説明

ヘッド面清掃装置、インクジェット記録装置、およびヘッド面清掃方法

【課題】常に適度の洗浄液を付着しながら清掃を行うことにより、洗浄性能を向上することを可能としたヘッド面清掃装置を提供する。
【解決手段】洗浄液として使用する結露wを発生するペルチェ素子や冷媒などを使った結露発生手段30と、その結露発生手段で発生した結露を洗浄液として貯留する洗浄液貯留手段60とを備え、その洗浄液貯留手段に貯留する洗浄液を吸い上げる多孔質材料を用いてクリーニング部材53を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、インクジェットヘッドと記録媒体とを相対移動しながら、インクジェットヘッドから吐出するインク滴で、用紙・OHPフィルム等の記録媒体に画像を記録するインクジェットプリンタ等のインクジェット記録装置に関する。および、そのようなインクジェット記録装置において、インクジェットヘッドのノズル孔を形成するヘッド面に洗浄液を付着してそのヘッド面に摺接するクリーニング部材で拭いてヘッド面を清掃するヘッド面清掃装置、およびヘッド面清掃方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ヘッド面に洗浄液を付着してヘッド面を清掃するインクジェット記録装置の中には、例えば特許文献1に記載されるように、容器内に洗浄液を貯留し、適宜加圧手段で加圧することにより容器内の圧力を上昇し、容器内の洗浄液を供給パイプを介して送り出してクリーニング台上に滴下し、インクジェットヘッドのヘッド面をクリーニング台と対向する位置まで移動したときそのクリーニング台上の液滴を付着してヘッド面を清掃するヘッド面清掃装置を備えるものがある。
【0003】
また、特許文献2に記載されるように、洗浄液を詰めた洗浄液パックを備え、そのパック内の洗浄液を高低差により、弾性材料でつくったワイパブレード内の空間に順次供給し、ワイピング時にインクジェットヘッドを移動し、そのワイパブレードの先端部に当ててそれを変形したとき、押圧されてワイパブレード内の洗浄液が吐出口から吐出し、その吐出した洗浄液を付着して、ヘッド面に摺接するワイパブレードでヘッド面を清掃するヘッド面清掃装置を備えるものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3664464号公報
【特許文献2】特開2005‐7635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のインクジェット記録装置では、いずれも、ヘッド面清掃装置に洗浄液を貯留する容器や洗浄液を詰めた洗浄液パックなどを備える必要があることから、ヘッド面清掃装置の占有空間が大きくなって大型化する問題があり、また容器への洗浄液の補給や、洗浄液パックの交換などが必要となってメンテナンスに手数がかかり、ランニングコストが増大する問題があった。
【0006】
そこで、この発明の第1の目的は、占有空間を小さくして小型化を図り、メンテナンスを簡単としてランニングコストを低減することを可能としたヘッド面清掃装置を提供することにある。
【0007】
この発明の第2の目的は、大型ヘッドに対しても、効率の良い洗浄液の付着を可能としたヘッド面清掃装置を提供することにある。
【0008】
この発明の第3の目的は、洗浄スピードが速く、構成が簡単にして安価とすることを可能としたヘッド面清掃装置を提供することにある。
【0009】
この発明の第4の目的は、常に適度の洗浄液を付着しながら清掃を行うことにより、洗浄性能を向上することを可能としたヘッド面清掃装置を提供することにある。
【0010】
この発明の第5の目的は、結露を洗浄液として貯留する洗浄液貯留手段を備えるヘッド面清掃装置において、結露発生手段で発生した結露を洗浄液貯留手段まで搬送する搬送手段を不要として安価とすることにある。
【0011】
この発明の第6の目的は、結露を洗浄液として貯留する洗浄液貯留手段を備えるヘッド面清掃装置において、ヘッド面の汚れなどに応じて適度の洗浄液を付着しながら清掃を行うことにより、洗浄性能を向上することにある。
【0012】
この発明の第7の目的は、洗浄液を有効に利用して清掃効率を高めることを可能としたヘッド面清掃装置を提供することにある。
【0013】
この発明の第8の目的は、拭き残しがなく清掃性能を向上することを可能としたヘッド面清掃装置を提供することにある。
【0014】
この発明の第9の目的は、構成簡単にして小型であり、騒音の少ないヘッド面清掃装置を提供することにある。
【0015】
この発明の第10の目的は、ヘッド面清掃装置の占有空間を小さくして小型化を図り、メンテナンスを簡単としてランニングコストを低減することを可能としたインクジェット記録装置を提供することにある。
【0016】
この発明の第11の目的は、ヘッド面清掃装置の占有空間を小さくして小型化を図り、メンテナンスを簡単としてランニングコストを低減することを可能としたヘッド面清掃方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
そのため、この発明の第1の態様は、インクジェットプリンタ等のインクジェット記録装置のインクジェットヘッドのノズル孔を形成するヘッド面に洗浄液を付着してそのヘッド面に摺接するブレード状等のクリーニング部材で拭いて前記ヘッド面を清掃するヘッド面清掃装置において、
前記洗浄液として使用する結露を発生するペルチェ素子や冷媒などを使った結露発生手段と、その結露発生手段で発生した結露を前記洗浄液として貯留する洗浄液貯留手段とを備え、その洗浄液貯留手段に貯留する洗浄液を吸い上げる多孔質材料を用いて前記クリーニング部材を形成する、ことを特徴とする。そして、ヘッド面を清掃するとき、結露発生手段で発生した結露を洗浄液として洗浄液貯留手段に貯留し、その洗浄液貯留手段に貯留する洗浄液を、多孔質材料を用いて形成するクリーニング部材で毛細管現象により吸い上げ、そのクリーニング部材を摺接してヘッド面に洗浄液を付着し、洗浄液で洗浄しながらその付着した洗浄液をクリーニング部材で拭き取る。
【0018】
ここで、結露発生手段で発生した結露を洗浄液として貯留する洗浄液貯留手段を備えるものでは、前記結露発生手段で発生した結露が自重で落下して前記洗浄液貯留手段に入るように、それら結露発生手段および洗浄液貯留手段を設置するとよい。そして、結露発生手段で発生した結露を自重で落下して洗浄液貯留手段に入れ、洗浄液として洗浄液貯留手段に貯留する。
【0019】
洗浄液貯留手段を備えるものでは、前記洗浄液貯留手段の内圧を増加し、前記クリーニング部材から吐出する洗浄液の供給量をコントロールする加圧手段を備えるようにするとよい。そして、必要に応じ、加圧手段により洗浄液貯留手段の内圧を増加して、クリーニング部材から吐出する洗浄液の供給量をコントロールする。また、洗浄液貯留手段を備えるものでは、前記クリーニング部材に、多孔質層と、その多孔質層が前記ヘッド面と接触する部分を除いてそのヘッド面と接触する部分のまわりを被う防水性スキン層とを設けるとよい。そして、クリーニング部材を摺接して、多孔質層で吸い上げた洗浄液を付着しながらヘッド面の清掃を行うとき、防水性スキン層でせき止めて多孔質層で汲み上げた洗浄液が逃げないようにする。
【0020】
前記クリーニング部材を前記ヘッド面に摺接するとき、弾性防水材を前記ヘッド面に接触するようにするとよい。そして、クリーニング部材をヘッド面に摺接してヘッド面の清掃を行うとき、洗浄液をせき止める弾性防水材をヘッド面に接触する。
【0021】
さて、この発明では、前記結露発生手段としてペルチェ素子を用いるとよい。そして、インクジェット記録装置のインクジェットヘッドのヘッド面を清掃するとき、結露発生手段であるペルチェ素子で結露を発生し、その結露を洗浄液としてヘッド面に付着し、そのヘッド面に摺接するクリーニング部材で拭き取る。
【0022】
この発明の第2の態様は、第1の態様のヘッド面清掃装置を備える、インクジェットプリンタ等のインクジェット記録装置であることを特徴とする。そして、インクジェット記録装置において、インクジェットヘッドのヘッド面を清掃するとき、ペルチェ素子や冷媒などを使った結露発生手段で結露を発生し、その結露を洗浄液としてヘッド面に付着し、そのヘッド面に摺接するブレード状等のクリーニング部材で拭き取る。
【0023】
この発明の第3の態様は、ヘッド面を清掃するとき、結露発生手段で発生した結露を洗浄液として洗浄液貯留手段に貯留し、その洗浄液貯留手段に貯留する洗浄液を、多孔質材料を用いて形成するクリーニング部材で毛細管現象により吸い上げ、クリーニング部材を摺接してヘッド面に洗浄液を付着し、洗浄液で洗浄しながらその付着した洗浄液をクリーニング部材で拭いてヘッド面を清掃することを特徴とする、ヘッド面清掃方法である。
【発明の効果】
【0024】
したがって、この発明の第1の態様によれば、洗浄液として使用する結露を発生する結露発生手段を備え、ヘッド面を清掃するとき、ペルチェ素子や冷媒などを使った結露発生手段で結露を発生してその結露をヘッド面に付着し、そのヘッド面に摺接するクリーニング部材で拭き取るので、洗浄液を貯留する容器や洗浄液を詰めたパック等を不要として、その分ヘッド面清掃装置の占有空間を小さくして小型化を可能とするとともに、容器への洗浄液の補給や、洗浄液パックの交換などを不要としてメンテナンスを簡単とし、ランニングコストを低減することができる。また、洗浄液貯留手段に貯留する洗浄液を毛細管現象により吸い上げてクリーニング部材でヘッド面に付着しながら、クリーニング部材を摺接してヘッド面を清掃するので、加えて、常に適度の洗浄液をヘッド面に満遍なく付着しながら清掃を行うことができ、洗浄性能を向上することができる。
【0025】
ここで、結露発生手段で発生した結露を自重で落下して洗浄液貯留手段に入れ、洗浄液として洗浄液貯留手段に貯留すると、加えて、結露を洗浄液貯留手段まで搬送する搬送手段を不要として安価とすることができる。さらに、必要に応じ、加圧手段により洗浄液貯留手段の内圧を増加して、クリーニング部材から吐出する洗浄液の供給量をコントロールすると、加えて、例えばヘッド面の汚れがひどいときには洗浄液の供給量を多くするなど、ヘッド面の汚れなどに応じて適度の洗浄液を付着しながらクリーニング部材でヘッド面の清掃を行うことができ、洗浄性能を向上することができる。また、ヘッド面の清掃後に加圧手段で加圧してクリーニング部材を通して洗浄液を吐出することにより、クリーニング部材の目詰まりなどをなくしてクリーニング部材自体の清掃を行うこともできる。
【0026】
またさらに、クリーニング部材に多孔質層と防水性スキン層とを設け、そのクリーニング部材をヘッド面に摺接してヘッド面の清掃を行うとき、防水性スキン層でせき止めて多孔質層上の洗浄液が逃げないようにすると、加えて、洗浄液を有効に利用して清掃効率を高めることができる。また、ヘッド面の清掃を行うとき、洗浄液をせき止める弾性防水材をヘッド面に接触すると、加えて、ヘッド面を最後に弾性防水材で拭いて拭き残しをなくし、清掃性能を向上することができる。
【0027】
この発明の第1の態様において、結露発生手段をペルチェ素子とすると、加えて、構成が簡単で、小型化にも有効であり、例えばインクジェットヘッドに隣接して設置することができる。また、可動部がなく、騒音を発生することもない。
【0028】
この発明の第2の態様によれば、インクジェット記録装置において、洗浄液として使用する結露を発生するペルチェ素子や冷媒を用いた結露発生手段を備え、ヘッド面を清掃するとき、結露発生手段で結露を発生してその結露をヘッド面に付着し、そのヘッド面に摺接するクリーニング部材で拭き取るので、洗浄液を貯留する容器や洗浄液を詰めた洗浄液パック等を不要として、その分ヘッド面清掃装置の占有空間を小さくして小型化を可能とするとともに、容器への洗浄液の補給や、洗浄液パックの交換などを不要としてメンテナンスを簡単とし、ランニングコストを低減することができる。
【0029】
この発明の第3の態様によれば、ヘッド面を清掃するとき、結露発生手段で発生した結露を洗浄液として洗浄液貯留手段に貯留し、その洗浄液貯留手段に貯留する洗浄液を、多孔質材料を用いて形成するクリーニング部材で毛細管現象により吸い上げ、そのクリーニング部材を摺接してヘッド面に洗浄液を付着し、洗浄液で洗浄しながらその付着した洗浄液をクリーニング部材で拭いてヘッド面を清掃するので、洗浄液を貯留する容器や洗浄液を詰めたパック等を不要として、その分ヘッド面清掃装置の占有空間を小さくして小型化を可能とするとともに、容器への洗浄液の補給や、洗浄液パックの交換などを不要としてメンテナンスを簡単とし、ランニングコストを低減することができる。洗浄液貯留手段に貯留する洗浄液を毛細管現象により吸い上げてクリーニング部材でヘッド面に付着しながら、クリーニング部材を摺接してヘッド面を清掃するので、加えて、常に適度の洗浄液をヘッド面に満遍なく付着しながら清掃を行うことができ、洗浄性能を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】この発明によるヘッド面清掃装置を備えるインクジェットプリンタの概略正面図である。
【図2】その一部を斜め上から見て示す概略斜視図である。
【図3】そのインクジェットプリンタに備えるヘッド面清掃装置の洗浄液供給装置の構成図である。
【図4】そのヘッド面清掃装置のクリーニング装置によるクリーニング状態を示す図である。
【図5】(A)はこの発明によるヘッド面清掃装置の他例を示す正面図、(B)はそのヘッド面清掃装置を斜め下方から見上げた斜視図である。
【図6】そのヘッド面清掃装置によるクリーニング状態を示す正面図である。
【図7】この発明によるヘッド面清掃装置のさらに他例を示す断面図である。
【図8】(A)はそのヘッド面清掃装置の部分拡大断面図、(B)はそのヘッド面清掃装置で用いるクリーニング部材先端の斜視図である。
【図9】(A)および(B)は図8(B)に示すクリーニング部材を用いてヘッド面の清掃を行う状態を示す図である。
【図10】ヘッド面清掃装置のまたさらに他例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照しつつ、この発明の実施の最良形態につき説明する。
図1にはこの発明によるヘッド面清掃装置を備えるインクジェットプリンタを正面から見て示し、図2にはその一部を斜め上から見て示す。
【0032】
図中符号10は、筐体である。筐体10の左右の側板11、12には、ガイドシャフト13とガイド板14を平行に掛け渡して設ける。それらガイドシャフト13とガイド板14で、キャリッジ15を支持する。キャリッジ15には、不図示の無端ベルトを取り付ける。無端ベルトは、筐体10内の左右に設ける図示しない駆動プーリと従動プーリに掛けまわす。そして、駆動プーリの回転とともに従動プーリを従動回転して無端ベルトを走行し、キャリッジ15を図中矢示するごとく左右に摺動自在に備える。
【0033】
キャリッジ15には、イエロ、シアン、マゼンタ、ブラックの4色のインクジェットヘッド16y、16c、16m、16bをキャリッジ15の移動方向に並べて搭載する。各インクジェットヘッド16は、下向きにヘッド面16Aを備え、各ヘッド面16Aに複数のノズル孔を有する。図示しないが、各ヘッド面16Aの複数のノズル孔は、キャリッジ15の移動方向と直交する方向に千鳥状に直線的に並べて形成してなる。
【0034】
そして、キャリッジ15を図示する左端とすると、各インクジェットヘッド16を、筐体10内の底板17上に設置する回復装置18と対向する。回復装置18は、インク滴吐出不良のノズル孔からインクを吸い出し、吐出不良を回復する装置である。
【0035】
筐体10内の底板17上には、回復装置18の隣りに、この発明に係るヘッド面清掃装置20を設ける。ヘッド面清掃装置20には、洗浄液供給装置30とクリーニング装置50を設ける。それら洗浄液供給装置30およびクリーニング装置50については、以下に詳述する。
【0036】
ヘッド面清掃装置20に隣接する位置には、板状のプラテン22を設置する。そのプラテン22の背面側には、プラテン22上に記録媒体である用紙23を供給する給紙台24を斜めに立てて設ける。また、図示省略するが、給紙台24上の用紙23をプラテン22上に送り出す給紙ローラを備える。さらには、プラテン22上の用紙23を矢示方向に搬送して正面側に排出する搬送ローラ25を設ける。
【0037】
筐体10の底板17上には、さらに右端に駆動装置26を設置する。駆動装置26は、不図示の給紙ローラや搬送ローラ25などを駆動するとともに、上述した駆動プーリを駆動することにより無端ベルトを走行してキャリッジ15を移動する。
【0038】
そして、記録時は、駆動装置26で駆動して用紙23をプラテン22上に移動し、所定位置に位置決めするとともに、キャリッジ15を移動して用紙23上を走査し、右方向に移動しながら4色のインクジェットヘッド16y、16c、16m、16bを用いて順にそれぞれのノズルからインク滴を吐出して用紙23上に画像を記録する。画像記録後、キャリッジ15を左方向に戻すとともに、用紙23を矢示方向に所定量搬送する。
【0039】
次いで、再びキャリッジ15を右方向に移動しながら往路で4色のインクジェットヘッド16y、16c、16m、16bを用いて順にそれぞれのノズルからインク滴を吐出して用紙23上に画像を記録する。そして、同様に画像記録後、キャリッジ15を左方向に戻すとともに、用紙23を矢示方向に所定量搬送する。以下同様に繰り返し、1枚の用紙23上に画像を記録する。
【0040】
この例では、使用によりインクジェットヘッド16y、16c、16m、16bのノズル孔にインク詰まりが生じないように、またはインク詰まりが生じた場合にはすぐに解消するように、適宜の間隔でキャリッジ15を左方向へと移動して回復装置18と対向するインク詰まり回復位置とし、回復装置18でインクジェットヘッド16y、16c、16m、16bのノズル孔のインクを吸引してインク詰まりを解消する。
【0041】
また、適宜の間隔でキャリッジ15を左方向へと移動して後、戻してヘッド面清掃装置20を通過するとき、インクジェットヘッド16y、16c、16m、16bのヘッド面16Aに洗浄液を付着してそのヘッド面16Aに摺接するクリーニング部材で拭いてヘッド面16Aを清掃する。
【0042】
ヘッド面清掃装置20の洗浄液供給装置30は、図3に示すように、筐体10の底板17上に設置したケース31内に、結露発生手段32と結露付着手段40とを備えてなる。結露発生手段32は、フロンやアンモニア等の冷媒を用いたものなどでも良いが、この例ではペルチェ素子34を用い、支持枠35で支持してケース31内に上下動自在に設けてなる。
【0043】
ペルチェ素子34は、N型半導体とP型半導体とを上部電極36と下部電極37とで挟んで構成し、N型半導体に+、P型半導体に−の電源をつなぐことにより、上部電極36側では電子がエネルギを奪って冷え、下部電極37側では電子が奪ったエネルギを放出して温まるようにしてなる。図3中符号34Aは、上部電極35側の結露発生面であり、ケース31から飛び出して上向きに設け、まわりの空気を冷却して洗浄液として使用する結露wを発生する。符号38は、下部電極37側の熱を逃がす放熱フィンである。
【0044】
そして、インク詰まり解消時やヘッド面清掃時にキャリッジ15を移動してこのヘッド面清掃装置20の上を通過するとき、ヘッド面16Aと結露発生面34Aとの間にギャップGが存在し、僅かな空隙を介してヘッド面16Aと結露発生面34Aとが対向するようにする。
【0045】
他方、結露付着手段40は、カム機構などを用いてつくり、例えば図示するように、カム軸41を中心として、偏心する円板カム42を回転し、その円板カム42の外周を接触して結露発生手段30を上下動するようになっている。
【0046】
また、クリーニング装置50は、図1および図2に示すように、筐体10の底板17上に支持台51を立ててその支持台51でホルダ52を支持し、そのホルダ52でクリーニング部材53を立てて保持してなる。クリーニング部材53としては、例えばゴムブレードを用いたワイパなどを使用し、先端を斜めにカットする。
【0047】
いま、ヘッド面16Aを清掃するときは、まず、結露発生手段30の結露発生面34Aに結露wを発生する。その後、キャリッジ15を移動して、清掃するインクジェットヘッド16のヘッド面16Aを結露発生手段30の結露発生面34Aに対向する。次いで、結露付着手段40で結露発生手段30をキャリッジ15に当たらない程度に上動し、結露発生手段30で発生した結露wを接触してヘッド面16Aに転移し、結露wを洗浄液としてヘッド面16Aに付着する。
【0048】
そして、ヘッド面16Aに付着して、乾燥したインク等に水分を含ませることにより汚れを取れやすくし、キャリッジ15を図1中右方向に移動することにより、図4に示すようにクリーニング部材53の先端を接触してクリーニング部材53の斜めにカットした先端面でヘッド面16Aを摺接し、ヘッド面16Aに付着した洗浄液を拭き取ってヘッド面16Aを清掃する。
【0049】
次に、図5(A)および(B)には、ヘッド面清掃装置20の他例を示す。
この例では、1つのインクジェットヘッド16の片側に結露発生手段30を並べて設置し、結露発生手段30の結露発生面34Aとインクジェットヘッド16のヘッド面16Aとをほぼ同じ高さとしたものである。ヘッド面16Aには、図5(B)に示すように、複数のノズル孔19が千鳥状に直線的に形成されている。
【0050】
そして、図2に示すようにキャリッジ15を矢示方向に移動するとき、図6中矢示する方向に結露発生手段30とともにインクジェットヘッド16を移動してクリーニング部材53により結露発生手段30で発生した結露wをヘッド面16Aへと移動し、ヘッド面16Aに付着して、乾燥したインク等に水分を含ませることにより汚れを取れやすくし、クリーニング部材53の先端を接触してクリーニング部材53でヘッド面16Aを摺接し、ヘッド面16Aに付着した洗浄液を拭き取ってヘッド面16Aを清掃する。
【0051】
図7には、ヘッド面清掃装置20のさらに他例を示す。
この例では、筐体10の底板17上に設置する装置本体55中に、上向きに開口するクリーニング部材保持空間56と、下向きに開口する結露発生手段収納空間57とを、斜めの洗浄液路58を介して連通して形成してなる。
【0052】
クリーニング部材保持空間56には、底部に、洗浄液路58と連通する洗浄液貯留手段60を設け、上部にホルダ61を介してクリーニング部材53を取り付ける。クリーニング部材53は、ウレタン製連続気泡部材などの多孔質材料を用いて形成し、ホルダ61を貫通して先端を上向きに突出し、基端を洗浄液貯留手段60の洗浄液63中に挿入してなる。
【0053】
結露発生手段収納空間57には、装置本体55に取り付けて結露発生手段30を支持し、入口開口にはフィルタ62を取り付ける。このように、結露発生手段収納空間57の開口を下向きに形成し、しかもその開口にフィルタ62を設ける構成とすることにより、記録時に発生したインクミストや、洗浄時に飛散した汚れが結露発生手段収納空間57内に入りにくくする。
【0054】
そして、結露発生面34Aで発生した結露wを自重で落下して洗浄液路58を通して洗浄液貯留手段60に洗浄液63として貯留するように、洗浄液貯留手段60とともに結露発生手段30を設置する。このように、結露発生面34Aで発生した結露wが重力により落下して洗浄液貯留手段60に入るようにすると、結露wを搬送する搬送手段を不要として安価とすることができる。洗浄液63中には、クリーニング部材53の基端を浸し、洗浄液貯留手段60に貯留する洗浄液63を吸い上げる。なお、洗浄液貯留手段60には、図示省略した検知手段を設け、液量に応じて結露発生手段30の駆動を制御してなる。
【0055】
ところで、この例では、クリーニング部材53は、図8(A)に示すように、洗浄液63を吸い上げる多孔質層64と、その多孔質層64がヘッド面16Aと接触する先端部分を除いてそのヘッド面16Aと接触する先端部分のまわりを被う防水性スキン層65とを設ける。この防水性スキン層65は、例えばフィルム状のものを多孔質層64に熱圧着したり、発泡素材の表面を溶かして多孔質層64のまわりに形成したり、押し出し成形時に多孔質層64のまわりに未発泡スキン層を設けたりして形成する。
【0056】
このように、クリーニング部材53に多孔質層64と防水性スキン層65とを設け、キャリッジ15を移動してインクジェットヘッド16を移動し、クリーニング部材53をヘッド面16Aに摺接してヘッド面16Aの清掃を行うとき、防水性スキン層65でせき止めて多孔質層64に含んだ洗浄液が、ヘッド面16Aと接触する部分以外から逃げないようにするので、ヘッド面16Aと接触する部分に集中し、洗浄液を有効に利用して清掃効率を高めることができる。
【0057】
また、図8(B)に示すように、クリーニング部材53に、防水性スキン層65にゴム製弾性防水材66を貼り合わせて備え、図9(A)に示す状態からキャリッジ15を移動してインクジェットヘッド16を移動し、(B)に示すようにクリーニング部材53をヘッド面16Aに摺接するとき、その弾性防水材66をヘッド面16Aに接触すると、ヘッド面16Aを最後に弾性防水材66で拭いて拭き残しをなくし、清掃性能を向上することができる。
【0058】
さて、図10には、ヘッド面清掃装置20のまたさらに他例を示す。
この例では、洗浄液貯留手段60の液量を常に検知してその液量に応じて結露発生手段30を駆動し、結露発生手段30で発生した結露を重力による自然落下で洗浄液貯留手段60に貯留するとともに、洗浄液貯留手段60の内圧を増加する加圧手段70を備え、クリーニング部材53から吐出する洗浄液63の供給量をコントロールするようにしたものである。
【0059】
加圧手段70として、この例では、ポンプ71と、洗浄液路58を開閉するバルブ72を設ける。そして、必要に応じ、バルブ72を閉じてポンプ71で加圧し、加圧手段70により洗浄液貯留手段60の内圧を増加して、クリーニング部材53から吐出する洗浄液63の供給量をコントロールする。
【0060】
このように、加圧手段70により洗浄液貯留手段60の内圧を増加して、クリーニング部材53から吐出する洗浄液63の供給量をコントロールすると、例えばヘッド面16Aの汚れがひどいときには洗浄液63の供給量を多くするなど、ヘッド面16Aの汚れなどに応じて適度の洗浄液63を付着しながらクリーニング部材53でヘッド面16Aの清掃を行うことができ、洗浄性能を向上することができる。
【0061】
また、ヘッド面16Aの清掃後に加圧手段70で加圧してクリーニング部材53を通して洗浄液63を吐出することにより、クリーニング部材53の目詰まりなどをなくしてクリーニング部材53自体の清掃を行うこともできる。さらに、バルブ72を閉じてポンプ71で吸引することにより、加圧手段70でインクジェットヘッド16の吸引を行い、インクジェットヘッド16のインク詰まりを解消し、別途備える回復装置18を不要とすることができる。なお、この場合には、吸引後、素早く加圧手段70で加圧を行って洗浄液63を吐出し、すぐにクリーニング部材53の強制洗浄を行う必要がある。
【0062】
この発明によれば、洗浄液として使用する結露を発生する結露発生手段30を備え、ヘッド面16Aを清掃するとき、ペルチェ素子や冷媒などを使った結露発生手段30で結露wを発生してその結露をヘッド面16Aに付着し、そのヘッド面16Aに摺接するクリーニング部材53で拭き取るので、洗浄液を貯留する容器や洗浄液を詰めたパック等を不要として、その分ヘッド面清掃装置20の占有空間を小さくして小型化を可能とするとともに、容器への洗浄液の補給や、洗浄液パックの交換などを不要としてメンテナンスを簡単とし、ランニングコストを低減することができる。
【0063】
そして、図3に示すように、結露付着手段40で動かして結露発生手段30を移動し、結露発生手段30で発生した結露wを接触することにより転移してヘッド面16Aに付着すると、加えて、大型ヘッドに対しても大量の結露を一括転移して結露を効率よくヘッド面16Aに付着することができる。
【0064】
また、図5(A)および(B)に示すように、クリーニング部材53により掻いて結露発生手段30で発生した結露を移動してインクジェットヘッド16のヘッド面16Aに付着すると、加えて、結露付着手段40などを用いて結露発生手段30を移動させたりする必要がなく、洗浄スピードが速く、構成が簡単にして安価とすることができる。
【0065】
さらに、図7に示すように、洗浄液貯留手段60に貯留する洗浄液63を毛細管現象により吸い上げてクリーニング部材53でヘッド面16Aに付着しながら、クリーニング部材53を摺接してヘッド面16Aを清掃すると、加えて、常に適度の洗浄液63をヘッド面に満遍なく付着しながら清掃を行うことができ、洗浄性能を向上することができる。洗浄液貯留手段60は、必要に応じ、結露発生手段30で結露を発生して洗浄液63として適宜補充するので、大型であることを要せず、洗浄液補充のためにユーザーの手数を煩わせることなく、メンテナンスを簡単とすることができる。
【符号の説明】
【0066】
16、16y、16c、16m、16b インクジェットヘッド
16A ヘッド面
20 ヘッド面清掃装置
30 結露発生手段
34 ペルチェ素子
34A 結露発生面
40 結露付着手段
53 クリーニング部材
60 洗浄液貯留手段
63 洗浄液
64 多孔質層
65 防水性スキン層
66 弾性防水材
70 加圧手段
w 結露

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェット記録装置のインクジェットヘッドのヘッド面に洗浄液を付着してそのヘッド面に摺接するクリーニング部材で拭いて前記ヘッド面を清掃するヘッド面清掃装置において、
前記洗浄液として使用する結露を発生する結露発生手段と、その結露発生手段で発生した結露を前記洗浄液として貯留する洗浄液貯留手段とを備え、その洗浄液貯留手段に貯留する洗浄液を吸い上げる多孔質材料を用いて前記クリーニング部材を形成することを特徴とする、ヘッド面清掃装置。
【請求項2】
前記結露発生手段で発生した結露が自重で落下して前記洗浄液貯留手段に入るように前記結露発生手段および前記洗浄液貯留手段を設置することを特徴とする、請求項1に記載のヘッド面清掃装置。
【請求項3】
前記洗浄液貯留手段の内圧を増加し、前記クリーニング部材から吐出する洗浄液の供給量をコントロールする加圧手段を備えることを特徴とする、請求項1または2に記載のヘッド面清掃装置。
【請求項4】
前記クリーニング部材に、多孔質層と、その多孔質層が前記ヘッド面と接触する部分を除いてそのヘッド面と接触する部分のまわりを被う防水性スキン層とを設けることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれか1に記載のヘッド面清掃装置。
【請求項5】
前記クリーニング部材を前記ヘッド面に摺接するとき、弾性防水材を前記ヘッド面に接触することを特徴とする、請求項1ないし4のいずれか1に記載のヘッド面清掃装置。
【請求項6】
前記結露発生手段としてペルチェ素子を用いることを特徴とする、請求項1ないし5のいずれか1に記載のヘッド面清掃装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1に記載のヘッド面清掃装置を備えることを特徴とする、インクジェット記録装置。
【請求項8】
ヘッド面を清掃するとき、結露発生手段で発生した結露を洗浄液として洗浄液貯留手段に貯留し、その洗浄液貯留手段に貯留する洗浄液を、多孔質材料を用いて形成するクリーニング部材で毛細管現象により吸い上げ、そのクリーニング部材を摺接してヘッド面に洗浄液を付着し、洗浄液で洗浄しながらその付着した洗浄液をクリーニング部材で拭いて前記ヘッド面を清掃することを特徴とする、ヘッド面清掃方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−116141(P2011−116141A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−68115(P2011−68115)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【分割の表示】特願2005−369934(P2005−369934)の分割
【原出願日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願人】(000006932)リコーエレメックス株式会社 (708)
【Fターム(参考)】