説明

ヘッドキャップ部材及びインクジェット記録装置

【課題】キャップ本体を弾性材料から構成した場合であっても、負圧吸引時のキャップ本体の変形を防止して気密性の低下を防止して、負圧吸引力の低下、及びコストアップを防止する。
【解決手段】負圧導入穴5と連通する空所Sを先端面に有したベース部材2と、ベース部材先端面に突設された環状の補強壁部10と、補強壁部の外周面と内周面で密着した状態で先端部を補強壁部の先端部よりも先方に突出させた環状の弾性凸部材25を備え、且つ前記ベース部材先端面に一部を添設されたキャップ本体20と、押え部材30と、を備え、弾性凸部材の先端部の厚み方向に沿った断面形状は、頂部25aと、傾斜面25b、25cと、を備えた略山形をなし、頂部は、弾性凸部材の肉厚中心部よりも外側に偏位した位置にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置の記録ヘッドに装着されてノズルの乾燥、詰まり等を防止するために使用されるヘッドキャップ部材の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置は、記録ヘッドの乾燥防止、あるいはノズルの目詰り防止のために、待機中や停止中に記録ヘッドに被せるキャップ部材を備えている。
図5(a)(b)及び(c)は従来のインクジェット記録装置に用いられるヘッドキャップ部材の構成を示す外観斜視図、断面図、及び平面図である。
ヘッドキャップ部材100は、記録ヘッド110の先端面(ノズル形成面)110aに当接させるゴム等の弾性材料からなるキャップ本体101と、キャップ本体101の底面に接続された負圧吸引用のパイプ102及び大気解放用のパイプ103と、キャップ本体101及び各パイプ102、103の外面に接してこれらを保持するキャップホルダ104と、を有する。キャップ本体101は先端面が開放した箱形状を有しており、この開放部を塞ぐように記録ヘッド110の先端面110aを当接させた時に、記録ヘッド先端面に配置されたノズルが各パイプ102、103と連通するように構成されている。
負圧吸引用のパイプ102はポンプ(負圧生成手段)と接続され、大気解放用のパイプ103は外気と接続されている。
【0003】
図5(b)のように、記録ヘッド110の待機中や停止中に記録ヘッド先端面110aにキャップ本体101の先端縁を圧接して空所Sを密閉してノズルを外気から遮断することにより記録ヘッドを保護すると共に、図示しないポンプによってパイプ102を介してキャップ本体101内部のインクを吸引することによってクリーニングを行い、記録ヘッドのノズル111の乾燥に伴うインクの固化による目詰りを防止する。
即ち、記録ヘッド110のクリーニング時には、記録ヘッドのノズル形成面をキャップ本体101の先端縁に密着させることにより空所Sを気密化し、この気密化された空所S内に負圧吸引用のパイプ102から負圧を導入してノズル内のインクを排出させる。その後、パイプ103を介して空所Sを大気と連通させることにより空所S内を大気圧に戻してからキャップ本体101を取り外し、記録ヘッドのノズル形成面をワイパーで拭き取ってメニスカスを形成する。
【0004】
しかしながら、パイプ102を介してキャップ本体101内部を吸引して負圧にしたとき、キャップ本体101が弾性材料からなるために、図5(b)に示すようにキャップ本体101の周壁部101aが内側に湾曲変形し、記録ヘッド先端面に対する密着性が悪くなるという問題がある。
このような不具合に対処するために特許文献1(特開平5−7432号公報)には、弾性部材からなるキャップ本体の内壁面にコの字形の補強壁部を固定したり、或いは、キャップ本体自体の内壁面の肉厚を厚くした補強部を形成して、吸引に伴うキャップの変形を補強壁部或いは補強部により防止する技術が開示されている。
しかし、弾性を有するキャップ本体の内壁面に補強壁部を設けたものにあっては、キャップ本体の内壁面と補強壁部との間にインクが入り込んで潤滑剤として機能し、キャップ本体の記録ヘッドへの脱着の繰り返しによって補強壁部がキャップ本体から外れてしまうことがある。また、キャップ本体の一部の肉厚を厚くした補強部を形成するものにあっては、同じ内容積を得るためにキャップ本体の外形寸法が大きくなるという問題がある。
【0005】
また、特許文献2(特開平4−14461号公報)には、キャップ本体の内部に記録ヘッドに圧接するプラスチック或いは金属材料からなる中子部材を内蔵するようにしたもの、さらに、キャップ本体を樹脂材料から形成して、このキャップ本体の前面にシール部材を取付けたものが開示されている。
しかし、キャップ本体内にプラスチック或いは金属材料からなる中子部材を内蔵するものにあっては、キャップ本体の形状を袋状にするなど形状が複雑になってコストがかかると共に、中子部材を入れるキャップ本体内の空間に成形時のバリ等が発生しやすい。特に、ヘッド方向にそのバリが発生すると、先端の平面度が得られず密着性が低下するという問題がある。また、キャップ本体を樹脂材料から構成し、このキャップ本体の前面にシール部材を取り付けた場合には樹脂材料とシール部材との接着性が十分でなくなり、シール部材が記録ヘッド側に密着したときにキャップ本体から剥離してしまうことがある。
【0006】
また、特許文献3(特開平9−70979号公報)には、弾性部材からなるキャップ本体をキャップホルダと一体成形して、キャプホルダをキャップ本体で覆うようにした技術が開示されている。
しかし、図5に示した従来例と同様に、キャップ本体内部を負圧にしたとき、キャップ本体が弾性変形を起こして、インクジェットヘッドに対する密着性が悪くなるという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように、従来のヘッドキャップ部材にあっては、キャップ本体内を負圧吸引したときのキャップ本体の変形を防止するための構造が充分でなく、気密性の低下によって負圧吸引力が上がらない、コストが高くなるという課題があった。
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、キャップ本体を弾性材料から構成した場合であっても、負圧吸引時のキャップ本体の変形を防止して気密性の低下を防止して、負圧吸引力の低下、及びコストアップを防止することができるインクジェット記録装置のヘッドキャップ部材を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1の発明に係るヘッドキャップ部材は、インクジェット式記録ヘッドのノズル形成面に先端で当接するヘッドキャップ部材であって、負圧導入穴、及び大気圧導入穴と連通する空所を先端面に有したベース部材と、前記空所の外周縁に沿った前記ベース部材先端面に突設された環状の補強壁部と、前記補強壁部の外周面と内周面で密着した状態で先端部を該補強壁部の先端部よりも先方に突出させた環状の弾性凸部材を備え、且つ前記ベース部材先端面に一部を添設されたキャップ本体と、前記ベース部材の先端面との間で該キャップ本体の一部を挟圧保持する押え部材と、を備え、前記弾性凸部材の先端部の厚み方向に沿った断面形状は、頂部と、該頂部の両側方に夫々連設された傾斜面と、を備えた略山形をなし、前記弾性凸部材の頂部は、該弾性凸部材の肉厚中心部よりも外側に偏位した位置にあることを特徴とする。
キャップ本体のシール部先端(弾性凸部材先端)は、環状に連続すると共に断面形状が山形になっており、少なくとも山形の頂部は、山形の肉厚中心部よりも外側にずれている。このため、弾性凸部材先端を記録ヘッドのノズル形成面と密着させた状態で空所内に負圧を導入した時に山形の頂部が内側へ変形することが防止され、負圧の漏れを確実に防止できる。特に、弾性凸部材の内側を補強壁部により補強しているため、内側への変形を効果的に防止できるので、経時的に弾性凸部材に内側への撓み変形癖が形成されることが防止される。
【0009】
請求項2の発明に係るヘッドキャップ部材は、インクジェット式記録ヘッドのノズル形成面に先端で当接するヘッドキャップ部材であって、負圧導入穴、及び大気圧導入穴と連通する空所を先端面に有したベース部材と、前記空所の外周縁に沿った前記ベース部材先端面に突設された環状の補強壁部と、前記補強壁部の外周面と内周面で密着した状態で先端部を該補強壁部の先端部よりも先方に突出させた環状の弾性凸部材を備え、且つ前記ベース部材先端面に一部を添設されたキャップ本体と、前記ベース部材の先端面との間で該キャップ本体の一部を挟圧保持する押え部材と、を備え、前記弾性凸部材の先端部の厚み方向に沿った断面形状は、頂部と、該頂部の両側方に夫々連設された傾斜面と、を備えた略山形をなし、前記弾性凸部材の頂部は、該弾性凸部材の肉厚中心部よりも内側に偏位した位置にあることを特徴とする。
キャップ本体のシール部先端(弾性凸部材先端)は、環状に連続すると共に断面形状が山形になっており、少なくとも山形の頂部は、山形の肉厚中心部よりも内側にずれている。このため、弾性凸部材先端を記録ヘッドのノズル形成面と密着させた状態で空所内に大気圧を導入した時(大気圧に戻したとき)に、頂部が外側へ変形することを防止でき、大気圧と同等となっている気圧の漏れを確実に防止できる。特に、弾性凸部材の内側を補強壁部により補強しているため、外側への変形を効果的に防止できる。
【0010】
請求項3の発明は、前記ベース部材の先端面と接する前記キャップ本体の底面に、前記空所の周縁に沿って環状に連続して延在する環状凸部を突設したことを特徴とする。
環状凸部の存在によりベース部材とキャップ本体との接合面での負圧、大気圧の漏れを防止できる。
請求項4の発明は、前記キャップ本体、及び前記押え部材が金属製であることを特徴とする。
これらの部材を金属製とすることにより弾性凸部材の変形を効果的に防止することができる。このため、負圧導入時により吸引力をあげることが可能になりかつ、吸引に伴うキャップ本体の変形を防止することができると共に、構成も簡単でコストも安価になる。
【0011】
請求項5の発明は、前記キャップ本体、及び前記押え部材が、前記弾性凸部材よりも硬質の樹脂製であることを特徴とする。
これらの部材を硬質樹脂製とすることにより弾性凸部材の変形を効果的に防止することができる。このため、吸引力を高めることが可能になりかつ、吸引に伴うキャップ本体の変形を防止することができると共に、構成も簡単でコストもより安価になる。
請求項6の発明は、前記ベース部材、前記キャップ本体、押え部材が一体成型されていることを特徴とする。
射出成形によりこれらを一体化してもよい。これらを一体成形したので、吸引力をあげることが可能になり、かつ、吸引に伴うキャップ本体の変形を防止することができると共に、構成も簡単でコストもさらに安価になる。
請求項7の発明に係るインクジェット記録装置は、請求項1乃至6の何れか一項に記載のヘッドキャップ部材と、記録ヘッドと、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、キャップ本体を弾性材料から構成した場合であっても、負圧吸引時のキャップ本体の変形を防止して気密性の低下を防止して、負圧吸引力の低下、及びコストアップを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】(a)及び(b)は本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置のヘッドキャップ部材の外観斜視図、及びA−A断面図である。
【図2】(a)及び(b)は図1(b)の要部拡大図、及びキャップ本体の要部拡大図である。
【図3】本発明の変形実施形態の断面図である。
【図4】本発明の他の実施形態に係るヘッドキャップ部材の要部縦断面図である。
【図5】(a)(b)及び(c)は従来のインクジェット記録装置に用いられるヘッドキャップ部材の構成を示す外観斜視図、断面図、及び平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を添付図面を参照して説明する。
図1(a)及び(b)は本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置のヘッドキャップ部材の外観斜視図、及びA−A断面図であり、図2(a)及び(b)は図1(b)の要部拡大図、及びキャップ本体の要部拡大図である。
本発明のヘッドキャップ部材1は、先端面(ノズル形成面)50aにノズル51を有したインクジェット式の記録ヘッド50に着脱し、記録ヘッド先端面50aと先端縁で密着した時にノズル51を負圧導入穴5及び図示しない大気解放穴と連通させる手段である。
ヘッドキャップ部材1は、先端面に負圧導入穴5及び大気解放穴と連通した空所6を備えたベース部材2と、空所6の外側開口部6aの外周縁に沿ったベース部材先端面2aに突設された連続した環状の補強壁部(リブ=キャップホルダ)10と、補強壁部10の外周面と内周面で密着した状態で先端部を補強壁部の先端部よりも先方に突出させた弾性凸部材25を備え、且つベース部材先端面2aに一部(被挟圧部)21を添設されたキャップ本体20と、ベース部材の先端面2aとの間でキャップ本体20の一部である被挟圧部21を挟圧した状態で図示しないボルトによりベース部材に固定する押え部材30と、を備えている。
ベース部材先端面2aにはボルト穴35aが形成され、キャップ本体20と押え部材30のボルト穴35aと連通する位置にはボルト装着穴35b、35cが夫々貫通形成されている。ボルト穴35a、各ボルト装着穴35b、35cを連通させた状態で図示しないボルトを螺着することにより、ベース部材2上にキャップ本体20と押え部材30を固定することができる。
【0015】
補強壁部10は、金属、硬質樹脂等、弾性凸部材25よりも硬質な材料により構成することにより、弾性凸部材25が内側(負圧導入穴側)へ過大に変形することを阻止している。補強壁部10はその先端部が弾性凸部材25の先端部よりも後方へ退避した位置となるようにその突出長Lを設定されているため、補強壁部の先端部よりも突出した位置にある弾性凸部材25の先端部は記録ヘッドと圧接したときに弾性変形して密着することが可能となっている。
なお、図3の変形例に示すようにベース部材2をベース部材本体2Aと、補強壁部10を備えた補強部材2Bと、から構成し、補強部材2Bをベース部材本体2Aの先端面とキャップ本体20との間に挟んでボルト締めするようにしてもよい。このように構成した場合には、補強部材2Bを硬質な材料にて構成し、ベース部材本体2Aを任意の材料から構成することができる。
【0016】
押え部材30は、ベース部材2の先端面との間で弾性材料から成るキャップ本体20を挟圧保持する手段であるため、所定の剛性を有している必要がある。従って、金属や、所定の硬度を有した樹脂材料から構成する。押え部材30の肉厚T1は、図示したようにキャップ本体20の被挟圧部21上に添設された際に、その先端面が補強壁部10の先端部よりも後方に退避した位置となる程度に設定する。
キャップ本体20及び押え部材30は、ベース部材2に対して後から組み付けても良いし、これらを金型内で一体成型してもよい。
また、補強壁部10の先端部の位置と、押え部材30の先端面の位置を同等の突出位置としてもよいし、押え部材30の先端面の位置を補強壁部10の先端部よりも先方に突出させてもよい。但し、空所S内への負圧導入時に弾性凸部材25の先端部が記録ヘッドのノズル形成面と圧接して圧縮変形した時に、ノズル形成面が補強壁部や押え部材と接触しないように寸法設定する必要があることは勿論である。
【0017】
本実施形態に係るヘッドキャップ部材1の特徴的な構成は、弾性凸部材25の先端部の厚み方向に沿った断面形状を、頂部25aと、頂部の両側方に夫々連設された(山形に下向き傾斜した)傾斜面25b、25cと、を備えた略山形とし、更に弾性凸部材の頂部25aの位置を、弾性凸部材の肉厚中心部Cよりも外側OUTに偏位した位置とした点にある。つまり、弾性凸部材の先端部は、肉厚中心部Cの外側部分の肉厚の方が内側部分の肉厚よりも厚くなっているため、内側へ変形しにくくなっている。
なお、弾性凸部材の頂部25aの位置を弾性凸部材の肉厚中心部Cよりも外側OUTに偏位した位置とするとは、図示のように頂部と傾斜面25bとの境界が肉厚中心部Cと一致していることを意味せず、中心部Cが若干傾斜面25b側、或いは傾斜面25c側に位置している場合も含む。
【0018】
弾性凸部材25の先端部の断面形状をこのように構成したため、内側に変形しにくい構造となっている。
更に、ベース部材2の先端面2aと接するキャップ本体20の底面に、空所6の周縁に沿って環状に延在する(周方向に連続した)環状凸部27を突設することにより気密性を高めた構成も特徴的である。環状凸部27と接するベース部材の先端面2aは平坦面としてもよいし、先端面2a上に環状凸部27を密着して嵌合させる環状の溝2bを形成してもよい。
このように構成したヘッドキャップ部材1においては、記録ヘッド50の先端面50aを弾性凸部材25の先端部に圧接した状態で負圧導入穴5から空所6内に負圧を導入した場合に負圧が漏れることなく十分な吸引力を発揮することができる。また、内側に変形しにくい形状とした弾性凸部材25の先端部を、補強壁部10によって更に内側に変形しにくくしているため、負圧導入時に弾性凸部材が内側に変形することが防止され、図5(c)に示した如き変形癖が形成されることを防止できる。このため、弾性凸部材の変形に起因して、記録ヘッドの先端面と当接したときに負圧の漏れが発生しなくなる。このような構造はシンプルであり、製造コストも安価で済む。
【0019】
次に、図4は本発明の他の実施形態に係るヘッドキャップ部材の要部縦断面図である。なお、前記第1の実施形態と同一部位には同一符号を付して説明する。
本実施形態に係るヘッドキャップ部材1の特徴的な構成は、弾性凸部材25の先端部の厚み方向に沿った断面形状を、頂部25aと、頂部の両側方に夫々連設された(山形に下向き傾斜した)傾斜面25b、25cと、を備えた略山形とし、更に弾性凸部材の頂部25aの位置を、弾性凸部材の肉厚中心部Cよりも内側INに偏位した位置とした点にある。つまり、弾性凸部材の先端部は、肉厚中心部Cの内側部分の肉厚の方が外側部分の肉厚よりも厚くなっているため、外側へ変形しにくくなっている。
なお、弾性凸部材の頂部25aの位置を弾性凸部材の肉厚中心部Cよりも内側INに偏位した位置とするとは、図示のように頂部と傾斜面25cとの境界が肉厚中心部Cと一致していることを意味せず、中心部Cが若干傾斜面25b側、或いは傾斜面25c側に位置している場合も含む。
このように、弾性凸部材25の先端部の形状自体が外側へ向けて変形しにくい形状となっている。
【0020】
ヘッドキャップ部材1は、記録ヘッドのノズル形成面に負圧と大気圧を加えるときに使用される。
このように構成したヘッドキャップ部材1においては、弾性凸部材25の先端を記録ヘッドのノズル形成面に密着させた状態で図示しない大気圧導入穴から大気圧を加えた場合であっても、弾性凸部材先端を記録ヘッドのノズル形成面に強く押し付けることができる。しかも、押え部材30が弾性凸部材25の外周面を外側へ大きく変形しないようにガイドしている。つまり、弾性凸部材25の内側への変形は補強壁部10が阻止し、外側への変形は弾性凸部材25自体の形状と、押え部材30による補強機能によって阻止されている。このような構成は、シンプルであり、低コストで実現可能である。
【0021】
以上の構成を備えた本発明は次のような効果を奏する。
まず、キャップ本体のシール部先端(弾性凸部材先端)は、環状に連続すると共に断面形状が山形になっており、少なくとも山形の頂部は、山形の肉厚中心部よりも外側にずれている。このため、弾性凸部材先端を記録ヘッドのノズル形成面と密着させた状態で空所内に負圧を導入した時に山形の頂部が内側へ変形することが防止され、負圧の漏れを確実に防止できる。特に、弾性凸部材の内側を補強壁部により補強しているため、内側への変形を効果的に防止できるので、経時的に弾性凸部材に内側への撓み変形癖が形成されることが防止される。
次に、キャップ本体のシール部先端(弾性凸部材先端)は、環状に連続すると共に断面形状が山形になっており、少なくとも山形の頂部は、山形の肉厚中心部よりも内側にずれている。このため、弾性凸部材先端を記録ヘッドのノズル形成面と密着させた状態で空所内に大気圧を導入した時(大気圧に戻したとき)に、頂部が外側へ変形することを防止でき、大気圧と同等な空所内の気圧の漏れを確実に防止できる。特に、弾性凸部材の内側を補強壁部により補強しているため、外側への変形を効果的に防止できる。
【0022】
次に、ベース部材の先端面と接するキャップ本体の底面に、空所の周縁に沿って環状に連続して延在する環状凸部を突設した。このため、環状凸部の存在によりベース部材とキャップ本体との接合面での負圧、大気圧の漏れを防止できる。
次に、キャップ本体、及び押え部材を金属製とすることにより弾性凸部材の変形を効果的に防止することができる。即ち、負圧導入時により吸引力をあげることが可能になりかつ、吸引に伴うキャップ本体の変形を防止することができると共に、構成も簡単でコストも安価になる。
次に、キャップ本体、及び押え部材を硬質樹脂製とすることにより弾性凸部材の変形を効果的に防止することができる。即ち、吸引力を高めることが可能になりかつ、吸引に伴うキャップ本体の変形を防止することができると共に、構成も簡単でコストもより安価になる。
【0023】
次に、ベース部材、キャップ本体、押え部材を射出成形により一体化することにより、吸引力をあげることが可能になり、かつ、吸引に伴うキャップ本体の変形を防止することができると共に、構成も簡単でコストもさらに安価になる。具体的には、例えば、ベース部材、押え部材を金型内に組み付けた状態で、キャップ本体を構成する弾性材料(ゴム、樹脂)を成形空間内に注入してから固化させることにより、これらを一体成形することができる。
なお、本発明に係るヘッドキャップ部材は、インクジェット記録装置に装備される記録ヘッドに適用することにより、上記の優れた作用効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0024】
1…ヘッドキャップ部材、2…ベース部材、2a…先端面、2b…溝、2A…ベース部材本体、2B…補強部材、5…負圧導入穴、6…空所、6a…外側開口部、10…補強壁部、20…キャップ本体、21…被挟圧部、25…弾性凸部材、25a…頂部、25b…傾斜面、25c…傾斜面、27…環状凸部、30…押え部材、35a…ボルト穴、35b…ボルト装着穴、50…記録ヘッド、50a…先端面(ノズル形成面)、51…ノズル
【先行技術文献】
【特許文献】
【0025】
【特許文献1】特開平5−7432号公報
【特許文献2】特開平4−14461号公報
【特許文献3】特開平9−70979号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェット式記録ヘッドのノズル形成面に先端で当接するヘッドキャップ部材であって、
負圧導入穴、及び大気圧導入穴と連通する空所を先端面に有したベース部材と、前記空所の外周縁に沿った前記ベース部材先端面に突設された環状の補強壁部と、前記補強壁部の外周面と内周面で密着した状態で先端部を該補強壁部の先端部よりも先方に突出させた環状の弾性凸部材を備え、且つ前記ベース部材先端面に一部を添設されたキャップ本体と、前記ベース部材の先端面との間で該キャップ本体の一部を挟圧保持する押え部材と、を備え、
前記弾性凸部材の先端部の厚み方向に沿った断面形状は、頂部と、該頂部の両側方に夫々連設された傾斜面と、を備えた略山形をなし、
前記弾性凸部材の頂部は、該弾性凸部材の肉厚中心部よりも外側に偏位した位置にあることを特徴とするヘッドキャップ部材。
【請求項2】
インクジェット式記録ヘッドのノズル形成面に先端で当接するヘッドキャップ部材であって、
負圧導入穴、及び大気圧導入穴と連通する空所を先端面に有したベース部材と、前記空所の外周縁に沿った前記ベース部材先端面に突設された環状の補強壁部と、前記補強壁部の外周面と内周面で密着した状態で先端部を該補強壁部の先端部よりも先方に突出させた環状の弾性凸部材を備え、且つ前記ベース部材先端面に一部を添設されたキャップ本体と、前記ベース部材の先端面との間で該キャップ本体の一部を挟圧保持する押え部材と、を備え、
前記弾性凸部材の先端部の厚み方向に沿った断面形状は、頂部と、該頂部の両側方に夫々連設された傾斜面と、を備えた略山形をなし、
前記弾性凸部材の頂部は、該弾性凸部材の肉厚中心部よりも内側に偏位した位置にあることを特徴とするヘッドキャップ部材。
【請求項3】
前記ベース部材の先端面と接する前記キャップ本体の底面に、前記空所の周縁に沿って環状に連続して延在する環状凸部を突設したことを特徴とする請求項1又は2に記載のヘッドキャップ部材。
【請求項4】
前記キャップ本体、及び前記押え部材が金属製であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載のヘッドキャップ部材。
【請求項5】
前記キャップ本体、及び前記押え部材が前記弾性凸部材よりも硬質の樹脂製であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載のヘッドキャップ部材。
【請求項6】
前記ベース部材、前記キャップ本体、押え部材が一体成型されていることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載のヘッドキャップ部材。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか一項に記載のヘッドキャップ部材と、記録ヘッドと、を備えたことを特徴とするインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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