説明

ヘルメット

【課題】顔面を保護するためのシールドを備えるヘルメットにおいて、帽体にシールドを取り付ける際の煩雑さを軽減することのできるヘルメットを提供する。
【解決手段】ヘルメットは、ヘルメットの外殻である帽体10の内側に中空半球状の衝撃吸収用のライナー20が内装されている。ヘルメットは、ライナー20の表面に取り付けられ、ライナーの周状部の開口部27から当該ライナーの頂部に向けて延びる支持レール30と、支持レール30上を該支持レール30の延設方向に沿って移動可能に該支持レール30に取り付けられたシールド40とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘルメットに関し、特に顔面を保護するためのシールドを有するヘルメットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、頭部を保護するため頭部に着用されるヘルメットが知られている。また近年、こうしたヘルメットの中には、頭部を保護することに加え、顔面を保護するために顔面を覆うことのできる透明な樹脂製のシールドが設けられているものも増えてきている。例えば、特許文献1には、顔面保護用のシールドを備えたヘルメットの一例が記載されている。
【0003】
特許文献1に記載のヘルメットには、ヘルメットの外殻を構成する半球状の帽体(シェル)と、帽体の開口部である周状部に沿って帽体の内側で延びるプレートと、プレートに固定されて開口部から帽体頂部に向けて延びる支持レールとが設けられている。そして同ヘルメットには、顔面を保護するシールド(シールド面)が、支持レールの延設方向に移動可能に取り付けられている。すなわちシールドは、支持レール上を帽体頂部に向けて移動することによって帽体からの進出長を短縮して帽体内側に収納される一方、支持レール上を開口部に向けて移動することによって帽体からの進出長を伸長して着用者の顔面を保護し得る位置に配置される。これにより、ヘルメットは、顔面を保護する必要がある場合、顔面を覆う位置にシールドを進出させることができるようになるとともに、顔面を保護する必要がない場合、シールド面を帽体内側に収納させることができるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−261075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のような特許文献1に記載のヘルメットによれば、顔面の保護の要否に応じてシールドを帽体に対して出し入れすることができるようになる。
ところで、ヘルメットを構成する帽体の内部には、衝撃吸収用のライナーと、ライナーと頭部との隙間を所定の間隔に維持するハンモックや、帽体を頭部に固定するためのヘッドバンドなど多くの部材が内装されている。そのため、このような帽体の内部に上述した構成のプレートやシールドを組み付けることは容易ではない。例えば、帽体にライナーを固定した後にその帽体にプレートを固定する場合には、帽体とライナーとの間にシールドとプレートとを差込み、且つ、この状態で帽体にプレートを固定する必要がある。また、帽体にプレートを固定した後にその帽体にライナーを固定する場合には、プレートと帽体との固定具を避けるように帽体内にライナーを進入させ、その後、シールドとプレートとを避けるようにライナーを帽体に固定する必要がある。それゆえに、上述したヘルメットにおいては、帽体内にシールドを組み付ける際の作業の煩雑さを軽減することが求められている。
【0006】
本発明は、このような実情に鑑みなされたものであって、その目的は、顔面を保護するためのシールドを備えるヘルメットにおいて、帽体にシールドを取り付ける際の煩雑さを軽減することのできるヘルメットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、ヘルメットの外殻である帽体の内側に中空半球状の衝撃吸収用のライナーが内装されているヘルメットであって、前記ライナーの表面に取り付けられ、前記ライナーの周状部から当該ライナーの頂部に向けて延びる支持レールと、前記支持レール上を該支持レールの延設方向に沿って移動可能に該支持レールに取り付けられたシールドとを備えることを要旨とする。
【0008】
上述したように、帽体にプレートを固定した後にその帽体にライナーを固定する場合には、帽体の周状部のみならず、帽体とプレートとを固定する固定具をも避けるように、帽体内にライナーを進入させる必要がある。この点、上述した構成によれば、支持レールを介してシールドとライナーとが一体になるため、帽体にシールドを取り付ける際には、帽体内に進入させる物を従前と同じく一体物として取り扱うことが可能になる。そのうえで、帽体の周状部のみを避けるように、こうした一体物を帽体の内部に進入させることで足りる。それゆえに、帽体内にシールドを組み付ける際の作業の繁雑さを軽減することができる。
【0009】
また、支持レールはライナーの表面に配置されることから、嵌め込みや締結、ビス止め、接着など、比較的簡単な方式によるライナーへの取り付けが可能になる。このため、例えば、支持レールとシールドとの連結位置から脚を延ばすような構造を不要とすることができるようになる。
【0010】
さらに、衝撃吸収用であるライナーは、帽体に比べて柔らかく、厚みもあること、また、帽体に内装されるため、デザイン性や耐摩耗性、耐損傷性などに対する要求が高くないことなどから、シールドを取り付ける際の加工にかかる自由度も大きい。
【0011】
このようなことから、ライナーの形状を支持レールの構造に適合させることが容易であるため、支持レールの構造や取り付けにかかる自由度が高くなり、取り付けにかかる構造の複雑化や煩雑化を抑制させるような設計も可能になる。つまり、ヘルメットの設計や組み立てに関する複雑化や煩雑化が自ずと抑制されるようになる。
【0012】
さらに本発明は、上述したヘルメットにおいて、前記支持レールが、前記ライナーの外表面に取り付けられ、前記シールドが、前記支持レールによって前記ライナーの外表面側に支持されることにより、前記ライナーの外表面と前記帽体の内表面との間を移動することを要旨とする。
【0013】
このような構成によれば、シールドがライナーと帽体の間を移動するため、シールドの移動がライナー内側に配置される部材や頭髪などに干渉するおそれが防止される。これにより、ヘルメットの取り扱いにかかる制約を減らすことができる。
【0014】
さらに本発明は、上述したヘルメットにおいて、前記支持レールが、前記ライナーに対向する側に突出形成された爪を前記ライナーに形成された嵌合部に嵌合され、前記シールドが、前記支持レールの延出方向に交差する方向から挟むように設けられた爪を前記支持レールに嵌合されていることを要旨とする。
【0015】
このような構成によれば、ライナーへの支持レール及びシールドの取り付け構造を簡単にすることができる。また、ライナーへの支持レールの取り付けや、支持レールへのシールドの取付を、爪の嵌合により行うようにすることで、ライナーに対する支持レールの着脱や、支持レールへのシールドの着脱、つまり、ライナーに対するシールドの着脱を可能にすることができる。これにより、シールドを有するヘルメットとしても、その組み立てや保守を容易にすることができる。
【0016】
さらに本発明は、上述したヘルメットにおいて、前記ライナーが、発泡ポリスチレンからなり、前記支持レールが、高密度ポリエチレンからなり、前記シールドが、ポリカーボネートからなることを要旨とする。
【0017】
このような構成によれば、ライナーの強度などの材料特性に対して支持レールを適切な可撓性を有する特性に形成することができるようになるとともに、該支持レールを、シールドの取り付け及び摺動に適した特性を有する強度にすることなどもできるようになる。また、シールドとしても、透明性や保護強度を維持しつつ、支持レールへの取り付け強度特性などが適切になるように形成することができる。
【0018】
さらに本発明は、上述したヘルメットにおいて、前記ヘルメットの周状部の内側であって、前記シールドの移動に干渉しない位置には係止部が設けられ、前記係止部に係止されたハンモック取付部材にハンモックが取り付けられることを要旨とする。
【0019】
このような構成によれば、ハンモック取付部材を取り付ける係止部がシールドの移動に干渉しないようになることから、シールドの移動の自由度が確保される。また、ライナーの内側に配置されるハンモックを取り付けるハンモック取付部材は、係止部に対してライナーの内側方向に取り付けられるものであるため、自ずとシールドとの干渉が避けられるようになる。また、ハンモックは、頭部への衝撃を吸収するためのものであることからその適切な配置が求められるが、ハンモック取付部材を介すことによりに係止部の位置にかかわらず適切な配置にすることができるようになる。すなわちハンモック取付部材を介してハンモックを取り付けることで、ハンモック取付部材の形状の工夫によってハンモックの取り付け位置の自由度も向上させることができるようにもなる。
【0020】
さらに本発明は、上述したヘルメットにおいて、前記係止部がヘルメットの側面にそれぞれ一式ずつ設けられており、各一式の係止部にハンモック取付部材が係止されることでヘルメットの両側に配置された各ハンモック取付部材の間にハンモックが架け渡されていることを要旨とする。
【0021】
このような構成によれば、ハンモックを各ハンモック取付部材に架け渡すようにすることで、ハンモック取付部材の間隔を広くすることができるようになる。すなわち、ハンモック取付部材を係止させる係止部の間隔についても広くすることが可能になる。これにより、係止部の間に移動可能に配置されるシールドの幅をより広くすることができるようになる。
【0022】
さらに本発明は、上述したヘルメットにおいて、前記ヘルメットの載置位置を頭部に対して規定させるヘッドバンドが、前記ハンモック取付部材を介して前記係止部に取り付けられることを要旨とする。
【0023】
このような構成によれば、ヘッドバンドの取り付けが、ハンモック取付部材を介して行われるため、その取り付け位置が、係止部の位置に制約されることなく、自由度が向上する。つまり、シールドとヘッドバンドとの干渉を抑制させることができるようになる。
【発明の効果】
【0024】
このようなシールドを有するヘルメットによれば、顔面を保護するためのシールドの帽体への取り付けの際の煩雑さが軽減されるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係るヘルメットが具体化された一実施形態について、その分解した斜視構造を示す斜視図。
【図2】同実施形態のヘルメットに内装されるライナーとシールドとの取り付け構造を示す正面図。
【図3】同実施形態のヘルメットの底面構造を示す底面図。
【図4】同実施形態のヘルメットの側面構造を示す側面図。
【図5】同実施形態のヘルメットについてハンモックを取り付けた状態における底面構造を示す底面図。
【図6】同実施形態のヘルメットについてヘッドバンドを取り付けた状態における底面構造を示す底面図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明のヘルメットが具体化された一実施形態について、図1〜図6に従って説明する。なお、このヘルメットは主に人の頭部に着用される頭部保護用のヘルメットである。
【0027】
図1に示されるように、ヘルメットは、その外殻を構成する中空半球状の帽体10と、帽体10に内装される中空半球状のライナー20と、ライナー20に取り付けられる支持レール30と、支持レール30に取り付けられるシールド40とを備えている。
【0028】
帽体10は、例えばアクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体等のABS樹脂によって形成されたものであり、その表面には帽体10を内側から外側まで貫通する複数の通気孔11が設けられている。また帽体10は、中空の半球形状が形成する周状の開口である開口部12の一部分に、雨や落下物等から使用者の顔面を保護するため、外周に向けて突出する庇部13が設けられ、開口部12の他の部分には、外側に折り返された折り返し部14が設けられている。なお、このヘルメットは、着用者の顔面を庇部13の延びる方向に向けるように当該着用者の頭部に着用されるものであるため、庇部13の設けられている側が前側であるとともに、この状態で後頭部側となる側が後側である。また、このヘルメットは、帽体10において、開口部12の開口する側が下側であり、開口部12からみて中空半球状の奧側、つまり半球形状の頂部側が上側である。
【0029】
図2を併せ参照すると、ライナー20は、帽体10と頭部との間に介在することにより帽体10に外部から加わる衝撃を吸収し、頭部に与えられる衝撃を弱くするための衝撃吸収用の部材であって、中空の半球形状に、かつ、所定の厚みを有する形状に形成されている。ライナー20の材質としては発泡ポリプロピレンや発泡ポリスチレン(いわゆる発泡スチロール)が好ましく、特に発泡ポリスチレンが好適である。ヘルメット用のライナーとしては、発泡倍率が10倍から30倍まで種々なものがあるが、頭部に与えられる衝撃緩衝や、後述する支持レール30の固定を考慮すると、発泡倍率が18倍から23倍までの間にある発泡ポリスチレンが好ましく、特に20倍の発泡倍率である発泡ポリスチレンが好ましい。また、発泡倍率が20倍である場合に定まる所定の厚みは、ヘルメットに加わる所定の衝撃を吸収して所定の強さに弱める(いわゆる衝撃緩衝)ことのできる厚みである。そしてこの厚みは、例えば労働安全衛生法の規定に基づく保護帽(いわゆるヘルメット)の規格に定める耐貫通性試験や衝撃吸収性試験、もしくはJIS規格産業用安全帽に定める耐貫通性試験や衝撃吸収性試験に基づいて定められる。
【0030】
ライナー20の外表面は、帽体10の内表面の凹凸に対応する凸部21や凹部22などが形成されていて、帽体10の内表面に嵌合できるようになっているとともに、帽体10に内装されたライナー20の外表面ができるだけ広い面積で帽体10の内表面に接することを可能にしている。また、ライナー20は、そのライナー20を内表面側から外表面側まで厚み方向に貫通する通気孔23が、帽体10の通気孔11に連通し得る態様で複数設けられている。さらに、ライナー20の外表面の前側には、シールド収納部28が設けられている。シールド収納部28は、帽体10と帽体10に内装されたライナー20との間にシールド40を収納可能な隙間を設けるため、ライナー20の外表面をシールド40の厚みか、その厚みよりも深く掘り下げた態様となっている部分である。つまり、シールド収納部28の厚みは、ライナー20の他の部分に比べて薄くなっているものの、所定の衝撃吸収性能を確保しうる厚みには維持されている。また、シールド収納部28の平面形状は、シールド40を収容できるようにシールド40の平面形状とおなじか、少し広い範囲に形成された形状をしている。シールド収納部28の外表面の前側には、開口部27側(下側)から頂部(上側)に向けて支持レール30を配置させるレール取付部24が延設されている。レール取付部24は、その表面形状が支持レール30を当接可能に形成されているとともに、開口部27側に第1係合部25が形成され、頂部側に第2係合部26が形成されている。
【0031】
図3に示すように、第1係合部25は、開口部27にライナー20の厚み方向に外表面側から内表面側まで延びる溝として形成され、第2係合部26は、ライナー20の頂部側に所定の深さを有する孔として形成されている。なお、第2係合部26は、ライナー20に貫通形成されていてもよい。
【0032】
支持レール30は、ライナー20とシールド40との間に介在し、シールド40をライナー20に移動可能な態様で取り付けるための部材であって、高密度ポリエチレン(HDPE)によって縦長の矩形板状に形成されている。そして、支持レール30は、ライナー20の開口部27である下側から頂部側である上側に向けてその長辺を沿わせるようにしてシールド収納部28の外表面のレール取付部24に取り付けられている。つまり、支持レール30は、ライナー20の上下方向に長辺が沿うようにライナー20の外表面に取り付けられている。なお、支持レール30は、高密度ポリエチレン(HDPE)から形成されることによって、ライナー20に好適に嵌合できる弾性力や、衝撃を吸収する衝撃吸収力や、シールド40を移動可能に支持できる剛性などの特性がそれぞれ適切な性能となるように付与されている。また本実施形態の高密度ポリエチレンは、例えば、密度0.941〜0.970[g/cm]、結晶化度65〜85[%]、融点130〜137[℃]である。
【0033】
支持レール30は、上下方向に延びる長辺にシールド嵌合部31が形成され、長辺の上側となるシールド嵌合部31の上端側には上ストッパ32が形成され、長辺の下側となるシールド嵌合部31の下端側には下ストッパ33が形成されている。支持レール30は、外表面であって縦方向両側のシールド嵌合部31に挟まれる位置に2列の位置調節部34が縦方向に並列形成されている。各位置調節部34には、長辺に沿う縦方向(上下方向に)に一列に複数の凹部34aが整列配置されている。2列の位置調節部34は同数の凹部34aからなり、一方の位置調節部34に設けられている各凹部34aは、他方の位置調節部34に設けられている凹部34aに一対一に対応している。そして、一対一の対応関係にある2列の凹部34aは、長辺方向(上下方向)に直交する横方向において略水平の関係となるように支持レール30に配置されている。
【0034】
さらに、支持レール30には、開口部側である下側にライナー20の内表面側に向いて突出する第1の係止部35が形成され、頂部側である上側にライナー20の内表面側に向いて突出する第2の係止部36が形成されている。
【0035】
第1の係止部35は突出した先の端部に、第2の係止部36の向きである上側に向いて折り返された爪状のかぎ部35aが形成されている。第1の係止部35が下側に押圧変形されつつライナー20の第1係合部25に嵌合されたとき、ライナー20の内表面に配置されたかぎ部35aが弾性力により上側方向に移動することで、支持レール30の当接面とかぎ部35aとの間に開口部27を挟み込み、第1係合部25に第1の係止部35を固定させる。つまり、かぎ部35aの上側方向への移動は、支持レール30の弾性力に基づくものであり、第1係合部25への取り付ける際、下側方向に変形された第1の係止部35が、第1係合部25に嵌合された後、その弾性力によりもとの形状に戻ろうとする力による移動である。
【0036】
第2の係止部36は突出した先の端部に、第1の係止部35の向きである下側に向いて折り返された爪状のかぎ部36aが形成されている。第2の係止部36が上側に押圧変形されつつライナー20の第2係合部26に嵌合されたとき、ライナー20に形成された第2係合部26内に配置されたかぎ部36aが弾性力により下側方向に移動することで、支持レール30の当接面とかぎ部36aとの間に第2係合部26の側面を挟み込み、第2の係止部36を第2係合部26に固定させる。つまり、かぎ部36aの下側方向への移動は、支持レール30の弾性力に基づくものであり、第2係合部26に取り付ける際、上側方向に変形された第2の係止部36が、第2係合部26に嵌合された後、その弾性によりもとの形状に戻ろうとする力による移動である。
【0037】
なお、かぎ部36aを含めた第2の係止部36のライナー20への取り付け作業性と、第2の係止部36と第2係合部26との嵌合固定力と、ライナー20の変形低減と、ライナー20の耐衝撃吸収力との総合考慮により、ライナー20の発泡ポリスチレンの発泡倍率と支持レール30の高密度ポリエチレンの密度との好適な組み合わせが見いだされた。すなわち、ライナー20の18倍〜23倍の発泡倍率の発泡ポリスチレンに対しては、支持レール30の密度0.950〜0.970[g/cm]の高密度ポリエチレンが好ましく、なかでも、発泡倍率20倍の発泡ポリスチレンに対する密度0.966[g/cm]の高密度ポリエチレンの組み合わせが特に好ましい。
【0038】
シールド40は、視界を確保しつつ顔面を保護するためのものであって、透明もしくは半透明なポリカーボネート(PC)からなり、ライナー20のシールド収納部28に収納可能な円弧状に湾曲形成されている。シールド40は、シールド収納部28と同様の湾曲形状に形成されたシールド面43と、シールド面43のライナー20の頂部側である上側に設けられたシールド支持部41と、シールド面43のライナー20の開口部側である下側に設けられた下端部42とをそれぞれ備えている。
【0039】
シールド支持部41は、シールド40を支持レール30に取り付けさせる部材であり、支持レール30を介してライナー20に取り付けたシールド40のシールド面43がシールド収納部28の外表面に対して所定の隙間を有するように、シールド40を支持レール30に支持させる。つまり本実施形態では、シールド支持部41は、シールド面43よりも内側に突出された位置に形成されているため、シールド面43は、シールド支持部41によってシールド収納部28の外表面に対して外側に離間配置される。これによって、シールド40がシールド収納部28の外表面に擦れることが低減されるようなっている。加えて、ライナー20の外表面におけるシールド面43の配置位置は、シールド面43の外側の表面が帽体10に擦れることの少ない位置に設定されることが望ましい。
【0040】
また、シールド支持部41には、支持レール30の2つの長辺にそれぞれ形成されたシールド嵌合部31を長辺に直交する幅方向に挟む一対のレール嵌合部44が形成されている。一対のレール嵌合部44はシールド支持部41の平面からライナー20の方向に突出されたガイドをそれぞれ有し、各ガイドの端部には、対となるガイドの方向に突出する爪部44aが形成されている。すなわちシールド支持部41は、支持レール30を爪部44aとシールド支持部41の内表面とで厚み方向に挟み込むとともに、支持レール30を2つのガイドで幅方向に挟み込むことで、シールド40を支持レール30に取り付けさせるようになっている。このようにシールド支持部41は支持レール30を厚み方向、及び、幅方向に挟み込むため、支持レール30の厚み方向、及び、幅方向には移動しない。一方、シールド支持部41は支持レール30を縦方向には挟み込んでいないため、縦方向である長辺に沿う向きには移動可能となっている。すなわち、図4に示すように、シールド40は、シールド支持部41を介して支持される支持レール30を矢印で示す上下方向(縦方向)へ移動可能になっている。なお、爪部44aは、支持レール30の上側の端部では上ストッパ32に当接してそれより上側には移動しないようになっているとともに、下側の端部では下ストッパ33に当接してそれより下側には移動しないようになっているため、それぞれの当接位置によりシールド40の最大収納位置及び最大進出位置が規定される。
【0041】
シールド支持部41には、支持レール30の位置調節部34に対向する位置に位置決め部45が形成されている。位置決め部45には、シールド支持部41の平面を三方の切り込みにより区画した区画部が形成されているとともに、区画部の端部には位置調節部34に対して内側表面から突出する凸部45aを有している。区画部は、三方の切り込みによりシールド支持部41に対してシールド40の外表面の向き及び内表面の向きへの弾性力を有する。凸部45aは、位置調節部34に対向する位置に形成されるとともに、位置調節部34に形成された各凹部34aに嵌る大きさ及び突出長さに形成されている。これにより、シールド支持部41が支持レール30に取り付けられた状態では、位置決め部45の凸部45aは、位置調節部34に形成された凹部34aのいずれか一つに嵌合することになるため、シールド支持部41は支持レール30を自由に上下方向に移動することがない。その一方、シールド40に下方もしくは上方への力が印加されると、その力が位置決め部45の凸部45aに作用して区画部を外表面側に変形させて凹部34aを乗り出す力となるため、凸部45aが凹部34aから乗り出して隣接する凹部34aに移動できるようになる。このようにして、シールド40は、図4に示す矢印方向である上下方向に対して、各凹部34aの位置に規定される各位置決め位置に自在に配置させることができるようになっている。
【0042】
ところで、ヘルメットには、頭部への衝撃を吸収するハンモックと、頭部に対する位置を固定するヘッドバンドとが設けられている。そこで、まず、図3を参照して、ハンモックやヘッドバンドを支持するため帽体10に設けられている係止部15について説明する。
【0043】
図3に示すように、帽体10には、帽体10の周状部内表面にハンモックやヘッドバンドを内装させるために用いられる複数の係止部15が帽体10に一体形成されている。詳述すると、係止部15は、帽体10の前側と後側との間に位置する各側面、いわゆる左側面及び右側面にそれぞれ2つずつ設けられており、各側面の2つの係止部15が1組で一式とされる。いわゆるヘルメットは、帽体10において着用者の耳に近い部分に側面を有している。ところでこのとき、帽体10の前側にはシールド40が移動可能に設けられているため、各組の係止部15の中で特に前側に配置されている係止部15は、シールド40の移動に干渉しない位置に設けられている。なお、顔面の保護範囲を広くするため、シールド40の幅は広いことが望まれているため、前側の係止部15はできるだけ前側から離れた位置に配置されるようになっている。つまり、各組を構成する2つの係止部15の相互間隔に比較して、2つの組の前側の係止部15相互の間隔が広く確保されている。
【0044】
ところで通常、係止部は、帽体の周状の開口部に対して等間隔に、例えば周の中心に対し略90°毎に4つ、または略45°毎に8つ、または略60°毎に6つ配置されることが望まれている。これは、等間隔に配置された係止部には、係止部に取り付けられるハンモックやヘッドバンドにかかる力が均等に分散支持されると考えられているからである。しかしながら、係止部は、同じく帽体の内側に設けられるシールドに干渉することが避け難く、係止部の配置位置はシールドの幅を規制する。そこで本実施形態では、係止部15を帽体10の側面に設けることによって、シールドの幅を広く確保できるようにしている。具体的には、図3に示すように、帽体の周状の開口部12について、平面視したときの周の中心に対して前側の1組の係止部15を前後方向に延びる軸の前側から60°〜90°開いた角度の範囲に、後側の1組の係止部15を同じく前後方向に延びる軸の後側から40°〜90°開いた角度の範囲にそれぞれ設けている。なお、前後方向に延びる軸は帽体10の前側と後側と開口部12の周中心とを通るように設定された軸あって、例えば帽体10の開口部12を線対称とし得るような軸である。つまり、前後方向に延びる軸に直交するとともに、開口部12の周中心を通る軸に対し、前側の1組の係止部15を前側の0°〜30°の範囲に、後側の1組の係止部15を後側の0°〜45°の範囲にそれぞれ設けている。
【0045】
次に、図5を参照して、このヘルメットに設けられるハンモックについて説明する。
図5に示すように、1組の係止部15には、1つのハンモック取付部材50が取り付けられている。ハンモック取付部材50は、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(L−LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)などのポリエチレンから形成されている。なお本実施形態のLDPEは、例えば、密度0.910〜0.925[g/cm]、結晶化度45〜55[%]、融点98〜115[℃]であり、L−LDPEは、例えば、密度0.918〜0.940[g/cm]、結晶化度50〜60[%]、融点122〜124[℃]である。
【0046】
ハンモック取付部材50には、1組の係止部15を構成する2つの係止部15に対応する2つの止め部51が形成されており、それら止め部51を2つの係止部15に嵌め込むことでハンモック取付部材50が帽体10に取り付けられる。ハンモック取付部材50には、止め部51よりも帽体10の奧側である頂部側にハンモック53を締結させる締結部52が形成され、締結部52よりも頂部側にライナー20の開口部27に当接してライナー20を帽体10に押圧固定させるライナー固定部52Aが形成されている。締結部52は、所定の位置に締結されたハンモック53を他の位置に移動させないようにするため、前側から後側にかけて3つの領域52a,52b,52cに区画されており、各領域52a,52b,52cにそれぞれ1つずつハンモック53を締結される。
【0047】
ハンモック53は、ヘルメット着用者の頭部に当接することでヘルメットの帽体10と着用者の頭部との隙間を所定の間隔に維持させるとともに、その間隔を維持させようとする構造によって帽体10への衝撃を吸収し、頭部への衝撃を弱くさせるようにするものである。ハンモック53は、合成繊維などから帯状に形成されており、各ハンモック53は、一方の端部を一方のハンモック取付部材50の締結部52に締結されるとともに、他方の端部を他方のハンモック取付部材50の締結部52に締結される。これにより、ハンモック53は、帽体10の内側空間を横断する態様で帽体10の両側に設けられたハンモック取付部材50の間を架け渡されるようになっている。なお、本実施形態では、各ハンモック53はその両端を、各ハンモック取付部材50の締結部52にあって前方に対して同じ位置にある区画にそれぞれ締結させるようになっている。すなわち、2つのハンモック取付部材50に分かれて配置されている2つの前側の領域52aの間に1つ目のハンモック53が架け渡され、同じく2つの中央の領域52bの間に2つ目のハンモック53が架け渡され、同じく2つの後側の領域52cの間に3つ目のハンモック53が架け渡される。これにより、帽体10には、前側から後側にかけて3つのハンモック53が並列に設置される。なお、3つのハンモック53は頭部に当接する平面を頭部の形状などの球面に対向するように配置されることにより、平面への力が球面の中心に向かってかかるようになるため、ハンモック53の頭部等に対するずれが抑制されるようになる。すなわち、3つのハンモック53のうち、中央のハンモック53を最も頂部に近い位置に配置させるとともに、前側のハンモック53及び後側のハンモック53の平面をそれぞれ中央のハンモック53側に傾けるようにするとよい。例えば、前後のハンモックの平面は、中央のハンモックの平面に対して45°を中心とした30°〜60°の範囲、好ましくは40°〜50°の範囲の傾斜を有している。なお、この傾斜は、中央の領域52bのハンモック53が締結される部分に対して、前後側の領域52a,52cのハンモック53が締結される部分を傾けることで設定されている。
【0048】
ハンモック取付部材50には、前側及び後側にそれぞれヘッドバンド取付部55が設けられている。前側のヘッドバンド取付部55は、前側の係止部15よりも前側方向に延出されているとともに、後側のヘッドバンド取付部55は、後側の係止部15よりも後側方向に延出されている。ヘッドバンド取付部55は、延出された先端部分にバンド係止部56が設けられている。こうして帽体10にヘッドバンド取付部55を介して設けられる4つのバンド係止部56は、帽体10に形成された4つの係止部15の配置に比べて、帽体10の開口部の円周において、より均等に近い間隔で配置される。
【0049】
続いて、図6を参照して、このヘルメットに設けられるヘッドバンドについて説明する。帽体10には、着用者の頭部に対して帽体10の位置を固定する周状のヘッドバンド60が設けられている。ヘッドバンド60は、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(L−LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)などのポリエチレンから形成されているバンドであり、ヘッドバンド取付部55にバンド係止部56を介して取付けられている。これにより、ヘッドバンド60は、その外周が略均等な間隔でヘッドバンド取付部55に取り付けられている。ヘッドバンド60の後側には、調整部61が設けられている。調整部61はヘッドバンド60の周長を拡大・縮小させることができる構成となっており、着用者の頭部の大きさに適合するようにヘッドバンド60の周長を調整させることができるようになっている。この周長の調整によりヘッドバンド60が着用者の頭部に固定される。
【0050】
なお、ヘッドバンド60は固定される着用者の頭部に、当該ヘッドバンド60のバンド全体から均等に力がかかることが好ましい。その一方、ヘッドバンド60は帽体10に取り付けるために、帽体10に固定されなければならない。このとき、ヘッドバンド60の帽体10に対する固定位置の間隔が不均一になると、ヘッドバンド60が頭部に加える力が不均一になり、着用者に不快感を与えるおそれがある。本実施形態によれば、ヘッドバンド60の帽体10に対する固定位置の間隔が略均等にされているため、ヘッドバンド60が頭部に加える力が均一に近くなることが期待され、ヘッドバンド60の締結力が着用者の頭部に不快感を与えるおそれが軽減されるようになる。
【0051】
以上説明したように、本実施形態のヘルメットによれば、以下に列記するような効果が得られるようになる。
(1)前述したように、帽体にプレートを固定した後にその帽体にライナーを固定する場合には、帽体の周状部のみならず、帽体とプレートとを固定する固定具をも避けるように、帽体内にライナーを進入させる必要がある。この点、本実施形態は、支持レール30を介してシールド40とライナー20とが一体になるため、帽体10にシールド40を取り付ける際には、帽体10内に進入させる物を従前と同じく一体物として取り扱うことが可能になる。そのうえで、帽体10の周状部のみを避けるように、こうした一体物を帽体10の内部に進入させることで足りる。それゆえに、帽体10内にシールド40を組み付ける際の作業の繁雑さを軽減することができる。
【0052】
また、支持レール30は第1及び第2の係止部35,36を介してライナー20の外表面に嵌め込みにより取り付けられる。このため、例えば、支持レールとシールドとの連結位置から脚を延ばすような構造を不要とすることができるようになる。
【0053】
さらに、衝撃吸収用であるライナー20は、帽体10に比べて柔らかく、厚みもあること、また、帽体10に内装されるため、デザイン性や耐摩耗性、耐損傷性などに対する要求が高くないことなどから、シールド40を取り付ける際の加工にかかる自由度も大きい。
【0054】
このようなことから、ライナー20の形状を支持レール30の構造に適合させることが容易であるため、支持レール30の構造や取付にかかる自由度が高くなり、取り付けにかかる構造の複雑化や煩雑化を抑制させるような設計も可能になる。つまり、ヘルメットの設計や組み立てに関する複雑化や煩雑化が自ずと抑制されるようになる。
【0055】
(2)シールド40がライナー20と帽体10の間を移動するため、シールド40の移動がライナー20内側に配置される部材や頭髪などに干渉するおそれが防止される。これにより、ヘルメットの取り扱いにかかる制約を減らすことができる。
【0056】
(3)ライナー20への支持レール30及びシールド40の取り付け構造を簡単にすることができる。また、ライナー20への支持レール30の取り付けや、支持レール30へのシールド40の取付を、かぎ部35a,36aや爪部44aの嵌合により行うようにすることで、ライナー20に対する支持レール30の着脱や、支持レール30へのシールド40の着脱、つまり、ライナー20に対するシールド40の着脱を可能にすることができる。これにより、シールド40を有するヘルメットとしても、その組み立てや保守を容易にすることができる。
【0057】
(4)ライナー20の強度などの材料特性に対して支持レール30を適切な可撓性を有する特性に形成することができるようになるとともに、該支持レール30を、シールド40の取り付け及び摺動に適した特性を有する強度にすることなどもできるようになる。また、シールド40としても、透明性や保護強度を維持しつつ、支持レール30への取り付け強度特性などが適切になるように形成することができる。
【0058】
(5)ハンモック取付部材50を取り付ける係止部15がシールド40の移動に干渉しないようになることから、シールド40の移動の自由度が確保される。また、ライナー20の内側に配置されるハンモック53を取り付けるハンモック取付部材50は、係止部15に対してライナー20の内側方向に取り付けられるものであるため、自ずとシールド40との干渉が避けられるようになる。また、ハンモック53は、頭部への衝撃を吸収するためのものであることからその適切な配置が求められるが、ハンモック取付部材50を介すことによりに係止部15の位置にかかわらず適切な配置にすることができるようになる。すなわちハンモック取付部材50を介してハンモック53を取り付けることで、ハンモック取付部材50の形状の工夫によってハンモック53の取り付け位置の自由度も向上させることができるようにもなる。
【0059】
(6)ハンモック53を各ハンモック取付部材50に架け渡すようにすることで、ハンモック取付部材50の間隔を広くすることができるようになる。すなわち、ハンモック取付部材50を係止させる係止部15の間隔についても広くすることが可能になる。これにより、係止部15の間に移動可能に配置されるシールド40の幅をより広くすることができるようになる。
【0060】
(7)ヘッドバンド60の取り付けが、ハンモック取付部材50を介して行われるため、その取り付け位置が、係止部15の位置に制約されることなく、自由度が向上する。つまり、シールド40とヘッドバンド60との干渉を抑制させることができるようになる。
【0061】
(その他の実施形態)
なお上記実施形態は、以下の態様で実施することもできる。
・上記実施形態では、帽体10の各側面に設けられた2つの係止部15が1組で一式とされる場合について例示した。しかしこれに限らず、各側面にそれぞれ、同側面に必要とされるハンモック取付部材を取り付けることができるのであれば、各側面に設けられる係止部の数は、1つでも、3つ以上であってもよい。そして、1つの側面に設けられた1つの係止部や、もしくは3つ以上の係止部の組を一式として取り扱うようにしてもよい。
【0062】
このとき、一式の係止部に取り付けられるハンモック取付部材は、1つであっても複数であってもよい。例えば、一式4つの係止部の場合、4つの係止部に1つのハンモック取付部材を取り付けてもよいし、2つの係止部毎に1つのハンモック取付部材を取り付けてもよいし、1つの係止部毎に1つのハンモック取付部材を取り付けてもよいし、これらの取り付け方を組み合わせてもよい。また例えば、1つの係止部に複数のハンモック取付部材を取り付けてもよい。いずれの取り付け方であれ、ハンモック取付部材の止め部を、対応する係止部に応じて形成させるようにすることで実施できるようになる。
【0063】
これにより、シールドを有するヘルメットにおけるハンモック取り付けにかかる自由度が向上するようになる。
・上記実施形態では、帽体10の両側に設けられるハンモック取付部材50に3つのハンモック53が並列に架け渡される場合について例示した。しかしこれに限らず、ハンモック取付部材に架け渡されるハンモック53の数は、3つより多くてもよいし、面状のハンモックであれば、3つより少なくてもよい。これにより、シールドを有するヘルメットにおける設計自由度が向上するようになる。
【0064】
・また、ハンモック取付部材を周状に構成し、それを各係止部に取り付けるようにすることで、帽体に取り付けるハンモックの形状自由度を向上させてもよい。例えば、周状のハンモック取付部材に、帯状のハンモックを放射状に配置するようにしてもよい。これによっても、シールドを有するヘルメットにおける設計自由度が向上するようになる。なお、こうした周状のハンモック取付部材であってもハンモックと帽体との間に衝撃吸収用の間隔を維持させる性能を発揮するために、同様に周状のヘッドバンドとは別途に設ける必要がある。
【0065】
・上記実施形態では、ライナー20は、発泡倍率が20倍の発泡ポリスチレンである場合について例示した。しかしこれに限らず、ライナーに用いる発泡ポリスチレンの倍率は、15倍から28倍までの間であってもよく、より好ましくは18倍から23倍までの間であってもよい。発泡倍率が18倍から23倍までの間の発泡ポリスチレンであれば、所定の厚みに形成されたライナーの質量の変動幅を±5g程度の範囲に抑えることができるため、18倍から23倍までの発泡倍率は選択自由度が高い範囲である。これにより、ライナーを含むシールド付きヘルメットの設計自由度が向上するようになる。
【0066】
・上記実施形態では、支持レール30は、高密度ポリエチレン(HDPE)から形成される場合について例示した。しかしこれに限らず、支持レールは、シールドをライナーに好適に取り付けることができるのであれば、ポリアセタール(POM)や、ポリカーボネート(PC)や、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)などのその他の樹脂材料から形成されてもよい。これにより、支持レールを含むシールド付きのヘルメットの設計自由度などが向上するようになる。
【0067】
・上記実施形態では、シールド40は、透明もしくは半透明のPCから形成される場合について例示した。しかしこれに限らず、シールドは顔面を保護することのできる部材であれば他の樹脂などから形成されていてもよい。また、視界を確保するための窓部などを設けるようにした場合、不透明の樹脂などから形成されていてもよい。これにより、シールド付きのヘルメットの設計自由度などが向上するようになる。
【0068】
・上記実施形態では、支持レール30は、ライナー20の第2係合部26に取り付けられる第2の係止部36にかぎ部36aが設けられている場合について例示した。しかしこれに限らず、支持レールは、ライナーの第2係合部に好適に嵌合できるのであれば、第2の係止部にかぎ部が設けられていなくてもよい。例えば、ライナーの第2係合部の側面を前側に傾斜させ、同様の傾斜を支持レールの第2の係止部に設けることで、第2の係止部にかぎ部がなくても該第2の係止部をライナーの第2係合部に係合させることができるようになる。これにより、ライナーや支持レールの構造が簡単になるなど、シールド付きのヘルメットの採用可能性が高められる。
【0069】
・上記実施形態では、支持レール30は、ライナー20に爪状のかぎ部35a,36aを介して嵌合される場合について例示した。しかしこれに限らず、安全性が損なわれないのであれば、ライナーに支持レールを、バンドなどで締結したり、ビス止めしたり、接着したり、その他比較的簡単な方式により取り付けてもよい。これにより、シールド付きのヘルメットの設計自由度が向上するようになる。
【0070】
・上記実施形態では、シールド40がライナー20の外表面側に設けられる場合について例示したが、これに限らず、シールドをライナーの内表面側に設けるようにしてもよい。例えば、支持レールをライナーの内表面に沿うって配置できるように形成し、シールドの取付部をシールド面よりも外側に突出させるように設けることで、シールドをライナーの内表面側に設置することができる。なおこのとき、シールドの移動が頭髪等に干渉しないように、頭部を支持するハンモックとシールドとの間にシートなどを設けるとよい。これにより、シールド付きのヘルメットの設計自由度などが向上するようになる。
【符号の説明】
【0071】
10…帽体、11…通気孔、12…開口部、13…庇部、14…折り返し部、15…係止部、20…ライナー、21…凸部、22…凹部、23…通気孔、24…レール取付部、25…第1係合部、26…第2係合部、27…開口部、28…シールド収納部、30…支持レール、31…シールド嵌合部、32…上ストッパ、33…下ストッパ、34…位置調節部、34a…凹部、35…第1の係止部、35a…かぎ部、36…第2の係止部、36a…かぎ部、40…シールド、41…シールド支持部、42…下端部、43…シールド面、44…レール嵌合部、44a…爪部、45…位置決め部、45a…凸部、50…ハンモック取付部材、51…止め部、52…締結部、52A…ライナー固定部、52a,52b,52c…領域、53…ハンモック、55…ヘッドバンド取付部、56…バンド係止部、60…ヘッドバンド、61…調整部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘルメットの外殻である帽体の内側に中空半球状の衝撃吸収用のライナーが内装されているヘルメットであって、
前記ライナーの表面に取り付けられ、前記ライナーの周状部から当該ライナーの頂部に向けて延びる支持レールと、
前記支持レール上を該支持レールの延設方向に沿って移動可能に該支持レールに取り付けられたシールドとを備える
ことを特徴とするヘルメット。
【請求項2】
前記支持レールが、前記ライナーの外表面に取り付けられ、
前記シールドが、前記支持レールによって前記ライナーの外表面側に支持されることにより、前記ライナーの外表面と前記帽体の内表面との間を移動する
請求項1に記載のヘルメット。
【請求項3】
前記支持レールが、前記ライナーに対向する側に突出形成された爪を前記ライナーに形成された嵌合部に嵌合され、
前記シールドが、前記支持レールの延出方向に交差する方向から挟むように設けられた爪を前記支持レールに嵌合されている
請求項1又は2に記載のヘルメット。
【請求項4】
前記ライナーが、発泡ポリスチレンからなり、前記支持レールが、高密度ポリエチレンからなり、前記シールドが、ポリカーボネートからなる
請求項1〜3のいずれか一項に記載のヘルメット。
【請求項5】
前記ヘルメットの周状部の内側であって、前記シールドの移動に干渉しない位置には係止部が設けられ、前記係止部に係止されたハンモック取付部材にハンモックが取り付けられる
請求項1〜4のいずれか一項に記載のヘルメット。
【請求項6】
前記係止部がヘルメットの側面にそれぞれ一式ずつ設けられており、各一式の係止部にハンモック取付部材が係止されることでヘルメットの両側に配置された各ハンモック取付部材の間にハンモックが架け渡されている
請求項5に記載のヘルメット。
【請求項7】
前記ヘルメットの載置位置を頭部に対して規定させるヘッドバンドが、前記ハンモック取付部材を介して前記係止部に取り付けられる
請求項5又は6に記載のヘルメット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−104135(P2013−104135A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247108(P2011−247108)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(500272347)DICプラスチック株式会社 (27)
【Fターム(参考)】