説明

ヘッドマウントディスプレイ

【課題】樹脂製の反射板のガタつきを抑制しつつ反射板に生じる歪みを低減できるヘッドマウントディスプレイを提供する。
【解決手段】HMDは筐体の画像光が出射する一端にHMホルダ5を備えている。HMホルダ5は樹脂製のHM8を保持している。HMホルダ5は、HM8よりも剛性の低い材質で形成している。これによりHM8を保持する応力をHMホルダ5側に適度に逃がすことができる。従って、HM8が回転してしまうことによるガタつきを抑制しつつ、HM8の画像光の反射面に生ずる歪みを低減できる。HM8の歪みを低減することによりHM8で使用者が視認できる画像の歪みを防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はヘッドマウントディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、使用者の眼の前方に画像として視認されるように画像を表示するヘッドマウントディスプレイ(以下HMDという)が知られている。HMDは、画像光発生部、接眼光学系、及び偏向部材を備えている。画像光発生部は画像情報に基づいた画像光を発生する。接眼光学系は画像光発生部が発生した画像光を一定方向に導く。偏向部材は接眼光学系から出射された画像光を偏向(反射、屈折、回折など)して利用者の眼に入射する。偏向部材として反射部材が用いられる場合、安全性や軽量化の視点から透明の樹脂基板に蒸着処理を施した反射部材が用いられるのが望ましい。また、使用者が、HMDの画像光を現実外界に重ねて観察する場合、所謂シースルー型のHMDの場合、反射部材としてハーフミラー(以下HMという)が用いられる。この場合、例えば、HMの一端を回転自在に軸支することにより、HMDの筐体の開口部を開閉できるHMDが知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−175829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、HMの一端を回転自在に軸支すると、HMが回転して視野から外れて画像が見えなくなるという問題が生じる。そこで、本件出願人は、HMの回動のガタを制限したHMDを検討した。図10はこのようなHMDに用いられるハーフミラーホルダ70(以下HMホルダ70という)の断面図を示している。HMホルダ70はHMDの筐体の開口する一端に取り付けられている。HMホルダ70はHM80を保持する。HMホルダ70は一対の壁部71(図10では一方のみを図示)を備える。一対の壁部71は互いに間隔を空けて立設されている。一対の壁部71はその間にHM80を保持する。HM80の互いに対向する一対の端部にはボス部85,88が各々設けられている。一対の壁部71はHM80の一対のボス部85を中心に回動可能に軸支している。HMホルダ70は、ストッパ部75と、回転防止部72とを備える。ストッパ部75は、HM80が画像光を使用者の眼球に導入できる位置で止まるようにHM80の後端部に当接する。回転防止部72は、HM80が回動しないようにHM80のボス部88に当接する。
【0005】
しかしながら、ストッパ部75に当接する部分と、回転防止部72に当接する部分とに応力(図10中矢印A1,A2)がかかる。HM80は樹脂製であるので、その間の部分においてHM80の反射面が歪曲してしまい、画像がぼけて歪んで見えるという問題点があった。
【0006】
本発明の目的は、上記課題を解決するためになされたものであり、樹脂製の反射板のガタつきを抑制しつつ反射板に生じる歪みを低減できるヘッドマウントディスプレイを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1態様に係るヘッドマウントディスプレイは、使用者の頭部に装着される装着部材に取り付けられ、画像情報に基づいて前記使用者の眼に画像光を入射して前記使用者に画像を認識させるヘッドマウントディスプレイにおいて、画像光を発生する画像光発生部と、前記画像光発生部が発生した画像光を一定方向に導く接眼光学系と、前記画像光発生部と、前記接眼光学系とを内蔵する筐体と、前記接眼光学系の出射光の少なくとも一部を反射して前記使用者の眼に入射する樹脂製の反射板と、前記筐体の前記出射光が出射される開口部に設けられ、前記反射板を所定の応力を加えることで挟持し且つ前記反射板よりも剛性の低い材質で形成したホルダとを備えている。
【0008】
第1態様に係るヘッドマウントディスプレイでは、樹脂製の反射板を保持するホルダは、反射板よりも剛性の低い材質で形成しているので、反射板を保持する応力をホルダ側に逃がすことができる。これにより反射板のガタつきを抑制しつつ反射板に生ずる歪みを低減できる。反射板の歪みを低減することにより画像の歪みを防止できる。
【0009】
また第1態様において、前記反射板の端部には、当該端部から離間する方向に延出する第1ボス部が設けられ、前記ホルダには、前記第1ボス部を受ける受け部が設けられていてもよい。ホルダに設けた受け部が反射板の端部に設けた第1ボス部を受けるので、ホルダに対して反射板を位置決めできる。
【0010】
また第1態様において、前記反射板は互いに対向する一対の端部を備え、前記第1ボス部は、前記一対の端部に各々設けられ、前記ホルダには、一対の前記第1ボス部をそれぞれ受ける一対の前記受け部が設けられていてもよい。反射板に設けた一対の第1ボス部を、ホルダに設けた一対の受け部で挟み込むので、ホルダに対して反射板を位置決めしつつ無理のない力で挟持できる。
【0011】
また第1態様において、前記一対の受け部の内側の離間距離である第一の寸法は、前記反射板の前記一対の端部に挟まれる第二の寸法よりも小さくなるようにしてもよい。それ故、ホルダは一対の受け部によって、反射板の一対の端部に所定の応力を加えて無理なく挟持できる。
【0012】
また第1態様において、前記第1ボス部の径は前記反射板の板厚よりも大きく、前記第1ボス部は、前記端部の板厚方向において、前記反射板の前記出射光が反射する反射面から突出しないように、前記反射面とは反対側にずれた位置に設けられていてもよい。ボス部の径が反射板の板厚よりも大きいので外部衝撃に強い。故に反射板をホルダで確実に保持することができる。さらに、ボス部は反射板の反射面から突出しないように、反射面とは反対側にずれた位置に設けられているので、反射面側の成形による影響を軽減することができる。
【0013】
また第1態様において、前記第1ボス部は、前記端部において、前記反射面のうち前記出射光が反射する領域の中央に対応する位置に設けられていてもよい。反射面に入射する出射光は、光軸に近い中央部分ほど収差が少なく、光軸から離れるほど収差が大きくなる。そのため、出射光が反射する領域の中央部分は、隅部に比べて、入射する出射光の収差が小さい。ボス部を反射板の端部において出射光が反射する領域の中央に対応する位置に設けることで、ボス部にかかる応力による反射面の変形は、ボス部に近い出射光が反射する領域の中央に比べて、出射光が反射する隅部で小さくなる。そのため、ボス部にかかる応力によって生じる反射面の変形の影響による画像の歪みを最小限に留めることができる。
【0014】
また第1態様において、前記反射板の前記端部には、当該端部から離間する方向に延出する第2ボス部が設けられ、前記ホルダには、前記反射板が前記第1ボス部を中心に回転しようとしたときの前記第2ボス部に当接する当接部が設けられていてもよい。反射板が第1ボス部を中心に回転しようとしても、反射板の第2ボス部がホルダの当接部に当接する。故に反射板が回転してしまうのを防止できる。
【0015】
また第1態様において、前記筐体には前記フレームに取り付ける為の取付部が設けられ、前記取付部を前記フレームに取り付けた状態では、前記開口部は前記使用者の眼に近い位置に配置され、前記筐体は前記使用者の頭部から離間する方向に配置されていてもよい。それ故、反射板、ホルダ、筐体の順に、使用者の眼から遠ざかるように配置されるので、使用者の視界を広くとることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】HMD1を取り付けた眼鏡フレーム91の斜視図である。
【図2】HMD1の平面図である。
【図3】図2のI−I線矢視方向断面図である。
【図4】HMホルダ5の上方から見た斜視図である。
【図5】HMホルダ5の下方から見た斜視図である。
【図6】HMホルダ5の平面図である。
【図7】HM8の平面図である。
【図8】HM8の左側面図である。
【図9】図6のII−II線矢視方向断面図である。
【図10】従来のHMホルダ70の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態であるヘッドマウントディスプレイ1(以下HMD1という)について、図面を参照して説明する。図1に示すHMD1は、使用者の眼の前方に画像として視認されるように画像を表示するものである。
【0018】
先ず、HMD1の構成について、図1〜図3を参照して説明する。以下説明において、図1の上下方向、右斜め下方向、左斜め上方向、右斜め上方向、左斜め下方向が、夫々、HMD1の上下方向、前方向、後ろ方向、右方向、左方向である。図2の下方向、上方向、右方向、左方向が、夫々、HMD1の前方向、後ろ方向、右方向、左方向である。図3の上方向、下方向、右方向、左方向が、夫々、HMD1の上方向、下方向、右方向、左方向である。
【0019】
図1に示すように、HMD1は、眼鏡フレーム91に着脱可能に取り付けられる。眼鏡フレーム91は使用者の頭部に装着される。図1,図2に示すように、HMD1は筐体2を備える。筐体2は四角筒状の樹脂であり、平面視L字型に形成されている(図2参照)。筐体2は投影ユニット10(図3参照)を内蔵する。図3に示すように、投影ユニット10は画像光を生成し、筐体2の左端側の開口部7を介して左方向に出射する。筐体2の左側の開口部7にはハーフミラーホルダ5(以下HMホルダ5という)が固定されている。HMホルダ5は樹脂である。図1〜図3に示すように、HMホルダ5はハーフミラー8(以下HM8という)を保持する。HM8は樹脂である。HM8は投影ユニット10の出射光の少なくとも一部を反射して使用者の左の眼球(図示略)に入射する。使用者は自己の視野において実像に重畳して画像を視認できる。図1,図2に示すように、筐体2の前面における左右方向中央部にはスリット9Aが設けられている。スリット9Aにはアジャスタ16の一部が露出する。使用者はアジャスタ16を指で上下方向に回転させることによりHM8で視認できる画像のピント調整ができる。
【0020】
次に、眼鏡フレーム91について説明する。図1に示すように、眼鏡フレーム91は、左フレーム部92、右フレーム部93、中央フレーム部94、及びHMD支持部96を備える。左フレーム部92は使用者の左耳に掛けられる部分である。右フレーム部93は使用者の右耳に掛けられる部分である。中央フレーム部94は、左フレーム部92の前端部と、右フレーム部93の前端部との間に渡設されている。中央フレーム部94は長手方向中央部に一対の鼻当て部95(図1では一方のみ図示)を備えている。HMD支持部96は使用者側から見て中央フレーム部94の上面左端側(図1における上面右端)に設けられている。
HMD支持部96は下方延出部98を備えている。下方延出部98は使用者の顔の左前方において上下方向に延出されている。下方延出部98の前面にはノコギリ状の凹凸を有する歯部(図示略)が長手方向に刻設されている。
【0021】
図1,図2に示すように、HMD1の筐体2の眼鏡フレーム91に対向する部分には取付部49が設けられている。取付部49は上下方向に沿ったU字溝49A(図2参照)を内側に備える。U字溝49Aの底部には板バネ49Bが設けられている。U字溝49Aには、眼鏡フレーム91のHMD支持部96に設けられた下方延出部98が内挿される。板バネ49Bは下方延出部98に設けられた歯部の何れかの山に係止する。これにより、HMD1は使用者の頭部における上下方向の所定範囲内において位置決め可能となる。
【0022】
次に、投影ユニット10の構成について説明する。図3に示すように、投影ユニット10は筐体2に内蔵されている。投影ユニット10は、レンズホルダ15、アジャスタ16、液晶ホルダ17を備える。レンズホルダ15は接眼光学系120を保持する。液晶ホルダ17は液晶装置101を保持する。液晶装置101は画像光を出射する。接眼光学系120は、複数のレンズ(図示略)を収容し、液晶装置101から出射される画像光を筐体2の開口部7に導く。アジャスタ16はリング状である。アジャスタ16は液晶ホルダ17に外挿して取り付けられている。液晶ホルダ17の外周面には螺旋状の溝カム17Aが設けられている。アジャスタ16の内周面には係合部(図示略)が設けられている。係合部は液晶ホルダ17の溝カム17Aに係合し、溝カム17Aに沿って移動する。アジャスタ16は筐体2内で上下左右方向に位置決めされている。故にアジャスタ16を回転させると、溝カム17Aの働きによって液晶ホルダ17が左右方向に移動する。これにより液晶装置101と接眼光学系120との距離が変わるので、HM8で視認できる画像のピント調整ができる。
【0023】
次に、HMホルダ5の構造について、図4〜図6を参照して説明する。なお説明の便宜上、HMホルダ5の方向については、HMホルダ5を水平面に載置したときの姿勢で改めて定義する。即ち、図4の上下方向、左方向、右方向、右斜め上方向、左斜め下方向を、夫々、HMホルダ5の上下方向、前方向、後方向、右方向、左方向とする。図5の上下方向、左方向、右方向、右斜め下方向、左斜め上方向を、夫々、HMホルダ5の上下方向、前方向、後方向、右方向、左方向とする。図6の上下方向、左方向、右方向を、夫々、HMホルダ5の上下方向、前方向、後方向とする。
【0024】
図4〜図6に示すように、HMホルダ5はHM8を内側に保持する。HMホルダ5は、右側壁部51、左側壁部52、前側底部53、後側底部54を備える。右側壁部51及び左側壁部52は側面視略三角形状であり、左右方向に所定間隔を空けて各々立設されている。右側壁部51の上側の頂点近傍には、保持穴67(図6参照)が設けられている。保持穴67は右側壁部51の板厚方向(左右方向)に貫通している。保持穴67の径は、HM8の右端部26に設けられた後述する位置決めボス部35の径と略同一に調整されている。左側壁部52の上側の頂点近傍には保持穴68が設けられている。保持穴68は左側壁部52の板厚方向(左右方向)に貫通する。保持穴68の径は、後述する位置決めボス部36の径と略同一に調整されている。保持穴67,68は円形状である。
【0025】
図4,図6に示すように、右側壁部51の左側壁部52に対向する内面には、押し当て部61と、回転抑制部64とが各々設けられている。押し当て部61は右側壁部51の内面から左方向に突出する筒体であり、保持穴67と同軸上に位置する。押し当て部61の中央の穴の径は保持穴67の径と同じある。図4に示すように、回転抑制部64は、右側壁部51の内面に立設され、押し当て部61の外周面から後方に向かって略円弧を描きつつ下方にある後側底部54の上面54Aまで直線状に延設されている。左側壁部52の右側壁部51に対向する内面にも、押し当て部62と、回転抑制部65とが各々設けられている。押し当て部62は左側壁部52の内面から右方向に突出する筒体であり、保持穴68と同軸上に位置する。押し当て部62の中央の穴の径は保持穴68の径と同じある。図4,図6に示すように、回転抑制部65は、左側壁部52の内面に立設され、押し当て部62の外周面から後方に向かって略円弧を描きつつ下方にある後側底部54の上面54Aまで直線状に延設されている。
【0026】
前側底部53及び後側底部54は、右側壁部51の底部と、左側壁部52の底部との間に渡設されている。前側底部53はHMホルダ5の前側に位置する。後側底部54はHMホルダ5の後ろ側に位置する。後側底部54の上面54Aの左右方向中央にはストッパ部54Bが設けられている。ストッパ部54Bは凹状に陥没している。図5に示すように、前側底部53と後側底部54との間には開口部56が設けられている。開口部56は投影ユニット10の開口部7(図3参照)から出射される画像光をHM8に向けて通過させる。
【0027】
次に、HM8の構造について、図7,図8を参照して説明する。図7の上方向、下方向、左方向、右方向を、夫々、HM8の右方向、左方向、前方向、後方向とする。図8の上下方向、左方向、右方向を、夫々、HM8の上下方向、前方向、後方向とする。HM8は、本体部21と、被ストッパ部22とを備える。本体部21は所定厚(例えば1.5mm)を有し、一方向に長手を有する長方形状の板体である。本体部21は反射面41と裏面42と(図8参照)を備える。反射面41は使用者の左の眼球に向けて画像光を反射する面である。本体部21は、前端部25、右端部26、左端部27、及び後方連結部29を備える。右端部26には右側段部26Aが設けられている。右側段部26Aは右端部26の長手方向略中央から後方までの部分に位置する。右側段部26Aは本体部21の幅方向中央側に一段低くなっている。
【0028】
右側段部26Aの前側の角部には台座部31が設けられている。台座部31は短円柱状である。台座部31の軸方向は本体部21の前後方向に直交している。台座部31の外周面は裏面42から半円状に隆起している(図4参照)。台座部31の右側の端面には位置決めボス部35が設けられている。位置決めボス部35は円柱状であり、台座部31と同軸上に位置する。位置決めボス部35の径は台座部31の径よりは小さいが、HM8の板厚よりは大きい。位置決めボス部35の後方には回転抑制ボス部38が設けられている。回転抑制ボス部38は右側段部26Aから右方に延出している。
【0029】
左側段部27Aの前側の角部には台座部32が設けられている。台座部32は短円柱状である。台座部32の軸方向は本体部21の前後方向に直交している。台座部32の外周面は裏面42から半円状に隆起している。台座部32の左側の端面には位置決めボス部36が設けられている。位置決めボス部36は円柱状であり、台座部32と同軸上に位置する。位置決めボス部36の径も台座部32の径よりは小さいが、HM8の板厚よりは大きい。位置決めボス部36の後方には回転抑制ボス部39が設けられている。回転抑制ボス部39は左側段部27Aから左方に延出している。
【0030】
なおHMホルダ5を筐体2に取り付けた状態では、位置決めボス部36はHM8の下側に位置する。それ故、位置決めボス部36にはHM8の重量の負荷がかかる。そこで図7に示すように、位置決めボス部36を位置決めボス部35よりも太くしている。これにより位置決めボス部36の剛性を向上できるので、HM8の位置決めボス部36の折損を防止できる。
【0031】
被ストッパ部22は後方に一の頂点を有する略三角形状に形成されている。被ストッパ部22は本体部21の後方連結部29に連結されている。被ストッパ部22は、後方連結部29において本体部21に対して裏面42側に折れ曲がって傾斜している。
【0032】
次に、HMホルダ5及びHM8の材質について説明する。本実施形態では、HMホルダ5の剛性がHM8の剛性に比べて低くなるように、HMホルダ5及びHM8の各材質がそれぞれ選定されている。例えば、HM8の材質として、光学系の分野で一般的に使用されている透明樹脂材料(例えば、ポリカーボネート)を選定できる。次いで、HMホルダ5の材質はポリカーボネートよりも剛性の低い材質を選定する。例えばABS樹脂等を選定できる。なお材質についてはこれらに限定されず、上述の条件が満たされれば他の材質でもよい。
【0033】
次に、HMホルダ5及びHM8の寸法調整について説明する。例えば、図6に示すように、HM8の短手方向である左右方向の寸法をX、HMホルダ5による挟み込み寸法をYとする。寸法Xは、HM80の台座部31の右端と、台座部32の左端との間の距離である。寸法Yは、HM8を保持していない状態で、HMホルダ5における右側壁部51の内面に設けた押し当て部61の左端部と、左側壁部52の内面に設けた押し当て部62の右端部との間の距離である。本実施形態では寸法Yは寸法Xよりも若干狭く調製される。例えば、Xを15.1mm、Yを14.6mmとする。XとYの差分は0.5mmである。これらX,Yの寸法で、HM8をHMホルダ5に組み付ける。なおX寸法は本発明の「第二の寸法」の一例であり、Y寸法は本発明の「第一の寸法」の一例である。
【0034】
次に、HMホルダ5へのHM8の組み付け手順について説明する。図4〜図6に示すように、先ず、HMホルダ5の右側壁部51と左側壁部52とを外方に押し開きながらその中央にHM8を配置する。次いで、HMホルダ5の右側壁部51の押し当て部61の穴に対し、HM8の位置決めボス部35を挿入する。HMホルダ5の左側壁部52の押し当て部62の穴に対し、HM8の位置決めボス部36を挿入する。次いで、押し開かれていたHMホルダ5から手を放す。右側壁部51及び左側壁部52は樹脂の弾性復帰力により元の状態に戻る。これにより右側壁部51の内面に設けた押し当て部61の左端部に対し、HM8の台座部31の右側端面の外周に沿った部分が押し当てられる。さらに左側壁部52の内面に設けた押し当て部62の右端部に対し、HM8の台座部32の左側端面の外周に沿った部分が押し当てられる。このようにしてHM8がHMホルダ5の内側に挟み込まれて保持される。
【0035】
次に、HMホルダ5のHM8の保持構造によって得られる効果について説明する。図6に示すように、HMホルダ5及びHM8において、寸法Yは寸法Xよりも若干狭くなっている。それ故、HM8はボス部51,52の各根元部分において、HMホルダ5の右側壁部51及び左側壁部52によって左右方向から応力が加えられる。HM8は左右方向から挟持された状態となるので、HM8がボス部51,52を中心に勝手に回動するのを抑制できる。さらにHMホルダ5はHM8よりも剛性の低い材質で形成されている。これによりHM8を挟み込む一定以上の応力を、剛性の低いHMホルダ5に適度に逃がすことができる。従って、HM8の右端部26及び左端部27に無理な応力が加わらないので、HM8の反射面が歪曲しない。それ故、HMホルダ5を筐体2に取り付けた状態において、使用者がHM8で視認できる画像がぼやけて歪んでしまうのを効果的に防止できる。
【0036】
また、図7に示すように、HM8の位置決めボス部35,36の径は、HM8の板厚よりも大きい。例えば、HM8の板厚が1.5mmとすると、位置決めボス部35は2.6φである。それ故、位置決めボス部35,36は外部衝撃に強いので、HMホルダ5に対してHM8を安定して保持させることができる。
【0037】
さらに、図8,図9に示すように、位置決めボス部35,36は、HM8の反射面41から突出しないように、反射面41とは反対側にずれた位置に設けられている。それ故、反射面側の成形による影響を軽減することができる。
【0038】
また、図7,図8に示すように、位置決めボス部35,36(図8では位置決めボス部35は図示略)は、HM8の右端部26,左端部27において、反射面41のうち出射光が反射する領域の中央に対応する位置に設けられている。反射面41に入射する出射光は、光軸に近い中央部分ほど収差が少なく、光軸から離れるほど収差が大きくなる。そのため、出射光が反射する領域の中央部分は、HM80の隅部に比べて、入射する出射光の収差が小さい。そこで、位置決めボス部35,36をHM8の右端部26,左端部27において出射光が反射する領域の中央に対応する位置に設けている。これにより位置決めボス部35,36にかかる応力による反射面41の変形は、位置決めボス部36に近い出射光が反射する領域の中央に比べて、出射光が反射する隅部で小さくなる。従って、HMホルダ5を筐体2に取り付けた状態において、位置決めボス部35,36にかかる応力によって生じる反射面41の変形の影響による画像の歪みを最小限に留めることができる。
【0039】
また、図4,図6,図9に示すように、HMホルダ5を筐体2に取り付けた状態では、被ストッパ部22は、HMホルダ5の後側底部54のストッパ部54Bに当接可能である。これによりHM8が回転してずれてしまった場合でも、被ストッパ部22をストッパ部54Bに押し当てることで、HM8を正常位置に容易かつ迅速に戻すことができる。正常位置は画像光を使用者の眼球に導入できる位置である。
【0040】
また、図7に示すように、HM8の右端部26,左端部27には、当該端部から離間する方向に延出する回転抑制ボス部38,39を設けている。図4,図9に示すように、HMホルダ5には、回転抑制部64,65(図6参照)を設けている。それ故、HM8が位置決めボス部35,36を中心に回転しようとしても、HM8の回転抑制ボス部38,39がHMホルダ5の回転抑制部64,65に当接する。故にHM8が勝手に回転してしまい、視界からHM8が外れてしまうのを防止できる。
【0041】
以上説明において、図1に示す眼鏡フレーム91が本発明の「フレーム」の一例である。図3に示す液晶装置101が本発明の「画像光発生部」の一例である。接眼光学系120が本発明の「接眼光学系」の一例である。HMホルダ5が本発明の「ホルダ」の一例である。HM8が本発明の「反射板」の一例である。図7に示す位置決めボス部35,36が本発明の「第1ボス部」の一例である。回転抑制ボス部38,39が本発明の「第2ボス部」の一例である。図6に示すHMホルダ5の右側壁部51、押し当て部61と、左側壁部52、押し当て部62とが本発明の「受け部」の一例である。
【0042】
以上説明したように、本実施形態のHMD1では、樹脂製のHM8を保持するHMホルダ5は、HM8よりも剛性の低い材質で形成している。それ故、HM8を保持する応力をHMホルダ5側に逃がすことができる。これによりHM8のガタつきを抑制しつつHM8に生ずる歪みを低減できる。HM8の歪みを低減することによりHM8で使用者が視認できる画像の歪みを防止できる。
【0043】
また本実施形態では更に、図7に示すように、HM8の右端部26と左端部27とに一対の位置決めボス部35,36を各々設けている。さらにHMホルダ5では、図6に示すように、右側壁部51及び左側壁部52に押し当て部61,62を設けている。押し当て部61の穴に位置決めボス部35が挿入され、押し当て部62の穴に位置決めボス部36が挿入される。それ故、本実施形態は、HM8をHMホルダ5に対して容易に位置決めできる。
【0044】
また本実施形態では更に、図2に示すように、HMホルダ5は、HM8を右側壁部51及び左側壁部52によって両側から挟持している。それ故、HMホルダ5はHM8を位置決めしつつ無理のない力で挟持できる。
【0045】
また本実施形態では更に、図5に示すように、位置決めボス部35,36の径はHM8の板厚よりも大きいので外部衝撃に強い。さらに、位置決めボス部35,36は、HM8の反射面41から突出しないように、反射面41とは反対側にずれた位置に設けられている。反射面側の成形による影響を軽減することができる。
【0046】
また本実施形態では更に、図5に示すように、位置決めボス部35,36は、HM8の右端部26,左端部27において、反射面41のうち出射光が反射する領域の中央に対応する位置に設けられている。これにより、位置決めボス部35,36にかかる応力によって生じる反射面41の変形の影響による画像の歪みを最小限に留めることができる。
【0047】
また本実施形態では更に、HM8の右端部26,左端部27には、当該端部から離間する方向に延出する回転抑制ボス部38,39を設けている。HMホルダ5には、回転抑制部64,65を設けている。それ故、HM8が位置決めボス部35,36を中心に回転しようとしても、HM8の回転抑制ボス部38,39がHMホルダ5の回転抑制部64,65に当接する。故にHM8が使用中に勝手に回転してしまうのを防止できる。
【0048】
また本実施形態では更に、筐体2には眼鏡フレーム91に取り付ける為の取付部49が設けられている。取付部49を眼鏡フレーム91に取り付けた状態では、筐体2の画像光が出射する開口部は使用者の眼に近い位置に配置され、かつ筐体2は使用者の頭部から離間する方向に配置される。それ故、図1,図2に示すように、HM8、HMホルダ5、筐体2の順に、使用者の眼から遠ざかるように配置されるので、使用者の視界を広くとることができる。
【0049】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、様々な変形が可能である。例えば、上記実施形態のHMD1では、本発明の「画像光発生部」の一例として液晶装置101を説明したが、DMD、有機EL等の二次元表示素子を用いたものでも適用可能である。さらに、網膜走査型の投影装置(Retinal Scanning Display)でも適用可能である。
【0050】
また上記実施形態では、図1に示すように、使用者の左眼の前方にHM8が配置され、その右方に向かって、HMホルダ5、筐体2の順に配置され、使用者の頭部から遠ざかるように配置されている。例えば、使用者の左眼の上方にHMホルダを配置し、HMを上方から眼の前方に配置してもよい。このような場合、筐体はHMホルダから使用者の頭部から遠ざかるように配置される。このような縦置きタイプのような場合でも、上記実施形態と同じ効果を得ることができる。
【0051】
また上記実施形態では、使用者の左眼前方にHM8を配置するタイプのHMD1を説明したが、右眼前方にHMを配置するタイプのHMDでも本発明は適用可能である。
【0052】
また上記実施形態では、HM8は回転抑制ボス部38,39を備えているが、省略することも可能である。
【0053】
また上記実施形態では、右側壁部51に設けた押し当て部61、及び左側壁部52に設けた押し当て部62は省略してもよい。この場合、HM8の位置決めボス部35,36を、右側壁部51及び左側壁部52に設けた保持穴67,68に直接挿入すればよい。
【0054】
また上記実施形態では、HMD1は眼鏡型フレーム91に取り付けられるものとして説明したが、例えば、ヘッドバンド、ヘッドホン、又はヘルメット等の頭部に装着する装着部材にも取り付けることができる。
【符号の説明】
【0055】
1 ヘッドマウントディスプレイ(HMD)
2 筐体
5 ハーフミラーホルダ(HMホルダ)
7 開口部
8 ハーフミラー(HM)
26 右端部
27 左端部
35,36 位置決めボス部
38,39 回転抑制ボス部
41 反射面
49 取付部
51 右側壁部
52 左側壁部
54 後側底部
54B ストッパ部
64,65 回転防止部
67,68 保持穴
101 液晶装置
120 接眼光学系

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の頭部に装着される装着部材に取り付けられ、画像情報に基づいて前記使用者の眼に画像光を入射して前記使用者に画像を認識させるヘッドマウントディスプレイにおいて、
画像光を発生する画像光発生部と、
前記画像光発生部が発生した画像光を一定方向に導く接眼光学系と、
前記画像光発生部と、前記接眼光学系とを内蔵する筐体と、
前記接眼光学系の出射光の少なくとも一部を反射して前記使用者の眼に入射する樹脂製の反射板と、
前記筐体の前記出射光が出射される開口部に設けられ、前記反射板を所定の応力を加えることで挟持し且つ前記反射板よりも剛性の低い材質で形成したホルダと
を備えたことを特徴とするヘッドマウントディスプレイ。
【請求項2】
前記反射板の端部には、当該端部から離間する方向に延出する第1ボス部が設けられ、
前記ホルダには、前記第1ボス部を受ける受け部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のヘッドマウントディスプレイ。
【請求項3】
前記反射板は互いに対向する一対の端部を備え、
前記第1ボス部は、前記一対の端部に各々設けられ、
前記ホルダには、一対の前記第1ボス部をそれぞれ受ける一対の前記受け部が設けられていることを特徴とする請求項2に記載のヘッドマウントディスプレイ。
【請求項4】
前記一対の受け部の内側の離間距離である第一の寸法は、前記反射板の前記一対の端部に挟まれる第二の寸法よりも小さいことを特徴とする請求項3に記載のヘッドマウントディスプレイ。
【請求項5】
前記第1ボス部の径は前記反射板の板厚よりも大きく、
前記第1ボス部は、前記端部の板厚方向において、前記反射板の前記出射光が反射する反射面から突出しないように、前記反射面とは反対側にずれた位置に設けられていることを特徴とする請求項2から4の何れかに記載のヘッドマウントディスプレイ。
【請求項6】
前記第1ボス部は、前記端部において、前記反射面のうち前記出射光が反射する領域の中央に対応する位置に設けられていることを特徴とする請求項2から5の何れかに記載のヘッドマウントディスプレイ。
【請求項7】
前記反射板の前記端部には、当該端部から離間する方向に延出する第2ボス部が設けられ、
前記ホルダには、前記反射板が前記第1ボス部を中心に回転しようとしたときの前記第2ボス部に当接する当接部が設けられていることを特徴とする請求項2から6の何れかに記載のヘッドマウントディスプレイ。
【請求項8】
前記筐体には前記フレームに取り付ける為の取付部が設けられ、
前記取付部を前記フレームに取り付けた状態では、
前記開口部は前記使用者の眼に近い位置に配置され、前記筐体は前記使用者の頭部から離間する方向に配置されることを特徴とする請求項1から7の何れかに記載のヘッドマウントディスプレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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