説明

プロピレンオキサイド選択率を測定する方法

【課題】正確なプロピレンオキサイド選択率を測定する方法および最適な反応条件を維持するようにプロピレンオキサイド選択率を最適化する方法を提供する。
【解決手段】触媒を含有する反応塔にプロピレンと酸素を含む反応ガス流を供給して、プロピレンオキサイドを含む生成ガス流を前記反応塔から排出させるプロピレンオキサイドの製造方法において、プロピレンオキサイド選択率を測定する方法であって、(I)反応ガス流または反応ガス流のサンプルの赤外線または近赤外線の吸光度を測定して、反応ガス流の組成を分析し、反応ガス流中のプロピレン、酸素、プロピレンオキサイド、二酸化炭素および水の2つ以上の濃度を決定する工程と、(II)上記赤外線または近赤外線の吸光度の測定から、上記化合物の濃度を決定する工程と、(III)工程(I)および工程(II)で得られた濃度から、プロピレンオキサイド選択率を計算する工程とを含む、方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロピレンオキサイドの製造方法において、プロピレンオキサイド選択率を測定する方法に関する。さらには、本発明は、プロピレンオキサイド選択率を維持または改善する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プロピレンオキサイドは、例えば金属触媒存在下でのプロピレンの接触気相酸化によって製造することができる。反応は発熱反応であり、反応塔は典型的には金属触媒を充填した多数の反応管により構成され、冷媒が反応管の外側を流れて反応熱を除去することで反応温度を制御する。プロピレンの接触気相酸化によるプロピレンオキサイドの製造では、副反応としてプロピレンが完全酸化して二酸化炭素と水を生成する反応も生じる。プロピレンオキサイドの選択率は、プロピレンオキサイドの製造における変動費を決定する上で重要な要因であり、維持または改善することが重要である。プロピレンオキサイドの選択率は、生成するプロピレンオキサイドのモル数を、変換されたプロピレンのモル数で割ったものであり、分数として表される。酸化反応の化学反応式は下式で表わされる。
+(4.5-4S)O → S CO+3(1-S)CO+3(1-S)H
(式中、Sはプロピレンオキサイド選択率を表わす。)
【0003】
プロピレンオキサイド選択率は、プロピレンオキサイド反応塔に供給する反応ガス流の組成と、反応塔から排出される生成ガス流の組成から計算される。通常、ガスクロマトグラフィーが、反応ガス流と生成ガス流の組成を分析するために使用される。反応ガス流と生成ガス流のサンプルをガスクロマトグラフィーで分析することで、プロピレン、プロピレンオキサイドおよび二酸化炭素の濃度を測定することができる。しかし、ガスクロマトグラフィーによる分析にはいくつかの問題がある。水が存在する場合、分析が困難であるので、水の分析はせずに、分析の前にガス流から水を除去してガスクロマトグラフィー分析を行うのが一般的である。また、水を除去する際に、プロピレンオキサイドも一緒に除去されて、プロピレンオキサイドの分析値が不正確になることがあり得る。そこで、プロピレンオキサイドの濃度を測定するために別のガスクロマトグラフィーでも分析するのが一般的である。最後に、アルゴンの存在によって分析結果が影響されるために、ガスクロマトグラフィーを用いて酸素濃度を測定することは、困難である。そこで、酸素濃度の分析は磁気式酸素分析計を用いて測定することが一般的である。
【0004】
特許文献1には、エチレンオキサイド選択率を測定する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2009/150208
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ガス成分5つのうちの任意の2つの濃度を測定して組合せれば、プロピレンオキサイド選択率が計算されることになるが、上記のガスクロマトグラフィーによる方法で測定した場合、ガス成分の2つの組合せによって、選択率の値が大きく変わる。さらに、ガスクロマトグラフィーの分析は、一般に3分以上がかかるため、その間に、選択率が変化して、得られた選択率の数値が実際の選択率を正確に反映していないことがあり得る。
そこで、本発明の課題は、正確な反応の選択率を測定する方法、および最適な反応条件を維持するように反応の選択率を最適化する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため検討した結果、赤外線または近赤外線を用いることで、反応ガス流および生成ガス流中のプロピレン、酸素、プロピレンオキサイド、二酸化炭素および水の濃度を測定して、その測定値からプロピレンオキサイド選択率を迅速かつ正確に求めることができることを見い出して、以下に示す本発明を完成した。
[1] 触媒を含有するプロピレンオキサイド反応塔にプロピレンと酸素を含む反応ガス流を供給して、プロピレンオキサイドを含む生成ガス流を前記反応塔から排出させるプロピレンオキサイドの製造方法において、プロピレンオキサイド選択率を測定する方法であって、
(I)反応ガス流または反応ガス流のサンプルの赤外線または近赤外線の吸光度を測定して、反応ガス流の組成を分析し、反応ガス流中のプロピレン、酸素、プロピレンオキサイド、二酸化炭素および水の2つ以上の濃度を決定する工程と、
(II)生成ガス流または生成ガス流のサンプルの赤外線または近赤外線の吸光度を測定して、生成ガス流の組成を分析し、生成ガス流中のプロピレン、酸素、プロピレンオキサイド、二酸化炭素および水の2つ以上の濃度を決定する工程と、
(III)工程(I)および工程(II)で得られたプロピレン、酸素、プロピレンオキサイド、二酸化炭素および水の2つ以上の濃度から、プロピレンオキサイド選択率を計算する工程とを含む、方法。
[2] 赤外線または近赤外線の光源として、熱フィラメント、グローバまたはレーザーを用いる、[1]に記載の方法。
[3] 光源が波長可変ダイオードレーザーである、[2]に記載の方法。
[4] 反応ガス流の全体および生成ガス流の全体について、赤外線または近赤外線の吸光度を測定する、[1]〜[3]のいずれかに記載の方法。
【0008】
[5] 反応ガス流および生成ガス流におけるプロピレン、酸素、プロピレンオキサイド、二酸化炭素および水の3つ以上の組成データを用いてプロピレンオキサイド選択率を計算する、[1]〜[4]のいずれかに記載の方法。
[6] 工程(I)で、反応ガス流中のプロピレンオキサイドおよび酸素の濃度を決定し、
工程(II)で、生成ガス中のプロピレン、酸素、プロピレンオキサイド、二酸化炭素および水の濃度を決定し、
工程(III)で、プロピレンオキサイド選択率を、工程(I)および工程(II)で得られたプロピレン、酸素、プロピレンオキサイド、二酸化炭素および水の濃度から計算する、[1]〜[5]のいずれかに記載の方法。
[7] 反応ガス流および/または生成ガス流を分析して、反応ガス流および/または生成ガス流中のメタン、プロパン、窒素、アルゴンおよび一酸化炭素の1つ以上の濃度を決定する、[1]〜[6]のいずれかに記載の方法。
[8] 工程(I)または工程(II)で、反応ガス流および/または生成ガス流中のプロパン濃度を決定し、工程(III)でプロパン濃度を用いてプロピレンオキサイド選択率を計算する、[7]に記載の方法。
【0009】
[9] 触媒を含有するプロピレンオキサイド反応塔にプロピレンと酸素を含む反応ガス流を供給して、プロピレンオキサイドを含む生成ガス流を前記反応塔から排出させるプロピレンオキサイドの製造方法において、プロピレンオキサイド選択率を維持または改善する方法であって、
(I)[1]〜[8]のいずれかに記載の方法によって、プロピレンオキサイド選択率を測定する工程と、
(II)プロピレンからプロピレンオキサイドを製造する方法における1以上の反応条件を変更する工程と、
(III)[1]〜[8]のいずれかに記載の方法によって、プロピレンオキサイド選択率を測定して、工程(I)で得たプロピレンオキサイド選択率と比較する工程と、
(IV)プロピレンオキサイド選択率が最大となるように反応条件を変更して、工程(I)、工程(II)および工程(III)を繰り返す工程とを含む、方法。
[10] 工程(II)で、反応ガス流中の二酸化炭素、水および/または添加剤の濃度を変更する、[9]に記載の方法。
[11] 工程(II)で、プロピレンオキサイド反応塔の温度を変更する、[9]または[10]に記載の方法。
[12] 触媒が、(a)銅酸化物及び(b)ルテニウム酸化物を含有する触媒である[1]〜[11]のいずれかに記載の方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明方法によれば、プロピレンオキサイド選択率を非常に迅速かつ正確に測定することができ、それによって、最適な反応条件を認識し、維持することが可能となる。また、反応条件の小さな変化が選択率にどのような影響を与えるかをも観察することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係るプロピレンオキサイド選択率を測定するための装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明が適用できるプロピレンオキサイドの製造方法としては、例えば、金属酸化物等を含有するような金属触媒存在下でプロピレン及び酸素を反応させる製法等が挙げられる。このような金属触媒存在下でプロピレン及び酸素を反応させる製法(プロピレンの接触気相酸化)については、例えば、WO2011/075458、WO2011/075459、WO2012/005822、WO2012/005823、WO2012/005824、WO2012/005825、WO2012/005831、WO2012/005832、WO2012/005835、WO2012/005837、WO2012/009054、WO2012/009059、WO2012/009058、WO2012/009053、WO2012/009057、WO2012/009055、WO2012/009052、WO2012/009055等に記載されている。その製法において用いる触媒としては、下記(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)、(h)、(i)、(j)、(k)、(l)、(m)、(n)、(o)、(p)及び(q)からなる群から選ばれる少なくとも2種を含む触媒が挙げられる。
(a)銅酸化物
(b)ルテニウム酸化物
(c)マンガン酸化物
(d)ニッケル酸化物
(e)オスミウム酸化物
(f)ゲルマニウム酸化物
(g)クロミウム酸化物
(h)タリウム酸化物
(i)スズ酸化物
(j)ビスマス酸化物
(k)アンチモン酸化物
(l)レニウム酸化物
(m)コバルト酸化物
(n)オスミウム酸化物
(o)ランタノイド酸化物
(p)タングステン酸化物
(q)アルカリ金属成分又はアルカリ土類金属成分
好ましくは(a)銅酸化物及び(b)ルテニウム酸化物を含有する触媒であり、より好ましくは(a)銅酸化物、(b)ルテニウム酸化物及び(q)アルカリ金属成分又はアルカリ土類金属成分を含有する触媒である。
【0013】
プロピレンの接触気相酸化において、酸素としては、酸素または空気を供給することができるが、好ましくは酸素を供給する。高い酸素濃度でも、可燃性の混合物にならないようにするために、一般にメタン等のバラストガスを反応ガスに加える。例えば、WO2012/102918に記載されている有機塩素化合物等の添加剤を、触媒性能を制御するために加えてもよい。プロピレン、酸素、バラストガスおよび添加剤は、好ましくはプロピレンオキサイド吸収体からの再循環ガスに加えられ、プロピレンオキサイド反応塔に供給される。プロピレンオキサイド反応塔から排出される生成ガス流は、WO2009/150208記載のエチレンオキサイド製造法におけるエチレンオキサイドのように、好ましくはプロピレンオキサイド吸収塔に供給され、そこでプロピレンオキサイドは液体吸収剤に吸収される。プロピレンオキサイド吸収塔で吸収されないガスは、好ましくはプロピレンオキサイド反応塔に再循環する。プロピレンオキサイド反応塔は、好ましくは多管固定床反応塔である。反応は、好ましくは0.01MPaA〜6MPaAの圧力で、100℃〜350℃の温度で実施される。
【0014】
反応ガス流、生成ガス流またはこれらのサンプルの赤外線または近赤外線の吸光度を測定する。赤外線または近赤外線を、ガス流またはそのサンプルに照射して、どの程度が吸収されたかを検出器で測定する。検出器の好ましい例は、当業者には知られている。赤外線または近赤外線の光源としては、熱フィラメント、グローバまたはレーザー等が挙げられる。本発明の一実施形態として、光源は波長可変ダイオードレーザーが挙げられる。波長可変ダイオードレーザー分析器は、例えば横河電機から入手できる。レーザーは、測定対象のガスのすべての吸収領域の波長をカバーする近赤外線の光源として使用される。波長可変ダイオードレーザー分析器は、単一のガス流に含まれる多数の異なるガスを検出することができ、すなわちプロピレンオキサイド、プロピレン、二酸化炭素、酸素と水を検出することができる。US7166843は、波長可変ダイオードレーザー分析器を用いて空気中のエチレンオキサイドを検出することを提案している。WO2006/104796は、波長可変ダイオードレーザー分析器を用いた化学分析法を記載する。WO2008/030386には、エチレンオキサイド反応塔の限界酸素指数を制御するために波長可変ダイオードレーザー分析器を使用することが記載されている。
【0015】
反応ガス流および生成ガス流の全体に対して赤外線または近赤外線の吸収を測定すること、すなわちガス流に対して直接分析を行うことが好ましい。これによって、最も正確な測定ができ、生成物または原料を無駄にしない。しかし、反応ガス流および生成ガス流のサンプルで吸光度を測定することも可能である。例えば、製造プロセスのフローの一部をバイパスに通して吸光度を測定して、その後、製造プロセスのフローに戻すことによって、または製造プロセスからサンプルを完全に取り出して吸光度を測定することによって、実施できる。
ガス流またはそのサンプルの赤外線または近赤外線の吸光度を測定することによって、ガス流の組成を分析することができる。ランベルト・ベールの法則を含む吸収分光法の原理は当業者に周知されており、市販の装置は吸光データを処理して、ガス流の様々な成分の濃度を提供する。本発明の方法において、反応ガス流および生成ガス流中のプロピレン、酸素、プロピレンオキサイド、二酸化炭素および水の2つ以上の濃度が分析、提供される。好ましくは、反応ガス流および/または生成ガス流中のプロパン、メタン、窒素、アルゴン、一酸化炭素の一つ以上の濃度も分析、提供される。プロピレンオキサイドの製造プロセスで、プロパンが酸素と反応して二酸化炭素と水が生成される。この反応は選択率の計算に影響を与えるので、反応ガス流および生成ガス流中にプロパンの濃度を測定することが特に望ましい。
【0016】
酸化プロセスの選択率は、工程(I)および工程(II)で得られた組成データから計算される。組成データからの選択率を計算する方法は、例えばTamhane and Mah, Technometrics, November 1985, Vol.27, No.4, p.409-422で概説された方法など、当業者に知られている。反応ガス流および生成ガス流中のプロピレン、酸素、プロピレンオキサイド、二酸化炭素および水の2つ以上の構成データを用いて選択率が計算される。選択率は、好ましくは反応ガス流および生成ガス流中の3つ以上の成分、より好ましくは4つ以上の成分、最も好ましくはすべての5つの成分(プロピレン、酸素、プロピレンオキサイド、二酸化炭素および水)を用いて計算される。選択率の計算で用いる成分の数を増やすことで、選択率の精度が向上する。計算の精度を改善するために、選択率の計算にプロパンの濃度を加えることが望ましい。
【0017】
プロピレンオキサイドの反応の選択率を測定、監視することは、プラントが効果的かつ効率的に運転されているかを決定するために重要である。また、選択率の正確かつ迅速な測定によって、プロピレンオキサイド製造プロセスの選択率を維持、改善することができる。本発明の方法において、プロピレンからプロピレンオキサイドの製造方法の選択率は、本発明の方法によって測定され、反応条件が変更され、選択率が再び測定される。反応の選択率が最大となるように反応条件を変更して、これらの工程を繰り返す。当業者は、反応条件を変えて、これによって選択率が改善または減少するかを観察し、反応条件をさらに適切に変更する。例えば、当業者は、プロピレンオキサイド反応塔に供給される反応ガス流中の添加剤の濃度を変えることができる。これは、例えば、反応ガスに添加剤の流量を増加させることで変更できる。反応ガス流の添加剤濃度を増加させることで選択率が改善されれば、当業者は、選択率にさらなる改善が認められなくなるまで、反応ガス流の添加剤濃度を増加させ続けることができる。
【0018】
変更できる反応条件としては、温度(例えば、反応ガス流の温度、またはプロピレンオキサイド反応塔の温度等)、濃度(例えば、プロピレンオキサイド反応塔に戻す再循環ガスから水または二酸化炭素をより多くもしくはより少なく除去することによって、またはプロピレンオキサイド反応塔に供給される反応ガス流中のプロピレンまたは酸素の濃度を増加または減少させることによって)、および流量と圧力が含まれる。
WO2004/078737およびWO2004/078736には、エチレンオキサイド反応塔に供給される二酸化炭素および水の濃度を変更することで、反応の選択率を変更する方法が記載されている。本発明の一実施形態において、工程(II)で変更される反応条件は、プロピレンオキサイド反応塔に供給される反応ガス流中の二酸化炭素および/または水の濃度である。反応ガス流中の水の濃度は、反応ガス流による赤外線または近赤外線の吸光度を測定することで求めることができるため、反応塔に供給される水の濃度が選択率にどのような影響を与えるかを評価するのに、本発明の方法は特に適している。
【0019】
WO2004/044002およびWO2004/044003には、エチレンオキサイド反応塔に供給される添加剤の量を変更することで、反応の選択率を変更する方法が記載されている。本発明の一実施形態において、工程(II)で変更される反応条件は、プロピレンオキサイド反応塔に供給される反応ガス流中の添加剤の濃度である。本発明のさらなる態様において、工程(II)で変更される反応条件は、酸化反応の温度である。
本発明の方法で使用される分析器は、反応ガス流、生成ガス流、またはガス流のサンプルによる赤外線または近赤外線の吸光度を測定することができるように配置される。好ましい実施形態では、プロピレンオキサイド反応塔に入る前に反応ガス流の全体の吸光度を測定することができるように、分析器をプロピレンオキサイド反応塔の入口の供給ライン上に配置する。好ましい実施形態では、プロピレンオキサイド反応塔を出た後に生成ガス流の全体の吸光度を測定することができるように、分析器をプロピレンオキサイド反応塔の出口の製品ラインに配置する。
【実施例】
【0020】
以下、本発明をさらに詳しく述べるために、実施例を説明する。しかし、この実施例は、何ら本発明の範囲を制限するものでない。
図1は、本発明の方法の好ましい実施形態を示している。(1)で、プロピレン、酸素、メタン、添加剤(モノクロロエタン等)が再循環ガスに供給される。プロピレンオキサイド反応塔(2)でプロピレンと酸素が反応して、プロピレン、酸素、メタン、プロピレンオキサイド、添加剤を含むガス組成物が提供され、プロピレンオキサイド吸収塔(3)に供給される。吸収していない吸収剤が(4)で吸収塔(3)に供給され、(5)でプロピレンオキサイドを吸収した吸収剤を吸収塔から排出させる。吸収塔(3)で吸収されなかったガスは、吸収塔(3)から(6)で排出され、一部は二酸化炭素回収塔(7)に送られて二酸化炭素がガスから取り除かれて、反応塔(2)に再循環される。波長可変ダイオードレーザー等の赤外線(近赤外線)分析器が、反応塔(2)の入口(8)および出口(9)に配置される。分析器(8,9)を用いて反応ガス流および生成ガス流の組成を測定して、選択率を計算し、反応条件を変更することによって、選択率を維持および/または最大化することができる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明によって、正確な反応の選択率を測定する方法および最適な反応条件を維持するように反応の選択率を最適化する方法が提供される。
【符号の説明】
【0022】
2:プロピレンオキサイド反応塔
3:プロピレンオキサイド吸収塔
7:二酸化炭素回収塔
8:入口
9:出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒を含有するプロピレンオキサイド反応塔にプロピレンと酸素を含む反応ガス流を供給して、プロピレンオキサイドを含む生成ガス流を前記反応塔から排出させるプロピレンオキサイドの製造方法において、プロピレンオキサイド選択率を測定する方法であって、
(I)反応ガス流または反応ガス流のサンプルの赤外線または近赤外線の吸光度を測定して、反応ガス流の組成を分析し、反応ガス流中のプロピレン、酸素、プロピレンオキサイド、二酸化炭素および水の2つ以上の濃度を決定する工程と、
(II)生成ガス流または生成ガス流のサンプルの赤外線または近赤外線の吸光度を測定して、生成ガス流の組成を分析し、生成ガス流中のプロピレン、酸素、プロピレンオキサイド、二酸化炭素および水の2つ以上の濃度を決定する工程と、
(III)工程(I)および工程(II)で得られたプロピレン、酸素、プロピレンオキサイド、二酸化炭素および水の2つ以上の濃度から、プロピレンオキサイド選択率を計算する工程とを含む、方法。
【請求項2】
赤外線または近赤外線の光源として、熱フィラメント、グローバまたはレーザーを用いる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
光源が波長可変ダイオードレーザーである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
反応ガス流の全体および生成ガス流の全体について、赤外線または近赤外線の吸光度を測定する、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
反応ガス流および生成ガス流におけるプロピレン、酸素、プロピレンオキサイド、二酸化炭素および水の3つ以上の組成データを用いてプロピレンオキサイド選択率を計算する、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
工程(I)で、反応ガス流中のプロピレンオキサイドおよび酸素の濃度を決定し、
工程(II)で、生成ガス中のプロピレン、酸素、プロピレンオキサイド、二酸化炭素および水の濃度を決定し、
工程(III)で、プロピレンオキサイド選択率を、工程(I)および工程(II)で得られたプロピレン、酸素、プロピレンオキサイド、二酸化炭素および水の濃度から計算する、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
反応ガス流および/または生成ガス流を分析して、反応ガス流および/または生成ガス流中のメタン、プロパン、窒素、アルゴンおよび一酸化炭素の1つ以上の濃度を決定する、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
工程(I)または工程(II)で、反応ガス流および/または生成ガス流中のプロパン濃度を決定し、工程(III)でプロパン濃度を用いてプロピレンオキサイド選択率を計算する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
触媒を含有するプロピレンオキサイド反応塔にプロピレンと酸素を含む反応ガス流を供給して、プロピレンオキサイドを含む生成ガス流を前記反応塔から排出させるプロピレンオキサイドの製造方法において、プロピレンオキサイド選択率を維持または改善する方法であって、
(I)請求項1〜8のいずれかに記載の方法によって、プロピレンオキサイド選択率を測定する工程と、
(II)プロピレンからプロピレンオキサイドを製造する方法における1以上の反応条件を変更する工程と、
(III)請求項1〜8のいずれかに記載の方法によって、プロピレンオキサイド選択率を測定して、工程(I)で得たプロピレンオキサイド選択率と比較する工程と、
(IV)プロピレンオキサイド選択率が最大となるように反応条件を変更して、工程(I)、工程(II)および工程(III)を繰り返す工程とを含む、方法。
【請求項10】
工程(II)で、反応ガス流中の二酸化炭素、水および/または添加剤の濃度を変更する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
工程(II)で、プロピレンオキサイド反応塔の温度を変更する、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
触媒が、(a)銅酸化物及び(b)ルテニウム酸化物を含有する触媒である請求項1〜11のいずれかに記載の方法。

【図1】
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【公開番号】特開2013−82692(P2013−82692A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2012−198402(P2012−198402)
【出願日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】