説明

プロトンポンプ阻害剤製剤、並びに当該製剤を製造及び使用する方法関連出願の表示

少なくとも1つのプロトンポンプ阻害剤の初期のpH非依存性の時間に基づく遅延放出及びそれに続く徐放性放出をもたらすように構成及び調整された少なくとも1つのプロトンポンプ阻害剤を含む医薬製剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、「プロトンポンプ阻害剤製剤、並びに当該製剤を製造及び使用する方法」と題するジョン・デヴェイン(Jone Devane)らによる2003年9月3日出願の米国仮特許出願 No.60/499,362の優先権を主張するものであり、その開示の全てをそのまま参照により本明細書の開示に含める。
【0002】
本発明は、プロトンポンプ阻害剤(PPI)、プロトンポンプ阻害剤を含む製剤、特有の溶解プロファイルをもたらすように構成及び調整されたプロトンポンプ阻害剤を含む製剤、及び特に胃酸に関連する病態の治療、とりわけ夜間の胃酸逆流の防止のために設計された製剤に関するものである。本発明の製剤は特に、pH非依存性の時間遅延型の放出性とその後の徐放性を有するプロトンポンプ阻害剤製剤を含む。本発明はまた、プロトンポンプ阻害剤の放出時間をpH非依存的に遅らせ、その後プロトンポンプ阻害剤を徐放させる製剤としてプロトンポンプ阻害剤が投与される方法を含む、胃酸に関連する病態の治療などにおいてプロトンポンプ阻害剤を使用する方法に関する。本発明の製剤は単独あるいは他の製剤と組み合わせて夜間の胃酸逆流を治療するために使用することができる。本発明はまたそのような製剤を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
プロトンポンプ阻害剤は、びらん性及び非びらん性の逆流性疾患、胸やけを伴う又は胸やけを伴わない消化不良及びバレット食道炎を含む、胃潰瘍、胃炎、GERD(胃食道逆流疾患)のような胃酸に関係した病気の治療に通常用いられる。プロトンポンプ阻害剤(PPI)は一般に単独療法として一日一回又は一日二回投与で用いられる。プロトンポンプ阻害剤はまた、とりわけヘリコバクター陽性患者では、H2RA(ヒスタミン2受容体拮抗薬)及び抗生物質と組み合わせて使用される。
【0004】
成功はしているものの、プロトンポンプ阻害剤は全ての患者の治療において完全に有効というわけではなく、特にプロトンポンプ阻害剤を用いた患者のうちかなりの人数(最大約73%)は夜間の胃酸逆流(NAB)を経験している。夜間胃酸逆流は、午後10:00から午前8:00の間の任意の1時間に胃内pHが4未満になるものと定義され、それに対して昼間胃酸逆流(DAB)は、午前8:00から午後10:00の間の任意の1時間に胃内pHが4未満になるものと定義される。例えば、ジーコら(Nzeako et al.)「プロトンポンプ阻害剤治療中の患者における胃酸逆流の臨床的意味の評価」(Aliment. Pharmacol. Ther., 2002年, 16, 1309-1316; この開示の全てを参照により本明細書に含める)を参照のこと。
【0005】
NABのパターンは「概日」パターンと一致している。すなわち、NABは典型的にはだいたい午前1:00に発生し、およそ午前5:00に及ぶ(カッツら(Katz et al.)、Curr. Gastroenterol.、「プロトンポンプ阻害剤の薬理学及び臨床的関連性」、2002、4、459-462及びペギーニら(Peghini et al.)「ラニチジンはオメプラゾールによる夜間の胃酸逆流を調節する:正常被験者での対照試験」(Gastroentero1ogy, 1998, 115, 1335-1339;これらの開示は参照文献として全てここに組み込まれる)。このパターンの正確な原理は明らかではないが、夜間の新しいポンプの出現に伴うプロトンポンプの合成及び加工の見地から概日リズムを反映するものと提唱されている(ハーショウィズら (Hirschowitz et al.)、消化器疾患及び科学、Vol.40、No.2、1995年2月増補版、pp.3S-23S;この開示の全てを参照により本明細書に含める)。
【0006】
NABをコントロールするために投薬するプロトンポンプ阻害剤を改良する努力が文献に開示されているが、ごく限られた成功をしか収めていない。例えば、夜に(夕食時:典型的には午後6:00、或いは就寝時:典型的には午後10:30に)プロトンポンプ阻害剤を投与することでNABの発生が消えたり著しく減少することはなかった(アワーズら (Ours et al.)、「夜間の胃酸逆流:臨床的重要性及び食道の胃酸接触との相関関係」、The American Journal of Gastroenterology, Vol. 98, No. 3, 2003, pp.545-550及びジーコら (Nzeako et al.)「プロトンポンプ阻害剤治療中の患者における胃酸逆流の臨床的意味の評価」(Aliment. Pharmacol. Ther., 2002年, 16, 1309-1316; これらの開示の全てを参照により本明細書に含める)。理論に拘泥されないが、この現象の理由は、プロトンポンプ阻害剤の半減期が短いことと(例えば、オメプラゾールの半減期は典型的には約50分である)、プロトンポンプ阻害剤が活発に分泌中の壁細胞中に浸入し小管中で酸依存的に濃縮し、その活性型に転化してプロトンポンプに結合する必要があることに関係すると考えられる(ハーショウィズら (Hirschowitz et al.), 消化器疾患及び科学、Vol.40、No.2、1995年2月増補版、pp.3S-23S;この開示の全てを参照により本明細書に含める)。すなわち、夕方又は夜に投与された後のプロトンポンプ阻害剤の全身的な有効性は胃酸分泌の「概日」パターンに整合されることなく、NABのピーク以前に大部分は代謝され除去されてしまうことになる。
【0007】
NABを治療する方法として示唆された方法の一つ、例えばクら ((Xue et al.), Aliment Pharmacol. Ther., 2001:15:1351-1356;この開示の全てを参照により本明細書に含める)により開示されたものは、就寝時にプロトンポンプ阻害剤にH2RAを加えることである。この二重のアプローチにより夜間の胃酸のpH調節を増強し、夜間の胃酸逆流を減少させ、NABに伴う食道の胃酸逆流期間を減少させることができるとクら ((Xue et al.)によって示唆されている。
【0008】
上記からわかるように、これまでの医薬製剤化の努力は、NABのパターンに合うようなプロトンポンプ阻害剤の放出プロファイルを達成することを目指したものではなかった。実際のところ、これまでの医薬製剤はプロトンポンプ阻害剤の胃酸に対する特定の不安定性に焦点をあててきた。従って、腸溶性コーティング層内部のプロトンポンプ阻害剤を「守る」製剤が述べられてきた。従来技術の多くの製剤がプロトンポンプ阻害剤製剤中に腸溶性コーティングを含むことが必要と考えているように思われる。言いかえれば、多くの現在のプロトンポンプ阻害剤製剤が不可欠な成分として、腸のpH条件下でプロトンポンプ阻害剤を溶解させ放出させる引き金となる腸溶性ポリマー系を含むものと思われる。
【0009】
特に、プロトンポンプ阻害剤がより中性若しくはアルカリ性条件下で放出されるように、先行技術の多くの製剤が、プロトンポンプ阻害剤放出をpH調節する仕組みを含んでいる。例えば、ロブグレンら (Lovgren et al.)の米国特許 No. 4,786,505、ロブグレンら (Lovgren et al.)の米国特許 No. 4,853,230、ベングソンら (Bengtsson et al.)の米国特許 No. 5,690,960、ベングソンら (Bengtsson et al.)の米国特許 No. 5,817,338、セス (Seth) の米国特許 No. 6,207,198、セントクレアら (St. Clair et al.)の米国特許 No. 6,248,810、セス (Seth) の米国特許 No. 6,248,355、を参照のこと;これらの開示の全てを参照により本明細書に含める。
【0010】
腸溶性ポリマーを使用することによりさらに、非腸溶性中間「バリアー」コーティングを挿入してプロトンポンプ阻害剤を腸溶性ポリマーの酸性部分から分離する必要性が伴うことになった。このバリヤー層は腸溶性に基づく製剤の貯蔵寿命上の安定性において必要不可欠である。最も一般的にはこのバリアー被膜は水溶性の層であり、これらの製剤は胃から出ると直ちにプロトンポンプ阻害剤を放出するように設計されている。
【0011】
ザックスら(Sachs et al.)の米国特許 No. 5,945,124、6,068,856及び6,274,173(これらの開示の全てを参照により本明細書に含める)では、少なくとも1つの放出遅延化・放出制御中間層が開示されている。特に、ザックスらは、緩徐放出性製剤(徐放性製剤)のパントプラゾールを投与することにより、ヘリコバクターへの抗菌活性成分の作用を増強することを目指している。ザックスらは驚くべきことに、緩徐放出性パントプラゾールを投与した結果、そのような放出を遅延させない形態での投与に比べて作用の発現開始が著しく早まり、ヘリコバクターを消滅させるまでの治療期間が短くなって相当量の抗生物質及び胃酸阻害剤が節約されることを開示している。
【0012】
ザックスら(Sachs et al.)は、彼らの発明はヘリコバクターによって引き起こされる病気の治療用のパントプラゾールと抗菌活性成分を組み合わせて用いるペレット剤又は錠剤形態の経口医薬組成物であって、その中でパントプラゾールが少なくとも一部は緩徐性放出形態で存在している医薬組成物に関するものであると開示している。さらに、ザックスらは、彼らの発明は、酸に対して不安定な不可逆的プロトンポンプ阻害剤のペレット剤又は錠剤形態の経口医薬組成物であって、アルカリ性のペレット剤コア又は錠剤コア、少なくとも一つの放出遅延化・放出制御中間層、及び小腸において可溶性の外部腸溶層を含み、その医薬組成物の中間層が非水溶性のフィルム形成要素から形成されており、そのフィルム形成要素が無水溶液又は水性分散液から塗布されている医薬組成物に関するものであると開示している。
【0013】
ザックスらのシステムの目的はNABの治療を目指すものではなく、プロトンポンプ阻害剤の放出をNABの最適処置に整合させるような何らかの時間経過や放出プロファイルを目指すものではない。上記のように、ザックスらはヘリコバクターを消滅させるための抗生物質との組み合わせ療法と、この製剤の腸溶性特性をもたらす非水溶性バリアーが持つ潜在的安定性という利点の最適化を目指している。
【0014】
ザックスらが開示した製剤は腸溶性コーティングを使用するように設計されており、かつ/又は腸溶性コーティングの使用を特に開示している。したがって、ザックスらの製剤は消化路のpHが十分に高いpHである場合に活性成分を放出するように設計されている。
【0015】
さらにまた、ザックスらによる米国特許 No. 6,132,768に開示された可逆的プロトンポンプ阻害剤用の活性成分を遅延放出させる医薬組成物が注目される。その開示の全てを参照により本明細書に含める。
【0016】
WO 01/24777 (その開示の全てを参照により本明細書に含める) は医薬組成物に関するものであり、プロトンポンプ阻害剤を多相送達させる医薬組成物を含む。WO 01/24777は、現在の即放性の投与形式では日中の期間、好ましくは24時間以上、胃内pHが3.0以上、好ましくは4.0以上に維持されるべきところがしばしば達成されない結果となり、これが夜間に「逆流させるpH」が生じる特に急性の状態となりかねないことを考察している。WO 01/24777は、初回投与量が受容体を阻害し、さらに阻害剤が必要となるのは受容体が再生し始める時だけであると推定されるので、絶えず一定の阻害剤が必要なわけではないと開示している。WO 01/24777は、徐放性製剤の使用はそのため必要以上の阻害剤の使用を伴うと開示している。従って、最初の薬物量の効果が減少し始めた時に阻害剤の第二の薬物量を放出することができるパルス放出製剤を提供することが望ましいと開示している。WO 01/24777は、症状を予想して薬剤の遅延放出を幅広く開示している。しかしながら、プロトンポンプ阻害剤薬品の放出に関する開示は、起きている時の活性成分の見かけの放出として5、6時間或いはそれ以上の長期間、プロトンポンプ阻害剤の放出を遅らせるためのプロトンポンプ阻害剤の遅延型放出(実施例1及び3)、又は二集団型製剤によるプロトンポンプ阻害剤の即時放出(実施例2)に限られている。また、WO 01/24777は投薬ユニットの膨張や崩壊を結果としてまねく崩壊剤の使用を開示している。
【0017】
US 2002/0160046 A1 (その開示の全てを参照により本明細書に含める) は、オメプラゾール又はその塩を含む安定した製剤を開示しており、この製剤は分離層又は腸溶性の放出コーティングを必要としていない。US 2002/0160046 A1は、腸溶性コーティングの代わりにその発明の製剤がオメプラゾールを含むコア上に直接塗布された非腸溶性の徐放性(TR)コーティングを含むことを開示している。このコーティングは、周囲の非酸性媒質又は消化液がコアと接触するようになった時に、製剤のコアが急速に(直ちに又は劇的に)使用されている水性環境中に崩壊するように設計されていることが開示されている。このように、US 2002/0160046 A1はTRコーティングが一般に、外部の水性媒質やGI路中に存在する酵素及び胆汁酸塩のpHに本質的に依存しない浸食特性及び/又は拡散特性を有することを開示しているが、活性成分が直ちに放出されることも開示しており、徐放性放出については開示していないようである。
【0018】
WO 00/78293 (その開示の全てを参照により本明細書に含める) は、腸溶性コーティングなしで調製されており、オメプラゾール、そのアルカリ性の塩、S-オメプラゾール又はそのアルカリ性の塩から選択される活性成分を含むコア物質、2% w/w水溶液/分散液中でpH測定電極を用いて測定した場合に8.5以上のpHを有するアルカリ化剤である1つ以上のアルカリ性添加剤、及び1つ以上の膨張剤を含む製剤に関するものである。そのコアは、所定時間の後に破断可能であるか又はその透過性が変化しうる半透膜でコーティングされている。WO 00/78293は、何らかの特定の望ましい溶解プロファイルを教示又は示唆してはいないようであるが、ペレット剤製剤が通常2-4時間以内に胃から出た後、小腸中で個々のペレット剤を覆う半透膜が破断し、及び/又は活性成分を放出し始めることを示していると思われる。WO 00/78293で開示されている唯一の溶解プロファイルは、実施例4において、溶解を0.1MのHClを使用して2時間測定し、次いでpH 6.8において測定したものである。その溶解プロファイルは、初期の低濃度の放出に続いてpH 6.8の環境にさらされると活性成分が迅速に放出されることを例証しているように見える。
【0019】
上記の見地から、例えば腸溶性コーティング又は他のpH依存性構造に頼るようなpH依存性ではないプロトンポンプ阻害剤製剤の必要性が今でも存在する。さらに、プロトンポンプ阻害剤と共にヒスタミン2受容体拮抗薬のような何らかの他の活性成分の投与を必要としない、NABの予防及び/又は治療処置として投与することができるプロトンポンプ阻害剤が今でも必要である。さらにまた、NABを治療するために1日1回、さらに場合により1日2回以上投与することができるプロトンポンプ阻害剤製剤も必要である。さらに、NABを治療するために設計された製剤でプロトンポンプ阻害剤がpH非依存的に遅延放出しその後プロトンポンプ阻害剤を徐放するプロトンポンプ阻害剤製剤が必要である。さらに、腸溶性コーティング及び/又は崩壊剤を必要としない製剤が必要である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明はプロトンポンプ阻害剤製剤に関するものである。
【0021】
本発明はまた、時間に基づく遅延放出型 (delayed-release)、徐放性 (extended-release)プロトンポンプ阻害剤製剤に関する。
【0022】
本発明はまた、pH非依存性の時間に基づく遅延放出型・徐放性プロトンポンプ阻害剤製剤に関する。
【0023】
本発明はまた、NABの予防及び/又は治療処置として投与することができるpH非依存性の時間に基づく遅延放出型・徐放性プロトンポンプ阻害剤製剤に関する。
【0024】
本発明はまた、プロトンポンプ阻害剤と共にヒスタミン2受容体拮抗薬のような何らかの他の活性成分を投与する必要がない、NABの予防及び/又は治療処置として投与することができるpH非依存性の時間に基づく遅延放出型・徐放性プロトンポンプ阻害剤製剤に関する。
【0025】
本発明はまた、NABを治療するために1日1回、さらに場合により1日2回以上投与することができるpH非依存性の時間に基づく遅延放出型・徐放性プロトンポンプ阻害剤製剤に関する。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明は、少なくとも1つのプロトンポンプ阻害剤の初期のpH非依存性の時間に基づく遅延放出及びそれに続く徐放性放出をもたらすように構成及び調整された少なくとも1つのプロトンポンプ阻害剤を含む医薬製剤であって、その少なくとも1つのプロトンポンプ阻害剤の初期のpH非依存性の時間に基づく遅延放出期間には約1〜4時間の間に少なくとも1つのプロトンポンプ阻害剤の最大約20%が放出されることが含まれ、それに続くプロトンポンプ阻害剤の徐放性放出は約3〜12時間にわたり、期間中何れの1時間及び全ての1時間について少なくとも1つのプロトンポンプ阻害剤の放出パーセントの1時間当たりの増加は35%未満となる医薬製剤に関する。
【0027】
本発明はまた、プロトンポンプ阻害剤製剤、好ましくはpH非依存性の時間に基づく遅延放出型・徐放性製剤であって、回転式パドル装置 (USP II) で900ml USPリン酸緩衝液 (pH 6.8) を用いて37℃、撹拌速度 50 rpmで測定した溶解プロファイルが下記のようになる製剤に関するものである:
2時間≦30%、
3時間≦60%、
6時間≧20%、
8時間≧40%、及び
12時間≧70%。
【0028】
本発明はまた、哺乳動物に医薬製剤を経口投与することを含む夜間の胃酸逆流の治療方法に関するものであって、上記医薬製剤が少なくとも1つのプロトンポンプ阻害剤の初期のpH非依存性の時間に基づく遅延放出及びそれに続く徐放性放出をもたらすように構成及び調整された少なくとも1つのプロトンポンプ阻害剤を含むことを特徴とする。
【0029】
上記の少なくとも1つのプロトンポンプ阻害剤の初期のpH非依存性の時間に基づく遅延放出には、約2〜3時間の間に約10%未満の少なくとも1つのプロトンポンプ阻害剤が放出されることが含まれていてもよく、それに続くプロトンポンプ阻害剤の徐放性放出は少なくとも1つのプロトンポンプ阻害剤の1時間当たりの放出パーセントの増加を約30%未満にすることができる。
【0030】
上記の少なくとも1つのプロトンポンプ阻害剤の初期のpH非依存性の時間に基づく遅延放出には、約2〜3時間の間に約10%未満の少なくとも1つのプロトンポンプ阻害剤が放出されることが含まれていてもよく、それに続くプロトンポンプ阻害剤の徐放性放出は少なくとも1つのプロトンポンプ阻害剤の1時間当たりの放出パーセントの増加を約25%未満にすることができる。
【0031】
上記の少なくとも1つのプロトンポンプ阻害剤の初期のpH非依存性の時間に基づく遅延放出には、約2〜3時間の間に約10%未満の少なくとも1つのプロトンポンプ阻害剤が放出されることが含まれていてもよく、それに続くプロトンポンプ阻害剤の徐放性放出は少なくとも1つのプロトンポンプ阻害剤の1時間当たりの放出パーセントの増加を約20%未満にすることができる。
【0032】
上記の少なくとも1つのプロトンポンプ阻害剤の初期のpH非依存性の時間に基づく遅延放出には、少なくとも1つのプロトンポンプ阻害剤が放出されないことが含まれていてもよい。
【0033】
上記の少なくとも1つのプロトンポンプ阻害剤の初期のpH非依存性の時間に基づく遅延放出には、約5%未満の少なくとも1つのプロトンポンプ阻害剤が放出されることが含まれていてもよい。
【0034】
上記の少なくとも1つのプロトンポンプ阻害剤の初期のpH非依存性の時間に基づく遅延放出には、少なくとも約1時間の間に少なくとも1つのプロトンポンプ阻害剤が約5%未満放出されるか又は放出されないことが含まれていてもよい。
【0035】
上記の少なくとも1つのプロトンポンプ阻害剤の初期のpH非依存性の時間に基づく遅延放出には、少なくとも約2時間の間に少なくとも1つのプロトンポンプ阻害剤が約5%未満放出されるか又は放出されないことが含まれていてもよい。
【0036】
上記の少なくとも1つのプロトンポンプ阻害剤の初期のpH非依存性の時間に基づく遅延放出には、哺乳動物に投与した後約2〜4時間の間に少なくとも1つのプロトンポンプ阻害剤が約5%未満放出されるか又は放出されないことが含まれていてもよい。
【0037】
上記の少なくとも1つのプロトンポンプ阻害剤の続いて起きる徐放性放出には、約3から9時間にわたって少なくとも1つのプロトンポンプ阻害剤が放出されることが含まれていてもよい。
【0038】
上記の少なくとも1つのプロトンポンプ阻害剤の続いて起きる徐放性放出には、約4から9時間にわたって少なくとも1つのプロトンポンプ阻害剤が放出されることが含まれていてもよい。
【0039】
上記の少なくとも1つのプロトンポンプ阻害剤の続いて起きる徐放性放出には、約4から6時間にわたって少なくとも1つのプロトンポンプ阻害剤が放出されることが含まれていてもよい。
【0040】
上記製剤は拡散調節システムを含んでいてもよい。この拡散調節システムは、少なくとも1つのプロトンポンプ阻害剤、拡散調節コーティング及びpH非依存性の遅延放出性コーティングを含むコアを含んでいてもよい。
【0041】
上記製剤はマトリックスシステムを含んでいてもよい。
【0042】
上記製剤は浸透圧システムを含んでいてもよい。
【0043】
上記製剤は不溶性ポリマーを含んでいてもよい。
【0044】
上記製剤は好ましくは腸溶性コーティング及び/又は崩壊剤を含まない。
【0045】
上記哺乳動物はヒトでもよい。
【0046】
上記の溶解プロファイルは下記を含んでいてもよい:
2時間‐20%未満、
3時間‐10%より多いが30%未満、
4時間‐20%より多いが40%未満、
6時間‐40%より多いが60%未満、
8時間‐60%より多いが80%未満、及び
12時間‐80%より多い。
【0047】
上記の溶解プロファイルは下記を含んでいてもよい:
3時間‐20%未満、
4時間‐10%より多いが30%未満、
6時間‐30%より多いが50%未満、
8時間‐50%より多いが70%未満、及び
12時間‐75%より多い。
【0048】
上記の溶解プロファイルは下記を含んでいてもよい:
4時間‐20%未満、
6時間‐20%より多いが40%未満、
8時間‐40%より多いが60%未満、及び
12時間‐70%より多い。
【0049】
本発明はまた、ヒトへの本発明の製剤の経口投与を含む夜間の胃酸逆流の治療方法に関する。
【0050】
本発明はまた、少なくとも1つのプロトンポンプ阻害剤を含む製剤の製造方法であって、少なくとも1つのプロトンポンプ阻害剤に医薬用成分を加えて、初期のpH非依存性の時間に基づく遅延放出性及びそれに続く徐放性を有する本発明の製剤を提供することを含む方法に関する。
【0051】
本発明はまた、少なくとも1つのプロトンポンプ阻害剤を含む製剤であって、Tmaxが3.5時間より長く、好ましくは約4時間より長く、好ましいTmaxが約4〜12時間である製剤に関する。さらに、本製剤は好ましくはpH非依存性の時間に基づく遅延放出型・徐放性製剤である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0052】
ここに示される詳細は例示目的で、また本発明の様々な態様を具体的に考察する目的で示されており、本発明の本質及び概念的側面について最も有益かつ迅速に理解され得る説明と考えられるものを提供するために提示されている。これに関して、発明の基本的理解に必要なもの以上に詳しく発明の詳細を示す意図はなく、この記述から当業者には本発明のいくつかの形態がどのように実際上具体化されるかが明らかになる。
【0053】
本出願中のパーセント測定値は全て、他に指示がない限りは、与えられたサンプル重量の100%に基づいて重量で測定されたものである。従って、例えば30%とはサンプルの100重量部に対する30重量部を表わす。
【0054】
他に指示がない限りは、化合物又は成分を言及する場合はその化合物又は成分そのものの他に化合物の混合物のような他の化合物又は成分との組み合わせも含んでいる。
【0055】
現在用いられている製剤や投与プロトコールとは対照的に、本発明では驚くべきことに、腸溶性コーティングを組み入れる必要無しに、消化管内のpH条件に基づいて活性成分の放出を調節するように製剤された放出制御製剤としてプロトンポンプ阻害剤を有効に製剤化できることが見出された。特に、pH非依存性の時間に基づく放出メカニズムは(pHに基づくものに比較して)胃酸に関連する種々の病態の治療に適していることが見出された。特に、pH非依存性の遅延期間の後、好ましくは就寝後に、プロトンポンプ阻害剤を放出することを目指した放出パターンにより効果的なNAB治療が達成されるものと思われる。好ましくは、経口投与後にプロトンポンプ阻害剤が放出される際の遅延期間は最低約1時間、好ましくは約2時間であり、好ましい範囲は就寝後約2〜4時間である。例えば、典型的な投薬計画を挙げるとすればこの製剤をおよそ10:00 PMに投与し、pH非依存性の時間遅延が約2時間続き、その後徐放性の放出が起きることによりおよそ1:00 AMに予想されたNABが治療され、それがおよそ6:00 AMまで続くことになる。
【0056】
本発明のpH非依存性の時間に基づく遅延放出型・徐放性プロトンポンプ阻害剤製剤の長所とそれに付随する放出プロファイルは、ここに掲げる説明に従えって当業者には容易に明らかになる。例えば、本発明の製剤はプロトンポンプ阻害剤に適切な時間に確実に放出を開始するようにさせることができる。対照的に、腸溶性コーティング製剤は活性成分が適切な時間に放出されることを保証することはできない。つまり、腸溶性コーティング製剤は様々な時間の長さで胃の中に留まることがありうる。例えば、腸溶性コーティング製剤が胃の中に留まる期間が変動する場合、腸溶性コーティングにはこれらの変動する期間による活性成分放出の不確実性が伴いかねない。例えば、製剤が4時間以上にわたって胃の中に留まる場合、pH条件が活性成分の放出に適した消化管内の位置にこの製剤が到達するまで4時間以上にわたって活性成分の放出が期待できないことになる。
【0057】
さらに、消化管中のpH環境が標準とは異なる人々もいる。例えば、彼らの下部小腸は活性成分を放出させるのに十分なほど高いpHではないことがある。例えば、下部小腸のpHは6.4かそれ以下のpHのこともある。それとは対照的に、腸溶性コーティングのpH依存性により活性成分の放出を得るために6.5〜6.8のpHが必要なことがある。言い換えれば、腸溶性コーティング製剤は患者全員が非常に一定のpH条件であることを前提にしている。しかしながら、上に述べたように異なる患者は患者ごとの違いによって異なるpH条件を有することがある。
【0058】
上記プロトンポンプ阻害剤はプロトンポンプ阻害剤としての活性を有するいずれの化合物;化合物の誘導体;異性体、立体異性体、塩、水和物及び溶媒和物などの化合物の形態のいずれを含んでいてもよい。例えば、それらに限定されるものではないが、本発明のプロトンポンプ阻害剤としては、オメプラゾール、ランソプラゾール、パントプラゾール、ラベプラゾール、エソメプラゾール、レミノプラゾール、テナトプラゾール及びそれらの立体異性体、エナンチオマー及び互変異性体、並びにアルカリ性塩などのそれらの種々の塩が含まれる。プロトンポンプ阻害剤は胃酸分泌の強力な阻害剤であり、壁細胞における水素イオン産生の最終段階に関与する酵素であるH+、K+‐ATPアーゼを阻害する。さらに、プロトンポンプ阻害剤は典型的にはベンズイミダゾール化合物を含む。例えば、それらに限定されるものではないが、本発明の製剤において有用な種々のベンズイミダゾール化合物を含むプロトンポンプ阻害剤は、下記の文献に開示されているものを含む(これらの文献の開示の全てを参照により本明細書に含める):米国特許 No. 4,045,563、米国特許 No. 4,255,431、米国特許 No. 4,182,766、米国特許 No. 4,359,465、米国特許 No. 4,472,409、米国特許 No. 4,508,905、米国特許 No. 4,628,098、米国特許 No. 4,738,975、米国特許 No. 5,045,321、米国特許 No. 4,786,505、米国特許 No. 4,853,230、米国特許 No. 5,045,552、米国特許 No. 5,312,824、米国特許 No. 5,877,192、米国特許 No. 6,207,198、米国特許 No. 6,544,556、EP-A-0295603、EP-A-0166287、EP-A-0519365、EP-A-005129、EP-A-0174726及びGB 2,163,747。
【0059】
本発明による経口投与用製剤の例としてはマルチユニット系及びシングルユニット系が挙げられ、拡散調節、浸透調節及びマトリックス調節のような種々の放出メカニズムが挙げられる。
【0060】
それに限定されるものではなく、また単に本発明の例として挙げるのみであるが、特に好ましい例としては、20mgのオメプラゾールを種々の添加剤とともに錠剤コア中に圧縮し、速度調節膜、好ましくは拡散調節膜をコアに塗布した、シングルユニットの拡散調節錠剤のオメプラゾールのようなプロトンポンプ阻害剤の製剤を含む。例えば速度調節膜は、これに限らないがポリビニル系ポリマーのような非水溶性のポリマーと、これに限らないがショ糖又はポリビニルピロリドン(PVP)を含む糖類のような水溶性物質との混合物に基づくものでもよい。さらに、pH非依存性の時間遅延放出性コーティングをプロトンポンプ阻害剤の放出開始を遅らせるために速度調節膜の外部に塗布することができ、例えばこれに限らないがEudragit(登録商標)RS及び/又はEudragit(登録商標)RL(Eudragit(登録商標)はデグサ社の子会社であるローム・ファーマ・ポリマーの商標である)のようなEudragit(登録商標)ポリマー、及び/又はダウ・ケミカル社の製品であるMethocel(登録商標)のようなメチルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロース、及び/又はダウ・ケミカル社の製品であるEthocel(登録商標)のようなエチルセルロースなどがある。水溶性の仕上げコーティング、例えばこれに限らないがOPADRY(登録商標)WHITE Y-1-7000及びOPADRY(登録商標)OY/B/28920 WHITE(これらは各々Colorcon社(英国)から入手できる)などをさらに塗布してもよい。
【0061】
本発明の少なくとも1つのプロトンポンプ阻害剤の放出は、回転式パドル装置 (USP II) で900ml USPリン酸緩衝液 (pH 6.8) を用いて37℃、撹拌速度 50 rpm、又はこれと同等の装置と技法で測定する。
【0062】
本発明のpH非依存性の時間に基づく遅延放出型・徐放性プロトンポンプ阻害剤製剤の好ましい放出プロファイルは、2時間≦30%、3時間≦60%、6時間≧20%、8時間≧40%、及び12時間≧70%である。
【0063】
さらに、好ましい溶解プロファイルには、下記が含まれる:
(a) 2時間‐20%未満、3時間‐10%より多いが30%未満、4時間‐20%より多いが40%未満、6時間‐40%より多いが60%未満、8時間‐60%より多いが80%未満、及び12時間‐80%より多い。
(b) 3時間‐20%未満、4時間‐10%より多いが30%未満、6時間‐30%より多いが50%未満、8時間‐50%より多いが70%未満、及び12時間‐75%より多い。
(c) 4時間‐20%未満、6時間‐20%より多いが40%未満、8時間‐40%より多いが60%未満、及び12時間‐70%より多い。
【0064】
上記を詳しく言うと、本発明のpH非依存性の時間に基づく遅延放出型・徐放性製剤は、プロトンポンプ阻害剤の放出を(腸溶性コーティングにより達成されるようなpHに基づく遅延と比較して)pH非依存的に時間遅延させ、さらにpH非依存的な時間遅延の後にプロトンポンプ阻害剤を徐放性で放出させるいずれの製剤を含んでもよい。本発明のpH非依存性の時間遅延型・徐放性製剤はプロトンポンプ阻害剤の放出を初期にpH非依存的に時間遅延させ、その後プロトンポンプ阻害剤を徐々に放出させるように構成及び調整されているいかなるタイプの製剤を含んでもよい。例えば、徐放性放出は、その例が当業者には周知の徐放性制御送達装置のようないずれの利用可能な制御放出により達成してもよい。種々の製剤の例は米国特許 No. 3,845,770; 3,916,899; 3,536,809; 3,598,123; 4,008,719; 5,674,533; 5,059,595; 5,591,767; 5,120,548; 5,073,543; 5,639,476; 5,354,556及び 5,733,566、並びに米国特許公開 No. 2003/0118652 (これらの開示の全てを参照により本明細書に含める) に示されている。制御放出製剤に用いる適当な成分(例えば、ポリマー類、添加剤など)やその製造方法も、例えば米国特許 No. 4,863,742に開示されており、この開示の全てを参照により本明細書に含める。
【0065】
本発明のpH非依存性放出は、上記製剤が初期のpH非依存性時間遅延とそれに続く徐放性放出を達成できるようないかなる方法で達成されてもよい。2つの作用は上記製剤の1つの要素に含まれていてもよく、或いは上記製剤の別々の要素に含まれていてもよい。例えば、上で述べたように、1つの好ましい製剤には拡散調節膜とそれとは別のpH非依存性時間遅延放出コーティングが含まれる。しかしながら、これらの2つのコーティングを合体させて遅延放出と徐放性の両方の作用を有する1つのコーティングにすることもできる。さらに、浸透性製剤に伴う一般的な遅延性放出に基づいて、徐放性放出と組み合わせた時間遅延作用を浸透性製剤に持たせることもできる。
【0066】
本発明のpH非依存性の時間に基づく遅延放出型・徐放性プロトンポンプ阻害剤製剤の例として、これに限定されるものではないが、拡散制御性システム、マトリックスシステム、浸透性システム及びイオン交換システムが挙げられる。これらはシングル(一体型)又はマルチユニット製剤の形でもよい。
【0067】
拡散制御徐放性製剤では、プロトンポンプ阻害剤を含む製剤が半透膜で覆われていてもよい。半透膜には水及び溶質の両方に対して浸透性が大きいか或いは小さいものが含まれる。この膜は非水溶性及び/又は水溶性の高分子を含んでいてもよく、初期のpH非依存性の時間遅延の後にpH依存性又はpH非依存性の溶解特性を示すように本発明によって調整されている。これらのタイプのポリマーについては以下に詳細に述べる。一般に、ポリマー膜の性質(例えば、膜の組成)がプロトンポンプ阻害剤の放出の性質を決めることになる。
【0068】
徐放性の制御放出及び/又はpH非依存性の遅延放出は、徐放性水性製剤用の非常に透過性の高いpH非依存性ポリマーであるEUDRAGIT(登録商標)RL 30 D、マトリックス製剤用の非常に透過性の高いpH非依存性ポリマーであるEUDRAGIT(登録商標)RL PO、水に不溶性の非常に透過性の高いpH非依存性ポリマーであるEUDRAGIT(登録商標)RL 100、徐放性水性製剤用の透過性の低いpH非依存性ポリマーであるEUDRAGIT(登録商標)RS 30 D、マトリックス製剤用の透過性の低いpH非依存性ポリマーであるEUDRAGIT(登録商標)RS PO、透過性が低く水に不溶性のpH非依存性ポリマーであるEUDRAGIT(登録商標)RS 100、徐放性製剤中の湿式造粒用の中性エステルコポリマーであるEUDRAGIT(登録商標)NE 30 D、又は徐放性製剤中の湿式造粒用の10%固体度の高い中性エステルコポリマーであるEUDRAGIT(登録商標)NE 40 DなどのEudragit製品を使用して得ることができる。上に述べたように、Eudragit(登録商標)はデグサ社の子会社であるローム・ファーマ・ポリマーの商標である。Eudragit(登録商標)製品は、「医薬用添加剤ハンドブック(第二版)」(ウェードら (Wade et al.) 編、1986年、362-366ページ;この開示の全てを参照により本明細書に含める)の記述のように、ポリメタクリレートを含むことが示されている。
【0069】
浸透性放出システムでは、選択的透過性膜が閾値レベル以上の浸透圧をもたらすのに十分な濃度で本件の物質(すなわち、プロトンポンプ阻害剤)の貯蔵体を封入している。選択的透過性膜には、水に対して透過性であるが溶質に対しては透過性でないものが含まれる。選択的透過性膜の孔又は穴のサイズは、その膜の孔又は穴を通しての物質の分子の通過が、製剤の外部の周辺環境中にその物質を分配する際の律速因子になるように、変化させることができる。或いは、その物質の貯蔵体が、活性成分に加えて、閾値レベル以上の浸透圧をもたらすのに十分な濃度で存在する浸透圧剤のような不活性物質もさらに含んでいてもよい。本件の活性物質は製剤中に含まれる固体又は液体として存在していてもよい。浸透性装置は、十分な圧力が得られるまで活性成分の放出を遅らせるその調整及び構造により、遅延放出に特に適している。さらに、pH非依存性の時間遅延性コーティングが浸透性装置とともに含まれていてもよい。
【0070】
マトリックス型システムは、水溶性の例えば親水性ポリマー、又は非水溶性の例えば疎水性ポリマーのいずれかと混合したプロトンポンプ阻害剤を含む。一般に、放出調整製剤に用いられるポリマーの特性は、放出のメカニズムに影響を及ぼすことになる。例えば、親水性ポリマーを含む製剤からの活性成分の放出は表面拡散及び/又は浸食の両方によって進めることができる。医薬システムからの放出メカニズムは当業者に周知である。マトリックス型システムも一体型又はマルチユニットでもよく、上記に例示されているような水溶性及び/又は非水溶性のポリマー膜でコーティングされていてもよい。さらに、pH非依存性の時間遅延をもたらすようにマトリックス上にコーティングが含まれていてもよい。
【0071】
本発明の徐放性製剤は、プロトンポンプ阻害剤の放出についてイオン交換樹脂に依存してもよい。そのような製剤では、薬物はイオン交換樹脂に結合しており、摂取された時に薬物の放出は胃腸管内のイオン環境によって決定することができる。そのような製剤はpH非依存性の時間遅延コーティングを含んでいてもよい。
【0072】
個々の必要に応じて、本発明の製剤は、錠剤、ペレット剤、ミニタブレット、カプレット又は何らかの他の所望の形態で製造してもよい。いずれの所望の形態もコーティングされていてもされていなくてもよく、製剤からのプロトンポンプ阻害剤の時間遅延に影響するコーティングは、pH非依存性時間遅延に基づくプロトンポンプ阻害剤放出の遅延をpH非依存的に提供している。
【0073】
これに関して、それに限定されるものではなく、また単に本発明の例として挙げるのみであるが、特に好ましい例は、マルチ粒子又は微粒子のようなペレットの形態にあるオメプラゾールのようなプロトンポンプ阻害剤の製剤を含む。そのような態様の具体例であってそれに限定されない例としては、ペレット剤をカプセル形態に装填してもよい。従って、単一ユニットの拡散調節カプセルは、即時放出される薬剤が装填されたマルチ粒子が、放出調節及び/又は遅延型/放出調節のマルチ粒子オメプラゾール製剤となるように上述のポリマーでコーテイングされて硬ゼラチンカプセルに装填された形態のオメプラゾールを含んでもよい。これに関連して、同じく限定されるものではなく単に具体例として述べるものであるが、オメプラゾールは界面活性剤(例えばラウリル硫酸ナトリウム)、結合剤(例えばポリビニルピロリドン又はPVP)、滑択剤(例えばコロイド状二酸化ケイ素)、及び抗付着剤(例えばタルク)と混合して、当業者に周知の方法で適当な溶媒による溶液又は懸濁液を形成してもよい。この溶液/懸濁液をその後ノンパレイユシードのような適当な不活性担体上にスプレーして乾燥させて、即時放出性のオメプラゾール微粒子を形成する。得られた微粒子をその後、(上記又は以下の実施例でさらに例示するような)適当な放出調節ポリマー放出システムでコーティングして放出調節及び、さらに遅延型かつ/又は放出調節微粒子を形成してもよい。これに関連して、ここで錠剤製剤に用いるのと本質的に同じ手法と材料を標準的微粒子技術に適用して使用することにより、本発明の微粒子に、放出調節パターン及び遅延型/放出調節パターンを得ることができる。この微粒子はいずれの適当な剤形に使用してもよい。
【0074】
ペレット製剤は、例えば、カプセルに入れても、錠剤に調製しても、或いは食品や飲料中に入れて投与してもよい。カプセルに入れたペレット製品の利点の1つは、吸収の開始が胃排出にそれほど敏感ではないということである。ペレット剤の小腸への進入は非崩壊性徐放性錠剤製剤を用いる場合よりも一定にすることができる。これに関連して、ここで錠剤製剤に用いるのと本質的に同じ手法と材料を標準的微粒子技術に適用して使用することにより、本発明のペレット剤又は任意の他の形態に、放出調節パターン及び遅延型/放出調節パターンを得ることができる。
【0075】
プロトンポンプ阻害剤の徐放性放出は、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを望ましい徐放性放出プロファイルが得られるように割合を変えて使用するか、他のポリマーマトリックス、ゲル剤、透過性膜、浸透圧システム、多層コーティング、微粒子、リポソーム、ミクロスフェアなど、又はそれらの組み合わせを使用することにより遅延させたり調節したりすることができる。適切な制御放出製剤、遅延放出製剤、及び/又は徐放性製剤は当業者に公知であり、本発明のプロトンポンプ阻害剤組成物に使用するために容易に選択できる。従って、錠剤、カプセル剤、ゲルカプセル剤、カプレットなどの、初期のpH非依存性の時間遅延放出、及びそれに続く徐放性放出に適合したものを、ここに開示する方法に従って使用してもよい。pH非依存性の遅延放出は、pH非依存性のいずれの材料及び/又は構造によって得られてもよい。しかしながら、pH非依存性の時間遅延の後に続くプロトンポンプ阻害剤の徐放性放出は、外部の条件に依存しないことが好ましいが、様々な誘発要素、例えば、pH、温度、酵素、水、又は他の生理学的条件若しくは化合物が引き金となるか又は刺激して起きることもある。
【0076】
本発明の方法で使用されるpH非依存性の時間に基づく遅延放出型・徐放性プロトンポンプ阻害剤製剤は、医薬的に許容される添加剤をいくつ含んでいてもよい。適当な添加剤としては、これらに限定されるものではないが、クエン酸ナトリウム又はリン酸二カルシウムのような担体;ステアリン酸塩、シリカ、石コウ、でんぷん、乳糖、ショ糖、グルコース、マンニトール、タルク又はケイ酸のような充填剤又は増量剤;ヒドロキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ショ糖又はアラビアゴムのような結合剤;グリセリンのような湿潤剤;寒天、炭酸カルシウム、じゃがいも又はタピオカ澱粉、アルギン酸、一定のケイ酸塩又は炭酸ナトリウムのような崩壊剤;パラフィンのような溶液緩染剤;四級アンモニウム化合物のような吸収促進剤;セチルアルコール又はグリセロール・モノステアレートのような加湿剤;カオリン及びベントナイト粘土のような吸着剤;タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール及びラウリル硫酸ナトリウムのような滑沢剤;安定化剤;着色剤;緩衝剤;分散剤;防腐剤;及び有機塩基が挙げられる。上記の添加剤は例として示したのみであり、選択可能な全てを示すものではない。さらに、多くの添加剤は2つ以上の役割を持っていてもよく、或いは2つ以上のグループに分類されてもよい;上記の分類は単に説明上のものであり、個々の添加剤をいずれかの使用に限定する意図はない。
【0077】
適当な有機塩基の例としては、これらに限定されるものではないが、クエン酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、クエン酸カリウム、酒石酸カリウム、コハク酸カリウム、及びそれらの混合物が挙げられる。適当な希釈剤としては、これらに限定されるものではないが、乳糖、タルク、微結晶性セルロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、ヒュームドシリカ、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム、及びそれらの混合物が挙げられる。
【0078】
本発明のpH非依存性の時間に基づく遅延放出型・徐放性プロトンポンプ阻害剤製剤は好ましくは下記の第一相及び第二相を提供する時間治療用製剤として設計される:
【0079】
(i)第一相:時間に基く、プロトンポンプ阻害剤が放出されない期間:この期間中、実質的にプロトンポンプ阻害剤の放出が無く、好ましくはプロトンポンプ阻害剤は放出されない。好ましくは、多くても約20%のプロトンポンプ阻害剤、より好ましくは約10%未満、さらにより好ましくは約5%未満のプロトンポンプ阻害剤が、少なくとも1つのプロトンポンプ阻害剤のpH非依存性の時間に基づく遅延放出相の間に製剤から放出されることになる。好ましくは、プロトンポンプ阻害剤の放出は、本発明の製剤の投薬がない場合には夜間の胃酸逆流が生じると考えられる時間に放出されるように時間遅延されることになる。上に述べたように、このpH非依存性の時間遅延は約2〜4時間が好適である。第一相の後に好ましくは直ちに第二相が続く。すなわち:
【0080】
(ii)第二相:プロトンポンプ阻害剤の徐放性放出が起きる期間。プロトンポンプ阻害剤は、最小の治療濃度又はそれ以上にプロトンポンプ阻害剤を維持するように一定期間放出されることになり、その期間は約3〜12時間、より好ましくは約4〜9時間、さらにより好ましくは約4〜6時間、そしてさらにより好ましくは約5〜6時間である。
【0081】
本発明の製剤の具体例としては、少なくとも1つのプロトンポンプ阻害剤の初期のpH非依存性の時間に基づく遅延放出及び直ちにそれに続く徐放性放出をもたらすように構成及び調整された少なくとも1つのプロトンポンプ阻害剤を含む医薬製剤が挙げられる。少なくとも1つのプロトンポンプ阻害剤の初期のpH非依存性の時間に基づく遅延放出期間は、多くても20%、好ましくは10%未満、より好ましくは5%未満のプロトンポンプ阻害剤の放出を含み、さらにより好ましくはプロトンポンプ阻害剤を放出しない。pH非依存性の時間に基づく遅延放出期間としては好ましくは約1〜4時間、より好ましくは約2〜3時間、好ましくは約2時間の期間が含まれる。少なくとも1つのプロトンポンプ阻害剤の徐放性放出では、期間中何れの1時間及び全ての1時間について、少なくとも1つのプロトンポンプ阻害剤の放出パーセントの1時間当たりの増加は約35%未満、又は約30%未満、又は約25%未満、又は約20%未満となる。少なくとも1つのプロトンポンプ阻害剤の徐放性放出は、好ましくは約3〜12時間、より好ましくは約4〜9時間、より好ましくは約4〜6時間、さらにより好ましくは約5〜6時間の期間にわたる。本発明による特に好ましい製剤は、約2〜3時間の少なくとも1つのプロトンポンプ阻害剤の初期のpH非依存性の時間に基づく遅延放出期間であってプロトンポンプ阻害剤の10%未満が放出される期間と、少なくとも1つのプロトンポンプ阻害剤の徐放性放出であって、期間中何れの1時間及び全ての1時間について少なくとも1つのプロトンポンプ阻害剤の放出パーセントの1時間当たりの増加が約25%未満となる放出をもたらし、少なくとも1つのプロトンポンプ阻害剤の徐放性放出は好ましくは約4〜6時間にわたる。
【0082】
本明細書において「初期の」という表現を用いる場合、この表現は遅延期間と同時に放出されうる付随成分を含む製剤を排除するものではない。つまり、この製剤は初期のpH非依存性の遅延放出期間に放出されうるいかなる付随材料を含んでいてもよい。例えば、これらに限定されるものではないが、本発明の製剤の上にコーティングを含んで香料のような材料を放出してもよく、及び/又はコーティングが見た目にきれいな層を含むこともできる。
【0083】
さらに、「期間中何れの1時間及び全ての1時間について少なくとも1つのプロトンポンプ阻害剤の放出パーセントの1時間当たりの増加」という表現は以下を示す。徐放性放出相の期間中、任意の1時間についていずれの測定値も、少なくとも1つのプロトンポンプ阻害剤の放出が約35%未満、又は約30%未満、又は約25%未満、又は約20%未満であることを示すことになる。
【0084】
上記を詳しく言うと、仮に少なくとも1つのプロトンポンプ阻害剤の約5%が、測定された期間、例えば徐放性放出の最初の1時間中に放出されたとすると、少なくとも1つのプロトンポンプ阻害剤の多くても合計約40%(5%プラス35%)、より好ましくは多くても約35%(5%プラス30%)、より好ましくは多くても約30%(5%プラス25%)、最も好ましくは多くても約25%(5%プラス20%)が徐放性放出期間の最初の合計2時間の間に放出されることになる。
【0085】
上記の少なくとも1つのプロトンポンプ阻害剤の徐放性放出は、その放出の期間及び最大量が上で述べたものであれば本発明によるいずれの様式であってもよい。すなわち、その放出は線形又は実質的に線形であってもよいが、徐放性放出の期間中いずれの様式であってもよい。例えば、放出プロファイルとして、約5時間の間、少なくとも1つのプロトンポンプ阻害剤の約20%が一時間当たりに放出されるか、又は約4〜6時間の間、少なくとも1つのプロトンポンプ阻害剤の一時間の最大放出量が約15〜30%パーセントの放出になることを含んでもよい。
【0086】
そのような製剤は、対象者の睡眠中、プロトンポンプ阻害剤の放出にpH非依存性の時間遅延を提供する。この時間遅延とは、初期の期間中は治療レベル以下のプロトンポンプ阻害剤を放出し、好ましくはプロトンポンプ阻害剤を放出しないか、実質的に放出せず、その後好ましくは患者の睡眠中に治療濃度で徐々に放出されるように設計されていてもよい。しかしながら、プロトンポンプ阻害剤がその徐放性放出を始める際に、患者が起きていてもよい。
【0087】
本発明のpH非依存性の時間に基づく遅延放出型・徐放性プロトンポンプ阻害剤は、夜、好ましくは午後9時〜11時頃、さらに好ましくは午後10時頃に一日一回の経口製剤として投与することができる。
【0088】
本発明のpH非依存性の時間に基づく遅延放出型・徐放性プロトンポンプ阻害剤製剤は、例えば、これらに限定されるものではないが、ヒスタミン2受容体拮抗薬のような他の治療薬と組み合わせて投与することができる。さらに、上記のpH非依存性の時間に基づく遅延放出型・徐放性プロトンポンプ阻害剤製剤は、患者に対して一日一回、又は例えば一日二回のような一日一回よりも多い回数で投与することもできる。
【0089】
本発明のpH非依存性の時間に基づく遅延放出型・徐放性プロトンポンプ阻害剤製剤は、先に述べたような少なくとも1つのポリマー物質を含んでいてもよい。適当な水溶性ポリマーとしては、これらに限定されるものではないが、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース又はポリエチレングリコール、及び/又はそれらの混合物が含まれる。適当な非水溶性ポリマーとしては、これらに限定されるものではないが、エチルセルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、三酢酸セルロース、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(イソブチルメタクリレート)、ポリ(ヘキシルメタクリレート)、ポリ(イソデシルメタクリレート)、ポリ(ラウリルメタクリレート)、ポリ(フェニルメタクリレート)、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(イソプロピルアクリレート)、ポリ(イソブチルアクリレート)、ポリ(オクタデシルアクリレート)、ポリ(エチレン)、低密度ポリ(エチレン)、高密度ポリ(エチレン)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(ビニルイソブチルエーテル)、ポリ(ビニルアセテート)、ポリ(ビニルクロリド)又はポリウレタン、及び/又はそれらの混合物が含まれる。
【0090】
本発明の製剤はpH非依存性の時間に基づく遅延放出型・徐放性プロトンポンプ阻害剤製剤であるため、本製剤は腸溶性コーティングを含まない。しかしながら、腸溶性ポリマーが本発明のプロトンポンプ阻害剤製剤のpH非依存性の時間に基づく遅延放出に影響を与えない限りは、腸溶性のポリマーを製剤に含んでもよい。例えば、腸溶性ポリマーを、製剤の内部部分、例えばpH非依存性の時間遅延を提供しない上記製剤の部分に含むことができ、及び/又は、上記製剤の外部部分に含まれる場合にpH依存性を提供しないような濃度で含むことができる。
【0091】
コアは、多数部分(すなわち、全ポリマー含有量の50%以上)の医薬上許容しうる1つ以上の水溶性ポリマー、及び任意で少数部分(すなわち、全ポリマー含有量の50%未満)の医薬上許容しうる1つ以上の非水溶性ポリマーを含むポリマー材料を含んでいてもよい。
【0092】
或いは、コアは、多数部分(すなわち、全ポリマー含有量の50%以上)の医薬上許容しうる1つ以上の非水溶性ポリマー、及び任意で少数部分(すまわち、全ポリマー含有量の50%未満)の医薬上許容しうる1つ以上の水溶性ポリマーを含むポリマー材料を含んでいてもよい。上記製剤は任意で部分的又は完全にコアを囲むコーティング膜を含んでいてもよく、この膜は多数部分の医薬上許容しうる1つ以上の非水溶性フィルム形成ポリマー及び任意で少数部分の医薬上許容しうる1つ以上の水溶性フィルム形成ポリマーを含む。上記の非水溶性ポリマーが形成する不溶性マトリックスのプロトンポンプ阻害剤に対する透過性は高くても低くてもよい。
【0093】
ポリマー材料はポリマー材料の透過性を増加させるように典型的には1つ以上の可溶性添加剤を含む。可溶性添加剤は可溶性ポリマー、界面活性剤、アルカリ金属塩、有機酸、糖類及び糖アルコールの中から適当に選択される。そのような可溶性添加剤としてはポリビニルピロリドン;ポリエチレングリコール;塩化ナトリウム;ラウリル硫酸ナトリウム及びポリソルベート類のような界面活性剤;酢酸、アジピン酸、クエン酸、フマル酸、グルタル酸、リンゴ酸、コハク酸及び酒石酸のような有機酸;デキストロース、フルクトース、グルコース、ラクトース及びショ糖のような糖類;ラクチロール、マルチトール、マンニトール、ソルビトール及びキシリトールのような糖アルコール;キサンタンガム;デキストリン類並びにマルトデキストリン類が含まれる。いくつかの特別の態様では、ポリビニルピロリドン、マンニトール及び/又はポリエチレングリコールが可溶性添加剤である。上記可溶性添加剤は典型的にはポリマーの全乾燥重量に基づき約0.5から約80重量%の量で使用される。
【0094】
ポリマー材料はさらに充填剤、可塑剤及び/又は消泡剤のような1つ以上の補助剤を含んでもよい。代表的な充填剤としてはタルク、ヒュームドシリカ、モノステアリン酸グリセリン、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、カオリン、コロイドシリカ、セッコウ、微粉シリカ及び三ケイ酸マグネシウムが含まれる。典型的に使用される充填剤の量はポリマーの全乾燥重量に基づき約0.5から約300重量%の範囲であり、約0.5から約100重量%の範囲でもよい。1つの態様では、タルクが充填剤である。
【0095】
上記コーティングはさらにポリマーの加工を改善する材料を含んでもよい。そのような材料は一般に可塑剤と呼ばれ、例えば、アジピン酸塩、アゼライン酸塩、安息香酸塩、クエン酸塩、イソセバシン酸塩、フタル酸塩、セバシン酸塩、ステアリン酸塩及びグリコールが含まれる。代表的な可塑剤としては、アセチル化モノグリセリド類、ブチルフタリルブチルグリコレート、酒石酸ジブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジメチル、エチルフタリルエチルグリコレート、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、クエン酸トリアセチン、トリアセチン、トリプロピノイン、ジアセチン、フタル酸ジブチル、アセチルモノグリセリド、ポリエチレングリコール類、ヒマシ油、クエン酸トリエチル、多価アルコール類、酢酸エステル類、グリセロール三酢酸塩、クエン酸アセチルトリエチル、フタル酸ジベンジル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ブチルオクチル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ブチルオクチル、アゼライン酸ジオクチル、エポキシ化タル油酸塩、トリメリット酸トリイソオクチル、フタル酸ジエチルヘキシル、フタル酸ジ-n-オクチル、フタル酸ジ-i-オクチル、フタル酸ジ-i-デシル、フタル酸ジ-n-ウンデシル、フタル酸ジ-n-トリデシル、トリメリット酸トリ-2-エチルヘキシル、アジピン酸ジ-2-エチルヘキシル、セバシン酸ジ-2-エチルヘキシル、アゼライン酸ジ-2-エチルヘキシル、セバシン酸ジブチル、グリセリルモノカプリレート及びモノカプリン酸グリセリルが含まれる。1つの態様では、可塑剤はセバシン酸ジブチルである。ポリマー材料中に使用される可塑剤の量は、典型的には乾燥ポリマー重量に基づき約0.5%から約50%の範囲であり、例えば約0.5、1、2、5、10、20、30、40又は50%である。
【0096】
1つの態様では、消泡剤はシメチコンである。典型的に使用される消泡剤の量としては最終的な製剤の約0%から約0.5%までが含まれる。
【0097】
本発明の時間に基づく遅延放出型・徐放性プロトンポンプ阻害剤製剤中に使用されるポリマーの量は、送達される薬物の量、薬物送達の速度と位置、薬物放出の時間遅延、及び製剤中のマルチ粒子のサイズを含む望ましい薬物送達特性を達成できるように調節することができる。典型的に用いられるポリマー量は約0.5%から約100%の重量増加をコアにもたらす。1つの態様では、ポリマー材料による重量増加は約2%から約70%である。
【0098】
コポリマー、充填剤、可塑剤、及び任意の添加剤や加工助剤を含むポリマー材料の全固体成分の組み合わせにより、典型的にはコアに対して約0.5%から約450%の重量増加をもたらす。1つの態様では、重量増加は約2%から約160%である。
【0099】
ポリマー材料は、任意の公知の方法、例えば流動床塗工機(例えば、ワースターコーティング)又はパンコーティングシステムを使用してスプレーすることにより、塗布することができる。
【0100】
コーティングしたコアは典型的にはポリマー材料を塗布した後に乾燥又は硬化される。硬化とは、マルチ粒子を調節された温度に、安定な放出速度をもたらすのに十分なだけの時間保つことを意味する。硬化は、例えばオーブン又は流動床ドライヤーの中で行なうことができる。硬化は室温以上のいずれの温度で行ってもよい。
【0101】
シーラント又はバリヤーをポリマーコーティングに塗布してもよい。シーラント又はバリヤーの層はポリマー材料を塗布する前にコアに塗布することもできる。このシーラント又はバリヤーの層はプロトンポンプ阻害剤の放出を変化させない。適当なシーラント又はバリヤーは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース及びキサンタンガムのような透過性又は可溶性の薬剤である。これに関してはヒドロキシプロピルメチルセルロースが特に有用である。
【0102】
上記のシーラント又はバリヤー層の加工性を改善するために他の薬剤を加えてもよい。そのような薬剤としてはタルク、コロイドシリカ、ポリビニルアルコール、二酸化チタン、微粉シリカ、ヒュームドシリカ、グリセロール・モノステアレート、三ケイ酸マグネシウム若しくはステアリン酸マグネシウム、又はそれらの混合物が含まれる。上記のシーラント又はバリヤー層は流動床塗工機(例えば、ワースターコーティング)又はパンコーティングシステムのようないずれの公知の手段を利用して(例えば水性の)溶液又は懸濁液から塗布してもよい。適当なシーラント又はバリヤーとしては例えば、OPADRY(登録商標)WHITE Y-1-7000及びOPADRY(登録商標)OY/B/28920 WHITEが含まれ、それらはそれぞれColorcon社(英国)から入手できる。
【0103】
本発明のpH非依存性の時間に基づく遅延放出型・徐放性プロトンポンプ阻害剤製剤は、カプレット、カプセル剤、投薬前懸濁液用粒子剤、サシェ剤又は錠剤の形態にすることができる。製剤が錠剤の形態をとる場合、この錠剤は例えば、崩壊性錠剤、速時溶解性錠剤、発泡性錠剤、速時融解性錠剤及び/又はミニタブレットでもよい。この製剤は、回転楕円状、立方体形楕円状又は楕円体のような薬物の経口投与に適したいずれの形状でもよい。この製剤は当技術分野で公知の方法でマルチ粒子から製造され、必要に応じて医薬上許容しうる添加剤の追加を含むことになる。
【0104】
本製剤のポリマーの厚み、ポリマーの量と種類、及び放出制御製剤中の非水溶性ポリマーに対する水溶性ポリマーの比率は一般に、プロトンポンプ阻害剤の望ましい放出プロファイルが達成されるように選択される。例えば、水溶性ポリマーに相対して非水溶性ポリマーの量を増加させることにより、薬物の放出を遅延させるか又は緩慢にすることができる。
【0105】
本発明を以下の実施例によりさらに具体的に述べる。材料及び方法の両方についての多くの変更が本発明の目的と範囲から逸脱することなく行えることは当業者に明白であろう。
【0106】
さらに詳述しなくとも、当業者は上記の記述から本発明をその最大限の範囲で利用できるものと思われる。
【0107】
従って、以下の好ましい特定の態様は単に例示のためであって、開示の他の部分を制限するものとは解釈してはならない。
【実施例】
【0108】
以下の実施例は、本発明について製造及び使用に関しての説明をさらに提供するために示す。
実施例1
【0109】
この実施例は、即時放出製剤、拡散調節性膜コーティング及び放出開始遅延性コーティングを含むプロトンポンプ阻害剤の開始遅延型の拡散調節性膜コーティングが施された錠剤に関するものである。
(A) 即時放出コア製剤
【0110】
即時放出コア製剤は、下記の表1に示すような非限定的な製剤の例により製造することができる:
【表1】

(B) 錠剤製造工程
【0111】
即時放出コア製剤は、下記の非限定的な製造方法の例により製造することができる:
1. 適当な量りを用いて材料を秤量する。
2. V型ブレンダーにステアリン酸マグネシウム以外の材料を加える。
3. 30分間(均一に混和するまで)混合する。
4. ブレンダーにステアリン酸マグネシウムを加える。
5. さらに5分間混合する。
6. 適当な打錠機で錠剤(100mg重量)に圧縮する。
20mg強度のタブレット重量100mg

(C) 拡散調節性膜コーティング製剤
【0112】
拡散調節性膜コーティング製剤は、下記の表2に示すような非限定的な製剤の例により、表示の成分を合わせることにより製造することができる:
【表2】

(D) 製造工程
【0113】
拡散調節性膜コーティング製剤は、下記の非限定的な製造方法の例により製造することができる:
1. (B)で製造した錠剤を適当なコーティング機(例えば、Glatt、Acelacota)に装填する。
2. ポリマーコーティング溶液を錠剤上にスプレーする。
3. 必要量のポリマーコーティング溶液を塗布した後、コーティング機中で錠剤を乾燥させる。
(E) 放出開始遅延性コーティング
【0114】
上記(D)の膜コーティング製剤は、表3、4及び5に記すpH非依存性の代替ポリマーコーティング(ポリマーシステムA、B又はC)でそれぞれコーティングすることもできる:
【表3】

【表4】

【表5】

(F) 製造工程
1. 錠剤を適当なコーティング機(例えば、Glatt、Acelacota)に装填する。
2. ポリマーコーティング溶液を錠剤上にスプレーする。
3. 必要量のポリマーコーティング溶液を塗布した後、コーティング機中で錠剤を乾燥させる。

実施例2
(A) マトリックス製剤
【0115】
異なる濃度のMethocel(登録商標)(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)を用いてプロトンポンプ阻害剤の放出調節錠剤製剤を、下記の表6に示すような非限定的な製剤の例により製造することができる:
【表6】

様々なグレードのMethocel(登録商標)、例えば、材料供給元(ダウ・ケミカルズ社)が述べているようにK, E, シリーズなども用いることができる。
(B) 錠剤製造
湿式造粒工程(上記表6の製剤を使用)
1. 材料を秤量する。
2. IPA中にPVPを溶解する。
3. PPI、Methocel、50% Avicel、50%ラクトースを適当な混合機(Planetary(Hobart社)、High Shear(Diosna/Fielder社))中に入れる。
4. 15分間混合して均一な混合物を製造する。
5. 混合を続けながら、混合物に造粒液(PVP溶液)を加える。
6. 適当な造粒終点が達成されるまで混合する(必要ならば、適当な顆粒が製造できるようにさらにIPAを加える)。
7. 許容できるレベルの湿気(<1.0wt%)及びIPA(<0.5wt%)が達成されるまで、顆粒を乾燥させる(オーブン又は流動化装置)。
8. 適当なサイズ(100-500ミクロン)のスクリーンを取り付けた適当な粉砕装置(Co-Mill、Fitzpatrick mill社)に乾燥顆粒を通す。
9. 9で製造された顆粒をブレンダー中に入れ、コロイド状二酸化ケイ素、及びラクトースとAvicel(登録商標)の残りを加える。
10. 15分間混合する。
11. ステアリン酸マグネシウムを加えて、さらに5分間混合する。
12. 適当な打錠機で錠剤に圧縮する。
或いは、
直接圧縮工程(上記表6の製剤を使用)
1. 材料を秤量する。
2. 適当なブレンダー(V又はY型)に全ての材料(ステアリン酸マグネシウムを除く)を入れる。
3. 均一になるまで15分間混合する。
4. ステアリン酸マグネシウムを加える。
5. さらに5分間混合する。
6. 錠剤混合物を圧縮して卵形錠剤にする。
(C) 放出遅延性コーティング
【0116】
上記の錠剤を上記実施例1に述べた方法でpH非依存性ポリマーコーティングでコーティングすることができる。

実施例3
放出開始遅延性錠剤の放出試験
【0117】
これらの錠剤は初期の放出開始遅延とそれに続く徐放性放出相という特徴を持ちpH非依存性の放出プロファイルを達成するように設計されているので、単一のpH媒質条件で試験を行なう。PPIは低pH値では分解されるため、pH 6.8以上で放出試験を行なうことが好ましい。しかしながら、他のpHを利用してもよい。
【0118】
試験条件には、回転式パドル装置 (USP II) で900ml USPリン酸緩衝液 (pH 6.8) を用いて37℃、撹拌速度 50 R.P.M.での放出試験が含まれる。
【0119】
サンプルは所定の時間に試験容器から取り出して放出プロファイルの特徴を見る。
【0120】
以下の放出プロファイルは、実施例1の開始遅延型代替ポリマーシステムA、B又はCでコーティングされた錠剤を用いた場合に得られる結果である。
【表7】

【0121】
より低いpH値の緩衝溶媒中で試験すると、そのpH値でのPPIの分解を説明するための補正が必要となるが同様のプロファイル特性が達成されることになる。

実施例4
代替ポリマーシステムA、B及びCに基く開始遅延型錠剤の臨床試験
【0122】
合計12名のGERD患者について試験した。ベースラインとなる胃内pH測定値は胃酸分泌に関連する投薬を全く行っていない状態の患者から得る。その後以下の4つの処理内容の終了時にpH測定を行う。
1) 市販のオメプラゾール対照薬(Prilosec)20mgを毎日午後10:00に2週間投与。
2) 開始遅延型ER錠剤ポリマーシステムA 20mgを毎日午後10:00に2週間投与。
3) 開始遅延型ER錠剤ポリマーシステムB 20mgを毎日午後10:00に2週間投与。
4) 開始遅延型ER錠剤ポリマーシステムC 20mgを毎日午後10:00に2週間投与。
【0123】
pHプローブはマノメーターで確認した下部食道括約筋の10cm下に置き、胃内pHは午後10:00から翌朝午前8:00まで記録する。
【0124】
胃内がpH<4及び3となる時間パーセントのメジアンを評価する。また、時間毎の胃内pHのメジアンを計算する。胃酸逆流は1時間以上にわたって胃内pH<4となることと定義する。
【0125】
処理をベースラインに対して、及び相互で比較する。特に、市販の対照製品に比較して開始遅延型試験錠剤の有利さが証明される。

実施例5
生物試験
【0126】
オープンラベル、単回投与、4処理、4期間、平均化、無作為化のクロスオーバー試験を3つの開始遅延型製剤と市販の対照製品(Prilosec)の相対的バイオアベイラビリティを比較・評価するために設計する。被験製剤は上記のとおりで、すなわち、代替ポリマーシステムA、B、Cに基づくものである。
【0127】
16名の健常なボランティアに、4つの場合それぞれについて投薬し、各投薬の間には少なくとも7日間の洗い出し期間を空ける。投薬は少なくとも4時間の絶食の後に午後10:00に行う。投与時の水150 mLを除いて、水の摂取は投薬前の1時間と投薬後の1時間は禁止される。静脈血サンプルをそれぞれの投薬の直前と最大48時間までの間、規則的な時間間隔で採取する。血漿中のオメプラゾール濃度をHPLCで測定する。個々の血漿中濃度曲線を作図し、Tmax、Cmax及びAUCを含む個体別、平均、及び相対的な薬物動態パラメーターを評価する。
【0128】
対照製品は0.5-3.5時間のTmaxを示すが、試験製品は>3.5時間、好ましくは約4時間以上で好ましい範囲は約4-12時間という値の、有意に遅延したTmaxを示すことになる。さらに、試験製品はその後の時点では有意に低いCmax値及び、より長期にわたる血漿中濃度を示すことになる。

実施例6
【0129】
本実施例は、微粒子形態のプロトンポンプ阻害剤の放出調節製剤に関するものである。
(A) 即時放出性薬物装填マルチ粒子
【0130】
即時放出性微粒子製剤は下記の表7に示すような非限定的な製剤の例により、製造することができる:
【表8】

製造工程−薬物を装填した即時放出性マルチ粒子
【0131】
薬物を装填した即時放出性微粒子は、下記の非限定的な製造方法例を用いて製造することができる:
【0132】
1. オメプラゾール、界面活性剤、結合剤、滑択剤及び抗付着剤を適当な溶媒中に溶解/懸濁する。
【0133】
2. その後、溶液/懸濁液を適当な流動コーティング機(例えば、Glatt、Acelacota)を用いてノンパレイユ粒子(砂糖球体)上にスプレーする。
【0134】
3. 溶液/懸濁液を全てノンパレイユシード上に塗布したら、薬物を装填した即時放出性マルチ粒子を流動コーティング機中で乾燥させる。
放出調節製剤:
【0135】
これらの即時放出性オメプラゾールマルチ粒子はその後、放出調節オメプラゾール製剤を調製するために下記に述べるもののような多数の様々な放出調節ポリマーシステムでコーティングすることができる。
(B) プロトンポンプ阻害剤の放出調節マルチ粒子製剤
【0136】
放出調節マルチ粒子製剤は、下記の非限定的な例示態様に従って製造することができる。
放出調節マルチ粒子
【0137】
放出調節微粒子は下記に概略を示す製剤を用いて製造することができる:
ポリマーシステムA
【0138】
ポリマー溶液(「A」)は下記の表8の製剤を用いて製造してもよい:
【表9】

ポリマー溶液Aを用いたプロトンポンプ阻害剤の放出調節マルチ粒子製剤
【0139】
ポリマー溶液Aを用いた放出調節微粒子製剤は、下記表9に示すような非限定的な製剤例と、それに続く非限定的な方法例により製造することができる。
【表10】

製造工程−放出調節オメプラゾール製剤
【0140】
1. 適当な流動コーティング機(例えば、Glatt)中に薬物を装填した即時放出性マルチ粒子を装填する。
【0141】
2. 薬物を装填した即時放出性マルチ粒子上にポリマーコーティング溶液をスプレーする。
【0142】
3. 必要量のポリマーコーティング溶液を塗布した後、流動コーティング機中で製品を乾燥させる。
【0143】
4. 自動カプセル化装置を用いて、カプセル1個当たりオメプラゾール20mgの用量を得るのに十分になるように、硬ゼラチンカプセル中に製品を封入する。

(C) プロトンポンプ阻害剤の放出調節マルチ粒子製剤
【0144】
さらに別の放出調節マルチ粒子製剤を、下記の非限定的な態様例により製造することができる:
放出調節マルチ粒子
【0145】
放出調節微粒子は下記に概略を示す製剤を用いて製造することができる:
ポリマーシステムB
【0146】
ポリマー溶液(「b」)は下記の表10の製剤を使用して製造してもよい:
【表11】

ポリマー溶液Bを使用したプロトンポンプ阻害剤の放出調節マルチ粒子製剤
【0147】
ポリマー溶液Bを用いた放出調節微粒子製剤は、下記表11に示すような非限定的な製剤例と、それに続く非限定的な方法例により製造することができる。
【表12】

製造工程−放出調節プロトンポンプ阻害剤製剤
【0148】
1. 適当な流動コーティング機(例えば、Glatt)中に薬物を装填した即時放出性マルチ粒子を装填する。
【0149】
2. 薬物を装填した即時放出性マルチ粒子上にポリマーコーティング溶液をスプレーする。
【0150】
3. 必要量のポリマーコーティング溶液を塗布した後、流動コーティング機中で製品を乾燥させる。
【0151】
4. 自動カプセル化装置を用いて、カプセル1個当たりオメプラゾール20mgの用量を得るのに十分になるように、硬流動カプセル中に製品を封入する。

ポリマー溶液Cを使用したプロトンポンプ阻害剤の放出調節マルチ粒子製剤
【0152】
ポリマー溶液Cを用いた放出調節微粒子製剤は、下記表12に示すような非限定的な製剤例と、それに続く非限定的な方法例により製造することができる。
【表13】

ポリマー溶液Cを使用したプロトンポンプ阻害剤の放出調節マルチ粒子製剤
【0153】
ポリマー溶液Cを用いた放出調節微粒子製剤は、下記表13に示すような非限定的な製剤例と、それに続く非限定的な方法例により製造することができる。
【表14】

製造工程−放出調節プロトンポンプ阻害剤製剤
【0154】
1. 適当な流動コーティング機(例えば、Glatt)中に薬物を装填した即時放出性マルチ粒子を装填する。
【0155】
2. 薬物を装填した即時放出性マルチ粒子上にポリマーコーティング溶液をスプレーする。
【0156】
3. 必要量のポリマーコーティング溶液を塗布した後、流動コーティング機中で製品を乾燥させる。
【0157】
4. 自動カプセル化装置を用いて、カプセル1個当たりオメプラゾール20mgの用量を得るのに十分になるように、硬流動カプセル中に製品を封入する。

ポリマー溶液Dを使用したプロトンポンプ阻害剤の放出調節マルチ粒子製剤
【0158】
ポリマー溶液Dを用いた放出調節微粒子製剤は、下記表14に示すような非限定的な製剤例と、それに続く非限定的な方法例により製造することができる。
【表15】

ポリマー溶液Dを使用したプロトンポンプ阻害剤の放出調節マルチ粒子製剤
【0159】
ポリマー溶液Dを用いた放出調節微粒子製剤は、下記表15に示すような非限定的な製剤例と、それに続く非限定的な方法例により製造することができる。
【表16】

製造工程−放出調節プロトンポンプ阻害剤製剤
【0160】
1. 適当な流動コーティング機(例えば、Glatt)中に薬物を装填した即時放出性マルチ粒子を装填する。
【0161】
2. 薬物を装填した即時放出性マルチ粒子上にポリマーコーティング溶液をスプレーする。
【0162】
3. 必要量のポリマーコーティング溶液を塗布した後、流動コーティング機中で製品を乾燥させる。
【0163】
4. 自動カプセル化装置を用いて、カプセル1個当たりオメプラゾール20mgの用量を得るのに十分になるように、硬流動カプセル中に製品を封入する。

(D) 遅延放出型/放出調節プロトンポンプ阻害剤製剤
【0164】
或いは、上記のプロトンポンプ放出調節製剤が完成したら、下記に述べるポリマーシステムのうちの1つでこの製剤をさらにコーティングして、プロトンポンプ阻害剤の遅延放出とそれに続く放出調節をもたらすことができる。
【0165】
非限定的な例を下記の表16に示し、それに非限定的な方法例が続く。
【表17】

製造工程−遅延型/放出調節オメプラゾール製剤
【0166】
1. 適当な流動コーティング機(例えば、Glatt)中にオメプラゾール放出調節マルチ粒子を装填する。
【0167】
2. オメプラゾール放出調節マルチ粒子上にポリマーコーティング溶液をスプレーする。
【0168】
3. 必要量のポリマーコーティング溶液を塗布した後、流動コーティング機中で製品を乾燥させる。
【0169】
4. 自動カプセル化装置を用いて、カプセル1個当たりオメプラゾール20mgの用量を得るのに十分になるように、硬流動カプセル中に製品を封入する。
【0170】
本発明をその範囲がより完全に理解され正しく認識されるようにいくつかの好ましい態様に関して記述したが、これらの特定の態様に本発明を限定することを意図したものではない。それとは逆に、添付の請求項により定義される本発明の範囲に含まれうる全ての代替、改良、及び均等物を包含することを意図している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのプロトンポンプ阻害剤の初期のpH非依存性の時間に基づく遅延放出及びそれに続く徐放性放出をもたらすように構成及び調整された少なくとも1つのプロトンポンプ阻害剤を含む医薬製剤であって、その少なくとも1つのプロトンポンプ阻害剤の初期のpH非依存性の時間に基づく遅延放出期間には約1〜4時間の間に少なくとも1つのプロトンポンプ阻害剤の最大約20%が放出されることが含まれ、それに続くプロトンポンプ阻害剤の徐放性放出は約3〜12時間にわたり、期間中何れの1時間及び全ての1時間について少なくとも1つのプロトンポンプ阻害剤の放出パーセントの1時間当たりの増加が35%未満となる医薬製剤。
【請求項2】
上記の少なくとも1つのプロトンポンプ阻害剤の初期のpH非依存性の時間に基づく遅延放出には、約2〜3時間の間に約10%未満の少なくとも1つのプロトンポンプ阻害剤が放出されることが含まれ、それに続くプロトンポンプ阻害剤の徐放性放出は少なくとも1つのプロトンポンプ阻害剤の1時間当たりの放出パーセントの増加が約30%未満となる、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項3】
上記の少なくとも1つのプロトンポンプ阻害剤の初期のpH非依存性の時間に基づく遅延放出には、約2〜3時間の間に約10%未満の少なくとも1つのプロトンポンプ阻害剤が放出されることが含まれ、それに続くプロトンポンプ阻害剤の徐放性放出は少なくとも1つのプロトンポンプ阻害剤の1時間当たりの放出パーセントの増加が約25%未満となる、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項4】
上記の少なくとも1つのプロトンポンプ阻害剤の初期のpH非依存性の時間に基づく遅延放出には、約2〜3時間の間に約10%未満の少なくとも1つのプロトンポンプ阻害剤が放出されることが含まれ、それに続くプロトンポンプ阻害剤の徐放性放出は少なくとも1つのプロトンポンプ阻害剤の1時間当たりの放出パーセントの増加を約20%未満となる、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項5】
上記の少なくとも1つのプロトンポンプ阻害剤の初期のpH非依存性の時間に基づく遅延放出には、少なくとも1つのプロトンポンプ阻害剤が放出されないことが含まれる、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項6】
上記の少なくとも1つのプロトンポンプ阻害剤の初期のpH非依存性の時間に基づく遅延放出には、約5%未満の少なくとも1つのプロトンポンプ阻害剤が放出されることが含まれる、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項7】
上記の少なくとも1つのプロトンポンプ阻害剤の初期のpH非依存性の時間に基づく遅延放出には、少なくとも約1時間の間に少なくとも1つのプロトンポンプ阻害剤が約5%未満放出されるか又は放出されないことが含まれる、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項8】
上記の少なくとも1つのプロトンポンプ阻害剤の初期のpH非依存性の時間に基づく遅延放出には、少なくとも約2時間の間に少なくとも1つのプロトンポンプ阻害剤が約5%未満放出されるか又は放出されないことが含まれる、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項9】
上記の少なくとも1つのプロトンポンプ阻害剤の初期のpH非依存性の時間に基づく遅延放出には、哺乳動物に投与した後約2〜4時間の間に少なくとも1つのプロトンポンプ阻害剤が約5%未満放出されるか又は放出されないことが含まれる、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項10】
上記の少なくとも1つのプロトンポンプ阻害剤の続いて起きる徐放性放出には、約3から9時間にわたって少なくとも1つのプロトンポンプ阻害剤が放出されることが含まれる、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項11】
上記の少なくとも1つのプロトンポンプ阻害剤の続いて起きる徐放性放出には、約4から9時間にわたって少なくとも1つのプロトンポンプ阻害剤が放出されることが含まれる、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項12】
上記の少なくとも1つのプロトンポンプ阻害剤の続いて起きる徐放性放出には、約4から6時間にわたって少なくとも1つのプロトンポンプ阻害剤が放出されることが含まれる、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項13】
上記の少なくとも1つのプロトンポンプ阻害剤の続いて起きる徐放性放出には、約4から6時間にわたって少なくとも1つのプロトンポンプ阻害剤が放出されることが含まれる、請求項3に記載の医薬製剤。
【請求項14】
上記製剤が拡散調節システムを含む、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項15】
上記拡散調節システムが少なくとも1つのプロトンポンプ阻害剤、拡散調節コーティング及びpH非依存性の遅延放出性コーティングを含む少なくとも1つのコアを含む、請求項14に記載の医薬製剤。
【請求項16】
上記の少なくとも1つのコアが多数のコアを含む、請求項15に記載の医薬製剤。
【請求項17】
上記のコアが微粒子の形態である、請求項16に記載の医薬製剤。
【請求項18】
上記製剤が拡散調節システムを含み、拡散調節システムが少なくとも1つのプロトンポンプ阻害剤、拡散調節コーティング及びpH非依存性の遅延放出性コーティングを含むコアを含む、請求項17に記載の医薬製剤。
【請求項19】
上記製剤がマトリックスシステムを含む、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項20】
上記製剤がマトリックスシステムを含む、請求項15に記載の医薬製剤。
【請求項21】
上記製剤が浸透圧システムを含む、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項22】
上記製剤が不溶性ポリマーを含む、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項23】
上記製剤が腸溶性コーティングを含まない、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項24】
上記製剤が崩壊剤を含まない、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項25】
回転式パドル装置 (USP II) で900ml USPリン酸緩衝液 (pH 6.8) を用いて37℃、撹拌速度 50 rpmで測定した溶解プロファイルが下記になるプロトンポンプ阻害剤製剤:
2時間≦30%、
3時間≦60%、
6時間≧20%、
8時間≧40%、及び
12時間≧70%。
【請求項26】
上記製剤がpH非依存性の時間に基づく遅延放出型・徐放性製剤である、請求項25に記載のプロトンポンプ阻害剤製剤。
【請求項27】
溶解プロファイルが下記である、請求項26に記載のプロトンポンプ阻害剤製剤:
2時間‐20%未満、
3時間‐10%より多いが30%未満、
4時間‐20%より多いが40%未満、
6時間‐40%より多いが60%未満、
8時間‐60%より多いが80%未満、及び
12時間‐80%より多い。
【請求項28】
溶解プロファイルが下記である、請求項26に記載のプロトンポンプ阻害剤製剤:
3時間‐20%未満、
4時間‐10%より多いが30%未満、
6時間‐30%より多いが50%未満、
8時間‐50%より多いが70%未満、及び
12時間‐75%より多い。
【請求項29】
溶解プロファイルが下記である、請求項26に記載のプロトンポンプ阻害剤製剤:
4時間‐20%未満、
6時間‐20%より多いが40%未満、
8時間‐40%より多いが60%未満、及び
12時間‐70%より多い。
【請求項30】
哺乳動物に医薬製剤を経口投与することを含む夜間の胃酸逆流の治療方法であって、当該医薬製剤が少なくとも1つのプロトンポンプ阻害剤の初期のpH非依存性の時間に基づく遅延放出及びそれに続く徐放性放出をもたらすように構成及び調整された少なくとも1つのプロトンポンプ阻害剤を含む医薬製剤である方法。
【請求項31】
上記哺乳動物がヒトである、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
請求項1に記載の製剤をヒトに経口投与することを含む、夜間の胃酸逆流の治療方法。
【請求項33】
請求項3に記載の製剤をヒトに経口投与することを含む、夜間の胃酸逆流の治療方法。
【請求項34】
請求項15に記載の製剤をヒトに経口投与することを含む、夜間の胃酸逆流の治療方法。
【請求項35】
少なくとも1つのプロトンポンプ阻害剤を含む製剤の製造方法であって、少なくとも1つのプロトンポンプ阻害剤に医薬用成分を加えて、初期のpH非依存性の時間に基づく遅延放出性及びそれに続く徐放性を有する請求項1に記載の製剤を提供することを含む方法。
【請求項36】
少なくとも1つのプロトンポンプ阻害剤を含む製剤の製造方法であって、少なくとも1つのプロトンポンプ阻害剤に医薬用成分を加えて、初期のpH非依存性の時間に基づく遅延放出性及びそれに続く徐放性を有する請求項3に記載の製剤を提供することを含む方法。
【請求項37】
少なくとも1つのプロトンポンプ阻害剤を含む製剤の製造方法であって、少なくとも1つのプロトンポンプ阻害剤に医薬用成分を加えて、初期のpH非依存性の時間に基づく遅延放出性及びそれに続く徐放性を有する請求項15に記載の製剤を提供することを含む方法。
【請求項38】
少なくとも1つのプロトンポンプ阻害剤を含む製剤であって、当該製剤が3.5時間より長いTmaxを有する製剤。
【請求項39】
Tmaxが約4時間よりも長い、請求項38に記載の製剤。
【請求項40】
Tmaxが約4〜12時間である、請求高38に記載の製剤。
【請求項41】
上記製剤がpH非依存性の時間に基づく遅延放出型・徐放性製剤である、請求項38に記載の製剤。



【公表番号】特表2007−504261(P2007−504261A)
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−525713(P2006−525713)
【出願日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【国際出願番号】PCT/EP2004/009806
【国際公開番号】WO2005/020954
【国際公開日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(506377248)エイジーアイ・セラピューティクス・リサーチ・リミテッド (8)
【Fターム(参考)】