説明

ベタインを分離するための方法

【課題】ベタインを分離するための方法を提供すること。
【解決手段】本発明は、クロマトグラフ分離プロセスにおいて+型弱酸性カチオン交換樹
脂により発酵処理溶液、ビナス及び他の甜菜をベースとした溶液からベタインを分離するための方法に関する。本発明はまた、ベタインのクロマトグラフ分離のためのH+型弱酸
性カチオン交換樹脂の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、甜菜をベースとした溶液からのH型弱酸性カチオン交換樹脂によるベタインのクロマトグラフ分離のための方法に関する。適する甜菜をベースとした溶液は、例えばビート由来の溶液、糖蜜、発酵処理溶液及びビナス(vinasse)の処理から得られる溶液を含む。本発明はまた、甜菜をベースとした溶液からのH型弱酸性カチオン交換樹脂による、ポリオール及び/又はカルボン酸のような付加化合物のクロマトグラフ分離のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
クロマトグラフ分離は、ビート糖蜜、ベタイン糖蜜、及びビナスのような天然物質からベタインを回収するために使用されている。既知のクロマトグラフ分離において最も一般的に使用される樹脂は、強酸カチオン交換体、すなわちジビニルベンゼンで3.5ないし8質量%架橋されたスルホン化ポリスチレンであり、該樹脂は一価又は二価の形態である。水は一般に好ましい溶出液であるが、水を使用することによる問題は、ベタイン、エリトリトール、イノシトール、スクロース及びマンニトールのような様々な生成物が同じような保持時間を有することで、それにより画分が重複することである。
【0003】
特許文献1は、ポリスチレンスルホン酸塩カチオン交換樹脂の塩のクロマトグラフカラムを使用し、そして水で溶出することによって糖蜜及びビナスからベタインを回収するための方法を記載する。強酸性カチオン交換樹脂はアルカリ金属形態にある。分離した第一画分は廃画分であり、第二画分は供給溶液の糖のかなり大きな割合を含有し、及び第三画分は主にベタインから成る。
【0004】
特許文献2は、H/Mg2+型弱酸性カチオン交換樹脂を使用するキシロースの結晶
化流出における他のモノサッカリドからラムノース及びアラビノースのクロマトグラフ分離のための方法を記載する。
【0005】
特許文献3は、弱塩基性アニオン交換樹脂を使用してベタイン、マンニトール、グリセロール、及びイノシトールを互いに分離するためのクロマトグラフ法を記載する。
【0006】
特許文献4は、クロマトグラフ分離系においてNa型弱酸性カチオン交換樹脂を使用して対応する化合物を含有する出発物質からベタイン並びにエリトリトール、イノシトール、マンニトール、グリセロール及びアミノ酸のような付加化合物を回収するための方法を記載する。供給溶液のpH値は、pH6及びpH11の間で変わり、及び溶出液、カラムから流れ出る溶液のpHは6.5及び11の間で変わる。塩の後で系から溶出するベタ
インの後に、エリトリトール、マンニトール及びグリセロールが続く。イノシトールは分離ピークとして最後に溶出した。
【0007】
特許文献5は、H型強酸性カチオン交換樹脂を用いて発酵液からクエン酸を回収するための方法を記載する。最初に溶出した画分は、サッカロース、マルトース及びイソマルトースのような高分子量化合物を含有する。続く画分はクエン酸を含有し、そして最終画分は、例えば、ベタイン並びにグルコン酸及び蓚酸のような様々な有機酸を含有した。
【0008】
非特許文献1は、H型弱酸性カチオン交換樹脂によるカルボン酸を分離するためのイオン排除クロマトグラフ分析法を開示する。水を溶出液として使用する場合、ピーク形状及びカルボン酸類との分離能は十分ではなかった。前記ピーク形状を改善するために、希硫酸水溶液が溶出液として試された。さらに、この溶出液へのメタノールの添加が、疎水
性特性を有するカルボン酸の保持時間を低減することが見出された。分子サイズの排除及びイオン排除に加えて、溶出の順序はpKa値及びカルボン酸の疎水性/親水性の性質の影響を受けた。
【0009】
ベタインは、甜菜のような植物に少量存在し、そして甜菜抽出物及び製糖又は発酵の側流からの純生成物としてのその回収は、クロマトグラフ分離のような効率的な濃縮方法が要求される。分画による化合物のクロマトグラフ分離に対してH型弱酸性カチオン交換樹脂を使用する場合、画分がベタインの後に溶出することが以前から知られている化合物の後に溶出する分離画分として、ベタインは発酵処理溶液、ビナス及び他の甜菜由来溶液のような甜菜をベースとした溶液から分離され得ることが今や驚くべきことに見出されている。H型弱酸性カチオン交換樹脂によるベタインの溶出の順序は、このように強酸性カチオン交換樹脂又はNa型弱酸性カチオン交換樹脂で以前から既知であるものとは異なる。この現象は、ベタイン及び他の分離媒体において同じような又はほとんど同じような保持時間を有する他の化合物を含有する多成分溶液を分画する場合に特に有利である。
【特許文献1】米国特許第4,359,430号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2002/0120135号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2005/0161401号明細書
【特許文献4】米国特許第6,770,757号明細書
【特許文献5】米国特許第5,032,686号明細書
【非特許文献1】Tanaka K.等(Journal of Chromatography 850号(1999年),187頁ないし196頁)
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、H型弱酸性カチオン交換樹脂による甜菜をベースとした溶液からベタインのクロマトグラフ分離のための方法に関する。本発明はまた、H型弱酸性カチオン交換樹脂により甜菜をベースとした溶液から、ポリオール及び/又はカルボン酸のような付加化合物のクロマトグラフ分離のための方法に関する。さらに、本発明はベタインを分離画分に濃縮することによって、H型弱酸性カチオン交換樹脂により他のカルボン酸化合物からのベタインのクロマトグラフ分離のための方法に関する。加えて、本発明は、H型弱酸性カチオン交換樹脂が少なくとも1種のクロマトグラフカラム又はクロマトグラフ分離用カラムの一部において使用されるところのクロマトグラフ分離システムにおいて甜菜をベースとした溶液からベタインを分離するための方法に関する。本発明はまた、クロマトグラフシステムのpHがベタインの保持因子を調節及び/又は制御するために使用され
るところのH型弱酸性カチオン交換樹脂により甜菜をベースとした溶液からベタインのクロマトグラフ分離のための方法に関する。さらに、本発明は、甜菜をベースとした溶液から、ベタイン及び所望によりまたポリオール及び/又はカルボン酸のような付加化合物のクロマトグラフ分離のためのH型弱酸性カチオン交換樹脂の使用に関する。本発明はまた、他のカルボン酸化合物からのベタインのクロマトグラフ分離のためのH型弱酸性カチオン交換樹脂の使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
下記図は、本発明の実施態様であり、また請求項において定義された本発明の範囲を制限することを意図しない。
【図1】図1は、実施例1に従う溶出プロフィル及びpHのグラフ表示である。
【図2】図2は、実施例2に従う溶出プロフィル及びpHのグラフ表示である。
【図3】図3は、実施例3に従う溶出プロフィル及びpHのグラフ表示である。
【図4】図4は、実施例4に従う溶出プロフィル及びpHのグラフ表示である。
【図5】図5は、実施例5に従う溶出プロフィル及びpHのグラフ表示である。
【図6】図6は、実施例6に従う溶出プロフィル及びpHのグラフ表示である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
ベタイン、ポリオール、及びカルボン酸のような産業的に及び/又は栄養学的に価値のある化合物の回収のために、付加的な原料を開発することに対して継続的な需要がある。そのような化合物の回収のための1つの代わりとなる解決策は、例えばクエン酸、酵母のような甜菜をベースとした発酵処理溶液、又は原料としてクエン酸又はエタノールビナスのようなエタノール発酵処理溶液もしくはビナスを使用することである。今や驚くべきことに、クロマトグラフ分離におけるカラム充填材としてH型弱酸性カチオン交換樹脂を使用する場合、ベタインは非常に純粋な画分として、例えば発酵処理溶液から酸性条件下で分離され得ることが見出されている。加えて、一般に酸性発酵処理溶液又はビナス、及び特にクエン酸発酵液体培地からのビナスが、H型弱酸性カチオン交換樹脂によりクロマトグラフ分離を用いて濃縮されたベタイン画分に分画されるに適する溶液であることが見出された。従って、クロマトグラフ分離前にpHを調整するために溶液を前処理する必要がない。
【0013】
上述の事情により、H型強酸性カチオン樹脂(SAC)は、例えば安定した状態を保たない。塩が供給溶液中に存在する場合、SAC樹脂の官能基は、弱酸性カチオン交換樹脂とは異なり酸性環境においてさえH型から金属カチオン型に非常に容易に変わるだろう。
【0014】
本発明によれば、H型弱酸性カチオン交換樹脂は、甜菜をベースとした溶液から、ベタインのクロマトグラフ分離のための方法におけるカラム充填材として、所望によりベタインで濃縮された分離画分として用いられる。ベタインは、濃縮画分から、例えば結晶化によって回収され得る。本発明によれば、H型弱酸性カチオン交換樹脂はまた、ベタインに加えて、ポリオール及びカルボン酸のような付加化合物の甜菜をベースとした溶液からのクロマトグラフ分離のための方法においても使用される。さらに、本発明によれば、H型弱酸性カチオン交換樹脂は他のカルボン酸化合物からのベタインのクロマトグラフ分離のための方法において使用される。本発明によれば、H型弱酸性カチオン交換樹脂は、ベタインを分離するための少なくとも1種のクロマトグラフ分離工程において使用される。加えて、本発明によれば、H形態にある弱酸性カチオン交換樹脂は、甜菜をベースとした溶液からベタインを分離するためのクロマトグラフ分離システムにおける少なくとも1種のクロマトグラフカラム又はカラムのある一部の充填床において使用される。
【0015】
本発明において、H型(水素型)弱酸性カチオン交換樹脂は、主に解離していないCOOH型弱酸性カチオン交換樹脂と呼ぶ。本発明の弱酸性交換樹脂のうち解離していないCOOH型の量は、50%より多く、好ましくは少なくとも67%、及びより好ましくは90%を超える。
【0016】
本発明の甜菜をベースとした溶液は、甜菜由来のあらゆる溶液、加水分解物及び/又は抽出物である。前記溶液は、発酵、例えばクエン酸、酵母又はエタノール発酵によってそのようなビート由来の溶液の更なる処理から又は例えば甜菜の糖蜜、ベタイン含有画分、ベタインの糖蜜、ベタイン結晶化又はビナスからの母液のような、甜菜由来の溶液の処理から得られ得る。発酵溶液、糖蜜、及びビナスは、典型的に無機塩中に豊富であり、及び典型的にDS(乾燥固体)に基づきベタイン5ないし75%及び様々な種類の付加有機化合物の混合物を含有する。本発明の方法によって分離画分又は画分に単独又は組合せて濃縮することにより分離される付加化合物は、エリトリトール、イノシトール、マンニトール及びグリセロールのようなポリオール、及び/又はクエン酸、乳酸、酢酸、蓚酸及びピロリドンカルボン酸のようなカルボン酸及び/又はそれらの混合物を含む。本発明のクロマトグラフ分離において、化合物は対象の化合物で濃縮される画分に分離される。濃縮した画分は、供給溶液として使用される溶液より化合物の乾燥物質ベースにおいてより高い
質量濃度を含有する。
【0017】
本発明の方法は独立して行われ得、又はそれは例えば付加的なクロマトグラフ分離、結晶化、蒸発、イオン交換、ろ過、膜ろ過及び/又は他の既知の処理工程のような他の処理工程と組み合わされ得るか、もしくは含み得る。本発明に従う方法は、好ましくは1つ以上の上記付加的な処理工程を組み合わし得るか又は含み得る。
【0018】
付加的なクロマトグラフ分離工程は、甜菜をベースとする出発溶液の組成物及び/又は分離するために選ばれる化合物に応じて、例えば強酸性カチオン交換樹脂(SAC)、強塩基性アニオン交換樹脂(SBA)又は弱塩基性アニオン交換樹脂(WBA)を用いて行われ得る。
【0019】
本発明に従う方法は、好ましくはベタインを回収するための付加的な工程と組み合わされ得るか、又は含み得る。ベタインの回収は、例えば結晶化によって行われ得る。本発明に従う方法はまた、所望により付加化合物又はポリオール及び/又はカルボン酸のような化合物を回収するための更なる工程と組み合わされ得るか、又は含み得る。
【0020】
本発明の方法において使用されるクロマトグラフカラム又はカラム(カラムの部分的な充填床)の一部は、H型弱酸性カチオン交換樹脂、好ましくはカルボン酸官能基を有するアクリル系カチオン交換樹脂で充填される。そのようなアクリル系樹脂は、好ましくはメチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、メチルメタクリレートもしくはアクリロニトリル又はアクリル酸、又はそれらの混合物に由来する。前記樹脂は、架橋剤、例えばジビニルベンゼン(DVB)で架橋され得る。適する架橋度は、1ないし20%、好ましくは3ないし8%である。前記樹脂の平均粒径は通常、10ないし2000μm、好ましくは100ないし400μmである。
【0021】
クロマトグラフ分離は、好ましくは10ないし95℃、より好ましくは30ないし95℃、最も好ましくは65ないし95℃の温度で行われる。より高い分離温度は粘度を低下し及び分離性能を改善するが供給溶液の敏感な化合物に対してより有害である。
【0022】
本発明に従うクロマトグラフ分離において使用される溶出液は、好ましくは水又はpH
調整水である。
【0023】
分画した甜菜をベースとする溶液は、所望によりろ過助剤の有無にかかわらず圧力ろ過器を使用することによって行われ得るろ過によってクロマトグラフ分離の前に前処理される。さらに、必要ならば供給溶液として使用される溶液のpHはpH値6未満、好ましくはpH値5.1未満、より好ましくはpH値1.4ないし5.1の間、及び最も好ましくはpH値3ないし4.5の間に調整される。供給溶液のpHが高い(>4.2)場合、本発明
の弱酸性カチオン交換樹脂は部分的にその最初のH型からイオン型に変わり、そしてその結果特定のH型水準で均衡を保つ。イオン型の種類は供給溶液のイオンに依存する。供給溶液の好ましいpH範囲に、pH値4.2未満で、弱酸性カチオン交換樹脂はその最初の水素型のままであり、また多数の供給液に対して本発明に従う効率的なクロマトグラフ分離が樹脂の再生無しに行われ得る。
【0024】
供給溶液は、pH調整の前又は後にろ過し得る。クロマトグラフ分離より前に、供給溶液の乾燥物質は適正水準、好ましくは20ないし60%の範囲に調整される。
【0025】
供給装置は、カラムに溶液を供給するために使用される。カラム、供給溶液及び溶出液の温度は、最も好ましくはクロマトグラフ分離の温度とおよそ同じである。これは供給溶液を予熱することによって達成される。定期的に加えられる供給溶液はカラムに水、例え
ば脱塩水又は凝縮水又は他の水溶液を供給することによってカラムに溶出される。好ましくは、予熱された溶出液が使用される。カラムにおける流速は適正水準に調整される。溶出の間、供給溶液の化合物の分離又は分割が、分子の大きさ及びイオン性質及び/又は化合物と樹脂等との疎水性/親水性相互作用におけるそれらの違いに起因してカラム内で起こり、及びそれ故一番速い化合物は一番最初にコラムを出る。対象化合物で濃縮した画分は適した間隔で集められる。カラムからの排出量はオンライン測定器によって測定され得るか、又は適した時間で分析し得る。画分において濃縮された生成物、例えばベタイン、及び所望によりまたエリトリトール、マンニトール、イノシトール、グリセロールのようなポリオール及び/又はクエン酸、蓚酸、乳酸、酢酸のようなカルボン酸及び/又はピロリドンカルボン酸(PCA)は、例えば結晶化のような適する方法によって回収され得る。
【0026】
本発明の方法は、付加的なクロマトグラフ分離、結晶化、蒸発及び/又はろ過が、例えば多工程プロセスの付加的な工程として少なくとも1回用いられる場合、多工程プロセスにおける分離工程として行われ得る。さらに、2つ以上のクロマトグラフカラムを順に配列することが可能であり、そこでは少なくとも1つのカラム又はカラムの一部がH型弱酸性カチオン交換樹脂を含有し、他のカラム又は複数のカラムは同じもしくは強酸性カチオン交換樹脂のような異なる型の樹脂を含有する。用いられるクロマトグラフシステムは、バッチプロセス又は擬似移動床システムであり得る。該擬似移動床システムは連続又は逐次であり得る。
【0027】
他のプロセスユニットによってH型弱酸性カチオン交換樹脂を含有する2つのクロマトグラフカラム又はカラムの一部を互いに連結することも可能である。前記プロセスユニットは、例えばろ過、膜ろ過、pH調整又は蒸発による濃縮であり得る。プロセスユニッ
トの順序が選択され及び変わり得ることは当業者に自明である。
【0028】
1つの態様において、本発明の方法は独立したプロセスとして行われる。この態様において、甜菜をベースとした溶液はH型弱酸性カチオン交換樹脂で満たされたカラムに供給され、及び供給溶液の成分はそれらを少なくとも2つの画分に分離するために溶出液を用いて溶出され、それらの画分のうち1つはベタインで濃縮される。供給溶液は、このようにベタインで濃縮された、及び所望によりまた他の画分又は付加化合物で濃縮された他の画分に分画され得る。好ましくは、ベタイン及び所望によりまた他の付加化合物は、さらに特定の化合物を含有する画分から回収される。本発明の方法によって分離される付加化合物は、エリトリトール、イノシトール、マンニトール、グリセロールのようなポリオール及び/又はクエン酸、乳酸、酢酸及びピロリドンカルボン酸のようなカルボン酸及び/又はそれらの混合物を含む。
【0029】
他の態様において、本発明の方法は多工程プロセスにおける分離工程として行われ、それは少なくとも1つの付加的なプロセス工程と組み合わされる。この態様において、甜菜をベースとした溶液は、例えば強酸性カチオン交換樹脂を含有する第一クロマトグラフカラムにより分画し得、該カラムはH型弱酸性カチオン交換樹脂を含有する第二カラムに連絡されて、ベタインで濃縮された画分、及び所望により他の画分又は付加化合物(類)で濃縮された画分に分画し得る。好ましくは、ベタイン及び所望によりまた付加化合物は、更に特定の化合物を含有する画分から回収される。そのような配列は更に分離性能を改善し、そして生成物の回収率及び純度を増大する。ベタインの収率もまたプロセスからの副生物を除去することによって改善される。
【0030】
更に別の態様において、本発明の方法は、本発明の方法が多工程プロセスにおける分離工程であるところの少なくとも1つの付加的なプロセス工程を含む。前記付加的なプロセス工程は、例えばクロマトグラフ分離、結晶化、蒸発、ろ過及び/又は膜ろ過であり得る

【0031】
一般に、弱酸性カチオン交換樹脂による異なる化合物の溶出順序は、分子サイズ排除及びイオン排除に加えて、化合物と樹脂との疎水性/親水性相互作用に影響されるように思われる。先の研究によれば、H型弱酸性カチオン交換樹脂による異なる化合物(例えばカルボン酸)の溶出順序は、化合物のpKa値により影響を受ける。一般に、pKa値が低くなるにつれて、同じ化合物の保持時間は短くなる。しかしながら、H型弱酸性カチオン交換樹脂によるベタイン(pKa=1.832)の溶出順序は全くこれらのルールに従わない。驚くべきことに、H型弱酸性カチオン交換樹脂は、(Na、K等のような)金属カチオン型よりもより疎水性であり、及び疎水性分子であるベタインに対して非常に高い親和性を有するように思われる。
【0032】
本発明の方法において、クロマトグラフカラムにおいて分離した成分の溶出順序は、例えばNa型弱酸性カチオン交換樹脂又は強酸性カチオン交換樹脂を使用することをベースとした初期の方法により得られる順序とは異なり、及びこの特性は多成分組成物の各々から成分を分離することにおいて有利に使用され得る。本発明によれば、ベタインは、効果的に濃縮されて、そして記載されたものよりも遅いその溶出(より高い保持時間)に起因して塩、エリトリトール、イノシトール、マンニトール、グリセロール及びカルボン酸から分離される。さらに、例えばイノシトールは、本発明の方法において、グリセロール及びベタインの前のその溶出に起因してベタイン及びグリセロールから分離される。
【0033】
驚くべきことに、ベタインの保持体積及び保持因子がクロマトグラフ分離のpH、特に
供給溶液のpHにより変わり、pHが低くなるほど保持因子が高くなることが見出された。クロマトグラフ分離カラムからのベタインの溶出は、供給溶液のpHの変化により影響を
受ける一方、ほとんどのカルボン酸化合物は、供給溶液のpHに関係なく、おおよそ同じ
時間で溶出する。ベタインの保持因子はクロマトグラフ分離のpHを調整することによっ
て制御及び/又は調節され得る。クロマトグラフ分離のpH調整は、溶出液及び/又は供
給液のpHを調整することによって行われ得るが、好ましくは供給溶液のpHを望ましい水準、pH6未満のpHに調整することによって行われる。例えば、供給溶液のpHをpH5.1からpH1.4に変化することによって、ベタインの保持因子は1.3から2.9に変
化する。H型弱酸性カチオン交換樹脂で充填されたカラムがクロマトグラフ分離において使用される場合、甜菜をベースとした供給溶液のpHをpH値5.1未満に低くすることが、ベタインの溶出速度を遅らせるために用いられ得る。従って、ベタイン画分へのベタインのより効果的な濃縮が達成され得る。このように、供給溶液のpHを調整すること
によって、甜菜をベースとした溶液中の他の成分からのベタインのクロマトグラフ分離はH型弱酸性カチオン交換樹脂上で最適化され得る。供給溶液のpH調整はまた、H+型弱酸性カチオン交換樹脂上で他のカルボン酸化合物からのベタインのクロマトグラフ分離を制御及び/又は調節するために使用される。
【0034】
本発明に従う方法は、例えばDSに基づき50%を超える、有利にはDSに基づき70%を超える及びより有利にはDSに基づき85%を超える最大純度で、甜菜をベースとする溶液からベタイン画分に、ベタインを1.5ないし50、好ましくは2ないし5倍に濃縮することを可能にする。
【0035】
本発明に従う方法は、例えばNa型弱酸性カチオン交換樹脂又は強酸性カチオン交換樹脂を使用する既知の方法により困難であり、発酵処理溶液及び/又はビナスのような、甜菜をベースとした溶液から良好な収率及び高純度(乾燥固体(DS)当り80ないし95%)でベタインを分離し及び所望によりまた回収することを可能にする。例えば、強酸性カチオン交換(SAC)樹脂がベタインのクロマトグラフ分離のために使用される場合、同じ収率及び純度水準が2つのクロマトグラフ分離で達成されるのに反し、H型弱酸
性カチオン交換樹脂ではただ1つの分離だけを必要とする。さらに、本発明に従う方法はまた既知の方法により困難であった、同時又は別々に発酵処理溶液又はビナスから良好な収率及び純度で、エリトリトール、イノシトール、マンニトール、グリセロールのようなポリオール及び/又はクエン酸、乳酸のようなカルボン酸及び/又はピロリドンカルボン酸のような付加化合物を濃縮及び回収することも可能にする。
【0036】
本発明の方法に従う1つの態様において、供給溶液としてクエン酸ビナスを使用することはベタイン及びクエン酸を分離画分で回収可能にする。ベタイン及びクエン酸の両方が1.5ないし20、好ましくは2ないし5倍に濃縮される。ベタインは、DSに基づき60%を超える、より好ましくはDSに基づき80%を超える純度を有するベタイン画分に、及びクエン酸はDSに基づき20%を超える、より好ましくはDSに基づき35%を超える純度を有する分離画分にそれぞれ濃縮され得る。
【0037】
本発明の方法の1つの有利な点は、1種の溶出液、水がH型弱酸性カチオン交換樹脂により及びまた所望による付加的なクロマトグラフ工程により望ましい化合物を分離するために効果的に使用され得ることである。水がクロマトグラフ分離における溶出液として使用される場合、取扱いがより容易であり、費用はより低く及び安全性がより高い。分離において、ベタイン及び例えばイノシトールの異なる溶出順序が本発明の方法における付加的な利益を与え、ベタインに加えてエリトリトール、イノシトール、マンニトール、グリセロール、クエン酸、乳酸及び/又はピロリドンカルボン酸のような付加化合物を効果的に濃縮することも可能にする。
【0038】
IUPACによれば(国際純正応用化学連合)、クロマトグラフプロセス及びクロマトグラフの理論に関する用語は以下を含む:
・ホールドアップ体積(時間)(VM、tM)は、非保持化合物の保持体積(時 間)に等しい。
・調整保持体積(時間)(VR’、tR’)は、総溶出体積(時間)引くホール ドアップ体積(時間)である。
・保持因子(k)は、数学的に調整保持体積(時間)とホールドアップ体積(時 間)の比:k=VR’/VM=tR’/tMである。
【0039】
下記の実施例は本発明を説明する。実施例はあらゆる方法においても特許請求の範囲を制限するものでもない。
【実施例】
【0040】
実施例1
Na型弱酸性カチオン交換樹脂を用いたベタイン流出のクロマトグラフ分離を示す比較例(pH8.9)
ベタイン流出は、ビート糖蜜のクロマトグラフ分離に由来し、及びベタイン、イノシトール、エリトリトール、マンニトール及びグリセロールのようないくつかの化合物を含有する。供給溶液として、それをバッチプロセスとして実験室クロマトグラフ分離カラムにおいて行われるクロマトグラフ分離を受けさせた。直径0.045mを有するカラムを、フィンランド国、フィネックスオイ社製のアクリル系弱酸性カチオン交換樹脂(フィネックス(Finex)CA 12 GC)で充填した。該樹脂はエチルアクリレートをベースとした樹脂であった。樹脂の高さは約0.70mであった。樹脂の架橋度は6.0%DVBであり、及び樹脂の平均粒径は0.26mmであった。該樹脂はNa型であった。樹脂のpHは製造プロセスの後、高かった。供給装置を樹脂床の上に置いた。カラム、供給溶液及び溶出水の温度はおおよそ80℃であった。カラムの流速を4mL/分に調整した。供給溶液を、ろ過助剤として珪藻土を使用するフィルタを通してろ過した。供給溶液のpHは8.9であった。
クロマトグラフ分離を下記のように行った:
工程1:供給溶液の乾燥物質を測定し、そして溶液の屈折率(RI)に従い溶液100g中乾燥物質25gに調整した。
工程2:予熱した供給溶液100mLを、(供給装置を通して)樹脂床の上に汲み上げた。
工程3:予熱したイオン交換水をカラムの上に供給することによって供給溶液をカラムの下方に溶出した。
工程4:出てきた溶液試料10mLを、3分間隔で集めた。試料の濃度電気伝導度(mS/cm)及びpHを測定した。試料の組成をHPLCで分析した(Ca2+−カラム、0
.6mL/分、0.001MCa(NO32、85℃)。
ベタインは塩の後にカラムから溶出した。サッカロースはベタインとほとんど同じ保持時間を有する。99分のホールドアップ体積及び168分の溶出時間は、ベタインに0.7の保持因子を与えた。エリトリトール、マンニトール及びグリセロールは、ほぼ同じ保持時間を有し、ベタイン後にほぼ一つのピークとして溶出した。イノシトールは分離ピークとして最後に溶出した。溶出順序は成分の疎水性/親水性の性質と一致した。使用した樹脂は、他の主成分、塩、グリセロール、マンニトール、及びエリトリトールからベタイン及びイノシトールを分離した。溶出液(すなわち、出てきた溶液)のpHは8及び11の間であった。分離プロフィルを図1に示す。
【0041】
実施例2
型弱酸性カチオン交換樹脂を用いたビナスのクロマトグラフ分離(pH3.6)
分離に使用した出発液は、クエン酸の発酵プロセスからのビナスであった。ビナスは主にベタイン、グリセロール、無機塩、及びクエン酸のような有機酸並びに少量の乳酸、蓚酸、酢酸、PCA及び糖を含有する。ビナスはおおよそ下記の組成を有する(RDSに基づく%):
ベタイン 17.1
グリセロール 1.8
クエン酸 7.8
他の物質 73.3
溶液のpHは3.6であった。該溶液を、ろ過助剤として珪藻土を使用するフィルタを通してろ過した。ビナスを供給溶液として使用し、そしてそれにクロマトグラフ分離を受けさせた。分離を、バッチプロセスとしてパイロット規模のクロマトグラフ分離カラムにおいて行った。直径0.09mを有するカラムを、フィンランド国、フィネックスオイ社製の弱酸性カチオン交換樹脂(フィネックス(Finex)CA 16 GC、8% DVB、容量 4.4eqv/L)で充填した。該樹脂はアクリレートをベースとした樹脂であり、及びナトリウム型樹脂の平均粒径は0.41mmであった。該樹脂を水素(H)型に再生した後の樹脂床の高さはおおよそ1.7mであった。カラム、供給溶液及び溶出水の温度は、75℃であった。カラム中の流速を3L/分に調整した。
クロマトグラフ分離を下記の工程を繰り返すことによって行った:
工程1:供給溶液の乾燥物質を、溶液の屈折率(RI)に従い溶液100g中乾燥物質35gに調整した。
工程2:予熱した供給溶液640mLを、樹脂床の上に汲み上げた。
工程3:予熱したイオン交換水をカラムの上方に供給することによって供給溶液をカラムの下方に溶出した。
工程4:出てきた溶液の試料50mLを、5分間隔で集めた。試料の濃度、電気伝導度(mS/cm)及びpHを測定した。試料の組成をHPLCで分析した(Naカラム、0.6mL/分、85℃、0.003MNa2SO4)。
溶出は無機塩で出発し、そして有機酸及びアルジトールを用いて続けた。ベタインを、主成分の最後としてカラムから溶出した。溶出液のpHは1.9及び4.6の間で変化し
た。全部で5つの供給をしたが、この間樹脂イオン型は完全に安定化しなかった。これら
の分離後、樹脂の93%が樹脂床の上方で水素型であった。樹脂は、他の成分からベタインを非常によく分離した;ホールドアップ体積は75分であり、及び溶出時間は278分であった。この分離における保持因子は2.7であった。ベタインを、良好な収率(>90%)で高純度(80ないし95%/DS)画分として集めた。クエン酸を、DSに基づき純度20ないし50%を有する画分として集めた。ベタイン及び供給溶液のいくつかの有機酸の保持因子(k)を、表1に示した。表1に示されるpKa値は、Lange’s
Handbook of Chemistry,(第15版),1999年から得た。これらの酸は、それらのpKa(1番)値に従い溶出することが分かる。驚くべきことにpKa値が1.832であるベタインは例外であり、最終成分として溶出する。分離プロフィルを図2に示した。
【表1】

【0042】
実施例3
型弱酸性カチオン交換樹脂を用いたビナスのクロマトグラフ分離(pH5.1)
分離に使用した出発液は、エタノールの発酵プロセスからのビナスであった。該ビナスは主にベタイン、グリセロール、無機塩、及び有機酸を含有し、及びおおよそ下記の組成を有する(RDSに基づく%)
ベタイン 13.8
グリセロール 12.3
他 73.9
溶液のpHは5.1であった。該溶液を、ろ過助剤として珪藻土を使用するフィルタを通してろ過した。ビナスを供給溶液として使用し、そしてそれにクロマトグラフ分離を受けさせた。分離を、バッチプロセスとしてパイロット規模のクロマトグラフ分離カラムにおいて行った。直径0.09mを有するカラムを、フィンランド国、フィネックスオイ社製の弱酸性カチオン交換樹脂(フィネックス(Finex)CA 16 GC、8% DVB、容量 4.4eqv/L)で充填した。該樹脂はアクリレートをベースとした樹脂であり、及びナトリウム型樹脂の平均粒径は0.41mmであった。該樹脂を水素(H)型に再生した後の樹脂床の高さはおおよそ1.7mであった。カラム、供給溶液及び溶出水の温度は、75℃であった。カラム中の流速を3L/分に調整した。クロマトグラフ分離を下記の手順を繰り返すことにより行った:
工程1:供給溶液の乾燥物質を、溶液の屈折率(RI)に従い溶液100g中乾燥物質35gに調整した。
工程2:予熱した供給溶液0.6Lを、樹脂床の上に汲み上げた。
工程3:pHがギ酸によって3ないし4に調整された、予熱したイオン交換水をカラムの上方に供給することによって供給溶液をカラムの下方に溶出した。
工程4:出てきた溶液の試料50mLを、5分間隔で集めた。試料の濃度、電気伝導度(
mS/cm)及びpHを測定した。試料の組成をHPLCで分析した(Naカラム、0.6mL/分、85℃、0.003MNa2SO4)。
溶出を無機塩で出発し、そして有機酸及びアルジトールを用いて続けた。ベタインは、他の主成分よりも後にカラムから溶出した。樹脂のイオン型の平衡が達成される前には、ベタインピークの位置は後方に移動した(すなわち、他の成分のピークに近づく)。53供給後、樹脂床の上の67%の樹脂がH型であった。その段階で、ベタインのホールドアップ体積は75分であり、及び溶出時間は180分であった。ベタインの保持因子は1.3であり、及びベタインピークの最大純度は75%を超えた。溶出液のpHは4.4及び6.3の間で変化した。53番目の供給液の分離プロフィルを図3に示した。
【0043】
実施例4
型弱酸性カチオン交換樹脂を用いたビナスのクロマトグラフ分離(pH4.2)
分離に使用した出発液は、エタノールの発酵プロセスからのビナスであった。該ビナスは主にベタイン、グリセロール、無機塩、及び有機酸を含有し、及びおおよそ下記の組成を有する(RDSに基づく%)
ベタイン 15.8
グリセロール 11.5
他 72.7
ビナスを供給溶液として使用し、そしてそれにクロマトグラフ分離を受けさせた。分離を、バッチプロセスとしてパイロット規模のクロマトグラフ分離カラムにおいて行った。直径0.09mを有するカラムを、弱酸性カチオン交換樹脂(フィネックス(Finex)CA 16 GC、8% DVB、容量 4.4eqv/L)で充填した。該樹脂はアクリレートをベースとした樹脂であり、及びナトリウム型樹脂の平均粒径は0.41mmであった。該樹脂を水素(H)型に再生した後の樹脂床の高さはおおよそ1.7mであった。カラム、供給溶液及び溶出水の温度は、75℃であった。カラム中の流速を3L/時に調整した。供給溶液のpHを硫酸(H2SO4)によって4.2に調整した。供給溶液は、ろ過助剤として珪藻土を使用するフィルタを通してろ過した。クロマトグラフ分離を下記のように行った:
工程1:供給溶液の乾燥物質を、溶液の屈折率(RI)に従い溶液100g中乾燥物質35gに調整した。
工程2:予熱した供給溶液2Lを、樹脂床の上に汲み上げた。
工程3:pHがギ酸によって4.2に調整された、予熱したイオン交換水をカラムの上方に供給することによって供給溶液をカラムの下方に溶出した。
工程4:出てきた溶液の試料50mLを、5分間隔で集めた。試料の濃度、電気伝導度(mS/cm)及びpHを測定した。試料の組成をHPLCで分析した(Naカラム、0.6mL/分、85℃、0.003MNa2SO4)。
溶出は無機塩で出発し、そして有機酸及びアルジトールを用いて続けた。ベタインを、他の主成分よりも後に、しかし実施例2において示されたより低い供給pH分離と比較すると早くカラムから溶出した。ホールドアップ体積は75分であり、及び溶出時間は205分であった。このpHにおけるベタインの保持因子は1.7であり、及びDSに基づき80%を超える最大純度がベタイン画分において得られた。ベタインの前に溶出したグリセロール画分の純度は、DSに基づき20%以上であった。合計20の供給を試みたが、その間に樹脂イオン型が安定化した:89%の樹脂が樹脂の上下において水素型であった。溶出液のpHは4.0及び6.4の間で変化した。20番目の供給液の分離プロフィルを図4に示した。
【0044】
実施例5
型弱酸性カチオン交換樹脂を用いたビナスのクロマトグラフ分離(pH3.1)
分離に使用した出発液は、クエン酸の発酵プロセスからのビナスである。該ビナスは主にベタイン、グリセロール、無機塩、及び有機酸を含有し、及びおおよそ下記の組成を有
する(RDSに基づく%)
ベタイン 19.8
グリセロール 3.0
他 77.2
ビナスを供給溶液として使用し、そしてそれにクロマトグラフ分離を受けさせた。分離を、バッチプロセスとしてパイロット規模のクロマトグラフ分離カラムにおいて行った。直径0.09mを有するカラムを、弱酸性カチオン交換樹脂(フィネックス(Finex)CA 16 GC、8% DVB、容量 4.4eqv/L)で充填した。該樹脂はアクリレートをベースとした樹脂であり、及びナトリウム型樹脂の平均粒径は0.41mmであった。該樹脂を水素(H)型に再生した後の樹脂床の高さはおおよそ1.6mであった。カラム、供給溶液及び溶出水の温度は、75℃であった。カラム中の流速を3L/時に調整した。供給溶液のpHは3.1であった。
クロマトグラフ分離を下記のように行った:
工程1:供給溶液の乾燥物質を、溶液の屈折率(RI)に従い溶液100 g中乾燥物質
35gに調整した。
工程2:予熱した供給溶液1.5Lを、樹脂床の上に汲み上げた。
工程3:pHがギ酸によって3ないし4に調整された、予熱したイオン交換水をカラムの上方に供給することによって供給溶液をカラムの下方に溶出した。
工程4:出てきた溶液の試料50mLを、5分間隔で集めた。試料の濃度、電気伝導度(mS/cm)及びpHを測定した。試料の組成をHPLCで分析した(Naカラム、0.6mL/分、85℃、0.003MNa2SO4)。
溶出は無機塩で出発し、そして有機酸及びアルジトールを用いて続けた。ベタインを、主成分の最後としてカラムから溶出した。ベタインのホールドアップ体積は75分であり、及び溶出時間は245分であり、及びその保持因子は2.3であった。溶出液(例えば出てきた溶液)のpHは2.4及び4.3の間で変化した。合計54の供給液を作ったが、その間に樹脂のイオン型が安定化し、そして99%より多い樹脂が水素型であった。該樹脂はベタインを他の成分から非常によく分離し、及びDSに基づき85%を超える最大純度をベタイン画分において得た。分離プロフィルを図5に示した。
【0045】
実施例6
型弱酸性カチオン交換樹脂を用いたビナスのクロマトグラフ分離(pH1.4)
分離に使用した出発液は、エタノールの発酵プロセスからのビナスであった。主にベタイン、グリセロール、無機塩、及び有機酸を含有するビナスは、おおよそ下記の組成を有する(RDSに基づく%):
ベタイン 14.0
グリセロール 10.6
他 75.4
ビナスを供給溶液として使用し、そしてそれにクロマトグラフ分離を受けさせた。分離は、バッチプロセスとしてパイロット規模のクロマトグラフ分離カラムにおいて行った。直径0.09mを有するカラムを、弱酸性カチオン交換樹脂(フィネックス(Finex)CA 16 GC、8% DVB、容量 4.4eqv/L)で充填した。該樹脂はアクリレートをベースとした樹脂であり、及びナトリウム型樹脂の平均粒径は0.41mmであった。該樹脂を水素(H)型に再生した後の樹脂床の高さはおおよそ1.6mであった。カラム及び供給溶液及び溶出水の温度は、75℃であった。カラム中の流速を3L/時に調整した。供給溶液のpHを強硫酸(H2SO4)によって1.4に調整し、そしてそれをろ過助剤として珪藻土を使用するフィルタを通してろ過した。
クロマトグラフ分離を下記のように行った:
工程1:供給溶液の乾燥物質を、溶液の屈折率(RI)に従い溶液100g中乾燥物質35gに調整した。
工程2:予熱した供給溶液0.7Lを、樹脂床の上に汲み上げた。
工程3:pHが強H2SO4によって2.2に調整された、予熱したイオン交換水をカラムの上方に供給することによって供給溶液をカラムの下方に溶出した。
工程4:出てきた溶液の試料50mLを、5分間隔で集めた。試料の濃度、電気伝導度(mS/cm)及びpHを測定した。試料の組成物をHPLCで分析した(Naカラム、0.6mL/分、85℃、0.003MNa2SO4)。
溶出は無機塩で出発し、そして有機酸及びアルジトールを用いて続けた。ベタインは、主成分の最後としてカラムから溶出した。ベタインに対するホールドアップ体積は75分であり、溶出時間は290分であり、及びその保持因子は2.9であった。溶出液(例えば出てきた溶液)のpHは1.3及び3.3の間で変化した。樹脂は他の成分から非常によくベタインを分離し、及びDSに基づき85%を超える最大純度をベタイン画分において得た。分離プロフィルを図6に示した。
【0046】
実施例7
ベタインの結晶化
濃縮したベタインリッチ画分からのベタインを下記のように結晶化した。ベタイン含有供給液を400リットルの沸騰結晶器に加えた。蒸発を始めた。最初の自発的結晶が温度99度で、約79%のDSで見られた。自発的なシード結晶後、沸騰結晶化を約100℃の温度で3時間続け、そして新しい供給液を続けて沸騰結晶器に加えた。該沸騰結晶化によって得られる塊の400リットルのバッチを排出した。前記塊を遠心分離し、そしてベタイン無水物を乾燥した。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
+型弱酸性カチオン交換樹脂がクロマトグラフ分離において使用されるところの、甜菜
をベースとした溶液からのベタインのクロマトグラフ分離のための方法。
【請求項2】
前記甜菜をベースとした溶液が発酵処理溶液である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記発酵処理溶液がクエン酸、酵母又はエタノール発酵溶液である、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記甜菜をベースとした溶液がベタイン、カルボン酸、ポリオール及び/又はPCAを含む甜菜由来の処理溶液である、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記甜菜由来の処理溶液がビナス(vinasse)、糖蜜又はベタイン糖蜜である、請求項4記載の方法。
【請求項6】
+型弱酸性カチオン交換樹脂を含有する少なくとも1つのカラム又はカラムの一部がク
ロマトグラフ分離において使用される、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記弱酸性カチオン交換樹脂がアクリル系樹脂である、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記アクリル系樹脂がメチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、及びアクリロニトリル又はアクリル酸又はそれらの混合物からなる群に由来する、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記樹脂がジビニルベンゼン(DVB)で架橋される、請求項7記載の方法。
【請求項10】
前記樹脂の架橋度が3ないし8質量%である、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記クロマトグラフ分離において使用される溶出液が水である、請求項1記載の方法。
【請求項12】
前記クロマトグラフ分離において使用される溶出液の温度が10℃及び95℃の間である、請求項1記載の方法。
【請求項13】
前記溶出液の温度が65℃及び95℃の間である、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記弱酸性カチオン交換樹脂の粒径が10ないし2000μmである、請求項1記載の方法。
【請求項15】
前記弱酸性カチオン交換樹脂の粒径が100ないし400μmである、請求項14記載の方法。
【請求項16】
供給溶液のpHが6未満である、請求項1記載の方法。
【請求項17】
供給溶液のpHが5.1未満である、請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記クロマトグラフ分離がバッチプロセスである、請求項1記載の方法。
【請求項19】
前記クロマトグラフ分離が擬似移動床プロセスである、請求項1記載の方法。
【請求項20】
前記擬似移動床プロセスが逐次プロセスである、請求項19記載の方法。
【請求項21】
前記擬似移動床プロセスが連続プロセスである、請求項19記載の方法。
【請求項22】
前記方法が更に他の画分、又はポリオール及び/又はカルボン酸で濃縮された画分を含む、請求項1記載の方法。
【請求項23】
前記ポリオールがイノシトール及び/又はグリセロールである、請求項22記載の方法。
【請求項24】
前記カルボン酸がクエン酸、乳酸及び/又はピロリドンカルボン酸である、請求項22記載の方法。
【請求項25】
ベタイン濃縮画分及びクエン酸濃縮画分が分離される、請求項1記載の方法。
【請求項26】
前記方法が更にベタイン濃縮画分からベタインを回収することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項27】
前記回収が結晶化によってなされる、請求項26記載の方法。
【請求項28】
前記クロマトグラフ分離のpH調整がベタインの保持因子を調節又は制御するために使用される請求項1記載の方法。
【請求項29】
ベタインの溶出が供給液のpHをpH5.1未満に低減することによって遅らされる、請求項28記載の方法。
【請求項30】
ベタインが他のカルボン酸化合物から分離される、請求項28記載の方法。
【請求項31】
前記カルボン酸化合物がクエン酸、乳酸及び/又はピロリドンカルボン酸である、請求項30記載の方法。
【請求項32】
ベタイン画分及びクエン酸画分が溶液から分離される、請求項28記載の方法。
【請求項33】
ベタインがポリオール化合物から分離される、請求項28記載の方法。
【請求項34】
前記ポリオールがイノシトール及び/又はグリセロールである、請求項33記載の方法。
【請求項35】
甜菜をベースとした溶液からのベタインのクロマトグラフ分離のためのH+型弱酸性カチ
オン交換樹脂の使用。
【請求項36】
ベタインが他のカルボン酸化合物から分離される、請求項35記載の使用。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−522566(P2009−522566A)
【公表日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−549033(P2008−549033)
【出願日】平成19年1月9日(2007.1.9)
【国際出願番号】PCT/FI2007/050008
【国際公開番号】WO2007/080228
【国際公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【出願人】(503250632)