説明

ヘッダプレートレス熱交換器の偏平チューブ

【課題】 それぞれ底面1の両側に側壁2が立ち上げられ、その長手方向両端で底面1が外側方向に拡開された拡開底部3を有する溝型の第1プレート4と第2プレート5とを有し、それらの両プレートの嵌着体により偏平チューブ6を構成するものにおいて、一対の第1プレート4、第2プレート5の嵌着状態を保持することにより、熱交換器の組立てが容易となる偏平チューブの提供。
【解決手段】 第1プレート4の両側壁2に係合凹部10を形成し、第2プレート5の両側壁2に爪部11を設け、その先端に係止部12を形成する。そして、第1プレート4の外面側に第2プレート5を被嵌するとともに、その爪部11を係合凹部10に嵌着し、且つその係止部12を第1プレート4の底面1の縁部に係合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッダプレートを不要とする熱交換器であって、一対の溝型プレートを互いに嵌着して偏平チューブとし、その偏平チューブを積層して熱交換器のコアとしたものに関する。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1および特許文献2は、ヘッダプレートを不要とする熱交換器である。
これらは金属板が溝型に曲折され、その両端部が底面側に拡開した一対のプレートを有し、それらが互いに嵌着して偏平チューブとなる。そして、複数のその偏平チューブをその長手方向両端部の拡開部で密着して積層し、外周をケーシングで被嵌し、全体を炉内で一体にろう付け固定したものである。そして、各チューブ内にはインナーフィンが介装されて、そこに第1流体が流通し、チューブの外面側には第2流体が流通する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−43257号公報
【特許文献2】特開2007−225190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のヘッダプレートレス熱交換器の偏平チューブは、一対のプレートを互いに逆向きに嵌着するとき、それが上下方向に外れ易い欠点がある。また、一対の溝型プレートを嵌着しても、両プレートが長手方向に相対移動する場合がある。このような場合、多数の偏平チューブを積層して組立てることが容易ではない。
【0005】
そこで、本発明は一対のプレートを嵌着したとき、その嵌着状態を保持できるとともに、その保持手段の存在が他の部品と干渉しないようにした新たな偏平チューブを提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の本発明は、それぞれプレス成形により、底面(1)の両側に側壁(2)が立ち上げられ、その長手方向の両端で、その底面(1)が外側方向に拡開された拡開底部(3)を有する溝形の第1プレート(4)と第2プレート(5)とを有し、それらの両プレートの嵌着体により偏平チューブ(6)を構成し、複数の偏平チューブ(6)が前記拡開底部(3)で厚み方向に互いに密着して積層されてコア(7)を構成し、そのコア(7)の外周をケーシング(8)が被嵌し、そのケーシング(8)の内面が各プレート(4)(5)の両側壁(2)に接触し、それら各部品が組立てられた状態で、その各部品の接触部間が一体にろう付けされてなり、
各偏平チューブ(6)内に第1流体が流通し、各偏平チューブ(6)の外面間に第2流体が流通するヘッダプレートレス熱交換器の偏平チューブ(6)において、
第1プレート(4)の両側壁(2)の根元より先端側の方がその板厚分だけ内側に段付きに形成されて、その先端側に内側段部(9)を有し、その両側壁(2)の一部には、それぞれ前記段付きが存在せず、側壁(2)の全高さに渡り前記内側段部(9)と面一となる係合凹部(10)をその側壁(2)の外面に有し、
第2プレート(5)の両側壁(2)の内面は、前記第1プレート(4)の両側壁(2)の内側段部(9)の外面に整合し且つ、その第2プレート(5)の両側壁(2)の一部には、前記第1プレート(4)の前記係合凹部(10)に整合する爪部(11)がその高さ方向に突出すると共に、その爪部(11)の先端に係止部(12)が側壁(2)の内側へ折り曲げ形成され、
第1プレート(4)の両側壁(2)の内側段部(9)に、第2プレート(5)の両側壁(2)の内面が嵌着すると共に、その爪部(11)が前記係止用凹部(10)に嵌着し且つ、その爪部(11)先端の係止部(12)が第1プレート(4)の底面(1)の外縁に係止され、その係止部(12)の先端縁は、前記拡開底部(3)の高さ以下に位置されたことを特徴とするヘッダプレートレス熱交換器の偏平チューブである。
【0007】
請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載のヘッダプレートレス熱交換器の偏平チューブにおいて、
前記第2プレート(5)の爪部(11)の係止部(12)が断面への字状に曲折され、
前記第1プレート(4)の両側壁(2)の下端縁に内側へ断面への字状に曲折された内曲げ部(13)を有し、
第1プレート(4)の前記内曲げ部(13)の存在によって、両プレート(4)(5)を互いに嵌着する際、前記係止部(12)が第1プレート(4)の外面に円滑に案内されるように構成されたヘッダプレートレス熱交換器の偏平チューブである。
【0008】
請求項3に記載の本発明は、請求項1または請求項2に記載のヘッダプレートレス熱交換器の偏平チューブにおいて、
前記第1プレート(4)の両側壁(2)の外面に、その長手方向に離間して複数の前記係合凹部(10)が形成され、その係合凹部(10)に整合する位置で、前記第2プレート(5)に複数の爪部(11)および係止部(12)が設けられたヘッダプレートレス熱交換器の偏平チューブである。
【発明の効果】
【0009】
本発明のヘッダプレートレス熱交換器の偏平チューブ6は、その第1プレート4の両側壁2の外側に、第2プレート5の両側壁2が嵌着すると共に、その爪部11が前記係合凹部10に嵌着し且つ、その爪部11先端の係止部12が第1プレート4の底面1の外縁に係止され、その係止部12の先端縁は、前記拡開底部3の高さ以下に位置されたものである。
【0010】
そのため、第1プレート4の外面に第2プレート5を被嵌したとき、係止部12の係合により、両プレート4,5間を厚み方向に保持することができ、熱交換器の組立てが容易で、量産性が高くなる。このとき、第2プレート5の爪部11と第1プレート4の前記係合凹部10が整合するので、両プレート4,5が長手方向にも拘束され、その方向に位置ずれすることがない。
その第2プレート5の爪部11は、板厚分凹んだ第1プレート4の係合凹部10に嵌着されるため、その外面が第1プレート4の外面と面一になり、それらがケーシング8の内面と接触し、その接触部を隙間なくろう付けすることが可能となる。
また、爪部11の係止部12の先端高さは、拡開底部3の高さより低いから、各偏平チューブ6をその拡開底部で積層したとき、係止部12が隣接するプレートと干渉することがない。
【0011】
上記構成において、請求項2に記載のように、第1プレート4の両側壁2の下端縁に内側へ断面への字状に曲折された内曲げ部13を有する場合には、第1プレート4と、第2プレート5とを互いに嵌着する際、への字状の係止部12が第1プレート4の外面に円滑に案内されて、偏平チューブ6の組立てが容易且つ、迅速に行われる効果がある。
上記構成において、請求項3に記載のように、第1プレート4の外面に複数の係合凹部10を形成し、第2プレートに複数の爪部11および係止部12を設けた場合には、両プレート4,5の嵌着状態をより安定して保持できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の偏平チューブの分解斜視図。
【図2】同要部拡大図であって、図1のII部拡大図。
【図3】同偏平チューブの組立て状態の斜視図。
【図4】同要部であって、図3のIV部拡大図。
【図5】図4のV−V矢視断面略図。
【図6】図4のVI−VI矢視断面略図。
【図7】本発明のヘッダプレートレス熱交換器の要部斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、図面に基づいて本発明の実施の形態につき、説明する。
本発明のヘッダプレートレス熱交換器は、図7に示すごとく、多数の偏平チューブ6をその両端の拡開底部3で互いに密着して積層し、全体の開口部の外周が方形となるコア7を構成する。そして、そのコア7の外周にケーシング8を被嵌し、そのケーシング8の長手方向両端(同図では右側を省略)にヘッダ17が接続される。それら各部品の互いに接触する少なくとも一方側にろう材を配置し、熱交換器を組立てた状態で、全体を高温の炉内に挿入し、一体にろう付け固定するものである。このとき、ケーシング8の内面と、偏平チューブ6を構成する第1プレート4、第2プレート5の各側壁2との間は大部分が接触し、その接触部間が接合される。
【0014】
(発明の要部)
このようなヘッダプレートレス熱交換器の偏平チューブは、第1プレート4と第2プレート5との嵌着体よりなる。第1プレート4、第2プレート5はそれぞれ金属板のプレス成形により底面1の両側に側壁2が立ち上げられている。さらに、その長手方向両端で、底面1が外面方向に拡開された拡開底部3を有し、全体が溝型に形成される。また、それらの外面側には冷却水攪拌用の多数のディンプル15が突設され、その高さが拡開底部3の高さに整合する。また、底面1の長手方向両端部には一対の冷却水案内用の突条14が外側に突出形成されている。
【0015】
第1プレート4の側壁2の先端縁は、図1、図2に示す如く、内側に段付きに形成され、そこに内側段部9が設けられている。この内側段部9は、側壁2の先端縁の全長にわたって形成されている。その内側段部9の段付き深さは第2プレート5の板厚と同一である。さらに、その内側段部9の先端縁には、断面への字状に曲折された第2プレート案内用の内曲げ部13が存在する。そして、第2プレート5の両側壁2の内面側の間隔は、第1プレート4の両側壁2の各内側段部9の外面間隔に整合する。
【0016】
また、第1プレート4の両側壁2には、互いに離間して一対の係合凹部10が形成されている。この係合凹部10は、図2に示す如く、内側段部9の平面と面一に形成されている。
そして、第2プレート5には、第1プレート4の係合凹部10の幅に整合する爪部11が一対突設され、その爪部11の先端には、係止部12が断面への字状に図5のごとく曲折されている。
【0017】
第1プレート4、第2プレート5の内外面にはろう材が被覆または塗布され、両プレートが図示しないインナーフィンを介して、互いに逆向きに対向して、第1プレート4の外側に第2プレート5が嵌着される。このとき、第2プレート5の爪部11が第1プレート4の係合凹部10に嵌着し、その係止部12が第1プレート4の底部外面の縁部に係止される。その状態を図4および図5に示す。また、爪部11以外の部分では図6のごとく、第2プレート5の側壁2が第1プレート4の内側段部9に嵌着される。そして、その係合凹部10と爪部11との嵌着により、両プレートはその厚み方向に保持されるとともに、その長手方向にも拘束される。そのため、多数の偏平チューブ6の積層およびコアの組立てが容易となる。
【0018】
そして、その外周に図7に示すごとく、ケーシング8が被嵌され、その内面の大部分が各偏平チューブ6の両側面に接触する。また、ケーシング8の長手方向両端には開口19が穿設され、そこに図示しない冷却水パイプの端部が嵌入される。また、ケーシング8の両端開口にはヘッダ17が接続され、全体が組立てられた状態で高温の炉内に挿入され、一体的にろう付け固定されるものである。
【符号の説明】
【0019】
1 底面
2 側壁
3 拡開底部
4 第1プレート
5 第2プレート
6 偏平チューブ
7 コア
8 ケーシング
【0020】
9 内側段部
10 係合凹部
11 爪部
12 係止部
13 内曲げ部
【0021】
14 突条
15 ディンプル
16 冷却水マニホールド
17 ヘッダ
18 段付き部
19 開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれプレス成形により、底面(1)の両側に側壁(2)が立ち上げられ、その長手方向の両端で、その底面(1)が外側方向に拡開された拡開底部(3)を有する溝形の第1プレート(4)と第2プレート(5)とを有し、それらの両プレートの嵌着体により偏平チューブ(6)を構成し、複数の偏平チューブ(6)が前記拡開底部(3)で厚み方向に互いに密着して積層されてコア(7)を構成し、そのコア(7)の外周をケーシング(8)が被嵌し、そのケーシング(8)の内面が各プレート(4)(5)の両側壁(2)に接触し、それら各部品が組立てられた状態で、その各部品の接触部間が一体にろう付けされてなり、
各偏平チューブ(6)内に第1流体が流通し、各偏平チューブ(6)の外面間に第2流体が流通するヘッダプレートレス熱交換器の偏平チューブ(6)において、
第1プレート(4)の両側壁(2)の根元より先端側の方がその板厚分だけ内側に段付きに形成されて、その先端側に内側段部(9)を有し、その両側壁(2)の一部には、それぞれ前記段付きが存在せず、側壁(2)の全高さに渡り前記内側段部(9)と面一となる係合凹部(10)をその側壁(2)の外面に有し、
第2プレート(5)の両側壁(2)の内面は、前記第1プレート(4)の両側壁(2)の内側段部(9)の外面に整合し且つ、その第2プレート(5)の両側壁(2)の一部には、前記第1プレート(4)の前記係合凹部(10)に整合する爪部(11)がその高さ方向に突出すると共に、その爪部(11)の先端に係止部(12)が側壁(2)の内側へ折り曲げ形成され、
第1プレート(4)の両側壁(2)の内側段部(9)に、第2プレート(5)の両側壁(2)の内面が嵌着すると共に、その爪部(11)が前記係止用凹部(10)に嵌着し且つ、その爪部(11)先端の係止部(12)が第1プレート(4)の底面(1)の外縁に係止され、その係止部(12)の先端縁は、前記拡開底部(3)の高さ以下に位置されたことを特徴とするヘッダプレートレス熱交換器の偏平チューブ。
【請求項2】
請求項1に記載のヘッダプレートレス熱交換器の偏平チューブにおいて、
前記第2プレート(5)の爪部(11)の係止部(12)が断面への字状に曲折され、
前記第1プレート(4)の両側壁(2)の下端縁に内側へ断面への字状に曲折された内曲げ部(13)を有し、
第1プレート(4)の前記内曲げ部(13)の存在によって、両プレート(4)(5)を互いに嵌着する際、前記係止部(12)が第1プレート(4)の外面に円滑に案内されるように構成されたヘッダプレートレス熱交換器の偏平チューブ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のヘッダプレートレス熱交換器の偏平チューブにおいて、
前記第1プレート(4)の両側壁(2)の外面に、その長手方向に離間して複数の前記係合凹部(10)が形成され、その係合凹部(10)に整合する位置で、前記第2プレート(5)に複数の爪部(11)および係止部(12)が設けられたヘッダプレートレス熱交換器の偏平チューブ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2013−83416(P2013−83416A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−225092(P2011−225092)
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(000222484)株式会社ティラド (289)
【Fターム(参考)】