説明

ヘルペスの治療のためのPVP−ヨウ素リポソームの使用

本発明は、特定の担体と会合した、少なくとも一つの防腐薬化合物を含むことを特徴とする、ヘルペス形態治療用の薬学的製剤の製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘルペスの治療のためのPVP−ヨウ素リポソームの使用に関する。本発明はまた、薬学的に許容される粒子状担体と併せて、薬学的に有効な量の少なくとも一つの防腐薬化合物を含む、ヘルペスウイルス誘発性皮膚障害の治療用の薬学的製剤の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
用語「ヘルペス」は、通常、小型有痛水疱の形成により生じる皮膚及び粘膜のウイルス性炎症性状態を指す。一般にはヘルペスという一般名で通っているこのウイルス感染性状態は、ヘルペスウイルス群のうちの2つの異なるウイルス型、すなわち単純疱疹ウイルス及び帯状疱疹ウイルス、によって本質的に引き起こされる。
【0003】
単純疱疹ウイルス(HSV)は、通常は口の粘膜経由(主としてHSV1型)又は生殖器経由(主としてHSV2型)で神経細胞の末端に感染する包膜方形DNAウイルスである。これらは、神経節内の神経細胞体への逆行性軸索内輸送により神経細胞内に輸送される。1日から2日後、活性増殖性感染が始まり、それが4日目にピークに達して、6日目以降から(おそらく、細胞防御メカニズムにより)最小に制限される。皮膚の刺激及び水疱形成の初期症状は、感染後6日目以降から現れるが、ウイルスの分泌は、10日目まで続く。
【0004】
皮膚及び粘膜感染が治癒した後でさえ、ウイルスは、神経細胞内に残存している。多くの場合、例えば日光への暴露、発熱、ホルモンの影響、免疫防御の一般的弱化、腹痛及び胃腸疾患、月経並びに外傷などのストレスをもたらす因子に起因して、ウイルスの再活性化及びそれに応じて新たな皮膚刺激が発生する。単純疱疹ウイルス1型及び2型の感染に起因するこれらの再発症状は、熱性疱疹(Herpes febrilis)、日光性疱疹(Herpes solaris)、月経性疱疹(Herpes menstrualis)及び外傷性疱疹(Herpes traumatica)などのように、対応する誘発事象の名を採って命名されてもいる。HSVウイルス1型及び2型は、角膜疱疹(herpes corneae;ヘルペス性角膜炎(Keratoconjunctivitis herpetica)としても知られている)の発生原因でもある。重症形態の角膜疱疹は、円盤状角膜混濁を随伴する内皮攻撃を特徴とする。
【0005】
罹患する体の部位に依存して、ヘルペスウイルスに誘発された種々の状態を口唇疱疹(Herpes labialis)、陰部疱疹(Herpes genitalis)又は角膜疱疹と呼ぶこともある。
【0006】
通常、例えばガンシクロビルなどのヌクレオシド類似体が、HSV1型又はHSV2型により誘発されるヘルペス形態の治療において使用される。これらのヌクレオシド類似体は、HSV−チミジンキナーゼにより毒性産物に代謝され、最終的にはそれが感染細胞の死滅を導く。しかし、ヌクレオシド類似体の使用は、これらの化合物が複製細胞のDNAに組み込まれることもあり、そのようにして突然変異誘発因子の機能を果たすことがあるという主要な欠点を有する。さらに、ヌクレオシド類似体の使用は、ヘルペス状態の症状の原因を除去すること、すなわち、ウイルス感染の急激な発生及び蔓延を抑制することのみを目的とする。それらの症状の有効な治療、すなわち有痛水疱の治癒は、これらの化合物ではできない。ヌクレオシド類似体を使用するそれらの症状の改善は、どちらかと言えば長期的な結果である。
【0007】
一般には帯状ヘルペスとしても知られている帯状疱疹は、水痘−帯状疱疹ウイルス(VZV)によって引き起こされる。VZVでの一次感染は、体全体にわたる痒い水疱を伴う発疹を導き、その後、それがかさぶたになり、瘢痕になる(水痘)。このウイルスも、素因のある人々の神経節細胞に残存する。その水痘の治癒から数年又は数十年後、帯状疱疹が、一定の神経の供給領域、特に胸部に、極度に痛い水疱を形成する形での前記状態の局所的再発生として、再発することがある。この場合にも、ヌクレオシド類似体が治療に使用される。
【0008】
陰部疱疹の治療に関して言えば、特に関連するヌクレオシド類似体の上述の欠点のため、ヘルペスウイルス感染を有効に治療することができるさらなる抗ウイルス薬が強く必要とされている。
【0009】
その傑出した抗ウイルス特性のため特に注目に値する、ヘルペスの状態を治療するための1つの化合物は、ポビドンヨードである。このヨウ素放出性防腐薬は、ポリビドン−ヨウ素又はPVP−ヨウ素、すなわち、ポリ(1−ビニル−2−ピロリジン−2−オン)−ヨウ素複合体としても知られている。PVP−ヨウ素は、数ある中でも、その適用が細菌又はウイルス耐性の発現を導かないという基本的な利点を有する。
【0010】
ヘルペス感染を治療するためのPVP−ヨウ素の使用に関する様々な試みが、先行技術から知られている。早くも1975年に、フリードリッヒ(Friedrich)ら(Obstetrics and Gynecology, 45, 337-339)は、(米国では)Betadine又は(欧州では)Betaisadonnaという名で市販されているPVP−ヨウ素アルコール溶液の、陰部疱疹感染中に出現するような症状の治療に対する効果を研究した。前記Betadine溶液は、病変の改善及び痒みの低減を導くことが証明された。この先行技術文献は、前記Betadine溶液の適用によって陰部疱疹の症状の治癒が1週間以内に達成されたと述べている。しかし、この研究では対照群を調査していないので、前記Betadine溶液の有効性の評価は困難である。
【0011】
1979年に行われたブルラウ(Bullough)らが行った研究(Curr. Med. Res. Opin., 6, 175-177)も、陰部疱疹に苦しんでいる患者を治療するための10% PVP−ヨウ素アルコール溶液の有効性を扱ったものである。陰部病変は、6から8日以内に治癒した。しかし、場合によっては2週間後にしか改善を観察することができなかった。この場合も、対照グループが無いので、そのBetadine防腐塗布溶液の有効性の評価は困難である。
【0012】
1977年にウッドブリッジ(Woodbredge)らが行った研究(J. Int. Med. Res., 5, 378-382)も、10% PVP−ヨウ素を含有する防腐性のBetadine溶液の効果を扱ったものである。単純疱疹ウイルス1型又は帯状疱疹の感染に苦しんでいる患者を治療した。単純疱疹患者の症状の改善を1週間以内に観察することはできなかった。その改善を非常に良好と評価した18%の患者に対して、13%の患者は、観察された改善を平均から不良と評価した。帯状疱疹の患者の25%しか、その結果を非常に良好と評価しなかった。
【0013】
1997年からのシモンズ(Simmons)らの研究(Dermatology, 195 (suppl. 2), 85-88)も、口唇疱疹の治療におけるBetadine PVP−ヨウ素アルコール溶液の有効度を研究したものである。この研究は、上に挙げた先行技術文献とは異なり、対照群を用いたものなので、前記Betain溶液の有効度に関して信頼できる言及をなすことができるため、抜きん出ている。培養物においてウイルス感染を誘発する能力に関する前記Betadine溶液の有効度は、Betadine治療前後のスミア試験の比較を基に判断された。
【0014】
調査した他の化合物と比較して、口唇疱疹をBetadine溶液で、そのBetadine溶液での治療後に口唇疱疹の水疱において殆んどウイルス病原体を検出できない程度にまで良好に治療することができることが証明された。そのBetadine溶液を用いて、60から64%の症例で、検出可能な単純疱疹ウイルスの放出を停止すことができた。しかし、この先行技術は、症状の治療効率、すなわちそのBetadine溶液が前記水疱の治癒を促進したかどうか、痒みを軽減したかどうかに関する情報の提供がない。この先行技術では、帯状疱疹ウイルスによって引き起こされるような皮膚刺激に対するそのBetadine溶液の有効性などへの言及もなされていない。変化したウイルス量に関する言及、すなわち、Betadine治療後の患者の有痛症状の改善に関するものではなく、ヘルペス状態の原因に関する言及のみがなされている。
【0015】
通常は褐色である上述の石鹸溶液は、治療した皮膚が着色斑を示すことがあるというさらなる欠点を有する。徹底洗浄によりその着色を取り除くことができるとしても、敏感で、既に損傷している皮膚領域を治療すべき場合には、これは受け入れられない。
【0016】
上述の先行技術文献に加えて、水溶液又はアルコール溶液、いずれかの形態でのPVP−ヨウ素溶液の単純疱疹ウイルスに対する効果も立証している多数の研究がある。しかし、抗ウイルスの有効性の証拠は、インビトロ試験系においてウイルス病原体を不活性化するPVP−ヨウ素溶液の能力と常に関連している。多くの場合患者にとって主観的により重要である、皮膚障害及び痒みのような症状を治療するためのこれらのPVP−ヨウ素溶液の有効性は、先行技術文献では扱われていない。
【0017】
カワナ(Kawana)らは、ヒトウイルスの不活性化中の種々の防腐薬化合物の比較を記載している((1997), Dermatology, 195 (suppl. 2), 29-35)。この文献の教示は、PVP−ヨウ素は、水溶液としてウイルス浮遊液と混合したとき、有効な抗ウイルス化合物であるというものである。この処理後、ウイルス浮遊液は、限られた程度にしか細胞系を感染させることができない。単純疱疹ウイルスによって引き起こされる皮膚障害の治療に関するPVP−ヨウ素製剤の影響は、この文献では論じられていない。帯状疱疹ウイルスによって引き起こされる水疱の治癒に対するPVP−ヨウ素の影響も扱われていない。
【0018】
1990年からのベネベント(Benevento)らによる論文(American jurnal of Ophthalmology, 109, 329-333)は、単純疱疹ウイルス2型に対する様々な濃度のPVP−ヨウ素溶液の有効性を記載している。この先行技術もPVP−ヨウ素のインビトロ抗ウイルス活性しか扱っていない。測定されたのは、単純疱疹ウイルス上清の感染力を低下させる能力に関するPVP−ヨウ素溶液の抗ウイルス活性であった。単純疱疹ウイルス及び帯状疱疹ウイルスによって引き起こされる皮膚の状態の治癒に対するPVP−ヨウ素溶液の影響は、この先行技術文献では扱われていない。
【0019】
リポソームは、既知の薬学的化合物担体であり、リポソーム形態での薬物の投与は、相当な期間、調査の対象になってきた。PVP−ヨウ素リポソーム製剤は、例えば欧州特許第0639373号から知られているにもかかわらず、これらの製剤は、単純疱疹又は帯状疱疹ウイルスの感染によって引き起こされる皮膚刺激の治療における有効性に関しては研究されていない。
【0020】
ウツラー(Wutzler)らによる論文((2000), Ophthalmic Res., 32, 118-125)は、PVP−ヨウ素リポソームを含む点眼液の抗ウイルス活性を記載している。その抗ウイルス活性、すなわち単純疱疹ウイルス上清の感染力を低下させるPVP−ヨウ素リポソーム複合体の能力は、インビトロ測定によってしか測定されていない。単純疱疹及び帯状疱疹の状態に伴って発生する場合の皮膚刺激及び障害の治療におけるPVP−ヨウ素リポソーム複合体の使用は、この発表の主題ではない。どちらかと言えば、前述の論文の教示は、PVP−ヨウ素リポソーム複合体が眼科手術の過程の中で眼内炎及び角膜疱疹に対する予防として使用することができることに関する。
【0021】
2002年のウツラーらによるもう一つの論文(Antiviral Research, 54, 89-97)は、再び、PVP−ヨウ素リポソーム複合体の抗ウイルス活性及び細胞傷害性のみに関するものである。この場合も、PVP−ヨウ素リポソーム複合体の抗ウイルス活性は、前述のインビトロ試験によってしか測定されていない。例えば口唇疱疹の治療におけるそうしたPVP−ヨウ素リポソーム複合体の推定有効性は、この発表では全く扱われていない。むしろ、この文献は、前述のPVP−ヨウ素リポソーム複合体が、主として、細菌及びウイルス性角結膜炎に関係した治療及び気道のウイルス感染の治療に使用することができることを教示している。
【0022】
上述のどの先行技術文献の中にも、ヘルペス感染によって引き起こされる皮膚障害及び痒みを治療するためのPVP−ヨウ素含有リポソームの製造についてのヒントはない。
【0023】
ヒト及び動物に外用するための防腐薬及び/又は創傷治癒促進剤の使用は、欧州特許第0639373号に既に開示されている。詳細には、PVP−ヨウ素のリポソーム製剤が、主として完全消毒を目的として眼の外部に局所適用することができると、そこに示されている。これらの製剤は、一般に、クリーム、軟膏、ローション、ゲル又は滴剤調合物の形態をとる。
【0024】
リポソームは、公知の薬物又は化合物担体であり、それ故、リポソーム形態での薬物の適用は、相当な期間、調査の対象になってきた。リポソーム形態の化合物の皮膚への投与に関する概要は、総説「毛包脂腺単位をターゲットにしたリポソームによる送達(Targeted delivery to the pilosebaceous unit via liposomes)」(Lauer, A. C. et al., 1996, Advanced Drug Delivery Reviews, 18, 311-324)により提供されている。この総説は、リポソーム製剤の物理的−化学的特性付け及び毛包脂腺単位を治療するためのそれらの治療適用を記載している。リポソームによる送達について調査された化合物には、例えば、抗癌剤、ペプチド、酵素、抗喘息薬及び抗アレルギー化合物、並びに、上で言及したような抗生物質も挙げられる。
【0025】
先行技術が、眼及び気道のウイルス感染を治療するためのリポソーム製剤の使用についての多数のヒントを含んでいるという事実にもかかわらず、ヘルペス感染に起因する痒みの皮膚障害を治療するための防腐薬化合物用の担体としてのリポソーム又は他の粒子に関する先行技術はないようである。リポソームが薬物担体として長期にわたり当該技術分野において知られていること、及びPVP−ヨウ素もヘルペス感染治療用化合物として相当な期間知られていること(上述の先行技術の一部は、70年代にまで遡る)に鑑みて、先行技術分野ではヘルペス感染が原因となりうる皮膚の症状を治療するためにリポソームの形態の防腐薬化合物を使用することに強い抵抗があったようである。上で述べた欠点にもかかわらず、一般に、リポソーム、又はヌクレオシド類似体などの他の化合物を含まない製剤が好まれたようである。
【0026】
単純疱疹ウイルス及び帯状疱疹ウイルスに起因して発生する場合の皮膚障害の治療では、皮膚損傷部の表面の疎通性が、治療において使用される化合物の有効性にとって決定的である。ある先行技術文献、すなわち、1987年のテイラー(Taylor)らによる発表(Journal of Hospital Infection, 9, 22-29)は、具体的には表面上の防腐薬化合物の抗ウイルス活性を試験する試験系におけるPVP−ヨウ素溶液の有効度を扱っている。興味深いことに、この先行技術文献は、PVP−ヨウ素溶液は、試験した他の防腐薬溶液、例えば次亜塩素酸塩溶液又はアルカリ性グルタルアルデヒドと比較して、表面に固定させ、乾燥させたヘルペスウイルスを死滅させる際の有効度が有意に劣ることを示している。
【0027】
単純疱疹感染又は帯状疱疹感染の治療におけるPVP−ヨウ素調合物の使用が、ウイルス量の低下を導き、それと同時に、その感染によって引き起こされる症状、例えば有痛皮膚障害、水疱及び痒みを有効に治療することができることを先行技術が開示していないことは、上の言及から明らかである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
本発明の一つの目的は、皮膚障害、有痛水疱及び痒みなどの症状の永続的で、有効で、無瘢痕の治療を可能にし、ヘルペス感染の原因及び症状を局所治療するための充分に許容され容易に適用できる、薬学的製剤を提供することである。本明細書から明らかになるであろう本発明のこの目的及び他の目的は、独立クレームの主題により解決される。本発明の好ましい実施形態は、従属クレームにより定義される。
【課題を解決するための手段】
【0029】
驚くべきことに、リポソームなどの粒子状担体と併せてPVP−ヨウ素などの防腐薬化合物を含む本発明の製剤は、単純疱疹感染及び帯状疱疹感染の結果として発生する皮膚障害のような症状を有効に治療するために理想的に使用できることが判明した。そうした皮膚障害の治療は、有痛水疱の有効で迅速な治癒を含みうる。本発明によると、この前述の製剤の使用には、先行技術から既知である製剤と比較して、有痛水疱の迅速で、より有効で、無瘢痕の治癒が起こるという利点がある。本発明の製剤は、このリポソーム調合物が治療すべき皮膚部位の膜の安定性にプラスの影響を与えるため、上述の様々な形態のヘルペスウイルスでの感染の過程で発生する症状の治療にも理想的に適する。さらに、このリポソーム調合物は、PVP−ヨウ素複合体の有効で永続的な浸透、そしてそのうえ、罹患した皮膚のより深い層への浸透を、まず間違いなく誘導する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
前記リポソームの組成、活性化合物(類)の濃度、及び粒状担体と併せて薬学的に有効な量の防腐薬化合物を含むPVP−ヨウ素リポソーム又は製剤の製造方法を下に提示する。実例による説明を目的としてリポソーム及びPVP−ヨウ素に言及する場合、当業者は、他の担体及び他の防腐薬を類似の方法で調合することができ、従って、同じ目的に使用することもできることを、よく承知している。
【0031】
本発明の一つの目的は、ヘルペス感染の原因及び症状の治療のために、少なくとも一つの防腐薬化合物を使用するための薬学的製剤の製造方法であり、この場合、前記製剤は、薬学的に許容される粒子状担体と併せて、薬学的に有効な量の前記化合物(類)を含む。
【0032】
驚くべきことに、リポソームなどの粒子状と併せてPVP−ヨウ素などの防腐薬化合物を含む本発明の薬学的製剤は、単純疱疹及び帯状疱疹の感染の原因及び特に症状、例えば皮膚障害、有痛水疱及び激しい痒みを局所治療するために理想的に使用することができることが判明した。本発明によると、ヘルペス感染中に発生する症状を治療するための防腐薬化合物を含む粒子含有製剤の新規使用は、当該技術分野において既知の製剤と比較して、ヘルペスウイルスによって引き起こされる皮膚障害のより迅速な治癒を可能にするという驚くべき利点をさらに有する。
【0033】
すなわち本発明は、粒子状担体、特にリポソームが、その適用及びヘルペス感染の治療のための防腐薬用、特にPVP−ヨウ素用の担体として非常によく適するという驚くべき事実に基づく。
【0034】
すなわち本発明は、粒子状担体、特にリポソームが、その適用並びに軽症及び重症形態のアトピー性皮膚炎及び上述の他の形態の皮膚炎の治療のための防腐薬用、特にPVP−ヨウ素用の担体として非常によく適するという驚くべき事実に基づく。
【0035】
本発明の製剤は、前記化合物(類)の遅延放出を可能にし、それぞれの皮膚細胞表面の相互作用によって所望の地点での永続的かつ局所的活性を可能にする。特定の科学的理論に拘束されることを望まないが、本発明のPVP−ヨウ素リポソームの顕著な効果は、従来の製剤と比較して、損傷した皮膚領域により深くリポソームが浸透するためであると推定する。このように、本化合物(類)は、皮膚損傷部に、より有効に輸送される。しかし、防腐薬などのそうした根本的に有効な物質類が、特に敏感な損傷した組織の治癒プロセスに影響を与えず、瘢痕組織の形成、新生物、相互増殖などを抑制することさえできることは、同時に驚くべきことである。これは、本リポソーム製剤の顆粒形成作用及び上皮形成作用のためでありうる。
【0036】
本発明に関連して、用語「ヘルペス」は、様々な既知ヘルペスウイルスによって引き起こされうる炎症性皮膚状態を包含する。用語「ヘルペス」は、詳細には、口唇疱疹、陰部疱疹、熱性疱疹、日光性疱疹、月経性疱疹及び/又は外傷性疱疹などの、ヘルペスウイルスに誘発された種々の状態を包含する。同様に、本発明に関連して、水痘−帯状疱疹ウイルスによって引き起こされる状態をヘルペスと呼ぶ。これは、例えば、帯状ヘルペス、顔面丹毒又は水痘を含む。今のところ、目のヘルペス感染の症状を治療するための本発明の製剤の使用は考えていない。主として、本発明の製剤は、ヘルペス感染の結果として発生する場合の顔面、口唇、胸の及び背中の領域並びに四肢における皮膚障害の治療に使用される。
【0037】
本発明に関連して、防腐薬化合物は、先行技術において防腐薬として指定され、そのように使用されている化合物を第一に含む。本発明によると、本発明の調合物を有する限り、これらの化合物は、薬学的に許容され、且つ、局所適用による上述の様々な形態のアトピー性皮膚炎の治療に使用することができるような消毒化合物を、特に含む。本防腐薬化合物は、好ましくは、数ある中でも酸素放出性又は元素ハロゲン放出性化合物並びに金属化合物、例えば銀及び水銀化合物を含む。さらに好ましくは、本発明の防腐薬化合物は、ハロゲン放出性化合物、例えば、ヨウ素、ヨウ素を元素の形で含有するヨウ素複合体及びPVP−ヨウ素を含む。
【0038】
本発明に関連して、用語「薬学的に有効な量」は、様々な上述のヘルペス形態を有効に治療するために充分である、製剤中の防腐薬(類)の量を指す。
【0039】
本発明によると、本発明の製剤を使用して、局所適用により、ヘルペス感染の過程の中で発現する有痛水疱などの症状及び他の皮膚障害が、先行技術から知られている薬学的製剤の適用と比較して退行し、実質的に完全に、すなわち無瘢痕で治癒するように、様々な形態のヘルペスを治療することができる。
【0040】
この作用は、PVP−ヨウ素含有リポソームなどの本発明の製剤の使用により、角質増殖及び組織の非制御増殖を回避することができるという驚くべき、予想外の事実に起因する。従って、新しい皮膚組織の形成中の非制御増殖の不吉な結果である深刻な機能的及び美容関連皮膚損傷を予防することができる。美容的には、無瘢痕で迅速な治癒が特に重要である。罹患者は、典型的に顔面を襲う水疱及び水痘を極めて不愉快なものとして体験するからである。ただ一つの活性化合物を含む製剤の使用により、種々のヘルペス感染の根底にある様々な複雑な理由を、瘢痕組織を発生させず、残さず、副作用を引き起こさずに局所適用によって同時、且つ、有効に治療できることが期待できなかったので、例えばPVP−ヨウ素含有リポソームの使用により様々な形態のヘルペスのそうした有効な治療が可能であるという事実は、特に驚くべきことであった。
【0041】
従って、本発明のPVP−ヨウ素リポソームは、化粧品用途に使用することもできる。
【0042】
さらに、本発明のPVP−ヨウ素リポソームは、皮膚損傷部が無菌のままであり、その損傷した皮膚の充分な治癒を確実にするために充分な水分をさらに含む(及び加えて、維持する)ことを実現する。
【0043】
本発明の製剤を使用して、皮膚における瘢痕組織の形成を低減させることができ、角質増殖を完全に抑制することができる。相互増殖、又は瘢痕を導く新生物の形成は、様々な形態のヘルペスを治療するための、例えばPVP−ヨウ素含有リポソームの使用により、有意に低減される。さらに、ヘルペスの治療の過程の中での前述の製剤の使用は、多くの場合ヘルペス感染の主要な副作用である細菌感染の有効な鎮静も果たす。従って、抗生物質を補足療法として投与する必要がなく、そのため耐性発現の危険が存在しない。
【0044】
本発明の薬学的製剤の卓越した抗ウイルス有効性のため、ウイルスの蔓延及び結果として起こる感染が、ヘルペスの治療中は予防される。従って、本発明の製剤は、化粧用の物質及び/又はヘルペス感染の治療中に創傷治癒を促進する薬剤しか含まない製剤より明らかに優れている。
【0045】
本発明の製剤を使用して、様々な形態のヘルペスの症状を、罹患者にとって美容的に許容され、満足な結果が達成されるように治療することもできる。本発明のこの側面は、美容リモデリングと呼ぶこともできる。
【0046】
使用によって様々な形態のヘルペスを充分に治療することができる本発明の製剤は、当該技術分野において既知の方法に従ってPVP−ヨウ素をリポソームに充填することにより製造することができる。リポソームの性質又は組成は、一般に治療の成功の決め手となるものではなく、様々でありうる。例えば欧州特許第0639373号に記載されているようなリポソーム製剤は、例えば軟膏、クリーム、スプレー剤、ローション、溶液、懸濁液、分散液又はゲルを含む種々の形態で投与することができる。前記欧州特許第0639373号の開示は、本明細書に参照により組み込まれる。
【0047】
好ましくは、リポソーム形成材料は、防腐薬化合物と実質的に又はほとんど少しも反応しないように選択される。従って、防腐薬が、反応パートナーになる可能性がある場合には、化学反応性物質の含有量をできる限り低く保つように試みることになろう。防腐薬が、PVP−ヨウ素の場合にように、酸素又はハロゲン原子を放出する場合、例えば、あったとしても少しの量でしか反応性二重結合を有さないコレステロールを、使用することになろう。いずれの場合においても、そうした潜在的に反応性のリポソーム形成物質の量は、その薬学的製剤が、(法定規則に従って)少なくとも1年、又は少なくとも2年でさえ充分な保存安定性を有するように、選択されるであろう。保存条件は、約−20℃から約60℃の温度範囲を含みうる。
【0048】
本発明の製剤は、粒子状担体、特にリポソーム、に内包された活性化合物(類)、例えばPVP−ヨウ素を、多くの場合、含有する。しかし、担体内部に収容されていない一定量の化合物が存在することも起こりうる。化合物(類)が、例えばリポソームのような粒子担体の表面と会合していることもある。
【0049】
本発明の一つの実施形態において、活性化合物(類)の主要部分又は全量でさえ、例えばリポソームのような粒子状担体の外側に位置することがある。
【0050】
そこで、本発明の製剤は、担体からの活性薬剤の、より遅い、長引いた放出に加えて観察される顕著な初期効果を示し得る。この効果は、担体がリポソームを含む場合に特に観察される。いずれの理論的説明にも拘束されることを望まないが、リポソームの内部に内包された活性薬剤に加えて、いく分かの薬剤が、リポソームの外側に存在し、おそらくそのリポソームの外面にゆるく結合していると現在は推定している。これは、リポソーム膜と活性化合物分子の複雑な会合に起因し得るか、又は活性化合物分子がリポソーム表面に層を形成し、その層が、部分的に又は完全に、そのリポソームを外的に被覆することに起因し得る。この初期化合物効果のタイプ及び量は、例えば、濃度パラメータの選択による影響を受けうる。
【0051】
本発明に関連して、遅延又は持続放出とは、活性化合物(類)が1から24時間の間の期間にわたって薬学的製剤から放出されることを意味する。
【0052】
リポソームと防腐薬化合物の会合、すなわち、活性化合物をリポソーム内部に含め得ること、又は環境によってはその表面と会合させ得ることは、数ある中でも、リポソームの形成に使用された成分に依存する。
【0053】
好ましい実施形態において、様々な形態のヘルペスの治療に使用される本発明の製剤は、防腐薬化合物に加えて、他の抗炎症薬及び創傷治癒促進剤も含むことができる。
【0054】
これらの追加の抗炎症薬には、例えば、フェノール系化合物;界面活性剤;アルコール;数ある中でも、ホルムアルデヒド放出性化合物を含む有機消毒薬;アルキル及びアリールフェノール系化合物並びにハロゲン化フェノール系化合物を含むフェノール系化合物;キノリン;アクリジン;ヘキサヒドロピリミジン;第四級(quaternary)アンモア化合物;イミニウム塩;及びグアニジンが含まれる。創傷治癒促進剤は、そうした適用のために文献に記載されている物質を含む。そうした化合物は、上皮組織の形成を促進することが知られている物質を含む。これらは、ビタミン、特にビタミンB群からのもの、アラントイン、一部のアズレン類などを含む。
【0055】
本発明の一部の実施形態において、本発明の製剤は、防腐薬化合物、好ましくはPVP−ヨウ素を含み、創傷治癒促進剤又は抗炎症性化合物などの化合物も含むことができる。
【0056】
本発明の製剤は、アジュバント及び添加剤、酸化防止剤、保存薬、又は硬度形成剤、例えば粘度調整用添加剤、乳化剤などを含む、他の通例の薬剤も含有することができる。当業者は、リポソームなどの粒子状担体及びPVP−ヨウ素などの防腐薬化合物から実質的に成る製剤についての様々な形態のヘルペスを有効に治療する能力が損なわれないような方法で、これらのアジュバント及び添加剤を選択するであろう。添加剤は、ハロゲン放出性化合物の場合には放出されるハロゲン原子のような活性化合物の再生を可能にする塩も含むことができる。PVP−ヨウ素の場合、そうした添加剤は、KIOあってもよい。皮膚へのリポソームの浸透を媒介又は増進する他の添加剤も、本発明の製剤の一部であってもよい。そうした添加剤は、例えばDMSOを含む。
【0057】
リポソーム膜を形成することが先行技術において一般に知られている両親媒性物質は、それらが故意の適用について薬学的に許容される限り、本発明に関連して利用することができる。現在のところ、レシチンを含むリポソーム形成系が好ましい。そうした系は、コレステロール(その反応性にもかかわらず適する場合)及びコハク酸二ナトリウム・六水和物に加えて硬化大豆レシチンを含むことができる。好ましくは、商品の所望の保存安定性を確保するため、リポソーム形成材料は、防腐薬との反応性を一切示さないものとされる。酸素放出性又はハロゲン放出性防腐薬(PVP−ヨウ素など)と共に調合しなければならない場合、高いコレステロール含有量は、その二重結合の反応性のため、避けられるであろう。現在のところ、単独の膜形成剤としては硬化大豆レシチンの使用が、特に好ましい。Phospholipon(登録商標)(ドイツのアベンティス(Aventis))又はLipoid S100−3(ドイツのリポイド社(Lipoid GmbH))などの市販製品も好ましい。
【0058】
Lauer A.C. et al., 1995(上記参照)の総説から得ることができるようなリン脂質をベースにしたリポソームも、そのカーゴ(cargo)を皮膚に放出するリポソームの生産に、一般に使用することができる。この総説によると、ホスファチジルコリンを用いて形成することができる非イオン性リポソームの使用も一つの選択肢である。毛包内の皮脂の存在は、リポソームを形成する成分の選択に関係がありうる。ミセルの形成に使用することができる他の成分も当業者に知られており、本発明の製剤の製造に使用することができる。
【0059】
リポソーム構造を形成するための既知先行技術法は、本発明に関連して一般に使用することができる。概して、これらの方法は、膜形成物質及び水又は水溶液を含有する適する混合物の機械攪拌を含む。適する膜による濾過は、実質的に均質なリポソームサイズを形成するために好ましい。
【0060】
本発明のリポソームの平均サイズは、広い範囲にわたって、一般には約1nmから約100μmまで、様々で有りうる。約1μm及び約70μmの範囲の直径を有するリポソーム又は粒子状担体が好ましい。当業者は、直径が低下するほど、皮膚へのリポソームの浸透効率が増すこと、従って、約1μmから10μm、約5から7μm又は約5μmの直径を有するリポソームを使用することができることを知っている。一般に、リポソームのサイズは、皮膚への良好な浸透が保障されるように選択される。従って、本発明の特に好ましい実施形態は、約1μm及び25μmの間の直径を有するリポソームを含む。
【0061】
より流動性が高い製剤中のリポソームの方が、一般に、細菌感染の治療に適し、一方、よりゲル様である調合物中のリポソームの方が、一般に、ウイルス感染の治療に良好に適する。ウイルス感染に起因する症状は、罹患した身体領域とのより長い接触時間が可能である本発明の製剤で、好ましく治療されるようである。細菌感染に起因する症状は、罹患した身体領域との接触時間がどちらかと言えば短い製剤で、好ましく治療することができる。
【0062】
それ故、様々な形態のヘルペスを治療するための本発明の製剤は、よりゲル様である製剤、例えば中から高粘度のゲル、ワックス又は軟膏中に、リポソームを含む。加えて、これらの製剤は、好ましくは、やや小さなサイズのリポソーム、例えば、約1μm及び30μmの間、好ましくは約10μm及び約30μmの間、さらに好ましくは20μm及び30μmの間、最も好ましくは25μm付近の直径を有するリポソームを含む。
【0063】
一般に、やや小さな平均直径を有するリポソームの方が、溶液、分散液、懸濁液の製造に良好に適する。このような、やや小さな直径は、典型的には1μmから10μm付近の直径、又は溶液の場合にはさらに小さな直径さえ含む。対照的に、ゲル又は軟膏調合物は、約1μmから50μmのサイズのリポソームを含む。
【0064】
代替粒子状担体を使用する場合、それらは、一般に、当該技術分野において知られているように調製される。例えば、非常に広範な治療薬又は美容剤を送達するために使用されるマイクロスフェアは、例えば、国際公開公報第95/15118号に記載されているように製造される。
【0065】
ナノ粒子は、充分な量の活性薬剤を充填することができ、本発明に従って下気道に投与することができるということを条件に、場合により使用することができる。それらは、例えば、"Drugs delivered to the lung", Abstracts IV, Hilton Head Island Conference, May 1998に、Heyder(GSD Munchen)により記載されている、当該技術分野において既知の方法に従って調製することができる。
【0066】
パルスレーザー堆積(PLD)装置を使用する方法、及び短い非水系のプロセスで薬物粉末にコーティングを施すためのポリマーターゲットを使用する方法も、本発明の粒子状製剤の形成に適する。これらは、例えば、Talton et al., "Novel Coating Method for Improved Dry Delivery", Univ. of Florida UF 1887 (1998) により記載されている。
【0067】
さらに適する送達系としては、David A. Edwards et al., in "Large Porous Particles for Pulmonary Drug Delivery" (Science, 20. June 1997, Vol. 276, p 1868-1871) により記載されている大型多孔性粒子(Large Porous Particles)が利用される。
【0068】
一般に、そうした代替担体についての製剤中の濃度、粒径、活性薬剤充填量は、リポソーム製剤について本明細書で論じているパラメータに基本的に対応するように選択されるであろう。とりわけ直接的な実験に基づくそうしたパラメータの選択及び提供は、この技術分野において経験を有する通常の技術者の技能の範囲内に充分に含まれる。
【0069】
本発明によると、特に、本発明の製剤がPVP−ヨウ素及びリポソームを含む場合、本発明のリポソーム製剤の使用は、様々ヘルペスの形態の原因並びに皮膚障害及び痒みのような症状の治療に関するものである。様々な重症度の様々な形態の(ヘルペス?)を治療するための本発明のリポソーム製剤の使用は、抗ウイルス的機能と創傷治癒促進性機能を同時に果たす、ただ1つの化合物を使用するので、先行技術調合物の使用と比較して副作用の発生が少ない。
【0070】
種々の形態のヘルペスを局所治療するための本発明の製剤の使用により、副作用を有意に低減させ、瘢痕組織を形成させずに、様々な形態を有効に、また迅速に治療することができる。例えばヌクレオシド類似体での重症形態のヘルペスの治療中に適用されるように、化合物を全身適用する必要がない。それ故、副作用が避けられる。
【0071】
本発明のリポソームPVP−ヨウ素製剤のもう一つの利点は、それらが、ウイルス及び細菌に対して有効であるという点である。それ故、ヘルペス表現型の一因になることもある細菌性炎症反応を、本発明のリポソームPVP−ヨウ素製剤でのヘルペスの治療の過程の中で有効に治療することができる。さらに、PVP−ヨウ素などの防腐薬化合物を有するリポソーム製剤は、それらのリポソームからの化合物の遅延放出を可能にする。これは、微生物及び抗ウイルス物質の持続効能を導き、その結果、一般の防腐薬溶液又はヌクレオシド類似体製剤と比較して製剤の適用頻度を少なくすることができる。
【0072】
本発明の製剤は、薬学的に許容される固体又は液体調合物、例えばエマルジョン、分散液、懸濁液、溶液、ゲル、軟膏、ワックス、スプレー剤、ローションなどを含む様々な形態をとることができる。ヒドロゲルのような調合物が、好ましい。従って、この関連で、用語「ゲル」を使用する場合、これは、常に、ヒドロゲルの好ましい実施形態を包含する。
【0073】
一般に、本発明の製剤中の活性薬剤の量は、他方では望ましい効果によって、もう一方ではその薬剤をその担体製剤が担持する能力によって決まるであろう。概して、本発明の担体製剤中の活性薬剤の量は、それぞれの担体製剤中のその薬剤の有効性の下限とその薬剤の最大充填量の間の濃度の範囲でありうる。活性化合物が、本発明の製剤中に薬学的に充分な量、すなわち種々の形態のヘルペスを治療するために充分な量で存在することは、理解される。
【0074】
より具体的には、ポビドンヨードなどの防腐薬について、本発明の担体製剤中の溶液、分散液、油、軟膏又はゲルは、特に前記担体がリポソーム製剤である場合、100gの製剤中に0.1g及び10gの間の薬剤を含有することができる。そのとき、このような製剤は、100gの製剤あたり、典型的には1g及び5gの間のリポソーム膜形成物質、特にレシチンを含有するであろう。
【0075】
例えばPVP−ヨウ素濃度などの通常好ましい活性化合物濃度は、一般には1重量%から10重量%の間、好ましくは1重量%から5重量%である。
【0076】
親水性ローションであってもよいし、親油性ローションであってもよいローションにおいて、PVP−ヨウ素などの活性化合物の典型的な範囲は、100gのローションあたり、0.5g及び10gの間の化合物、1g及び5gの間の化合物、好ましくは約4gのリポソーム膜形成剤、例えば硬化大豆レシチンであろう。親水性ローションの場合、電解質溶液が、そのリポソーム含有ローションの調製に、多くの場合、使用されるであろう。
【0077】
親油性ローションは、化合物、膜形成物質及び親油性形成剤、例えば中鎖長トリグリセリドなどから、多くの場合、製造されるであろう。
【0078】
本発明のリポソーム製剤を含む親水性クリームは、一般に、100gのクリームあたり、約1g及び10gの間の膜形成物質及びさらなる典型的なO/Wクリーム形成用添加剤と共に、0.1g及び10gの間のPVP−ヨウ素などの薬剤を含むであろう。
【0079】
本発明の同等の両親媒性クリームは、同様の含有量の薬剤及びレシチンなどの膜形成物質を有するとともに、両親媒性クリームに典型的なさらなる添加剤を有するであろう。
【0080】
本発明の親水性軟膏は、広くは、100gの軟膏中に、Macrogol(商標)などの一般的な先行技術軟膏基材物質及び水と共に、0.1g及び10gの間の化合物並びに1g及び10gの間のレシチンなどのリポソーム膜形成物質を含むことができる。
【0081】
本発明の非アルコール系ヒドロゲルは、広くは、100gのヒドロゲルを形成するために、pH調整剤及び水とともに、1g及び5gの間のPVP−ヨウ素などの化合物、約2〜4gのレシチン並びにゲル形成物質、例えばCarbopol(商標)を含むことがある。
【0082】
本発明のエーロゾル(aerosol)又はスプレー製剤は、単位スプレー剤用量あたり、多くの場合、50mg以下のリポソーム活性化合物を含むであろうが、100mgまで及びそれ以上のリポソーム活性化合物を含むこともある。本スプレー製剤は、充填されるリポソーム(又は代替担体粒子)内に典型的には少なくとも10重量%のPVP−ヨウ素などの化合物薬剤を含むであろうが、50重量%まで又はそれ以上の活性薬剤でさえ含むことがある。活性薬剤がPVP−ヨウ素である場合、利用可能なヨウ素の量は、(PVP−ヨウ素を基準にして)一般には約10重量%であろう。
【0083】
より具体的な調合物は、本実施例から気づくことができる。
【0084】
本発明の特徴及び利点は、後続の好ましい実施形態の説明からより詳細に明らかになるであろう。最良の方式を含むこれらの実施形態では、ポビドンヨードが防腐薬として例示され、リポソームが、担体として選択されている。しかし、そうした製剤が特に好ましいとはいえ、これを、防腐薬を単独に、又は防腐薬の中でもポビドンヨードに、及び/又は担体としてリポソームに本発明を限定することと、見なすべきではない。本発明によると、他の粒子状担体、例えば「大型多孔性粒子」又は他のミセル、ナノ粒子などをPVP−ヨウ素と調合して、様々な形態のヘルペスを有効に治療することができる製剤を製造することができる。同様に、他のハロゲン放出性防腐薬をリポソームと調合して、ヘルペスを有効に局所治療することもできる製剤にすることができる。本発明のリポソームを製造するための一つの好ましい方法は、一般には次のように説明することができる。
【0085】
脂質膜形成成分、例えばレシチンを適する溶媒、例えばクロロホルム又はメタノールとクロロホルムとの2:1混合物に溶解し、無菌条件下で濾過する。その後、溶媒の制御蒸発により、脂質薄膜をガラスビーズなどの無菌高表面基質上に生じさせる。場合によっては、特別な基質を使用せずとも、溶媒の蒸発に使用する容器の内部表面上で薄膜を形成することが、表面を増やすために全く充分であることがある。
【0086】
水性系は、本リポソーム製剤に配合することができる電解質成分及び(一つ又はそれ以上の)活性薬剤から調製する。そうした水性系は、例えば、10mmol/Lのリン酸水素ナトリウム及び0.9%の塩化ナトリウム(pH7.4)を含み、さらにこの水性系は、本実施例ではポビドンヨードである活性薬剤の所望の量を少なくとも含む。多くの場合、この水性系は、過剰量の一つ又は複数の薬剤を含むであろう。そのバッファ溶液のpHは、変化させることができる。
【表A】

【0087】
その後、製剤を、NaCl又はグリセロールで等張範囲(250〜350mOsmol/kg)に最終調整することができる。(例えば、上の表においてpH7.4のバッファ溶液について示したように)PVP−ヨウ素濃度に依存して、塩強度も変化させることができる。
【0088】
リポソームは、一般に、脂質成分により形成された前記薄膜の存在下で前記水性系を攪拌することにより、形成する。この段階で、さらなる添加剤、例えばコール酸ナトリウムを添加して、リポソームの形成を増進させることができる。リポソームの形成は、例えばポリカーボネート膜による加圧濾過又は遠心分離などの機械的作用による影響も受けうる。一般に、粗リポソーム分散液は、例えば上で説明した活性薬剤溶液の調製に使用したような電解質溶液で、洗浄することになる。
【0089】
要求サイズ分布を有するリポソームを得、洗浄したとき、それらは、多くの場合サッカロースなどの糖又は適する糖代用品も含む、既に説明したような電解質溶液に再び分散させることができる。その分散液を凍結乾燥させることができ、それを凍結乾燥させることができる。それは、水の添加、及び硬化大豆レシチンについては、例えば55℃である脂質成分の転移温度での適する機械攪拌により、使用前に再構成することができる。
【0090】
後続の実施例では、硬化大豆レシチン(ドイツのルーカス・マイヤー(Lukas Meyer)から入手できるEPIKURON(商標)200 SH、又はドイツのナッターマン・ホスホリピド社(Nattermann Phospholipid GmbH)から入手できるPHOSPHOLIPON(商標)90H)を使用した。しかし、代わりに、他の薬学的に許容されるリポソーム膜形成物質を使用してもよく、当業者には、先行技術で説明されているものから適する代替リポソーム形成系を選択することが容易であることはわかるであろう。
【0091】
当業者は、リポソーム含有分散液が、本リポソーム製剤の外観に影響を与えうる追加の添加剤及びアジュバント含むことができることを充分に承知している。本発明のリポソーム分散液は、例えば、PVP−ヨウ素又は放出されるヨウ素に起因するわずかな黄色又は褐色を確実に目立たなくする着色顔料を、含有することができる。同様に、リポソーム又はリポソーム含有薬学的製剤は、それらの製剤の硬度及び臭いに影響を与える添加剤を含むことができる。
【0092】
当業者は、これらの添加剤及びアジュバントの選択が、(例えば、軟膏、ゲル又は溶液のような)その製剤の故意の適用形態に依存し、(色及び臭いなどの)美的配慮による影響を受けうることを充分に承知している。
【0093】
既に上で述べたように、本発明の特に好ましい実施形態は、リポソーム及びPVP−ヨウ素を含むヒドロゲル調合物である。そうしたヒドロゲル調合物は、通常、リポソーム形成材料としてPhospholipon(登録商標)90H(ドイツのアベンティス)、及びゲル形成物質としてCarbopol(登録商標)980 NF(米国のノベロン社(Noveron Inc.))を含む。Phospholipon(登録商標)90Hは、非水素化ホスファチジルコリン製剤より保存安定性が高い、90%水素化ホスファチジルコリン製剤である。Carbopol(登録商標)は、薬学的に許容されるゲルの形成に一般的に使用されるアクリル酸ポリマーの商品名である。好ましいヒドロゲル調合物は、その製剤にヨウ素を新たに供給するために役立つKIOも含むことができる。緩衝剤として使用されるクエン酸及びNaHPOは、製剤の安定性に有利な影響を及ぼす。本製造プロセスのフローチャートを図1から8に示す。図1は、現在好ましい製造プロセスを説明するものである。このプロセスの詳細な考察は、実施例6で提供する。
【0094】
本発明の好ましい実施形態の製造を具体的に説明する実施例を下に記載する。それらは、どのようにして本発明の製剤を製造することができるのかを説明するためのものであり、本発明をそれらの実施例に限定するとは決して解釈すべきではない。
【実施例1】
【0095】
インビトロ試験のための準備
表面を増すためのガラスビーズを備えた1000mLのガラスフラスコ内で、51.9mgのコレステロール及び213mgの硬化大豆レシチンを、充分な量の比率2:1のメタノールとクロロホルムの混合物に溶解した。その後、フラスコの内部表面及びガラスビーズ上に薄膜が形成されるまで、真空下で溶媒を蒸発させた。
【0096】
2.4gのPVPヨウ素(約10%の利用可能なヨウ素を含有するもの)を12mLの水に別途溶解した。
【0097】
再び、別の容器内で、8.77gの塩化ナトリウム及び1.78gのNaHPO・2HOを400mLの水に溶解した。全量である980mLになるまで、さらに水を添加し、その後、約12mLの1N 塩酸を添加してpHを7.4にした。その後、この溶液に水を補充して、ちょうど1000mLにした。
【0098】
第四の容器内で、900mgのサッカロース及び57mgのコハク酸二ナトリウムを12mLの水に溶解した。
【0099】
その後、そのPVPヨウ素溶液を前記フラスコ内の脂質薄膜に添加し、その混合物をその薄膜が溶解するまで振盪した。得られたリポソーム調合物をフラスコ内の水和脂質から分離した。その生成物を遠心分離し、上清液を廃棄した。前記サッカロース溶液を添加して12mLにし、その生成物を再び遠心分離した。その後、その上清液を再び廃棄した。この段階で、サッカロース溶液又は塩化ナトリウム緩衝溶液を使用するさらなる洗浄工程を行ってもよい。
【0100】
最後の遠心分離工程及びその上清の廃棄後、12mLの塩化ナトリウム緩衝溶液を添加し、リポソームをその中に均質に分散させた。その後、その生成物を、各々が2mLのリポソーム分散液を収容するようにバイアルに分配し、その後、それらのバイアルを凍結乾燥工程に付した。
【0101】
凍結乾燥後、各バイアルは、約40mgの固体を含んでいた。
【0102】
実施例1の方法は、使用したPVPヨウ素溶液が、その高い固体率のため、やや粘性があり、それ故、取り扱いがより困難であるという多少の欠点を有する。
【実施例2】
【0103】
表面を増すためにガラスビーズを備えた2000mLのフラスコ内で、173mgの硬化大豆レシチン及び90mgのコハク酸二ナトリウムを、約60mLの比率2:1のメタノール/クロロホルム混合物に溶解した。薄膜が形成されるまで、真空下で溶媒を除去した。
【0104】
4gのPVPヨウ素(10%の利用可能なヨウ素を含有するもの)を、40mLの実施例1に記載の塩化ナトリウム緩衝溶液に溶解し、前記フラスコ内の脂質薄膜に添加した。その後、そのフラスコを、その薄膜が溶解し、リポソームが形成されるまで、振盪した。
【0105】
その生成物を遠心分離し、その上清液を廃棄した。
【0106】
このようにして生成したリポソームペレットに、さらに40mLの塩化ナトリウム緩衝溶液を添加し、遠心分離工程を繰り返した。その上清を再び廃棄した。この段階で、必要な場合にはその洗浄工程を繰り返してもよい。
【0107】
最後の遠心分離及び廃棄工程の後、40mLの塩化ナトリウム緩衝溶液をその沈殿したリポソームに再び添加した。その後、その均質分散液をバイアルに、各バイアルが2mLのリポソーム分散液を収容するように分配し、その後、それらのバイアルを凍結乾燥工程に付した。これにより、バイアルあたり約200mgの凍結乾燥固体が生成された。
【0108】
実施例1及び2の凍結乾燥固体から、さらなる製剤を、後続の実施例及び試験報告に記載するように、製造した。
【0109】
実施例1のものと同様、上記の方法は、有機溶媒の存在下で薄膜を形成した後、水和工程を用い、また5から15%の包含率を目標とする。これらの方法により、一般に、やや大きく、多くの場合多層である、リポソームが製造される。
【0110】
上記の方法は、粗リポソームが形成された後、もしくは一切の後続洗浄工程の後、ポリカーボネート膜などの適する膜での高圧濾過工程により、又は高圧均質化の直接使用により修正変更してもよい。これにより、とても小さく単層であるリポソームを、内包された薬剤の量が増した状態で製造することができる。
【0111】
高圧均質化の代わりに、小さく均一なサイズのリポソームを生じさせることが知られている他の先行技術の方法を利用してもよい。
【実施例3】
【0112】
親水性(O/W)クリームを、10gの実施例2に記載した硬化大豆レシチン/PVPヨウ素リポソームから調製した。なお、これらリポソームは、4gのPolysorbate 40(商標)、8gのセチルステアリルアルコール、8gのグリセロール、24gの白色ワセリン、及び計100gにする水と混合されたものである。
【実施例4】
【0113】
両親媒性クリームを、10gの実施例2に記載した硬化大豆レシチン/ポビドンヨードリポソーム、7.5gの中鎖長トリグリセリド、7gのポリオキシエチレングリセロールモノステアレート、6gのセチルステアリルアルコール、8gのプロピレングリコール、25gの白色ワセリン、及び計100gにする水から調製した。
【実施例5】
【0114】
水ですすぎ落とすことができない親水性軟膏を、10gの実施例2に記載したリポソームPVPヨウ素、55gのMacrogol 400(商標)、25gのMacrogol 4000(商標)、及び計100gにする水を使用して調製した。
【実施例6】
【0115】
ヒドロゲルを、4gの実施例2に記載したリポソームPVPヨウ素、0.5gのCarbopol(登録商標)980NF(商標)、pH7.0にする水酸化ナトリウム、計100gにする水から調製した。上記実施形態のさらなる修正変更が考えられる。
【0116】
例えば、実施例4及び5のクリームは、アラントインなどの創傷治癒を促進することが知られている薬剤の添加内容物を有することができる。
【0117】
そうした薬剤は、薬学的に有用な濃度で、アラントインの場合には、100gのクリームあたり0.1から0.5gの範囲で添加することになる。創傷治癒剤をクリーム基材に配合してもよく、その場合、それは、主としてリポソームの外側に存在するであろう。しかし、それは、一部又は大部分がリポソーム内に存在することもあり、その場合、それは、そのリポソーム調製法の対応する適当な段階で添加されることになる。
【0118】
類似の代替が、さらなる実施例に対して容易に考えられる。
【0119】
創傷治癒を促進することができる薬剤を、例えば上の実施例において開示したポビドンヨードのような防腐薬の代わりに、追加してではなく含む、上に記載したものに類似した実施形態を調製することも可能である。しかし、現在のところ、防腐薬に加えて創傷治癒促進剤(あったとしたら)を使用することが好ましい。
【0120】
本発明の製剤の患者への適用には、既知システム、例えば空気ポンプアプリケータ、二室型ガス圧パック、エーロゾルスプレーディスペンサなどを使用することができる。
【0121】
空気ポンプアプリケータでは、ベロー装置が、上流のバルブと下流のバルブの間に設けられ、両方のバルブが、同方向で一方向に作動する。薬学的製剤、例えば軟膏又はゲルの供給は、そのバルブ−ベロー装置の上流のリザーバー内に収容される。
【0122】
ベローを圧縮すると、下流のバルブが開き、適量に分けられた量の製剤をその適用のための装置から出させる。ベローが伸びると、このバルブが閉じ、製剤の再入を防止する。同時に、上流のバルブが開き、リザーバーからの製剤をベローに入らせて、次のベロー圧縮工程と同時に下流のバルブを通して放出する。
【0123】
リザーバーは、ピストンがシリンダの中で移動するように、リザーバーの中を移動することができるクロージャー要素(closure element)によって封止される。リザーバーが徐々に空になることにより、このクロージャー要素がリザーバーの中に吸い込まれて、リザーバー内の薬学的製剤の残量を常に封じ込めながら、同時にリザーバーを空にすることができる。そうした装置は、ペースト状製剤、クリーム、軟膏などに有用である。
【0124】
二室型ガス圧パックでは、薬学的製剤は、軟質プラスチックフィルム材料のバッグ内に収容される。多くの場合、これは、高圧ポリエチレンである。
【0125】
そのバッグは、加圧ガス、非常に多くの場合、窒素又は空気のような圧縮不活性ガス、の供給物をさらに収容している気密式加圧容器内に収容される。
【0126】
そのプラスチックフィルムバッグは、排出口を一つだけ有し、それは、その単一開口部周囲のその加圧容器の内壁に気密接続されている。その容器の中の加圧ガスは、そのバッグを圧縮し、そのバッグ内の薬学的製剤をそのバッグの開口部を通して、従ってその容器の開口部を通して、外に押し出す傾向がある。バルブ及び場合によっては噴射ヘッド装置が、その容器の口に設けられている。そのバルブを操作することにより、噴射ミスト、液体ジェット、又はクリームなどの流動性固体の一部が放出する。そうしたシステムを使用して、溶液、エマルジョン、クリーム、軟膏及びゲルを適量に分け、適用することができる。
【実施例7】
【0127】
図1に示すフローチャートに従ってヒドロゲルを調合した。表1に示す量を、分析用製剤とスケールアップ製剤のいずれかに使用した。
【表1】

【0128】
「Pos.」は、位置(下の表2も参照のこと)を表す。Phospholipon(登録商標)90Hは、アベンティス(ドイツ)から購入した。Carbopol(登録商標)980NFは、ノベロン社(米国)から購入し、PVPヨウ素 30/06は、BASF(ドイツ)から購入した。
【0129】
表2のカラム2では、工程の正確な順序及び各工程のパラメータを与える(図1も参照のこと)。カラム3では、非排他的な代案を説明する。すべての工程は、別途示されている場合を除き、室温で行った。すべての物質は、英国薬局方(the British Pharmacopeia)などに記載されている薬学的製剤に一般的な純度のものであった。
【表2】


【0130】
表1の位置E及びFは、KIOの容器及びPVP−ヨウ素の容器(表2の番号2及び4)を洗浄するために使用する。
【0131】
上で述べたように、ヒドロゲル調合物は、表2及び図1に記載の方法に従って製造する。代案の方法は、図2から8のフローチャートから明らかになる。個々の工程は、上に記載したとおり行うことができる。
【0132】
その後、本発明の製剤を使用して、次のとおり効果試験を実施した。
試験I
これは、本発明のポビドンヨードリポソーム製剤により提供される殺菌作用のインビトロ試験であった。この試験は、「Richtlinien der Deutschen Gesellschaft fur Hygiene und Mikrobiologie」,1989 に記載されているような定量懸濁試験に基づくものであった。
この試験では、前記殺菌剤を、病院衛生における大きな問題である、黄色ブドウ球菌(ATCC 29213)を死滅させるために使用する。
【0133】
使用したリポソーム製剤は、実施例1のものであった。1分及び120分の間の様々な接触時間で、前記ブドウ球菌を死滅させることができる水中の前記製剤の最小濃度を判定した。
【0134】
結果を表3に示す。
【表3】

【0135】
結果は、短い接触時間(1分及び4分の間)では殺菌剤濃度が0.06%といった低さであること、及び長い接触時間(120分)では殺菌剤濃度が、0.007%といった低さになりうることを示している。
【0136】
試験II
リポソームPVP−ヨウ素の殺ウイルス及び殺クラミジア活性を、Wutzler et al., 9th European Congress for Clinical Microbiology and Infection Diseases, Berlin, March 1999 により、細胞培養物で研究した。細胞培養物では、リポソームPVP−ヨウ素は、1型単純疱疹ウイルス及び8型アデノウイルスに対して非常に有効である一方で、長期細胞傷害実験は、リポソーム形態の方が、PVP−ヨウ素水溶液より良好に、試験した細胞の大多数に許容されることを示した。リポソーム形態のPVP−ヨウ素は、遺伝毒性でない。
【0137】
試験III
3% PVP−ヨウ素ヒドロゲルリポソーム製剤を、活性薬剤がリポソーム形態でない3% PVP−ヨウ素軟膏と比較した。皮膚及び創傷抗感染薬の組織適合性についてのスクリーニングとして、ラットの皮膚及び腹膜体外移植組織のインビトロ標準培養物に前記薬剤を適用した。
【0138】
試験物質に30分暴露し、共にインキュベートした後、培養体外移植組織の増殖率を研究した。
【0139】
それらの結果において、再び、リポソーム製剤の実質的に良好な許容性が、腹膜増殖率及び皮膚増殖率に関して示された。
【0140】
前記軟膏では、腹膜増殖率が85%に達し、皮膚増殖率が90%に達し、前記リポソームヒドロゲル調合物では、腹膜増殖率が96%に達し、皮膚増殖率が108%に達した。これらの値は、薬剤としてリンガー溶液を使用する対照試験における100%値と比較することができる。
【0141】
試験IV
経鼻適用のためのリポソームPVP−ヨウ素溶液の許容性を、線毛上皮細胞、粘膜の最も敏感な細胞、に対する種々の試験物質の影響を調査することにより研究した。創傷が粘膜毛様体クリアランスの制限に起因するこれらの細胞の細胞傷害性損傷は、毛様体振動の検出可能な減少により判定することができる。
【0142】
ヒト線毛上皮細胞を、毛様体活動又は毛様体振動を判定することができるインビトロ法によりアッセイした。対応する細胞を、37℃の温度で、100je.lの試験物質に暴露し、共にインキュベートした。5分のインキュベーション期間の後、毛様体振動を測定した。
【0143】
このインビトロ法を使用して、標準物質として栄養溶液(ダルベッコ(Dulbeco))、0.2%クロロヘキシジン溶液(典型的な防腐薬)、異なる濃度の従来型ポリビドンヨウ素溶液(Betaisodona)(5.0%、2.5%及び1.25% PVP−ヨウ素)、及び4.5%のPVP−ヨウ素を含有するリポソーム溶液を試験した。
【0144】
それらの結果において、リポソーム製剤の許容性の方が実質的に良好であることが、明瞭に示された。線毛上皮細胞を、5.0%又は2.5% PVP−ヨウ素を含有するBetaisodona溶液に暴露した場合、インキュベーション期間の後、毛様体活動を観察することはできなかった。クロロヘキシジン溶液での細胞の処理は、標準物質(栄養溶液)と比較して、測定毛様体振動の減少を導いた。1.25% PVP−ヨウ素を含有する低濃度Betaisodona溶液は、毛様体活動の検出可能な減少をもたらさなかった。測定毛様体振動に関しては、リポソーム濃度4.5%のPVP−ヨウ素溶液にヒト毛様体上皮細胞を暴露することにより、標準物質(栄養溶液)との違いを判定することはできなかった。
【0145】
これらの結果は、リポソーム調合物が経鼻適用に充分許容され、例えばクロロヘキシジン又は従来型Betaisodona溶液と比較して有利であることを示している。
【図面の簡単な説明】
【0146】
【図1】本製造プロセスのフローチャートである。
【図2】本製造プロセスのフローチャートである。
【図3】本製造プロセスのフローチャートである。
【図4】本製造プロセスのフローチャートである。
【図5】本製造プロセスのフローチャートである。
【図6】本製造プロセスのフローチャートである。
【図7】本製造プロセスのフローチャートである。
【図8】本製造プロセスのフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬学的に許容される粒子状担体と併せて、薬学的に有効な量の少なくとも一つの防腐薬化合物を含むことを特徴とする、ヘルペス治療用の薬学的製剤の製造方法。
【請求項2】
前記の特定の担体が、リポソーム、マイクロスフェア、ナノ粒子、「大型多孔性粒子」、レーザーパルス−ポリマー被覆分子粒子及び/又は他のミセルを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記防腐薬化合物が、酸素−及びハロゲン−放出性化合物、好ましくはヨウ素及びヨウ素複合体、並びに/又は金属化合物、好ましくは銀−及び水銀−化合物を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記防腐薬化合物が、PVP−ヨウ素であることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記製剤が、追加の防腐薬化合物、例えば、ホルムアルデヒド放出性化合物を含む有機消毒薬、アルキル−及びアリール−フェノール系化合物を含むフェノール系化合物、キノリン及びアクリジン、ヘキサヒドロピリミジン、第四級アンモニア化合物、イミン並びにそれらの塩、並びにグアニジンを含むことを特徴とする、請求項1から4のうちの一項に記載の方法。
【請求項6】
前記製剤が、顆粒形成及び上皮形成を促進する追加の創傷治癒促進剤、例えばデキサパンテノール、アラントイン、アズレン、タンニン、ビタミン、好ましくはビタミンB及びそれらの誘導体を含むことを特徴とする、請求項1から5のうちの一項に記載の方法。
【請求項7】
前記粒子状担体、特にリポソームが、約1μmと約100μmの間、好ましくは約1μmと約50μmの間、最も好ましくは約1μmと約25μmの間の範囲のサイズを有することを特徴とする、先行請求項のうちの一項に記載の方法。
【請求項8】
前記粒子状担体、特にリポソームが、長期間にわたって、好ましくは数時間の持続期間にわたって活性化合物(類)を放出することを特徴とする、先行請求項のうちの一項に記載の方法。
【請求項9】
前記粒子状担体、特にリポソームが、前記放出時間にわたってほぼ同じ放出速度で活性化合物(類)を放出することを特徴とする、請求項8に記載の調製。
【請求項10】
前記製剤が、添加剤及びアジュバント、例えば、保存薬、酸化防止剤及び硬度形成用添加剤を含むことを特徴とする、先行請求項のうちの一項に記載の方法。
【請求項11】
前記製剤が、化合物担持粒子状担体を含む溶液、懸濁液、分散液、軟膏、スプレー剤、ローション、クリーム、ゲル又はヒドロゲルの形態で、好ましくはリポソーム溶液、懸濁液、分散液、軟膏、ローション、クリーム、ゲル又はヒドロゲルの形態で提供されるものである、先行請求項のうちの一項に記載の方法。
【請求項12】
前記製剤が、
・薬学的に許容されるリポソーム膜形成物質を含むリポソーム、及び
・0.1%から5%のPVP−ヨウ素溶液(前記PVP複合体中に約10%の利用可能なヨウ素を伴うもの)
を含む、薬学的溶液−、懸濁液−、分散液−、軟膏−、ローション−、クリーム−、ゲル−又はヒドロゲル−調合物であり、
ここで、前記リポソームは、約1μmと約50μmの間の直径を有するサイズのものであり、かつ、場合により、前記調合物は、薬学的溶液−、懸濁液−、分散液−、軟膏−、ローション−、クリーム−、ゲル−又はヒドロゲル−調合物の通例の添加剤、アジュバント及び補助物質を追加的に含む、先行請求項のうちの一項に記載の方法。
【請求項13】
前記リポソームが、約1μmと約25μmの間の直径を有するサイズのものであることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記製剤が、ヘルペスの治療、特に、単純疱疹ウイルスI型及び/若しくはII型又は帯状疱疹などのヘルペスウイルスの感染に起因するヘルペス感染の症状の治療に適するものである、先行請求項のうちの一項に記載の方法。
【請求項15】
前記製剤が、口唇疱疹、陰部疱疹、熱性疱疹、日光性疱疹、月経性疱疹及び/又は外傷性疱疹の治療に適するものである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記製剤が、帯状ヘルペス、顔面丹毒、水痘、又は帯状疱疹ウイルスによって誘発される他の炎症性皮膚病の治療に適するものである、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記製剤が、様々なヘルペス形態の様々な症状及び原因の局所治療、好ましくは顔面、口唇、胸領域、性器領域及び四肢における皮膚損傷及び水疱の治療並びに痒みの抑制に使用することができるものである、先行請求項のうちの一項に記載の方法。
【請求項18】
前記製剤が、種々のヘルペス形態の経過の中で発生する細菌性及びウイルス性の炎症並びに感染の局所治療に使用することができるものである、先行請求項のうちの一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2006−518719(P2006−518719A)
【公表日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−501821(P2006−501821)
【出願日】平成16年2月12日(2004.2.12)
【国際出願番号】PCT/EP2004/001316
【国際公開番号】WO2004/073682
【国際公開日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【出願人】(599108792)ユーロ−セルティーク エス.エイ. (134)
【Fターム(参考)】