説明

プーリ装置

【課題】 動力伝達用ベルトに急激な張力変動が付与されるのを防止し、ベルトの寿命を延長する。
【解決手段】 プーリと軸体との間に、一方向クラッチと軸受とが配置される。前記一方向クラッチは、外輪部材と、内輪部材と、前記外輪部材の内周面および内輪部材の外周面のうち少なくとも一方をカム面として円周方向複数箇所に形成されるくさび状空間内に、円周方向に転動可能に収納される転動体とを備え、この転動体がくさび状空間の狭い側へ噛込むロック状態と、前記転動体がくさび状空間の広い側へ回避するよう噛込みを解除するフリー状態とに切替え自在に構成されている。そして、プーリが可撓性を有する材質によって形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一方向クラッチを含むプーリ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車ではエンジンの出力の一部が動力源とされてエアコンディショナ用コンプレッサ、冷却ファン、オルタネータ(発電機)などの補機が駆動される。エンジンのクランクシャフトと補機の駆動軸それぞれに動力伝達用のプーリ装置が設けられ、両プーリ装置間には動力伝達用ベルト(以下単に「ベルト」と称す)が巻掛けられる。このベルトの回転によって、エンジンから補機へ動力が伝達される。このような、ベルトにおける張力変動は、動力の効率的な伝達に影響を及ぼす。そこで、ベルトにおける張力変動を抑制すべく、補機のプーリ装置に一方向クラッチを内蔵する場合がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図6に、この種の一方向クラッチの断面図を示す。この一方向クラッチ70は、ベルトが巻掛けられる外輪部材(例えばプーリと一体)71と、発電用駆動軸72に外嵌する内輪部材76とを備えている。さらにこの一方向クラッチ70は、外輪部材71の内周面を外輪軌道面とし、内輪部材76の外周面を内輪軌道面とする複数のころ75を有している。内輪部材76の外周面は八角形に形成されることで、平坦なカム面が形成されている。このカム面によって、外輪部材71と内輪部材76との間の環状空間に、八個のくさび状空間74が設けられている。なお各ころ75は保持器76のポケットに保持されるとともに、くさび状空間74に配置されたコイルばね73によって、くさび状空間74の狭い側に付勢されている。
【0004】
このような一方向クラッチ70におけるころ75は、外輪部材71と内輪部材76とが軸心回りに回転一体となるロック状態において、所定の大きさのくさび角θを有している。ここでくさび角θとは、ころ75が接するカム面における接線76aと、ころ75が接する外輪軌道面における接線76bとが交叉する角度をいう。
【特許文献1】特開平11−94054号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来のプーリ装置では、ベルトが回転するとその回転が外輪部材71(プーリ)に伝わり、外輪部材71が軸心回りに回転する。そうすると、ころ75がくさび状空間74の狭い側に噛込んで、くさび角θが予め設定された値となり、内輪部材76および発電用駆動軸72が、外輪部材71と軸心回りに一体に回転する。これがロック状態である。ベルトの回転速度が急激に速くなった場合や、ベルトに急激な張力変動が発生した場合も、ころのくさび角θは、予め設定した所定の角度でロック状態が維持され、外輪部材71と発電用駆動軸72が軸心回りに一体に回転する。
【0006】
ところで、ベルトの回転速度が急激に低下した場合、発電用駆動軸72の慣性力によってくさび状空間74の狭い側に噛込んでいたころ75が、くさび状空間74の広い側に抜ける。これにより、内輪部材76(発電用駆動軸72)に対する外輪部材71の回転が遮断される。これがフリー状態である。従って、内輪部材76および発電用駆動軸72は、回転速度が低下する前の外輪部材71の回転速度とほぼ同等の速度で回転し、少ない損失でもって効率的に発電が継続される。
【0007】
ところで近年、自動車においてはエンジンに直接噴射式が用いられることに伴なって、補機の駆動に用いられるベルトの張力の変動がいっそう大きく、かつ頻繁になる傾向にある。
【0008】
しかし、上記従来のプーリ装置における一方向クラッチ70において、ロック状態におけるころ75のくさび角θは、所定の角度が変更されることなく常に一定である。このためベルトへの張力変動は、そのままベルトに付与されることになり、このような状態が頻繁に起こるとベルトの寿命が短くなってしまう傾向にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のプーリ装置は、動力伝達用ベルトが巻掛けられるプーリと、このプーリとそのプーリ内方に配置される軸体との間に配置される軸受および一方向クラッチとを備えたプーリ装置であって、前記一方向クラッチは、外輪部材と、この外輪部材の内方に配置された内輪部材と、前記外輪部材の内周面および内輪部材の外周面のうち少なくとも一方をカム面として円周方向複数箇所に形成されるくさび状空間と、それぞれのくさび状空間内に、外輪部材の内周面を外輪軌道面とし内輪部材の外周面を内輪軌道面として円周方向に転動可能に収納される転動体とを備え、この転動体がくさび状空間の狭い側へ噛込んで内輪部材および外輪部材が軸心回りに同期的に回転するようにしたロック状態と、前記転動体がくさび状空間の広い側へ回避するよう噛込みを解除して内輪部材および外輪部材とが軸心回りに相対速度をもって回転するフリー状態とに切替え自在に構成され、前記プーリが可撓性を有する材質によって形成されている。
【0010】
上記構成において、動力伝達用ベルトの回転に伴なってプーリが軸心回りに回転すると、プーリの回転に伴なって外輪部材が軸心回りに回転する。そうすると、一方向クラッチの転動体がくさび状空間の狭い側に噛込み、転動体のくさび角が所定の大きさとなり、外輪部材、転動体および内輪部材が軸心回りに一体的に回転するロック状態となる。一方向クラッチがロック状態になって、軸体が内輪部材とともに軸心回りに回転することで、動力伝達用ベルトの回転が軸体に伝達される。
【0011】
ところで、動力伝達ベルトの回転に伴なって、プーリの回転速度が急激に増加する場合がある。この場合は、プーリの内周部が外径側に弾性変形することで、一方向クラッチはロック状態を維持したままで、転動体がくさび状空間のさらに狭い側に無段階的に噛込むことになる。そして、転動体のくさび角は前述の設定されたくさび角よりも大きな角度なった状態でもって、軸体が軸心回りに回転する。このように、動力伝達ベルトの回転に伴なってプーリの回転速度が急激に増加する場合、転動体がプーリを変形させてくさび状空間の狭い側に無段階的に噛込むことで、動力伝達用ベルトに対して急激な張力変動が与えられるのを防止する。
【0012】
ところで、動力伝達用ベルトの回転に伴なって、プーリの回転速度が急激に低下する場合がある。この場合、内輪軌道面および外輪軌道面に噛込んでいた転動体が、くさび状空間の広い側へ回避するよう噛込みを解除する。このことにより、プーリの軸心回りの回転が遮断され、一方向クラッチがフリーの状態となってプーリと軸体(内輪部材)との間に相対速度が発生する。従って、軸体の軸心回りの回転速度は、低下する前のプーリの回転速度とほぼ同等の回転速度を維持し、外輪部材の軸心回りの回転速度よりも速くなる。これにより、軸体が軸心回りに少ない損失でもって回転する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、一方向クラッチがロック状態から、さらにプーリの回転速度が速くなる場合、くさび角が大きくなるよう転動体がくさび状空間のさらに狭い側に無段階的に噛込むようプーリが径方向に弾性変形するので、速度変化に伴なう衝撃を緩和し、動力伝達用ベルトの寿命を延長することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態に係る一方向クラッチおよびプーリ装置を図面に基づいて説明する。
【0015】
(第一の実施の形態)
図1は本発明の実施形態を示す一方向クラッチを用いたプーリ装置の正面断面図、図2はそのプーリ装置の使用状態を示す側面断面図、図3はころのくさび角を示す拡大断面図である。
【0016】
図示のように、第一の実施形態に係るプーリ装置1は、車両におけるオルタネータの発電用駆動軸2における自由端側に設けられている。このプーリ装置1は、自動車エンジンの駆動力を、動力伝達用ベルト(以下単にベルトと称す)3を介して発電用駆動軸2に伝達する機能を有している。このプーリ装置1は、ベルト3が巻掛けられるプーリ4と、このプーリ4が外嵌する外輪部材兼用の外側環体5と、発電用駆動軸2に外嵌する内側環体6とを備えている。このプーリ装置1は、さらに、外側環体5と内側環体6との間の環状空間に配置される転がり軸受装置7を備えている。内側環体6には、発電用駆動軸2が挿通支持されている。
【0017】
プーリ4の外周面には、ベルト3が巻掛けられる波状の周方向溝8が形成されている。またこのプーリ4は、可撓性を有する材質、例えばエラストマーによって形成されている。
【0018】
転がり軸受装置7は、プーリ装置1の軸心14方向両側に配置された一対の転がり軸受9A,9B(一般的な深溝玉軸受が用いられる)と、これら転がり軸受9A,9Bの間に配置された一方向クラッチ10とから構成されている。転がり軸受9A,9Bは、外側環体5に嵌着された外輪部材11a,11bと、内側環体6の外側に嵌着された内輪部材12a,12bとを有している。さらに転がり軸受9A,9Bは、外輪部材11a,11bと内輪部材12a,12bとの間に配置された玉13a,13bを有している。さらに転がり軸受9A,9Bは、その軸心14方向両側にシール部材15a,15bを備えている。
【0019】
一方向クラッチ10は、プーリ4の軸心14回りの回転を、内側環体6に伝達したり遮断したりする機能を有している。この一方向クラッチ10は、外側環体5を外輪部材16として用いている。この一方向クラッチ10は、外輪部材16と、内側環体6の外周面に嵌着された内輪部材17と、外輪部材16および内輪部材17の間に配置された複数のくさび状空間18と、これらくさび状空間18に配置されたころ19(転動体の一例)とを有している。ころ19は、くさび状空間18内に、外輪部材16の内周面を外輪軌道面とし内輪部材17の外周面を内輪軌道面として配置されている。
【0020】
一方向クラッチ10の外輪部材16の内周面は円筒面に形成されている。内輪部材17の外周面は、平坦なカム面を有した多角形状(図では8角形状)の角筒面とされている。このような構成により、外輪部材16と内輪部材17との間の環状空間に、複数個のくさび状空間18が形成されている。それぞれのくさび状空間18では、円周方向中心位置での径方向高さに比べて円周方向両側の径方向高さが低くなっている。
【0021】
一方向クラッチ10はさらに、ころ19を円周方向等配位置に保持するための保持器20と、コイルばね21とを備えている。保持器20は、外輪部材16と内輪部材17との間の環状空間に配置される。これら保持器20は、それぞれのころ19を転動可能に装着するポケット22を有している。保持器20のポケット22は、カム面に対応する位置で保持器20に径方向内外に貫通して形成されている。
【0022】
コイルばね21としては、バネ線材を長方形に巻回した角巻きバネが用いられている。これらコイルばね21は、保持器20のポケット22に圧縮状態で収納されている。さらにコイルばね21は、保持器20の各ポケット22の内面に円周方向一方に向けて一体形成される突起20aに対して外嵌装着されている。ころ19は、それぞれこれらコイルばね21の伸張復元力によって時計方向B、すなわちくさび状空間18の狭い側へ付勢されている。
【0023】
内輪部材16の周方向一端面の180°対向する二箇所に、スリット状の凹部23が形成されている。両凹部23は、軸端に向けて開放されるとともに径方向内外に開放されている。保持器20は、これら凹部23と嵌合する凸部24を有している。保持器20は、凹部23と凸部24それぞれの嵌合によって、内輪部材17に対して周方向ならびに軸心14方向への動きが規制された状態にある。
【0024】
さらに一方向クラッチ10は、ころ19がくさび状空間18の狭い側へ食込んで外輪部材16および内輪部材17が軸心14回りに同期的に回転するようにしたロック状態と、ころ19がくさび状空間18の広い側へ回避して外輪部材16および内輪部材17が軸心14回りに相対速度をもって回転するフリー状態とに切替え自在に構成されている。
【0025】
外輪部材16は、径方向の厚みが、ロック状態においてくさび角θが変更可能となるよう可撓性(弾性)を有する厚みに形成されている。ここでくさび角θとは、ころ19が外輪軌道面および内輪軌道面に接触する点における両接線25,26が交叉する角度である。
【0026】
上記構成において、エンジンの駆動に伴なって図示しないクランクシャフトが回転し、その回転がベルト3を介して発電用駆動軸2に伝達される際、例えば図2においてプーリ4が反時計方向Aに、軸心14回りに回転する。
【0027】
そして、プーリ4が反時計方向Aに軸心14回りに回転すると、これに伴なって一方向クラッチ10の外輪部材16(外側環体5)が反時計方向Aに回転する。そうすると、ころ19がくさび状空間18の狭い側に噛込み、ころ19が、所定の大きさのくさび角θ1を有して、外輪部材16、ころ19および内輪部材17が軸心14回りに一体的に回転するロック状態となる。従って、内側環体6が軸心14回りに反時計方向Aに回転する。このように内側環体6が反時計方向Aに回転することで、プーリ4の軸心14回りの回転が発電用駆動軸2に伝達され、オルタネータにおいて発電駆動が行われる。
【0028】
ところで、このプーリ装置1では、一方向クラッチ10の外輪部材16は、径方向の厚みが、ロック状態においてくさび角を変更可能とすべく、可撓性を有する厚みに形成されている。このため、ベルト3の回転速度が急激に増加した場合、ロック状態を維持したまま、ころ19がくさび状空間18の狭い側からさらに狭くなる方へ無段階に移動(図2および図3の仮想線で示す)するとともに、外輪部材16が径方向外向きに撓むように変形する。また、外輪部材16が径方向外向きに撓むのに伴なってプーリ4もわずかに撓む。これによって、ころ19のくさび角θ2は、前述のくさび角θ1よりも大きな角度となる。
【0029】
このように、ベルト3の回転速度が急激に増した場合には、一方向クラッチ10が一旦ロック状態となったくさび角θ1から、ころ19がくさび状空間18のさらに狭い側に無段階適に噛込んで、ロック状態に必要な予め設定されたくさび角θ1より大きなくさび角θ2となる。このため、ベルト3に対しては急激な張力変動が付与されず、無段階的に張力変動が付与されることになる。
【0030】
このような作用は、発電用駆動軸2の立ち上がりの場合も同様である。すなわちエンジンの始動時、ベルト3の回転が停止している状態からこれが回転を開始すると、その回転速度によっては(始動の回転速度が速い場合は)、ころ19のくさび角は、一旦くさび角θ1となり、続いて無段階的にくさび角θ1よりも大きなくさび角θ2となる。この場合もベルト3に対しては急激な張力変動が付与されず、無段階的に張力変動が付与されることになる。
【0031】
ところで、ベルト3の回転速度が急激に低下すると、これに伴なってプーリ4の軸心14回りの回転速度が低下する。しかし、プーリ4と発電用駆動軸2とは一方向クラッチ10を介して連結されており、一方向クラッチ10の内輪部材17と内側環体6と回転一体であるため、ベルト3の回転と発電用駆動軸2の回転とは一体回転の状態が解除される。すなわち、プーリ4の回転速度が急激に低下した場合、内側環体6、一方向クラッチ10の内輪部材17およびころ19に慣性力が働くことにより、内輪軌道面および外輪軌道面に噛込んでいたころ19が、くさび状空間18の広い側へ外れて外輪部材16の変形が回復し、一方向クラッチ10がフリーの状態になる。なお、一方向クラッチ10がロック状態からフリー状態となる際、ころ19のくさび角がくさび角θ2であった場合は、くさび角θ2から無段階的にくさび角θ1に変化した後に、ころ19がくさび状空間18の広い側へ外れることになる。
【0032】
従って、内輪部材17の軸心14回りの回転速度は、低下する前のプーリ4の回転速度とほぼ同等の回転速度を維持すべく、プーリ4と発電用駆動軸2との軸心14回りの相対速度が生じる。すなわち、発電用駆動軸2の回転速度は、プーリ4の軸心14回りの回転速度よりも速くなる。これにより、ベルト3の張力が変化してプーリ4の回転速度が急激に低下しても、発電用駆動軸2の軸心14回りの回転速度を一定に近い状態に保持して、効率よく安定した充電を行うことができる。
【0033】
そして上記ような作用効果は、ベルト3の回転速度が変更される場合以外の、例えば、振動に伴なってベルト3の張力が増加するよう変動する際にも同様に発生する。
【0034】
このように本発明の第一の実施形態によれば、ベルト3の回転速度の変更が頻繁に行われたとしても、そのつどころ19のくさび角がくさび角θ1からくさび角θ2に無段階的に変更されるので、従来に比べてベルト3の長寿命化を図ることができる。
【0035】
(第二の実施形態)
上記第一の実施形態におけるプーリ装置1では、一方向クラッチ10の外輪部材16を、径方向の厚みをロック状態におけるくさび角θ1をさらに大きなくさび角θ2となるよう、可撓性を有する厚みに形成した。また、プーリ4を、可撓性を有する材質であるエラストマーによって形成している。
【0036】
これに対し、本発明の第二の実施形態では、外輪部材16の厚みを、可撓性を有する厚みに形成するとともに、図4で示すように、ころ19の径方向外方でころ19に対応する位置のプーリ4の内周面に凹部28を形成し、この凹部28に、エラストマーを射出成形している。すなわち、プーリ4と外輪部材16との間に弾性部材の一例としてのエラストマー成形部29が配置されているプーリ装置1としている。この場合のプーリ4は、従来から用いられている公知の材質で形成される。
【0037】
このように構成することにより、ベルト3の回転速度が急激に増加した場合、一方向クラッチ10が、ロック状態のくさび角θ1から、ころ19がくさび状空間18のさらに狭い側に噛込んで、外輪部材16においてころ19が接触している部分の近傍が弾性変形し、くさび角θ1より大きなくさび角θ2に無段階的に変更可能となる。なお、第一の実施形態では、外輪部材16の弾性変形に伴なってプーリ4も弾性変形した。しかし、この第二の実施形態の場合では弾性変形する部分は、ころ19が接触する部分の外輪部材16およびエラストマー成形部29である。
【0038】
他の構成については、上記第一の実施形態と同様であるので、その説明を省略する。ベルト3の回転速度が急激に変改した場合の作用効果については、上記第一の実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0039】
あるいは前記のような凹部28をころ19の径方向外方位置で外輪部材16の外周面部に形成し、この凹部28にエラストマーを射出成形してエラストマー成形部29とする構成としてもよい。
【0040】
この場合も、ベルト3の回転速度が急激に増加した場合、一方向クラッチ10が、ロック状態のくさび角θ1から、ころ19がくさび状空間18のさらに狭い側に噛込んで、外輪部材16においてころ19が接触している部分の近傍が弾性変形し、くさび角θ1より大きなくさび角θ2に無段階的に変更可能となる。
【0041】
(第三の実施形態)
上記第一の実施形態では、プーリ4と外輪部材16とを別体とした。この構成により、ベルト3からプーリ4に回転が伝達されて、その回転が一方向クラッチ10の外輪部材16に伝達される際、プーリ4の内周面と外輪部材16の外周面との間に、すべりが発生する可能性がある。図5は、この課題を解決するための構成を示す。
【0042】
すなわち、一方向クラッチ10の外周面に複数の凹部30を形成し、プーリ4形成の際に、凹部30にプーリ4形成の材料(例えばエラストマー)が充填されるようにする。この構成により、一方向クラッチ10の外周面とプーリ4の内周面との接触面積が増加する。従って、プーリ4および外輪部材16の一体化がいっそう確実になり、プーリ4の軸心14回りの回転を確実に外輪部材16に伝達することができるようになる。
【0043】
なお、凹部30は、外輪部材16の外周面に、円周方向に沿って複数箇所に環状に形成してもよいし、軸心14方向に沿って帯状に形成してもよいし、あるいは外周面に点在するよう形成してもよい。
【0044】
他の構成については、上記第一の実施形態と同様であるので、同一の符号を付してその説明を省略する。ベルト3の回転速度が急激に変改した場合の作用効果については、上記第一の実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0045】
さらに、上記各実施形態のプーリ装置1では、外輪軌道面を円筒面とし、内輪軌道面を八角形に形成してカム面とした。しかし本発明はこの構成に限定されるものではなく、外輪軌道面を八角形に形成してカム面とし、内輪軌道面を円筒面とする構成の一方向クラッチを備えたプーリ装置、あるいはカム面を設けるために軌道面を八角形以外の形状にする場合にも適用できる。そしてこれら何れの場合も、上記各実施形態と同様の作用効果を奏し得る。
【0046】
さらに、上記各実施形態では、一方向クラッチ10をプーリ装置1に適用させた場合の例を示した。しかし本発明の一方向クラッチ10は、プーリ装置1に用いた場合のみに限定されるものではなく、内輪部材を駆動側として外輪部材を従動側とする装置にも適用可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の第一の実施形態を示すプーリ装置の正面断面図である。
【図2】同じくプーリ装置の使用状態を示す側面断面図である。
【図3】同じくころのくさび角を示す拡大断面図である。
【図4】本発明の第二の実施形態を示すプーリ装置の正面断面図である。
【図5】本発明の第三の実施形態を示すプーリ装置の正面断面図である。
【図6】従来のプーリ装置の正面断面図である。
【符号の説明】
【0048】
1 プーリ装置
2 発電用駆動軸
3 ベルト
4 プーリ
5 外側環体
10 一方向クラッチ
16 外輪部材
17 内輪部材
18 くさび状空間
19 ころ
θ1,θ2 くさび角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力伝達用ベルトが巻掛けられるプーリと、このプーリとそのプーリ内方に配置される軸体との間に配置される軸受および一方向クラッチとを備えたプーリ装置であって、
前記一方向クラッチは、外輪部材と、この外輪部材の内方に配置された内輪部材と、前記外輪部材の内周面および内輪部材の外周面のうち少なくとも一方をカム面として円周方向複数箇所に形成されるくさび状空間と、それぞれのくさび状空間内に、外輪部材の内周面を外輪軌道面とし内輪部材の外周面を内輪軌道面として円周方向に転動可能に収納される転動体とを備え、
この転動体がくさび状空間の狭い側へ噛込んで内輪部材および外輪部材が軸心回りに同期的に回転するようにしたロック状態と、前記転動体がくさび状空間の広い側へ回避するよう噛込みを解除して内輪部材および外輪部材とが軸心回りに相対速度をもって回転するフリー状態とに切替え自在に構成され、
前記プーリが可撓性を有する材質によって形成されているプーリ装置。
【請求項2】
前記一方向クラッチの内輪軌道面がカム面とされ、外輪部材が可撓性を有する厚みに形成されている請求項1に記載のプーリ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−139198(P2007−139198A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−11779(P2007−11779)
【出願日】平成19年1月22日(2007.1.22)
【分割の表示】特願2002−33849(P2002−33849)の分割
【原出願日】平成14年2月12日(2002.2.12)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】