説明

ヘッダー

【課題】 高周波の信号に対する特性を改善可能なヘッダーを提供する。
【解決手段】 ヘッダー1は、向きを揃えて並んだ複数の同軸ケーブル8のうちの1本ずつの心線81が接続される端子部21を有する複数のポスト2と、導電材料からなり各同軸ケーブル8の外部導体に重ねて配置され外部導体に電気的に接続されるグランドバー6とを備える。グランドバー6には、ポスト2の端子部21に電気的に接続されるグランド接続部62が設けられている。グランドバー6に電気的に接続されたポスト2が接触導通するコンタクト(図示せず)をグランドに接続すれば、リターン電流を端付近まで迂回させる場合に比べ、リターン電流の経路が短くなるから、高周波の信号に対する特性の改善が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッダーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、嵌合などにより互いに着脱自在に結合するヘッダーとソケットとを備えるコネクタが提供されている。
【0003】
また、この種のコネクタとして、ヘッダーには相互に向きを揃えて並んだ複数の電線が接続され、ソケットはプリント配線板等に実装されるものがある。
【0004】
上記のコネクタにおいては、ソケットに対してヘッダーを結合させると、それぞれヘッダーに接続された複数の電線と、ソケットがそれぞれ実装されたプリント配線板等との電気的な接続が達成される。
【0005】
上記のようなヘッダーとして、例えば図9〜図11に示すようなものがある(例えば、特許文献1参照)。このヘッダー1は、向きを揃えて直線状に並べられた複数本の同軸ケーブル8がそれぞれ接続されるものであって、プリント配線板(図示せず)に実装されるソケット(図示せず)とともに、上記複数本の同軸ケーブル8をそれぞれプリント配線板に対して電気的に接続するコネクタを構成する。
【0006】
ヘッダー1が接続される上記のソケットは、それぞれ導電材料からなり半田付け等によってプリント配線板に電気的に接続される複数のコンタクトと、絶縁材料からなり各コンタクトをそれぞれ保持するハウジングとを有する。
【0007】
ヘッダー1は、それぞれ例えば金属板に打ち抜き加工と曲げ加工とが施されてなる複数のポスト2と、合成樹脂からなり各ポスト2をそれぞれインサート成型によって保持したボディ3とを備える。以下、上下方向は図10を基準とする。また、同軸ケーブル8が並ぶ方向(図10での左下−右上方向)を左右方向と呼ぶ。さらに、同軸ケーブル8の長さ方向を前後方向と呼び、ヘッダー1から同軸ケーブル8が引き出される向きを後向きと呼ぶ。上記のソケットは、ヘッダー1の上側に位置する。なお、上記の方向はあくまで説明の便宜上定義するものであって、実際の使用状態での方向には必ずしも一致しない。
【0008】
各ポスト2は、それぞれ、図10に示すように、1本の同軸ケーブル8の心線81が半田付けにより接続される端子部21と、ソケットのコンタクトに接触可能な接触部22とを有する。
【0009】
ボディ3は、左右に長く上下に扁平な本体部31と、本体部31の左右両端からそれぞれ左右方向の外向きに突設された腕部32とを有する。本体部31の上面には、後方に開放された収納凹部30が設けられており、各ポスト2の端子部21はそれぞれ収納凹部30内において同軸ケーブル8の心線81に接続される。さらに、本実施形態は、それぞれ導電材料からなり左右に長く上下に扁平な直方体形状であって各同軸ケーブル8を上下から挟む2本のグランドバー6を備える。各グランドバー6は、それぞれ、各同軸ケーブル8の外部導体(例えば編組線)82に半田付けされるとともに収納凹部30内に収納される。また、各ポスト2の接触部22は、それぞれ収納凹部30の開口よりも上方に突出し、ソケットのハウジングが有する凹部(図示せず)に対して嵌合することでソケットのコンタクトに接触導通する。
【0010】
さらに、ボディ3には、金属板に打ち抜き加工と曲げ加工とが施されてなるインサートシェル4が、インサート成型により保持されている。インサートシェル4は、厚さ方向を上下方向に向けた本体部41と、本体部41の左右両端からそれぞれ左右方向の外向きに突設された腕部42と、各腕部42の前後両端部からそれぞれ上方(図11での下方)に突設された結合部43とを有する。インサートシェル4の本体部41は、ボディ3の本体部31の下面をほぼ覆う。また、各結合部43は、それぞれ、上端部が前後方向の内向きに曲げられたL字形状となっている。すなわち、ボディ3の各腕部32が、前後方向ではインサートシェル4の結合部43間に挟まれるとともに、上下方向ではインサートシェル4の結合部43の上端部と腕部42との間に挟まれている。これにより、ボディ3に対するインサートシェル4の結合の強度が向上されている。
【0011】
さらに、ボディ3には、図9に示すように、金属板に打ち抜き加工と曲げ加工とが施されてなるシェル5が、収納凹部30を閉塞する形で(すなわちボディ3との間にポスト2の端子部21を挟む形で)結合する。
【0012】
シェル5は、厚さ方向を上下方向に向けたカバー部51と、カバー部51の左右両端からそれぞれ左右方向の外向きに突設された腕部52と、各腕部52の先端からそれぞれ下方に突設された側壁部53とを有する。シェル5のカバー部51は、上方から見て収納凹部30を覆う。また、シェル5の各腕部52は、それぞれボディ3の1個ずつの腕部32の上側に位置する。さらに、シェル5の側壁部53は、左右方向においてボディ3を挟む。また、シェル5は、各側壁部53の下端(図11での上端)からそれぞれ左右方向の内向きに突設され上下方向において腕部52との間にボディ3の腕部32を挟む挟み部54を有する。
【0013】
ボディ3においては、本体部31は前後方向での寸法が腕部32よりも大きく、ボディ3の本体部31は前後両端部がそれぞれ腕部32よりも前後方向に突出している。そして、シェル5のカバー部51の左右両端においてそれぞれ腕部52よりも後側には、左右方向においてボディ3の本体部31を挟む挟み爪55が下方に突設されている。
【0014】
さらに、インサートシェル43は、各腕部42からそれぞれ上方に突設されてボディ3の腕部32の上側に露出する接触部44を有しており、シェル5の各腕部52はそれぞれインサートシェル4の接触部44に接触導通する。これにより、シェル5とインサートシェル4とは電位を互いに一致させる。
【0015】
また、ボディ3の各腕部32の下面にはそれぞれ左右方向の外側と後側とに開放された結合凹部33が設けられており、シェル5の各挟み部54はそれぞれ結合凹部33内に収納される。結合凹部33の上下方向での深さ寸法はそれぞれシェル5の挟み部54の厚さ寸法にほぼ等しく、シェル5の各挟み部54の下面はそれぞれボディ3の腕部32の下面とほぼ面一となる。また、結合凹部33の後向きの内面により、ボディ3に対するシェル5の変位量であって前方への変位量は制限され、ボディ3からのシェル5の前方への脱落が防止されている。さらに、各結合凹部33においてそれぞれ左右方向の外側に向けられた内面には係止凸部33aが突設され、シェル5の各挟み部54にはそれぞれ被係止凸部54aが左右方向の内向きに突設されている。そして、係止凸部33aが被係止凸部54aの後側に位置することにより、ボディ3に対するシェル5の変位量であって後方への変位量は制限され、ボディ3からのシェル5の後方への脱落が防止されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2011−146348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
ここで、同軸ケーブル8の外部導体82やグランドバー6は、同軸ケーブル8の心線81等とともにループを構成するものであるので、心線81に電流が流れると、外部導体82やグランドバー6にも電流(いわゆるリターン電流)が流れる。また、グランドバー6は、左右の一端又は両端において、ソケット側のグランドに電気的に接続される。つまり、リターン電流は、例えば図12に矢印A2で示すように、ヘッダー1の端付近まで左右方向に迂回して流れる形となる。これにより、リターン電流の経路が比較的に長くなり、高周波の信号に対してインサーションロス等の特性が悪化しやすかった。
【0018】
本発明は、上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、高周波の信号に対する特性を改善可能なヘッダーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明のヘッダーは、それぞれ導電材料からなる複数のコンタクト及び絶縁材料からなり各前記コンタクトをそれぞれ保持するハウジングを有するソケットとともにコネクタを構成するヘッダーであって、向きを揃えて並んだ複数の同軸ケーブルのうちの1本ずつの心線が接続される端子部と前記コンタクトに接触可能な接触部とを有する複数のポストと、絶縁材料からなり各前記ポストをそれぞれ保持するボディと、導電材料からなり前記ボディにインサート成型されたインサートシェルと、導電材料からなり前記インサートシェルに接触導通するシェルと、導電材料からなり各前記同軸ケーブルの外部導体に重ねて配置され前記外部導体に電気的に接続されるグランドバーと、導電材料からなりいずれかの前記ポストの端子部と前記グランドバーとを電気的に接続するグランド接続手段とを備えることを特徴とする。
【0020】
上記のヘッダーにおいて、前記グランド接続手段を介して前記グランドバーに電気的に接続されるポストと、前記端子部に前記心線が接続されるポストとが、交互に配列されていてもよい。
【0021】
また、上記のヘッダーにおいて、前記グランド接続手段の寸法であって前記同軸ケーブルが並ぶ方向での寸法は、前記端子部に接触する先端部よりも、前記端子部から離れた側の一端部である基部で、より大きくされていてもよい。
【0022】
さらに、上記のヘッダーにおいて、前記グランド接続手段は、前記グランドバーとは別途の部品からなるものであってもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、グランドバーに電気的に接続されたポストの接触部が接触導通するコンタクトをグランドに接続すれば、同軸ケーブルが並ぶ方向での端付近までリターン電流を迂回させる場合に比べ、リターン電流の経路が短くなるから、高周波の信号に対する特性の改善が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態の要部を示す斜視図である。
【図2】同上におけるリターン電流の経路を示す説明図である。
【図3】同上の比較例の要部を示す斜視図である。
【図4】図3の例におけるリターン電流の経路を示す説明図である。
【図5】従来例と図1の例(両側)と図3の例(片側)とのそれぞれについて周波数とインサーションロスとの関係を示すグラフである。
【図6】従来例と図1の例(両側)と図3の例(片側)とのそれぞれについて周波数と電圧定在波比との関係を示すグラフである。
【図7】同上の変更例の要部を示す平面図である。
【図8】同上の別の変更例の要部を示す平面図である。
【図9】従来例を示す斜視図である。
【図10】同上においてシェルが取り外されたものを示す斜視図である。
【図11】同上を図9とは逆の方向から見た状態を示す斜視図である。
【図12】従来例の課題を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0026】
本実施形態の基本構成は図9〜図11で説明した従来例と共通であるので、共通する部分については説明を省略する。
【0027】
本実施形態では、図1及び図2に示すように、上側のグランドバー6は、従来例のグランドバー6のような直方体形状であって外部導体82に半田付けされる本体部61と、それぞれ本体部61から前方に突設されて下方に曲がり1個ずつのポスト2の端子部21に接触導通するグランド接続手段としての複数個のグランド接続部62とを有する。上記のようなグランドバー6は例えば金属板に打ち抜き加工や曲げ加工を施すことによって製造することができる。
【0028】
ここで、グランド接続部62のピッチは、ポスト2のピッチの2倍とされている。つまり、本実施形態では、心線81が接続されずグランドバー6に電気的に接続されるポスト2と、心線81が接続されるポスト2とが、交互に並ぶことになる。別の言い方をすれば、各心線81は、それぞれ、左右方向(すなわち同軸ケーブル8が並ぶ方向)において、グランド接続部62に挟まれる。
【0029】
上記構成によれば、グランドバー6に電気的に接続されたポスト2の接触部22が接触導通するコンタクト(図示せず)をグランドに接続すれば、同軸ケーブル8が並ぶ方向である左右方向の端付近までリターン電流を迂回させる場合に比べ、図2に矢印A1で示すようにリターン電流の経路が短くなるから、高周波の信号に対する特性の改善が可能となる。
【0030】
また、各心線81が、それぞれ、左右方向(すなわち同軸ケーブル8が並ぶ方向)において、グランド接続部62に挟まれるから、図3及び図4のようにグランド接続部62が心線81の一方側のみに設けられる場合に比べ、高周波の信号に対する特性がさらに改善される。
【0031】
横軸に信号の周波数をとり、縦軸にインサーションロスをとったグラフを図5に示す。また、横軸に信号の周波数をとり、縦軸に電圧定在波比(VSWR)をとったグラフを図6に示す。図5と図6とのそれぞれにおいて、破線はグランド接続部62を設けない場合の特性を示し、一点鎖線は図3及び図4のように心線81の片側のみにグランド接続部62を設けた場合を示し、実線は図1及び図2のように心線81の両側にグランド接続部62を設けた場合を示す。インサーションロスと電圧定在波比とのいずれにおいても、グランド接続部62を設けた場合には、グランド接続部62を設けない場合に比べ、全体として、ピークの位置が高周波側にシフトするとともに、ピークの高さが低くなっている。
【0032】
ここで、図1から図4の例では、グランド接続部62の幅寸法(すなわち同軸ケーブル8が並ぶ方向である左右方向での寸法)を均一としているが、図7に示すように不均一としてもよい。図7の例では、グランド接続部62の幅寸法を、後端部(基部。図7での上端部)において、端子部21に接触する前端部(先端部。図7での下端部)よりも大きくしている。上記のようにグランド接続部62の形状を適宜変更すれば、インピーダンス整合の改善が可能である。
【0033】
また、グランド接続手段としては、上記のようにグランドバー6の一部であるグランド接続部62を用いる代わりに、図8に示すようにグランドバー6とは別途の部品であってグランドバー6に連結されたグランド接続体7を用いてもよい。グランド接続体7の材料としては例えば金属などの導電材料を用いることができる。また、グランド接続体7とグランドバー6とを連結する手段としては、例えば半田付けやカシメといった周知の手段を適宜採用することができる。上記のようにグランド接続体7を別部品で構成すれば、グランドバー6を完全な直方体形状とすることができ、これにより、打ち抜き加工や切断でグランドバー6を製造する際の端材の発生を抑えることができる。
【符号の説明】
【0034】
1 ヘッダー
2 ポスト
3 ボディ
4 インサートシェル
5 シェル
6 グランドバー
7 グランド接続体(グランド接続手段)
8 同軸ケーブル
21 端子部
22 接触部
62 グランド接続部(グランド接続手段)
81 心線
82 外部導体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ導電材料からなる複数のコンタクト及び絶縁材料からなり各前記コンタクトをそれぞれ保持するハウジングを有するソケットとともにコネクタを構成するヘッダーであって、
向きを揃えて並んだ複数の同軸ケーブルのうちの1本ずつの心線が接続される端子部と前記コンタクトに接触可能な接触部とを有する複数のポストと、
絶縁材料からなり各前記ポストをそれぞれ保持するボディと、
導電材料からなり前記ボディにインサート成型されたインサートシェルと、
導電材料からなり前記インサートシェルに接触導通するシェルと、
導電材料からなり各前記同軸ケーブルの外部導体に重ねて配置され前記外部導体に電気的に接続されるグランドバーと、
導電材料からなりいずれかの前記ポストの端子部と前記グランドバーとを電気的に接続するグランド接続手段とを備えることを特徴とするヘッダー。
【請求項2】
前記グランド接続手段を介して前記グランドバーに電気的に接続されるポストと、前記端子部に前記心線が接続されるポストとが、交互に配列されていることを特徴とする請求項1記載のヘッダー。
【請求項3】
前記グランド接続手段の寸法であって前記同軸ケーブルが並ぶ方向での寸法は、前記端子部に接触する先端部よりも、前記端子部から離れた側の一端部である基部で、より大きくされていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のヘッダー。
【請求項4】
前記グランド接続手段は、前記グランドバーとは別途の部品からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のヘッダー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−45520(P2013−45520A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−180724(P2011−180724)
【出願日】平成23年8月22日(2011.8.22)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】