させた後に、BiaCORE2000(GE Healthcare)によって測定されたSF修飾SpAの固定量の測定結果を示す。
【0095】
図17および図18のいずれもが、アミンカップリング法によって固定されたSpAの量(点線)よりも、チオールカップリング法を使用して固定されたSpAの量(実線)の方が多いことを示している。これは、実施例1と同様、アミンカップリング法を使用するとDドメインSpAは均一に配向しない一方で、SF修飾SpAはチオールカップリング法を使用することにより均一に配向するためと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明は当該タンパク質を表面に有するセンサを製造するために用いられ得る。
【符号の説明】
【0097】
201:SF修飾Dドメイン遺伝子の形成を確認するためのクローニングベクター
301:大腸菌を用いてSF修飾Dドメイン遺伝子を発現するためのベクター
801:異なる分子量を有する複数のマーカーが形成するバンド
802:C修飾Dドメインのバンド
803:SF修飾Dドメインのバンド
112:還元状態におけるC修飾Dドメインのバンド
113:非還元状態におけるC修飾Dドメインのバンド
1101:異なる分子量を有する複数のマーカーが形成するバンド
114:還元状態におけるSF修飾Dドメインのバンド
115:非還元状態におけるSF修飾Dドメインのバンド
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質を基板の表面に結合させる方法であって、以下の工程A〜Bを備する方法:
金またはカルボキシル基を具備する表面を有する基板を準備する工程A、および
前記タンパク質を前記表面上に供給する工程B
ここで、前記タンパク質は、プロテインA、または前記プロテインAのA〜Eドメインの少なくとも1つのドメインからなり、かつ
前記タンパク質は、配列番号1(SFNRNEC)によって表されるアミノ酸配列により修飾されたC末端を具備する。
【請求項2】
前記表面は金を具備する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記表面はカルボキシル基を具備し、
以下の化学式(III)により前記表面に前記タンパク質が結合している、請求項1に記載の方法。
【化3】
(式中、nは自然数を示す。)
【請求項4】
前記工程Aと前記工程Bとの間に、下記工程(C)〜(D)をこの順でさらに具備する、請求項1に記載の方法。
1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩またはその等価物およびN−ヒドロキシサクシンイミドを含有する溶液を前記表面上に供給する工程(C)、および
下記式(IV)で表わされる化合物を前記表面上に供給する工程(D)、
【化4】
(式中、mは自然数を示し、Xはハロゲン原子を示す。)
【請求項5】
式(IV)中のmが2以上20以下の自然数である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
式(IV)中のmが2である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記タンパク質がプロテインAのA〜Eドメインの少なくとも1つのドメインからなる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記タンパク質がプロテインAのDドメインからなる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記タンパク質がプロテインAからなる、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
タンパク質が固定された表面を有する基板であって、
前記基板は、金またはアミド結合を具備し、
前記タンパク質は、プロテインA、または前記プロテインAのA〜Eドメインの少なくとも1つのドメインからなり、かつ
前記タンパク質は、配列番号1(SFNRNEC)によって表されるアミノ酸配列により修飾されたC末端を具備する、基板。
【請求項11】
前記タンパク質は、以下の化学式(II)または化学式(III)により基板に固定されている、請求項10に記載の基板。
【化2】
【化3】
(式中、nは自然数を示す。)
【請求項12】
前記タンパク質は、前記化学式(II)により基板に固定されている、請求項11に記載の基板。
【請求項13】
前記タンパク質は、前記化学式(III)により基板に固定されている、請求項11に記載の基板。
【請求項14】
前記タンパク質がプロテインAのA〜Eドメインの少なくとも1つのドメインからなる、請求項10に記載の基板。
【請求項15】
前記タンパク質がプロテインAのDドメインからなる、請求項14に記載の基板。
【請求項16】
前記タンパク質がプロテインAからなる、請求項14に記載の基板。
【請求項17】
タンパク質を含有する水溶液であって、
前記タンパク質は、プロテインA、または前記プロテインAのA〜Eドメインの少なくとも1つのドメインからなり、
前記タンパク質は、配列番号1(SFNRNEC)によって表されるアミノ酸配列により修飾されたC末端を具備する、水溶液。
【請求項18】
タンパク質であって、
前記タンパク質は、プロテインA、または前記プロテインAのA〜Eドメインの少なくとも1つのドメインからなり、
前記タンパク質は、配列番号1(SFNRNEC)によって表されるアミノ酸配列により修飾されたC末端を具備する、タンパク質。
【請求項1】
タンパク質を基板の表面に結合させる方法であって、以下の工程A〜Bを備する方法:
金またはカルボキシル基を具備する表面を有する基板を準備する工程A、および
前記タンパク質を前記表面上に供給する工程B
ここで、前記タンパク質は、プロテインA、または前記プロテインAのA〜Eドメインの少なくとも1つのドメインからなり、かつ
前記タンパク質は、配列番号1(SFNRNEC)によって表されるアミノ酸配列により修飾されたC末端を具備する。
【請求項2】
前記表面は金を具備する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記表面はカルボキシル基を具備し、
以下の化学式(III)により前記表面に前記タンパク質が結合している、請求項1に記載の方法。
【化3】
(式中、nは自然数を示す。)
【請求項4】
前記工程Aと前記工程Bとの間に、下記工程(C)〜(D)をこの順でさらに具備する、請求項1に記載の方法。
1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩またはその等価物およびN−ヒドロキシサクシンイミドを含有する溶液を前記表面上に供給する工程(C)、および
下記式(IV)で表わされる化合物を前記表面上に供給する工程(D)、
【化4】
(式中、mは自然数を示し、Xはハロゲン原子を示す。)
【請求項5】
式(IV)中のmが2以上20以下の自然数である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
式(IV)中のmが2である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記タンパク質がプロテインAのA〜Eドメインの少なくとも1つのドメインからなる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記タンパク質がプロテインAのDドメインからなる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記タンパク質がプロテインAからなる、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
タンパク質が固定された表面を有する基板であって、
前記基板は、金またはアミド結合を具備し、
前記タンパク質は、プロテインA、または前記プロテインAのA〜Eドメインの少なくとも1つのドメインからなり、かつ
前記タンパク質は、配列番号1(SFNRNEC)によって表されるアミノ酸配列により修飾されたC末端を具備する、基板。
【請求項11】
前記タンパク質は、以下の化学式(II)または化学式(III)により基板に固定されている、請求項10に記載の基板。
【化2】
【化3】
(式中、nは自然数を示す。)
【請求項12】
前記タンパク質は、前記化学式(II)により基板に固定されている、請求項11に記載の基板。
【請求項13】
前記タンパク質は、前記化学式(III)により基板に固定されている、請求項11に記載の基板。
【請求項14】
前記タンパク質がプロテインAのA〜Eドメインの少なくとも1つのドメインからなる、請求項10に記載の基板。
【請求項15】
前記タンパク質がプロテインAのDドメインからなる、請求項14に記載の基板。
【請求項16】
前記タンパク質がプロテインAからなる、請求項14に記載の基板。
【請求項17】
タンパク質を含有する水溶液であって、
前記タンパク質は、プロテインA、または前記プロテインAのA〜Eドメインの少なくとも1つのドメインからなり、
前記タンパク質は、配列番号1(SFNRNEC)によって表されるアミノ酸配列により修飾されたC末端を具備する、水溶液。
【請求項18】
タンパク質であって、
前記タンパク質は、プロテインA、または前記プロテインAのA〜Eドメインの少なくとも1つのドメインからなり、
前記タンパク質は、配列番号1(SFNRNEC)によって表されるアミノ酸配列により修飾されたC末端を具備する、タンパク質。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公表番号】特表2012−513951(P2012−513951A)
【公表日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−506519(P2011−506519)
【出願日】平成22年12月7日(2010.12.7)
【国際出願番号】PCT/JP2010/007116
【国際公開番号】WO2011/114405
【国際公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月7日(2010.12.7)
【国際出願番号】PCT/JP2010/007116
【国際公開番号】WO2011/114405
【国際公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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