説明

ヘミセルロースを含む高分子フィルムまたはコーティング

50,000グラム/モル未満の分子量を有するヘミセルロースおよび可塑剤からなるグループから選択される少なくともひとつの構成要素、セルロースそして合成低重合体を含む構成を形成するフィルム、および高分子化合物のフィルム、またはコーティングが開示される。酸素防壁としての前記フィルムまたはコーティングの使用法も開示される。さらに、前記高分子化合物のフィルムまたはコーティングの製造に関する方法も、50,000グラム/モル未満の分子量を有するヘミセルロースのフィルム形成特性を改良する方法と合わせて開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はヘミセルロースを含むフィルム形成組成および高分子化フィルムまたはコーティングに関する。これはまた酸素の防壁としての前記フィルムまたはコーティングの使用にも関係する。さらに、本発明はヘミセルロースのフィルム形成特性の改良方法と合わせて、ヘミセルロースを含む高分子フィルムまたはコーティングの製造方法に関係する。
【発明の背景】
【0002】
包装用のプラスチック材料の大半は今日石油をベースとしている。しかしながら、地球上の化石資源は限られている。焼却は温室効果を増すことになるだけでなく、これらの材料は一般的に分解可能ではない。将来の持続可能な発展は再生可能な原材料の利用への転換を必要としている。
【0003】
多くの食品包装利用において、酸素の侵入に起因する芳香性化合物の酸化が製品の品質と香りを低下させるので、酸素から食品を保護することが重要である。この点は酸素に対する浸透性が低い防壁材料を使用して行なわれることができる。さらに、当該材料は柔軟で、機械的耐力があり、透明かつ低コストであることが望ましい。
【0004】
EVOH(エチレン・ビニル・アルコール)およびPVOH(ポリビニル・アルコール)が良好な防壁特性を示す合成高分子の例である。
【0005】
最近、再生可能な原材料をベースとした酸素防壁が得られるような研究が行なわれている。タンパク質あるいは澱粉やセルロースのような多糖類をベースとしたフィルム類が、酸素に関して良好な防壁となることが示されている。これらの材料のひとつの欠点は水に対する感度である。周囲の相対湿度が増すとき酸素浸透性も増してしまう。
【0006】
へミセルロースは大半が植物でバイオ合成される多糖類であり、これらはセルロース微小繊維間に存在するマトリックス材料として、またリグニンとセルロースとを結び付ける物として作用する。
【0007】
へミセルロースは商業的には食品の甘味添加剤、増厚剤そして乳化剤として使用されてきた。これまで、へミセルロースの非食品利用は極めて限られてきている。例えば、これらは高分子材料の調製用にはまだ商業的には利用されていない。
【0008】
ヘミセルロースをベースとしたフィルムの特性はこれまでほとんど検討されたことがない。概して、ヘミセルロースはばらばらになるか、あるいは極めてもろいフィルムになるかどちらかの貧弱なフィルム形成特性を示す。しかしながら、フィルム形成特性はヘミセルロースの構造とともに変動するので、つまりはその天然材料の産出元と抽出方法次第で変動する。防壁材料として適切であるためには当該フィルム形成特性が改良されなくてはならない。
【0009】
PCT/WO02/06411には、ある植物保護剤を含有するあるフィルム形成組成の調製用のヘテロキシランの使用が公開されている。PCT/WO02/06411の目的は種子または農業製品に植物保護剤を加えるのに有用な組成を提供することである。このように、ヘテロキシランを組込む目的は植物保護剤の応用に関するフィルム形成組成を得ることである。
【0010】
PCT/WO02/06411に用いられるヘテロキシランの分子量は100,000から250,000グラム/モル.の範囲である。高分子量のへミセルロースの使用は比較的高い粘性を有する組成を生み出し、この点が組成を実用的に取り扱うことを困難にする。
【0011】
米国特許第6 004 616号では、水溶性へミセルロースをフィルムの形にすることによって、生分解フィルムが得られる。用いられるヘミセルロー
スは平均分子量が50,0000から1,000,000の範囲にあり、好ましくは100,000から400,000の範囲にある。改めて、この高分子量のものは高粘性に起因する取扱い上の問題を呈する。
【0012】
さらに、米国特許第6 004 616号で説明されているフィルムの厚さは乾燥状態で0.1ミリである。このように、当該フィルム類は比較的厚く、この点によりフィルムの製造には多くの材料の消費が必要とされる。その結果として材料コストが極めて高くなる。
【0013】
このように、低い酸素浸透性を有する望ましい特性を示して上述の問題を克服する生分解性フィルム形成の組成に関するニーズがある。
【本発明の概要】
【0014】
従って、本発明の目的は分子量50,000グラム/モル未満のヘミセルロースをベースとした柔軟性のあるフィルムまたはコーティングを提供することにある。
【0015】
もうひとつの目的はフィルム形成組成とともに、酸素防壁として利用できる分子量50,000グラム/モル未満を有するヘミセルロースをベースにしたフィルムまたはコーティングを提供することにある。
【0016】
これらの目的は分子量50,000グラム/モル以下を有するヘミセルロースを可塑剤、セルロースとオリゴマーあるいはポリマーからなるグループから選択される少なくともひとつの構成要素と混合するとともに、これからフィルムまたはコーティングを形成することによって行われる。これによって形成される高分子フィルムまたはコーティングは酸素防壁としても使用可能である。
【0017】
分子量50,000グラム/モル以下を有するヘミセルロースの使用は、フィルムあるいはコーティングの準備のために非常に大量のヘミセルロースが、原材料として使用されることを可能にならしめるので有利である。さらに、より低い分子量を有する分子を抽出するのに利用可能なより多くの抽出方法がある。
【0018】
本発明に関するさらなる利点のひとつは製造されるフィルムまたはコーティングの優れた酸素防壁特性である。測定された酸素透過性は、市販使用されている防壁EVOHに関するものと澱粉フィルムに関するものと同じ範囲にあった。
【0019】
本発明のもうひとつの利点は製造されるフィルムまたはコーティングの機械特性が、可塑剤、セルロースあるいは他のポリマーあるいはオリゴマーとのブレンドの様々な量やタイプの添加によって制御が可能である点である。
【0020】
さらにもうひとつの利点は本発明の原材料が再生可能であるとともに、バイオマスから抽出できる点である。
【0021】
バイオ合成高分子化合物をベースとした材料はいくつかの環境上の利点がある。それらの使用後、これらの材料は空気中の二酸化炭素の純増にはならならず、さらにそれらの多くは生分解性があるとともに、これらは堆肥化によって処理され得る。
【発明の詳細な説明】
【0022】
本発明に至る研究作業の中で、ヘミセルロースをベースとした密着性のあるフィルム、特に、「ペントサンを多く含む多糖類」例えばキシランが優れた酸素防壁特性を示すことが示された。分子量が50,000グラム/モル未満のヘミセルロースが、酸素防壁として使用できるフィルムを調製する目的で利用可能であることが判明したのは驚くべきことであった。
【0023】
ヘミセルロースは分子量の高いものから低い高分子化合物に置換/分岐される。これらは様々な部分と色々な置換基で配列された種々の糖単位から構成される。ペントサンを多く含む多糖類は普及しているペントーズの含有量がありヘミセルロースの最大グループを構成する。
【0024】
ここで使われる通り、「ペントサンを多く含む多糖類」は、ペントサン含有量が少なくとも重量で20%、そしてキシロース含有量も重量で少なくとも20%を有する多糖類のことを言い、例えば多糖類とは重量で40%から80%のペントサン含有量で、かつ重量で40%から75%のキシロース含有量のものである。
【0025】
ペントサンを多く含む多糖類、特にキシランは、これらが湿度にそれほど敏感でないので、本発明による利用には最も好ましい合成物である。しかしながら、例えば、グルコマンナン、ガラクトグルコマンナンまたはアラビノガラクタンといった他の種類のヘミセルロースが、本発明により用いられることが可能である。
【0026】
ヘミセルロース、特にキシランは、本発明による使用に関しては50,000グラム/モル未満の分子量がある。有利なのは、ヘミセルロースが8,00グラム/モルを越える分子量であることである。例えば、ヘミセルロースは8,000から50,000グラム/モル、8,000から48,000グラム/モルまたは8,000から45,000グラム/モル.の範囲の分子量があれば良い。
【0027】
ヘミセルロースの分子量のその他の例は8,000から15,000グラム/モル、8,000から14,000グラム/モル、8,000から13,000グラム/モル、8,000から12,000グラム/モル、 あるいは特別に8,000から11,000グラム/モルである。多くの産出元からのヘミセルロースが使用可能なうえに抽出操作が単純化されるので、低分子量の使用はひとつの利点である。
【0028】
ヘミセルロースの分子重量のその他の例は、15,000から50,000グラム/モル、20,0000から50,000グラム/モル、15、000から48,000グラム/モル、20,000から48,000グラム/モル、15,000から45,000グラム/モル、または特別に20,000から45,000グラム/モル、あるいは20,000から40,000グラム/モルである。多少高めの分子量の使用はフィルム形成を容易にする。もし、さらに高い分子量のものが使用される場合には、高粘性がフィルムやコーティングの製造のためのヘミセルロースの使用が複雑になる可能性があるとともに、抽出方法は相当制約を受ける。
【0029】
キシランは木、穀類、草および薬草といったバイオマス内に存在しており、これらは植物界で二番目に豊富なバイオ高分子化合物であると考えられている。バイオマスの様々な出所でキシランを他の成分から分離するために、水および含水アルカリを使う抽出法が利用可能である。キシランはまたシグマ化学会社のような発売元で市販されている。
【0030】
キシランはヘテロキシランおよびホモキシランのサブグループに分割される。ホモキシランおよびヘテロキシランの化学構造は異なる。ホモキシランはキシロース残基の骨格を持つとともに、あるグルクロン酸または4−0−メチルグルクロン酸の置換基を持つ。ヘテロキシランはまたキシロース残基の骨格をもつが、グルクロン酸、または4−0−メチルグルクロン酸ばかりでなく、アラビノース残基とも広く置換されるホモキシランとは対照的である。ヘテロキシランに伴うホモキシランの利点はホモキシランかなり高度に結晶化することである。結晶構造がガスの透過性および湿気の感受性の両方を減少させる。
【0031】
本発明により使用可能なホモキシランの例はグルクロノキシランである。
【0032】
本発明により使用可能なヘテロキシランの例はアラビノキシラン、グルクロノアラビノキシランとアラビノグルクロノキシランである。
【0033】
任意のバイオマスあるいは市販品からのキシランは、本発明によるフィルムあるいはコーティングを製造するのに使用可能である。密着性のあるフィルムあるいはコーティングを得るにはフィルム形成は必要な補強法である。
【0034】
ヘミセルロース特にキシランのフィルム形成組成は様々な戦略によって達成されることが可能である。
【0035】
これを行うひとつの方法は、低分子量可塑剤を加えることである。密着の良いフィルムを用意するもうひとつの方法は細かく分割したセルロースを加えることである。フィルムを得るための三番目の手順は、キシランを別の低重合体あるいは高分子化合物とブレンドすることによるものである。より良いフィルム形成特性を得るための戦略は、様々な分子重量または構造のヘミセルロースを混合することである。前述の戦略のひとつあるいはひとつ以上の組合せを用いることも可能である。
【0036】
フィルムまたはコーティングはペントサンを多く含む多糖類の水溶液の投入または分散によって調合が可能である。別の溶剤類が本発明の溶剤類として使用が可能であるが、水が最も好まれる溶剤である。
【0037】
ここで用いられるように、「フィルム」という表現は1枚の独立したシートのことを言い、例えば食品あるいは薬剤の包装用に使われ得るもののことを言う。
【0038】
ここで用いられるように、「コーティング」という表現はひとつの酸素防壁層を提供するためのカートンと一体化可能な遮蔽層のことを言う。
【0039】
本発明によるフィルムまたはコーティングは100マイクロメーター以下の厚さを有する。特に、フィルムまたはコーティングは50マイクロメーター以下の厚さにすることも可能であるか、あるいはさらに特別にフィルムまたはコーティングが10マイクロメーター以下の厚さにすることも可能である。
【0040】
極めて薄いフィルムが本発明により作成が可能であることが判明したのは予想外であった。例えば、フィルムまたはコーティングは2マイクロメーターあるは1マイクロメーターの厚さでしかも望まれる特性をもつことが可能である。
【0041】
ここで使用される「可塑剤」という表現は低分子量の物質に関係し、これは材料の柔軟性を増加させる。使用可能な可塑剤の例は水、グリセロール、キシリトール、ソルビトールおよびマルチトールのような砂糖類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、グリセリン及び尿素である。
【0042】
可塑剤の内容は乾燥重量で1%から60%、例えば、乾燥重量で20から50%の範囲にあるのが適切である。
【0043】
フィルム形成特性を改善するために添加するセルロースは、木綿、木および農業残留物あるいは商業上の発生源のような任意のバイオマスから発生させたり、あるいはバクテリアによって生み出されることが可能である。セルロースは細かく分割されるのが好ましい。細かく分割されたセルロースの内容は乾燥重量で1%から90%の範囲にあり、例えば乾燥重量で50%から75%の範囲にあるのが適切である。
【0044】
添加される高分子ポリマーまたはオリゴマーは任意のタイプのものが可能である。
【0045】
例えば、密着の良いフィルムを得るために添加する高分子ポリマー、またはオリゴマーは、様々な分子量のポリビニルアルコールである。高分子ポリマー、またはオリゴマーの内容は、乾燥重量で1%から90%の範囲で例えば乾燥重量で20%から75%の範囲にあるのが適切である。
【0046】
この申請を通じて用いられる「酸素防壁」という表現によって、酸素に対する低浸透性をもつ材料を意味する。酸素防壁は例えば食品あるいは薬品といった物質を酸素に露出することから保護するために用いることが可能である。
【0047】
本発明による高分子フィルム、あるいはコーティングは、食品包装または薬剤包装のひとつの酸素防壁として用いることができる。
【0048】
さらに、本発明による高分子フィルム、あるいはコーティングは、ひとつの酸素防壁のもの例えば、カートンやペーパーで恐らくは耐水性材料と組合わせて用いることができる。
【0049】
本発明のフィルムあるいはコーティングは薬物送達、食用フィルムおよびその他高分子化合物の利用分野向けに使用できる。
【実施例1】
【0050】
この実施例はキシランをベースとしたフィルムの製造を説明する。ここで、フィルム形成特性は低分子量可塑剤キシトールを用いて改善された。添加キシトール(乾燥重量)を20%、27.5%、35%、42.5%および50%を含む一連のフィルムが調査された。全重量1グラムのヤマナラシからキシトールとグルーコロノキシランの混合物が95℃の水35ミリリットルに15分間溶解された。溶液はその後14センチの直径のポリスチレンペトリ皿に注入された。23℃および50%の相対湿度で2日から3日間乾燥後、透明かつ多少柔軟性のあるフィルムが得られた。
【0051】
グルクロノキシランのグラム分子量が、移動相として0.05 M LiBr のDMSO水(90:10)のサイズ除外クロマトグラフィーを用いて測定された。次のPSS(ポリマー標準サービス)のコラムセット:GRAM 30,100,3000(8x300ミリ)、およびガードコラム(8x50ミリ)が用いられた。フロー率は60℃で0.4ミリリットル/分であり、装置圧は58バールという結果となった。サンプル類はシェイカー中の抽出溶剤の中に室温で24時間溶解されるとともに、再生セルロース薄膜(0.45マイクロメーター)を用いて濾過された。
【0052】
RI検知器(ショデックス社 RI−71)、2角度レーザー光散乱検知器(プレシジョンディテクター社 PD2000)および粘度計測検知器(ヴィスコテック社 H502)が検知用に用いられた。データはPSSのWINGPC6.0のソフトウエアを用いて集められ計算された。グラム分子量データは粘性率とプルラン標準 (PSS)を用いて汎用キャリブレーションによるRI信号から計算された。得られたグラム分子量は15,000グラム/モルであった。
【0053】
フィルムの機械特性は能力100Nのロードセル付きの引張試験機(ロイド社 L2000R)を用いて測定された。サンプルは幅1.5センチの犬骨形状片に切断された。サンプルの厚さはマイクロメーターで計測され30から40マイクロメーターであった。取手間の当初距離は20ミリで、取手の分離率は毎分5ミリ(例1,2,および7)または毎分10ミリ(例4)で一定であった。各材料から少なくとも5つの複製が試験された。各サンプルに関して、応力歪曲線が記録され破断時応力および破断時歪が計算された。
【0054】
フィルムの酸素透過度は電気分析酸素感知器を用いたモコン社 オキストラン2/20設備で計測された。サンプルの面積は5平方センチであり分析は相対湿度50%で行われた。酸素透過度は酸素移動量とフィルムの測定厚から計算され、(cm・μm)/・(md・kPa)、 但し、d = 24時間の単位で示された。
【0055】
フィルムの結晶度は広角X線散乱装(WAXS)置を用いて調査された。フィルムは液体窒素を用いて微粉に粉砕され、サンプルはシーメンス社 D5000回折計で調査された。1.54 Aの波長を持つCuKα放射用いられた。2θは5度と30度の間で変化させた。



柔軟性は添加する可塑剤の量を増やすとともに増加した。すべてのフィルムは半結晶であり、結晶度はキシトールの添加によって殆ど影響されなかった。
【実施例2】
【0056】
この実施例はキシランをベースとしたフィルムの製造を説明する。ここで、フィルム形成特性は低分子量可塑剤ソルビトールを用いて改善された。キシリトールの代わりの可塑剤としてソルビトールが用いられるとともに、3つのレベルすなわち、20%、35%そして50%の可塑剤が含まれるシリーズのものが調査された点を除いて実施例1におけるのと同様の手順が用いられた。



フィルムの柔軟性はソルビトールの量を増やすと増加した。ソルビトールの添加はフィルムの相対結晶度にわずかな効果しかなかった。
【実施例3】
【0057】
この実施例はキシラン、およびポリビニルアルコールから作られるフィルムの製造を説明する。ポリビニルアルコール(mw 20000)の0.75グラムがキシラン0.25グラムと混合された以外は実施例1におけるのと同様な手順が用いられた。柔軟性のあるフィルムが形成された。測定されたフィルムの酸素透過度は0.18(cm μm)/ (md kPa). であった。
【実施例4】
【0058】
この実施例はキシランと細かく分けられたセルロースから作られるフィルムの製造を説明する。
【0059】
95℃で15分間水20ミリリットルに溶解されたグルクロノキシラン0.37グラムが120ミリリットルの水に均質化されたバクテリアセルロース1.13グラムが添加された。混合物は30分間反応させた。生じたゲルはポリスチレンの直径14センチのペトリ皿に注入されるとともに、50℃で48時間乾燥させた。乾燥後、柔軟性のあるフィルムが得られた。本発明により製造されたフィルムは102.8MPaの破断時応力、破断時歪3.1%および0.225(cm μm)/ (md kPa)の酸素透過度を示した。
【実施例5】
【0060】
この実施例はキシランをベースとしたフィルムの製造を説明する。ここで、キシランはカラスムギ、スペルトコムギ、大麦殻またはアマのような農業残留物から得られ、アラビノキシラン1グラムが95℃の水35ミリリットルに15分間溶解された。溶液はそれからポリスチレンの直径14センチのペトリ皿に注入された。
【0061】
相対湿度50%、23℃で2日から3日間乾燥させた後、柔軟性のあるフィルムが得られた。
【0062】
この場合、水は好ましい可塑剤である。
【0063】
水以外の別の可塑剤の添加をせずに、アラビノキシランのフィルムを得る可能性があるのは非常に有利でありかつ本発明の意外な側面でもある。
【0064】
マイクロメーターで測定されたフィルムの厚さは30から40マイクロメーターである。
【0065】
アラビノキシランのグラム分子量は実施例1で説明したようにサイズ除外クロマトグラフィーを用いて測定される。得られたグラム分子量は34、000グラム/モルであった。
【0066】
フィルムの酸素透過度は電気分析酸素感知器を用いたモコノキシトラン2/20設備で計測された。サンプルの面積は5平方センチであり、分析は相対速度50%で行われた。酸素伝達量とフィルムの測定厚から計算された酸素透過度は0.19(cm μm)/ (md kPa)、.但し、d = 24時間であった。
【実施例6】
【0067】
この実施例はキシランをベースとしたコーティングの製造を説明する。ソルビトール0.105グラムとヤマナラシからのグルクロノキシラン0.195グラムとの混合物が、95℃の水30ミリリットル中に15分間溶解された。溶液はそれからポリスチレンの直径14センチのペトリ皿中でプラスチックフィルムに注入された。23℃および相対湿度50%で2日から3日間乾燥させた後、プラスチックフィルム上のキシランのコーティングが得られた。
【0068】
グルクロノキシランのグラム分子量は実施例1に説明されるようにサイズ除外クロマトグラフィーを用いて計測される。得られたグラム分子量は15,000グラム/モルであった。
【0069】
コーティング厚はマイクロメーターを用いて測定されたキシランコーティング付きのプラスチックフィルムの厚さからプラスチックフィルムの厚さを差し引くによって得られた。得られたコーティングの厚さは1マイクロメーターであった。
【実施例7】
【0070】
この実施例はグルコマンナンをベースにしたフィルムの製造を説明する。ここでフィルム形成特性は低グラム分子の可塑剤ソルビトールを用いて改善された。ソルビトール無しのフィルムおよび添加ソルビトールの20%(乾燥重量)を含むフィルムが調査された。全重量0.2グラムのソルビトール、およびグルコマンナンの混合物が95℃の水20ミリリットルに15分間溶解された。溶液はその後、ポリスチレンの直径9センチのペトリ皿に注入された。相対湿度50%、23℃で2日から3日間乾燥させた後、透明で多少柔軟性のあるフィルムが得られた。
【0071】
フィルムの機械特性が実施例1により測定された。マイクロメーターで測定されたサンプルの厚さは60から70マイクロメーターであった。




柔軟性は可塑剤の添加で増加した。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
50,000グラム/モル未満のグラム分子量と可塑剤、セルロースおよびひとつのオリゴマーまたはポリマーからなるグループから選択される少なくともひとつの成分を有するヘミセルロースを含む高分子化合物フィルムあるいはコーティング
【請求項2】
前記ヘミセルロースが8,000グラム/モルを越えるグラム分子量を有する請求項1による高分子フィルムあるいはコーティング
【請求項3】
前記ヘミセルロースが15,000から48,000グラム/モルの範囲のグラム分子量を有する請求項2による高分子のフィルムあるいはコーティング
【請求項4】
前記ヘミセルロースが8,000から15,000グラム/モルの範囲のグラム分子量を有する請求項2による高分子のフィルムあるいはコーティング
【請求項5】
前記ヘミセルロースがペントサンを多く含みむ多糖類ポリサッカライドである請求項1から請求項4までのいずれかひとつによる高分子フィルムあるいはコーティング
【請求項6】
前記ペントサンを多く含む多糖類がキシランである請求項5による高分子フィルムあるいはコーティング
【請求項7】
前記キシランがホモキシランである請求項6による高分子フィルムあるいはコーティング
【請求項8】
前記ホモキシランがグルクロノキシランである請求項7による高分子フィルムあるいはコーティング
【請求項9】
前記キシランがヘテロキシランである請求項6による高分子化合物のフィルムあるいはコーティング
【請求項10】
前記ヘテロキシランがアラビノキシラン、グルクロノアラビノキシランおよびアラビノグルクロノキシランから選択される請求項9による高分子フィルムあるいはコーティング
【請求項11】
前記ヘミセルロースがグルコマンナン、ガラクトグルコマンナンおよびアラビノガラクタンからなるグループから選択される請求項1から請求項4までのいずれかひとつによる高分子フィルムあるいはコーティング
【請求項12】
前記可塑剤がソルビトールである請求項1から請求項11までのいずれかひとつによる高分子フィルムあるいはコーティング
【請求項13】
前記可塑剤がキシリトールである請求項1から請求項11までのいずれかひとつによる高分子フィルムあるいはコーティング
【請求項14】
前記可塑剤が水である請求項1から請求項11までのいずれかひとつによる高分子フィルムあるいはコーティング
【請求項15】
前記低重合体あるいは高分子化合物がポリビニルアルコールである請求項1から請求項14までのいずれかひとつによる高分子フィルムあるいはコーティング
【請求項16】
フィルムあるいはコーティングが100マイクロメーター以下の厚さである請求項1から請求項15までのいずれかひとつによる高分子フィルムあるいはコーティング
【請求項17】
フィルムあるいはコーティングが10マイクロメーター以下の厚さである請求項16による高分子フィルムあるいはコーティング
【請求項18】
酸素防壁としての請求項1から請求項17までのいずれかひとつによる高分子フィルムあるいはコーティングの使用法
【請求項19】
可塑剤、ヘミセルロースおよびオリゴマーあるいはポリマーからなるグループから選択される少なくともひとつの成分とともに50,000グラム/モル未満のグラム分子量をもつヘミセルロースを含むとともに、フィルムあるいはコーティングを形成する高分子フィルムあるいはコーティングの製造方法
【請求項20】
前記ヘミセルロースと可塑剤、セルロースおよびひとつの低重合体あるいは高分子化合物からなるグループから選択される少なくともひとつの成分と混合させることを含む50,000グラム/モル未満のグラム分子量を有するヘミセルロースのフィルム形成特性を改善する方法
【請求項21】
50,000グラム/モル未満のグラム分子量を有するヘミセルロースおよび可塑剤、ヘミセルロースおよびひとつのオリゴマーあるいはポリマーからなるグループから選択される少なくともひとつの成分を含むフィルム形成組成




【公表番号】特表2006−520843(P2006−520843A)
【公表日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−507971(P2006−507971)
【出願日】平成16年3月18日(2004.3.18)
【国際出願番号】PCT/SE2004/000413
【国際公開番号】WO2004/083286
【国際公開日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(505314251)キロファン アクティエボラグ (1)
【Fターム(参考)】