ヘッドレストステーの溝加工方法
【課題】加工装置に必要な部品のコストが安価であって、ステー(ヘッドレストステー)に対する溝加工のコストを低減でき、またステーの溝加工をバリを発生させることなく高精度で綺麗に行うことができるヘッドレストステーの溝加工方法を提供する。
【解決手段】ヘッドレストにおける中空円筒状の金属パイプ材からなるステー14に周方向に部分的に溝を加工するに際して、ステー14を間に挟み込む可動ダイス28,固定ダイス30を設けて、それらに溝の加工用の複数の突型36を、可動ダイス28の移動方向に沿って所定間隔をおいて且つ突出高さが段階的に高くなる形状で設けておき、ステー14を滑り無く転動運動させつつ、可動ダイス28を移動させて、複数の突型36をステーに近いものから順にステー14に押し込んで溝を段階的に深く成形して行く。
【解決手段】ヘッドレストにおける中空円筒状の金属パイプ材からなるステー14に周方向に部分的に溝を加工するに際して、ステー14を間に挟み込む可動ダイス28,固定ダイス30を設けて、それらに溝の加工用の複数の突型36を、可動ダイス28の移動方向に沿って所定間隔をおいて且つ突出高さが段階的に高くなる形状で設けておき、ステー14を滑り無く転動運動させつつ、可動ダイス28を移動させて、複数の突型36をステーに近いものから順にステー14に押し込んで溝を段階的に深く成形して行く。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は車両のシートバックの上端に取り付けられるヘッドレストのステー(ヘッドレストステー)の溝の加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のシートバックの上端に取り付けられるヘッドレストは、乗員の頭部をサポートして頭部を楽にしたり、追突時に乗員がのけぞって首を傷めないようにする等の目的で設けられているもので、シートバックと一体になっているものと、シートバックに対して脱着可能な差込式のものとがある。
【0003】
後者の差込式のものは、クッション材から成る枕部と支持部材となる金属製のヘッドレストステー(以下単にステーとする)とを有している。
ステーは枕部から2本の脚部を突き出しており、ヘッドレストはこの脚部をシートバックの差込孔に差し込むことで、シートバックに取り付けられる。
【0004】
通常このヘッドレストは高さ調節可能とされており、ステーの脚部には、その高さ調節のために軸方向に間隔を隔ててステーの軸直角方向に延びる形態の溝が複数設けられている。
ステーは、これら溝の何れかにシートバック側の係合部材を係合させることで差込み方向に位置決めされる。即ち枕部が調節した高さに固定される。
【0005】
従来、ヘッドレストのステーとして中実構造の丸棒材が用いられ、この丸棒材に対し切削加工を施すことで、上記のステーの溝が成形加工されていた。
近年、軽量化の要請からかかるステーとして中空円筒状の金属パイプ材が用いられるようになって来ており、この場合、従来と同様に切削加工によって溝を加工すると、その切削によって残った部分が薄肉となり、強度上問題を生ずる。
そこで切削加工によらないで、金属の塑性加工によって溝を加工する方法が、従来各種提案されている。
【0006】
図13はその一例を示している。
この加工方法は、ステー200を固定状態に保持した状態で、テーパ部202a,202b及びこれに続くストレート部202cを備えた刃部202を有する工具204を、ステー200を横切るように中心線Pと平行方向に移動させて、テーパ部202aの側から刃部202をステー200に押し込み、ステー200を塑性変形させて図13(ロ)の溝206を成形加工する。
尚、この種の加工方法は下記特許文献1にも開示されている。
【0007】
しかしながら、ヘッドレストは乗員の安全を守ることを目的としたもので、その支持部材としてのステー200には高張力鋼(ハイテン)等の高強度の金属パイプ材が用いられており、そのためにこの加工方法にて溝206を加工したとき、図13(ロ)に示しているように溝206の縁部が変形を生じて、そこにダレKを生じてしまう。このダレKの存在は、溝206とシートバック側の係合部材との係合力を弱めて、シートバックに対するステー200の差込方向の固定強度を弱くしてしまう。
【0008】
他の加工方法として、図14(イ)に示しているようにステー200の内部に芯金207を挿入した状態で、プレス型208と210とで、ステー200を軸直角方向に挟み込んで押圧し、プレス型208に設けた突型212,212,214にて溝216A,216B,216Cを加工する方法も提案されている。
例えば下記特許文献2に、この種の加工方法が開示されている。
尚、溝216A,216Bは軸方向の一方の側に斜面を備えた高さ調節用の溝で、216Cはそのような斜面を備えていない高さ調節及び抜止用の溝である。
【0009】
しかしながらこの軸直角方向のプレス加工による溝加工方法の場合、金属パイプ材に対して強い剪断力が加わることから、図14(ロ)に示しているように(図14(ロ)は溝形成部分の断面の顕微鏡写真を示している)、金属パイプ材の溝底部のコーナー部下側周辺に局部的に大きなストレスがかかって、そのストレスが加工後も残ってしまう(図中黒っぽい部分がストレスの強くかかった部分で、この黒っぽい部分は溝加工時にストレスが強くかかることで金属組織が非常に細かくなり、写真撮影前のエッチング処理でのエッチングのされかたが他部と異なって黒っぽく表れたものである)。
そのために、この加工方法で溝216A,216B,216Cを加工したステー200は、衝撃試験を行ったときの耐衝撃強度が弱くなってしまう。
更にこの加工方法の場合、ステー206の内部に挿入した芯金207の位置が少しでもずれてしまうと、溝の形状が目標とする形状と異なってしまうといった問題も有する。
【0010】
図15(イ)は、他の加工方法として特許文献3に開示された方法を示している。
この加工方法は、ステー200を固定状態に保持した状態で、軸218周りに回転可能なパンチローラ220を図中下向き即ち、ステー200を横切るように中心線Pと平行方向に移動させ、そしてパンチローラ220をステー200に押し込んで、塑性加工によりステー200に溝を加工するものである。
【0011】
しかしながらこの加工方法の場合、ステー200に対してこれを図中下向き、即ち中心線Pと平行方向に押す力が働くことから、溝の末端(加工方向の末端)でステー200の円形の外周面から外部に突出した変形部(バリ)が生じてしまう問題がある。
このような問題は、下記特許文献4においても具体的に指摘されている。図15(ロ)は下記特許文献4においてこの問題を具体的に示した図で、図中Xは溝216の加工時に生じたバリを表している。
【0012】
上記バリXは、ステー200の外周面から突出しているため、このようなバリXが残ったままであると、ステー200をシートバックの差込孔に差し込むことができなくなってしまう。
従ってこのバリXは、バフ掛け加工するなどの仕上加工により除去しておかなければならない。この場合、バリX除去のための加工工程が余分に必要となり、加工コストを押し上げてしまう。
【0013】
他の加工方法として、下記特許文献5には図16に示しているように複数のパンチローラ220-1,220-2,220-3,220-4を上下の軸線Qに沿って一列に並ぶように配置して、これらをホルダ222に軸218周りに回転可能に組付け、ホルダ222をプレス機により図中下向きに下降移動させて、固定状態に保持したステー200に対し、各パンチローラ220-1,220-2,220-3,220-4にて溝を順次加工する方法が開示されている。
【0014】
ここで複数のパンチローラは図中下から上に向ってその外径が順次大きく、即ちパンチローラ220-1から220-4に向って図中左方への突出量が大きくなる形状とされていて、ステー200に対する干渉量(押込量)が段階的に多くなるようにしてある。
従ってホルダ222を下向きに後退端から前進端まで下降させると、ステー200に近いパンチローラ220-1から段階的にステー200に対し溝加工が施されていき、最終的に所望の形状の溝を成形加工することができる。
【0015】
この図16に示す加工方法の場合、一つのパンチローラで一挙に溝を加工するものではなく、パンチローラ220-1から220-4にかけて複数で少しづつ加工を進めていくものであることから、パンチローラ1つづつの加工量を少なくすることができる。
従ってこの加工方法によれば、上記のバリXの発生をある程度抑制することができる。
【0016】
しかしながらこの図16に示す加工方法においても、複数のパンチローラ220-1〜220-4が何れもステー200に対し、これを横切るように図15(イ)の中心線Pと平行方向に移動して、ステー200に対し各パンチローラ220-1〜220-4が中心線Pと平行方向に加工の力を加えることから、バリXの発生の問題が依然として残り、従って後においてバリXを除去するためのバフ掛け工程等の仕上工程が必要となる問題がある。
【0017】
またこの図16に示す加工方法の場合、各パンチローラ220-1〜220-4は中心部の軸218で保持されて、その周りに回転しつつ加工を行うものであることから、加工に際して外周部が軸218における軸方向、つまり紙面と直角方向に不規則に変動する、いわゆるブレを起す問題があり、而してそのようなブレが生じると、そのことがステー200に対する溝の加工精度に悪影響を及ぼしてしまう。
【0018】
その他に、図16に示す加工方法の場合、独立した部品としての多くのパンチローラ220を必要とし、その製作コストが高くなるとともに、これら多くのパンチローラ220を高い組付精度でホルダ222に組み付けなければならず、組付けのための工数が必要であるとともに、その組付けによるコストの増大の問題もあり、全体として加工装置に要するコストが高くなってしまう。
【0019】
またプレス機のストローク制限によって、1列に配列可能なパンチローラの数も制限され、従って1つ1つのパンチローラによるステー200に対する加工量も、必然的にある程度以上に多くならざるを得ず、このこともまたバリXの発生に対して不利に働いてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】特開2003−71522号公報
【特許文献2】特開2005−88009号公報
【特許文献3】特開2002−210519号公報
【特許文献4】特開2002−361331号公報
【特許文献5】特開2004−291085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明は以上のような事情を背景とし、加工装置に必要な部品のコストが安価であって、ステーに対する溝加工のコストを低減でき、またステーの溝加工をバリを発生させることなく高精度で綺麗に行うことができるステー(ヘッドレストステー)の溝加工方法を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
而して請求項1のものは、ヘッドレストにおける中空円筒状の金属パイプ材からなるヘッドレストステーの、シートバックへの挿入部分に周方向に部分的に溝を加工するヘッドレストステーの溝加工方法であって、前記ヘッドレストステーを間に挟み込んで互いに逆向きに相対移動する第1加工型と第2加工型とを設け、
それら第1加工型及び第2加工型の少なくとも一方の該ヘッドレストステーと接触する側の面に、前記溝の加工用の複数の突型を前記相対移動方向に沿って所定間隔をおいて且つ突出高さが段階的に高くなる形状で設けておき、前記ヘッドレストステーを前記第1加工型及び第2加工型に対して滑り無く転動運動させつつ、それら第1加工型及び第2加工型を前記逆向きに相対移動させて、前記複数の突型を該ヘッドレストステーに近いものから順に該ヘッドレストステーに押し込んで前記溝を段階的に成形し加工して行くことを特徴とする。
【0023】
請求項2のものは、請求項1において、前記第1加工型と第2加工型との他方にも、前記ヘッドレストステーと接触する側の面に、前記溝の加工用の複数の突型を前記相対移動方向に沿って所定間隔をおいて且つ突出高さが段階的に高くなる形状で設けておき、前記第1加工型の突型と前記第2加工型の突型とを交互に且つ前記ヘッドレストステーに近いものから順に該ヘッドレストステーに押し込んで前記溝を段階的に成形し加工して行くことを特徴とする。
【0024】
請求項3のものは、請求項1,2の何れかにおいて、前記第1加工型と第2加工型とのそれぞれの前記ヘッドレストステーと接触する側の面に、ショットブラスト処理を施して成る粗面状の、該ヘッドレストステーの外周面をグリップするためのグリップ部を前記相対移動方向に沿って連続して形成しておくことを特徴とする。
【0025】
請求項4のものは、請求項1〜3の何れかにおいて、前記ヘッドレストステーの溝の溝底面が、該ヘッドレストステーの横断面の中心を通って軸直角方向に延びる、該横断面の中心線と平行方向のストレート形状をなしており、前記突型が該溝底面のストレート形状に対応した、前記相対移動方向の両端部位から中央の最大突出部位にかけて連続して突出量を増す凸曲面形状と成してあることを特徴とする。
【0026】
請求項5のものは、請求項4において、前記溝が、前記ストレート形状の溝底面に続く軸方向の一方の溝側面が、該軸方向に傾斜した斜面をなしており、前記突型が該溝底面の成形部に続いて該斜面を成形するための成形部を有していることを特徴とする。
【0027】
請求項6のものは、請求項4において、前記溝が、前記ストレート形状の溝底面に続く軸方向両側の溝側面が軸直角方向に起立した面をなしており、前記突型が該溝底面の成形部の軸方向両側の面が、該溝側面に対応して軸直角方向に起立した面となしてあることを特徴とする。
【0028】
請求項7のものは、請求項1〜6の何れかにおいて、前記ヘッドレストステーには軸方向に間隔を隔てて前記溝が複数設けてあり、前記第1加工型及び第2加工型の少なくとも一方には、該複数の溝に対応して、前記第1加工型及び第2加工型の相対移動方向に並ぶ突型が該移動方向と直角方向に複数列に設けてあることを特徴とする。
【発明の作用・効果】
【0029】
以上のように本発明の加工方法は、ステー(ヘッドレストステー)を間に挟み込んで互いに逆向きに相対移動する第1加工型と第2加工型とを設けて、その少なくとも一方に、溝の加工用の複数の突型を相対移動方向に沿って所定間隔をおいて且つ突出高さが段階的に高くなる形状で設けておき、ステーをそれら第1加工型及び第2加工型に対し滑りなく転動運動させつつ、第1加工型及び第2加工型を逆向きに相対移動させて、上記複数の突型をステーに近いものから順にステーに押し込んで、上記溝を段階的に加工し、最終的に所望の形状の溝をステーに形成するものである。
【0030】
かかる本発明の加工方法は、ステーを第1及び第2加工型に対し滑りなく転動運動させながら、上記複数の突型にて溝を段階的に深く加工していくもの、即ちステーの転動運動を利用して溝を転造加工するものであり、第1及び第2加工型は、ステーの外周面に対し移動方向に滑り即ち摺動運動を生じない。
【0031】
第1及び第2加工型の少なくとも一方に設けられた複数の突型は、それらの何れもがステーに対し、その外周面を周方向に滑りを伴って摺動運動せず、各々がステーの求心方向に押し込まれて溝を段階的に深く加工していく。
【0032】
このため、本発明の加工方法によれば溝の加工に際して、図15(ロ)に示すようなバリXを生成させず、従ってその後においてバリXの除去のための仕上加工を省略し得て、溝の加工を少ない工数で簡単に行えるようになる。
【0033】
また本発明の加工方法によれば、1つの加工型にその移動方向に沿って数多くの突型を設けておくことが可能であり、その結果、1つ1つの突型によるステーに対する加工量を少なくし得て、即ち各突型のそれぞれによるステーの変形量を少なくでき、ステーにおける変形を円滑に生ぜしめることができる。
【0034】
従って本発明の加工方法によれば、図13(ロ)に示すようなダレKを溝の縁部に殆んど生ぜしめずに溝を目的とする形状にシャープに成形し、加工することができるし、また各突型毎に僅かづつステーに対し加工を施して行くため、図14に示す加工方法のように一挙に溝の全体をプレス加工する場合と異なって、ステーの溝底部のコーナー部周辺に大きなストレスを発生させてしまうといったこともなく、衝撃試験を行ったときの耐衝撃強度も高強度となすことができる。
【0035】
また図16の加工方法では、加工のために多くのパンチローラが必要となるが、本発明の加工方法では第1と第2の加工型を要するのみで、加工型に要するコストも低廉である。
【0036】
本発明では第1加工型と第2加工型との他方にも、溝の加工用の複数の突型を設けておき、第1加工型の突型と第2加工型の突型とを交互に且つステーに近いものから順にステーに押し込んで、溝を段階的に深く成形していくようになすことができる(請求項2)。
【0037】
この請求項2によれば、1つの溝の加工のための突型の数をより一層多くすること、例えば一方の型に突型を設けておくだけの場合に較べて、全体の突型の数を例えば2倍に多くすることができ、従ってステーに対する1つの突型による加工量をよりいっそう少なくすること、即ちステーの変形量をより一層少なくすることができ、溝の加工を無理なく且つ加工部に発生する歪を可及的に少なくしつつ、溝の加工をより一層良好に行うことが可能となる。
【0038】
また全体の突型の数を、一方の加工型にだけ突型部を設けた場合と同じ数とする場合には、第1加工型及び第2加工型の所要の移動ストロークを例えば半分に少なくすることができ、加工型を移動させるためのスペースを省スペース化することができる。
【0039】
本発明では、第1加工型と第2加工型のそれぞれに、詳しくはステーと接触する側の面に、ショットブラスト処理を施して成る粗面状の、ヘッドレストステーの外周面をグリップするためのグリップ部を、第1加工型及び第2加工型の相対移動方向に沿って連続して形成しておくことができる(請求項3)。
【0040】
このように第1加工型,第2加工型にグリップ部を設けて、それらグリップ部にてステーの外周面をグリップすることで、ステーを転動運動させながら第1及び第2の加工型を相対移動させる際に、それら加工型とステートの間の滑りをより確実に防ぐことができる。
またこれにより、複数の突型のそれぞれを、より正確にステーの溝の加工部に精度高く位置決めし、押し込むようになすことができる。
【0041】
本発明は、ステーの溝の溝底面が、ステーの横断面の中心を通って軸直角方向に延びる、横断面の中心線と平行方向のストレート形状をなしている場合において、上記突型を、溝底面のストレート形状に対応した、相対移動方向の両端部位から中央の最大突出部位にかけて連続して突出量を増す凸曲面形状となしておくことができる(請求項4)。
【0042】
突型をこのような形状としておくことで、溝底面がストレート形状をなすステーの溝を転造加工によって良好に加工することができる。
この場合において、ストレート形状の溝底面に続く軸方向の一方の溝側面が斜面をなしている場合において、上記突型には溝底面の成形部に続いて斜面成形のための成形部を備えておくことができる(請求項5)。
【0043】
或いはステーの溝が、ストレート形状の溝底面に続く軸方向両側の溝側面が軸直角方向に起立した面を成しているものである場合において、突型における溝底面の成形部の軸方向両側の面を、溝側面に対応して軸直角方向に起立した面となしておくことができる(請求項6)。
突型をこのような形状となしておくことで、ステーに設けられる抜け防止用の溝を良好に加工することができる。
【0044】
また本発明では、第1加工型及び第2加工型の少なくとも一方に、ステーに備えられる軸方向の複数の溝に対応して、第1加工型及び第2加工型の相対移動方向に並ぶ突型を、その移動方向と直角方向に複数列に設けておくことができる(請求項7)。
このようにすれば、第1加工型及び第2加工型の一ストロークの移動によって、ステーの軸方向に間隔を隔てた複数の溝を同時に加工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の適用対象のヘッドレストステーの一例をヘッドレストとともに示した図である。
【図2】図1のヘッドレストにおける溝部と周辺部を示した図である。
【図3】同実施形態で用いる加工ダイスを、ステーをセットした状態で示した図である。
【図4】同実施形態で用いる加工ダイスの平面図である。
【図5】図4の加工ダイスの加工部側の正面図である。
【図6】図4の加工ダイスの要部断面図である。
【図7】同実施形態の溝加工方法の説明図である。
【図8】同実施形態における溝加工方法の要部工程の説明図である。
【図9】同実施形態における溝加工方法の更に要部の工程の説明図である。
【図10】同実施形態の溝加工方法における溝形状の変化を示した図である。
【図11】同実施形態の溝加工方法の一工程の要部拡大断面図である。
【図12】同実施形態の溝加工方法にて成形された溝部と周辺部の断面写真である。
【図13】従来のステーの溝加工方法の一例を示した図である。
【図14】図13とは異なる従来の溝加工方法を示した図である。
【図15】更に他の従来の溝加工方法を示した図である。
【図16】更に他の従来の溝加工方法を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
次に本発明の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1において、10は車両のシートバックの上端に差込式に取り付けられるヘッドレストで、クッション材から成る枕部12と、支持部材としての金属製のステー14とを有している。
ここでステー14は、中空円筒形状の金属パイプ材から成っている。
ステー14は、枕部12への埋込部16(図1(B)参照)と、枕部12から突き出した一対の脚部18-1,18-2を有している。
ヘッドレスト10は、これら脚部18-1,18-2をシートバックの差込孔に差し込むことで、シートバックに脱着可能に取り付けられる。
【0047】
一方の脚部18-1には、図2にも示しているように軸方向に間隔を隔てて3つの溝20A,20B,20Cが備えられている。
溝20A,20Bはヘッドレスト10の高さ調節用の溝で、20Cは高さ調節及び抜止用の溝である。
溝20A,20Bは、図2に示しているように一方の溝側面22が軸方向に傾斜した斜面をなしており、また他方の溝側面24は軸直角方向に起立した面をなしている。
更に溝底面26は、ステー14の横断面におけるステー中心Oを通る軸直角方向の中心線P(図2(A)参照)と平行に延びるストレート形状の面をなしている。
溝20Cにおいても、溝底面26は同様に中心線Pと平行方向に延びるストレート形状の面をなしている。但し溝20Cでは、一対の溝側面24がともに軸直角方向に起立する面をなしている。
【0048】
次に、ステー14の上記の溝20A,20B,20Cの加工方法を図3〜図11に基づいて以下に説明する。
尚、溝20A〜20Cの加工は曲げの無い直管状態の金属パイプ材に対して行い、そして溝加工後においてこれを図1(B)に示すようにコ字形状に曲げ加工してステー14とする。
【0049】
この実施形態では、図3に示しているように平ダイスから成る可動ダイス(第1加工型)28及び固定ダイス(第2加工型)30を用いて、それらによりステー14(厳密には曲げ加工する前の直管状のパイプ材であるが、ここではステーとして以下説明して行く)を挟み込み、その状態でステー14を可動ダイス28及び固定ダイス30に対して滑りなく転動させながら、可動ダイス28を図3中左方向に移動させ、ステー14に対して溝を加工して行く。
【0050】
図4及び図5に示しているように(図4は固定ダイス30を図3の本来の配置の向きとは左右逆向きにして表している。また図5は固定ダイス30を図4の状態での平面視で表している)、固定ダイス30のステー14と接触する側の加工面34には、溝20A,20B,20Cを加工するための突型列36A,36B,38Cがそれぞれ図中左右方向、即ち可動ダイス28に対する相対移動方向に横一列をなすように設けられている。
同様に可動ダイス28のステー14と接触する側の加工面32にも、溝20A,20B,20Cを加工するための突型列36A,36B,38Cがそれぞれ可動ダイス28の移動方向に横一列をなすように設けられている。
【0051】
尚、これら可動ダイス28及び固定ダイス30の、上記突型列36A,36B,38Cの図中上下両側には、加工面32,34をショットブラスト処理することによって形成した粗面状のグリップ部40が図中左右方向、即ち可動ダイス28,固定ダイス30の相対移動方向に沿って連続して形成されている。
【0052】
これらグリップ部40は、その粗面によってステー14の外周面を互いに挟むようにグリップする部分であって、これらグリップ部40によるステー14のグリップ作用によって、ステー14は可動ダイス28及び固定ダイス30の各加工面32,34に対して摩擦力で滑りなく良好に転動運動する。
【0053】
この実施形態において、グリップ部40の面粗度は、その粗さが粗過ぎるとグリップ部40の凹凸がステー14の外周面に転写されてしまい、また逆に凹凸が小さ過ぎるとグリップ力が不足する。
そのため、ショットブラストに使用する粒(#40〜#80)の大きさを適宜変更することによって、好ましいグリップ力となるようにグリップ部40の表面を加工する。
【0054】
固定ダイス30の突型列36Aは、図中左側から右に並んだ突型36-1,36-3,36-5,36-7,36-9,36-11,36-13,36-15から成っており、また一方、可動ダイス28の突型列36Aは、図中左から右に向って並んだ突型36-2,36-4,36-6,36-8,36-10,36-12,36-14,36-16から成っている。
【0055】
即ちこの例では、固定ダイス30の側における突型列36Aが合計8個の突型を有しており、また可動ダイス28側の突型列36Aも同様に合計8個の突型を有している。
つまり溝20Aを加工するための突型として、ここでは固定ダイス30及び可動ダイス28を含めて、全体として16個の突型を有している。
【0056】
ここで固定ダイス30の側の突型列36Aにおいて、各突型36-1〜36-15は、それぞれ隣接する突型間の間隔が、ステー14の1回転分の周長と等しくされている。
同様に可動ダイス28の側における突型列36Aの各突型36-2〜36-16もまた、隣合う突型間の間隔が、ステー14の1回転分の周長と等しい間隔とされている。
【0057】
そして固定ダイス30及び可動ダイス28は、それぞれの突型列36Aにおける各突型を、ステー14に対し半周回転ごとに交互にステー14に押し付けて、溝20Aの加工を段階的に、ここでは16段階で少しずつ加工実施して行く。そして最後の突型36-16によって、溝20Aを最終の所望形状に加工完了する。
【0058】
溝20Bを加工するための固定ダイス30側の突型列36Bも、固定ダイス30の突型列36Aと同様で、図中左から右に向って突型36-1,36-3,36-5,36-7,36-9,36-11,36-13,36-15が横一列に並んでいる。その並びのピッチは固定ダイス30における突型列36Aと基本的に同様である。
【0059】
可動ダイス28側における突型列36Bもまた、同可動ダイス28側の突型列36Aと同様に、図中左から右に向って突型36-2,36-4,36-6,36-8,36-10,36-12,36-14,36-16が横一列に並んでおり、その並びのピッチも、可動ダイス28の側における突型列36Aと同様である。
更に突型列36Bにおける突型36-1〜36-16は、突型列36Aにおける突型36-1〜36-16と同形状をなしている。詳しくは、符号の同じものについては何れも各突型が同形状をなしている。
【0060】
固定ダイス30及び可動ダイス28における突型列38Cは、溝20Cを加工するためのもので、固定ダイス30側の突型列38Cは、図中左から右に向けて突型38-1,38-3,38-5,38-7,38-9,38-11,38-13,38-15が横一列に並んで設けられている。
【0061】
この固定ダイス30の突型列38Cにおける各突型38-1〜38-15もまた、隣接する突型間の間隔が、ステー14の1回転分の周長と等しくされており、且つ各突型38-1〜38-15は、突型列36A及び36Bの各突型と図中上下方向、即ち縦に一列をなすように配置されている。
【0062】
可動ダイス28側における突型列38Cも同様で、図中左から右に向けて突型38-2,38-4,38-6,38-8,38-10,38-12,38-14,38-16が一列に並んでいる。
その左右方向の間隔もまた、突型列36A,36Bにおける隣同士の突型と同じ間隔、即ちステー14の1回転分の周長と等しい間隔とされている。
【0063】
この突型列38Cもまた、固定ダイス30及び可動ダイス28全体で合計16個の突型から成っており、それら合計16個の突型にて、ステー14に対し段階的に且つ固定ダイス30と可動ダイス28との突型にて交互に溝20Cを加工して行く。そして最終の突型38-16によって、溝20Cを最終の所望形状に加工完了する。
【0064】
突型列36A,36Bにおける各突型36は、図5(B)の拡大図及び図6に示しているように、ストレート形状をなす溝底面26を成形する成形部42と、斜面をなす一方の溝側面22を成形するための成形部44とを有している。
尚成形部42の、成形部44とは反対側の面は、溝20A,20Bにおける軸直角方向に起立した溝側面24に対応して、加工面32,34から直角に起立した面をなしている。
【0065】
一方、溝20Cを成形するための突型列38Cにおける各突型38は、溝成形部42の図中上下両側の面が、溝20Cにおける軸直角方向に起立した一対の溝側面24に対応して、加工面32,34から直角に起立した面をなしている。
【0066】
図6(B)に示しているように、突型列36A,36Bにおける各突型36、及び突型列38Cの各突型38は、溝20A,20B,20Cにおける各溝底面26のストレート形状に対応して、側面視形状が円弧形状をなしている。厳密には、図6(B)中左右の両端から中央の最大突出部位にかけて、突出高さが連続的に漸増する略円弧形状をなしている。
【0067】
但しそのサイズ(大きさ)は、突型36-1,38-1〜36-16,38-16にかけて1段階ごとに大きくなっている。
具体的にはここでは突型36,38の突出高さが36-1,38-1〜36-16,38-16にかけて1段階ごとに高くなっており、更に図中左右方向の幅も突型36-1,38-1〜36-16,38-16にかけて1段階ごとに大きくなっている。
【0068】
この実施形態では、図7に示しているように固定ダイス30の図中右端部と可動ダイス28の図中左端部とでステー14を挟み込み、そして可動ダイス28を図中左方向に移動させることで、溝20A,20B,20Cを突型列36A,36B,38Cの各突型36,38にて段階的に加工して行く。
【0069】
そのためにここでは突型列36A,36B,38Cともに、各突型の成形部42が突出高さ,幅ともに突型36-1,38-1〜36-16,38-16にかけて少しづつ段階的に大きくされている。
また突型列36A,36Bについては、溝側面22の斜面成形のための成形部44が、突型36-1〜36-16にかけて少しづつ大形状化している。
【0070】
但しこの実施形態の加工方法は、多数の突型によって少しづつ溝加工を施して行き、最終の突型によって溝を目標とする所望形状とするものであり、その目的を達成し得る限り、各突型の形状を上記とは異なった様々な変化をなすように形状設定しておくことが可能である。
【0071】
図8(I)は、固定ダイス30側の最初の突型36-1がステー14に到達する直前、即ち最初の突型36-1によって第1段目の溝加工をステー14に施す直前の状態を表している。
この状態で、可動ダイス28が固定ダイス30に対して図中左向きに移動すると、これに連れてステー14が、その外周面を可動ダイス28と固定ダイス30によってグリップされながら且つステー外周面を可動ダイス28及び固定ダイス30に対し滑りなく転動させながら、可動ダイス28の移動距離の半分の距離で図中左向きに移動し、そして固定ダイス30側の最初の突型36-1がステー14を通過したところで、ステー14に対し第1段目の溝加工が行われる。
【0072】
図9は、このときの突型36-1による加工の様子を模式的に表している。
図9(I)に示しているように、突型36-1は先ず図中右側の部分がステー14に食い込んで、ステー14を部分的に塑性変形させ、更に突型36-1が図中右方向に相対的に移動することで、ステー14に対する食込み(押込み)量を少しづつ増大して行き、そして突型36-1がステー14を通過し終わったところで、ステー14にストレート形状の溝底面を有する第1段目の溝の加工が終了する(図9(II)〜(V)参照)。
尚、図9に示しているように突型36-1は、ステー14を滑りなく転動運動させながらステー14の一部を求心方向に押し込み、これを部分的に塑性変形させて第1段目の溝の加工を実行する。
【0073】
その後、図8(III),(IV)に示しているように今度は可動ダイス28側の最初の突型36-2が、突型36-1によって既に加工された部分に到達して第2段目の溝の加工を実行する。
【0074】
以後、可動ダイス28の引続く図中左向きの移動に伴って、ステー14を滑りなく転動運動させつつ、ステー14の半周回転ごとに固定ダイス30側の突型36-3,可動ダイス28側の突型36-4と順次に、且つ固定ダイス30側の突型と可動ダイス28側の突型とが交互にステー14に対し1段ごとに溝の加工を進めて行き、そして最終の突型36-16がステー14を通過し終わった段階で、溝20A,20Bが最終の所望形状に加工完了する。
尚、溝20Cに対する突型38による溝の加工についても上記と同様にして行われる。
【0075】
図10(A)は、最初の突型38-1によってステー14に溝20Cの第1段目の加工を行った状態を、また図10(B)は、最後の突型38-16によってステー14に対する溝20Cの加工を完了した状態を示している。
尚溝20A,20Bに対する突型36による加工についても、斜面の有無を除いて基本的に同様である。
【0076】
即ち、図11に示しているように溝20Cについては、突型38における加工面32,34から垂直に起立した面によって、一対の溝側面24が成形され、また(B)に示しているように溝20A,20Bについては、突型36における成形部44によって、溝側面22の斜面が成形され、また溝側面24の軸直角方向に起立した面が、突型36における加工面32,34から直角に起立した面によって成形される。
他の点については、溝20A,20B及び20Cともにその成形の段階は基本的に同様である。
【0077】
以上のように、本実施形態の加工方法はステー14を可動ダイス28,固定ダイス30に対して滑りなく転動運動させながら、複数の突型36,38にて溝20Aと20B及び20Cを段階的に深く成形加工して行くもの、即ちステー14の転動運動を利用して溝20A,20B,20Cを転造加工するものであり、その際に各突型36,38はステー14をその求心方向に押し込んで溝20A〜20Cの成形加工を行って行く。
【0078】
従って本実施形態の加工方法によれば、溝20A〜20Cの加工に際して図15(ロ)に示すバリXを生成させず、それ故その後においてバリXの除去のための仕上加工を省略し得て、溝20A〜20Cの加工を少ない工数で簡単に行うことができる。
【0079】
またこの実施形態によれば、可動ダイス28,固定ダイス30に、それらの相対移動方向に沿って数多くの突型36,38を設けておくことができ、その結果、1つ1つの突型36,38のステー14に対する加工量を少なくし得て、即ち各突型36,38ごとにステー14の変形量を少なくし得て、変形を円滑に生ぜしめることができる。
【0080】
従ってこの実施形態の加工方法によれば、図13(ロ)に示すようなダレKを溝20A〜20Cの縁部に生ぜしめずに或いは可及的に少なくしつつ、溝加工を良好に行うことができる。
また各突型36,38ごとに僅かづつステー14に対し加工を施して行くため、図14に示す加工方向のように一挙に溝20A〜20Cの全体をプレス加工する場合と異なって、溝底部のコーナー部周辺に大きなストレスを発生させてしまうといったこともない。
【0081】
因みに図12は、本実施形態の方法で加工した溝20Cと周辺部の顕微鏡写真を示したもので、この図に示しているように本実施形態の加工方法によれば、溝部のコーナー部下周辺に大きなストレスを生ぜしめない(図14(ロ)のものと比べて溝底部のコーナー部下周辺が特に黒っぽくなっていない)。
【0082】
従ってこの実施形態の加工方法で溝20A〜20Cを加工したステー14は、耐衝撃強度を高強度となすことができる。
更にこの実施形態の加工方法では、可動ダイス28と固定ダイス30とを要するのみで、溝成形のための加工型に要するコストも低廉である。
【0083】
この実施形態ではまた、可動ダイス28と固定ダイス30との両方に、溝20A〜20Cの加工のための突型36,38を設けて、可動ダイス28側の突型36,38と、固定ダイス30側の突型36,38とを、ステー14に近いものから交互に且つ順にステー14に押し込んで、溝20A〜20Cを段階的に深く成形するため、1つの溝20A又は20B又は20Cの成形加工のための突型の数を、何れか一方にだけ突型を設けた場合に比べて多くすることができ、従って1つの突型によるステー14の加工量を、固定ダイス30,可動ダイス28の一方にのみ突型を設けた場合に比べて、より一層少なくすることができ、1つ1つの突型36,38によるステー14の変形量を可及的に少なくし得て、溝20A〜20Cの加工を無理なく且つステー14の加工部に発生する歪みを可及的に少なくしつつ、溝20A〜20Cの加工を良好且つ精密に行うことが可能となる。
【0084】
また可動ダイス28,固定ダイス30全体の突型の数を、一方のダイスだけに突型を設けた場合と同じ数とした場合には、可動ダイス28の所要ストロークを半分に少なくすることができ、可動ダイス28を移動させるためのスペースを省スペース化することができる。
【0085】
更にこの実施形態では、可動ダイス28,固定ダイス30の加工面にショットブラスト処理を施して成る粗面状のグリップ部40が設けてあるため、それらグリップ部40にてステー14をグリップすることで、可動ダイス28,固定ダイス30とステー14との間の滑りをより確実に無くすことができる。
そしてそのことにより、複数の突型36,38のそれぞれを、可動ダイス28の移動に伴って正確にステー14の溝を加工すべき部分に精度高く位置させ、押し込むようになすことができる。
【0086】
また本実施形態では突型36,38を可動ダイス28,固定ダイス30に複数列に設けているため、ステー14における溝20A,20B,20Cを、可動ダイス28の1ストロークの移動によって一挙に同時に加工することができる。
【0087】
以上本発明の実施形態を詳述したがこれはあくまで一例示である。
例えば上記実施形態では可動ダイス28のみを移動させるようにしているが、場合によって一対のダイスをともに逆方向に移動させて、溝の加工を行うようになすといったことも可能である。
更に本発明は突型をステーに対して横切るように移動させるものではなく、突型をステーの外周面とともに滑りなく移動させながらステーの求心方向に内部に押し込み、溝を加工するものであることから、突型の形状を種々変えることによって、上例とは異なった様々な形状の溝をステーに加工するといったことが可能である。その際に溝の深さを特に深くしなくても、溝をステーの周方向により長く加工するといったことも可能である等、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた態様で実施可能である。
【符号の説明】
【0088】
10 ヘッドレスト
14 ステー
20A,20B,20C 溝
22,24 溝側面
26 溝底面
28 可動ダイス(第1加工型)
30 固定ダイス(第2加工型)
36,36-1〜36-16,38,38-1〜38-16 突型
36A,36B,38C 突型列
40 グリップ部
42,44 成形部
【技術分野】
【0001】
この発明は車両のシートバックの上端に取り付けられるヘッドレストのステー(ヘッドレストステー)の溝の加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のシートバックの上端に取り付けられるヘッドレストは、乗員の頭部をサポートして頭部を楽にしたり、追突時に乗員がのけぞって首を傷めないようにする等の目的で設けられているもので、シートバックと一体になっているものと、シートバックに対して脱着可能な差込式のものとがある。
【0003】
後者の差込式のものは、クッション材から成る枕部と支持部材となる金属製のヘッドレストステー(以下単にステーとする)とを有している。
ステーは枕部から2本の脚部を突き出しており、ヘッドレストはこの脚部をシートバックの差込孔に差し込むことで、シートバックに取り付けられる。
【0004】
通常このヘッドレストは高さ調節可能とされており、ステーの脚部には、その高さ調節のために軸方向に間隔を隔ててステーの軸直角方向に延びる形態の溝が複数設けられている。
ステーは、これら溝の何れかにシートバック側の係合部材を係合させることで差込み方向に位置決めされる。即ち枕部が調節した高さに固定される。
【0005】
従来、ヘッドレストのステーとして中実構造の丸棒材が用いられ、この丸棒材に対し切削加工を施すことで、上記のステーの溝が成形加工されていた。
近年、軽量化の要請からかかるステーとして中空円筒状の金属パイプ材が用いられるようになって来ており、この場合、従来と同様に切削加工によって溝を加工すると、その切削によって残った部分が薄肉となり、強度上問題を生ずる。
そこで切削加工によらないで、金属の塑性加工によって溝を加工する方法が、従来各種提案されている。
【0006】
図13はその一例を示している。
この加工方法は、ステー200を固定状態に保持した状態で、テーパ部202a,202b及びこれに続くストレート部202cを備えた刃部202を有する工具204を、ステー200を横切るように中心線Pと平行方向に移動させて、テーパ部202aの側から刃部202をステー200に押し込み、ステー200を塑性変形させて図13(ロ)の溝206を成形加工する。
尚、この種の加工方法は下記特許文献1にも開示されている。
【0007】
しかしながら、ヘッドレストは乗員の安全を守ることを目的としたもので、その支持部材としてのステー200には高張力鋼(ハイテン)等の高強度の金属パイプ材が用いられており、そのためにこの加工方法にて溝206を加工したとき、図13(ロ)に示しているように溝206の縁部が変形を生じて、そこにダレKを生じてしまう。このダレKの存在は、溝206とシートバック側の係合部材との係合力を弱めて、シートバックに対するステー200の差込方向の固定強度を弱くしてしまう。
【0008】
他の加工方法として、図14(イ)に示しているようにステー200の内部に芯金207を挿入した状態で、プレス型208と210とで、ステー200を軸直角方向に挟み込んで押圧し、プレス型208に設けた突型212,212,214にて溝216A,216B,216Cを加工する方法も提案されている。
例えば下記特許文献2に、この種の加工方法が開示されている。
尚、溝216A,216Bは軸方向の一方の側に斜面を備えた高さ調節用の溝で、216Cはそのような斜面を備えていない高さ調節及び抜止用の溝である。
【0009】
しかしながらこの軸直角方向のプレス加工による溝加工方法の場合、金属パイプ材に対して強い剪断力が加わることから、図14(ロ)に示しているように(図14(ロ)は溝形成部分の断面の顕微鏡写真を示している)、金属パイプ材の溝底部のコーナー部下側周辺に局部的に大きなストレスがかかって、そのストレスが加工後も残ってしまう(図中黒っぽい部分がストレスの強くかかった部分で、この黒っぽい部分は溝加工時にストレスが強くかかることで金属組織が非常に細かくなり、写真撮影前のエッチング処理でのエッチングのされかたが他部と異なって黒っぽく表れたものである)。
そのために、この加工方法で溝216A,216B,216Cを加工したステー200は、衝撃試験を行ったときの耐衝撃強度が弱くなってしまう。
更にこの加工方法の場合、ステー206の内部に挿入した芯金207の位置が少しでもずれてしまうと、溝の形状が目標とする形状と異なってしまうといった問題も有する。
【0010】
図15(イ)は、他の加工方法として特許文献3に開示された方法を示している。
この加工方法は、ステー200を固定状態に保持した状態で、軸218周りに回転可能なパンチローラ220を図中下向き即ち、ステー200を横切るように中心線Pと平行方向に移動させ、そしてパンチローラ220をステー200に押し込んで、塑性加工によりステー200に溝を加工するものである。
【0011】
しかしながらこの加工方法の場合、ステー200に対してこれを図中下向き、即ち中心線Pと平行方向に押す力が働くことから、溝の末端(加工方向の末端)でステー200の円形の外周面から外部に突出した変形部(バリ)が生じてしまう問題がある。
このような問題は、下記特許文献4においても具体的に指摘されている。図15(ロ)は下記特許文献4においてこの問題を具体的に示した図で、図中Xは溝216の加工時に生じたバリを表している。
【0012】
上記バリXは、ステー200の外周面から突出しているため、このようなバリXが残ったままであると、ステー200をシートバックの差込孔に差し込むことができなくなってしまう。
従ってこのバリXは、バフ掛け加工するなどの仕上加工により除去しておかなければならない。この場合、バリX除去のための加工工程が余分に必要となり、加工コストを押し上げてしまう。
【0013】
他の加工方法として、下記特許文献5には図16に示しているように複数のパンチローラ220-1,220-2,220-3,220-4を上下の軸線Qに沿って一列に並ぶように配置して、これらをホルダ222に軸218周りに回転可能に組付け、ホルダ222をプレス機により図中下向きに下降移動させて、固定状態に保持したステー200に対し、各パンチローラ220-1,220-2,220-3,220-4にて溝を順次加工する方法が開示されている。
【0014】
ここで複数のパンチローラは図中下から上に向ってその外径が順次大きく、即ちパンチローラ220-1から220-4に向って図中左方への突出量が大きくなる形状とされていて、ステー200に対する干渉量(押込量)が段階的に多くなるようにしてある。
従ってホルダ222を下向きに後退端から前進端まで下降させると、ステー200に近いパンチローラ220-1から段階的にステー200に対し溝加工が施されていき、最終的に所望の形状の溝を成形加工することができる。
【0015】
この図16に示す加工方法の場合、一つのパンチローラで一挙に溝を加工するものではなく、パンチローラ220-1から220-4にかけて複数で少しづつ加工を進めていくものであることから、パンチローラ1つづつの加工量を少なくすることができる。
従ってこの加工方法によれば、上記のバリXの発生をある程度抑制することができる。
【0016】
しかしながらこの図16に示す加工方法においても、複数のパンチローラ220-1〜220-4が何れもステー200に対し、これを横切るように図15(イ)の中心線Pと平行方向に移動して、ステー200に対し各パンチローラ220-1〜220-4が中心線Pと平行方向に加工の力を加えることから、バリXの発生の問題が依然として残り、従って後においてバリXを除去するためのバフ掛け工程等の仕上工程が必要となる問題がある。
【0017】
またこの図16に示す加工方法の場合、各パンチローラ220-1〜220-4は中心部の軸218で保持されて、その周りに回転しつつ加工を行うものであることから、加工に際して外周部が軸218における軸方向、つまり紙面と直角方向に不規則に変動する、いわゆるブレを起す問題があり、而してそのようなブレが生じると、そのことがステー200に対する溝の加工精度に悪影響を及ぼしてしまう。
【0018】
その他に、図16に示す加工方法の場合、独立した部品としての多くのパンチローラ220を必要とし、その製作コストが高くなるとともに、これら多くのパンチローラ220を高い組付精度でホルダ222に組み付けなければならず、組付けのための工数が必要であるとともに、その組付けによるコストの増大の問題もあり、全体として加工装置に要するコストが高くなってしまう。
【0019】
またプレス機のストローク制限によって、1列に配列可能なパンチローラの数も制限され、従って1つ1つのパンチローラによるステー200に対する加工量も、必然的にある程度以上に多くならざるを得ず、このこともまたバリXの発生に対して不利に働いてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】特開2003−71522号公報
【特許文献2】特開2005−88009号公報
【特許文献3】特開2002−210519号公報
【特許文献4】特開2002−361331号公報
【特許文献5】特開2004−291085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明は以上のような事情を背景とし、加工装置に必要な部品のコストが安価であって、ステーに対する溝加工のコストを低減でき、またステーの溝加工をバリを発生させることなく高精度で綺麗に行うことができるステー(ヘッドレストステー)の溝加工方法を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
而して請求項1のものは、ヘッドレストにおける中空円筒状の金属パイプ材からなるヘッドレストステーの、シートバックへの挿入部分に周方向に部分的に溝を加工するヘッドレストステーの溝加工方法であって、前記ヘッドレストステーを間に挟み込んで互いに逆向きに相対移動する第1加工型と第2加工型とを設け、
それら第1加工型及び第2加工型の少なくとも一方の該ヘッドレストステーと接触する側の面に、前記溝の加工用の複数の突型を前記相対移動方向に沿って所定間隔をおいて且つ突出高さが段階的に高くなる形状で設けておき、前記ヘッドレストステーを前記第1加工型及び第2加工型に対して滑り無く転動運動させつつ、それら第1加工型及び第2加工型を前記逆向きに相対移動させて、前記複数の突型を該ヘッドレストステーに近いものから順に該ヘッドレストステーに押し込んで前記溝を段階的に成形し加工して行くことを特徴とする。
【0023】
請求項2のものは、請求項1において、前記第1加工型と第2加工型との他方にも、前記ヘッドレストステーと接触する側の面に、前記溝の加工用の複数の突型を前記相対移動方向に沿って所定間隔をおいて且つ突出高さが段階的に高くなる形状で設けておき、前記第1加工型の突型と前記第2加工型の突型とを交互に且つ前記ヘッドレストステーに近いものから順に該ヘッドレストステーに押し込んで前記溝を段階的に成形し加工して行くことを特徴とする。
【0024】
請求項3のものは、請求項1,2の何れかにおいて、前記第1加工型と第2加工型とのそれぞれの前記ヘッドレストステーと接触する側の面に、ショットブラスト処理を施して成る粗面状の、該ヘッドレストステーの外周面をグリップするためのグリップ部を前記相対移動方向に沿って連続して形成しておくことを特徴とする。
【0025】
請求項4のものは、請求項1〜3の何れかにおいて、前記ヘッドレストステーの溝の溝底面が、該ヘッドレストステーの横断面の中心を通って軸直角方向に延びる、該横断面の中心線と平行方向のストレート形状をなしており、前記突型が該溝底面のストレート形状に対応した、前記相対移動方向の両端部位から中央の最大突出部位にかけて連続して突出量を増す凸曲面形状と成してあることを特徴とする。
【0026】
請求項5のものは、請求項4において、前記溝が、前記ストレート形状の溝底面に続く軸方向の一方の溝側面が、該軸方向に傾斜した斜面をなしており、前記突型が該溝底面の成形部に続いて該斜面を成形するための成形部を有していることを特徴とする。
【0027】
請求項6のものは、請求項4において、前記溝が、前記ストレート形状の溝底面に続く軸方向両側の溝側面が軸直角方向に起立した面をなしており、前記突型が該溝底面の成形部の軸方向両側の面が、該溝側面に対応して軸直角方向に起立した面となしてあることを特徴とする。
【0028】
請求項7のものは、請求項1〜6の何れかにおいて、前記ヘッドレストステーには軸方向に間隔を隔てて前記溝が複数設けてあり、前記第1加工型及び第2加工型の少なくとも一方には、該複数の溝に対応して、前記第1加工型及び第2加工型の相対移動方向に並ぶ突型が該移動方向と直角方向に複数列に設けてあることを特徴とする。
【発明の作用・効果】
【0029】
以上のように本発明の加工方法は、ステー(ヘッドレストステー)を間に挟み込んで互いに逆向きに相対移動する第1加工型と第2加工型とを設けて、その少なくとも一方に、溝の加工用の複数の突型を相対移動方向に沿って所定間隔をおいて且つ突出高さが段階的に高くなる形状で設けておき、ステーをそれら第1加工型及び第2加工型に対し滑りなく転動運動させつつ、第1加工型及び第2加工型を逆向きに相対移動させて、上記複数の突型をステーに近いものから順にステーに押し込んで、上記溝を段階的に加工し、最終的に所望の形状の溝をステーに形成するものである。
【0030】
かかる本発明の加工方法は、ステーを第1及び第2加工型に対し滑りなく転動運動させながら、上記複数の突型にて溝を段階的に深く加工していくもの、即ちステーの転動運動を利用して溝を転造加工するものであり、第1及び第2加工型は、ステーの外周面に対し移動方向に滑り即ち摺動運動を生じない。
【0031】
第1及び第2加工型の少なくとも一方に設けられた複数の突型は、それらの何れもがステーに対し、その外周面を周方向に滑りを伴って摺動運動せず、各々がステーの求心方向に押し込まれて溝を段階的に深く加工していく。
【0032】
このため、本発明の加工方法によれば溝の加工に際して、図15(ロ)に示すようなバリXを生成させず、従ってその後においてバリXの除去のための仕上加工を省略し得て、溝の加工を少ない工数で簡単に行えるようになる。
【0033】
また本発明の加工方法によれば、1つの加工型にその移動方向に沿って数多くの突型を設けておくことが可能であり、その結果、1つ1つの突型によるステーに対する加工量を少なくし得て、即ち各突型のそれぞれによるステーの変形量を少なくでき、ステーにおける変形を円滑に生ぜしめることができる。
【0034】
従って本発明の加工方法によれば、図13(ロ)に示すようなダレKを溝の縁部に殆んど生ぜしめずに溝を目的とする形状にシャープに成形し、加工することができるし、また各突型毎に僅かづつステーに対し加工を施して行くため、図14に示す加工方法のように一挙に溝の全体をプレス加工する場合と異なって、ステーの溝底部のコーナー部周辺に大きなストレスを発生させてしまうといったこともなく、衝撃試験を行ったときの耐衝撃強度も高強度となすことができる。
【0035】
また図16の加工方法では、加工のために多くのパンチローラが必要となるが、本発明の加工方法では第1と第2の加工型を要するのみで、加工型に要するコストも低廉である。
【0036】
本発明では第1加工型と第2加工型との他方にも、溝の加工用の複数の突型を設けておき、第1加工型の突型と第2加工型の突型とを交互に且つステーに近いものから順にステーに押し込んで、溝を段階的に深く成形していくようになすことができる(請求項2)。
【0037】
この請求項2によれば、1つの溝の加工のための突型の数をより一層多くすること、例えば一方の型に突型を設けておくだけの場合に較べて、全体の突型の数を例えば2倍に多くすることができ、従ってステーに対する1つの突型による加工量をよりいっそう少なくすること、即ちステーの変形量をより一層少なくすることができ、溝の加工を無理なく且つ加工部に発生する歪を可及的に少なくしつつ、溝の加工をより一層良好に行うことが可能となる。
【0038】
また全体の突型の数を、一方の加工型にだけ突型部を設けた場合と同じ数とする場合には、第1加工型及び第2加工型の所要の移動ストロークを例えば半分に少なくすることができ、加工型を移動させるためのスペースを省スペース化することができる。
【0039】
本発明では、第1加工型と第2加工型のそれぞれに、詳しくはステーと接触する側の面に、ショットブラスト処理を施して成る粗面状の、ヘッドレストステーの外周面をグリップするためのグリップ部を、第1加工型及び第2加工型の相対移動方向に沿って連続して形成しておくことができる(請求項3)。
【0040】
このように第1加工型,第2加工型にグリップ部を設けて、それらグリップ部にてステーの外周面をグリップすることで、ステーを転動運動させながら第1及び第2の加工型を相対移動させる際に、それら加工型とステートの間の滑りをより確実に防ぐことができる。
またこれにより、複数の突型のそれぞれを、より正確にステーの溝の加工部に精度高く位置決めし、押し込むようになすことができる。
【0041】
本発明は、ステーの溝の溝底面が、ステーの横断面の中心を通って軸直角方向に延びる、横断面の中心線と平行方向のストレート形状をなしている場合において、上記突型を、溝底面のストレート形状に対応した、相対移動方向の両端部位から中央の最大突出部位にかけて連続して突出量を増す凸曲面形状となしておくことができる(請求項4)。
【0042】
突型をこのような形状としておくことで、溝底面がストレート形状をなすステーの溝を転造加工によって良好に加工することができる。
この場合において、ストレート形状の溝底面に続く軸方向の一方の溝側面が斜面をなしている場合において、上記突型には溝底面の成形部に続いて斜面成形のための成形部を備えておくことができる(請求項5)。
【0043】
或いはステーの溝が、ストレート形状の溝底面に続く軸方向両側の溝側面が軸直角方向に起立した面を成しているものである場合において、突型における溝底面の成形部の軸方向両側の面を、溝側面に対応して軸直角方向に起立した面となしておくことができる(請求項6)。
突型をこのような形状となしておくことで、ステーに設けられる抜け防止用の溝を良好に加工することができる。
【0044】
また本発明では、第1加工型及び第2加工型の少なくとも一方に、ステーに備えられる軸方向の複数の溝に対応して、第1加工型及び第2加工型の相対移動方向に並ぶ突型を、その移動方向と直角方向に複数列に設けておくことができる(請求項7)。
このようにすれば、第1加工型及び第2加工型の一ストロークの移動によって、ステーの軸方向に間隔を隔てた複数の溝を同時に加工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の適用対象のヘッドレストステーの一例をヘッドレストとともに示した図である。
【図2】図1のヘッドレストにおける溝部と周辺部を示した図である。
【図3】同実施形態で用いる加工ダイスを、ステーをセットした状態で示した図である。
【図4】同実施形態で用いる加工ダイスの平面図である。
【図5】図4の加工ダイスの加工部側の正面図である。
【図6】図4の加工ダイスの要部断面図である。
【図7】同実施形態の溝加工方法の説明図である。
【図8】同実施形態における溝加工方法の要部工程の説明図である。
【図9】同実施形態における溝加工方法の更に要部の工程の説明図である。
【図10】同実施形態の溝加工方法における溝形状の変化を示した図である。
【図11】同実施形態の溝加工方法の一工程の要部拡大断面図である。
【図12】同実施形態の溝加工方法にて成形された溝部と周辺部の断面写真である。
【図13】従来のステーの溝加工方法の一例を示した図である。
【図14】図13とは異なる従来の溝加工方法を示した図である。
【図15】更に他の従来の溝加工方法を示した図である。
【図16】更に他の従来の溝加工方法を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
次に本発明の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1において、10は車両のシートバックの上端に差込式に取り付けられるヘッドレストで、クッション材から成る枕部12と、支持部材としての金属製のステー14とを有している。
ここでステー14は、中空円筒形状の金属パイプ材から成っている。
ステー14は、枕部12への埋込部16(図1(B)参照)と、枕部12から突き出した一対の脚部18-1,18-2を有している。
ヘッドレスト10は、これら脚部18-1,18-2をシートバックの差込孔に差し込むことで、シートバックに脱着可能に取り付けられる。
【0047】
一方の脚部18-1には、図2にも示しているように軸方向に間隔を隔てて3つの溝20A,20B,20Cが備えられている。
溝20A,20Bはヘッドレスト10の高さ調節用の溝で、20Cは高さ調節及び抜止用の溝である。
溝20A,20Bは、図2に示しているように一方の溝側面22が軸方向に傾斜した斜面をなしており、また他方の溝側面24は軸直角方向に起立した面をなしている。
更に溝底面26は、ステー14の横断面におけるステー中心Oを通る軸直角方向の中心線P(図2(A)参照)と平行に延びるストレート形状の面をなしている。
溝20Cにおいても、溝底面26は同様に中心線Pと平行方向に延びるストレート形状の面をなしている。但し溝20Cでは、一対の溝側面24がともに軸直角方向に起立する面をなしている。
【0048】
次に、ステー14の上記の溝20A,20B,20Cの加工方法を図3〜図11に基づいて以下に説明する。
尚、溝20A〜20Cの加工は曲げの無い直管状態の金属パイプ材に対して行い、そして溝加工後においてこれを図1(B)に示すようにコ字形状に曲げ加工してステー14とする。
【0049】
この実施形態では、図3に示しているように平ダイスから成る可動ダイス(第1加工型)28及び固定ダイス(第2加工型)30を用いて、それらによりステー14(厳密には曲げ加工する前の直管状のパイプ材であるが、ここではステーとして以下説明して行く)を挟み込み、その状態でステー14を可動ダイス28及び固定ダイス30に対して滑りなく転動させながら、可動ダイス28を図3中左方向に移動させ、ステー14に対して溝を加工して行く。
【0050】
図4及び図5に示しているように(図4は固定ダイス30を図3の本来の配置の向きとは左右逆向きにして表している。また図5は固定ダイス30を図4の状態での平面視で表している)、固定ダイス30のステー14と接触する側の加工面34には、溝20A,20B,20Cを加工するための突型列36A,36B,38Cがそれぞれ図中左右方向、即ち可動ダイス28に対する相対移動方向に横一列をなすように設けられている。
同様に可動ダイス28のステー14と接触する側の加工面32にも、溝20A,20B,20Cを加工するための突型列36A,36B,38Cがそれぞれ可動ダイス28の移動方向に横一列をなすように設けられている。
【0051】
尚、これら可動ダイス28及び固定ダイス30の、上記突型列36A,36B,38Cの図中上下両側には、加工面32,34をショットブラスト処理することによって形成した粗面状のグリップ部40が図中左右方向、即ち可動ダイス28,固定ダイス30の相対移動方向に沿って連続して形成されている。
【0052】
これらグリップ部40は、その粗面によってステー14の外周面を互いに挟むようにグリップする部分であって、これらグリップ部40によるステー14のグリップ作用によって、ステー14は可動ダイス28及び固定ダイス30の各加工面32,34に対して摩擦力で滑りなく良好に転動運動する。
【0053】
この実施形態において、グリップ部40の面粗度は、その粗さが粗過ぎるとグリップ部40の凹凸がステー14の外周面に転写されてしまい、また逆に凹凸が小さ過ぎるとグリップ力が不足する。
そのため、ショットブラストに使用する粒(#40〜#80)の大きさを適宜変更することによって、好ましいグリップ力となるようにグリップ部40の表面を加工する。
【0054】
固定ダイス30の突型列36Aは、図中左側から右に並んだ突型36-1,36-3,36-5,36-7,36-9,36-11,36-13,36-15から成っており、また一方、可動ダイス28の突型列36Aは、図中左から右に向って並んだ突型36-2,36-4,36-6,36-8,36-10,36-12,36-14,36-16から成っている。
【0055】
即ちこの例では、固定ダイス30の側における突型列36Aが合計8個の突型を有しており、また可動ダイス28側の突型列36Aも同様に合計8個の突型を有している。
つまり溝20Aを加工するための突型として、ここでは固定ダイス30及び可動ダイス28を含めて、全体として16個の突型を有している。
【0056】
ここで固定ダイス30の側の突型列36Aにおいて、各突型36-1〜36-15は、それぞれ隣接する突型間の間隔が、ステー14の1回転分の周長と等しくされている。
同様に可動ダイス28の側における突型列36Aの各突型36-2〜36-16もまた、隣合う突型間の間隔が、ステー14の1回転分の周長と等しい間隔とされている。
【0057】
そして固定ダイス30及び可動ダイス28は、それぞれの突型列36Aにおける各突型を、ステー14に対し半周回転ごとに交互にステー14に押し付けて、溝20Aの加工を段階的に、ここでは16段階で少しずつ加工実施して行く。そして最後の突型36-16によって、溝20Aを最終の所望形状に加工完了する。
【0058】
溝20Bを加工するための固定ダイス30側の突型列36Bも、固定ダイス30の突型列36Aと同様で、図中左から右に向って突型36-1,36-3,36-5,36-7,36-9,36-11,36-13,36-15が横一列に並んでいる。その並びのピッチは固定ダイス30における突型列36Aと基本的に同様である。
【0059】
可動ダイス28側における突型列36Bもまた、同可動ダイス28側の突型列36Aと同様に、図中左から右に向って突型36-2,36-4,36-6,36-8,36-10,36-12,36-14,36-16が横一列に並んでおり、その並びのピッチも、可動ダイス28の側における突型列36Aと同様である。
更に突型列36Bにおける突型36-1〜36-16は、突型列36Aにおける突型36-1〜36-16と同形状をなしている。詳しくは、符号の同じものについては何れも各突型が同形状をなしている。
【0060】
固定ダイス30及び可動ダイス28における突型列38Cは、溝20Cを加工するためのもので、固定ダイス30側の突型列38Cは、図中左から右に向けて突型38-1,38-3,38-5,38-7,38-9,38-11,38-13,38-15が横一列に並んで設けられている。
【0061】
この固定ダイス30の突型列38Cにおける各突型38-1〜38-15もまた、隣接する突型間の間隔が、ステー14の1回転分の周長と等しくされており、且つ各突型38-1〜38-15は、突型列36A及び36Bの各突型と図中上下方向、即ち縦に一列をなすように配置されている。
【0062】
可動ダイス28側における突型列38Cも同様で、図中左から右に向けて突型38-2,38-4,38-6,38-8,38-10,38-12,38-14,38-16が一列に並んでいる。
その左右方向の間隔もまた、突型列36A,36Bにおける隣同士の突型と同じ間隔、即ちステー14の1回転分の周長と等しい間隔とされている。
【0063】
この突型列38Cもまた、固定ダイス30及び可動ダイス28全体で合計16個の突型から成っており、それら合計16個の突型にて、ステー14に対し段階的に且つ固定ダイス30と可動ダイス28との突型にて交互に溝20Cを加工して行く。そして最終の突型38-16によって、溝20Cを最終の所望形状に加工完了する。
【0064】
突型列36A,36Bにおける各突型36は、図5(B)の拡大図及び図6に示しているように、ストレート形状をなす溝底面26を成形する成形部42と、斜面をなす一方の溝側面22を成形するための成形部44とを有している。
尚成形部42の、成形部44とは反対側の面は、溝20A,20Bにおける軸直角方向に起立した溝側面24に対応して、加工面32,34から直角に起立した面をなしている。
【0065】
一方、溝20Cを成形するための突型列38Cにおける各突型38は、溝成形部42の図中上下両側の面が、溝20Cにおける軸直角方向に起立した一対の溝側面24に対応して、加工面32,34から直角に起立した面をなしている。
【0066】
図6(B)に示しているように、突型列36A,36Bにおける各突型36、及び突型列38Cの各突型38は、溝20A,20B,20Cにおける各溝底面26のストレート形状に対応して、側面視形状が円弧形状をなしている。厳密には、図6(B)中左右の両端から中央の最大突出部位にかけて、突出高さが連続的に漸増する略円弧形状をなしている。
【0067】
但しそのサイズ(大きさ)は、突型36-1,38-1〜36-16,38-16にかけて1段階ごとに大きくなっている。
具体的にはここでは突型36,38の突出高さが36-1,38-1〜36-16,38-16にかけて1段階ごとに高くなっており、更に図中左右方向の幅も突型36-1,38-1〜36-16,38-16にかけて1段階ごとに大きくなっている。
【0068】
この実施形態では、図7に示しているように固定ダイス30の図中右端部と可動ダイス28の図中左端部とでステー14を挟み込み、そして可動ダイス28を図中左方向に移動させることで、溝20A,20B,20Cを突型列36A,36B,38Cの各突型36,38にて段階的に加工して行く。
【0069】
そのためにここでは突型列36A,36B,38Cともに、各突型の成形部42が突出高さ,幅ともに突型36-1,38-1〜36-16,38-16にかけて少しづつ段階的に大きくされている。
また突型列36A,36Bについては、溝側面22の斜面成形のための成形部44が、突型36-1〜36-16にかけて少しづつ大形状化している。
【0070】
但しこの実施形態の加工方法は、多数の突型によって少しづつ溝加工を施して行き、最終の突型によって溝を目標とする所望形状とするものであり、その目的を達成し得る限り、各突型の形状を上記とは異なった様々な変化をなすように形状設定しておくことが可能である。
【0071】
図8(I)は、固定ダイス30側の最初の突型36-1がステー14に到達する直前、即ち最初の突型36-1によって第1段目の溝加工をステー14に施す直前の状態を表している。
この状態で、可動ダイス28が固定ダイス30に対して図中左向きに移動すると、これに連れてステー14が、その外周面を可動ダイス28と固定ダイス30によってグリップされながら且つステー外周面を可動ダイス28及び固定ダイス30に対し滑りなく転動させながら、可動ダイス28の移動距離の半分の距離で図中左向きに移動し、そして固定ダイス30側の最初の突型36-1がステー14を通過したところで、ステー14に対し第1段目の溝加工が行われる。
【0072】
図9は、このときの突型36-1による加工の様子を模式的に表している。
図9(I)に示しているように、突型36-1は先ず図中右側の部分がステー14に食い込んで、ステー14を部分的に塑性変形させ、更に突型36-1が図中右方向に相対的に移動することで、ステー14に対する食込み(押込み)量を少しづつ増大して行き、そして突型36-1がステー14を通過し終わったところで、ステー14にストレート形状の溝底面を有する第1段目の溝の加工が終了する(図9(II)〜(V)参照)。
尚、図9に示しているように突型36-1は、ステー14を滑りなく転動運動させながらステー14の一部を求心方向に押し込み、これを部分的に塑性変形させて第1段目の溝の加工を実行する。
【0073】
その後、図8(III),(IV)に示しているように今度は可動ダイス28側の最初の突型36-2が、突型36-1によって既に加工された部分に到達して第2段目の溝の加工を実行する。
【0074】
以後、可動ダイス28の引続く図中左向きの移動に伴って、ステー14を滑りなく転動運動させつつ、ステー14の半周回転ごとに固定ダイス30側の突型36-3,可動ダイス28側の突型36-4と順次に、且つ固定ダイス30側の突型と可動ダイス28側の突型とが交互にステー14に対し1段ごとに溝の加工を進めて行き、そして最終の突型36-16がステー14を通過し終わった段階で、溝20A,20Bが最終の所望形状に加工完了する。
尚、溝20Cに対する突型38による溝の加工についても上記と同様にして行われる。
【0075】
図10(A)は、最初の突型38-1によってステー14に溝20Cの第1段目の加工を行った状態を、また図10(B)は、最後の突型38-16によってステー14に対する溝20Cの加工を完了した状態を示している。
尚溝20A,20Bに対する突型36による加工についても、斜面の有無を除いて基本的に同様である。
【0076】
即ち、図11に示しているように溝20Cについては、突型38における加工面32,34から垂直に起立した面によって、一対の溝側面24が成形され、また(B)に示しているように溝20A,20Bについては、突型36における成形部44によって、溝側面22の斜面が成形され、また溝側面24の軸直角方向に起立した面が、突型36における加工面32,34から直角に起立した面によって成形される。
他の点については、溝20A,20B及び20Cともにその成形の段階は基本的に同様である。
【0077】
以上のように、本実施形態の加工方法はステー14を可動ダイス28,固定ダイス30に対して滑りなく転動運動させながら、複数の突型36,38にて溝20Aと20B及び20Cを段階的に深く成形加工して行くもの、即ちステー14の転動運動を利用して溝20A,20B,20Cを転造加工するものであり、その際に各突型36,38はステー14をその求心方向に押し込んで溝20A〜20Cの成形加工を行って行く。
【0078】
従って本実施形態の加工方法によれば、溝20A〜20Cの加工に際して図15(ロ)に示すバリXを生成させず、それ故その後においてバリXの除去のための仕上加工を省略し得て、溝20A〜20Cの加工を少ない工数で簡単に行うことができる。
【0079】
またこの実施形態によれば、可動ダイス28,固定ダイス30に、それらの相対移動方向に沿って数多くの突型36,38を設けておくことができ、その結果、1つ1つの突型36,38のステー14に対する加工量を少なくし得て、即ち各突型36,38ごとにステー14の変形量を少なくし得て、変形を円滑に生ぜしめることができる。
【0080】
従ってこの実施形態の加工方法によれば、図13(ロ)に示すようなダレKを溝20A〜20Cの縁部に生ぜしめずに或いは可及的に少なくしつつ、溝加工を良好に行うことができる。
また各突型36,38ごとに僅かづつステー14に対し加工を施して行くため、図14に示す加工方向のように一挙に溝20A〜20Cの全体をプレス加工する場合と異なって、溝底部のコーナー部周辺に大きなストレスを発生させてしまうといったこともない。
【0081】
因みに図12は、本実施形態の方法で加工した溝20Cと周辺部の顕微鏡写真を示したもので、この図に示しているように本実施形態の加工方法によれば、溝部のコーナー部下周辺に大きなストレスを生ぜしめない(図14(ロ)のものと比べて溝底部のコーナー部下周辺が特に黒っぽくなっていない)。
【0082】
従ってこの実施形態の加工方法で溝20A〜20Cを加工したステー14は、耐衝撃強度を高強度となすことができる。
更にこの実施形態の加工方法では、可動ダイス28と固定ダイス30とを要するのみで、溝成形のための加工型に要するコストも低廉である。
【0083】
この実施形態ではまた、可動ダイス28と固定ダイス30との両方に、溝20A〜20Cの加工のための突型36,38を設けて、可動ダイス28側の突型36,38と、固定ダイス30側の突型36,38とを、ステー14に近いものから交互に且つ順にステー14に押し込んで、溝20A〜20Cを段階的に深く成形するため、1つの溝20A又は20B又は20Cの成形加工のための突型の数を、何れか一方にだけ突型を設けた場合に比べて多くすることができ、従って1つの突型によるステー14の加工量を、固定ダイス30,可動ダイス28の一方にのみ突型を設けた場合に比べて、より一層少なくすることができ、1つ1つの突型36,38によるステー14の変形量を可及的に少なくし得て、溝20A〜20Cの加工を無理なく且つステー14の加工部に発生する歪みを可及的に少なくしつつ、溝20A〜20Cの加工を良好且つ精密に行うことが可能となる。
【0084】
また可動ダイス28,固定ダイス30全体の突型の数を、一方のダイスだけに突型を設けた場合と同じ数とした場合には、可動ダイス28の所要ストロークを半分に少なくすることができ、可動ダイス28を移動させるためのスペースを省スペース化することができる。
【0085】
更にこの実施形態では、可動ダイス28,固定ダイス30の加工面にショットブラスト処理を施して成る粗面状のグリップ部40が設けてあるため、それらグリップ部40にてステー14をグリップすることで、可動ダイス28,固定ダイス30とステー14との間の滑りをより確実に無くすことができる。
そしてそのことにより、複数の突型36,38のそれぞれを、可動ダイス28の移動に伴って正確にステー14の溝を加工すべき部分に精度高く位置させ、押し込むようになすことができる。
【0086】
また本実施形態では突型36,38を可動ダイス28,固定ダイス30に複数列に設けているため、ステー14における溝20A,20B,20Cを、可動ダイス28の1ストロークの移動によって一挙に同時に加工することができる。
【0087】
以上本発明の実施形態を詳述したがこれはあくまで一例示である。
例えば上記実施形態では可動ダイス28のみを移動させるようにしているが、場合によって一対のダイスをともに逆方向に移動させて、溝の加工を行うようになすといったことも可能である。
更に本発明は突型をステーに対して横切るように移動させるものではなく、突型をステーの外周面とともに滑りなく移動させながらステーの求心方向に内部に押し込み、溝を加工するものであることから、突型の形状を種々変えることによって、上例とは異なった様々な形状の溝をステーに加工するといったことが可能である。その際に溝の深さを特に深くしなくても、溝をステーの周方向により長く加工するといったことも可能である等、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた態様で実施可能である。
【符号の説明】
【0088】
10 ヘッドレスト
14 ステー
20A,20B,20C 溝
22,24 溝側面
26 溝底面
28 可動ダイス(第1加工型)
30 固定ダイス(第2加工型)
36,36-1〜36-16,38,38-1〜38-16 突型
36A,36B,38C 突型列
40 グリップ部
42,44 成形部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドレストにおける中空円筒状の金属パイプ材からなるヘッドレストステーの、シートバックへの挿入部分に周方向に部分的に溝を加工するヘッドレストステーの溝加工方法であって
前記ヘッドレストステーを間に挟み込んで互いに逆向きに相対移動する第1加工型と第2加工型とを設け、
それら第1加工型及び第2加工型の少なくとも一方の該ヘッドレストステーと接触する側の面に、前記溝の加工用の複数の突型を前記相対移動方向に沿って所定間隔をおいて且つ突出高さが段階的に高くなる形状で設けておき、前記ヘッドレストステーを前記第1加工型及び第2加工型に対して滑り無く転動運動させつつ、それら第1加工型及び第2加工型を前記逆向きに相対移動させて、前記複数の突型を該ヘッドレストステーに近いものから順に該ヘッドレストステーに押し込んで前記溝を段階的に成形し加工して行くことを特徴とするヘッドレストステーの溝加工方法。
【請求項2】
請求項1において、前記第1加工型と第2加工型との他方にも、前記ヘッドレストステーと接触する側の面に、前記溝の加工用の複数の突型を前記相対移動方向に沿って所定間隔をおいて且つ突出高さが段階的に高くなる形状で設けておき、前記第1加工型の突型と前記第2加工型の突型とを交互に且つ前記ヘッドレストステーに近いものから順に該ヘッドレストステーに押し込んで前記溝を段階的に成形し加工して行くことを特徴とするヘッドレストステーの溝加工方法。
【請求項3】
請求項1,2の何れかにおいて、前記第1加工型と第2加工型とのそれぞれの前記ヘッドレストステーと接触する側の面に、ショットブラスト処理を施して成る粗面状の、該ヘッドレストステーの外周面をグリップするためのグリップ部を前記相対移動方向に沿って連続して形成しておくことを特徴とするヘッドレストステーの溝加工方法。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかにおいて、前記ヘッドレストステーの溝の溝底面が、該ヘッドレストステーの横断面の中心を通って軸直角方向に延びる、該横断面の中心線と平行方向のストレート形状をなしており、前記突型が該溝底面のストレート形状に対応した、前記相対移動方向の両端部位から中央の最大突出部位にかけて連続して突出量を増す凸曲面形状と成してあることを特徴とするヘッドレストステーの溝加工方法。
【請求項5】
請求項4において、前記溝が、前記ストレート形状の溝底面に続く軸方向の一方の溝側面が、該軸方向に傾斜した斜面をなしており、前記突型が該溝底面の成形部に続いて該斜面を成形するための成形部を有していることを特徴とするヘッドレストステーの溝加工方法。
【請求項6】
請求項4において、前記溝が、前記ストレート形状の溝底面に続く軸方向両側の溝側面が軸直角方向に起立した面をなしており、前記突型が該溝底面の成形部の軸方向両側の面が、該溝側面に対応して軸直角方向に起立した面となしてあることを特徴とするヘッドレストステーの溝加工方法。
【請求項7】
請求項1〜6の何れかにおいて、前記ヘッドレストステーには軸方向に間隔を隔てて前記溝が複数設けてあり、前記第1加工型及び第2加工型の少なくとも一方には、該複数の溝に対応して、前記第1加工型及び第2加工型の相対移動方向に並ぶ突型が該移動方向と直角方向に複数列に設けてあることを特徴とするヘッドレストステーの溝加工方法。
【請求項1】
ヘッドレストにおける中空円筒状の金属パイプ材からなるヘッドレストステーの、シートバックへの挿入部分に周方向に部分的に溝を加工するヘッドレストステーの溝加工方法であって
前記ヘッドレストステーを間に挟み込んで互いに逆向きに相対移動する第1加工型と第2加工型とを設け、
それら第1加工型及び第2加工型の少なくとも一方の該ヘッドレストステーと接触する側の面に、前記溝の加工用の複数の突型を前記相対移動方向に沿って所定間隔をおいて且つ突出高さが段階的に高くなる形状で設けておき、前記ヘッドレストステーを前記第1加工型及び第2加工型に対して滑り無く転動運動させつつ、それら第1加工型及び第2加工型を前記逆向きに相対移動させて、前記複数の突型を該ヘッドレストステーに近いものから順に該ヘッドレストステーに押し込んで前記溝を段階的に成形し加工して行くことを特徴とするヘッドレストステーの溝加工方法。
【請求項2】
請求項1において、前記第1加工型と第2加工型との他方にも、前記ヘッドレストステーと接触する側の面に、前記溝の加工用の複数の突型を前記相対移動方向に沿って所定間隔をおいて且つ突出高さが段階的に高くなる形状で設けておき、前記第1加工型の突型と前記第2加工型の突型とを交互に且つ前記ヘッドレストステーに近いものから順に該ヘッドレストステーに押し込んで前記溝を段階的に成形し加工して行くことを特徴とするヘッドレストステーの溝加工方法。
【請求項3】
請求項1,2の何れかにおいて、前記第1加工型と第2加工型とのそれぞれの前記ヘッドレストステーと接触する側の面に、ショットブラスト処理を施して成る粗面状の、該ヘッドレストステーの外周面をグリップするためのグリップ部を前記相対移動方向に沿って連続して形成しておくことを特徴とするヘッドレストステーの溝加工方法。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかにおいて、前記ヘッドレストステーの溝の溝底面が、該ヘッドレストステーの横断面の中心を通って軸直角方向に延びる、該横断面の中心線と平行方向のストレート形状をなしており、前記突型が該溝底面のストレート形状に対応した、前記相対移動方向の両端部位から中央の最大突出部位にかけて連続して突出量を増す凸曲面形状と成してあることを特徴とするヘッドレストステーの溝加工方法。
【請求項5】
請求項4において、前記溝が、前記ストレート形状の溝底面に続く軸方向の一方の溝側面が、該軸方向に傾斜した斜面をなしており、前記突型が該溝底面の成形部に続いて該斜面を成形するための成形部を有していることを特徴とするヘッドレストステーの溝加工方法。
【請求項6】
請求項4において、前記溝が、前記ストレート形状の溝底面に続く軸方向両側の溝側面が軸直角方向に起立した面をなしており、前記突型が該溝底面の成形部の軸方向両側の面が、該溝側面に対応して軸直角方向に起立した面となしてあることを特徴とするヘッドレストステーの溝加工方法。
【請求項7】
請求項1〜6の何れかにおいて、前記ヘッドレストステーには軸方向に間隔を隔てて前記溝が複数設けてあり、前記第1加工型及び第2加工型の少なくとも一方には、該複数の溝に対応して、前記第1加工型及び第2加工型の相対移動方向に並ぶ突型が該移動方向と直角方向に複数列に設けてあることを特徴とするヘッドレストステーの溝加工方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図13】
【図15】
【図16】
【図12】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図13】
【図15】
【図16】
【図12】
【図14】
【公開番号】特開2011−110596(P2011−110596A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−271118(P2009−271118)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【出願人】(000219668)東海化成工業株式会社 (39)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【出願人】(000219668)東海化成工業株式会社 (39)
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