プローブユニット、回路基板検査装置およびプローブユニット製造方法
【課題】製造コストの高騰、および故障の発生を抑えつつ小形化を実現する。
【解決手段】複数のプローブ12と、各プローブ12を保持する保持部11とを備え、保持部11は、挿通孔11cを有する板状体で構成され、プローブ12は、先端部21cが挿通孔11cに挿通されて絶縁状態で保持部11に固定された被覆導線21と、柱状に形成されると共に基端部22aが被覆導線21における先端部21cの端面21dに電気的に接続された状態で保持部11の下面11aから突出するように被覆導線21に固定された導電性および弾性を有する先端チップ22とで構成されている。
【解決手段】複数のプローブ12と、各プローブ12を保持する保持部11とを備え、保持部11は、挿通孔11cを有する板状体で構成され、プローブ12は、先端部21cが挿通孔11cに挿通されて絶縁状態で保持部11に固定された被覆導線21と、柱状に形成されると共に基端部22aが被覆導線21における先端部21cの端面21dに電気的に接続された状態で保持部11の下面11aから突出するように被覆導線21に固定された導電性および弾性を有する先端チップ22とで構成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のプローブと各プローブを保持する保持部とを備えたプローブユニット、そのプローブユニットを備えた回路基板検査装置、およびそのプローブユニットを製造するプローブユニット製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
回路基板の検査等に用いられるプローブユニットとして、特開2000−292439号公報に開示されたプローブユニット(垂直作動型プローブカード)が知られている。このプローブユニットは、中央部に座屈部を有する複数のプローブと、異方性導電体を介して各プローブの接続部に接触される配線パターンが形成された基板と、複数の貫通孔がそれぞれ形成された上側支持基板および下側支持基板を有するプローブ支持部材とを備えて構成されている。このプローブユニットでは、各プローブが、上側支持基板の貫通孔および下側支持基板の貫通孔に貫通させられた状態で接着剤によって上側支持基板に固定されている。このプローブユニットでは、プロービング対象基板の導体パターンの配列に合わせてプローブの配列が規定されて、各導体パターンに各プローブを一度にプロービングさせることが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−292439号公報(第3頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記のプローブユニットには、以下の問題点がある。すなわち、このプローブユニットでは、中央部に座屈部を有するプローブを、複数の部材(上記の例では、上側支持基板および下側支持基板)で座屈可能に支持する複雑な構造となっている。また、このプローブユニットは、信号を入出力するための電極(上記の例では、異方性導電体におけるプローブとの対向部位)とプローブの接続部とがプロービング時に接触し、非プロービング時には離反する構造のため、その電気的接点において接触不良が生じるなどの故障が発生するおそれもある。一方、回路基板の高密度化に伴って導体パターンの微細化および狭ピッチ化が進んでおり、これに対応するため、プローブユニットの小形化が求められている。しかしながら、従来のプローブユニットは、上記したように複雑な構造であるため、小形化が困難で、回路基板の高密度化への対応が困難となっている。また、小形化が可能であったとしても、その小形化には高度な加工技術が必要なため、これに起因してプローブユニットの製造コストが高騰することに加えて、小形化に伴って上記した接触不良などの故障が発生し易くなるおそれもある。
【0005】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、製造コストの高騰、および故障の発生を抑えつつ小形化を実現し得るプローブユニット、回路基板検査装置およびプローブユニット製造方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成すべく請求項1記載のプローブユニットは、複数のプローブと、当該各プローブを保持する保持部とを備えたプローブユニットであって、前記保持部は、挿通孔を有する板状体で構成され、前記プローブは、先端部が前記挿通孔に挿通されて絶縁状態で前記保持部に固定された導線と、柱状、錐体状、球状および楕円体状のいずれかの形状に形成されると共に基端部が前記先端部の端面に電気的に接続された状態で前記保持部の一面から突出するように前記導線に固定された導電性および弾性を有する先端部材とで構成されている。
【0007】
また、請求項2記載のプローブユニットは、請求項1記載のプローブユニットにおいて、前記導線は、前記端面が前記一面と面一となった状態で前記保持部に固定されている。
【0008】
また、請求項3記載のプローブユニットは、請求項1または2記載のプローブユニットにおいて、前記先端部材は、導電性および弾性を有する高分子材料で形成されている。
【0009】
また、請求項4記載のプローブユニットは、請求項1から3のいずれかに記載のプローブユニットにおいて、前記先端部材は、柱状に形成されている。
【0010】
また、請求項5記載の回路基板検査装置は、請求項1から4のいずれかに記載のプローブユニットと、プロービング対象体としての回路基板に接触させた前記プローブユニットの前記プローブを介して入出力した電気信号に基づいて当該回路基板に対する電気的検査を実行する検査部とを備えている。
【0011】
また、請求項6記載のプローブユニット製造方法は、複数のプローブと、当該各プローブを保持する保持部とを備えたプローブユニットを製造するプローブユニット製造方法であって、板状体に挿通孔を形成して前記保持部を作製し、前記プローブを構成する導線の先端部を前記挿通孔に挿通させて絶縁状態で当該導線を前記保持部に固定し、柱状、錐体状、球状および楕円体状のいずれかの形状に形成されて前記プローブを構成する先端部材の基端部を前記先端部の端面に電気的に接続した状態で、当該先端部材を前記保持部の一面から突出するように前記導線に固定して前記プローブユニットを製造する。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載のプローブユニット、および請求項6記載のプローブユニット製造方法では、板状体に挿通孔を形成して保持部が作製され、プローブを構成する導線の先端部を挿通孔に挿通させて絶縁状態で導線を保持部に固定し、柱状、錐体状、球状および楕円体状のいずれかの形状に形成されてプローブを構成する先端部材の基端部を導線の端面に電気的に接続した状態で、先端部材を保持部の一面から突出するように導線に固定してプローブユニットが製造される。つまり、このプローブユニットは、1枚の板状体で構成された保持部と、導線および先端部材で構成されたプローブとで構成される。このため、このプローブユニットおよびプローブユニット製造方法によれば、ピン状のプローブを複数の部材で座屈可能に支持するタイプの従来のプローブユニットと比較して、プローブユニットの構成要素の種類が少なく単純な構造であるため、製造する際の工程を単純化することができる結果、その分、製造コストを十分に低減することができる。したがって、このプローブユニットおよびプローブユニット製造方法によれば、構造が単純な分、プロービング対象体としての高密度の回路基板に対応してプローブユニットを容易に小形化することができると共に、その製造コストを十分に低減することができる。また、このプローブユニットおよびプローブユニット製造方法によれば、信号を入出力するための電極とプローブの接続部との接触および離反がプロービングの度に繰り返される従来の構成とは異なり、このようなプロービングの度に接触および離反が繰り返される部分が存在しないため、その部分における接触不良に起因する故障の発生を確実に防止することができる。
【0013】
請求項2記載のプローブユニットでは、導線の端面が保持部の一面と面一となった状態で導線が保持部に固定されている。このため、このプローブユニットによれば、同じ形状(寸法)の先端部材を各導線の端面に固定することで、保持部の一面からの先端部材の突出量(一面から先端部材の先端部までの長さ)が同じ長さに揃った高精度のプローブユニットを確実かつ容易に製造することができる。
【0014】
請求項3記載のプローブユニットによれば、導電性および弾性を有する高分子材料で先端部材を形成したことにより、高分子材料に対する加工が容易なため、プロービング対象体の形状に対応する所望の形状の先端部材を確実かつ容易に形成することができる結果、プロービング対象体としての基板の端子や導体パターンの形状に適合するプローブユニットを確実かつ容易に製造することができる。
【0015】
請求項4記載のプローブユニットによれば、先端部材を柱状に形成したことにより、例えば、球状や錐体状に形成された先端部材を備えた構成とは異なり、中心軸方向(プロービング方向)に沿った変形量に拘わらず、プロービング対象体との接触面積を一定(または、ほぼ一定)に維持させることができる。このため、プロービング対象体との接触面積を一定(または、ほぼ一定)に維持した状態で中心軸方向に沿って大きく弾性変形させることができる。このため、各先端部材の先端部とプロービング対象体との間の距離が各先端部材毎に大きく異なっている場合においても、先端部材を大きく弾性変形させることで、接触面積を一定(または、ほぼ一定)に維持しつつ各先端部材の先端部とプロービング対象体とを確実に接触させることができる。
【0016】
請求項5記載の回路基板検査装置によれば、上記のプローブユニットを備えたことにより、上記のプローブユニットが有す効果と同様の効果を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】回路基板検査装置1の構成を示す構成図である。
【図2】プローブユニット2の構成を示す構成図である。
【図3】プローブユニット2の断面図である。
【図4】プローブユニット2をプローブ12の先端チップ22側から見た平面図である。
【図5】プローブユニット2の製造方法を説明する第1の説明図である。
【図6】プローブユニット2の製造方法を説明する第2の説明図である。
【図7】プローブユニット2の製造方法を説明する第3の説明図である。
【図8】プローブユニット2の製造方法を説明する第4の説明図である。
【図9】プローブユニット2の製造方法を説明する第5の説明図である。
【図10】先端チップ122の構成を示す斜視図である。
【図11】先端チップ222の構成を示す斜視図である。
【図12】先端チップ322の構成を示す斜視図である。
【図13】先端チップ422の構成を示す斜視図である。
【図14】先端チップ522の構成を示す斜視図である。
【図15】先端チップ622の構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係るプローブユニット、回路基板検査装置およびプローブユニット製造方法の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0019】
最初に、回路基板検査装置1の構成について説明する。図1に示す回路基板検査装置1は、プロービング対象体の一例としての回路基板100についての電気的検査を実行可能に構成されている。具体的には、回路基板検査装置1は、同図に示すように、プローブユニット2、移動機構3、回路基板支持部4、検査部5および制御部6を備えて構成されている。
【0020】
プローブユニット2は、図2に示すように、保持部11と複数のプローブ12とを備えて構成されている。
【0021】
保持部11は、図2に示すように、1枚の板状体で構成され、プローブ12を保持する。この場合、保持部11は、一例として、非導電性(絶縁性)を有する樹脂で構成されている。また、図3に示すように、保持部11には、プローブ12を構成する被覆導線21の先端部21cが挿通可能な挿通孔11cが形成されている。このプローブユニット2では、後述するように、保持部11の挿通孔11cに挿通された被覆導線21の先端部21cが接着剤13によって接着されて挿通孔11cの内周面に固定され、これによってプローブ12(被覆導線21)が保持部11によって保持されている。
【0022】
プローブ12は、図3,4に示すように、導線の一例としての被覆導線21と、先端部材の一例としての先端チップ22とを備えて構成されている。被覆導線21は、導体部21aの周囲に絶縁皮膜21bが形成されて構成されている。このプローブ12では、一例として、外径D2が50μm〜500μm程度のマグネットワイヤが被覆導線21として使用されている。また、被覆導線21は、図3に示すように、先端部21cが保持部11の挿通孔11cに挿通され、先端部21cの端面21dが保持部11の一面(同図における下側の面であって、以下「下面11a」ともいう)と面一となった状態で、接着剤13によって保持部11に固定されている(先端部21cが保持部11に埋め込まれている)。
【0023】
この場合、被覆導線21が絶縁皮膜21bによって絶縁性を有し、かつ非導電性を有する保持部11に先端部21cが埋め込まれているため、各プローブ12は、各プローブ12同士が互いに絶縁された状態で保持部11によって保持されている。
【0024】
先端チップ22は、導電性および弾性を有し、図3,4に示すように、円柱状(球状、楕円体状、柱状および錐体状のいずれかの形状の一例)に形成されている。この場合、先端チップ22は、導電性および弾性を有する高分子材料(例えば、導電性ゴム)で形成されている。また、図3に示すように、先端チップ22は、その外径D3が被覆導線21の外径D2よりもやや小径(例えば、被覆導線21の導体部21aと同程度の外径)となるように形成されている。また、先端チップ22は、同図に示すように、被覆導線21における先端部21cの端面21dに基端部22aが電気的に接続された状態で保持部11の下面11aから突出するように被覆導線21に固定されている。
【0025】
この場合、先端チップ22が導電性および弾性を有しているため、プロービング対象体としての回路基板100の端子101に対するプロービング時に、先端チップ22の弾性変形によって先端チップ22の先端部22bが端子101を押圧し、これによって先端チップ22の先端部22bが端子101に確実に接触して電気的に接続される。
【0026】
移動機構3は、プローブユニット2を固定可能に構成されて、制御部6の制御に従い、回路基板支持部4に対して近接する向きおよび離反する向きにプローブユニット2を移動させる。回路基板支持部4は、回路基板100を保持可能に構成されている。検査部5は、制御部6の制御に従い、プローブユニット2の各プローブ12を介して入出力した電気信号に基づいて回路基板100に対して断線検査や短絡検査などの予め決められた電気的検査を実行する。制御部6は、移動機構3を制御することにより、移動機構3に固定されたプローブユニット2を移動させる。また、制御部6は、検査部5を制御して、回路基板100に対する電気的検査を実行させる。
【0027】
次に、プローブユニット2の製造方法について、図面を参照して説明する。
【0028】
最初に、図5に示すように、非導電性を有する樹脂で構成された板状体に対して、プロービング対象体としての回路基板100の端子101の配列パターン(図2参照)と同じ配列パターンで挿通孔11cを形成して、保持部11を作製する。この場合、プローブ12を構成する被覆導線21の外径D2が、例えば、50μmのときには、1μm〜5μm程度(つまり、外径D2の2%〜10%程度に相当する長さ)の隙間が生じるように挿通孔11cの内径D1を規定する(図3参照)。
【0029】
次いで、図6に示すように、上記した外径D2が50μmの被覆導線21を保持部11の各挿通孔11cに挿通させる。この際に、同図および図7に示すように、被覆導線21の先端部21cが保持部11の下面11aからやや突出するように被覆導線21を挿通孔11cに挿通させる。
【0030】
続いて、すべての挿通孔11cへの被覆導線21の挿入が終了したときには、図7に示すように、保持部11の他面(同図における上側の面であって、以下「上面11b」ともいう)における挿通孔11cの縁部(つまり、挿通孔11cに挿通した被覆導線21の周囲)に接着剤13を塗布(供給)する。次いで、保持部11の下面11a側から吸引を行う。この際に、図8に示すように、上面11bに塗布した接着剤13が挿通孔11cの内周面と被覆導線21との間の隙間に引き込まれて、その隙間に充填される。
【0031】
続いて、接着剤13が固化(乾燥)した後に、図8に示すように、保持部11の下面11aから突出している被覆導線21の先端部21cを切断する。次いで、下面11aと先端部21cの端面21dとが面一となるように研磨を行う。これにより、先端部21cの端面21dが保持部11の下面11aと面一となった状態で、かつ保持部11に対して絶縁された状態で保持部11に固定される。
【0032】
続いて、先端チップ22を被覆導線21に固定する。具体的には、図9に示すように、例えば、先端チップ22の基端部22aに導電性接着剤14を塗布する。次いで、基端部22aと端面21dとを接触させて電気的に接続させる。続いて、導電性接着剤が固化するまで基端部22aと端面21dとの接触状態を維持する。これにより、被覆導線21における先端部21cの端面21dに基端部22aが電気的に接続された状態で保持部11の下面11aから突出するように先端チップ22が被覆導線21に固定される。以下、同様にして、各被覆導線21に先端チップ22を固定することにより、プローブユニット2が完成する。
【0033】
この場合、このプローブユニット2は、1枚の板状体で構成された保持部11と、被覆導線21および先端チップ22で構成されたプローブ12とで構成されている。このため、このプローブユニット2は、ピン状のプローブを複数の部材で座屈可能に支持するタイプの従来のプローブユニットと比較して、構成要素の種類が少なく単純な構造となっている。また、構造が単純なため、上記したように、製造する際の工程も単純であり、その分、製造コストを低減することが可能となっている。このため、このプローブユニット2では、構造が単純な分、高密度の回路基板100に対応してプローブユニット2を容易に小形化することが可能で、かつその製造コストも十分に低減することが可能となる。また、このプローブユニット2では、信号を入出力するための電極とプローブの接続部との接触および離反がプロービングの度に繰り返される従来の構成とは異なり、このようなプロービングの度に接触および離反が繰り返される部分が存在しないため、その部分における接触不良に起因する故障の発生を確実に防止することが可能となっている。
【0034】
また、このプローブユニット2では、被覆導線21の端面21dが保持部11の下面11aと面一となった状態で被覆導線21が保持部11に固定され、その被覆導線21の端面21dに先端チップ22が固定されている。このため、同じ形状(寸法)の先端チップ22を各被覆導線21の端面21dに固定することで、保持部11の下面11aからの先端チップ22の突出量(下面11aから先端チップ22の先端部22bまでの長さ)を同じ長さに揃えることが可能となっている。
【0035】
次に、回路基板検査装置1を用いて回路基板100に対する電気的検査を行う方法について、図面を参照して説明する。
【0036】
まず、移動機構3にプローブユニット2を固定する。次いで、回路基板支持部4に回路基板100を固定する。続いて、回路基板検査装置1を作動させる。この際に、制御部6が、移動機構3を制御することにより、回路基板100に対して近接する向き(図2における下向き)にプローブユニット2を移動させる。次いで、制御部6は、プローブユニット2の各プローブ12における先端チップ22の先端部22bが回路基板100の端子101に接触したときには、移動機構3を制御して、予め決められた大きさの荷重をプローブユニット2に対して下向きに加えつつ、プローブユニット2を下向きに更に移動させる。
【0037】
この際に、プローブユニット2に加わる荷重が各プローブ12に分散し、分散した荷重が回路基板100の端子101を押圧する。この場合、プローブ12を構成する先端チップ22の先端部22bがプロービング方向(上下方向)に沿って弾性変形(圧縮変形)する。
【0038】
ここで、例えば、球状や錐体状に形成された先端チップ22では、中心軸方向(プロービング方向)に沿った変形量の大きさによって端子101との接触面積が変化する(変形量が大きいほど接触面積が大きく、小さいほど接触面積が小さく変化する)。これに対して、このプローブユニット2に採用されている先端チップ22は、円柱状に形成されているため、中心軸方向に沿った変形量に拘わらず、端子101との接触面積を一定(または、ほぼ一定)に維持させることができる。つまり、端子101との接触面積を一定(または、ほぼ一定)に維持した状態で中心軸方向に沿って大きく弾性変形させることができる。このため、各先端チップ22の先端部22bと端子101との間の距離が各先端チップ22毎に大きく異なっている場合においても、先端チップ22を大きく弾性変形させることで、接触面積を一定(または、ほぼ一定)に維持しつつ各先端チップ22の先端部22bと端子101とを確実に接触させることができる。
【0039】
続いて、検査部5が、制御部6の制御に従い、プローブ12を介して入出力した電気信号に基づいて回路基板100対する電気的検査を実行する。次いで、回路基板100に対する検査を終了したときには、制御部6は、移動機構3を制御して、回路基板100から離反する向きにプローブユニット2を移動させる。続いて、他の回路基板100に対する電気的検査を行う際には、上記の工程を繰り返して実行する。
【0040】
このように、このプローブユニット2、回路基板検査装置1およびプローブユニット製造方法では、板状体に挿通孔11cを形成して保持部11が作製され、プローブ12を構成する被覆導線21の先端部21cを挿通孔11cに挿通して保持部11に固定し、プローブ12を構成する円柱状の先端チップ22の基端部22aを端面21dに電気的に接続した状態で先端チップ22を下面11aから突出するように被覆導線21に固定してプローブユニット2が製造される。つまり、このプローブユニット2は、1枚の板状体で構成された保持部11と、被覆導線21および先端チップ22で構成されたプローブ12とで構成される。このため、このプローブユニット2、回路基板検査装置1およびプローブユニット製造方法によれば、ピン状のプローブを複数の部材で座屈可能に支持するタイプの従来のプローブユニットと比較して、プローブユニット2の構成要素の種類が少なく単純な構造であるため、製造する際の工程を単純化することができる結果、その分、製造コストを十分に低減することができる。したがって、このプローブユニット2、回路基板検査装置1およびプローブユニット製造方法によれば、構造が単純な分、高密度の回路基板100に対応してプローブユニット2を容易に小形化することができると共に、その製造コストを十分に低減することができる。また、このプローブユニット2、回路基板検査装置1およびプローブユニット製造方法によれば、信号を入出力するための電極とプローブの接続部との接触および離反がプロービングの度に繰り返される従来の構成とは異なり、このようなプロービングの度に接触および離反が繰り返される部分が存在しないため、その部分における接触不良に起因する故障の発生を確実に防止することができる。
【0041】
また、このプローブユニット2および回路基板検査装置1では、被覆導線21の端面21dが保持部11の下面11aと面一となった状態で被覆導線21が保持部11に固定されている。このため、このプローブユニット2および回路基板検査装置1によれば、同じ形状(寸法)の先端チップ22を各被覆導線21の端面21dに固定することで、保持部11の下面11aからの先端チップ22の突出量(下面11aから先端チップ22の先端部22bまでの長さ)が同じ長さに揃った高精度のプローブユニット2を確実かつ容易に製造することができる。
【0042】
また、このプローブユニット2および回路基板検査装置1によれば、導電性および弾性を有する高分子材料で先端チップ22を形成したことにより、高分子材料に対する加工が容易なため、プロービング対象体の形状に対応する所望の形状の先端チップ22を確実かつ容易に形成することができる結果、プロービング対象体としての基板の端子101や導体パターンの形状に適合するプローブユニット2を確実かつ容易に製造することができる。
【0043】
さらに、このプローブユニット2および回路基板検査装置1によれば、先端チップ22を柱状に形成したことにより、例えば、球状や錐体状に形成された先端チップを備えた構成とは異なり、中心軸方向(プロービング方向)に沿った変形量に拘わらず、端子101との接触面積を一定(または、ほぼ一定)に維持させることができる。このため、端子101との接触面積を一定(または、ほぼ一定)に維持した状態で中心軸方向に沿って大きく弾性変形させることができる。このため、各先端チップ22の先端部22bと端子101との間の距離が各先端チップ22毎に大きく異なっている場合においても、先端チップ22を大きく弾性変形させることで、接触面積を一定(または、ほぼ一定)に維持しつつ各先端チップ22の先端部22bと端子101とを確実に接触させることができる。
【0044】
なお、プローブユニットおよび回路基板検査装置は、上記の構成に限定されない。例えば、導電性および弾性を有する高分子材料としての導電性ゴムで形成された先端チップ22を用いる構成および方法について上記したが、導電性および弾性を有する樹脂で形成された先端チップ22を用いる構成および方法を採用することもできる。また、弾性を有する高分子材料で先端チップの本体部分を形成し、その本体部分の表面に、蒸着やスパッタリングによって導電性の被膜(例えば、金属被膜)を形成して構成された先端チップを用いる構成および方法を採用することもできる。
【0045】
また、円柱状に形成した先端チップ22を備えた例について上記したが、先端チップ22の形状はこれに限定されない。具体的には、図10に示すように、断面が楕円形の柱状に形成した先端チップ122や、図11に示すように、断面が四角形の柱状に形成した先端チップ222を採用することができる。また、図12に示すように、四角錐状に形成した先端チップ322や、図13に示すように、円錐状に形成した先端チップ422を採用することもできる。さらに、図14に示すように、球状に形成した先端チップ522や、図15に示すように、楕円体状に形成した先端チップ622を採用することもできる。
【0046】
また、導体部21aの周囲に絶縁皮膜21bが形成された被覆導線21を導線として用いる例について上記したが、絶縁皮膜21bが形成されていない導線を用いる構成を採用することもできる。
【符号の説明】
【0047】
1 回路基板検査装置
2 プローブユニット
5 検査部
11 保持部
11a 下面
11c 挿通孔
12 プローブ
13 接着剤
14 導電性接着剤
21c 先端部
21d 端面
22,122〜622 先端チップ
22a 基端部
100 回路基板
101 端子
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のプローブと各プローブを保持する保持部とを備えたプローブユニット、そのプローブユニットを備えた回路基板検査装置、およびそのプローブユニットを製造するプローブユニット製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
回路基板の検査等に用いられるプローブユニットとして、特開2000−292439号公報に開示されたプローブユニット(垂直作動型プローブカード)が知られている。このプローブユニットは、中央部に座屈部を有する複数のプローブと、異方性導電体を介して各プローブの接続部に接触される配線パターンが形成された基板と、複数の貫通孔がそれぞれ形成された上側支持基板および下側支持基板を有するプローブ支持部材とを備えて構成されている。このプローブユニットでは、各プローブが、上側支持基板の貫通孔および下側支持基板の貫通孔に貫通させられた状態で接着剤によって上側支持基板に固定されている。このプローブユニットでは、プロービング対象基板の導体パターンの配列に合わせてプローブの配列が規定されて、各導体パターンに各プローブを一度にプロービングさせることが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−292439号公報(第3頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記のプローブユニットには、以下の問題点がある。すなわち、このプローブユニットでは、中央部に座屈部を有するプローブを、複数の部材(上記の例では、上側支持基板および下側支持基板)で座屈可能に支持する複雑な構造となっている。また、このプローブユニットは、信号を入出力するための電極(上記の例では、異方性導電体におけるプローブとの対向部位)とプローブの接続部とがプロービング時に接触し、非プロービング時には離反する構造のため、その電気的接点において接触不良が生じるなどの故障が発生するおそれもある。一方、回路基板の高密度化に伴って導体パターンの微細化および狭ピッチ化が進んでおり、これに対応するため、プローブユニットの小形化が求められている。しかしながら、従来のプローブユニットは、上記したように複雑な構造であるため、小形化が困難で、回路基板の高密度化への対応が困難となっている。また、小形化が可能であったとしても、その小形化には高度な加工技術が必要なため、これに起因してプローブユニットの製造コストが高騰することに加えて、小形化に伴って上記した接触不良などの故障が発生し易くなるおそれもある。
【0005】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、製造コストの高騰、および故障の発生を抑えつつ小形化を実現し得るプローブユニット、回路基板検査装置およびプローブユニット製造方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成すべく請求項1記載のプローブユニットは、複数のプローブと、当該各プローブを保持する保持部とを備えたプローブユニットであって、前記保持部は、挿通孔を有する板状体で構成され、前記プローブは、先端部が前記挿通孔に挿通されて絶縁状態で前記保持部に固定された導線と、柱状、錐体状、球状および楕円体状のいずれかの形状に形成されると共に基端部が前記先端部の端面に電気的に接続された状態で前記保持部の一面から突出するように前記導線に固定された導電性および弾性を有する先端部材とで構成されている。
【0007】
また、請求項2記載のプローブユニットは、請求項1記載のプローブユニットにおいて、前記導線は、前記端面が前記一面と面一となった状態で前記保持部に固定されている。
【0008】
また、請求項3記載のプローブユニットは、請求項1または2記載のプローブユニットにおいて、前記先端部材は、導電性および弾性を有する高分子材料で形成されている。
【0009】
また、請求項4記載のプローブユニットは、請求項1から3のいずれかに記載のプローブユニットにおいて、前記先端部材は、柱状に形成されている。
【0010】
また、請求項5記載の回路基板検査装置は、請求項1から4のいずれかに記載のプローブユニットと、プロービング対象体としての回路基板に接触させた前記プローブユニットの前記プローブを介して入出力した電気信号に基づいて当該回路基板に対する電気的検査を実行する検査部とを備えている。
【0011】
また、請求項6記載のプローブユニット製造方法は、複数のプローブと、当該各プローブを保持する保持部とを備えたプローブユニットを製造するプローブユニット製造方法であって、板状体に挿通孔を形成して前記保持部を作製し、前記プローブを構成する導線の先端部を前記挿通孔に挿通させて絶縁状態で当該導線を前記保持部に固定し、柱状、錐体状、球状および楕円体状のいずれかの形状に形成されて前記プローブを構成する先端部材の基端部を前記先端部の端面に電気的に接続した状態で、当該先端部材を前記保持部の一面から突出するように前記導線に固定して前記プローブユニットを製造する。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載のプローブユニット、および請求項6記載のプローブユニット製造方法では、板状体に挿通孔を形成して保持部が作製され、プローブを構成する導線の先端部を挿通孔に挿通させて絶縁状態で導線を保持部に固定し、柱状、錐体状、球状および楕円体状のいずれかの形状に形成されてプローブを構成する先端部材の基端部を導線の端面に電気的に接続した状態で、先端部材を保持部の一面から突出するように導線に固定してプローブユニットが製造される。つまり、このプローブユニットは、1枚の板状体で構成された保持部と、導線および先端部材で構成されたプローブとで構成される。このため、このプローブユニットおよびプローブユニット製造方法によれば、ピン状のプローブを複数の部材で座屈可能に支持するタイプの従来のプローブユニットと比較して、プローブユニットの構成要素の種類が少なく単純な構造であるため、製造する際の工程を単純化することができる結果、その分、製造コストを十分に低減することができる。したがって、このプローブユニットおよびプローブユニット製造方法によれば、構造が単純な分、プロービング対象体としての高密度の回路基板に対応してプローブユニットを容易に小形化することができると共に、その製造コストを十分に低減することができる。また、このプローブユニットおよびプローブユニット製造方法によれば、信号を入出力するための電極とプローブの接続部との接触および離反がプロービングの度に繰り返される従来の構成とは異なり、このようなプロービングの度に接触および離反が繰り返される部分が存在しないため、その部分における接触不良に起因する故障の発生を確実に防止することができる。
【0013】
請求項2記載のプローブユニットでは、導線の端面が保持部の一面と面一となった状態で導線が保持部に固定されている。このため、このプローブユニットによれば、同じ形状(寸法)の先端部材を各導線の端面に固定することで、保持部の一面からの先端部材の突出量(一面から先端部材の先端部までの長さ)が同じ長さに揃った高精度のプローブユニットを確実かつ容易に製造することができる。
【0014】
請求項3記載のプローブユニットによれば、導電性および弾性を有する高分子材料で先端部材を形成したことにより、高分子材料に対する加工が容易なため、プロービング対象体の形状に対応する所望の形状の先端部材を確実かつ容易に形成することができる結果、プロービング対象体としての基板の端子や導体パターンの形状に適合するプローブユニットを確実かつ容易に製造することができる。
【0015】
請求項4記載のプローブユニットによれば、先端部材を柱状に形成したことにより、例えば、球状や錐体状に形成された先端部材を備えた構成とは異なり、中心軸方向(プロービング方向)に沿った変形量に拘わらず、プロービング対象体との接触面積を一定(または、ほぼ一定)に維持させることができる。このため、プロービング対象体との接触面積を一定(または、ほぼ一定)に維持した状態で中心軸方向に沿って大きく弾性変形させることができる。このため、各先端部材の先端部とプロービング対象体との間の距離が各先端部材毎に大きく異なっている場合においても、先端部材を大きく弾性変形させることで、接触面積を一定(または、ほぼ一定)に維持しつつ各先端部材の先端部とプロービング対象体とを確実に接触させることができる。
【0016】
請求項5記載の回路基板検査装置によれば、上記のプローブユニットを備えたことにより、上記のプローブユニットが有す効果と同様の効果を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】回路基板検査装置1の構成を示す構成図である。
【図2】プローブユニット2の構成を示す構成図である。
【図3】プローブユニット2の断面図である。
【図4】プローブユニット2をプローブ12の先端チップ22側から見た平面図である。
【図5】プローブユニット2の製造方法を説明する第1の説明図である。
【図6】プローブユニット2の製造方法を説明する第2の説明図である。
【図7】プローブユニット2の製造方法を説明する第3の説明図である。
【図8】プローブユニット2の製造方法を説明する第4の説明図である。
【図9】プローブユニット2の製造方法を説明する第5の説明図である。
【図10】先端チップ122の構成を示す斜視図である。
【図11】先端チップ222の構成を示す斜視図である。
【図12】先端チップ322の構成を示す斜視図である。
【図13】先端チップ422の構成を示す斜視図である。
【図14】先端チップ522の構成を示す斜視図である。
【図15】先端チップ622の構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係るプローブユニット、回路基板検査装置およびプローブユニット製造方法の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0019】
最初に、回路基板検査装置1の構成について説明する。図1に示す回路基板検査装置1は、プロービング対象体の一例としての回路基板100についての電気的検査を実行可能に構成されている。具体的には、回路基板検査装置1は、同図に示すように、プローブユニット2、移動機構3、回路基板支持部4、検査部5および制御部6を備えて構成されている。
【0020】
プローブユニット2は、図2に示すように、保持部11と複数のプローブ12とを備えて構成されている。
【0021】
保持部11は、図2に示すように、1枚の板状体で構成され、プローブ12を保持する。この場合、保持部11は、一例として、非導電性(絶縁性)を有する樹脂で構成されている。また、図3に示すように、保持部11には、プローブ12を構成する被覆導線21の先端部21cが挿通可能な挿通孔11cが形成されている。このプローブユニット2では、後述するように、保持部11の挿通孔11cに挿通された被覆導線21の先端部21cが接着剤13によって接着されて挿通孔11cの内周面に固定され、これによってプローブ12(被覆導線21)が保持部11によって保持されている。
【0022】
プローブ12は、図3,4に示すように、導線の一例としての被覆導線21と、先端部材の一例としての先端チップ22とを備えて構成されている。被覆導線21は、導体部21aの周囲に絶縁皮膜21bが形成されて構成されている。このプローブ12では、一例として、外径D2が50μm〜500μm程度のマグネットワイヤが被覆導線21として使用されている。また、被覆導線21は、図3に示すように、先端部21cが保持部11の挿通孔11cに挿通され、先端部21cの端面21dが保持部11の一面(同図における下側の面であって、以下「下面11a」ともいう)と面一となった状態で、接着剤13によって保持部11に固定されている(先端部21cが保持部11に埋め込まれている)。
【0023】
この場合、被覆導線21が絶縁皮膜21bによって絶縁性を有し、かつ非導電性を有する保持部11に先端部21cが埋め込まれているため、各プローブ12は、各プローブ12同士が互いに絶縁された状態で保持部11によって保持されている。
【0024】
先端チップ22は、導電性および弾性を有し、図3,4に示すように、円柱状(球状、楕円体状、柱状および錐体状のいずれかの形状の一例)に形成されている。この場合、先端チップ22は、導電性および弾性を有する高分子材料(例えば、導電性ゴム)で形成されている。また、図3に示すように、先端チップ22は、その外径D3が被覆導線21の外径D2よりもやや小径(例えば、被覆導線21の導体部21aと同程度の外径)となるように形成されている。また、先端チップ22は、同図に示すように、被覆導線21における先端部21cの端面21dに基端部22aが電気的に接続された状態で保持部11の下面11aから突出するように被覆導線21に固定されている。
【0025】
この場合、先端チップ22が導電性および弾性を有しているため、プロービング対象体としての回路基板100の端子101に対するプロービング時に、先端チップ22の弾性変形によって先端チップ22の先端部22bが端子101を押圧し、これによって先端チップ22の先端部22bが端子101に確実に接触して電気的に接続される。
【0026】
移動機構3は、プローブユニット2を固定可能に構成されて、制御部6の制御に従い、回路基板支持部4に対して近接する向きおよび離反する向きにプローブユニット2を移動させる。回路基板支持部4は、回路基板100を保持可能に構成されている。検査部5は、制御部6の制御に従い、プローブユニット2の各プローブ12を介して入出力した電気信号に基づいて回路基板100に対して断線検査や短絡検査などの予め決められた電気的検査を実行する。制御部6は、移動機構3を制御することにより、移動機構3に固定されたプローブユニット2を移動させる。また、制御部6は、検査部5を制御して、回路基板100に対する電気的検査を実行させる。
【0027】
次に、プローブユニット2の製造方法について、図面を参照して説明する。
【0028】
最初に、図5に示すように、非導電性を有する樹脂で構成された板状体に対して、プロービング対象体としての回路基板100の端子101の配列パターン(図2参照)と同じ配列パターンで挿通孔11cを形成して、保持部11を作製する。この場合、プローブ12を構成する被覆導線21の外径D2が、例えば、50μmのときには、1μm〜5μm程度(つまり、外径D2の2%〜10%程度に相当する長さ)の隙間が生じるように挿通孔11cの内径D1を規定する(図3参照)。
【0029】
次いで、図6に示すように、上記した外径D2が50μmの被覆導線21を保持部11の各挿通孔11cに挿通させる。この際に、同図および図7に示すように、被覆導線21の先端部21cが保持部11の下面11aからやや突出するように被覆導線21を挿通孔11cに挿通させる。
【0030】
続いて、すべての挿通孔11cへの被覆導線21の挿入が終了したときには、図7に示すように、保持部11の他面(同図における上側の面であって、以下「上面11b」ともいう)における挿通孔11cの縁部(つまり、挿通孔11cに挿通した被覆導線21の周囲)に接着剤13を塗布(供給)する。次いで、保持部11の下面11a側から吸引を行う。この際に、図8に示すように、上面11bに塗布した接着剤13が挿通孔11cの内周面と被覆導線21との間の隙間に引き込まれて、その隙間に充填される。
【0031】
続いて、接着剤13が固化(乾燥)した後に、図8に示すように、保持部11の下面11aから突出している被覆導線21の先端部21cを切断する。次いで、下面11aと先端部21cの端面21dとが面一となるように研磨を行う。これにより、先端部21cの端面21dが保持部11の下面11aと面一となった状態で、かつ保持部11に対して絶縁された状態で保持部11に固定される。
【0032】
続いて、先端チップ22を被覆導線21に固定する。具体的には、図9に示すように、例えば、先端チップ22の基端部22aに導電性接着剤14を塗布する。次いで、基端部22aと端面21dとを接触させて電気的に接続させる。続いて、導電性接着剤が固化するまで基端部22aと端面21dとの接触状態を維持する。これにより、被覆導線21における先端部21cの端面21dに基端部22aが電気的に接続された状態で保持部11の下面11aから突出するように先端チップ22が被覆導線21に固定される。以下、同様にして、各被覆導線21に先端チップ22を固定することにより、プローブユニット2が完成する。
【0033】
この場合、このプローブユニット2は、1枚の板状体で構成された保持部11と、被覆導線21および先端チップ22で構成されたプローブ12とで構成されている。このため、このプローブユニット2は、ピン状のプローブを複数の部材で座屈可能に支持するタイプの従来のプローブユニットと比較して、構成要素の種類が少なく単純な構造となっている。また、構造が単純なため、上記したように、製造する際の工程も単純であり、その分、製造コストを低減することが可能となっている。このため、このプローブユニット2では、構造が単純な分、高密度の回路基板100に対応してプローブユニット2を容易に小形化することが可能で、かつその製造コストも十分に低減することが可能となる。また、このプローブユニット2では、信号を入出力するための電極とプローブの接続部との接触および離反がプロービングの度に繰り返される従来の構成とは異なり、このようなプロービングの度に接触および離反が繰り返される部分が存在しないため、その部分における接触不良に起因する故障の発生を確実に防止することが可能となっている。
【0034】
また、このプローブユニット2では、被覆導線21の端面21dが保持部11の下面11aと面一となった状態で被覆導線21が保持部11に固定され、その被覆導線21の端面21dに先端チップ22が固定されている。このため、同じ形状(寸法)の先端チップ22を各被覆導線21の端面21dに固定することで、保持部11の下面11aからの先端チップ22の突出量(下面11aから先端チップ22の先端部22bまでの長さ)を同じ長さに揃えることが可能となっている。
【0035】
次に、回路基板検査装置1を用いて回路基板100に対する電気的検査を行う方法について、図面を参照して説明する。
【0036】
まず、移動機構3にプローブユニット2を固定する。次いで、回路基板支持部4に回路基板100を固定する。続いて、回路基板検査装置1を作動させる。この際に、制御部6が、移動機構3を制御することにより、回路基板100に対して近接する向き(図2における下向き)にプローブユニット2を移動させる。次いで、制御部6は、プローブユニット2の各プローブ12における先端チップ22の先端部22bが回路基板100の端子101に接触したときには、移動機構3を制御して、予め決められた大きさの荷重をプローブユニット2に対して下向きに加えつつ、プローブユニット2を下向きに更に移動させる。
【0037】
この際に、プローブユニット2に加わる荷重が各プローブ12に分散し、分散した荷重が回路基板100の端子101を押圧する。この場合、プローブ12を構成する先端チップ22の先端部22bがプロービング方向(上下方向)に沿って弾性変形(圧縮変形)する。
【0038】
ここで、例えば、球状や錐体状に形成された先端チップ22では、中心軸方向(プロービング方向)に沿った変形量の大きさによって端子101との接触面積が変化する(変形量が大きいほど接触面積が大きく、小さいほど接触面積が小さく変化する)。これに対して、このプローブユニット2に採用されている先端チップ22は、円柱状に形成されているため、中心軸方向に沿った変形量に拘わらず、端子101との接触面積を一定(または、ほぼ一定)に維持させることができる。つまり、端子101との接触面積を一定(または、ほぼ一定)に維持した状態で中心軸方向に沿って大きく弾性変形させることができる。このため、各先端チップ22の先端部22bと端子101との間の距離が各先端チップ22毎に大きく異なっている場合においても、先端チップ22を大きく弾性変形させることで、接触面積を一定(または、ほぼ一定)に維持しつつ各先端チップ22の先端部22bと端子101とを確実に接触させることができる。
【0039】
続いて、検査部5が、制御部6の制御に従い、プローブ12を介して入出力した電気信号に基づいて回路基板100対する電気的検査を実行する。次いで、回路基板100に対する検査を終了したときには、制御部6は、移動機構3を制御して、回路基板100から離反する向きにプローブユニット2を移動させる。続いて、他の回路基板100に対する電気的検査を行う際には、上記の工程を繰り返して実行する。
【0040】
このように、このプローブユニット2、回路基板検査装置1およびプローブユニット製造方法では、板状体に挿通孔11cを形成して保持部11が作製され、プローブ12を構成する被覆導線21の先端部21cを挿通孔11cに挿通して保持部11に固定し、プローブ12を構成する円柱状の先端チップ22の基端部22aを端面21dに電気的に接続した状態で先端チップ22を下面11aから突出するように被覆導線21に固定してプローブユニット2が製造される。つまり、このプローブユニット2は、1枚の板状体で構成された保持部11と、被覆導線21および先端チップ22で構成されたプローブ12とで構成される。このため、このプローブユニット2、回路基板検査装置1およびプローブユニット製造方法によれば、ピン状のプローブを複数の部材で座屈可能に支持するタイプの従来のプローブユニットと比較して、プローブユニット2の構成要素の種類が少なく単純な構造であるため、製造する際の工程を単純化することができる結果、その分、製造コストを十分に低減することができる。したがって、このプローブユニット2、回路基板検査装置1およびプローブユニット製造方法によれば、構造が単純な分、高密度の回路基板100に対応してプローブユニット2を容易に小形化することができると共に、その製造コストを十分に低減することができる。また、このプローブユニット2、回路基板検査装置1およびプローブユニット製造方法によれば、信号を入出力するための電極とプローブの接続部との接触および離反がプロービングの度に繰り返される従来の構成とは異なり、このようなプロービングの度に接触および離反が繰り返される部分が存在しないため、その部分における接触不良に起因する故障の発生を確実に防止することができる。
【0041】
また、このプローブユニット2および回路基板検査装置1では、被覆導線21の端面21dが保持部11の下面11aと面一となった状態で被覆導線21が保持部11に固定されている。このため、このプローブユニット2および回路基板検査装置1によれば、同じ形状(寸法)の先端チップ22を各被覆導線21の端面21dに固定することで、保持部11の下面11aからの先端チップ22の突出量(下面11aから先端チップ22の先端部22bまでの長さ)が同じ長さに揃った高精度のプローブユニット2を確実かつ容易に製造することができる。
【0042】
また、このプローブユニット2および回路基板検査装置1によれば、導電性および弾性を有する高分子材料で先端チップ22を形成したことにより、高分子材料に対する加工が容易なため、プロービング対象体の形状に対応する所望の形状の先端チップ22を確実かつ容易に形成することができる結果、プロービング対象体としての基板の端子101や導体パターンの形状に適合するプローブユニット2を確実かつ容易に製造することができる。
【0043】
さらに、このプローブユニット2および回路基板検査装置1によれば、先端チップ22を柱状に形成したことにより、例えば、球状や錐体状に形成された先端チップを備えた構成とは異なり、中心軸方向(プロービング方向)に沿った変形量に拘わらず、端子101との接触面積を一定(または、ほぼ一定)に維持させることができる。このため、端子101との接触面積を一定(または、ほぼ一定)に維持した状態で中心軸方向に沿って大きく弾性変形させることができる。このため、各先端チップ22の先端部22bと端子101との間の距離が各先端チップ22毎に大きく異なっている場合においても、先端チップ22を大きく弾性変形させることで、接触面積を一定(または、ほぼ一定)に維持しつつ各先端チップ22の先端部22bと端子101とを確実に接触させることができる。
【0044】
なお、プローブユニットおよび回路基板検査装置は、上記の構成に限定されない。例えば、導電性および弾性を有する高分子材料としての導電性ゴムで形成された先端チップ22を用いる構成および方法について上記したが、導電性および弾性を有する樹脂で形成された先端チップ22を用いる構成および方法を採用することもできる。また、弾性を有する高分子材料で先端チップの本体部分を形成し、その本体部分の表面に、蒸着やスパッタリングによって導電性の被膜(例えば、金属被膜)を形成して構成された先端チップを用いる構成および方法を採用することもできる。
【0045】
また、円柱状に形成した先端チップ22を備えた例について上記したが、先端チップ22の形状はこれに限定されない。具体的には、図10に示すように、断面が楕円形の柱状に形成した先端チップ122や、図11に示すように、断面が四角形の柱状に形成した先端チップ222を採用することができる。また、図12に示すように、四角錐状に形成した先端チップ322や、図13に示すように、円錐状に形成した先端チップ422を採用することもできる。さらに、図14に示すように、球状に形成した先端チップ522や、図15に示すように、楕円体状に形成した先端チップ622を採用することもできる。
【0046】
また、導体部21aの周囲に絶縁皮膜21bが形成された被覆導線21を導線として用いる例について上記したが、絶縁皮膜21bが形成されていない導線を用いる構成を採用することもできる。
【符号の説明】
【0047】
1 回路基板検査装置
2 プローブユニット
5 検査部
11 保持部
11a 下面
11c 挿通孔
12 プローブ
13 接着剤
14 導電性接着剤
21c 先端部
21d 端面
22,122〜622 先端チップ
22a 基端部
100 回路基板
101 端子
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のプローブと、当該各プローブを保持する保持部とを備えたプローブユニットであって、
前記保持部は、挿通孔を有する板状体で構成され、
前記プローブは、先端部が前記挿通孔に挿通されて絶縁状態で前記保持部に固定された導線と、柱状、錐体状、球状および楕円体状のいずれかの形状に形成されると共に基端部が前記先端部の端面に電気的に接続された状態で前記保持部の一面から突出するように前記導線に固定された導電性および弾性を有する先端部材とで構成されているプローブユニット。
【請求項2】
前記導線は、前記端面が前記一面と面一となった状態で前記保持部に固定されている請求項1記載のプローブユニット。
【請求項3】
前記先端部材は、導電性および弾性を有する高分子材料で形成されている請求項1または2記載のプローブユニット。
【請求項4】
前記先端部材は、柱状に形成されている請求項1から3のいずれかに記載のプローブユニット。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載のプローブユニットと、プロービング対象体としての回路基板に接触させた前記プローブユニットの前記プローブを介して入出力した電気信号に基づいて当該回路基板に対する電気的検査を実行する検査部とを備えている回路基板検査装置。
【請求項6】
複数のプローブと、当該各プローブを保持する保持部とを備えたプローブユニットを製造するプローブユニット製造方法であって、
板状体に挿通孔を形成して前記保持部を作製し、
前記プローブを構成する導線の先端部を前記挿通孔に挿通させて絶縁状態で当該導線を前記保持部に固定し、
柱状、錐体状、球状および楕円体状のいずれかの形状に形成されて前記プローブを構成する先端部材の基端部を前記先端部の端面に電気的に接続した状態で、当該先端部材を前記保持部の一面から突出するように前記導線に固定して前記プローブユニットを製造するプローブユニット製造方法。
【請求項1】
複数のプローブと、当該各プローブを保持する保持部とを備えたプローブユニットであって、
前記保持部は、挿通孔を有する板状体で構成され、
前記プローブは、先端部が前記挿通孔に挿通されて絶縁状態で前記保持部に固定された導線と、柱状、錐体状、球状および楕円体状のいずれかの形状に形成されると共に基端部が前記先端部の端面に電気的に接続された状態で前記保持部の一面から突出するように前記導線に固定された導電性および弾性を有する先端部材とで構成されているプローブユニット。
【請求項2】
前記導線は、前記端面が前記一面と面一となった状態で前記保持部に固定されている請求項1記載のプローブユニット。
【請求項3】
前記先端部材は、導電性および弾性を有する高分子材料で形成されている請求項1または2記載のプローブユニット。
【請求項4】
前記先端部材は、柱状に形成されている請求項1から3のいずれかに記載のプローブユニット。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載のプローブユニットと、プロービング対象体としての回路基板に接触させた前記プローブユニットの前記プローブを介して入出力した電気信号に基づいて当該回路基板に対する電気的検査を実行する検査部とを備えている回路基板検査装置。
【請求項6】
複数のプローブと、当該各プローブを保持する保持部とを備えたプローブユニットを製造するプローブユニット製造方法であって、
板状体に挿通孔を形成して前記保持部を作製し、
前記プローブを構成する導線の先端部を前記挿通孔に挿通させて絶縁状態で当該導線を前記保持部に固定し、
柱状、錐体状、球状および楕円体状のいずれかの形状に形成されて前記プローブを構成する先端部材の基端部を前記先端部の端面に電気的に接続した状態で、当該先端部材を前記保持部の一面から突出するように前記導線に固定して前記プローブユニットを製造するプローブユニット製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−251873(P2012−251873A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−124702(P2011−124702)
【出願日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(000227180)日置電機株式会社 (982)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(000227180)日置電機株式会社 (982)
【Fターム(参考)】
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