説明

ヘテロ二量体を形成するハイブリッドタンパク質

【課題】ハイブリッドタンパク質の製法、およびハイブリッドタンパク質からなる製薬組成物の提供。
【解決手段】ハイブリッドタンパク質は二量体を形成する2個の相互発現アミノ酸配列を含む。各配列は、TBP1またはTBP2のような受容体、またはIL-6、IFN-βおよびTPOのような、hCGのようなヘテロ二量体タンパク質ホルモンのサブユニットに連結した、IL-6、IFN-βおよびTPOのようなリガンド、の結合部分を含む。各相互発現配列は、発現の際にヘテロ二量体を形成するように対応するホルモンサブユニットを含む。対応するDNA分子、発現ベクターおよび宿主細胞、タンパク質の製法、製薬組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は二量体を形成する二個の相互発現アミノ酸配列からなるハイブリッドタンパク質に関するものであり、各々は:
(a)ホモメリック受容体、ヘテロメリック受容体の鎖、リガンド、およびそのフラグメントから選択される少なくとも1のアミノ酸配列;および
(b)ヘテロ二量体蛋白質性のホルモンまたはそのフラグメントのサブユニット;(a)および(b)は直接またはペプチドリンカーを介して結合し、各カップルにおいて、2個のサブユニット(b)が異なり二量体コンプレックスを形成するように集まることができる
からなる。
【背景技術】
【0002】
タンパク質―タンパク質相互作用は細胞および多細胞有機体の通常の生理的作用に必須である。自然の多くの蛋白質は1またはそれ以上の他のタンパク質鎖と複合体にするとき新規または最適の作用を示す。これは細胞質活性の調節に寄与する種々のリガンド―受容体により示される。ある種のリガンド、たとえば腫瘍壊死因子α(TNFα)、TNFβ、またはヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(hCG)、はマルチサブユニットコンプレックスとして生ずる。これらコンプレックスの若干は同じサブユニットの多数のコピーを含む。TNFαおよびTNFβ(ひとまとめにして以後TNFと呼ぶ)は3個の同一のサブユニット(非特許文献1、参考文献1−4)によって形成されたホモ三量体である。他のリガンドは同一でないサブユニットからなる。たとえば、hCGはヘテロ二量体(5−7)である。受容体はまたマルチ鎖コンプレックスとして生ずるかまたは作用する。たとえば、TNFに対する受容体は二量体(8,9)を形成するため集められた後、信号を導入する。これら受容体へのリガンドは2または3個の受容体鎖の凝集を促し、これにより受容体活性化のメカニズムを与える。たとえば、TNF媒介凝集はTNF受容体(10−12)を活性化する。
【0003】
タンパク質−タンパク質相互作用の調節は種々の病気および病理学での治療介入に有用なメカニズムであることができる。可溶性の結合タンパク質は、リガンドと相互に作用することができ、受容体からリガンドを潜在的に隔離でき、これによってその特定の受容体経路の活性化を減らす。あるいは、リガンドの隔離はその除去または分解を遅らせることができ、これによりその効果の持続を増し、インヴィヴォの明白な活性も増す。TNFの場合、可溶性TNF受容体は主としてTNF活性の抑制と関連していた(13−17)。
【0004】
可溶性結合タンパク質はヒトの病気を治療するために有用である。たとえば、可溶性TNF受容体は関節炎の動物モデルに効力をもつことが示された(18,19)。
TNFはその受容体に対して3個の結合部位をもつので(10−12)、細胞表面受容体の二量体化は対生物作用に十分であり(8,9)、TNFへの単一の可溶性受容体の結合は、可溶性受容体:TNF(三量体)のこの1:3コンプレックスがなお結合し一対の細胞表面TNF受容体を活性化する可能性を開けたままにするであろう。抑制効果を達成するため、TNF三量体の受容体結合部位の2個が可溶性結合タンパク質によって占められまたはブロックされなければならないことが期待される。あるいは、結合タンパク質は細胞表面でTNFの適当な配向をブロックすることができる。
【0005】
一般的には、二量体ハイブリッドタンパク質として、2個の受容体(またはリガンド)鎖を含むタンパク質の合成の必要がある。Wallach らの米国特許5,478,925参照。
細胞外受容体からの結合ドメインを含み、二量体または多量体のハイブリッドタンパク質を生成するために用いられる第一の戦法は、抗体重鎖の一定領域にこれらのタンパク質を融合させることであった。
この戦法は、たとえば、CD4免疫粘着の構築へと導いた(20)。これらは抗体重および軽鎖の一定領域に融合したCD4の最初の2個の(または4個全部の)免疫グロブリン様ドメインからなるハイブリッド分子である。ハイブリッド分子を生成するためのこの戦法はTNF のための受容体に適合させて(10,16,21)、単量体の可溶性結合タンパク質よりもインヴィヴォ活性が高い構成の生成に導かれた。
【0006】
より高いインヴィトロ有効性の二量体溶融タンパク質が、より高いインヴィヴォ活性に翻訳する必要があることは広く保持されている。研究でこれは支持され、静脈内LPS注射の因果関係からマウスを保護する際にp75(TBP2)−Ig溶融タンパク質に対する少なくとも50倍のより高い活性を示す(16)。
しかしながら、広く行きわたった免疫グロブリン溶融タンパク質の利用にもかかわらず、この戦法はいくつかの欠点をもつ。一つは、ある免疫グロブリンFcドメインが免疫系のエフェクターファンクションに関係していることである。これらのファンクションは特定の治療の設定には望ましくないかもしれない(22)。
【0007】
第二の制限は、へテロマー溶融タンパク質、たとえばへテロマーIL-6またはタイプIインターフェロン受容体の可溶性類似体を生成することが望ましい特別の場合に関係する。二感応抗体を生成するために多くの方法があるが(たとえば、コトランスフェクションまたはハイブリドーマ溶融によって)、合成の効率は代表的な結果として生じるホモ二量体およびヘテロ二量体の混合物により大いに妥協される(23)。最近、ヘテロ二量体の集合を案内するためロイシンジッパーモチーフの使用を記載する報告がいくつかある(24−26)。これは研究のためのアプローチを約束するものであるらしいが、使用した非天然または細胞内配列が抗原性による臨床の応用に適さないかもしれない。アセンブリーおよび安定性ポストアセンブリーの効果が制限されるかもしれない。
【0008】
他方、TNF受容体の特別の場合には、p55TNF受容体への一定の修飾はリガンドのない場合にホモ二両体化およびシグナル化を容易にすることが見出された(27,28)。“死領域”と名付けられた受容体の細胞質領域がホモ二両体モチーフとして作用することができることが見出された(28,30)。免疫グロブリンハイブリッドタンパク質への代替として、細胞質死領域へのTNF受容体の細胞外ドメインの溶融が、TNFの不在で二量体化できる分泌タンパク質になると考えることができる。このような溶融タンパク質は国際特許出願WO95/31544に開示されクレイムされている。
さらに、可溶性TNF受容体の二量体を生成するために使用される第三の戦法は単量体タンパク質をポリエチレングリコールと化学的に架橋することであった(31)。
【非特許文献1】Smith R.A. etal., J. Biol. Chem. 262:6951-6954, 1987
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
いくつかの重要な利点をもたらすこのような二量体タンパク質を得るための変わりのものが、本発明の一つであり、長いハーフライフをもつ循環する非免疫グロブリンタンパク質に相当する天然のヘテロダイマー骨核を用いることにある。好適例はhCGであり、よく分泌するタンパク質が安定性がよく、長いハーフライフをもつ(32−33)。妊娠のマーカーとしてhCGの顕著な役割を与えると、多くの試薬がインヴィトロおよびインヴィヴォでタンパク質を計量し研究するために開発された。更に、hCGは突然変異生成を用いて広範囲に研究されており、またαサブユニットの末端のカルボキシル端部の5個の残基の除去のような、タンパク質への小さい欠失が、生物学上の活性を有効に除き、一方ヘテロ二量体を形成するその可能性を保持することができることが知られている(34,35)。30個までのアミノ酸の小さい挿入はαサブユニットのアミノ−およびカルボキシル−末端で許容される一方、βサブユニットのカルボキシル末端へのαサブユニットの融合がヘテロ二量体生成にほとんど影響しないことが示された(37)。
免疫グロブリンFcドメインがはhCGβサブユニットのC末端に融合したhCGの類似体もまた報告されている;しかし、この構成は秘密ではなくαサブユニットと結合する努力もされていない(38)。
【課題を解決するための手段】
【0010】
したがって、本発明の主目的は二量体を形成する二個の共通発現したアミン酸配列からなるハイブリッドタンパク質であり、各々は:
(a)ホモメリック受容体、一連のヘテロメリック受容体、リガンド、およびそのフラグメントから選ばれる少なくとも1個のアミノ酸配列であり;および
(b)ヘテロ二量体タンパク質のホルモンのサブユニット、またはそのフラグメント、(a)及び(b)は直接またはペプチドリンカーを介して結合し、各カップルでは二個のサブユニット(b)は異なり、二量体コンプレックスを凝集生成することができる。
【0011】
本発明によれば、リンカーは酵素により開裂することができる。
配列(a)は好ましくは次のものから選ばれる:TNF受容体1の細胞外ドメイン(55kDa、またTBP1とも呼ばれる)、TNF受容体2の細胞外ドメイン(75kDa、またTBP2とも呼ばれる)、またはまだリガンド結合ドメインを含むそのフラグメント;IL-6受容体の細胞外ドメイン(gp80およびgp130とも呼ばれる);IFNα/β受容体またはIFNγ受容体の細胞外ドメイン;ゴナドトロピン受容体またはその細胞外フラグメント;抗体軽鎖、またはそのフラグメント、各重鎖と光学的に結合している;抗体重鎖、またはそのフラグメント、各軽鎖と光学的に結合している;抗体Fabドメイン;またはリガンドタンパク質、たとえばシトキン、ゴナドトロピンとは別の成長因子またはホルモン、IL−6、IFN−β、TPO、またはそのフラグメント。
【0012】
配列(b)は好ましくはhCG、FSH、LH、TSH、インヒビンサブユニット、またはそのフラグメントから選ばれる。
タンパク質への修飾、たとえばタンパク質骨格の化学的またはプロテアーゼ開裂、または一定のアミノ酸側鎖の化学的または酵素による修飾は、本発明のハイブリッドタンパク質の成分を不活性にするために使用できる。この活性の制限はまた組み替えDNA技術を使用して達成することができ、直接1成分への活性の制限となり、またはタンパク質を次の化学的または酵素による修飾へさらに影響を受けやすくする方法で、ハイブリッドタンパク質に対してコーデイング配列を変える。
【0013】
上記ハイブリッドタンパク質は、(b)と結合するアミノ酸配列(a)により、単官能、二官能または多官能基の分子になる。各カップルは、(a)は(b)のアミノ末端またはカルボキシ末端、または両方に結合することができる。
本発明のモノクロナルハイブリッドタンパク質は、たとえば、対応する受容体結合ゴナドトロピンサブユニットの一つに結合したゴナドトロピン受容体の細胞外ドメインからなる。このような例では、本発明のハイブリッドタンパク質は分子であり、たとえば、FSH受容体細胞外ドメインがFSHに結合し、プラズマ半減期を増加し生物学上の活性を改善する。
【0014】
この調製は、補助の製造法、たとえば排卵誘発またはインヴィトロ受精で、小胞状の成熟を誘発するために、そしてプロセスの成功のために重要なホルモンの生物学的活性を劇的に増幅するための手段として役立つように用いられ、このようにしてホルモン自体と排卵を達成する注射数の両方の要請を減らす。
FSH受容体、およびヒトFSH受容体の細胞外ドメインの製造はそれぞれWO92/16620およびWO96/38575に記載されている。
【0015】
特定例によれば、FSH受容体の細胞外ドメイン(ECD)は、トロンビン認識/開裂部位を含み(29)、“繋ぎ止めた” アームを示す、ペプチドリンカーとフレームで融合することができる。ペプチドリンカーはFSHの細胞外ドメインをFSHサブユニットと結合する。これは、分子が組織的循環においてトロンビンと接触するとき、トロンビン開裂部位で開裂によってFSH受容体の細胞外ドメインの除去を可能にする。
【0016】
他の例では、トロンビン開裂部位の代わりに、卵巣で最大量で見出される酵素に対する酵素認識部位を使用する。この方法では、ECD−FSH分子が卵巣に移動するので、その組織で最高濃度で見られる酵素にさらされ、ECDは除去されFSHは受容体を結合した膜と影響し合うことができる。
【0017】
さらに他の例では、酵素認識部位の代わりに、撓みやすいヒンジ領域がECDとFSHとの間にクローンされ、ECDはホルモンから酵素により除去されない。この方法では、ECD-FSH分子が卵巣に達すると、ヒンジ結合したECDと、卵巣細胞膜に見られるFSH受容体のECDとの間に競合が起こる。
【0018】
本発明のさらに好適例では、ハイブリッドタンパク質は一対の配列間の集合体からなり、そのうちの一つは(a)としてTBP1(またはaa20からaa161またはaa190までのフラグメント)および(b)としてhCGのαサブユニット、そして(a)としてTBP1(または上記と同じフラグメント)、および(b)としてhCG のβサブユニット、またはそのフラグメントを含む。この例によれば、(b)として選ばれる特定の配列に従い(hCGの全体のβサブユニット、またはフラグメントまたはその修飾)、得られたハイブリッドタンパク質は一つの活性(TBP1のそれのみ)または活性の組み合わせ(TBP1のそれとhCGのそれとの組み合わせ)をもつだろう。後者の場合には、ハイブリッドタンパク質、たとえば、カポジ肉腫とAIDSの代謝消耗との組み合わせの治療に用いられる。
【0019】
さらに本発明の例では、2個のサブユニット(b)間の1またはそれ以上の共有結合が加えられ、得られたハイブリッドタンパク質の安定性を高める。これは、たとえば、1またはそれ以上の非天然鎖間ジスルフィドボンドを加えることにより行われる。これらの交叉結合のための部位はヘテロ二量体ホルモンの既知の構造から導き出すことができる。たとえば、hCGの適当な部位はシステイン残基をαサブユニット残基Lys45およびβサブユニット残基Glu21にて置くことができ、塩ブリッジ(非共有結合)をジスルフィドボンド(共有結合)と置き換える。本発明の他の目的はハイブリッドタンパク質のPEG化または他の化学的に修飾された形態である。
【0020】
さらに本発明の目的は上記ハイブリッドタンパク質のためのDNA配列コード化、ならびに実質的に同じヌクレオチド配列からなるDNA分子である。“実質的に同じヌクレオチド配列”は、遺伝子コードの依存性によって、所定のアミノ酸配列にもコードを与える他のすべての核酸配列を含む。
本発明のハイブリッドタンパク質の製造については、DNA配列(a)は、(b)のように、現存するクローンから得られる。所望の配列(a)のためのDNA配列コード化は所望の配列(b)のためのDNA配列コード化と連結される。これらの溶融生成物の2つは適当なプラスミドに、または異なるプラスミドにおのおの挿入され連結される。いったん形成されると、発現ベクター、または2つの発現ベクターは適当な宿主に導入され、ついでベクターを発現し、上記のような本発明のハイブリッドタンパク質を生成する。
【0021】
本発明のハイブリッドを調製するための好適な方法は所望の配列に特異的なオリゴヌクレオチドを使用するPCR技法によってクローン符号化配列(a)および(b)からコピーされる。
ここに述べたような本発明の任意の組み替えタンパク質の発現は、真核生物細胞(たとえば、イースト、昆虫または哺乳類の細胞)または原核生物細胞で、適当な発現ベクターを用いて行うことができる。当該分野で知られている任意の方法を採用できる。
【0022】
たとえば、上記方法のいずれかにより得られたタンパク質のためにコード化するDNA分子は当該分野でよく知られている技法によって適当に構築された発現ベクターに挿入される(Sambrookら、1989参照)。二重鎖cDNAをプラスミドベクターに単独重合テーリングまたは、合成DNAリンカーまたは平滑末端連結技法を使用する制限結合によって連結する:DNAリガーゼを使用してDNA分子へ結合し、アルカリ性のホスファターゼによる処理による望ましくない結合を避けられる。
【0023】
所望のタンパク質を発現できるためには、発現ベクターはまた遺伝子発現およびタンパク質の生成を可能にするような方法で所望のタンパク質をコードするDNAに連結した転写および翻訳調節情報を含む特定のヌクレオチド配列からなる。まず遺伝子につき転写されるために、ポリメラーゼが結合ししたがって転写プロセスが開始するRNAポリメラーゼによって認識できるプロモーターによって先行されなければならない。使用されている種々のこの種のプロモーターは、異なる効率で働く(強い及び弱いプロモーター)。
【0024】
真核生物宿主には、宿主の性質によって、異なる転写および翻訳調節配列を使用できる。それらはヴィールス源、たとえばアデノヴィールス、ウシ乳頭腫、サルヴィールス等から誘導でき、調節信号が高水準の発現をもつ特定の遺伝子と結合している。例としてヘルペスヴィールスのTKプロモーター、SV40初期プロモーター、イーストgal4遺伝子プロモーター等がある。転写開始調節信号は抑制と活性化に許容でき、その結果、遺伝子の発現が修飾できるように選択される。
【0025】
本発明のハイブリッドタンパク質のためにコードするヌクレオチド配列からなるDNA分子は、実施可能に連結された転写および翻訳調節信号をもつベクターに挿入され、所望の遺伝子配列を宿主細胞に統合できる。導入されたDNAによって安定に転写された細胞は、発現ベクターを含む宿主細胞を選択できる1またはそれ以上のマーカーを導入することによっても選択できる。マーカーはまた栄養要求性の宿主、殺菌性の耐性、たとえば、抗生物質、または銅等の重金属などへの屈光性に対し提供することができる。選択できるマーカー遺伝子は発現されるDNA遺伝子配列に連結するか、または同じ細胞にコトランスフェクションによって導入することができる。追加の要素は本発明のタンパク質の最適合成に必要である。
【0026】
特定のプラスミドまたはウィルスベクターを選択する際の重要な要素は次のものを含む:ベクターを含む受容体細胞を認識し、ベクターを含まない受容体細胞から選択することができる容易さ;特定の宿主に望まれるベクターのコピーの数;および異なる種の宿主細胞間のベクターを“往復する”ことができることが望ましいかどうか。
ベクターまたは構成体を含むDNA配列が一旦発現のために用意されると、DNA構成体は種々の適当な手段:形質転換、トランスフェクション、接合、プロトプラスト融合、電気穿孔法、燐酸カルシウム沈殿、直接ミクロ注入等のいずれかによって適当な宿主細胞に導入することができる。
【0027】
宿主細胞は原核生物または真核生物である。好ましいものは真核生物宿主、たとえば、哺乳類細胞、たとえばヒト、サル、マウス、およびチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞であり、これらは正しい部位に正しい折り畳みまたはグリコシル化を含めて、タンパク質分子への翻訳後修飾を与える。また、酵母細胞はグリコシル化を含む翻訳後ペプチド修飾を行うことができる。多数の組み替えDNA戦略はどれが強いプロモーター配列、および酵母内の所望のタンパク質の生産のために利用できる高いコピー数のプラスミドを利用するかにある。酵母はクローン化した哺乳類遺伝子製品のリーダー配列を認識しリーダー配列を生むペプチドを分泌する(たとえば、プレ−ペプチド)。
【0028】
ベクターの導入後、宿主細胞は、ベクター含有細胞の成長のために選択する選択的媒体中で成長する。クローン化した遺伝子配列の発現は所望のタンパク質の生産になる。
組み替えタンパク質の精製はこのために知られた方法、すなわち、抽出、沈殿、クロマトグラフィー、電気穿孔等、任意の従来の方法のいずれか1つによって行われる。本発明のタンパク質を精製するためさらに好ましく使用できる精製方法は、標的タンパク質を結合しカラム内に含まれるゲルマトリックス上で生成し固定化されるモノクロナル抗体を用いるアフィニティクロマトグラフィーである。組み替えタンパク質を含む不純な生成物はカラムを通過する。タンパク質は特異的抗体によってカラムに結合し、一方、不純物は通過する。洗浄後、タンパク質はpHまたはイオン強度の変化によってゲルから溶出する。
【0029】
ここで使用する“ハイブリッドタンパク質”の語は、2またはそれ以上の異なるタンパク質またはそのフラグメントを含むタンパク質を意味する。
ここで使用する“融合タンパク質”の語は、ハイブリッドタンパク質を意味し、互いに共有結合した2またはそれ以上のタンパク質、またはそのフラグメントからなる。
ここで使用する“凝集”の語は、コンプレックスを形成する2つのポリペプチド鎖間の強い特異的非共有相互作用の形成を意味し、たとえばヘテロ二量体ホルモンのαおよびβサブユニット間に存在するもの(たとえばFSH、LH、hCGまたはTSH)である。
【0030】
ここで使用する“リガンド”または“リガンドタンパク質”の語は、抗体または免疫グロブリンとは別の、受容体のリガンド結合ドメインにより結合することができる分子を意味する;このような分子は天然に生じ、または化学的に修飾または化学的に合成することができる。
ここで使用する“リガンド結合ドメイン”の語は、リガンドを結合する際に含まれ、一般に細胞外ドメインの一部または実質的にすべてである受容体の一部を意味する。
【0031】
ここで使用する“受容体”の語は、膜タンパク質を意味し、各リガンドとの結合は二次細胞応答を引き起こし細胞内プロセスの活性化または阻害となる。
別の局面では、本発明は薬剤としてハイブリッドタンパク質の使用を提供する。薬剤は好ましくは本発明のタンパク質と1またはそれ以上の製薬学的に受け入れられる担体および/または賦形剤からなる製薬組成物の形である。このような製薬組成物はまたさらに本発明の局面を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
本発明を次の実施例によって説明するが、本発明を制限して解釈されるものではない。
実施例
物質と方法
この研究において使用される細胞ラインは、特記しないかぎり、American Type Culture Collection(ATCC)、Rockville, Marylandから入手した。CHO−DUKX細胞ラインはMITにてD.Housemanを通してコロンビア大学でL.Chasinから入手した。ジヒドロ葉酸レダクターゼに対して官能遺伝子を欠くCHO-DUKX細胞は10%胎児ウシ血清(FBS)で補足した完全αプラス修飾イーグル媒体(α(+)MEM)中に型通りに保持された。COS−7細胞は10%FBSで補足したダルベコの修飾イーグル媒体(DMEM)中に型通りに保持された。特定しなければ、細胞は生長のlog段階に維持するように分かれ、培養試薬はGIBCO(Grand Island, New York)から入手した。
【0033】
1.ハイブリッドタンパク質を符号化する遺伝子構築物の集合
p55TNF受容体のための番号付け割り当てはWallach(40)からのクローニングペーパーに基ずき、一方hCGサブユニットのための番号付け割り当てはFiddesクローニングペーパー(41,42)からの番号付け割り当てに基ずく。名称TBP、またはTNF結合タンパク質は、TNFを結合できるTNF受容体の細胞外ドメイン部分を指す。これらの実施例では、DNA構築物は、構築物命名法で示されるTBPのパートナーと領域で、TBPハイブリッドタンパク質と名付けられる。TBP-hCG構築物のすべては、天然p55信号配列の代わりにヒト生長ホルモン(hGH)信号ペプチドを含む。さらに、hGH信号タンパク質は直接TBP残基Asp20の先に立つように置かれ、成熟した分泌タンパク質中の第一の基を作ることが期待されている。これらの修飾はハイブリッドタンパク質のパートナーとしてhCGを用いる基本概念には必須ではない。ハイブリッドタンパク質を符号化するDNAsはPCR系統的分類法を用いて行われる(43)。
【0034】
a.TBP1(20-161)-hCG
初期のTBP-hCG構築はhCGαとβサブユニット(各々残基αCys7またはβPro7で始まる)に短リンカーを通して融解される(残基Cys161を含めてAsp20から)p55TNF受容体の細胞外領域からリガンド結合ドメインを含むように処理される。この構成は、以後TBP1(20-161)-hCGと呼ばれるが、2つの修飾hCGサブユニットのヘテロ二量体、TBP1(20-161)-hCGαとTBP1(20-161)-hCGβである。
【0035】
TBP1(20-161)-hCGα構築に使用されるオリゴヌクレオチドプライマーは:
Primer1(αβ)TTT TCT CGA GAT GGC TAC AGG TAA GCG
CCC(SEQ ID NO:11)
Primer 2(α)ACC TGG GGC AGC ACC GGC ACA GGA GAC ACA
CTC GTT TTC(SEQ ID NO:12)
Primer 3(α)TGT GCC GGT GCT GCC CCA GGT TGC CCA GAA
TGC ACG CTA CAG(SEQ ID NO:13)
Primer4(α)TTT TGG ATC CTT AAG ATT TGT GAT AAT AAC
AAG TAC(SEQ ID NO:14)
であった。
【0036】
これらの実施例に記載されたこれらと他のプライマーのすべては、phosphoramidite 化学を用い、アプライド バイオシステムズ モデル392 DNA合成機(ABI, Foster City, California)で合成した。
【0037】
TBP-hCGサブユニット構築物の両者は同じ5’末端(すなわちhGH/TBP構築物の5’末端)を有するので、プライマー1(αβ)は両TBP1-hCGサブユニット構築のために使用した。TBP1(20-161)-hCGβ構築のために使用した他のプライマーは:
Primer 2(β)CCG TGG ACC AGC ACC AGC ACA GGA GAC
ACA CTC GTT TTC(SEQ ID NO:15)
Primer3(β)TGT GCT GGT GCT GGT CCA CGG TGC CGC
CCC ATC AAT(SEQ ID NO:16)
Primer4(β)TTT TGG ATC CTT ATT GTG GGA GGA TCG
GGG TG(SEQ ID NO:17)
であった。
【0038】
プライマー2(α)と3(α)は逆補体であり、p55細胞外ドメインに対しコーディング領域の3’末端とhCGαサブユニットの5’末端の両方をカバーする。同様に、プライマー2(β)と3(β)も逆補体であり、p55細胞外ドメインに対しコーディング領域の3’末端とhCGβサブユニットの5’末端の両方をカバーする。
【0039】
二つのPCR反応は二つのTBP-hCGサブユニット構築物の各々に対し行った。最初はプライマー1(αβ)と2(αまたはβ)を使用し、そして鋳型としてhGH信号ペプチド(プラスミドpCMVhGHspcDNA.pA4)によって先行したプラスミド符号化可溶性p55残基20−180を使用した。第二はプライマー3(αまたはβ)と4(αまたはβ)を使用し、そして鋳型としてプラスミドpSVL-hCGαまたはpSVL-hCGβを使用した。PCRは、製造元の推薦によりニューイングランドバイオラブズ(Beverly、Massachusetts)からのVent(登録商標)ポリメラーゼを使用して行い、各反応につき25サイクルと次の条件を使用した:
【0040】
100μgの鋳型DNA
1μgの各プライマー
2UのVent(登録商標)ポリメラーゼ(New England Biolabs)
99℃、30秒間 変性
アニーリングは:プライマー1(αβ)と2(α)につき59℃、30秒間
プライマー3(α)と4(α)につき59℃、30秒間
プライマー1(αβ)と2(β)につき57℃、30秒間
プライマー3(β)と4(β)につき63℃、30秒間、75℃、75秒間伸長
PCR生成物は2%アガロースゲル中電気泳動、臭化エチジウム染色によって期待された大きさであることを確認した。フラグメントを次にカラム製造元の推薦に従いWizardカラム(Promega)に通して精製した。
【0041】
最終のTBP1(20-161)-hCGαのためのコーディング配列はプライマー1(αβ)とプライマー4(α)を使用し、鋳型として最初のPCR反応で得られたp55とhCGαフラグメントから精製生成物を使用して溶融PCRにより集めた。まず、プライマー2(α)と3(α)間の重なりにより変性しともにアニーリングできる2個の鋳型を、何も追加のプライマーがない10サイクルのPCRを通過させた。これらのサイクルのための条件は、アニーリングを67℃で行い伸長を2分間行ったことを除き、先に使用したものと基本的に同じである。10サイクルの最後に、 プライマー1(αβ)と4(α)を添加し、さらに10サイクルを行った。この最終組の条件は、59℃のアニーリング温度を使用した以外は、先に使用したものと同じであり、伸長は75秒間行った。
【0042】
この反応の生成物の分析は1%アガロースゲルで電気泳動により行い、約1100bpの期待されたフラグメントを得た。反応はウイザルトカラムに通しフラグメントを精製し、次にXbaIとBamHIで消化し0.7%低融点アガロースゲルで再精製した。精製したフラグメントは、まずXbaIとBamHIで消化し0.8%低融点アガロースゲルでゲル精製し、プラスミドpSVL(Pharmacia)にサブクローンした。T4リガーゼで連結反応し、混合物を使用してAG1 E. coli を形質転換し次に終夜培養のため37℃でLB/アンピシリンプレートに培養した。アンピシリン耐性コロニーからのプラスミドDNAsをXhoIとBamHIで消化により分析し、(この消化で摘出される)挿入物の存在を確認した。6個のクローンが挿入物を含むことを見出し、1つ(クローン7)はさらに促進するために選択しpSVLTBPhCGα(TBP1(20-161)-hCGαを含む)を指定した。このベクターでの挿入のジデオキシDNA配列分析(Sequenase(登録商標)、U.S. Biochemicals, Cleveland, Ohioを使用)は構成が正しいことを確認し、望ましくない変化は導かれなかった。
【0043】
TBP1(20-161)-hCGβのための最終コーディング配列は融合PCRとプライマー1(αβ)と4(β)を使用し、鋳型として最初のPCR反応から得られたp55とhCGβフラグメントからの精製生成物を使用するTBP1(20-161)-hCGαのために記載されたものと同じ方法で集められた。関心のある挿入物を含む得られたpSVLプラスミドはpSVLTBPhCGβと呼ばれた。
【0044】
b.TBP(20-190)-hCG
TBP-hCGタンパク質の第二の組は、TBP(20-161)-hCG構成物を修飾し、最初の類似物の 20-161領域の代わりに、Asp20からThr190まで間隔を置くTBPを含む類似体を生成した。これはプラスミドpSVLTBPhCGαのBglIIとXbaI部位との間にフラグメントを、変化を含むPCRフラグメントで置換することによってなされた。このPCRフラグメントは融合PCRを使用して生成した。
【0045】
プライマーは:
Primer1 TTT TAG ATC TCT TCT TGC ACA GTG GAC(SEQ ID NO:18)
Primer2 TGT GGT GCC TGA GTC CTC AGT(SEQ ID NO:19)
Primer3 ACT GAG GAC TCA GGC ACC ACA GCC GGT GCT GCC CCA GGT TG (SEQ ID NO:20)
Primer4 TTT TTC TAG AGA AGC AGC AGC AGC CCA TG(SEQ ID NO:21)
であった。
【0046】
プライマー1と2を使用して161-190からの追加のp55残基をコーディングする配列を生成する。PCR反応は基本的には先に記載したように行い、鋳型として1μgの各プライマーとpUC-p55を用いた。同様に、プライマー3と4を使用してPCRによりTBPコーディング領域の3’末端と、hCGαサブユニットコーディング領域の5’末端との間のリンカーを生成し、鋳型としてはプラスミドpSVLTBPhCGαを使用した。これらのPCR反応からの生成物は、8%ゲルのポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)、ついでWizartカラムをしようして精製することにより正しい大きさ(それぞれ約296bpと121bpであることが確認された。プライマー2と3は重なる領域を含むような設計であり、2個のPCR生成物(プライマー1と2、プライマー3と4から)は融合PCRのためにプライマー1と4を用いてアニーリングすることができた。融合反応に続き、1.5%アガロースゲルとWizardカラムを用いて約400bpの所望の生成物を確認し精製した。 このDNAをつぎにBglIIとXbaIで消化し、BglII/XbaI消化pSVLTBPhCGαで連結した。形質転換AGI E. coli から単離したプラスミドにおける挿入物の存在はBglIIとXbaIでの消化により確認された。新規の構築物はpSVLTBP(20-190)-hCGαと呼ばれた。
【0047】
同様に、プラスミドpSVLTBPhCGβはBglII-XcmIフラグメントの置換により修飾した。しかし、これは、溶融PCR生成物を用いるよりは、単一のPCR生成物のサブクローニングにより行われた。プライマー1と2b(下記参照)は鋳型としてpUC-p55を使用した。
【0048】
Primer2b TTT TCC ACA GCC AGG GTG GCA TTG ATG GGG CGG CAC CGT GGA CCA GCA CCA GCT GTG GTG CCT GAG TCC TCA GTG(SEQ ID NO:22)
【0049】
得られたPCR生成物(約337bp)は上記と同様に確認し精製し、BglIIとXcmIで消化し、ついでBglII/XbaI消化pSVLTBPhCGβに連結した。形質転換AGI E. coli から単離したプラスミドにおける挿入物の存在はBglIIとXcmIでの消化により確認された。新規の構築物はpSVLTBP(20-190)-hCGβと呼ばれた。
【0050】
新規の構築物は続けてDNA配列分析により確認した。
これら新規のpSVLをベースにしたプラスミドを生成するのに加え、これらの構築物も、CHOでの安定な発現のためにさらに適しているらしい他の発現ベクター、特にプラスミドCLH3AXSV2DHFRとして先に述べたベクターDαに、サブクローンした(45)。これはpSVLをベースとしたベクターでの挿入物の側面に位置するBamHI部位をXhoI部位に転換し、ついでXhoIで挿入物を摘出し、これをXhoI消化Dαにクローニングして完成した。
【0051】
2.ハイブリッドタンパク質の過渡的で安定な発現
TBP-hCGハイブリッドタンパク質の過渡的な発現のためのCOS-7細胞(ATCC CRL 1651、参照46)のトランスフェクションは電気穿孔法(47)を用いて行った。指数関数的に生長するCOS-7細胞をトリプシン化により除去し、弱い遠心分離で(800rpm、4分間)収集し、冷リン酸塩緩衝塩水(PBS)、pH7.3-7.4で洗浄し、次に遠心分離で再びペレットにした。細胞を400μlの冷PBSにつき5x10個の細胞の濃度で再懸濁し、予冷した2mmのギャップの電子穿孔キュベット中、10μgのプラスミドDNAと混合した。コトランスフェクションのため、5μgの各プラスミドを使用した。キュベットと細胞を氷でさらに10分間冷やし、次にBTXモデル600器具を用い、125V、950μF、およびR=8の条件で電子穿孔を行った。その後、細胞をセットし、10分間氷で冷やし、室温で9.5mlの完全媒体(10%胎児ウシ血清(FBS)と1%L-グルタミンを追加したDulbeccoの修飾Eagleの媒体(DMEM))を含む15mlの円錐形チューブに移し、5分間室温で放置した。15mlのチューブで静かに混合した後、全部の内容物を2枚のp100プレートに接種し、37℃、5%CO2インキュベーターに置いた。18時間後、媒体を変え、ときには、新媒体は1%または0%のFBSのみを含んでいた。さらに72時間後、条件を付けた媒体を取り入れ、遠心分離し細胞を除去し、次に−70℃で凍らせて貯蔵した。
【0052】
過渡的なまたは安定な発現のためCHO−DUKX(CHO)のトランスフェクションをDNAのリン酸カルシュウム沈殿化を使用して行った。トランスフェクション24時間前に、指数関数的に生長するCHO細胞を100mmの培養プレートに1枚につき7.5x105個の細胞を置いた。トランスフェクションの日に、10μgのプラスミドDNAをトランスフェクション緩衝液(下記参照)0.5mlに入れ、31μlの2M CaCl2を添加し、DNA-CaCl2溶液を渦巻き攪拌して混合し、室温で45分間放置した。この後、媒体をプレートから吸い上げ、DNAを殺菌したプラスチックのピペットで細胞に添加し、細胞を室温で20分間放置した。この後、10%FBSを含む5mlの完全α(+)MEMをプレートに添加し、37℃で4−6時間インキュベーションした。媒体を次にプレートから吸い上げ、細胞を、37℃で3.5分間、トランスフェクション緩衝液中15%グリコール溶液でインキュベーションしてグリコールショックにかけた。グリコール溶液を除いた後、細胞を2回PBSで洗浄し、10mlの完全α(+)MEM、10%FBSで再生し、37℃のインキュベーターに戻した。安定なトランスフェクションのために、48時間後、細胞を1:10に分け、選択媒体(完全αマイナスMEM(ヌクレオシドを欠く)、10%透析FBS、および0.02μmのメトトレキセート)を用いた。非トランスフェクション(非耐性)細胞は一般的に3−4週間で除去され、トランスフェクションしたメトトレキセート耐性細胞の母集団を残した。
【0053】
3.発現の定量化
トランスフェクションした細胞によるハイブリッドタンパク質の分泌を、製造元の指示に従って可溶性p55のための市販のアッセイキットを用い評価した(R&D Systems; Minneapolis, Minnesota)。このアッセイはまた、バイオアッセイで使用される投与量を選択するための基準として用いられる条件を付けて処理した媒体中、ハイブリッドタンパク質の評価を与える。
【0054】
4.ヘテロ二量体生成の評価
ヘテロ二量体を合わせ形成するTBP-hCGサブユニット融合の能力を評価するため、hCGサブユニットへ抗体を使用するサンドウィッチイムノアッセイを行った。このアッセイでは、hCGβサブユニットへのモノクロナル抗体はミクロ力価プレートにコーティングし被検体捕獲に使用する。一次の検出抗体はヒトTSHαサブユニット(#082422G−Biodesign International;Kennenbunkport, Maine)に対し生じたヤギポリクロナルであり、次にはセイヨウワサビパーオキシダーゼ共役ウサギ抗ヤギポリクロナル抗体を用い検出する(Cappel; Durham, North Carolina)。
【0055】
複数の異なる抗hCGβサブユニット抗体をこの作業に使用し、そのすべてはフリーのαサブユニットと検出できる交叉反応性を示さない。これらの抗体(3/6)の一つは市販品として入手できるMAIAclonehCGアッセイキットで使用する(Biodata; Rome, Italy)。
【0056】
高タンパク質結合ミクロ力価プレート(Costar#3590)はコーティング緩衝液(PBS、pH7.4、0.1mM Ca++、0.1mM Mg++)中5μg/mlの抗体溶液100μl/wellでインキュベーション(2時間37℃)により抗体を捕獲してコーティングした。洗浄溶液(PBS、pH7.4、+0.1% Tween 20)で一度洗浄した後、プレートは、ブロッキング溶液(PBS中3%ウシ血清アルブミン(BSA; 分画V−A-4503 Sigma)pH7.4)でウェルを完全に充填し(〜400μl/well)ブロックし、1時間37℃または終夜4℃でインキュベーションした。プレートは次に2回洗浄溶液で洗浄し、100μl容量となるように希釈液(5mg/ml BSA PBS中、pH7.4)で希釈した参照および実験試料を加える。試料およびプレートを2時間37℃でインキュベーション後、再度プレートを2回洗浄液で洗浄する。希釈液中1:5000で希釈した一次検出抗体を添加し(100μl/well)1時間37℃でインキュベーションする。希釈液中1:5000で希釈した二次検出抗体(HRP共役ウサギ抗−ヤギIg)を添加し(100μl/well)1時間37℃でンキュベーション後、プレートを3回洗浄液で洗浄する。100μlのTMB培養基溶液(Kirkegaard and Perry Laboratories)を添加し、プレートを20分間暗所で室温にてインキュベーション後、50μl/well 0.3M H2SO4を添加して酵素反応を停止する。プレートを次に450nmの波長でミクロ力価プレートリーダーを用いて分析する。
【0057】
5.部分精製
これらのハイブリッドタンパク質の活性をさらに良く定量するために、TBP-hCGハイブリッドタンパク質を一部イムノアフィニティクロマトグラフィで精製した。使用した抗体はR&D Systemsから入手できるモノクロナル(MAB #225)であった。カラムは、製造元(Pharmacia)の指示に従い抗体を充填したCNBr-活性化セファローズであった。
【0058】
条件付きの媒体は、50ml SFMII媒体(GIBCO)の毎日の採取物を各ラインにつき5個の採取物を用い、各ラインの合流T-175フラスコから収集した。収集物は遠心分離にかけ(1000RPM)細胞質の破片を除去した。物質を次に市販のイムノアッセイを用いTBP内容物についてアッセイし、見かけのTBP濃度が約50ng/mlになるように濃縮した。
【0059】
10mlの濃縮TBP-hCG(試料#18873)は、NaClを添加して約1MのNaClに導き約85mS/cmの導電率まで溶液を調整した。これを0.5mlの抗−TBPイムノアフィニティカラムに通した。通した物を収集し2回カラムに通した。この後、カラムをPBS中1MのNaClで洗浄した。結合したTBP(20-161)-hCGを50mMのクエン酸(pH2.5)で溶出した後に収集した。溶出液(約7ml)を製造元の(Amicon)指示に従ってAmicon Centricon-10’sを使用して濾過し約200μlの容量まで濃縮した。約800μlのPBSを添加して1mlの試料容量とし、4℃でバイオアッセイの試験を行うまで貯蔵した。
【0060】
6.抗−TNF活性の評価
多数のインヴィトロTNF誘発細胞毒アッセイは可溶性TNF受容体の類似体を評価するために記載されている。われわれはヒト胸癌細胞ライン、BT-20細胞(ATCC HTB 19)を用いるアッセイを使用した。TNFバイオアッセイのための基本としてこれらの細胞の使用は、先に記述した(48)。これらの細胞は10%熱不活性化FBSで補足したRPMI 1640媒体中で37℃にて培養する。細胞は最大80−90%の集合まで生長し、T175cm2フラスコにつき約3x106個の細胞の種密度で3−4日毎にはがし取る必要がある。
【0061】
BT-20アッセイはTNFで処理後、細胞の生存を評価するための検出方法として、細胞質染色、クリスタルヴァイオレットの含有物を使用する。死んだ細胞は染料を吸収し保持することができない。
【0062】
簡単に述べると、抗−TNF活性のアッセイに使用されるプロトコルは次の通りである。組み替えヒトTNFα(R&D systems)と実験試料は媒体(RPMI 1640と5%熱不活性化FBS)中に構成され96−ウェル培養プレートのウェルに添加される。細胞は次にこれらのウェルに1x10個の細胞/ウェルの密度で培養される。添加したTNFαの定量は滴定研究で初期に決定し、約50%の細胞が殺されたところで1回分の投与量とする。
【0063】
試料を添加後、細胞を48時間39℃で培養し、その後、生きている細胞の割合をクリスタルヴァイオレット染色とミクロ力価プレートリーダーを使用して決定する(570nm)。
【0064】
結果
1.研究による構築
研究したハイブリッドタンパク質の設計を以下に簡単にまとめる;2つのコントロールタンパク質、単量体の可溶性p55(γ-hTBP-1)と二量体TBP-イムノグロブリン融合タンパク質(TBP-IgG3)(基本的には(10)に記載されたように調製した)を比較のために研究した。
【0065】
構築物 TBPN-末端 TBPC-末端 融合相手
γ−hTBP−1 9と20の混合 180 無
TBP−IgG3 9と20の混合 190 IgG3重鎖 一定領域
TBP(20-161)-hCG 20 161 hCGαとhCGβ(ヘテロ二量体)
TBP(20-190)-hCG 20 190 hCGαとhCGβ(ヘテロ二量体)

【0066】
DNAs符号化の配列、TBP(20-190)-hCGおよびTBP(20-161)-hCGはそれぞれ図1と図2に与えられる。構築物の図による概要は図3にある。
【0067】
2.TBP-hCGタンパク質の分泌
試験した構築物の全部が生成し、トランスフェクションした哺乳類細胞により培養媒体に分泌したことを見出した。これを示すデータは表1と2に示される。
【0068】
3.ヘテロ二量体にTBP-hCG(α/β)融合蛋白質は集合する
TBP-hCGαとTBP-hCGβの組み合わせはhCGヘテロ二量体のためのサンドウィッチアッセイを使用して確認した。αとβサブユニット融合の合わさったトランスフェクションのみがヘテロ二量体を検出した(表3)。
【0069】
4. TBP-hCGハイブリッドタンパク質はTBP単量体よりも活性を増加したことを示す
COS-7またはCHO細胞に生成したハイブリッドタンパク質はBT-20バイオアッセイでTNFαの有効なインヒビターであることが見出された。試験した試料の若干を表4にまとめる。
負のコントロール(模擬トランスフェクションからの条件を付けた媒体)は1x媒体試料のために含めた。
【0070】
図4-6に示されるように(y軸の点)、TNF (2.5μg/ml) の追加は生きている細胞数を明らかに減らした(OD 570でアッセイしたとき)。どの場合にも、活性試料は最大保護効果として添加したTNFのないときに見られる水準まで細胞生存能の回復に影響する(すなわち、“細胞単独”をラベルしたコントロール)。
【0071】
正のコントロール、γ-hTBP-1とTBP-IgG3は、両方とも保護するものであり、それぞれ、γ-hTBP-1(図4-6)に対し約100ng/ml、TBP-IgG3(図4)に対し1.5ng/mlのED50sと明らかな投与量依存性を示している。
1x媒体(CHOまたはCOS)からまたはイムノ精製からのTBP-hCG構築物は、2-11 ng/ml(図4-6)からの範囲の約ED50sで投与量依存保護を示す。
【0072】
インヴィトロバイオアッセイからの結果は表5に報告されている。データはハイブリッドタンパク質がTNF細胞毒性を阻害し、それらが実質的にTBP単量体よりも良く効くことを示す。負のコントロールは保護活性が全くなかった。
【0073】
TBPの二量化が効能を増加する可能性に加えて、またハイブリッドタンパク質の活性がTBPとの二量化相互作用に関係せず、むしろ細胞表面TNF受容体に結合する可溶性TBP/TNFを妨げるハイブリッドの相手による立体干渉に関係する可能性がある。
【0074】
ここに引用した全参考文献を、刊行された雑誌記事または要約、または対応するU.S.または外国の特許出願、発行されたU.S.または外国の特許を含め、または任意の他の参考文献を、完全にここに、全データ、表、図面、そして引用文献中に示されたテキストを参考文献として組み込む。さらに、ここに引用された参考文献内に引用された参考文献の全内容もまた完全に参考文献としてここに組み込む。
【0075】
既知の方法工程、従来の方法工程、既知の方法または従来の方法に関連したものは、本発明の任意の局面、記載または実施例が関連した技術で開示し、教示し、または示唆されることを承認するものではない。
【0076】
以下の特定例の記述は、本発明の一般的性質を完全に示すので、ほかの人は、当業者内の知識を利用して(ここに引用した参考文献の内容を含め)、過度の実験をすることなく、本発明の一般的な概念から逸脱することなく、種々の応用のため、このような特定例を容易に変更および/または採用することができる。従って、このような採用や変更は、ここに示される教示と案内にもとずき、開示された好適例と同等の意味と範囲にあることを意図するものである。ここの述語または用語は記述のためのものであり、制限するものではなく、本明細書の用語または述語はここに示される教示と案内に照らして、当該分野の当業者の知識と合わせて、熟練者により解釈されるべきである。
【0077】
【表1】

【0078】
【表2】

【0079】
【表3】

【0080】
【表4】

【0081】
【表5】

【0082】
【表6】

【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】図1(a)はTBP(20−161)−hCGαおよびTBP(20-161)-hCGβ構築をそれぞれ示し、対応する配列(SEQ ID NOS:1-4)を示す。
【図2】図1(b)はTBP(20−161)−hCGαおよびTBP(20-161)-hCGβ構築をそれぞれ示し、対応する配列(SEQ ID NOS:1-4)を示す。
【図3】図2(a)はTBP(20−190)−hCGαおよびTBP(20-190)-hCGβ構築をそれぞれ示し、対応する配列(SEQ ID NOS:5-8)を示す。
【図4】図2(b)はTBP(20−190)−hCGαおよびTBP(20-190)-hCGβ構築をそれぞれ示し、対応する配列(SEQ ID NOS:5-8)を示す。
【図5】図4はBT-20細胞のTNFα誘発細胞毒性のCHO細胞発現TBP-hCG(20−190)および種々のコントロールの投与依存保護効果を示すグラフである。
【図6】図5はBT-20細胞のTNFα誘発細胞毒性のCOS細胞発現TBP-hCG(20−190)および種々のコントロールの投与依存保護効果を示すグラフである。
【図7】図6はBT-20細胞のTNFα誘発細胞毒性のアフィニティ精製CHO細胞発現TBP-hCG(20−161)、および種々のコントロールの投与依存保護効果を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二量体を形成する2個の相互発現アミノ酸配列からなるハイブリッドタンパク質であり、各々は:
a)ホモマー受容体、ヘテロマー受容体の鎖、および、リガンド受容体結合能を保持するそのフラグメントから成る群から選択される少なくとも1のアミノ酸配列;および
b)ヘテロ二量体蛋白質性のホルモンのサブユニット、または他のそのサブユニットとヘテロ二量体を形成するためのサブユニットの能力を保持するそのフラグメント;
ここで配列(a)および(b)は直接またはペプチドリンカーを介して結合し、そして前記2個の相互発現配列の各々において配列(b)が二量体コンプレックスを形成するように集まることができる
からなる、ハイブリッドタンパク質。
【請求項2】
前記配列(a)がTBP1, TBP2または未だリガンド結合ドメインを含んでいるそのフラグメント;IFNα/β受容体またはIFNγ受容体の細胞外ドメイン;ゴナドトロピン受容体またはその細胞外フラグメントからなる群から選ばれる、請求項1記載のハイブリッドタンパク質。
【請求項3】
前記配列(b)がhCG、FSH、LH、TSHまたはインヒビンのサブユニット、およびそのフラグメントの群から選ばれる、請求項1記載のハイブリッドタンパク質。
【請求項4】
前記配列(b)がhCGであり、hCGがその生物学的活性を除去するように変異誘発されている、請求項3記載のハイブリッドタンパク質。
【請求項5】
配列(a)が配列(b)のカルボキシ末端、アミノ末端または両方の末端に連結している、請求項1記載のハイブリッドタンパク質。
【請求項6】
前記ハイブリッドタンパク質が単官能、二官能、または多官能分子である、請求項1記載のハイブリッドタンパク質。
【請求項7】
前記2個の相互発現したアミノ酸配列の各々が配列(a)として、TBP1のための配列またはTBP1のアミノ酸残基20−161または20−190に相当するそのフラグメント、および配列(b)として、hCGの各αおよびβサブユニットまたはそのフラグメントを含む、請求項1記載のハイブリッドタンパク質。
【請求項8】
前記タンパク質がSEQ ID NO:2および4、またはSEQ ID NO:6および8からなる、請求項7記載のハイブリッドタンパク質。
【請求項9】
前記2個の相互発現したアミノ酸配列の各々が配列(a)として、ゴナドトロピン受容体の細胞外ドメイン、および配列(b)として、ゴナドトロピンの各αおよびβサブユニットを含む、請求項1記載のハイブリッドタンパク質。
【請求項10】
前記配列(a)がFSH受容体細胞外ドメインであり、配列(b)がFSHのサブユニットである、請求項9記載のハイブリッドタンパク質。
【請求項11】
前記配列(a)および(b)がペプチドリンカーと連結している、請求項9記載のハイブリッドタンパク質。
【請求項12】
前記ペプチドリンカーが酵素開裂部位を有する、請求項11記載のハイブリッドタンパク質。
【請求項13】
前記酵素開裂部位がトロンビン開裂部位である、請求項12記載のハイブリッドタンパク質。
【請求項14】
前記酵素開裂部位が卵巣に見出される酵素によって認識され開裂される、請求項12記載のハイブリッドタンパク質。
【請求項15】
前記ペプチドリンカーが可撓性ヒンジとして役立つ、請求項11記載のハイブリッドタンパク質。
【請求項16】
2個のサブユニット(b)間の1またはそれ以上の共有結合が加えられる、請求項1記載のハイブリッドタンパク質。
【請求項17】
請求項1記載のハイブリッドタンパク質を形成する前記2個のアミノ酸配列の1個をコード化するDNA分子。
【請求項18】
請求項17記載のハイブリッドタンパク質を形成するアミノ酸配列をコード化する1または2個のDNA分子を含む発現ベクター。
【請求項19】
前記DNA分子がSEQ ID NO:1、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:5またはSEQ ID NO:7である、請求項18記載の発現ベクター。
【請求項20】
請求項18記載の1または2個の異なる発現ベクターを含み、前記ハイブリッドタンパク質を発現できる宿主細胞。
【請求項21】
請求項19記載の宿主細胞を培養し、これにより発現されたハイブリッドタンパク質を回収することからなるハイブリッドタンパク質の製造方法。
【請求項22】
請求項1記載のハイブリッドタンパク質、および製薬学的に許容できる担体および/または賦形剤からなる製薬組成物。
【請求項23】
請求項1ないし16のいずれか1項記載のハイブリッドタンパク質を薬剤の調製に使用する方法。
【請求項24】
請求項7記載のハイブリッドタンパク質をTNPの抑制を要するヒトの疾病のための薬剤の調製に使用する方法。
【請求項25】
請求項10記載のハイブリッドタンパク質を濾胞性成熟のための薬剤の調製に使用する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−19258(P2008−19258A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−181534(P2007−181534)
【出願日】平成19年7月10日(2007.7.10)
【分割の表示】特願平9−529498の分割
【原出願日】平成9年2月20日(1997.2.20)
【出願人】(599001530)アプライド リサーチ システムズ アース ホールディング エヌ.ヴィ. (2)
【Fターム(参考)】