説明

ヘアキャッチャー

【課題】押さえ部を押しながら摘み部を摘むという一つの動作(ワンアクション)をするだけで、捕捉した毛やゴミ屑等の捕集物を除去可能な状態とする構造のヘアキャッチャーを実現する。
【解決手段】ヘアキャッチャー1は、上捕集体2と下捕集体3とを重ね合わせて構成されており、上捕集体2には、水平面部8と水平面部8から立ち上がる立ち上がり部9が形成されており、下捕集体3には、摘み部17を備えており、上捕集体2と下捕集体3とを重ね合わせた状態で、摘み部17の一部は上捕集体2と面一とし、摘み部17を掴みながら摘み部17の近傍に位置する上捕集体2の押さえ部10を押さえることで、上捕集体2が上方に回動し、上捕集体2に沿って捕集物13を除去し易くなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛やゴミ屑等の捕集物を捕集するヘアキャッチャーに関し、特に上下2つの捕集体からなるヘアキャッチャーにおいて、下捕集体の摘みを掴みながら上捕集体の押さえ部を押し下げることで、上捕集体を上方に回動させて捕集物を、除去可能な状態とすることのできるヘアキャッチャーに関する。
【背景技術】
【0002】
洗面ボール、浴室等の排水口に装着される、毛やごみ屑等の捕集物を捕集するためのヘアキャッチャーが従来から知られている。このようなヘアキャッチャーは、捕捉された捕集物が絡まり、容易に除去することが困難である他、捕捉された捕集物によって目詰まりを起こし、排水能力を低下させる問題がある。
【0003】
このような問題を解決するヘアキャッチャーとして、例えば、ストレーナーを櫛形状する、あるいは2つの櫛形状ストレーナーを重ね合わす構造のものが知られている(特許文献1参照)。また、縦方向櫛部材と横方向櫛部材とで構成されるヘアキャッチャーで、櫛部材にバーを取り付けた構造のものが知られている(特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2000−79305号公報
【特許文献2】特開2007−46422号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1は、2つの櫛形状ストレーナーを重ね合わす構造であり、絡まった捕集物を除去するためには、排水口から引き上げ、さらに2つの櫛形状ストレーナーをスライドしながら離すという動作が必要となり、作業は必ずしも簡単とは云えず、特に排水口に装着した状態では作業がしにくいものと考えられる。
【0006】
また、特許文献2は、縦方向櫛部材と横方向櫛部材のそれぞれの4隅の端部で互いに回転可能としているが、回転可能とするボス及び凹部が4箇所必要で構造が複雑であり、作業も必ずしも簡単とは云えないものと考えられる。また。特許文献1、2に係る発明では、捕集物が絡んで目詰まり状態となった場合には、排水能力が急速に低下する。
【0007】
本発明は、捕捉した捕集物を除去しやすい状態に簡単にすることができる構造のヘアキャッチャーを実現することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記課題を解決するために、上捕集体と下捕集体とを重ね合わせたヘアキャッチャーであって、下捕集体は摘み部を備えるとともに、上捕集体と下捕集体とを重ね合わせた状態で、摘み部を掴んだ際に、摘み部の近傍に位置する上捕集体の押さえ部を押さえることで、上捕集体が上方に回動するように構成されていることを特徴とするヘアキャッチャーを提供する。
【0009】
押さえ部は、上捕集体の水平面から立ち上がった立ち上がり部の一部であることが好ましい。
【0010】
立ち上がり部に排水隙間が形成されていることが好ましい。
【0011】
下捕集体の摘み部と同方向に、上捕集体に摘み部挿通用間隙が形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るヘアキャッチャーによれば、次のような効果が生じる。上捕集体と下捕集体とを重ね合わせた状態で、摘み部をその近傍に位置する上捕集体の押さえ部を押し下げながら摘むと、上捕集体が上方に回動するので、上捕集体と下捕集体とを完全に分離することなく、また排水口に装着した状態でも、簡単な作業で毛やゴミ屑等の捕集物を除去することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明に係るヘアキャッチャーを実施するための最良の形態を実施例に基づき図面を参照して、以下説明する。
【実施例】
【0014】
本発明に係るヘアキャッチャーの実施例を図1及び図2において説明する。図1(a)及び図2(a)は、この実施例のヘアキャッチャー1の構成を示している。ヘアキャッチャー1は、樹脂材等の材料で形成されており、上捕集体2(図1(b)参照)と下捕集体3(図1(c)参照)とが、互いに開閉可能に重ね合わされて構成される。
【0015】
上捕集体2は、図1(b)に示すように、全体として複数の上捕集桟4を備え櫛状に形成されている。上捕集体2の輪郭は、装着する洗面ボール、浴室等の排水口(図示せず)の平面形状に合わせて形成され、例えば本実施例では、平面視で略円形に形成されており、その大きさ(具体的には直径)は、排水口内に挿入可能なように、排水口の大きさ(具体的には直径)より若干小さく形成されている。
【0016】
複数の上捕集桟4は、櫛歯のように互いに間隙5を介して略平行に形成されている。複数の上捕集桟4は、上捕集体2の基端部6から先端部7に向けて一方向に延びるように形成されている。そして、複数の上捕集桟4の間隙5は、上捕集体2の先端部7において開口している。
【0017】
上捕集体2は、図1(b)及び図2(a)に示すように、全体として水平面部8と、水平面部8から基端側に向けて上方に傾斜した立ち上がり部9とから構成される。この立ち上がり部9における後記する摘み部挿通用間隙12の近辺(近傍)の部分は、押さえ部10として機能する。
【0018】
複数の上捕集桟4は、上捕集体2の正面から見ると、左側の複数の上捕集桟4と右側の複数の上捕集桟4が、横幅方向の中央において幅広部11で結合されている。そして、この幅広部11の基端側であって立ち上がり部9の部分には、摘み部挿通用間隙12が形成されている。摘み部挿通用間隙12は、その基端では開口している。
【0019】
上捕集体2の水平面部8における複数の上捕集桟4の互いの間隙5は、排水隙間として排水を通過させるとともに、下捕集体3とともに、毛やゴミ屑等の捕集物13の通過を阻止して捕捉する機能を有している。
【0020】
上捕集体2の立ち上がり部9における複数の上捕集桟4の互いの間隙は、水平面部8における上捕集桟4による捕集物13の捕捉乃至捕集が進み、目詰まりが生じ始めても、排水隙間としての機能を奏し、その場合に、毛やゴミ屑等の捕集物13を捕集する機能を有している。
【0021】
下捕集体3は、図1(c)に示すように、上捕集体2の上捕集桟4の方向と同じ方向に伸びた中央桟14と、下捕集桟15と、下捕集体3の基端部16から上方に突出した摘み部17とを備えている。摘み部17は、中央桟14と同じ方向に向けて形成されており、特に、上捕集体2の摘み部挿通用間隙12の方向と同方向に形成され、しかも摘み部17の厚みは、摘み部挿通用間隙12の幅より若干小さく形成されている。
【0022】
このような構成とすることで、上捕集体2と下捕集体3とを重ね合わせた際に、摘み部17が摘み部挿通用間隙12に嵌合する状態となる(図1(a)参照)。そして、摘み部17が摘み部挿通用間隙12に嵌合した状態において、摘み部17は、上捕集体2の立ち上がり部9の上面、即ち上捕集桟4の傾斜した上面が、図1(a)及び図2(a)に示すように、面一(つらいち)となるような高さ及び上面形状(立ち上がり部9における上捕集桟4の傾斜した上面の形状と同じような形状)に形成されている。
【0023】
面一の構成とすることで、上捕集体2の摘み部17及び立ち上がり部9には、捕集されるべき物が絡みにくく、水平面部8に向けて流下し易くなる。なお、図3は、本実施例において、摘み部の構成のみが異なる変形例を示す図である。この変形例は、摘み部17’を、上捕集桟4の傾斜した上面より上方に突出する構成としたものである。このように、本発明のヘアキャッチャーでは、摘み部を上捕集桟4の傾斜した上面より上方に突出する構成としてもよいが、その場合、図3の変形例のように、摘み部17’を捕集されるべき物が絡みにくい形状(例えば、凸状の湾曲面等)とすることが好ましい。
【0024】
下捕集体3の輪郭は、平面視で上捕集体2と同じ形状、例えばこの実施例では、略円形に形成されており、その大きさ(具体的には直径)は、下捕集体3が装着すべき排水口内に挿入可能なように、排水口の大きさ(直径)より若干小さく形成されている。
【0025】
下捕集体3の下捕集桟15は、中央桟14から左右対称的にそれぞれ左右方向に延び、櫛状に形成されている。複数の下捕集桟15は、それぞれ櫛歯のように互いに間隙18を介して平行に形成されており、この複数の下捕集桟15の間隙18は、それぞれ左右の先端部19において開口している。
【0026】
摘み部17を、上捕集体2の摘み部挿通用間隙12を通過させるようにして、図1(a)及び図2(a)に示すように、下捕集体3の上に下捕集体3を重ね合わせると、下捕集体3における複数の左右の下捕集桟15は、上捕集桟4の向きと直交し、格子状の捕集桟20が形成される。そして、立ち上がり部9の押さえ部10を下方に押すと、図2(b)に示すように、水平面部8から立ち上がり部9へ屈曲する部分21を中心に、上捕集体2と下捕集体を開くように回転する。
【0027】
(作用)
以上の構成から成るヘアキャッチャー1の作用を説明する。図1(a)及び図2(a)に示すように、上捕集体2と下捕集体3が重ね合わされた状態で、ヘアキャッチャー1を、洗面ボール、浴室等の排水口内に嵌合して装着する。
【0028】
排水口から排水される水は、上捕集桟4と下捕集桟15が互いに重ね合わされて形成される格子状の捕集桟20の間隙を通過し、図示しない排水管へ流出するとともに、毛やゴミ屑等の捕集物13は、格子状の捕集桟20の構成要素である上捕集桟4と下捕集桟15で捕捉される。
【0029】
立ち上がり部9においては、捕集されるべき物は、上捕集桟4及び摘み部17の傾斜した上面を流下し、水平面部8における格子状の捕集桟20上に移動し、水平面部8に絡んで捕集される(図2(c)参照)。
【0030】
ところで、この実施例のヘアキャッチャー1に示すように、摘み部17は、摘み部挿通用間隙12に嵌合した状態において、上捕集体2の立ち上がり部9における上捕集桟4と略平行であり、上捕集桟4の傾斜した上面と面一(つらいち)となるように形成されている。これにより、捕集されるべき物は、摘み部17及び上捕集桟4の傾斜面上を水平面部8に向けて比較的スムースに流されて移動し、摘み部17に絡んだりしにくくなる。よって、捕集物13は、まず水平面部8の格子状の捕集桟20に捕集されやすい。
【0031】
これに対して、摘み部17が摘み部挿通用間隙12に嵌合した状態において、立ち上がり部9における上捕集桟4の傾斜した上面より上方に突出する構成にすると、捕集されるべき物は、この突出した摘み部17に絡んだりして、下方の水平面部8にスムースに移動することが阻害されることも生じる。よって、そのような構成の場合は、摘み部17の上方に突出している部分の面を曲面等の捕集物13が絡みにくい形状とすることが好ましい(図3参照)。
【0032】
このように、排水は、格子状の捕集桟20の隙間を通過して下方に流下し、時間の経過とともに、水平面部8における格子状の捕集桟20から捕集物13が絡み、目詰まりを生じる。しかし、水平面部8における格子状の捕集桟20に目詰まりが生じても、排水は、立ち上がり部9における格子状の捕集桟20の排水間隙を通過して流下するから、目詰まりによる排水困難は生じにくい。したがって、水平面部8における目詰まりがある程度進行しても、排水能力は比較的低減しない。
【0033】
図2(c)に示すように、上捕集桟4及び下捕集桟15に絡んで捕捉された捕集物13を除去する場合は、排水口に装着されたヘアキャッチャー1の摘み部17を、摘み部17の近辺(両側)に位置する立ち上がり部9の一部である押さえ部10を下方に押しながら掴む。換言すれば、ヘアキャッチャー1の摘み部17を掴もうとすると、必然的に押さえ部10を下方に押すこととなる。
【0034】
このように、摘み部17の近辺(近傍)に位置する押さえ部10が、立ち上がり部9の一部であるので、この押さえ部10を押すと、水平面部8から立ち上がり部9に立ち上がる屈曲部21を中心として、図2(c)に示す状態から図2(d)に示すように、上捕集体2の水平面部8はその先端部7側から上方に回動し、押さえ部10の下面(背面)が下捕集体3に当接して規制されるまでの所定角度だけ回動可能である。
【0035】
上捕集体2が回動すると、上捕集桟4に絡んでいた捕集物13を上方に引き出すこととなり、また、上捕集桟4と下捕集桟15との間に隙間22が生じ、捕集物13を除去しやすい状態となる(図2(d)参照)。そこで、使用者は、この隙間22に手を入れて又は上捕集桟4の上下から、捕集物13を把持して上捕集桟4の先端部7の開口に向けて引き出せば、捕集物13を容易に、かつ効果的に除去することができる。
【0036】
以上のように、本発明のヘアキャッチャー1では、押さえ部10を下方に押しながら摘み部17を掴むという一つの動作(ワンアクション)をするだけで、上捕集体2をその水平面部8の先端部7側から上方に回動可能となり、簡単に捕集物13を除去し得る状態となる。
【0037】
このようなヘアキャッチャー1の摘み部17を掴みながら押さえ部10を押し下げて上捕集体2を開いて捕集物13を除去する作業は、排水口に装着したヘアキャッチャー1を、摘み部17を掴んで排水口から引き上げながら行ってもよい。
【0038】
しかし、本発明のヘアキャッチャー1の構成によれば、押さえ部10を押し下げるだけで、上捕集体2の水平面部8の先端部7側から上方に回動し、上捕集桟4の先端側の開口から捕集物13を除去できる状態となるから、排水口に装着した状態でも捕集物13を除去する作業は可能であり、作業がより簡単となる。
【0039】
以上、本発明に係るヘアキャッチャーを実施するための最良の形態を実施例に基づいて説明したが、本発明はこのような実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された技術的事項の範囲内でいろいろな実施例があることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明に係るヘアキャッチャーは、上記のような構成であるから、毛やゴミ屑を捕捉する必要のある洗面ボール、浴室等の排水口に適用できるだけでなく、捕集物を捕捉する必要のあるキッチンの流し台、その他の排水口にも適用可能である。特に、ホテル、事務所ビル、駅等のように多数の排水口を有する建物における、排水口の清掃作業では一つの動作(ワンアククッション)でヘアキャッチャーの清掃が可能となるので、有用である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】(a)は本発明に係るヘアキャッチャーの構成を示す斜視図であり、(b)は上捕集体を示し、(c)は下捕集体を示す斜視図である。
【図2】(a)、(b)は本発明に係るヘアキャッチャーの構成を示す側面図であり、(c)、(d)は本発明に係るヘアキャッチャーの作用を説明する図である。
【図3】(a)は本発明に係るヘアキャッチャーの変形例の構成を示す斜視図であり、(b)はその側面図である。
【符号の説明】
【0042】
1 ヘアキャッチャー
2 上捕集体
3 下捕集体
4 上捕集桟
5 複数の上捕集桟の間隙
6 上捕集体の基端部
7 上捕集体の先端部
8 上捕集体の水平面部
9 上捕集体の立ち上がり部
10 押さえ部
11 幅広部
12 摘み部挿通用間隙
13 捕集物
14 下捕集体の中央桟
15 下捕集桟
16 下捕集体の基端部
17 突出した摘み部
18 複数の下捕集桟の間隙
19 下捕集桟の先端部
20 格子状の捕集桟
21 上捕集体の水平面部から立ち上がり部への屈曲部
22 上捕集桟と下捕集桟との間の隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上捕集体と下捕集体とを重ね合わせたヘアキャッチャーであって、下捕集体は摘み部を備えるとともに、上捕集体と下捕集体とを重ね合わせた状態で、摘み部を掴んだ際に、摘み部の近傍に位置する上捕集体の押さえ部を押さえることで、上捕集体が上方に回動するように構成されていることを特徴とするヘアキャッチャー。
【請求項2】
請求項1記載のヘアキャッチャーであって、押さえ部は、上捕集体の水平面から立ち上がった立ち上がり部の一部であることを特徴とするヘアキャッチャー。
【請求項3】
請求項2記載のヘアキャッチャーであって、立ち上がり部に排水隙間が形成されていることを特徴とするヘアキャッチャー。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載のヘアキャッチャーであって、下捕集体の摘み部と同方向に、上捕集体に摘み部挿通用間隙が形成されていることを特徴とするヘアキャッチャー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−293269(P2009−293269A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−147614(P2008−147614)
【出願日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願人】(000004709)株式会社ノーリツ (1,293)
【Fターム(参考)】