説明

プロテクタ付き医療用針

【課題】プロテクタ内に収納された針本体のプロテクタからの再突出を確実に防止できるプロテクタ付き医療用針を提供する。
【解決手段】プロテクタ付き医療用針は、針管2と、可撓性チューブ5を接続する接続管部31が設けられたハブ3とから成る針本体1と、針本体1を収納可能なプロテクタ4と、針本体1を後方に付勢するばね部材6と、針本体1を使用位置に係止する係止手段42とを備える。係止手段42による係止を解除すると、針本体1がばね部材6の付勢力により後方に移動し、針管2の前端がプロテクタ4内に没入されると共に、接続管部31がプロテクタ4の後端から突出する。接続管部31は、後端部に小径部33を備えると共に、小径部33が前端部に接続する部分に段差部34を備え、小径部33に可撓性チューブの前端部を外嵌接続した状態で、小径部33を接続管部31の前端部に対して折り曲げることにより段差部34で分離自在とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、針使用後の誤穿刺を防止できるようにしたプロテクタ付き医療用針に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、前端が鋭利な針管と、針管の後端部を支持し、後端に可撓性チューブを接続する接続管部が設けられたハブとから成る針本体と、針本体を収納可能な筒状のプロテクタと、プロテクタに内蔵され、針本体をプロテクタに対し後方に付勢するばね部材と、針本体を針管がプロテクタの先端から突出する使用位置にばね部材の付勢力に抗して係止自在な係止手段とを備えるプロテクタ付き医療用針が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
ここで、前記従来技術の係止手段は、ハブの前部外周に回動自在に装着したレバーと、プロテクタの周壁部の前後方向に延在するレバー用のガイド溝の前端部に周方向に屈曲させて形成した係止溝部とで構成されている。前記係止手段は、レバーを係止溝部に係合させることにより、針本体を使用位置に係止できるようになっている。
【0004】
前記従来のプロテクタ付き医療用針では、針使用後に係止手段による係止を解除すると、針本体がばね部材の付勢力により後方に移動して、針管の前端がプロテクタ内に没入されるので、医療従事者や廃棄作業者の誤穿刺を防止することができる。また、前記従来のプロテクタ付き医療用針では、ガイド溝部の後端部にも周方向に屈曲する第2の係止溝部を形成し、レバーを第2の係止溝部に係合させることにより、針本体を針管の前端がプロテクタ内に没入する没入位置に係止できるようになっている。この結果、前記従来のプロテクタ付き医療用針によれば、一旦プロテクタ内に収納された針本体が再度プロテクタから突出することを防止することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2005−530540号公報(図1〜図5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来のプロテクタ付き医療用針では、針本体が一旦プロテクタ内に収納された後、可撓性チューブに針本体を前方に押圧する力が加わると、針本体が再度プロテクタから突出する虞があるという不都合がある。
【0007】
本発明は、かかる不都合を解消して、一旦プロテクタ内に収納された針本体が再度プロテクタから突出することを確実に防止することができるプロテクタ付き医療用針を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するために、本発明は、前端が鋭利な針管と、針管の後端部を支持し、後端に可撓性チューブを接続する接続管部が設けられたハブとから成る針本体と、針本体を収納可能な筒状のプロテクタと、プロテクタに内蔵され、針本体をプロテクタに対し後方に付勢するばね部材と、針本体を針管がプロテクタの前端から突出する使用位置にばね部材の付勢力に抗して係止自在な係止手段とを備え、係止手段による係止を解除することにより針本体がばね部材の付勢力により後方に移動して、針管の前端がプロテクタ内に没入されると共に、接続管部がプロテクタの後端から突出するようにされているプロテクタ付き医療用針において、接続管部は、後端部に前端部より小径の小径部を備えると共に、小径部が前端部に接続する部分に段差部を備え、小径部に可撓性チューブの前端部を外嵌接続した状態で、小径部を接続管部の前端部に対して折り曲げることにより段差部で分離自在とすることを特徴とする。
【0009】
本発明のプロテクタ付き医療用針は、使用後、前記係止手段による係止を解除し、前記ばね部材の付勢力により、前記針管の前端をプロテクタ内に没入させると共に、前記接続管部をプロテクタの後端から突出させる。この状態では、前記針本体は、針管の前端がプロテクタ内に没入した状態に維持される。そこで、次に、小径部を接続管部の前端部に対して折り曲げると、接続管部が段差部に沿って破断され、可撓性チューブと接続管部とが分離される。
【0010】
また、本発明のプロテクタ付き医療用針において、前記接続管部は、可撓性チューブの前端部を外嵌接続した状態で、接続管部の可撓性チューブの前端部に臨む位置に周状溝部を備え、可撓性チューブの前端部を接続管部に対して折り曲げることにより周状溝部で分離自在とするものであってもよい。この場合、前記可撓性チューブの前端部を前記接続管部に対して折り曲げると、接続管部が前記周状溝部に沿って破断され、可撓性チューブと接続管部とが分離される。
【0011】
前記いずれの態様の本発明のプロテクタ付き医療用針においても、プロテクタは針本体を収納可能とされている。従って、可撓性チューブの分離後、接続管部の残部に押圧力が作用したとしても、針本体はプロテクタ内に押し込まれる以上には前方に押圧されることがなく、一旦プロテクタ内に収納された針本体が再度プロテクタから突出することを確実に防止することができる。
【0012】
さらに、本発明のプロテクタ付き医療用針において、前記段差部または前記周状溝部は、前記針本体が前記使用位置に係止されているときに、前記プロテクタ内部に収容されていることが好ましい。この結果、本発明のプロテクタ付き医療用針では、使用中には段差部または周状溝部がプロテクタにより保護され、誤って破断される虞がない。
【0013】
さらに、前記いずれの態様の本発明のプロテクタ付き医療用針において、前記プロテクタは、後端部に内周面から後端面に向けて次第に縮径するテーパ部が形成されていることが好ましい。前記プロテクタが前記テーパ部を備えることにより、テーパ部の最も小径となった箇所を前記段差部または前記周状溝部に近づけることができるので、接続管部を該段差部または該周状溝部に沿って容易に破断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明におけるプロテクタ付き医療用針の一実施形態を示す斜視図。
【図2】図1に示すプロテクタ付き医療用針の構成を示す説明的断面図。
【図3】図2に示すプロテクタ付き医療用針の要部を拡大して示す説明的断面図。
【図4】プロテクタ付き医療用針の他の実施形態の要部を拡大して示す説明的断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、添付の図面を参照しながら本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。
【0016】
図1及び図2に示すように、本実施形態のプロテクタ付き医療用針は、前端が鋭利な金属製の針管2と、針管2の後端部を支持するハブ3とからなる針本体1と、針本体1を収容可能な筒状のプロテクタ4とを備えている。
【0017】
ハブ3は、ABS等の硬質樹脂で形成されている。ハブ3の後端には接続管部31が一体成形されており、可撓性チューブ5の前端部が外嵌接続されている。また、ハブ3には、接続管部31の前方に位置させて、径方向外方に膨出するフランジ部32が一体成形されている。
【0018】
接続管部31は、後端部に前端部より小径の小径部33を備えると共に、小径部33が前端部に接続する部分に段差部34を備えている。そして、接続管部31は、小径部33に可撓性チューブ5の前端部を外嵌接続した状態で、小径部33を接続管部31の前端部に対して折り曲げることにより段差部34に沿って破断されるようになっている。この結果、接続管部31の前端部と可撓性チューブ5とが分離自在とされている。
【0019】
プロテクタ4は、ハブ3の形成材料より弾力性に富むポリプロピレン等の樹脂で形成されており、プロテクタ4の前部には、外方に張り出す一対の翼片41,41が一体成形されている。また、プロテクタ4には、ハブ3のフランジ部32に前方から当接するコイルスプリングから成り、針本体1を後方に付勢するばね部材6が内蔵されている。
【0020】
プロテクタ4には、さらに、針本体1を針管2がプロテクタ4の前端から突出する使用位置(図1、図2(a)、(b)に示す位置)にばね部材6の付勢力に抗して係止自在な係止手段としてのレバー42が設けられている。レバー42は、プロテクタ4の前端からプロテクタ4の外面に沿って後方に延在している。レバー42の後端には、プロテクタ4の内部空間に挿入される二股状の爪部42aが形成されており、針本体1が使用位置に存する状態で、爪部42aがハブ3のフランジ部32の後面に係合するようになっている。このとき、段差部34はプロテクタ4内に収容されており、破断しないように保護されている。レバー42の前端には、ばね部材6の前端が当接するばね受け部42bが形成されている。
【0021】
また、プロテクタ4の後端部には、図2(a)に示すように後端面から内部に向けて次第に縮径するテーパ部43aが形成されている。また、プロテクタ4の後端部に、図2(b)に示すように内周面から後端面に向けて次第に縮径するテーパ部43bが形成されていてもよい。
【0022】
本実施形態において、プロテクタ付き医療用針は、針本体1とばね部材6との組立体を、ばね部材6の前端がばね受け部42bに当接し、ハブ3のフランジ部32の後面が爪部42aに当接するようにレバー42に組付けた後、レバー42をプロテクタ4に剥離自在に結合することにより組み立てられる。
【0023】
本実施形態のプロテクタ付き医療用針の組立状態では、レバー42により針本体1が使用位置に保持される。前記プロテクタ付き医療用針は、プロテクタ4の前端から突出する針管2を患者に穿刺した後、翼片41を利用して針本体1をプロテクタ4と共に患者の穿刺部に固定し、針管2を留置した状態で、輸液、輸血、採血等の医療行為を行う。このとき、前述のように段差部34はプロテクタ4内に収容されているので、曲げ変形を生じる押圧力を受けることが無く、前記医療行為中に破断する虞がない。
【0024】
針使用後は、図2(c)に示すように、レバー42の後端部を外方に押し上げて、爪部42aをフランジ部32から離脱させることにより、爪部42aとフランジ部32との係合を解除する。このようにすると、ばね部材6の付勢力が発動され、針本体1がプロテクタ4に対し、弾発的に後方に移動し、針管2の前端がプロテクタ4内に没入されると共に、接続管部31がプロテクタ4の後端から突出される。
【0025】
そこで、次に、可撓性チューブ5の前端部を、該前端部が外嵌されている接続管部31の小径部33と共に、接続管部31の前端部に対して折り曲げる。すると、小径部33は接続管部31の前端部に比較して小径であり脆弱であるので、接続管部31は図3(b)に示すように段差部34に沿って破断される。このとき、プロテクタ4の後端部には、前述のように内周面から後端面に向けて次第に縮径するテーパ部43bが形成されているので、テーパ部43bの最も小径となっている部分を支点として応力を集中させることができるため、段差部34に沿って容易に破断することができる。
【0026】
ここで、可撓性チューブ5の前端部は、接着剤を介して接続管部31の小径部33に接着されていてもよい。前記接着剤を用いる場合、接着剤の種類によっては、該接着剤が塗布された小径部33が該接着剤自体または該接着剤の溶剤により劣化し、脆化されている。そして、小径部33は、可撓性チューブ5が外嵌されている部分では可撓性チューブ5に保護されて前記脆化が目立たないが、段差部34に近接し可撓性チューブ5に外嵌されることなく露出している部分では前記脆化が顕著になる。従って、この場合には、可撓性チューブ5の前端部を、該前端部が外嵌されている接続管部31の小径部33と共に、接続管部31の前端部に対して折り曲げることにより、図3(b)に示すように接続管部31を段差部34に沿ってさらに容易に破断することができる。
【0027】
また、他の実施形態として、接続管部31に小径部33を設けることなく、図4に(a)に示すように、接続管部31の可撓性チューブ5の前端部に臨む位置に、周状溝部35を設けるようにしてもよい。周状溝部35は断面視V字状に形成されており、その底部には薄肉部36が形成されている。この場合、レバー42により針本体1が使用位置に保持されているときには、周状溝部35及び薄肉部36はプロテクタ4内に収容されているので、曲げ変形を生じる押圧力を受けることが無く、前記医療行為中に破断する虞がない。
【0028】
針使用後は、図2(c)に示す場合と同一にして爪部42aとフランジ部32との係合を解除する。このようにすると、ばね部材6の付勢力が発動され、針本体1がプロテクタ4に対し、弾発的に後方に移動し、針管2の前端がプロテクタ4内に没入されると共に、接続管部31がプロテクタ4の後端から突出される。
【0029】
そこで、次に、可撓性チューブ5の前端部を、該前端部が外嵌されている接続管部31の後端部と共に、接続管部31の前端部に対して折り曲げる。すると、接続管部31の可撓性チューブ5の前端部に臨む位置には周状溝部35が形成されており、その底部は薄肉部36となっているので、接続管部31は図4(b)に示すように薄肉部36が破れ、周状溝部35に沿って破断される。このとき、プロテクタ4の後端部には、前述のように内周面から後端面に向けて次第に縮径するテーパ部43bが形成されているので、テーパ部43bの最も小径となっている部分により接続管部31が保持され、周状溝部35に沿って容易に破断することができる。
【0030】
前記いずれの実施形態においても、プロテクタ4は針本体1、すなわち針管2と、後端に接続管部31を備えるハブ3とを収容可能とされている。この結果、前記破断後、接続管部31の残部(前端部)に押圧力が作用したとしても、針本体1はプロテクタ4内に押し込まれる以上には前方に押圧されることがない。従って、一旦プロテクタ4内に収納された針本体1が再度プロテクタ4から突出することを確実に防止することができる。
【0031】
また、前記破断後は、針管2が収容されたプロテクタ4と、可撓性チューブ5とを別々に廃棄することができる。ここで、金属部品である針管2を含む部分は医療用廃棄物として耐貫通性を備える専用容器に収容する必要があるが、前述のように可撓性チューブ5を分離して、針管2が収容されたプロテクタ4のみとすることにより、廃棄物としての容積を低減することができる。
【0032】
以上、本発明のプロテクタ付き医療用針の実施形態について図面を参照して説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、前記実施形態では、翼片41を備えるプロテクタ4を用いているが、翼片を備えていないプロテクタを用いることも可能である。また、本実施形態では、プロテクタ4に一体成形したレバー42により係止手段を構成しているが、前記従来技術と同様にハブに回動自在に装着されたレバーと、プロテクタに形成される係止溝部とにより係止手段を構成することも可能である。
【0033】
さらに、前記実施形態では、翼片41を利用して針本体1を患者の穿刺部に固定する留置針について説明しているが、他の形態の留置針であってもよい。他の形態の留置針として、例えば、円盤状のハウジングの底面に外針を備え、該底面で組織上に固定されると共に、内部に内針と該内針に接続される流路とを備え、側面に該流路と可撓性チューブとを接続する接続管部を備えるもの等を挙げることができる。
【0034】
また、本発明は、翼片41を利用して針本体1を患者の穿刺部に固定する留置針に代えて、留置針以外の針に適用することもできる。このような留置針以外の針として、例えば、輸液パック等の薬液が収納される容器のポートに設けられたゴム栓等の栓に穿刺される医療用瓶針等を挙げることができる。前記医療用瓶針は、可撓性チューブの一端が接続されており、瓶針を栓に穿刺することにより容器と可撓性チューブとを接続して、薬液を可撓性チューブに流通させることができる(例えば、特開2007−236438号公報参照)。
【符号の説明】
【0035】
1…針本体、 2…針管、 3…ハブ、 31…接続管部、 33…小径部、 34…段差部、 35…周状溝部、 36…薄肉部、 4…プロテクタ、 42…レバー(係止手段)、 43b…テーパ部、 5…可撓性チューブ、 6…ばね部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前端が鋭利な針管と、針管の後端部を支持し、後端に可撓性チューブを接続する接続管部が設けられたハブとから成る針本体と、針本体を収納可能な筒状のプロテクタと、プロテクタに内蔵され、針本体をプロテクタに対し後方に付勢するばね部材と、針本体を針管がプロテクタの前端から突出する使用位置にばね部材の付勢力に抗して係止自在な係止手段とを備え、係止手段による係止を解除することにより針本体がばね部材の付勢力により後方に移動して、針管の前端がプロテクタ内に没入されると共に、接続管部がプロテクタの後端から突出するようにされているプロテクタ付き医療用針において、
接続管部は、後端部に前端部より小径の小径部を備えると共に、小径部が前端部に接続する部分に段差部を備え、小径部に可撓性チューブの前端部を外嵌接続した状態で、小径部を接続管部の前端部に対して折り曲げることにより段差部で分離自在とすることを特徴とするプロテクタ付き医療用針。
【請求項2】
請求項1記載のプロテクタ付き医療用針において、前記段差部は前記針本体が前記使用位置に係止されているときに、前記プロテクタ内部に収容されていることを特徴とするプロテクタ付き医療用針。
【請求項3】
請求項1記載のプロテクタ付き医療用針において、前記接続管部は、可撓性チューブの前端部を外嵌接続した状態で、接続管部の可撓性チューブの前端部に臨む位置に周状溝部を備え、可撓性チューブの前端部を接続管部に対して折り曲げることにより周状溝部で分離自在とすることを特徴とするプロテクタ付き医療用針。
【請求項4】
請求項3記載のプロテクタ付き医療用針において、前記周状溝部は前記針本体が前記使用位置に係止されているときに、前記プロテクタ内部に収容されていることを特徴とするプロテクタ付き医療用針。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載のプロテクタ付き医療用針において、前記プロテクタは、後端部に内周面から後端面に向けて次第に縮径するテーパ部が形成されていることを特徴とするプロテクタ付き医療用針。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−41689(P2011−41689A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−191968(P2009−191968)
【出願日】平成21年8月21日(2009.8.21)
【出願人】(390029676)株式会社トップ (106)
【Fターム(参考)】