ヘプタペプチドパターン及び細胞透過ドメインを含む相互作用ポリペプチド
本発明は、配列X1X2X3X4X5X6X7のヘプタペプチドパターンと形質導入ドメインからなり、又は配列X1X2X3X4X5X6X7のヘプタペプチドパターンを含み、キメラポリペプチドであること、前記アミノ酸X7が前記ポリペプチドのC末端の5及び35アミノ酸の間に位置すること、及びドメイン(b)がパターン(a)に関してC末端に位置すること、を特徴とする相互作用ポリペプチドに関する。本発明は、細胞の表現型を修飾することができる相互作用ポリペプチドを同定するためのスクリーニング方法及び表現型スクリーニング又は治療目的のための前記相互作用ポリペプチドの使用に関する。最後に、本発明は、HIV−1 Revウイルスタンパク質の機能を修飾することができる相互作用ポリペプチドに関する。
【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
本発明は、ヘプタペプチドモチーフ(パターン)と細胞透過領域とを含む相互作用ペプチド、並びに、細胞の表現型を修飾することができる相互作用ペプチドを同定するためのスクリーニング方法、及び細胞内標的と相互作用することができるその他の分子を同定するためのスクリーニング方法に関する。本発明は、表現型スクリーニングにおける、又は治療目的のための、上記相互作用ポリペプチドの使用にも関する。最後に、本発明は、Revウイルスタンパク質の機能を修飾することができる相互作用ポリペプチド、及びRevと相互作用することができるその他の分子を同定するためのスクリーニング方法におけるそれらの使用に関する。
【0002】
ペプチドの相互作用は、主として、細胞内及び細胞間の連絡;細胞の機能に必要であり、タンパク質とそのリガンド間の複数の複雑な相互作用を通じて、その環境に適合する。新規タンパク質が同定されても、新規タンパク質に対するパートナーが同定でき、タンパク質の細胞機能が決定できるようになるまでは、この知見も、当初は関心を抱かせるものではないように思われる。
【0003】
さらに、多くの事例では、タンパク質は、異なるパートナーと相互作用することができる。これらの相互作用から、パートナーの各々について、同一の機能が生じることがあり(例えば、異なるペプチドリガンドをリン酸化するタンパク質)、又は、そこから、完全に異なる機能が生じることもある。これは、細胞中でのそれらの本来の機能とは独立して、ウイルスの侵入点としても作用する膜タンパク質の場合に特に当てはまる。あるタンパク質の機能は、このため、そのタンパク質が相互作用するペプチド又はタンパク質によって主として決定される。
【0004】
タンパク質相互作用は、一般には、静電的結合、水素結合及び立体的な障害による反発的な相互作用など、様々な結合による、タンパク質上に存在する高度に特異的な部位(2、3のアミノ酸)間の局所的な相互作用の組み合わせである。
【0005】
あるタンパク質は、あるタンパク質ドメインと特異的に相互作用する場合があり、その結果、このタンパク質は当該ドメインを共有するタンパク質のクラス全体と相互作用する可能性がある。
【0006】
あるタンパク質について、一般には、少数の天然ペプチドパートナーのみが知られているが、その相互作用能力はずっと重要である。あるタンパク質は、相互作用を作り出すことができ、他のペプチドに対してアクセス可能な多数の部位を有し得る。
【0007】
このため、新規相互作用パートナーを決定することによって、相互作用を修飾し(速度論、特異性を擾乱、抑制、改善、変化するなど)、又は既存の相互作用を模倣し、又は新規相互作用をもたらすことが可能となり得る。
【0008】
新規相互作用パートナーの同定は、一般的には、2つの異なる状況下で行われる。
【0009】
第一のケースでは、細胞内又は細胞外であり得る所定の標的に対して、パートナーが探索される。このようなケースでは、標的と相互作用し得るポリペプチドを産生することが可能である。ポリペプチドが相互作用しなければならない標的タンパク質の構造、電荷分布、誘引および反発力を考慮に入れることによって、そのポリペプチドの配列が決定される。その段階は、通常、分子モデリングによって実施される。そのアプローチには、標的タンパク質の極めて詳細な知見、特に、その三次元構造が必要である。標的に対して、多くの候補ポリペプチドを調べるために、スクリーニングすることも可能である。スクリーニングは、試験ポリペプチドの一つと所定の標的間の相互作用を実証することが可能でなければならない。このようなケースで一般的に使用されるスクリーニングは、所定の標的とポリペプチドの候補が同時に発現される酵母ツーハイブリッドスクリーニングシステム(米国特許US−A−5 580 736)である。
【0010】
第二のケースでは、標的タンパク質が決定されない。すなわち、新規相互作用パートナーは、それらが相互作用する標的タンパク質を知らずに、細胞のある表現型を修飾するそれらの能力に対してスクリーニングすることもできる。その場合には、細胞を介して異なるポリペプチドを発現し、予期される方向で表現型を修飾することが可能なポリペプチドを同定することからなる表現型スクリーニングが使用される(US−A−6 153 380)。
【0011】
その状況の変形は、2つの他のタンパク質間の相互作用を抑制、破壊、修飾又は不安定化することができる新規相互作用パートナーをスクリーニングすることからなる。その場合にも、一般に、表現型スクリーニングが使用される。他の2つのタンパク質間の相互作用に対してパートナーが作用する様式は、必ずしも明らかでない。
【0012】
上記スクリーニングに使用されるべきポリペプチドを作製するために、数多くの構築物が提案されており、特に、その配列がランダムであるモチーフがその中に挿入された一定のタンパク質配列(プラットフォームと称されることがある。)が同時に存在することを特徴とする(国際特許出願WO−A96/02561を参照)。その配列を変更することによって、次いで、ポリペプチドの完全なファミリーを作製し、続いて、それらが細胞内で相互作用する能力について検査することが可能である。
【0013】
細胞内タンパク質に対して新規相互作用パートナーを決定するためにこのアプローチが使用される場合には、新規相互作用パートナーが探索されているタンパク質がその中で発現されている細胞中で検査すべき構築物を発現させることができるクローニング及び形質転換を利用するのが通常である。
【0014】
治療の分野では、このことは、パートナーの候補が検出されれば、次いで、細胞内部で作用する薬物をそこから作製可能であることを意味する。すなわち、それを細胞中に透過させる手段が発見されるはずである。遺伝子治療は、通常、このステップを容易に達成することができない。相互作用パートナー上への細胞の透過を促進するモチーフを移植することからなる、その他の解決法には、予想不可能な様式で相互作用パートナーを修飾するという欠点がある。この修飾後に、リガンドとして選択されたタンパク質とそれがなお相互作用可能であるという保証はない。
【0015】
さらなるアプローチは、モデリングによって、タンパク質の模倣物を作製することからなるが、その方法は、完全に開発されたわけではない。さらに、多くの場合、細胞の膜を横切ることができないか、又は容易に横切ることができず、このため、その分子を産生した目的の相互作用をもたらさない分子が産生される。細胞の透過を保証するモチーフをこれらの分子上に移植しなければならないのであれば、上記の場合と同様に、それらの分子がリガンドとして選択されたタンパク質となお相互作用できるという保証はない。
【発明の開示】
【0016】
本発明の目的は、細胞透過ドメインが相互作用パートナーと会合するように、特定の構造を有する新規相互作用ペプチドを提案することである。最初のスクリーニング後に、このようなパートナーが、目的のパートナーと相互作用可能であることが示されれば、スクリーニングから薬物の作製への移行によって、スクリーニング工程中に実証された相互作用を擾乱するリスクがある新しいモチーフが付加されることはない。
【0017】
本発明の相互作用ペプチドは、(例えば、リンパ球及び/又はマクロファージ中への)細胞透過及びパートナーとの相互作用という二重の性質を有している。
【0018】
本発明者らは、ヘプタペプチドモチーフを有し、ウイルス又は細胞起源のタンパク質標的に結合することによって、その活性を阻害できる小タンパク質を作製することができる方法を開発した。これらの小タンパク質は、細胞中に透過できるように設計された。
【0019】
本発明の相互作用ポリペプチドは、安定化ドメイン、リンカー又はその他の成分も有し得る。
【0020】
本発明は、ある表現型を修飾し、又はある標的と相互作用することができる新規ポリペプチドを作製するための異なるスクリーニング方法も提案する。本発明は、あるタンパク質標的と相互作用できる化学分子をスクリーニングする方法も提案する。
【0021】
このようなパートナーの決定が重要であるドメインはウイルスの複製である。ヒト又は動物細胞中でのある種のウイルスの複製は、限られた数のウイルスタンパク質の発現によって可能となり、このウイルスタンパク質の幾つかは、このプロセスを引き起こす上で不可欠な活性を有する。本発明のスクリーニングに従って確定され、このため、細胞中に透過し、他のウイルス又は細胞のタンパク質との必要な接触を抑制する相互作用ポリペプチドにより、それらのタンパク質を遮断することによって、ウイルスの複製を抑制することが可能となる。
【0022】
本発明を実施すると、Revタンパク質、特にHIV−1のRevタンパク質と相互作用することができ、このため、ウイルス複製を抑制することができるパートナーを同定することが可能であった。これらのポリペプチドも、本発明の一部を構成する。
【0023】
本発明は、ある種の癌に関与する様々なタンパク質と相互作用できるパートナーを同定することを目的とした方法において実施することもできる。
【0024】
本発明に関連して、以下の用語を以下のように定義する。
【0025】
ヘプタペプチド又はヘプタペプチドモチーフ:共有結合された連続する7つのアミノ酸の直線状の連なり;
(ペプチド)ドメイン:それを含む配列中に、欠失−変異分析によって確定され得る少なくとも5つのアミノ酸を含むペプチド配列。このようなドメインは、一般に、機能又は役割に関与しており、その変異が機能の喪失を引き起こす不可欠なアミノ酸の存在によって特徴付けられる。例としては、核の多くのタンパク質中に存在するNLS(核局在化シグナル)ドメイン、細胞透過ドメイン、NES(核外移行シグナル)ドメイン、タンパク質−タンパク質相互作用ドメイン及び触媒ドメインを挙げることができる。
【0026】
細胞透過又は形質導入ドメイン又はモチーフ:インビボ、エキソビボ又はインビトロで、当該ドメインを含有するタンパク質の細胞中への透過を引き起こすことが可能な、5から35個のアミノ酸を含むペプチド配列。
【0027】
細胞透過を確実にするために、ドメインは、タンパク質の一端、例えば、C末端に配置しなければならないことがある。細胞透過機能は、タンパク質内におけるモチーフの位置とは無関係なこともある。細胞透過機能は、おそらく、一定のタンパク質サイズに限定され、これを超えると、透過がもはや確保されなくなる。
【0028】
細胞透過モチーフは、全ての細胞種に対して一般的であるか、又はある種の膜、例えば、原核細胞の膜、若しくはグラム陽性若しくはグラム陰性細菌の膜、若しくはリンパ球、例えば、初代リンパ球及び/又はマクロファージなどのある種のヒト細胞種の膜に特異的である。
【0029】
透過モチーフは、真核細胞の核内への透過も確保し得る。
【0030】
安定化ドメイン又はモチーフ:その二次構造が長期間且つある種のストレス条件下において安定的であり、それを含む任意のキメラタンパク質を安定化する能力を有する、少なくとも30個のアミノ酸を含むアミノ酸配列。特に、その構造は、変性並びにプロテアーゼによる分解及びストレス条件一般に対して影響を受けないものでなければならない。この構造は、そのドメイン中に、又はそのドメインの末端に挿入した場合に、ごく僅かしか擾乱されてはならない。安定化ドメインは、免疫原性が低いという性質によっても特徴付けられる。好ましくは、安定化ドメインは、比較的サイズが大きくなく、このため、300未満のアミノ酸、好ましくは200未満のアミノ酸を有する。
【0031】
一般に、多くの場合、安定化ドメインは、細胞中に存在する天然タンパク質の断片であり、このタンパク質は、豊富に存在し、遍在し、分解プロセスに関与していない細胞内タンパク質から選択されなければならない。
【0032】
ランダム配列:ランダムプロセスによって規定又は構築される配列。
【0033】
DNA配列のケースでは、ランダム配列は4つの候補から1つずつデオキシリボ核酸を選択することからなり、各候補は選択される確率が同じであるか(等確率)、又は同じでない(偏った選択)。遺伝コードの縮重のため、4塩基が等しい確率を有するランダムDNA配列は、ランダムなペプチド配列をもたらすが、複数のコドンによってコードされるアミノ酸が他のアミノ酸と比べて多く出現するので、偏りが生じる。
【0034】
21塩基(すなわち、7アミノ酸)のランダムDNA配列が一致して停止コドンを含有しない確率は71.5%である。
【0035】
ランダムな様式で規定されるのは、ペプチド配列でもあり得る。すなわち、アミノ酸は、順に、等しい確率で、又は等しくない確率で、全ての可能なアミノ酸からの選択によって決定される。
【0036】
ベイト:ベイトとは、互いに相互作用できる新規分子を決定することを目的としたスクリーニングにおいて、それに対するリガンドがスクリーニングを用いて探索される、予め確定された所定の分子である。
【0037】
ベイトは、レポーターとして作用する分子に融合させてもよく、融合させなくてもよい。
【0038】
プレイ:この同じスクリーニングにおいて、プレイとは、所定のベイトと相互作用する能力について検査される分子である。
【0039】
プレイは、レポーターとして作用する分子に融合させてもよく、融合させなくてもよい。
【0040】
ツーハイブリッドシステム:これは、当初、酵母で開発されたスクリーニングであるが、その原理は、他の細胞種にも適合させ得る。
【0041】
ツーハイブリッド標的では、ベイトをコードするDNA配列が、第一のドメイン「D1」をコードする「d1」配列にインフェーズで融合される。プレイをコードする配列は、第二のドメイン「D2」をコードする配列「d2」にインフェーズで融合される。「D1」及び「D2」ドメインは、それらの組み合わせ「D1+D2」が、要素「D1」及び「D2」が別々には有しない特定の特性又は機能を有することを特徴とする。「D1」及び「D2」の組み合わせは、それらが接触して配置し、維持するために、外的な介入を必要とする。翻訳後、ベイト(「D1」に融合されている)とプレイ(「D2」に融合されている)の相互作用が生じると、「D1」と「D2」の組み合わせが生じるであろう。この組み合わせ「D1+D2」から得られる特定の特性又は機能は、ベイトとプレイ間の相互作用を実証することが可能である。
【0042】
キメラペプチド:本来、同一タンパク質中では隣接していない少なくとも2つのアミノ酸配列の共有的な融合を含むポリペプチド。共有的な融合は、直接又は間接(リンカーを介する)共有結合によって達成され得る。
【0043】
同一細胞の2つのタンパク質に由来する2つの配列、又は近い属若しくは遠い属の細胞(例えば、異なる動物種)に由来する2つのタンパク質に由来し、又は真核細胞タンパク質の配列と原核細胞から得られる他の配列に由来する2つの配列も想定され得る。そのタンパク質中に本来存在しない合成配列と、そのタンパク質の配列との共有的融合も想定され得る。
【0044】
リンカー:一般的には、1から10個のアミノ酸、好ましくは1から5個のアミノ酸を含み、それが隔てるポリペプチドの2つのドメイン間に存在する極めて短いアミノ酸配列。リンカーは、それらが隔てる2つのドメインを機能的に妨害しないように選択される。リンカーの使用は、各ドメインが互いに独立に三次元の折り畳みを採れるようにするためにも特に推奨される。
【0045】
側鎖の立体的な障害が極めて少なく、且つ反応性が低いので、リンカーは、一般に、グリシンアミノ酸が豊富である。プロリンも、屈曲を形成し易いため、リンカーが隔てる2つのドメインがさらに大きな独立性を有するという性質故に、リンカーの中に極めて高い頻度で挿入される。
【0046】
2つのタンパク質配列間のパーセント同一性:このパーセントは、配列全体に沿った2つのアミノ酸配列間の同一性の程度を表す。検討されている配列が異なるサイズを有する場合には、%同一性は、最も長い配列の全長の関数として表される。%同一性を計算するために、2つの配列は、有限長のギャップを用いて、同一のアミノ酸の数を最大化させるように重ね合わせられ、次いで、同一アミノ酸の数を、最も長い配列中のアミノ酸の総数で割る。この定義が、本明細書中で使用される定義である。
【0047】
第一の側面において、本発明は、配列NX1X2X3X4X5X6X7C(X1、X2、X3、X4、X5、X6、X7はアミノ酸である。)を有するヘプタペプチドモチーフと、細胞透過ドメインとを含む相互作用ペプチドに関する。本発明の相互作用ポリペプチドはキメラポリペプチドであり、その「キメラの」性質は、ヘプタペプチドモチーフと細胞透過ドメインの融合に由来する。すなわち、この連続は、何れのタンパク質においても天然には存在しない。
【0048】
さらに、本発明のポリペプチドは、細胞透過ドメインに関する、ヘプタペプチドモチーフの具体的な配置によって特徴付けられる。実際、アミノ酸X7は、ポリペプチドのC末端から5ないし35、好ましくは7ないし25、より好ましくは9ないし20、例えば12ないし15のアミノ酸に見出され、細胞透過ドメインは、ヘプタペプチドモチーフに関してC末端に位置する。形質導入ドメインは、前記相互作用ポリペプチドのC末端に配置され得る。形質導入ドメインは、C末端にではなく、ヘプタペプチドモチーフに関してC末端に配置することもできる。例えば、形質導入ドメインの後には、Hisタグ又は相互作用ポリペプチドの精製又は検出を可能とする別のモチーフが続くこともできる。
【0049】
本発明の相互作用ポリペプチド中に存在するヘプタペプチドは、7アミノ酸の連続である。好ましくは、前記アミノ酸は、天然に存在する20のアミノ酸から選択される。しかしながら、本発明においては、修飾されたアミノ酸も取り込ませることができる。
【0050】
一例として、ヘプタペプチドモチーフは、ランダムプロセスによって作製される、ヘプタペプチドは、それ自体ランダムプロセスによって生成されるDNA配列によってコードされることもできる。これに対して、ヘプタペプチドモチーフは、必要に応じて、分子モデリング工程の後に、相互作用ポリペプチドが予め決められたタンパク質と相互作用する能力についてスクリーニングされる場合、完全に選択され、予め決定することができる。
【0051】
特に、モチーフがランダムプロセスによって生成されたDNA配列によってコードされる場合には、モチーフに対して7アミノ酸の長さは特に有利である。DNA配列がランダムな様式で生成される場合には、これによって、停止コドン(TAA、TAG及びTGA)が産生されることがある。7アミノ酸(すなわち、21ヌクレオチド)の長さは、相互作用可能なドメインが産生されるのには十分な長さを保ちながら、比較的に少ない停止コドンと無用な配列を産生する。このため、ヘプタペプチドモチーフの長さに関して7という数は、有利な妥協点であると思われる。
【0052】
7という数のさらなる有利さは、この長さの配列は免疫原性である確率が殆どないという事実に存する。主要組織適合複合体クラスI(MHCクラス1)によって提示される抗原は、最小8又は9のアミノ酸長を有すること、すなわち、ヘプタペプチドの長さより長いことが知られている。
【0053】
本発明の相互作用ポリペプチドは、このように、少なくとも12から42のアミノ酸を含む。このサイズのポリペプチドは、時折、細胞中では不安定な場合があり、それらは、抗菌ペプチドなどの2、3のペプチドを除き、プロテアーゼの標的になりやすいことが一般に認められている。このため、本発明の相互作用ポリペプチドは、好ましくは、この集合を安定化させ得る分子に連結される。好ましくは、このような安定化は、安定化ドメインを相互作用ポリペプチド配列と一体化させることによって達成される。
【0054】
安定化ドメインは、安定化ドメインを含むポリペプチドの長期的な安定性が、安定化ドメインを持たない同じポリペプチドの安定性より大きいことによって特徴付けられる。安定化ドメインは、ストレス条件下、例えばインビトロ又はインビボで起り得る変性及び切断条件下でのその安定性によっても特徴付けられる。ある安定化ドメインは、例えば、このようなドメインを含有する相互作用パートナーが、摂食の際又は血流中を通過する際に安定であるように、腸媒質又は絹媒質(seric medium)などのある種の生物媒質中での安定性に関して選択することもできる。その安定化の役割とは独立に、安定化ドメインは、検出を可能とする特性を有することもできる。
【0055】
安定化ドメインのさらなる利点は、組換えタンパク質を大量且つ安定な形態で産生できる細菌中又は別の生物中で産生されるその能力である。
【0056】
好ましい安定化ドメインには、天然のタンパク質の断片が含まれる。ある種のタンパク質は、特に、細胞中に豊富であり、遍在的で、非免疫原性で、安定である。このため、このようなタンパク質の断片は、安定化ドメインとして使用するのに特に好ましい。これは、ユビキチンファミリー(ユビキチン様)から得られるタンパク質に関して特に当てはまる。
【0057】
相互作用ポリペプチドがある細胞中に導入されるべきときには、前記細胞中に存在するタンパク質又は該細胞がその一部を形成している種に属するタンパク質の断片を、安定化ドメインとして選択することが特に有利であることが示されている。このため、本発明では、ヒト又は動物細胞中に存在するタンパク質の断片から得られる安定化ドメインを選択することが有利である。
【0058】
本発明者らは、ジグリシンモチーフ及びこのモチーフの下流にある全ての配列を除去するために、そのC末端部分が末端切断されたユビキチンファミリーのあるメンバーが、安定化ドメインとして極めて有利な特性を有することを実証した。
【0059】
本発明において特に好ましいタンパク質は、SUMO−1として知られているユビキチン相同体である。本発明において得に適切なSUMO−1の断片は、ジグリシンモチーフ及びその下流にある全配列が末端切断された、図6に記載されている断片(配列番号1)である。本発明において安定化ドメインとして使用する場合、上記配列と少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%又は少なくとも95%の同一性を有する任意の配列が特に有利である。
【0060】
他のタンパク質又はタンパク質断片、特に、熱ショックタンパク質(HSP)などのシャペロンタンパク質を、この「安定化ドメイン」機能に適合させることもできる。
【0061】
安定化ドメインの使用に対する一つの代替策は、同じ安定化効果を得るために、相互作用パートナーを環状化することである。「環状化」という用語は、ヘプタペプチドドメインの上流にあるN末端部分を、相互作用ポリペプチドのC末端にペプチド融合することを意味する。
【0062】
本発明によれば、リンカーと称される極めて短いアミノ酸配列が、安定化ドメイン(安定化ドメインが存在する場合)とヘプタペプチドモチーフの間、又はヘプタペプチドと形質導入ドメインの間に存在すべきことが想定される。これらのリンカーは、主として、ポリペプチドの様々なドメインを連結することを目的としている。
【0063】
この役割は、このため、例えば、一方のドメインとも、他方のドメインとも相互作用しない十分な数のアミノ酸により、例えば、ドメインを単純に隔てることによって、ドメイン間に相互作用が存在しないようにドメインを隔離することである。次いで、この二つのドメインは、他のドメインの存在によって影響されない様式で折り畳まれ得る。
【0064】
特に、屈曲を形成することによって、あるドメインから別のドメインにある特定の位置を強制することも、リンカーの役割であり得、同じく、一般的には、あるドメインから他のドメインを隔離する結果がもたらされる。
【0065】
最後に、前記ドメインは、ある種のプロテアーゼ、好ましくは細胞内プロテアーゼによる切断のための部位として知られるアミノ酸も含み得る。このアプローチは、細胞の透過後に、リンカー部位を切断することによって、2つのドメインの分割を可能とし得る。
【0066】
逆に、例えば、透過工程前に細胞透過ドメインに対して起り得る切断を回避するために、プロテアーゼに対して特に抵抗性があるようにリンカーを選択することもできる。
【0067】
好ましくは、本発明のリンカーは、主に、低い反応性、低障害性アミノ酸(すなわち、2、3の原子のみを含有する側鎖を有するアミノ酸、これは、特に、アミノ酸グリシン及びプロリンの場合に該当する。)を含む。さらに、プロリンは、一般的に、その中に挿入された鎖中に屈曲を形成し、あるドメインを別のドメインから隔離するためにこの特性が活用される。
【0068】
好ましくは、本発明のリンカーは、5個以下のアミノ酸を含む。
【0069】
本発明のリンカーは、タンパク質の様々な機能的部分の間にある程度の柔軟性を導入することができる。
【0070】
本発明に対して特に適切であるリンカーは、5個未満のアミノ酸と少なくとも約20%、好ましくは少なくとも50%のアミノ酸グリシン及びプロリンとを含む。ある状況では、本発明のリンカーは、グリシン及びプロリンから選択されるアミノ酸のみを含む。一例として、本発明のリンカーは、配列GGGG又はPG(Gはグリシンを表し、Pはプロリンを表す。)を有することができ、その配列は、慣習的に、N末端からC末端へと記載される。
【0071】
本発明の相互作用ポリペプチドは、そのC末端に見出される5から35のアミノ酸の細胞透過ドメインを含む。この細胞透過ドメインによって、ポリペプチドは細胞中に透過することが可能となる。
【0072】
この目的のために、文献に記載されている様々なドメインを使用し得る。本発明において使用するのに特に好ましいドメインは、HIV−Tat−タンパク質の透過ドメイン、又は同じ活性を有する他のウイルス株から得られるドメイン中に見出される。
【0073】
HIV−Tatタンパク質中の細胞透過ドメインは、以下の配列NRKKRRQRRRC(配列番号9)によって特徴付けられる(アミノ酸を表すために、一文字コードが使用されている。)。本発明は、特に透過特性を改善し、プロテアーゼに対する抵抗性を増加させ、又は起り得る免疫反応を低減するために、幾つかのアミノ酸が変異された先行する配列に実質的に対応する細胞透過ドメインの使用も想定している。
【0074】
本発明の相互作用ポリペプチドの細胞内透過ドメインは、配列RRRRRRR、RRRRRRRR又はRRRRRRRRR(7から9アミノ酸−アルギニン)を有するポリアルギニンモチーフを含み、その透過の役割はリンパ球において実証されている(Wender et al,2000)。
【0075】
本発明において想定される、さらなる形質導入ドメインは、Tatの形質導入ドメインの配列に部分的に対応するが、幾らかの修飾:RRKARRQRRR(配列番号21)を組み込む配列を有する。
【0076】
本発明の相互作用ポリペプチドの具体的な構築は、ポリペプチドのC末端から10ないし30アミノ酸、好ましくはC末端から12ないし28、より好ましくは15ないし25アミノ酸の間にヘプタペプチドモチーフのアミノ酸X7を配置することからなる。
【0077】
本発明の相互作用ポリペプチドに対する安定化ドメインの選択に関して、特に適切なドメインはSUMO−1タンパク質である。好ましくは、使用される安定化ドメインは、図6に配列が示されているSUMO−1タンパク質の断片(配列番号1)、又はこの配列と少なくとも80%の同一性、好ましくは90%の同一性を有する任意のドメインである。
【0078】
本発明において使用し得るさらなるドメインは、図6に示されている配列によって規定されるユビキチン断片である。
【0079】
他のドメイン又は要素も、相互作用ポリペプチドの一部を有利に形成し、又は相互作用ポリペプチドに有利に移植される。特に、ポリペプチドの配列中に位置指定配列、又はその検出及びモニタリング、例えば、その局在化若しくは分解を促進する配列を取り込むことが特に有利である。想定され得る検出促進配列の例は、容易に検出できる酵素的な特性、または所定の抗体との反応性、又は蛍光特性を有する配列である。例えば、ポリヒスチジン尾部又はHis−Tagを与えることによって、ポリペプチドの精製を促進する配列をポリペプチドの配列中に移植し、又は取り込むことも想定され得る。
【0080】
ある種の細胞へ本発明のポリペプチドを優先的に送達することができる位置指定シグナルも、本発明において特に有利である。特に魅力的な標的細胞は、リンパ球、マクロファージ、ランゲルハンス細胞、樹状細胞、幹細胞、筋肉細胞などである。このような位置指定シグナルは、安定化ドメインの一部を形成することができる。位置指定シグナルは、安定化ドメイン、リンカー、ヘプタペプチド及び透過ドメインの他に、本発明のポリペプチドの一部を形成することもできる。あるいは、一部の細胞種に対して特異的又は優先的である細胞透過ドメインを使用してもよい。
【0081】
ヘプタペプチドモチーフに対して特に好ましい配列としては、以下の特性のうち少なくとも一つを有する配列を挙げることができる。X2がアミノ酸トリプトファンであり、X4及び/又はX5がアミノ酸システインである。本発明の他の配列は、アミノ酸X5がロイシンである。好ましくは、ヘプタペプチドモチーフの配列は、X2にトリプトファン、X4及び/又はX5にシステインを含む。ヘプタペプチドモチーフは、好ましくは、上記3つの特徴を有する。
【0082】
本発明において特に好ましいヘプタペプチド配列は、以下のような、HIV−1のRevタンパク質と相互作用するヘプタペプチド配列である。
【0083】
NFWFCGLKC(配列番号2)、NNWLCCLNC(配列番号3)、NKLGCFWFC(配列番号10)、NNLCCLWNC(配列番号11)、NFWFCGLAC(配列番号27)、NAWLCCLNC(配列番号25)、NNWLCCLAC(配列番号26)、FWFCGAK(配列番号45)、FWFCGAA(配列番号46)、NWACCLN(配列番号47)、NWLACLN(配列番号48)、AWACCLN(配列番号49)、AWLACLN(配列番号50)、AWLCCLA(配列番号51)、NWAACLN(配列番号52)、NWACCLA(配列番号53)、NWLACLA(配列番号54)、AWAACLN(配列番号55)、AWACCLA(配列番号56)、AWLACLA(配列番号57)、NWAACLA(配列番号58)及びAWAACLA(配列番号59)。
【0084】
単一のアミノ酸を置換することによって上記配列から得られる7アミノ酸の配列も好ましい。
【0085】
本発明の相互作用ポリペプチドに対して特に好ましい配列としては、以下のものを挙げることができる。
【0086】
FWFCGLKPGRKKRRQRRRG(配列番号4)、NWLCCLNPGRKKRRQRRRG(配列番号5)、FWFCGAKPGRKKRRQRRRG(配列番号60)、FWFCGLAPGRKKRRQRRRG(配列番号61)、FWFCGAAPGRKKRRQRRRG(配列番号62)、AWLCCLNPGRKKRRQRRRG(配列番号63)、NWACCLNPGRKKRRQRRRG(配列番号64)、NWLACLNPGRKKRRQRRRG(配列番号65)、NWLCCLAPGRKKRRQRRRG(配列番号66)、AWACCLNPGRKKRRQRRRG(配列番号67)、AWLACLNPGRKKRRQRRRG(配列番号68)、AWLCCLAPGRKKRRQRRRG(配列番号69)、NWAACLNPGRKKRRQRRRG(配列番号70)、NWACCLAPGRKKRRQRRRG(配列番号71)、NWLACLAPGRKKRRQRRRG(配列番号72)、AWAACLNPGRKKRRQRRRG(配列番号73)、AWACCALPGRKKRRQRRRG(配列番号74)、AWLACLAPGRKKRRQRRRG(配列番号75)、NWAACLAPGRKKRRQRRRG(配列番号76)及びAWAACLAPGRKKRRQRRRG(配列番号77)。
【0087】
このように、本発明のポリペプチドは、細胞と接触されたときに、外的な介在なしに、細胞内部に透過する能力を有している。本発明のポリペプチドは、細胞内又は細胞外であり得るタンパク質又はタンパク質ドメインと相互作用する能力も有する。
【0088】
さらに、ポリペプチド自体の構造が、特に、ヘプタペプチドモチーフである可変部分に関して、大きな柔軟性を保証する。このモチーフは、実際には、ポリペプチドのC末端部分から35アミノ酸未満、好ましくは25アミノ酸未満に配置される。ポリペプチドのより中央部分に比べて、高次構造上のストレスがより少ない、ポリペプチド部分中のこの有利な位置は、ヘプタペプチドがより大きな折り畳みの自由を有することを保証する。この自由の増加は、その標的に対する適合能力の増加をもたらす可能性が極めて高い。ヘプタペプチドの各末端におけるストレスが低いと、ある高次構造から別の高次構造へと移行するためのエネルギー障壁が低くなるので、ヘプタペプチドは、より多くの高次構造を採ることができる。この柔軟性は、与えられたヘプタペプチドについて異なる高次構造を採る可能性をもたらし、このため、標的との相互作用の確率を高める。
【0089】
さらなる側面において、本発明は、より具体的には、Revタンパク質の複製を阻害するためにRevタンパク質と相互作用することができ、ヘプタペプチド配列NX1WX3X4X5X6X7C(X1、X3、X4、X5、X6及びX7は、天然又は修飾アミノ酸から独立に選択されるアミノ酸であり、X4及び/又はX5はシステインであり、Wはトリプトファンである。)からなり、又はヘプタペプチド配列NX1WX3X4X5X6X7Cを含むことを特徴とするペプチドに関する。好ましくは、X5はシステインである。
【0090】
Revタンパク質は、ウイルスHIVタイプの系統、例えばHIV−1若しくはHIV−2、又はSIVタイプ(サル免疫不全ウイルス)、SHIV(ヒト免疫不全ウイルスとサル免疫不全ウイルスのハイブリッド)、FIV(ネコ免疫不全ウイルス)又はHIV−1のRevタンパク質と相同なタンパク質を有する他の任意のウイルス系統のものである。Revタンパク質は、HTLV1、HTLV2又はBLVの等価なRexタンパク質でもあり得る。
【0091】
このようなペプチドは、酵母ツーハイブリッド系においてRevタンパク質と相互作用できる配列を含み、又は酵母ツーハイブリッド系においてRevタンパク質と相互作用できる配列からなる。さらに、これらのペプチドは、インビボでウイルスの複製を阻害することもできる。好ましいヘプタペプチド配列は、以下のとおりである。
【0092】
NFWFCGLKC(配列番号2)、NNWLCCLNC(配列番号3)、NFWFCGLAC(配列番号27)、NAWLCCLNC(配列番号25)、NNWLCCLAC(配列番号26)、FWFCGAK(配列番号45)、FWFCGAA(配列番号46)、NWACCLN(配列番号47)、NWLACLN(配列番号48)、AWACCLN(配列番号49)、AWLACLN(配列番号50)、AWLCCLA(配列番号51)、NWAACLN(配列番号52)、NWACCLA(配列番号53)、NWLACLA(配列番号54)、AWAACLN(配列番号55)、AWACCLA(配列番号56)、AWLACLA(配列番号57)、NWAACLA(配列番号58)及びAWAACLA(配列番号59)。
【0093】
酵母ツーハイブリッド試験において、ペプチドがHIV−1のRevタンパク質と相互作用する能力を検査するために、実験の部でさらに展開されている、以下の試験を実施することができる。
【0094】
ベイト:プラスミドpLexRev(実施例1参照);
プレイ:試験ペプチドをコードする配列と融合しているGAL4の活性化ドメインを含有するプラスミド、例えば、pGAD424由来のプラスミド。
【0095】
酵母:S. cerevisiaeのHF7c株
実施例1は、この試験に対して想定され得る作業条件に関して、さらに詳しい情報を提供する。
【0096】
ペプチドがウイルスの複製をインビボで阻害する能力を調べるために、実施例の部でさらに詳しく記載されている、以下の試験を実施することができる。
【0097】
細胞:ヒト細胞、末梢血単核球;
ウイルス:HIV−1−LAIというリンパ球向性株(Barre−Sinoussi et al;1983);
プロトコール;5つの濃度の試験ペプチド中で、細胞を30分間前処理した後、HIV−1−LAI株に感染させる。培養を通じて、このペプチドを培地中に維持し、感染から7日後に細胞上清を集め、逆転写活性を測定する。本試験を実施するために使用できる作業条件、濃度及び緩衝液に関して、実験の部に、さらに詳しい情報が記載されている。
【0098】
配列FWFCGLKPGRKKRRQRRRG(配列番号4)、NWLCCLNPGRKKRRQRRRG(配列番号5)、FWFCGAKPGRKKRRQRRRG(配列番号60)、FWFCGLAPGRKKRRQRRRG(配列番号61)、FWFCGAAPGRKKRRQRRRG(配列番号62)、AWLCCLNPGRKKRRQRRRG(配列番号63)、NWACCLNPGRKKRRQRRRG(配列番号64)、NWLACLNPGRKKRRQRRRG(配列番号65)、NWLCCLAPGRKKRRQRRRG(配列番号66)、AWACCLNPGRKKRRQRRRG(配列番号67)、AWLACLNPGRKKRRQRRRG(配列番号68)、AWLCCLAPGRKKRRQRRRG(配列番号69),NWAACLNPGRKKRRQRRRG(配列番号70)、NWACCLAPGRKKRRQRRRG(配列番号71)、NWLACLAPGRKKRRQRRRG(配列番号72)、AWAACLNPGRKKRRQRRRG(配列番号73)、AWACCALPGRKKRRQRRRG(配列番号74)、AWLACLAPGRKKRRQRRRG(配列番号75)、NWAACLAPGRKKRRQRRRG(配列番号76)及びAWAACLAPGRKKRRQRRRG(配列番号77)を含むポリペプチドが、Revタンパク質の阻害剤又は調節物質として使用するのに特に好ましく、HIV−1のRevタンパク質が特に好ましい。
【0099】
このようなペプチドは、一般的にはRevタンパク質、又はおそらくそのドメインの一つのうち何れかと相互作用することが可能である。前記タンパク質は、一般的には、異なる機能を時折有する異なるドメインがそれらの配列内に存在することを特徴とする。タンパク質が採る三次元構造及び折り畳みに応じて、これらのドメインは、互いに独立したパートナーにアクセス可能な場合がある。
【0100】
この類似の状況は、単一のタンパク質の様々なエピトープに対して起って、異なるモノクローナル抗体の生成を可能とし、様々なエピトープが、タンパク質の互いに異なるドメインであり、互いにアクセスすることが可能である。
【0101】
Revタンパク質中にはNESと称されるシグナル又は核内移行シグナルが同定されており、核外からのタンパク質の配送を確保する。このシグナルは、本願において提供されるドメインの定義を充足する。このため、ペプチドは、Revタンパク質と一般的に相互作用するか、又はRevタンパク質のNESドメインと特異的に相互作用する。NESタンパク質は、配列NLQLPPLERLTLDC(配列番号8)によって定義される(一文字コードは、使用されるアミノ酸を表す。)。
【0102】
さらなる側面において、本発明は、本発明の相互作用ポリペプチドのファミリー又は本発明の相互作用分子の集団にも関し、ファミリー/集団のメンバーは、ヘプタペプチドモチーフの配列のみが他のメンバーと異なる相互作用ポリペプチドである。
【0103】
同じファミリー/集団の様々なメンバーは、このため、それらの貫通ドメイン、それらの安定化ドメイン(これを有する場合)及び存在し得るそれらのリンカーが同一である。ファミリー/集団は、ヘプタペプチドモチーフの配列のみが異なる少なくとも2つのメンバーの存在によって規定される。しかしながら、ファミリーは、一般的には、3以上のメンバー、一般的には少なくとも10、好ましくは少なくとも50のメンバーを含む。本発明に属する特に好ましいファミリーは、少なくとも100、好ましくは1000の異なるメンバーを含むファミリーである。これは、同一である一定数のメンバーを有するファミリー又は集団を除外するものではない。
【0104】
ヘプタペプチドモチーフが、20個の天然アミノ酸から選択される7アミノ酸によって構成される場合には、本発明に規定されるファミリー又は集団は、最大207個の異なるメンバーを含む。
【0105】
このようなファミリーの利点は、ヘプタペプチドモチーフがメンバーの唯一の可変部であるとすれば、ファミリーの各メンバーの異なる特性に関して、ヘプタペプチドモチーフのみが関与するということである。
【0106】
好ましくは、本発明の相互作用ポリペプチドファミリーは、NX1X2X3X4X5X6X7PGKKRRQRRRGC(配列番号6)を含み、配列NX1X2X3X4X5X6X7Cは、本発明に規定されるヘプタペプチドモチーフに対する配列に対応し、配列PGKKRRQRRRG(配列番号12)は、リンカー及び細胞透過ドメインに対する配列に対応する(一文字コードは、使用されるアミノ酸を表す。)。X1、X2、X3、X4、X5、X6、X7は、アミノ酸を表す。ヘプタペプチドドメインは、同じくファミリーのメンバーである別のポリペプチドと比べて、ファミリー(又は集団)のメンバーであるポリペプチド中の唯一の可変領域である。
【0107】
より好ましくは、相互作用ポリペプチドファミリーは、その配列が以下の配列を含み、又は以下の配列からなるメンバーを含む。
【0108】
MSDQEAKPSTEDLGDKKEGEYIKLKVIGQDSSEIHFKVKMTTHLKKLKESYCQRQGVPMNSLRFLFEGQRIADNHTPKELGMEEEDVIEVYQEQTARPPNPKKEIELGGGGSX1X2X3X4X5X6X7PGKKRRQRRRG(配列番号7)、又は配列MSDQEAKPSTEDLGDKKEGEYIKLKVIGQDSSEIHFKVKMTTHLKKLKESYCQRQGVPMNSLRFLFEGQRIADNHTPKELGMEEEDVIEVYQEQTARGGGGSX1X2X3X4X5X6X7PGKKRRQRRRG(配列番号78)。配列NX1X2X3X4X5X6X7Cに対応するヘプタペプチドモチーフは、ファミリーのある負メンバーが別のメンバーと異なっている唯一の領域である。X1、X2、X3、X4、X5、X6及びX7は、アミノ酸を表す。
【0109】
このファミリーの相互作用ポリペプチドは、「SUMO−1ヘプタペプチドタンパク質形質導入ドメイン」又はSHPと称される。
【0110】
配列PGKKRRQRRRG(配列番号12)は、本発明のポリペプチドに対する細胞透過ドメインを含む。この配列と比較して3未満の修飾を有する配列も、本発明において好ましい配列である。「修飾」という用語は、アミノ酸の付加若しくは除去、又は別のアミノ酸による、この配列のアミノ酸の置換を意味する。
【0111】
配列:MSDQEAKPSTEDLGDKKEGEYIKLKVIGQDSSEIHFKVKMTTHLKKLKESYCQRQGVPMNSLRFLFEGQRIADNHTPKELGMEEEDVIEVYQEQTARPPNPKKEIELGGGGS(配列番号16)は、相互作用ポリペプチドのための安定化ドメインを含む。安定化ドメインを含む別の配列は、MSDQEAKPSTEDLGDKKEGEYIKLKVIGQDSSEIHFKVKMTTHLKKLKESYCQRQGVPMNSLRFLFEGQRIADNHTPKELGMEEEDVIEVYQEQTARGGGGS(配列番号79)である。前記配列と少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%の同一性を有する配列も、本発明のポリペプチドのファミリーの安定化ドメインを構成するために使用され得る配列である。
【0112】
本発明は、単独で存在する、若しくはファミリー若しくは集団の一部を形成する、本発明のポリペプチドをコードする全てのDNA配列、又は本発明に記載されている他の任意の断片若しくはドメインをコードする全てのDNA配列にも関する。DNA配列は、二本鎖DNA又は一本鎖DNAであり得る。本発明において、一本鎖DNAは、この配列又は相補的配列がコーディング部分を含有するときに、一本鎖DNAはポリペプチドをコードすると考えられる。DNA配列は、直鎖又は環状形態であり、例えば、プラスミド中に存在し得る。
【0113】
本発明のポリペプチドをコードするDNA配列の転写から得ることができる様々なRNAも、本発明に含まれる。
【0114】
本発明に規定されている相互作用ポリペプチドは、細胞の挙動を修飾するために、予め決定され、又は予め決定されていないタンパク質パートナーとの潜在的な相互作用能力を有する。細胞内では、特に競合的阻害剤として作用することによって、このようなポリペプチドの存在は、このため、ある種の細胞機能を遮断できるようにすることができる。前記細胞の修飾が細胞中の有害な機能を弱め、又は妨げることからなる場合には、この作用は多数の疾病において治療効果を有する。細胞外のポリペプチドの存在が、メッセンジャー又は細胞表面上のタンパク質との相互作用によって、細胞の特性を修飾することも想定される。
【0115】
このため、上記本発明のポリペプチドは、薬物中の活性成分としてそれらを使用することができる治療の分野において有利に適用される。本発明のポリペプチドには、薬学的に許容される様々な賦形剤が伴われることが多い。「治療」という用語は、治療及び予防目的の両方を意味する。
【0116】
Revタンパク質との相互作用について特異的に検査される本発明の相互作用ポリペプチドは、HIVによる感染に対する治療、好ましくはヒトの治療で使用するために、さらに好ましい。本発明のポリペプチドは、Revタンパク質又は近縁の相同体を有するHIVの相同体であるウイルスに感染した動物を治療するために、獣医用途に使用することもできる。それらは、予防的に使用することもできる。
【0117】
細胞を透過するための手段、すなわち、それらの透過ドメインを有するように、それらが特異的に設計されている場合には、限定なく、様々な形態で投与することができる。それらは、特に、錠剤、カプセル若しくはシロップの形態で摂取されることができ、又はローション、ゲル若しくはポマードの透過によって、筋肉又は静脈内に注入することができる。他の任意の投与形態も想定することができる。それらは、リポソームの形態でパッケージした後、その形態で投与することもできる。
【0118】
薬物が、本発明の相互作用ポリペプチドをコードするDNA分子からなり得ることも除外されない。これは、遺伝子治療が実施されるときに、特に当てはまる。
【0119】
本発明は、それ自身の上に、又はファミリーの一部を形成して、本発明のポリペプチド又は本発明に記載されている他の任意の断片若しくはドメインを含有する細胞、並びに前記ポリペプチドをコードするDNA配列を含有する細胞にも関する。好ましい細胞は、リンパ球及びマクロファージ、樹状細胞、ランゲルハンス細胞又は幹細胞であり、好ましくは、このような細胞は、哺乳動物から、特にヒトから得られる細胞である。他の細胞は酵母細胞及び細菌細胞である。
【0120】
上記種類の細胞は、形質転換、遺伝子治療によって、又は細胞と本発明の相互作用ポリペプチドとの接触によって取得することができる。このような細胞は、治療において、特に有利な用途を有する。本発明の相互作用ポリペプチドをコードするDNAで形質転換された細胞、特に細菌細胞が、前記ポリペプチドを産生する上で特に有利である。細菌中で産生されたポリペプチドは、次いで、必要に応じて精製され、薬物中の活性成分として使用することができる。
【0121】
さらなる側面において、本発明は、上記相互作用ポリペプチドを含むスクリーニング方法にも関する。これらのポリペプチドは、それらが検査されるタンパク質標的に対して作用するように特異的に設計される。
【0122】
本発明によって想定される第一のスクリーニング方法は、細胞の表現型を修飾することができるポリペプチドを同定することを目的とする。
【0123】
この方法は、その表現型が修飾されるべき細胞と、本発明のポリペプチドを接触させる工程を含む。この工程の後には、細胞の表現型の変化を検出する。これらの工程には、検査されているポリペプチドの配列中に含まれるヘプタペプチドモチーフの配列を決定する工程が必要に応じて補充される。
【0124】
「表現型」という用語は、その広い意味で使用され、細胞のあらゆる形態的又は機能的特徴を包含する。表現型の修飾は、細胞の形状の変化、膜の組成の修飾、特定のタンパク質の分泌、色の変化又はある条件下での反応性の変化によって特徴付けられ得る。
【0125】
本方法は、細胞の表現型を、一般的な様式で、修飾できるポリペプチドを同定することを目的とする。それは、予測された修飾又は所望の修飾であり得る。それは、驚くべき修飾又は所望でない修飾であり得る。
【0126】
本方法の一応用によれば、本発明は、あるタンパク質と相互作用できるポリペプチドを同定するために使用することができる。このような状況では、その標的とのポリペプチドの相互作用は、予想される表現型の修飾、例えば、細胞死、又は抗生物質、若しくはウイルス若しくは熱に対する耐性若しくは感受性をもたらすことができる。必要に応じて、前記相互作用は、レポーター、特にレポーター遺伝子を介して実証することができる。このレポーター要素は、表現型への修飾に必要であり、その修飾は予測されている。
【0127】
本方法は、あるタンパク質の群、又は、例えば代謝経路若しくはある免疫カスケードと相互作用できるポリペプチドを同定するために使用することもできる。このような状況では、表現型に対する予想される修飾は、群の機能の修飾又は経路若しくは免疫カスケードの修飾である。このような修飾の効果は、常に予め決定されているとは限らない。
【0128】
スクリーニング方法の開始時に修飾の正確な性質を決定せずに、ポリペプチドをスクリーニングする本発明の方法を使用して、例えば、細胞に対する有益な修飾を調べることが可能である。
【0129】
本発明の第一の工程は、本発明のポリペプチドを細胞の存在下に置くことを特徴とする。「存在下に置く」という用語は、ポリペプチドを細胞に近接させることからなる動作、接触、及びポリペプチドを細胞中に導入することからなる動作を意味する。「存在下に置く」という表現には、ポリペプチドをコードするDNAを細胞中に導入し、次いで、このDNAが翻訳されて、ポリペプチドを生じる場合も含まれる。この状況では、細胞自体がポリペプチドを生成することに寄与する。
【0130】
このため、本方法の第一の工程は、その表現型が修飾されるべき細胞を含有する培地にポリペプチドを細胞外添加することによって、例えば、細胞を含有する液体にポリペプチドを添加することによって実施される。本発明のポリペプチドは透過ドメインを有するので、必要であれば、細胞の膜を横切ることができる。
【0131】
記載されている方法は、細胞外スクリーニング方法又は細胞内スクリーニング方法である。ポリペプチドとその標的間の相互作用が細胞中で起るのであれば、ポリペプチドが細胞外から添加されるか、又は細胞内に導入されるか否かとは無関係に、スクリーニングは細胞内であると考えられる。これに対して、ポリペプチドとその標的間の相互作用が細胞外(例えば、その表面上)で起るのであれば、スクリーニングは細胞外と考えられる。
【0132】
本発明のスクリーニング方法は、インビボ又はインビトロで実施することができる。本発明のスクリーニング方法がインビボで実施されるときには、ポリペプチドと細胞は、細胞を含む液体又は前記細胞を含有する組織の存在下にポリペプチドを置くことによって接触させることができる。
【0133】
本発明の方法の特に好ましい用途は、ツーハイブリッドスクリーニングシステムを使用することである。相互作用ポリペプチドの形態のパートナーが探索されている標的タンパク質が公知であり、その配列が決定されているときに、この用途が推薦される。次いで、標的タンパク質と本発明の相互作用ポリペプチド間の相互作用を検出することが可能である。このような相互作用は、その発現が表現型を修飾するレポーター遺伝子の誘導によって、例えば、細胞の色の変化により簡単に検出できる様式で、一般に明瞭となる。
【0134】
本方法の特に好ましい用途は、Revタンパク質を含むウイルスタンパク質に対して新規相互作用パートナーをスクリーニングする分野である。このようなタンパク質は、様々なウイルス、特にHIV中に見出される。この用途では、Revタンパク質をコードする遺伝子は、ベイトとして作用するように、例えば、ツーハイブリッド系にクローニングされる。このようなスクリーニングは、宿主細胞中でのウイルス複製を抑制又は制限することによって、HIVによる感染に対する耐性を細胞に与えることができるポリペプチドを同定し得る。
【0135】
本方法のさらなる用途は、スリーハイブリッドスクリーニング系を使用することからなる。このような系では、その相互作用が公知である2つのペプチドパートナーをツーハイブリッド系にクローニングし、第三のプラスミドが本発明の相互作用パートナーを含む。後者は、前二者のパートナー間の相互作用を修飾する能力について検査される。ツーハイブリッドスクリーニングに対するレポーター系を使用することによって、2つのペプチドパートナー間の相互作用に対する前記相互作用パートナーの作用を観察及び測定することが可能である。
【0136】
本発明によって包含される第二の方法は、分子をスクリーニングして、所定の細胞内標的と相互作用する分子の一つを同定する方法である。
【0137】
このような方法は、本発明のポリペプチドを作製するための第一の工程を含む。このようにして作製されたポリペプチドは、細胞内標的の存在下に置かれ、ポリペプチドと標的間の相互作用を検出した後、ポリペプチドのヘプタペプチドの配列を必要に応じて決定する。
【0138】
前記ポリペプチドは、ポリペプチドを細胞中に導入することによって直接的に、又はポリペプチドを細胞の存在下に置いた後、細胞中にポリペプチドを透過させることによって間接的に、標的の存在下に置くことができる。
【0139】
検出工程は、当業者に公知である任意の技術を用いて実施することができる。想定され得る一つの検出の種類は、表現型の変化の観察である。表現型の修飾がレポーター遺伝子の発現の結果であるように、標的を適合させ得る。検出には、存在物のアッセイ、例えば、タンパク質又は代謝物のアッセイも含まれ得る。
【0140】
本発明の第一の方法に関して記載された様々な好ましい用途又は特徴は、この第二の方法についても当てはまる。特に、本方法は、インビボ又はインビトロで実施することができる。本方法は、ツーハイブリッド系を用いて実施されることが好ましい。最後に、このようなスクリーニング方法の好ましい用途は、ウイルスの複製に不可欠なウイルスタンパク質、より具体的には、HIVのRevタンパク質と相互作用できる相互作用分子を同定することを目的とする。
【0141】
本発明によって包含される第三の方法は、細胞内標的分子の特性を調節する方法である。このような方法は、標的分子を含有する細胞を、本発明の相互作用ポリペプチドの存在下に置く工程を含む。
【0142】
標的分子は、好ましくは、タンパク質、又は少なくとも5個のアミノ酸、好ましくは少なくとも10個のアミノ酸を含むタンパク質の断片である。本発明のポリペプチドは、標的分子と相互作用できるヘプタペプチドモチーフを有するように特異的に設計されている。このようなヘプタペプチドモチーフは、本発明の第一のスクリーニング方法を実施することによって有利に決定される。
【0143】
「特性を調節する」という用語は、その機能又はその特性に影響を与え得る標的に対する任意の修飾を意味し、特に、そのパートナーと相互作用するその能力を修飾する修飾を意味する。また、ある種の条件下で、多かれ少なかれ安定性を引き起こす修飾、酵素の速度論に対する修飾、又は特異性若しくは選択性に対する修飾を意味する。
【0144】
既述のように、本発明の第一の方法に関して記載された様々な特徴又は好ましい用途は、この第三の方法についても当てはまる。特に、本方法は、インビボ又はインビトロで実施することができる。本方法は、ツーハイブリッド系を用いて実施されることが好ましい。最後に、このような方法の好ましい用途は、ウイルス複製に不可欠なウイルスタンパク質、特にHIVのRevタンパク質の特性を修飾することを目的とする。
【0145】
さらなる側面において、本発明は様々な使用に関する。特に、本発明は、次いで翻訳されたポリペプチドが表現型スクリーニングにおいてプレイとして作用するように、本発明のポリペプチドをコードするDNA配列を使用することを含む。好ましくは、前記DNA配列は、ツーハイブリッド系にクローニングされる。
【0146】
実際に、ツーハイブリッド系は、一般に「ベイト」と称される、ある分子(タンパク質)と候補となる試験パートナー(一般的に、「プレイ」と称される。)との相互作用を調べることを特徴とする。ツーハイブリッド系は、一般的に、ベイト、プレイ及び他の要素に特異的に結合されたレポーター遺伝子をコードする配列を細胞中に導入することを含む。この文脈において、本発明のポリペプチドをコードするDNA配列は、プレイとして使用することができる。
【0147】
本発明において特に好ましい状況は、本発明のポリペプチドをコードするDNA配列をツーハイブリッド系におけるプレイとして使用することからなる。この状況において、ベイトとなり得るのは、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)のRevタンパク質である。実際に、このウイルスタンパク質は、新規阻害剤を同定するための特に興味深い標的である。より具体的には、本発明は、このように、ツーハイブリッド系において、本発明のポリペプチドをコードするDNA配列をHIVのRevタンパク質とともに使用することを想定する。
【0148】
上述のように、本発明のポリペプチドと、あるタンパク質(例えば、HIV−Rev)との調査された相互作用は、タンパク質の全部又は特定のドメインの何れかを含み得る。このように、本発明では、標的タンパク質のドメインをコードする配列を一つだけベイトとしてクローニングすることが想定される。この戦略は、同定されるべきそのドメインに対して特異的な相互作用ポリペプチドを可能とする。
【0149】
実際に、本発明者らは、2つのポリペプチドのサイズが同等であるときに、2つのポリペプチド間の相互作用の可能性が増加することを発見した。本発明の相互作用ポリペプチドは、おそらくは、透過モチーフによって生成される相互作用の組み合わせとともに、相互作用に関与するかなり短い配列、すなわち7アミノ酸のヘプタペプチドを有する。この理由のため、相互作用ポリペプチドは、同じようなサイズのドメインを有する同じようなサイズのポリペプチドと、好ましい様式で相互作用できるために、特に推奨される。
【0150】
ツーハイブリッド系における相互作用ポリペプチドの特に有利な使用は、このように、5から30個のアミノ酸、好ましくは6から20、より好ましくは7から15のアミノ酸のドメインをコードする配列を、ベイトのために使用する。このようなドメインは、例えば、結合ドメイン、位置指定シグナル(addresing signal)又は触媒ドメインである。
【0151】
これらの使用において特に好ましいドメインのさらなる例は、NLS(核局在化シグナル)である。さらなる好ましいドメインは、NES(核外移行シグナル)である。このようなNESドメインは、特に、HIVのRevタンパク質のNESドメインである。多かれ少なかれ同じ程度が類似し、規模が同じ程度のサイズの配列を有する他の「NES」シグナルが知られている。2つのドメインNLS及びNESは、本発明のポリペプチドとの相互作用に対して最適なサイズと完璧に適合するサイズを有する。
【0152】
NESドメインに対する具体的な配列は、HIV−1のRevタンパク質、LQLPPLERLTLD(配列番号8)のものである。
【0153】
HIVのRevタンパク質が、それに対する相互作用パートナーを探索する標的タンパク質であるときには、ベイトとして作用させるために、Revタンパク質をツーハイブリッドスクリーニング中にRevタンパク質のドメイン、好ましくはrevのNESドメインをクローニングすることが特に有利である。
【0154】
本発明は、候補分子から、ある細胞内標的と相互作用できる分子を同定するためのスクリーニング方法にも関する。本発明の本側面によれば、細胞内標的の、本発明の相互作用ポリペプチドとの相互作用特性が活用される。本方法に従って、標的と相互作用ポリペプチド間のこの相互作用における変動は、候補試験分子を添加したときに、検出されることになる。標的と相互作用ポリペプチド間の相互作用の修飾は、候補分子が細胞内標的と相互作用する能力を与え得る。この用途において、ある細胞内標的と相互作用できる本発明の相互作用ポリペプチドは、性質がタンパク質様であってもよく、タンパク質様でなくてもよい、前記細胞内標的と相互作用することも可能な新規薬物を同定するためのツールとして作用する。本発明は、このように、以下の工程:
i.本発明の相互作用ポリペプチドの存在下に標的分子を置くことと;
ii.前記標的分子と前記相互作用ポリペプチド間の相互作用を検出することと;
iii.候補分子を添加することと;
iv.前記標的分子と前記相互作用ポリペプチド間の相互作用に対する修飾を検出することと;
を含む。
【0155】
本方法によれば、特に高処理量スクリーニングによって、異なる候補分子を検査することが可能である。標的分子と本発明の相互作用ポリペプチド間の相互作用は、任意の適切な手段を用いて、特にレポーター遺伝子を用いて検出することができる。慣用の様式で、「ツーハイブリッド」系が使用される。このような状況では、標的分子と相互作用ポリペプチド間の相互作用は、レポーター遺伝子を用いて検出される。
【0156】
本方法を実施するために、一旦、標的分子が固定されれば、予備的な段階で、前記標的分子と相互作用できる本発明の相互作用ポリペプチドを同定することが有利であり得る。
【0157】
本発明は、タンパク質分子、ポリヌクレオチド、例えば、1000未満の分子量を有する小有機分子、脂質、糖質など、この方法によって同定される候補分子も包含する。
【0158】
本発明の特に好ましい実施形態に従えば、細胞内標的分子はRevタンパク質であり、使用される相互作用ポリペプチドは、本発明に定義されているとおりであり、好ましくは以下のヘプタペプチド配列のうち一つを有する。NFWFCGLKC(配列番号2)、NNWLCCLNC(配列番号3)、NFWFCGLAC(配列番号27)、NAWLCCLNC(配列番号25)、NNWLCCLAC(配列番号26)、FWFCGAK(配列番号45)、FWFCGAA(配列番号46)、NWACCLN(配列番号47)、NWLACLN(配列番号48)、AWACCLN(配列番号49)、AWLACLN(配列番号50)、AWLCCLA(配列番号51)、NWAACLN(配列番号52)、NWACCLA(配列番号53)、NWLACLA(配列番号54)、AWAACLN(配列番号55)、AWACCLA(配列番号56)、AWLACLA(配列番号57)、NWAACLA(配列番号58)及びAWAACLA(配列番号59)。 一例として、使用される相互作用ポリペプチドは、表記SHPRで、実験の部に記載されているものの一つである。
【0159】
本発明は、細胞内標的分子の特性を調節することができる分子を同定するための方法にも関する。本方法は、以下の様々な工程によって特に特徴付けられる。
【0160】
第一の工程において、本発明の相互作用ポリペプチドのファミリーの様々なメンバーをコードする配列を含む核酸分子が作製される。これらの様々なメンバーは、ヘプタペプチドモチーフの配列のみが異なる。
【0161】
本方法は、酵母ツーハイブリッド系を用いて、このように作製された分子をスクリーニングすることも含む。この系では、探索されている標的分子と相互作用するパートナーが、ベイトとして使用される。作製された分子は、プレイとして作用する。
【0162】
本方法は、相互作用を検出するための工程も含む。この相互作用は、ツーハイブリッド系に含まれるレポーター遺伝子の発現によって明らかにすることもできる。細胞中の表現型の変化又は存在物のアッセイも、相互作用の検出を可能にすることができる。
【0163】
必要に応じて、本方法は、ヒト細胞中でこの相互作用を確認することも含む。この工程は、様々な様式で実施することが可能である。一つの様式は、ヒト細胞に適合されたツーハイブリッド系の均等物を作製することからなる。このシステムは、細胞株を用いて有利に実施される。共免疫沈降による相互作用を確認すること、又はこの相互作用によって引き起こされる効果を確認することも想定することが可能である。このようにして、スクリーニングされたポリペプチドは、細胞内標的を含有する細胞の存在下に置かれる。このポリペプチドが、標的とのその相互作用のために、細胞に対する影響を誘導するかどうかが観察される。
【0164】
想定され得るその後の工程は、本発明において同定された大量の相互作用ポリペプチドを産生することからなる。このような産生は、例えば、ポリペプチドを過剰発現することができる誘導性プロモーターの作用によって、細菌中で有利に実施される。ポリペプチドは、可溶性形態で又は封入体の形態で産生され得る。哺乳類細胞、例えばSf9細胞中での大量の産生も想定され得る。
【0165】
この方法は、HIV:Tat、Revなどのウイルスタンパク質の機能を修飾することができる相互作用ポリペプチドを検出するのに特に適している。
【0166】
このようなケースでは、本発明の相互作用ポリペプチドを取得し、性質を決定する方法は、幾つかの工程で実施され、本発明者らによって使用された、以下の方法を用いて実施することができる。
【0167】
標的タンパク質に対する、酵母中でのランダムヘプタペプチドのライブラリーのスクリーニング
そのN末端が転写因子(本ケースではGAL4)の活性化ドメインと融合され、そのC末端が塩基性Tatドメインの9つのアミノ酸と融合されたランダムヘプタペプチドのライブラリーを、酵母発現ベクター中に構築した。酵母中で目的のタンパク質を発現させることができるベクター中で、目的のタンパク質(ウイルス又は細胞性)をコードする配列を、DNAの結合ドメインをコードする配列(本ケースではLexA)の下流にクローニングする。
【0168】
ヘプタペプチドモチーフに付随する塩基性Tatドメインは、細胞内透過を確保するモチーフとして使用される。様々なドメインが、それらの分割を確保するアミノ酸グリシン又はプロリンによって隔てられるように、タンパク質の最終配列が設計される。標的融合LexAタンパク質(LexA−Tat、LexA−Rev及びLexA−NES Revタンパク質を用いて実施される。)を発現するベクターによって、次いで、ランダムヘプタペプチドを有するベクターのライブラリーによって、結合モチーフLexAの依存下にあるHis及びlaczレポーター遺伝子を有するL40酵母株を形質転換する。HIV−1のTat及びRevタンパク質は、ウイルス複製に不可欠な制御タンパク質である。クローンの最初の選択は、無ヒスチジン培地中で行われる。次いで、陽性クローンに対して、フィルター上でβ−ガラクトシダーゼ試験を行う。
【0169】
明確に陽性なクローンを回収し、E.コリ中での形質転換によって、ヘプタペプチドモチーフを含有するベクターを単離する。ベクターを配列決定することによって、ヘプタペプチドモチーフの同定が可能となる。
【0170】
哺乳類細胞における相互作用の存在の確認:
酵母環境中で選択されたモチーフがヒト細胞の生化学的状況下でも機能することを確かめるために、上述した試験と類似の試験をHeLa細胞中で行う。ヒト細胞中で、Flagエピトープ、核局在化シグナル及びタンパク質Vp16の活性化因子ドメインをコードする配列の下流をヒト細胞中での発現を可能とするプラスミド中の酵母ベクターから、ヘプタペプチドモチーフを再クローニングする。
【0171】
LexA−標的タンパク質融合物を発現するベクター及びLexA結合配列の制御下にあるレポーター遺伝子SEAP(分泌型アルカリホスファターゼ)を有するベクターで、この構築物をHeLa細胞中に同時形質移入する。SEAP活性の測定は、評価されるべきヒト細胞の核内で、ヘプタペプチドが標的細胞と相互作用できるようにする。ヘプタペプチドモチーフを発現するベクターは、この構築物によって形質移入される細胞の抽出物を用いて実施されるイムノブロット実験による評価、評価すべきこのモチーフとの融合タンパク質の発現レベル、確認すべき細胞中でのその安定性を可能にした。これらの実験によって、幾つかのヘプタペプチドモチーフがTat及びRevと相互作用できることが確認された。
【0172】
ヘプタペプチド/Tatの塩基性アミノ酸配列の安定化タンパク質との会合:
短い直鎖ペプチドは、細胞外及び細胞内培地中での安定性が乏しい場合がある。この問題を克服するために、本発明者らは、ヒト細胞中において安定で、豊富に存在する小タンパク質に、ヘプタペプチド/塩基性Tatアミノ酸配列を会合させることを決定した。それらの選択は、まず、ユビキチンファミリーのメンバーに的を絞った。この構築物は、ユビキチン(ub)そのもの及び相同タンパク質SUMO−1を用いて作製した。これらのタンパク質をコードする配列を、哺乳類細胞に対する発現ベクター中に導入した。喪失されたジグリシンモチーフの場所で、SUMO−1又はユビキチンの下流に、ヘプタペプチド/塩基性Tatアミノ酸配列を導入する。このジグリシンモチーフは、前記ポリペプチドによって修飾されたタンパク質のリジンの側鎖に通常結合される。SUMO−1特異的Tatヘプタペプチド融合タンパク質(SHPT)及びRev(SHPR)の適切な発現を確認することができた。Ub構築物の場合、ユビキチンに対して誘導された良い抗体が存在せず、実施されなかった。
【0173】
これらの構築物を用いて、本発明者らは、それぞれRev及びTatに対して誘導されたSHPR及びSHPTがこれらのタンパク質の機能を抑制することができるかどうかを評価するために、機能的試験を実施した。Tatの場合、Tatを発現するベクター及びCAT配列の前にHIV−1プロモーターを有する指示構築物とともにSHPT発現ベクターを同時形質移入した。6つのうち2つの抗Rev HSPRが、イントロン中のRev応答要素(RRE)と会合したCAT配列を有する構築物に対するRevの効果の完全な阻害を示した。RNA RRE配列は、Revタンパク質の結合を可能にした。この種の指示構築物は、スプライシングされていないRNAの細胞質への輸送を引き起こして、CAT酵素の発現を可能にすることによって、Revの効果の評価を可能にした。
【0174】
SHPT及びSHPR相互作用ペプチドの大量生産:
これらの結果に従って、本発明者らは、細胞中に透過し、細胞外培地から始まる標的タンパク質の機能を阻害する能力を評価できるようにするため、相互作用ペプチドを大量に作製するためのシステムを開発した。細菌中での産生を可能とするベクター中に、抗Rev SUMO−1−ヘプタペプチド/塩基性Tatドメイン配列をクローニングした。ヘパリンカラム、次いでゲルろ過上で精製するためのプロトコールを確定した。最初の結果は、SHPRが大量に産生され、この方法によって精製できることを示した。
【0175】
これら2つの分子の巨大バッチの作製によって、評価すべきこれらのタンパク質は薬学的に重要なものとなった。
【0176】
ここに記載されているプロセス全体が、確立されるべき標的タンパク質機能のアンタゴニストリガンドを同定する方法の実行を可能にする。得られた相互作用ペプチドは、治療分子として直接使用することができ、又は、それらの構造を模倣する小有機分子を開発するためのモデルとして働き得る。
【0177】
図1に示されている模式図は、使用された様々な工程と構築物を要約している。工程及び構築物は、例として挙げられており、当業者であれば、著しい困難なしに、均等物によって適合し、又は置き換えることが可能である。
【実施例1】
【0178】
HIV−1のTat及びRevタンパク質と相互作用するペプチドを同定するために使用された構築物及び作業状況の記載
HIV−1は、細胞の重要な因子に対するその作用がウイルス粒子の迅速且つ効果的な産生を確保する幾つかの制御タンパク質を発現する。20年にわたる熱心な研究の後、これらの制御タンパク質の様々な作用を誘導する分子的機序を理解する上で、著しい進歩が遂げられた。特に、これらの制御タンパク質のうち2つ、すなわち、Tat及びRevタンパク質に興味が持たれた。
【0179】
転写因子及びウイルスRNAの5’末端に位置するTARモチーフとの接触が確立されることによって、Tatは、組み込まれたプロウイルスの転写を活性化する。
【0180】
Revも、RNA(このケースでは、ウイルスRNAの3’位内のイントロン位置に存在するRREモチーフ)及び細胞の核因子と相互作用する二重の能力を有する。このウイルスタンパク質には、核局在化シグナル(NLS)と核外移行シグナル(NES)がともに含まれ、核と細胞質間のシャトルとして作用することによって、このタンパク質は核外移行を可能とし、スプライシングされていないウイルスRNA及び部分的にスプライシングされたウイルスRNAの翻訳を可能とする。
【0181】
Tat及びRevは、タンパク質−タンパク質相互作用を介して作用する小タンパク質なので、本発明者らは、これらのタンパク質が関与している会合を競合的に妨害することができるペプチドリガンド(相互作用ペプチド)を用いて、ウイルスの複製に絶対に必要なそれらの機能を阻害することが可能なはずであると推測した。
【0182】
二重ハイブリッド(又はツーハイブリッド)検査は、細胞内媒体、特に核内での相互作用を明らかにすることができるので、二重ハイブリッド(又はツーハイブリッド)検査は、このような相互作用ペプチドを選択する第一段階として選択される方法となる。
【0183】
ペプチドの使用に関連する重要な問題は、それらの細胞内への透過である。複雑な遺伝子治療操作の使用を回避するために、本発明者らは、タンパク質形質導入ドメイン、より具体的には、本ケースでは塩基性Tatドメインを付加することによって、スクリーニング工程で細胞透過特性を付加した。この方法により、本発明者らは、Tat又はRevに結合する短いペプチド配列を同定することができた。それらを安定化させるために、これらのペプチド配列をSUMO−1と会合させることにより、SUMO−1ヘプタペプチドタンパク質形質導入ドメイン又はSHPと称される小タンパク質が産生され、これは、リンパ球の中に効果的に貫通することが可能となり、そのうち幾つかはRevの機能を阻害することができる。リンパ球とマクロファージの両者の中でウイルスの複製を阻害することが観察されたこれらのタンパク質は、新たなウイルス粒子の生成の撲滅に使用するための新規治療剤となり得る。
【0184】
Tatタンパク質に対して開発されたSHPは、SHPTと名付けられ、Revタンパク質に対して開発されたSHPは、SHPRと名付けられた。
【0185】
I.酵母ツーハイブリッドシステム:
A.ランダムペプチドライブラリー:
1−pGAD−CR構築物:
このプラスミドは、pGAD424(clontech)の誘導物であった。このベクターをEcoRI及びBgllIで消化した。
【0186】
リンカー領域を含有する断片、ランダム配列に対するクローニング部位及び塩基性Tatドメインは、以下のオリゴヌクレオチドをハイブリダイズすることによって得られた。
【0187】
5’pAATTGGGTGGTGGCGGATCCGGTTTGCCCGGGAGAAAGAAGCGTAGACAAAGAAGACGTGGTTACCCACCACCGCCTAGGCCAAACGGGCCCTCTTTCTTCGCATCTGTTTCTTCTGCACCAATTCTAGp5’(pはリン酸を表す。)。この断片を、pGAD424のEcoRI及びBgIII部位の間に挿入した。
【0188】
2−相互作用ペプチド(pGAD−CR−P)のライブラリーの構築
ランダム配列断片は、以下の2つのオリゴヌクレオチドをハイブリダイズし、DNAポリメラーゼで修復し、酵素BamHI及びXmaIで消化することによって作製された。
【0189】
5’−bACTCGGATCCNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNCCCGGGGTCGCAGTG
GGCCCCAGCGTCACb−5’
(bはビオチンを表す。)
ビオチン化された末端を抽出するために、この消化産物を常磁性ストレプトアビジンビーズと混合した。
【0190】
上清中に含有されるBamHI−XmaI断片を、pGAD−CRベクターのBamHIとXmaI部位の間に挿入し、プラスミドpGAD−CR−Pを作製した。
【0191】
XL1−ブルーEコリ株の中にこの連結産物を形質導入し、アンピシリンを含有するLB寒天プレート上に画線した。2×106個の独立コロニーを回収し、アンピシリンを含有するLB培地中で1時間培養した。次いで、プラスミドを抽出し、標準的なPEG操作を用いて精製した。
【0192】
B.ベイト
1.pLex9ベクター:
このプラスミドは、pGBT9(clontech)の誘導物であった。GAL4 DNAの結合ドメインをLexAに対する結合ドメインと交換した(Farjot et al., 1999)。
【0193】
2.pLex−Tatの構築:
pSG−Tatベクター(Veschambre et al., 1995)から得られた、修復されたNcoI/BamHI断片を、pLex9のSamI及びBamHI部位の間にクローニングした。
【0194】
3.pLexRev及びpLex−NESの構築
これらの構築物は、LexAのものと融合された、完全なRev配列(plexRev)又はNESのもののみ(pLex−NES)を含有した(Farjot et al, 1999)。
【0195】
既述のように(Rousset et al, Oncogene, 1998,16, 643−654)、s.cerevisiaeのHF7c株の中で、pLexTat、pLexRev又はpLex−NESの何れかをベイトとして、及びpGAD−CR−Pをプレイとして用いるツーハイブリッドスクリーニングを行った。このコロニーを無ヒスチジン最小培地上で培養し、以前に記載したとおりに(Rousset et al, Oncogene, 1998,16, 643−654)、フィルター上でのアッセイによって、β−ガラクトシダーゼの発現について分析した。陽性コロニーのプラスミドpGAD−CR−Pを回収し、ヘプタペプチドモチーフの配列を決定した。
【0196】
II.哺乳類細胞ツーハイブリッドシステム:
A.pSG−FNV−P構築物:
これらの構築物は、プラスミドpSG−FNV(Desbois et al.,1996)の誘導物である。以下のオリゴヌクレオチドを用いて、pGAD−CR−P構築物から、ヘプタペプチドを含有する領域を増幅した。
【0197】
5’−TGAAGGTCGACCACCAAACCCAAAAAAAGAG−3’(オリゴ5’)
5’−CCTGAGAAAGCAACCTGACC−3’(オリゴ3’)
SalI及びBglIIでこのPCR断片を消化し、pSG−FNVベクターのXhoI及びBglII部位の間に挿入し、プラスミドpSG−FNV−Pを得た。
【0198】
B.ベイト
1.ベクターpSG−LexA−Revの構築:
このベクターは、哺乳類細胞中で融合物LexA−Revを発現する(Farjot etal., 1999)pSG5(Green et al, 1988)の誘導物である。
【0199】
2.ベクターpSG−LexA−Tatの構築:
Tatをコードする配列を、pSG−LexA中のLexAをコードする配列の下流に導入した。
【0200】
C.指標構築物(レポーター構築物):
このプラスミドは、LexAに対する5つの結合部位の制御下にあるSEAP配列を有していた(Farjot et al,1999)。
【0201】
III.哺乳類細胞に対する発現ベクターSUMO−1及びSUMO−1ペプチド
A.野生型pTL1−SUMO−1構築物:
SUMO−1配列は、以下のオリゴを用いて、cDNA(HGMP−UKから得られたIMAGEクローン)から増幅した。 5’−GGGTCGACGTCCATATGTCTGACCAGGAGG−3’
5’−AAAAGATCTCTAAACTGTTGAATGACC−3’
増幅された断片を、SalI及びBglIIで消化し、pSG5の誘導物である発現ベクターpTL1のXhoI及びBglII部位の間に挿入した。
【0202】
b.ベクターpTL1−SUMO−CPの構築:
この構築物は、SUMO−1と融合したヘプタペプチドの挿入を可能とし、ジグリシンモチーフを置換した。以下のオリゴヌクレオチドを用いてSUMO−1配列を増幅した。
【0203】
5’−GGGTCGACGTCCATATGTCTGACCAGGAGG−3’
5’−ATCAGATCTGAATCTCGAGCCGTTTGTTCCTGATAAAC−3’
増幅された断片をSalI及びBglIIで消化し、ベクターpTL1のXhoI及びBglII部位の間に挿入した。
【0204】
C.ベクターpTL1−SUMO−Pの構築
ヘプタペプチド及び塩基性Tatドメインを含有する配列を、II.Aに記載されているように増幅し、SalI及びBglIIで消化し、ベクターpTL1−SUMO−CPのXhoI及びBglII部位の間に挿入した。
【0205】
IV.哺乳類細胞のためのユビキチン及びユビキチンペプチド発現ベクター:
A.pTL1−Ub−CP構築物:
ユビキチンに対する配列は、以下のオリゴヌクレオチドを用いて、cDNA(HGMP−UKから得られたIMAGEクローン)から増幅した。
【0206】
5’−CTAAGAATTCAAAATGCAAATCTTCGTGAAAACC−3’
5’−CACGAAGATCTACACTCGAGCTCTCAGACGCAGGACC−3’
増幅された断片をEcoRI及びBglIIで消化し、pTL1のEcoRI及びBglII部位の間に挿入した。
【0207】
B.ベクターpTL1−Ub−Pの構築
II.Aに記載されているように、ヘプタペプチドと塩基性Tatドメインを含有する配列を増幅し、SalI及びBaglIIで消化し、pTL1−Ub−CPのXhoI及びBglII部位の間に挿入した。
【0208】
V.pFLAG−SUMO−P中での細菌発現ベクターの構築
pTL1−SUMO−PプラスミドをHindIII及びBglIIによって消化した。ヘプタペプチド/塩基性Tatドメイン部分と融合したSUMO−1配列を含有する断片を、pFLAGMacベクター(IBI FLAG(R) Biosystems)のHindIII及びBglII部位の間に挿入した。
【0209】
VI.pFLAG−Ub−P中での細菌発現ベクターの構築
PTL1−Ub−PプラスミドをEcoRI及びBglIIによって消化した。ペプチド/塩基性Tatドメイン部分と融合したUb配列を含有する断片を、ベクターpFLAG−2(IBI FLAG(R) Biosystems)のEcoRI及びBglII部位の間に挿入した。
【0210】
VI.細胞培養及び形質移入:
5% CO2を含有する湿った雰囲気中において、5%のウシ胎児血清を補充したDMEM培地中でHeLa及びCOS7細胞を培養した。形質移入は、カルシウム/リン酸共沈法を用いて行った。
【0211】
哺乳類細胞中でのツーハイブリッド検査では、形質移入は80000個のHeLa細胞を播種した6ウェルプレート中で行った。DNA混合物は、125ngのSEAPレポーター構築物、LexAと融合している25ngのTat又はRev発現ベクターを含有し、その量は、プレイを発現するプラスミドに最適なものとして定義された量である。すなわち、クローン142及び192(50ng)を除いては、Tatに対して選択されたモチーフについては250ng、Revに対して選択されたモチーフについては25ngであった。SEAP活性は、製造業者の指示書に従い、「SEAPレポーター遺伝子アッセイ化学発光」キット(Roche)を用いて測定した。Tat機能的検査は、60mmのペトリ皿中の300000個のHeLa細胞を、レポーター構築物LTR HIV−CAT(50ng)、pSG−Tat(2ng)及びSUMO−1又は相互作用ペプチド(0.5及び2μg)に対する発現ベクターで形質移入することによって行った。Rev機能的検査は、レポータープラスミドpDM128(50ng)、pSG−Rev(5ng)及びSUMO−1又は相互作用ペプチド(0.5及び2μg)に対する発現ベクターで形質移入することによって同様に行った。CAT活性は、CAT ELISAキット(Roche)を用いて測定された。Jurkat細胞は、5%CO2を含有する湿った雰囲気中において、10%ウシ胎児血清を補充したRPMI 1640中で、37℃で培養した。ヒト末梢血単核細胞(PBMC)及び単球は、Ficoll−Hypaque(Eurobio)を用いた密度勾配遠心によって、健康な血清陰性のドナーの血液から単離した。1μgのフィトヘマグルチニン−P(PHA−P、Difco Laboratories)及び5IU/mLのヒト組換えインターロイキン−2(rhIL−2、Roche Products)によって、ヒト末梢血単核細胞(PBMC)を活性化した。次に、ヒト末梢血単核細胞(PBMC)を、200μLの培地A(RPMI 1640細胞培養培地;Invitrogen)、熱で不活化された(+56℃、45分間)10%ウシ胎児血清(FCS,Bio West)及び20IU/mLのrhIL−2を補充した1%の三抗生物質混合物(ペニシリン、ストレプトマイシン及びネオマイシン;PSN,Invitrogen)中、96ウェルマイクロプレート(10000細胞/ウェル)上に置いた。5%CO2を有する湿った雰囲気中、37℃に細胞を維持した。
【0212】
7日目に、接着によって、単球から単球由来マクロファージ(MDM)が分化した。3日目に、1mLの培地中、48ウェルプレート中に300000細胞/ウェルを分散させた。単球の分化及びMDM培養は、湿った5%CO2雰囲気中、細胞培地A’:10%熱不活化FCS及びPSN三抗生物質混合物1×を補充したDMEM glutamaxTM中、37℃で行った。
【0213】
VIII.細菌の産生及びSHPの精製
2LのLB培地中で、0.9の光学密度まで培養されたBL21−CodonPlusTM−RP(Stratagene)Eコリ細胞を形質転換するために、セクションVIに記載したベクターを使用した。18℃で30分後、0.1mMのIPTGを培地に添加し、これを18℃で一晩継続した。Rocheの「完全」アンチプロテアーゼ(Complete antiprotease.Roche)、0.5mg/mLのリゾチームおよび20u/mLのベンゾナーゼ(Sigma)を補充した溶解緩衝液:200mMのNaCl、0.1Mのtris−HCl、pH7.4、10mMのMgCl2中で、この細菌に音波処理を施した。4000rpmで30分間の遠心後、5mLのヘパリンHyperDカラム(Biosepra)に上清をかけた。溶出は、DE 600緩衝液(600mMのKCl、20mLのHepes、pH7.9、10μMのZnCl2、1.5mMのMgCl2、1mMのEDTA及び1mMのDTT)を用いて行った。Hiload 16/60 Superdex 200ゲルろ過カラム(Amersham Pharmacia Biotech)によって、溶出産物を分画した。SHPを含有する画分を合わせて、DE50緩衝液(KCl濃度が20mMであることを除いて、DE600緩衝液と同じ組成)に対する透析後、5mLのmonoQ HyperDカラム(Biosepra)にかけた。PBS 1×緩衝液に対して、フロースルーを透析し、凍結乾燥によって10倍濃縮し、滅菌ろ過を行った。
【0214】
IX−イムノブロット及び免疫蛍光
使用した技術は、本分野において慣用されているものであった(ポリアクリルアミドゲル、二フッ化ポリビニリデン膜、PVDF、Sigma製のFLAGに対して誘導され、1:1000希釈され、Amersham Biosciences製ECLキットで可視化されるモノクローナル抗体)。
【0215】
1:500に希釈され、2時間インキュベートされた一次抗FLAG抗体と、1:1000に希釈され、Alexa Fluor 488蛍光標識試薬(Molecular Probes)に結合され、1時間インキュベートされた二次抗体とを用いて、免疫蛍光検査を行った。
【0216】
X.ウイルス及び抗ウイルス検査:
PBMC細胞には、HIV−1−LA1(Barre−Sinoussi et al, Science, 1983,220, 868−871)というリンパ指向性株を感染させ、MDM細胞には、マクロファージに対して指向性を有するHIV−1/Ba−L(Gartner et al, Science, 1086, 233,215−219)という株を感染させた。PHA−Pで活性化された臍帯血単核細胞(UBMC)とともに、これらのウイルスをインビトロで増幅した。可溶性因子を除去するために、無細胞上清を360000gで、10分間遠心し、残留物を細胞培養培地中に再懸濁した。PHA−Pで活性化されたPBMC細胞を用いて、ウイルス株を滴定し、Karberの式を用いて、50%組織培養感染量(TCID50)を計算した。
【0217】
5つの濃度の各分子によって、PBMC細胞を30分間、前処理し、75 TCID50のHIV−1−LA1株に感染させた。AZT(1.6、8、40、200及び1000nM)及びインジナビル(1.6、8、40、200及び1000nM)を対照として使用した。相互作用ペプチドSHPR−8、−15、−190及びSHPT−142を、31、62.5、125、250、500、1000及び2000nMの濃度で調べた。逆転写酵素活性(RT)アッセイによってウイルスの複製を測定するために、培養を通じて、この分子を維持し、感染から7日後に細胞上清を採集し、−20℃で保存した。薬物によって誘導された細胞毒性を検出するために、第7日目に、PBMC細胞を顕微鏡レベルで観察した。
【0218】
6つの濃度の異なる分子中で、MDM細胞を30分間、前処理し、30000TCID50のHIV−1/Ba−L株を感染させた。AZT(0.8、4、20、100及び500nM)及びインジナビル(0.8、4、20、100及び500nM)を対照として使用した。相互作用ペプチドSHPR−8、−15、−190及びSHPT−142を、62.5、125、250、500、1000及び2000nMの濃度で調べた。逆転写酵素活性(RT)アッセイによってウイルスの複製を測定するために、感染後7日間、この分子を維持し、感染から7、14及び21日後に細胞上清を採集し、−20℃に保存した。薬物によって誘導された細胞毒性を検出するために、第7、14及び21日目に、MDM細胞を顕微鏡レベルで観察した。
【0219】
RetroSys RTキット(Innovagen)を用いて、細胞培養から得た上清中のRT活性をアッセイすることによって、HIV複製を分析した。実験は3回行い、RT活性の平均±標準偏差(SD)として、結果を表す。非処理対照からのパーセント及びソフトウェア(J and T C Chou, Biosoft, Cambridge)を用いて、50%、70%及び90%有効用量(ED50、ED70、ED90)を計算した。
【実施例2】
【0220】
結果
Tat及びRevに結合するペプチド配列の同定
まず、ツーハイブリッド酵母システムスクリーニングによって、制御タンパク質Tat及びRevに対する相互作用ペプチドの探索を行った。ベイトは、Tat、Rev又はRevのNESの全配列と融合したLexAに対する配列を含有していた(図7A)。プレイは、GAL4活性化ドメイン、7アミノ酸のランダム配列及びTat形質導入ドメイン(図7B)という3つの異なる部分を含んでいた。21の縮重位の系列を含む、合成オリゴヌクレオチドから調製されたDNA断片をクローニングすることによって、プレイに対する発現ベクターのライブラリーを構築した。
【0221】
LexTat、LexRev又はLexNESをベイトとして使用する3つの異なるスクリーニングにおいて、このライブラリーを使用した(表1a参照)。無ヒスチジン培地中で培養され、β−ガラクトシダーゼに対する検査に対して陽性であったクローンのベクター全てを単離し、再検査を行った。LexAのみをベイトとして使用したときには、これらのベクターは何れも、β−ガラクトシダーゼの発現を誘発しなかった(表1b、c、d参照)。次いで、Tat対して選択された4つのベクター、Revに対して選択された3つのベクター、NESに対して選択された19のベクターを取得した(表1b、c、d参照)。哺乳類細胞中でのツーハイブリッド検査を用いて、これらの陽性クローンを分析した。産生された構築物は上に記載されており、図1Cに示されている。単独で又はプレイタンパク質とともに、LexAを一過性に発現したときには、レポーター構築物からの分泌されたアルカリホスファターゼ(SEAP)の発現は観察されなかった。LexTat及びLexRevはいずれも、それ自体、SEAPの発現を誘発することができるが、この産生は、プレイベクターとの同時形質移入によって増加する。結果を図8に示す。酵母に対して選択された配列は、ヒト細胞の核内中で、Tat及びRevタンパク質にも結合できることを示している。
【表1a】
【表1b】
【表1c】
【表1d】
Tat及びRev機能の阻害 前工程で単離された相互作用ペプチドの能力を考えると、次の工程は、Tat及びRev活性に対するアンタゴニストとして作用し、それらの細胞エフェクターとの会合に影響を与えることができるかどうかを確認することであった。このため、機能的検査を実施した。同定された相互作用ペプチドを安定化するために、SUMO−1タンパク質とともに構築物を作製した。ヘプタペプチド形質導入ドメインモジュールをコードする配列の上流に、ジグリシンC末端モチーフ中の変異を含む、コーディング配列全体を挿入した。このようにして産生された人工又はキメラタンパク質を、SUMO−1−ヘプタペプチド−タンパク質形質導入ドメインTat又はRev、すなわち、それぞれTat又はRevに結合する能力に応じて、SHPT又はSHPRと表記した。
【0222】
TatによるHIV−1プロモーターのトランス活性化に対する4つのSHPTの効果を、HeLa細胞中での一時的な発現実験によって評価した。低濃度では、様々なSHPTはTatのトランス活性化を減少させなかったが、さらに高い濃度では、特に、SHPT−8を用いると、トランス活性化の僅かな減少が観察された(図9A参照)。これらのデータは、選択されたSHPTがTat機能のあまり優れた阻害剤ではないことを示している。
【0223】
SHPR活性は、コーディング配列CATとイントロン中にRREモチーフを含むレポーター構築物pDM128を用いて評価された。Revの発現は、CATの発現を刺激し、スプライシングされないメッセンジャーを細胞質へ移行させる。この検査を用いて、様々なSHPRが異なる活性を有することが観察された。結果は、図9Bに示されている。このデータは、2つのSHPR、SHPR−142及びSHPR−190が、Revの機能の先験的な効果的阻害剤であることを明確に示している。この阻害が、実際に、予想通り、タンパク質−タンパク質相互作用と直接相関するかどうかを確認した。この目的のために、RevとSHPRの両者を細菌中で産生した。SHPを精製するためのプロトコールを開発した(実施例1参照)。Revは、GSTと融合されて発現され、グルタチオン−アガロースビーズに連結された。SHPR−142及びSHPR−190をカラムにかけ、SHPT−8も対照としてSHPR−190カラムにかけた。GST−Rev融合物がグルタチオンとともに放出されると、SHPR−142とSHPR−190の同時溶出が観察されたが、GST−Revを含有する画分中にSHPTは存在しなかった(図10参照)。このことは、SHPR−142及びSHPR−190とRevとの相互作用が直接的であり、中間体が関与していないことを示している。
【0224】
細胞外培地から細胞中へのSHPの透過
次いで、細胞外培地から同定されたSHPの活性を調べた。まず、細胞毒性を調べた。最大1μMの濃度まで、これらの分子は、インビトロで培養され、PHA及びIL−2で活性化された末梢血単核細胞(PBMC)の集団における細胞死のパーセントを変化させないように見えた。
【0225】
SHPが細胞中に透過する能力を評価するために、2μMのSHPR−190が補充された培地中でPBMCを培養した。様々な時点で、上清の分割量を取り出し、細胞を集めた。数回洗浄した後、RIPA緩衝液中に細胞を溶解し、FLAGエピトープ(細菌中で産生されたSHPのN末端に存在する。)に対して誘導された抗体を用いたイムノブロットによって、上清及び抽出されたものを分析した。休止しているリンパ球(図11A)及び活性化されたリンパ球(図11B)ともに、SHPR−190は培地中で安定であり、タンパク質の画分が細胞内に存在することが観察された(図11)。リンパ球が直径12μの球形であると仮定することによって、蛍光標識試薬で標識された抗体を用いて実施された定量実験は、2μMの外部濃度が15μMの細胞濃度をもたらすことが示された。このことは、SHPが細胞内に濃縮され得ることを示している。
【0226】
SHPが実際に細胞に侵入できることを確認するために、免疫蛍光分析も実施した。Jurkat細胞を1μMのSHPとともに4時間インキュベートし、2回洗浄した後、細胞を24時間培養した。FLAGに対する抗体を用いた免疫蛍光分析によって、4つの検査SHPでは、かなりの蛍光が、拡散する様式で細胞の内側全体に存在する(図11C)のに対して、対照細胞はこれに該当しないことが示された。
【0227】
このように本実験は、精製されたSHPとともにリンパ球を培養することができ、これらの分子が細胞内に入ることができることを証明する。
【0228】
SHPによるHIV−1の複製の阻害
最後の工程では、SHPがHIV−1の複製を実際に阻害できるかどうかを調べた。これは、PHA−Pによって活性化されたPBMC中及びMDM中で行った。PHP−Aによって活性化されたPBMCのモデルでは、HIV−1−LA1の複製は第7日目に最適であった。このため、様々なSHPの効果をこの時点で検査した。AZT及びインジナビルを対照として用いた。予想どおり、HIV−1−LA1の複製は、AZT及びインジナビルによって効果的に阻害された(図12A及び表2a)。SHPT−8、抗HIV活性を全く有しなかったが、SHPR−15は低い活性を有していた。これに対して、SHPR−142及びSHPR−190は、PHA−Pで活性化されたPBMC細胞中での複製を減少した。HIV−1の複製は、2μMのSHPR−142(73±6%、表2a参照)並びに1及び2μMのSHPR−190(それぞれ、80±7%及び100%、表2a参照)によって減少された。50%有効量の比較によって、SHPR−190がSHPR−142より活性が高いことが確認される(表2bを参照)。
【表2a】
【表2b】
基準株HIV−1Ba−Lは、MDM(単球由来マクロファージ)中で効果的に複製した。培養上清中の逆転写活性は、感染後(pi)7日目に検出され、感染後14及び21日目に最大となった。予想されたとおり、HIV−1/Ba−Lの複製は、AZT及びインジナビルによって、用量依存的に減少した(図12B及び表3a)。これらの細胞では、PBMCにおける場合と同様、SHPR−15が極めて低い活性を示した。活性化されたPBMCについて得られた結果とは異なり、SHPT−142もHIV複製を僅かに阻害した(2μMでは、14日目に44±10%、1μMでは効果なし、表3a)。これに対して、ウイルスの複製は、2μMのSHPT−8及びSHPR−190の両方によって阻害された(それぞれ、14日目に69±6%及び92±2%、表3a)。SHPT−8とは異なり、HIV複製に対するSHPR−190の効果は用量依存的であった(図12B)。さらに、ED90の値によって示されるように(表3b)、相互作用ペプチドSHPR−190は、さらに高い抗HIV活性を有していた。これらの効果は、おそらくは、相互作用ペプチドの分解のために、14日後に減弱した。
【表3a】
このように、本結果は、相互作用ペプチドSHPR−190が、HIVの2つの主要な細胞標的、すなわち、T CD4+リンパ球とマクロファージにおいて真の抗HIV効果を有することを示している。
【0229】
さらに、ペプチドSHPR−142はRev由来のNESに対して選択されたこと、ペプチドSHPR−190もRev由来のNESシグナルと相互作用することが示されたことに鑑み、これら2つの分子は、Revタンパク質の搬出特性を妨害する可能性がある。
【表3b】
【実施例3】
【0230】
同定されたSHP配列
SHPT:
SHPT−8 Phe Thr Met Arg Gly Val Asp
SHPT−9# Ile Thr Arg Arg Ile Glu Met Pro Gly Arg Asp Ile Pro Gly Val Asp Gly Ser Ile Leu Arg Gly Cys Trp Asp
SHPT−10− Gly Ala Val Asp Lys Ser His
SHPT−24 Ser Arg Val Asp Arg Lys Asp
#:このクローンは、幾つかのヘプタペプチド配列の挿入から得られた。
【0231】
SHPR:
SHPR−15 Met Cys Val Asp Leu Leu Leu
SHPR−31 Arg Gln Val Gly Met Leu Tyr
SHPR−115 Leu Ala Pro Arg Asn Leu Leu
SHPR−142* Phe Trp Phe Cys Gly Leu Lys
SHPR−190* Asn Trp Leu Cys Cys Leu Asn
* :これら2つのヘプタペプチドは、Revタンパク質の機能に対して阻害効果を有するヘプタペプチドである。
【実施例4】
【0232】
SHPR−142及びSHPR−190中の変異
Revに対して誘導されたSHPの作用機序並びにSHPR−142及び−190中の各位置に存在する残基の重要性を最大限決定するために、変異分析を行った。
【0233】
1.ウイルスタンパク質の、そのRNA標的配列Rev応答要素(RRE)への結合に対するSHPR−Revの結合の効果
Revタンパク質は、特定のRNA配列:RREに結合することによって、HIV−1 mRNAの細胞質への移行を引き起こす。本発明者らは、RevのSHPR阻害剤の結合が、このRev/RRE会合を妨害するかどうかという問いに対して答えを出した。この目的のために、RRE要素に対応するRNA分子をプローブとして用いたゲル遅延実験を行った。細菌中で産生されたRevタンパク質は、このRNAに結合し、非変性ポリアクリルアミドゲル移動の遅延を誘発する。SHPR−190及び−142タンパク質の添加は、この会合を阻害しなかったが、さらに大きな遅延を引き起こし、SHPR−Rev複合体がなおRREに結合できることを示している。
【0234】
これらの実験では、SHPT−8などの対照タンパク質の添加は、全く効果を有さなかった。
【0235】
このため、これらの実験から、SHPR阻害剤−190及び−142は、Revの要素RREとの相互作用を修飾しないと結論付け得る。それらの阻害作用は、むしろ、細胞質へのRev−RRE複合体の移行に起因するものにちがいない。この点は、SHPR−190及び−142がRev NESと相互作用するという観察と一致している。
【0236】
2.SHPR−142及び−190の阻害剤活性に対して必要とされる配列:
本発明者らによって、以下の実験が行われた。
【0237】
・SUMO−1配列の下流にあるヘプタペプチドモチーフのクローニング中に、選択された結合モチーフの直近の環境を改変しないために、タンパク質GAL4(PPNPKKEIEL)をコードする約10個のアミノ酸が保存された。
【0238】
・短いGAL4モチーフをコードするこの配列が除去された、SHPR−142及び−190の変異体(ΔGAL4と命名)を作製した。
【0239】
・阻害剤活性を有するヘプタペプチドモチーフのアミノ酸のそれぞれの寄与を評価するために、SHPR−142及び−190の7つの位置のそれぞれをアラニン(Ala)に変異し、増強された抗ウイルス活性を有する変異体を探すために、変異体を検査した。
【0240】
RREがイントロン位置に会合したCAT配列を有するレポータープラスミドのHeLa細胞に、Revタンパク質及びSHPRタンパク質に対する発現ベクターを形質移入することからなる一時的発現系を用いて、これらの様々な変異体を検査した。これらのSHPR誘導体の阻害剤活性を測定し、親SHPRの阻害剤活性と比較した以下の表中に示す。値は、2つの独立した測定に対して得られた値の平均に対応する。2つの値の隔たりは、20%未満であった。
【表4】
【0241】
表4:SHPR−142(2列目)及びSHPR−190(3列目)の哺乳類細胞中の発現ベクターは、ヘプタペプチドの各位置が変異され(アラニンに変化)、GAL4をコードするアミノ酸の欠失によって変異された。上記セクション(及びRoisin et al, JBC(2004)279:9208)に記載されているように、レポータープラスミドpDM128及び発現ベクターRevをこれらのベクターに形質移入した。CATタンパク質の量は、親SHPRの形質移入に対応する%として表されている。このため、100を超える値は、SHPRの阻害能に対する負の効果を表し、100より低い値は、この阻害特性の増加を表している。
【表5】
【0242】
表5:GAL4をコードするアミノ酸を欠失させることによって、SHPRの発現ベクターを修飾し、ヘプタペプチドの1又は4位を修飾した。表4の脚注に記載されているとおりに、これらの発現ベクターを検査した。
【0243】
これらの結果は、GAL4のアミノ酸をコードする配列が負の役割を果たすことを示している。142配列については、最初の5個の残基の修飾が負の効果を有し、アミノ酸6及び7、特に7位の修飾が活性を増加することを示している(表4)。−190ヘプタペプチドの場合、アミノ酸1の置換が活性をかなり顕著に増加させるが、3、4及び7の置換はこれより程度が低いようである(表4)。さらに、1位又は4位の変異は、GAL4配列の除去の効果をさらに増加させる(表5)。
【0244】
これらの結果から、残部のGAL4は、最終のハイブリッドタンパク質から除去され得ると結論付けることができる。−190ヘプタペプチドについては、1位の修飾も有利であるように思われる。
【0245】
4位の修飾も、システイン残基の量を限定する目的で、有利となり得る。これらは、酸化による修飾を引き起こし得る。2つのモチーフ−142及び−190に対して得られた結果を検討することによって、2位のトリプトファン残基が重要であり、トリプトファン残基は、4位、又は好ましくは5位に存在し得る近接するシステイン残基を必要とするように思われる。
【0246】
これらの結果は、さらに高い活性を有する可能性があるSHPR−190の新規誘導体をもたらす。
【0247】
形質導入ドメインの役割をさらに識別するための研究も行った。この目的のために、主要部分を欠失するために塩基性Tatドメイン(SHPR−142及び−190に対して用いた。)を末端切断するか、又はポリアルギニンモチーフによって置換した。いずれのケースでも、そのRev標的と相互作用するポリペプチドの細胞内能力は保存されることが示された。これらの結果は、標的と相互作用する能力に関して(この相互作用において、形質導入ドメインは関与していない。)、ヘプタペプチドが不可欠であることを確証する。
【0248】
このため、本発明のポリペプチドがある標的と相互作用する能力が同定されれば、次に、得られたポリペプチドが当該標的と常に相互作用できるようにしながら、ヘプタペプチドを修飾せずにその特性を最適化するために(形質導入の効率、安全性、非免疫原性など)、形質導入ドメインを変更することが可能である。
【参考文献】
【0249】
・Desbois C, Rousset R, Bantignies F and Jalinot P (1996). Exclusion of Int-6 from PML nuclear bodies by binding to the HTLV-1 Tax oncoprotein. Science 273, 951-3;
・Farjot G, Sergeant A and Mikaelian I (1999). A new nucleoporin-like protein interacts with both HIV-1 Rev nuclear export signal and CRM-1. J Biol Chem 274, 17309-17;
・Green S, Issemann, I, and Sheer, E (1988). A versatile in vivo and in vitro eukaryotic expression vector for protein engineering. Nucleic Acids Res 16, 369;
・Veschambre P, Simard P and Jalinot P (1995). Evidence for functional interaction between the HIV-1 Tat transactivator and the TATA box binding protein in vivo. J Mol Biol 250, 169-80;
・Wender P A, Mitchell D J, Pattabiraman K, Pelkey E T, Steinman L, Rothbard J B (2000). The design, synthesis and evaluation of molecules that enable or enhance cellular uptake: peptoid molecular transporters. Proc Natl Acad Sci USA, 97 (24): 13003-8;
・Kraber G, Beitrag zur kollektiven Behandlung Pharmakologischer Reihenversuche [contribution regarding the collective treatment of serial pharmacological investigations] (1931) Arch Exp Path Pharmak 162, 956-959。
【図面の簡単な説明】
【0250】
【図1】この図は、所定の標的タンパク質と相互作用できる相互作用ポリペプチドを作製するために使用された様々な工程と構築物を示している。二重矢印は、2つの分子間の相互作用を示している。各工程に対して、様々な種類の細胞が記されている。標的としてウイルスRevタンパク質を用いて、工程3(機能的試験)を実施した。
【図2A】図2は、酵母「ツーハイブリッド」工程に使用された様々なプラスミドのマップを示している。
【0251】
図2A:pGAD424から得られるプラスミドpGAD−CR。pGAD−CRから得られ、制限部位BamHI及びXamIの間に挿入されるヘプタペプチドモチーフをコードする配列を含むプラスミドpGAD−CR−P。
【図2B】図2は、酵母「ツーハイブリッド」工程に使用された様々なプラスミドのマップを示している。
【0252】
図2B:プラスミドpLex9の制限部位EcoRIとBamHIの間に挿入されたTat cDNAを含有するプラスミドpLex−Tat。
【0253】
プラスミドpLex9の制限部位BamHIとXhoIの間に挿入されたRevのNESモチーフをコードする配列を含有するプラスミドpLexNES。
【図2C】図2は、酵母「ツーハイブリッド」工程に使用された様々なプラスミドのマップを示している。
【0254】
図2C:プラスミドpLex9の制限部位BamHI及びSalIの間に挿入されたRev cDNAを含有するプラスミドplexRev。
【図3A】図3は、哺乳類細胞中でのツーハイブリッド工程のために使用される様々なプラスミドのマップを示している。
【0255】
図3A:
プラスミドpSG−FNV−P。pGAD−CR−PからX7 PTDモチーフを増幅し、制限酵素SalI及びBglIIで消化した後、プラスミドpSG−FNVの制限部位XhoI及びBglIIの間に挿入した。
【0256】
pSG5LexAから得られ、Tat cDNAを含む、プラスミドpSG5LexA−Tat。
【図3B】図3は、哺乳類細胞中でのツーハイブリッド工程のために使用される様々なプラスミドのマップを示している。
【0257】
図3B:
pSG5LexAから得られ、Rev cDNAを含む、プラスミドpSG5LexA−Rev。
【図4】図4は、機能的試験のための発現ベクターSUMO−1−Pのマップを示している。制限部位XhoI及びBglIIを含むSUMO−1をコードする配列pTL1−SUMO−1CPPをpTL1中に挿入した。
【0258】
pTL1−SUMO−1−P:X7 PTDモチーフに対する配列を、pTL1−SUMO−1−CPの制限部位XhoI及びBglIIの間に挿入した。
【図5】図5は、細菌中で発現ベクターとして使用されるプラスミドpFLAG−SUMO−1−Pのマップを示している。このプラスミドは、プラスミドpFLAG−MACの制限部位HindIII及びBglIIの間にSUMO−1−Pモチーフをコードする配列を挿入することによって構築された。
【図6】図6は、SUMO−1(番号1)及びユビキチン(番号3)の野生型配列並びに、安定化ドメインとして、SUMO−1の断片(相互作用ペプチドSUMO、番号2)又はユビキチン(相互作用ペプチドUB、番号4)を含む本発明の相互作用ペプチドの配列を示している。
【0259】
野生型SUMO−1に対する配列とSUMO−1の断片を含む相互作用ペプチドが並列されている。星は、2つの配列中に同一アミノ酸が存在することを示している。
【0260】
ユビキチンに対する配列とユビキチン断片を含む相互作用ペプチドに対する配列との間でも、類似のアラインメントを行った。
【0261】
相互作用ペプチド中のモチーフXXXXXXXは、ランダムな様式で確定され得る7アミノ酸配列を表している。
【図7】図7は、酵母(A)又は哺乳類細胞(C)中でのツーハイブリッド試験においてベイト(A)及びプレイ(B、C)として作用するタンパク質の模式図である。
【0262】
A.ベイトは、Tat(アミノ酸aa1から86)、Rev(aa1から116)又はRevの核外移行シグナル(aa70から96)と融合したタンパク質LexAからなる。
【0263】
B.酵母プレイは、活性化ドメインGAL4(一連の7アミノ酸のランダム配列)及びTat形質導入ドメイン(タンパク質形質導入ドメインPTD)を含む。
【0264】
C.哺乳類細胞中のプレイは、FLAGエピトープ、SV40のNLS(核局在化シグナル)(ワイドT)、HSVのVp16活性化ドメイン及びヘプタペプチド+TatPTDモジュールを含む。
【図8】図8は、哺乳類のツーハイブリッドスクリーニングによって、Tat及びRevに対して選択されたヘプタペプチド+Tat PTDモジュールの分析を示している。
【0265】
A.単独で、又はpSG−FNV−P−T8、−T9、−T10又は−T24とともに、レポーター構築物pSEAP Lex5X及びpSG5LexA−TatをHeLa細胞に形質移入した。SEAPの量を測定し、形質移入の2つの独立した点について得られた値の平均が示されている。エラーバーは、2つの値間の差の半分に相当する。
【0266】
B.pSG−FNV−P−T24、R15、−R115、−R190、−N142−N31及び−N7とともに、pSEAP Lex5X及びpSGLexA−Revを用いて、同じ検査を行った。結果は、図8Aと同様に示されている。
【図9】図9は、構築物SHPT及びSHPRに対するTat及びRevの活性の阻害を示している。
【0267】
A.ジグリシンモチーフ(GG)がARに変異されており、そのC末端がヘプタペプチド−Tat PDTモジュールと結合されたSUMO−1の配列全体を含む構築物SHPの模式図。
【0268】
B.pSG−Tat及びpTL−1−SUMO−1、pTL1−SHPT−8、−9、−10又は−24の何れかとともに、構築物LTR HIV−CATをHeLa細胞に形質移入した。これらの後者のプラスミドの量は、0.5μg(薄い灰色のバー)又は2μg(濃い灰色のバー)の何れかであった。CAT活性を測定し、形質移入の2つの独立した点について得られた値の平均が示されている。エラーバーは、2つの値間の差の半分に相当する。
【0269】
C.Rev活性を評価するために、pTL1−SUMO−1、pTL1−SHPR−15、−115、−190、−R7、−R31及びR142の何れかとともに、プラスミドpMD128及びpSG−RevをHeLa細胞に形質移入した。CAT活性は、図9Bと同様に示されている。
【図10】図10は、SHPR及びRev間の直接のタンパク質−タンパク質相互作用を表している。GXT−Revを細菌中で産生し、アガロース−グルタチオンカラムにかけた。SHPR−142、−190及びSHPT−8をこのカラムにかけた。リンスの後、グルタチオンでタンパク質を溶出した。それぞれ、GST又はFLAGに対する抗体を用いて、フィード(ライン1)、リンス(ライン2)及び溶出(ライン3、4、5)画分の分割量を、GST−Rev(上部グラフ)及びSHPに対するイムノブロットによって分析した。これは、SHPR−142及びSHPR−190がGST−Revとともに溶出されたのに対して、SHPR−8はカラム上のタンパク質に結合しなかったことを示している。
【図11】図11は、SHPの細胞内への侵入を示している。
【0270】
直接(A)又はPHA(フィトヘマグルチニン)及びIL−2(インターロイキン2)で活性化した後に(B)、単核細胞を末梢血から調製し、次いで、2μMのSHPR−190とともにインキュベートした。相互作用ペプチド添加後の表記の時点で、FLAGに対する抗体を用いたイムノブロットによって、上清の分割量を分析した(A、ライン1から4;B、ライン1から3)。細胞を集め、RIPA緩衝液中に溶解した。上清に対して記載したとおりに、得られた抽出物を、イムノブロットによって分析した(A、ライン5及び6;B、ライン4)。部分Aでは、曝露時間は、ライン5及び6(30秒)とライン1から4(5秒)の間で異なった。
【0271】
これらの分析は、上清中でタンパク質が安定であること、それが細胞内に存在することを示している。
【0272】
部分Cでは、2μMのSHPT−8、SHPR−15、SHPR−142又はSHPR−190とともに、Jurkat細胞を一時間インキュベートし、24時間後に細胞を集め、FLAGに対する抗体を用いた免疫蛍光によって分析した。代表的な細胞について、光の透過及び蛍光画像が示されている。細胞は、対照に対して観察されていない散乱蛍光を有していた。
【図12】図12は、リンパ球及びマクロファージにおけるHIV−1の複製の阻害を示している。
【0273】
A.末梢血から単核細胞を調製し、活性化した。異なる量のAZT、インジナビル、SHPR−15、−142、−190又はSHPT−8で細胞を処理し、HIV−1−LAIに感染させた。上清中の逆転写活性をアッセイすることによってウイルスの複製を測定し、パーセント阻害は、化合物の量の関数として示されている。
【0274】
B.単球からマクロファージを調製し、異なる濃度の薬物とSHPで処理し、HIV−1/Ba−Lに感染させた。逆転写活性をアッセイすることによって、ウイルスの複製を測定した。感染から7日後のパーセント阻害が、図12と同様に示されている。
【発明の背景】
【0001】
本発明は、ヘプタペプチドモチーフ(パターン)と細胞透過領域とを含む相互作用ペプチド、並びに、細胞の表現型を修飾することができる相互作用ペプチドを同定するためのスクリーニング方法、及び細胞内標的と相互作用することができるその他の分子を同定するためのスクリーニング方法に関する。本発明は、表現型スクリーニングにおける、又は治療目的のための、上記相互作用ポリペプチドの使用にも関する。最後に、本発明は、Revウイルスタンパク質の機能を修飾することができる相互作用ポリペプチド、及びRevと相互作用することができるその他の分子を同定するためのスクリーニング方法におけるそれらの使用に関する。
【0002】
ペプチドの相互作用は、主として、細胞内及び細胞間の連絡;細胞の機能に必要であり、タンパク質とそのリガンド間の複数の複雑な相互作用を通じて、その環境に適合する。新規タンパク質が同定されても、新規タンパク質に対するパートナーが同定でき、タンパク質の細胞機能が決定できるようになるまでは、この知見も、当初は関心を抱かせるものではないように思われる。
【0003】
さらに、多くの事例では、タンパク質は、異なるパートナーと相互作用することができる。これらの相互作用から、パートナーの各々について、同一の機能が生じることがあり(例えば、異なるペプチドリガンドをリン酸化するタンパク質)、又は、そこから、完全に異なる機能が生じることもある。これは、細胞中でのそれらの本来の機能とは独立して、ウイルスの侵入点としても作用する膜タンパク質の場合に特に当てはまる。あるタンパク質の機能は、このため、そのタンパク質が相互作用するペプチド又はタンパク質によって主として決定される。
【0004】
タンパク質相互作用は、一般には、静電的結合、水素結合及び立体的な障害による反発的な相互作用など、様々な結合による、タンパク質上に存在する高度に特異的な部位(2、3のアミノ酸)間の局所的な相互作用の組み合わせである。
【0005】
あるタンパク質は、あるタンパク質ドメインと特異的に相互作用する場合があり、その結果、このタンパク質は当該ドメインを共有するタンパク質のクラス全体と相互作用する可能性がある。
【0006】
あるタンパク質について、一般には、少数の天然ペプチドパートナーのみが知られているが、その相互作用能力はずっと重要である。あるタンパク質は、相互作用を作り出すことができ、他のペプチドに対してアクセス可能な多数の部位を有し得る。
【0007】
このため、新規相互作用パートナーを決定することによって、相互作用を修飾し(速度論、特異性を擾乱、抑制、改善、変化するなど)、又は既存の相互作用を模倣し、又は新規相互作用をもたらすことが可能となり得る。
【0008】
新規相互作用パートナーの同定は、一般的には、2つの異なる状況下で行われる。
【0009】
第一のケースでは、細胞内又は細胞外であり得る所定の標的に対して、パートナーが探索される。このようなケースでは、標的と相互作用し得るポリペプチドを産生することが可能である。ポリペプチドが相互作用しなければならない標的タンパク質の構造、電荷分布、誘引および反発力を考慮に入れることによって、そのポリペプチドの配列が決定される。その段階は、通常、分子モデリングによって実施される。そのアプローチには、標的タンパク質の極めて詳細な知見、特に、その三次元構造が必要である。標的に対して、多くの候補ポリペプチドを調べるために、スクリーニングすることも可能である。スクリーニングは、試験ポリペプチドの一つと所定の標的間の相互作用を実証することが可能でなければならない。このようなケースで一般的に使用されるスクリーニングは、所定の標的とポリペプチドの候補が同時に発現される酵母ツーハイブリッドスクリーニングシステム(米国特許US−A−5 580 736)である。
【0010】
第二のケースでは、標的タンパク質が決定されない。すなわち、新規相互作用パートナーは、それらが相互作用する標的タンパク質を知らずに、細胞のある表現型を修飾するそれらの能力に対してスクリーニングすることもできる。その場合には、細胞を介して異なるポリペプチドを発現し、予期される方向で表現型を修飾することが可能なポリペプチドを同定することからなる表現型スクリーニングが使用される(US−A−6 153 380)。
【0011】
その状況の変形は、2つの他のタンパク質間の相互作用を抑制、破壊、修飾又は不安定化することができる新規相互作用パートナーをスクリーニングすることからなる。その場合にも、一般に、表現型スクリーニングが使用される。他の2つのタンパク質間の相互作用に対してパートナーが作用する様式は、必ずしも明らかでない。
【0012】
上記スクリーニングに使用されるべきポリペプチドを作製するために、数多くの構築物が提案されており、特に、その配列がランダムであるモチーフがその中に挿入された一定のタンパク質配列(プラットフォームと称されることがある。)が同時に存在することを特徴とする(国際特許出願WO−A96/02561を参照)。その配列を変更することによって、次いで、ポリペプチドの完全なファミリーを作製し、続いて、それらが細胞内で相互作用する能力について検査することが可能である。
【0013】
細胞内タンパク質に対して新規相互作用パートナーを決定するためにこのアプローチが使用される場合には、新規相互作用パートナーが探索されているタンパク質がその中で発現されている細胞中で検査すべき構築物を発現させることができるクローニング及び形質転換を利用するのが通常である。
【0014】
治療の分野では、このことは、パートナーの候補が検出されれば、次いで、細胞内部で作用する薬物をそこから作製可能であることを意味する。すなわち、それを細胞中に透過させる手段が発見されるはずである。遺伝子治療は、通常、このステップを容易に達成することができない。相互作用パートナー上への細胞の透過を促進するモチーフを移植することからなる、その他の解決法には、予想不可能な様式で相互作用パートナーを修飾するという欠点がある。この修飾後に、リガンドとして選択されたタンパク質とそれがなお相互作用可能であるという保証はない。
【0015】
さらなるアプローチは、モデリングによって、タンパク質の模倣物を作製することからなるが、その方法は、完全に開発されたわけではない。さらに、多くの場合、細胞の膜を横切ることができないか、又は容易に横切ることができず、このため、その分子を産生した目的の相互作用をもたらさない分子が産生される。細胞の透過を保証するモチーフをこれらの分子上に移植しなければならないのであれば、上記の場合と同様に、それらの分子がリガンドとして選択されたタンパク質となお相互作用できるという保証はない。
【発明の開示】
【0016】
本発明の目的は、細胞透過ドメインが相互作用パートナーと会合するように、特定の構造を有する新規相互作用ペプチドを提案することである。最初のスクリーニング後に、このようなパートナーが、目的のパートナーと相互作用可能であることが示されれば、スクリーニングから薬物の作製への移行によって、スクリーニング工程中に実証された相互作用を擾乱するリスクがある新しいモチーフが付加されることはない。
【0017】
本発明の相互作用ペプチドは、(例えば、リンパ球及び/又はマクロファージ中への)細胞透過及びパートナーとの相互作用という二重の性質を有している。
【0018】
本発明者らは、ヘプタペプチドモチーフを有し、ウイルス又は細胞起源のタンパク質標的に結合することによって、その活性を阻害できる小タンパク質を作製することができる方法を開発した。これらの小タンパク質は、細胞中に透過できるように設計された。
【0019】
本発明の相互作用ポリペプチドは、安定化ドメイン、リンカー又はその他の成分も有し得る。
【0020】
本発明は、ある表現型を修飾し、又はある標的と相互作用することができる新規ポリペプチドを作製するための異なるスクリーニング方法も提案する。本発明は、あるタンパク質標的と相互作用できる化学分子をスクリーニングする方法も提案する。
【0021】
このようなパートナーの決定が重要であるドメインはウイルスの複製である。ヒト又は動物細胞中でのある種のウイルスの複製は、限られた数のウイルスタンパク質の発現によって可能となり、このウイルスタンパク質の幾つかは、このプロセスを引き起こす上で不可欠な活性を有する。本発明のスクリーニングに従って確定され、このため、細胞中に透過し、他のウイルス又は細胞のタンパク質との必要な接触を抑制する相互作用ポリペプチドにより、それらのタンパク質を遮断することによって、ウイルスの複製を抑制することが可能となる。
【0022】
本発明を実施すると、Revタンパク質、特にHIV−1のRevタンパク質と相互作用することができ、このため、ウイルス複製を抑制することができるパートナーを同定することが可能であった。これらのポリペプチドも、本発明の一部を構成する。
【0023】
本発明は、ある種の癌に関与する様々なタンパク質と相互作用できるパートナーを同定することを目的とした方法において実施することもできる。
【0024】
本発明に関連して、以下の用語を以下のように定義する。
【0025】
ヘプタペプチド又はヘプタペプチドモチーフ:共有結合された連続する7つのアミノ酸の直線状の連なり;
(ペプチド)ドメイン:それを含む配列中に、欠失−変異分析によって確定され得る少なくとも5つのアミノ酸を含むペプチド配列。このようなドメインは、一般に、機能又は役割に関与しており、その変異が機能の喪失を引き起こす不可欠なアミノ酸の存在によって特徴付けられる。例としては、核の多くのタンパク質中に存在するNLS(核局在化シグナル)ドメイン、細胞透過ドメイン、NES(核外移行シグナル)ドメイン、タンパク質−タンパク質相互作用ドメイン及び触媒ドメインを挙げることができる。
【0026】
細胞透過又は形質導入ドメイン又はモチーフ:インビボ、エキソビボ又はインビトロで、当該ドメインを含有するタンパク質の細胞中への透過を引き起こすことが可能な、5から35個のアミノ酸を含むペプチド配列。
【0027】
細胞透過を確実にするために、ドメインは、タンパク質の一端、例えば、C末端に配置しなければならないことがある。細胞透過機能は、タンパク質内におけるモチーフの位置とは無関係なこともある。細胞透過機能は、おそらく、一定のタンパク質サイズに限定され、これを超えると、透過がもはや確保されなくなる。
【0028】
細胞透過モチーフは、全ての細胞種に対して一般的であるか、又はある種の膜、例えば、原核細胞の膜、若しくはグラム陽性若しくはグラム陰性細菌の膜、若しくはリンパ球、例えば、初代リンパ球及び/又はマクロファージなどのある種のヒト細胞種の膜に特異的である。
【0029】
透過モチーフは、真核細胞の核内への透過も確保し得る。
【0030】
安定化ドメイン又はモチーフ:その二次構造が長期間且つある種のストレス条件下において安定的であり、それを含む任意のキメラタンパク質を安定化する能力を有する、少なくとも30個のアミノ酸を含むアミノ酸配列。特に、その構造は、変性並びにプロテアーゼによる分解及びストレス条件一般に対して影響を受けないものでなければならない。この構造は、そのドメイン中に、又はそのドメインの末端に挿入した場合に、ごく僅かしか擾乱されてはならない。安定化ドメインは、免疫原性が低いという性質によっても特徴付けられる。好ましくは、安定化ドメインは、比較的サイズが大きくなく、このため、300未満のアミノ酸、好ましくは200未満のアミノ酸を有する。
【0031】
一般に、多くの場合、安定化ドメインは、細胞中に存在する天然タンパク質の断片であり、このタンパク質は、豊富に存在し、遍在し、分解プロセスに関与していない細胞内タンパク質から選択されなければならない。
【0032】
ランダム配列:ランダムプロセスによって規定又は構築される配列。
【0033】
DNA配列のケースでは、ランダム配列は4つの候補から1つずつデオキシリボ核酸を選択することからなり、各候補は選択される確率が同じであるか(等確率)、又は同じでない(偏った選択)。遺伝コードの縮重のため、4塩基が等しい確率を有するランダムDNA配列は、ランダムなペプチド配列をもたらすが、複数のコドンによってコードされるアミノ酸が他のアミノ酸と比べて多く出現するので、偏りが生じる。
【0034】
21塩基(すなわち、7アミノ酸)のランダムDNA配列が一致して停止コドンを含有しない確率は71.5%である。
【0035】
ランダムな様式で規定されるのは、ペプチド配列でもあり得る。すなわち、アミノ酸は、順に、等しい確率で、又は等しくない確率で、全ての可能なアミノ酸からの選択によって決定される。
【0036】
ベイト:ベイトとは、互いに相互作用できる新規分子を決定することを目的としたスクリーニングにおいて、それに対するリガンドがスクリーニングを用いて探索される、予め確定された所定の分子である。
【0037】
ベイトは、レポーターとして作用する分子に融合させてもよく、融合させなくてもよい。
【0038】
プレイ:この同じスクリーニングにおいて、プレイとは、所定のベイトと相互作用する能力について検査される分子である。
【0039】
プレイは、レポーターとして作用する分子に融合させてもよく、融合させなくてもよい。
【0040】
ツーハイブリッドシステム:これは、当初、酵母で開発されたスクリーニングであるが、その原理は、他の細胞種にも適合させ得る。
【0041】
ツーハイブリッド標的では、ベイトをコードするDNA配列が、第一のドメイン「D1」をコードする「d1」配列にインフェーズで融合される。プレイをコードする配列は、第二のドメイン「D2」をコードする配列「d2」にインフェーズで融合される。「D1」及び「D2」ドメインは、それらの組み合わせ「D1+D2」が、要素「D1」及び「D2」が別々には有しない特定の特性又は機能を有することを特徴とする。「D1」及び「D2」の組み合わせは、それらが接触して配置し、維持するために、外的な介入を必要とする。翻訳後、ベイト(「D1」に融合されている)とプレイ(「D2」に融合されている)の相互作用が生じると、「D1」と「D2」の組み合わせが生じるであろう。この組み合わせ「D1+D2」から得られる特定の特性又は機能は、ベイトとプレイ間の相互作用を実証することが可能である。
【0042】
キメラペプチド:本来、同一タンパク質中では隣接していない少なくとも2つのアミノ酸配列の共有的な融合を含むポリペプチド。共有的な融合は、直接又は間接(リンカーを介する)共有結合によって達成され得る。
【0043】
同一細胞の2つのタンパク質に由来する2つの配列、又は近い属若しくは遠い属の細胞(例えば、異なる動物種)に由来する2つのタンパク質に由来し、又は真核細胞タンパク質の配列と原核細胞から得られる他の配列に由来する2つの配列も想定され得る。そのタンパク質中に本来存在しない合成配列と、そのタンパク質の配列との共有的融合も想定され得る。
【0044】
リンカー:一般的には、1から10個のアミノ酸、好ましくは1から5個のアミノ酸を含み、それが隔てるポリペプチドの2つのドメイン間に存在する極めて短いアミノ酸配列。リンカーは、それらが隔てる2つのドメインを機能的に妨害しないように選択される。リンカーの使用は、各ドメインが互いに独立に三次元の折り畳みを採れるようにするためにも特に推奨される。
【0045】
側鎖の立体的な障害が極めて少なく、且つ反応性が低いので、リンカーは、一般に、グリシンアミノ酸が豊富である。プロリンも、屈曲を形成し易いため、リンカーが隔てる2つのドメインがさらに大きな独立性を有するという性質故に、リンカーの中に極めて高い頻度で挿入される。
【0046】
2つのタンパク質配列間のパーセント同一性:このパーセントは、配列全体に沿った2つのアミノ酸配列間の同一性の程度を表す。検討されている配列が異なるサイズを有する場合には、%同一性は、最も長い配列の全長の関数として表される。%同一性を計算するために、2つの配列は、有限長のギャップを用いて、同一のアミノ酸の数を最大化させるように重ね合わせられ、次いで、同一アミノ酸の数を、最も長い配列中のアミノ酸の総数で割る。この定義が、本明細書中で使用される定義である。
【0047】
第一の側面において、本発明は、配列NX1X2X3X4X5X6X7C(X1、X2、X3、X4、X5、X6、X7はアミノ酸である。)を有するヘプタペプチドモチーフと、細胞透過ドメインとを含む相互作用ペプチドに関する。本発明の相互作用ポリペプチドはキメラポリペプチドであり、その「キメラの」性質は、ヘプタペプチドモチーフと細胞透過ドメインの融合に由来する。すなわち、この連続は、何れのタンパク質においても天然には存在しない。
【0048】
さらに、本発明のポリペプチドは、細胞透過ドメインに関する、ヘプタペプチドモチーフの具体的な配置によって特徴付けられる。実際、アミノ酸X7は、ポリペプチドのC末端から5ないし35、好ましくは7ないし25、より好ましくは9ないし20、例えば12ないし15のアミノ酸に見出され、細胞透過ドメインは、ヘプタペプチドモチーフに関してC末端に位置する。形質導入ドメインは、前記相互作用ポリペプチドのC末端に配置され得る。形質導入ドメインは、C末端にではなく、ヘプタペプチドモチーフに関してC末端に配置することもできる。例えば、形質導入ドメインの後には、Hisタグ又は相互作用ポリペプチドの精製又は検出を可能とする別のモチーフが続くこともできる。
【0049】
本発明の相互作用ポリペプチド中に存在するヘプタペプチドは、7アミノ酸の連続である。好ましくは、前記アミノ酸は、天然に存在する20のアミノ酸から選択される。しかしながら、本発明においては、修飾されたアミノ酸も取り込ませることができる。
【0050】
一例として、ヘプタペプチドモチーフは、ランダムプロセスによって作製される、ヘプタペプチドは、それ自体ランダムプロセスによって生成されるDNA配列によってコードされることもできる。これに対して、ヘプタペプチドモチーフは、必要に応じて、分子モデリング工程の後に、相互作用ポリペプチドが予め決められたタンパク質と相互作用する能力についてスクリーニングされる場合、完全に選択され、予め決定することができる。
【0051】
特に、モチーフがランダムプロセスによって生成されたDNA配列によってコードされる場合には、モチーフに対して7アミノ酸の長さは特に有利である。DNA配列がランダムな様式で生成される場合には、これによって、停止コドン(TAA、TAG及びTGA)が産生されることがある。7アミノ酸(すなわち、21ヌクレオチド)の長さは、相互作用可能なドメインが産生されるのには十分な長さを保ちながら、比較的に少ない停止コドンと無用な配列を産生する。このため、ヘプタペプチドモチーフの長さに関して7という数は、有利な妥協点であると思われる。
【0052】
7という数のさらなる有利さは、この長さの配列は免疫原性である確率が殆どないという事実に存する。主要組織適合複合体クラスI(MHCクラス1)によって提示される抗原は、最小8又は9のアミノ酸長を有すること、すなわち、ヘプタペプチドの長さより長いことが知られている。
【0053】
本発明の相互作用ポリペプチドは、このように、少なくとも12から42のアミノ酸を含む。このサイズのポリペプチドは、時折、細胞中では不安定な場合があり、それらは、抗菌ペプチドなどの2、3のペプチドを除き、プロテアーゼの標的になりやすいことが一般に認められている。このため、本発明の相互作用ポリペプチドは、好ましくは、この集合を安定化させ得る分子に連結される。好ましくは、このような安定化は、安定化ドメインを相互作用ポリペプチド配列と一体化させることによって達成される。
【0054】
安定化ドメインは、安定化ドメインを含むポリペプチドの長期的な安定性が、安定化ドメインを持たない同じポリペプチドの安定性より大きいことによって特徴付けられる。安定化ドメインは、ストレス条件下、例えばインビトロ又はインビボで起り得る変性及び切断条件下でのその安定性によっても特徴付けられる。ある安定化ドメインは、例えば、このようなドメインを含有する相互作用パートナーが、摂食の際又は血流中を通過する際に安定であるように、腸媒質又は絹媒質(seric medium)などのある種の生物媒質中での安定性に関して選択することもできる。その安定化の役割とは独立に、安定化ドメインは、検出を可能とする特性を有することもできる。
【0055】
安定化ドメインのさらなる利点は、組換えタンパク質を大量且つ安定な形態で産生できる細菌中又は別の生物中で産生されるその能力である。
【0056】
好ましい安定化ドメインには、天然のタンパク質の断片が含まれる。ある種のタンパク質は、特に、細胞中に豊富であり、遍在的で、非免疫原性で、安定である。このため、このようなタンパク質の断片は、安定化ドメインとして使用するのに特に好ましい。これは、ユビキチンファミリー(ユビキチン様)から得られるタンパク質に関して特に当てはまる。
【0057】
相互作用ポリペプチドがある細胞中に導入されるべきときには、前記細胞中に存在するタンパク質又は該細胞がその一部を形成している種に属するタンパク質の断片を、安定化ドメインとして選択することが特に有利であることが示されている。このため、本発明では、ヒト又は動物細胞中に存在するタンパク質の断片から得られる安定化ドメインを選択することが有利である。
【0058】
本発明者らは、ジグリシンモチーフ及びこのモチーフの下流にある全ての配列を除去するために、そのC末端部分が末端切断されたユビキチンファミリーのあるメンバーが、安定化ドメインとして極めて有利な特性を有することを実証した。
【0059】
本発明において特に好ましいタンパク質は、SUMO−1として知られているユビキチン相同体である。本発明において得に適切なSUMO−1の断片は、ジグリシンモチーフ及びその下流にある全配列が末端切断された、図6に記載されている断片(配列番号1)である。本発明において安定化ドメインとして使用する場合、上記配列と少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%又は少なくとも95%の同一性を有する任意の配列が特に有利である。
【0060】
他のタンパク質又はタンパク質断片、特に、熱ショックタンパク質(HSP)などのシャペロンタンパク質を、この「安定化ドメイン」機能に適合させることもできる。
【0061】
安定化ドメインの使用に対する一つの代替策は、同じ安定化効果を得るために、相互作用パートナーを環状化することである。「環状化」という用語は、ヘプタペプチドドメインの上流にあるN末端部分を、相互作用ポリペプチドのC末端にペプチド融合することを意味する。
【0062】
本発明によれば、リンカーと称される極めて短いアミノ酸配列が、安定化ドメイン(安定化ドメインが存在する場合)とヘプタペプチドモチーフの間、又はヘプタペプチドと形質導入ドメインの間に存在すべきことが想定される。これらのリンカーは、主として、ポリペプチドの様々なドメインを連結することを目的としている。
【0063】
この役割は、このため、例えば、一方のドメインとも、他方のドメインとも相互作用しない十分な数のアミノ酸により、例えば、ドメインを単純に隔てることによって、ドメイン間に相互作用が存在しないようにドメインを隔離することである。次いで、この二つのドメインは、他のドメインの存在によって影響されない様式で折り畳まれ得る。
【0064】
特に、屈曲を形成することによって、あるドメインから別のドメインにある特定の位置を強制することも、リンカーの役割であり得、同じく、一般的には、あるドメインから他のドメインを隔離する結果がもたらされる。
【0065】
最後に、前記ドメインは、ある種のプロテアーゼ、好ましくは細胞内プロテアーゼによる切断のための部位として知られるアミノ酸も含み得る。このアプローチは、細胞の透過後に、リンカー部位を切断することによって、2つのドメインの分割を可能とし得る。
【0066】
逆に、例えば、透過工程前に細胞透過ドメインに対して起り得る切断を回避するために、プロテアーゼに対して特に抵抗性があるようにリンカーを選択することもできる。
【0067】
好ましくは、本発明のリンカーは、主に、低い反応性、低障害性アミノ酸(すなわち、2、3の原子のみを含有する側鎖を有するアミノ酸、これは、特に、アミノ酸グリシン及びプロリンの場合に該当する。)を含む。さらに、プロリンは、一般的に、その中に挿入された鎖中に屈曲を形成し、あるドメインを別のドメインから隔離するためにこの特性が活用される。
【0068】
好ましくは、本発明のリンカーは、5個以下のアミノ酸を含む。
【0069】
本発明のリンカーは、タンパク質の様々な機能的部分の間にある程度の柔軟性を導入することができる。
【0070】
本発明に対して特に適切であるリンカーは、5個未満のアミノ酸と少なくとも約20%、好ましくは少なくとも50%のアミノ酸グリシン及びプロリンとを含む。ある状況では、本発明のリンカーは、グリシン及びプロリンから選択されるアミノ酸のみを含む。一例として、本発明のリンカーは、配列GGGG又はPG(Gはグリシンを表し、Pはプロリンを表す。)を有することができ、その配列は、慣習的に、N末端からC末端へと記載される。
【0071】
本発明の相互作用ポリペプチドは、そのC末端に見出される5から35のアミノ酸の細胞透過ドメインを含む。この細胞透過ドメインによって、ポリペプチドは細胞中に透過することが可能となる。
【0072】
この目的のために、文献に記載されている様々なドメインを使用し得る。本発明において使用するのに特に好ましいドメインは、HIV−Tat−タンパク質の透過ドメイン、又は同じ活性を有する他のウイルス株から得られるドメイン中に見出される。
【0073】
HIV−Tatタンパク質中の細胞透過ドメインは、以下の配列NRKKRRQRRRC(配列番号9)によって特徴付けられる(アミノ酸を表すために、一文字コードが使用されている。)。本発明は、特に透過特性を改善し、プロテアーゼに対する抵抗性を増加させ、又は起り得る免疫反応を低減するために、幾つかのアミノ酸が変異された先行する配列に実質的に対応する細胞透過ドメインの使用も想定している。
【0074】
本発明の相互作用ポリペプチドの細胞内透過ドメインは、配列RRRRRRR、RRRRRRRR又はRRRRRRRRR(7から9アミノ酸−アルギニン)を有するポリアルギニンモチーフを含み、その透過の役割はリンパ球において実証されている(Wender et al,2000)。
【0075】
本発明において想定される、さらなる形質導入ドメインは、Tatの形質導入ドメインの配列に部分的に対応するが、幾らかの修飾:RRKARRQRRR(配列番号21)を組み込む配列を有する。
【0076】
本発明の相互作用ポリペプチドの具体的な構築は、ポリペプチドのC末端から10ないし30アミノ酸、好ましくはC末端から12ないし28、より好ましくは15ないし25アミノ酸の間にヘプタペプチドモチーフのアミノ酸X7を配置することからなる。
【0077】
本発明の相互作用ポリペプチドに対する安定化ドメインの選択に関して、特に適切なドメインはSUMO−1タンパク質である。好ましくは、使用される安定化ドメインは、図6に配列が示されているSUMO−1タンパク質の断片(配列番号1)、又はこの配列と少なくとも80%の同一性、好ましくは90%の同一性を有する任意のドメインである。
【0078】
本発明において使用し得るさらなるドメインは、図6に示されている配列によって規定されるユビキチン断片である。
【0079】
他のドメイン又は要素も、相互作用ポリペプチドの一部を有利に形成し、又は相互作用ポリペプチドに有利に移植される。特に、ポリペプチドの配列中に位置指定配列、又はその検出及びモニタリング、例えば、その局在化若しくは分解を促進する配列を取り込むことが特に有利である。想定され得る検出促進配列の例は、容易に検出できる酵素的な特性、または所定の抗体との反応性、又は蛍光特性を有する配列である。例えば、ポリヒスチジン尾部又はHis−Tagを与えることによって、ポリペプチドの精製を促進する配列をポリペプチドの配列中に移植し、又は取り込むことも想定され得る。
【0080】
ある種の細胞へ本発明のポリペプチドを優先的に送達することができる位置指定シグナルも、本発明において特に有利である。特に魅力的な標的細胞は、リンパ球、マクロファージ、ランゲルハンス細胞、樹状細胞、幹細胞、筋肉細胞などである。このような位置指定シグナルは、安定化ドメインの一部を形成することができる。位置指定シグナルは、安定化ドメイン、リンカー、ヘプタペプチド及び透過ドメインの他に、本発明のポリペプチドの一部を形成することもできる。あるいは、一部の細胞種に対して特異的又は優先的である細胞透過ドメインを使用してもよい。
【0081】
ヘプタペプチドモチーフに対して特に好ましい配列としては、以下の特性のうち少なくとも一つを有する配列を挙げることができる。X2がアミノ酸トリプトファンであり、X4及び/又はX5がアミノ酸システインである。本発明の他の配列は、アミノ酸X5がロイシンである。好ましくは、ヘプタペプチドモチーフの配列は、X2にトリプトファン、X4及び/又はX5にシステインを含む。ヘプタペプチドモチーフは、好ましくは、上記3つの特徴を有する。
【0082】
本発明において特に好ましいヘプタペプチド配列は、以下のような、HIV−1のRevタンパク質と相互作用するヘプタペプチド配列である。
【0083】
NFWFCGLKC(配列番号2)、NNWLCCLNC(配列番号3)、NKLGCFWFC(配列番号10)、NNLCCLWNC(配列番号11)、NFWFCGLAC(配列番号27)、NAWLCCLNC(配列番号25)、NNWLCCLAC(配列番号26)、FWFCGAK(配列番号45)、FWFCGAA(配列番号46)、NWACCLN(配列番号47)、NWLACLN(配列番号48)、AWACCLN(配列番号49)、AWLACLN(配列番号50)、AWLCCLA(配列番号51)、NWAACLN(配列番号52)、NWACCLA(配列番号53)、NWLACLA(配列番号54)、AWAACLN(配列番号55)、AWACCLA(配列番号56)、AWLACLA(配列番号57)、NWAACLA(配列番号58)及びAWAACLA(配列番号59)。
【0084】
単一のアミノ酸を置換することによって上記配列から得られる7アミノ酸の配列も好ましい。
【0085】
本発明の相互作用ポリペプチドに対して特に好ましい配列としては、以下のものを挙げることができる。
【0086】
FWFCGLKPGRKKRRQRRRG(配列番号4)、NWLCCLNPGRKKRRQRRRG(配列番号5)、FWFCGAKPGRKKRRQRRRG(配列番号60)、FWFCGLAPGRKKRRQRRRG(配列番号61)、FWFCGAAPGRKKRRQRRRG(配列番号62)、AWLCCLNPGRKKRRQRRRG(配列番号63)、NWACCLNPGRKKRRQRRRG(配列番号64)、NWLACLNPGRKKRRQRRRG(配列番号65)、NWLCCLAPGRKKRRQRRRG(配列番号66)、AWACCLNPGRKKRRQRRRG(配列番号67)、AWLACLNPGRKKRRQRRRG(配列番号68)、AWLCCLAPGRKKRRQRRRG(配列番号69)、NWAACLNPGRKKRRQRRRG(配列番号70)、NWACCLAPGRKKRRQRRRG(配列番号71)、NWLACLAPGRKKRRQRRRG(配列番号72)、AWAACLNPGRKKRRQRRRG(配列番号73)、AWACCALPGRKKRRQRRRG(配列番号74)、AWLACLAPGRKKRRQRRRG(配列番号75)、NWAACLAPGRKKRRQRRRG(配列番号76)及びAWAACLAPGRKKRRQRRRG(配列番号77)。
【0087】
このように、本発明のポリペプチドは、細胞と接触されたときに、外的な介在なしに、細胞内部に透過する能力を有している。本発明のポリペプチドは、細胞内又は細胞外であり得るタンパク質又はタンパク質ドメインと相互作用する能力も有する。
【0088】
さらに、ポリペプチド自体の構造が、特に、ヘプタペプチドモチーフである可変部分に関して、大きな柔軟性を保証する。このモチーフは、実際には、ポリペプチドのC末端部分から35アミノ酸未満、好ましくは25アミノ酸未満に配置される。ポリペプチドのより中央部分に比べて、高次構造上のストレスがより少ない、ポリペプチド部分中のこの有利な位置は、ヘプタペプチドがより大きな折り畳みの自由を有することを保証する。この自由の増加は、その標的に対する適合能力の増加をもたらす可能性が極めて高い。ヘプタペプチドの各末端におけるストレスが低いと、ある高次構造から別の高次構造へと移行するためのエネルギー障壁が低くなるので、ヘプタペプチドは、より多くの高次構造を採ることができる。この柔軟性は、与えられたヘプタペプチドについて異なる高次構造を採る可能性をもたらし、このため、標的との相互作用の確率を高める。
【0089】
さらなる側面において、本発明は、より具体的には、Revタンパク質の複製を阻害するためにRevタンパク質と相互作用することができ、ヘプタペプチド配列NX1WX3X4X5X6X7C(X1、X3、X4、X5、X6及びX7は、天然又は修飾アミノ酸から独立に選択されるアミノ酸であり、X4及び/又はX5はシステインであり、Wはトリプトファンである。)からなり、又はヘプタペプチド配列NX1WX3X4X5X6X7Cを含むことを特徴とするペプチドに関する。好ましくは、X5はシステインである。
【0090】
Revタンパク質は、ウイルスHIVタイプの系統、例えばHIV−1若しくはHIV−2、又はSIVタイプ(サル免疫不全ウイルス)、SHIV(ヒト免疫不全ウイルスとサル免疫不全ウイルスのハイブリッド)、FIV(ネコ免疫不全ウイルス)又はHIV−1のRevタンパク質と相同なタンパク質を有する他の任意のウイルス系統のものである。Revタンパク質は、HTLV1、HTLV2又はBLVの等価なRexタンパク質でもあり得る。
【0091】
このようなペプチドは、酵母ツーハイブリッド系においてRevタンパク質と相互作用できる配列を含み、又は酵母ツーハイブリッド系においてRevタンパク質と相互作用できる配列からなる。さらに、これらのペプチドは、インビボでウイルスの複製を阻害することもできる。好ましいヘプタペプチド配列は、以下のとおりである。
【0092】
NFWFCGLKC(配列番号2)、NNWLCCLNC(配列番号3)、NFWFCGLAC(配列番号27)、NAWLCCLNC(配列番号25)、NNWLCCLAC(配列番号26)、FWFCGAK(配列番号45)、FWFCGAA(配列番号46)、NWACCLN(配列番号47)、NWLACLN(配列番号48)、AWACCLN(配列番号49)、AWLACLN(配列番号50)、AWLCCLA(配列番号51)、NWAACLN(配列番号52)、NWACCLA(配列番号53)、NWLACLA(配列番号54)、AWAACLN(配列番号55)、AWACCLA(配列番号56)、AWLACLA(配列番号57)、NWAACLA(配列番号58)及びAWAACLA(配列番号59)。
【0093】
酵母ツーハイブリッド試験において、ペプチドがHIV−1のRevタンパク質と相互作用する能力を検査するために、実験の部でさらに展開されている、以下の試験を実施することができる。
【0094】
ベイト:プラスミドpLexRev(実施例1参照);
プレイ:試験ペプチドをコードする配列と融合しているGAL4の活性化ドメインを含有するプラスミド、例えば、pGAD424由来のプラスミド。
【0095】
酵母:S. cerevisiaeのHF7c株
実施例1は、この試験に対して想定され得る作業条件に関して、さらに詳しい情報を提供する。
【0096】
ペプチドがウイルスの複製をインビボで阻害する能力を調べるために、実施例の部でさらに詳しく記載されている、以下の試験を実施することができる。
【0097】
細胞:ヒト細胞、末梢血単核球;
ウイルス:HIV−1−LAIというリンパ球向性株(Barre−Sinoussi et al;1983);
プロトコール;5つの濃度の試験ペプチド中で、細胞を30分間前処理した後、HIV−1−LAI株に感染させる。培養を通じて、このペプチドを培地中に維持し、感染から7日後に細胞上清を集め、逆転写活性を測定する。本試験を実施するために使用できる作業条件、濃度及び緩衝液に関して、実験の部に、さらに詳しい情報が記載されている。
【0098】
配列FWFCGLKPGRKKRRQRRRG(配列番号4)、NWLCCLNPGRKKRRQRRRG(配列番号5)、FWFCGAKPGRKKRRQRRRG(配列番号60)、FWFCGLAPGRKKRRQRRRG(配列番号61)、FWFCGAAPGRKKRRQRRRG(配列番号62)、AWLCCLNPGRKKRRQRRRG(配列番号63)、NWACCLNPGRKKRRQRRRG(配列番号64)、NWLACLNPGRKKRRQRRRG(配列番号65)、NWLCCLAPGRKKRRQRRRG(配列番号66)、AWACCLNPGRKKRRQRRRG(配列番号67)、AWLACLNPGRKKRRQRRRG(配列番号68)、AWLCCLAPGRKKRRQRRRG(配列番号69),NWAACLNPGRKKRRQRRRG(配列番号70)、NWACCLAPGRKKRRQRRRG(配列番号71)、NWLACLAPGRKKRRQRRRG(配列番号72)、AWAACLNPGRKKRRQRRRG(配列番号73)、AWACCALPGRKKRRQRRRG(配列番号74)、AWLACLAPGRKKRRQRRRG(配列番号75)、NWAACLAPGRKKRRQRRRG(配列番号76)及びAWAACLAPGRKKRRQRRRG(配列番号77)を含むポリペプチドが、Revタンパク質の阻害剤又は調節物質として使用するのに特に好ましく、HIV−1のRevタンパク質が特に好ましい。
【0099】
このようなペプチドは、一般的にはRevタンパク質、又はおそらくそのドメインの一つのうち何れかと相互作用することが可能である。前記タンパク質は、一般的には、異なる機能を時折有する異なるドメインがそれらの配列内に存在することを特徴とする。タンパク質が採る三次元構造及び折り畳みに応じて、これらのドメインは、互いに独立したパートナーにアクセス可能な場合がある。
【0100】
この類似の状況は、単一のタンパク質の様々なエピトープに対して起って、異なるモノクローナル抗体の生成を可能とし、様々なエピトープが、タンパク質の互いに異なるドメインであり、互いにアクセスすることが可能である。
【0101】
Revタンパク質中にはNESと称されるシグナル又は核内移行シグナルが同定されており、核外からのタンパク質の配送を確保する。このシグナルは、本願において提供されるドメインの定義を充足する。このため、ペプチドは、Revタンパク質と一般的に相互作用するか、又はRevタンパク質のNESドメインと特異的に相互作用する。NESタンパク質は、配列NLQLPPLERLTLDC(配列番号8)によって定義される(一文字コードは、使用されるアミノ酸を表す。)。
【0102】
さらなる側面において、本発明は、本発明の相互作用ポリペプチドのファミリー又は本発明の相互作用分子の集団にも関し、ファミリー/集団のメンバーは、ヘプタペプチドモチーフの配列のみが他のメンバーと異なる相互作用ポリペプチドである。
【0103】
同じファミリー/集団の様々なメンバーは、このため、それらの貫通ドメイン、それらの安定化ドメイン(これを有する場合)及び存在し得るそれらのリンカーが同一である。ファミリー/集団は、ヘプタペプチドモチーフの配列のみが異なる少なくとも2つのメンバーの存在によって規定される。しかしながら、ファミリーは、一般的には、3以上のメンバー、一般的には少なくとも10、好ましくは少なくとも50のメンバーを含む。本発明に属する特に好ましいファミリーは、少なくとも100、好ましくは1000の異なるメンバーを含むファミリーである。これは、同一である一定数のメンバーを有するファミリー又は集団を除外するものではない。
【0104】
ヘプタペプチドモチーフが、20個の天然アミノ酸から選択される7アミノ酸によって構成される場合には、本発明に規定されるファミリー又は集団は、最大207個の異なるメンバーを含む。
【0105】
このようなファミリーの利点は、ヘプタペプチドモチーフがメンバーの唯一の可変部であるとすれば、ファミリーの各メンバーの異なる特性に関して、ヘプタペプチドモチーフのみが関与するということである。
【0106】
好ましくは、本発明の相互作用ポリペプチドファミリーは、NX1X2X3X4X5X6X7PGKKRRQRRRGC(配列番号6)を含み、配列NX1X2X3X4X5X6X7Cは、本発明に規定されるヘプタペプチドモチーフに対する配列に対応し、配列PGKKRRQRRRG(配列番号12)は、リンカー及び細胞透過ドメインに対する配列に対応する(一文字コードは、使用されるアミノ酸を表す。)。X1、X2、X3、X4、X5、X6、X7は、アミノ酸を表す。ヘプタペプチドドメインは、同じくファミリーのメンバーである別のポリペプチドと比べて、ファミリー(又は集団)のメンバーであるポリペプチド中の唯一の可変領域である。
【0107】
より好ましくは、相互作用ポリペプチドファミリーは、その配列が以下の配列を含み、又は以下の配列からなるメンバーを含む。
【0108】
MSDQEAKPSTEDLGDKKEGEYIKLKVIGQDSSEIHFKVKMTTHLKKLKESYCQRQGVPMNSLRFLFEGQRIADNHTPKELGMEEEDVIEVYQEQTARPPNPKKEIELGGGGSX1X2X3X4X5X6X7PGKKRRQRRRG(配列番号7)、又は配列MSDQEAKPSTEDLGDKKEGEYIKLKVIGQDSSEIHFKVKMTTHLKKLKESYCQRQGVPMNSLRFLFEGQRIADNHTPKELGMEEEDVIEVYQEQTARGGGGSX1X2X3X4X5X6X7PGKKRRQRRRG(配列番号78)。配列NX1X2X3X4X5X6X7Cに対応するヘプタペプチドモチーフは、ファミリーのある負メンバーが別のメンバーと異なっている唯一の領域である。X1、X2、X3、X4、X5、X6及びX7は、アミノ酸を表す。
【0109】
このファミリーの相互作用ポリペプチドは、「SUMO−1ヘプタペプチドタンパク質形質導入ドメイン」又はSHPと称される。
【0110】
配列PGKKRRQRRRG(配列番号12)は、本発明のポリペプチドに対する細胞透過ドメインを含む。この配列と比較して3未満の修飾を有する配列も、本発明において好ましい配列である。「修飾」という用語は、アミノ酸の付加若しくは除去、又は別のアミノ酸による、この配列のアミノ酸の置換を意味する。
【0111】
配列:MSDQEAKPSTEDLGDKKEGEYIKLKVIGQDSSEIHFKVKMTTHLKKLKESYCQRQGVPMNSLRFLFEGQRIADNHTPKELGMEEEDVIEVYQEQTARPPNPKKEIELGGGGS(配列番号16)は、相互作用ポリペプチドのための安定化ドメインを含む。安定化ドメインを含む別の配列は、MSDQEAKPSTEDLGDKKEGEYIKLKVIGQDSSEIHFKVKMTTHLKKLKESYCQRQGVPMNSLRFLFEGQRIADNHTPKELGMEEEDVIEVYQEQTARGGGGS(配列番号79)である。前記配列と少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%の同一性を有する配列も、本発明のポリペプチドのファミリーの安定化ドメインを構成するために使用され得る配列である。
【0112】
本発明は、単独で存在する、若しくはファミリー若しくは集団の一部を形成する、本発明のポリペプチドをコードする全てのDNA配列、又は本発明に記載されている他の任意の断片若しくはドメインをコードする全てのDNA配列にも関する。DNA配列は、二本鎖DNA又は一本鎖DNAであり得る。本発明において、一本鎖DNAは、この配列又は相補的配列がコーディング部分を含有するときに、一本鎖DNAはポリペプチドをコードすると考えられる。DNA配列は、直鎖又は環状形態であり、例えば、プラスミド中に存在し得る。
【0113】
本発明のポリペプチドをコードするDNA配列の転写から得ることができる様々なRNAも、本発明に含まれる。
【0114】
本発明に規定されている相互作用ポリペプチドは、細胞の挙動を修飾するために、予め決定され、又は予め決定されていないタンパク質パートナーとの潜在的な相互作用能力を有する。細胞内では、特に競合的阻害剤として作用することによって、このようなポリペプチドの存在は、このため、ある種の細胞機能を遮断できるようにすることができる。前記細胞の修飾が細胞中の有害な機能を弱め、又は妨げることからなる場合には、この作用は多数の疾病において治療効果を有する。細胞外のポリペプチドの存在が、メッセンジャー又は細胞表面上のタンパク質との相互作用によって、細胞の特性を修飾することも想定される。
【0115】
このため、上記本発明のポリペプチドは、薬物中の活性成分としてそれらを使用することができる治療の分野において有利に適用される。本発明のポリペプチドには、薬学的に許容される様々な賦形剤が伴われることが多い。「治療」という用語は、治療及び予防目的の両方を意味する。
【0116】
Revタンパク質との相互作用について特異的に検査される本発明の相互作用ポリペプチドは、HIVによる感染に対する治療、好ましくはヒトの治療で使用するために、さらに好ましい。本発明のポリペプチドは、Revタンパク質又は近縁の相同体を有するHIVの相同体であるウイルスに感染した動物を治療するために、獣医用途に使用することもできる。それらは、予防的に使用することもできる。
【0117】
細胞を透過するための手段、すなわち、それらの透過ドメインを有するように、それらが特異的に設計されている場合には、限定なく、様々な形態で投与することができる。それらは、特に、錠剤、カプセル若しくはシロップの形態で摂取されることができ、又はローション、ゲル若しくはポマードの透過によって、筋肉又は静脈内に注入することができる。他の任意の投与形態も想定することができる。それらは、リポソームの形態でパッケージした後、その形態で投与することもできる。
【0118】
薬物が、本発明の相互作用ポリペプチドをコードするDNA分子からなり得ることも除外されない。これは、遺伝子治療が実施されるときに、特に当てはまる。
【0119】
本発明は、それ自身の上に、又はファミリーの一部を形成して、本発明のポリペプチド又は本発明に記載されている他の任意の断片若しくはドメインを含有する細胞、並びに前記ポリペプチドをコードするDNA配列を含有する細胞にも関する。好ましい細胞は、リンパ球及びマクロファージ、樹状細胞、ランゲルハンス細胞又は幹細胞であり、好ましくは、このような細胞は、哺乳動物から、特にヒトから得られる細胞である。他の細胞は酵母細胞及び細菌細胞である。
【0120】
上記種類の細胞は、形質転換、遺伝子治療によって、又は細胞と本発明の相互作用ポリペプチドとの接触によって取得することができる。このような細胞は、治療において、特に有利な用途を有する。本発明の相互作用ポリペプチドをコードするDNAで形質転換された細胞、特に細菌細胞が、前記ポリペプチドを産生する上で特に有利である。細菌中で産生されたポリペプチドは、次いで、必要に応じて精製され、薬物中の活性成分として使用することができる。
【0121】
さらなる側面において、本発明は、上記相互作用ポリペプチドを含むスクリーニング方法にも関する。これらのポリペプチドは、それらが検査されるタンパク質標的に対して作用するように特異的に設計される。
【0122】
本発明によって想定される第一のスクリーニング方法は、細胞の表現型を修飾することができるポリペプチドを同定することを目的とする。
【0123】
この方法は、その表現型が修飾されるべき細胞と、本発明のポリペプチドを接触させる工程を含む。この工程の後には、細胞の表現型の変化を検出する。これらの工程には、検査されているポリペプチドの配列中に含まれるヘプタペプチドモチーフの配列を決定する工程が必要に応じて補充される。
【0124】
「表現型」という用語は、その広い意味で使用され、細胞のあらゆる形態的又は機能的特徴を包含する。表現型の修飾は、細胞の形状の変化、膜の組成の修飾、特定のタンパク質の分泌、色の変化又はある条件下での反応性の変化によって特徴付けられ得る。
【0125】
本方法は、細胞の表現型を、一般的な様式で、修飾できるポリペプチドを同定することを目的とする。それは、予測された修飾又は所望の修飾であり得る。それは、驚くべき修飾又は所望でない修飾であり得る。
【0126】
本方法の一応用によれば、本発明は、あるタンパク質と相互作用できるポリペプチドを同定するために使用することができる。このような状況では、その標的とのポリペプチドの相互作用は、予想される表現型の修飾、例えば、細胞死、又は抗生物質、若しくはウイルス若しくは熱に対する耐性若しくは感受性をもたらすことができる。必要に応じて、前記相互作用は、レポーター、特にレポーター遺伝子を介して実証することができる。このレポーター要素は、表現型への修飾に必要であり、その修飾は予測されている。
【0127】
本方法は、あるタンパク質の群、又は、例えば代謝経路若しくはある免疫カスケードと相互作用できるポリペプチドを同定するために使用することもできる。このような状況では、表現型に対する予想される修飾は、群の機能の修飾又は経路若しくは免疫カスケードの修飾である。このような修飾の効果は、常に予め決定されているとは限らない。
【0128】
スクリーニング方法の開始時に修飾の正確な性質を決定せずに、ポリペプチドをスクリーニングする本発明の方法を使用して、例えば、細胞に対する有益な修飾を調べることが可能である。
【0129】
本発明の第一の工程は、本発明のポリペプチドを細胞の存在下に置くことを特徴とする。「存在下に置く」という用語は、ポリペプチドを細胞に近接させることからなる動作、接触、及びポリペプチドを細胞中に導入することからなる動作を意味する。「存在下に置く」という表現には、ポリペプチドをコードするDNAを細胞中に導入し、次いで、このDNAが翻訳されて、ポリペプチドを生じる場合も含まれる。この状況では、細胞自体がポリペプチドを生成することに寄与する。
【0130】
このため、本方法の第一の工程は、その表現型が修飾されるべき細胞を含有する培地にポリペプチドを細胞外添加することによって、例えば、細胞を含有する液体にポリペプチドを添加することによって実施される。本発明のポリペプチドは透過ドメインを有するので、必要であれば、細胞の膜を横切ることができる。
【0131】
記載されている方法は、細胞外スクリーニング方法又は細胞内スクリーニング方法である。ポリペプチドとその標的間の相互作用が細胞中で起るのであれば、ポリペプチドが細胞外から添加されるか、又は細胞内に導入されるか否かとは無関係に、スクリーニングは細胞内であると考えられる。これに対して、ポリペプチドとその標的間の相互作用が細胞外(例えば、その表面上)で起るのであれば、スクリーニングは細胞外と考えられる。
【0132】
本発明のスクリーニング方法は、インビボ又はインビトロで実施することができる。本発明のスクリーニング方法がインビボで実施されるときには、ポリペプチドと細胞は、細胞を含む液体又は前記細胞を含有する組織の存在下にポリペプチドを置くことによって接触させることができる。
【0133】
本発明の方法の特に好ましい用途は、ツーハイブリッドスクリーニングシステムを使用することである。相互作用ポリペプチドの形態のパートナーが探索されている標的タンパク質が公知であり、その配列が決定されているときに、この用途が推薦される。次いで、標的タンパク質と本発明の相互作用ポリペプチド間の相互作用を検出することが可能である。このような相互作用は、その発現が表現型を修飾するレポーター遺伝子の誘導によって、例えば、細胞の色の変化により簡単に検出できる様式で、一般に明瞭となる。
【0134】
本方法の特に好ましい用途は、Revタンパク質を含むウイルスタンパク質に対して新規相互作用パートナーをスクリーニングする分野である。このようなタンパク質は、様々なウイルス、特にHIV中に見出される。この用途では、Revタンパク質をコードする遺伝子は、ベイトとして作用するように、例えば、ツーハイブリッド系にクローニングされる。このようなスクリーニングは、宿主細胞中でのウイルス複製を抑制又は制限することによって、HIVによる感染に対する耐性を細胞に与えることができるポリペプチドを同定し得る。
【0135】
本方法のさらなる用途は、スリーハイブリッドスクリーニング系を使用することからなる。このような系では、その相互作用が公知である2つのペプチドパートナーをツーハイブリッド系にクローニングし、第三のプラスミドが本発明の相互作用パートナーを含む。後者は、前二者のパートナー間の相互作用を修飾する能力について検査される。ツーハイブリッドスクリーニングに対するレポーター系を使用することによって、2つのペプチドパートナー間の相互作用に対する前記相互作用パートナーの作用を観察及び測定することが可能である。
【0136】
本発明によって包含される第二の方法は、分子をスクリーニングして、所定の細胞内標的と相互作用する分子の一つを同定する方法である。
【0137】
このような方法は、本発明のポリペプチドを作製するための第一の工程を含む。このようにして作製されたポリペプチドは、細胞内標的の存在下に置かれ、ポリペプチドと標的間の相互作用を検出した後、ポリペプチドのヘプタペプチドの配列を必要に応じて決定する。
【0138】
前記ポリペプチドは、ポリペプチドを細胞中に導入することによって直接的に、又はポリペプチドを細胞の存在下に置いた後、細胞中にポリペプチドを透過させることによって間接的に、標的の存在下に置くことができる。
【0139】
検出工程は、当業者に公知である任意の技術を用いて実施することができる。想定され得る一つの検出の種類は、表現型の変化の観察である。表現型の修飾がレポーター遺伝子の発現の結果であるように、標的を適合させ得る。検出には、存在物のアッセイ、例えば、タンパク質又は代謝物のアッセイも含まれ得る。
【0140】
本発明の第一の方法に関して記載された様々な好ましい用途又は特徴は、この第二の方法についても当てはまる。特に、本方法は、インビボ又はインビトロで実施することができる。本方法は、ツーハイブリッド系を用いて実施されることが好ましい。最後に、このようなスクリーニング方法の好ましい用途は、ウイルスの複製に不可欠なウイルスタンパク質、より具体的には、HIVのRevタンパク質と相互作用できる相互作用分子を同定することを目的とする。
【0141】
本発明によって包含される第三の方法は、細胞内標的分子の特性を調節する方法である。このような方法は、標的分子を含有する細胞を、本発明の相互作用ポリペプチドの存在下に置く工程を含む。
【0142】
標的分子は、好ましくは、タンパク質、又は少なくとも5個のアミノ酸、好ましくは少なくとも10個のアミノ酸を含むタンパク質の断片である。本発明のポリペプチドは、標的分子と相互作用できるヘプタペプチドモチーフを有するように特異的に設計されている。このようなヘプタペプチドモチーフは、本発明の第一のスクリーニング方法を実施することによって有利に決定される。
【0143】
「特性を調節する」という用語は、その機能又はその特性に影響を与え得る標的に対する任意の修飾を意味し、特に、そのパートナーと相互作用するその能力を修飾する修飾を意味する。また、ある種の条件下で、多かれ少なかれ安定性を引き起こす修飾、酵素の速度論に対する修飾、又は特異性若しくは選択性に対する修飾を意味する。
【0144】
既述のように、本発明の第一の方法に関して記載された様々な特徴又は好ましい用途は、この第三の方法についても当てはまる。特に、本方法は、インビボ又はインビトロで実施することができる。本方法は、ツーハイブリッド系を用いて実施されることが好ましい。最後に、このような方法の好ましい用途は、ウイルス複製に不可欠なウイルスタンパク質、特にHIVのRevタンパク質の特性を修飾することを目的とする。
【0145】
さらなる側面において、本発明は様々な使用に関する。特に、本発明は、次いで翻訳されたポリペプチドが表現型スクリーニングにおいてプレイとして作用するように、本発明のポリペプチドをコードするDNA配列を使用することを含む。好ましくは、前記DNA配列は、ツーハイブリッド系にクローニングされる。
【0146】
実際に、ツーハイブリッド系は、一般に「ベイト」と称される、ある分子(タンパク質)と候補となる試験パートナー(一般的に、「プレイ」と称される。)との相互作用を調べることを特徴とする。ツーハイブリッド系は、一般的に、ベイト、プレイ及び他の要素に特異的に結合されたレポーター遺伝子をコードする配列を細胞中に導入することを含む。この文脈において、本発明のポリペプチドをコードするDNA配列は、プレイとして使用することができる。
【0147】
本発明において特に好ましい状況は、本発明のポリペプチドをコードするDNA配列をツーハイブリッド系におけるプレイとして使用することからなる。この状況において、ベイトとなり得るのは、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)のRevタンパク質である。実際に、このウイルスタンパク質は、新規阻害剤を同定するための特に興味深い標的である。より具体的には、本発明は、このように、ツーハイブリッド系において、本発明のポリペプチドをコードするDNA配列をHIVのRevタンパク質とともに使用することを想定する。
【0148】
上述のように、本発明のポリペプチドと、あるタンパク質(例えば、HIV−Rev)との調査された相互作用は、タンパク質の全部又は特定のドメインの何れかを含み得る。このように、本発明では、標的タンパク質のドメインをコードする配列を一つだけベイトとしてクローニングすることが想定される。この戦略は、同定されるべきそのドメインに対して特異的な相互作用ポリペプチドを可能とする。
【0149】
実際に、本発明者らは、2つのポリペプチドのサイズが同等であるときに、2つのポリペプチド間の相互作用の可能性が増加することを発見した。本発明の相互作用ポリペプチドは、おそらくは、透過モチーフによって生成される相互作用の組み合わせとともに、相互作用に関与するかなり短い配列、すなわち7アミノ酸のヘプタペプチドを有する。この理由のため、相互作用ポリペプチドは、同じようなサイズのドメインを有する同じようなサイズのポリペプチドと、好ましい様式で相互作用できるために、特に推奨される。
【0150】
ツーハイブリッド系における相互作用ポリペプチドの特に有利な使用は、このように、5から30個のアミノ酸、好ましくは6から20、より好ましくは7から15のアミノ酸のドメインをコードする配列を、ベイトのために使用する。このようなドメインは、例えば、結合ドメイン、位置指定シグナル(addresing signal)又は触媒ドメインである。
【0151】
これらの使用において特に好ましいドメインのさらなる例は、NLS(核局在化シグナル)である。さらなる好ましいドメインは、NES(核外移行シグナル)である。このようなNESドメインは、特に、HIVのRevタンパク質のNESドメインである。多かれ少なかれ同じ程度が類似し、規模が同じ程度のサイズの配列を有する他の「NES」シグナルが知られている。2つのドメインNLS及びNESは、本発明のポリペプチドとの相互作用に対して最適なサイズと完璧に適合するサイズを有する。
【0152】
NESドメインに対する具体的な配列は、HIV−1のRevタンパク質、LQLPPLERLTLD(配列番号8)のものである。
【0153】
HIVのRevタンパク質が、それに対する相互作用パートナーを探索する標的タンパク質であるときには、ベイトとして作用させるために、Revタンパク質をツーハイブリッドスクリーニング中にRevタンパク質のドメイン、好ましくはrevのNESドメインをクローニングすることが特に有利である。
【0154】
本発明は、候補分子から、ある細胞内標的と相互作用できる分子を同定するためのスクリーニング方法にも関する。本発明の本側面によれば、細胞内標的の、本発明の相互作用ポリペプチドとの相互作用特性が活用される。本方法に従って、標的と相互作用ポリペプチド間のこの相互作用における変動は、候補試験分子を添加したときに、検出されることになる。標的と相互作用ポリペプチド間の相互作用の修飾は、候補分子が細胞内標的と相互作用する能力を与え得る。この用途において、ある細胞内標的と相互作用できる本発明の相互作用ポリペプチドは、性質がタンパク質様であってもよく、タンパク質様でなくてもよい、前記細胞内標的と相互作用することも可能な新規薬物を同定するためのツールとして作用する。本発明は、このように、以下の工程:
i.本発明の相互作用ポリペプチドの存在下に標的分子を置くことと;
ii.前記標的分子と前記相互作用ポリペプチド間の相互作用を検出することと;
iii.候補分子を添加することと;
iv.前記標的分子と前記相互作用ポリペプチド間の相互作用に対する修飾を検出することと;
を含む。
【0155】
本方法によれば、特に高処理量スクリーニングによって、異なる候補分子を検査することが可能である。標的分子と本発明の相互作用ポリペプチド間の相互作用は、任意の適切な手段を用いて、特にレポーター遺伝子を用いて検出することができる。慣用の様式で、「ツーハイブリッド」系が使用される。このような状況では、標的分子と相互作用ポリペプチド間の相互作用は、レポーター遺伝子を用いて検出される。
【0156】
本方法を実施するために、一旦、標的分子が固定されれば、予備的な段階で、前記標的分子と相互作用できる本発明の相互作用ポリペプチドを同定することが有利であり得る。
【0157】
本発明は、タンパク質分子、ポリヌクレオチド、例えば、1000未満の分子量を有する小有機分子、脂質、糖質など、この方法によって同定される候補分子も包含する。
【0158】
本発明の特に好ましい実施形態に従えば、細胞内標的分子はRevタンパク質であり、使用される相互作用ポリペプチドは、本発明に定義されているとおりであり、好ましくは以下のヘプタペプチド配列のうち一つを有する。NFWFCGLKC(配列番号2)、NNWLCCLNC(配列番号3)、NFWFCGLAC(配列番号27)、NAWLCCLNC(配列番号25)、NNWLCCLAC(配列番号26)、FWFCGAK(配列番号45)、FWFCGAA(配列番号46)、NWACCLN(配列番号47)、NWLACLN(配列番号48)、AWACCLN(配列番号49)、AWLACLN(配列番号50)、AWLCCLA(配列番号51)、NWAACLN(配列番号52)、NWACCLA(配列番号53)、NWLACLA(配列番号54)、AWAACLN(配列番号55)、AWACCLA(配列番号56)、AWLACLA(配列番号57)、NWAACLA(配列番号58)及びAWAACLA(配列番号59)。 一例として、使用される相互作用ポリペプチドは、表記SHPRで、実験の部に記載されているものの一つである。
【0159】
本発明は、細胞内標的分子の特性を調節することができる分子を同定するための方法にも関する。本方法は、以下の様々な工程によって特に特徴付けられる。
【0160】
第一の工程において、本発明の相互作用ポリペプチドのファミリーの様々なメンバーをコードする配列を含む核酸分子が作製される。これらの様々なメンバーは、ヘプタペプチドモチーフの配列のみが異なる。
【0161】
本方法は、酵母ツーハイブリッド系を用いて、このように作製された分子をスクリーニングすることも含む。この系では、探索されている標的分子と相互作用するパートナーが、ベイトとして使用される。作製された分子は、プレイとして作用する。
【0162】
本方法は、相互作用を検出するための工程も含む。この相互作用は、ツーハイブリッド系に含まれるレポーター遺伝子の発現によって明らかにすることもできる。細胞中の表現型の変化又は存在物のアッセイも、相互作用の検出を可能にすることができる。
【0163】
必要に応じて、本方法は、ヒト細胞中でこの相互作用を確認することも含む。この工程は、様々な様式で実施することが可能である。一つの様式は、ヒト細胞に適合されたツーハイブリッド系の均等物を作製することからなる。このシステムは、細胞株を用いて有利に実施される。共免疫沈降による相互作用を確認すること、又はこの相互作用によって引き起こされる効果を確認することも想定することが可能である。このようにして、スクリーニングされたポリペプチドは、細胞内標的を含有する細胞の存在下に置かれる。このポリペプチドが、標的とのその相互作用のために、細胞に対する影響を誘導するかどうかが観察される。
【0164】
想定され得るその後の工程は、本発明において同定された大量の相互作用ポリペプチドを産生することからなる。このような産生は、例えば、ポリペプチドを過剰発現することができる誘導性プロモーターの作用によって、細菌中で有利に実施される。ポリペプチドは、可溶性形態で又は封入体の形態で産生され得る。哺乳類細胞、例えばSf9細胞中での大量の産生も想定され得る。
【0165】
この方法は、HIV:Tat、Revなどのウイルスタンパク質の機能を修飾することができる相互作用ポリペプチドを検出するのに特に適している。
【0166】
このようなケースでは、本発明の相互作用ポリペプチドを取得し、性質を決定する方法は、幾つかの工程で実施され、本発明者らによって使用された、以下の方法を用いて実施することができる。
【0167】
標的タンパク質に対する、酵母中でのランダムヘプタペプチドのライブラリーのスクリーニング
そのN末端が転写因子(本ケースではGAL4)の活性化ドメインと融合され、そのC末端が塩基性Tatドメインの9つのアミノ酸と融合されたランダムヘプタペプチドのライブラリーを、酵母発現ベクター中に構築した。酵母中で目的のタンパク質を発現させることができるベクター中で、目的のタンパク質(ウイルス又は細胞性)をコードする配列を、DNAの結合ドメインをコードする配列(本ケースではLexA)の下流にクローニングする。
【0168】
ヘプタペプチドモチーフに付随する塩基性Tatドメインは、細胞内透過を確保するモチーフとして使用される。様々なドメインが、それらの分割を確保するアミノ酸グリシン又はプロリンによって隔てられるように、タンパク質の最終配列が設計される。標的融合LexAタンパク質(LexA−Tat、LexA−Rev及びLexA−NES Revタンパク質を用いて実施される。)を発現するベクターによって、次いで、ランダムヘプタペプチドを有するベクターのライブラリーによって、結合モチーフLexAの依存下にあるHis及びlaczレポーター遺伝子を有するL40酵母株を形質転換する。HIV−1のTat及びRevタンパク質は、ウイルス複製に不可欠な制御タンパク質である。クローンの最初の選択は、無ヒスチジン培地中で行われる。次いで、陽性クローンに対して、フィルター上でβ−ガラクトシダーゼ試験を行う。
【0169】
明確に陽性なクローンを回収し、E.コリ中での形質転換によって、ヘプタペプチドモチーフを含有するベクターを単離する。ベクターを配列決定することによって、ヘプタペプチドモチーフの同定が可能となる。
【0170】
哺乳類細胞における相互作用の存在の確認:
酵母環境中で選択されたモチーフがヒト細胞の生化学的状況下でも機能することを確かめるために、上述した試験と類似の試験をHeLa細胞中で行う。ヒト細胞中で、Flagエピトープ、核局在化シグナル及びタンパク質Vp16の活性化因子ドメインをコードする配列の下流をヒト細胞中での発現を可能とするプラスミド中の酵母ベクターから、ヘプタペプチドモチーフを再クローニングする。
【0171】
LexA−標的タンパク質融合物を発現するベクター及びLexA結合配列の制御下にあるレポーター遺伝子SEAP(分泌型アルカリホスファターゼ)を有するベクターで、この構築物をHeLa細胞中に同時形質移入する。SEAP活性の測定は、評価されるべきヒト細胞の核内で、ヘプタペプチドが標的細胞と相互作用できるようにする。ヘプタペプチドモチーフを発現するベクターは、この構築物によって形質移入される細胞の抽出物を用いて実施されるイムノブロット実験による評価、評価すべきこのモチーフとの融合タンパク質の発現レベル、確認すべき細胞中でのその安定性を可能にした。これらの実験によって、幾つかのヘプタペプチドモチーフがTat及びRevと相互作用できることが確認された。
【0172】
ヘプタペプチド/Tatの塩基性アミノ酸配列の安定化タンパク質との会合:
短い直鎖ペプチドは、細胞外及び細胞内培地中での安定性が乏しい場合がある。この問題を克服するために、本発明者らは、ヒト細胞中において安定で、豊富に存在する小タンパク質に、ヘプタペプチド/塩基性Tatアミノ酸配列を会合させることを決定した。それらの選択は、まず、ユビキチンファミリーのメンバーに的を絞った。この構築物は、ユビキチン(ub)そのもの及び相同タンパク質SUMO−1を用いて作製した。これらのタンパク質をコードする配列を、哺乳類細胞に対する発現ベクター中に導入した。喪失されたジグリシンモチーフの場所で、SUMO−1又はユビキチンの下流に、ヘプタペプチド/塩基性Tatアミノ酸配列を導入する。このジグリシンモチーフは、前記ポリペプチドによって修飾されたタンパク質のリジンの側鎖に通常結合される。SUMO−1特異的Tatヘプタペプチド融合タンパク質(SHPT)及びRev(SHPR)の適切な発現を確認することができた。Ub構築物の場合、ユビキチンに対して誘導された良い抗体が存在せず、実施されなかった。
【0173】
これらの構築物を用いて、本発明者らは、それぞれRev及びTatに対して誘導されたSHPR及びSHPTがこれらのタンパク質の機能を抑制することができるかどうかを評価するために、機能的試験を実施した。Tatの場合、Tatを発現するベクター及びCAT配列の前にHIV−1プロモーターを有する指示構築物とともにSHPT発現ベクターを同時形質移入した。6つのうち2つの抗Rev HSPRが、イントロン中のRev応答要素(RRE)と会合したCAT配列を有する構築物に対するRevの効果の完全な阻害を示した。RNA RRE配列は、Revタンパク質の結合を可能にした。この種の指示構築物は、スプライシングされていないRNAの細胞質への輸送を引き起こして、CAT酵素の発現を可能にすることによって、Revの効果の評価を可能にした。
【0174】
SHPT及びSHPR相互作用ペプチドの大量生産:
これらの結果に従って、本発明者らは、細胞中に透過し、細胞外培地から始まる標的タンパク質の機能を阻害する能力を評価できるようにするため、相互作用ペプチドを大量に作製するためのシステムを開発した。細菌中での産生を可能とするベクター中に、抗Rev SUMO−1−ヘプタペプチド/塩基性Tatドメイン配列をクローニングした。ヘパリンカラム、次いでゲルろ過上で精製するためのプロトコールを確定した。最初の結果は、SHPRが大量に産生され、この方法によって精製できることを示した。
【0175】
これら2つの分子の巨大バッチの作製によって、評価すべきこれらのタンパク質は薬学的に重要なものとなった。
【0176】
ここに記載されているプロセス全体が、確立されるべき標的タンパク質機能のアンタゴニストリガンドを同定する方法の実行を可能にする。得られた相互作用ペプチドは、治療分子として直接使用することができ、又は、それらの構造を模倣する小有機分子を開発するためのモデルとして働き得る。
【0177】
図1に示されている模式図は、使用された様々な工程と構築物を要約している。工程及び構築物は、例として挙げられており、当業者であれば、著しい困難なしに、均等物によって適合し、又は置き換えることが可能である。
【実施例1】
【0178】
HIV−1のTat及びRevタンパク質と相互作用するペプチドを同定するために使用された構築物及び作業状況の記載
HIV−1は、細胞の重要な因子に対するその作用がウイルス粒子の迅速且つ効果的な産生を確保する幾つかの制御タンパク質を発現する。20年にわたる熱心な研究の後、これらの制御タンパク質の様々な作用を誘導する分子的機序を理解する上で、著しい進歩が遂げられた。特に、これらの制御タンパク質のうち2つ、すなわち、Tat及びRevタンパク質に興味が持たれた。
【0179】
転写因子及びウイルスRNAの5’末端に位置するTARモチーフとの接触が確立されることによって、Tatは、組み込まれたプロウイルスの転写を活性化する。
【0180】
Revも、RNA(このケースでは、ウイルスRNAの3’位内のイントロン位置に存在するRREモチーフ)及び細胞の核因子と相互作用する二重の能力を有する。このウイルスタンパク質には、核局在化シグナル(NLS)と核外移行シグナル(NES)がともに含まれ、核と細胞質間のシャトルとして作用することによって、このタンパク質は核外移行を可能とし、スプライシングされていないウイルスRNA及び部分的にスプライシングされたウイルスRNAの翻訳を可能とする。
【0181】
Tat及びRevは、タンパク質−タンパク質相互作用を介して作用する小タンパク質なので、本発明者らは、これらのタンパク質が関与している会合を競合的に妨害することができるペプチドリガンド(相互作用ペプチド)を用いて、ウイルスの複製に絶対に必要なそれらの機能を阻害することが可能なはずであると推測した。
【0182】
二重ハイブリッド(又はツーハイブリッド)検査は、細胞内媒体、特に核内での相互作用を明らかにすることができるので、二重ハイブリッド(又はツーハイブリッド)検査は、このような相互作用ペプチドを選択する第一段階として選択される方法となる。
【0183】
ペプチドの使用に関連する重要な問題は、それらの細胞内への透過である。複雑な遺伝子治療操作の使用を回避するために、本発明者らは、タンパク質形質導入ドメイン、より具体的には、本ケースでは塩基性Tatドメインを付加することによって、スクリーニング工程で細胞透過特性を付加した。この方法により、本発明者らは、Tat又はRevに結合する短いペプチド配列を同定することができた。それらを安定化させるために、これらのペプチド配列をSUMO−1と会合させることにより、SUMO−1ヘプタペプチドタンパク質形質導入ドメイン又はSHPと称される小タンパク質が産生され、これは、リンパ球の中に効果的に貫通することが可能となり、そのうち幾つかはRevの機能を阻害することができる。リンパ球とマクロファージの両者の中でウイルスの複製を阻害することが観察されたこれらのタンパク質は、新たなウイルス粒子の生成の撲滅に使用するための新規治療剤となり得る。
【0184】
Tatタンパク質に対して開発されたSHPは、SHPTと名付けられ、Revタンパク質に対して開発されたSHPは、SHPRと名付けられた。
【0185】
I.酵母ツーハイブリッドシステム:
A.ランダムペプチドライブラリー:
1−pGAD−CR構築物:
このプラスミドは、pGAD424(clontech)の誘導物であった。このベクターをEcoRI及びBgllIで消化した。
【0186】
リンカー領域を含有する断片、ランダム配列に対するクローニング部位及び塩基性Tatドメインは、以下のオリゴヌクレオチドをハイブリダイズすることによって得られた。
【0187】
5’pAATTGGGTGGTGGCGGATCCGGTTTGCCCGGGAGAAAGAAGCGTAGACAAAGAAGACGTGGTTACCCACCACCGCCTAGGCCAAACGGGCCCTCTTTCTTCGCATCTGTTTCTTCTGCACCAATTCTAGp5’(pはリン酸を表す。)。この断片を、pGAD424のEcoRI及びBgIII部位の間に挿入した。
【0188】
2−相互作用ペプチド(pGAD−CR−P)のライブラリーの構築
ランダム配列断片は、以下の2つのオリゴヌクレオチドをハイブリダイズし、DNAポリメラーゼで修復し、酵素BamHI及びXmaIで消化することによって作製された。
【0189】
5’−bACTCGGATCCNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNCCCGGGGTCGCAGTG
GGCCCCAGCGTCACb−5’
(bはビオチンを表す。)
ビオチン化された末端を抽出するために、この消化産物を常磁性ストレプトアビジンビーズと混合した。
【0190】
上清中に含有されるBamHI−XmaI断片を、pGAD−CRベクターのBamHIとXmaI部位の間に挿入し、プラスミドpGAD−CR−Pを作製した。
【0191】
XL1−ブルーEコリ株の中にこの連結産物を形質導入し、アンピシリンを含有するLB寒天プレート上に画線した。2×106個の独立コロニーを回収し、アンピシリンを含有するLB培地中で1時間培養した。次いで、プラスミドを抽出し、標準的なPEG操作を用いて精製した。
【0192】
B.ベイト
1.pLex9ベクター:
このプラスミドは、pGBT9(clontech)の誘導物であった。GAL4 DNAの結合ドメインをLexAに対する結合ドメインと交換した(Farjot et al., 1999)。
【0193】
2.pLex−Tatの構築:
pSG−Tatベクター(Veschambre et al., 1995)から得られた、修復されたNcoI/BamHI断片を、pLex9のSamI及びBamHI部位の間にクローニングした。
【0194】
3.pLexRev及びpLex−NESの構築
これらの構築物は、LexAのものと融合された、完全なRev配列(plexRev)又はNESのもののみ(pLex−NES)を含有した(Farjot et al, 1999)。
【0195】
既述のように(Rousset et al, Oncogene, 1998,16, 643−654)、s.cerevisiaeのHF7c株の中で、pLexTat、pLexRev又はpLex−NESの何れかをベイトとして、及びpGAD−CR−Pをプレイとして用いるツーハイブリッドスクリーニングを行った。このコロニーを無ヒスチジン最小培地上で培養し、以前に記載したとおりに(Rousset et al, Oncogene, 1998,16, 643−654)、フィルター上でのアッセイによって、β−ガラクトシダーゼの発現について分析した。陽性コロニーのプラスミドpGAD−CR−Pを回収し、ヘプタペプチドモチーフの配列を決定した。
【0196】
II.哺乳類細胞ツーハイブリッドシステム:
A.pSG−FNV−P構築物:
これらの構築物は、プラスミドpSG−FNV(Desbois et al.,1996)の誘導物である。以下のオリゴヌクレオチドを用いて、pGAD−CR−P構築物から、ヘプタペプチドを含有する領域を増幅した。
【0197】
5’−TGAAGGTCGACCACCAAACCCAAAAAAAGAG−3’(オリゴ5’)
5’−CCTGAGAAAGCAACCTGACC−3’(オリゴ3’)
SalI及びBglIIでこのPCR断片を消化し、pSG−FNVベクターのXhoI及びBglII部位の間に挿入し、プラスミドpSG−FNV−Pを得た。
【0198】
B.ベイト
1.ベクターpSG−LexA−Revの構築:
このベクターは、哺乳類細胞中で融合物LexA−Revを発現する(Farjot etal., 1999)pSG5(Green et al, 1988)の誘導物である。
【0199】
2.ベクターpSG−LexA−Tatの構築:
Tatをコードする配列を、pSG−LexA中のLexAをコードする配列の下流に導入した。
【0200】
C.指標構築物(レポーター構築物):
このプラスミドは、LexAに対する5つの結合部位の制御下にあるSEAP配列を有していた(Farjot et al,1999)。
【0201】
III.哺乳類細胞に対する発現ベクターSUMO−1及びSUMO−1ペプチド
A.野生型pTL1−SUMO−1構築物:
SUMO−1配列は、以下のオリゴを用いて、cDNA(HGMP−UKから得られたIMAGEクローン)から増幅した。 5’−GGGTCGACGTCCATATGTCTGACCAGGAGG−3’
5’−AAAAGATCTCTAAACTGTTGAATGACC−3’
増幅された断片を、SalI及びBglIIで消化し、pSG5の誘導物である発現ベクターpTL1のXhoI及びBglII部位の間に挿入した。
【0202】
b.ベクターpTL1−SUMO−CPの構築:
この構築物は、SUMO−1と融合したヘプタペプチドの挿入を可能とし、ジグリシンモチーフを置換した。以下のオリゴヌクレオチドを用いてSUMO−1配列を増幅した。
【0203】
5’−GGGTCGACGTCCATATGTCTGACCAGGAGG−3’
5’−ATCAGATCTGAATCTCGAGCCGTTTGTTCCTGATAAAC−3’
増幅された断片をSalI及びBglIIで消化し、ベクターpTL1のXhoI及びBglII部位の間に挿入した。
【0204】
C.ベクターpTL1−SUMO−Pの構築
ヘプタペプチド及び塩基性Tatドメインを含有する配列を、II.Aに記載されているように増幅し、SalI及びBglIIで消化し、ベクターpTL1−SUMO−CPのXhoI及びBglII部位の間に挿入した。
【0205】
IV.哺乳類細胞のためのユビキチン及びユビキチンペプチド発現ベクター:
A.pTL1−Ub−CP構築物:
ユビキチンに対する配列は、以下のオリゴヌクレオチドを用いて、cDNA(HGMP−UKから得られたIMAGEクローン)から増幅した。
【0206】
5’−CTAAGAATTCAAAATGCAAATCTTCGTGAAAACC−3’
5’−CACGAAGATCTACACTCGAGCTCTCAGACGCAGGACC−3’
増幅された断片をEcoRI及びBglIIで消化し、pTL1のEcoRI及びBglII部位の間に挿入した。
【0207】
B.ベクターpTL1−Ub−Pの構築
II.Aに記載されているように、ヘプタペプチドと塩基性Tatドメインを含有する配列を増幅し、SalI及びBaglIIで消化し、pTL1−Ub−CPのXhoI及びBglII部位の間に挿入した。
【0208】
V.pFLAG−SUMO−P中での細菌発現ベクターの構築
pTL1−SUMO−PプラスミドをHindIII及びBglIIによって消化した。ヘプタペプチド/塩基性Tatドメイン部分と融合したSUMO−1配列を含有する断片を、pFLAGMacベクター(IBI FLAG(R) Biosystems)のHindIII及びBglII部位の間に挿入した。
【0209】
VI.pFLAG−Ub−P中での細菌発現ベクターの構築
PTL1−Ub−PプラスミドをEcoRI及びBglIIによって消化した。ペプチド/塩基性Tatドメイン部分と融合したUb配列を含有する断片を、ベクターpFLAG−2(IBI FLAG(R) Biosystems)のEcoRI及びBglII部位の間に挿入した。
【0210】
VI.細胞培養及び形質移入:
5% CO2を含有する湿った雰囲気中において、5%のウシ胎児血清を補充したDMEM培地中でHeLa及びCOS7細胞を培養した。形質移入は、カルシウム/リン酸共沈法を用いて行った。
【0211】
哺乳類細胞中でのツーハイブリッド検査では、形質移入は80000個のHeLa細胞を播種した6ウェルプレート中で行った。DNA混合物は、125ngのSEAPレポーター構築物、LexAと融合している25ngのTat又はRev発現ベクターを含有し、その量は、プレイを発現するプラスミドに最適なものとして定義された量である。すなわち、クローン142及び192(50ng)を除いては、Tatに対して選択されたモチーフについては250ng、Revに対して選択されたモチーフについては25ngであった。SEAP活性は、製造業者の指示書に従い、「SEAPレポーター遺伝子アッセイ化学発光」キット(Roche)を用いて測定した。Tat機能的検査は、60mmのペトリ皿中の300000個のHeLa細胞を、レポーター構築物LTR HIV−CAT(50ng)、pSG−Tat(2ng)及びSUMO−1又は相互作用ペプチド(0.5及び2μg)に対する発現ベクターで形質移入することによって行った。Rev機能的検査は、レポータープラスミドpDM128(50ng)、pSG−Rev(5ng)及びSUMO−1又は相互作用ペプチド(0.5及び2μg)に対する発現ベクターで形質移入することによって同様に行った。CAT活性は、CAT ELISAキット(Roche)を用いて測定された。Jurkat細胞は、5%CO2を含有する湿った雰囲気中において、10%ウシ胎児血清を補充したRPMI 1640中で、37℃で培養した。ヒト末梢血単核細胞(PBMC)及び単球は、Ficoll−Hypaque(Eurobio)を用いた密度勾配遠心によって、健康な血清陰性のドナーの血液から単離した。1μgのフィトヘマグルチニン−P(PHA−P、Difco Laboratories)及び5IU/mLのヒト組換えインターロイキン−2(rhIL−2、Roche Products)によって、ヒト末梢血単核細胞(PBMC)を活性化した。次に、ヒト末梢血単核細胞(PBMC)を、200μLの培地A(RPMI 1640細胞培養培地;Invitrogen)、熱で不活化された(+56℃、45分間)10%ウシ胎児血清(FCS,Bio West)及び20IU/mLのrhIL−2を補充した1%の三抗生物質混合物(ペニシリン、ストレプトマイシン及びネオマイシン;PSN,Invitrogen)中、96ウェルマイクロプレート(10000細胞/ウェル)上に置いた。5%CO2を有する湿った雰囲気中、37℃に細胞を維持した。
【0212】
7日目に、接着によって、単球から単球由来マクロファージ(MDM)が分化した。3日目に、1mLの培地中、48ウェルプレート中に300000細胞/ウェルを分散させた。単球の分化及びMDM培養は、湿った5%CO2雰囲気中、細胞培地A’:10%熱不活化FCS及びPSN三抗生物質混合物1×を補充したDMEM glutamaxTM中、37℃で行った。
【0213】
VIII.細菌の産生及びSHPの精製
2LのLB培地中で、0.9の光学密度まで培養されたBL21−CodonPlusTM−RP(Stratagene)Eコリ細胞を形質転換するために、セクションVIに記載したベクターを使用した。18℃で30分後、0.1mMのIPTGを培地に添加し、これを18℃で一晩継続した。Rocheの「完全」アンチプロテアーゼ(Complete antiprotease.Roche)、0.5mg/mLのリゾチームおよび20u/mLのベンゾナーゼ(Sigma)を補充した溶解緩衝液:200mMのNaCl、0.1Mのtris−HCl、pH7.4、10mMのMgCl2中で、この細菌に音波処理を施した。4000rpmで30分間の遠心後、5mLのヘパリンHyperDカラム(Biosepra)に上清をかけた。溶出は、DE 600緩衝液(600mMのKCl、20mLのHepes、pH7.9、10μMのZnCl2、1.5mMのMgCl2、1mMのEDTA及び1mMのDTT)を用いて行った。Hiload 16/60 Superdex 200ゲルろ過カラム(Amersham Pharmacia Biotech)によって、溶出産物を分画した。SHPを含有する画分を合わせて、DE50緩衝液(KCl濃度が20mMであることを除いて、DE600緩衝液と同じ組成)に対する透析後、5mLのmonoQ HyperDカラム(Biosepra)にかけた。PBS 1×緩衝液に対して、フロースルーを透析し、凍結乾燥によって10倍濃縮し、滅菌ろ過を行った。
【0214】
IX−イムノブロット及び免疫蛍光
使用した技術は、本分野において慣用されているものであった(ポリアクリルアミドゲル、二フッ化ポリビニリデン膜、PVDF、Sigma製のFLAGに対して誘導され、1:1000希釈され、Amersham Biosciences製ECLキットで可視化されるモノクローナル抗体)。
【0215】
1:500に希釈され、2時間インキュベートされた一次抗FLAG抗体と、1:1000に希釈され、Alexa Fluor 488蛍光標識試薬(Molecular Probes)に結合され、1時間インキュベートされた二次抗体とを用いて、免疫蛍光検査を行った。
【0216】
X.ウイルス及び抗ウイルス検査:
PBMC細胞には、HIV−1−LA1(Barre−Sinoussi et al, Science, 1983,220, 868−871)というリンパ指向性株を感染させ、MDM細胞には、マクロファージに対して指向性を有するHIV−1/Ba−L(Gartner et al, Science, 1086, 233,215−219)という株を感染させた。PHA−Pで活性化された臍帯血単核細胞(UBMC)とともに、これらのウイルスをインビトロで増幅した。可溶性因子を除去するために、無細胞上清を360000gで、10分間遠心し、残留物を細胞培養培地中に再懸濁した。PHA−Pで活性化されたPBMC細胞を用いて、ウイルス株を滴定し、Karberの式を用いて、50%組織培養感染量(TCID50)を計算した。
【0217】
5つの濃度の各分子によって、PBMC細胞を30分間、前処理し、75 TCID50のHIV−1−LA1株に感染させた。AZT(1.6、8、40、200及び1000nM)及びインジナビル(1.6、8、40、200及び1000nM)を対照として使用した。相互作用ペプチドSHPR−8、−15、−190及びSHPT−142を、31、62.5、125、250、500、1000及び2000nMの濃度で調べた。逆転写酵素活性(RT)アッセイによってウイルスの複製を測定するために、培養を通じて、この分子を維持し、感染から7日後に細胞上清を採集し、−20℃で保存した。薬物によって誘導された細胞毒性を検出するために、第7日目に、PBMC細胞を顕微鏡レベルで観察した。
【0218】
6つの濃度の異なる分子中で、MDM細胞を30分間、前処理し、30000TCID50のHIV−1/Ba−L株を感染させた。AZT(0.8、4、20、100及び500nM)及びインジナビル(0.8、4、20、100及び500nM)を対照として使用した。相互作用ペプチドSHPR−8、−15、−190及びSHPT−142を、62.5、125、250、500、1000及び2000nMの濃度で調べた。逆転写酵素活性(RT)アッセイによってウイルスの複製を測定するために、感染後7日間、この分子を維持し、感染から7、14及び21日後に細胞上清を採集し、−20℃に保存した。薬物によって誘導された細胞毒性を検出するために、第7、14及び21日目に、MDM細胞を顕微鏡レベルで観察した。
【0219】
RetroSys RTキット(Innovagen)を用いて、細胞培養から得た上清中のRT活性をアッセイすることによって、HIV複製を分析した。実験は3回行い、RT活性の平均±標準偏差(SD)として、結果を表す。非処理対照からのパーセント及びソフトウェア(J and T C Chou, Biosoft, Cambridge)を用いて、50%、70%及び90%有効用量(ED50、ED70、ED90)を計算した。
【実施例2】
【0220】
結果
Tat及びRevに結合するペプチド配列の同定
まず、ツーハイブリッド酵母システムスクリーニングによって、制御タンパク質Tat及びRevに対する相互作用ペプチドの探索を行った。ベイトは、Tat、Rev又はRevのNESの全配列と融合したLexAに対する配列を含有していた(図7A)。プレイは、GAL4活性化ドメイン、7アミノ酸のランダム配列及びTat形質導入ドメイン(図7B)という3つの異なる部分を含んでいた。21の縮重位の系列を含む、合成オリゴヌクレオチドから調製されたDNA断片をクローニングすることによって、プレイに対する発現ベクターのライブラリーを構築した。
【0221】
LexTat、LexRev又はLexNESをベイトとして使用する3つの異なるスクリーニングにおいて、このライブラリーを使用した(表1a参照)。無ヒスチジン培地中で培養され、β−ガラクトシダーゼに対する検査に対して陽性であったクローンのベクター全てを単離し、再検査を行った。LexAのみをベイトとして使用したときには、これらのベクターは何れも、β−ガラクトシダーゼの発現を誘発しなかった(表1b、c、d参照)。次いで、Tat対して選択された4つのベクター、Revに対して選択された3つのベクター、NESに対して選択された19のベクターを取得した(表1b、c、d参照)。哺乳類細胞中でのツーハイブリッド検査を用いて、これらの陽性クローンを分析した。産生された構築物は上に記載されており、図1Cに示されている。単独で又はプレイタンパク質とともに、LexAを一過性に発現したときには、レポーター構築物からの分泌されたアルカリホスファターゼ(SEAP)の発現は観察されなかった。LexTat及びLexRevはいずれも、それ自体、SEAPの発現を誘発することができるが、この産生は、プレイベクターとの同時形質移入によって増加する。結果を図8に示す。酵母に対して選択された配列は、ヒト細胞の核内中で、Tat及びRevタンパク質にも結合できることを示している。
【表1a】
【表1b】
【表1c】
【表1d】
Tat及びRev機能の阻害 前工程で単離された相互作用ペプチドの能力を考えると、次の工程は、Tat及びRev活性に対するアンタゴニストとして作用し、それらの細胞エフェクターとの会合に影響を与えることができるかどうかを確認することであった。このため、機能的検査を実施した。同定された相互作用ペプチドを安定化するために、SUMO−1タンパク質とともに構築物を作製した。ヘプタペプチド形質導入ドメインモジュールをコードする配列の上流に、ジグリシンC末端モチーフ中の変異を含む、コーディング配列全体を挿入した。このようにして産生された人工又はキメラタンパク質を、SUMO−1−ヘプタペプチド−タンパク質形質導入ドメインTat又はRev、すなわち、それぞれTat又はRevに結合する能力に応じて、SHPT又はSHPRと表記した。
【0222】
TatによるHIV−1プロモーターのトランス活性化に対する4つのSHPTの効果を、HeLa細胞中での一時的な発現実験によって評価した。低濃度では、様々なSHPTはTatのトランス活性化を減少させなかったが、さらに高い濃度では、特に、SHPT−8を用いると、トランス活性化の僅かな減少が観察された(図9A参照)。これらのデータは、選択されたSHPTがTat機能のあまり優れた阻害剤ではないことを示している。
【0223】
SHPR活性は、コーディング配列CATとイントロン中にRREモチーフを含むレポーター構築物pDM128を用いて評価された。Revの発現は、CATの発現を刺激し、スプライシングされないメッセンジャーを細胞質へ移行させる。この検査を用いて、様々なSHPRが異なる活性を有することが観察された。結果は、図9Bに示されている。このデータは、2つのSHPR、SHPR−142及びSHPR−190が、Revの機能の先験的な効果的阻害剤であることを明確に示している。この阻害が、実際に、予想通り、タンパク質−タンパク質相互作用と直接相関するかどうかを確認した。この目的のために、RevとSHPRの両者を細菌中で産生した。SHPを精製するためのプロトコールを開発した(実施例1参照)。Revは、GSTと融合されて発現され、グルタチオン−アガロースビーズに連結された。SHPR−142及びSHPR−190をカラムにかけ、SHPT−8も対照としてSHPR−190カラムにかけた。GST−Rev融合物がグルタチオンとともに放出されると、SHPR−142とSHPR−190の同時溶出が観察されたが、GST−Revを含有する画分中にSHPTは存在しなかった(図10参照)。このことは、SHPR−142及びSHPR−190とRevとの相互作用が直接的であり、中間体が関与していないことを示している。
【0224】
細胞外培地から細胞中へのSHPの透過
次いで、細胞外培地から同定されたSHPの活性を調べた。まず、細胞毒性を調べた。最大1μMの濃度まで、これらの分子は、インビトロで培養され、PHA及びIL−2で活性化された末梢血単核細胞(PBMC)の集団における細胞死のパーセントを変化させないように見えた。
【0225】
SHPが細胞中に透過する能力を評価するために、2μMのSHPR−190が補充された培地中でPBMCを培養した。様々な時点で、上清の分割量を取り出し、細胞を集めた。数回洗浄した後、RIPA緩衝液中に細胞を溶解し、FLAGエピトープ(細菌中で産生されたSHPのN末端に存在する。)に対して誘導された抗体を用いたイムノブロットによって、上清及び抽出されたものを分析した。休止しているリンパ球(図11A)及び活性化されたリンパ球(図11B)ともに、SHPR−190は培地中で安定であり、タンパク質の画分が細胞内に存在することが観察された(図11)。リンパ球が直径12μの球形であると仮定することによって、蛍光標識試薬で標識された抗体を用いて実施された定量実験は、2μMの外部濃度が15μMの細胞濃度をもたらすことが示された。このことは、SHPが細胞内に濃縮され得ることを示している。
【0226】
SHPが実際に細胞に侵入できることを確認するために、免疫蛍光分析も実施した。Jurkat細胞を1μMのSHPとともに4時間インキュベートし、2回洗浄した後、細胞を24時間培養した。FLAGに対する抗体を用いた免疫蛍光分析によって、4つの検査SHPでは、かなりの蛍光が、拡散する様式で細胞の内側全体に存在する(図11C)のに対して、対照細胞はこれに該当しないことが示された。
【0227】
このように本実験は、精製されたSHPとともにリンパ球を培養することができ、これらの分子が細胞内に入ることができることを証明する。
【0228】
SHPによるHIV−1の複製の阻害
最後の工程では、SHPがHIV−1の複製を実際に阻害できるかどうかを調べた。これは、PHA−Pによって活性化されたPBMC中及びMDM中で行った。PHP−Aによって活性化されたPBMCのモデルでは、HIV−1−LA1の複製は第7日目に最適であった。このため、様々なSHPの効果をこの時点で検査した。AZT及びインジナビルを対照として用いた。予想どおり、HIV−1−LA1の複製は、AZT及びインジナビルによって効果的に阻害された(図12A及び表2a)。SHPT−8、抗HIV活性を全く有しなかったが、SHPR−15は低い活性を有していた。これに対して、SHPR−142及びSHPR−190は、PHA−Pで活性化されたPBMC細胞中での複製を減少した。HIV−1の複製は、2μMのSHPR−142(73±6%、表2a参照)並びに1及び2μMのSHPR−190(それぞれ、80±7%及び100%、表2a参照)によって減少された。50%有効量の比較によって、SHPR−190がSHPR−142より活性が高いことが確認される(表2bを参照)。
【表2a】
【表2b】
基準株HIV−1Ba−Lは、MDM(単球由来マクロファージ)中で効果的に複製した。培養上清中の逆転写活性は、感染後(pi)7日目に検出され、感染後14及び21日目に最大となった。予想されたとおり、HIV−1/Ba−Lの複製は、AZT及びインジナビルによって、用量依存的に減少した(図12B及び表3a)。これらの細胞では、PBMCにおける場合と同様、SHPR−15が極めて低い活性を示した。活性化されたPBMCについて得られた結果とは異なり、SHPT−142もHIV複製を僅かに阻害した(2μMでは、14日目に44±10%、1μMでは効果なし、表3a)。これに対して、ウイルスの複製は、2μMのSHPT−8及びSHPR−190の両方によって阻害された(それぞれ、14日目に69±6%及び92±2%、表3a)。SHPT−8とは異なり、HIV複製に対するSHPR−190の効果は用量依存的であった(図12B)。さらに、ED90の値によって示されるように(表3b)、相互作用ペプチドSHPR−190は、さらに高い抗HIV活性を有していた。これらの効果は、おそらくは、相互作用ペプチドの分解のために、14日後に減弱した。
【表3a】
このように、本結果は、相互作用ペプチドSHPR−190が、HIVの2つの主要な細胞標的、すなわち、T CD4+リンパ球とマクロファージにおいて真の抗HIV効果を有することを示している。
【0229】
さらに、ペプチドSHPR−142はRev由来のNESに対して選択されたこと、ペプチドSHPR−190もRev由来のNESシグナルと相互作用することが示されたことに鑑み、これら2つの分子は、Revタンパク質の搬出特性を妨害する可能性がある。
【表3b】
【実施例3】
【0230】
同定されたSHP配列
SHPT:
SHPT−8 Phe Thr Met Arg Gly Val Asp
SHPT−9# Ile Thr Arg Arg Ile Glu Met Pro Gly Arg Asp Ile Pro Gly Val Asp Gly Ser Ile Leu Arg Gly Cys Trp Asp
SHPT−10− Gly Ala Val Asp Lys Ser His
SHPT−24 Ser Arg Val Asp Arg Lys Asp
#:このクローンは、幾つかのヘプタペプチド配列の挿入から得られた。
【0231】
SHPR:
SHPR−15 Met Cys Val Asp Leu Leu Leu
SHPR−31 Arg Gln Val Gly Met Leu Tyr
SHPR−115 Leu Ala Pro Arg Asn Leu Leu
SHPR−142* Phe Trp Phe Cys Gly Leu Lys
SHPR−190* Asn Trp Leu Cys Cys Leu Asn
* :これら2つのヘプタペプチドは、Revタンパク質の機能に対して阻害効果を有するヘプタペプチドである。
【実施例4】
【0232】
SHPR−142及びSHPR−190中の変異
Revに対して誘導されたSHPの作用機序並びにSHPR−142及び−190中の各位置に存在する残基の重要性を最大限決定するために、変異分析を行った。
【0233】
1.ウイルスタンパク質の、そのRNA標的配列Rev応答要素(RRE)への結合に対するSHPR−Revの結合の効果
Revタンパク質は、特定のRNA配列:RREに結合することによって、HIV−1 mRNAの細胞質への移行を引き起こす。本発明者らは、RevのSHPR阻害剤の結合が、このRev/RRE会合を妨害するかどうかという問いに対して答えを出した。この目的のために、RRE要素に対応するRNA分子をプローブとして用いたゲル遅延実験を行った。細菌中で産生されたRevタンパク質は、このRNAに結合し、非変性ポリアクリルアミドゲル移動の遅延を誘発する。SHPR−190及び−142タンパク質の添加は、この会合を阻害しなかったが、さらに大きな遅延を引き起こし、SHPR−Rev複合体がなおRREに結合できることを示している。
【0234】
これらの実験では、SHPT−8などの対照タンパク質の添加は、全く効果を有さなかった。
【0235】
このため、これらの実験から、SHPR阻害剤−190及び−142は、Revの要素RREとの相互作用を修飾しないと結論付け得る。それらの阻害作用は、むしろ、細胞質へのRev−RRE複合体の移行に起因するものにちがいない。この点は、SHPR−190及び−142がRev NESと相互作用するという観察と一致している。
【0236】
2.SHPR−142及び−190の阻害剤活性に対して必要とされる配列:
本発明者らによって、以下の実験が行われた。
【0237】
・SUMO−1配列の下流にあるヘプタペプチドモチーフのクローニング中に、選択された結合モチーフの直近の環境を改変しないために、タンパク質GAL4(PPNPKKEIEL)をコードする約10個のアミノ酸が保存された。
【0238】
・短いGAL4モチーフをコードするこの配列が除去された、SHPR−142及び−190の変異体(ΔGAL4と命名)を作製した。
【0239】
・阻害剤活性を有するヘプタペプチドモチーフのアミノ酸のそれぞれの寄与を評価するために、SHPR−142及び−190の7つの位置のそれぞれをアラニン(Ala)に変異し、増強された抗ウイルス活性を有する変異体を探すために、変異体を検査した。
【0240】
RREがイントロン位置に会合したCAT配列を有するレポータープラスミドのHeLa細胞に、Revタンパク質及びSHPRタンパク質に対する発現ベクターを形質移入することからなる一時的発現系を用いて、これらの様々な変異体を検査した。これらのSHPR誘導体の阻害剤活性を測定し、親SHPRの阻害剤活性と比較した以下の表中に示す。値は、2つの独立した測定に対して得られた値の平均に対応する。2つの値の隔たりは、20%未満であった。
【表4】
【0241】
表4:SHPR−142(2列目)及びSHPR−190(3列目)の哺乳類細胞中の発現ベクターは、ヘプタペプチドの各位置が変異され(アラニンに変化)、GAL4をコードするアミノ酸の欠失によって変異された。上記セクション(及びRoisin et al, JBC(2004)279:9208)に記載されているように、レポータープラスミドpDM128及び発現ベクターRevをこれらのベクターに形質移入した。CATタンパク質の量は、親SHPRの形質移入に対応する%として表されている。このため、100を超える値は、SHPRの阻害能に対する負の効果を表し、100より低い値は、この阻害特性の増加を表している。
【表5】
【0242】
表5:GAL4をコードするアミノ酸を欠失させることによって、SHPRの発現ベクターを修飾し、ヘプタペプチドの1又は4位を修飾した。表4の脚注に記載されているとおりに、これらの発現ベクターを検査した。
【0243】
これらの結果は、GAL4のアミノ酸をコードする配列が負の役割を果たすことを示している。142配列については、最初の5個の残基の修飾が負の効果を有し、アミノ酸6及び7、特に7位の修飾が活性を増加することを示している(表4)。−190ヘプタペプチドの場合、アミノ酸1の置換が活性をかなり顕著に増加させるが、3、4及び7の置換はこれより程度が低いようである(表4)。さらに、1位又は4位の変異は、GAL4配列の除去の効果をさらに増加させる(表5)。
【0244】
これらの結果から、残部のGAL4は、最終のハイブリッドタンパク質から除去され得ると結論付けることができる。−190ヘプタペプチドについては、1位の修飾も有利であるように思われる。
【0245】
4位の修飾も、システイン残基の量を限定する目的で、有利となり得る。これらは、酸化による修飾を引き起こし得る。2つのモチーフ−142及び−190に対して得られた結果を検討することによって、2位のトリプトファン残基が重要であり、トリプトファン残基は、4位、又は好ましくは5位に存在し得る近接するシステイン残基を必要とするように思われる。
【0246】
これらの結果は、さらに高い活性を有する可能性があるSHPR−190の新規誘導体をもたらす。
【0247】
形質導入ドメインの役割をさらに識別するための研究も行った。この目的のために、主要部分を欠失するために塩基性Tatドメイン(SHPR−142及び−190に対して用いた。)を末端切断するか、又はポリアルギニンモチーフによって置換した。いずれのケースでも、そのRev標的と相互作用するポリペプチドの細胞内能力は保存されることが示された。これらの結果は、標的と相互作用する能力に関して(この相互作用において、形質導入ドメインは関与していない。)、ヘプタペプチドが不可欠であることを確証する。
【0248】
このため、本発明のポリペプチドがある標的と相互作用する能力が同定されれば、次に、得られたポリペプチドが当該標的と常に相互作用できるようにしながら、ヘプタペプチドを修飾せずにその特性を最適化するために(形質導入の効率、安全性、非免疫原性など)、形質導入ドメインを変更することが可能である。
【参考文献】
【0249】
・Desbois C, Rousset R, Bantignies F and Jalinot P (1996). Exclusion of Int-6 from PML nuclear bodies by binding to the HTLV-1 Tax oncoprotein. Science 273, 951-3;
・Farjot G, Sergeant A and Mikaelian I (1999). A new nucleoporin-like protein interacts with both HIV-1 Rev nuclear export signal and CRM-1. J Biol Chem 274, 17309-17;
・Green S, Issemann, I, and Sheer, E (1988). A versatile in vivo and in vitro eukaryotic expression vector for protein engineering. Nucleic Acids Res 16, 369;
・Veschambre P, Simard P and Jalinot P (1995). Evidence for functional interaction between the HIV-1 Tat transactivator and the TATA box binding protein in vivo. J Mol Biol 250, 169-80;
・Wender P A, Mitchell D J, Pattabiraman K, Pelkey E T, Steinman L, Rothbard J B (2000). The design, synthesis and evaluation of molecules that enable or enhance cellular uptake: peptoid molecular transporters. Proc Natl Acad Sci USA, 97 (24): 13003-8;
・Kraber G, Beitrag zur kollektiven Behandlung Pharmakologischer Reihenversuche [contribution regarding the collective treatment of serial pharmacological investigations] (1931) Arch Exp Path Pharmak 162, 956-959。
【図面の簡単な説明】
【0250】
【図1】この図は、所定の標的タンパク質と相互作用できる相互作用ポリペプチドを作製するために使用された様々な工程と構築物を示している。二重矢印は、2つの分子間の相互作用を示している。各工程に対して、様々な種類の細胞が記されている。標的としてウイルスRevタンパク質を用いて、工程3(機能的試験)を実施した。
【図2A】図2は、酵母「ツーハイブリッド」工程に使用された様々なプラスミドのマップを示している。
【0251】
図2A:pGAD424から得られるプラスミドpGAD−CR。pGAD−CRから得られ、制限部位BamHI及びXamIの間に挿入されるヘプタペプチドモチーフをコードする配列を含むプラスミドpGAD−CR−P。
【図2B】図2は、酵母「ツーハイブリッド」工程に使用された様々なプラスミドのマップを示している。
【0252】
図2B:プラスミドpLex9の制限部位EcoRIとBamHIの間に挿入されたTat cDNAを含有するプラスミドpLex−Tat。
【0253】
プラスミドpLex9の制限部位BamHIとXhoIの間に挿入されたRevのNESモチーフをコードする配列を含有するプラスミドpLexNES。
【図2C】図2は、酵母「ツーハイブリッド」工程に使用された様々なプラスミドのマップを示している。
【0254】
図2C:プラスミドpLex9の制限部位BamHI及びSalIの間に挿入されたRev cDNAを含有するプラスミドplexRev。
【図3A】図3は、哺乳類細胞中でのツーハイブリッド工程のために使用される様々なプラスミドのマップを示している。
【0255】
図3A:
プラスミドpSG−FNV−P。pGAD−CR−PからX7 PTDモチーフを増幅し、制限酵素SalI及びBglIIで消化した後、プラスミドpSG−FNVの制限部位XhoI及びBglIIの間に挿入した。
【0256】
pSG5LexAから得られ、Tat cDNAを含む、プラスミドpSG5LexA−Tat。
【図3B】図3は、哺乳類細胞中でのツーハイブリッド工程のために使用される様々なプラスミドのマップを示している。
【0257】
図3B:
pSG5LexAから得られ、Rev cDNAを含む、プラスミドpSG5LexA−Rev。
【図4】図4は、機能的試験のための発現ベクターSUMO−1−Pのマップを示している。制限部位XhoI及びBglIIを含むSUMO−1をコードする配列pTL1−SUMO−1CPPをpTL1中に挿入した。
【0258】
pTL1−SUMO−1−P:X7 PTDモチーフに対する配列を、pTL1−SUMO−1−CPの制限部位XhoI及びBglIIの間に挿入した。
【図5】図5は、細菌中で発現ベクターとして使用されるプラスミドpFLAG−SUMO−1−Pのマップを示している。このプラスミドは、プラスミドpFLAG−MACの制限部位HindIII及びBglIIの間にSUMO−1−Pモチーフをコードする配列を挿入することによって構築された。
【図6】図6は、SUMO−1(番号1)及びユビキチン(番号3)の野生型配列並びに、安定化ドメインとして、SUMO−1の断片(相互作用ペプチドSUMO、番号2)又はユビキチン(相互作用ペプチドUB、番号4)を含む本発明の相互作用ペプチドの配列を示している。
【0259】
野生型SUMO−1に対する配列とSUMO−1の断片を含む相互作用ペプチドが並列されている。星は、2つの配列中に同一アミノ酸が存在することを示している。
【0260】
ユビキチンに対する配列とユビキチン断片を含む相互作用ペプチドに対する配列との間でも、類似のアラインメントを行った。
【0261】
相互作用ペプチド中のモチーフXXXXXXXは、ランダムな様式で確定され得る7アミノ酸配列を表している。
【図7】図7は、酵母(A)又は哺乳類細胞(C)中でのツーハイブリッド試験においてベイト(A)及びプレイ(B、C)として作用するタンパク質の模式図である。
【0262】
A.ベイトは、Tat(アミノ酸aa1から86)、Rev(aa1から116)又はRevの核外移行シグナル(aa70から96)と融合したタンパク質LexAからなる。
【0263】
B.酵母プレイは、活性化ドメインGAL4(一連の7アミノ酸のランダム配列)及びTat形質導入ドメイン(タンパク質形質導入ドメインPTD)を含む。
【0264】
C.哺乳類細胞中のプレイは、FLAGエピトープ、SV40のNLS(核局在化シグナル)(ワイドT)、HSVのVp16活性化ドメイン及びヘプタペプチド+TatPTDモジュールを含む。
【図8】図8は、哺乳類のツーハイブリッドスクリーニングによって、Tat及びRevに対して選択されたヘプタペプチド+Tat PTDモジュールの分析を示している。
【0265】
A.単独で、又はpSG−FNV−P−T8、−T9、−T10又は−T24とともに、レポーター構築物pSEAP Lex5X及びpSG5LexA−TatをHeLa細胞に形質移入した。SEAPの量を測定し、形質移入の2つの独立した点について得られた値の平均が示されている。エラーバーは、2つの値間の差の半分に相当する。
【0266】
B.pSG−FNV−P−T24、R15、−R115、−R190、−N142−N31及び−N7とともに、pSEAP Lex5X及びpSGLexA−Revを用いて、同じ検査を行った。結果は、図8Aと同様に示されている。
【図9】図9は、構築物SHPT及びSHPRに対するTat及びRevの活性の阻害を示している。
【0267】
A.ジグリシンモチーフ(GG)がARに変異されており、そのC末端がヘプタペプチド−Tat PDTモジュールと結合されたSUMO−1の配列全体を含む構築物SHPの模式図。
【0268】
B.pSG−Tat及びpTL−1−SUMO−1、pTL1−SHPT−8、−9、−10又は−24の何れかとともに、構築物LTR HIV−CATをHeLa細胞に形質移入した。これらの後者のプラスミドの量は、0.5μg(薄い灰色のバー)又は2μg(濃い灰色のバー)の何れかであった。CAT活性を測定し、形質移入の2つの独立した点について得られた値の平均が示されている。エラーバーは、2つの値間の差の半分に相当する。
【0269】
C.Rev活性を評価するために、pTL1−SUMO−1、pTL1−SHPR−15、−115、−190、−R7、−R31及びR142の何れかとともに、プラスミドpMD128及びpSG−RevをHeLa細胞に形質移入した。CAT活性は、図9Bと同様に示されている。
【図10】図10は、SHPR及びRev間の直接のタンパク質−タンパク質相互作用を表している。GXT−Revを細菌中で産生し、アガロース−グルタチオンカラムにかけた。SHPR−142、−190及びSHPT−8をこのカラムにかけた。リンスの後、グルタチオンでタンパク質を溶出した。それぞれ、GST又はFLAGに対する抗体を用いて、フィード(ライン1)、リンス(ライン2)及び溶出(ライン3、4、5)画分の分割量を、GST−Rev(上部グラフ)及びSHPに対するイムノブロットによって分析した。これは、SHPR−142及びSHPR−190がGST−Revとともに溶出されたのに対して、SHPR−8はカラム上のタンパク質に結合しなかったことを示している。
【図11】図11は、SHPの細胞内への侵入を示している。
【0270】
直接(A)又はPHA(フィトヘマグルチニン)及びIL−2(インターロイキン2)で活性化した後に(B)、単核細胞を末梢血から調製し、次いで、2μMのSHPR−190とともにインキュベートした。相互作用ペプチド添加後の表記の時点で、FLAGに対する抗体を用いたイムノブロットによって、上清の分割量を分析した(A、ライン1から4;B、ライン1から3)。細胞を集め、RIPA緩衝液中に溶解した。上清に対して記載したとおりに、得られた抽出物を、イムノブロットによって分析した(A、ライン5及び6;B、ライン4)。部分Aでは、曝露時間は、ライン5及び6(30秒)とライン1から4(5秒)の間で異なった。
【0271】
これらの分析は、上清中でタンパク質が安定であること、それが細胞内に存在することを示している。
【0272】
部分Cでは、2μMのSHPT−8、SHPR−15、SHPR−142又はSHPR−190とともに、Jurkat細胞を一時間インキュベートし、24時間後に細胞を集め、FLAGに対する抗体を用いた免疫蛍光によって分析した。代表的な細胞について、光の透過及び蛍光画像が示されている。細胞は、対照に対して観察されていない散乱蛍光を有していた。
【図12】図12は、リンパ球及びマクロファージにおけるHIV−1の複製の阻害を示している。
【0273】
A.末梢血から単核細胞を調製し、活性化した。異なる量のAZT、インジナビル、SHPR−15、−142、−190又はSHPT−8で細胞を処理し、HIV−1−LAIに感染させた。上清中の逆転写活性をアッセイすることによってウイルスの複製を測定し、パーセント阻害は、化合物の量の関数として示されている。
【0274】
B.単球からマクロファージを調製し、異なる濃度の薬物とSHPで処理し、HIV−1/Ba−Lに感染させた。逆転写活性をアッセイすることによって、ウイルスの複製を測定した。感染から7日後のパーセント阻害が、図12と同様に示されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の要素:
(a)配列X1X2X3X4X5X6X7を有するヘプタペプチドモチーフと;
(b)形質導入ドメインと;
を含み、キメラポリペプチドであること、アミノ酸X7が前記ポリペプチドのC末端から5ないし35のアミノ酸であること、及びドメイン(b)がモチーフ(a)に関してC末端側に位置すること、を特徴とする相互作用ポリペプチド。
【請求項2】
前記モチーフがランダムプロセスによって規定される配列を有することを特徴とする、請求項1に記載の相互作用ポリペプチド。
【請求項3】
(c)安定化ドメイン;をさらに含み、前記安定化ドメインが前記ポリペプチドのヘプタペプチドに関してN末端側に位置することを特徴とする、請求項1に記載の相互作用ポリペプチド。
【請求項4】
前記要素(a)と(b)及び/又は(a)と(c)の間にリンカーが挿入されていることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の相互作用ポリペプチド。
【請求項5】
前記リンカーが5未満のアミノ酸を含有する配列であり、少なくとも20%のアミノ酸グリシン又はプロリンを含むことを特徴とする、請求項4に記載のポリペプチド。
【請求項6】
前記形質導入ドメインがHIV−Tatタンパク質の形質導入ドメインであることを特徴とする、請求項1から5の何れか一項に記載のポリペプチド。
【請求項7】
前記形質導入ドメインが配列RKKRRQRRRを含むことを特徴とする、請求項6に記載のポリペプチド。
【請求項8】
前記安定化ドメインが配列MSDQEAKPSTEDLGDKKEGEYIKLKVIGQDSSEIHFKVKMTTHLKKLKESYCQRQGVPMNSLRFLFEGQRIADNHTPKELGMEEEDVIEVYQEQT(配列番号1)を含み、又は配列番号1と少なくとも90%の同一性を有する配列を含むことを特徴とする、請求項3から7の何れか一項に記載のポリペプチド。
【請求項9】
アミノ酸X7が前記ポリペプチドのC末端から10と30アミノ酸の間にあることを特徴とする、請求項1から8の何れか一項に記載のポリペプチド。
【請求項10】
アミノ酸X7が前記ポリペプチドのC末端から15と25アミノ酸の間にあることを特徴とする、請求項9に記載のポリペプチド。
【請求項11】
以下の配列:
NX1WX3X4X5X6X7C
(X1、X3、X4、X5、X6及びX7は、天然又は修飾アミノ酸から独立に選択されるアミノ酸であり、X4及び/又はX5はシステインであり、Wはトリプトファンである。)を有するモチーフ(a)を含む、請求項1から10の何れか一項に記載のポリペプチド。
【請求項12】
前記システインが好ましくはX5位に存在する、請求項11に記載のポリペプチド。
【請求項13】
モチーフ(a)として、以下の配列FWFCGLK(配列番号2)、NWLCCLN(配列番号3)、FWFCGLA(配列番号27)、AWLCCLN(配列番号25)、NWLCCLA(配列番号26)、FWFCGAK(配列番号45)、FWFCGAA(配列番号46)、NWACCLN(配列番号47)、NWLACLN(配列番号48)、AWACCLN(配列番号49)、AWLACLN(配列番号50)、AWLCCLA(配列番号51),NWAACLN(配列番号52)、NWACCLA(配列番号53)、NWLACLA(配列番号54)、AWAACLN(配列番号55)、AWACCLA(配列番号56)、AWLACLA(配列番号57)、NWAACLA(配列番号58)及びAWAACLA(配列番号59)から選択される配列を含む、請求項11に記載のポリペプチド。
【請求項14】
FWFCGLKPGRKKRRQRRRG(配列番号4)、NWLCCLNPGRKKRRQRRRG(配列番号5)、FWFCGAKPGRKKRRQRRRG(配列番号60)、FWFCGLAPGRKKRRQRRRG(配列番号61)、FWFCGAAPGRKKRRQRRRG(配列番号62)、AWLCCLNPGRKKRRQRRRG(配列番号63)、NWACCLNPGRKKRRQRRRG(配列番号64)、NWLACLNPGRKKRRQRRRG(配列番号65)、NWLCCLAPGRKKRRQRRRG(配列番号66)、AWACCLNPGRKKRRQRRRG(配列番号67)、AWLACLNPGRKKRRQRRRG(配列番号68)、AWLCCLAPGRKKRRQRRRG(配列番号69)、NWAACLNPGRKKRRQRRRG(配列番号70)、NWACCLAPGRKKRRQRRRG(配列番号71)、NWLACLAPGRKKRRQRRRG(配列番号72)、AWAACLNPGRKKRRQRRRG(配列番号73)、AWACCLAPGRKKRRQRRRG(配列番号74)、AWLACLAPGRKKRRQRRRG(配列番号75)、NWAACLAPGRKKRRQRRRG(配列番号76)及びAWAACLAPGRKKRRQRRRG(配列番号77)から選択される配列を含む、請求項13に記載のポリペプチド。
【請求項15】
配列:NX1WX3X4X5X6X7C
(X1、X3、X4、X5、X6及びX7は、天然又は修飾アミノ酸から独立に選択されるアミノ酸であり、X4及び/又はX5はシステインであり、Wはトリプトファンである。)を有するヘプタペプチドを含み、Revタンパク質又はそのドメインの一つの相互作用するポリペプチド。
【請求項16】
前記Revタンパク質がHIV−1、HIV−2、SIV、SHIV又はFIVのRevタンパク質である、請求項15に記載のポリペプチド。
【請求項17】
前記ヘプタペプチドがツーハイブリッド酵母試験においてHIV−1のRevタンパク質と相互作用することができ、前記ポリペプチドがHIV−1ウイルスの複製をインビボで阻害することができる、請求項15に記載のポリペプチド。
【請求項18】
前記ヘプタペプチドの配列が、以下の配列:FWFCGLK(配列番号2)、NWLCCLN(配列番号3)、FWFCGLA(配列番号27)、AWLCCLN(配列番号25)、NWLCCLA(配列番号26)、FWFCGAK(配列番号45)、FWFCGAA(配列番号46)、NWACCLN(配列番号47)、NWLACLN(配列番号48)、AWACCLN(配列番号49)、AWLACLN(配列番号50)、AWLCCLA(配列番号51)、NWAACLN(配列番号52)、NWACCLA(配列番号53)、NWLACLA(配列番号54)、AWAACLN(配列番号55)、AWACCLA(配列番号56)、AWLACLA(配列番号57)、NWAACLA(配列番号58)及びAWAACLA(配列番号59)から選択される、請求項15又は16に記載のポリペプチド。
【請求項19】
集団の各メンバーが請求項1、2又は3に記載のポリペプチドによって構成され、又は請求項1、2又は3に記載のポリペプチドを含み、前記ヘプタペプチド配列のみによって他のメンバーから区別される、相互作用分子の集団。
【請求項20】
前記集団が少なくとも100個の異なる分子、好ましくは少なくとも1000個の異なる分子を含むことを特徴とする、請求項19に記載の相互作用分子の集団。
【請求項21】
各メンバーが以下の配列:X1X2X3X4X5X6X7PGKKRRQRRRG(配列番号6)を含むことを特徴とする、請求項19に記載の相互作用分子の集団。
【請求項22】
各メンバーが以下の配列:
MSDQEAKPSTEDLGDKKEGEYIKLKVIGQDSSEIHFKVKMTTHLKKLKESYCQRQGVPMNSLRFLFEGQRIADNHTPKELGMEEEDVIEVYQEQTARPPNPKKEIELGGGGSX1X2X3X4X5X6X7PGKKRRQRRRG(配列番号7)を含み、又は
各メンバーが以下の配列:
MSDQEAKPSTEDLGDKKEGEYIKLKVIGQDSSEIHFKVKMTHLKKLKESYCQRQGVPMNSLRFLFEGQRIADNHTPKELGMEEEDVIEVYQEQTARGGGGSX1X2X3X4X5X6X7PGKKRRQRRRG(配列番号78)を含むことを特徴とする、請求項19から21の何れか一項に記載の相互作用分子の集団。
【請求項23】
請求項1から22に記載のポリペプチドのうち何れか一つをコードする配列を含む核酸分子。
【請求項24】
薬物として使用するための、請求項1から18の何れか一項に記載のポリペプチド。
【請求項25】
請求項1から18の一項に記載のポリペプチドを活性成分として含む、薬学的又は獣医用調製物。
【請求項26】
注射可能溶液の形態で梱包された、請求項25に記載の薬学的調製物。
【請求項27】
静脈内又は経口投与用の、請求項25に記載の薬学的調製物。
【請求項28】
他の動物種におけるHIV又は相同ウイルスによる感染を治療するための薬物を製造するための、請求項1から18の何れか一項に記載のポリペプチドの使用。
【請求項29】
i.請求項1から14及び19から22の何れか一項に記載の相互作用ポリペプチドを、前記細胞の存在下に置くことと;
ii.前記細胞の表現型の修飾を検出することと;
iii.必要に応じて、前記ポリペプチドのヘプタペプチドモチーフの配列を決定することと;
を含む、細胞の表現型を修飾することができるポリペプチドを同定するためのスクリーニング方法。
【請求項30】
「前記存在下に置くこと」が、前記細胞による相互作用ポリペプチドの合成であることを特徴とする、請求項29に記載のスクリーニング方法。
【請求項31】
「前記存在下に置くこと」がポリペプチドの細胞外添加であることを特徴とする、請求項29に記載のスクリーニング方法。
【請求項32】
細胞内スクリーニングであることを特徴とする、請求項29に記載のスクリーニング方法。
【請求項33】
細胞外スクリーニングであることを特徴とする、請求項29に記載のスクリーニング方法。
【請求項34】
インビボスクリーニング方法であることを特徴とする、請求項29に記載のスクリーニング方法。
【請求項35】
インビトロで実施される方法であることを特徴とする、請求項29に記載のスクリーニング方法。
【請求項36】
観察された表現型の変化がレポーター遺伝子によって誘導されることを特徴とする、請求項29に記載のスクリーニング方法。
【請求項37】
前記レポーター遺伝子がツーハイブリッドシステムのレポーター遺伝子であることを特徴とする、請求項36に記載のスクリーニング方法。
【請求項38】
i.請求項1から14又は19から22の何れか一項に記載のポリペプチドを作製することと;
ii.作製されたポリペプチドの存在下に標的を置くことと;
iii.ポリペプチドの前記標的との相互作用を検出することと;
iv.必要に応じて、ヘプタペプチドモチーフの配列を決定することと;
を含む、所定の細胞内標的と相互作用する分子を同定するために分子をスクリーニングする方法。
【請求項39】
前記相互作用が、例えば、ツーハイブリッドシステムを用いて、表現型の変化を観察することによって、又は存在物のアッセイによって検出される、請求項38に記載のスクリーニング方法。
【請求項40】
標的分子を含有する細胞を、請求項1から14の何れか一項に記載の相互作用ポリペプチドとインビトロで接触させることを含み、前記ポリペプチドが前記標的分子と相互作用するヘプタペプチドモチーフを有する、細胞内標的分子の特性を調節する方法。
【請求項41】
表現型スクリーニングにおけるプレイとしての、請求項23に記載の分子の使用。
【請求項42】
前記表現型スクリーニングがツーハイブリッドスクリーニングであることを特徴とする、請求項41に記載の使用。
【請求項43】
前記スクリーニングにおけるベイトがHIV−Revタンパク質又はそのドメインの一つをコードする配列を含むことを特徴とする、請求項42に記載の使用。
【請求項44】
前記スクリーニングにおけるベイトが7から15個のアミノ酸のドメインをコードする配列を含むことを特徴とする、請求項42に記載の使用。
【請求項45】
前記ドメインがNLS(核局在化シグナル)であることを特徴とする、請求項44に記載の使用。
【請求項46】
前記ドメインがNES(核外移行シグナル)であることを特徴とする、請求項44に記載の使用。
【請求項47】
前記NESがHIV−Revタンパク質のNESであることを特徴とする、請求項46に記載の使用。
【請求項48】
前記NESが以下の配列:LQLPPLERLTL(配列番号8)を有することを特徴とする、請求項46に記載の使用。
【請求項49】
i.請求項1から14又は19から22の何れか一項に記載の相互作用ポリペプチドの存在下に標的分子を置くことと;
ii.前記標的分子と前記相互作用ポリペプチド間の相互作用を検出することと;
iii.候補分子を添加することと;
iv.前記標的分子と前記相互作用ポリペプチド間の相互作用に対する修飾を検出することと;
を含む、分子内標的分子と相互作用できる候補分子をスクリーニングする方法。
【請求項50】
前記標的分子と前記相互作用ポリペプチド間の前記相互作用が、例えばツーハイブリッド試験において、レポーター遺伝子を使用することによって観察される、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記標的タンパク質がRevタンパク質であり、前記相互作用ポリペプチドが請求項15から18の何れか一項に記載のポリペプチドである、請求項49又は50に記載の方法。
【請求項52】
i.19から22の何れか一項に記載のポリペプチドの集団の異なるメンバーをコードする配列を含む核酸分子を作製することと;
ii.標的分子をベイトとして含む、酵母ツーハイブリッドシステムを用いて前記分子をスクリーニングすることと;
iii.相互作用を検出することと;
iv.必要に応じて、ヒト細胞における相互作用を確認することと;
を含む、細胞内標的分子の特性を調節することができる分子を同定する方法。
【請求項1】
以下の要素:
(a)配列X1X2X3X4X5X6X7を有するヘプタペプチドモチーフと;
(b)形質導入ドメインと;
を含み、キメラポリペプチドであること、アミノ酸X7が前記ポリペプチドのC末端から5ないし35のアミノ酸であること、及びドメイン(b)がモチーフ(a)に関してC末端側に位置すること、を特徴とする相互作用ポリペプチド。
【請求項2】
前記モチーフがランダムプロセスによって規定される配列を有することを特徴とする、請求項1に記載の相互作用ポリペプチド。
【請求項3】
(c)安定化ドメイン;をさらに含み、前記安定化ドメインが前記ポリペプチドのヘプタペプチドに関してN末端側に位置することを特徴とする、請求項1に記載の相互作用ポリペプチド。
【請求項4】
前記要素(a)と(b)及び/又は(a)と(c)の間にリンカーが挿入されていることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の相互作用ポリペプチド。
【請求項5】
前記リンカーが5未満のアミノ酸を含有する配列であり、少なくとも20%のアミノ酸グリシン又はプロリンを含むことを特徴とする、請求項4に記載のポリペプチド。
【請求項6】
前記形質導入ドメインがHIV−Tatタンパク質の形質導入ドメインであることを特徴とする、請求項1から5の何れか一項に記載のポリペプチド。
【請求項7】
前記形質導入ドメインが配列RKKRRQRRRを含むことを特徴とする、請求項6に記載のポリペプチド。
【請求項8】
前記安定化ドメインが配列MSDQEAKPSTEDLGDKKEGEYIKLKVIGQDSSEIHFKVKMTTHLKKLKESYCQRQGVPMNSLRFLFEGQRIADNHTPKELGMEEEDVIEVYQEQT(配列番号1)を含み、又は配列番号1と少なくとも90%の同一性を有する配列を含むことを特徴とする、請求項3から7の何れか一項に記載のポリペプチド。
【請求項9】
アミノ酸X7が前記ポリペプチドのC末端から10と30アミノ酸の間にあることを特徴とする、請求項1から8の何れか一項に記載のポリペプチド。
【請求項10】
アミノ酸X7が前記ポリペプチドのC末端から15と25アミノ酸の間にあることを特徴とする、請求項9に記載のポリペプチド。
【請求項11】
以下の配列:
NX1WX3X4X5X6X7C
(X1、X3、X4、X5、X6及びX7は、天然又は修飾アミノ酸から独立に選択されるアミノ酸であり、X4及び/又はX5はシステインであり、Wはトリプトファンである。)を有するモチーフ(a)を含む、請求項1から10の何れか一項に記載のポリペプチド。
【請求項12】
前記システインが好ましくはX5位に存在する、請求項11に記載のポリペプチド。
【請求項13】
モチーフ(a)として、以下の配列FWFCGLK(配列番号2)、NWLCCLN(配列番号3)、FWFCGLA(配列番号27)、AWLCCLN(配列番号25)、NWLCCLA(配列番号26)、FWFCGAK(配列番号45)、FWFCGAA(配列番号46)、NWACCLN(配列番号47)、NWLACLN(配列番号48)、AWACCLN(配列番号49)、AWLACLN(配列番号50)、AWLCCLA(配列番号51),NWAACLN(配列番号52)、NWACCLA(配列番号53)、NWLACLA(配列番号54)、AWAACLN(配列番号55)、AWACCLA(配列番号56)、AWLACLA(配列番号57)、NWAACLA(配列番号58)及びAWAACLA(配列番号59)から選択される配列を含む、請求項11に記載のポリペプチド。
【請求項14】
FWFCGLKPGRKKRRQRRRG(配列番号4)、NWLCCLNPGRKKRRQRRRG(配列番号5)、FWFCGAKPGRKKRRQRRRG(配列番号60)、FWFCGLAPGRKKRRQRRRG(配列番号61)、FWFCGAAPGRKKRRQRRRG(配列番号62)、AWLCCLNPGRKKRRQRRRG(配列番号63)、NWACCLNPGRKKRRQRRRG(配列番号64)、NWLACLNPGRKKRRQRRRG(配列番号65)、NWLCCLAPGRKKRRQRRRG(配列番号66)、AWACCLNPGRKKRRQRRRG(配列番号67)、AWLACLNPGRKKRRQRRRG(配列番号68)、AWLCCLAPGRKKRRQRRRG(配列番号69)、NWAACLNPGRKKRRQRRRG(配列番号70)、NWACCLAPGRKKRRQRRRG(配列番号71)、NWLACLAPGRKKRRQRRRG(配列番号72)、AWAACLNPGRKKRRQRRRG(配列番号73)、AWACCLAPGRKKRRQRRRG(配列番号74)、AWLACLAPGRKKRRQRRRG(配列番号75)、NWAACLAPGRKKRRQRRRG(配列番号76)及びAWAACLAPGRKKRRQRRRG(配列番号77)から選択される配列を含む、請求項13に記載のポリペプチド。
【請求項15】
配列:NX1WX3X4X5X6X7C
(X1、X3、X4、X5、X6及びX7は、天然又は修飾アミノ酸から独立に選択されるアミノ酸であり、X4及び/又はX5はシステインであり、Wはトリプトファンである。)を有するヘプタペプチドを含み、Revタンパク質又はそのドメインの一つの相互作用するポリペプチド。
【請求項16】
前記Revタンパク質がHIV−1、HIV−2、SIV、SHIV又はFIVのRevタンパク質である、請求項15に記載のポリペプチド。
【請求項17】
前記ヘプタペプチドがツーハイブリッド酵母試験においてHIV−1のRevタンパク質と相互作用することができ、前記ポリペプチドがHIV−1ウイルスの複製をインビボで阻害することができる、請求項15に記載のポリペプチド。
【請求項18】
前記ヘプタペプチドの配列が、以下の配列:FWFCGLK(配列番号2)、NWLCCLN(配列番号3)、FWFCGLA(配列番号27)、AWLCCLN(配列番号25)、NWLCCLA(配列番号26)、FWFCGAK(配列番号45)、FWFCGAA(配列番号46)、NWACCLN(配列番号47)、NWLACLN(配列番号48)、AWACCLN(配列番号49)、AWLACLN(配列番号50)、AWLCCLA(配列番号51)、NWAACLN(配列番号52)、NWACCLA(配列番号53)、NWLACLA(配列番号54)、AWAACLN(配列番号55)、AWACCLA(配列番号56)、AWLACLA(配列番号57)、NWAACLA(配列番号58)及びAWAACLA(配列番号59)から選択される、請求項15又は16に記載のポリペプチド。
【請求項19】
集団の各メンバーが請求項1、2又は3に記載のポリペプチドによって構成され、又は請求項1、2又は3に記載のポリペプチドを含み、前記ヘプタペプチド配列のみによって他のメンバーから区別される、相互作用分子の集団。
【請求項20】
前記集団が少なくとも100個の異なる分子、好ましくは少なくとも1000個の異なる分子を含むことを特徴とする、請求項19に記載の相互作用分子の集団。
【請求項21】
各メンバーが以下の配列:X1X2X3X4X5X6X7PGKKRRQRRRG(配列番号6)を含むことを特徴とする、請求項19に記載の相互作用分子の集団。
【請求項22】
各メンバーが以下の配列:
MSDQEAKPSTEDLGDKKEGEYIKLKVIGQDSSEIHFKVKMTTHLKKLKESYCQRQGVPMNSLRFLFEGQRIADNHTPKELGMEEEDVIEVYQEQTARPPNPKKEIELGGGGSX1X2X3X4X5X6X7PGKKRRQRRRG(配列番号7)を含み、又は
各メンバーが以下の配列:
MSDQEAKPSTEDLGDKKEGEYIKLKVIGQDSSEIHFKVKMTHLKKLKESYCQRQGVPMNSLRFLFEGQRIADNHTPKELGMEEEDVIEVYQEQTARGGGGSX1X2X3X4X5X6X7PGKKRRQRRRG(配列番号78)を含むことを特徴とする、請求項19から21の何れか一項に記載の相互作用分子の集団。
【請求項23】
請求項1から22に記載のポリペプチドのうち何れか一つをコードする配列を含む核酸分子。
【請求項24】
薬物として使用するための、請求項1から18の何れか一項に記載のポリペプチド。
【請求項25】
請求項1から18の一項に記載のポリペプチドを活性成分として含む、薬学的又は獣医用調製物。
【請求項26】
注射可能溶液の形態で梱包された、請求項25に記載の薬学的調製物。
【請求項27】
静脈内又は経口投与用の、請求項25に記載の薬学的調製物。
【請求項28】
他の動物種におけるHIV又は相同ウイルスによる感染を治療するための薬物を製造するための、請求項1から18の何れか一項に記載のポリペプチドの使用。
【請求項29】
i.請求項1から14及び19から22の何れか一項に記載の相互作用ポリペプチドを、前記細胞の存在下に置くことと;
ii.前記細胞の表現型の修飾を検出することと;
iii.必要に応じて、前記ポリペプチドのヘプタペプチドモチーフの配列を決定することと;
を含む、細胞の表現型を修飾することができるポリペプチドを同定するためのスクリーニング方法。
【請求項30】
「前記存在下に置くこと」が、前記細胞による相互作用ポリペプチドの合成であることを特徴とする、請求項29に記載のスクリーニング方法。
【請求項31】
「前記存在下に置くこと」がポリペプチドの細胞外添加であることを特徴とする、請求項29に記載のスクリーニング方法。
【請求項32】
細胞内スクリーニングであることを特徴とする、請求項29に記載のスクリーニング方法。
【請求項33】
細胞外スクリーニングであることを特徴とする、請求項29に記載のスクリーニング方法。
【請求項34】
インビボスクリーニング方法であることを特徴とする、請求項29に記載のスクリーニング方法。
【請求項35】
インビトロで実施される方法であることを特徴とする、請求項29に記載のスクリーニング方法。
【請求項36】
観察された表現型の変化がレポーター遺伝子によって誘導されることを特徴とする、請求項29に記載のスクリーニング方法。
【請求項37】
前記レポーター遺伝子がツーハイブリッドシステムのレポーター遺伝子であることを特徴とする、請求項36に記載のスクリーニング方法。
【請求項38】
i.請求項1から14又は19から22の何れか一項に記載のポリペプチドを作製することと;
ii.作製されたポリペプチドの存在下に標的を置くことと;
iii.ポリペプチドの前記標的との相互作用を検出することと;
iv.必要に応じて、ヘプタペプチドモチーフの配列を決定することと;
を含む、所定の細胞内標的と相互作用する分子を同定するために分子をスクリーニングする方法。
【請求項39】
前記相互作用が、例えば、ツーハイブリッドシステムを用いて、表現型の変化を観察することによって、又は存在物のアッセイによって検出される、請求項38に記載のスクリーニング方法。
【請求項40】
標的分子を含有する細胞を、請求項1から14の何れか一項に記載の相互作用ポリペプチドとインビトロで接触させることを含み、前記ポリペプチドが前記標的分子と相互作用するヘプタペプチドモチーフを有する、細胞内標的分子の特性を調節する方法。
【請求項41】
表現型スクリーニングにおけるプレイとしての、請求項23に記載の分子の使用。
【請求項42】
前記表現型スクリーニングがツーハイブリッドスクリーニングであることを特徴とする、請求項41に記載の使用。
【請求項43】
前記スクリーニングにおけるベイトがHIV−Revタンパク質又はそのドメインの一つをコードする配列を含むことを特徴とする、請求項42に記載の使用。
【請求項44】
前記スクリーニングにおけるベイトが7から15個のアミノ酸のドメインをコードする配列を含むことを特徴とする、請求項42に記載の使用。
【請求項45】
前記ドメインがNLS(核局在化シグナル)であることを特徴とする、請求項44に記載の使用。
【請求項46】
前記ドメインがNES(核外移行シグナル)であることを特徴とする、請求項44に記載の使用。
【請求項47】
前記NESがHIV−Revタンパク質のNESであることを特徴とする、請求項46に記載の使用。
【請求項48】
前記NESが以下の配列:LQLPPLERLTL(配列番号8)を有することを特徴とする、請求項46に記載の使用。
【請求項49】
i.請求項1から14又は19から22の何れか一項に記載の相互作用ポリペプチドの存在下に標的分子を置くことと;
ii.前記標的分子と前記相互作用ポリペプチド間の相互作用を検出することと;
iii.候補分子を添加することと;
iv.前記標的分子と前記相互作用ポリペプチド間の相互作用に対する修飾を検出することと;
を含む、分子内標的分子と相互作用できる候補分子をスクリーニングする方法。
【請求項50】
前記標的分子と前記相互作用ポリペプチド間の前記相互作用が、例えばツーハイブリッド試験において、レポーター遺伝子を使用することによって観察される、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記標的タンパク質がRevタンパク質であり、前記相互作用ポリペプチドが請求項15から18の何れか一項に記載のポリペプチドである、請求項49又は50に記載の方法。
【請求項52】
i.19から22の何れか一項に記載のポリペプチドの集団の異なるメンバーをコードする配列を含む核酸分子を作製することと;
ii.標的分子をベイトとして含む、酵母ツーハイブリッドシステムを用いて前記分子をスクリーニングすることと;
iii.相互作用を検出することと;
iv.必要に応じて、ヒト細胞における相互作用を確認することと;
を含む、細胞内標的分子の特性を調節することができる分子を同定する方法。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2008−500267(P2008−500267A)
【公表日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−530409(P2006−530409)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【国際出願番号】PCT/FR2004/002479
【国際公開番号】WO2005/033147
【国際公開日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【出願人】(500174661)サントル・ナショナル・ドゥ・ラ・レシェルシュ・サイエンティフィーク−セ・エン・エール・エス− (54)
【出願人】(506107634)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【国際出願番号】PCT/FR2004/002479
【国際公開番号】WO2005/033147
【国際公開日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【出願人】(500174661)サントル・ナショナル・ドゥ・ラ・レシェルシュ・サイエンティフィーク−セ・エン・エール・エス− (54)
【出願人】(506107634)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]