説明

プーリ

【課題】騒音の発生を抑制することが可能な歯付プーリ及び平プーリを提供する。
【解決手段】少なくともゴム製又はポリウレタン製の平ベルト或いは歯付ベルト4を掛架するプーリにおいて、該ベルトと接する面を10点平均粗さで5〜100μmRZの表面粗さとしたことから、ベルトとプーリの接触面で発生する発音が低下する。さらに、プーリ側にフランジがあり、プーリにミスアライメントがあった場合でも、フランジ側面への乗り上げが緩和され、ベルトの走行寿命が長くなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平ベルト用プーリ又は歯付ベルト用プーリに関するもので、ベルトとプーリの接触面における摩擦力を低下させたプーリに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種歯付プーリとしてはそのかみ合い面を平滑に仕上げたものが知られている。また歯を有する外輪部材と軸孔を有する内輪部材との間にない環状ゴムを介装したものも知られている(特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】実開昭60−28652号公報
【0004】
しかしながら、前者においてはかみ合い面の平滑化に伴いその接触面積が広くなることに起因して歯付ベルトが歯付プーリにかみ合う際に騒音が発生するという問題がある。又、後者においては、環状ゴムの介装により騒音を低減しようとするものであるが、構造が複雑で生産コストが高いといった問題がある。
本発明は前記に鑑み、騒音の発生を抑制することが可能な歯付プーリ及び平プーリを提供することを目的とする。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は前記に鑑み、騒音の発生を抑制することが可能な歯付プーリ及び平プーリを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、少なくともゴム製又はポリウレタン製の平ベルト或いは歯付ベルトを掛架するプーリにおいて、該ベルトと接する面を10点平均粗さで5〜100μmRZの表面粗さとしたプーリにある。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、少なくともゴム製又はポリウレタン製の平ベルト或いは歯付ベルトを掛架するプーリにおいて、該ベルトと接する面を10点平均粗さで5〜100μmRZの表面粗さとしたプーリであることから、ベルトとプーリの接触面で発生する発音が低下する。さらに、プーリ側面にフランジがあり、プーリにミスアライメントがあった場合でも、フランジ側面へのベルト乗り上げが緩和され、ベルトの走行寿命が長くなる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1は自動車における伝動装置を示し、その装置は、エンジンのクランク軸より回転駆動される第1歯付プーリ1と、カム軸を回転駆動する第2歯付プーリ2と、水ポンプを回転駆動する第3歯付プーリ3と、それら歯付プーリ1〜3間に懸回された歯付ベルト4とを備えている。5はテンショナである。第1歯付プーリ1は、鉄系粉末よりなる焼結体であって、各歯6におけるかみ合い面7に次のような表面処理が施されている。
【0009】
すなわち図2に示すように、第1歯付プーリ1にショットピーニン加工を施して各かみ合い面7に多数の微小凹、凸部8、9を形成し、プーリ表面の粗さを10点平均粗さで5〜100μmRZの表面粗さとするものである。
【0010】
図3に示す歯付ベルト4は、天然ゴム、ポリウレタンゴム、ブチルゴム、スチレン−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、エチレン・αーオレフィンゴム、アルキル化クロロスルフォン化ポリエチレン(ACSM)、水素化ニトリルゴム(H−NBR)、水素化ニトリルゴムと不飽和カルボン酸金属塩との混合ポリマー等のゴム材の単独、又はこれらの混合物が使用される。
【0011】
又、歯付ベルト4の心線としては、直径が0.2〜0.9mmのスチール心線、5〜9μmのEガラス又は高強度ガラスのフィラメント、或いは0.5〜2.5デニールのパラ系アラミド繊維のフィラメントを撚り合わせ、RFL液、エポキシ溶液、イソシネート溶液とゴムコンパウンドとの接着剤で処理された撚りコードが使用される。
【0012】
又、心線として炭素繊維を使用することもできる。心線は総デニール数1000〜10000の炭素繊維のフィラメント糸をゴムラテックスとエポキシ樹脂よりなる処理液を含浸付着させた後、これを5〜10回/10cmで片撚り、或いは5〜10回/10cmで下撚りをし、更に2.5〜5回/10cmで上撚りした諸撚りコードであってもよい。
【0013】
図4に示すプーリの材質は、鉄、ステンレス、アルミニウム等の材質のものが使用でき、又、これらの材質に限定するものではない。又、プーリ表面は、少なくともベルトと接触する面を10点平均粗さで5〜100μmRZの表面粗さとすれば、加工法としては、ショットブラスト加工法、ショットピーニング加工法、サンドブラスト加工法、エッチング加工法等どの加工法を選択しても表面粗さが上記範囲内に入ればよい。
【実施例】
【0014】
実施例として、硬度がJISA90度のポリウレタンエラストマー製200S5M538の歯付ベルトを用い、さらに鉄製の歯付ベルトと同じ歯形を有する24歯のプーリにエッチング加工法にて、10点平均粗さで10〜20μm深さで歯溝10の表面加工を行った。上記加工を施した一対のプーリ間に前記歯付ベルトを掛架し、1800rpmの回転数で回転させた。そのとき、駆動側プーリのベルト歯のかみ合い始めの箇所から3cm離して騒音形を設置し、音圧を測定した。その結果を表1に示す。又、このときのプーリの歯溝と同じエッチング加工をし、10点平均粗さで10〜20μm深さで表面加工を行ったプーリと同一材料の鉄板上にベルト歯が鉄板に当接するように載置し、摩擦係数を測定した。このときベルト背面に200gの錘を載せ、100mm/minの速度でベルトを鉄板上で動かし、ベルトの引張力を測定し、摩擦係数を測定した。その結果を表1に示す。同じ条件にて、表面加工していないプーリを用い、従来例とした。又、同様にして、プーリと同じ材質の鉄板を用い、表面加工せずに実施例と同条件にてベルト歯と鉄板との摩擦係数を測定した。そのときの結果を表1に示す。
【0015】
【表1】

【0016】
表1の結果から、実施例のプーリは従来例に比べて摩擦係数が小さく、それにつれて音圧も小さくなることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明は、歯付ベルト、Vベルト、Vリブドベルト等のプーリと接するベルトでの騒音低減に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】自動車における伝動装置の概略図である。
【図2】表面処理工程説明図である。
【図3】本発明に係る歯付ベルトの断面斜視図である。
【図4】本発明に係る歯付プーリの概略断面図である。
【符号の説明】
【0019】
1 第1歯付プーリ
2 第2歯付プーリ
3 第3歯付プーリ
4 歯付ベルト
5 テンショナ
6 プーリ歯
7 かみ合い面
8 凸部
9 凸部
10 歯溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともゴム製又はポリウレタン製の平ベルト或いは歯付ベルトを掛架するプーリにおいて、該ベルトと接する面を10点平均粗さで5〜100μmRZの表面粗さとしたことを特徴とするプーリ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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