説明

ヘッドライトの光軸調整構造

【課題】車両の外観を良好に保つことができ、さらに、車体カバーを軽量且つコンパクトにすることができるヘッドライトの光軸調整構造を提供する。
【解決手段】ヘッドライトの光軸調整構造10は、ヘッドライトバルブ78が装着されるヘッドライトケース82と、ヘッドライトケース82の周囲を覆うハンドルカバー62とを備え、ヘッドライトユニット30をエーミング可能とする構造であり、ヘッドライトケース82を回動自在に取り付ける軸支部を構成する回動軸108と、ヘッドライトケース82のエーミングを行うための長孔100とを設けたブラケット92を有し、該ブラケット92がハンドルカバー62内に備えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のヘッドライトをエーミングするためのヘッドライトの光軸調整構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動二輪車等の鞍乗り型車両において、ヘッドライトの光軸を調整する構造が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
該従来技術では、その図1及び図2に示すように、ヘッドライト(灯体)20がハンドルカバー5に対して取り付けられ、ハンドルカバー5は、上半部5aと下半部5bとによって構成されている。そして、ヘッドライト20のエーミングは、下半部5bに設けられた長穴部(調節穴)19とヘッドライト20に取り付けられた調節片23及びエーミングボルト28により行われるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2619751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記従来技術の構成では、エーミングボルト28が下半部5bに当接するようになっているので、エーミングの際に車両の外観部品でもある下半部5bを傷つけてしまう可能性がある。また、エーミング軸とボルトの取付位置を決めるために下半部5bの剛性を上げる必要があり、肉厚にせざるを得ない。
【0006】
本発明はこのような従来技術に関連してなされたものであり、車両の外観を良好に保つことができ、さらに、車体カバーを軽量且つコンパクトにすることができるヘッドライトの光軸調整構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に記載の発明に係るヘッドライトの光軸調整構造は、ヘッドライトバルブが装着されるヘッドライトケースと、前記ヘッドライトケースの周囲を覆う車体カバーとを備え、ヘッドライトをエーミング可能とするヘッドライトの光軸調整構造であって、前記ヘッドライトケースを回動自在に取り付ける軸支部と、前記ヘッドライトケースのエーミングを行うための長穴部とを設けたブラケットを有し、前記ブラケットは、前記車体カバー内に備えられることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載のヘッドライトの光軸調整構造において、前記車体カバーには、前記長穴部に対応する部分に、前記ヘッドライトケースをエーミング操作するための孔部が設けられていることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2記載のヘッドライトの光軸調整構造において、前記長穴部は、前記ブラケットの下部分に設けられると共に、該長穴部に対応した孔部が前記車体カバーにおける前記ヘッドライトケースの下方に設けられたことを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載のヘッドライトの光軸調整構造において、前記長穴部は、車両の前後方向に沿って形成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載のヘッドライトの光軸調整構造において、前記ヘッドライトケースの取り付け位置を規定する位置決め部が車体側に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、車体カバーとは別体のブラケットに、エーミング軸である軸支部とエーミングボルト調整用の長穴部とを設けた構成とすることにより、エーミング時において車体カバーが傷つくことがなく、その外観を良好に保つことができる。しかも、車体カバーには、エーミングボルトの調整に係る締結トルクや、ヘッドライトケースの移動に伴う負担がかかることがないため、その剛性を小さく形成し、コンパクトで軽量なものとすることができる。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、前記車体カバーにおける前記長穴部に対応する部分にエーミング操作用の孔部を設けることにより、車体カバーを取り外すことなく該孔部からエーミング調整用の工具を差し込んで、容易にエーミングをすることができる。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、前記長穴部がブラケットの下部分に設けられると共に、該長穴部に対応した孔部が前記車体カバーにおける前記ヘッドライトケースの下方に設けられることにより、該孔部が外観上目立つことがなく、車両の外観を一層向上させることができる。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、前記長穴部が車両の前後方向に沿って形成されていることにより、該長穴部に沿って容易にエーミングをすることができる。
【0016】
請求項5に記載の発明によれば、前記位置決め部により、ヘッドライトケースを所定の位置に且つ所定の姿勢で容易に取り付けることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係るヘッドライトの光軸調整構造が組み込まれた鞍乗り型車両である自動二輪車の側面図である。
【図2】本実施形態に係るヘッドライトの光軸調整構造を示す一部省略側面図である。
【図3】図2に示すヘッドライトの光軸調整構造の一部省略斜視図である。
【図4】図2に示すヘッドライトの光軸調整構造を示す車体前後方向に沿う一部省略断面説明図である。
【図5】ヘッドライトユニットを支持するブラケット及びステーを示す一部省略斜視図である。
【図6】図2に示すヘッドライトの光軸調整構造を適用した自動二輪車のヘッドライト及びその周辺部を示す一部省略斜視図である。
【図7】図6に示すヘッドライトの光軸調整構造を適用した自動二輪車のヘッドライトカバーを取り外した状態でのヘッドライト及びその周辺部を示す一部省略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係るヘッドライトの光軸調整構造について、この構造を適用した鞍乗り型車両である自動二輪車との関係で実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態に係るヘッドライトの光軸調整構造10(以下、「光軸調整構造10」ともいう)が組み込まれた鞍乗り型車両である自動二輪車12の側面図である。本実施形態では、自動二輪車12への適用例により本発明を説明するが、本発明はこれに限られるものではなく、各種の鞍乗り型車両等(オンロード型、オフロード型や自動四輪車等を含み、さらにスクータ型等も含む)に適用可能である。なお、理解を容易にするため、各図面において、着座した運転者から見た方向に従って、車体の左を示す矢印に「L」、車体の右を示す矢印に「R」を付すと共に、車体の前方を示す矢印に「Fr」、車体の後方を示す矢印に「Rr」を付して説明する。
【0020】
図1に示すように、自動二輪車12は、車体フレーム14と、操舵輪である前輪16と、駆動輪である後輪18と、前輪16を操舵するハンドル20と、乗員が着座するシート22と、エンジン24とを備え、ヘッドパイプ26に枢支されたハンドルパイプ28にヘッドライトユニット30が設けられている。
【0021】
車体フレーム14の前端部に固着された前記ヘッドパイプ26には、前輪16を軸支する左右一対のフロントフォーク32がステアリングステム34を介して枢支される。ハンドル20は、ステアリングステム34の上部に一体的に設けられた前記ハンドルパイプ28に取り付けられ、これにより前輪16を操向可能である。車体フレーム14の下部後方側に位置する左右ピボットフレーム36には、後輪18を軸支するスイングアーム37が上下方向に揺動可能に枢支される。ハンドル20とシート22との間は、側面視で谷状に車高が低く、運転者が跨ぎ易いように構成されている。
【0022】
車体フレーム14は、例えば、複数種の鋼材を溶接等により一体に接合して構成されている。車体フレーム14は、前端部に位置する前記ヘッドパイプ26と、ヘッドパイプ26から車体後方に向かって斜め下方へと延びたメインフレーム38と、メインフレーム38の後部から下方へと延びた前記ピボットフレーム36と、メインフレーム38の後端部から斜め上方に延びると共に屈曲した左右リヤフレーム40と、左右リヤフレーム40及びメインフレーム38の間に架橋された左右ガセットパイプ42とを有する。
【0023】
メインフレーム38の前後中間部には、側面視で三角形状の左右エンジンハンガ44が垂下されている。前記エンジン24は、クランクケース46の後端部上下側が左右ピボットフレーム36に支持されると共に、クランクケース46の上端部が左右エンジンハンガ44に支持され、これにより車体フレーム14に固定される。エンジン24としては、例えば、空冷単気筒型が搭載される。クランクケース46の左右両側には、シート22に着座した運転者が足を載せる左右ステップ41が突設されている。
【0024】
エンジン24の回転駆動力は、例えば、クランクケース46右側に設けられたベルト式無断変速機(図示せず)等を介して、クランクケース46後部左側のドライブスプロケット43へと出力されると共に、ドライブチェーン45及びドリブンスプロケット47を介して後輪18に伝達される。
【0025】
車体後方側において、左右ピボットフレーム36の上下中間部には、スイングアーム37の前端部がピボット軸36aを介して上下方向に揺動可能に枢支される。スイングアーム37を構成する左右アームの後端部と左右リヤフレーム40の前後中間部との間には、それぞれリヤクッションユニット48が設けられる。
【0026】
エンジン24の前方側において、シリンダ本体50の前端部にはシリンダヘッド52が取り付けられる。シリンダヘッド52の上部(吸気側)には、上下に延びる吸気通路を形成するスロットルボディ54の下端(下流側)が接続されると共に、スロットルボディ54の上端(上流側)が、その上方のエアクリーナボックス56の下部に接続される。シリンダヘッド52の下部(排気側)には排気管58の基端が接続され、該排気管58が適宜後方に湾曲しながら延びて後輪18右側のサイレンサ60に接続される。
【0027】
さらに、自動二輪車12には、車体フレーム14側に固定されたヘッドライトユニット30の後方側からハンドル20周辺までを覆うハンドルカバー(車体カバー)62と、ヘッドパイプ26周りを前方から覆うフロントカバー64と、フロントカバー64の左右両側に張り出して運転者の脚部を前方から覆う左右レッグシールド66と、フロントカバー64の後方に連なり上方に凸の山形の断面形状をなして斜め下後方に延びるセンタトンネルカバー68と、センタトンネルカバー68の左右両側の後方に連なる左右リヤサイドカバー70とが取り付けられている。これらのカバーは、例えば合成樹脂を主として構成される。
【0028】
左右リヤサイドカバー70の上方に支持されるシート22は、その前半部の運転者用シートと後半部の同乗者用シートとが一体に構成されている。シート22の前半部の下方であって左右リヤサイドカバー70に囲まれた部位には、ヘルメット等の物品を収納可能な収納ボックス72が配設される。収納ボックス72は、シート22が前端ヒンジ軸回りに回動することで開閉される。一方、シート22の後半部の下方であって左右リヤサイドカバー70の間には、エンジン24の燃料を貯留する燃料タンク74が配設される。燃料タンク74は、シート22が開かれた状態で、その給油口が露呈する。また、前記収納ボックス72の底部後側には、車載電源であるバッテリ76が前傾姿勢で配置されている。
【0029】
次に、基本的には以上のように構成される自動二輪車12に組み込まれる本実施形態に係るヘッドライトの光軸調整構造10について、図2〜図7を参照して説明する。
【0030】
図4に示すように、本実施形態に係る光軸調整構造10に適用されるヘッドライトユニット30は、ヘッドライトケース82の内部へと後方側から装着されるヘッドライトバルブ78と、ヘッドライトバルブ78の光を反射するリフレクタ80と、ヘッドライトバルブ78の下方に設けられたポジションライトバルブ81とを有し、これらが前記ヘッドライトケース82に固定され収納されている。図4中の参照符号83は、ヘッドライトバルブ78やポジションライトバルブ81への通電や制御信号の送信に用いられるワイヤハーネスである。
【0031】
図2〜図4に示すように、ヘッドライトケース82は、ヘッドライトバルブ78が装着される装着孔84が背面に形成された扁平略半円状のヘッドライトベース86と、ヘッドライトベース86の前方側に装着される略半円状の透明又は半透明のヘッドライトレンズ88とから構成される。
【0032】
このようなヘッドライトユニット30(ヘッドライトケース82)は、ハンドルパイプ28の前方側に突設された左右一対のステー90の前端部間に固定されたブラケット92に対して取り付けられ、これにより車体側に支持される。
【0033】
ステー90は、溶接やボルト締結等によりハンドルパイプ28に固定されることで車体側(車体フレーム14)に対して取り付けられる。ブラケット92は正面視略U字状に構成され(図5参照)、車体上下方向に延びた左右アーム部92aの上下中間部やや上部が、左右のステー90の前端部に対してそれぞれボルト94で締結される(図2及び図3参照)。ボルト94は、ステー90に形成された孔部(図示せず)を通してブラケット92側に接合された溶接ナット91に締結される。この際、ブラケット92は、左右のステー90の内面側下部にそれぞれ形成されたフランジ96の前端部(位置決め部)96aに突き当てられることで、ステー90に対する取り付け位置及び取り付け角度が一義的に規定される(図2及び図3参照)。勿論、ブラケット92の位置決め部は、フランジ96を用いる構成以外であってもよく、例えば、凸部や凹部等を用いて形成してもよい。
【0034】
図5に示すように、ブラケット92の下部分であって、左右アーム部92a間に位置したU字の底部には、車体前方側の斜め上方へと円弧状に延びた顎状の突出部92bが設けられる。該突出部92bの車幅方向中央には車体前後方向に沿って延びた長孔(長穴部)100が形成されている。長孔100には、ヘッドライトユニット30のエーミングボルト102が下方から上方に向けて挿通され、該エーミングボルト102は、ヘッドライトケース82(ヘッドライトベース86)の下面側に突出した締結部(スライダ部)104の下面側に形成されたねじ穴106に締結される(図4参照)。
【0035】
ブラケット92の左右アーム部92aのそれぞれの上端部近傍には孔部93(図5参照)が形成され、ヘッドライトユニット30が孔部93に挿通された回動軸(軸支部)108によりブラケット92に対して回動可能に軸支される。回動軸108は、例えばボルトやピンであり、ヘッドライトベース86側に設けられた図示しないねじ穴に対し、ヘッドライトユニット30がブラケット92に対して回動可能なように締結又は嵌合される。
【0036】
ヘッドライトユニット30をブラケット92に対して回動自在に取り付ける軸支部(エーミング軸)としては、上記のように、ボルト等で構成された回動軸108を用いる構成以外であってもよく、例えば、ヘッドライトベース86から突出するピンをブラケット92側の孔部に嵌挿させるような構造であってもよく、要は、車体側であるブラケット92に対してヘッドライトユニット30(ヘッドライトケース82)を回動可能に軸支可能な構造であればよい。
【0037】
すなわち、図2〜図4に示すように、ヘッドライトケース82は、車体側であるブラケット92に対し、回動軸108により左右両端側上部がそれぞれ左右アーム部92aに軸支されると共に、エーミングボルト102により下部中央の締結部104が突出部92bに対して長孔100の長手方向で所定位置に固定される。
【0038】
図2、図3及び図5に示すように、左右のステー90には、車体前後方向で略中央部に設けられて外方へと突出する第1締結部112と、先端部でブラケット92との締結部の外方に設けられた第2締結部114とが形成されている。
【0039】
図6及び図7に示すように、第1締結部112(図3参照)には、上下2分割で構成されたハンドルカバー62の上部カバー62aの下面が図示しないボルト等により締結される。第2締結部114には、ハンドルカバー62の下部カバー62bの側面が、リム状(円環状)のヘッドライトカバー(車体カバー)116と共に、ボルト(スクリュー)117によって共締めされる。
【0040】
ヘッドライトカバー116は、ハンドルカバー62とヘッドライトケース82との合わせ目や、ヘッドライトケース82を構成するヘッドライトベース86とヘッドライトレンズ88との合わせ目等を覆い隠すものであり、第2締結部114への締結と共に、上部カバー62aの上部前端部に設けられたリブ118(図7参照)に引っ掛けられて固定される。リブ118は、ヘッドライトカバー116の内側に入り込んで引っ掛けられる。
【0041】
従って、ブラケット92及びステー90がハンドルカバー62及びヘッドライトカバー116の内側に容易に収納され、実質的に自動二輪車12の外観上に露出せず、その外観を確保することができる。
【0042】
図4、図6及び図7に示すように、ヘッドライトユニット30の周辺を覆う車体カバーであるハンドルカバー62(下部カバー62b)及びヘッドライトカバー116において、前記ヘッドライトケース82の下方には、前記エーミングボルト102及び長孔100を外部に露出させる切欠き(孔部)120、122がそれぞれ形成されている。切欠き120、122は、長孔100の範囲内でエーミングボルト102を前記車体カバーを取り付けたままで操作でき、ヘッドライトケース82のエーミング操作が可能である形状であればよく、例えば、エーミングボルト102の移動範囲である長孔100を多少拡大した形状であって、エーミングボルト102の頭頂部を露出可能な大きさに設定されるとよい。
【0043】
本実施形態に係る光軸調整構造10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次に、光軸調整に係る動作及びその作用効果について説明する。
【0044】
先ず、自動二輪車12の製造時(工場出荷時)等には、ヘッドライトユニット30(ヘッドライトケース82)を回動軸108によってステー90に取り付け、エーミングボルト102を長孔100内の所定の初期位置(例えば、軸線方向で中央部)で締結部104に締結させる。これにより、ヘッドライトユニット30とブラケット92とが所定の初期角度で一体的に結合される。この初期角度は、例えば、図4中のヘッドライトユニット30の回動支点である回動軸108からエーミングボルト102へと延ばした直線θ0となる。なお、長孔100の周辺部に目盛り等のマークをしておき(図示せず)、初期位置や光軸角度の目安としてもよい。
【0045】
続いて、ヘッドライトユニット30が一体的に固定されたブラケット92を、ステー90に対してボルト94で固定する(図2及び図3参照)。この際、ブラケット92は、ステー90に設けられたフランジ96の前端部96aに突き当てられて所定位置に確実に位置決め固定される。このため、ヘッドライトユニット30は、その光軸が一定の初期位置(初期角度)、例えば、図4中の矢印L0方向に設定される。
【0046】
次いで、ハンドルカバー62及びヘッドライトカバー116等が締結されることで、ハンドルカバー62とヘッドライトケース82との合わせ目等や、ステー90及びブラケット92が適切に覆われる一方(図6参照)、光軸調整手段であるエーミングボルト102や長孔100は、切欠き120、122によってヘッドライトケース82の下方で露出している(図4及び図6参照)。
【0047】
そこで、このような光軸調整構造10を組み込んで車体側に取り付けられたヘッドライトユニット30について光軸調整を行う場合には、先ず、ヘッドライトユニット30の下方、つまりハンドルカバー62及びヘッドライトカバー116下方の切欠き120、122から、所定の工具(例えば、ドライバ)を差し込んでエーミングボルト102を緩める。次に、エーミングボルト102やヘッドライトケース82等を把持し、回動軸108を回動支点(エーミングポイント)としてヘッドライトユニット30(ヘッドライトケース82)を締結部104がブラケット92の突出部92b上でスライドするように移動させる。そして、ヘッドライトユニット30を所望の角度だけ(図4中の矢印θ参照)回動させた後、エーミングボルト102を再び締結する。これにより、ヘッドライトの光軸調整を簡単な構造で且つ少ない部品点数によって、所望の角度に迅速に設定することができる。
【0048】
具体的には、図4中の直線θ0で示す角度にあり光軸が矢印L0方向に設定されたヘッドライトユニット30の光軸調整をする場合に、例えば、直線θ1に示す角度に回動させることにより光軸が矢印L1方向に調整され、同様に、直線θ2に示す角度に回動させることにより光軸が矢印L2方向に調整される。
【0049】
この場合、図4に示すように、光軸調整構造10では、回動軸108の位置、つまりエーミングポイントが、側面視でヘッドライトバルブ78の略中央部に一致するように構成されている。従って、ヘッドライトユニット30の回動角度とヘッドライトバルブ78の回動角度とが略一致するため、光軸調整の操作性を一層向上させることができ、より直感的な調整が可能となる。
【0050】
また、当該光軸調整構造10では、ヘッドライトケース82を回動自在に支持するエーミング軸である回動軸108とエーミング調整ボルト穴である長孔100とが、ヘッドライトユニット30の周辺を覆う車体カバーであるハンドルカバー62やヘッドライトカバー116とは別体に設けられている。すなわち、エーミングボルト102は、車体カバーと別体のブラケット92と共に締結部104に締結されるため、エーミング時に前記車体カバーが傷つくことがなく、その外観を良好に保つことができる。
【0051】
しかも、車体カバーであるハンドルカバー62やヘッドライトカバー116には、エーミングボルト102の調整に係る締結トルクや、ヘッドライトケース82の移動(回動)に伴う負担がかかることがないため、その剛性を小さく形成し、コンパクトで軽量な車体カバーとして構成することができる。すなわち、前記車体カバーに上記のような締結トルクや回動負担がかからないため、当該車体カバーの剛性を上げるために肉厚に形成する等の必要がない。このように、ヘッドライトユニット30がステー90及びブラケット92を介して車体側(車体フレーム14)に確実に支持されるため、例えば、車体カバー側にヘッドライトユニットやその光軸調整手段を取り付ける構造に比べて、より重量の大きな大型のヘッドライトユニット等であっても光軸調整可能な状態で容易に且つ確実に取り付けることができる。従って、車体カバーがヘッドライトユニットを支えることが難しい強度しか有していない場合であっても、当該車体カバーに負荷を与えることなく、又は車体カバーを肉厚にすることなく、ヘッドライトユニットを光軸調整可能に取り付けることができる。
【0052】
さらに、光軸調整手段である長孔100、エーミングボルト102及び締結部104が、ヘッドライトユニット30(ヘッドライトケース82)の下方に配置され、そこにハンドルカバー62及びヘッドライトカバー116の切欠き120、122が形成されている。これにより、ハンドルカバー62等を取り外すことなく、切欠き120、122から所定の工具を差し込んでエーミングボルト102を操作でき、エーミングを容易にすることができる。また、自動二輪車12の正面視や側面視等では、切欠き120、122が外観上目立たず、その外観を向上させることができる。また、ハンドルカバー62及びヘッドライトカバー116等が取り付けられた状態では(図6参照)、ハンドルカバー62とヘッドライトケース82との合わせ目や、ステー90及びブラケット92が適切に隠されるため、自動二輪車12の外観を一層向上させることができる。
【0053】
上記のように、ハンドルカバー62とヘッドライトカバー116とは、ボルト117によってステー90へと共締めされると共に、リブ118によって互いに係合されている。このため、ヘッドライトケース82をエーミングによって回動させる場合に、ハンドルカバー62とヘッドライトカバー116との合わせ目がずれることを有効に防止することができ、結果として光軸調整に係る作業を一層簡略化することができる。
【0054】
さらに、このような光軸調整構造10によれば、ヘッドライトバルブ78やポジションライトバルブ81を交換する場合、先ず、ボルト117を第2締結部114から取り外し(図6及び図7参照)、リム状の車体カバーであるヘッドライトカバー116を取り外す(図7参照)。続いて、ブラケット92をステー90に固定しているボルト94を取り外す。これにより、ヘッドライトユニット30をブラケット92と共に一体的に車体側から簡便に取り外すことができ、容易にヘッドライトバルブ78を交換可能であり、そのメンテナンス性も向上する。
【0055】
この際、エーミングボルト102は長孔100を介してヘッドライトケース82側の締結部104へと締結したままの状態でよく、つまりエーミングボルト102を緩める必要等がない。しかも、上記した製造時(工場出荷時)等の場合と同様に、ヘッドライトユニット30が一体的に固定されたブラケット92は、ステー90に設けられたフランジ96による位置決め作用下に、再び元の位置で車体側に固定される。従って、本実施形態に係る光軸調整構造10によれば、一度調整しておいた光軸角度を保持したまま、その角度をずらすことなく、ヘッドライトバルブ78等の交換を行うことができる。
【0056】
本発明は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成乃至工程を採り得ることは勿論である。
【0057】
例えば、ヘッドライトケース82が取り付けられるブラケット92は、ステー90と一体型に構成したものでもよい。この場合には、ヘッドライトバルブ78の交換は多少煩雑になるが、ヘッドライトケース82の取付構造を一層簡素化することができる。
【0058】
また、光軸調整手段として機能するエーミングボルト102をナットとして、ヘッドライトケース82側の締結部104をボルト(植込みボルト)として構成してもよく、要は、回動されるヘッドライトケース82をブラケット92(車体側)に対して所定位置で確実に固定できる構造であればよい。
【符号の説明】
【0059】
10…ヘッドライトの光軸調整構造 12…自動二輪車
14…車体フレーム 26…ヘッドパイプ
28…ハンドルパイプ 30…ヘッドライトユニット
62…ハンドルカバー 78…ヘッドライトバルブ
82…ヘッドライトケース 90…ステー
92…ブラケット 92b…突出部
96…フランジ 100…長孔
102…エーミングボルト 104…締結部
106…ねじ穴 108…回動軸
116…ヘッドライトカバー 120、122…切欠き

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドライトバルブが装着されるヘッドライトケースと、
前記ヘッドライトケースの周囲を覆う車体カバーと、
を備え、ヘッドライトをエーミング可能とするヘッドライトの光軸調整構造であって、
前記ヘッドライトケースを回動自在に取り付ける軸支部と、前記ヘッドライトケースのエーミングを行うための長穴部とを設けたブラケットを有し、
前記ブラケットは、前記車体カバー内に備えられることを特徴とするヘッドライトの光軸調整構造。
【請求項2】
請求項1記載のヘッドライトの光軸調整構造において、
前記車体カバーには、前記長穴部に対応する部分に、前記ヘッドライトケースをエーミング操作するための孔部が設けられていることを特徴とするヘッドライトの光軸調整構造。
【請求項3】
請求項1又は2記載のヘッドライトの光軸調整構造において、
前記長穴部は、前記ブラケットの下部分に設けられると共に、該長穴部に対応した孔部が前記車体カバーにおける前記ヘッドライトケースの下方に設けられたことを特徴とするヘッドライトの光軸調整構造。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のヘッドライトの光軸調整構造において、
前記長穴部は、車両の前後方向に沿って形成されていることを特徴とするヘッドライトの光軸調整構造。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のヘッドライトの光軸調整構造において、
前記ヘッドライトケースの取り付け位置を規定する位置決め部が車体側に設けられていることを特徴とするヘッドライトの光軸調整構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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