説明

ヘッド・ジンバル・アセンブリ及びディスク・ドライブ

【課題】ピエゾ素子の伸縮動作によるヘッド・スライダの回動に対するリード線の悪影響を抑制し、レーザーダイオードの発熱によるピエゾ素子への悪影響も抑制する。
【解決手段】タング223のステージ131上にレーザーダイオード401を内蔵したサブマウント400を介してヘッド・スライダ105が固定される。ステージのサブマウントを固定する面の反対面にピエゾ素子205a、205bが配置される。リード線217a〜217hは、一端がサブマウントの接続パッドに接続され、前方で左右に別れ、サブマウントの取り付け領域を迂回して後方に進み、サブマウントの取り付け領域と第1のピエゾ素子の前側接続パッド及び第2のピエゾ素子の前側接続パッドとの間を通って中央側に進み、さらに第1のピエゾ素子の前側接続パッドと前記第2のピエゾ素子の前側接続パッドとの間を通って後方に進むように配線される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッド・ジンバル・アセンブリ及びディスク・ドライブに係り、特に、ピエゾ素子とレーザーダイオードが実装されたヘッド・ジンバル・アセンブリの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ハードディスク・ドライブ(HDD)は、コンピュータの記憶装置として広く普及し、現在のコンピュータ・システムにおいて欠かすことができない記憶装置の一つとなっている。この他、動画像記録再生装置、カーナビゲーション・システム、あるいは携帯電話など、HDDの用途は、その優れた特性により益々拡大している。
【0003】
HDDで使用される磁気ディスクは、同心円状に形成された複数のデータ・トラックと複数のサーボ・トラックとを有している。各データ・トラックには、ユーザ・データを含む複数のデータ・セクタが設けられている。各サーボ・トラックはアドレス情報を有する。サーボ・トラックは、円周方向において離間して配置された複数のサーボ・データによって構成されており、各サーボ・データの間に1もしくは複数のデータ・セクタが形成されている。ヘッド素子部がサーボ・データのアドレス情報に従って所望のデータ・セクタにアクセスすることによって、データ・セクタへのデータ書き込み及びデータ・セクタからのデータ読み出しを行うことができる。
【0004】
ヘッド素子部はスライダ上に形成されており、さらにそのスライダはアクチュエータのサスペンション上に固着されている。アクチュエータとヘッド・スライダのアセンブリを、ヘッド・スタック・アセンブリ(HSA)と呼ぶ。また、サスペンションとヘッド・スライダのアセンブリを、ヘッド・ジンバル・アセンブリ(HGA)と呼ぶ。磁気ディスクに対向するスライダ浮上面と回転している磁気ディスクとの間の空気の粘性による圧力が、サスペンションによって磁気ディスク方向に加えられる圧力とバランスすることによって、ヘッド・スライダは磁気ディスク上を浮上することができる。アクチュエータが回動軸を中心に回動することによって、ヘッド・スライダを目的のトラックへ移動すると共に、そのトラック上に位置決めする。
【0005】
磁気ディスクのTPI(Track Per Inch)の増加に従い、ヘッド・スライダの位置決め精度の向上が求められている。しかし、VCM(Voice Coil Motor)によるアクチュエータの駆動は、その位置決め精度に限界が存在する。そのため、アクチュエータの先端に小型のアクチュエータ(マイクロアクチュエータ)を実装し、より精細な位置決めを行う二段アクチュエータの技術が提案されている(例えば特許文献1を参照)。
【0006】
さらに、磁気ディスクの円周方向の記録密度、BPI(Bit Per Inch)を飛躍的に向上させる技術の一つとして、熱アシスト記録が挙げられる。熱アシスト記録とは、磁気ディスク上の数十nm×数十nm程度の微小領域に200゜C以上の熱と磁場を加えることで、磁気ディスク上にデータを記録するものである。この微小領域を加熱する機構として、記録磁極近傍に配置した近接場光学素子でレーザー光を近接場光に変換して利用することが考えられている。その光源として、サブマウントを介しヘッド・スライダの浮上面裏側に配置されるレーザーダイオード(LD)が検討されている(例えば特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−152908号公報
【特許文献2】特開2008−59694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
HDDの記録容量を増加させるには、TPI、BPIとも向上させる必要があり、二段アクチュエータによる精細なヘッド・スライダの位置決めと、熱アシスト記録を同時に行うことが考えられる。そのためには、HGAの中にマイクロアクチュエータとLDを実装することが考えられる。
【0009】
熱アシスト記録用のLDは、ヘッド・スライダから離れた場所に配置すると、光を導くために光ファイバ/導波路、ミラー等を長い距離にわたって使用せざるを得ず、光の伝播効率が大幅に低下するという問題や、装置全体の構造が複雑になるという問題が生じる。その問題を解決するために、熱アシスト記録用のLDをヘッド・スライダの浮上面裏側に実装することが考えられる。
【0010】
熱アシスト記録用光源のLDを内蔵したサブマウントをヘッド・スライダの背面に配置したHGAにおいて、上述のように、マイクロアクチュエータはその微動によりヘッド・スライダの精細な位置決めを可能とする。しかし、従来のサスペンション構造を変更することなくマイクロアクチュエータをサスペンションに実装すると、ヘッド・スライダの位置決め精度の大きな向上は見られない。これは、マイクロアクチュエータより引き起こされるサスペションの特性の悪化が原因となっている。
【0011】
一つには、マイクロアクチュエータの質量と体積の増加により、サスペンションの風乱振動特性が悪化する。他の一つには、マイクロアクチュエータの駆動(振動)に伴い、多くのサスペンション振動モードが励起されることがある。この他、マイクロアクチュエータによる質量増加により、サスペンションの耐衝撃特性やロード/アンロード特性が悪化する。
【0012】
これらの特性を改善する好ましいマイクロアクチュエータの一つとして、ジンバル・タング内に固定されたピエゾ素子によりサブマウントおよびヘッド・スライダを回動させる機構がある。このマイクロアクチュエータを有するHGAにおいて、ジンバル・タングはトレーリング側にステージを有し、そのステージ上にサブマウントが、さらにその上にヘッド・スライダが接着剤で固定されている。2つのピエゾ素子がヘッド・スライダのリーディング側において、ジンバル・タング内に固定されている。
【0013】
2つのピエゾ素子はアクチュエータの回動方向に並んで配置され、サスペンションの前後方向(ヘッド・スライダの飛行方向)に沿って伸縮する。左右のピエゾ素子が反対の伸縮動作を行うことでステージが回動し、その上に固定されているサブマウントおよびヘッド・スライダも回動する。ヘッド・スライダの回動により、ヘッド素子部(薄膜ヘッド部)の磁気ディスクの半径方向における微細な動きを可能とする。
【0014】
ジンバル・タング内に二つのピエゾ素子を配置することで上記サスペンションの特性の悪化を抑制することができる。しかし、発明者らが検討したところ、ジンバル・タング内にあるピエゾ素子の動きは、サスペンション上に形成されている配線(トレース)により大きな影響を受けることがわかった。トレースは、サブマウントを介し、ヘッド・スライダの信号を伝送する複数のリード線、ヘッド・スライダ内に埋め込まれた浮上量制御用アクチュエータをドライブする1ないし複数のリード線、サブマウントに内蔵されたLDをドライブする1ないし複数のリード線とそれらを保護する樹脂層とで形成されている。左右のピエゾ素子の伸縮によりヘッド・スライダを回動させるとき、トレースの剛性がピエゾ素子の動きを阻害し、ピエゾ素子の伸縮量に対するサブマウントおよびヘッド・スライダの回動量を低下させる。
【0015】
従って、ジンバル・タング内に装着された二つのピエゾ素子の伸縮及びそれによるヘッド・スライダの回動に対して、トレース剛性による望ましくない影響を抑制することができるHGAの構造が望まれる。
【0016】
LDは、レーザー光源であると同時に発熱源でもある。ピエゾ素子を高温下で駆動し続けると発生変位が落ちてくるという問題が発生する。それを防ぐため、前述の課題に加え、LDで発生した熱が、ピエゾ素子に伝わりにくいHGAの構造であることも望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の代表的なヘッド・ジンバル・アセンブリは、
ステージを有するタングを備えるジンバルと、
前記ステージに取り付けられている、レーザーダイオードを内蔵したサブマウントと、
前記サブマウントに取り付けられている熱アシスト記録用ヘッド・スライダと、
前記タング内において前記ステージのサブマウント取り付け面と反対側の後側に配置され、前側接続パッドと後側接続パッドとを有し前後方向に伸縮する第1のピエゾ素子と、
前記タング内において前記ステージのサブマウント取り付け面と反対側の後側に前記第1のピエゾ素子と並んで配置され、前側接続パッドと後側接続パッドとを有し前後方向に伸縮する第2のピエゾ素子と、
前記ジンバル上に形成されている複数のリード線であって、一端が前記サブマウントの接続パッドに接続され、前記サブマウントの前方で左右に別れ、前記サブマウントの取り付け領域を迂回して後方に進み、前記サブマウントの取り付け領域と前記第1のピエゾ素子の前側接続パッド及び前記第2のピエゾ素子の前側接続パッドとの間を通って中央側に進み、さらに前記第1のピエゾ素子の前側接続パッドと前記第2のピエゾ素子の前側接続パッドとの間を通って後方に進む複数のリード線と、を有することを特徴とする。
【0018】
本発明の代表的なディスク・ドライブは、
スピンドル・モータと、
前記スピンドル・モータに取り付けられた磁気ディスクと、
前記スピンドル・モータにより回転される前記磁気ディスクの任意の位置に対して記録及び再生を行うヘッド・ジンバル・アセンブリと、を有するディスク・ドライブにおいて、
前記ヘッド・ジンバル・アセンブリは、
ステージを有するタングを備えるジンバルと、
前記ステージに取り付けられている、レーザーダイオードを内蔵したサブマウントと、
前記サブマウントに取り付けられている熱アシスト記録用ヘッド・スライダと、
前記タング内において前記ステージのサブマウント取り付け面と反対側の後側に配置され、前側接続パッドと後側接続パッドとを有し前後方向に伸縮する第1のピエゾ素子と、
前記タング内において前記ステージのサブマウント取り付け面と反対側の後側に前記第1のピエゾ素子と並んで配置され、前側接続パッドと後側接続パッドとを有し前後方向に伸縮する第2のピエゾ素子と、
前記ジンバル上に形成されている複数のリード線であって、一端が前記サブマウントの接続パッドに接続され、前記サブマウントの前方で左右に別れ、前記サブマウントの取り付け領域を迂回して後方に進み、前記サブマウントの取り付け領域と前記第1のピエゾ素子の前側接続パッド及び前記第2のピエゾ素子の前側接続パッドとの間を通って中央側に進み、さらに前記第1のピエゾ素子の前側接続パッドと前記第2のピエゾ素子の前側接続パッドとの間を通って後方に進む複数のリード線と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ジンバル・タング内にピエゾ素子が固定されたHGAにおいて、ピエゾ素子の伸縮動作によるヘッド・スライダの回動に対するトレースの悪影響を抑制することができる。さらにサブマウントを介しヘッド・スライダ背面に設置されたLDの発熱に起因するピエゾ素子の温度上昇を抑えることができる。その結果、スライダをピエゾ素子で駆動するアクチュエータを備えた、熱アシスト記録用HGAが実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係るHDDの筐体のカバーがない状態を示す平面図である。
【図2】実施例1によるHGAの全体構成を示す斜視図と、その一部拡大図である。
【図3】実施例1によるHGAにおけるヘッド・スライダ、ピエゾ素子及びそれらの周辺の構造を示す平面図である。
【図4】実施例1によるHGAの積層構造を模式的に示す断面図である。
【図5】実施例1によるHGAの一部を示す平面図及び断面図である。
【図6】実施例1によるHGAにおけるヘッド・スライダ、ピエゾ素子及びトレースの構造を示す平面図である。
【図7】実施例2によるHGAの積層構造を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明の好ましい実施の形態を説明する。説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略及び簡略化がなされている。又、各図面において、同一要素には同一の符号が付されており、説明の明確化のため、必要に応じて重複説明は省略されている。以下の実施例においては、ディスク・ドライブの一例として、ハードディスク・ドライブ(HDD)について説明する。
【実施例1】
【0022】
本実施例のHDDは、ボイス・コイル・モータによる位置決め機構とサスペンション上のピエゾ素子による位置決め機構(マイクロアクチュエータ)を有する二段アクチュエータを備えている。本実施例のマイクロアクチュエータは、ジンバル・タング内に固定されている2つのピエゾ素子を有している。2つのピエゾ素子はアクチュエータの回動方向(左右方向)に並んで配置され、サスペンションの前後方向(ヘッド・スライダの飛行方向)に沿って伸縮する。
【0023】
ジンバル・タングはトレーリング側にステージを有し、そのステージ上にサブマウント及び熱アシスト記録ヘッド・スライダ(ヘッド・スライダ)が接着剤で固定されている。左右のピエゾ素子が反対の伸縮動作を行うことでステージが回動し、その上に固定されているLDを内蔵したサブマウント、さらにその上に固定されているヘッド・スライダも回動する。ヘッド・スライダの回動により、ヘッド素子部(薄膜ヘッド部)の磁気ディスクの半径方向における微細な動きを可能とする。
【0024】
本実施例のHGAの特徴的な点として、ヘッド・スライダの信号を伝送するリード線とLDをドライブするリード線は、ヘッド・スライダと接続される接続パッドから、2つのピエゾ素子のヘッド・スライダ側の接続パッドの間を通って延びている。これにより、ピエゾ素子の伸縮に対するトレース剛性による応力を低減し、ピエゾ素子のストロークの減少を抑え、また、スムーズなピエゾ素子の伸縮によりヘッド・スライダを回動させることができる。これにより、スライダ駆動変位を増加させ、高精度なヘッド位置決めを実現することができる。
【0025】
本実施例のHGAについて説明を行う前に、図1を参照して、HDDの全体構成について説明を行う。HDD100の機構的構成要素は、ベース102内に収容されている。ベース102内の各構成要素の制御は、ベース外に固定された回路基板上の制御回路(不図示)が行う。HDD100は、データを記憶するディスクである磁気ディスク101と、磁気ディスク101にアクセス(リードあるいはライト)する熱アシスト記録ヘッド・スライダ(ヘッド・スライダ)105を有している。ヘッド・スライダ105は、ユーザ・データの磁気ディスク101への書き込み及び/又は読み出しを行うヘッド素子部と、そのヘッド素子部がその面上に形成されているスライダとを備えている。
【0026】
アクチュエータ106は、ヘッド・スライダ105を保持している。磁気ディスク101へのアクセスのため、アクチュエータ106は回動軸107を中心に回動することで、回転している磁気ディスク101上でヘッド・スライダ105を移動する。駆動機構としてのボイス・コイル・モータ(VCM)109は、アクチュエータ106を駆動する。アクチュエータ106は、ヘッド・スライダ105が配置された長手方向におけるその先端部から、サスペンション110、アーム111、コイル・サポート112及びVCMコイル113の結合された各構成部材を備えている。
【0027】
ベース102に固定されたスピンドル・モータ(SPM)103には、磁気ディスク101が取り付けられ、所定の角速度で磁気ディスク101を回転する。磁気ディスク101に対向するスライダの浮上面と回転している磁気ディスク101との間の空気の粘性による圧力が、サスペンション110によって磁気ディスク101方向に加えられる圧力とバランスすることによって、ヘッド・スライダ105は磁気ディスク101上を浮上する。図1において、磁気ディスク101は反時計周りに回転する。ヘッド・スライダ105の信号及びマイクロアクチュエータのピエゾ素子の信号は、アクチュエータ106の回動軸付近にあるプリアンプIC181により増幅される。プリアンプIC181は、基板182上に実装されている。
【0028】
ヘッド・スライダ105による非アクセス時、アクチュエータ106は、磁気ディスク101の外側にあるランプ104上に待避する。アクチュエータ106の磁気ディスク上からランプ104への移動動作をアンロード、ランプ104から磁気ディスク上への移動動作をロードと呼ぶ。本発明はランプ・ロード・アンロードのHDDに有用であるが、ランプ104を有しておらず、非アクセス時にアクチュエータ106がディスク内周領域に移動するHDDにも適用することができる。
【0029】
図2(a)は、本実施例によるHGA200の構成を示す斜視図であり、ディスク側からHGA200を見た図である。図2(b)は、図2(a)において円で囲まれた部分の拡大図である。図2(a)に示すように、HGA200は、サスペンション110、熱アシスト記録ヘッド・スライダ(ヘッド・スライダ)105、LDを内蔵したサブマウント400を有している。サスペンション110は、トレース201、ジンバル202、ロード・ビーム203及びマウント・プレート204を有している。
【0030】
ロード・ビーム203を基準として、その上にジンバル202が固定され、さらにジンバル202の上にトレース201が形成されている。ヘッド・スライダ105は、サブマウント400に固定されている。サブマウント400は、ジンバル202上において、トレース201と同じ面に固定されている。また、図2(b)に示すように、HGA200は、マイクロアクチュエータの一部を構成するピエゾ素子205a、205bを有している。ピエゾ素子205a、205bは、サスペンション110のサブマウント400を介しヘッド・スライダ105が固定されている面の裏側に固定されている。
【0031】
ロード・ビーム203は、精密な薄板バネとして、ステンレス鋼などによって形成される。その剛性はジンバル202よりも高い。ロード・ビーム203は、バネ性を有することによってサブマウント400を介してヘッド・スライダ105への荷重を発生させる。マウント・プレート204及びジンバル202は、例えば、ステンレス鋼(SUS)で形成する。ヘッド・スライダ105はサブマウント400を介してジンバル202上に固定される。ジンバル202は弾性的に支持されており、サブマウント400を介してヘッド・スライダ105を保持すると共に、自由に傾くことによってヘッド・スライダ105の姿勢制御に寄与する。
【0032】
図2(b)に示すように、本実施例のHGA200において、ジンバル202は、ヘッド・スライダ105より前方の点221と、後方の点222a、222bとでロード・ビーム203に接合されている。接合は、典型的には、レーザ・スポット溶接により行う。このように、ヘッド・スライダ105の前後双方の位置においてジンバル202をロード・ビーム203に接合することで、HGA200は優れたロード/アンロード特性(ピール特性)を得ることができる。
【0033】
複数のリード線を有するトレース201の一端の端子は、ピエゾ素子205a、205b及びヘッド・スライダ105に接続され、他端の端子はマルチコネクタ211においてまとめられ、アクチュエータ106に固定される基板182に接続される。本構成例において、マルチコネクタ211は10個の接続パッドを有しており、それらは、リード信号、ライト信号、クリアランス調整のためのヒータ素子の信号、2つのピエゾ素子205a、205bの信号、そしてレーザーダイオード(LD)の信号のためのものである。なお、接続パッドの数は、サブマウント400、ヘッド・スライダ105の構造及びピエゾ素子205a、205bの制御方法により変化する。
【0034】
図1に示すように、基板上182には、ヘッド・スライダの素子(リード素子やライト素子)及びピエゾ素子205a、205bの信号の増幅回路181が実装されている。トレース201は、リード信号やライト信号の他、ピエゾ素子205a、205bを制御(駆動)する信号を伝送する。本実施例において、アクチュエータ106(サスペンション110)の先端と回動軸107と結ぶ方向を前後方向、磁気ディスク101の主面(記録面)に平行かつ前後方向と垂直な方向(アクチュエータ106の回動方向)を左右方向とする。
【0035】
図3(a)、(b)は、本実施例のHGA200におけるヘッド・スライダ105、ピエゾ素子205a、205b及びそれらの周辺の構造を示す平面図である。図3(a)、(b)において、ロード・ビーム203は省略している。図3(a)は、HGA200を磁気ディスク側(ヘッド・スライダ側)から見た図であり、図3(b)は、その反対側から見た図である。図3(a)において、サブマウント400、ヘッド・スライダ105は破線で示され、また、透過して描かれている。
【0036】
図2(a)、(b)を参照して説明したように、ジンバル202の同一面に、トレース201とサブマウント400が配置されている。図3(a)においては、トレース201とヘッド・スライダ105とがジンバル202の上側に示されており、図3(b)においては、ジンバル202がトレース201の上側に示されている。図3(b)に示すように、ピエゾ素子205a、205bは、サブマウント400、ヘッド・スライダ105の反対側において、トレース201上に配置されている。
【0037】
ジンバル202は、中央のジンバル・タング223と、ジンバル・タング223の左右両側においてジンバル・タング223から離間して前後方向の延びるサイド・アーム224a、224bとを有している。ジンバル・タング223は、左右のコネクタ・タブ225a、225bにより、サイド・アーム224a、224bに接続されている。
【0038】
ジンバル・タング223は、ステージ131と、ステージ131の後側(リーディング側)においてステージ131と接続され、ステージ131を支持する支持部132とを有している。支持部132は、前後方向に延びる二つのスリット133a、133bを有している。スリット133a、133bは左右方向に配列されており、スリット133a、133bのぞれぞれの内部にピエゾ素子205a、205bが配置されている。ピエゾ素子205a、205bが前後方向に互いに逆に伸縮することで、ステージ131及びその上のサブマウント400、ヘッド・スライダ105が回動する。
【0039】
支持部132は、スリット133a、133bの間の中央部134と、ピエゾ素子205aとサイド・アーム224aとの間の側部135a、そしてピエゾ素子205bとサイド・アーム224bとの間の側部135bとから構成されている。中央部134、側部135a、側部135bは、後端部(基部)136において繋がっている。側部135aはコネクタ・タブ225aによりサイド・アーム224aに接続され、側部135bはコネクタ・タブ225bによりサイド・アーム224bに接続されている。また、中央部134の先端(トレーリング端)は、ステージ131の後端(リーディング端)に接続されている。
【0040】
ステージ131の上にはヘッド・スライダ105を固定するサブマウント400が配置、取り付けられる。好ましくは、ステージ131に塗布した接着剤により、サブマウント400をステージ131に接着固定する。図3(a)において、サブマウント400は、接着領域(取り付け領域)133に接着剤で取り付けられている。これにより、強固にサブマウント400をジンバル・タング223に固定することができる。HGA200のピール剛性を高めるため、ステージ131は、左右のポリイミド・リミッタ226a、226bにより、サイド・アーム224a、224bに接続されている。ポリイミド・リミッタ226a、226は、トレース201のポリイミド層と同時に形成することができる。
【0041】
サイド・アーム224a、224bは、ステージ131の前方と接続されている。また、サイド・アーム224a、224bの先端には支持プレート227が接続され、その支持プレート227はロード・ビーム203に接合されている。ジンバル202よりも高い剛性を有するロード・ビーム203が、サイド・アーム224a、224bを支持している。さらに、サイド・アーム224a、224bは、ポリイミド・リミッタ226a、226bによりステージ131及びその上のヘッド・スライダ105を支持する。
【0042】
このように、ヘッド・スライダ105の前方においてポリイミド・リミッタ226a、226bによりジンバル・タング223を支持することで、ピッチ方向におけるジンバル・タング223(ジンバル202)の過度の変形を防ぐことができる。また、このようなリミッタ構造を有することで、ジンバル内にリミッタ(ステンレスによるリミッタ)を形成する必要がなく、質量の減少による風乱振動の低減を実現できる。さらに、リミッタがヘッド・スライダ105(ステージ131)に対して、ピエゾ素子205a、205bと反対側にあるため、衝撃時にピエゾ素子205a、205bにかかる曲げ負荷を低減することができる。
【0043】
図3(b)に示すように、ピエゾ素子205a、205bは、トレース201に対してヘッド・スライダ105の反対側から接続されている。図4は、本実施例のHGA200の積層構造を模式的に示す図である。ジンバルのステンレス層202の上に、トレース201を構成するポリイミド下層212、その上の導体層213、その上のポリイミド第1上層214、そして、その上のポリイミド第2上層215が積層されている。サスペンション110の製造は、上記積層構造を有する基板において各層をエッチングすることで所望の形状を形成する。
【0044】
導体層213は、典型的には銅層であり、サブマウント400を介してヘッド・スライダ105及びピエゾ素子205a、205bの信号を伝送するリード線を構成する。ポリイミド下層212は導体層213とジンバル202のステンレンス層との間の絶縁層、そしてポリイミド第1上層214は導体層213の保護層である。ポリイミド第2上層215は、サブマウント400を支持するスタッドの層であり、このについては後述する。
【0045】
図4において、ヘッド・スライダ105は、サブマウント400に接着剤403で固着される。ヘッド・スライダ105は、サブマウント400と一体で形成されたサブマウント・スタッド402a、402bの上に配置され、高さ位置が決められる。
【0046】
サブマウント400は、中にレーザーダイオード(LD)401をレーザー光がヘッド・スライダ105に出射するように配置されている。LD401とサブマウント400は、半田か導電性接着剤で固着される。
【0047】
サブマウント400はステンレス層202の上側に接着剤151で固着される。具体的には、サブマウント400は、ポリイミド第2上層215、ポリイミド第1上層214、導体層213そしてポリイミド下層212を除去して露出したステンレス層202に接着剤で固着される。露出したステンレス層202は、図3(a)におけるステージ131に相当する。ステンレス層202の上にはスタッド216と同様の構造を有する3以上のスタッドが形成されている。サブマウント400はスタッドの上に配置され、高さ位置が決められる。典型的には、ステージ131上の2点そしてステージ131の外に1点のスタッドを形成する。
【0048】
ピエゾ素子205a、205bは、ヘッド・スライダ105、サブマウント400の反対側において、トレース201と接続されている。図4は、ピエゾ素子205aの接続パッド251aと本体部252aを示している。ピエゾ素子205aは、ステンレス層202から露出したトレース201上に固定されている。具体的には、接続パッド251aは、ステンレス層202及びポリイミド下層212から露出している導体層213と半田接合により電気的かつ物理的に接続されている。
【0049】
図4の構成をとると、レーザーダイオード401とピエゾ素子205aの間には、多くの部材があり、それらは、ポリイミド下層212、ポリイミド第2上層215、ステンレス層202、接着剤151といった熱伝導性の低い材料で構成されているので、レーザーダイオード401で発生した熱はピエゾ素子205aに伝わりにくい。片や、レーザーダイオード401からヘッド・スライダ105には、サブマウント400、サブマウント・スタッド402a、402bがあるが、部品点数も少なく、また、サブマウント400、サブマウント・スタッド401a、401bはシリコンなど熱伝導性の高い材料で形成される。さらにヘッド・スライダ105の浮上面1051は、回転する磁気ディスク101に極わずかな隙間を保って対面しているため、放熱特性が良い。従って、レーザーダイオード401で発生した熱の多くは、ヘッド・スライダ105を通して磁気ディスク101に放熱され、ピエゾ素子205aには伝わりにくく、ピエゾ素子205aのレーザーダイオード401の発熱による温度上昇を抑えることができる。
【0050】
図3(a)、(b)に示すように、ピエゾ素子205a、205bは、それぞれ、前側接続パッド、そして後側接続パッドを有している。これらは、ポリイミド下層212から露出している導体層213の接続パッド351a、351b、352a、352bに半田接合されている。ピエゾ素子205a、205bの伸縮を阻害しないため、好ましくは、ピエゾ素子205a、205bはポリイミド下層212とは接着されず、それらは分離されている。
【0051】
図3(a)、(b)に示すように、ステージ131は、トレース201を介してピエゾ素子205a、205bと接続されており、ピエゾ素子205a、205bの伸縮により、ステージ131は回動中心311において回動する。ピエゾ素子205a、205bが、互いに逆に伸縮することで、ステージ131の回動量を大きくすることができる。
【0052】
好ましい構造において、ロード・ビーム203のディンプルとジンバル202の接触点は、ステージ131の回動中心311と一致している。図5(b)は、図5(a)におけるB−B切断線での断面図である。B−B切断線は、サスペンション110の長手方向に延びる中心線である。
【0053】
図5(b)に示すように、ロード・ビーム203は、ジンバル202に向かって突出するディンプル231を有している。ディンプル231は曲面を有し、曲面の頂点がジンバル202に当接している。上述のように、このディンプル231の当接点とステージ131の回動中心311は一致しており、回動中心311は、図3に示す支持部132内の中央部134のステージ側端部上にある。ディンプル位置と回動中心311とが一致していることで、よりスムーズにステージ131及びその上のヘッド・スライダ105、サブマウント400を回動することができる。
【0054】
図6は、符号以外は、図3(a)と同様の図である。図6に示すように、ヘッド・スライダ105は、その前端面(トレーリング端面)に左右方向に配列された複数の接続パッドを有し、それらはステージ131上に形成されているトレース201の接続パッドに接続されている。典型的には、これらは半田接続により相互接続される。本構成例において、8つの接続パッドが形成されており、それらは、リード信号、ライト信号そしてヒータ素子の信号(電力)、レーザーダイオード(LD)の信号に対応している。
【0055】
トレース201は10本の面内で離間して配設されたリード線217a〜217jを有しており、それらのうち8本は、上記8つの接続パッドとつながっている。リード線217a〜217hは、対応するヘッド・スライダ105の接続パッドの信号を、プリアンプICとヘッド・スライダ105の間とで、対応するLD401の接続パッドの信号を、LDドライバとLD401の間とで、それぞれサブマウント400を介して伝送する。図6において、サブマウント400のリード線217a〜217hは、ステージ131上で、接続パッドから前方へ向かった後、それらの右側半分のリード線217a〜217dは右側へ向かい、左側半分のリード線217e〜217hは左側へ向かう。
【0056】
リード線217a〜217dは、ステージ131の右側辺132a(図3(b)参照)とサブマウント400の接着領域133の間を通って後方に進み、さらに内側へ曲がってサブマウント400の下に入る。このとき、リード線217e〜217hは、ステージ131の左側辺132b(図3(b)参照)と接着領域133の間を通って後方に進み、さらに内側に向かって進んでサブマウント400の下に入る。
【0057】
リード線217a〜217hは、サブマウント400とステンレス層202との間(ヘッド・スライダ105の下)を、接着領域133の後端に沿ってジンバル・タング223の中央(前後方向に延びる中心線)へと向かう。図3(a)の例においては、リード線217a〜217hは、ヘッド・スライダ105(ステージ131)の回動中心311へと向かって進み、回動中心311の近傍で合流して後方へと進む。
【0058】
リード線217a〜217hがサブマウント400の下を通ることで、できるだけ前側においてリード線217a〜217hを中央に集めることができ、ピエゾ素子205a、205bの伸縮を阻害する応力を低減することができる。なお、接着領域133を大きくするため、回動中心311が接着領域後端近傍にあることが好ましいが、回動中心311は図の位置よりも後側にあってもよい。
【0059】
リード線217a〜217dが内側に入って回動中心311へと進むとき、リード線217a〜217dは、ステージ131上を、ピエゾ素子205aの前側接続パッドと相互接続されるトレース201の接続パッド351aと接着領域133との間を通って回動中心311に向かう。リード線217e〜217hは、ステージ131上を、ピエゾ素子205bの前側接続パッドと相互接続される接続パッド351bと接着領域133との間を通って回動中心311に向かう。
【0060】
つまり、リード線217a〜217dはピエゾ素子205aの前側接続パッドと接着領域133との間を通り、リード線217e〜217hはピエゾ素子205bの前側接続パッドと接着領域133との間を通る。このように、リード線217a〜217hがピエゾ素子205a、205bの前で中央に集まることで、ピエゾ素子205a、205bの伸縮を阻害する応力を低減することができる。また、リード線217a〜217hが回動中心311の近傍を通過することで、ピエゾ素子205a、205bの伸縮を阻害する応力を低減することができる。
【0061】
回動中心311の近傍で合流したリード線217a〜217hは、ピエゾ素子205aの前側接続パッド(トレースの接続パッド351a)とピエゾ素子205bの前側接続パッド(トレースの接続パッド351b)との間を通って後方へと進む。これらの間を通過した後、リード線217a〜217hは左右に別れる。リード線217a〜217dは並んで右側へと進み、ジンバル・タング223(支持部132)から外れる(図3(b)も合わせて参照)。また、リード線217e〜217hは並んで左側へと進み、ジンバル・タング223(支持部132)から外れる(図3(b)も合わせて参照)。
【0062】
リード線217a〜217dは、サイド・アーム224aの手前で曲がり、サイド・アーム224aの内側においてサイド・アーム224aに沿って後方へと進む。また、リード線217a〜217dに、ピエゾ素子205aの後側接続パッドと相互接続されるトレース201の接続パッド352aのリード線217iが合流する。リード線217e〜217hは、サイド・アーム224bの手前で曲がり、サイド・アーム224bの内側においてサイド・アーム224bに沿って後方へと進む。また、リード線217e〜217hに、ピエゾ素子205bの後側接続パッドと相互接続されるトレース201の接続パッド352bのリード線217jが合流する。
【0063】
リード線217a〜217d、217iは、サスペンション110の後方にサイド・アーム224aに沿って延び、ピエゾ素子205aの後側接続パッド(接続パッド352a)とサイド・アーム224aとの間を通りすぎる。リード線217a〜217d、217iは、内側に向かって曲がり、ピエゾ素子205の後側接続パッド(接続パッド352a)の後側を通ってサスペンション110中央(前後方向に延びる中心線)へと向かう。
【0064】
同様に、リード線217e〜217h、217jは、サスペンション110の後方にサイド・アーム224bに沿って進み、ピエゾ素子205bの後側接続パッド(接続パッド352b)とサイド・アーム224bとの間を通りすぎる。リード線217e〜217h、217jは、その後、内側に向かって曲がり、ピエゾ素子205bの後側接続パッド(接続パッド352b)の後側を通ってサスペンション110中央へと向かう。
【0065】
その後、リード線217a〜217jは、サスペンション110の後方に向かって曲がり、サスペンション110の後方へと進み、サイド・アーム224a、224bを支持するジンバル202の本体部228へと至る。図3(b)に示すように、リード線217a〜217jがジンバル・タング223から外れてからジンバル本体部228に至るまでの部分はステンレス層上にはなく、宙に浮いている(フライング・トレース部)。その後、図2に示したように、リード線217a〜217jは、ジンバル本体部228からテール部上を通ってマルチコネクタ211の各接続パッドにつながる。
【0066】
このように、リード線217a〜217jが、ピエゾ素子205a、205bの前後接続パッドの間で外側へと広がることで、ジンバル202の剛性が高くなることを抑え、ジンバル・タング223のヘッド・スライダ105の飛行姿勢変化に対する追従性の低下を抑制する。
【0067】
トレース201において、導体層213は、接続パッドが形成されている部分以外は、上下のポリイミド層212、214により覆われており、露出してはいない。従って、上記リード線217a〜217jの引き回しの説明において、リード線217a〜217jの周囲にポリイミド層212、214が配置されている。これは、ステンレス層202上に形成されているリード線217a〜217j及びフライング・トレース部において同様である。
【0068】
図6に示す好ましい構成において、リード線217a〜217j(トレース201)は、サブマウント400との接続パッドからジンバル本体部228に至るまで、2つのサイド・アーム224a、224bの間を延在しており、それらの外側へ出ることがない。この構成により、トレース201の振動によるジンバル202の風乱振動を抑制し、また、ジンバル・タング223の後端支持による信頼性の向上と適切なジンバル剛性とを得ることができる。また、トレース201がサスペンション中心近くにあるのでサスペンションのねじれ方向の慣性モーメントが小さくなり、HGAの動特性が向上する。
【0069】
図6に示すように、トレース201は、ジンバル・タング223(支持部132)のリーディング側と重なる一枚のシート部219を有している。シート部219のリーディング端はジンバル・タング223のリーディング端と略一致している。シート部219は、シート状のポリイミド層212、214と、リード線の217a〜217jの一部、そして、ピエゾ素子205a、205bの後側パッドと接続される接続パッド352a、352bを有している。
【0070】
このシート部219は、ジンバル・タング223の支持部132を構成する中央部134、側部135a、135b、後端部136を繋ぎ、これらの振動特性を改善する。さらに、シート部219は、フライング・トレース部を介して、ジンバル本体部228に固定されている。このように、トレース201は、ジンバル・タング223の後側(リーディング側)とジンバル本体部228と繋いで、ジンバル・タング223の後側を支持している。これにより、ロード/アンロードにおけるジンバル202の過度の変形を抑制するリミッタとしての働きをすることができる。
【0071】
図6を参照して説明したように、ヘッド・スライダ105からのリード線217a〜217hの全ては、ピエゾ素子205a、205bの前側パッド(トレースの接続パッド351a、351b)の間を通ってサスペンション110の後方へと延びている。これにより、ピエゾ素子205a、205bの前側との接続パッドと351a、351bとヘッド・スライダ105との接続パッドとの間において、トレース201をピエゾ素子205a、205bの外側へと大きく広げることなく、リード線217a〜217hを引き回すことができる。
【0072】
これにより、ピエゾ素子205a、205bの伸縮に対抗するトレース201からの応力を低減し、ピエゾ素子205a、205bの伸縮量によるヘッド・スライダ105の回動量を増加させることができる。また、ピエゾ素子205a、205bのスムーズな伸縮動作により、ヘッド・スライダ105の高精度な変位制御を行うことができる。
【0073】
図6を参照して説明したように、リード線217a〜217hは、ステージ131の接着領域133を迂回して、その中を通過していないことが好ましい。ヘッド・スライダ105の接着剤による固定は、接着剤がジンバルのステンレス層202と接着しているときに最も強固なものとすることができる。そのため、リード線217a〜217hを接着領域の外を通すことで、ヘッド・スライダ105を強固に接着し、また、接着領域133を小さくすることができる。
【0074】
また、リード線217a〜217hは、ヘッド・スライダ105とステンレス層202との間(スライダ浮上面の反対側)を通って、ピエゾ素子205a、205bの間の領域へと至る。このように、リード線217a〜217hのヘッド・スライダ105の内側のより中央で延在していることで、ピエゾ素子205a、205bの伸縮に対するトレース201の応力をより低減することができる。特に、リード線217a〜217hがヘッド・スライダ105の回動中心311の近傍を通過することで、よりその効果を高めることができる。
【0075】
図6において、ヘッド・スライダ105の後端(リーディング端)から前端(トレーリング側)において、リード線217a〜217hはヘッド・スライダ105の下あるいはステージ131上を引き回されている。このため、ヘッド・スライダ105の後端より前において、ヘッド・スライダ105の外側にはフライング・トレース部が存在していない。これによりピエゾ素子205a、205bのストロークに対するストレスを低減し、ヘッド・スライダ105の駆動変位を増加させることができる。
【0076】
また、リード線217a〜217hは、ピエゾ素子205a、205bの前側接続パッド(トレースの接続パッド351a、351b)間を通過した後、左右に広がって後側パッド(接続パッド352a、352b)の外側をフライング配線として通過している。このため、ジンバル・タング223は、その左右サイドにおいてトレース201に支持されている。これにより、ジンバル・タング223のピッチ剛性を下げ、ヘッド・スライダ105の飛行姿勢の変化にスムーズに追従することができる。
【0077】
以上、本発明を好ましい実施形態を例として説明したが、本発明が上記の実施形態に限定されるものではない。当業者であれば、上記の実施形態の各要素を、本発明の範囲において容易に変更、追加、変換することが可能である。例えば、本発明は、磁気ディスクをトップ・カバーから見て時計回りに回転するHDDに適用することができる。このとき、アクチュエータの前側がリーディング側となる。ピエゾ素子の前側パッドとトレースの接続パッドとの相互接続部の前後方向における位置は上記の位置に限定されず、ヘッド・スライダのリーディング端よりも前にあってもよく、その回動中心よりもトレーリング側にあってもよい。
【実施例2】
【0078】
他の好ましい実施形態を図7を用いて説明する。本実施例2は、先の実施例1と比べ、サブマウント400の構造が異なるものである。図7は、実施例1の図4に対応する図で、HGAの積層構造を模式的に示す断面図である。先の実施例1では、サブマウント400のレーザーダイオード401を実装する部分を熱アシスト記録用ヘッド・スライダ105と重ねていたが、実施例2では図7に示すように、レーザーダイオード401とヘッド・スライダ105が重ならない様にする。この場合、サブマウント400内に光導波路404が設けられ、光導波路404を介して、レーザーダイオード401とヘッド・スライダ105が光学的に結合される。レーザーダイオード401とヘッド・スライダ105が重ならない様にすると、サスペンション110のヘッド・スライダ105取り付け面、すなわちステージ131からヘッド・スライダ105の浮上面1051の距離を短くすることができる。ステージ131から浮上面1051の距離を短くすると、磁気ディスク101の面に垂直な方向の振動振幅が、ヘッド・スライダ105のトラック方向の振動振幅へ変換される変換率を小さくすることができるので、磁気ディスク101の振動振幅が同じであったとしても、図7の形態は図4に示した実施例1に比べ、ヘッド・スライダ105のトラック方向の振動振幅が小さくなり、TPIを上げるのに有利である。
【0079】
上記実施例1及び2において、リード線217a〜217hは、ピエゾ素子205aの前側端子とピエゾ素子205bの前側端子との間を通っているが、他の配線をとっても、レーザーダイオード401で発生した熱が、ピエゾ素子205a、205bに伝わりにくいHGAおよびそれを用いたディスク・ドライブが実現できる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明は、ピエゾ素子とレーザーダイオードを実装するヘッド・ジンバル・アセンブリ及び熱アシスト記録式ディスク・ドライブに適用して有用である。
【符号の説明】
【0081】
100…HDD、101…磁気ディスク、102…ベース、103…スピンドル・モータ、104…ランプ、105…熱アシスト記録ヘッド・スライダ、1051…浮上面、106…アクチュエータ、107…回動軸、110…サスペンション、111…アーム、112…コイル・サポート、113…コイル、131…ステージ、132…支持部、132a…右側辺、132b…左側辺、133…接着領域、133a,133b…スリット、134…中央部、135a,135b…側部、136…後端部、151…接着剤、181…プリアンプIC、182…基板、201…トレース、202…ジンバル、203…ロード・ビーム、204…マウント・プレート、205a,205b…ピエゾ素子、211…マルチコネクタ、212…ポリイミド層、213…導体層、214,215…ポリイミド層、216…スタッド、217a〜217j…リード線、219…シート部、221,222a,222b…溶接点、223…ジンバル・タング、224a,224b…サイド・アーム、225a,225b…コネクタ・タブ、226a,226b…ポリイミド・リミッタ、227…支持プレート、228…ジンバル本体部、231…ディンプル、251a…ピエゾ接続パッド、252a…ピエゾ本体部、311…回動中心、351a,351b,352a,352b…接続パッド、400…サブマウント、401…レーザーダイオード、402a,402b…サブマウント・スタッド、403…接着剤、404…光導波路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステージを有するタングを備えるジンバルと、
前記ステージに取り付けられている、レーザーダイオードを内蔵したサブマウントと、
前記サブマウントに取り付けられている熱アシスト記録用ヘッド・スライダと、
前記タング内において前記ステージのサブマウント取り付け面と反対側の後側に配置され、前側接続パッドと後側接続パッドとを有し前後方向に伸縮する第1のピエゾ素子と、
前記タング内において前記ステージのサブマウント取り付け面と反対側の後側に前記第1のピエゾ素子と並んで配置され、前側接続パッドと後側接続パッドとを有し前後方向に伸縮する第2のピエゾ素子と、
前記ジンバル上に形成されている複数のリード線であって、一端が前記サブマウントの接続パッドに接続され、前記サブマウントの前方で左右に別れ、前記サブマウントの取り付け領域を迂回して後方に進み、前記サブマウントの取り付け領域と前記第1のピエゾ素子の前側接続パッド及び前記第2のピエゾ素子の前側接続パッドとの間を通って中央側に進み、さらに前記第1のピエゾ素子の前側接続パッドと前記第2のピエゾ素子の前側接続パッドとの間を通って後方に進む複数のリード線と、
を有することを特徴とするヘッド・ジンバル・アセンブリ。
【請求項2】
前記サブマウントの前記レーザーダイオードの実装位置は、前記熱アシスト記録用ヘッド・スライダと重ならない位置であり、
前記サブマウントのレーザーダイオード取り付け面と、前記熱アシスト記録用ヘッド・スライダ取り付け面が同一面であり、
前記サブマウント内に光導波路が設けられ、前記光導波路を介して、前記レーザーダイオードと前記熱アシスト記録用ヘッド・スライダが光学的に結合されていることを特徴とする請求項1に記載のヘッド・ジンバル・アセンブリ。
【請求項3】
前記サブマウントの取り付け領域と前記第1のピエゾ素子の前側接続パッド及び前記第2のピエゾ素子の前側接続パッドとの間を通って中央側に進み、さらに前記第1のピエゾ素子の前側接続パッドと前記第2のピエゾ素子の前側接続パッドとの間を通って後方に進む複数のリード線は、前記サブマウントの下を通っていることを特徴とする請求項1に記載のヘッド・ジンバル・アセンブリ。
【請求項4】
前記複数のリード線は前記熱アシスト記録用ヘッド・スライダの下において、前記ステージの回動中心の近傍を通過していることを特徴とする請求項1に記載のヘッド・ジンバル・アセンブリ。
【請求項5】
前記ジンバルは、前記タングの後方に本体部を有し、前記複数のリード線は、前記第1のピエゾ素子と前記第2のピエゾ素子の間で左右に別れて広がり、前記第1のピエゾ素子の後側端子と前記第2のピエゾ素子の後側端子の外側を通って前記本体部に向かって延びていることを特徴とする請求項1に記載のヘッド・ジンバル・アセンブリ。
【請求項6】
前記複数のリード線は、前記タングと前記本体部の間は、宙に浮いていることを特徴とする請求項5に記載のヘッド・ジンバル・アセンブリ。
【請求項7】
前記サブマウントは、熱伝導性の低い接着剤にて前記ステージに取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載のヘッド・ジンバル・アセンブリ。
【請求項8】
前記サブマウントは、熱伝導性の高い材料で構成されていることを特徴とする請求項1に記載のヘッド・ジンバル・アセンブリ。
【請求項9】
前記ジンバルは、前記タングの後方に位置する本体部と、前記本体部から前方に延びて前記タングの両サイドを支持する2つのアームとを有し、
前記複数のリード線は、前記熱アシスト記録用ヘッド・スライダの接続パッドと相互接続される接続パッドから前記本体部まで、前記2つのアームの間を延びていることを特徴とする請求項1に記載のヘッド・ジンバル・アセンブリ。
【請求項10】
前記ジンバルは、前記タングの後方に位置する本体部と、前記本体部から前方に延び前記タングの両サイドを支持する2つのアームとを有し、
前記タングは、前記ステージの後側に該ステージを支持し前記2つのアームに接続された支持部を有し、
前記複数のリード線は、前記支持部の後端部と前記本体部とを繋いでいることを特徴とする請求項1に記載のヘッド・ジンバル・アセンブリ。
【請求項11】
さらに、前記複数のリード線を被覆する絶縁層と同一の材料で形成され、前記ステージを前記2つのアームのそれぞれと繋ぐリミッタを有することを特徴とする請求項10に記載のヘッド・ジンバル・アセンブリ。
【請求項12】
さらに、前記ジンバルを支持するロード・ビームを有し、
前記タングよりも前側及び後側に、前記ジンバルと前記ロード・ビームとの固定点が存在していることを特徴とする請求項1に記載のヘッド・ジンバル・アセンブリ。
【請求項13】
スピンドル・モータと、
前記スピンドル・モータに取り付けられた磁気ディスクと、
前記スピンドル・モータにより回転される前記磁気ディスクの任意の位置に対して記録及び再生を行うヘッド・ジンバル・アセンブリと、を有するディスク・ドライブにおいて、
前記ヘッド・ジンバル・アセンブリは、
ステージを有するタングを備えるジンバルと、
前記ステージに取り付けられているレーザーダイオードを内蔵したサブマウントと、
前記サブマウントに取り付けられている熱アシスト記録用ヘッド・スライダと、
前記タング内において前記ステージのサブマウント取り付け面と反対側の後側に配置され、前側接続パッドと後側接続パッドとを有し前後方向に伸縮する第1のピエゾ素子と、
前記タング内において前記ステージのサブマウント取り付け面と反対側の後側に前記第1のピエゾ素子と並んで配置され、前側接続パッドと後側接続パッドとを有し前後方向に伸縮する第2のピエゾ素子と、
前記ジンバル上に形成されている複数のリード線であって、一端が前記サブマウントの接続パッドに接続され、前記サブマウントの前方で左右に別れ、前記サブマウントの取り付け領域を迂回して後方に進み、前記サブマウントの取り付け領域と前記第1のピエゾ素子の前側接続パッド及び前記第2のピエゾ素子の前側接続パッドとの間を通って中央側に進み、さらに前記第1のピエゾ素子の前側接続パッドと前記第2のピエゾ素子の前側接続パッドとの間を通って後方に進む複数のリード線と、を有することを特徴とするディスク・ドライブ。
【請求項14】
前記サブマウントの取り付け領域と前記第1のピエゾ素子の前側接続パッド及び前記第2のピエゾ素子の前側接続パッドとの間を通って中央側に進み、さらに前記第1のピエゾ素子の前側接続パッドと前記第2のピエゾ素子の前側接続パッドとの間を通って後方に進む複数のリード線は、前記サブマウントの下を通っていることを特徴とする請求項13に記載のディスク・ドライブ。
【請求項15】
前記複数のリード線は前記熱アシスト記録用ヘッド・スライダの下において、前記ステージの回動中心の近傍を通過していることを特徴とする請求項13に記載のディスク・ドライブ。
【請求項16】
前記ジンバルは、前記タングの後方に本体部を有し、前記複数のリード線は、前記第1のピエゾ素子と前記第2のピエゾ素子の間で左右に別れて広がり、前記第1のピエゾ素子の後側端子と前記第2のピエゾ素子の後側端子の外側を通って前記本体部に向かって延びていることを特徴とする請求項13に記載のディスク・ドライブ。
【請求項17】
前記複数のリード線は、前記タングと前記本体部の間は、宙に浮いていることを特徴とする請求項16に記載のディスク・ドライブ。
【請求項18】
前記サブマウントは、熱伝導性の低い接着剤にて前記ステージに取り付けられていることを特徴とする請求項13に記載のディスク・ドライブ。
【請求項19】
前記サブマウントは、熱伝導性の高い材料で構成されていることを特徴とする請求項13に記載のディスク・ドライブ。
【請求項20】
前記ジンバルは、前記タングの後方に位置する本体部と、前記本体部から前方に延びて前記タングの両サイドを支持する2つのアームとを有し、
前記複数のリード線は、前記熱アシスト記録用ヘッド・スライダの接続パッドと相互接続される接続パッドから前記本体部まで、前記2つのアームの間を延びていることを特徴とする請求項13に記載のディスク・ドライブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−218626(P2010−218626A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−64084(P2009−64084)
【出願日】平成21年3月17日(2009.3.17)
【出願人】(503116280)ヒタチグローバルストレージテクノロジーズネザーランドビーブイ (1,121)
【Fターム(参考)】